JP5414971B2 - エチレン系樹脂組成物によるフィルム - Google Patents

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本願発明は、優れた物性及び卓越した成形加工性を有する新規なエチレン系重合体組成物によるフィルム及びその用途に関し、詳しくは、ポリマー主鎖における長鎖分岐と短鎖分岐の構造が制御され、押出成形や射出成形などの各種の成形方法に最適に設計されうるエチレン系重合体とエチレン−α共重合体とを含有するエチレン系重合体組成物によるフィルム、及び成形加工性や透明性及び衝撃強度のバランスに優れたフィルムに係るものである。
包装材料に汎用される、従来のエチレン系重合体においては、各種のいずれの成形方法にも適した、成形加工性と併せて物性のさらなる向上が強く要望されているが、成形加工性においては、成形加工性を律する溶融流動特性は、剪断応力下での溶融樹脂圧に関わる押出し性と、伸長変形時の溶融弾性に関わる成形安定性に大別され、具体的には例えば、押出成形の高剪断応力下で低粘性が得られ、インフレーション成形の高速成形下でバブルが安定し、押出ラミネート成形のTダイにおけるネックインが小さく、ブロー成形でのパリソンの自重による垂下が生じないなど、各種の成形方法に応じての成形加工性がそれぞれ要求されており、これらを全て満たすことは非常に困難である。
また、機械強度としては剛性や引張強度及び耐衝撃性などが重要であるが、エチレン系重合体の成形性を高めるために、共重合やブレンドを行うと概してこれらの機械強度が低下してしまう。例えば、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)の成形加工性を高めるためにHP−LDPE(高圧法低密度ポリエチレン)のブレンドを行うと、これらの機械強度、特に衝撃強度が損なわれてしまう。例えば、メタロセン触媒による機械強度や耐熱性が高いエチレン系重合体に成形性向上のためにHP−LDPEをブレンドすると衝撃強度が劣化してしまう。
エチレン系重合体フィルム(及びそれにより形成したパウチ類)の衝撃強度などを向上させるために、エチレン系重合体を共重合体とする手法や、エチレン系重合体にブレンドして組成物フィルムとする手法、或いはその組成物をさらに積層して積層フィルムとする手法は多数が開示されており、例えば、易引裂性と衝撃強度などが良好であるとされる、エチレン−プロピレン−ヘキセン又はオクテン三元共重合体からなるフィルムと、それを用いた包装袋(特許文献1)、衝撃強度と易引裂性がバランスにおいて優れるとされる、エチレン・α−オレフィン共重合体と特定のHP−LDPEの組成物フィルム(特許文献2)、耐衝撃性に優れ易開封性を有すとされる、LDPEとエチレン・ブテン−1共重合体のブレンドフィルムを二軸延伸ポリオレフィンフィルムとナイロンフィルムに積層した三層積層フィルムによるパウチ(特許文献3)などが開示されている。
しかし、いずれの先行技術においても、衝撃強度と易引裂性或いは透明性などフィルムとしての性能がバランス良く充分に優れ、併せて他の物性や成形性までも充分に良好であるとは、必ずしもいえない。
特開2004−250464号公報(要約) 特開2000−212339号公報(要約) 特開平5−193079号公報(要約)
本願発明は、段落0002〜0004に前述した、エチレン系重合体の重要な用途のひとつであるフィルム類や包装充填容器のパウチ類については、主要性能である衝撃強度と易引裂性或いは透明性などがバランス良く充分に優れ、併せて他の物性や成形性までも充分に良好にされることは未だ実現されていないので、パウチ類などに使用される、衝撃強度と透明性などが共に優れ、併せて他の物性や成形性までも充分に良好にされたフィルムを開発することを、発明が解決すべき課題とするものである。
ところで、本願の出願人においては、エチレン系重合体の成形加工性と機械強度を共に充分にバランス良く向上させ、さらに、各種のいずれの成形方法にも適した優れた成形加工性をも得ることを目指し、エチレン系重合体の主要な特徴である優れた機械物性や透明性などの光学特性及び耐熱性を確保するために、重合触媒としてシングルサイト触媒としてのメタロセン触媒を使用することが必要であると考え、また、機械物性を損なわずに成形加工性を向上させるには、エチレン系重合体のポリマー主鎖における長鎖及び短鎖の分岐の構造や分岐個数が関連すると認識して、かかる新規なエチレン系重合体としての基本的な要件を見い出すに至り、成形加工性においては、溶融流動特性が剪断応力下での溶融樹脂圧に関わる押出し性に関与し、伸長変形時の溶融弾性が成形安定性に関与することからして、エチレン重合体の特性として流動の活性化エネルギーと伸長粘度を規定すれば、機械物性を損なわずに成形加工性をさらに向上させることができる、新たな発明を創作することができて、先の発明としての特願2004−181918号を出願したところである。
また、予期し得ぬことであるが、ポリマー主鎖における必要な長短鎖の分岐の構造や分岐個数は、特定のメタロセン触媒を二種組み合わせ、より好ましくは非共役ポリエンの存在下に長鎖分岐の生成を伴う錯体及び実質上長鎖分岐の生成を伴わない錯体を使用して、重合反応を行えばよいことまでも知見することができ、さらに、二種のメタロセン触媒の非共役ポリエンに対する反応性の差異及び生成重合体間のメルトフローレートの相関規定までも採用して利用することまで実現することができた。
本願の発明者は、かかる先願発明における、エチレン系重合体の改良の成果を踏まえて、先願発明における新規なエチレン系重合体を、フィルム材料として採用すれば、優れたフィルム材料となり得ることを認知し、さらに他の樹脂とのブレンドを種々検討したところ、特に特定のエチレン・α−オレフィン共重合体とブレンドすれば、前記の発明の課題を解決して、包装材料などに使用される各性能に優れ、成形性も良好なフィルム材料を実現できることを見い出すことができた。
かくして、本願発明のエチレン系重合体組成物からなるポリエチレン系フィルムにおいては、二種(又は三種以上の複数)の錯体を有すメタロセン触媒により、炭素数1〜20の短鎖分岐(SCB)と炭素数20を超える長鎖分岐(LCB)をエチレン系重合体の高分子主鎖に導入し、その様な重合体として必要な密度とメルトフローレートも規定される。
なお、優れた成形加工性とは、高い押出し特性と高い成形安定性とを兼ね備えることであり、換言すれば、高剪断応力下で粘度が低く、伸長変形を受ける際に溶融弾性が高くなることであり、このような観点から成形加工性を向上するために、エチレン系重合体の特性としての流動の活性化エネルギーと伸長粘度及びそれらの相関を具体的に規定される。
以上において、本願発明の創作に至る経緯と、発明の構成の特徴について、総括的に記述したので、ここで本願発明の構成の全体を記載すると、本願の発明は次の発明単位群からなるものである。[1]に記載の発明が基本発明であり、それら以外の発明は、基本発明に付随的な要件を加え、或いは実施態様化するものである。
[1]下記成分(A)5〜95重量%と、下記成分(B)5〜95重量%とを含有するエチレン系重合体組成物からなるポリエチレン系フィルム。
成分(A):以下の(1)〜(3)の性状を有するエチレンとα−オレフィンとの共重合体
(1)MFR(190℃・21.18N荷重)が0.1〜30g/10分
(2)密度が0.870〜0.935g/cm
(3)α−オレフィンの炭素数が3〜20
成分(B):以下のa)乃至d)の条件を満たし、炭素数1〜20の短鎖分岐と炭素数20を超える長鎖分岐が高分子主鎖に導入されたことを特徴とするエチレン系重合体
a)JIS K−7112に基づいて測定された密度が、0.880〜0.970g/cmである。
b)JIS K−7210の表1−条件7に基づき、温度190℃において加重21.18Nの条件で測定されたメルトフローレート(MFR)が、0.01〜100g/10分である。
c)流動の活性化エネルギーEa[KJ/mol]と、下記の式(1)により算出される活性化エネルギーEa[KJ/mol]との差ΔEa[KJ/mol]が、1.5〜12.5である。
Figure 0005414971
式(1) ここで、SCBは主鎖の炭素原子1,000あたりの炭素数1〜20の短鎖分岐数[個数/1,000C]を表し、Bは炭素数1〜20の短鎖分岐の長さ(炭素数)を表す。
d)伸長粘度λmaxとΔEaとが下記の式(2)を満たす。
λmax≧1.2exp(0.0721×ΔEa) 式(2)
[2]成分(B)が、炭素数1〜20の短鎖分岐と炭素数20を超える長鎖分岐の、高分子主鎖への導入を、二種又は複数種のメタロセン触媒により各々の触媒に応じて行うエチレン系重合体であることを特徴とする、[1]におけるポリエチレン系フィルム。
[3]成分(B)が非共役ポリエンの共存下において重合され、非共役ポリエンの濃度を制御することにより長鎖分岐成分の分岐構造が制御されたことを特徴とする、[2]におけるポリエチレン系フィルム。
[4]成分(B)が、エチレン重合体又はエチレンと3〜20の炭素原子を有するα−オレフィンとの共重合体であり、或いはそれらに非共役ポリエンが共重合された共重合体であることを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかにおけるポリエチレン系フィルム。
[5][1]〜[4]におけるポリエチレン系フィルムが、二軸延伸された熱可塑性樹脂フィルムと積層されてなる積層フィルム。
[6][1]〜[5]におけるフィルム又は積層フィルムからなる包装用袋体。
衝撃強度と透明性などが共に優れ、併せて他の物性や成形性までも充分に良好にされたフィルムを開発し得た。
以下において、本願の発明についての発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
1.成分(A):エチレンとαオレフィンとの共重合体
本願発明に係るエチレンとαオレフィンとの共重合体において、メルトフローレートは、0.1〜30g/10分、好ましくは0.3〜25g/10分、より好ましくは0.5〜20g/10分、特に好ましくは0.7〜15g/10分である。該MFR値がこの範囲であれば、成膜が安定するという利点を有する。なお、MFRの測定は、JIS K−7210の表1−条件7に基づき、温度190℃において加重21.18Nの条件に準拠して行う。
また、密度は、0.870〜0.935g/cm、好ましくは0.880〜0.930g/cm、より好ましくは0.890〜0.925g/cmである。密度がこの範囲であれば、透明性、衝撃強度に優れるという利点を有する。なお、ここでいう密度は、JIS K−7112に準拠して行う。
α−オレフィンは炭素数は3〜20、より好ましくは4〜12、特に好ましくは6〜10である。3〜20のαオレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどが挙げられる。
2.成分(B):エチレン系重合体
本願発明に係るエチレン系重合体は、エチレン単独又はエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを、二種又は複数種の特定のメタロセン触媒により共重合して得られるものである。メタロセン触媒の使用により、エチレン系重合体の主要な特徴である優れた機械物性や透明性などの光学特性及び耐熱性が確保される。
