JP6446753B2 - セメント添加剤 - Google Patents

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本発明は、リグニン誘導体を含有するセメント添加剤に関する。より詳しくは、セメントや石膏などのセメント組成物やその他の水硬性材料に有用なセメント添加剤に関する。
リグニンは、木材等の植物系バイオマスの3大主成分のうちの一つ(3大主成分:セルロース、ヘミセルロース、リグニン)であり、天然の芳香族ポリマーとして地球上に最も豊富に存在している。リグニンの構造については、光合成において合成されるp−クマリルアルコール・コニフェニルアルコール・シナピルアルコールという3種類の基本骨格であるリグニンモノマーが、一電子酸化され、フェノキシラジカルとなり、これが不定形にラジカルカップリングすることにより、複雑な三次元網目構造をとっている。
上述のように、リグニンの分子構造は複雑であり、また、植物体から単離する際の単離方法によりリグニンの化学的特性が大きく変化することから、リグニンの工業材料としての利用は限られている。さらに、リグニンは、基本的には疎水性物質であり、難水溶性であることも、その利用が限られる1つの原因となっている。
しかし一方で、安価に入手可能なリグニンを工業的に利用すべく、種々の検討がなされており、リグニンスルホン酸等がセメント添加剤の市販品として流通している。
また、木材等を原料とするパルプにはリグニンが残存している。リグニンが含まれるパルプは、白色度が低い問題があり、これに対してパルプの漂白を目的として、リグニンのベンゼン環を酸化分解することが開示されている(例えば、非特許文献1〜3参照。)。さらに、セメント添加剤としてリグニンスルホン酸やクラフトリグニンのオゾン処理物が開示されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
特開平3−206004号公報 米国特許第4181652号明細書
金子英信、他2名「木材学会誌」、1979年、第25巻、第7号、p502−509 金子英信、他2名「木材学会誌」、1980年、第26巻、第11号、p752−758 金子英信、他2名「木材学会誌」、1981年、第27巻、第9号、p678−683
上記のようにリグニンを利用した種々のセメント添加剤が検討されている。しかしながら、リグニンを用いた従来のセメント添加剤は、セメント減水性等において充分に高い性能を有するとはいえず、性能面で改善の余地があるものであった。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、リグニンを用いた従来のセメント添加剤よりも優れた減水性能を発揮することができるセメント添加剤を提供することを目的とする。
本発明者は、リグニンについて種々検討したところ、酸化剤によりリグニンを酸化する反応において、酸性条件下において酸化反応を行うことにより、反応率が向上することを見いだし、また、このようにして得られたリグニン誘導体をセメント添加剤として用いると、優れたセメント減水性能を発揮することを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
すなわち本発明は、リグニン誘導体を含有するセメント添加剤であって、上記リグニン誘導体は、酸性条件下で酸化剤を用いてリグニン類のリグニン骨格を酸化することにより得られ、上記リグニン類は、硫黄元素の含有率が、リグニン類100質量%に対して、0.1〜4質量%の範囲であるセメント添加剤である。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
<リグニン誘導体>
本発明のリグニン誘導体は、酸化剤を用いてリグニン類のリグニン骨格を酸化することにより得られる。この酸化反応は、リグニン骨格が有するベンゼン環の二重結合に対して酸化剤が反応することにより、二重結合が開裂し、カルボニル基が生成する反応である。ベンゼン環の二重結合炭素に水素が結合している場合には、この酸化開裂によってアルデヒド基が生成した後、アルデヒド基が更に酸化され、カルボキシル基が生成する。また、ベンゼン環の二重結合炭素にアルコキシ基が結合している場合には、この酸化開裂によってエステル基が生成する。更に、エステル基が加水分解を受けるような反応系中で酸化反応を行った場合には、エステル基の一部又は全部が加水分解を受けてカルボキシル基となる場合がある。このように、本発明のリグニン誘導体が、カルボキシル基を有することにより、従来のリグニン誘導体よりもセメント粒子に吸着する基を多く有することになるため、セメント添加剤として用いた場合に、従来のリグニン誘導体をセメント添加剤として用いた場合よりも、優れたセメント減水性能を発揮することができる。また、後述する蒸解方法により得られるリグニンのように、吸着性の官能基をほとんど有しないリグニンを原料として用いる場合には、本発明の酸化反応により、セメントに対する吸着基を生じさせることとなるため、セメント減水性能が向上する効果がより顕著となる。
酸化剤が反応する部位は、リグニン類が有するベンゼン環の二重結合であれば特に限定されないが、二重結合炭素に水酸基、アルコキシ基、炭化水素基等の置換基を有していてもよい。
また、この酸化反応は、二重結合炭素に結合する置換基の種類によっては、カルボニル基の生成後、カルボキシル基まで酸化されない場合があるため、本発明のリグニン誘導体は、カルボキシル基の他に、リグニン骨格のベンゼン環の酸化開裂により生成したエステル基、ケト基等を有していてもよい。ベンゼン環の二重結合炭素に結合する置換基としては、例えば、アルコキシ基、炭化水素基等が挙げられる。
