JP5298836B2 - 桟橋の補強構造、補強方法 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1に提案された杭式桟橋の補強構造は、複数の杭と該杭によって支持される上部工との間にブレース部材を設け、前記ブレース部材と前記上部工材との間、又は前記ブレース部材と前記杭との間の何れか一方、又は両方に設けられたダンパー部材とを備え、前記ダンパー部材、前記ブレース部材、前記杭のそれぞれの降伏せん断応力が、この順に大きくなるようにしたものである(特許文献1参照)。
「杭と上部工を構成要素とする1つの桟橋を、それぞれ杭および上部工を構成要素とし異なる固有周期を有する複数の桟橋ブロックに分割し、前記桟橋ブロックどうしの間をダンパーを介在させて連結したことを特徴とする制震桟橋。」
しかしながら、特許文献2に開示された具体例を見ると、補強ユニットを構成するブレース下端側を杭と接合し、ブレースの上端側にダンパーを接合する構造であるため、ダンパー部で発生する変位が小さく、制震効果があまり期待できないという問題がある。
しかしながら、ダンパーの両端が共に杭と上部工を含む桟橋と同じ系内に設置されているため、ダンパー両端での変位量が小さく、効果的に地震動のエネルギーを吸収することはできない。
しかしながら、各上部工は桟橋の一部であり、地震後においても桟橋として機能させる必要がある場合、各上部工からなる桟橋への被災を抑制するように各上部工を支持する杭の剛性やダンパーの剛性を設定する必要があるが、これは非常に難しい。例えば、2つの上部工間に設置したダンパーでのエネルギー吸収を効果的に行わせるために一方の上部工を支持する杭の剛性を高くすると、剛性を高くした上部工側での加速度が大きくなってしまうことが考えられる。
また、特許文献3の構造は、桟橋を新規に建設する場合には有効な方法と考えられるが、既存の桟橋の補強には困難がともなう。
そこで、発明者はダンパー設置に関する上記従来の考えを転換することを発想し、ダンパーを、桟橋を構成する部材とは別の系にある構造物と桟橋の上部工との間に設置するという発想を得た。このようにすることで、地震時に発生する加速度と変位をダンパーで調整するのが極めて容易となり、すぐれた制震性能を発揮する補強構造を簡易に得ることができるとの知見を得た。
本発明はかかる知見に基づいてなされたものであり、具体的には以下の構成からなるものである。
図1、図2は本発明の一実施の形態に係る桟橋の補強構造の説明図であり、図1は補強後の桟橋の平面図、図2は同じく補強後の桟橋の側面図である。図3、図4は本実施の形態の補強構造を説明するための説明図であり、図3は補強前の桟橋の平面図、図4は、同じく補強前の桟橋の側面図である。
各構成を詳細に説明する。
組杭11は、例えば2本の鋼管杭をそれらがハの字を形成するように斜めに打設して斜杭9とし、これら斜杭9の上端部を剛結して構成されるものである。各斜杭9は上部工7の床版に設けた開口部から貫通するようにして打設されている。もっとも、打設後には開口部は修復され、杭頭部14は、図2に示すように、上部工7の床版の下方に床版と接触しない高さになっている。
組杭11は、図2に示されるように、海中にある部分が上部工7のエリア内、すなわち平面視で上部工7外に出ないように配置されている。つまり、組杭11下端のように海底地盤3内にある部分は上部工7のエリア外であってもよいが、海底よりも上方の海中にある部分は上部工7のエリア内に配置されている。組杭11の設置状態をこのような配置にすることで、接岸する船舶の邪魔にならないという効果がある。
杭頭部14の剛結方法としては、例えば鉄筋コンクリートで結合する。
ダンパー13は、一端側が組杭11の頭部14に連結され、他端が上部工7側に連結され、地震時のエネルギーを吸収するものである。なお、組杭11の杭頭部14と上部工7にはそれぞれダンパー13の端部を連結するための連結部材15が設けられている。
ダンパー13は、例えば地震エネルギーを吸収する軸力管と、軸力管の座屈を防止するために軸力管の外側または内側に補剛管を設置して二重管構造とした二重管型の制振ブレースを用いることができる。
もっとも、ダンパーは地震エネルギーを吸収することができるものであれば特に限定されるものではない。
つまり、本実施の形態においては、ダンパー13の一端を桟橋1とは独立した組杭11の頭部14に連結しているため、地震時に桟橋1に発生する加速度と変位をそれぞれどの程度に抑制するかについては、組杭11の剛性とダンパー13の剛性を設定することによって決定することができる。
(1)入力地震動(レベル2地震相当の模擬地震動波形)、図5参照
(2)上部工7の条件
縦:24.0m、横:22.0m
(3)地盤条件(図2参照)
捨石層、表層地盤(N=5)、下層地盤(N=10)
(4)直杭5の条件(図2参照)
鋼管杭(材質:SKK400、杭径:φ700、板厚:7mm)
配置:縦横6m間隔で設置
(5)組杭11の条件(図2参照)
鋼管杭(材質:SKK400、杭径:φ700、板厚:4〜28mm)
直杭列の2列の間中央に各1カ所組杭11を設ける(図1、図2参照)。
なお、解析に際して組杭11の剛性倍率を、1.0〜5.8まで変化させた。
既存の桟橋と同じ鋼管杭を用いた場合(組杭11の鋼管杭の板厚を7mmとした場
合)の剛性倍率は1.6倍である。
(6)ダンパー条件
ダンパー13として、下記に示す二重管型の制振ブレースを用いた。