そして成形加工性と機械強度を共に充分にバランス良く向上させるために、二種の錯体を有すメタロセン触媒により、炭素数1〜20の短鎖分岐(SCB)と炭素数20を超える長鎖分岐(LCB)をエチレン系重合体の高分子主鎖に導入し、併せて、その様な重合体として下記のa)及びb)に示される必要な密度とメルトフローレートも規定する。エチレン系重合体の密度は、重合条件の調整、或いはエチレンと共重合させる炭素数3〜20のα−オレフィンの種類及び量を変えることにより調整可能である。また、本願発明に係るエチレン系重合体のMFRは、重合の際に通常一般の連鎖移動剤や水素を使用することにより調整可能である。
a)JIS K−7112に基づいて測定された密度が、0.880〜0.9
70g/cmである。密度の下限は好ましくは0.890g/cm、より好ましくは0.900g/cmである。密度の上限は好ましくは0.960g/cm、より好ましくは0.950g/cmである。上記範囲であれば衝撃強度などフィルムの基本物性が著しく低下することがなく好ましい。
b)JIS K−7210の表1−条件7に基づき、温度190℃において加重21.18Nの条件で測定されたメルトフローレート(MFR)が、0.01〜100g/10分である。MFRの下限は好ましくは0.3g/10分、より好ましくは0.5g/10分である。MFRの上限は好ましくは50g/10分、より好ましくは30g/10分である。上記範囲であれば容易にフィルムに加工することができ好ましい。
なお、組成物のMTは、成形加工性から、2.0g以上が好ましく,2.2g以上がより好ましい。Mw/Mnは成形安定性から、3以上が好ましく、4以上がより好ましい。
3.活性化エネルギー及び伸長粘度の規定
成形加工性においては、溶融流動特性が剪断応力下での溶融樹脂圧に関わる押出し性に関与し、伸長変形時の溶融弾性が成形安定性に関与することから鑑みて、フィルム材用のエチレン系重合体の特性において、流動の活性化エネルギーと伸長粘度を下記のように実験式として規定して、機械物性を損なわずに成形加工性をさらに向上させることができる。
(1)活性化エネルギー
流動の活性化エネルギーEa[KJ/mol]と、下記の式(1)により算出される活性化エネルギーEa[KJ/mol]との差ΔEa[KJ/mol]が、1.5〜12.5である。
Figure 0005414971
式(1)
ここで、SCBは主鎖の炭素原子1,000あたりの炭素数1〜20の短鎖分岐数[個数/1,000C]を表し、Bは炭素数1〜20の短鎖分岐の長さ(炭素数)を表す。
ここで、活性化エネルギーの実施可能要件を説明すると、流動の活性化エネルギーにおいて、(i)理論的な根拠としては、流動の活性化エネルギーは、例えば「高分子学会 高分子実験学編集委員会編 高分子実験学 第9巻 力学的性質I 共立出版株式会社発行(1985年) 第25〜第28頁」に記載されており、粘弾性周波数依存性を測定し、時間−温度重ね合わせの原理によるシフトファクターaから流動の活性化エネルギーを求めることができる。
(ii)流動の活性化エネルギーの測定法としては、ある基準温度で測定した貯蔵弾性率(縦軸)と角速度(横軸)との関係のグラフを固定しておき、別の測定温度で測定したデータを横軸に平行に移動させると、基準温度のデータと重ね合わせることができ、シフトファクターaは、Arrhenius式に従い、各測定温度のデータを基準温度のデータと重ね合わせるようにシフトさせる量Log(a)を、その測定温度(絶対温度)の逆数1/T に対してプロットして得られる直線の勾配より、流動の活性化エネルギーを求めることができる。
(iii)具体的な測定においては、試験に供する樹脂を180℃で直径25mm、厚み1mmの円形にプレス成形したものをサンプルとし、動的粘弾性特性の測定装置は、Paar Physica社製UDS−200型回転式レオメータ及び25mmφパラレルプレートを用い、窒素雰囲気下において以下の条件で温度(140℃,170℃,190℃,210℃及び230℃)における動的粘弾性を測定した。
歪み量:10% 測定周波数範囲:6.22×10−3〜6.22×10 rad/s(210℃及び230℃は、6.22×10−2〜6.22×10rad/s)
190℃を基準温度として、5つの温度条件の貯蔵弾性率G’及び損失弾性率 G”を、時間−温度重ね合わせの原理に従って重ね合わせ、シフトファクターaを求めた。
このシフトファクターを絶対温度の逆数に対してプロットし、その傾きから流動の活性化エネルギーEaを計算した。
活性化エネルギーにおいて、(i)数式の理論的な根拠としては、前記の式(1)により算出される活性化エネルギーEa[KJ/mol]は、本願発明のエチレン重合体が長鎖分岐を有しないと仮定した場合の流動の活性化エネルギーであり、「J.F.Vega et al,Macromolecules vol.31 No.11 3639−3647(1998)に記載された理論に基づき求めた近似式である。
(ii)活性化エネルギーの測定は、具体的には、本願発明の重合体を日本電子(株)製JNM−GSX400型NMR装置及びC10型プローブを用い、以下の条件で13C−NMRスペクトルを測定し、「Eric T.Hsieh & James C.Randall,Macromolecules vol.15,353−360(1982)」及び「Eric T.Hsieh & James C.Randall,Macromolecules vol.15,1402−1406(1982)」に基づき、SBC[個数/1,000C]及びB(炭素数)を求め、式(1)にSCB及びBを代入して活性化エネルギーEa求めた。
パルス幅:8.0μs(フリップ角:40°) パルス繰り返し時間:5秒 積算回数:5,000回以上 溶媒及び内部標準:1,2,4−トリクロロベンゼン/ベンゼン−d6 /ヘキサメチルジシロキサン(混合比:30/10/1) 測定温度:120℃ 試料濃度:0.3g/ml
さらに、本願発明の数値規定ΔEaの実施化要件について説明すると、数値規定ΔEaは、長鎖分岐の濃度を表す規定である。例えば、「R.N.Shroff & H.Mavridis ,Macromolecules vol.32 8454(1999)」に示されるように、流動の活性化エネルギーEaが長鎖分岐の濃度に関して一次関数で表されることは良く知られている。ただし、Eaは短鎖分岐の影響も受けるため、Eaを長鎖分岐の濃度のみのパラメータとするには、短鎖分岐の影響を排除しなければならない。
そこで、本願発明においては、同種かつ同数の長鎖分岐をもたないものの活性化エネルギーEaとの差ΔEaをもって長鎖分岐の濃度を表す規定とした。すなわち、上記で求めた流動の活性化エネルギーEa[KJ/mol]と、式(1)により算出される活性化エネルギーEa[KJ/mol]との差を流動の活性化エネルギー差ΔEa[KJ/mol]とし、ΔEaは、長鎖分岐がない場合は0であるが、長鎖分岐の濃度が高くなるに従い大きな値を示す。
一方、単に長鎖分岐の濃度を高くすれば、それに伴って溶融流動特性は良くなるものの、同時に機械強度を損ねる惧れがある。他方、長鎖分岐を全くあるいは殆ど持たないものの流動特性は悪い。したがって、ΔEaは適度な範囲であることが望ましく、具体的には、1.5KJ/mol以上12.5KJ/mol以下であることが望ましい。ΔEaの下限は好ましくは1.6KJ/molである。ΔEaの上限は好ましくは11.0KJ/mol、より好ましくは10.0KJ/molである。1.5〜12.5KJ/molの範囲を外れると成形性と機械的物性のバランスが悪くなり不都合である。
流動の活性化エネルギー差ΔEaを上記範囲とするためには、後述する本願発明の製造方法を採用することにより達成することができ、すなわち上記範囲内の調整は、触媒の種類と使用割合、非共役ポリエンの使用量及び重合条件を適宜変更することにより可能である。
(2)伸長粘度
本願発明に係るエチレン系重合体においては、伸長粘度λmaxとΔEaとが下記の式(2)を満たす。
λmax≧1.2exp(0.0721×ΔEa) 式(2)
ここで伸長粘度λmaxの実施化要件を説明すると、伸長粘度λmaxは、以下のようにして求めることができる。
「尾崎邦宏 村井朝 別所信夫 金鳳植 日本レオロジー学会誌 4巻 166(1976)」の記載の方法に基づき、動的粘弾性測定結果から次式(3)に示される粘度成長関数η+ γ→0(t)を求める。
η+ γ→0(t)=t×{G”(ω)+1.12×G”(ω/2)−0.02G’(ω)} 式(3)
ただしω=1/tとする
ここで、G’(ω)は各速度ωの関数としての貯蔵弾性率、G”(ω)は各速度ωの関数としての損失弾性率、G”(ω/2)はω/2の関数としての損失弾性率、tは時間である。
一方、非定常一軸伸長粘度曲線η(t)において、歪の大きさが2.5以上で伸長粘度が最大となる点における時間をtmaxとし、下記式(4)により伸長粘度パラメータλを求める。λについての概念図を図2に示した。
λ=η(tmax)/3η+ γ→0(tmax) 式(4)
歪速度(設定値:1.0,0.3,0.1s−1)におけるλ値を求め、その中の最大値を伸長粘度λmaxとする。
本願発明のエチレン系重合体は、伸長粘度λmaxとΔEaとが式(2)を満たすことが必要である。式(2)を満たさないと成形性と機械的物性のバランスが悪くなり好ましくない。式(2)を満たすためには、後述する本願発明の製造方法を採用することにより達成することができ、式(2)の範囲内の調整は、触媒の種類と使用割合、非共役ポリエンの使用量及び重合条件を適宜変更することにより可能である。
本願発明の伸長粘度λmaxは、伸長粘度における歪硬化、すなわち溶融状態を保つ特定の温度で一定の歪み速度にて粘度を測定して得られる規定である。λmaxの値が大きいと弾性発現である歪硬化が強く、λmaxの値が小さいと歪硬化が弱いことを示す。成形方法及び成形条件により最適なλmaxの値は異なるが、ΔEaとの関係が式(5)を満たすことが望ましく、より望ましくは式(6)を満たすことであり、さらに望ましくは式(7)を満たすことである。
100≧λmax≧1.2exp(0.0721×ΔEa) 式(5)
100≧λmax≧1.2exp(0.0963×ΔEa) 式(6)
50≧λmax≧1.2exp(0.0963×ΔEa) 式(7)
λmaxが上記式の下限よりも小さい場合は、LCBの濃度に見合った溶融弾性が得られていないため、成形安定性が低くかつ機械強度が劣る。一方、λmaxが100を超える場合は、成形品に過剰な残留応力や異方性が生じ、耐衝撃性能や耐ストレスクラック性などの長期性能に問題が生ずる場合が多くなる
4.成分(A)と成分(B)の配合割合
エチレン系重合体組成物中における成分(A)と成分(B)の配合割合は、成分(A)5〜95重量%に対して成分(B)が5〜95重量%、好ましくは、成分(B)10〜90重量%に対して成分(C)が10〜90重量%となるように配合する。成分(A)の割合が上記範囲より大きいと透明性が低下するので好ましくない。また、成分(B)の配合割合が上記範囲より小さいと、成形性、衝撃強度が低下するので好ましくない。
5.メタロセン触媒
(1)基本的な要件
本願発明のエチレン系重合体を得るために用いる触媒について具体的に説明するが、本願発明は以下に例示する遷移金属化合物に何ら限定されるものではない。
本願発明のエチレン系重合体において、機械物性を損なわずに成形加工性を向上させるには、エチレン系重合体のポリマー主鎖における長短鎖の分岐の構造や分岐個数が関連し、ポリマー主鎖における必要な長短鎖の分岐の構造や分岐個数の実現は、特定のメタロセン触媒を二種又は複数種組み合わせ、より好ましくは非共役ポリエンの存在下に長鎖分岐の生成を伴う錯体及び実質上長鎖分岐の生成を伴わない錯体を使用して、重合反応を行えばよく、二種の錯体を有すメタロセン触媒により、炭素数1〜20の短鎖分岐(SCB)と炭素数20を超える長鎖分岐(LCB)をエチレン系重合体の高分子主鎖に導入する。