なお、本発明において、リグニン類とは、リグニンの基本骨格であるフェニルプロパン骨格を有するものであり、フェニルプロパン骨格のベンゼン環が酸化剤等による開裂を受けていないものをいう。
上記リグニン類は、植物体から単離したままの未変性のリグニン、又は、後述する置換基等により変性されたリグニンのいずれであってもよい。
本発明のリグニン類は、硫黄元素の含有率が、リグニン類100質量%に対して、0.1〜4質量%の範囲である。本発明のリグニン類の硫黄元素の含有率が上記範囲内であれば、リグニンの原料となる木材の種類は特に制限されず、木質系のもの、草本系のもののいずれも用いることができる。木質系のものとしては、上述した針葉樹や広葉樹を用いることができる。草本系のものとしては、稲藁、穀物、バガス、竹、ケナフ、葦等を用いることができる。これらの中でも、木質系のものが分散性能の点で好ましく、針葉樹や広葉樹のものがさらに好ましく、特に、針葉樹のものが好ましい。
また、本発明のリグニン類の硫黄元素の含有率が上記範囲内であれば、蒸解方法は特に制限されず、アルカリリグニン、クラフトリグニン、酢酸リグニン、オルガノソルブルリグニン、爆砕リグニン等のいずれのものであってもよい。これらの中でも、アルカリリグニン、酢酸リグニン、オルガノソルブルリグニン、爆砕リグニンは、蒸解に硫黄含有化合物を用いないことから、硫黄臭の発生がない点で有利である。
本発明のリグニン類の硫黄元素の含有率としては、リグニン類100質量%に対して、0.1〜3質量%の範囲であることが好ましい。より好ましくは、0.1〜2質量%の範囲であり、更に好ましくは、0.1〜1質量%の範囲である。
リグニン類中の硫黄元素の含有率は、後述する実施例に記載の測定機器、測定条件で元素分析によって測定することができる。
本発明の酸化反応は、酸性条件下において行うことを特徴としている。塩基性条件下では、オゾン等の酸化剤は水による分解が進みやすいことからリグニンに対する酸化の反応率が低くなるおそれがあるが、酸性条件下ではこのような不具合を充分に抑制することができ、酸化剤を効率的に利用することができるため、コスト的に優位である。
本発明のリグニン誘導体は、酸化剤を用いてリグニン類のリグニン骨格を酸化することにより生成する下記一般式(1);
Figure 0006446753
(式中、R〜Rは、同一又は異なって、水素原子、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、スルホン酸基、カルボキシル基含有基、(ポリ)アルキレングリコール鎖含有基、炭化水素基、又は、他のフェニルプロパン骨格由来の構造との直接結合を表し、R〜Rのうち少なくとも1つは、他のフェニルプロパン骨格由来の構造との直接結合である。)で表される構造を有する。上記リグニン類のリグニン骨格とは、リグニンの基本骨格であるフェニルプロパン骨格を意味する。上記他のフェニルプロパン骨格由来の構造とは、酸化反応を受けていないフェニルプロパン骨格又は酸化反応を受けた後のフェニルプロパン骨格を表す。
本発明のリグニン誘導体は、上記一般式(1)で表される構造を有することにより、従来のリグニンよりもセメント粒子に吸着する基を多く有するため、上記リグニン誘導体をセメント添加剤として用いた場合には、従来のリグニンを利用したセメント添加剤を用いた場合よりもセメント減水性能が向上する。
本発明の酸化反応において、リグニン類のベンゼン環の二重結合が開裂し、カルボキシル基が生成することが好ましく、本発明のリグニン誘導体は、上記一般式(1)におけるR、Rのうち、少なくとも一方が水酸基であることが好ましい。より好ましくはR、Rの両方が水酸基であることである。
上記一般式(1)におけるアルコキシ基、カルボキシル基含有基、(ポリ)アルキレングリコール鎖含有基、及び、炭化水素基の具体例及び好ましい構造は、後述する置換基等により変性されたリグニンが有するこれらの基の具体例及び好ましい構造と同様である。
上記リグニン誘導体は、カルボキシル基を、酸化前のリグニン類が有するフェニルプロパン骨格1モルに対して、0.2〜0.9モルの割合で有することが好ましい。より好ましくは0.2〜0.7モルである。上記カルボキシル基の割合が上記好ましい範囲であれば、リグニン誘導体をセメント添加剤として用いた場合のセメント粒子への吸着がより充分なものとなり、セメント減水性能がより向上する。上記カルボキシル基には、酸化前のリグニン類が有するカルボキシル基と上記酸化反応により生じたカルボキシル基とが含まれる。上記カルボキシル基の割合は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
本発明のリグニン誘導体は、重量平均分子量が1000〜30000であるものが好ましい。リグニン誘導体がこのような重量平均分子量を有するものであると、後述するセメント添加剤としてより好適なものとなる。リグニン誘導体の重量平均分子量は、より好ましくは、1000〜20000であり、更に好ましくは、1000〜15000である。
また、本発明のリグニン誘導体は、数平均分子量が、1000〜30000であるものが好ましい。リグニン誘導体の数平均分子量は、より好ましくは、1000〜20000であり、更に好ましくは、1000〜15000である。
