JP6439280B2 - 熱可塑性エラストマー組成物の製造方法 - Google Patents

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本発明は、エチレン/α−オレフィンの共重合体よりなる主鎖と、片末端にビニル基を含有する結晶性プロピレン重合体に由来する側鎖とを有する分岐構造オレフィン系共重合体を含む熱可塑性エラストマー組成物の製造方法に関する。
熱可塑性エラストマーは、加熱により軟化して流動性を有し、冷却するとゴム弾性を有するエラストマーである。熱可塑性エラストマーはその成形加工時に加工温度で溶融し、周知の樹脂成形法で成形加工が容易であり、かつ成形加工後は、各種材料として使用する温度(以下、「使用温度」という)において、架橋ゴム同様の物理的性質を有する、産業上極めて有用な材料である。
従来、熱可塑性エラストマーとして、ブロックコポリマー、特にトリブロックコポリマーなどの各種マルチブロックコポリマーが知られている。一般にブロックコポリマーは、非晶性またはゴム状物性を有する「ソフトセグメント」と、典型的な熱可塑性エラストマーの使用温度で結晶状態またはガラス状態である「ハードセグメント」とが結合した構造を有する。ハードセグメント中のポリマー鎖は、典型的な使用温度で互いに結合し、エラストマーとしての性質を示す。しかしハードセグメントの溶融温度(以下「Tm」とも略記する。)またはハードセグメントのガラス転移温度(以下「Tg」とも略記する。)よりも高い温度で加熱されると、ポリマーは容易に熱可塑性挙動を示すようになる。熱可塑性エラストマーの使用温度は、典型的には室温付近、例えば10℃から40℃の範囲であるが、使用環境や用途によって、より低温(例えば0℃以下)や、より高温(例えば50℃以上)での使用を期待され、耐熱性を要求されることがある。その場合、ハードセグントの熱的性質が重要となる。
熱可塑性エラストマー(TPE)組成物として、よく知られるものとして、スチレン系ブロックコポリマー(SBC)が挙げられ、例えばスチレン−イソプレン−スチレントリブロックコポリマーやスチレン−ブタジエン−スチレントリブロックコポリマー等の直鎖状トリブロックコポリマーが挙げられる。これらのコポリマーは、よく制御されたブロック構造を有し、かつスチレンセグメントが比較的高いTgを有するため、比較的優れた耐熱性とエラストマー性のバランスを示すことが知られている。しかしこれらのスチレン系ブロックコポリマーは通常、逐次アニオン重合または直鎖ジブロックコポリマーの化学的カップリングにより製造されることから、用いることができるモノマー種が限定される。また各々のポリマー鎖が化学量論量の重合開始剤を必要とし、かつ比較的重合反応速度が遅いため、プロセスの経済性に劣る。さらに典型的なSBCのガラス転移温度は約80〜90℃前後であるため、より高い使用温度においては、再度流動性を有し、耐熱性に乏しいため、これらのコポリマーの使用は限定される。
これらの従来技術の欠点を補うため、遷移金属化合物を用いたオレフィンモノマーの挿入、または配位重合によって、これらのブロックコポリマーまたは熱可塑性エラストマー組成物を生成することがプロセスの効率並びに原料の経済性の点から特に望まれており、オレフィン系ブロックコポリマー、具体的にはプロピレン系ブロックコポリマーによる物性改良が検討されている。
プロピレン系ブロックコポリマーは、プロピレンセグメントのTmが、スチレン系ブロックコポリマーのポリスチレンセグメントの持つTgに比べ高く、それにより特に高温下において、スチレン系ブロックコポリマーに比べより高いエラストマー特性を有する。
だが、これらのプロピレン系ブロックコポリマーを製造する際には、リビング重合触媒が用いられている。リビング重合触媒は、理論上1つの触媒分子から1本のポリマー鎖しか得られず、生産性が悪く、用途は比較的少量の高付加価値な分野に限定される。
そこでより生産性に優れた方法で「ブロック様コポリマー」を生産する方法が検討されている。具体的な「ブロック様コポリマー」として、片末端に配位重合可能なビニル基を持つ重合体と、モノマーを共重合させることで側鎖と主鎖の性質の異なるグラフト共重合体を形成する方法が検討されている。
特許文献1には、重合可能なマクロモノマーをソフトセグメント中に共重合した分岐鎖オレフィンコポリマーを含む、特定の物性を持つオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物ならびにその製造方法が開示されている。
特許文献2には、結晶性側鎖としてアイソタクチックポリプロピレンセグメントを持ち、非晶性主鎖としてアタクチックポリプロピレンを持つ枝分かれオレフィンポリマーを含む、熱可塑性エラストマー組成物並びにその製造方法が開示されている。
特許文献3には、側鎖にアイソタクチックポリプロピレンセグメントを有し、主鎖にプロピレンエチレン共重合体を有する分岐プロピレン系共重合体を含む組成物が開示されている。
特許文献4には、側鎖に特定の範囲の数平均分子量を有するアイソタクチックポリプロピレンセグメント、またはシンジオタクチックポリプロピレンセグメントを有し、主鎖に特定範囲の組成比を有するエチレン/α−オレフィン共重合体を有する分岐プロピレン系共重合体を含む組成物が開示されている。
特表2001−527589号公報 特表2001−525463号公報 国際公開第2008/059969号 国際公開第2013/061974号
しかし、特許文献1に記載の分岐鎖オレフィンコポリマーは、側鎖のTmがSBCのTgと比べて高いものの、結晶性ポリプロピレンなどよりも低く、その耐熱性はまだ十分なものとは言えない。また特許文献1に開示されているエラストマー組成物は、本発明者らが追試をしたところ、明らかにエラストマー物性が不足しているものであることがわかった。該文献に記載の分岐鎖オレフィンコポリマーは、主鎖がエチレン共重合体で、側鎖がエチレン単独重合体であるが、エチレン系重合体側鎖は、側鎖同士の結晶化は可能であるものの、結晶化後も側鎖同士の滑りが起こりやすく、物理架橋点としての機能が不十分であるため、エラストマーとしての機械的物性に劣るものと考えられる。
また、特許文献2に記載の枝分かれオレフィンポリマーは、主鎖部分としてアタクチックポリプロピレンが使用されている。しかし一般にアタクチックポリプロピレンのガラス転移点は高く、0℃程度であることが知られており、低温での脆化が著しく、熱可塑性エラストマーの用途として典型的な、結晶性樹脂への添加による低温耐衝撃性の改良効果は望めない。さらにアタクチックポリプロピレンは一般にアイソタクチックポリプロピレンとの相溶性が非常に高いことが知られており、結晶性ポリプロピレンマトリックスに添加した場合、そのマトリックス自体の構造を変化させ、剛性等機械的物性を悪化させてしまう。また主鎖と側鎖の親和性が高いことから、側鎖同士の相互作用も十分なものとは成りえず、エラストマーとしての機械的物性は十分なものとは言えない。
そして特許文献3に記載の発明は、主に流動性改良や耐衝撃性改良に関連するものであり、エラストマーについての開示はない。特許文献3において開示され、実際に製造されているマクロモノマーは分子量が高く、また分岐プロピレン共重合体のうち実際に共重合されていないマクロモノマーも含めて結晶性プロピレンの占める割合は大きく、エラストマーとしての性能を企図したものでないことは明らかである。
特許文献4に記載の発明は、高い機械物性を有するエラストマーである。高結晶性のポリプロピレンを側鎖として持つ熱可塑性エラストマー組成物は、ハードセグメントを形成する側鎖成分(片末端にビニル基を含有する結晶性プロピレン重合体に由来する成分)が比較的低含量であっても優れたエラストマー性を示し、特に非常に柔軟ながら弾性回復率にも優れている。これは高結晶性ポリプロピレン側鎖が物理架橋点として特に優れた作用を発揮していることによるものと考えられ、また、高結晶性ポリプロピレン側鎖とエチレン系3元共重合体主鎖との組み合わせによる特異的かつ優れた特性が発揮されていることによるものと考えられる。
しかし、特許文献4に記載のエラストマーで用いられる重合触媒の活性が低いため、エラストマーの生産性がやや劣るという課題があった。また特許文献4に記載の分岐構造オレフィン系共重合体は、分子量が高く、成型加工速度が劣るため、加工製品としての生産性が制限されるという課題もあった。さらに、メタロセン触媒等の触媒を用いた重合反応由来のオレフィン系重合体は、連鎖移動反応を用いた分子量調整法が知られているが、特許文献4で用いられる重合触媒は水素による連鎖移動が起こりにくく、オレフィン系共重合体の分子量の調整が難しいという課題もあった。
本発明は前記課題に鑑み、耐熱性や機械特性において優れた熱可塑性エラストマーの製造において、より生産性に優れた製造方法であって、加工性に優れた熱可塑性エラストマーを提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有する触媒を用いて重合した場合に、重合反応活性が高くなることを見出した。そして本発明者は、重合の結果得られる熱可塑性エラストマー組成物は、容易に分子量の調整が可能であり、加工性の高いエラストマーが得られることを見出した。更に従来のエラストマーに比べて透明性の高いエラストマー組成物であることを見出した。
すなわち本発明の要旨は、以下に存する。
[1]α−オレフィン含有率が70mol%以下であるエチレン/α−オレフィン共重合体の主鎖と、片末端にビニル基を含有する結晶性プロピレン重合体に由来する側鎖とを有する分岐構造オレフィン系共重合体を含む熱可塑性エラストマー組成物の製造方法であって、前記結晶性プロピレン重合体と、エチレンと、少なくとも1種の炭素数3〜20のα−オレフィンとを、下記一般式(I)に記載の遷移金属触媒の存在下で重合し、分岐構造オレフィン系重合体を得る工程(重合工程)を有することを特徴とする、熱可塑性エラストマー組成物の製造方法、
Figure 0006439280
(上記一般式(I)において、Mは、チタン、ジルコニウムおよびハフニウムから選ばれる少なくとも1種の金属原子である。
1〜R5は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜20のアルキル基、シクロアルキル基、ヘテロ原子含有アルキル基、ヘテロ原子含有シクロアルキル基、アリール基、およびシリル基から選ばれる少なくとも1種であり、これらの基は、さらに置換基を有していてもよい。またR1〜R5は、隣接するものが互いに結合し縮合環を形成していてもよく、R1〜R5から選ばれる少なくとも1つが、Zと2価の架橋基を形成していてもよい。
Xは、モノアニオン性配位子、ジアニオン性配位子、および中性配位子から選ばれる少なくとも1種であり、mは、Xの数を示し、0〜5の整数である。
Zは、窒素、リン、酸素および硫黄から選ばれる少なくとも1種の原子または当該原子を含む置換基であって、前記窒素、リン、酸素および硫黄から選ばれる少なくとも1種の原子と、Mとの間で共有結合を形成するものを表わす。)
[2]前記結晶性プロピレン重合体のアイソタクチックペンタッド分率が、0.80以上であることを特徴とする、上記[1]に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法、
[3]前記結晶性プロピレン重合体のシンジオタクチックペンタッド分率が、0.60以上であることを特徴とする、上記[1]に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法、
[4]前記結晶性プロピレン重合体の数平均分子量([Mn(GPC)])が、50,000以下であることを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれか1に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法、
[5]前記熱可塑性エラストマー組成物の重量平均分子量が、400,000以下であることを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれか1に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法、
[6]前記結晶性プロピレン重合体を、下記一般式(II)に記載の遷移金属化合物を用いて重合する工程を有することを特徴とする上記[1]〜[5]のいずれか1に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
Figure 0006439280
(一般式(II)中、R11およびR12は、それぞれ独立して、炭素数4〜16の窒素、酸素、または硫黄を含有する複素環基を示す。また、R13およびR14は、それぞれ独立して、炭素数6〜16のハロゲン、ケイ素、酸素、硫黄、窒素、ホウ素、およびリンから選ばれる少なくとも1つのへテロ原子を含有してもよいアリール基、または炭素数6〜16の窒素、酸素、若しくは硫黄を含有する複素環基を表す。さらに、X11およびY11は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、アミノ基、または炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基を表し、Q11は、炭素数1〜20の2価の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基、またはゲルミレン基を表す。)
[7]前記熱可塑性エラストマー組成物中に含まれる前記結晶性プロピレン重合体の含有率が、50質量%以下であることを特徴とする上記[1]〜[6]のいずれか1に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法、に存する。
本発明によれば、耐熱性や、破断点伸び、弾性回復率などの機械特性に優れた熱可塑性エラストマーを、高い生産性で提供することが可能になる。さらに分子量調整が容易になるため、加工性に富んだ熱可塑性エラストマーを提供することが可能になる。またオレフィン系ブロックコポリマーによる透明な熱可塑性エラストマー組成物が得られるという効果も有する。
CFC測定により得られた溶出成分のクロマトグラムから具体的に分子量分布を求める際の方法を表すものである。 実施例2のCFC測定により得られた微分溶出曲線及び積分溶出曲線である。 比較例3のCFC測定により得られた微分溶出曲線及び積分溶出曲線である。
以下、本発明の実施の形態について更に詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例であり、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨の範囲の内で種々変形して実施することができる。