(1)錯体A及びB
本願発明の二種の錯体を有すメタロセン触媒において採用される一方の錯体Aは、中心遷移金属に配位子が2つ以上配位した構造のもので、(i)助触媒の共存下、水素及び非共役ポリエンが存在しない条件で重合を行った場合に得られる重合体のメルトフローレートMFR−Aが好ましくは2g/10分以下、さらに好ましくは0.4g/10分以下となる遷移金属化合物であればよい。
他方の錯体Bは、中心遷移金属に配位子が2つ以上配位した構造のもので、(ii)上記の(i)と同条件で重合を行った場合に得られる重合体のメルトフローレートMFR−Bが好ましくはMFR−Aの10倍以上となる遷移金属化合物であればよい。
そして、(iii)錯体A及び助触媒の存在下、水素が存在せず、非共役ポリエンがエチレンに対し0.01mol%存在した条件で重合を行った場合に得られる重合体のMFRを「MFR−A+」とし、前記錯体Aの代わりに錯体Bを使用して同条件で重合を行った場合に得られる重合体のMFRを「MFR−B+」とすると、好ましくは下記式(8)、更に好ましくは下記式(9)を満たすことが必要である。
{(MFR−A+)/(MFR−A)}/{(MFR−B+)/(MFR−B)}<0.8 式(8)
{(MFR−A+)/(MFR−A)}/{(MFR−B+)/(MFR−B)}<0.3 式(9)
更に、本願発明の錯体Aは長鎖分岐を有する重合体を与える遷移金属化合物が好適であり、また、本願発明の錯体Bは長鎖分岐を有しない重合体を与える遷移金属化合物が好適である。本願発明にいう長鎖分岐とは、炭素数20を越える分岐とし、該分岐部分の分子量は重量分子量として1,100以上とした。
錯体Aに由来する重合体成分[A]と錯体Bに由来する重合体成分[B]の量比は、好ましくは[A]/[B]=10/90〜90/10、さらに好ましくは20/80〜80/20である。重合体成分[A]と重合体成分[B]の比率は、錯体A及び助触媒、並びに錯体B及び助触媒からなる触媒でそれぞれ重合したときの重合活性から計算することができる。
上記範囲を外れるとエチレン重合体の成形加工性と機械物性のバランスが損なわれ好ましくない。
一般的な長鎖分岐の導入方法としては、重合時のβ水素脱離によるマクロモノマーの生成と再挿入を起こし易い錯体を用いる方法があり、触媒の錯体の例としては、架橋インデンを配位子とした錯体が挙げられる。しかし、このような錯体(特に加工性改良に有効と考えられる長鎖分岐構造を生成する錯体)を単独に用いた場合、得られるポリマーのMFRは、ポリマー構造からして必然的に低下し、実用範囲を大きく下回るものとなってしまう。その対策として、分子量を低くするために連鎖移動剤(水素)を重合時に用いる方法がとられるが、必要とされる長鎖分岐成分の分子量も低下するため加工性改良の効果が薄れてしまい、長鎖分岐ポリマーを生成する錯体を単独で使用することは好ましくない。
本願発明においては、加工性改良に有効な長鎖分岐構造を維持しながら、実用的なMFRの重合体を得るために、低いMFRの長鎖分岐ポリマーを生成する特定の錯体と、比較的MFRの高いポリマーを生成する特定の錯体とを組み合わせ、特定条件で重合を行うことにより、高分子量成分(低MFR成分)に優先的に長鎖分岐を導入することにより、バランスの良いエチレン重合体が得られる。このような新しい知見はメタロセン触媒分野において画期的なものといえる。
なお、本願発明においては、特定の錯体を別々に用いて2種類の重合体を製造し、その2種類の重合体を混合することでも本願発明の目的を達成できるが、特定の2種類の遷移金属化合物を一触媒として使用し、その触媒によりエチレン系重合体を製造することにより、重合結果として物性が大きく異なる2種類の重合体を均一に混合することが可能となり、均質性の優れたものを製造できる。
更に、本願発明者らは発明の目的達成のため、上記の錯体を2種類(3種以上の複数でもよい)用いた触媒に対し、重合時に非共役ポリエンを共存させる検討を行い、その結果ごく少量の非共役ポリエンを共存させることにより、加工性の指標となる物性値が大幅に改善されることも新たに発見した。このことは用いた錯体の非共役ポリエンに対する反応性の差が大きく関与しており、上記の2種類の錯体の組み合わせを選択する際に、非共役ポリエンに対する反応性を考慮した「所定条件を満たす錯体を、所定条件で組み合わせる」ことでより効果が増し、また、このような組み合わせの触媒を用いた場合、非共役ポリエン濃度により、エチレン重合体の特性も制御できることがわかった。
(2)錯体Aの例示
本願発明に用いる錯体Aは、重合反応に用いた場合、LCBの生成を伴う錯体であり、このような遷移金属化合物の例示としては、錯体Aが下記の一般式(1)で表される遷移金属化合物である。
ML x-n 一般式(1)
[式中、Mは周期律表4族の遷移金属を表し、LはMに配位する配位子であり、ジメチルシクロペンタジエニル基、トリメチルシクロペンタジエニル基、下記の化合物[1]で示されるベンゾインデニル基又は置換ベンゾインデニル基、下記の化合物[2]で示されるジベンゾインデニル基又は置換ジベンゾインデニルのいずれか一種類を2個以上有し、Rは炭化水素基、アルコキシル基、ハロゲン原子、水素原子を表す。xは遷移金属Mの原子価であり、nは2≦n≦xである。]
Figure 0005414971
化合物[1]
Figure 0005414971
化合物[2]

ここで置換基R〜R15 は炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30の炭化水素置換基を有するトリアルキル珪素基又は水素原子である。炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニル基、ジメチルフェニル基、ジエチルフェニル基、ジプロピルフェニル基、ジブチルフェニル基、トリメチルフェニル基、トリエチルフェニル基、トリプロピルフェニル基、トリブチルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基などのアリール基;トリチル基、フェネチル基、ベンズヒドリル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、ネオフィル基などのアリールアルキル基、スチリル基などのアリールアルケニル基が挙げられる。これらは分岐があってもよい。
更に、2つのシクロペンタジエニル骨格の有する配位子が、炭化水素基、シリレン基、置換シリレン基で架橋された、エチレンビス(インデニル)基、エチレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)基、ジメチルシリレンビス(インデニル)基なども有効である。
これら錯体Aの具体例を一部例示すると、(1,3−MeCpd)ZrCl、(1,3−MeCpd)ZrBr、(1,3−MeCpd)ZrMe、(1,3−MeCpd)Zr(OEt)、(1,3−MeCpd)ZrBz、(1,2,4−MeCpd)ZrCl、(1,2,4−MeCpd)ZrBr、(1,2,4−MeCpd)ZrMe、(1,2,4−MeCpd)Zr(OEt)、(1,2,4−MeCpd)ZrBz、(BzIND)ZrCl、(BzIND)ZrBr、(BzIND)ZrMe、(BzIND)Zr(OEt)、(BzIND)ZrBz、(DBI)ZrCl、(DBI)ZrBr、(DBI)ZrMe、(DBI)Zr(OEt)、(DBI)ZrBz、Et(IND)ZrCl、Et(IND)2ZrBr、Et(IND)ZrMe、Et(IND)Zr(OEt)、Et(IND)ZrBz、Et(4,5,6,7−H−IND)ZrCl、Et(4,5,6,7−H−IND)ZrBr、Et(4,5,6,7−H−IND)ZrMe、Et(4,5,6,7−H−IND)Zr(OEt)、Et(4,5,6,7−H−IND)ZrBz、MeSi(IND)ZrCl、MeSi(IND)ZrBr、MeSi(IND)ZrMe、MeSi(IND)Zr(OEt)、MeSi(IND)ZrBz、(1,3−MeCpd)ZrH、(1,2,4−MeCpd)ZrH、(BzIND)ZrH、(DBI)ZrH、(1,3−MeCpd)(IND)ZrH、(1,2,4−MeCpd)(IND)ZrH、(BzIND)(IND)ZrH、(DBI)(IND)ZrHなどが挙げられる。
ここで、Cpdはシクロぺンタジエニル基を、Bzはベンジル基を、INDはインデニル基を、BzINDはベンゾインデニル基を、DBIはジベンゾインデニル基を表す。
(3)錯体Bの例示
本願発明に用いる錯体Bは、重合に用いた場合、実質的にLCBの生成を伴わない錯体であり、錯体Bが下記の一般式(2)で表される遷移金属化合物である。このような遷移金属化合物の配位子としては上記の錯体Aで用いられる配位子以外のシクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基が挙げられ、置換基の数に制限はなく、炭素数1〜30の炭化水素基又は炭素数1〜30の炭化水素置換基を有するトリアルキル珪素基であり、それぞれ同一でも異なってもよい。
ML x-n 一般式(2)
[式中、Mは周期律表4族の遷移金属を表し、LはMに配位する配位子であり、シクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基を表し、複数個結合している場合は異なっていてもよい。Rは炭化水素基、アルコキシル基、ハロゲン原子、水素原子を表す。xは遷移金属Mの原子価であり、nは2≦n≦xである。]炭化水素基の具体例としては、前述した錯体Aの場合と同一である。
錯体Bの具体例の一部を例示すると、(Cpd)ZrCl、(Cpd)ZrBr、(Cpd)ZrMe、(Cpd)Zr(OEt)、(Cpd)ZrBz、(MeCpd)ZrCl、(MeCpd)ZrBr、(MeCpd)ZrMe、(MeCpd)Zr(OEt)、(MeCpd)ZrBz、(PrCpd)ZrCl、(PrCpd)ZrBr、(PrCpd)ZrMe、(PrCpd)Zr(OEt)、(PrCpd)ZrBz、(BuCpd)ZrCl、(BuCpd)ZrBr、(BuCpd)ZrMe、(BuCpd)Zr(OEt)、(BuCpd)ZrBz、(MePrCpd)ZrCl、(MePrCpd)ZrBr、(MePrCpd)ZrMe、(MePrCpd)Zr(OEt)、(MePrCpd)ZrBz、(MeBuCpd)ZrCl、(MeBuCpd)ZrBr、(MeBuCpd)ZrMe、(MeBuCpd)Zr(OEt)、(MeBuCpd)ZrBz、(IND)ZrCl、(IND)ZrBr、(IND)ZrMe、(IND)Zr(OEt)、(IND)ZrBz、(MeIND)ZrCl、(MeIND)ZrBr、(MeIND)ZrMe、(MeIND)Zr(OEt)、(MeIND)ZrBz、(4,5,6,7−H−IND)ZrCl、(4,5,6,7−H−IND)ZrBr、(4,5,6,7−H−IND)ZrMe、(4,5,6,7−H−IND)Zr(OEt)、(4,5,6,7−H−IND)ZrBz、(IND)(MeCpd)ZrCl、(IND)(MeCpd)ZrBr、(Cpd)ZrH、(MeCpd)ZrH、(PrCpd)ZrH、(BuCpd)ZrH、(MePrCpd)ZrH、(MeBuCpd)ZrH、(IND)ZrH、(MeIND)ZrH、(4,5,6,7−H−IND)ZrH、(Cpd)(IND)ZrH、(MeCpd)(IND)ZrH、(PrCpd)(IND)ZrH、(BuCpd)(IND)ZrH、(MePrCpd)(IND)ZrH、(MeBuCpd)(IND)ZrH、(MeIND)(IND)ZrH、(4,5,6,7−H−IND)(IND)ZrH、(IND)(BzIND)ZrH、(IND)(DBI)ZrH、(IND)(MeCpd)ZrHなどが挙げられる。