重量平均分子量及び数平均分子量は、GPCを用い、後述する実施例に記載の条件により測定することができる。
本発明のリグニン誘導体の製造に用いられる酸化剤としては、リグニン骨格のベンゼン環を酸化開裂させることができる限り、特に制限されず、オゾン、酸素、過酸化水素等が挙げられる。好ましくはオゾンである。
上記酸化剤として、上記化合物の1種又は2種以上を用いることができる。
上記酸化剤として、オゾンを用いた場合には、オゾンは、リグニン骨格のベンゼン環を選択的に開裂することができるため、より効率的に上記酸化反応が進行する。すなわち、上記リグニン類が上述の置換基等により変性されたリグニンであっても、上記置換基等よりも、リグニン骨格のベンゼン環が選択的に酸化されることとなる。また、酸化開裂により生成した上記一般式(1)で表される構造中の炭素−炭素二重結合に対して更にオゾンが反応した場合には、最終的にはシュウ酸が生じることとなるが、上記一般式(1)で表される構造中の炭素−炭素二重結合よりも、上記リグニン骨格のベンゼン環が優先的に酸化されるため、本発明のリグニン誘導体をより効率的に得ることができる。
前記酸化剤の使用量は、酸化前のリグニン類が有するフェニルプロパン骨格1モルに対して、0.05〜0.95モルであることが好ましい。より好ましくは、0.3〜0.9モルであり、更に好ましくは、0.5〜0.9モルである。上記酸化開裂により生じるカルボキシル基、エステル基等の量は、酸化剤の使用量に依存するため、酸化剤の使用量が上記好ましい範囲であれば、セメント粒子への吸着に寄与するカルボキシル基、エステル基等の量が好適な範囲となり、本発明のリグニン誘導体をセメント添加剤として用いた場合により優れたセメント減水性能を発揮することができる。本発明のリグニン誘導体がエステル基を有する場合には、リグニン誘導体をセメントと混合した時のアルカリ加水分解によって生成するカルボキシル基がセメント粒子に吸着することにより優れた減水性能もしくは保持性能を発揮することができる。
本発明のリグニン誘導体は、リグニン類を原料として得られるものであり、上述したとおり、リグニン類としては、未変性のものであってもよく、置換基等により変性されたものであってもよい。
上記リグニン類が置換基等により変性されたリグニンである場合、置換基としては特に制限されないが、例えば、(ポリ)アルキレングリコール鎖含有基、水酸基、アルコキシ基、炭化水素基、アミノ基、スルホン酸基、カルボキシル基含有基等が挙げられる。
上記(ポリ)アルキレングリコール鎖含有基としては、(ポリ)アルキレングリコール鎖を有する限り特に制限されず、(ポリ)アルキレングリコール鎖のみの基であっても、(ポリ)アルキレングリコール鎖とその他の構造部位を有する基であってもよい。その他の構造部位としては、脂肪族炭化水素基や芳香族炭化水素基等の炭化水素基等が挙げられる。上記(ポリ)アルキレングリコール鎖含有基としては、(ポリ)アルキレングリコール鎖のみの基、又は、炭素数1〜3のアルキレン基を有する芳香環に(ポリ)アルキレングリコール鎖が付加された基が好ましい。
上記(ポリ)アルキレングリコール鎖の末端の構造は特に制限されず、置換基を有していてもよい。上記末端の酸素原子には、水素原子又は炭化水素基が結合していることが好ましい。上記炭化水素基としては、炭素数1〜2のアルキル基が好ましい。
上記(ポリ)アルキレングリコール鎖としては、1種のアルキレンオキサイドによって構成されるものであってもよく、2種以上のアルキレンオキサイドによって構成されるものであってもよい。(ポリ)アルキレングリコール鎖を構成するアルキレンオキサイドは特に限定されないが、炭素数1〜18のアルキレンオキサイドにより構成されることが好ましく、より好ましくは炭素数2〜8のアルキレンオキサイドであり、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、イソブチレンオキサイド、1−ブテンオキサイド、2−ブテンオキサイド、トリメチルエチレンオキサイド、テトラメチレンオキサイド、テトラメチルエチレンオキサイド、ブタジエンモノオキサイド、オクチレンオキサイド等が挙げられる。また、ジペンタンエチレンオキサイド、ジヘキサンエチレンオキサイド等の脂肪族エポキシド;トリメチレンオキサイド、テトラメチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、オクチレンオキサイド等の脂環エポキシド;スチレンオキサイド、1,1−ジフェニルエチレンオキサイド等の芳香族エポキシド等である。
上記(ポリ)アルキレングリコール鎖を構成するアルキレンオキサイドとしては、セメント粒子との親和性の観点から、炭素数2〜8程度の比較的短鎖のアルキレンオキサイド(オキシアルキレン基)が主体であることが好適である。より好ましくは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等の炭素数2〜4のアルキレンオキサイドが主体であることであり、更に好ましくは、エチレンオキサイドが主体であることである。
ここでいう「主体」とは、ポリアルキレングリコール部位が、2種以上のアルキレンオキサイドにより構成されるときに、全アルキレンオキサイドの存在数において、大半を占めるものであることを意味する。「大半を占める」ことを全アルキレンオキサイド100モル%中のエチレンオキサイドのモル%で表すとき、50〜100モル%が好ましい。これにより、本発明のリグニン誘導体がより高い親水性を有することとなる。より好ましくは60モル%以上であり、さらに好ましくは70モル%以上、特に好ましくは80モル%以上、最も好ましくは90モル%以上である。
