JP6449414B2 - 発光素子、照明装置、発光装置、表示装置および電子機器 - Google Patents

発光素子、照明装置、発光装置、表示装置および電子機器 Download PDF

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Description

本発明は、有機化合物を発光物質として用いた発光素子、表示装置、発光装置、電子機器
及び照明装置に関する。
近年、エレクトロルミネッセンス(EL:Electroluminescence)を
利用した発光素子の研究開発が盛んに行われている。これら発光素子の基本的な構成は、
一対の電極間に発光物質を含む層(EL層)を挟んだものである。この素子に電圧を印加
することにより、発光物質からの発光を得ることができる。
このような発光素子は自発光型であるため、液晶ディスプレイに比べ画素の視認性が高く
、バックライトが不要である等の利点があり、フラットパネルディスプレイ素子として好
適である。また、このような発光素子を用いたディスプレイは、薄型軽量に作製できるこ
とも大きな利点である。さらに非常に応答速度が速いことも特徴の一つである。
これらの発光素子は発光層を膜状に形成することが可能であるため、面状に発光を得るこ
とができる。よって、大面積の光源を容易に形成することができる。このことは、白熱電
球やLEDに代表される点光源、あるいは蛍光灯に代表される線光源では得難い特色であ
るため、照明等に応用できる面光源としての利用価値も高い。
発光物質に有機化合物を用い、一対の電極間に当該EL層を設けた有機EL素子の場合、
一対の電極間に電圧を印加することにより、陰極から電子が、陽極から正孔(ホール)が
それぞれ発光性のEL層に注入され、電流が流れる。そして、注入された電子及び正孔が
再結合することによって発光性の有機化合物が励起状態となり、励起された発光性の有機
化合物から発光を得ることができる。
有機化合物が形成する励起状態の種類としては、一重項励起状態と三重項励起状態があり
、一重項励起状態(S)からの発光が蛍光、三重項励起状態(T)からの発光がりん
光と呼ばれている。また、当該発光素子におけるその統計的な生成比率は、S:T
1:3であると考えられている。そのため、三重項励起状態を発光に変換することが可能
なりん光性化合物を用いた発光素子の開発が近年盛んに行われている。
しかし、一方で、現在利用されているりん光性化合物はその殆どがイリジウムなどの希少
金属を中心金属とした錯体であり、そのコストや供給の安定性に不安がある。このため、
希少金属を用いずに、三重項励起状態を発光に変換することが可能な材料として、遅延蛍
光を発する材料の研究も行われている。
特許文献1及び特許文献2では、低い温度でも比較的高い効率で熱活性化遅延蛍光(Th
ermally activated delayed fluorescence;T
ADF)を発する材料(以下TADF材料ともいう)について開示されている。
特開2004−241374号公報 特開2006−024830号公報
発光素子の発光を担う層(発光層)には、濃度消光の防止や、発光位置の制御、発光物質
の膜質が悪いなどの理由から、ホスト分子中にゲスト分子として発光物質を分散させた、
いわゆるホスト−ゲスト型の構成がよく用いられる。この場合、ホールと電子との再結合
は発光物質でも起こるが、多くはホスト材料において起こり、発光効率の向上の為にはホ
スト分子からゲスト分子へのエネルギー移動を考慮する必要がある。
しかし、特許文献1及び特許文献2などに記載の、高い効率でTADFが起こるTADF
材料は、一重項励起状態と、三重項励起状態とが近接しているため、上記励起状態間の位
置関係が通常の発光物質やホスト分子と異なる。したがって、通常のホスト分子を用いて
も効率のよいエネルギー移動が難しい。
そこで、本発明の一態様では、TADF材料を発光物質として用いた発光素子において、
発光効率がより高い発光素子を提供することを目的とする。また、本発明の一態様は、上
述の発光素子を用いることにより、消費電力の低減された発光装置、表示装置、電子機器
、及び照明装置を各々提供することを目的とする。
本発明は上述の課題のうちいずれか一を解決すればよいものとする。
本発明では、熱活性化遅延蛍光を示す物質に効率的にエネルギー移動が可能なエネルギー
ドナーとして、励起錯体(エキサイプレックス)を用いた発光素子を提供する。励起錯体
は、2種類の物質から形成され、その一重項励起状態と、三重項励起状態とは近接してい
るという特徴を有する。そのため、エネルギーアクセプターである熱活性化遅延蛍光を示
す物質の一重項励起状態の吸収である最も長波長側の吸収帯に、励起錯体の発光を重ねる
ことによって、励起錯体の一重項励起状態から熱活性化遅延蛍光を示す物質の一重項励起
状態へのエネルギー移動をより効率的に実現すると同時に、励起錯体の三重項励起状態か
ら熱活性化遅延蛍光を示す物質の三重項励起状態へのエネルギー移動をもより良好な効率
で可能とする。
すなわち、本発明の一態様は、一対の電極と、一対の電極間に挟まれたEL層を有し、E
L層は少なくとも発光層を有し、発光層は第1の有機化合物と、第2の有機化合物と、発
光物質とを少なくとも含み、第1の有機化合物と第2の有機化合物とは励起錯体を形成す
る組み合わせであり、発光物質は熱活性化遅延蛍光を示す物質である発光素子である。
また、本発明の他の構成は、一対の電極と、一対の電極間に挟まれたEL層を有し、EL
層は少なくとも発光層を有し、発光層は第1の有機化合物と、第2の有機化合物と、発光
物質とを少なくとも含み、第1の有機化合物と第2の有機化合物とは励起錯体を形成する
組み合わせであり、発光物質は熱活性化遅延蛍光を示す物質であり、熱活性化遅延蛍光を
示す物質の最も低エネルギー側の吸収帯と、励起錯体の発光スペクトルが重なる発光素子
である。
また、本発明の他の構成は、上記構成において、熱活性化遅延蛍光を示す物質の最も低エ
ネルギー側の吸収帯のピーク波長と、励起錯体の発光のピーク波長とのエネルギー換算値
の差が0.2eV以下である発光素子である。
また、本発明の他の構成は、上記構成において、熱活性化遅延蛍光を示す物質の蛍光のピ
ーク波長と、りん光のピーク波長とのエネルギー換算値の差が0.2eV以下である発光
素子である。
また、本発明の他の構成は、上記構成において、励起錯体の蛍光のピーク波長と、りん光
のピーク波長とのエネルギー換算値の差が0.2eV以下である発光素子である。
また、本発明の他の構成は、上記構成において、熱活性化遅延蛍光を示す物質が、π電子
過剰型複素芳香環及びπ電子不足型複素芳香環を有する複素環化合物である発光素子であ
る。
また、本発明の他の構成は、上記構成において、熱活性化遅延蛍光を示す物質が、π電子
過剰型複素芳香環及びπ電子不足型複素芳香環が直接結合した複素環化合物である発光素
子である。
また、本発明の他の一態様は、上記構成を有する発光素子を備えた発光装置、表示装置、
電子機器及び照明装置である。
なお、本明細書中における発光装置とは、発光素子を用いた画像表示デバイスを含む。ま
た、発光素子にコネクター、例えば異方導電性フィルム、もしくはTCP(Tape C
arrier Package)が取り付けられたモジュール、TCPの先にプリント配
線板が設けられたモジュール、又は発光素子にCOG(Chip On Glass)方
式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て発光装置に含むものとする
。さらに、照明器具等に用いられる発光装置も含むものとする。
本発明の一態様は、発光効率が高い発光素子を提供できる。本発明の一態様は、該発光素
子を用いることにより、消費電力の低減された発光装置、表示装置、電子機器、及び照明
装置を提供できる。
発光素子の概念図。 発光層のエネルギー移動を表す図。 アクティブマトリクス型発光装置の概念図。 パッシブマトリクス型発光装置の概念図。 アクティブマトリクス型発光装置の概念図。 アクティブマトリクス型発光装置の概念図。 照明装置の概念図。 電子機器を表す図。 電子機器を表す図。 照明装置を表す図。 照明装置を表す図。 車載表示装置及び照明装置を表す図。 電子機器を表す図。 エキサイプレックスの発光波長について説明する図。 発光素子1及び比較発光素子1の電流密度−輝度特性。 発光素子1及び比較発光素子1の電圧−輝度特性。 発光素子1及び比較発光素子1の輝度−電流効率特性。 発光素子1及び比較発光素子1の輝度−パワー効率特性。 発光素子1及び比較発光素子1の輝度−外部量子効率特性。 発光素子1及び比較発光素子1の発光スペクトル。 発光素子2及び比較発光素子2の電流密度−輝度特性。 発光素子2及び比較発光素子2の電圧−輝度特性。 発光素子2及び比較発光素子2の輝度−電流効率特性。 発光素子2及び比較発光素子2の輝度−パワー効率特性。 発光素子2及び比較発光素子2の輝度−外部量子効率特性。 発光素子2及び比較発光素子2の発光スペクトル。
以下、本発明の実施の態様について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の
説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を
様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す
実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
(実施の形態1)
熱活性化遅延蛍光(TADF)を示す物質を発光物質として用いた発光素子では、以下の
ようなエネルギーの過程を辿って発光が起こる。なお、ここでは、励起エネルギーを与え
る側の分子(エネルギードナー)をホスト分子、TADFを示す物質(エネルギーアクセ
プタ)をゲスト分子と記す。
(1)電子及び正孔(ホール)がゲスト分子において再結合し、ゲスト分子が励起状態
となる場合(直接再結合過程)。
(1−1)ゲスト分子の励起状態が一重項励起状態のとき。:蛍光を発する。
(1−2)ゲスト分子の励起状態が三重項励起状態のとき。:エネルギー(主に熱)を
吸収することにより一重項励起状態へ逆項間交差し、蛍光を発する。
上記(1)の直接再結合過程においては、ゲスト分子の逆項間交差効率、及び蛍光量子
収率が高ければ、高い発光効率が得られる。なお、ホスト分子のS準位及びT準位は
ゲスト分子の一重項励起エネルギーの準位(S準位)及び三重項励起エネルギーの準位
(T準位)よりも高いことが好ましい。また、逆項間交差効率の高いTADFを示す物
質(ゲスト分子)については、上記特許文献や各種発表がなされている。
(2)電子及び正孔(ホール)がホスト分子において再結合し、ホスト分子が励起状態
となる場合(エネルギー移動過程)。
(2−1)ホスト分子の励起状態が一重項励起状態のとき
ホスト分子のS準位が、ゲスト分子のS準位よりも高い場合、ホスト分子から、ゲ
スト分子に励起エネルギーが移動し、ゲスト分子が一重項励起状態となる。一重項励起状
態となったゲスト分子は蛍光を発する。なお、ホスト分子のS準位から、ゲスト分子の
準位へのエネルギー移動は、ゲスト分子における一重項基底状態から三重項励起状態
への直接遷移が禁制であることから、主たるエネルギー移動過程になりにくいため、ここ
では省略する。つまり、下記式(2−1)の通り、ホスト分子の一重項励起状態(
)から、ゲスト分子の一重項励起状態()へのエネルギー移動が重要である(式中
Gはゲスト分子の一重項基底状態、Hはホスト分子の一重項基底状態を表す)。
G → H+ (2−1)
(2−2)ホスト分子の励起状態が三重項励起状態のとき
ホスト分子のT準位がゲスト分子のS準位およびT準位よりも高い場合、ホスト
分子のT準位からゲスト分子のT準位に励起エネルギーが移動し、ゲスト分子が三重
項励起状態となる。三重項励起状態となったゲスト分子は熱エネルギーを吸収することに
よって逆項間交差し、蛍光を発する。
つまり、下記式(2−2)の通り、ホストの三重項励起状態()からゲスト分子
の三重項励起状態()へエネルギー移動し、その後逆項間交差によってゲスト分子
の一重項励起状態()が生成する。
G → H+ →(熱エネルギー)→(逆項間交差)→ H+
(2−2)
上記(2)で述べた全てのエネルギー移動過程が効率よく生じれば、ホスト分子の三重
項励起エネルギー及び一重項励起エネルギーの双方が効率よくゲスト分子の一重項励起状
態()に変換されるため、高効率な発光が可能となる。逆に、ホスト分子からゲス
ト分子に励起エネルギーが移動する前に、ホスト分子自体がその励起エネルギーを光又は
熱として放出して失活してしまうと、発光効率が低下することになる。
次に、上述したホスト分子とゲスト分子との分子間のエネルギー移動過程の支配因子に
ついて説明する。分子間のエネルギー移動の機構としては、フェルスター機構とデクスタ
ー機構の2つの機構が提唱されている。
まず、1つ目の機構であるフェルスター機構(双極子−双極子相互作用)は、エネルギ
ー移動に、分子間の直接的接触を必要とせず、ホスト分子及びゲスト分子間の双極子振動
の共鳴現象を通じてエネルギー移動が起こる機構である。双極子振動の共鳴現象によって
ホスト分子がゲスト分子にエネルギーを受け渡し、ホスト分子が基底状態になり、ゲスト
分子が励起状態になる。なお、フェルスター機構の速度定数kh*→gを数式(1)に示
す。
数式(1)において、νは、振動数を表し、f’(ν)は、ホスト分子の規格化され
た発光スペクトル(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光スペクトル
、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合はりん光スペクトル)を表し、ε
(ν)は、ゲスト分子のモル吸光係数を表し、Nは、アボガドロ数を表し、nは、媒体の
屈折率を表し、Rは、ホスト分子とゲスト分子の分子間距離を表し、τは、実測される励
起状態の寿命(蛍光寿命やりん光寿命)を表し、cは、光速を表し、φは、発光量子収率
(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光量子収率、三重項励起状態か
らのエネルギー移動を論じる場合はりん光量子収率)を表し、Kは、ホスト分子とゲス
ト分子の遷移双極子モーメントの配向を表す係数(0〜4)である。なお、ランダム配向
の場合はK=2/3である。
次に、2つ目の機構であるデクスター機構(電子交換相互作用)では、ホスト分子とゲ
スト分子が軌道の重なりを生じる接触有効距離に近づき、励起状態のホスト分子の電子と
基底状態のゲスト分子の電子の交換を通じてエネルギー移動が起こる。なお、デクスター
機構の速度定数kh*→gを数式(2)に示す。
数式(2)において、hは、プランク定数であり、K’は、エネルギーの次元を持つ定
数であり、νは、振動数を表し、f’(ν)は、ホスト分子の規格化された発光スペク