(4)錯体Aと錯体Bの組み合わせの例示
本願発明では2種の遷移金属化合物(錯体Aと錯体B)を所定の条件を満たす組み合わせで触媒として用いる。具体的な組み合わせを以下に例示する。
(1,3−MeCpd)ZrClと(IND)ZrCl、 (1,3−MeCpd)ZrMeと(IND)ZrMe、(1,2,4−MeCpd)ZrClと(IND)ZrCl、(BzIND)ZrClと(IND)ZrCl、(BzIND)ZrMeと(IND)ZrMe、(DBI)ZrClと(BuCpd)ZrCl、(DBI)ZrMeと(IND)ZrMe、Et(IND)ZrClと(BuCpd)ZrCl、Et(IND)ZrMeと(IND)ZrMe、Et(4,5,6,7−H−IND)ZrClと(BuCpd)ZrCl、Et(4,5,6,7−H−IND)ZrMeと(IND)ZrMe、MeSi(IND)ZrClと(BuCpd)ZrCl、MeSi(IND)ZrMeと(IND)ZrMe、(1,3−MeCpd)ZrHと(IND)ZrH、(1,2,4−MeCpd)ZrHと(IND)ZrH、(BzIND)ZrHと(IND)ZrH、(DBI)ZrHと(IND)ZrH、(BzIND)(IND)ZrHと(IND)ZrH、(DBI)(IND)ZrHと(MePrCpd)ZrHなどの組み合わせが挙げられる。
(5)錯体の合成法
以上の錯体の例示の中で、配位子を3つ有する遷移金属化合物を示したが、これらの殆どは、これまで知られていない新規な化合物である。以下に化合物の合成方法について2つの例を[合成方法1]及び[合成方法2]として示す。ただし、これらの遷移金属化合物の合成法はこれらの方法に限るものではない。
[合成方法1]
下記の化合物a)、b)及びc)を相互に接触させることにより製造する。
a) L
b) L
c) LiR
ここで、L、L及びLはそれぞれシクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基、ベンゾインデニル基、置換ベンゾインデニル基を表す。置換基は炭素数1〜30の炭化水素基又は炭素数1〜30の炭化水素を置換基として有する有機ケイ素基であり、それぞれ同一でも異なってもよい。また、これらのうち、同一のシクロペンタジエニル環に結合した置換基はそれぞれ互いに結合して環状炭化水素基(多環式構造を含む)を形成してもよい。Mは周期律表4族の遷移金属を表し、好ましくはジルコニウムである。Xはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素を表し、2つのXは同一でも異なってもよい。好ましくは塩素か臭素であり、特に好ましくは塩素である。Rはエチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基などのアルキル基を表す。これらは分岐があってもよい。好ましくはn−ブチル基である。
化合物a)、b)及びc)を接触させる場合は、通常は窒素又はアルゴンなどの不活性雰囲気中、一般にベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素、ヘプタン、ヘキサン、デカン、ドデカン、シクロヘキサンなどの脂肪族又は脂環族炭化水素などの液状不活性炭化水素、或いはジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどの含酸素炭化水素溶媒の存在下に、撹拌下又は非撹拌下で行われる。接触順序には特に制限は無いが、具体的には以下の順序で行うことが望ましい。
化合物a)とc)を接触させた後、b)を接触させる。接触に際しては、各成分を一度に添加してもよいし、一定時間をかけて添加してもよいし、分割して添加してもよい。また各成分の接触を複数回行ってもよい。
化合物a)とc)の接触は通常−100〜0℃、好ましくは−80〜−40℃の温度にて、好ましくは5分〜24時間、さらに好ましくは30分〜3時間行うことが望ましい。その後、好ましくは−30℃〜30℃、さらに好ましくは0℃〜10℃付近まで昇温した後、生じたLiClなどのハロゲン化アルカリ金属を濾過によって除く。さらに化合物b)を接触させた後、好ましくは0℃〜150℃、さらに好ましくは20℃〜80℃の温度にて、好ましくは5分〜3日、さらに好ましくは1時間〜24時間撹拌する。反応溶液中の溶媒を除いた後、ペンタンやヘキサンなどの脂肪族炭化水素で洗浄後、本願発明の新規な遷移金属化合物を得ることができる。
化合物a)、b)、c)を接触させ加熱撹拌した後、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素、ヘプタン、ヘキサン、デカン、ドデカン、シクロヘキサンなどの脂肪族或いは脂環族炭化水素などの液状不活性炭化水素溶液から濾過することによりLiClを反応溶液から除くこともできる。また、反応溶液から溶媒を除いた後、テトラヒドロフランなどの含酸素炭化水素溶媒で洗浄してLiClを除くこともできる。
化合物a)〜c)の使用割合は、化合物a)1モルに対して化合物b)を好ましくは1〜50モル、さらに好ましくは2〜8モルの割合で、化合物c)を通常2モルの割合で用いることができる。
[合成方法2]
下記の化合物d)とe)を相互に接触させることにより製造することができる。
d) IndZrH
e) L−H
ここで、Lはシクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基、ベンゾインデニル基、置換ベンゾインデニル基を表す。置換基は炭素数1〜30の炭化水素基又は炭素数1〜30の炭化水素を置換基として有する有機ケイ素基であり、それぞれ同一でも異なってもよい。また、これらのうち、同一のシクロペンタジエニル環に結合した置換基はそれぞれ互いに結合して環状炭化水素基(多環式構造を含む)を形成してもよい。
化合物d)とe)を接触させる場合は、通常は窒素又はアルゴンなどの不活性雰囲気中、一般にベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素、ヘプタン、ヘキサン、デカン、ドデカン、シクロヘキサンなどの脂肪族又は脂環族炭化水素などの液状不活性炭化水素、或いはジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどの含酸素炭化水素溶媒の存在下に、撹拌下又は非撹拌下で行われる。
化合物d)とe)の接触は通常−80〜150℃、好ましくは0〜50℃の温度にて、好ましくは1分〜3時間、さらに好ましくは10分〜1時間行うことが望ましい。その後、好ましくは0℃〜150℃、さらに好ましくは20℃〜110℃付近まで昇温し、好ましくは5分〜3日、さらに好ましくは1時間〜24時間撹拌する。反応溶液中の溶媒を除いた後、ペンタンやヘキサンなどの脂肪族炭化水素で洗浄後、新規な遷移金属化合物を得ることができる。
化合物d)とe)の使用割合は、化合物d)1モルに対して化合物e)を好ましくは1〜50モル、さらに好ましくは2〜8モルの割合で用いることができる。
なお、化合物d)のIndZrHは前記の合成方法1により得ることができる。
さらに、本願発明においては、配位子を3つ有する遷移金属にアルキルアルミが結合した下記の化合物が使用されるが、これらもまた、これまで殆ど知られていない新規な化合物である。
−H−M
ここでLはシクロペンタジエニル骨格を有する配位子で、シクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基、ベンゾインデニル基、置換ベンゾインデニル基を表す。Mは周期律表4族の遷移金属を表し、好ましくはジルコニウムである。Mは周期律表13族の化合物で、好ましくはアルミニウムかホウ素である。Rはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基などのアルキル基を表す。これらは分岐があってもよい。好ましくはi−ブチル基である。
以下に上記化合物の合成方法の例を[合成方法3]として示すが、合成方法はこれに限るものではない。
[合成方法3]
下記化合物 f)、g)、h)を相互に接触させることにより製造する。
f) IndZrH
g) L−H
h) AlR
ここで、Lはシクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基、ベンゾインデニル基、置換ベンゾインデニル基を表す。置換基は炭素数1〜30の炭化水素基又は炭素数1〜30の炭化水素を置換基として有する有機ケイ素基であり、それぞれ同一でも異なってもよい。また、これらのうち、同一のシクロペンタジエニル環に結合した置換基はそれぞれ互いに結合して環状炭化水素基(多環式構造を含む)を形成してもよい。Rはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基などのアルキル基を表し、これらは分岐があってもよい。好ましくはi−ブチル基である。
化合物f)、g)、h)を接触させる場合は、通常は、窒素又はアルゴンなどの不活性雰囲気中、一般にベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素、ヘプタン、ヘキサン、デカン、ドデカン、シクロヘキサンなどの脂肪族又は脂環族炭化水素などの液状不活性炭化水素、或いはジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどの含酸素炭化水素溶媒の存在下に、撹拌下又は非撹拌下で行われる。
化合物f)、g)、h)の接触は通常−80〜150℃、好ましくは10〜100℃の温度にて、好ましくは1分〜48時間、さらに好ましくは10分〜6時間行うことが望ましい。反応溶液中の溶媒を除いた後(必要な場合は減圧して濃縮する)、ペンタンやヘキサンなどの脂肪族炭化水素で洗浄することにより、新規な遷移金属化合物を得ることができる。
化合物f)、g)、h)の使用割合は、化合物f)1モルに対して化合物g)を好ましくは0〜50モル、さらに好ましくは0〜8モル、h)を1〜3モルの割合で用いることができる。
なお、化合物f)のIndZrHは、前述の合成方法により得ることができる。
(6)メタロセン触媒の他の成分
本願発明のエチレン系重合体は、上記のように2種類の遷移金属化合物を、次に示す有機アルミニウムオキシ化合物、或いは遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物、又はこれらの混合物との組み合わせで、オレフィン重合用触媒として重合反応に用いる。
有機アルミニウムオキシ化合物は、分子中にAl−O−Al結合を有し、その結合数は通常1〜100、好ましくは1〜50個の範囲にある。このような有機アルミニウムオキシ化合物は、通常有機アルミニウム化合物と水とを反応させて得られる生成物である。有機アルミニウムと水との反応は、通常は不活性炭化水素中で行われる。不活性炭化水素としてはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素及び芳香族炭化水素が使用できるが、脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素を使用することが好ましい。
有機アルミニウムオキシ化合物の調製に用いる有機アルミニウム化合物は、下記の一般式で表される化合物がいずれも使用可能であるが、好ましくはトリアルキルアルミニウムが使用される。
AlX3−t