本発明の製造方法で得られる熱可塑性エラストマー組成物(以下、「本発明の組成物」と称することがある。)は、エチレン/α−オレフィン共重合体の主鎖と、片末端にビニル基を含有する結晶性プロピレン重合体に由来する側鎖とを有する分岐構造オレフィン系共重合体(以下、「本発明の分岐構造オレフィン系共重合体」と称することがある。)を含む熱可塑性エラストマー組成物である。
以下、本発明の組成物を構成する各成分についてさらに詳細に説明する。
<分岐構造オレフィン系共重合体>
本発明の組成物は、本発明の分岐構造オレフィン系共重合体を構成成分として含む。
該分岐構造オレフィン系共重合体は、主鎖がエチレンおよびα−オレフィンの共重合体であり、側鎖が、片末端にビニル基を含有する結晶性プロピレン重合体(以下、「結晶性ポリプロピレンマクロモノマー」と称することがある。)に由来するものである。
本発明の分岐構造オレフィン系共重合体の融点(Tm)は、特に限定されるものではないが、通常結晶性ポリプロピレンマクロモノマーに由来する融点(Tm)を有する。これらの好ましい値は、結晶性ポリプロピレンマクロモノマーについて好ましい値と同様であるが、結晶性ポリプロピレンマクロモノマーの融点(Tm)と異なっていてもよい。
また、本発明の分岐構造オレフィン系共重合体の分子量は特に限定されるものではないが、重量平均分子量(Mw)はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって測定され、好ましくは400,000以下であり、より好ましくは300,000以下である。
但し、通常、本発明の分岐構造オレフィン系共重合体は、重合生成物中において、未反応原料等との混合物として存在するため、これを単離し、単独でその分子量を評価することは事実上不可能である。したがってこの分子量は後に述べられる組成物全体の分子量として評価される。
(主鎖:エチレン/α−オレフィン共重合体)
本発明の分岐構造オレフィン系共重合体の主鎖は、エチレン/α−オレフィン共重合体、すなわちエチレンとα−オレフィンとの共重合体である。
エチレンおよびα−オレフィンの共重合体は、本発明の熱可塑性エラストマー組成物において、非晶性またはゴム状物性を有する「ソフトセグメント」に相当する。前記主鎖は「ソフトセグメント」のドメイン特性に適するように、通常、低結晶性であり、好ましくは非晶質性である。
前記主鎖として用いられるエチレン/α−オレフィン共重合体の種類は特に限定されるものではないが、具体的には、(b)エチレンと、(c)少なくとも1種の炭素数3〜20のα−オレフィンとを共重合して得られる共重合体であり、特にプロセス、経済性、物性の観点から、(b)エチレンと、(c−1)少なくとも1種の炭素数3〜8のα−オレフィンを共重合して得られる共重合体が好ましい。
前記主鎖に用いられるα−オレフィンとしてより好ましくはプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンであり、さらに好ましくはプロピレン、1−ブテンであり、特に好ましくはプロピレンである。主鎖をエチレンとプロピレンで構成することにより、コスト面で有利なほか、原料がいずれも気体であることから共重合反応の製造工程を簡素化でき、生産性を向上させることができる。
前記エチレン/α−オレフィンの共重合体中に含まれるα−オレフィンの含有率、即ち、主鎖中α−オレフィン含有率は、70mol%以下であり、好ましくは60mol%以下、より好ましくは50mol%以下である。また下限は特に制限されるものではないが、通常5mol%以上、好ましくは10mol%以上である。主鎖中α−オレフィン含有率が前記上限超過の場合は、主鎖と側鎖との相溶性が高くなり過ぎ、側鎖同士が相分離ないし共結晶化する可能性を低下させ、分岐構造オレフィン系共重合体鎖間の物理架橋点の形成が困難になる場合がある。また前記下限値未満では柔軟性に乏しいものとなり、エラストマーとして要求される性質に適さない場合がある。
前記主鎖中には、本発明の効果を損ねない範囲において、エチレン/α−オレフィン以外の共重合成分を含んでいてもよい。具体的な共重合成分としてはジエンが挙げられる。
前記主鎖に用いられるジエンとしては、モノマー分子内に2つ以上の二重結合を有しているものであれば特に限定はされず、共役ジエン、非共役ジエンのいずれでもよく、またジエンは直鎖状でも分岐鎖を有していてもよく、分子内に環状構造を有していてもよい。
前記ジエンとしては、炭素数は特に限定はされないが、通常炭素数4〜20のジエンであり、炭素数8〜20のジエンが好ましい。
好ましいジエンとしては、共重合されやすい構造(例えば末端ビニル基やノルボルネン骨格)を有するものが、反応性の上で好ましい。またジエン中の二重結合部分の反応選択性が高いもの、すなわちジエン中の2つの二重結合のうち、一つの二重結合が共重合で消費され、一つの二重結合が、ポリマー中に二重結合として残るもの、が重合段階で架橋してしまうことがないため好ましい。
具体的なジエンとしては、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ブチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、ノルボルナジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、4−ビニルシクロヘキセンが挙げられる。特に好ましいジエンは、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、4−ビニルシクロヘキセンである。
前記主鎖中にジエンが含まれる場合、主鎖中のジエン含有率は、特に限定されないが、通常は、主鎖中のα−オレフィンの含有率よりも少なく、通常0.1mol%以上、10mol%以下、好ましくは5mol%以下であり、より好ましくは1mol%以下であり、さらに好ましくは0.5mol%以下である。主鎖中ジエン含有率が前記上限超過の場合は、本発明の分岐構造オレフィン系共重合体を架橋した場合、架橋度が大きくなり過ぎ、本発明の組成物を結晶性樹脂に添加した場合、マトリックス中に微分散されず、粗大なゲルが発生する場合がある。
前記主鎖中にジエンが含まれる場合、主鎖中α−オレフィン含有率と主鎖中ジエン含有率の合計は、特に限定されないが、通常5mol%以上であり、好ましくは10mol%以上であり、通常70mol%以下であり、好ましくは60mol%以下である。
本発明において主鎖として用いられるエチレン/α−オレフィン共重合体のガラス転移点(Tg)は、特に限定されるものではないが、そのガラス転移点(Tg)が、通常−30℃以下であり、好ましくは−50℃以下である。
本発明において主鎖として用いられるエチレン/α−オレフィン共重合体の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、好ましくは380,000以下、より好ましくは350,000以下であり、さらに好ましくは300,000以下である。本発明の組成物に含まれる本発明の分岐構造オレフィン系共重合体は分岐構造を持つため、主鎖に当たる部分の分子量を測定するのは事実上不可能であるが、同一触媒系で結晶性ポリプロピレンマクロモノマーに由来する側鎖を含まないエチレン、およびα−オレフィンの共重合体を製造した場合の分子量や、実際の分岐構造オレフィン系共重合体の分子量から側鎖の影響を割り引くことで評価することができる。
本発明において主鎖として用いられるエチレン/α−オレフィン共重合体の重合形式は、本発明のエラストマーの物性が得られる限りにおいては特に限定されないが、通常は主鎖中にα−オレフィンがランダムに共重合した形のエチレン/α−オレフィン共重合体である。
(結晶性ポリプロピレンマクロモノマーに由来する側鎖)
本発明の分岐構造オレフィン系共重合体の側鎖は、片末端にビニル基を含有する結晶性プロピレン重合体に由来するものであり、いわゆる結晶性ポリプロピレンマクロモノマーに由来するものである。本発明の組成物において、前記側鎖は結晶状態またはガラス状態である「ハードセグメント」として機能し、「ソフトセグメント」である主鎖部分と、互いに結合することで、エラストマーとしての性質を示すようになると考えられる。具体的には、前記側鎖が、「ハードセグメント」として分子間で互いに結晶化し、「ソフトセグメント」である主鎖部分を架橋することで、組成物にエラストマーとしての性質を与える。ポリプロピレンの結晶は、他の結晶性ポリオレフィンの中でも特に剛直であり、それゆえに結晶性ポリプロピレンマクロモノマーに由来する側鎖はハードセグメントとしての性能が特に高いと考えられる。また立体規則性の高いものは融点が高く、SBCやポリエチレン系のハードセグメントを含む組成物に比べ、特に高い耐熱性を有すると考えられる。
本発明において用いられる結晶性ポリプロピレンマクロモノマーは、本発明の分岐構造オレフィン系共重合体において側鎖を形成する重合体であり、片末端にビニル基を含有する結晶性プロピレン重合体である。
結晶性ポリプロピレンマクロモノマーの末端ビニル基とは、プロピレン重合の終了末端において、β−水素脱離やβ−メチル脱離などが起こることによって末端に不飽和結合が生じ、その生じた不飽和結合の4つの置換基のうち3つの置換基が水素原子であることを指す。この末端ビニル基は1−プロペニル基とも呼ばれる。通常、このビニル基以外の不飽和末端、例えばビニリデン基や内部オレフィンなどは、配位重合によって挿入されることは困難であり、配位重合によって結晶性ポリプロピレンマクロモノマーを共重合しようとする際には特に末端がビニル基であることが重要である。
結晶性ポリプロピレンマクロモノマーは、通常、一方の末端にビニル基を有するが、該結晶性ポリプロピレンマクロモノマー中には、いずれの末端にもビニル基を有さない分子や両方の末端がいずれもビニル基である分子、および少なくとも一方の末端にビニリデン基を有する分子を含んでいてもよい。好ましくは、マクロモノマー分子の一方の末端がビニル基であり、もう一方の末端がアルキル基のもののみを含むものである。
得られた結晶性ポリプロピレンマクロモノマーのうち、片末端にビニル基を有する分子の割合(t-vinyl%)は、通常50%以上であり、80%以上が好ましく、90%以上が特に好ましい。t-vinyl%が50%未満では添加した結晶性ポリプロピレンマクロモノマーのうち、本発明の分岐構造オレフィン系共重合体に側鎖として取り込まれる割合が少なく、該共重合体のエラストマーとしての性能が不十分となるおそれがある。片末端にビニル基を有するマクロモノマー分子の割合(t−vinyl%)は、全マクロモノマー分子のうち、ビニル基を末端に有する分子の数の比率を表し、具体的には以下のように計算される。
(t−vinyl%)=[Mn(GPC)]/[Mn(NMR)]×100
ここで[Mn(GPC)]はGPCによって測定されるマクロモノマーの数平均分子量、[Mn(NMR)]は全てのマクロモノマー分子において、各分子の一方の末端がすべてビニル基、もう一方の末端がすべてアルキル基であると仮定した場合、NMR測定により求められるビニル基以外のアルキル炭素(sp3炭素)上の総プロトン数より計算されるマクロモノマーの数平均分子量である。
上記特徴を満たすために、結晶性ポリプロピレンマクロモノマーは、後述する製造方法のような適切な触媒、重合条件を用いて製造される。
また結晶性ポリプロピレンマクロモノマーとしては、剛性および耐熱性を阻害しない限り、結晶性ポリプロピレン側鎖を持つ、分岐型の結晶性ポリプロピレンマクロモノマーであってもよい。
前記結晶性ポリプロピレンマクロモノマーの構造は、特に限定されるものではないが、具体的にはそのマクロモノマー中のポリプロピレンが、立体規則性の高い構造を有するものである。ポリプロピレンの立体規則性の高さを表す因子として、「ペンタッド(分率)」が用いられる。ペンタッドはポリプロピレンの隣り合う側鎖メチル基の相対的配置の連続性を示すもので、この値が高ければ高いほど、立体規則性が高いと解釈される。アイソタクチックペンタッド分率(mmmm)とは、5個のプロピレンモノマー単位が連続してメソ結合している連鎖の中心のプロピレン単位の、全プロピレン単位に対する割合を百分率で表したものである。シンジオタクチックペンタッド分率(rrrr)は、5個のプロピレンモノマー単位が連続してラセミ結合している連鎖の中心のプロピレン単位の、全プロピレン単位に対する割合を百分率で表したものである。ペンタッドは通常、13C−NMRによって決定される。なお具体的には特開2003−292700号公報に記載の方法により求められる。本発明において用いられる結晶性ポリプロピレンマクロモノマーの構造としては、好ましくは、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm)が高いもの、またはシンジオタクチックペンタッド分率(rrrr)が高いものである。これらのものは「ハードセグメント」として、分岐構造オレフィン系共重合体間に、より強固な結晶化度の高い結晶を形成することにより、これがより強固な架橋点として作用することで優れたエラストマー性能を与えると考えられるためである。
アイソタクチックペンタッド分率の高い結晶性ポリプロピレンマクロモノマー(以下、「アイソタクチックポリプロピレンマクロモノマー」と称することがある)とは、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm)が、通常0.80以上、好ましくは0.90以上のものである。アイソタクチックペンタッド分率が大きくなるに伴い、融点が上昇し、よ
り耐熱性が向上する点で好ましい。アイソタクチックペンタッド分率の上限は本発明の目的を阻害しない限り特に制限はされないが、通常計算上の上限である1.00が上限である。
シンジオタクチックペンタッド分率の高いポリプロピレンマクロモノマー(以下、「シンジオタクチックポリプロピレンマクロモノマー」と称することがある)としては、シンジオタクチックペンタッド分率(rrrr)が、通常0.60以上であり、好ましくは0.70以上であり、より好ましくは0.80以上であり、さらに好ましくは0.90以上のものである。シンジオタクチックペンタッド分率が向上するに連れ、融点が向上し、より耐熱性が向上するので好ましい。シンジオタクチックペンタッド分率の上限は本発明の目的を阻害しない限り特に制限はされないが、通常計算上の上限である1.00が上限である。
本発明の分岐構造オレフィン系共重合体の側鎖の構成成分として、エチレンやプロピレン以外のα−オレフィンや、ジエンに由来する成分を含んでいてもよい。ポリプロピレンを重合する過程で導入されうる若干量の異種結合や重合時の溶解性を補償するための若干量のコモノマーは、側鎖の剛性並びに耐熱性を著しく阻害しない限りにおいて許容される。側鎖の剛性ならびに耐熱性を保つ面では、側鎖はプロピレンの単独重合体に由来することが好ましい。
本発明に用いられる結晶性ポリプロピレンマクロモノマーは、通常60℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは120℃以上の融点(Tm)を有する。融点は示差熱分析(DSC)によって規定することができ、結晶性ポリプロピレンマクロモノマーの結晶性の指標として用いることができる。非晶性、または低結晶性のポリプロピレンマクロモノマーは物理的架橋点を形成しうるハードセグメントとして働くことができず、分岐構造オレフィン系共重合体中に側鎖として存在したとしてもエラストマーとしての性能は期待されない。
