JP2007197724A - ポリオレフィン系組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】a)〜d)の条件を満たし、炭素数1〜20の短鎖分岐と炭素数20を超える長鎖分岐が高分子主鎖に導入されたエチレン系重合体(A)98〜2重量%と他のポリオレフィン系樹脂(B)及び/又は熱可塑性エラストマー(C)2〜98重量%からなるポリオレフィン系組成物である。 a)密度が、0.880〜0.970g/cm3 b)MFR(190℃・21.18N)が、0.01〜100g/10分 c)流動の活性化エネルギーEa[KJ/mol]と、活性化エネルギーEaL[KJ/mol]との差ΔEa[KJ/mol]が、1.5〜12.5である。 d)伸長粘度λmaxとΔEaとが式(2)を満たすλmax≧1.2exp(0.0721×ΔEa)式(2)
【選択図】なし
Description
ポリエチレンは、一般に、その密度やポリマー鎖の微細構造及び重合プロセスなどにより分類され、高密度ポリエチレン(HDPE)、高圧ラジカル法低密度ポリエチレン(HP−LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)及び超低密度ポリエチレン(VLDPE)などとして広い産業分野において重用されている。
したがって、以前からこれらの樹脂材料における長所をより高め短所を改良する研究開発が続けられており、二成分以上の共重合体や複数の樹脂材料のブレンドによる組成物或いは重合触媒の改良や多段重合法などの手法による、非常に多数の改良提案がなされている。
これら流動特性を改良する目的で、分子量を小さくすると、衝撃強度などの機械的強度が低下し、また、多段重合により分子量分布を広くする方法も提案されているが、単に分子量分布を広くするのみでは、溶融弾性や機械的強度は改善されず、反って低下してしまうこととなる。さらに、溶融弾性及び機械的強度の改良については、高分子量成分と低分子量成分で構成されるLLDPEの高分子量成分に短鎖分岐を多く導入する試みもなされているが、製品において高強度化や高生産性などに不足するものである。
また、HDPEやLLDPEの成形加工性を改良するためのブレンド手法として、少量のLDPEなどを混合する方法も以前から数多く提案されているが、HDPEやLLDPEの長所である機械強度を低下させるという欠点を内包している。また、HDPEとLLDPE及びLDPEの3成分の組成物も開示されているが性質改良としては充分なものではない。
このような欠点を改良するものとして、チグラー触媒によって得られた複数のポリエチレン系樹脂とメタロセン触媒による直鎖状エチレン系重合体とを混合してなるポリエチレン組成物が提案されているが、このポリエチレン組成物は、成形加工性は向上するものの、分子量分布が広いため強度の向上は期待できず、かつ低融点成分及び低分子量成分によって他の特性が低下するという欠点があり、また、溶融張力が改良されず、成形加工性が未だ不充分という欠点もある。これら欠点を改良するために、さらにLDPEをブレンドする方法もあるが、LDPEをブレンドすると衝撃強度などの機械的強度が低下してしまう。
また、代表的な例として、流動の活性化エネルギーや短鎖分岐の平均値などを特定した、機械的性質を損なうことなく成形加工性が向上されたとするエチレン−αオレフィン共重合体(特許文献2)、溶融流動の活性化エネルギーや分子量とダイスウェル比などを規定した、成形安定性に優れ良好な機械物性を有するとされるエチレン系重合体(特許文献3)、複素粘性率の周波数依存性において一つの変曲点を有し、HLMFRスウェル比や長鎖分岐数が規定された、成形性と強度に優れたとされるポリエチレン系樹脂(特許文献4)、複数の錯体を用いた触媒により重合され、溶融張力や流動の活性化エネルギー及びα−オレフィンの含有率などを規定した、機械強度及び成形性に優れたとされるエチレン系共重合体(特許文献5)、13C−NMRで測定したメチル分岐数や分子量比で特定される、成形性と機械強度に優れたとされるエチレン(共)重合体(特許文献6)、などが開示されている。
しかし、いずれの先行技術においても、特異なパラメーターで規定されるものが多く、また、成形加工性或いは機械的物性(主として機械強度)の向上が充分に成されているとは必ずしもいえず、さらに、成形加工性の改善が達成されたとしても機械的物性を犠牲にしたものであり、双方の性質がバランスよく改良されたものは見い出せない。
さらに、メタロセン触媒によるメルトテンションとMFRとが特定の関係を有し、成形性と機械的強度が優れるとされる直鎖状エチレン系共重合体とLDPEとの混合物(特許文献7)、該エチレン系共重合体とエラストマーの組成物(特許文献8)、なども開示されているが、これらにおいても、成形加工性と機械的物性の双方の性質がバランスよく充分には改良されたものではない。
それらの考察と検討の過程において、エチレン系重合体の主要な特徴である優れた機械物性や透明性などの光学特性及び耐熱性を確保するために、重合触媒としてシングルサイト触媒としてのメタロセン触媒を使用することが必要であると考え、また、機械物性を損なわずに成形加工性を向上させるには、エチレン系重合体のポリマー主鎖における長鎖及び短鎖の分岐の構造や分岐個数が関連すると認識して、かかる新規なエチレン系重合体としての基本的な要件を見い出すに至り、成形加工性においては、溶融流動特性が剪断応力下での溶融樹脂圧に関わる押出し性に関与し、伸長変形時の溶融弾性が成形安定性に関与することからして、エチレン重合体の特性として流動の活性化エネルギーと伸長粘度を規定すれば、機械物性を損なわずに成形加工性をさらに向上させることができる、新たな発明を創作することができて、先の発明としての特願2004−181918号を出願したところである。
より具体的には、エチレン系重合体成分においては、メタロセン触媒により製造され、より好ましくは二種(又は三種以上の複数)の錯体を有すメタロセン触媒により、炭素数1〜20の短鎖分岐(SCB)と炭素数20を超える長鎖分岐(LCB)をエチレン系重合体の高分子主鎖に導入し、その様な重合体として必要な密度とメルトフローレートも規定する。
そして、分子鎖中に長短鎖の分岐構造を付与し、かつその長短鎖の分岐の長さ及び濃度を制御することにより、押出成形、インフレーションフィルム成形、ラミネート成形、ブロー成形、射出成形などそれぞれの成形方法に最適化するように設計された、極めて優れた成形加工性を具現化することができる。
そして、このような観点から成形加工性を向上するために、エチレン系重合体の特性としての流動の活性化エネルギーと伸長粘度及びそれらの相関を具体的に規定する。
また、二種のメタロセン触媒の非共役ポリエンに対する反応性の差異を利用して長短鎖の導入を制御することも可能である。
a)JIS K6922−1(1997)に基づいて測定された密度が、0.880〜0.970g/cm3 である。
b)JIS K6922−1(1997)の条件Dに基づき、温度190℃において加重21.18Nの条件で測定されたメルトフローレート(MFR)が、0.01〜100g/10分である。
c)流動の活性化エネルギーEa[KJ/mol]と、下記の式(1)により算出される活性化エネルギーEaL[KJ/mol]との差ΔEa[KJ/mol]が、1.5〜12.5である。
ここで、SCBは主鎖の炭素原子1,000あたりの炭素数1〜20の短鎖分岐数[個数/1,000C]を表し、Bは炭素数1〜20の短鎖分岐の長さ(炭素数)を表す。
d)伸長粘度λmaxとΔEaとが下記の式(2)を満たす。
λmax≧1.2exp(0.0721×ΔEa) 式(2)
[2]エチレン系重合体(A)が、メタロセン系触媒の存在下で製造されたエチレン重合体又はエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体であり、或いはそれらに非共役ポリエンが共重合された共重合体であることを特徴とする、[1]におけるポリオレフィン系組成物。
[3]エチレン系重合体(A)において、炭素数1〜20の短鎖分岐と炭素数20を超える長鎖分岐の、高分子主鎖への導入を、二種又は複数種のメタロセン触媒により各々の触媒に応じて行うことを特徴とする、[1]又は[2]におけるポリオレフィン系組成物。
[4]エチレン系重合体(A)が非共役ポリエンの共存下において重合され、非共役ポリエンの濃度を制御することにより長鎖分岐成分の分岐構造が制御されたことを特徴とする、[3]におけるポリオレフィン系組成物。
[5]ポリオレフィン系樹脂(B)が、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高圧ラジカル法低密度ポリエチレンの少なくとも1種のポリエチレンであることを特徴とする、[1]〜[4]のいずれかにおけるポリオレフィン系組成物。
本願発明のエチレン系重合体(A)においては、a)JIS K6922−1(1997)に基づいて測定された密度が、0.880〜0.970g/cm3 、b)JIS K6922−1(1997)の条件Dに基づき、温度190℃において加重21.18Nの条件で測定されたメルトフローレート(MFR)が、0.01〜100g/10分、c)流動の活性化エネルギーEa[KJ/mol]と、下記の式(1)により算出される活性化エネルギーEaL[KJ/mol]との差ΔEa[KJ/mol]が、1.5〜12.5の範囲であり、
ここで、SCBは主鎖の炭素原子1,000あたりの炭素数1〜20の短鎖分岐数[個数/1,000C]を表し、Bは炭素数1〜20の短鎖分岐の長さ(炭素数)を表す。
