JP6442912B2 - 制振システム - Google Patents
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このような制振システムによれば、鉛直方向にダンパーを配置しても、ダンパーの減衰力を確保できる。
<第1参考例>
図12Aは、第1参考例の制振システム1のモデル説明図である。第1参考例の制振システム1は、上部構造部11から吊られた質量体Mで構成された振り子型の制振システム1である。
図12Bは、第2参考例の制振システム1のモデル説明図である。第2参考例の制振システム1は、第1参考例の制振システム1に更にダンパー32を追加した構造である。
第2参考例のダンパー32は、質量体Mの水平方向の変位に対して減衰力を発生するように配置されている。但し、制振対象物となる建物の固有周期が長い場合、吊り部材21の長さLを長くする必要があるため、この結果、質量体Mの水平方向の変位が大きくなる。このため、第2参考例のダンパー32は、水平方向に大きく変位する質量体Mに追従する必要がある。しかし、大ストローク(例えば数メートルのストローク)のダンパー32は、コストがかかってしまう。
<基本構成>
図1Aは、第1実施形態の制振システム1を上から見た図である。図1Bは、図1Aで省略した上部構造部11を上から見た図である。図2A〜図2Cは、図1Aの各部の断面説明図である。以下の説明では、水平方向をXY方向とし、鉛直方向をZ方向として説明することがある。
また、第2質量体M2が第1質量体M1に囲繞されることによって、第2質量体M2が、第1質量体M1の内側で変位することになるため、第2質量体M2の移動範囲が、第1質量体M1の移動範囲よりも狭くなる。既に説明したように第2質量体M2は第1質量体M1よりも上側に位置しているため、第2質量体M2の移動範囲が狭くなれば、上部構造部1の内部空間の上側を狭くすることができる。これにより、横から見たときに上部構造部11をアーチ形状にすることができ、上部構造部11の強度を高めることができる。
連結部材31として、ここでは積層ゴムが用いられている。但し、連結部材31は、積層ゴムに限られるものではなく、第1質量体M1と第2質量体M2との鉛直方向の相対変位を許容しつつ、第1質量体M1と第2質量体M2を水平方向に拘束する部材であれば、他の部材でも良い。例えば、連結部材31は、鉛プラグ入り天然積層ゴム(LRB)や高減衰積層ゴムなどのように、減衰機能を備えたものでも良い。また、連結部材31は、リニアスライダーのような転がり型のものでも良い。
ダンパー32として、ここではオイルダンパーが用いられている。但し、ダンパー32は、オイルダンパーに限られるものではなく、減衰こま(RDT)などでも良い。
第1質量体M1の質量をm1、第2質量体M2の質量をm2、吊り部材21及び支持アーム22の長さをLとすると、このモデルの周期Tは、次式の通りである(なお、上記の通り、第2質量体M2は第1質量体M1よりも質量が小さく構成されているので、m1−m2>0である)。
ダンパー32は、第1質量体M1と第2質量体M2との間に鉛直方向に配置されており、第1質量体M1と第2質量体M2との鉛直方向の相対速度に対して減衰力を発生するように配置されている。これにより、第1質量体M1及び第2質量体M2が水平方向に大きく変位しても、第1質量体M1と第2質量体M2との鉛直方向の相対変位が小さいため、第1実施形態では、小ストロークのダンパー32を用いることができ、制振システム1が安価になる。
・第2参考例の場合
図13A及び図13Bは、図12Bの第2参考例の制振システム1のダンパー32の動作説明図である。図13Aは、制振システム1の水平変位Dxの説明図である。以下の説明では、制振対象物の振動による制振システム1の水平変位をDxとする。図13Bは、図12Bの第2参考例のダンパー32の動作の説明図である。ここでは、ダンパー32の水平方向のストローク量をdxとし、ダンパー32の水平方向のストロークの変化速度をVxとし、ダンパー32の減衰力(抵抗力)をFとする。
図4A及び図4Bは、第1実施形態の制振システム1のダンパー32の動作説明図である。上記と同様に、図4Aに示すように、制振対象物の振動による制振システム1の水平変位をDxとする。図4Bは、第1実施形態のダンパー32の動作の説明図である。ここでは、ダンパー32の鉛直方向のストローク量をdzとし、ダンパー32の鉛直方向のストロークの変化速度をVzとし、ダンパー32の減衰力(抵抗力)をFとする。なお、ダンパー32の鉛直方向のストローク量dzは、第1質量体M1及び第2質量体M2が基準位置にあるときに最大となり、第1質量体M1及び第2質量体M2が水平方向に最大変位したときに最小となる。また、ダンパー32の鉛直方向のストローク変化速度Vzは、第1質量体M1と第2質量体M2との鉛直方向の相対速度に相当する。
図5Bは、ダンパー32の鉛直方向のストローク量dzの時間変化のグラフである。前述の第2参考例では、ダンパー32の水平方向のストローク量dxは制振システム1の水平変位Dxと一致しているのに対し、第1実施形態のダンパー32の鉛直方向のストローク量dz(図5B)は、制振システム1の水平変位Dx(図5A)に対して非線形の関係になっている。これは、第2参考例ではダンパー32が水平方向に配置されているのに対し、第1実施形態のダンパー32は鉛直方向に配置されているためである。