式中、Rは炭素数1〜18、好ましくは1〜12のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基などの炭化水素基、Xは水素原子又はハロゲン原子を示し、tは1≦t≦3の整数を示す。
トリアルキルアルミニウムのアルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基などのいずれでも差し支えないが、メチル基であることが特に好ましい。
上記有機アルミニウム化合物は、2種以上混合して使用することもできる。水と有機アルミニウム化合物との反応比(水/Alモル比)は、0.25/1〜1.2/1、特に、0.5/1〜1/1であることが好ましく、反応温度は通常−70〜100℃、好ましくは−20〜20℃の範囲にある。反応時間は通常5分〜24時間、好ましくは10分〜5時間の範囲で選ばれる。反応に要する水として、単なる水のみならず、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物などに含まれる結晶水や反応系中に水が生成しうる成分も利用することもできる。
なお、上記した有機アルミニウムオキシ化合物のうち、アルキルアルミニウムと水とを反応させて得られるものは、通常アルミノキサンと呼ばれ、特にメチルアルミノキサンは、有機アルミニウムオキシ化合物として好適である。
有機アルミニウムオキシ化合物として、上記した各有機アルミニウムオキシ化合物の2種以上を組み合わせて使用することもでき、また有機アルミニウムオキシ化合物を不活性炭化水素溶媒に溶解又は分散させた溶液としたものを用いてもよい。
遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物の具体例を摘記すると、ボラン化合物やボレート化合物が挙げられる。
ボラン化合物をより具体的に表すと、トリフェニルボラン、トリ(o−トリル)ボラン、トリ(p−トリル)ボラン、トリ(m−トリル)ボラン、トリ(o−フルオロフェニル)ボラン、トリス(p−フルオロフェニル)ボラン、トリス(m−フルオロフェニル)ボラン、トリス(2,5−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(4−トリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロナフチル)ボラン、トリス(パーフルオロビフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロアントリル)ボラン、トリス(パーフルオロビナフチル)ボランが挙げられる。
これらの中でも、トリス(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロナフチル)ボラン、トリス(パーフルオロビフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロアントリル)ボラン、トリス(パーフルオロビナフチル)ボランがより好ましく、さらに好ましくはトリス(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロナフチル)ボラン、トリス(パーフルオロビフェニル)ボランが例示される。
ボレート化合物を具体的に表すと第1の例は、次の一般式で示される化合物である。
[L−H][BR
式中、Lは中性ルイス塩基、Hは水素原子、[L−H]はアンモニウム、アニリニウム、ホスフォニウムなどのブレンステッド酸である。アンモニウムとしては、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリ(n−ブチル)アンモニウムなどのトリアルキル置換アンモニウム、ジ(n−プロピル)アンモニウム、ジシクロヘキシルアンモニウムなどのジアルキルアンモニウムが例示できる。
アニリウムとしては、N,N−ジメチルアニリニウム、N,N−ジエチルアニリニウム、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムなどのN,N−ジアルキルアニリニウムが例示できる。また、ホスフォニウムとしてはトリフェニルホスフォニウム、トリブチルホスホニウム、トリ(メチルフェニル)ホスフォニウム、トリ(ジメチルフェニル)ホスフォニウムなどのトリアリールホスフォニウム、トリアルキルホスフォニウムが挙げられる。
Rは6〜20、好ましくは6〜16の炭素原子を含む、同じか又は異なる芳香族又は置換芳香族炭化水素基で、架橋基によって互いに連結されていてもよく、置換芳香族炭化水素基の置換基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などに代表されるアルキル基やフッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲンが好ましい。
上記の一般式で表される化合物の具体例としては、トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどを例示することができる。
これらの中でも、トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレートなどがより好ましい。
ボレート化合物の第2の例は、次の一般式で表される。
[L´][BR
式中、L´はカルボカチオン、メチルカチオン、エチルカチオン、プロピルカチオン、イソプロピルカチオン、ブチルカチオン、イソブチルカチオン、t−ブチルカチオン、ペンチルカチオン、トロピニウムカチオン、ベンジルカチオン、トリチルカチオン、ナトリウムカチオン、プロトンなどが挙げられる。Rは段落0051の一般式におけるRの定義と同じである。
上記の化合物の具体例としては、トリチルテトラフェニルボレート、トリチルテトラ(o−トリル)ボレート、トリチルテトラ(p−トリル)ボレート、トリチルテトラ(m−トリル)ボレート、トリチルテトラ(o−フルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(p−フルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(m−フルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(3,5−ジフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トロピニウムテトラフェニルボレート、トロピニウムテトラ(o−トリル)ボレート、トロピニウムテトラ(p−トリル)ボレート、トロピニウムテトラ(m−トリル)ボレート、トロピニウムテトラ(o−フルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(p−フルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(m−フルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(3,5−ジフルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレートなどを例示することができる。
これらの中でもトリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トロピニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレートが好ましい。
本願発明で用いる2種以上の遷移金属化合物と、有機アルミニウムオキシ化合物、或いはこれらの遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物、又はこれらの混合物からなるオレフィン重合用触媒は、担体に担持させて固体触媒として使用することができる。
担体としては、無機物担体、粒子状ポリマー担体又はこれらの混合物が使用される。無機物担体は、金属、金属酸化物、金属塩化物、金属炭酸塩、炭素物質、又はこれらの混合物が使用可能である。
無機物担体に用いることができる好適な金属としては、例えば鉄、アルミニウム、ニッケルなどが挙げられる。また、金属酸化物としては周期律表1〜8族の元素の単独酸化物又は複合酸化物が挙げられ、例えばSiO、Al、MgO、CaO、B、TiO、ZrO、Fe、Al・MgO、Al・CaO、Al・SiO、Al・MgO・CaO、Al・MgO・SiO、Al・CuO、Al・Fe、Al・NiO、SiO・MgOなどの天然又は合成の各種単独ないしは複合酸化物を例示することができる。ここで上記の式は分子式ではなく、組成のみを表すものであって、本願発明において用いられる複合酸化物の構造及び成分比率は特に限定されるものではない。また、本願発明において用いる金属酸化物は、少量の水分を吸収していても差し支えなく、少量の不純物を含有していても差し支えない。金属塩化物としては、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属の塩化物が好ましく、具体的には塩化マグネシウム、塩化カルシウムなどが好適である。金属炭酸塩としてはアルカリ金属、アルカリ土類金属の炭酸塩が好ましく、具体的には、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムなどが挙げられる。炭素質物としては例えばカーボンブラック、活性炭などが挙げられる。
以上の無機物担体はいずれも本願発明に好適に用いることができるが、特に金属酸化物、シリカ、アルミナなどの使用が好ましい。
これら無機物担体は通常200〜800℃、好ましくは400〜600℃で空気中又は窒素、アルゴンなどの不活性ガス中で焼成して、表面水酸基の量を0.8〜1.5mmol/gに調節して用いるのが好ましい。
これら無機物担体の性状としては特に制限はないが、通常は、平均粒径は好ましくは5〜200μm、更に好ましくは10〜150μm、比表面積は好ましくは150〜1,000m/g、更に好ましくは200〜500m/g、細孔容積は好ましくは0.3〜2.5cm/g、更に好ましくは0.5〜2.0cm/g、見掛比重は好ましくは0.20〜0.50g/cm、更に好ましくは0.25〜0.45g/cmを有す無機物担体を用いるのが好ましい。
上記した無機物担体はそのまま用いることもできるが、予備処理としてこれらの担体をトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどの有機アルミニウム化合物やAl−O−Al結合を含む有機アルミニウムオキシ化合物に接触させた後に、用いることができる。
本願発明で用いる2種以上の遷移金属化合物と、有機アルミニウムオキシ化合物、遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物又はこれらの混合物と担体からオレフィン類重合用触媒を得る際の各成分の接触方法は、特に限定されず、例えば、以下の方法が任意に採用可能である。
(I)2種類の遷移金属化合物を混合し、次に助触媒と接触させ、その後担体と接触させる。
(II)1種類の遷移金属化合物と助触媒を接触させ、次に他の遷移金属化合物と接触させ、その後担体と接触させる。
(III)1種類の遷移金属化合物と助触媒を接触させ、次に担体と接触させ、その後他の遷移金属化合物を接触させる。
(IV)2種の遷移金属化合物と担体を接触させ、その後助触媒を接触させる。
(V)助触媒と担体を接触させ、その後2種の遷移金属化合物と接触させる。
