JP6450935B2 - 乗物用シート - Google Patents

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Description

本発明は、自動車等の乗物に装着される乗物用シートに関するものである。
乗物用シートにおいて、車体から乗物用シートに伝達された振動をヘッドレスト内に備えられたダイナミックダンパに伝達して共振させることで、乗物用シートの振動をダイナミックダンパの振動に変換して乗物用シートの振動を抑えるものが知られている。特許文献1に記載の乗物用シートにおいては、ヘッドレストの内部に形成した空間部の中にダイナミックダンパを配置している。詳しくは、ステーにインナカバを固定することによりその内部に空間部を設け、その空間部中において、ダイナミックダンパをブラケットを介してステーに取付けている。
特開昭60−151135号公報
特許文献1に記載の技術においては、ダイナミックダンパを構成する重錘を弾性体に取付けるのに接着やビス止め等の手段を用いている。これによって、重錘を弾性体に取付けるための材料や部品が必要となるとともに、ダイナミックダンパを製造する工程が複雑化して生産性が悪化するという問題があった。
かかる問題に鑑み本発明の課題は、乗物用シートの内部空間内にダイナミックダンパを配設した乗物用シートにおいて、少ない部品や材料の点数で生産性よくダイナミックダンパを製造できる乗物用シートを提供することにある。
本発明の第1発明は、乗物用シートであって、該乗物用シートは、該乗物用シートの骨格部材に取付けられて内部に空間部を形成するパネル部材と、重錘と弾性体とを備えるとともに前記空間部内に配設されるダイナミックダンパと、を備え、前記重錘は、前記弾性体に設けられた前記重錘の外周部の一部を取り巻くように嵌合可能に形成された嵌合部に嵌め込まれて固定され、前記弾性体は前記嵌合部以外の部分で前記パネル部材に固定されていることを特徴とする。
第1発明によれば、ダイナミックダンパは、弾性体の嵌合部に重錘を嵌め込み固定する事で形成されるので接着剤やビス等の材料や部品を使用する必要がなく生産性よく製造ができる。これによって、少ない部品や材料の点数で生産性よく乗物用シートの内部空間内にダイナミックダンパを配設した乗物用シートを製造できる。
本発明の第2発明は、上記第1発明において、前記重錘は板状の形態に形成されており、前記嵌合部は前記重錘の外周部におけるコーナ部の一部又は全部を覆ってダイナミックダンパが大きく振動したときに前記重錘が前記パネル部材に直接接触しないように形成されていることを特徴とする。
第2発明によれば、弾性体の嵌合部が重錘の外周部におけるコーナ部の一部又は全部を覆って重錘がパネル部材に直接接触しないように形成されているのでパネル部材の内側等に干渉防止材等を取付ける必要がなく部品点数の低減が図れる。
本発明の第3発明は、上記第1発明又は上記第2発明において、前記弾性体は、前記嵌合部と前記嵌合部以外の部分とが一体で形成されていることを特徴とする。
第3発明によれば、弾性体が一体で形成されているので、嵌合部を嵌合部以外の部分に対して組付ける必要がなく生産性がさらに向上する。
本発明の一実施形態に係る乗物用シートの一部斜視図である。 上記実施形態のヘッドレストの斜視図である。 上記実施形態のシートバックの一部とヘッドレストの正面図である。 図3におけるIV−IV矢視線断面図である。 上記実施形態のヘッドレストのフレームにダイナミックダンパを取付けた状態の斜視図である。 上記実施形態のヘッドレストのフレームにダイナミックダンパを取付けた状態の分解斜視図である。 上記実施形態のダイナミックダンパの正面図である。 図7におけるVIII−VIII矢視線断面図である。 本発明の他の実施形態のダイナミックダンパの分解斜視図である。 図9におけるX−X矢視線断面図である。 本発明の更に他の実施形態のダイナミックダンパの分解斜視図である。
図1〜図8は、本発明の一実施形態を示す。この実施形態は、自動車用シートに本発明を適用した例である。各図中、矢印により自動車用シートを自動車に取付けたときの自動車の各方向を示している。以下の説明において、方向に関する記述は、この方向を基準として行うものとする。本実施形態の自動車用シート1は、着座部となるシートクッション4と、背凭れとなるシートバック2と、頭部を支持するヘッドレスト3を備える。シートバック2は、その両サイドの下端部が、リクライナ7を介してシートクッション4の後端部に角度調整可能に連結されている。ここで、自動車用シート1が、特許請求の範囲の「乗物用シート」に相当する。