上記(ポリ)アルキレングリコール鎖を構成するアルキレンオキサイドの平均付加モル数は、10〜200であることが好ましい。上記アルキレンオキサイドの平均付加モル数とは、リグニン類における1つの(ポリ)アルキレングリコール鎖において付加しているアルキレンオキサイドのモル数の平均値を意味する。上記平均付加モル数は、より好ましくは25〜180であり、更に好ましくは50〜160である。
上記アルコキシ基としては、炭素数1〜18のアルコキシ基であることが好ましく、より好ましくは炭素数1〜2のアルコキシ基である。
上記炭化水素基としては、炭素数1〜8の炭化水素基が好ましく、より好ましくは1〜2の炭化水素基である。
上記カルボキシル基含有基は、カルボキシル基を有する限り制限されず、カルボキシル基のみの基(−COOH)であっても、カルボキシル基とその他の構造部位を有する基であってもよい。その他の構造部位としては、脂肪族炭化水素基や芳香族炭化水素基等の炭化水素基等が挙げられる。カルボキシル基含有基としては、−COOH、カルボキシル基を有する炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、又は、芳香族カルボキシル基を有する炭素数1〜8のアルキレン基が好ましい。
上記置換基は、リグニン骨格のベンゼン環に1つ結合していてもよく、2つ以上結合していてもよい。
本発明のリグニン誘導体の原料となるリグニンの重量平均分子量は特に限定されないが、例えば、重量平均分子量500〜100万のリグニンを使用することが好ましい。より好ましくは、重量平均分子量5000〜10万のリグニンである。
重量平均分子量は、GPC分析法を用い、後述する実施例に記載の条件により測定することができる。
<リグニン誘導体の製造方法>
本発明はまた、本発明のリグニン誘導体を製造する方法であって、上記リグニン誘導体の製造方法は、酸性条件下で酸化剤を用いてリグニン類のリグニン骨格を酸化する工程を含むリグニン誘導体の製造方法でもある。
本発明のリグニン誘導体の製造方法は、酸性条件下で酸化剤を用いてリグニン類のリグニン骨格を酸化する工程を含む限り特に限定されず、他の工程を含んでいてもよく、リグニン類を酸化する工程と他の工程との順番も制限されない。
本発明のリグニン誘導体の製造方法は、植物体から単離したリグニンに対してそのまま上記酸化工程を行っても、植物体から単離したリグニンを、上述の置換基等により変性させた後に上記酸化工程を行ってもよい。
また、リグニン類について、上記酸化工程を行った後に、置換基等により変性してもよい。
上記酸化工程においては、上述の酸化剤を使用することが好ましい。
上記酸化工程における酸化の方法は、酸化剤の種類に依存する。
例えば、酸化剤が気体である場合には、リグニン類の溶液中に酸化剤を吹き込むことにより行うことが好ましい。
上記酸化反応に用いられた酸化剤の量は、酸化剤を吹き込んだ後に、溶液中に残存する酸化剤の量を測定することにより算出することができる。
上記リグニン類の溶液は、溶媒を用いて調製することができ、上記溶媒は、上記酸化工程で用いるリグニン類の種類に依存する。上記溶媒としては、水、メタノール、プロパノール、ジオキサン等の有機溶媒が挙げられ、好ましくは、水であり、より好ましくは、水と有機溶媒との混合溶媒である。上記リグニン類の溶液の調製に水と有機溶媒との混合溶媒を用いることにより、酸性条件下においてもリグニン類をより充分に溶媒に溶解させることができ、酸化反応を充分に進めることができる。
上記混合溶媒に用いられる有機溶媒は、特に制限されないが、好ましくはメタノール、プロパノール、ジオキサンであり、より好ましくはジオキサンである。
上記混合溶媒における水と有機溶媒との割合は、特に制限されないが、1/9〜9/1が好ましく、より好ましくは2/8〜8/2である。
上記リグニン類の溶液の濃度は、特に制限されないが、酸化反応を効率的に行うために、1〜50重量%の濃度が好ましい。より好ましくは5〜30重量%である。
上記酸化工程における反応系のpHは、酸性領域である限り、特に制限されないが、リグニン類の溶液のpHを1〜6に調整することが好ましい。より好ましくはpH2〜5であり、更に好ましくはpH3〜5であり、特に好ましくはpH4〜5である。反応系のpHが上記好ましい範囲であれば、酸化剤の自己分解をより充分に抑制することができ、リグニン類に対する酸化反応の反応性をより向上させることができる。
上記pH調整における、pH調整剤としては、特に制限されないが、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸、フッ化水素酸等の無機酸が好ましい。
上記置換基等によるリグニン類の変性の方法は特に制限されないが、リグニン類又は酸化反応後のリグニン類の水酸基等の反応基と置換基を有する化合物とを反応させることにより行うことができる。
上記置換基が(ポリ)アルキレングリコール鎖含有基である場合には、エチレンオキシド等のアルキレンオキシド又は(ポリ)アルキレングリコール鎖を有する化合物と酸化反応前もしくは後のリグニン類の水酸基又は酸化反応後に生成するカルボキシル基とを反応させることにより変性させることができる。
上記反応により、リグニン類のフェノール性水酸基もしくは酸化反応後に生成するカルボキシル基と(ポリ)アルキレンオキシド又は(ポリ)アルキレングリコール鎖を有する化合物とが直接結合した変性リグニンが生成する。