本発明に用いられる結晶性ポリプロピレンマクロモノマーの分子量は特に限定されないが、目的とする物理的および機械的特性の組成物を得るために任意に調節することができる。
結晶性ポリプロピレンマクロモノマーの数平均分子量は、通常50,000以下、好ましくは30,000以下であり、より好ましくは10,000以下である。また前記マクロモノマーの数平均分子量(Mn)は通常1,000以上、好ましくは3,000以上である。結晶性ポリプロピレンマクロモノマーの数平均分子量が前記上限超過では、重合反応に用いるマクロモノマーの重量に対する、マクロモノマーの分子数が著しく低下するため、結果的に、分岐構造オレフィン系共重合体中に導入される側鎖の本数が著しく低下する。本発明の組成物が、エラストマーとしての機能を発現するためには、本発明の分岐構造オレフィン系共重合体分子の主鎖1本あたり少なくとも2本以上の側鎖、すなわち2か所以上の物理的架橋点が必要となるが、側鎖の本数が低下することにより、分岐構造オレフィン系共重合体中の十分な数の物理的架橋点が得られなくことがあるため、エラストマー性能を損なうことがある。また、本発明に用いられる結晶性ポリプロピレンマクロモノマーの分子量が前記下限未満では側鎖間の絡み合いが困難になり、ポリマー鎖間の物理的架橋点の成長が促進されないことで同じく組成物全体としてのエラストマー性能が低下することがある。
なお結晶性ポリプロピレンマクロモノマーの数平均分子量は上記した通り、GPCによって測定されるマクロモノマーの数平均分子量([Mn(GPC)])および1H−NMRスペクトルによって定量される数平均分子量([Mn(NMR)])があるが、「結晶性ポリプロピレンマクロモノマーの数平均分子量」は、通常はGPCから求めた値([Mn(GPC)])を用い、特に本発明において前記の数平均分子量の値が異なる場合は、GPCによる数平均分子量([Mn(GPC)])を数平均分子量とし、その際、[Mn(NMR)]は、上記した片末端にビニル基を有する分子の割合(t-vinyl%)を求める際にのみ用いる値とする。
本発明に用いられる結晶性ポリプロピレンマクロモノマーの分子量分布に特に限定はないが、側鎖の分子量による精密な物性制御を可能にするため、側鎖の分子量分布はできるだけ狭いことが好ましい。本発明に用いられる結晶性ポリプロピレンマクロモノマーの分子量分布は、Mw/Mnで通常1以上であり、6以下、好ましくは3以下である。
本発明の分岐構造オレフィン系共重合体に含まれる結晶性プロピレンマクロモノマー由来の側鎖の含有率は、特に限定されるものではないが、原料(マクロモノマー)換算で、分岐構造オレフィン系共重合体を構成する全原料全モノマーに対し、通常0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、通常50質量%以下、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下である。この割合が前記下限未満では実質的に側鎖を含むコポリマー鎖が少なく、ポリマー鎖間の物理的架橋が形成されにくい傾向がある。また前記上限超過では、組成物全体の柔軟性が乏しくなる傾向があり、熱可塑性エラストマーとして要求される性質に適さない場合がある。
本発明の組成物は、結晶性ポリプロピレンマクロモノマー由来の側鎖を比較的低い含有率で含んでいても熱可塑性エラストマーとしての機能を発現する。したがって、従来のポリオレフィン系エラストマーでは不可能であった、非常に柔軟で、低密度でありながら、高い耐熱性を持ち、かつエラストマー性能の高い組成物を製造することが可能である。
本発明で用いられる結晶性ポリプロピレンマクロモノマー、具体的には前記アイソタクチックポリプロピレンマクロモノマー、または前記シンジオタクチックポリプロピレンマクロモノマーを製造する方法は、特に限定されるものではなく、従来公知のマクロモノマーの製造方法を適宜用いることができ、高結晶性のポリプロピレンマクロモノマーを効率よく製造可能な方法が好ましい。より具体的には、遷移金属化合物を用いたプロピレンの配位重合によって製造され、重合終了末端が高い割合でビニル基となる手法が経済的な観点から好ましい。
例えば前記アイソタクチックポリプロピレンマクロモノマーを製造する方法としては、ステレオリジッドなC2対称架橋メタロセン触媒を用い、高温下でプロピレンを重合することによりβ−メチル基脱離反応が頻発することを利用し、末端にビニル基を導入する方法(例えば特表2001−525461号公報)、特定の部位にかさ高い置換基を有する錯体を用いることにより、または特定の部位に複素環基を有する錯体を用いることにより、比較的低温でのβメチル脱離反応の頻度を高めることで高い立体規則性を保ちながら製造する方法(例えば特開平11−349634号公報、特開2009−299045号公報等)、アイソタクチック構造選択的メタロセン触媒によるプロピレン中、塩化ビニルなど脱離しやすい官能基を持つビニルコモノマーを共重合させ、このコモノマーが挿入と同時にβ官能基脱離を起こし選択的に末端ビニル基を持つマクロモノマーを製造する方法(Gaynor,S.G.Macromolecules 2003,36,4692−4698)や、プロピレンの2,1−挿入が優先するプロピレン重合触媒(例えば、ピリジルジイミン鉄(II)錯体に代表されるような後周期遷移金属錯体)を用いて、比較的困難なβ−メチル基脱離過程を経ることなく、β−水素脱離を経て末端ビニル基を導入する方法(Brookhart,M.et.al.Macromolecules 1999,
32,2120)等を挙げることができる。
このうち特定の部位に複素環基を有する錯体を用いることにより、比較的低温でのβメチル脱離反応の頻度を高めることで高い立体規則性を保ちながら製造する方法(例えば、特開2009−299045号公報)が、高立体規則性と高ビニル選択性の両立の観点から特に好ましい。
前記シンジオタクチックポリプロピレンマクロモノマーを製造する方法としては、非常に嵩高い置換基を持つ非架橋メタロセン触媒を用いる方法(Resconi,L.et.al.J.Am.Chem.Soc.1992,114,1025.)、ステレオリジッドなCs対称架橋メタロセン触媒を用い高温下でプロピレンを重合する方法(特表2001−525461号公報)、シンジオタクチック選択的メタロセン触媒によるプロピレン中、塩化ビニルなど脱離しやすい官能基を持つビニルコモノマーを共重合させ、このビニルコモノマーが挿入と同時にβ官能基脱離を起こし選択的に末端ビニル基を持つマクロモノマーを製造する方法(Kaminsky,W.et.al.Macromol.Chem.Phys.2010,ASAP)、特定の置換基を持つビス(フェノキシイミン)チタン錯体が、プロピレンの2,1−挿入からのβ水素脱離によって、シンジオタクチックポリプロピレンの末端にビニル基が選択的に導入する方法(国際公開第03/025025号、またはCherian,A.E.et.al,Macromolecules 2005,38,6268など)等が挙げられる。
このうち高立体規則性と高ビニル選択性の両立の観点から、特定の置換基を持つビス(フェノキシイミン)チタン錯体を用い、プロピレンの2,1−挿入からのβ水素脱離によって、シンジオタクチックポリプロピレンの末端にビニル基を選択的に導入する方法が好ましい。
特に好ましくは、結晶性ポリプロピレンマクロモノマーの製造時に、より低温で効率よく末端にビニル基を選択的に導入できること、更に引き続く共重合体の重合温度と近接した温度でマクロモノマーを製造できることから製造工程上有利なことから、特開2009−299045号公報に記載の触媒を用いることが好ましく、下記一般式(II)で表わされる遷移金属化合物を用いて製造する方法がより好ましい。
Figure 0006439280
一般式(II)中、R11およびR12は、それぞれ独立して、炭素数4〜16の窒素、酸素、または硫黄を含有する複素環基を示す。また、R13およびR14は、それぞれ独立して、炭素数6〜16のハロゲン、ケイ素、酸素、硫黄、窒素、ホウ素、およびリンから選ばれる少なくとも1つのへテロ原子を含有してもよいアリール基、または炭素数6〜16の窒素、酸素、若しくは硫黄を含有する複素環基を表す。さらに、X11およびY11は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、アミノ基、または炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基を表し、Q11は、炭素数1〜20の2価の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基、またはゲルミレン基を表す。
上記R11およびR12の炭素数4〜16の窒素、酸素、または硫黄を含有する複素環基は、好ましくは2−フリル基、置換された2−フリル基、置換された2−チエニル基、または置換された2−フルフリル基であり、さらに好ましくは、置換された2−フリル基である。
複素環基上に適当な大きさの置換基を導入することにより、複素環と遷移金属上の配位場、成長ポリマー鎖との相対的な位置関係を適切にすることができ、末端にビニル基を高選択的に導入した結晶性ポリプロピレンマクロモノマーを得ることができる。
また、置換された2−フリル基、置換された2−チエニル基、および置換された2−フルフリル基の置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基、トリアルキルシリル基等が挙げられる。これらのうち、メチル基、トリメチルシリル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
さらに、R11およびR12として、特に好ましくは、2−(5−メチル)−フリル基である。また、R11およびR12は、互いに同一である場合が好ましい。
上記R13およびR14は、それぞれ独立に炭素数6〜16のハロゲン、ケイ素、酸素、硫黄、窒素、ホウ素、およびリンから選ばれる少なくとも1つのヘテロ元素を含有してもよいアリール基、または炭素数6〜16の窒素、酸素、若しくは硫黄を含有する複素環基であるが、特に、R13とR14を、より嵩高くすることで、より立体規則性が高く、異種結合の少ない結晶性ポリプロピレンマクロモノマーを得ることができる。
そこで、R13およびR14は、それぞれ独立に炭素数6〜16になる範囲で、アリール環状骨格上に、1つ以上の、炭素数1〜6の炭化水素基、炭素数1〜6の珪素含有炭化水素基、炭素数1〜6のハロゲン含有炭化水素基を置換基として有するアリール基が好ましく、そのようなR13およびR14の具体例としては、4−t−ブチルフェニル基、2,3―ジメチルフェニル基、3,5―ジ−t−ブチルフェニル基、4−クロロフェニル基、4−トリメチルシリルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基である。
また、R13およびR14としては、更に好ましくは、炭素数6〜16になる範囲で、1つ以上の、炭素数1〜6の炭化水素基、炭素数1〜6の珪素含有炭化水素基、炭素数1〜6のハロゲン含有炭化水素基を置換基として有するフェニル基である。また更に、その置換される位置は、フェニル基上の4位が好ましい。そのようなR13およびR14の具体例としては、4−t−ブチルフェニル基、4−ビフェニリル基、4−クロロフェニル基、4−トリメチルシリルフェニル基である。また、R13とR14が互いに同一である場合が好ましい。
一般式(II)中、X11およびY11は、補助配位子である。したがって、この目的が達成される限りX11とY11の種類が制限されるものではなく、それぞれ独立して、水素、ハロゲン基、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミド基、トリフルオロメタンスルホン酸基、炭素数1〜20のリン含有炭化水素基、または炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基を示す。
一般式(II)中、Q11は、二つの五員環を結合する、炭素数1〜20の2価の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基、およびゲルミレン基の何れかを示す。上述のシリレン基、またはゲルミレン基上に2個の炭化水素基が存在する場合は、それらが互いに結合して環構造を形成していてもよい。
上記のQ11の具体例としては、メチレン、メチルメチレン、ジメチルメチレン、1,2−エチレン、等のアルキレン基;ジフェニルメチレン等のアリールアルキレン基;シリレン基;メチルシリレン、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジ(n−プロピル)シリレン、ジ(i−プロピル)シリレン、ジ(シクロヘキシル)シリレン等のアルキルシリレン基、メチル(フェニル)シリレン等の(アルキル)(アリール)シリレン基;ジフェニルシリレン等のアリールシリレン基;テトラメチルジシリレン等のアルキルオリゴシリレン基;ゲルミレン基;上記の2価の炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基のケイ素をゲルマニウムに置換したアルキルゲルミレン基;(アルキル)(アリール)ゲルミレン基;アリールゲルミレン基などを挙げることができる。これらの中では、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基、または、炭素数1〜20の炭化水素基を有するゲルミレン基が好ましく、アルキルシリレン基、アルキルゲルミレン基が特に好ましい。
なお前記一般式(II)で表わされる遷移金属化合物は、通常、後述する共触媒と組み合わせて用いられる。好ましくは有機アルミニウムオキシ化合物、触媒前駆体と反応してこれをカチオンに変換することが可能なイオン性化合物、ルイス酸、イオン交換性層状ケイ酸塩などが共触媒として用いられ、特に好ましくは有機アルミニウムオキシ化合物、イオン交換性層状ケイ酸塩が用いられる。また上記組み合わせにおいて、さらに有機アルミニウム化合物を組み合わせて用いてもよい。
本発明において用いられる結晶性ポリプロピレンマクロモノマーの製造方法としては、制限はされないが、前述の通り、経済的な観点でプロピレンの配位重合によって製造することが好ましい。その重合条件は目的物が得られる範囲において特に制約はなく、溶液重合、スラリー重合、実質的に溶媒を使用しない液相無溶媒重合(バルク重合)、気相重合、溶融重合などが使用可能であり、また連続重合、回分式重合および、いわゆる多段重合を採用してもよい。
重合温度、重合圧力および重合時間にも特に制限はないが、通常は、生産性や末端ビニル基の選択性を考慮して、適宜設定を行なうことができる。