図5Cは、ダンパー32の鉛直方向のストローク変化速度Vzの時間変化のグラフである。ダンパー32の鉛直方向のストローク変化速度Vzは、ダンパー32の鉛直方向のストローク量dzの一次微分になる。また、ダンパー32の鉛直方向のストローク変化速度Vzは、第1質量体M1と第2質量体M2との鉛直方向の相対速度に相当する。図5Dは、ダンパー32の減衰力Fの時間変化のグラフである。ここでは、ダンパー32の減衰係数Cを一定とし、図5Dの減衰力Fは、図5Cの速度Vzと一定の減衰係数C(図14のグラフの傾き)との積として算出できる。
図6Aは、ストローク変化速度Vが小さいときの減衰係数Cが大きく、鉛直方向のストローク変化速度Vが大きいときの減衰係数Cが小さいダンパー32の減衰力Fのグラフ(F−V線図)である。図6Aのグラフの横軸は、ダンパー32のストロークの変化速度Vを示しており、グラフの縦軸は、減衰力F(抵抗力)を示している。ここでは、変化速度Vの低速領域(変化速度VがV1以下の領域)では減衰力Fが変化速度Vに比例して増加し、変化速度VがV1を越えると、減衰力Fが一定になっている。
図6Bは、ストローク変化速度Vが小さいときの減衰係数Cが大きく、鉛直方向のストローク変化速度Vが大きいときの減衰係数Cが小さいダンパー32の減衰係数Cのグラフ(C−V線図)である。図6Bのグラフの横軸は、ダンパー32のストロークの変化速度Vを示しており、グラフの縦軸は、減衰係数Cを示している。減衰力Fは、減衰係数Cと速度Vとの積となるため(F=C×V)、図6Aのグラフ(F−V線図)の各点と原点とを結ぶ線の傾きが、このダンパー32の減衰係数Cとなる。図6Bに示すように、ダンパー32の減衰係数Cは、変化速度Vの低速領域(変化速度VがV1以下の領域)では一定値C1となり、変化速度VがV1を越えると変化速度Vの増加に伴って減少する特性を有する。このため、ダンパー32のストローク変化速度Vが小さいときに減衰係数Cが大きく、ストローク変化速度Vが大きいときに減衰係数Cが小さくなる。ダンパー32は、第1質量体M1と第2質量体M2との間に鉛直方向に配置されているため、ダンパー32は、第1質量体M1と第2質量体M2との鉛直方向の相対速度が小さいときに減衰係数Cが大きく、第1質量体M1と第2質量体M2との鉛直方向の相対速度が大きいときに減衰係数Cが小さくなる。
図7Cは、図6Bのダンパー32を用いた場合の第1実施形態の制振システム1の水平変位Dxに対するダンパー32の減衰力Fのグラフである。水平変位Dxがゼロ近傍のときに減衰力Fがほとんど得られないものの、ダンパー32の減衰係数Cが一定の場合と比べると(図7B参照)、制振対象物の振幅が小さくなっても、減衰力Fが確保されている。これは、鉛直方向の変化速度Vzが小さいときの減衰係数Cが大きいためである。これにより、ダンパー32の減衰係数Cが一定の場合と比べると、制振対象物の振幅が小さくてもダンパー32の吸収エネルギーの極端な低下を抑制でき、振幅に応じた減衰力Fが得やすくなる。
<基本構成>
図9は、第2実施形態の制振システム1を上から見た図である。図10A〜図10Cは、図9の各部の断面説明図である。
上記の第2実施形態では、第1質量体M1が第2質量体M2を囲繞していた。但し、第2質量体M2が第1質量体M1を囲繞しても良い。
図11は、第2実施形態の変形例の説明図である。変形例では、第2質量体M2が第1質量体M1を囲繞している。これにより、第1質量体M1が第2質量体M2の内側に位置するため、吊り部材21の間隔を狭くできる。したがって、上部構造部1の内部空間の上側を更に狭くすることが可能になる。
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
11 上部構造部、
12 下部構造部、
21 吊り部材、
22 支持アーム、
23 支承部材、
31 連結部材、
32 ダンパー、
M1 第1質量体、
M2 第2質量体
Claims (7)
- 制振対象物に固定された上部構造部と、
前記上部構造部から吊られた第1質量体と、
制振対象物に固定された下部構造部と、
前記下部構造部に支持された第2質量体と、
前記第1質量体と前記第2質量体との鉛直方向の相対変位を許容しつつ、前記第1質量体と前記第2質量体を水平方向に拘束する連結部材と、
前記第1質量体と前記第2質量体との間に前記鉛直方向に配置されたダンパーであって、前記第1質量体と前記第2質量体との前記鉛直方向の相対速度が小さいときに減衰係数が大きくなり、前記相対速度が大きいときに前記減衰係数が小さくなり、前記減衰係数が前記相対速度の一変数関数となっているダンパーと
を備えることを特徴とする制振システム。 - 請求項1に記載の制振システムであって、
前記第2質量体は、前記下部構造部に対して回動可能に連結された支持部材によって、前記第1質量体よりも高い位置に支持されている
ことを特徴とする制振システム。 - 請求項2に記載の制振システムであって、
前記第1質量体は、前記第2質量体を囲繞することを特徴とする制振システム。 - 請求項3に記載の制振システムであって、
前記上部構造部は、内部空間の上部が狭くなるアーチ形状である
ことを特徴とする制振システム。 - 請求項1に記載の制振システムであって、
前記第2質量体は、水平方向にスライド可能に前記下部構造部上に支持されていることを特徴とする制振システム。 - 請求項5に記載の制振システムであって、
前記第2質量体は、前記第1質量体を囲繞することを特徴とする制振システム。 - 請求項1〜6のいずれかに記載の制振システムであって、
前記連結部材は、前記第1質量体と前記第2質量体との鉛直方向の相対変位に対して、復元力を生じさせる
ことを特徴とする制振システム。
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