上記反応における(ポリ)アルキレングリコール鎖を有する化合物としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール系化合物;ポリエチレングリコール−モノエチル−グリシジルエーテル、ポリエチレングリコール−モノメチル−グリシジルエーテル、ラウリルアルコール−ポリエチレンオキサイド−グリシジルエーテル等の単官能のグリシジルエーテル系化合物;ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル、ポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル等の二官能のグリシジルエーテル系化合物;及びこれらのグリシジル基(以下、エポキシ基ともいう。)をメトキシ、エトキシ等のアルコキシド化合物と反応させて、グリシジルエーテル基の官能度を低下させたグリシジルエーテル系化合物;メトキシポリエチレングリコール等のアルコキシポリアルキレングリコールとエピクロロヒドリン等のエピハロヒドリンとの反応により得られる単官能エポキシポリアルキレングリコール化合物等が挙げられる。
<セメント添加剤>
本発明のリグニン誘導体をセメント添加剤として使用する場合は、水溶液の形態で使用してもよいし、又は、乾燥させたものを粉体化して使用してもよい。乾燥させる場合、凍結乾燥機等の従来使用されている乾燥方法により完全に乾燥させてもよい。また、粉体化した本発明のセメント添加剤を予めセメント粉末やドライモルタルのような水を含まないセメント組成物に配合して、左官、床仕上げ、グラウトなどに用いるプレミックス製品として使用してもよいし、セメント組成物の混練時に配合してもよい。
好ましくは、本発明のリグニン誘導体を主成分とするセメント添加剤は、水溶液の形態で使用する。水溶液の濃度は任意であるが、例えば、5〜50%であり、好ましくは、10〜30%程度である。
セメントに添加する際の本発明のセメント添加剤の配合量は、任意であるが、例えば、固形分換算で、セメントの質量に対して、0.01〜10.0質量%、好ましくは0.02〜5.0質量%、より好ましくは0.1〜1.0質量%である。このような配合量により、通常の汎用セメントにおいては、単位水量の低減、強度の増大、耐久性の向上などの各種の好ましい諸効果がもたらされる。特に、配合量が0.1質量%以上である場合は、流動性が著しく付与されるため、いわゆるセメント減水剤としての効果に優れ、好ましい。
本発明のセメント添加剤はまた、他のセメント添加剤と組み合わせて用いることもでき、ポリカルボン酸系減水剤と併用することもできる。ポリカルボン酸系減水剤としては、ポリ(メタ)アクリル酸等のポリカルボン酸の側鎖に(ポリ)アルキレングリコール鎖を有する重合体を含む減水剤であればよい。
上記ポリカルボン酸を構成する不飽和カルボン酸系単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸系単量体;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸等のジカルボン酸系単量体、これらのジカルボン酸無水物及びこれらの塩等が挙げられる。
上記(ポリ)アルキレングリコール鎖としては、特に限定されないが、上述のアルキレンオキサイドから構成される高分子鎖((ポリ)アルキレンオキサイド)であることが好ましい。
上記ポリカルボン酸系減水剤の特性については、本発明のセメント添加剤と併用して分散性を向上し、減水性能を発揮できるものであれば特に限定されるものではない。
上記ポリカルボン酸系減水剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
本発明のセメント添加剤はまた、オキシカルボン酸系化合物と併用することもできる。オキシカルボン酸系化合物を併用することにより、高温の環境下においても、より高い分散保持性能を発揮することができる。オキシカルボン酸系化合物としては、炭素原子数4〜10のオキシカルボン酸又はその塩が好ましく、具体的には、例えば、グルコン酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸、クエン酸や、これらのナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、トリエタノールアミンなどの無機塩又は有機塩などが挙げられる。これらのオキシカルボン酸系化合物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのオキシカルボン酸系化合物のうち、グルコン酸又はその塩が特に好適である。特に、貧配合コンクリートの場合には、分子中にスルホン酸基を有するスルホン酸系分散剤としてリグニンスルホン酸塩系の分散剤を使用し、オキシカルボン酸系化合物としてグルコン酸もしくはその塩を使用することが好ましい。
本発明のセメント添加剤はまた、その他のセメント添加剤として、特開2013−53010号公報に記載されているようなその他のセメント添加剤を併用することができる。
本発明のセメント添加剤と組み合わせて用いることができる他のセメント添加剤としては、更に、水溶性高分子物質、高分子エマルジョン、遅延剤、早強剤・促進剤、鉱油系消泡剤、油脂系消泡剤、脂肪酸系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤、オキシアルキレン系消泡剤、アルコール系消泡剤、アミド系消泡剤、リン酸エステル系消泡剤、金属石鹸系消泡剤、シリコーン系消泡剤、AE剤、その他界面活性剤、防水剤、防錆剤、ひび割れ低減剤、膨張材等が挙げられ、これらは、特開2012−131997号公報に記載のものと同様のものを用いることができる。