トル(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光スペクトル、三重項励起
状態からのエネルギー移動を論じる場合はりん光スペクトル)を表し、ε’(ν)は、
ゲスト分子の規格化された吸収スペクトルを表し、Lは、実効分子半径を表し、Rは、ホ
スト分子とゲスト分子の分子間距離を表す。
ここで、ホスト分子からゲスト分子へのエネルギー移動効率ΦETは、数式(3)で表
されると考えられる。kは、ホスト分子の発光過程(一重項励起状態からのエネルギー
移動を論じる場合は蛍光、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合はりん光)
の速度定数を表し、kは、ホスト分子の非発光過程(熱失活や項間交差)の速度定数を
表し、τは、実測されるホスト分子の励起状態の寿命を表す。
数式(3)より、エネルギー移動効率ΦETを高くするためには、エネルギー移動の速
度定数kh*→gを大きくし、他の競合する速度定数k+k(=1/τ)が相対的に
小さくなれば良いことがわかる。
((2−1)のエネルギー移動効率について)
(2−1)のエネルギー移動過程を考える。式(2−1)の過程は、フェルスター機構
(式(1))及びデクスター機構(式(2))の両方の機構によるエネルギー移動が考え
られる。
まず、フェルスター機構によるエネルギー移動を考える。式(1)と式(3)からτを
消去すると、エネルギー移動効率ΦETは、量子収率φ(一重項励起状態からのエネルギ
ー移動を論じているので、蛍光量子収率)が高い方が良いと言える。しかし実際は、さら
に重要なファクターとして、ホスト分子の発光スペクトル(一重項励起状態からのエネル
ギー移動を論じているので蛍光スペクトル)とゲスト分子の吸収スペクトル(一重項基底
状態から一重項励起状態への遷移に相当する吸収)との重なりが大きいことも必要である
(なお、ゲスト分子のモル吸光係数も高い方が好ましい)。このことは、ホスト材料の蛍
光スペクトルと、ゲスト材料であるTADFを示す物質の最も長波長側に現れる吸収帯と
が重なることを意味する。
次に、デクスター機構によるエネルギー移動を考える。式(2)によれば、速度定数k
h*→gを大きくするにはホスト分子の発光スペクトル(一重項励起状態からのエネルギ
ー移動を論じているので蛍光スペクトル)とゲスト分子の吸収スペクトル(一重項基底状
態から一重項励起状態への遷移に相当する吸収)との重なりが大きい方が良いことがわか
る。
以上のことから、(2−1)のエネルギー移動効率の最適化は、ホスト分子の蛍光スペク
トルと、ゲスト材料であるTADFを示す物質の最も長波長側に現れる吸収帯とを重ねる
ことによって実現される。
((2−2)のエネルギー移動効率について)
(2−2)のエネルギー移動過程を考える。式(2−1)の過程はデクスター機構(式
(2))によるエネルギー移動が考えられる。フェルスター機構によるエネルギー移動は
、この場合、禁制であるため説明を省略する。デクスター機構によるエネルギー移動は上
述のように、速度定数kh*→gを大きくするために、ホスト分子の発光スペクトル(三
重項励起状態からのエネルギー移動を論じているのでりん光スペクトル)とゲスト分子の
吸収スペクトル(一重項基底状態から三重項励起状態への直接遷移に相当する吸収)との
重なりが大きい方が良い。なお、本構成の場合ゲスト材料は蛍光性化合物、ホスト材料も
通常は蛍光性化合物であるため、これらのスペクトルは常温では確認されにくい。このよ
うな場合、分子軌道計算などにより想定されるりん光スペクトルや吸収スペクトルを用い
ることができる。また、特にりん光スペクトルに関しては、極低温(液体窒素雰囲気や液
体ヘリウム雰囲気)で観測できることもある。
なお、ホスト分子は通常、蛍光性化合物であるため、りん光寿命(τ)はミリ秒以上と
非常に長い(k+kが小さい)。これは、三重項励起状態から基底状態(一重項)へ
の遷移が禁制遷移のためである。数式(3)から、このことはエネルギー移動効率ΦET
に対して有利に働く。
以上のことを考慮すると、ホスト分子からゲスト分子へのエネルギー移動、すなわち式
(2−1)及び式(2−2)の過程は、ホスト分子の蛍光スペクトルと、ゲスト分子の一
重項基底状態から一重項励起状態への遷移に相当する吸収スペクトルとを重ね、且つ、ホ
スト材料の(想定される)りん光スペクトルと、ゲスト材料の(想定される)一重項基底
状態から三重項励起状態への直接遷移に相当する吸収スペクトルとを重ねさえすれば、総
じて起こりやすい傾向にある。
しかし、熱活性化遅延蛍光を示す物質、特に比較的低温において高い効率で熱活性化遅
延蛍光を示す物質(TADF材料)は、S準位とT準位が近接している。すなわち、
ゲスト分子の一重項基底状態から一重項励起状態への遷移に相当する吸収スペクトルと、
(想定される)一重項基底状態から三重項励起状態への直接遷移に相当する吸収スペクト
ルとが、非常に近接する。そのため、ホスト分子の蛍光スペクトルとりん光スペクトルも
、同じような位置に来るようにホスト分子を設計しなければならない。
ところが、一般に、S準位とT準位は大きく異なる(S準位>T準位)ため、
蛍光の発光波長とりん光の発光波長も大きく異なる(蛍光の発光波長<りん光の発光波長
)。例えば、りん光性化合物を用いた発光素子において、ホスト分子として良く用いられ
る4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)は、500nm付近に
りん光スペクトルを有するが、一方で蛍光スペクトルは400nm付近であり、100n
mもの隔たりがある。この例から考えてみても、ホスト分子の蛍光スペクトルがりん光ス
ペクトルと同じような位置に来るようにホスト分子を設計することは、極めて困難である
従って、本発明の一態様は、熱活性化遅延蛍光を示す物質、特に比較的低温において高
い効率で熱活性化遅延蛍光を示す物質を発光物質として用いた場合の、ホスト分子の三重
項励起状態からのゲスト分子へのエネルギー移動効率に関する問題点を克服できる、有用
な手法を提供するものである。以下に、その具体的な態様を説明する。
本実施の形態では、熱活性化遅延蛍光を示す物質に効率的にエネルギー移動が可能なエネ
ルギードナーとして、励起錯体(エキサイプレックス)を用いた発光素子を提供する。励
起錯体は、2種類の物質から形成され、その一重項励起状態と、三重項励起状態とが近接
しているという特徴を有する。そのため、エネルギーアクセプターである熱活性化遅延蛍
光を示す物質の一重項励起状態の吸収である最も長波長側の吸収帯(一重項基底状態から
一重項励起状態への遷移に相当する吸収)に、励起錯体の蛍光を重ねることによって、励
起錯体の一重項励起状態から熱活性化遅延蛍光を示す物質の一重項励起状態へのエネルギ
ー移動効率を高めると同時に、励起錯体の三重項励起状態からの(想定される)りん光ス
ペクトルと熱活性化遅延蛍光を示す物質の(想定される)一重項基底状態から三重項励起
状態への直接遷移に相当する吸収を重ねることができる。
これによって、励起錯体の一重項励起状態から熱活性化遅延蛍光を示す物質の一重項励起
状態へのエネルギー移動効率を高めると共に、励起錯体の三重項励起状態から熱活性化遅
延蛍光を示す物質の三重項励起状態へのエネルギー移動効率をも高めることが可能となる
また、通常、S準位とT準位の位置は物質ごとに異なっており、蛍光物質をホスト材
料及びゲスト材料として用いた場合、ホスト分子の蛍光スペクトルとゲスト分子の一重項
基底状態から一重項励起状態への遷移に相当する吸収を重ねることができたとしても、必
ずしもホスト分子の(想定される)りん光スペクトルとゲスト分子の(想定される)一重
項基底状態から三重項励起状態へのエネルギー移動に相当する吸収が重なるとは限らない
。しかも、蛍光物質におけるりん光スペクトルと一重項基底状態から三重項励起状態への
エネルギー移動に相当する吸収は観測が難しい又は観測できない場合が多いため、それら
が重なっているのかどうかの確認も困難である。
一方、上述のように、熱活性化遅延蛍光を示す物質と、励起錯体は共にS準位とT
位とが近接しているため、熱活性化遅延蛍光を示す物質の一重項基底状態から一重項励起
状態への遷移に相当する吸収と、励起錯体の蛍光スペクトルを重ね合わせることによって
、おのずと熱活性化遅延蛍光を示す物質の(想定される)一重項基底状態から三重項励起
状態への直接遷移に相当する吸収と、励起錯体の(想定される)りん光スペクトルを重ね
合わせることが可能となる。
以上のような構成を有する発光素子は、図2のように効率よくエネルギー移動が起こる。
図2においては、電極10と電極11との間に発光層113が設けられている様子が記載
されている。各電極と発光層113との間には任意の層が存在していて良い。励起錯体1
13Ecの一重項励起状態Seからは、発光物質113Dの一重項励起状態Saへエネル
ギー移動が起こり、励起錯体の三重項励起状態Teからは発光物質113Dの三重項励起
状態Taへエネルギー移動が起こる。そして、発光物質113Dの三重項励起状態は発光
物質の一重項励起状態に逆項間交差し、発光物質113Dの一重項励起状態Saから発光
が起こる。本実施の形態における発光素子では、これらのエネルギー移動が、各々良好に
行われることによって発光効率の高い発光素子を提供することができる。
図1に、本実施の形態における発光素子の概念図を示した。図1(a)は発光素子の図
、(b)は発光層のみを拡大して示した図である。
発光素子は、第1の電極101及び第2の電極102の一対の電極に挟まれたEL層10
3を有しており、EL層103は有機化合物を発光物質として含む。また、EL層は発光
層113を有しており、発光物質は少なくとも発光層113に含まれる。発光層以外の層
については、限定されないため、その他の層はどのような層を用いていてもよいが、代表
的な積層構造としては、正孔注入層111、正孔輸送層112、発光層113、電子輸送
層114、電子注入層115などがある。このほか、キャリアブロック層などを設けても
良いし、発光層を複数設けても良い。
発光層113には、図1(b)に示したように、第1の有機化合物113H、第2の有機
化合物113A及び発光物質113Dが含まれている。本実施の形態の発光素子は、第1
の有機化合物113Hと第2の有機化合物113Aの二種類の材料でもって、ホスト材料
が構成されるものとする。なお、本実施の形態の発光素子では、発光層113にその他の
物質が含まれていることを排除しない。
第1の有機化合物113H及び第2の有機化合物113Aは励起錯体を形成する組み合わ
せである。励起錯体は、そのS準位とT準位とが近接している状態にあるが、特にS
準位とT準位とのエネルギー差が0eV以上0.2eV以下の励起錯体を形成する組
み合わせが好ましい。
発光物質113Dは、熱活性化遅延蛍光を示す物質であり、好ましくは、比較的低温にお
いて(例えば100℃以下)熱活性化遅延蛍光を効率よく示す物質である。具体的には、
準位とT準位とのエネルギー差が0eV以上0.2eV以下の物質が好ましい。こ
こで、遅延蛍光とは、ある物質において、通常の蛍光と同じスペクトルをもちながら、寿
命が著しく長い発光をいう。その寿命は、10−6秒以上、好ましくは10−3秒以上で
ある。
さらに、この励起錯体と熱活性化遅延蛍光を示す物質は、上述したような関係を有する組
み合わせである。すなわち、当該励起錯体の蛍光スペクトルと、熱活性化遅延蛍光を示す
物質の最も長波長側の吸収帯が重なり合う組み合わせである。このことにより、励起錯体
の一重項励起状態から熱活性化遅延蛍光を示す物質の一重項励起状態へ効率よくエネルギ
ーの移動が行われる。
また、励起錯体及び熱活性化遅延蛍光を示す物質は、双方共にS準位とT準位が近接
していることから、一重項励起状態間のエネルギー移動を上記のように効率化することに
よって、三重項励起状態間のエネルギー移動も効率化することが可能である。
上記、熱活性化遅延蛍光を示す物質としては例えば、フラーレンやその誘導体、プロフラ
ビン等のアクリジン誘導体、エオシン等が挙げられる。
また、熱活性化遅延蛍光を示す物質としては、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カ
ドミウム(Cd)、スズ(Sn)、白金(Pt)、インジウム(In)、もしくはパラジ
ウム(Pd)等を含む金属含有ポルフィリンが挙げられる。該金属含有ポルフィリンとし
ては、例えば、以下の構造式に示されるプロトポルフィリン−フッ化スズ錯体(SnF
(Proto IX))、メソポルフィリン−フッ化スズ錯体(SnF(Meso I
X))、ヘマトポルフィリン−フッ化スズ錯体(SnF(Hemato IX))、コ
プロポルフィリンテトラメチルエステル−フッ化スズ錯体(SnF(Copro II
I−4Me))、オクタエチルポルフィリン−フッ化スズ錯体(SnF(OEP))、
エチオポルフィリン−フッ化スズ錯体(SnF(Etio I))、オクタエチルポル
フィリン−塩化白金錯体(PtClOEP)等も挙げられる。
また、熱活性化遅延蛍光を示す物質としては、以下の構造式に示される2−ビフェニル−
4,6−ビス(12−フェニルインドロ[2,3−a]カルバゾール−11−イル)−1
,3,5−トリアジン(PIC−TRZ)等のπ電子過剰型複素芳香環及びπ電子不足型
複素芳香環を有する複素環化合物も用いることができる。該複素環化合物は、π電子過剰
型複素芳香環及びπ電子不足型複素芳香環を有するため、電子輸送性及び正孔輸送性が高
く、好ましい。なお、π電子過剰型複素芳香環とπ電子不足型複素芳香環とが直接結合し
た物質は、π電子過剰型複素芳香環のドナー性とπ電子不足型複素芳香環のアクセプター
性が共に強くなり、S準位とT準位のエネルギー差が小さくなるため、特に好ましい
第1の有機化合物113H及び第2の有機化合物113Aとしては、励起錯体を形成でき
る組み合わせであればよく、公知のキャリア輸送材料をもちいることができるが、効率よ
く励起錯体を形成するために、第1の有機化合物及び第2の有機化合物としては、電子を
受け取りやすい化合物(電子トラップ性化合物)と、ホールを受け取りやすい化合物(正
孔トラップ性化合物)とを組み合わせることが好ましい。
電子を受け取りやすい化合物としては、π電子不足型複素芳香族や金属錯体などを用いる
ことができる。具体的には、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウ
ム(II)(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニ
ルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8−キノリノラト)
亜鉛(II)(略称:Znq)、ビス[2−(2−ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜
鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2−(2−ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜
鉛(II)(略称:ZnBTZ)などの金属錯体や、2−(4−ビフェニリル)−5−(
4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、3
−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,
2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフ
ェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、
9−[4−(5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)フェニル]−9
H−カルバゾール(略称:CO11)、2,2’,2’’−(1,3,5−ベンゼントリ
イル)トリス(1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、2−[
3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]−1−フェニル−1H−ベンゾイミダ
ゾール(略称:mDBTBIm−II)などのポリアゾール骨格を有する複素環化合物や
、2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサ
リン(略称:2mDBTPDBq−II)、2−[3’−(ジベンゾチオフェン−4−イ
ル)ビフェニル−3−イル]ジベンゾ[f、h]キノキサリン(略称:2mDBTBPD
Bq−II)、2−[3’−(9H−カルバゾール−9−イル)ビフェニル−3−イル]
ジベンゾ[f、h]キノキサリン(略称:2mCzBPDBq)、4,6−ビス[3−(
フェナントレン−9−イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mPnP2Pm)、4
,6−ビス〔3−(4−ジベンゾチエニル)フェニル〕ピリミジン(略称:4,6mDB
TP2Pm−II)などのジアジン骨格を有する複素環化合物や、3,5−ビス[3−(
9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]
ピリジン(略称:35DCzPPy)、1,3,5−トリ[3−(3−ピリジル)フェニ
ル]ベンゼン(略称:TmPyPB)などのピリジン骨格を有する複素環化合物が挙げら
れる。上述した中でも、ジアジン骨格を有する複素環化合物やピリジン骨格を有する複素
環化合物は、信頼性が良好であり好ましい。特に、ジアジン(ピリミジンやピラジン)骨
格を有する複素環化合物は、電子輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与する。
ホールを受け取りやすい化合物としては、π電子過剰型複素芳香族又は芳香族アミンなど
を好適に用いることができる。具体的には、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N
−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル
)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:T
PD)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フ
ェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)、4−フェニル−4’−(9−フェニルフ
ルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4−フェニル−3’
−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:mBPAFLP)
、4−フェニル−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニル
アミン(略称:PCBA1BP)、4,4’−ジフェニル−4’’−(9−フェニル−9
H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)、4−(
1−ナフチル)−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニル
アミン(略称:PCBANB)、4,4’−ジ(1−ナフチル)−4’’−(9−フェニ
ル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)、9,
9−ジメチル−N−フェニル−N−[4−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イ
ル)フェニル]フルオレン−2−アミン(略称:PCBAF)、N−フェニル−N−[4
−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)フェニル]スピロ−9,9’−ビフ
ルオレン−2−アミン(略称:PCBASF)などの芳香族アミン骨格を有する化合物や
、1,3−ビス(N−カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)、4,4’−ジ(N−カ
ルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、3,6−ビス(3,5−ジフェニルフェニル
)−9−フェニルカルバゾール(略称:CzTP)、3,3’−ビス(9−フェニル−9
H−カルバゾール)(略称:PCCP)などのカルバゾール骨格を有する化合物や、4,
4’,4’’−(ベンゼン−1,3,5−トリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)(略称
:DBT3P−II)、2,8−ジフェニル−4−[4−(9−フェニル−9H−フルオ
レン−9−イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP−III)、4−
[4−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル]−6−フェニルジベン
ゾチオフェン(略称:DBTFLP−IV)などのチオフェン骨格を有する化合物や、4
,4’,4’’−(ベンゼン−1,3,5−トリイル)トリ(ジベンゾフラン)(略称:
DBF3P−II)、4−{3−[3−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)
フェニル]フェニル}ジベンゾフラン(略称:mmDBFFLBi−II)などのフラン
骨格を有する化合物が挙げられる。上述した中でも、芳香族アミン骨格を有する化合物や
カルバゾール骨格を有する化合物は、信頼性が良好であり、また、正孔輸送性が高く、駆
動電圧低減にも寄与するため好ましい。
第1の有機化合物及び第2の有機化合物は、これらに限定されることなく、キャリアを輸
送でき、且つ励起錯体を形成できる組み合わせであり、当該励起錯体の発光が、発光物質
の吸収スペクトルにおける最も長波長側の吸収帯(発光物質の一重項基底状態から一重項
励起状態への遷移に相当する吸収)と重なっていればよく、公知の他の材料を用いても良
い。
なお、電子を受け取りやすい化合物とホールを受け取りやすい化合物で第1の有機化合物
及び第2の有機化合物を構成する場合、その混合比によってキャリアバランスを制御する
ことができる。具体的には、第1の有機化合物:第2の有機化合物=1:9〜9:1の範
囲が好ましい。
ここで、励起錯体を形成する各化合物(第1の有機化合物113H及び第2の有機化合物
113A)及び励起錯体について少しくわしく説明する。
図14(A)、(B)に、物質単体の発光スペクトルと、励起錯体の発光スペクトルを示
した。なお、図中、化合物1が2−[4−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]
−1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール(略称:DBTBIm−II)、化合物2が
2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリ
ン(略称:2mDBTPDBq−II)、化合物3が4,4’,4’’−トリス[N−(
1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:1’−TNATA)
、化合物4が2,7−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミ
ノ]−スピロ−9,9’−ビフルオレン(略称:DPA2SF)であり、励起錯体1は化
合物1と化合物3の励起錯体、励起錯体2は化合物2と化合物3の励起錯体、励起錯体3
が化合物2と4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル
(略称:NPB)との励起錯体、励起錯体4が化合物2と化合物4との励起錯体のスペク
トルである。
以下に各化合物の構造式を示す。
図14(A)には、励起錯体1及び励起錯体2の他、化合物1乃至化合物3の発光スペク
トルを示した。励起錯体1で表されるスペクトルには化合物1をベースに、化合物3を少
量添加した材料の発光を測定した結果を、励起錯体2で表されるスペクトルには、化合物
2をベースに化合物3を少量添加した材料の発光を測定した結果をそれぞれ示した。すな
わち、励起錯体1の測定を行った試料においては、化合物1と化合物3のどちらか一方が
第1の有機化合物113Hに相当し、他方が第2の有機化合物113Aに相当する。また
。励起錯体2の測定を行った試料においては、化合物2と化合物3のどちらか一方が第1
の有機化合物113Hに相当し、他方が第2の有機化合物113Aに相当する。
図14(A)からわかるように、少量成分である化合物3が同じであっても、励起錯体1
と励起錯体2の発光は100nm以上の差がある。すなわち、ベースの物質を変更するこ
とによって、励起錯体の発光波長を容易に調整することができる。
なお、励起錯体1の極大発光波長は520nm程度であるため、化合物1と化合物3とを
含むホスト材料は、青緑から橙色の熱活性化遅延蛍光を示す材料のホスト材料として好適
に用いることができる。
また、励起錯体2の極大発光波長は610nm程度であるため、化合物2と化合物3とを
含むホスト材料は、赤色の熱活性化遅延蛍光を示す材料のホスト材料として好適に用いる
ことができる。
図14(B)では、励起錯体3及び励起錯体4のほか、化合物2と化合物4の発光スペク
トルを示した。励起錯体3で表されるスペクトルには、化合物2をベースに、NPBを少
量添加した材料の発光を測定した結果を、励起錯体4で表されるスペクトルには化合物2
をベースに化合物4を少量添加した材料の発光を測定した結果をそれぞれ示した。すなわ
ち、励起錯体3の測定を行った試料においては、化合物2とNPBのどちらか一方が第1
の有機化合物113Hに相当し、他方が第2の有機化合物113Aに相当する。また。励
起錯体4の測定を行った試料においては、化合物2と化合物4のどちらか一方が第1の有
機化合物113Hに相当し、他方が第2の有機化合物113Aに相当する。
図14(B)からわかるように、ベースの材料が同じであっても、励起錯体3と励起錯体
4の発光には100nm近くの差がある。すなわち、少量成分である物質を変更すること
によっても、励起錯体の発光波長を容易に調整することが可能である。
なお、励起錯体3の極大発光波長は520nm程度であるため、化合物2とNPBとを含
むホスト材料は、青緑から橙色の熱活性化遅延蛍光を示す材料のホスト材料として好適に
用いることができる。
また、励起錯体4の極大発光波長は580nm程度であるため、化合物2と化合物4とを
含むホスト材料は、橙色から赤色の熱活性化遅延蛍光を示す材料のホスト材料として好適
に用いることができる。なお、良好なエネルギー移動を実現するためには、熱活性化遅延
蛍光を示す物質の最も低エネルギー側の吸収帯のピーク波長と、励起錯体の発光のピーク
波長とのエネルギー換算値差が0.2eV以下であることが好ましい。
以上のような構成を有する発光素子は、熱活性化遅延蛍光を示す物質へのエネルギー移動
効率が高く、発光効率の良好な発光素子である。
(実施の形態2)
本実施の形態では実施の形態1で説明した発光素子の詳細な構造の例について図1を用
いて以下に説明する。
本実施の形態における発光素子は、一対の電極間に複数の層からなるEL層を有する。
本実施の形態において、発光素子は、第1の電極101と、第2の電極102と、第1の
電極101と第2の電極102との間に設けられたEL層103とから構成されている。
なお、本形態では第1の電極101は陽極として機能し、第2の電極102は陰極として
機能するものとして、以下説明をする。つまり、第1の電極101の方が第2の電極10
2よりも電位が高くなるように、第1の電極101と第2の電極102に電圧を印加した
ときに、発光が得られる構成となっている。
第1の電極101は陽極として機能するため、仕事関数の大きい(具体的には4.0e
V以上)金属、合金、導電性化合物、およびこれらの混合物などを用いて形成することが
好ましい。具体的には、例えば、酸化インジウム−酸化スズ(ITO:Indium T
in Oxide)、ケイ素若しくは酸化ケイ素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、
酸化インジウム−酸化亜鉛、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(
IWZO)等が挙げられる。これらの導電性金属酸化物膜は、通常スパッタリング法によ
り成膜されるが、ゾル−ゲル法などを応用して作製しても構わない。作製方法の例として
は、酸化インジウム−酸化亜鉛は、酸化インジウムに対し1〜20wt%の酸化亜鉛を加
えたターゲットを用いてスパッタリング法により形成する方法などがある。また、酸化タ
ングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)は、酸化インジウムに対
し酸化タングステンを0.5〜5wt%、酸化亜鉛を0.1〜1wt%含有したターゲッ
トを用いてスパッタリング法により形成することもできる。この他、金(Au)、白金(
Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)
、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、または金属材料の
窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げられる。グラフェンも用いることができる。なお
、後述する複合材料をEL層103における第1の電極101と接する層に用いることで
、仕事関数に関わらず、電極材料を選択することができるようになる。
EL層103の積層構造については、発光層113が実施の形態1に示したような構成
となっていれば他は特に限定されない。例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子
輸送層、電子注入層、キャリアブロック層、中間層等を適宜組み合わせて構成することが
できる。本実施の形態では、EL層103は、第1の電極101の上に順に積層した正孔
注入層111、正孔輸送層112、発光層113、電子輸送層114、電子注入層115
を有する構成について説明する。各層を構成する材料について以下に具体的に示す。
正孔注入層111は、正孔注入性の高い物質を含む層である。モリブデン酸化物やバナ
ジウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等を用いること
ができる。この他、フタロシアニン(略称:HPc)や銅フタロシアニン(略称:Cu
Pc)等のフタロシアニン系の化合物、4,4’−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフ
ェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、N,N’−ビス{4−
[ビス(3−メチルフェニル)アミノ]フェニル}−N,N’−ジフェニル−(1,1’
−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(略称:DNTPD)等の芳香族アミン化合物、或
いはポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(略称:PED
OT/PSS)等の高分子等によっても正孔注入層111を形成することができる。
また、正孔注入層111として、正孔輸送性の物質にアクセプター性物質を含有させた
複合材料を用いることができる。なお、正孔輸送性の物質にアクセプター性物質を含有さ
せたものを用いることにより、電極の仕事関数に依らず電極を形成する材料を選ぶことが
できる。つまり、第1の電極101として仕事関数の大きい材料だけでなく、仕事関数の
小さい材料も用いることができるようになる。アクセプター性物質としては、7,7,8
,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F−TC
NQ)、クロラニル等を挙げることができる。また、遷移金属酸化物を挙げることができ
る。また元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができ
る。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブ
デン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい
。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため
好ましい。
複合材料に用いる正孔輸送性の物質としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導
体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種
々の有機化合物を用いることができる。なお、複合材料に用いる有機化合物としては、正
孔輸送性の高い有機化合物であることが好ましい。具体的には、10−6cm/Vs以
上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。以下では、複合材料における正孔輸
送性の物質として用いることのできる有機化合物を具体的に列挙する。
例えば、芳香族アミン化合物としては、N,N’−ジ(p−トリル)−N,N’−ジフ
ェニル−p−フェニレンジアミン(略称:DTDPPA)、4,4’−ビス[N−(4−
ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、N
,N’−ビス{4−[ビス(3−メチルフェニル)アミノ]フェニル}−N,N’−ジフ
ェニル−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(略称:DNTPD)、1,3
,5−トリス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ベンゼン
(略称:DPA3B)等を挙げることができる。
複合材料に用いることのできるカルバゾール誘導体としては、具体的には、3−[N−
(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバ
ゾール(略称:PCzPCA1)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3
−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)
、3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]
−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等を挙げることができる。
また、複合材料に用いることのできるカルバゾール誘導体としては、他に、4,4’−
ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5−トリス[4−(N−
カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9−[4−(10−フェニル−
9−アントラセニル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)、1,4−ビ
ス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]−2,3,5,6−テトラフェニルベンゼン等
を用いることができる。
また、複合材料に用いることのできる芳香族炭化水素としては、例えば、2−tert
−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、2−
tert−ブチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、9,10−ビス(3,
5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2−tert−ブチル−9
,10−ビス(4−フェニルフェニル)アントラセン(略称:t−BuDBA)、9,1
0−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10−ジフェニルアントラ
セン(略称:DPAnth)、2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuAn
th)、9,10−ビス(4−メチル−1−ナフチル)アントラセン(略称:DMNA)
、2−tert−ブチル−9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]アントラセ
ン、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7−
テトラメチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、2,3,6,7−テトラメ
チル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン、9,9’−ビアントリル、10,1
0’−ジフェニル−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス(2−フェニルフェニ
ル)−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス[(2,3,4,5,6−ペンタフ
ェニル)フェニル]−9,9’−ビアントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、
ペリレン、2,5,8,11−テトラ(tert−ブチル)ペリレン等が挙げられる。ま
た、この他、ペンタセン、コロネン等も用いることができる。このように、1×10−6
cm/Vs以上の正孔移動度を有し、炭素数14〜42である芳香族炭化水素を用いる
ことがより好ましい。
なお、複合材料に用いることのできる芳香族炭化水素は、ビニル骨格を有していてもよ
い。ビニル基を有している芳香族炭化水素としては、例えば、4,4’−ビス(2,2−
ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10−ビス[4−(2,2−
ジフェニルビニル)フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)等が挙げられる。
また、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)やポリ(4−ビニルトリフェ
ニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N−(4−{N’−[4−(4−ジフェニル
アミノ)フェニル]フェニル−N’−フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](
略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス
(フェニル)ベンジジン](略称:Poly−TPD)等の高分子化合物を用いることも
できる。
正孔注入層を形成することによって、正孔の注入性が良好となり、駆動電圧の小さい発
光素子を得ることが可能となる。
正孔輸送層112は、正孔輸送性の物質を含む層である。正孔輸送性の物質としては、
例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略
称:NPB)やN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,
1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4,4’,4’’−トリス
(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4
’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン
(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2
−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)、4−フェニル−4’−
(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)など
の芳香族アミン化合物等を用いることができる。ここに述べた物質は、正孔輸送性が高く
、主に10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。また、上述の複合材
料における正孔輸送性の物質として挙げた有機化合物も正孔輸送層112に用いることが
できる。また、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)やポリ(4−ビニルト
リフェニルアミン)(略称:PVTPA)等の高分子化合物を用いることもできる。なお
、正孔輸送性の物質を含む層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上
積層したものとしてもよい。
発光層113は、発光物質、第1の有機化合物及び第2の有機化合物を含む層である。
発光層113は、実施の形態1で説明した構成を有していることから、本実施の形態にお
ける発光素子は非常に発光効率の良好な発光素子とすることができる。発光層113の構
成については実施の形態1の記載を参照されたい。
以上のような構成を有する発光層113は、真空蒸着法での共蒸着や、混合溶液として
インクジェット法やスピンコート法やディップコート法などを用いて成膜することで作製
することができる。
電子輸送層114は、電子輸送性の物質を含む層である。例えば、トリス(8−キノリ
ノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アル
ミニウム(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリ
リウム(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフ
ェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨
格を有する金属錯体等からなる層である。また、この他ビス[2−(2−ヒドロキシフェ
ニル)ベンズオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))、ビス[2−(2−ヒドロ
キシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ))などのオキサゾール
系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属錯体
以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3
,4−オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチ
ルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7
)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)
−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhe
n)、バソキュプロイン(略称:BCP)なども用いることができる。ここに述べた物質
は、電子輸送性が高く、主に10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である
。なお、上述した電子輸送性のホスト材料を電子輸送層114に用いても良い。