d)伸長粘度λmaxとΔEaとが、
λmax≧1.2exp(0.0721×ΔEa) 式(2)
を満足し、炭素数1〜20の短鎖分岐と炭素数20を超える長鎖分岐が高分子主鎖に導入されたエチレン系重合体(A)である。
エチレン系重合体(A)の密度は、重合条件の調整、或いはエチレンと共重合させる炭素数3〜20のα−オレフィンの種類及び量を変えることにより調整可能である。また、本発明に係るエチレン系重合体(A)のMFRは、重合の際に通常一般の連鎖移動剤や水素を使用することにより調整可能である。
そして、a)JIS K−7112に基づいて測定された密度が、0.880〜0.970g/cm3 であり、好ましくは0.890〜0.965g/cm3 、より好ましくは0.895〜0.960g/cm3の範囲で選択される。密度が、0.880未満では機械的強度が低下する惧れが生じる。また、密度が、0.970g/cm3 を超えるものは、工業的に生産が難しい。
また、b)JIS K−7210の表1−条件7に基づき、温度190℃において加重21.18Nの条件で測定されたメルトフローレート(MFR)が、0.01〜100g/10分、好ましくは0.1〜80g/10分、より好ましくは0.5〜50g/10分の範囲である。MFRが0.01g/10分未満では、成形加工性が悪く、100g/10分を超える場合には機械的強度が低下する惧れが生じる。
成形加工性においては、溶融流動特性が剪断応力下での溶融樹脂圧に関わる押出し性に関与し、伸長変形時の溶融弾性が成形安定性に関与することから鑑みて、組成物用のエチレン系重合体の特性において、流動の活性化エネルギーと伸長粘度を下記のように実験式として規定して、機械物性を損なわずに成形加工性をさらに向上させることができる。
流動の活性化エネルギーEa[KJ/mol]と、下記の式(1)により算出される活性化エネルギーEaL[KJ/mol]との差ΔEa[KJ/mol]が、1.5〜12.5である。
式(1)
ここで、SCBは主鎖の炭素原子1,000あたりの炭素数1〜20の短鎖分岐数[個数/1,000C]を表し、Bは炭素数1〜20の短鎖分岐の長さ(炭素数)を表す。
(ii)流動の活性化エネルギーの測定法としては、ある基準温度で測定した貯蔵弾性率(縦軸)と角速度(横軸)との関係のグラフを固定しておき、別の測定温度で測定したデータを横軸に平行に移動させると、基準温度のデータと重ね合わせることができ、シフトファクターaT は、Arrhenius式に従い、各測定温度のデータを基準温度のデータと重ね合わせるようにシフトさせる量Log(aT)を、その測定温度(絶対温度)の逆数1/T に対してプロットして得られる直線の勾配より、流動の活性化エネルギーを求めることができる。
・歪み量:10% ・測定周波数範囲:6.22×10−3〜6.22×102 rad/s(210℃及び230℃は、6.22×10−2〜6.22×102rad/s)
190℃を基準温度として、5つの温度条件の貯蔵弾性率G’及び損失弾性率 G”を、時間−温度重ね合わせの原理に従って重ね合わせ、シフトファクターaT を求めた。このシフトファクターを絶対温度の逆数に対してプロットし、その傾きから流動の活性化エネルギーEaを計算した。
・パルス幅:8.0μs(フリップ角:40°) ・パルス繰り返し時間:5秒 ・積算回数:5,000回以上 ・溶媒及び内部標準:1,2,4−トリクロロベンゼン/ベンゼン−d6 /ヘキサメチルジシロキサン(混合比:30/10/1) ・測定温度:120℃ ・試料濃度:0.3g/ml
そこで、本願発明においては、同種かつ同数の長鎖分岐をもたないものの活性化エネルギーEaLとの差ΔEaをもって長鎖分岐の濃度を表す規定とした。すなわち、上記で求めた流動の活性化エネルギーEa[KJ/mol]と、式(1)により算出される活性化エネルギーEaL[KJ/mol]との差を流動の活性化エネルギー差ΔEa[KJ/mol]とし、ΔEaは、長鎖分岐がない場合は0であるが、長鎖分岐の濃度が高くなるに従い大きな値を示す。したがって、本発明においては、ΔEaが0より大きいとき、炭素数20を超える長鎖分岐が高分子主鎖に導入されているものとする。
流動の活性化エネルギー差ΔEaを上記範囲とするためには、後述する本願発明の製造方法を採用することにより達成することができ、すなわち上記範囲内の調整は、触媒の種類と使用割合、非共役ポリエンの使用量及び重合条件を適宜変更することにより可能である。
本願発明に係るエチレン系重合体においては、伸長粘度λmaxとΔEaとが下記の式(2)を満たす。
λmax≧1.2exp(0.0721×ΔEa) 式(2)
ここで伸長粘度λmaxの実施化要件を説明すると、伸長粘度λmaxは、以下のようにして求めることができる。
「尾崎邦宏 村井朝 別所信夫 金鳳植 日本レオロジー学会誌 4巻 166(1976)」の記載の方法に基づき、動的粘弾性測定結果から次式(3)に示される粘度成長関数η+ γ→0(t)を求める。
η+ γ→0(t)=t×{G”(ω)+1.12×G”(ω/2)−0.02G’(ω)}
式(3)
ただしω=1/tとする。
ここで、G’(ω)各速度ωの関数としての貯蔵弾性率であり、G”(ω)は各速度ωの関数としての損失弾性率、G”(ω/2)はω/2の関数としての損失弾性率、tは時間である。
一方、非定常一軸伸長粘度曲線ηE(t)において、歪の大きさが2.5以上で伸長粘度が最大となる点における時間をtmaxとし、下記式(4)により伸長粘度パラメータλを求める。λについての概念図を図2に示した。
λ=ηE(tmax)/3η+ γ→0(tmax) 式(4)
歪速度(設定値:1.0,0.3,0.1s−1)におけるλ値を求め、その中の最大値を伸長粘度λmaxとする。
本願発明の伸長粘度λmaxは、伸長粘度における歪硬化、すなわち溶融状態を保つ特定の温度で一定の歪み速度にて粘度を測定して得られる規定である。λmaxの値が大きいと弾性発現である歪硬化が強く、λmaxの値が小さいと歪硬化が弱いことを示す。成形方法及び成形条件により最適なλmaxの値は異なるが、ΔEaとの関係が式(5)を満たすことが望ましく、より望ましくは式(6)を満たすことであり、更に望ましくは式(7)を満たすことである。
100≧λmax≧1.2exp(0.0721×ΔEa) 式(5)
100≧λmax≧1.2exp(0.0963×ΔEa) 式(6)
50≧λmax≧1.2exp(0.0963×ΔEa) 式(7)
λmaxが上記式の下限よりも小さい場合は、LCBの濃度に見合った溶融弾性が得られていないため、成形安定性が低くかつ機械強度が劣る。一方、λmaxが100を超える場合は、成形品に過剰な残留応力や異方性が生じ、耐衝撃性能や耐ストレスクラック性などの長期性能に問題が生ずる場合が多くなる。
本発明のエチレン系重合体(A)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比、分子量分布(Mw/Mn)は、2〜9、好ましくは2〜7、より好ましくは2〜6の範囲にあることが望ましい。
上記分子量分布が2未満では、成形加工性が悪くなる惧れが生じ、分子量分布が9を超える場合には、低分子量成分が多くなり、機械的強度等が低下する惧れが生じる。
カラム:ShowdexHT−G及び同HT−806M×2本 溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン 温度:140℃ 流量:1.0ml/分
カラムの較正は、昭和電工製単分散ポリスチレンで行った。(S−7300 S−3900 S−1950 S−1460 S−1010 S−565 S−152 S−66.0 S−28.5 S−5.05 の各0.2mg/ml溶液)
n−エイコサン及びn−テトラコンタンの測定を行い、溶出時間と分子量の対数値を4次式で近似した。なお、ポリスチレンとポリエチレンの分子量の換算には次式を用いた。 MPE=0.468×MPS
(1)基本的な要件
本願発明のエチレン系重合体(A)を得るために用いる触媒について具体的に説明するが、本願発明は以下に例示する遷移金属化合物に何ら限定されるものではない。
本願発明のエチレン系重合体において、機械物性を損なわずに成形加工性を向上させるには、エチレン系重合体のポリマー主鎖における長短鎖の分岐の構造や分岐個数が関連し、ポリマー主鎖における必要な長短鎖の分岐の構造や分岐個数の実現は、特定のメタロセン触媒を二種又は複数種組み合わせ、より好ましくは非共役ポリエンの存在下に長鎖分岐の生成を伴う錯体及び実質上長鎖分岐の生成を伴わない錯体を使用して、重合反応を行えばよく、二種の錯体を有すメタロセン触媒により、炭素数1〜20の短鎖分岐(SCB)と炭素数20を超える長鎖分岐(LCB)をエチレン系重合体の高分子主鎖に導入する。
本願発明の二種の錯体を有すメタロセン触媒において採用される一方の錯体Aは、中心遷移金属に配位子が2つ以上配位した構造のもので、(i)助触媒の共存下、水素及び非共役ポリエンが存在しない条件で重合を行った場合に得られる重合体のメルトフローレートMFR−Aが好ましくは2g/10分以下、更に好ましくは0.4g/10分以下となる遷移金属化合物であればよい。
他方の錯体Bは、中心遷移金属に配位子が2つ以上配位した構造のもので、(ii)上記の(i)と同条件で重合を行った場合に得られる重合体のメルトフローレートMFR−Bが好ましくはMFR−Aの10倍以上となる遷移金属化合物であればよい。