その他のセメント添加剤(材)として、例えば、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、着色剤、防カビ剤、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石膏等が挙げられる。
本発明のセメント添加剤と他のセメント添加剤と組み合わせて用いる場合の配合割合は、本発明のセメント添加剤の必須成分であるリグニン誘導体の固形分と他のセメント添加剤の固形分との質量割合が1〜99/99〜1であることが好ましい。より好ましくは、5〜95/95〜5であり、更に好ましくは、10〜90/90〜10であり、特に好ましくは、20〜80/80〜20である。
また、本発明のセメント添加剤とポリカルボン酸系減水剤又はオキシカルボン酸系化合物と他のセメント添加剤とを用いる場合、本発明のセメント添加剤の必須成分であるリグニンとポリカルボン酸系減水剤又はオキシカルボン酸系化合物と他のセメント添加剤との質量割合は、1〜98/1〜98/1〜98であることが好ましい。より好ましくは、5〜90/5〜90/5〜90であり、更に好ましくは、10〜90/5〜85/5〜85であり、特に好ましくは、20〜80/10〜70/10〜70である。
上述した種々の他のセメント添加剤の中でも、本発明のセメント添加剤と併用するセメント添加剤としては、ポリカルボン酸系減水剤やオキシカルボン酸系化合物の他に、オキシアルキレン系消泡剤、促進剤、分離低減剤、AE剤が好ましく、AE剤を用いる場合、本発明のセメント添加剤とオキシアルキレン系消泡剤とAE剤との3成分を併用することが好ましい。
本発明のセメント添加剤と併用するオキシアルキレン系消泡剤としては、上記のものの中でも、ポリオキシアルキレンアルキルアミン類が好ましい。
本発明のセメント添加剤とオキシアルキレン系消泡剤とを併用する場合、オキシアルキレン系消泡剤の配合割合は、本発明のセメント添加剤の必須成分であるリグニン誘導体の固形分の質量に対して0.01〜20質量%であることが好ましい。
また、本発明のセメント添加剤とオキシアルキレン系消泡剤とAE剤との3成分を併用する場合、オキシアルキレン系消泡剤の割合は、上記と同様であり、AE剤の割合は、本発明のセメント添加剤の必須成分であるリグニン誘導体の固形分の質量に対して0.001〜2質量%であることが好ましい。
本発明のセメント添加剤と促進剤とを併用する場合、本発明のセメント添加剤の必須成分であるリグニン誘導体と促進剤との質量割合は、10/90〜99.9/0.1であることが好ましい。より好ましくは、20/80〜99/1である。
本発明のセメント添加剤と分離低減剤とを併用する場合、分離低減剤としては、非イオン性セルロースエーテル類等の各種増粘剤、部分構造として炭素原子数4〜30の炭化水素鎖からなる疎水性置換基と炭素原子数2〜18のアルキレンオキサイドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖とを有する化合物等の1種又は2種以上を用いることができる。
本発明のセメント添加剤と分離低減剤とを併用する場合、本発明のセメント添加剤の必須成分であるリグニンと分離低減剤との質量割合は、10/90〜99.99/0.01であることが好ましい。より好ましくは50/50〜99.9/0.1である。本発明のセメント添加剤と分離低減剤とを含むセメント組成物は、高流動コンクリート、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材として好適に用いることができる。
本発明のセメント添加剤は、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物に加えて用いることができ、このような本発明のセメント添加剤を含んでなるセメント組成物もまた、本発明の1つである。
上記セメント組成物としては、セメント、水、細骨材、粗骨材等を含むものが好適であり、セメントとしては、特に限定されず、例えば、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩、及びそれぞれの低アルカリ形)等が挙げられ、特開2009−046655号公報に記載のものと同様のものを用いることができる。上記骨材としては、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材等以外に、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材等が挙げられる。
上記セメント組成物の1mあたりの単位水量、セメント使用量及び水/セメント比(質量比)としては、例えば、単位水量100〜185kg/m、使用セメント量200〜800kg/m、水/セメント比(質量比)=0.1〜0.7とすることが好適であり、より好ましくは、単位水量120〜175kg/m、使用セメント量250〜800kg/m、水/セメント比(質量比)=0.2〜0.65とすることである。このように、本発明のリグニン誘導体を含むセメント添加剤は、貧配合から富配合に至るまでの幅広い範囲で使用可能であり、高減水率領域、すなわち、水/セメント比(質量比)=0.15〜0.5(好ましくは0.15〜0.4)といった水/セメント比の低い領域でも使用可能であり、更に、単位セメント量が多く水/セメント比が小さい高強度コンクリート、単位セメント量が300kg/m以下の貧配合コンクリートのいずれにも有効である