重合温度としては、通常0℃以上、好ましくは30℃以上、更に好ましくは50℃以上、特に好ましくは70℃以上、また、通常150℃以下、好ましくは100℃以下の範囲である。重合圧力としては、通常0.01MPa以上、好ましくは0.05MPa以上、更に好ましくは0.1MPa以上、また、通常100MPa以下、好ましくは20MPa以下、更に好ましくは5MPa以下の範囲である。この方法で製造した場合、結晶性ポリプロピレンマクロモノマー分子の末端は、通常は、重合反応の開始末端がアルキル基、重合反応の終了末端が高い確率でビニル基になるためである。なおこの場合、マクロモノマー分子の両方の末端がビニル基になる可能性は、通常極めて低くなる。
<熱可塑性エラストマー組成物>
(1)構成成分
本発明の組成物は、以下の本発明の分岐構造オレフィン系共重合体(以下「(A)成分」と称することがある)を含む。
(A)エチレンおよびα−オレフィンの共重合体よりなる主鎖と、片末端にビニル基を含有する結晶性プロピレン重合体に由来する側鎖とを有する分岐構造オレフィン系共重合体
本発明の組成物のそれ以外の構成成分としては、本発明の目的の物性を満たす範囲において特に限定されるものではないが、通常、以下の(B)および(C)の成分を含むものである(以下、それぞれ「(B)成分」、「(C)成分」と称することがある)。
(B)エチレンおよびα−オレフィンの共重合体
(C)結晶性ポリプロピレンマクロモノマー
このうち(A)成分は、<分岐構造オレフィン系共重合体>として前述した本発明の分岐構造オレフィン系共重合体に相当する。
(B)成分は通常、上記共重合体(A)成分の合成反応において生成するエチレン/α−オレフィン共重合体中にマクロモノマーが取り込まれず、主鎖成分のみとなったポリマーに相当する。
(C)成分は通常、(A)成分の製造時の反応原料であり、具体的には上記共重合体(A)成分の合成反応において取り込まれなかった未反応のマクロモノマーに相当する。(A)成分の合成反応の反応系に添加されたマクロモノマーは、通常、(A)成分の側鎖として取り込まれるか、(C)成分として本発明の熱可塑性エラストマー組成物中に含まれる。
(A)成分中に取り込まれるマクロモノマーと、(C)成分の重量比率は、特に限定されるものではなく、目的の物性を満たすよう適宜調整される。
本発明の組成物中に含まれる上記(A)、(B)および(C)成分の割合に特に限定はないが、目的の物性を満たすように任意に調整される。好ましくは(B)成分、(C)成分の含有量が少ないものであり、より好ましくは本発明の組成物は(A)成分だけで構成されるものである。
上記(A)〜(C)成分を含む本発明の組成物は、上記の通り(A)成分の製造時の共重合反応の結果得られるものであっても、また(A)〜(C)成分をそれぞれ独立に合成して混合してもよいが、製造面での容易さから、上記(A)成分の製造時の共重合反応の結果得られるものが好ましい。
本発明の組成物中に含有される結晶性ポリプロピレンマクロモノマーおよび結晶性ポリプロピレンマクロモノマーに由来する成分、即ち、上記(C)成分と、(A)成分に側鎖として導入された結晶性ポリプロピレンマクロモノマーに由来する成分の合計の含有量は30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。一方、この含有量は1質量%以上、特に5質量%以上であることが好ましい。
本発明の組成物中に含有される結晶性ポリプロピレンマクロモノマーおよび結晶性ポリプロピレンマクロモノマーに由来する成分、即ち、上記(C)成分と、(A)成分に側鎖として導入された結晶性ポリプロピレンマクロモノマーに由来する成分の合計の含有率が上記上限超過では、組成物全体の柔軟性が乏しくなる傾向があり、熱可塑性エラストマーとして要求される性質に適さない場合がある。また、上記下限未満では実質的に側鎖を含むコポリマー鎖が少なくなり、ポリマー鎖間の物理的架橋が形成されにくい傾向がある。
(2)物性
本発明の組成物は物性値として、上記(1)構成成分の(A)成分、(B)成分、および(C)成分の混合物として評価されるため、通常(A)成分の主鎖であり、かつ(B)成分そのものでもあるエチレンおよびα−オレフィンの共重合体に由来するガラス転移点を有し、かつ(A)成分の側鎖であり、(C)成分そのものでもある結晶性ポリプロピレンマクロモノマーに由来する融点を有する。
本発明の組成物のガラス転移点(Tg)は通常−30℃以下、好ましくは−50℃以下である。本発明の組成物のガラス転移点は、上記(B)成分のガラス転移点に左右されるため、通常(B)成分と同様の範囲のガラス転移点を有するが、本発明の組成物中の組成比等により、ガラス転移点が一致しない場合がある。また、本発明の組成物の融点は、上記(C)成分の融点に左右されるため、通常結晶性ポリプロピレンマクロモノマーの融点について好ましい値とした値と同様の範囲の融点を有するが、本発明の組成物中の組成比等により、結晶性ポリプロピレンマクロモノマーの融点とは一致しない場合がある。
本発明の組成物の分子量は特に限定されるものではないが、重量平均分子量(Mw)はGPCによって測定され、好ましくは400,000以下であり、より好ましくは300,000以下である。また好ましくは50,000以上であり、より好ましくは100,000以上である。
上記範囲内の分子量の組成物とすることにより、組成物の溶融流動性が改善されることで成型加工性が改善され、加工しやすいエラストマーを得ることができる。
本発明の組成物のエラストマーとしての物性は、例えばProceedings of the National Academy of Sciences(2006)vol.103(42)pp.15327(前述の非特許文献1)のExperimental Section、またはMacromolecules 2008,41,9548−9555に記載の方法によって判定することができる。
本発明の組成物の密度は、特に限定されるものではないが、通常0.880g/cm3以下であり、好ましくは0.875g/cm3以下であり、より好ましくは0.870g/cm3以下である。密度が、前記上限超過では柔軟性に乏しくなる傾向があり、特に熱可塑性エラストマー組成物の重要な用途であるアイソタクチックポリプロピレンとのコンパウンドにおいて耐衝撃性向上効果の低下や、混和性低下に伴う白化等の物性不良の原因となる場合がある。なお下限については、本発明の目的を阻害しない範囲であれば特に制限はない。
本発明の組成物は、高いゴム状弾性を有する熱可塑性エラストマー組成物である。
具体的には、高い破断点伸びを示す組成物であり、特に限定はされないが、通常500%以上、好ましくは700%以上、より好ましくは800%以上の破断点伸びを示す。
前記破断点伸びは、高いほどエラストマーとしての性能に優れるものであるが、前記下限未満ではエラストマーとして、特に高変形率が求められる用途での使用が制限されることがある。
また本発明の組成物は、高い弾性回復率を有する。具体的には、特に限定はされないが、300%伸長からの回復時の弾性回復率として、通常70%以上、好ましくは75%以上の弾性回復率を示す。前記弾性回復率は、高いほどエラストマーとしての性能に優れるものであるが、前記300%伸長からの回復時の弾性回復率の下限未満ではエラストマー一般としての性能が不十分である場合がある。
(熱可塑性エラストマー組成物の製造方法)
(1)熱可塑性エラストマー組成物の製造方法
本発明の組成物の製造方法は、目的の組成物が得られる範囲においては、特に限定されるものではなく、エチレンおよびα−オレフィンの共重合体よりなる主鎖と、片末端にビニル基を含有する結晶性プロピレン重合体に由来する側鎖とを有する分岐構造オレフィン系共重合体(A成分)を含み、通常、エチレンおよびα−オレフィンの共重合体(B成分)、結晶性ポリプロピレンマクロモノマー(C成分)を含む組成物を形成すればよい。具体的には(A)〜(C)の各成分をそれぞれ合成し、これらを混合して組成物にする方法や、(A)成分を製造することにより、(A)成分と(A)成分の反応原料である(C)成分と、(A)成分の合成反応において副生する(B)成分との組成物を形成する方法等が挙げられる。
本発明の組成物の製造においては、製造効率が有利な点で、通常下記(a)〜(c)成分を混合する混合工程と、遷移金属触媒の存在下で、前記主鎖中の(c)α−オレフィン含有率が好ましくは5mol%以上、70mol%以下になるように下記(a)〜(c)成分を配位重合させる重合工程とを含む方法が用いられる。
(a)片末端にビニル基を有し、アイソタクチックペンタッド分率が0.80以上であり、かつ数平均分子量が50,000以下である結晶性プロピレン重合体
(b)エチレン
(c)少なくとも1種の、炭素数3〜20のα−オレフィン
または下記(a’)、上記(b)、および(c)成分を混合する混合工程と、遷移金属触媒の存在下で、前記主鎖中の(c)α−オレフィン含有量が好ましくは5mol以上、70mol%以下になるように下記(a’)、上記(b)および(c)成分を配位重合させる重合工程とを含む方法が用いられる。
(a’)片末端にビニル基を有し、シンジオタクチックペンタッド分率が0.60以上であり、かつ数平均分子量が50,000以下である結晶性プロピレン重合体
上記(b)成分、および(c)成分は、前記分岐構造オレフィン系共重合体のうち、主鎖部分を形成する原料に相当する。
(b)エチレンは、特に限定されるものではなく、精製したもの、各種石油化学プラントから得られるもの等が用いられるが、品質面で精製したエチレンが好ましい。
(c)成分としては、プロセス、経済性、物性の観点から、(c−1)少なくとも1種の炭素数3〜8のα−オレフィンが好ましい。
(a)成分は、1種を単独で用いても、アイソタクチックペンタッド分率や数平均分子量が異なるものの2種以上を併用してもよい。
(a’)成分は、1種を単独で用いても、シンジオタクチックペンタッド分率や数平均分子量が異なるものの2種以上を併用してもよい。
上記(a)〜(c)成分、または(a’)〜(c)成分を混合する工程としては、特に限定されるものではなく、次工程で上記成分を遷移金属触媒の存在下、配位重合させる工程の妨げにならない限りにおいていかなる混合方法も選択することができる。
また混合の順序については特に限定されるものではなく、上記各成分を一括で仕込んで混合しても、重合反応中に追加添加して混合してもよいが、(c)のα−オレフィンについては、製造される分岐構造オレフィン系共重合体の主鎖中α−オレフィン含有率が70mol%以下となるように、好ましくは5mol%以上、より好ましくは10mol%以上、好ましくは60mol%以下、より好ましくは50mol%以下となるように、用いる遷移金属触媒の性質に応じてその混合量が適宜調整される。
好ましくは、上記混合をした後、(a)成分または(a’)成分が、重合の際に使用される溶媒に溶解して、または溶融して、重合開始時に均一状態になっていることが好ましい。
上記(a)〜(c)成分、または(a’)〜(c)成分を混合する工程において、前記(a)〜(c)成分の総量中の前記(a)成分、または(a’)〜(c)成分の総量中の前記(a’)成分の含有率は、特に制限されないが、通常、50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、通常1質量%以上、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。
また前記(a)〜(c)成分の総量中、または(a’)〜(c)成分の総量中の(c)成分の含有率は、特に制限されないが、通常70質量%以下、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下であり、通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。
この比率は、特に限定はされないが、通常は、後述する本発明のエラストマー組成物中の前記結晶性ポリプロピレンマクロモノマーの総添加量の比率以下の値となる。具体的には、(b)エチレン、そして(c)成分がプロピレン、ブテンである場合は気体であるため、通常は(b)、(c)成分は、実際に製品中に含まれる全量に対して多く添加する。この場合、本発明のエラストマー組成物中の前記結晶性ポリプロピレンマクロモノマーの総添加量の比率よりも小さい値になり、混合した前記(b)成分および(c)成分の全量が過不足なく、主鎖に完全に取り込まれた場合は、これらの値は同じになる。
(2)重合工程
(遷移金属触媒)
本発明の製造方法は、結晶性ポリプロピレンマクロモノマーと、エチレンと、少なくとも1種類の炭素数3〜20のα−オレフィンとを、下記一般式(I)に記載の遷移金属触媒の存在下、重合を行なう。すなわち、上記の重合工程を下記一般式(I)に記載の遷移金属触媒の存在下で行なう。下記一般式(I)に記載の遷移金属触媒を用いて重合することで、加工性が良好で、透明性のあるエラストマー組成物が得られる。
Figure 0006439280
上記一般式(I)において、Mは、チタン、ジルコニウムおよびハフニウムから選ばれる少なくとも1種の金属原子である。またR1〜R5は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜20のアルキル基、シクロアルキル基、ヘテロ原子含有アルキル基、ヘテロ原子含有シクロアルキル基、アリール基、およびシリル基から選ばれる少なくとも1種であり、これらの基は、さらに置換基を有していてもよい。またR1〜R5は、隣接するものが互いに結合し縮合環を形成していてもよく、少なくとも1つが、Zと2価の架橋基を形成していてもよい。また、Xは、モノアニオン性配位子、ジアニオン性配位子、および中性配位子から選ばれる少なくとも1種であり、mは、X1の数を示し、0〜5の整数である。
Zは、窒素、リン、酸素および硫黄から選ばれる少なくとも1種の原子または当該原子を含む置換基であって、前記窒素、リン、酸素および硫黄から選ばれる少なくとも1種の原子とMとの間で共有結合を形成するものを表わす。
Mは、チタン、ジルコニウムおよびハフニウムから選ばれる少なくとも1種の金属原子を表し、好ましくはチタンまたはハフニウムであり、より好ましくはチタンである。
1〜R5は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜20のアルキル基、シクロアルキル基、ヘテロ原子含有アルキル基、ヘテロ原子含有シクロアルキル基、アリール基、およびシリル基から選ばれる少なくとも1種を表わし、好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、シリル基である。
ここでヘテロ原子とは、水素原子、炭素原子以外の原子をいい、具体的には酸素、窒素、リン、ケイ素、ゲルマニウム、硫黄、ハロゲンから選ばれる少なくとも1種の原子である。
これらの基は、さらに置換基を有していてもよい。置換基としては具体的には水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、シリル基等が挙げられる。