そして、(iii)錯体A及び助触媒の存在下、水素が存在せず、非共役ポリエンがエチレンに対し0.01mol%存在した条件で重合を行った場合に得られる重合体のMFRを「MFR−A+」とし、前記錯体Aの代わりに錯体Bを使用して同条件で重合を行った場合に得られる重合体のMFRを「MFR−B+」とすると、好ましくは下記式(8)、更に好ましくは下記式(9)を満たすことが必要である。
{(MFR−A+)/(MFR−A)}/{(MFR−B+)/(MFR−B)}<0.8 式(8)
{(MFR−A+)/(MFR−A)}/{(MFR−B+)/(MFR−B)}<0.3 式(9)
錯体Aに由来する重合体成分[A]と錯体Bに由来する重合体成分[B]の量比は、好ましくは[A]/[B]=10/90〜90/10、更に好ましくは20/80〜80/20である。重合体成分[A]と重合体成分[B]の比率は、錯体A及び助触媒、並びに錯体B及び助触媒からなる触媒でそれぞれ重合したときの重合活性から計算することができる。
上記範囲を外れるとエチレン重合体の成形加工性と機械物性のバランスが損なわれ好ましくない。
本願発明においては、加工性改良に有効な長鎖分岐構造を維持しながら、実用的なMFRの重合体を得るために、低いMFRの長鎖分岐ポリマーを生成する特定の錯体と、比較的MFRの高いポリマーを生成する特定の錯体とを組み合わせ、特定条件で重合を行うことにより、高分子量成分(低MFR成分)に優先的に長鎖分岐を導入することにより、バランスの良いエチレン重合体が得られる。このような新しい知見はメタロセン触媒分野において画期的なものといえる。
本願発明に用いる錯体Aは、重合反応に用いた場合、LCBの生成を伴う錯体であり、このような遷移金属化合物の例示としては、錯体Aが下記の一般式(1)で表される遷移金属化合物である。
ML1 nR1 x-n 一般式(1)
[式中、Mは周期律表4族の遷移金属を表し、L1はMに配位する配位子であり、ジメチルシクロペンタジエニル基、トリメチルシクロペンタジエニル基、下記の化合物[1]で示されるベンゾインデニル基又は置換ベンゾインデニル基、下記の化合物[2]で示されるジベンゾインデニル基又は置換ジベンゾインデニルのいずれか一種類を2個以上有し、R1は炭化水素基、アルコキシル基、ハロゲン原子、水素原子を表す。xは遷移金属Mの原子価であり、nは2≦n≦xである。]
化合物[1]
化合物[2]
ここで置換基R2〜R15 は炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30の炭化水素置換基を有するトリアルキル珪素基又は水素原子である。炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニル基、ジメチルフェニル基、ジエチルフェニル基、ジプロピルフェニル基、ジブチルフェニル基、トリメチルフェニル基、トリエチルフェニル基、トリプロピルフェニル基、トリブチルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基などのアリール基;トリチル基、フェネチル基、ベンズヒドリル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、ネオフィル基などのアリールアルキル基、スチリル基などのアリールアルケニル基が挙げられる。これらは分岐があってもよい。
更に、2つのシクロペンタジエニル骨格の有する配位子が、炭化水素基、シリレン基、置換シリレン基で架橋された、エチレンビス(インデニル)基、エチレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)基、ジメチルシリレンビス(インデニル)基なども有効である。
ここで、Cpdはシクロぺンタジエニル基を、Bzはベンジル基を、INDはインデニル基を、BzINDはベンゾインデニル基を、DBIはジベンゾインデニル基を表す。
本願発明に用いる錯体Bは、重合に用いた場合、実質的にLCBの生成を伴わない錯体であり、錯体Bが下記の一般式(2)で表される遷移金属化合物である。このような遷移金属化合物の配位子としては上記の錯体Aで用いられる配位子以外のシクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基が挙げられ、置換基の数に制限はなく、炭素数1〜30の炭化水素基又は炭素数1〜30の炭化水素置換基を有するトリアルキル珪素基であり、それぞれ同一でも異なってもよい。
ML2 nR1 x-n 一般式(2)
[式中、Mは周期律表4族の遷移金属を表し、L2はMに配位する配位子であり、シクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基を表し、複数個結合している場合は異なっていてもよい。R1は炭化水素基、アルコキシル基、ハロゲン原子、水素原子を表す。xは遷移金属Mの原子価であり、nは2≦n≦xである。]炭化水素基の具体例としては、前述した錯体Aの場合と同一である。
2(IND)ZrH、(4,5,6,7−H4−IND)2(IND)ZrH、(IND)2(BzIND)ZrH、(IND)2(DBI)ZrH、(IND)2(Me2Cpd)ZrHなどが挙げられる。
本願発明では2種の遷移金属化合物(錯体Aと錯体B)を所定の条件を満たす組み合わせで触媒として用いる。具体的な組み合わせを以下に例示する。
(1,3−Me2Cpd)2ZrCl2と(IND)2ZrCl2、(1,3−Me2
Cpd)2ZrMe2と(IND)2ZrMe2、(1,2,4−Me3Cpd)2ZrCl2と(IND)2ZrCl2、(BzIND)2ZrCl2と(IND)2ZrCl2、(BzIND)2ZrMe2と(IND)2ZrMe2、(DBI)2ZrCl2と(BuCpd)2ZrCl2、(DBI)2ZrMe2と(IND)2ZrMe2、Et(IND)2ZrCl2と(BuCpd)2ZrCl2、Et(IND)2ZrMe2と(IND)2ZrMe2、Et(4,5,6,7−H4−IND)2ZrCl2と(BuCpd)2ZrCl2、Et(4,5,6,7−H4−IND)2ZrMe2と(IND)2ZrMe2、Me2Si(IND)2ZrCl2と(BuCpd)2ZrCl2、Me2Si(IND)2ZrMe2と(IND)2ZrMe2、(1,3−Me2Cpd)3ZrHと(IND)3ZrH、(1,2,4−Me3Cpd)3ZrHと(IND)3ZrH、(BzIND)3ZrHと(IND)3ZrH、(DBI)3ZrHと(IND)3ZrH、(BzIND)2(IND)ZrHと(IND)3ZrH、(DBI)2(IND)ZrHと(MePrCpd)3ZrHなどの組み合わせが挙げられる。
以上の錯体の例示の中で、配位子を3つ有する遷移金属化合物を示したが、これらの殆どは、これまで知られていない新規な化合物である。以下に化合物の合成方法について2つの例を[合成方法1]及び[合成方法2]として示す。ただし、これらの遷移金属化合物の合成法はこれらの方法に限るものではない。
下記の化合物a)、b)及びc)を相互に接触させることにより製造する。
a) L1L2M1X1 2
b) L3H
c) LiR
ここで、L1、L2 及びL3はそれぞれシクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基、ベンゾインデニル基、置換ベンゾインデニル基を表す。置換基は炭素数1〜30の炭化水素基又は炭素数1〜30の炭化水素を置換基として有する有機ケイ素基であり、それぞれ同一でも異なってもよい。また、これらのうち、同一のシクロペンタジエニル環に結合した置換基はそれぞれ互いに結合して環状炭化水素基(多環式構造を含む)を形成してもよい。M1は周期律表4族の遷移金属を表し、好ましくはジルコニウムである。X1 はフッ素、塩素、臭素、ヨウ素を表し、2つのX1 は同一でも異なってもよい。好ましくは塩素か臭素であり、特に好ましくは塩素である。Rはエチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基などのアルキル基を表す。これらは分岐があってもよい。好ましくはn−ブチル基である。
化合物a)とc)を接触させた後、b)を接触させる。接触に際しては、各成分を一度に添加してもよいし、一定時間をかけて添加してもよいし、分割して添加してもよい。また各成分の接触を複数回行ってもよい。
化合物a)とc)の接触は通常−100〜0℃、好ましくは−80〜−40℃の温度にて、好ましくは5分〜24時間、更に好ましくは30分〜3時間行うことが望ましい。その後、好ましくは−30℃〜30℃、更に好ましくは0℃〜10℃付近まで昇温した後、生じたLiClなどのハロゲン化アルカリ金属を濾過によって除く。さらに化合物b)を接触させた後、好ましくは0℃〜150℃、更に好ましくは20℃〜80℃の温度にて、好ましくは5分〜3日、更に好ましくは1時間〜24時間撹拌する。反応溶液中の溶媒を除いた後、ペンタンやヘキサンなどの脂肪族炭化水素で洗浄後、本願発明の新規な遷移金属化合物を得ることができる。
化合物a)、b)、c)を接触させ加熱撹拌した後、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素、ヘプタン、ヘキサン、デカン、ドデカン、シクロヘキサンなどの脂肪族或いは脂環族炭化水素などの液状不活性炭化水素溶液から濾過することによりLiClを反応溶液から除くこともできる。また、反応溶液から溶媒を除いた後、テトラヒドロフランなどの含酸素炭化水素溶媒で洗浄してLiClを除くこともできる。
