JP6594140B2 - プロピレン系樹脂組成物の製造方法 - Google Patents
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Description
(I)前記オレフィン系樹脂(β)が、エチレン・α−オレフィン共重合体からなる主鎖およびプロピレン重合体からなる側鎖を有するグラフト型オレフィン系重合体[R1]を含む。
(II)前記オレフィン系樹脂(β)に含まれるプロピレン重合体の割合をP質量%とするとき、Pが5〜60の範囲内である。
(III)オルトジクロロベンゼンを溶媒として用いるクロス分別クロマトグラフ(CFC)により測定される微分溶出曲線のピーク値が65℃未満である成分の、前記オレフィン系樹脂(β)に対する割合をE質量%とするとき、下記式(Eq−1)で表される値aが1.4以上である。
(IV)示差走査熱量分析(DSC)によって測定される融点(Tm)が120〜165℃の範囲内であり、ガラス転移温度(Tg)が−80〜−30℃の範囲内である。
(V)熱キシレン不溶解量が3質量%以下である。
(VI)135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5〜5.0dl/gの範囲内である。
(A)ジメチルシリルビスインデニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物[A]を含むオレフィン重合用触媒の存在下でプロピレンを重合し、末端不飽和ポリプロピレンを製造する工程、
(B)下記式[B]で表される架橋メタロセン化合物を含むオレフィン重合用触媒の存在下で、前記工程(A)で製造される前記末端不飽和ポリプロピレンと、エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のα−オレフィンとを共重合する工程。
R6およびR11は、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基からなる群から選択される同一の原子または同一の基である。
R7およびR10は、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基からなる群から選択される同一の原子または同一の基である。
R6およびR7は互いに結合して環を形成していてもよく、R10およびR11は互いに結合して環を形成していてもよい。ただし、R6、R7、R10およびR11が全て水素原子であることはない。
R13およびR14はそれぞれ独立してアリール基を示す。
Y1は炭素原子またはケイ素原子を示す。
M1はジルコニウム原子またはハフニウム原子を示す。
Qはハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、炭素数4〜10の中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子を示し、jは1〜4の整数を示し、jが2以上の整数である場合、複数のQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
本発明に係るプロピレン系樹脂組成物は、示差走査熱量分析(DSC)によって測定される融点(Tm)が158℃以上であり、メタロセン触媒を用いて製造されたプロピレン単独重合体を含有するプロピレン系樹脂(ω)50〜98質量%と、オレフィン系樹脂(β)2〜50質量%とを含有する。なお、前記プロピレン系樹脂(ω)と前記オレフィン系樹脂(β)との合計は、100質量%である。プロピレン系樹脂(ω)の含有量は、60〜95質量%が好ましく、65〜95質量%がより好ましい。また、オレフィン系樹脂(β)含有量は、5〜40質量%が好ましく、5〜35質量%がより好ましい。プロピレン系樹脂(ω)とオレフィン系樹脂(β)の含有割合が上記範囲内であることにより、プロピレン系樹脂本来の剛性や硬度などの物性を良好に保持しながら、耐衝撃性や靱性が改良されるため、本発明に係るプロピレン系樹脂組成物は、各種成形品の製造に好適に使用することができる。
本発明に係るプロピレン系樹脂(ω)は、示差走査熱量分析(DSC)によって測定される融点(Tm)が158℃以上であり、メタロセン触媒を用いて製造されたプロピレン単独重合体(以下、該重合体を、メタロセン触媒プロピレン単独重合体(ω1)ともいう)を含有する。プロピレン系樹脂(ω)におけるメタロセン触媒プロピレン単独重合体(ω1)の含有量は、20〜100質量%であり、30〜90質量%が好ましく、40〜80質量%がより好ましい。含有率が20質量%未満では、剛性と耐衝撃性のバランスを達成しにくい場合がある。また、プロピレン系樹脂(ω)における該プロピレン単独重合体(ω1)以外の樹脂は、チタン系触媒(またはチーグラーナッタ触媒とも呼ばれる)を用いて製造された、プロピレン系単独重合体、ランダム共重合体、およびブロック共重合体からなる群から選択される少なくとも1種である(以下、該重合体を、チタン触媒プロピレン系重合体(ω2)ともいう)。
1 DSCで測定した融点(Tm)が158℃以上である。
2 メタロセン触媒を用いて製造された重合体である。
3 ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される重量平均分子量が1万〜100万であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜5.0である。