図1に示すように、シートバック2とヘッドレスト3とシートクッション4は、それぞれ、骨格を成すフレーム2a、3a、4aと、クッション材であるパッド2b、3b、4bと、表皮材である表皮2c、3c、4cと、を有する。フレーム2a、3a、4a上にパッド2b、3b、4bが載置され、パッド2b、3b、4bは表皮2c、3c、4cで覆われている。シートバック2のフレーム2aは、左右一対のサイドフレーム2a1と、サイドフレーム2a1の上部間を連結するパイプ状のアッパフレーム2a2と、サイドフレーム2a1の下部間を連結するプレス板状のロアパネル2a3と、を有する。
図1及び図3に示すように、アッパフレーム2a2には、一対の金属製で角筒状のブラケット2dが取付けられている。ブラケット2dには、樹脂製で略円筒状のサポート部材2eが挿入固定されている。サポート部材2eの一つには、ヘッドレスト3のシートバック2に対する高さを調整するためのストッパ2fが設けられている。
図5及び図6に示すように、ヘッドレスト3のフレーム3aは、円形断面のパイプ材から形成される一対のステー31と、ステー31の上端部を前後から挟み込んで一体化した前パネル32及び後パネル33と、を備えている。一対のステー31は、前パネル32と後パネル33により連結され、一体としてヘッドレスト3の骨格となるフレーム3aを構成している。
ステー31は、上下方向に延びる縦柱部31aと、縦柱部31aの上端から前方向かつヘッドレスト中央方向に向けて延びるパネル取付部31bと、を有している。縦柱部31aの下端部には、内部突起の規定に適合させるべくR形状部31cが設けられている。図3に示すように、縦柱部31aは、サポート部材2eに挿入されてシートバック2に取付けられる。ステー31の一つには複数の溝(図示せず)が形成されており、この溝とストッパ2fによってサポート部材2eに対してステー31が位置決めされる。これによりヘッドレスト3のシートバック2に対する高さが調整されうる。ステー31が、特許請求の範囲の「骨格部材」に相当し、前パネル32と後パネル33が、特許請求の範囲の「パネル部材」に相当する。
図5及び図6に示すように、前パネル32と後パネル33は鋼板製のプレス成形部品で前後方向から見た外形が同一の略台形状をしている。前パネル32は、概略前方向に凸となるように膨らんだ半シェル状の形態をしており、後パネル33は、概略後方向に凸となるように膨らんだ半シェル状の形態をしている。前パネル32の後端部と後パネル33の前端部を合わせてシェル状とすると、前パネル32と後パネル33の間に後述するダイナミックダンパ10が配設される空間部34が形成される。前パネル32と後パネル33は、シェル状に合わせたとき、その合わせ面に対して略対称形状に形成されているので、代表として後パネル33についてその詳しい形状を説明する。
図6に示すように、後パネル33の左右端部には、断面がステー31の外径よりわずかに大きい内径の円弧状をした縦溝部33aが設けられている。縦溝部33aは、後パネル33が前パネル32とシェル状に合わされたとき、前パネル32の縦溝部とともにステー31のパネル取付部31bを挟み込んで、ステー31と、前パネル32及び後パネル33とを一体化するためのものである。縦溝部33aの外側端部には、前パネル32と溶接接合するためのフランジ部33bが設けられている。図4及び図6に示すように、後パネル33の上端部には、断面が略U字状の上横溝部33cが設けられている。上横溝部33cの下側の壁面33dは、後パネル33が前パネル32とシェル状に合わされたとき、前パネル32の上横溝部の下側の壁面とともに、後述するダイナミックダンパ10の一部を係止して取付けるためのものである。上横溝部33cの上側端部には、前パネル32と溶接接合するためのフランジ部33eが設けられている。フランジ部33bとフランジ部33eは、切れ目なく連続して設けられている。後パネル33の下端部の左右の縦溝部33aの間には、断面が略U字状の下横溝部33fが設けられている。下横溝部33fの上側の壁面33gは、後パネル33が前パネル32とシェル状に合わされたとき、前パネル32の下横溝部の上側の壁面とともに後述するダイナミックダンパ10の一部を係止して取付けるためのものである。