化合物a)〜c)の使用割合は、化合物a)1モルに対して化合物b)を好ましくは1〜50モル、更に好ましくは2〜8モルの割合で、化合物c)を通常2モルの割合で用いることができる。
下記の化合物d)とe)を相互に接触させることにより製造することができる。
d) Ind3ZrH
e) L4−H
ここで、L4はシクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基、ベンゾインデニル基、置換ベンゾインデニル基を表す。置換基は炭素数1〜30の炭化水素基又は炭素数1〜30の炭化水素を置換基として有する有機ケイ素基であり、それぞれ同一でも異なってもよい。また、これらのうち、同一のシクロペンタジエニル環に結合した置換基はそれぞれ互いに結合して環状炭化水素基(多環式構造を含む)を形成してもよい。
化合物d)とe)の接触は通常−80〜150℃、好ましくは0〜50℃の温度にて、好ましくは1分〜3時間、更に好ましくは10分〜1時間行うことが望ましい。その後、好ましくは0℃〜150℃、更に好ましくは20℃〜110℃付近まで昇温し、好ましくは5分〜3日、更に好ましくは1時間〜24時間撹拌する。反応溶液中の溶媒を除いた後、ペンタンやヘキサンなどの脂肪族炭化水素で洗浄後、新規な遷移金属化合物を得ることができる。
化合物d)とe)の使用割合は、化合物d)1モルに対して化合物e)を好ましくは1〜50モル、更に好ましくは2〜8モルの割合で用いることができる。
なお、化合物d)のInd3ZrHは前記の合成方法1により得ることができる。
L5 3M2−H−M3R3
ここでL5はシクロペンタジエニル骨格を有する配位子で、シクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基、ベンゾインデニル基、置換ベンゾインデニル基を表す。M2は周期律表4族の遷移金属を表し、好ましくはジルコニウムである。M3は周期律表13族の化合物で、好ましくはアルミニウムかホウ素である。Rはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基などのアルキル基を表す。これらは分岐があってもよい。好ましくはi−ブチル基である。
以下に上記化合物の合成方法の例を[合成方法3]として示すが、合成方法はこれに限るものではない。
下記化合物 f)、g)、h)を相互に接触させることにより製造する。
f) Ind3ZrH
g) L6−H
h) AlR3
ここで、L6はシクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基、ベンゾインデニル基、置換ベンゾインデニル基を表す。置換基は炭素数1〜30の炭化水素基又は炭素数1〜30の炭化水素を置換基として有する有機ケイ素基であり、それぞれ同一でも異なってもよい。また、これらのうち、同一のシクロペンタジエニル環に結合した置換基はそれぞれ互いに結合して環状炭化水素基(多環式構造を含む)を形成してもよい。Rはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基などのアルキル基を表し、これらは分岐があってもよい。好ましくはi−ブチル基である。
化合物f)、g)、h)の接触は通常−80〜150℃、好ましくは10〜100℃の温度にて、好ましくは1分〜48時間、更に好ましくは10分〜6時間行うことが望ましい。反応溶液中の溶媒を除いた後(必要な場合は減圧して濃縮する)、ペンタンやヘキサンなどの脂肪族炭化水素で洗浄することにより、新規な遷移金属化合物を得ることができる。
化合物f)、g)、h)の使用割合は、化合物f)1モルに対して化合物g)を好ましくは0〜50モル、更に好ましくは0〜8モル、h)を1〜3モルの割合で用いることができる。
なお、化合物f)のInd3ZrHは、前述の合成方法により得ることができる。
本願発明のエチレン系重合体は、上記のように2種類の遷移金属化合物を、次に示す有機アルミニウムオキシ化合物、或いは遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物、又はこれらの混合物との組み合わせで、オレフィン重合用触媒として重合反応に用いる。
有機アルミニウムオキシ化合物の調製に用いる有機アルミニウム化合物は、下記の一般式で表される化合物がいずれも使用可能であるが、好ましくはトリアルキルアルミニウムが使用される。
RtAlX3−t
式中、Rは炭素数1〜18、好ましくは1〜12のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基などの炭化水素基、Xは水素原子又はハロゲン原子を示し、tは1≦t≦3の整数を示す。
トリアルキルアルミニウムのアルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基などのいずれでも差し支えないが、メチル基であることが特に好ましい。
上記有機アルミニウム化合物は、2種以上混合して使用することもできる。水と有機アルミニウム化合物との反応比(水/Alモル比)は、0.25/1〜1.2/1、特に、0.5/1〜1/1であることが好ましく、反応温度は通常−70〜100℃、好ましくは−20〜20℃の範囲にある。反応時間は通常5分〜24時間、好ましくは10分〜5時間の範囲で選ばれる。反応に要する水として、単なる水のみならず、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物などに含まれる結晶水や反応系中に水が生成しうる成分も利用することもできる。
なお、上記した有機アルミニウムオキシ化合物のうち、アルキルアルミニウムと水とを反応させて得られるものは、通常アルミノキサンと呼ばれ、特にメチルアルミノキサンは、有機アルミニウムオキシ化合物として好適である。
有機アルミニウムオキシ化合物として、上記した各有機アルミニウムオキシ化合物の2種以上を組み合わせて使用することもでき、また有機アルミニウムオキシ化合物を不活性炭化水素溶媒に溶解又は分散させた溶液としたものを用いてもよい。
ボラン化合物をより具体的に表すと、トリフェニルボラン、トリ(o−トリル)ボラン、トリ(p−トリル)ボラン、トリ(m−トリル)ボラン、トリ(o−フルオロフェニル)ボラン、トリス(p−フルオロフェニル)ボラン、トリス(m−フルオロフェニル)ボラン、トリス(2,5−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(4−トリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロナフチル)ボラン、トリス(パーフルオロビフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロアントリル)ボラン、トリス(パーフルオロビナフチル)ボランが挙げられる。
これらの中でも、トリス(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロナフチル)ボラン、トリス(パーフルオロビフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロアントリル)ボラン、トリス(パーフルオロビナフチル)ボランがより好ましく、更に好ましくはトリス(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロナフチル)ボラン、トリス(パーフルオロビフェニル)ボランが例示される。
[L−H]+[BR4]−
式中、Lは中性ルイス塩基、Hは水素原子、[L−H]はアンモニウム、アニリニウム、ホスフォニウムなどのブレンステッド酸である。アンモニウムとしては、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリ(n−ブチル)アンモニウムなどのトリアルキル置換アンモニウム、ジ(n−プロピル)アンモニウム、ジシクロヘキシルアンモニウムなどのジアルキルアンモニウムが例示できる。
アニリウムとしては、N,N−ジメチルアニリニウム、N,N−ジエチルアニリニウム、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムなどのN,N−ジアルキルアニリニウムが例示できる。また、ホスフォニウムとしてはトリフェニルホスフォニウム、トリブチルホスホニウム、トリ(メチルフェニル)ホスフォニウム、トリ(ジメチルフェニル)ホスフォニウムなどのトリアリールホスフォニウム、トリアルキルホスフォニウムが挙げられる。
Rは6〜20、好ましくは6〜16の炭素原子を含む、同じか又は異なる芳香族又は置換芳香族炭化水素基で、架橋基によって互いに連結されていてもよく、置換芳香族炭化水素基の置換基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などに代表されるアルキル基やフッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲンが好ましい。
これらの中でも、トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレートなどがより好ましい。
[L´]+[BR4]−
式中、L´はカルボカチオン、メチルカチオン、エチルカチオン、プロピルカチオン、イソプロピルカチオン、ブチルカチオン、イソブチルカチオン、t−ブチルカチオン、ペンチルカチオン、トロピニウムカチオン、ベンジルカチオン、トリチルカチオン、ナトリウムカチオン、プロトンなどが挙げられる。Rは段落0055の一般式におけるRの定義と同じである。