また、電子輸送層114は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積
層したものとしてもよい。
また、電子輸送層と発光層との間に電子キャリアの移動を制御する層を設けても良い。
これは上述したような電子輸送性の高い材料に、電子トラップ性の高い物質を少量添加し
た層であって、電子キャリアの移動を抑制することによって、キャリアバランスを調節す
ることが可能となる。このような構成は、発光層を電子が突き抜けてしまうことにより発
生する問題(例えば素子寿命の低下)の抑制に大きな効果を発揮する。
また、第2の電極102に接して電子注入層115を設けてもよい。電子注入層115
としては、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(
CaF)等のようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属又はそれらの化合物を用いるこ
とができる。例えば、電子輸送性を有する物質からなる層中にアルカリ金属又はアルカリ
土類金属又はそれらの化合物を含有させたものを用いることができる。なお、電子注入層
115として、電子輸送性を有する物質からなる層中にアルカリ金属又はアルカリ土類金
属を含有させたものを用いることにより、第2の電極102からの電子注入が効率良く行
われるためより好ましい。
第2の電極102を形成する物質としては、仕事関数の小さい(具体的には3.8eV
以下)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる
。このような陰極材料の具体例としては、リチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアル
カリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)
等の元素周期表の第1族または第2族に属する元素、およびこれらを含む合金(MgAg
、AlLi)、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこ
れらを含む合金等が挙げられる。しかしながら、第2の電極102と電子輸送層との間に
、電子注入層を設けることにより、仕事関数の大小に関わらず、Al、Ag、ITO、ケ
イ素若しくは酸化ケイ素を含有した酸化インジウム−酸化スズ等様々な導電性材料を第2
の電極102として用いることができる。これら導電性材料は、スパッタリング法やイン
クジェット法、スピンコート法等を用いて成膜することが可能である。
また、EL層103の形成方法としては、乾式法、湿式法を問わず、種々の方法を用い
ることができる。例えば、真空蒸着法、インクジェット法またはスピンコート法など用い
ても構わない。また各電極または各層ごとに異なる成膜方法を用いて形成しても構わない
電極についても、ゾル−ゲル法を用いて湿式法で形成しても良いし、金属材料のペース
トを用いて湿式法で形成してもよい。また、スパッタリング法や真空蒸着法などの乾式法
を用いて形成しても良い。
以上のような構成を有する発光素子は、第1の電極101と第2の電極102との間に
与えられた電位差により電流が流れ、発光物質を含む層である発光層113において正孔
と電子とが再結合し、発光するものである。つまり発光層113に発光領域が形成される
ような構成となっている。
発光は、第1の電極101または第2の電極102のいずれか一方または両方を通って
外部に取り出される。従って、第1の電極101または第2の電極102のいずれか一方
または両方は、透光性を有する電極で成る。第1の電極101のみが透光性を有する電極
である場合、発光は第1の電極101を通って取り出される。また、第2の電極102の
みが透光性を有する電極である場合、発光は第2の電極102を通って取り出される。第
1の電極101および第2の電極102がいずれも透光性を有する電極である場合、発光
は第1の電極101および第2の電極102を通って、両方から取り出される。
なお、第1の電極101と第2の電極102との間に設けられる層の構成は、上記のも
のには限定されない。しかし、発光領域と電極やキャリア注入層に用いられる金属とが近
接することによって生じる消光が抑制されるように、第1の電極101および第2の電極
102から離れた部位に正孔と電子とが再結合する発光領域を設けた構成が好ましい。
また、発光層113に接する正孔輸送層や電子輸送層、特に発光層113における発光
領域に近い方に接するキャリア輸送層は、発光層で生成した励起子からのエネルギー移動
を抑制するため、そのバンドギャップが発光層を構成する発光物質もしくは、発光層に含
まれる発光中心物質が有するバンドギャップより大きいバンドギャップを有する物質で構
成することが好ましい。
本実施の形態における発光素子は、ガラス、プラスチック、金属などからなる基板に設
けられる。なお、発光素子からの光が透過する基板は、可視光領域に高い透光性を有して
いるものを用いる。基板上に作製する順番としては、第1の電極101側から順に積層し
ても、第2の電極102側から順に積層しても良い。発光装置は一基板上に一つの発光素
子を形成したものでも良いが、複数の発光素子を形成しても良い。一基板上にこのような
発光素子を複数作製することで、素子分割された照明装置やパッシブマトリクス型の発光
装置を作製することができる。また、ガラス、プラスチックなどからなる基板上に、例え
ば薄膜トランジスタ(TFT)を形成し、TFTと電気的に接続された電極上に発光素子
を作製してもよい。これにより、TFTによって発光素子の駆動を制御するアクティブマ
トリクス型の発光装置を作製できる。なお、TFTの構造は、特に限定されない。スタガ
型のTFTでもよいし逆スタガ型のTFTでもよい。また、TFTに用いる半導体の結晶
性についても特に限定されず、非晶質半導体を用いてもよいし、結晶性半導体を用いても
よい。また、TFT基板に形成される駆動用回路についても、N型およびP型のTFTか
らなるものでもよいし、若しくはN型のTFTまたはP型のTFTのいずれか一方からの
みなるものであってもよい。
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることが可能である。
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子を用いた発光装置
について説明する。
本実施の形態では、実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子を用いて作製され
た発光装置について図3を用いて説明する。なお、図3(A)は、発光装置を示す上面図
、図3(B)は図3(A)をA−BおよびC−Dで切断した断面図である。この発光装置
は、発光素子618の発光を制御するものとして、点線で示された駆動回路部(ソース線
駆動回路)601、画素部602、駆動回路部(ゲート線駆動回路)603を含んでいる
。また、604は封止基板、625は乾燥材、605はシール材であり、シール材605
で囲まれた内側は、空間607になっている。
なお、引き回し配線608はソース線駆動回路601及びゲート線駆動回路603に入
力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプ
リントサーキット)609からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号
等を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント
配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光
装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むものと
する。
素子基板610上には駆動回路部及び画素部が形成されているが、図3(B)では、駆
動回路部であるソース線駆動回路601と、画素部602中の一つの画素が示されている
なお、ソース線駆動回路601はnチャネル型TFT623とpチャネル型TFT62
4とを組み合わせたCMOS回路が形成される。また、駆動回路は、種々のCMOS回路
、PMOS回路もしくはNMOS回路で形成しても良い。また、本実施の形態では、基板
上に駆動回路を形成したドライバ一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、駆動回路を
基板上ではなく外部に形成することもできる。
また、画素部602はスイッチング用TFT611と、電流制御用TFT612とその
ドレインに電気的に接続された第1の電極613とを含む複数の画素により形成される。
なお、第1の電極613の端部を覆って絶縁物614が形成されている。ここでは、ポジ
型の感光性アクリル樹脂膜を用いることにより形成する。
また、被覆性を良好なものとするため、絶縁物614の上端部または下端部に曲率を有
する曲面が形成されるようにする。例えば、絶縁物614の材料としてポジ型の感光性ア
クリルを用いた場合、絶縁物614の上端部のみに曲率半径(0.2μm〜3μm)を有
する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁物614として、ネガ型の感光性樹脂、
或いはポジ型の感光性樹脂のいずれも使用することができる。
第1の電極613上には、EL層616、および第2の電極617がそれぞれ形成され
ている。ここで、陽極として機能する第1の電極613に用いる材料としては、仕事関数
の大きい材料を用いることが望ましい。例えば、ITO膜、またはケイ素を含有したイン
ジウム錫酸化物膜、2〜20wt%の酸化亜鉛を含む酸化インジウム膜、窒化チタン膜、
クロム膜、タングステン膜、Zn膜、Pt膜などの単層膜の他、窒化チタンとアルミニウ
ムを主成分とする膜との積層、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜と窒化チタ
ン膜との3層構造等を用いることができる。なお、積層構造とすると、配線としての抵抗
も低く、良好なオーミックコンタクトがとれ、さらに陽極として機能させることができる
また、EL層616は、蒸着マスクを用いた蒸着法、インクジェット法、スピンコート
法等の種々の方法によって形成される。EL層616は、実施の形態1又は実施の形態2
で説明した構成を含んでいる。また、EL層616を構成する他の材料としては、低分子
化合物、または高分子化合物(オリゴマー、デンドリマーを含む)であっても良い。
さらに、EL層616上に形成され、陰極として機能する第2の電極617に用いる材
料としては、仕事関数の小さい材料(Al、Mg、Li、Ca、またはこれらの合金や化
合物、MgAg、MgIn、AlLi、等)を用いることが好ましい。なお、EL層61
6で生じた光が第2の電極617を透過させる場合には、第2の電極617として、膜厚
を薄くした金属薄膜と、透明導電膜(ITO、2〜20wt%の酸化亜鉛を含む酸化イン
ジウム、ケイ素を含有したインジウム錫酸化物、酸化亜鉛(ZnO)等)との積層を用い
るのが良い。
なお、第1の電極613、EL層616、第2の電極617により、発光素子618が
形成されている。当該発光素子は実施の形態2の構成を有する発光素子である。なお、画
素部602は複数の発光素子が形成されてなっているが、本実施の形態における発光装置
では、実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子と、それ以外の構成を有する発光
素子の両方が含まれていても良い。
さらにシール材605で封止基板604を素子基板610と貼り合わせることにより、
素子基板610、封止基板604、およびシール材605で囲まれた空間607に発光素
子618が備えられた構造になっている。なお、空間607には、充填材が充填されてお
り、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材605で充填され
る場合もある。封止基板には凹部を形成し、そこに乾燥材625を設けると水分の影響に
よる劣化を抑制することができ、好ましい構成である。
なお、シール材605にはエポキシ系樹脂やガラスフリットを用いるのが好ましい。ま
た、これらの材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また
、封止基板604に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiberg
lass−Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド
)、ポリエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
以上のようにして、実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子を用いて作製され
た発光装置を得ることができる。
本実施の形態における発光装置は、実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子を
用いているため、良好な特性を備えた発光装置を得ることができる。具体的には、実施の
形態1又は実施の形態2で示した発光素子は発光効率の良好な発光素子であり、消費電力
の低減された発光装置とすることができる。また、当該発光素子は駆動電圧の小さい発光
素子であり、駆動電圧の小さい発光装置を得ることができる。
以上のように、本実施の形態では、アクティブマトリクス型の発光装置について説明し
たが、この他、パッシブマトリクス型の発光装置であってもよい。図4には本発明を適用
して作製したパッシブマトリクス型の発光装置を示す。なお、図4(A)は、発光装置を
示す斜視図、図4(B)は図4(A)をX−Yで切断した断面図である。図4において、
基板951上には、電極952と電極956との間にはEL層955が設けられている。
電極952の端部は絶縁層953で覆われている。そして、絶縁層953上には隔壁層9
54が設けられている。隔壁層954の側壁は、基板面に近くなるに伴って、一方の側壁
と他方の側壁との間隔が狭くなっていくような傾斜を有する。つまり、隔壁層954の短
辺方向の断面は台形状であり、その底辺(絶縁層953と接する辺)の方が上辺(絶縁層
953と接しない辺)よりも短い。このように、隔壁層954を設けることで、クロスト
ーク等に起因した発光素子の不良を防ぐことが出来る。また、パッシブマトリクス型の発
光装置においても、低駆動電圧で動作する実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素
子を有することによって、低消費電力で駆動させることができる。また、実施の形態1又
は実施の形態2に記載の発光素子を含むことによって、低消費電力で駆動させることがで