下横溝部33fの下側端部には、前パネル32と溶接接合するためのフランジ部33hが設けられている。後パネル33の縦溝部33a、上横溝部33c、下横溝部33fに囲まれた中央部分には、後方に向って凸となる膨出部33iが形成されている。膨出部33iは、後パネル33が前パネル32とシェル状に合わされたとき、前パネル32の膨出部とともにダイナミックダンパ10が配設される空間部34を形成する。また、空間部34の周囲には、前パネル32と後パネル33が当接して、溶接が可能な領域が形成される。ダイナミックダンパ10の配設構造の詳細については、ダイナミックダンパ10の構造を説明してから後述する。
図6〜図8に示すように、ダイナミックダンパ10は、重錘6と、重錘6を前パネル32と後パネル33に対して揺動可能に弾性的に支持する弾性部材8と、を備えている。ここで、弾性部材8が、特許請求の範囲の「弾性体」に相当する。
重錘6は、鋼材などの金属製であって中実の略直方体形状の部品である。重錘6の材質は金属には限らないが、比重の大きさから金属を使用するのがダイナミックダンパ10を小型化するのに有効である。また、重錘6の形状は略直方体に限らず円盤状、多角柱状等平板状の広範な形状を採りうる。
弾性部材8は、スチレン・ブタジエンゴムやエチレンプロピレンゴム製の部材で、加硫成形により製造される。図6〜図8に示すように、弾性部材8は、重錘6の全コーナ部を覆って支持する重錘嵌合部8aと、重錘嵌合部8aから上方向に延びる一対の上柱部8bと、重錘嵌合部8aから下方向に延びる一対の下柱部8cと、を有する。重錘嵌合部8aは、重錘6の上下左右前後の全てのコーナ部を覆って重錘6を保持する部分で、図4及び図8に示すように、重錘6の上下前後のコーナ部が重錘嵌合部8a中に覆われた状態で嵌合されており、外れにくくなっている。重錘6の左右前後のコーナ部についても図示はしないが同様である。さらに詳しく説明すると、図8において重錘嵌合部8aは、重錘6の上下左右の面に沿って延びる主体部8a1と、主体部8a1から前後方向に向かって延びるとともに重錘6にオーバハングするように延びる係止部8a2と、を有している。重錘嵌合部8aを変形させながら、主体部8a1と係止部8a2によって形成される凹み部分に重錘6の上下左右の外周部が嵌め込まれることで重錘6は弾性部材8に対して固定される。上柱部8bは、横断面が四角形の柱状の形態をしており、その上端部には前後左右に張り出した鍔部8b1が設けられている。さらに、上柱部8bの鍔部8b1やや下には前後方向に貫通する貫通孔8b2が設けられている。下柱部8cは、横断面が四角形の柱状の形態をしており、その下端部には前後左右に張り出した鍔部8c1が設けられている。さらに、下柱部8cの鍔部8c1やや上には前後方向に貫通する貫通孔8c2が設けられている。なお、弾性部材8の材質はゴムに限らず熱可塑性のエラストマー等の樹脂であってもよい。ここで、重錘嵌合部8aが、特許請求の範囲の「嵌合部」に相当し、上柱部8bと下柱部8cが、特許請求の範囲の「嵌合部以外の部分」に相当する。
図4及び図6を参照して、ダイナミックダンパ10の前パネル32と後パネル33に対する取付け構造及び取付け方について説明する。後パネル33の上横溝部33cの下側の壁面33dからやや下方には、左右方向中心線から等距離に一対の係止孔33jが設けられている。左右の係止孔33jの間隔は、ダイナミックダンパ10の一対の上柱部8bに設けられた貫通孔8b2間の距離と等しく設定されている。それぞれの係止孔33jの左右両側には前方に向かって突出する凸部33kが設けられている。係止孔33jを挟んだ凸部33k間の間隔は、上柱部8bの左右方向の幅よりわずかに大きく設定されている。また、後パネル33の下横溝部33fの上側の壁面33gからやや上方には、左右方向中心線から等距離に一対の係止孔33mが設けられている。左右の係止孔33mの間隔は、ダイナミックダンパ10の一対の下柱部8cに設けられた貫通孔8c2間の距離と等しく設定されている。それぞれの係止孔33mの左右両側には前方に向かって突出する凸部33nが設けられている。係止孔33mを挟んだ凸部33n間の間隔は、下柱部8cの左右方向の幅よりわずかに大きく設定されている。左右の係止孔33jと係止孔33mの間隔は、それぞれ、ダイナミックダンパ10の貫通孔8b2と貫通孔8c2間の距離よりやや大きく設定されている。これによって、後パネル33の左右の係止孔33jと係止孔33mを、それぞれ、ダイナミックダンパ10の左右の貫通孔8b2と貫通孔8c2に一致させると、ダイナミックダンパ10の上柱部8bと下柱部8cが伸張させられることになる。前パネル32にも、前パネル32と後パネル33をシェル状に合わせたとき、その合わせ面に対して後パネル33と対称の位置に係止孔、凸部が設けられている。