これらの中でもトリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トロピニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレートが好ましい。
担体としては、無機物担体、粒子状ポリマー担体又はこれらの混合物が使用される。無機物担体は、金属、金属酸化物、金属塩化物、金属炭酸塩、炭素物質、又はこれらの混合物が使用可能である。
無機物担体に用いることができる好適な金属としては、例えば鉄、アルミニウム、ニッケルなどが挙げられる。また、金属酸化物としては周期律表1〜8族の元素の単独酸化物又は複合酸化物が挙げられ、例えばSiO2、Al2O3、MgO、CaO、B2O3、TiO2、ZrO2、Fe2O3、Al2O3・MgO、Al2O3・CaO、Al2O3・SiO2、Al2O3・MgO・CaO、Al2O3・MgO・SiO2、Al2O3・CuO、Al2O3・Fe2O3、Al2O3・NiO、SiO2・MgOなどの天然又は合成の各種単独ないしは複合酸化物を例示することができる。ここで上記の式は分子式ではなく、組成のみを表すものであって、本願発明において用いられる複合酸化物の構造及び成分比率は特に限定されるものではない。また、本願発明において用いる金属酸化物は、少量の水分を吸収していても差し支えなく、少量の不純物を含有していても差し支えない。
金属塩化物としては、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属の塩化物が好ましく、具体的には塩化マグネシウム、塩化カルシウムなどが好適である。金属炭酸塩としてはアルカリ金属、アルカリ土類金属の炭酸塩が好ましく、具体的には、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムなどが挙げられる。炭素質物としては例えばカーボンブラック、活性炭などが挙げられる。
以上の無機物担体はいずれも本願発明に好適に用いることができるが、特に金属酸化物、シリカ、アルミナなどの使用が好ましい。
これら無機物担体の性状としては特に制限はないが、通常は平均粒径は好ましくは5〜200μm、更に好ましくは10〜150μm、比表面積は好ましくは150〜1,000m2/g、更に好ましくは200〜500m2/g、細孔容積は好ましくは0.3〜2.5cm3/g、更に好ましくは0.5〜2.0cm3/g、見掛比重は好ましくは0.20〜0.50g/cm3、更に好ましくは0.25〜0.45g/cm3 を有す無機物担体を用いるのが好ましい。
上記した無機物担体はそのまま用いることもできるが、予備処理としてこれらの担体をトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどの有機アルミニウム化合物やAl−O−Al結合を含む有機アルミニウムオキシ化合物に接触させた後に、用いることができる。
(I)2種類の遷移金属化合物を混合し、次に助触媒と接触させ、その後担体と接触させる。
(II)1種類の遷移金属化合物と助触媒を接触させ、次に他の遷移金属化合物と接触させ、その後担体と接触させる。
(III)1種類の遷移金属化合物と助触媒を接触させ、次に担体と接触させ、その後他の遷移金属化合物を接触させる。
(IV)2種の遷移金属化合物と担体を接触させ、その後助触媒を接触させる。
(V)助触媒と担体を接触させ、その後2種の遷移金属化合物と接触させる。
これらの接触方法の中で(I)、(II)、(III)、(V)が好ましい。いずれの接触方法においても、通常は窒素又はアルゴンなどの不活性雰囲気中、一般にベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素、ヘプタン、ヘキサン、デカン、ドデカン、シクロヘキサンなどの脂肪族或いは脂環族炭化水素などの液状不活性炭化水素の存在下に、撹拌下又は非撹拌下に各成分を接触させる方法が採用される。この接触は、通常−100℃〜200℃、好ましくは−50℃〜100℃の温度にて、好ましくは10分〜50時間、更に好ましくは1時間〜24時間行うことが望ましい。
また、遷移金属化合物、有機アルミニウムオキシ化合物、遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物と担体の接触に際しては、ある種の成分が可溶ないしは難溶な芳香族炭化水素溶媒と、ある種の成分が不溶ないしは難溶な脂肪族又は脂環族炭化水素溶媒とがいずれも使用可能である。
各成分同士の接触反応を段階的に行う場合にあっては、前段で用いた溶媒などを除去することなく、これをそのまま後段の接触反応の溶媒に用いてもよい。また、可溶性溶媒を使用した前段の接触反応後、ある種の成分が不溶もしくは難溶な液状不活性炭化水素を添加して、所望生成物を固形物として回収した後に、或いは一旦可溶性溶媒の一部又は全部を、濃縮乾燥などの手段により除去して所望生成物を固形物として取り出した後に、この所望生成物の後段の接触反応を、上記した不活性炭化水素溶媒のいずれかを使用して実施することもできる。本願発明では各成分の接触反応を複数回行うことを妨げない。
有機アルミニウムオキシ化合物を用いる場合、遷移金属化合物中の遷移金属(M)に対する有機アルミニウムオキシ化合物のアルミニウムの原子比(Al/M)は、通常1〜100,000、好ましくは5〜1,000、更に好ましくは50〜200の範囲が望ましく、遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物を用いる場合、遷移金属化合物の遷移金属に対する、ホウ素の原子比(B/M)は、通常0.01〜100モル、好ましくは0.1〜50モル、更に好ましくは0.2〜10モルの範囲で選択することが望ましい。
担体の使用量は、遷移金属化合物中の遷移金属0.0001〜5ミリモル当たり、好ましくは0.001〜0.5ミリモル当たり、更に好ましくは0.01〜0.1ミリモル当たり1gである。
遷移金属化合物、有機アルミニウムオキシ化合物、遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物と担体を前記接触方法(I)〜(V)のいずれかで相互に接触させ、しかる後、溶媒を除去することで、オレフィン類重合用触媒を固体触媒として得ることができる。溶媒の除去は、常圧下又は減圧下、好ましくは0〜200℃、更に好ましくは20〜150℃で、好ましくは1分〜50時間、更に好ましくは10分〜10時間で行うことが望ましい。
なお、オレフィン類重合用触媒は、以下の方法によっても得ることができる。
(VI)遷移金属化合物と担体を接触させて溶媒を除去し、これを固体触媒成分とし、重合条件下で有機アルミニウムオキシ化合物、遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物と接触させる。
(VII)有機アルミニウムオキシ化合物、遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物と担体を接触させて溶媒を除去し、これを固体触媒成分とし、重合条件下で遷移金属化合物と接触させる。
これらの接触方法の場合も成分比、接触条件及び溶媒除去条件は前記と同様の条件が使用できる。
層状珪酸塩とは、イオン結合などによって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造をとる珪酸塩化合物である。
大部分の層状珪酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出するが、これら、層状珪酸塩は特に天然産のものに限らず、人工合成物であってもよい。これらの中では、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ベントナイト、テニオライトなどのスメクタイト族、バーミキュライト族、雲母族が好ましい。
一般に、天然品は、非イオン交換性(非膨潤性)であることが多く、その場合は好ましいイオン交換性(ないし膨潤性)を有するものとするために、イオン交換性(ないし膨潤性)を付与するための処理を行うことが好ましい。そのような処理のうちで特に好ましいものとしては次のような化学処理が挙げられる。ここで化学処理とは、表面に付着している不純物を除去する表面処理及び層状珪酸塩の結晶構造と化学組成に影響を与える処理のいずれをも用いることができる。具体的には、(イ)塩酸、硫酸などを用いて行う酸処理、(ロ)NaOH、KOH、NH3などを用いて行うアルカリ処理、(ハ)周期律表第2族から第7族から選ばれた少なくとも1種の原子を含む陽イオンとハロゲン原子又は無機酸由来の陰イオンからなる群より選ばれた少なくとも1種の陰イオンからなる塩類を用いた塩類処理、(ニ)アルコール、炭化水素化合物、ホルムアミド、アニリンなどの有機物処理が挙げられる。これらの処理は単独で行ってもよいし、2つ以上の処理を組み合わせてもよい。
層状珪酸塩は、全ての工程の前後又は中間のいずれの時点においても、粉砕、造粒、分粒、分別などによって粒子性状を制御することができる。
層状珪酸塩はそのまま用いることもできるが、これらの層状珪酸塩をトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどの有機アルミニウム化合物やAl−O−Al結合を含む有機アルミニウムオキシ化合物と組み合わせて用いることができる。