1〜R5は、2つの隣接するものが互いに結合し縮合環を形成していてもよい。具体的には縮合環として、式(I)の共役5員環(シクロペンタジエニル環)を含む置換インデニル基、置換アズレニル基、置換フルオレニル基等を形成してもよい。
1〜R5から選ばれる少なくとも1つが、Zと2価の架橋基を形成していてもよい。好ましくは、R1〜R5のうち1つがZと2価の架橋基を形成しているものである。
前記架橋基を形成する場合のR1〜R5は、炭素数1〜20のアルキレン基、ヘテロ原子含有アルキル基であり、具体的には炭素数1〜20のアルキレン基、シリレン基、ゲルミレン基等が挙げられ、好ましくは置換基を有していてもよいシリレン基であり、より好ましくは炭素数1〜20のアルキル基を有するシリレン基である。
Xは、モノアニオン性配位子、ジアニオン性配位子、および中性配位子から選ばれる少なくとも1種である。具体的には、モノアニオン性配位子としては水素、ハロゲン、炭化水素基、置換基含有へテロ基等が挙げられる。ジアニオン性配位子としてはジオール、ジアミン、共役ジエンの2価誘導体等が挙げられる。また中性配位子としては中性π結合共役ジエン等が挙げられる。これらのうちXとして好ましいものは、ハロゲン原子また炭素数1〜30の炭化水素基である。
mは、Xの数を示し、0〜5の整数であり、好ましくは1または2であり、より好ましくは2である。なお、mが2以上の場合、複数のXはそれぞれ同一でも異なるものでもよいが、同一のものが好ましい。
Zは、窒素、リン、酸素および硫黄から選ばれる少なくとも1種の原子または当該原子を含む置換基であって、前記窒素、リン、酸素および硫黄から選ばれる少なくとも1種の原子が、Mとの間で共有結合を形成するものを表わす。前記窒素、リン、酸素および硫黄から選ばれる少なくとも1種の原子のうち、窒素または酸素が好ましい。
Zとして具体的には、炭素数1〜30の置換アミノ基、炭素数1〜30の置換アミド基炭素数1〜30の置換イミド基、置換ホスフィンイミド基、酸素原子、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数5〜30のアリールオキシ基、硫黄原子、置換スルフィド基、置換スルホン基等が挙げられ、好ましくは、炭素数1〜30のアミノ基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数5〜30のアリールオキシ基である。これらの基はさらに置換基を有していてもよい。
上記一般式(I)の遷移金属触媒において好ましいものとして、下記一般式(I−1)の遷移金属触媒が挙げられる。
Figure 0006439280
一般式(I−1)において、M、R1〜R4、X、Zは、上記一般式(I)における定義と同義である。R5が、Zと2価の架橋基を形成しているものであり、このときのR5は炭素数1〜20のアルキレン基、ヘテロ原子含有アルキル基であり、具体的には炭素数1〜20のアルキレン基、シリレン基、ゲルミレン基等が挙げられ、好ましくは置換基を有していてもよいシリレン基であり、置換基としては炭素数1〜20のアルキル基が好ましい。
上記一般式(I)の遷移金属触媒において、より好ましいものとして、下記一般式(I−2)の遷移金属触媒が挙げられる。
Figure 0006439280
上記式(I−2)において、M、R1〜R4、Xは、上記一般式(I)における定義と同義である。
5は、上記式(I−1)におけるR5の定義と同義である。R6は、炭素数1〜20のアルキル基、シクロアルキル基、ヘテロ原子含有アルキル基、ヘテロ原子含有シクロアルキル基、アリール基またはシリル基であり、好ましくはシリル基である。これらの基はさらに置換基を有していてもよく、好ましい置換基は炭素数1〜20のアルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基である。
上記一般式(I−2)で表わされる遷移金属触媒としては具体的には下記のようなものが挙げられる。
ジメチルシリル(シクロドデシルアミド)(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジクロライド、ジメチルシリル(シクロドデシルアミド)(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジメチル、ジメチルシリル(t-ブチルアミド)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、ジメチルシリル(t-ブチルアミド)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジメチル、ジメチルシリル(t-ブチルアミド)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(II)1,4-ジフェニル-1,3-ブタジエン、ジメチルシリル(t-ブチルアミド)(2,3,5-トリメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、ジメチルシリル(t-ブチルアミド)(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、ジメチルシリル(t-ブチルアミド)(3-t-ブチルシクロペンタジエニル)ジクロライド、ジメチルシリル(t-ブチルアミド)(2-メチルインデニル)チタニウムジクロライド、ジメチルシリル(t-ブチルアミド)(2、3-ジメチルインデニル)チタニウムジクロライド、ジメチルシリル(t-ブチルアミド)(2-メチル-4-インデニル)チタニウムジクロライド、ジメチルシリル(t-ブチルアミド)(3-フェニルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、ジメチルシリル(t-ブチルアミド)(3、4-ジフェニルシクロペンタジエニル)ジクロライド、ジメチルシリル(t-ブチルアミド)(シクロペンタ[l]フェナントレン-2-イル)チタニウムジクロライド、ジメチルシリル(t-ブチルアミド)(3-フェニルインデニル)チタニウムジクロライド、ジメチルシリル(t-ブチルアミド)(3-フェニル-1、5、6、7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル)チタニウムジクロライド、ジメチルシリル(t-ブチルアミド)(フルオレン-9-イル)チタニウムジクロライド、ジメチルシリル(t-ブチルアミド)(テトラヒドロフルオレン-9-イル)チタニウムジクロライド、ジメチルシリル(t-ブチルアミド)(オクタヒドロフルオレン-9-イル)チタニウムジクロライド、ジメチルシリル(t-ブチルアミド)(2,7-ジ-t-ブチルフルオレン-9-イル)チタニウムジクロライド、ジメチルシリル(t-ブチルアミド)ジメチル-[6,7]ベンゾ-[4,5:2’,3’](1-メチルイソインドール)-(3H)-インデン-2-イル)ジクロライド、ジメチルシリル(t-ブチルアミド)ジ(p-メチルフェニル)-[6,7]ベンゾ-[4,5:2’,3’](1-メチルイソインドール)-(3H)-インデン-2-イル)ジクロライド、ジメチルシリル(シクロヘキシルアミド)ジメチル-[6,7]ベンゾ-[4,5:2’,3’](1-メチルイソインドール)-(3H)-インデン-2-イル)チタニウムジクロライド、ジメチルシリル(t-ブチルアミド)(8-メチレン-1,8-ジヒドロジベンゾ[e,h]アズレン-1-イル)チタニウムジクロライド、ジメチルシリル(t-ブチルアミド)(8-ジフルオロメチレン-1,8-ジヒドロジベンゾ[e,h]アズレン−1−イル)チタニウムジクロライド。
上記一般式(I)の遷移金属触媒において、より好ましいものの別の態様として、下記一般式(I−3)の遷移金属触媒が挙げられる。
Figure 0006439280
本発明における使用に適する前記式(I−3)の遷移金属触媒の例としては以下が含まれる。M、R1〜R4、X、は、上記一般式(I)における定義と同義である。またR5は、上記式(I−1)におけるR5の定義と同義である。
7〜R10は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜20のアルキル基、シクロアルキル基、ヘテロ原子含有アルキル基、ヘテロ原子含有シクロアルキル基、アリール基、およびシリル基から選ばれる少なくとも1種であり、これらの基は、さらに置換基を有していてもよい。R1〜R5のうち、2つの隣接するものが互いに結合し縮合環を形成していてもよい。
上記一般式(I−3)で表わされる遷移金属触媒としては具体的には下記のようなものが挙げられる。
ジメチルシリル(シクロペンタジエニル)(3-t-ブチル-5-メチル2-フェノキシ)チタニウムジクロライド、ジメチルシリル(2,3,4,5-テトラメチルシクロペンタジエニル)(3-t-ブチル-5-メチル2-フェノキシ)チタニウムジクロライド、ジメチルシリル(フルオレン-9-イル)(3-t-ブチル-5-メチル2-フェノキシ)チタニウムジクロライド、ジメチルシリル(2,7-ジ-t-ブチルフルオレン-9-イル)(3-t-ブチル-5-メチル2-フェノキシ)チタニウムジクロライド。
上記一般式(I)の遷移金属触媒において、より好ましいものの別の態様として、具体的にはR1〜R5から選ばれる少なくとも1つがZと2価の架橋基を形成していないものとしては、下記のようなものが含まれる。
シクロペンタジエニル(2,6-ジイソプロピルフェノキシ)チタニウムジクロリド、ペンタメチルシクロペンタジエニル(2,6-ジイソプロピルフェノキシ)チタニウムジクロリド、tert‐ブチルシクロペンタジエニル(2,6-ジイソプロピルフェノキシ)チタニウムジクロリド、シクロペンタジエニル(2,6-ジフェニルフェノキシ)チタニウムジクロリド、ペンタメチルシクロペンタジエニル(2,6-ジフェニルフェノキシ)チタニウムジクロリド、tert‐ブチルシクロペンタジエニル(2,6-ジフェニルフェノキシ)チタニウムジクロリド、シクロペンタジエニル(2,2,4、4-テトラメチルペンタン-3-イリデンアミノ)チタニウムジクロリド、ペンタメチルシクロペンタジエニル(2,2,4、4-テトラメチルペンタン-3-イリデンアミノ)チタニウムジクロリド、tert-ブチルシクロペンタジエニル(2,2,4、4-テトラメチルペンタン-3-イリデンアミノ)チタニウムジクロリド。
(共触媒)
前記遷移金属触媒(以下、成分[D]または、「触媒前駆体」という)の各々は、各種公知の共触媒、好ましくは、カチオン形成性共触媒、強ルイス酸もしくはそれら双方と組み合わせることにより、活性化させて活性触媒組成物を形成することができる。
本発明においては、通常下記の成分[E−1]〜[E−4]から選ばれる少なくとも1つの成分を共触媒(以下、成分[E]とも表す)として用いることが好ましい。
成分[E−1]:有機アルミニウムオキシ化合物
成分[E−2]:触媒前駆体と反応して、これをカチオンに交換することが可能なイオン性化合物
成分[E−3]:ルイス酸
成分[E−4]:層状化合物
成分[E−1]の有機アルミニウムオキシ化合物としては、具体的には、次の一般式(III−1)、(III−2)、(III−3)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0006439280
上記の各一般式中、R21〜R30はそれぞれ独立に、水素原子または炭化水素基であり、好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基を示す。またpは1〜40、好ましくは2〜30の整数を示す。
一般式(III−1)および(III−2)で表される化合物は、有機アルミニウムオキシ化合物(以下、「アルミノキサン」と称することがある。)であって、一種類以上のトリアルキルアルミニウムと水との反応により得られる。具体的には、メチルアルミノキサン等の一種類のトリアルキルアルミニウムと水とから得られるアルミノキサンや、メチルエチルアルミノキサン等の2種類以上のトリアルキルアルミニウムと水とから得られる、2種類以上のアルキル基を有するアルミノキサン等が挙げられ、メチルアルミノキサン、メチルイソブチルアルミノキサン、メチル−n−オクチルアルミノキサンがより好ましい。
上記の有機アルミニウムオキシ化合物は、複数種併用することも可能である。そして、上記のアルミノキサンは、公知の様々な条件下に調製することができる。
一般式(III−3)で表される化合物は、一種類のトリアルキルアルミニウムまたは二種類以上のトリアルキルアルミニウムと次の一般式(III−4)で表されるアルキルボロン酸との10:1〜1:1(モル比)の反応により得ることができる。一般式(III−4)中、R30は、水素原子または炭化水素基であり、好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基を示す。
30−B−(OH)2 (III−4)
成分[E−2]の、成分[D]と反応して成分[D]をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物としては、下記一般式(IV)で表される化合物が挙げられる。
[K]e+[L]e- (IV)
一般式(IV)中、Kはカチオン成分であって、例えば、カルベニウムカチオン、トロピリウムカチオン、アンモニウムカチオン、オキソニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ホスフォニウムカチオン等が挙げられる。また、それ自体が還元されやすい金属の陽イオンや有機金属の陽イオン等も挙げられる。上記のカチオンの具体例としては、トリフェニルカルボニウム、ジフェニルカルボニウム、シクロヘプタトリエニウム、インデニウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、トリシクロヘキシルアンモニウム、ジメチルオクタデシルアンモニウム、メチルジオクタデシルアンモニウム、N,N−ジメチルアニリニウム、トリフェニルホスホニウム、トリメチルホスホニウム、トリス(ジメチルフェニル)ホスホニウム、トリス(ジメチルフェニル)ホスホニウム、トリス(メチルフェニル)ホスホニウム、トリフェニルスルホニウム、トリフェニルオキソニウム、トリエチルオキソニウム、ピリリウム、銀イオン、金イオ
ン、白金イオン、銅イオン、パラジウムイオン、水銀イオン、フェロセニウムイオン等が含まれる。好ましく用いられるのはトリフェニルカルボニウム、ジメチルオクタデシルアンモニウム、メチルジオクタデシルアンモニウム、N,N−ジメチルアニリニウムである。