きる。
また、フルカラー表示とするためには、発光素子からの光が発光装置の外部に出る為の
光路上に着色層もしくは色変換層を設ければ良い。着色層等を設けることによってフルカ
ラー化した発光装置の例を図5(A)及び(B)に示す。図5(A)には基板1001、
下地絶縁膜1002、ゲート絶縁膜1003、ゲート電極1006、1007、1008
、第1の層間絶縁膜1020、第2の層間絶縁膜1021、周辺部1042、画素部10
40、駆動回路部1041、発光素子の第1の電極1024W、1024R、1024G
、1024B、隔壁1025、EL層1028、発光素子の第2の電極1029、封止基
板1031、シール材1032などが図示されている。また、着色層(赤色の着色層10
34R、緑色の着色層1034G、青色の着色層1034B)は透明な基材1033に設
ける。また、黒色層(ブラックマトリックス)1035をさらに設けても良い。着色層及
び黒色層が設けられた透明な基材1033は、基板1001に固定される。なお、着色層
、及び黒色層は、オーバーコート層1036で覆われている。また、本実施の形態におい
ては、光が着色層を透過せずに外部へと出る発光層と、各色の着色層を透過して外部に光
が出る発光層とがあり、着色層を透過しない光は白、着色層を透過する光は赤、青、緑と
なることから、4色の画素で映像をフルカラーで表現することができる。
また、以上に説明した発光装置では、TFTが形成されている基板1001側に光を取
り出す構造(ボトムエミッション型)の発光装置としたが、封止基板1031側に発光を
取り出す構造(トップエミッション型)の発光装置としても良い。トップエミッション型
の発光装置の断面図を図6に示す。この場合、基板1001は光を通さない基板を用いる
ことができる。図5(A)で示された構造と異なり、第3の層間絶縁膜1037を電極1
022を覆って形成する。この絶縁膜は平坦化の役割を担っていても良い。
発光素子の第1の電極1024W、1024R、1024G、1024Bはここでは陽
極とするが、陰極であっても構わない。第1の電極は反射電極である。EL層1028を
実施の形態1又は実施の形態2で説明した構成とすることで、白色の発光が得られる。
着色層は、発光素子からの光が外部へ到達する光路上に設ける。図5(A)のようなボ
トムエミッション型の発光装置の場合、透明な基材1033に着色層1034R、103
4G、1034Bを設けて基板1001に固定することによって設けることができる。ま
た、図5(B)のように着色層をゲート絶縁膜1003と第1の層間絶縁膜1020との
間に設ける構成としても良い。図6のようなトップエミッションの構造であれば着色層(
赤色の着色層1034R、緑色の着色層1034G、青色の着色層1034B)を設けた
封止基板1031で封止を行うこともできる。封止基板1031には画素と画素との間に
位置するように黒色層1036を設けても良い。着色層(赤色の着色層1034R、緑色
の着色層1034G、青色の着色層1034B)や黒色層1036はオーバーコート層に
よって覆われていても良い。なお封止基板1031は透光性を有する基板を用いる。
こうして得られた有機発光素子の一対の電極間に電圧を印加すると白色の発光領域10
44Wが得られる。また、着色層と組み合わせることで、赤色の発光領域1044Rと、
青色の発光領域1044Bと、緑色の発光領域1044Gとが得られる。本実施の形態の
発光装置は実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子を用いていることから、消費
電力の小さい発光装置の実現が可能である。
また、ここでは赤、緑、青、白の4色でフルカラー表示を行う例を示したが特に限定さ
れず、赤、緑、青の3色でフルカラー表示を行ってもよい。
また、本実施の形態は他の実施の形態と自由に組み合わせることができる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子を照明装置として
用いる例を図7を参照しながら説明する。図7(B)は照明装置の上面図、図7(A)は
図7(B)におけるe−f断面図である。
本実施の形態における照明装置は、支持体である透光性を有する基板400上に、第1
の電極401が形成されている。第1の電極401は実施の形態1又は実施の形態2にお
ける第1の電極101に相当する。
第1の電極401上には補助電極402が設けられている。本実施の形態では、第1の
電極401側から発光を取り出す例を示したため、第1の電極401は透光性を有する材
料により形成する。補助電極402は透光性を有する材料の導電率の低さを補うために設
けられており、第1の電極401の抵抗が高いことによる電圧降下を起因とする発光面内
の輝度むらを抑制する機能を有する。補助電極402は少なくとも第1の電極401の材
料よりも導電率の大きい材料を用いて形成し、好ましくはアルミニウムなどの導電率の大
きい材料を用いて形成すると良い。なお、補助電極402における第1の電極401と接
する部分以外の表面は絶縁層で覆われていることが好ましい。これは、取り出すことがで
きない補助電極402上部からの発光を抑制するためであり、無効電流を低減し、電力効
率の低下を抑制するためである。なお、補助電極402の形成と同時に第2の電極404
に電圧を供給するためのパッド412を形成しても良い。
第1の電極401と補助電極402上にはEL層403が形成されている。EL層40
3は実施の形態1又は実施の形態2に説明した構成を有する。なお、これら構成について
は当該記載を参照されたい。なお、EL層403は第1の電極401よりも平面的に見て
少し大きく形成することが、第1の電極401と第2の電極404とのショートを抑制す
る絶縁層の役割も担えるため好ましい構成である。
EL層403を覆って第2の電極404を形成する。第2の電極404は実施の形態1
又は実施の形態2における第2の電極102に相当し、同様の構成を有する。本実施の形
態においては、発光は第1の電極401側から取り出されるため、第2の電極404は反
射率の高い材料によって形成されることが好ましい。本実施の形態において、第2の電極
404はパッド412と接続することによって、電圧が供給されるものとする。
以上、第1の電極401、EL層403、及び第2の電極404(及び補助電極402
)を有する発光素子を本実施の形態で示す照明装置は有している。当該発光素子は発光効
率の高い発光素子であるため、本実施の形態における照明装置は消費電力の小さい照明装
置とすることができる。また、当該発光素子は信頼性の高い発光素子であることから、本
実施の形態における照明装置は信頼性の高い照明装置とすることができる。
以上の構成を有する発光素子を、シール材405、406を用いて封止基板407を固
着し、封止することによって照明装置が完成する。シール材405、406はどちらか一
方でもかまわない。また、内側のシール材406には乾燥剤を混ぜることもでき、これに
より、水分を吸着することができ、信頼性の向上につながる。
また、パッド412、第1の電極401及び補助電極402の一部をシール材405、
406の外に伸張して設けることによって、外部入力端子とすることができる。また、そ
の上にコンバータなどを搭載したICチップ420などを設けても良い。
以上、本実施の形態に記載の照明装置は、EL素子に実施の形態1又は実施の形態2に
記載の発光素子を有することから、消費電力の小さい照明装置とすることができる。また
、駆動電圧の低い照明装置とすることができる。また、信頼性の高い照明装置とすること
ができる。
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子をその一部に含む
電子機器の例について説明する。実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子は発光
効率が良好であり、消費電力が低減された発光素子である。その結果、本実施の形態に記
載の電子機器は、消費電力が低減された発光部を有する電子機器とすることが可能である
。また、実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子は、駆動電圧の小さい発光素子
であるため、駆動電圧の小さい電子機器とすることが可能である。
上記発光素子を適用した電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテ
レビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタル
ビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう
)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機など
が挙げられる。これらの電子機器の具体例を以下に示す。
図8(A)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置は、筐体710
1に表示部7103が組み込まれている。また、ここでは、スタンド7105により筐体
7101を支持した構成を示している。表示部7103により、映像を表示することが可
能であり、表示部7103は、実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子をマトリ
クス状に配列して構成されている。当該発光素子は、発光効率の良好な発光素子とするこ
とが可能である。また、駆動電圧の小さい発光素子とすることが可能である。また、寿命
の長い発光素子とすることが可能である。そのため、当該発光素子で構成される表示部7
103を有するテレビジョン装置は消費電力の低減されたテレビジョン装置とすることが
できる。また、駆動電圧の小さいテレビジョン装置とすることが可能である。また、信頼
性の高いテレビジョン装置とすることができる。
テレビジョン装置の操作は、筐体7101が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作
機7110により行うことができる。リモコン操作機7110が備える操作キー7109
により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部7103に表示される映像を
操作することができる。また、リモコン操作機7110に、当該リモコン操作機7110
から出力する情報を表示する表示部7107を設ける構成としてもよい。
なお、テレビジョン装置は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般
のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信
ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者
と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
図8(B1)はコンピュータであり、本体7201、筐体7202、表示部7203、キ
ーボード7204、外部接続ポート7205、ポインティングデバイス7206等を含む
。なお、このコンピュータは、実施の形態1又は実施の形態2で説明した発光素子をマト
リクス状に配列して表示部7203に用いることにより作製される。図8(B1)のコン
ピュータは、図8(B2)のような形態であっても良い。図8(B2)のコンピュータは
、キーボード7204、ポインティングデバイス7206の代わりに第2の表示部721
0が設けられている。第2の表示部7210はタッチパネル式となっており、第2の表示
部7210に表示された入力用の表示を指や専用のペンで操作することによって入力を行
うことができる。また、第2の表示部7210は入力用表示だけでなく、その他の画像を
表示することも可能である。また表示部7203もタッチパネルであっても良い。二つの
画面がヒンジで接続されていることによって、収納や運搬をする際に画面を傷つける、破
損するなどのトラブルの発生も防止することができる。当該発光素子は発光効率の良好な
発光素子とすることが可能である。そのため、当該発光素子で構成される表示部7203
を有するコンピュータは消費電力の低減されたコンピュータとすることができる。
図8(C)は携帯型遊技機であり、筐体7301と筐体7302の2つの筐体で構成され
ており、連結部7303により、開閉可能に連結されている。筐体7301には、実施の
形態1又は実施の形態2で説明した発光素子をマトリクス状に配列して作製された表示部
7304が組み込まれ、筐体7302には表示部7305が組み込まれている。また、図
8(C)に示す携帯型遊技機は、その他、スピーカ部7306、記録媒体挿入部7307
、LEDランプ7308、入力手段(操作キー7309、接続端子7310、センサ73
11(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化
学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動
、におい又は赤外線を測定あるは検知する機能を含むもの)、マイクロフォン7312)
等を備えている。もちろん、携帯型遊技機の構成は上述のものに限定されず、表示部73
04および表示部7305の両方、または一方に実施の形態1又は実施の形態2に記載の
発光素子をマトリクス状に配列して作製された表示部を用いていればよく、その他付属設
備が適宜設けられた構成とすることができる。図8(C)に示す携帯型遊技機は、記録媒
体に記録されているプログラム又はデータを読み出して表示部に表示する機能や、他の携
帯型遊技機と無線通信を行って情報を共有する機能を有する。なお、図8(C)に示す携
帯型遊技機が有する機能はこれに限定されず、様々な機能を有することができる。上述の
ような表示部7304を有する携帯型遊技機は、表示部7304に用いられている発光素
子が、良好な発光効率を有することから、消費電力の低減された携帯型遊技機とすること
ができる。また、表示部7304に用いられている発光素子が低い駆動電圧で駆動させる
ことができることから、駆動電圧の小さい携帯型遊技機とすることができる。また、表示
部7304に用いられている発光素子が寿命の長い発光素子であることから、信頼性の高
い携帯型遊技機とすることができる。
図8(D)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機は、筐体7401に組み込ま
れた表示部7402の他、操作ボタン7403、外部接続ポート7404、スピーカ74
05、マイク7406などを備えている。なお、携帯電話機は、実施の形態1又は実施の
形態2に記載の発光素子をマトリクス状に配列して作製された表示部7402を有してい
る。当該発光素子は発光効率の良好な発光素子とすることが可能である。また、駆動電圧