本発明のセメント添加剤は、上述の構成よりなり、リグニンを用いた従来のセメント添加剤よりも優れた減水性能を発揮し、セメント組成物を流動性に優れるものとすることができるセメント添加剤である。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
<GPC測定条件>
装置:Waters社製、Waters Alliance(2695)
解析ソフト:Waters社製、Empowerプロフェッショナル+GPCオプション
使用カラム:東ソー社製
・TSKguard column α
・TSKgel α―3000
・TSKgel α―4000
・TSKgel α―5000
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters社製、Waters 2414)
溶離液:100mMホウ酸水溶液14304gに50mM水酸化ナトリウム水溶液96gとアセトニトリル3600gを混合した溶媒
較正曲線作成用標準物質:ポリエチレングリコール[ピークトップ分子量(Mp)300000、200000、107000、50000、27700、11840、6450、1470、1010、400]
較正曲線:上記ポリエチレングリコールのMp値と溶出時間とを基礎にして3次式で作成
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
測定時間:60分
試料液注入量:100μL(試料濃度0.5wt%の溶離液調製溶液)
<蒸解条件>
以下の条件により蒸解を行い、リグニンを含む黒液を得た。
木材:スギ(Cryptomeria japonica)材
蒸解温度:170℃、蒸解時間:2h
活性アルカリ(水酸化ナトリウム)添加率(活性アルカリ(酸化ナトリウム)換算):19.5%(木材に対する割合)
AQ(アントラキノン)添加率:0.1%(木材に対する割合)
液比:5L/kg
パルプ収率:44%
パルプ中の残留リグニン含有率:2.8%
<硫黄元素含有率>
リグニンの硫黄元素含有率は、以下の測定方法により測定した。
測定機器:vario EL cube(エレメンタール社製、CHNSO全自動元素分析計)
測定条件:
測定モード CHNS
燃焼管設定温度1150℃、還元管設定温度850℃
燃焼管充填剤:酸化タングステン
還元管充填剤:還元銅
測定ガスフローメーター:MFC−TCD 約230ml/min
ヘリウムガスフローメーター:Fiow He 230ml/min
試料量:約2mg、スズボート包み込み
検出器:TCD
<カルボキシル基量の測定>
リグニン類及びリグニン誘導体が有するカルボキシル基の量を以下の条件において、電位差滴定により求めた。
リグニン誘導体が有するカルボキシル基の量とリグニン類が有するカルボキシル基の量との差が、本発明の酸化反応により生じたカルボキシル基の量である。
測定機器:電位差滴定装置(メトローム社製、型番:798MPT Titrino)
電極(メトローム社製 複合型pHガラス電極(Pt1000温度センサー付き)、型番:6.0238.000)
測定条件:
リグニン試料40mgとp−ヒドロキシ安息香酸40mgを精秤し、滴定容器に入れ、これに溶媒(ジオキサン:水=1:1)55mlと0.5M HCl水溶液1mlを添加した。0.1M NH水溶液を用いて滴定を行ったところ、変曲点を2つもつ滴定曲線が得られた。第一変曲(当量)点は、塩酸であり、第二変曲(当量)点は、カルボキシル基(リグニン試料およびp−ヒドロキシ安息香酸由来)である。リグニン1gあたりのカルボキシル基量は下記式(2)により算出した。なお、試料のリグニン含有量は、Klason法により定量した。
Figure 0006446753
<リグニンの精製>
上記蒸解により得られた強アルカリ性水溶液である黒液に対して、約30%の硫酸水溶液を添加し、撹拌しながらpHを2.0に調製し、沈殿を生じせしめた。遠心分離により沈殿物を回収し、蒸留水を用いて洗浄した。沈殿は、濾過、もしくは遠心分離で回収し、風乾後、減圧乾燥した。乾燥物を乳鉢で軽く粉砕し、精製リグニンを得た。得られた精製リグニンのリグニン純分は81.5%であった。また、GPC測定結果から、精製リグニンの数平均分子量(Mn)は12600、重量平均分子量(Mw)は17900であった。精製リグニンの硫黄元素の含有量は、精製リグニン100質量%に対して、0.2質量%であった。また、精製リグニンのカルボキシル基の量は、精製リグニン1gに対して0.77mmolであった。
<実施例1>
ガラス製反応容器に、精製リグニン36.83部を水300部、ジオキサン300部に溶解させた。適量の3M塩酸でpH4.5に調整した。
室温にて、オゾン発生装置(エコデザイン社(株)製、研究開発用オゾン発生器ED−OG−R6)で酸素より発生させたオゾン(酸素中のオゾン量:2.4%)をオゾン量が精製リグニンの有するフェニルプロパン骨格1モルに対して、0.8モルになるように、ガラス製反応容器中の溶液に流量500ml/minで、4時間バブリングを行い、オゾン処理を行った。(実際に発生させたオゾン量は6.4gとなる。)その後、溶媒はエバポレーターで除去し、実施例1のリグニン誘導体を得た。得られたリグニン誘導体のリグニン純分は78.5%であった。また、GPC測定結果から、数平均分子量(Mn)は10700、重量平均分子量(Mw)は14300であった。実施例1のリグニン誘導体のカルボキシル基の量は、リグニン誘導体1gに対して1.47mmolであった。