上記の一般式(IV)中、Lは、アニオン成分であり、成分[D]が変換されたカチオン種に対して対アニオンとなる成分(一般には非配位の成分)である。Lとしては、例えば、テトラフェニルホウ素、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、テトラキス(ノナフルオロビフェニル)ホウ素等の有機ホウ素化合物アニオン;テトラフェニルアルミニウム、テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)アルミニウム等の有機アルミニウム化合物アニオン;テトラフェニルガリウム、テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ガリウム等の有機ガリウム化合物アニオン;テトラフェニルリン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)リン等の有機リン化合物アニオン;テトラフェニルヒ素、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ヒ素等の有機ヒ素化合物アニオン;テトラフェニルアンチモン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)アンチモン等の有機アンチモン化合物アニオン;等が挙げられる。このうち好ましく用いられるのは、有機ホウ素化合物アニオンであり、具体的にはテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、テトラキス(ノナフルオロビフェニル)ホウ素等のテトラキス(ペルフルオロアリール)ホウ素化合物である。
成分[E−3]のルイス酸、特に成分[D]をカチオンに変換可能なルイス酸としては、種々のトリフェニルホウ素、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、トリス(ノナフルオロビフェニル)ホウ素等の有機ホウ素化合物;塩化アルミニウム、塩化マグネシウムハイドライド、臭化マグネシウムハイドロオキシド、塩化マグネシウムアルコキシド等の金属ハロゲン化合物;アルミナ、シリカ−アルミナ等の固体酸;などが例示され、好ましくは有機ホウ素化合物であり、より好ましくはトリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、トリス(ノナフルオロビフェニル)ホウ素などのトリス(ペルフルオロアリール)ホウ素が挙げられる。
成分[E−4]の層状化合物は、イオン結合等によって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造をとる化合物であり、含有するイオンが交換可能なものを言う。
層状化合物としては、具体的に、以下に挙げる無機珪酸塩と、イオン交換性層状化合物が挙げられる。
無機珪酸塩としては、粘土、粘土鉱物、ゼオライト、珪藻土等が挙げられる。これらは、合成品を用いてもよいし、天然に産出する鉱物を用いてもよい。
粘土、粘土鉱物の具体例としては、アロフェン等のアロフェン族、ディッカイト、ナクライト、カオリナイト、アノーキサイト等のカオリン族、メタハロイサイト、ハロイサイト等のハロイサイト族、クリソタイル、リザルダイト、アンチゴライト等の蛇紋石族、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト等のスメクタイト、バーミキュライト等のバーミキュライト鉱物、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母鉱物、アタパルジャイト、セピオライト、パイゴルスカイト、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、ヒシンゲル石、パイロフィライト、リョクデイ石群等が挙げられる。これらは混合層を形成していてもよい。
人工合成品としては、合成雲母、合成ヘクトライト、合成サポナイト、合成テニオライト等が挙げられる。
これら具体例のうち好ましくは、カオリン族、ハロサイト族、蛇紋石族、スメクタイト、バーミキュライト鉱物、雲母鉱物、合成雲母、合成ヘクトライト、合成サポナイト、合成テニオライトが挙げられ、より好ましくはスメクタイト、バーミキュライト鉱物、合成雲母、合成ヘクトライト、合成サポナイト、合成テニオライトであり、さらに好ましくはモンモリロナイトである。
成分[E−4]におけるイオン交換性層状化合物としては、六方最密パッキング型、アンチモン型、CdCl2型、CdI2型等の層状の結晶構造を有するイオン結晶性化合物等を例示することができる。このような結晶構造を有するイオン交換性層状化合物の具体例としては、α−Zr(HAsO42・H2O、α−Zr(HPO42、α−Zr(KPO42・3H2O、α−Ti(HPO42、α−Ti(HAsO42・H2O、α−Sn(HPO42・H2O、γ−Zr(HPO42、γ−Ti(HPO42、γ−Ti(NH4PO42・H2O等の多価金属の結晶性酸性塩が挙げられる。
これら、[E−4]層状化合物は、そのまま用いてもよいが、塩酸、硝酸、硫酸等による酸処理、および/または、LiCl、NaCl、KCl、CaCl2、MgCl2、MgSO4、ZnSO4、Ti(SO42、Zr(SO42、Al2(SO43等の塩類処理を行って用いることが好ましい。また、粉砕や造粒等の形状制御を行ってもよく、粒子性状に優れた重合体を得るためには、造粒することが好ましい。また、上記成分は、通常脱水乾燥してから用いる。
成分[E−1]から[E−4]のうち、好ましくは[E−1]の有機アルミニウムオキシ化合物、成分[E−2]のカチオンに交換することが可能なイオン性化合物、成分[E−3]のルイス酸が用いられ、特に好ましくは[E−1]の有機アルミニウムオキシ化合物である。
(微粒子担体)
本発明の重合工程において、上述の触媒前駆体成分[D]および共触媒成分[E]の他に、任意成分として微粒子担体(以下、成分[F]とも表す)を共存させてもよい。成分[F]は、無機または有機の化合物からなるものであって、円相当径で通常5μm以上、好ましくは10μm以上、また、通常5mm以下、好ましくは2mm以下の粒径を有する微粒子状の担体である。
無機担体としては、例えば、SiO2、Al23、MgO、ZrO、TiO2、B23、ZnO等の酸化物、SiO2−MgO、SiO2−Al23、SiO2−TiO2、SiO2−Cr23、SiO2−Al23−MgO等の複合金属酸化物などが挙げられる。
有機担体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等の炭素数2〜14のα−オレフィンの(共)重合体、スチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族不飽和炭化水素等の(共)重合体、などからなる多孔質ポリマーの微粒子担体が挙げられる(ここで、「(共)重合体」とは「重合体」と「共重合体」の一方または双方をさす。)。
これらの微粒子担体の比表面積は、通常20m2/g以上、好ましくは50m2/g以上、また、通常1000m2/g以下、好ましくは700m2/g以下の範囲である。
また、細孔容積は、通常0.1cm3/g以上、好ましくは0.3cm3/g以上、更に好ましくは0.8cm3/g以上である。
微粒子担体としては、上記例示の各種の無機担体及び/又は有機担体のうち、何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
なお、本発明の重合工程で用いる触媒は、上記の成分[D]および成分[E]、並びに任意成分である上記の成分[F]の他に、本発明の趣旨を損ねない限りにおいて、以下の成分[G]等の他の成分を含有していてもよい。
(有機アルミニウム)
上記重合工程において、触媒としてさらに下記一般式(VII)で表される有機アルミニウム化合物(以下、成分[G]とも表す)を用いてもよい。
AlR31 m3-m (VII)
上記一般式(VII)中、R31は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、Jは水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、またはアリールオキシ基を表し、またmは1〜3の整数である。
成分[G]の好ましい有機アルミニウム化合物としては、具体的にはトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、またはジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムエトキシド等のハロゲンもしくはアルコキシ含有アルキルアルミニウムが挙げられる。これらを混合して用いてもよい。これらのうち特にトリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムアルコキシド、またはアルキルアルミニウムジアルコキシドが好ましい。これら任意成分は2種以上組み合わせて用いてもよい。
触媒前駆体[D]成分、共触媒[E]成分、および任意に用いられる微粒子担体[F]成分、有機アルミニウム[G]成分を接触させて活性触媒組成物とするが、その接触方法は特に限定されない。この接触は、触媒調製時だけでなく、本発明の組成物の製造時、好ましくは上記(a)〜(d)成分、または(a’)〜(d)成分を、混合および配位重合する工程で行ってもよい。接触は窒素等の不活性ガス中や、後述する重合反応時に行なっても溶媒中で行なってもよい。溶媒を使用する際は、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の不活性炭化水素溶媒中を用いることが好ましい。
接触温度は、−20℃〜溶媒沸点の間とし、特には、室温から溶媒沸点の間で行うのが好ましい。用いられる[D]成分/[E]成分のモル比は、好ましくは1:10,000〜100:1、より好ましくは1:5000〜10:1、最も好ましくは1:1000〜1:1である。
[E]成分としての有機アルミニウムオキシ化合物[E−1]を用いる場合、モル基準で[D]成分量の少なくとも50倍で用いられる。[E]成分として、[E−2]成分、もしくは[E−3]成分のうち固体ルイス酸以外のものを用いる場合、その[D]成分に対するモル比は、通常0.5〜10、より好ましくは1〜6、最も好ましくは1〜5であ
る。
[E]成分として、[E−3]における固体ルイス酸、もしくは[E−4]成分を用いる場合は、[E]成分1gあたり[D]成分が通常0.0001〜10mmol、好ましくは0.001〜5mmolで用いられる。また、任意で[G]成分を0〜10000mmol、好ましくは0.01〜100mmolの範囲で用いる。
(重合工程)
本発明の製造方法における重合工程において、その条件は目的物が得られる範囲において特に制約はないが、好ましくは結晶性ポリプロピレンマクロモノマーと、エチレンおよびα−オレフィンが、同時に上記触媒(活性触媒組成物を使用する場合は、該組成物。以下同様)に接触することが好ましい。より好ましくはエチレンおよびα−オレフィンと、結晶性ポリプロピレンマクロモノマーを予め混合しておき、ここに上記触媒を接触させる方法である。さらに好ましくは、該ポリプロピレンマクロモノマーが溶融、あるいはモノマーまたは溶媒に実質的に溶解した状態で上記触媒と接触することが好ましい。結晶性ポリプロピレンマクロモノマーは重合前に一括投入されていても良いし、重合中に逐次、または連続的に投入されても良い。また結晶性ポリプロピレンマクロモノマーを製造する工程と、結晶性ポリプロピレンマクロモノマーを他のオレフィンモノマーと共重合し、本発明の組成物を製造する工程とを連続的に行うこともできる。
このとき、前記結晶性ポリプロピレンマクロモノマーの総添加量は、特に限定されるものではないが、重合工程の結果、得られる本発明の組成物中、前記結晶性ポリプロピレンマクロモノマー、および結晶性ポリプロピレンマクロモノマーに由来する成分の合計が50質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下になるように調整される。なお、該マクロモノマーに由来する成分とは、(A)成分として前述した分岐構造オレフィン系共重合体の側鎖を構成する、該結晶性ポリプロピレンマクロモノマーに由来する部分構造を意味する。
前記結晶性ポリプロピレンマクロモノマーの総添加量が前記上限超過では、組成物全体の柔軟性が乏しくなる傾向があり、熱可塑性エラストマーとして要求される性質に適さない場合がある。前記結晶性ポリプロピレンマクロモノマーの総添加量の下限は本発明の組成物の性能を損なわない限り限定されるものではないが、通常1質量%以上、好ましくは5質量%以上である。結晶性ポリプロピレンマクロモノマーの添加量が少ない方が、柔軟性が高いエラストマーが得られ、経済性の面でも有利なため好ましい。
前記結晶性ポリプロピレンマクロモノマーは、重合工程の後、本発明の組成物中において、(A)成分として前述した分岐構造オレフィン系共重合体の側鎖成分として取り込まれたものと、(C)成分として前述した未反応マクロモノマーのいずれかの形で存在する。 すなわち、本発明の組成物中の、前記結晶性ポリプロピレンマクロモノマー、および該マクロモノマーに由来する成分の合計の重量比は、前記製造工程における前記結晶性ポリプロピレンマクロモノマーの総添加量、具体的には前記(a)成分または(a’)成分として表した前記結晶性ポリプロピレンマクロモノマーの仕込み重量と、得られたエラストマー組成物との重量比と同じである。
本発明の組成物を製造する反応には溶媒を用いても用いなくてもよいが、重合反応中にマクロモノマーを溶解可能な溶媒を用いることが好ましい。溶媒を用いる場合、その例としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−デカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン等の炭化水素類、クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、n−ブチルアセテート、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒類などを挙げることができる。これらの中でも、炭化水素類が好ましい。なお、これらの溶媒は、何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。なおこれらの溶媒を使用した場合、その溶媒は通常、反応終了後に、公知の方法を用いて除去されるため、本発明の組成物中には通常は含まれないが、本発明の組成物の物性を損なわない範囲のごく少量程度の溶媒が残留していてもよい。
本発明の組成物は、上記の溶媒を使用する溶液重合、スラリー重合でも製造できる他、実質的に溶媒を使用しない液相無溶媒重合、気相重合、溶融重合も使用可能である。また、重合方式は、連続重合および回分式重合のいずれでもよい。多段階に条件を変更するいわゆる多段重合を採用してもよい。 触媒濃度は特に限定されないが、例えば反応方式が溶液重合の場合、反応液1Lに対して成分[D]の含有量として通常0.01mg以上、好ましくは0.05mg以上、更に好ましくは0.1mg以上、また、通常100g以下、好ましくは50g以下、更に好ましくは25g以下の範囲である。