これらの接触方法の中で(I)、(II)、(III)、(V)が好ましい。いずれの接触方法においても、通常は窒素又はアルゴンなどの不活性雰囲気中、一般にベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素、ヘプタン、ヘキサン、デカン、ドデカン、シクロヘキサンなどの脂肪族或いは脂環族炭化水素などの液状不活性炭化水素の存在下に、撹拌下又は非撹拌下に各成分を接触させる方法が採用される。この接触は、通常−100℃〜200℃、好ましくは−50℃〜100℃の温度にて、好ましくは10分〜50時間、更に好ましくは1時間〜24時間行うことが望ましい。
また、遷移金属化合物、有機アルミニウムオキシ化合物、遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物と担体の接触に際しては、ある種の成分が可溶ないしは難溶な芳香族炭化水素溶媒と、ある種の成分が不溶ないしは難溶な脂肪族又は脂環族炭化水素溶媒とがいずれも使用可能である。
各成分同士の接触反応を段階的に行う場合にあっては、前段で用いた溶媒などを除去することなく、これをそのまま後段の接触反応の溶媒に用いてもよい。また、可溶性溶媒を使用した前段の接触反応後、ある種の成分が不溶もしくは難溶な液状不活性炭化水素を添加して、所望生成物を固形物として回収した後に、或いは一旦可溶性溶媒の一部又は全部を、濃縮乾燥などの手段により除去して所望生成物を固形物として取り出した後に、この所望生成物の後段の接触反応を、上記した不活性炭化水素溶媒のいずれかを使用して実施することもできる。本願発明では各成分の接触反応を複数回行うことを妨げない。
本願発明で用いる2種以上の遷移金属化合物と有機アルミニウムオキシ化合物、遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物及び担体の使用割合は、特に限定されないが、以下の範囲が好ましい。
有機アルミニウムオキシ化合物を用いる場合、遷移金属化合物中の遷移金属(M)に対する有機アルミニウムオキシ化合物のアルミニウムの原子比(Al/M)は、通常1〜100,000、好ましくは5〜1,000、更に好ましくは50〜200の範囲が望ましく、遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物を用いる場合、遷移金属化合物の遷移金属に対する、ホウ素の原子比(B/M)は、通常0.01〜100モル、好ましくは0.1〜50モル、更に好ましくは0.2〜10モルの範囲で選択することが望ましい。
担体の使用量は、遷移金属化合物中の遷移金属0.0001〜5ミリモル当たり、好ましくは0.001〜0.5ミリモル当たり、更に好ましくは0.01〜0.1ミリモル当たり1gである。
遷移金属化合物、有機アルミニウムオキシ化合物、遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物と担体を前記接触方法(I)〜(V)のいずれかで相互に接触させ、しかる後、溶媒を除去することで、オレフィン類重合用触媒を固体触媒として得ることができる。溶媒の除去は、常圧下又は減圧下、好ましくは0〜200℃、更に好ましくは20〜150℃で、好ましくは1分〜50時間、更に好ましくは10分〜10時間で行うことが望ましい。
なお、オレフィン類重合用触媒は、以下の方法によっても得ることができる。
(VI)遷移金属化合物と担体を接触させて溶媒を除去し、これを固体触媒成分とし、重合条件下で有機アルミニウムオキシ化合物、遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物と接触させる。
(VII)有機アルミニウムオキシ化合物、遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物と担体を接触させて溶媒を除去し、これを固体触媒成分とし、重合条件下で遷移金属化合物と接触させる。
これらの接触方法の場合も成分比、接触条件及び溶媒除去条件は前記と同様の条件が使用できる。
本願発明で用いる2種以上の遷移金属化合物は、層状珪酸塩に担持することで触媒とすることもできる。
層状珪酸塩とは、イオン結合などによって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造をとる珪酸塩化合物である。
大部分の層状珪酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出するが、これら、層状珪酸塩は特に天然産のものに限らず、人工合成物であってもよい。これらの中では、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ベントナイト、テニオライトなどのスメクタイト族、バーミキュライト族、雲母族が好ましい。
一般に、天然品は、非イオン交換性(非膨潤性)であることが多く、その場合は好ましいイオン交換性(ないし膨潤性)を有するものとするために、イオン交換性(ないし膨潤性)を付与するための処理を行うことが好ましい。そのような処理のうちで特に好ましいものとしては次のような化学処理が挙げられる。ここで化学処理とは、表面に付着している不純物を除去する表面処理及び層状珪酸塩の結晶構造と化学組成に影響を与える処理のいずれをも用いることができる。具体的には、(イ)塩酸、硫酸などを用いて行う酸処理、(ロ)NaOH、KOH、NHなどを用いて行うアルカリ処理、(ハ)周期律表第2族から第7族から選ばれた少なくとも1種の原子を含む陽イオンとハロゲン原子又は無機酸由来の陰イオンからなる群より選ばれた少なくとも1種の陰イオンからなる塩類を用いた塩類処理、(ニ)アルコール、炭化水素化合物、ホルムアミド、アニリンなどの有機物処理が挙げられる。これらの処理は単独で行ってもよいし、2つ以上の処理を組み合わせてもよい。
層状珪酸塩は、全ての工程の前後又は中間のいずれの時点においても、粉砕、造粒、分粒、分別などによって粒子性状を制御することができる。
層状珪酸塩はそのまま用いることもできるが、これらの層状珪酸塩をトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどの有機アルミニウム化合物やAl−O−Al結合を含む有機アルミニウムオキシ化合物と組み合わせて用いることができる。
本願発明で用いる2種以上の遷移金属化合物を層状珪酸塩に担持するには、遷移金属化合物と層状珪酸塩を相互に接触させる、或は遷移金属化合物、有機アルミニウム化合物、層状珪酸塩を相互に接触させてもよい。各成分の接触方法は、特に限定されず、例えば、以下の方法が任意に採用可能である。
(VIII)2種の遷移金属化合物と有機アルミニウム化合物を接触させた後、担体(層状珪酸塩)と接触させる。
(IX)2種の遷移金属化合物と担体を接触させた後、有機アルミニウム化合物と接触させる。
(X)1種類の遷移金属化合物と担体を接触させ、次に担体と有機アルミニウムを接触させ、その後他の遷移金属化合物を接触させる。
(XI)有機アルミニウムオキシ化合物と担体を接触させた後、2種の遷移金属化合物とを接触させる。
これらの接触方法の中で、特に(VIII)と(XI)が好ましい。いずれの接触方法においても、通常は窒素又はアルゴンなどの不活性雰囲気中、一般にベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素、ヘプタン、ヘキサン、デカン、ドデカン、シクロヘキサンなどの脂肪族或いは脂環族炭化水素などの液状不活性炭化水素の存在下に、撹拌下又は非撹拌下に各成分を接触させる方法が採用される。
遷移金属化合物と、有機アルミニウム化合物、担体の使用割合は、特に限定されないが、以下の範囲が好ましい。遷移金属化合物の担持量は、層状珪酸塩1gあたり、0.0001〜5ミリモル、好ましくは0.001〜0.5ミリモル、更に好ましくは0.01〜0.1ミリモルである。有機アルミニウム化合物を用いる場合のAl担持量は、0.01〜100モル、好ましくは0.1〜50モル、更に好ましくは0.2〜10モルの範囲であることが望ましい。
担体及び溶媒除去の方法は、前記の無機物担体と同様の条件が使用できる。このようにして得られるオレフィン類重合用触媒は、粒子形状の調整などのために必要に応じてモノマーの予備重合を行った後に使用しても差し支えない。
6.非共役ポリエン共存下での重合
本願発明のエチレン系重合体を得る際に、前記した特定の二種のメタロセン触媒の使用下において、少量のα,ω−非共役ジエンなどの非共役ポリエンの共存下、エチレンの単独重合又は他のオレフィンとの共重合を行うことにより、機械強度を損なわずに加工性の優れたポリエチレン組成物を生成させることができる。
ここでいうオレフィン類には、α−オレフィン類、環状オレフィン類、スチレン類似体及び極性基含有オレフィン類が包含される。
本願発明では、非共役ポリエン共存下での重合で、非共役ポリエン濃度を制御することで長鎖分岐成分の構造制御をする方法を見出し、ポリエチレン組成物の加工性を大幅に向上させることに成功した。使用可能な非共役ポリエンは炭素数5〜24であり、好ましくは末端二重結合を2つ以上有する炭素数6〜18の非共役ジエン、非共役トリエンである。好ましい具体的には、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、1,9−デカジエン、1,13−テトラデカジエン、3−メチル−1,4−ペンタジエン、1,5,9−デカトリエン、1,2,4−トリビニルシクロヘキサンなどが例示され、さらに好ましくは、1,7−オクタジエンが挙げられる。
本願発明における非共役ポリエンの使用量は、重合系内のエチレンに対し0〜1mol%で、好ましくは0〜0.5mol%、更に好ましくは0.0001〜0.05mol%の範囲である。非共役ポリエンの使用量が1mol%を超えるとエチレン重合体の成形加工性と機械物性のバランスが損なわれ好ましくない。
なお、図1に本願発明の錯体A及びBを使用して重合されるポリマーのMFRの差異と、ポリエンを共存させたときの反応性の差異を示す概念がグラフ図として図示されている。ポリエンを共存させないときに10倍以上のMFRの差が有り、ポリエンを共存させると錯体AによるMFRの低下度合いが錯体Bによるものよりも大きいことが示されている。
7.共重合モノマー
本願発明のエチレン系重合体においては、α−オレフィン類、環状オレフィン類、スチレン類似体及び極性基含有オレフィン類と共重合することができる。
α−オレフィン類には、炭素数3〜20、好ましくは3〜8のものが包含され、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、ビニルシクロヘキサンなどが例示される。2種類以上のα−オレフィンを共重合させることも可能であり、α−オレフィンの量は全モノマーの40モル%以下、好ましくは30モル%以下、更に好ましくは20モル%以下の範囲で選ばれる。
環状オレフィンとしては、炭素数3〜24、好ましくは3〜18のものが本願発明で使用可能であり、これには例えば、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3−メチルシクロヘキセン、シクロオクテン、シクロデセン、シクロドデセン、テトラシクロデセン、オクタシクロデセン、ジシクロペンタジエン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−イソブチル−2−ノルボルネン、5,6−ジメチル−2−ノルボルネン、5,5,6−トリメチル−2−ノルボルネン、エチリデンノルボルネンなどが包含される。環状オレフィンの量は共重合体の50モル%以下、通常は1〜50モル%、好ましくは2〜50モル%の範囲にある。