フレーム3aへのダイナミックダンパ10の取付け方法について説明する。図6において、後パネル33のフランジ部33b、33e、33hを上に向けた状態で支えるとともに、後パネル33に対して適正な位置に左右のステー31を支持する受け治具(図示せず)上に後パネル33と左右のステー31を配置する。このとき、受け治具からは、係止孔33jと係止孔33mに相当する位置に、外径が係止孔33jと係止孔33mよりわずかに小さい円柱状の位置決めピンが前パネル32との合わせ面に垂直に全部で4本立設されている。したがって、受け治具上に後パネル33を載置すると、後パネル33の係止孔33jと係止孔33mを通して4本の位置決めピンが上方に向って延びた状態になる。この状態で4本の位置決めピンが、ダイナミックダンパ10の貫通孔8b2と貫通孔8c2を通るようにダイナミックダンパ10を載置してセットする。すなわち、係止孔33jを通った2本の位置決めピンを、ダイナミックダンパ10の2つの貫通孔8b2に通し、係止孔33mを通った2本の位置決めピンを、ダイナミックダンパ10の2つの貫通孔8c2に通す。このとき、ダイナミックダンパ10の貫通孔8b2と貫通孔8c2の間の距離は、後パネル33の係止孔33jと係止孔33mの間の距離より短いので、弾性部材8の上柱部8bと下柱部8cには張力が印加された状態となる。この状態で、上柱部8bの鍔部8b1が後パネル33の上横溝部33cの下側の壁面33dに係止され、下柱部8cの鍔部8c1が後パネル33の下横溝部33fの上側の壁面33gに係止される。この上に、前パネル32を被せると、前パネル32の4つの係止孔を4本の位置決めピンが通るとともに、上柱部8bの鍔部8b1が前パネル32の上横溝部の下側の壁面に係止され、下柱部8cの鍔部8c1が前パネル32の下横溝部の上側の壁面に係止される。この状態で、前パネル32と後パネル33の外周フランジ部と、縦溝部33aと上横溝部33cの内側部分と、左右のステー31との接触部分とを溶接で固定したのち受け治具から取外す。このとき、ダイナミックダンパ10の上柱部8bの鍔部8b1と下柱部8cの鍔部8c1とは、それぞれ、前パネル32と後パネル33の上横溝部の下側の壁面と下横溝部の上側の壁面に係止されているので位置決めピンが外されても上柱部8bと下柱部8cに張力が印加された状態を保つ。また、上柱部8bは、凸部33kに挟まれて左右方向移動不能に支持され、下柱部8cは、凸部33nに挟まれて左右方向移動不能に支持される。これによって、ダイナミックダンパ10は、フレーム3aに対して上下左右前後のいずれの方向にも移動不能に支持される。
ヘッドレスト3の製造方法について説明する。ヘッドレスト3の外形に相当するキャビティを備えたウレタン発泡成形型に、上記のダイナミックダンパ10を取付けたフレーム3aに袋状に形成した表皮3cを被せた状態でセットする。表皮3cの中に発泡ウレタン原料を注入し、発泡成形完了後に脱型してヘッドレスト3を得る。発泡ウレタン原料の発泡成形中に、ダイナミックダンパ10は前パネル32と後パネル33によって形成された空間部34に配置され、前パネル32と後パネル33とはその外周部が溶接によってシールされているので発泡ウレタン原料が空間部34に侵入することが抑制されている。したがって、ダイナミックダンパ10が振動するのに十分な空間部34が確保される。
以上のように構成される実施形態は、以下のような作用効果を奏する。ダイナミックダンパ10の弾性部材8には、重錘嵌合部8aが設けられ重錘嵌合部8aに重錘6の上下左右前後の全てのコーナ部を覆うように重錘6が嵌め込まれて取付けられる。これによって、接着剤やビス等の材料や部品を使用することなく少ない部品や材料の点数で生産性よくダイナミックダンパ10が製造できる。すなわち、少ない部品や材料の点数で生産性よく乗物用シートの内部空間内にダイナミックダンパを配設した乗物用シートを製造できる。また、弾性部材8の重錘嵌合部8aには、重錘6の上下左右前後の全てのコーナ部を覆って前パネル32と後パネル33に向けて延びる係止部8a2が設けられている。