重合温度、重合圧力および重合時間にも特に制限はないが、通常は、以下の範囲から生産性やプロセスの能力を考慮して、最適な設定を行なうことができる。すなわち、重合温度としては、通常−70℃以上、好ましくは−50℃以上、更に好ましくは−30℃以上、特に好ましくは−20℃以上、また、通常150℃以下、好ましくは100℃以下の範囲である。また、重合圧力としては、通常0.01MPa以上、好ましくは0.05MPa以上、更に好ましくは0.1MPa以上、また、通常100MPa以下、好ましくは20MPa以下、更に好ましくは5MPa以下の範囲である。
重合時間としては、通常0.1時間以上、好ましくは0.2時間以上、更に好ましくは0.3時間以上、また、通常30時間以下、好ましくは25時間以下、より好ましくは20時間以下、更に好ましくは15時間以下の範囲である。
上記重合に際して、製造される分岐構造オレフィン系共重合体の流動性が適当なものとなるように分子量(MFR)調整剤を使用することができる。分子量の調整には、重合中、触媒上に生成したポリマー連鎖を別の原子上に移動させ、別の原子に置き換えることで触媒活性種を再生させる手法が用いられ、このような効果を示す添加剤を連鎖移動剤と呼ぶ。この連鎖移動剤としては[D]成分である有機アルミニウム化合物、有機亜鉛化合物、水素などが通常重合活性に悪影響を与えない点で好ましく、特に製品への残留可能性が低い点で水素が好ましい。
(熱可塑性エラストマー組成物の用途)
本発明の組成物は、柔軟性、透明性、耐熱性に優れているため、従来のエチレン系材料、プロピレン系材料の他、軟質PVC、熱可塑性エラストマーが用いられている種々の分野において、単体として、あるいは主成分として、または添加剤として好適に用いることができる。
本発明の組成物および本発明の組成物を含む樹脂組成物(改質物)の成形方法は特に限定されないが、フィルム・シートにおいては、ポリオレフィンに適用されているインフレーション法、Tダイ法、カレンダー法等により製膜され、単層、あるいは、2層以上の各種層を適宜必要に応じて設けることもできる。積層化に際しては、押し出しラミネート法、熱ラミネート法、ドライラミネート法等も可能であり、また、フィルムを一軸あるいは二軸延伸することも可能である。延伸法としては、ロール法、テンター法、チューブラー法等が挙げられる。さらに、通常工業的に利用されるコロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、オゾン処理等の表面処理を施すこともできる。
本発明の組成物の優れた柔軟性、透明性、耐熱性を生かして、積層体を構成する場合、他の層を構成する材料としては、プロピレン単独重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体等の各種プロピレン系重合体や、高圧法ポリエチレン、エチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)、エチレン・ノルボルネン共重合体等のエチレン系重合体、ポリブテン−1、ポリ4−メチルペンテン−1(TPX樹脂)等の各種オレフィン系共重合体や、無水マレイン酸等で変性された接着性ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエステル系エラストマー等を挙げることができる。
(フィルム・シート分野における用途)
本発明の組成物またはその改質物のフィルム・シート分野における用途は特に限定されないが、一例として、下記のような用途を挙げることができる。
すなわち、包装用ストレッチフィルム、業務用または家庭用ラップフィルム、パレットストレッチフィルム、ストレッチラベル、シュリンクフィルム、シュリンクラベル、シーラント用フィルム、レトルト用フィルム、レトルト用シーラントフィルム、熱溶着フィルム、熱接着フィルム、熱封緘用フィルム、バッグ・イン・ボックス用シーラントフィルム、レトルトパウチ、スタンディングパウチ、スパウトパウチ、ラミネートチューブ、重袋、繊維包装フィルム等の食品、雑貨等包装分野、ハウス用フィルム、マルチフィルム等の農業用フィルム分野、輸液バッグ、高カロリー輸液や腹膜透析用(CAPD)等の複室容器、腹膜透析用の排液バッグ、血液バッグ、尿バッグ、手術用バッグ、アイス枕、アンプルケース、PTP包装等の医療用フィルム・シート分野、土木遮水シート、止水材、目地材、床材、ルーフィング、化粧フィルム、表皮フィルム、壁紙等の建材関連分野、レザー、天井材、トランクルーム内張、内装表皮材、制震シート、遮音シート等の自動車部品分野、ディスプレーカバー、バッテリーケース、マウスパッド、携帯電話ケース、ICカード入れ、CD−ROMケース等の弱電分野、ハブラシケース、パフケース、化粧品ケース、目薬等医薬品ケース、ティッシュケース、フェイスパック等のトイレタリーまたはサニタリー分野、文具用フィルム・シート、クリアファイル、ペンケース、手帳カバー、デスクマット、キーボードカバー、ブックカバー、バインダー等の事務用品関連分野、家具用レザー、ビーチボール等の玩具、傘、レインコート等の雨具、テーブルクロス、ブリスターパッケージ、風呂蓋、タオルケース、ファンシーケース、タグケース、ポーチ、お守り袋、保険証カバー、通帳ケース、パスポートケース、刃物ケース等の一般家庭用、雑貨分野、再帰反射シート、合成紙等が挙げられる。また、基材に粘着材が塗布され、粘着性が付与されたフィルム・シート分野として、粘着テープ、マーキングフィルム、半導体またはガラス用ダイシングフィルム、表面保護フィルム、鋼鈑・合板保護フィルム、自動車保護フィルム、包装・結束用粘着テープ、事務・家庭用粘着テープ、接合用粘着テープ、塗装マスキング用粘着テープ、表面保護用粘着テープ、シーリング用粘着テープ、防食・防水用粘着テープ、電気絶縁用粘着テープ、電子機器用粘着テープ、貼布フィルム、バンソウコウ基材フィルム等医療・衛生材用粘着テープ、識別・装飾用粘着テープ、表示用テープ、包装用テープ、サージカルテープ、ラベル用粘着テープ等が挙げられる。
(射出成形・押出し成形分野における用途)
本発明の組成物またはその改質物の射出成形、押出し成形分野における用途は特に限定されないが、一例として、下記のような用途を挙げることができる。すなわち、電気・電子部品分野における電線、コード類、ワイヤーハーネス等の被覆材料、絶縁シート、自動車部品における、コントロールケーブル被覆材、エアーバッグ・カバー、マッドガード、バンパー、ブーツ、エアホース、ランプパッキン類、ガスケット類、ウィンドウモール等の各種モール、サイトシールド、ウェザーストリップ、グラスランチャンネル、グロメット類、制震・遮音部材、家電、弱電分野における各種パッキン類、グリップ類、ベルト類、足ゴム、ローラー、プロテクター、吸盤、冷蔵庫等のガスケット類、OA機器用各種ロール類、ホース、チューブ等の管状成形体、異型押し出し品、レザー調物品、咬合具、ソフトな触感の人形類等の玩具類、ペングリップ、ハブラシ柄等の一般雑貨類、ハウスウェア、タッパーウェア等の容器類、結束バンド、ブロー成形による輸液ボトル、食品用ボトル、化粧品用等のパーソナルケア用のボトル等各種ボトル、医療用部品におけるカテーテル、シリンジ、シリンジガスケット、点滴筒、チューブ、ポート、キャップ、ゴム栓、ディスポーザブル容器等、が挙げられ、また、発泡成形による用途も可能である。
(繊維・不織布分野における用途)
本発明の熱可塑性エラストマー組成物またはその改質物の繊維、不織布分野における用途は特に限定されないが、一例として、下記のような用途を挙げることができる。すなわち、連続紡糸、連続捲縮糸、短繊維、モノフィラメント等の繊維、フラットヤーン、メルトブロー法、スパンボンド法による不織布にすることにより、紙おむつ等の衛材、手術用衣服、手袋等の医療用、カーペット、その裏地、ロープ等の用途が挙げられる。また、これら不織布やモノフィラメント、フラットヤーン、スリットテープ等の編物と、フィルム・シートのラミネートによる、帆布、テント材、幌、フレキシブルコンテナー、レジャーシート、ターポリン等が挙げられる。
(改質材における用途)
本発明の組成物またはその改質物は、ポリプロピレンとの親和性に優れていることから、ポリプロピレンの改質に好適に使用することができる。改質により、柔軟性、透明性、靭性等のほか、熱シール性、耐衝撃性、添加剤との親和性が改良され、成形体表面の改良にも使用することができる。また、その熱融着性を生かしたホットメルト接着剤、タッキファイヤー、アスファルト改質、ビチューメン改質、防水加工紙等も用途の一例として挙げられる。
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に制限されるものではない。
なお以下の実施例における物性測定、分析等は下記の方法に従ったものである。
(1)GPC測定
熱可塑性エラストマー組成物の重量平均分子量(Mw)は、GPC測定により求めた。GPC測定は、Waters社製アライアンスGPCV2000を用い、検出器には示差屈折計と粘度計を用いて行った。カラムは東ソー社製TSKgel GMH6−HTを4本用いた。
移動相溶媒にはオルトジクロロベンゼンを用い、135℃、1.0mL/minで流出させた。得られたデータはPolymer Laboratories社製の単分散標準ポリスチレンを用い、その保持時間から汎用校正曲線法によりポリエチレンに換算して算出した。用いた数値は、Kpst=1.38E−4、αpst=0.70、Kpe=4.77E−4、αpe=0.70である。
また、結晶性ポリプロピレンマクロモノマーの数平均分子量([Mn(GPC)])については、同じく汎用校正曲線法により、ポリプロピレンに換算して算出した。用いた数値は、Kpst=1.38E−4、αps=0.70、Kpp=1.03E−4、αpp=0.78である。
(2)DSC測定
ポリマーの融点(Tm)並びにガラス転移点(Tg)の測定は、DSC測定により行った。DSC測定は、PerkinElmer社製「DiamondDSC」を使用し、20℃で1分等温、10℃/分で20〜210℃までの昇温、210℃で5分等温、10℃/分で210〜−70℃まで降温、−70℃で5分等温の後、10℃/分で−70〜210℃までの昇温時の測定により求めた。
(3)NMR測定
片末端にビニル基を含有する結晶性プロピレンマクロモノマーの数平均分子量([Mn/NMR])は、1H-NMRスペクトルを測定し、全てのマクロモノマー分子の片末端をビニル基と仮定した場合のアルキル基の総プロトン数より求めた。また該マクロモノマーの立体規則性(アイソタクチックペンタッド分率、シンジオタクチックペンタッド分率)は、ポリマーの13C−NMRスペクトルの測定より求めた。
マクロモノマーの1H-NMR測定には、Varian社製Inova500(1H観測周波数500MHz)を使用した。5mmサンプルチューブにサンプルを20mg投入し、0.6mLのオルトジクロロベンゼン(ODCB)−d4に120℃で完全に溶解させた後、130℃、フリップ角45°、パルス間隔10秒の条件で360回積算した。化学シフトの基準は、ODCBの低磁場側のシグナルを7.16ppmとした。
マクロモノマーの13C−NMRには、Varian社製Inova500(13C観測周波数125.7MHz)を使用した。10mmサンプルチューブにサンプルを200mg投入し、1.5mLのオルトジクロロベンゼンに120℃で完全に溶解させた後、1.5mLの重ベンゼンを加えさらに加熱した。120℃、フリップ角90°、パルス間隔14.8秒の条件で2640回積算した。化学シフトの基準は、ベンゼンを128.06ppmとした。
(4)密度測定
熱可塑性エラストマー組成物の密度は、電子比重計(アルファミラージュ社製「SD−200L」)を用いて、水置換法により23℃で測定した。
(5)物性測定
熱可塑性エラストマー組成物のエラストマーとしての物性値(破断点伸び、破断点強さ、弾性回復率)は、得られた熱可塑性エラストマー組成物の成形品を評価することにより求めた。
(6)マクロモノマー含有量
熱可塑性エラストマー中に含有するマクロモノマーの量は、昇温溶出分別法(TREF法)による溶出成分の量により測定した。具体的には、クロス分別クロマトグラフ(CFC)により、測定をおこなった。
CFCは、結晶性分別を行う昇温溶出分別(TREF)部と、分子量分別を行うゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)部を有する。このCFCを用いた分析を以下のように行った。以下に記載の各溶出温度での溶出量を順に測定した。
(測定条件)
測定装置 :ダイヤインスツルメンツ社製 CFC−T102L
TREFカラム:4.3mmφ×150mmステンレスカラム(ジーエルサイエンス社製 )
カラム充填剤 : 表面不活性処理ガラスビーズ FlusinGH 80/100メッ シュ(ジーエルサイエンス社製)
GPCカラム :昭和電工社製 AD−806MS(3本を直列に接続)
溶媒 :オルトジクロロベンゼン(ODCB)
サンプル濃度 :3mg/mL
注入量 :0.4mL
結晶化速度 :1℃/分
溶媒流速 :1mL/分
GPC測定時間:34分
GPC測定後安定時間:5分
溶出温度 :
0,5,10,15,20,25,30,35,40,45,50,60,70,80,85,90,94,98,102,106,110,114,118,122,125,130,140℃
検出器:FOXBORO社製 MIRAN 1AIR検出器
測定波長:3.42μm
(測定操作)
測定する樹脂組成物を、0.5mg/mLのブチルヒドロキシトルエン(BHT)を含むオルトジクロロベンゼン(ODCB)に140℃で完全に溶解し、測定試料溶液とした。この試料溶液を上記測定装置のサンプルループを経て、140℃に保持されたTREFカラムに注入し、所定の第1溶出温度まで徐々に冷却しポリマーサンプルを結晶化させる。所定の温度で30分保持した後、ODCBをTREFカラムに通液することにより、溶出成分がGPC部に注入されて分子量分別が行われ、赤外検出器によりクロマトグラムが得られる。その間TREF部では次の溶出温度に昇温され、第1溶出温度のクロマトグラムが得られた後、第2溶出温度での溶出成分がGPC部に注入される。以下同様の操作を繰り返すことにより、各溶出温度での溶出成分のクロマトグラムが得られる。
(測定データ解析)
上記CFC測定によって得られた各溶出温度における溶出成分のクロマトグラムは、装置付属のデータ処理プログラムにより処理され、総和が100%となるように規格化された溶出量(クロマトグラムの面積に比例)が求められる。さらに、溶出温度に対する積分溶出曲線が計算される。この積分溶出曲線を温度で微分して、微分溶出曲線が求められる。
また、各クロマトグラムから、次の手順により分子量分布が求められる。
保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。
使用する標準ポリスチレンは何れも東ソー社製の以下のものである。
F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000