<モルタル試験>
実施例1で得られたリグニン誘導体(実施例1−1〜2)、及び、比較のため、オゾン酸化する前の精製リグニン(比較例1−1〜2)、リグニンスルホン酸(BASFポゾリス社製、ポゾリスNo.8)(比較例2−1〜2)について、モルタル試験を行った。モルタル試験では、以下のようにしてモルタルを調製し、初期のモルタル空気量(以下、単に空気量ともいう。)及び0打フロー値を測定した。結果を表1に示す。同じ純分換算添加量で比較した場合、実施例が比較例に対して0打フロー値が大きく、より流動性が良好であることが分かる。
なお、モルタル試験では消泡剤としてMA−404(BASFポゾリス社製)を有姿で40質量%対各成分固形分となる量を、各成分に添加した。
<モルタルフロー試験>
モルタルフロー試験は、温度が20℃±1℃、相対湿度が60%±10%の環境下で行った。
モルタル配合は、C/S/W=500/1350/250(g)とした。
ただし、
C:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
S:セメント強さ試験用標準砂(セメント協会製)
W:実施例1、比較例1、2のサンプルの水酸化ナトリウム水溶液、及び、消泡剤のイオン交換水溶液Wとして、表1に示した添加量の各成分を量り採り、消泡剤MA−404を有姿で各成分の固形分に対して40質量%加え、更にイオン交換水を加えて所定量とし、充分に均一溶解させた。表1において、各成分の添加量は、セメント質量に対する各成分の固形分の質量%で表されている。
<モルタルの調整>
ホバート型モルタルミキサー(型番N−50;ホバート社製)にステンレス製ビーター(撹拌羽根)を取り付け、C、Wを投入し、1速で30秒間混練した。更に1速で混練しながら、Sを30秒かけて投入した。S投入終了後、2速で30秒間混練した後、ミキサーを停止し、15秒間モルタルの掻き落としを行い、その後、75秒間静置した。75秒間静置後、更に60秒間2速で混練を行い、モルタルを調製した。
<モルタル空気量の測定>
上記モルタル空気量(初期空気量)の測定は、JIS−A−1128(2005年改正)の方法により行った。モルタルを500mLのガラス製メスシリンダーに約200mL詰め、径8mmの丸棒で突き、手で軽く振動させて粗い気泡を抜いた。更にモルタルを約200mL加えて同様に気泡を抜いた後、モルタルの体積と質量を測り、各材料の密度から空気量を計算した。
<0打フロー値測定>
モルタルを混練容器からポリエチレン製1L容器に移し、スパチュラで20回撹拌した後、直ちにフロー測定板(30cm×30cm)に置かれたミニスランプコール(JISマイクロコンクリートスランプコーン、A−1173に記載) (上端内径50mm、下端内径100mm、高さ150mm)フローコーン(JIS R5201−1997に記載)に半量詰めて15回つき棒で突き、更にモルタルをフローコーンのすりきりいっぱいまで詰めて15回つき棒で突き、最後に不足分を補い、ミニスランプコーンの表面をならした。その後、直ちにフローコーンを垂直に引き上げ、広がったモルタルの直径(最も長い部分の直径(長径)及び前記長径に対して90度をなす部分の直径)を2箇所測定し、その平均値を0打フロー値とした。
なお、0打フロー値は、同じ純分換算添加量で比較した場合、数値が大きいほど、分散性能が優れている。
Figure 0006446753

Claims (4)

  1. リグニン誘導体を含有するセメント添加剤であって、
    該リグニン誘導体は、リグニン類の酸化物であり、下記一般式(1);
    Figure 0006446753
    (式中、R 〜R は、同一又は異なって、水素原子、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、スルホン酸基、カルボキシル基含有基、(ポリ)アルキレングリコール鎖含有基、炭化水素基、又は、他のフェニルプロパン骨格由来の構造との直接結合を表し、R 〜R のうち少なくとも1つは、他のフェニルプロパン骨格由来の構造との直接結合である。)で表される構造を有し、
    該リグニン類は、硫黄元素の含有率が、リグニン類100質量%に対して、0.1〜質量%の範囲であることを特徴とするセメント添加剤。
  2. リグニン誘導体を含有するセメント添加剤を製造する方法であって、
    該製造方法は、酸性条件下で酸化剤を用いてリグニン類のリグニン骨格を酸化する工程を含み、
    該リグニン類は、硫黄元素の含有率が、リグニン類100質量%に対して、0.1〜1質量%の範囲であることを特徴とするセメント添加剤の製造方法。
  3. 前記酸化剤は、オゾン、酸素、過酸化水素からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項に記載のセメント添加剤の製造方法
  4. 前記酸化剤の使用量は、酸化前のリグニン類が有するフェニルプロパン骨格1モルに対して、0.05〜0.95モルであることを特徴とする請求項又はに記載のセメント添加剤の製造方法
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