これによって、前パネル32と後パネル33の内側に干渉防止材等を取付けなくても重錘6が前パネル32と後パネル33と直接当接して異音等を発生するのを抑制できる。すなわち、弾性部材8の重錘嵌合部8aが重錘6の保持と異音等の発生防止の両機能を兼ねることができ、部品点数の低減が図れる。さらに、左右のステー31を前後から挟むように前パネル32と後パネル33を取付けることによって空間部34を形成するとともに、ダイナミックダンパ10をヘッドレスト3内に配設することができる。これによって、生産性よくヘッドレスト3内にダイナミックダンパ10が配設できる。また、ダイナミックダンパ10は、振動源であるフロアから最も離れたヘッドレスト3内に配設されているので、大きく振動して自動車用シート1の振動を効率よく減衰できる。
図9及び図10に、本発明の他の実施形態に係るダイナミックダンパ11の重錘61及び弾性部材81を示す。上記一実施形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を省略する。上記一実施形態との違いは、ダイナミックダンパの重錘と弾性部材との形状が違っている点である。重錘61は、上記一実施形態の重錘6において、上下左右の4面に連続する断面が略U字状の溝61aが形成された形態をしている。弾性部材81は、重錘61の全コーナ部を覆って支持する重錘嵌合部81aと、重錘嵌合部81aから上方向に延びる1本の上柱部8bと、重錘嵌合部81aから下方向に延びる1本の下柱部8cと、を有する。重錘嵌合部81aは、重錘61の上下左右前後の全てのコーナ部を覆って重錘61保持する部分で、図10に示すように、重錘61の上下前後のコーナ部が重錘嵌合部81aに覆われた状態で嵌合されており、外れにくくなっている。重錘61の左右前後のコーナ部についても図示はしないが同様である。
さらに詳しく説明すると、図10において重錘嵌合部81aは、重錘61の上下左右の面に沿って延びる主体部81a1と、主体部81a1の内側中央部から内側に向かって突出する断面が略U字状の凸状部81a2と、を有している。主体部81a1は、前後方向の長さが重錘61の前後方向の長さより長く形成されており、重錘嵌合部81aに重錘61が取付けられたとき、重錘61の前面及び後面それぞれから突出するようになっている。凸状部81a2は、重錘61の溝61aに対して密着して嵌合可能な形状に形成されている。重錘嵌合部81aを変形させて、凸状部81a2を溝61aに嵌め込みながら重錘61の上下左右の外周面に主体部81a1を掛けまわして重錘61を固定する。上柱部8bと下柱部8cの形態は、上記一実施形態の弾性部材8のものと同一であり、前パネル32と後パネル33に対する取付け方も同様である。ただ本数のみが異なるが上記一実施形態の弾性部材8と同様に上柱部8bと下柱部8cをそれぞれ2本ずつとしてもよい。ここで、重錘嵌合部81aが、特許請求の範囲の「嵌合部」に相当し、上柱部8bと下柱部8cが、特許請求の範囲の「嵌合部以外の部分」に相当する。当該他の実施形態に係るダイナミックダンパ11も上記一実施形態のダイナミックダンパ10と同様の作用効果を奏するが、前パネル32と後パネル33に対する重錘61の干渉を防止する部分が重錘嵌合部81aの前後の突出部となる。
図11に、本発明の更に他の実施形態に係るダイナミックダンパ12の重錘62及び弾性部材82を示す。上記一実施形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を省略する。上記一実施形態との違いは、ダイナミックダンパの重錘と弾性部材との形状が違っている点である。重錘62は、上記一実施形態の重錘6において、左右方向中央部の上面と下面に前後方向に延びる断面略U字状の溝62aが形成された形態をしている。弾性部材82は、重錘62の溝62aに嵌り込んで重錘62を支持する重錘嵌合部82aと、重錘嵌合部82aから上方向に延びる1本の上柱部8bと、重錘嵌合部82aから下方向に延びる1本の下柱部8cと、を有する。重錘嵌合部82aは、重錘62の溝62aに嵌り込むように、溝62aの幅よりわずかに小さい長さの円筒状で軸が左右方向に延びるように形成されている。