(VIII)2種の遷移金属化合物と有機アルミニウム化合物を接触させた後、担体(層状珪酸塩)と接触させる。
(IX)2種の遷移金属化合物と担体を接触させた後、有機アルミニウム化合物と接触させる。
(X)1種類の遷移金属化合物と担体を接触させ、次に担体と有機アルミニウムを接触させ、その後他の遷移金属化合物を接触させる。
(XI)有機アルミニウムオキシ化合物と担体を接触させた後、2種の遷移金属化合物とを接触させる。
これらの接触方法の中で、特に(VIII)と(XI)が好ましい。いずれの接触方法においても、通常は窒素又はアルゴンなどの不活性雰囲気中、一般にベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素、ヘプタン、ヘキサン、デカン、ドデカン、シクロヘキサンなどの脂肪族或いは脂環族炭化水素などの液状不活性炭化水素の存在下に、撹拌下又は非撹拌下に各成分を接触させる方法が採用される。
遷移金属化合物と、有機アルミニウム化合物、担体の使用割合は、特に限定されないが、以下の範囲が好ましい。遷移金属化合物の担持量は、層状珪酸塩1gあたり、0.0001〜5ミリモル、好ましくは0.001〜0.5ミリモル、更に好ましくは0.01〜0.1ミリモルである。有機アルミニウム化合物を用いる場合のAl担持量は、0.01〜100モル、好ましくは0.1〜50モル、更に好ましくは0.2〜10モルの範囲であることが望ましい。
担持及び溶媒除去の方法は、前記の無機物担体と同様の条件が使用できる。このようにして得られるオレフィン類重合用触媒は、粒子形状の調整などのために必要に応じてモノマーの予備重合を行った後に使用しても差し支えない。
本願発明のエチレン系重合体(A)を得る際に、前記した特定の二種のメタロセン触媒の使用下において、少量のα,ω−非共役ジエンなどの非共役ポリエンの共存下、エチレンの単独重合又は他のオレフィンとの共重合を行うことにより、機械強度を損なわずに加工性の優れたポリエチレン組成物を生成させることができる。ここでいうオレフィン類には、α−オレフィン類、環状オレフィン類、スチレン類似体及び極性基含有オレフィン類が包含される。
本願発明における非共役ポリエンの使用量は、重合系内のエチレンに対し0〜1mol%で、好ましくは0〜0.5mol%、更に好ましくは0.0001〜0.05mol%の範囲である。非共役ポリエンの使用量が1mol%を超えるとエチレン重合体の成形加工性と機械物性のバランスが損なわれ好ましくない。
なお、図1に本願発明の錯体A及びBを使用して重合されるポリマーのMFRの差異と、ポリエンを共存させたときの反応性の差異を示す概念がグラフ図として図示されている。ポリエンを共存させないときに10倍以上のMFRの差が有り、ポリエンを共存させると錯体AによるMFRの低下度合いが錯体Bによるものよりも大きいことが示されている。
本願発明のエチレン系重合体(A)においては、α−オレフィン類、環状オレフィン類、スチレン類似体及び極性基含有オレフィン類と共重合することができる。
α−オレフィン類には、炭素数3〜20、好ましくは3〜8のものが包含され、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、ビニルシクロヘキサンなどが例示される。2種類以上のα−オレフィンを共重合させることも可能であり、α−オレフィンの量は全モノマーの40モル%以下、好ましくは30モル%以下、更に好ましくは20モル%以下の範囲で選ばれる。
環状オレフィンとしては、炭素数3〜24、好ましくは3〜18のものが本願発明で使用可能であり、これには例えば、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3−メチルシクロヘキセン、シクロオクテン、シクロデセン、シクロドデセン、テトラシクロデセン、オクタシクロデセン、ジシクロペンタジエン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−イソブチル−2−ノルボルネン、5,6−ジメチル−2−ノルボルネン、5,5,6−トリメチル−2−ノルボルネン、エチリデンノルボルネンなどが包含される。環状オレフィンの量は共重合体の50モル%以下、通常は1〜50モル%、好ましくは2〜50モル%の範囲にある。
本願発明で使用可能なスチレン類似体は、スチレン及びスチレン誘導体であって、その誘導体としては、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレンなどを例示することができる。
本願発明のエチレン系重合体(A)を得るための重合反応は、前記したメタロセン触媒の存在下に、スラリー重合、溶液重合、又は気相重合にて行うことができる。スラリー重合又は気相重合が好ましく、実質的に酸素と水分を断った状態で、イソブタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素などから選ばれる不活性炭化水素溶媒の存在下又は不存在下で、オレフィンを重合させる。この時の重合条件は、温度は好ましくは20〜200℃、更に好ましくは50〜100℃、圧力は好ましくは常圧〜7MPa、更に好ましくは常圧〜3MPaの範囲にあり、重合時間としては好ましくは5分〜10時間、更に好ましくは5分〜5時間が採用される。
生成重合体の分子量は、重合温度、触媒のモル比などの重合条件を変えることによってもある程度調節可能であるが、重合反応系に水素を添加することでより効果的に分子量調節を行うことができる。
また、重合系中に、水分除去を目的とした成分、いわゆるスカベンジャーを加えても何ら支障なく重合を実施することができる。なお、かかるスカベンジャーとしては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物、有機アルミニウムオキシ化合物、分岐アルキルを含有する変性有機アルミニウム化合物、ジエチル亜鉛、ジブチル亜鉛などの有機亜鉛化合物、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、エチルブチルマグネシウムなどの有機マグネシウム化合物、エチルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムクロリドなどのグリニヤ化合物などが使用される。これらのなかでは、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、エチルブチルマグネシウムが好ましく、トリエチルアルミニウムが特に好ましい。
水素濃度、モノマーとコモノマー濃度、非共役ジエン濃度、重合圧力、重合温度などの重合条件が互いに異なる2段階以上の多段階重合方式にも、支障なく適用することができる。
本願発明の組成物におけるポリオレフィン系樹脂(B)としては、イオン重合で製造されるポリエチレン樹脂(b1)、高圧ラジカル法エチレン(共)重合体(b2)、ポリプロピレン系樹脂(b3)などの炭素数3以上のα-オレフィンの単独もしくは交互共重合体を包含する。
上記イオン重合で製造されるポリエチレン樹脂(b1)とは、密度0.94〜0.97g/cm3、メルトフローレート(MFR)が0.05〜100g/10分の範囲のエチレン単独重合体又はエチレン・α−オレフィン共重合体で構成される高密度ポリエチレン樹脂、密度0.91〜0.94g/cm3未満、MFRが0.05〜100g/10分の範囲のエチレン・α−オレフィン共重合体で構成される線状低密度ポリエチレン樹脂、密度0.86〜0.91g/cm3未満、MFRが0.05〜100g/10分の範囲のエチレン・α−オレフィン共重合体で構成される線状超低密度ポリエチレン樹脂を包含するものである。
本発明に係るポリエチレン樹脂(b1)は、有機アルミニウムオキシ化合物とシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物とからなるオレフィン重合用触媒の存在下に、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを共重合して得られる共重合体である場合には、更に好適である。本発明に係るポリエチレン樹脂(b1)は、上記条件を満たしていれば、2種類以上のポリエチレン樹脂(b1)を混合したものであってもよい。
上記のエチレン・ビニルエステル共重合体は、エチレンを主成分とし、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリフルオル酢酸ビニルなどのビニルエステル単量体との共重合体である。これらの中でも特に好ましいものとしては、酢酸ビニルを挙げることができる。エチレン50〜99.5重量%、ビニルエステル0.5〜50重量%、他の共重合可能な不飽和単量体0〜49.5重量%からなる共重合体が好ましい。更にビニルエステル含有量は3〜20重量%、特に好ましくは5〜15重量%の範囲で選択される。
上記のエチレンとα,β−不飽和カルボン酸エステルとの共重合体の代表的な共重合体としては、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸ブチル共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・メタクリル酸エチル共重合体などのエチレン・(メタ)アクリル酸又はそのアルキルエステル共重合体、エチレン・無水マレイン酸・酢酸ビニル共重合体、エチレン・無水マレイン酸・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・無水マレイン酸・アクリル酸エチル共重合体などの二元共重合体又は多元共重合体などが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル含有量は3〜30重量%、好ましくは5〜20重量%の範囲である。