の小さい発光素子とすることが可能である。また、寿命の長い発光素子とすることが可能
である。そのため、当該発光素子で構成される表示部7402を有する携帯電話機は消費
電力の低減された携帯電話機とすることができる。また、駆動電圧の小さい携帯電話機と
することが可能である。また、信頼性の高い携帯電話機とすることが可能である。
図8(D)に示す携帯電話機は、表示部7402を指などで触れることで、情報を入力す
ることができる構成とすることもできる。この場合、電話を掛ける、或いはメールを作成
するなどの操作は、表示部7402を指などで触れることにより行うことができる。
表示部7402の画面は主として3つのモードがある。第1は、画像の表示を主とする表
示モードであり、第2は、文字等の情報の入力を主とする入力モードである。第3は表示
モードと入力モードの2つのモードが混合した表示+入力モードである。
例えば、電話を掛ける、或いはメールを作成する場合は、表示部7402を文字入力モー
ドとし、画面に文字を入力すればよい。この場合、表示部7402の画面にキーボードま
たは番号ボタンを表示させることが好ましい。
また、携帯電話機内部に、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検知するセンサを有する検
知装置を設けることで、携帯電話機の向き(縦か横か)を判断して、表示方向を自動的に
切り替えるようにすることができる。
また、画面モードの切り替えは、表示部7402を触れること、又は操作ボタン7403
の操作により行われる。また、表示部7402に表示される画像の種類によって切り替え
るようにすることもできる。例えば、表示部に表示する画像信号が動画のデータであれば
表示モード、テキストデータであれば入力モードに切り替える。
また、入力モードにおいて、表示部7402のタッチ操作による入力が一定期間ない場合
には、画面のモードを入力モードから表示モードに切り替えるように制御してもよい。な
お、タッチ操作は表示部7402の光センサで検知しても良い。
表示部7402は、イメージセンサとして機能させることもできる。例えば、表示部74
02に掌や指で触れ、掌紋、指紋等を撮像することで、本人認証を行うことができる。ま
た、表示部に近赤外光を発光するバックライトまたは近赤外光を発光するセンシング用光
源を用いれば、指静脈、掌静脈などを撮像することもできる。
なお、本実施の形態に示す構成は、実施の形態1乃至実施の形態4に示した構成を適宜組
み合わせて用いることができる。
以上の様に実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子を備えた発光装置の適用範
囲は極めて広く、この発光装置をあらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。
実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子を用いることにより、消費電力の低減さ
れた電子機器を得ることができる。
図9は、実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子をバックライトに適用した液
晶表示装置の一例である。図9に示した液晶表示装置は、筐体901、液晶層902、バ
ックライトユニット903、筐体904を有し、液晶層902は、ドライバIC905と
接続されている。また、バックライトユニット903には、端子906により、電流が供
給されている。
実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子を液晶表示装置のバックライトに適用
したことにより、消費電力の低減されたバックライトが得られる。また、該発光素子を用
いることで、面発光の照明装置が作製でき、また大面積化も可能である。これにより、バ
ックライトの大面積化が可能であり、液晶表示装置の大面積化も可能になる。さらに、該
発光装置は従来と比較し厚みを小さくできるため、表示装置の薄型化も可能となる。
図10は、実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子を、照明装置である電気ス
タンドに用いた例である。図10に示す電気スタンドは、筐体2001と、光源2002
を有し、光源2002として、実施の形態4に記載の発光装置が用いられている。
図11は、実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子を、室内の照明装置300
1および表示装置3002として用いた例である。実施の形態1又は実施の形態2に記載
の発光素子は消費電力の低減された発光素子であるため、消費電力の低減された照明装置
とすることができる。また、実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子は大面積化
が可能であるため、大面積の照明装置として用いることができる。また、実施の形態1又
は実施の形態2に記載の発光素子は、薄型であるため、薄型化した照明装置として用いる
ことが可能となる。
実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子は、自動車のフロントガラスやダッシ
ュボードにも搭載することができる。図12に実施の形態1又は実施の形態2に記載の発
光素子を自動車のフロントガラスやダッシュボードに用いる一態様を示す。表示5000
乃至表示5005は実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子を用いて設けられた
表示である。
表示5000と表示5001は自動車のフロントガラスに設けられた実施の形態1又は
実施の形態2に記載の発光素子を搭載した表示装置である。実施の形態1又は実施の形態
2に記載の発光素子は、第1の電極と第2の電極を透光性を有する電極で作製することに
よって、反対側が透けて見える、いわゆるシースルー状態の表示装置とすることができる
。シースルー状態の表示であれば、自動車のフロントガラスに設置したとしても、視界の
妨げになることなく設置することができる。なお、駆動のためのトランジスタなどを設け
る場合には、有機半導体材料による有機トランジスタや、酸化物半導体を用いたトランジ
スタなど、透光性を有するトランジスタを用いると良い。
表示5002はピラー部分に設けられた実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素
子を搭載した表示装置である。表示5002には、車体に設けられた撮像手段からの映像
を映し出すことによって、ピラーで遮られた視界を補完することができる。また、同様に
、ダッシュボード部分に設けられた表示5003は車体によって遮られた視界を、自動車
の外側に設けられた撮像手段からの映像を映し出すことによって、死角を補い、安全性を
高めることができる。見えない部分を補完するように映像を映すことによって、より自然
に違和感なく安全確認を行うことができる。
表示5004や表示5005はナビゲーション情報、スピードやエンジンの回転数、走
行距離、燃料残量、ギア状態、エアコンの設定など、様々な情報を提供することができる
。表示は使用者の好みに合わせて適宜その表示項目やレイアウトを変更することができる
。なお、これら情報は表示5000乃至表示5003にも設けることができる。また、表
示5000乃至表示5005は照明装置として用いることも可能である。
実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子は発光効率の高い発光素子とすること
ができる。また、消費電力の小さい発光素子とすることができる。このことから、表示5
000乃至表示5005のような大きな画面を数多く設けても、バッテリーに負荷をかけ
ることが少なく、快適に使用することができることから実施の形態1又は実施の形態2に
記載の発光素子を用いた発光装置または照明装置は、車載用の発光装置又は照明装置とし
て好適に用いることができる。
図13(A)及び図13(B)は2つ折り可能なタブレット型端末の一例である。図1
3(A)は、開いた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、表示部9631a
、表示部9631b、表示モード切り替えスイッチ9034、電源スイッチ9035、省
電力モード切り替えスイッチ9036、留め具9033、操作スイッチ9038、を有す
る。なお、当該タブレット型端末は、実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子を
備えた発光装置を表示部9631a、表示部9631bの一方又は両方に用いることによ
り作製される。
表示部9631aは、一部をタッチパネル領域9632aとすることができ、表示され
た操作キー9637にふれることでデータ入力をすることができる。なお、表示部963
1aにおいては、一例として半分の領域が表示のみの機能を有する構成、もう半分の領域
がタッチパネルの機能を有する構成を示しているが該構成に限定されない。表示部963
1aの全ての領域がタッチパネルの機能を有する構成としても良い。例えば、表示部96
31aの全面をキーボードボタン表示させてタッチパネルとし、表示部9631bを表示
画面として用いることができる。
また、表示部9631bにおいても表示部9631aと同様に、表示部9631bの一
部をタッチパネル領域9632bとすることができる。また、タッチパネルのキーボード
表示切り替えボタン9639が表示されている位置に指やスタイラスなどでふれることで
表示部9631bにキーボードボタンを表示することができる。
また、タッチパネル領域9632aとタッチパネル領域9632bに対して同時にタッ
チ入力することもできる。
また、表示モード切り替えスイッチ9034は、縦表示または横表示などの表示の向き
を切り替え、白黒表示やカラー表示の切り替えなどを選択できる。省電力モード切り替え
スイッチ9036は、タブレット型端末に内蔵している光センサで検知される使用時の外
光の光量に応じて表示の輝度を最適なものとすることができる。タブレット型端末は光セ
ンサだけでなく、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検知するセンサなどの他の検出装置
を内蔵させてもよい。
また、図13(A)では表示部9631bと表示部9631aの表示面積が同じ例を示
しているが特に限定されず、一方のサイズともう一方のサイズが異なっていてもよく、表
示の品質も異なっていてもよい。例えば一方が他方よりも高精細な表示を行える表示パネ
ルとしてもよい。
図13(B)は、閉じた状態であり、本実施の形態におけるタブレット型端末では、筐
体9630、太陽電池9633、充放電制御回路9634、バッテリー9635、DCD
Cコンバータ9636を備える例を示す。
なお、タブレット型端末は2つ折り可能なため、未使用時に筐体9630を閉じた状態
にすることができる。従って、表示部9631a、表示部9631bを保護できるため、
耐久性に優れ、長期使用の観点からも信頼性の優れたタブレット型端末を提供できる。
また、この他にも図13(A)及び図13(B)に示したタブレット型端末は、様々な
情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付又は時刻な
どを表示部に表示する機能、表示部に表示した情報をタッチ入力操作又は編集するタッチ
入力機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有する
ことができる。
タブレット型端末の表面に装着された太陽電池9633によって、電力をタッチパネル
、表示部、または映像信号処理部等に供給することができる。なお、太陽電池9633は
、筐体9630の片面または両面に設けることができ、バッテリー9635の充電を効率
的に行うことができる。
また、図13(B)に示す充放電制御回路9634の構成、及び動作について図13(
C)にブロック図を示し説明する。図13(C)には、太陽電池9633、バッテリー9
635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9638、スイッチSW1乃至SW3
、表示部9631について示しており、バッテリー9635、DCDCコンバータ963
6、コンバータ9638、スイッチSW1乃至SW3が、図13(B)に示す充放電制御
回路9634に対応する箇所となる。
まず外光により太陽電池9633により発電がされる場合の動作の例について説明する
。太陽電池で発電した電力は、バッテリー9635を充電するための電圧となるようDC
DCコンバータ9636で昇圧または降圧がなされる。そして、表示部9631の動作に
太陽電池9633で充電された電力が用いられる際にはスイッチSW1をオンにし、コン
バータ9638で表示部9631に必要な電圧に昇圧または降圧をすることとなる。また
、表示部9631での表示を行わない際には、SW1をオフにし、SW2をオンにしてバ
ッテリー9635の充電を行う構成とすればよい。
なお、太陽電池9633については、発電手段の一例として示したが、発電手段は特に
限定されず、圧電素子(ピエゾ素子)や熱電変換素子(ペルティエ素子)などの他の発電
手段によってバッテリー9635の充電を行う構成であってもよい。無線(非接触)で電
力を送受信して充電する無接点電力伝送モジュールや、また他の充電手段を組み合わせて
行う構成としてもよく、発電手段を有さなくとも良い。
また、上記表示部9631を具備していれば、図13に示した形状のタブレット型端末
に限定されない。
本実施例では、熱活性化遅延蛍光を示す物質として白金(II)オクタエチルポルフィ
リン(略称:PtOEP)を用いた本発明の一態様に当たる発光素子について説明する。
本実施例で用いた物質を以下に示す。
以下に、発光素子1、比較発光素子1の作製方法を示す。
(発光素子1の作製方法)
まず、ガラス基板上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)をスパッタリン
グ法にて成膜し、第1の電極101を形成した。なお、その膜厚は110nmとし、電極
面積は2mm×2mmとした。ここで、第1の電極101は、発光素子の陽極として機能
する電極である。
次に、基板上に発光素子を形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200
℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。
その後、10−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着