さらに詳しくは、図11において重錘嵌合部82aは、円環を引き伸ばして重錘62の溝62aに嵌めたとき重錘62に対して張着できるような周長を有する円筒状に形成されている。上柱部8bと下柱部8cの形態は、上記一実施形態の弾性部材8のものと同一であり、前パネル32と後パネル33に対する取付け方も同様である。ここで、重錘嵌合部82aが、特許請求の範囲の「嵌合部」に相当し、上柱部8bと下柱部8cが、特許請求の範囲の「嵌合部以外の部分」に相当する。当該他の実施形態に係るダイナミックダンパ12は、前パネル32と後パネル33の内側に重錘62が直接当接するのを防止する機能を除いて上記一実施形態のダイナミックダンパ10と同様の作用効果を奏する。
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、次のようなものが挙げられる。
1.上記実施形態においては、前パネル32及び後パネル33と、ダイナミックダンパ10,11、12をヘッドレスト3の内側に配設したが、これに限らず、シートバック2やシートクッション4の内部に配設してもよい。
2.上記実施形態においては、弾性部材8,81、82の重錘嵌合部8a、81a、82aと、上柱部8b及び下柱部8cと、を同一材質で一体のものとした。これに限らず、重錘嵌合部8a、81a、82aと、上柱部8b及び下柱部8cと、を弾性率の異なる材料の一体品としてもよいし、別部材として結合するようにしてもよい。
3.上記実施形態においては、弾性部材8、81、82の材料としてスチレン・ブタジエンゴムやエチレンプロピレンゴム等のゴム材料を適用したが、これに限らず、変性ポリプロピレン樹脂等の接着性を有する熱可塑性樹脂を用いることもできる。一般に、変性ポリプロピレン樹脂の成形品はゴム材料の成形品より弾性率が高いので曲げ変形が容易になるように上柱部8b及び下柱部8cの断面形状を工夫して弱体化部を設ける等して変形しやすくしてもよい。
4.上記実施形態においては、弾性部材8、81、82の上柱部8bと下柱部8cは、それぞれ、1本ずつ又は2本ずつとして上下方向に平行に配置したが、これに限らず、3本以上の複数本としてもよいし、左右方向に配置してもよい。さらには、必ずしも相互に平行に配置する必要もないし上下又は左右で柱部の本数を異ならせてもよい。
5.上記実施形態においては、前パネル32及び後パネル33を金属製のプレス成形部品として溶接で結合したが、これに限らず、樹脂製の成形品としてもよい。結合の方法も溶接に限らず、はめ込みやビス止め等の機械的結合方法を採用してもよいし、熱融着や接着等によって結合してもよい。
6.上記実施形態においては、ダイナミックダンパ10,11、12の前パネル32と後パネル33への取付を、前パネル32と後パネル33の間に上柱部8bと下柱部8cの一部を挟み込むことによって行った。これに限らず、上柱部8bと下柱部8cの一部を前パネル32もしくは後パネル33に、はめ込みやビス止め等の機械的結合方法によって取付けてもよいし、熱融着や接着等によって結合してもよい。
7.上記実施形態においては、本発明を自動車用シートに適用したが、これに限らず、鉄道車両、飛行機、船舶等のシートにも適用することができる。
1 自動車用シート(乗物用シート)
2 シートバック
3 ヘッドレスト
6、61、62 重錘
8、81,82 弾性部材(弾性体)
8a、81a、82a 重錘嵌合部(嵌合部)
8b 上柱部(嵌合部以外の部分)
8c 下柱部(嵌合部以外の部分)
10,11,12 ダイナミックダンパ
31 ステー(骨格部材)
32 前パネル(パネル部材)
33 後パネル(パネル部材)
34 空間部

Claims (2)

  1. 乗物用シートであって、
    該乗物用シートは、該乗物用シートの骨格部材に取付けられて内部に空間部を形成するパネル部材と、重錘と弾性体とを備えるとともに前記空間部内に配設されるダイナミックダンパと、を備え、
    前記重錘は、前記弾性体に設けられた前記重錘の外周部の一部を取り巻くように嵌合可能に形成された嵌合部に嵌め込まれて固定され、前記弾性体は前記嵌合部以外の部分で前記パネル部材に固定されており、
    前記弾性体は、前記嵌合部と前記嵌合部以外の部分とが一体で形成された単一の成形体である乗物用シート。
  2. 請求項1において、前記重錘は板状の形態に形成されており、前記嵌合部は前記重錘の外周部におけるコーナ部の一部又は全部を覆ってダイナミックダンパが大きく振動したときに前記重錘が前記パネル部材に直接接触しないように形成されている乗物用シート。



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