制振ブレース(軸力管の直径:130mm,板厚:6.5mm,下降伏点:100N/mm2,引張強さ:200N/mm2)
比較例として、ダンパーを用いないで組杭11と上部工7を剛結合したものについても行った。
図6に示すように、最大変位比については、いずれの例でも組杭剛性倍率が大きくなるに従って最大変位比が小さくなっている。制振ブレース(ダンパー13)がある場合には、組杭剛性倍率が1.5倍程度までの間で急激に低下し、2.4倍までは最大変位比が小さくなるが、それ以降は組杭の剛性を上げても、最大変位比は変わらない。
一方、制振ブレース(ダンパー13)を設置したものは、剛結したものに比べ最大加速度比は格段に小さく、組杭剛性倍率が2.4倍よりも大きくなっても最大加速度比は変わらない。
また、本実施の形態においては、130mm径の制振ブレースを用いる場合の最適な組杭11の剛性倍率は、2.4倍程度であり、このように設定することにより、最大加速度の増加を微小な範囲に抑えつつ、最大変位の低減効果を有効に発揮させることができる。
図8、図9は本発明の実施の形態2の説明図であり、図8が補強構造の平面図、図9が側面図である。図8、図9において、図1、図2と同一部分には同一の符号を付してある。
本実施の形態においては、組杭11の頭部14を上部工7に形成した開口部17内に配置し、ダンパー13を上部工7の上面側に形成した開口溝19に設置して上部工7上からダンパー13を視認可能にしたものである。ダンパー13を上部工7の上面側に設置することにより、ダンパー13を上部工7から視認できるようになり、地震後のダンパー13の塑性変形の程度を確認することで桟橋1の被災の程度を推測することができる。つまり、ダンパー13の塑性変形の程度が小さい場合には、桟橋1を支持する直杭5の被災状況が小さいと判断でき、逆にダンパー13の塑性変形の程度が大きい場合には、桟橋1を支持する直杭5の被災の程度が大きいと判断できる。
この点、従来であれば、海中に潜って実際の杭の根元の確認をしなければならないことに比較すると、極めて便利である。
また、ダンパー13を上部工7の上面側に設置することで、実施の形態1の場合よりも海面からより遠くなるため、防食の点でも有利である。
次に上記のように構成される桟橋1の補強構造の施工手順を説明することで、本発明の補強方法を説明する。
(1)まず、既設桟橋1の床版に組杭打設用の開口部を設ける。なお、実施の形態2の場合には、組杭打設用の開口に加えてダンパー設置用の開口溝19を併せて設ける。
(2)次に開口部を貫通するようにして、2本の鋼管杭を斜めに交差するように打設する。
杭打設後、2本の杭頭を鉄筋コンクリートによって結合する。なお、鋼管杭の打設に際しては、図2、図9に示すように、鋼管杭における海中に配置される部分が上部工7のエリア内に配置されるようにする。
(3)そして、結合した杭頭14、及び上部工7にダンパー13を連結するための連結部材15を設置する。
(4)上記の連結部材15を用いて、杭頭部14と上部工7との間にダンパー13を設置する。
(5)開口部を補修する。すなわち、実施の形態1の例では開口部を閉塞するようにし、実施の形態2の例では開口部17として杭頭部14との間に所定の隙間を生ずるようにしておく。
なお、ダンパー13を上部工7の上面側に設置した実施の形態2場合には、ダンパー設置のための開口溝19に蓋を設置する。
なお、どのような組杭にするか、あるいはどのようなダンパーを設置するかについては、補強の対象になっている桟橋1の諸元や、想定される地震波に基づいて上述したような実験を行うことで決定することができる。
もっとも、組杭にすることで、組杭を構成する鋼管杭の管径や板厚を小さくできるので、コスト面で有利である。
3 海底地盤
5 直杭
7 上部工
9 斜杭
11 組杭
13 ダンパー
14 杭頭部
15 連結部材
17 開口部
19 開口溝
Claims (5)
- 杭と上部工を有する桟橋の補強構造であって、前記桟橋と独立しており別の系にあり、かつ水平方向の剛性が前記桟橋の水平方向の剛性の1.5倍以上ある構造物を設置し、ダンパーの一端側を該構造物に連結し、他端側を前記上部工に連結するようにダンパーを設置したことを特徴とする桟橋の補強構造。
- 前記ダンパーは前記上部工において視認可能な部位に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の桟橋の補強構造。
- 前記構造物は、水中にある部分が上部工のエリア内に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の桟橋の補強構造。
- 前記構造物は斜杭を交差方向に組み合わせた組杭であり、該組杭の交差方向がダンパーの変位方向と同方向になっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の桟橋の補強構造。
- 桟橋の上部工に開口部を設ける工程と、該開口部を貫通して杭を打設する工程と、該杭の上端部と前記上部工との間にダンパーを設置する工程と、前記開口部を修復する工程を備え、前記杭を打設する工程においては、前記杭の上端部における水平方向の剛性が桟橋の水平方向の剛性の1.5倍以上になるように杭を打設することを特徴とする桟橋の補強方法。
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