本願発明の組成物成分の熱可塑性エラストマー(C)としては、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマーなどの各種熱可塑性エラストマー、天然ゴム、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ニトリルブチルゴムなどの天然又は合成ゴムが包含される。これらの中でも、以下に詳細を説明するオレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーが好ましい。
本願発明のポリオレフィン系組成物は、エチレン系重合体(A)98〜2重量%と他のポリオレフィン系樹脂(B)及び/又は熱可塑性エラストマー(C)2〜98重量%からなることを特徴とするものであるが、改質の目的や用途によって、上記範囲内で任意の配合量で選択される。
例えば、従来の高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンに混合される少量のLDPEとの組成物のLDPEを、本願発明の新規なエチレン系重合体(A)に置換することにより、従来の透明性や成形加工性を維持しながら、引張強度やダート衝撃強度などの機械的強度を大幅に改良し得る樹脂組成物を提供することが可能である。また、従来のLDPE単独のインフレーションフィルムに対して、本願発明の新規なエチレン系重合体(A)を配合することにより、やはり、LDPEの長所の透明性と成形加工性を維持しながら、引張強度やダート衝撃強度などの機械的強度を大幅に改良し得るものとなる。さらに、従来の耐熱容器や重包装袋などに用いられているHDPE及び/又はLLDPEの強度を低下させずに加工成形性を改良させる場合においては、HDPEやLLDPE(B)98〜60重量%、本願発明のエチレン系重合体(A)2〜40重量%、好ましくは(B)95〜75重量%、(A)5〜25重量%の範囲で選択される。LDPE(B)の透明性や加工成形性を低下させずに衝撃強度などを改良させる場合においては、(B)98〜50重量%、本願発明のエチレン系重合体(A)2〜50重量%、好ましくは(B)95〜60重量%、(A)5〜40重量%の範囲で選択することにより達成される。
上記ポリオレフィン組成物において、(A)成分が2重量%未満、及び(B)成分及び/又は(C)成分が98重量超える場合には、改良効果が生じない惧れがある。
本願発明の組成物は、溶融成形特性(流動特性や溶融弾性)、機械的特性(衝撃強度、引張強度)光学的特性(ヘイズ、グロス)、熱的特性(耐熱性)などをバランスよく制御することができるため、インフレーション成形、Tダイ成形などの押出成形、中空成形、射出成形、回転成形などによって成形され,高速成形化や軽量化が可能である。
また、成形体は種々の用途に使用可能であって、例えば、(i)フィルムとして、規格袋、重袋、ラップフィルム、砂糖袋、米袋、油物包装袋、漬物などの水物包装袋における食品包装用フィルム、農業用フィルムなどに使用され、(ii)ナイロン、ポリエステル、金属箔、エチレンー酢酸ビニル共重合体鹸化物などの各種基材との積層体、発泡体やその成形体、(iii)バッグインボックス、洗剤用容器、食用油容器、レトルト容器、医療容器、灯油缶、ドラム、燃料タンクなどの中空容器、輸液バッグ、(iv)チューブ、水道管、ガス管などのパイプ、(v)タッパー容器用蓋、ボトル用キャップ、コンテナなどの、種々の用途に適用される。
実施例及び比較例で得られた重合体の物性測定は、以下に説明する方法で行った。
1)メルトフローレート(MFR)
MFRは、JIS K6922−1(1997)の条件D(温度190℃、荷重21.18N)に従い測定した。
2) 密度
JIS K6922−1(1997)に従い測定した。
3)GPCによる分子量及び分子量分布測定
ウォーターズ社製150C型を使用し、下記の条件で測定を行い、分子量及び分子量分布を求めた。
カラム:ShowdexHT−G及び同HT−806M×2本 溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン 温度:140℃ 流量:1.0ml/分
カラムの較正は、昭和電工製単分散ポリスチレンで行った。(S−7300 S−3900 S−1950 S−1460 S−1010 S−565 S−152 S−66.0 S−28.5 S−5.05 の各0.2mg/ml溶液)n−エイコサン及びn−テトラコンタンの測定を行い、溶出時間と分子量の対数値を4次式で近似した。なお、ポリスチレンとポリエチレンの分子量の換算には次式を用いた。 MPE=0.468×MPS
4)主鎖1,000Cあたりの短鎖分岐数(SCB)
日本電子(株)製JNM−GSX400型NMR装置及びC10型プローブを用い、以下の条件で 13C−NMRスペクトルを測定した。
パルス幅:8.0μs(フリップ角=40°) パルス繰り返し時間:5秒
積算回数:5,000回以上 溶媒及び内部標準:1,2,4−トリクロロベンゼン/ベンゼン−d6 /ヘキサメチルジシロキサン(混合比:30/10/1)
測定温度:120℃ 試料濃度:0.3g/ml
得られたスペクトルの解析は、例えば、エチレン/1−ブテン共重合体については「Eric T.Hsieh & James C.Randall,Macromolecules vol.15,353−360(1982)」、エチレン/1−ヘキセン共重合体については、「Eric T.Hsieh & James C.Randall,Macromolecules vol.15,1402−1406(1982)」の文献に従って行い、SCB及びBを求めた。
5)流動の活性化エネルギーEa
試験に供する重合体を180℃で直径25mm・厚み1mmの円形にプレス成形したものをサンプルとし、動的粘弾性特性の測定装置は、Paar Physica社製UDS−200型回転式レオメータ及び25mmφパラレルプレートを用い、窒素雰囲気下において以下の条件で温度(140℃,170℃,190℃,210℃及び230℃)における動的粘弾性を測定した。
歪み量:10% 測定周波数範囲:6.22×10−3〜6.22×102rad/s(210℃及び230℃は、6.22×10−2〜6.22×102rad/s) 190℃を基準温度として、5つの温度条件の貯蔵弾性率G’及び損失弾性率 G”を、時間−温度重ね合わせの原理に従って重ね合わせ、シフトファクターaT を求めた。このシフトファクターを絶対温度の逆数に対してプロットし、その傾きから流動の活性化エネルギーEaを計算した。(段落0021〜0024に記載した方法による。なお、炭素数20を超える長鎖分岐の存在はΔEaの値で確認した。)
6)伸張粘度λmax
試験に供する重合体を190℃で熱プレスして150mm×70mm×2mmのシートを作成し、このシートから7mm×70mm×2mmに打ち抜いたものをサンプルとした。レオメトリック社製RME型一軸伸長粘度測定装置を用いて140℃、歪速度(設定値:1.0,0.3,0.1s−1)における非定常一軸伸長粘度曲線を測定した。
次に、流動の活性化エネルギーと同様の条件で測定した140℃における動的粘弾性測定データから、段落0028に記載した式(3)と(4)及び計算方法を使用して、λmaxを算出した。
7)剪断応力の測定
東洋精機(株)製キャピログラフに内径1.0mmφ、長さ40mmのキャピラリダイを取り付け、温度190℃・ピストン速度10mm/min(Shear Rate 122s−1)の条件で押出し、剪断応力を測定した。
8)引張衝撃強さ(TIS)の測定
JIS K 7160(1996)のA法により測定した。試験片の形状は、4形試験片を使用した。
9)ヘーズ値の測定
JIS K 7105(1981)の測定法Aにより測定した。試験片は、熱プレス成形により50mm×50mm×0.2mm厚のシートを作成した。
10)メルトテンション(MT)の測定
東洋精機製作所製キャピログラフ1−Bを用い、キャピラリー径2mm、キャピラリー長さ8mmのキャピラリーを用い190℃、ピストンスピード10m/分で押し出された溶融樹脂を4m/分の引き取り速度でフィラメントに引き取った時の溶融張力を測定した。
錯体調製及び触媒調製に用いたトルエンやヘキサンは脱気後にモキュラーシーブ3Aで脱水したものを用いた。メチルアルミノキサンMAOは、アルベマール社20wt%トルエン溶液品(Al濃度が約2.9mol/L)を用いた。固体触媒の担体として用いたシリカは、表面積290m2、細孔容積1ml/g、平均粒径45μmの物を用い、650℃で7時間焼成したものを用いた。ベンゾインデンは4,5−ベンゾインデンと6,7−ベンゾインデンの混合物であり、「Bulletin de la Societe Chimique de Frace(1967)3 987−992」に基づき合成されたものを用いた。
(トリスインデニルジルコニウムハイドライド(錯体1)の調製)