装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板を30分程度
放冷した。
次に、第1の電極101が形成された面が下方となるように、第1の電極101が形成さ
れた基板を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10−4Pa程度まで減
圧した後、第1の電極101上に、抵抗加熱を用いた蒸着法により上記構造式(i)で表
される4,4’,4’’−(ベンゼン−1,3,5−トリイル)トリ(ジベンゾチオフェ
ン)(略称:DBT3P−II)と酸化モリブデン(VI)を共蒸着することで、正孔注
入層111を形成した。その膜厚は、20nmとし、DBT3P−IIと酸化モリブデン
の比率は、重量比で4:2(=DBT3P−II:酸化モリブデン)となるように調節し
た。なお、共蒸着法とは、一つの処理室内で、複数の蒸発源から同時に蒸着を行う蒸着法
である。
次に、正孔注入層111上に、上記構造式(ii)で表される4−フェニル−4’−(9
−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)を20n
mの膜厚となるように成膜し、正孔輸送層112を形成した。
さらに、正孔輸送層112上に、上記構造式(iii)で表される2−[3’−(ジベン
ゾチオフェン−4−イル)ビフェニル−3−イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略
称:2mDBTBPDBq−II)と、上記構造式(iv)で表される3−[N−(9−
フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール
(略称:PCzPCA1)と、上記構造式(v)で表される白金(II)オクタエチルポ
ルフィリン(略称:PtOEP)とを、重量比0.8:0.2:0.05(=2mDBT
BPDBq−II:PCzPCA1:PtOEP)となるように40nm共蒸着し、発光
層113を形成した。
その後、発光層113上に2mDBTBPDBq−IIを膜厚20nmとなるように成膜
し、さらに、上記構造式(vi)で表されるバソフェナントロリン(略称:BPhen)
を15nmとなるように成膜して、電子輸送層114を形成した。
電子輸送層114を形成したら、その後、フッ化リチウム(LiF)を1nmの膜厚とな
るように蒸着し、電子注入層115を形成し、最後に、陰極として機能する第2の電極1
02として、アルミニウムを200nmの膜厚となるように蒸着することで、本実施例の
発光素子1を作製した。
なお、上述した蒸着過程において、蒸着は全て抵抗加熱法を用いた。
(比較発光素子1の作製方法)
比較発光素子1は発光素子1における発光層113を、2mDBTBPDBq−IIと
、PtOEPとを、重量比0.8:0.05(=2mDBTBPDBq−II:PtOE
P)となるように40nm共蒸着することで作製した。その他の材料、構成はすべて発光
素子1と同じである。
発光素子1及び比較発光素子1を、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素
子が大気に曝されないようにガラス基板により封止する作業(シール材を素子の周囲に塗
布し、封止時に80℃にて1時間熱処理)を行った後、これら発光素子の初期特性につい
て測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
発光素子1及び比較発光素子1の電流密度−輝度特性を図15に、電圧−輝度特性を図
16に、輝度−電流効率特性を図17に、輝度−パワー効率特性を図18に、輝度−外部
量子効率特性を図19に、発光スペクトルを図20に示す。
図より、励起錯体からのエネルギー移動を利用した発光素子1の方が、利用しない比較発
光素子1よりも良好な特性を示すことがわかった。具体的には外部量子効率が向上し、電
圧が低下した結果、パワー効率や電流効率が大幅に上昇している。このことから、本発明
の一態様である発光素子1の優位性が確認された。
本実施例では、熱活性化遅延蛍光を示す物質として亜鉛(II)オクタエチルポルフィ
リン(略称:ZnOEP)を用いた本発明の一態様に当たる発光素子について説明する。
本実施例で用いた物質を以下に示す。
以下に、発光素子2、比較発光素子2の作製方法を示す。
(発光素子2の作製方法)
まず、ガラス基板上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)をスパッタリン
グ法にて成膜し、第1の電極101を形成した。なお、その膜厚は110nmとし、電極
面積は2mm×2mmとした。ここで、第1の電極101は、発光素子の陽極として機能
する電極である。
次に、基板上に発光素子を形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200
℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。
その後、10−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着
装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板を30分程度
放冷した。
次に、第1の電極101が形成された面が下方となるように、第1の電極101が形成さ
れた基板を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10−4Pa程度まで減
圧した後、第1の電極101上に、抵抗加熱を用いた蒸着法により上記構造式(i)で表
される4,4’,4’’−(ベンゼン−1,3,5−トリイル)トリ(ジベンゾチオフェ
ン)(略称:DBT3P−II)と酸化モリブデン(VI)を共蒸着することで、正孔注
入層111を形成した。その膜厚は、20nmとし、DBT3P−IIと酸化モリブデン
の比率は、重量比で4:2(=DBT3P−II:酸化モリブデン)となるように調節し
た。なお、共蒸着法とは、一つの処理室内で、複数の蒸発源から同時に蒸着を行う蒸着法
である。
次に、正孔注入層111上に、上記構造式(ii)で表される4−フェニル−4’−(9
−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)を20n
mの膜厚となるように成膜し、正孔輸送層112を形成した。
さらに、正孔輸送層112上に、上記構造式(iii)で表される2−[3’−(ジベン
ゾチオフェン−4−イル)ビフェニル−3−イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略
称:2mDBTBPDBq−II)と、上記構造式(vii)で表されるN,N’−ビス
(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)−N,N’−ジフェニル−スピロ−9
,9’−ビフルオレン−2,7−ジアミン(略称:PCA2SF)と、上記構造式(vi
ii)で表される亜鉛(II)オクタエチルポルフィリン(略称:ZnOEP)とを、重
量比0.8:0.2:0.01(=2mDBTBPDBq−II:PCA2SF:ZnO
EP)となるように40nm共蒸着し、発光層113を形成した。
その後、発光層113上に2mDBTBPDBq−IIを膜厚20nmとなるように成膜
し、さらに、上記構造式(vi)で表されるバソフェナントロリン(略称:BPhen)
を10nmとなるように成膜して、電子輸送層114を形成した。
電子輸送層114を形成したら、その後、フッ化リチウム(LiF)を1nmの膜厚とな
るように蒸着し、電子注入層115を形成し、最後に、陰極として機能する第2の電極1
02として、アルミニウムを200nmの膜厚となるように蒸着することで、本実施例の
発光素子2を作製した。
なお、上述した蒸着過程において、蒸着は全て抵抗加熱法を用いた。
(比較発光素子2の作製方法)
比較発光素子2は発光素子2における発光層113を、2mDBTBPDBq−IIと
、ZnOEPとを、重量比1:0.01(=2mDBTBPDBq−II:ZnOEP)
となるように40nm共蒸着することで作製した。その他の材料、構成はすべて発光素子
2と同じである。
発光素子2及び比較発光素子2を、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素
子が大気に曝されないようにガラス基板により封止する作業(シール材を素子の周囲に塗
布し、封止時に80℃にて1時間熱処理)を行った後、これら発光素子の初期特性につい
て測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
発光素子2及び比較発光素子2の電流密度−輝度特性を図21に、電圧−輝度特性を図
22に、輝度−電流効率特性を図23に、輝度−パワー効率特性を図24に、輝度−外部
量子効率特性を図25に、発光スペクトルを図26に示す。
図より、励起錯体からのエネルギー移動を利用した発光素子2の方が、利用しない比較発
光素子2よりも良好な特性を示すことがわかった。具体的には外部量子効率が向上し、電
圧が低下した結果、パワー効率や電流効率が大幅に上昇している。このことから、本発明
の一態様である発光素子2の優位性が確認された。
10 電極
11 電極
101 第1の電極
102 第2の電極
103 EL層
111 正孔注入層
112 正孔輸送層
113 発光層
113Ec 励起錯体
114 電子輸送層
115 電子注入層
400 基板
401 第1の電極
402 補助電極
403 EL層
404 第2の電極
405 シール材
406 シール材
407 封止基板
412 パッド
420 ICチップ
601 駆動回路部(ソース線駆動回路)
602 画素部
603 駆動回路部(ゲート線駆動回路)
604 封止基板
605 シール材
607 空間
608 配線
609 FPC(フレキシブルプリントサーキット)
610 素子基板
611 スイッチング用TFT
612 電流制御用TFT
613 第1の電極
614 絶縁物
616 EL層
617 第2の電極
618 発光素子
623 nチャネル型TFT
624 pチャネル型TFT
625 乾燥材
901 筐体
902 液晶層
903 バックライトユニット
904 筐体
905 ドライバIC
906 端子
951 基板
952 電極
953 絶縁層
954 隔壁層
955 EL層
956 電極
1001 基板
1002 下地絶縁膜
1003 ゲート絶縁膜
1006 ゲート電極
1007 ゲート電極
1008 ゲート電極
1020 第1の層間絶縁膜
1021 第2の層間絶縁膜
1022 電極
1024W 発光素子の第1の電極
1024R 発光素子の第1の電極
1024G 発光素子の第1の電極
1024B 発光素子の第1の電極
1025 隔壁
1028 EL層
1029 発光素子の第2の電極
1031 封止基板
1032 シール材
1033 透明な基材
1034R 赤色の着色層
1034G 緑色の着色層
1034B 青色の着色層
1035 黒色層(ブラックマトリックス)
1036 オーバーコート層
1037 第3の層間絶縁膜
1040 画素部
1041 駆動回路部
1042 周辺部
1044W 白色の発光領域
1044R 赤色の発光領域
1044B 青色の発光領域
1044G 緑色の発光領域
2001 筐体
2002 光源
3001 照明装置
5000 表示
5001 表示
5002 表示
5003 表示
5004 表示
5005 表示
7101 筐体
7103 表示部
7105 スタンド
7107 表示部
7109 操作キー
7110 リモコン操作機
7201 本体
7202 筐体
7203 表示部
7204 キーボード
7205 外部接続ポート
7206 ポインティングデバイス
7210 第2の表示部
7301 筐体
7302 筐体
7303 連結部
7304 表示部
7305 表示部
7306 スピーカ部
7307 記録媒体挿入部
7308 LEDランプ
7309 操作キー
7310 接続端子
7311 センサ
7401 筐体
7402 表示部
7403 操作ボタン
7404 外部接続ポート
7405 スピーカ
7406 マイク
7400 携帯電話機
9033 留め具
9034 スイッチ
9035 電源スイッチ
9036 スイッチ
9038 操作スイッチ
9630 筐体
9631 表示部
9631a 表示部
9631b 表示部
9632a タッチパネル領域
9632b タッチパネル領域
9633 太陽電池
9634 充放電制御回路
9635 バッテリー
9636 DCDCコンバータ
9637 操作キー
9638 コンバータ
9639 ボタン

Claims (7)

  1. 一対の電極と、
    前記一対の電極間に位置する発光層と、を有し、
    前記発光層は第1の有機化合物と、第2の有機化合物と、第3の物質とを少なくとも含み、
    前記第3の物質のS1準位とT1準位とのエネルギー差が0.2eV以下であり、
    前記第1の有機化合物と第2の有機化合物とは励起錯体を形成する組み合わせであり、
    前記励起錯体のS1準位とT1準位とのエネルギー差が0.2eV以下であり、
    前記第3の物質の最も低エネルギー側の吸収帯と、前記励起錯体の発光が重なる発光素子。
  2. 一対の電極と、
    前記一対の電極間に位置する発光層と、を有し、
    前記発光層は第1の有機化合物と、第2の有機化合物と、第3の物質とを少なくとも含み、
    前記第3の物質のS1準位とT1準位とのエネルギー差が0.2eV以下であり、
    前記第1の有機化合物と第2の有機化合物とは励起錯体を形成する組み合わせであり、
    前記第3の物質の最も低エネルギー側の吸収帯のピーク波長と、
    前記励起錯体の発光のピーク波長とのエネルギー換算値差が0.2eV以下である発光素子。
  3. 請求項1または請求項2において、
    前記第3の物質は、π電子過剰型複素芳香環及びπ電子不足型複素芳香環を有する複素環化合物である発光素子。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の発光素子を有する照明装置。
  5. 請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の発光素子と、前記発光素子を制御する手段を備えた発光装置。
  6. 請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の発光素子を表示部に有し、前記発光素子を制御する手段を備えた表示装置。
  7. 請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の発光素子を有する電子機器。
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