各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.4mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。
分子量への換算は森定雄著「サイズ排除クロマトグラフィー」(共立出版)を参考に汎用較正曲線を用いる。その際使用する粘度式[η]=K×Mαは以下の数値を用いる。
PS : K=1.38×10-4、α=0.7
PP : K=1.03×10-4、α=0.78
なお、第1溶出温度でのクロマトグラムでは、溶媒に添加したBHTによるピークと溶出成分の低分子量側とが重なる場合があるが、その際は図1のようにベースラインを引き、分子量分布を求める区間を定める。
(マクロモノマー残存率の計算)
マクロモノマー残存率の計算は以下のように実施した。
まずTREFによって75℃以上に溶出した成分を、重合によって消費されなかった残存マクロモノマーと定義し、CFC溶出曲線から75℃以上溶出成分の質量分率を求めた。
一方、重合によって得られた重合体中に含まれる、マクロモノマーに由来する成分の質量分率は、初期に導入したマクロモノマー質量を得られた重合体の質量で割ることによって算出した。
これにより、マクロモノマー残存率を以下の通り計算した。
[マクロモノマー残存率(%)]=[75℃以上溶出成分(質量%)]/[重合体中マクロモノマー由来成分(質量%)]×100
(全光線透過率の測定)
全光線透過率の測定は、JIS K7361−1に従って実施された。
測定にはプレス成型もしくは射出成型によって作成された2mm厚のシートを使用した。
使用機器 :日本電色工業株式会社製 濁度計(曇り度計)NDH2000
測定方法 :シングルビーム法
光源 :D65/A
標準合わせ:空気層(0.100合わせ)
(シート(試験片)の作成)
サンプル約5gを190℃、5MPaで約3分間プレス成形し、約0.5mm厚のシートを作成した。これをJIS K6251(加硫ゴムの引っ張り試験方法)に記載のダンベル状8号型用打ち抜き刃にて裁断し、試験片を作成した。
(物性試験)
測定器はオリエンテック社製STA−1225を用いた。チャック間距離を20mmとし、試験片を15mm/分の速度で単調に破断するまで伸長させ、破断時の伸びと強さを記録した。
また試験片を同じ速度で300%(=60mm)伸長させた後、クロスヘッド方向を反転させ、同じ速度で応力がゼロになるまで収縮させた。応力がゼロに到達した時点での伸びを記録し、この残留伸びから弾性回復率を計算した。
得られた熱可塑性エラストマー組成物を、それぞれ厚み1.0mmのスペーサーを用いて200℃で熱プレスし、室温まで放冷することで厚み1.0mmのシートを作成した。
このサンプルの弾性回復挙動から物性を評価した。
また同じ厚み1.0mmのシートを黒色の背景上に配置し、その白濁度合いから透明性を目視で評価した。
(製造例1)
[rac−ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−メチル)−フリル)−4−フェニル−インデニル)ハフニウムジクロライド(以下、「錯体M1」)の合成]
錯体M1は、国際公開第2008/059969号の、製造例M−1に記載の方法に従って合成した。
(製造例2)
[アイソタクチックポリプロピレンマクロモノマー(マクロモノマーA)の製造]
精製窒素で置換された、攪拌翼を内蔵する内容積2Lの誘導攪拌式オートクレーブ内に、精製ヘキサン(1000mL)、メチルアルミノキサンのトルエン溶液(東ソーファインケム社「MMAO−3A」 2.1mmol[Al換算原子])を6mL導入した。反応容器を70℃に加熱し、プロピレンを0.80MPaで飽和させ、製造例1で得られた錯体M1(4.0μmol)のトルエン溶液を反応容器に圧送し、重合反応を開始した。反応中、プロピレンを追加して反応器の圧力を0.80MPaに保った。60分後、エタノールを導入して反応を停止させた。得られたポリマーを濾取し、一定量になるまで減圧下乾燥させ、280gのポリマーを得た。得られたマクロモノマーの数平均分子量([Mn(GPC)])は10900であり、13C−NMRによって測定されるアイソタクチックペンタッド分率(mmmm)は0.82であった。またDSCによって測定される融点(Tm)は138℃であった。
(製造例3)
ジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(シクロドデシルアミド)チタニウムジメチル(錯体C1)の製造方法
錯体C1は、米国特許第6,265,338号明細書の実施例UTに記載の方法に従って合成した。
(実施例1)
精製窒素で置換された、攪拌翼を内蔵する内容積2Lの誘導攪拌式オートクレーブ内に、製造例2で得られたポリプロピレンマクロモノマーA(4.0g)、変性メチルアルミノキサン(日本アルキルアルミ社「RMAO」4.2mmol[Al換算原子])、乾燥トルエン(500mL)を導入した。該反応器を100℃に加熱し、15分間攪拌した後、35℃まで冷却した。破裂板のついた触媒フィーダーに、製造例3で得られた錯体C1(5μmol)をトルエン(6mL)に溶解させ導入した。反応器を70℃に再び加熱し、プロピレンとエチレンの混合ガス(プロピレン/エチレン=35/65モル比)を重合槽に0.40MPaまで導入した後、精製窒素で触媒フィーダーより錯体C1のトルエン溶液を導入して反応を開始した。反応中、混合ガスを追加して反応器の圧力を0.40MPaに保った。30分後、エタノールを導入して反応を停止させた。反応器内のガスを放出し、反応溶液をエタノールに投入してポリマーを沈殿させた。得られたポリマーを濾別し、濾取したポリマーをさらにエタノールで洗浄し、一定量になるまで減圧下乾燥させ、39.0gのポリマー(熱可塑性エラストマー組成物)を得た。得られた熱可塑性エラストマー組成物の物性を表1に記す。
(製造例4)
[(N−2,6−ジ(1−メチルエチル)フェニルアミド)ジメチル(α−ナフタレン−2−ジイル(6−ピリジン−2−ジイル)メタン))ハフニウムジメチル(錯体C2)の合成]
錯体C2は国際公開第2008/112133号、Working Example 4に記載の方法に従って合成した。
(比較例1)
精製窒素で置換された、攪拌翼を内蔵する内容積2Lの誘導攪拌式オートクレーブ内に、製造例2で得られたポリプロピレンマクロモノマー(4.0g)、トリイソブチルアルミニウム/ブチルヒドロキシトルエン(BHT)の1:1混合物(100μmol)、乾燥トルエン(500mL)を導入した。触媒フィーダーに、錯体C2(40μmol)とトリスペンタフルオロフェニルボラン(44μmol)をトルエン(30mL)に溶解させ導入した。該反応器を100℃に加熱し、15分間攪拌した後、70℃まで冷却した。プロピレン30mLを重合槽に導入し、エチレンを重合槽に0.40MPaまで導入した後、窒素圧で触媒を導入して反応を開始した。反応中、エチレンを追加して反応器の圧力を0.50MPaに保った。30分後、エタノールを導入して反応を停止させた。反応器内のガスを放出し、反応溶液をエタノールに投入してポリマーを沈殿させた。ろ取したポリマーをさらにエタノールで洗浄し、一定量になるまで減圧下乾燥させ、20.4gのポリマーを得た。得られた熱可塑性エラストマー組成物の物性を表1に記す。
(比較例2)
比較例1において用いられるトリイソブチルアルミニウム/ブチルヒドロキシトルエン(BHT)の1:1混合物(100μmol)を、トリイソブチルアルミニウム(200μmol)に変更した以外は比較例1と同様に反応を行い、33.8gのポリマーを得た。得られた熱可塑性エラストマー組成物の物性を表1に記す。
Figure 0006439280
実施例1では、比較例に比べ非常に高い重合活性でポリマーを与えた。また製品の分子量が比較例に比べて低く、実際の成型時における流動性の向上が期待される。さらにかかる分子量の低下にもかかわらず、良好な弾性回復は維持されており、驚くべきことに透明性も向上している。これらは本発明に開示の触媒の高いオレフィン重合能と同時に、高いマクロモノマー取り込み能力が、エチレン系オレフィン重合体主鎖と結晶性ポリプロピレン重合体側鎖の製造に極めて有効に作用した、本発明の方法による特異的な効果である
と考えられる。
(実施例2)
重合時間を20分とした以外は実施例1と同様に重合を行い、30.9gのポリマーを得た。得られたポリマーを、実施例1と同様の物性評価を行うとともに、クロス分別クロマトグラフ(CFC)を測定した。得られたグラフを図2に示した。得られた熱可塑性エラストマー組成物の物性と、CFCによる75℃以上溶出成分の割合及びマクロモノマーの残存率を表2に記す。
(比較例3)
比較例1において用いられるトリイソブチルアルミニウム/ブチルヒドロキシトルエン(BHT)の1:1混合物(100μmol)を、トリイソブチルアルミニウム(300μmol)に変更した以外は比較例1と同様に反応を行い、33.8gのポリマーを得た。得られたポリマーの物性を表2に記す。またCFC測定の結果を図3に示した。
Figure 0006439280
CFC分析の結果得られた図2及び図3のグラフにおける微分値は、各温度で溶出する成分の量を表し、積分値はその温度までに溶出した成分の総量を表している。図2と図3を比較すると、図3には75℃付近で微分値のピークが2つに分かれている。これは、溶出温度の低いピークが分岐構造オレフィン共重合体を表し、溶出温度の高いピークが前記分岐構造オレフィン共重合体に取り込まれていないマクロモノマーを表しているものと考えられる。すなわち溶出温度75℃以上の成分の量を分析することで、上記の方法でマクロモノマーの残存率を求めることができるものと考えられる。そしてマクロモノマーの残存率が小さいほど、前記分岐構造オレフィン共重合体にマクロモノマーが取り込まれたものと考えられる。
そして実施例2におけるマクロモノマー残存率は、比較例3に比べて大幅に低く、本発明に開示の触媒が高いマクロモノマー取り込み能力を有することは明らかである。また全光線透過率の測定結果から、実施例2と比較例3は、ほぼ同じマクロモノマー含量であるが、マクロモノマーが取り込まれた量が多い実施例2の重合体の透明性が向上している。
このことからマクロモノマー取り込み能力が、得られる重合体の透明性に寄与していることが強く示唆され、このことは本発明の方法により得られる効果であると考えられる。
本発明によれば、耐熱性や、機械特性に優れた熱可塑性エラストマーを、高い生産性で提供することが可能になる。更に分子量調整が容易になるため、加工性に富んだ熱可塑性エラストマーを提供することが可能になり、さらに透明なオレフィン系ブロックコポリマーによる熱可塑性エラストマー組成物が得られる。

Claims (7)

  1. α−オレフィン含有率が70mol%以下であるエチレン/α−オレフィン共重合体の主鎖と、片末端にビニル基を含有する結晶性プロピレン重合体に由来する側鎖とを有する分岐構造オレフィン系共重合体を含む熱可塑性エラストマー組成物の製造方法であって、
    前記結晶性プロピレン重合体と、エチレンと、少なくとも1種の炭素数3〜20のα−オレフィンとを、下記一般式(I)に記載の遷移金属触媒の存在下で、重合し、分岐構造オレフィン系共重合体を得る工程(重合工程)を有することを特徴とする、熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
    Figure 0006439280
    (上記一般式(I)において、Mは、チタン、ジルコニウムおよびハフニウムから選ばれる少なくとも1種の金属原子である。
    1〜R5は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜20のアルキル基、シクロアルキル基、ヘテロ原子含有アルキル基、ヘテロ原子含有シクロアルキル基、アリール基、およびシリル基から選ばれる少なくとも1種であり、これらの基は、さらに置換基を有していてもよい。またR1〜R5は、隣接するものが互いに結合し縮合環を形成していてもよく、R1〜R5から選ばれる少なくとも1つが、Zと2価の架橋基を形成していてもよい。
    Xは、モノアニオン性配位子、ジアニオン性配位子、および中性配位子から選ばれる少なくとも1種であり、mは、Xの数を示し、0〜5の整数である。
    Zは、窒素、リン、酸素および硫黄から選ばれる少なくとも1種の原子または当該原子を含む置換基であって、前記窒素、リン、酸素および硫黄から選ばれる少なくとも1種の原子と、Mとの間で共有結合を形成するものを表わす。)
  2. 前記結晶性プロピレン重合体のアイソタクチックペンタッド分率が、0.80以上であることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
  3. 前記結晶性プロピレン重合体のシンジオタクチックペンタッド分率が、0.60以上であることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
  4. 前記結晶性プロピレン重合体の数平均分子量([Mn(GPC)])が、50,000以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
  5. 前記熱可塑性エラストマー組成物の重量平均分子量が、400,000以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
  6. 前記結晶性プロピレン重合体を、下記一般式(II)に記載の遷移金属化合物を用いて重合する工程を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
    Figure 0006439280
    (一般式(II)中、R11およびR12は、それぞれ独立して、炭素数4〜16の窒素、酸素、または硫黄を含有する複素環基を示す。また、R13およびR14は、それぞれ独立して、炭素数6〜16のハロゲン、ケイ素、酸素、硫黄、窒素、ホウ素、およびリンから選ばれる少なくとも1つのへテロ原子を含有してもよいアリール基、または炭素数6〜16の窒素、酸素、若しくは硫黄を含有する複素環基を表す。さらに、X11およびY11は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、アミノ基、または炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基を表し、Q11は、炭素数1〜20の2価の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基、またはゲルミレン基を表す。)
  7. 前記熱可塑性エラストマー組成物中に含まれる前記結晶性プロピレン重合体の含有率が、50質量%以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
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