窒素雰囲気下、100mlナス型フラスコにビスインデニルジルコニウムジクロライド(Ind2ZrCl2)の1mmol(0.39g)をトルエン30mlに懸濁し、寒剤(ドライアイス−エタノール)で−78℃に冷却し、n−ブチルリチウム(n−BuLi)を2mmol加える。この混合溶液を寒剤から出して温度をゆっくり上げ、0℃付近でインデンを4mmol加える。さらに室温まで温度を上げ30分反応する。反応後析出したリチウムクロライド(LiCl)を濾別する。濾液をさらに50℃で12時間反応させ析出した沈殿をn−ヘキサンで洗浄し、錯体1を収率64%で得た。
(トリスベンゾインデニルジルコニウムハイドライド(錯体2)の調製)
窒素雰囲気下、50mlナス型フラスコにトリスインデニルジルコニウムハイドライドの0.31mmol(0.14g)をヘキサン5mlに懸濁し、ベンゾインデン(BenzInd)1.2mmol加え、50℃で2時間反応させた。溶媒を除いた後、析出した固体をn−ヘキサンで洗浄することにより、錯体2を収率83%で得た。
錯体1の46mg(0.1mmol)と錯体2の118mg(0.2mmol)を100mlナスフラスコに入れ、これにトルエン20mlとメチルアルミノキサントルエン溶液を14ml(Alで40mmol)加えた後、予め300mlの磁気誘導撹拌機を備えたフラスコに10gのシリカを入れて脱気しておいたものに、上記混合液を添加した。その後減圧下で溶媒を除去することで流動性の良い固体触媒を得た。
[固体触媒IIの調製]
特開2000−154196号公報(実施例8)に基づき、以下のように調製した。50mlフラスコにトルエン5.7ml、ジルコニウムテトラn−ブトキシドのn−ブタノール(1:1)混合物1.4g(3mmol)、インデン2.1g(18mmol)、1−メチル−3−プロピルシクロペンタジエン1.1g(9mmol)を入れ、90℃に加熱し、この溶液にトリイソブチルアルミニウムのトルエン溶液(1.2mol/L)21mlを2時間かけて滴下することで遷移金属錯体溶液を調製した。この溶液(0.09mol/L)4.4mlとメチルアルミノキサンのトルエン溶液14mlとトルエン20mlを混合した溶液を、予め300mlの磁気誘導撹拌機を備えたフラスコに10gのシリカを入れて脱気しておいたものに添加した。その後減圧下で溶媒を除去することで流動性の良い固体触媒を得た。
(PE1の重合)
温度80℃、コモノマー/エチレンモル比0.015、水素/エチレンモル比6.1×10−4、窒素濃度30mol%のガス組成、圧力0.8MPaで準備された気相連続重合装置(内容積100L、流動床直径10cm)に固体触媒Iを間欠的に供給しながらガス組成と温度を一定にして重合を行った。得られたエチレン系共重合体のパウダーに、酸化防止剤としてチバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製イルガノックス1010を1,000ppm加えて、(株)東洋精機製ラボプラストミルに単軸押出機を取り付け、温度170℃・スクリュー回転数40回転/分の条件で造粒した。密度は0.923g/cm3、MFRは1.7g/10分、分子量分布は4.5、流動の活性化エネルギーは35.2kJ/mol、SCBは13.2個/1,000C(ブチル分岐)、λmaxは3.8であった。式(1)により計算されるEaLは32.0kJ/molであるから、ΔEaは3.2kJ/molである。また、式(2)の右辺1.2exp(0.0721×ΔEa)は1.5である。したがって、得られたエチレン系共重合体PE1は、本願発明の数式のいずれをも満足するものであった。結果を表1及び2に示した。
水素/エチレンモル比を1.8×10−4とし、固体触媒IIを用いた以外はPE1と同様に重合及び造粒を行った。密度は0.923g/cm3、MFRは1.8g/10分、流動の活性化エネルギーは31.9kJ/mol、SCBは13.0個/1,000C(ブチル分岐)、λmaxは0であった。式(1)により計算されるEaLは31.9kJ/molであるから、ΔEaは0kJ/molである。また、式(2)の右辺1.2exp(0.0721×ΔEa)は1.2である。したがって、得られたエチレン系共重合体PE2は、本願発明の数式のいずれをも満足しないものであった。結果を表1及び2に示した。
エチレン系重合体PE1と高圧法低密度ポリエチレン(密度0.922g/cm3、MFR0.7g/10分、商品名:ノバテックLB420M、日本ポリエチレン(株)製、PE3と称す)とを、(株)東洋精機製ラボプラストミルに単軸押出機を取り付け、温度170℃、スクリュー回転数40回転/分の条件で溶融混練した。配合割合と評価結果を表3に示した。
エチレン系重合体PE1とエチレン系重合体PE2とを、(株)東洋精機製ラボプラストミルに単軸押出機を取り付け、温度170℃、スクリュー回転数40回転/分の条件で溶融混練した。配合割合と評価結果を表5に示した。
エチレン系重合体PE2と高圧法低密度ポリエチレン(密度0.922g/cm3、MFR0.7g/10分、商品名:ノバテックLB420M、日本ポリエチレン(株)製、PE3)とを、(株)東洋精機製ラボプラストミルに単軸押出機を取り付け、温度170℃、スクリュー回転数40回転/分の条件で溶融混練した。配合割合と評価結果を表6に示した
参考のためエチレン系重合体PE1、PE2、PE3の各100重量部を実施例1と同様に(株)東洋精機製ラボプラストミルに単軸押出機を取り付け、温度170℃・スクリュー回転数40回転/分の条件で溶融混練して評価した結果を表4に示した。
実施例1〜3は本願請求項1の発明の構成要件を満たすものであるが、実施例1は、PE3に対して同じ配合割合である比較例1と比較して、TIS(引張強度)は劣るものの、剪断応力、Hazeともに低く優れている。同様に、実施例2と比較例2及び実施例3と比較例3を比較すると、実施例2、3はTISは劣るものの、剪断応力、Hazeともに低く優れている。剪断応力がほぼ同等である実施例2、3と比較例1を比較すると、実施例2,3の方がTISは高く、Hazeも低く優れている。このことから、本願発明の組成物は、流動性(成型加工性)と強度及び透明性のバランスに優れていることが明示されている。
実施例4〜8も本願請求項1の発明の構成要件を満たすものであるが、実施例7は、PE2に対して同じ配合割合である比較例2と比較して、剪断応力、MTはやや劣るものの、TIS(引張強度)及びHazeは優れている。MTがほぼ同等である実施例8と比較例3を比較すると、実施例8の方がTISは高く、剪断応力及びHazeも低く優れている。また、TISがほぼ同等である実施例6と比較例5を比較すると、実施例6の方が剪断応力及びHazeは低く、MTは高く優れている。このことからも、本願発明の組成物は、流動性(成型加工性)及び成形安定性と強度及び透明性のバランスに優れていることが明示されている。
以上の結果からして、各比較例にみられる従来技術に対して、本願発明のエチレン系重合体組成物の卓越性が明らかであり、本願発明の構成の有意性と合理性が立証されている。
Claims (5)
- 以下のa)〜d)の条件を満たし、炭素数1〜20の短鎖分岐と炭素数20を超える長鎖分岐が高分子主鎖に導入されたエチレン系重合体(A)98〜2重量%と他のポリオレフィン系樹脂(B)及び/又は熱可塑性エラストマー(C)2〜98重量%により形成されるポリオレフィン系組成物。
a)JIS K6922−1(1997)に基づいて測定された密度が、0.880〜0.970g/cm3 である。
b)JIS K6922−1(1997)の条件Dに基づき、温度190℃において加重21.18Nの条件で測定されたメルトフローレート(MFR)が、0.01〜100g/10分である。
c)流動の活性化エネルギーEa[KJ/mol]と、下記の式(1)により算出される活性化エネルギーEaL[KJ/mol]との差ΔEa[KJ/mol]が、1.5〜12.5である。
ここで、SCBは主鎖の炭素原子1,000あたりの炭素数1〜20の短鎖分岐数[個数/1,000C]を表し、Bは炭素数1〜20の短鎖分岐の長さ(炭素数)を表す。
d)伸長粘度λmaxとΔEaとが下記の式(2)を満たす。
λmax≧1.2exp(0.0721×ΔEa) 式(2) - エチレン系重合体(A)が、メタロセン系触媒の存在下で製造されたエチレン重合体又はエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体であり、或いはそれらに非共役ポリエンが共重合された共重合体であることを特徴とする、請求項1に記載されたポリオレフィン系組成物。
- エチレン系重合体(A)において、炭素数1〜20の短鎖分岐と炭素数20を超える長鎖分岐の、高分子主鎖への導入を、二種又は複数種のメタロセン触媒により各々の触媒に応じて行うことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載されたポリオレフィン系組成物。
- エチレン系重合体(A)が非共役ポリエンの共存下において重合され、非共役ポリエンの濃度を制御することにより長鎖分岐成分の分岐構造が制御されたことを特徴とする、請求項3に記載されたポリオレフィン系組成物。
- ポリオレフィン系樹脂(B)が、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高圧ラジカル法低密度ポリエチレンの少なくとも1種のポリエチレンであることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれかに記載されたポリオレフィン系組成物。
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