本願発明で使用可能なスチレン類似体は、スチレン及びスチレン誘導体であって、その誘導体としては、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレンなどを例示することができる。
8.重合方法
本願発明のエチレン系重合体を得るための重合反応は、前記したメタロセン触媒の存在下に、スラリー重合、溶液重合、又は気相重合にて行うことができる。スラリー重合又は気相重合が好ましく、実質的に酸素と水分を断った状態で、イソブタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素などから選ばれる不活性炭化水素溶媒の存在下又は不存在下で、オレフィンを重合させる。この時の重合条件は、温度は好ましくは20〜200℃、更に好ましくは50〜100℃、圧力は好ましくは常圧〜7MPa、更に好ましくは常圧〜3MPaの範囲にあり、重合時間としては好ましくは5分〜10時間、更に好ましくは5分〜5時間が採用される。
生成重合体の分子量は、重合温度、触媒のモル比などの重合条件を変えることによってもある程度調節可能であるが、重合反応系に水素を添加することでより効果的に分子量調節を行うことができる。
また、重合系中に、水分除去を目的とした成分、いわゆるスカベンジャーを加えても何ら支障なく重合を実施することができる。なお、かかるスカベンジャーとしては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物、有機アルミニウムオキシ化合物、分岐アルキルを含有する変性有機アルミニウム化合物、ジエチル亜鉛、ジブチル亜鉛などの有機亜鉛化合物、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、エチルブチルマグネシウムなどの有機マグネシウム化合物、エチルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムクロリドなどのグリニヤ化合物などが使用される。これらのなかでは、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、エチルブチルマグネシウムが好ましく、トリエチルアルミニウムが特に好ましい。
水素濃度、モノマーとコモノマー濃度、非共役ジエン濃度、重合圧力、重合温度などの重合条件が互いに異なる2段階以上の多段階重合方式にも、支障なく適用することができる。
9.添加剤
有機或いは無機フィラー、粘着付与剤、酸化防止剤、防曇剤、有機或いは無機系顔料、分散剤、核剤、発泡剤、難燃剤、架橋剤、紫外線防止剤、(不)飽和脂肪酸アミド、(不)飽和高級脂肪酸の金属塩の滑剤などの公知の添加剤を本願発明の特性を本質的に阻害しない範囲で添加することができる。これらの添加剤の中でも、無機フィラー、粘着付与剤、滑剤は作業性をより向上させるために好適に用いられる。
無機フィラーとしては、軽質及び重質炭酸カルシウム、タルク、シリカ、ゼオライト、炭酸マグネシウム、長石などが挙げられる。
粘着付与剤としては、ポリブテン、ヒマシ油誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、ロジン及びロジン誘導体、石油樹脂及びそれらの水添物などのタッキファイヤー、ゴムが挙げられる。これら粘着付与剤は0.5〜20重量部の範囲で配合することができる。
滑剤としては、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミドなどの脂肪酸アミド、ステアリン酸モノグリセライド、ステアリン酸ジグリセライド、オレイン酸モノグリセライド、オレイン酸ジグリセライドなどの脂肪酸グリセリンエステル化合物及びそれらのポリエチレングリコール付加物などが挙げられる。
顔料としてはカーボンブラック、チタン白などの他、市販の各種着色剤マスターバッチが好適に用いられる。
これらの添加剤は単独或いは混合組成物として使用されるが、添加量としては通常0.01〜0.5重量%、好ましくは0.05〜0.3重量%である。添加量が0.01重量%未満ではフィルムの改質効果が充分ではなく、0.5重量%を越える場合にはフィルム表面への浮き出し量が多く、フィルムがべたつき、その結果、作業性が著しく低下するなどの問題が起こるため好ましくない。
10.フィルム成形
本発明のポリエチレン系フィルムは、エチレン系重合体組成物を、空冷インフレーション成形、空冷2段インフレーション成形、高速インフレーション成形、T−ダイフィルム成形、水冷インフレーション成形、カレンダー成形などで加工することにより得ることができる。
11.フィルムとしての特性値
本願発明のフィルムは、ダート衝撃強度が120g以上であることが好ましく、140g以上であることがより好ましい。ヘイズ値は好ましくは10以下、より好ましくは8以下である。
12.積層フィルム
本願発明のフィルムは複数の押出機を有する多層共押出成形機を用いて、上記のエチレン系重合体又はポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂など他の熱可塑性樹脂とともに二層又は三層以上を共押出しして、多層フィルムとすることができる。三層以上の場合、他の熱可塑性樹脂を該重合体で挟んでもよいし、他の樹脂で該重合体を挟んでもよい。
また、本発明のフィルムを、二軸延伸された熱可塑性樹脂フィルムと積層し、積層フィルムとすることができる。二軸延伸された熱可塑性樹脂フィルムとしては、二軸延伸ナイロン、二軸延伸ポリエステル、二軸延伸ポリプロピレンなどが挙げられる。二軸延伸された熱可塑性樹脂フィルムは表面がPVDCコート、アルミ蒸着などの処理が施されていても構わない。
積層方法としては、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、ノンソルラミネート法、サンドイッチラミネート法、サーマルラミネート法などが一般的に用いられる。二軸延伸された熱可塑性樹脂フィルムを基材フィルムとして積層する場合は、基材フィルムの表面を予め表面処理することが好ましい。表面処理の方法としては、コロナ放電処理法、オゾン処理法、フレーム処理法、低温プラズマ処理法などの各種処理法が挙げられる。これらのうち、コロナ放電処理法が最も一般的であり好ましい。
13.フィルムの用途
本願発明におけるフィルム又は積層フィルムはスタンディングパウチ、スパウトパウチ、それらのパウチ用シーラント、液体スープ小袋用シーラント、液体紙容器用シーラント、規格袋、重袋、ラップフィルム、ストレッチフィルム、ドライラミ用シーラント、食品包装などの各種包装用フィルム、輸液バック、農業用フィルムなどに好適である。
以下において、各実施例によって、各比較例を対照しながら、本願発明をより詳細にかつ具体的に説明して、本願発明の構成と効果をより明らかにし、本願発明の構成の各要件の合理性と有意性とを立証する。
[重合体の物性測定]
各実施例及び各比較例で得られた重合体の物性測定は、以下に説明する方法で行った。試験に供する樹脂は、酸化防止剤としてチバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製酸化防止剤イルガノックス(登録商標)B−225を0.1重量部添加し、40mmφ単軸押出機を用いて、樹脂温度170℃で混錬してペレット化したものを用いた。
1)メルトフローレートMFR
MFRは、JIS K−7210の表1−条件7に従い、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定した。
2)密度
JIS K−7112に従い測定した。
3)GPCによる分子量及び分子量分布測定
ウォーターズ社製AllianceGPC2000型を使用し、下記の条件で測定を行い、分子量及び分子量分布を求めた。
カラム:ShowdexHT−G及び同HT−806M×2本 溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン 温度:140℃ 流量:1.0ml/分
カラムの較正は、昭和電工製単分散ポリスチレン(S−7300 S−3900 S−1950 S−1460 S−1010 S−565 S−152 S−66.0 S−28.5 S−5.05 の各0.2mg/ml溶液)で行った。n−エイコサン及びn−テトラコンタンの測定を行い、溶出時間と分子量の対数値を4次式で近似した。なお、ポリスチレンとポリエチレンの分子量の換算には次式を用いた。
PE=0.468×MPS
4)主鎖1,000Cあたりの短鎖分岐数(SCB)
日本電子(株)製JNM−GSX400型NMR装置及びC10型プローブを用い、以下の条件で 13C−NMRスペクトルを測定した。
パルス幅:8.0μs(フリップ角=40°) パルス繰り返し時間:5秒
積算回数:5,000回以上 溶媒及び内部標準:1,2,4−トリクロロベンゼン/ベンゼン−d/ヘキサメチルジシロキサン(混合比:30/10/1) 測定温度:120℃ 試料濃度:0.3g/ml
得られたスペクトルの解析は、例えば、エチレン/1−ブテン共重合体については「Eric T.Hsieh & James C.Randall,Macromolecules vol.15,353−360(1982)」、エチレン/1−ヘキセン共重合体については、「Eric T.Hsieh & James C.Randall,Macromolecules vol.15,1402−1406(1982)」の文献に従って行い、SCBを求めた。
5)流動の活性化エネルギーEa
段落0018に記載した方法による。
6)伸張粘度λmax
試験に供する樹脂を190℃で熱プレスして150mm×70mm×2mmのシートを作成し、このシートから7mm×70mm×2mmに打ち抜いたものをサンプルとした。レオメトリック社製RME型一軸伸長粘度測定装置を用いて140℃、歪速度(設定値:1.0,0.3,0.1s−1)における非定常一軸伸長粘度曲線を測定した。次に、流動の活性化エネルギーと同様の条件で測定した140℃における動的粘弾性測定データから、段落0023に記載した式(3)と(4)及び計算方法を使用して、λmaxを算出した。
7)メルトテンション(MT)
東洋精機製作所製キャピログラフ1−Bを用い、キャピラリー径2mm、キャピラリー長さ8mmのキャピラリーを用い190℃、ピストンスピード10m/分で押し出された溶融樹脂を4m/分の引き取り速度でフィラメントに引き取った時の溶融張力を測定した。
[フィルム物性測定]
1)HAZE
JIS−K7136−2000に準拠して測定した。
2)ダート落下衝撃強度
JIS−K7124−1 A法に準拠して測定した。
[重合用触媒の調製]
錯体調製及び触媒調製に用いたトルエンやヘキサンは脱気後にモキュラーシーブ3Aで脱水したものを用いた。メチルアルミノキサンMAOは、アルベマール社20wt%トルエン溶液品(Al濃度が約2.9mol/L)を用いた。固体触媒の担体として用いたシリカは、表面積290m、細孔容積1ml/g、平均粒径45μmの物を用い、650℃で7時間焼成したものを用いた。ベンゾインデンは4,5−ベンゾインデンと6,7−ベンゾインデンの混合物であり、「Bulletin de la Societe Chimique de Frace(1967)3 987−992」に基づき合成されたものを用いた。ジベンゾインデンは1H−シクロペンタ[1]フェナントレンであり、「Oraganometallics(1997)16 3413−3420」 に基づき合成されたものを用いた。
[遷移金属錯体の合成]
(トリスインデニルジルコニウムハイドライド(錯体1)の調製)
窒素雰囲気下、100mlナス型フラスコにビスインデニルジルコニウムジクロライド(IndZrCl)の1mmol(0.39g)をトルエン30mlに懸濁し、寒剤(ドライアイス−エタノール)で−78℃に冷却し、n−ブチルリチウム(n−BuLi)を2mmol加える。この混合溶液を寒剤から出して温度をゆっくり上げ、0℃付近でインデンを4mmol加える。さらに室温まで温度を上げ30分反応する。反応後析出したリチウムクロライド(LiCl)を濾別する。濾液をさらに50℃で12時間反応させ析出した沈殿をn−ヘキサンで洗浄し、錯体1を収率64%で得た。
(トリスベンゾインデニルジルコニウムハイドライド(錯体2)の調製)
窒素雰囲気下、50mlナス型フラスコにトリスインデニルジルコニウムハイドライドの0.31mmol(0.14g)をヘキサン5mlに懸濁し、ベンゾインデン(BenzInd)1.2mmol加え、50℃で2時間反応させた。溶媒を除いた後、析出した固体をn−ヘキサンで洗浄することにより、錯体2を収率83%で得た。
(固体触媒の調製)
錯体1の146mg(0.33mmol)と錯体2の476mg(0.61mmol)を200mlナスフラスコに入れ、これにトルエン50mlとメチルアルミノキサントルエン溶液を41ml(Alで120mmol)加えた後、予め300mlの磁気誘導撹拌機を備えたフラスコに30gのシリカを入れて脱気しておいたものに、上記混合液を添加した。その後減圧下で溶媒を除去することで流動性の良い固体触媒を得た。
[重合反応] 表1に示す所定の温度、コモノマー/エチレンモル比、水素/エチレンモル比、窒素濃度30mol%のガス組成、圧力0.8MPaで準備された気相連続重合装置(内容積100L、流動床直径10cm)に固体触媒を間欠的に供給しながらガス組成と温度を一定にして重合を行った。得られた重合体の物性を表2に記載した。
Figure 0005414971
[実施例1]
ペレット化した成分(B):エチレン系共重合体PE−1を25重量%、成分(A):エチレン・α−オレフィン共重合体として、日本ポリエチレン株式会社製ノバテックC4「UF230」75重量%に対し、アンチブロッキング剤として珪藻土「セライトコーポレーション社製スーパーフロス」を0.4重量部、滑剤としてエルカ酸アミド「日本精化(株)製ニュートロン−S」を0.06重量部を配合しヘンシェルミキサーで混合した後、45mm二軸押出機で造粒しペレット化した。得られた樹脂組成物を、50mmφ単軸押出機にダイ径75mm、ダイリップ3mm、のダイを取り付け、押出機、及びダイの設定温度を190℃に設定した条件下で、ブロー比2.0、引き取り速度15m/分でインフレーション成形を行い、片面にコロナ処理を施し、紙管に巻き取ることにより厚み50μmのフィルムを得た。
[実施例2]
成分(B):エチレン系共重合体PE−1を50重量%、成分(A):エチレン・α−オレフィン共重合体として、日本ポリエチレン株式会社製ノバテックC4 「UF230」を50重量%用いた以外は、実施例1と同様にフィルム成形を行い評価した。
[実施例3]
成分(B):エチレン系共重合体PE−1を75重量%、成分(A):エチレン・α−オレフィン共重合体として、日本ポリエチレン株式会社製ノバテックC4 「UF230」を25重量%用いた以外は、実施例1と同様にフィルム成形を行い評価した。
[比較例1]
樹脂として、成分(B):高圧法低密度ポリエチレンノバテックLD「LF441」を25重量%使用した以外は、実施例1と同様にフィルム成形を行い評価した。
[比較例2]
樹脂として、成分(B):高圧法低密度ポリエチレンノバテックLD「LF441」を50重量%使用した以外は、実施例2と同様にフィルム成形を行い評価した。
[比較例3]
樹脂として、成分(B):高圧法低密度ポリエチレンノバテックLD「LF441」を75重量%使用した以外は、実施例3と同様にフィルム成形を行い評価した。
[比較例4] 樹脂として、成分(A):エチレンαオレフィン共重合体として、日本ポリエチレン株式会社製ノバテックC4 「UF230」を100重量%使用した以外は、実施例1と同様にフィルム成形を行い評価した。
[比較例5]
樹脂として、成分(B):エチレン系共重合体PE−1を100重量%使用した以外は、実施例1と同様にフィルム成形を行い評価した。
[比較例6]
成分(B)としてダウ・ケミカル社製「Affinity FM1570」を25重量%使用した以外は、実施例1と同様にフィルム成形を行い評価した。
以上の各評価を表2に掲載した。
Figure 0005414971
[実施例1〜3と比較例1〜6の結果の考察]
実施例1〜3におけるポリエチレン系フィルムは、本願発明における構成要件の密度、MFR、ΔEa値の条件及び式(2)のΔEaとλmaxとの関係を共に満たしており、フィルム性能として衝撃強度と透明性が優れていることを明示している。
比較例1〜6は、従来のポリエチレン系フィルムなので、比較例1においては、フィルム性能として衝撃強度が低く、比較例2は、衝撃強度が低い。比較例3,4は、透明性が低く、衝撃強度も劣っている。比較例5,6は、衝撃強度は高いが透明生が悪い。
以上の結果からして、各比較例にみられる従来技術に対して、本願発明のエチレン系重合体フィルムの卓越性が明らかであり、本願発明の構成の有意性と合理性が立証されている。
更に、成分(A)のエチレンとα−オレフィンとの共重合体として、市販のメタロセン系ポリエチレンを用いて、本願発明の構成と効果を検証する。
[実施例4]
ペレット化した成分(B):エチレン系共重合体PE−1を10重量%、成分(A):エチレン・α−オレフィン共重合体として、日本ポリエチレン株式会社製のメタロセン系ポリエチレンであるハーモレックス「NF464N」90重量%に対し、アンチブロッキング剤として珪藻土「セライトコーポレーション社製スーパーフロス」を0.4重量部、滑剤としてエルカ酸アミド「日本精化(株)製ニュートロン−S」を0.06重量部を配合しヘンシェルミキサーで混合した後、45mm二軸押出機で造粒しペレット化した。得られた樹脂組成物を、実施例1と同様にフィルム成形を行い評価した。
[実施例5]
成分(B):エチレン系共重合体PE−1を25重量%、成分(A):エチレン・α−オレフィン共重合体として、日本ポリエチレン株式会社製のメタロセン系ポリエチレンであるハーモレックス「NF464N」を75重量%用いた以外は、実施例4と同様にフィルム成形を行い評価した。
[実施例6]
成分(B):エチレン系共重合体PE−1を50重量%、成分(A):エチレン・α−オレフィン共重合体として、日本ポリエチレン株式会社製のメタロセン系ポリエチレンであるハーモレックス「NF464N」を50重量%用いた以外は、実施例4と同様にフィルム成形を行い評価した。
[実施例7]
成分(B):エチレン系共重合体PE−1を75重量%、成分(A):エチレン・α−オレフィン共重合体として、日本ポリエチレン株式会社製のメタロセン系ポリエチレンであるハーモレックス「NF464N」を25重量%用いた以外は、実施例4と同様にフィルム成形を行い評価した。
[比較例7]
樹脂として、成分(B):高圧法低密度ポリエチレンノバテックLD「LF240」を25重量%使用した以外は、実施例4と同様にフィルム成形を行い評価した。
[比較例8]
樹脂として、成分(B):高圧法低密度ポリエチレンノバテックLD「LF240」を50重量%使用した以外は、実施例4と同様にフィルム成形を行い評価した。
[比較例9]
樹脂として、成分(B):高圧法低密度ポリエチレンノバテックLD「LF240」を75重量%使用した以外は、実施例4と同様にフィルム成形を行い評価した。
Figure 0005414971
[実施例4〜7と比較例7〜9の結果の考察]
実施例4〜7におけるポリエチレン系フィルムは、成分Aの樹脂種が実施例1〜3及び比較例1〜3と異なるため、それらのフィルムの衝撃強度とはレベルが異なるものの、本願発明における構成要件の密度、MFR、ΔEa値の条件及び式(2)のΔEaとλmaxとの関係を共に満たしており、フィルム性能として衝撃強度と透明性が優れていることを明示している。
比較例7〜9は、従来のポリエチレン系フィルムなので、フィルム性能として衝撃強度が劣っている。
以上の結果からして、比較例7〜9にみられる従来技術に対して、本願発明のエチレン系重合体フィルムの卓越性が明らかであり、本願発明の構成の有意性と合理性が立証されている。
本願発明の錯体A及びBを使用して重合されるポリマーのMFRの差異と、ポリエンを共存させたときの両錯体の反応性の差異の概念を示すグラフ図である。 本願発明の伸長粘度規定λmaxを求めるための、非定常一軸伸張粘度曲線を表すグラフ図である。

Claims (5)

  1. 下記成分(A)5〜95重量%と、下記成分(B)5〜95重量%とを含有するエチレン系重合体組成物からなるポリエチレン系フィルム。
    成分(A):以下の(1)〜(3)の性状を有するエチレンとα−オレフィンとの共重合体
    (1)MFR(190℃・21.18N荷重)が0.1〜30g/10分
    (2)密度が0.870〜0.935g/cm
    (3)α−オレフィンの炭素数が3〜20
    成分(B):以下のa)乃至d)の条件を満たし、二種又は複数種のメタロセン触媒により各々の触媒に応じて、炭素数1〜20の短鎖分岐と炭素数20を超える長鎖分岐が高分子主鎖に導入されたことを特徴とするエチレン系重合体
    a)JIS K−7112に基づいて測定された密度が、0.880〜0.970g/cm である。
    b)JIS K−7210の表1−条件7に基づき、温度190℃において加重21.18Nの条件で測定されたメルトフローレート(MFR)が、0.01〜100g/10分である。
    c)流動の活性化エネルギーEa[KJ/mol]と、下記の式(1)により算出される活性化エネルギーEaL[KJ/mol]との差ΔEa[KJ/mol]が、1.5〜12.5である。
    Figure 0005414971
    ここで、SCBは主鎖の炭素原子1,000あたりの炭素数1〜20の短鎖分岐数[個数/1,000C]を表し、Bは炭素数1〜20の短鎖分岐の長さ(炭素数)を表す。
    d)伸長粘度λmaxとΔEaとが下記の式(2)を満たす。
    λmax≧1.2exp(0.0721×ΔEa) 式(2)
  2. 成分(B)が非共役ポリエンの共存下において重合され、非共役ポリエンの濃度を制御することにより長鎖分岐成分の分岐構造が制御されたことを特徴とする、請求項1に記載されたポリエチレン系フィルム。
  3. 成分(B)が、エチレン重合体又はエチレンと3〜20の炭素原子を有するα−オレフィンとの共重合体であり、或いはそれらに非共役ポリエンが共重合された共重合体であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載されたポリエチレン系フィルム。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれかに記載されたポリエチレン系フィルムが、二軸延伸された熱可塑性樹脂フィルムと積層されてなる積層フィルム。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれかに記載されたフィルム又は積層フィルムからなる、包装用袋体
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