本発明に係るメタロセン触媒プロピレン単独重合体(ω1)の、DSCで測定される融点(Tm)は、158℃以上であり、160℃以上が好ましい。より好ましくは、160〜190℃、さらに好ましくは160〜175℃の領域に、α型結晶に由来する一つ以上の融解ピークを示すことを特徴とする。さらに、140℃以上160℃未満の領域にβ型結晶に由来する一つ以上の融解ピークを示すことが特に好ましい。
本発明に係るメタロセン触媒プロピレン単独重合体(ω1)の製造に用いられるメタロセン触媒は、特に限定されないが、例えば、国際公開第2014/050816号に記載された下記式[I]で表される遷移金属化合物およびその鏡像異性体と、共触媒とから構成されるプロピレン重合触媒を用いることができる。なお、共触媒としては、後述するオレフィン系樹脂(β)の製造方法において、遷移金属化合物[A]および架橋ハメタロセン化合物[B]と共に用いられる化合物[C]を制限なく用いることができる。
本発明に係るメタロセン触媒プロピレン単独重合体(ω1)の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される重量平均分子量は、1万〜100万であることが好ましく、8万〜50万であることがより好ましく、9万〜40万であることがさらに好ましい。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分子量分布(Mw/Mn)は、1.5〜5.0であることが好ましく、1.8〜3.5であることがより好ましい。
本発明に係るオレフィン系樹脂(β)は、前記プロピレン系樹脂(ω)以外のオレフィン系樹脂であり、下記要件(I)〜(VI)を全て満たす。また、該オレフィン系樹脂(β)は、下記要件(VII)〜(X)の少なくとも一つを満たすことが好ましい。なお、該オレフィン系樹脂(β)は、一種のオレフィン系樹脂から構成されていてもよく、二種以上のオレフィン系樹脂から構成されていてもよい。
(I)前記オレフィン系樹脂(β)が、エチレン・α−オレフィン共重合体からなる主鎖およびプロピレン重合体からなる側鎖を有するグラフト型オレフィン系重合体[R1]を含む。
(II)前記オレフィン系樹脂(β)に含まれるプロピレン重合体の割合をP質量%とするとき、Pが5〜60の範囲内である。
(III)オルトジクロロベンゼンを溶媒として用いるクロス分別クロマトグラフ(CFC)により測定される微分溶出曲線のピーク値が65℃未満である成分の、前記オレフィン系樹脂(β)に対する割合をE質量%とするとき、下記式(Eq−1)で表される値aが1.4以上である。
(IV)示差走査熱量分析(DSC)によって測定される融点(Tm)が120〜165℃の範囲内であり、ガラス転移温度(Tg)が−80〜−30℃の範囲内である。
(V)熱キシレン不溶解量が3質量%以下である。
(VI)135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5〜5.0dl/gの範囲内である。
オレフィン系樹脂(β)は、エチレン・α−オレフィン共重合体からなる主鎖およびプロピレン重合体からなる側鎖を有するグラフト型オレフィン系重合体[R1]を含む。該グラフト型オレフィン系重合体[R1]は、エチレン・α−オレフィン共重合体からなる主鎖およびプロピレン重合体からなる側鎖を有するグラフト共重合体である。なお、本発明において、「グラフト共重合体」とは、主鎖に対し側鎖が1本以上結合したポリマーを意味する。
(i)主鎖が、エチレン由来の単位と、炭素数3〜20のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のα−オレフィン由来の単位とからなり、該α−オレフィン由来の単位の割合が、主鎖に含まれる全モノマー由来の単位に対して、10〜50mol%の範囲内である。
(ii)主鎖を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量が50000〜200000の範囲内である。
(iii)側鎖が、実質的にプロピレン由来の単位からなる。
(iv)側鎖を構成するプロピレン重合体の重量平均分子量が5000〜100000の範囲内である。
グラフト型オレフィン系重合体[R1]の主鎖は、エチレン由来の単位と、炭素数3〜20のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のα−オレフィン由来の単位とからなり、該α−オレフィン由来の単位の割合が、主鎖に含まれる全モノマー由来の単位に対して、10〜50mol%の範囲内であることが好ましく、10〜40mol%の範囲内であることがより好ましい。
グラフト型オレフィン系重合体[R1]の主鎖を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量は、50000〜200000の範囲内であることが好ましい。本発明に係るポリプロピレン系樹脂組成物において、機械強度を保持しながら樹脂の成形性(流動性)を向上させる観点から、該重量平均分子量は、100000〜200000の範囲内であることがより好ましく、120000〜200000の範囲内であることがさらに好ましい。
グラフト型オレフィン系重合体[R1]の側鎖は、実質的にプロピレン由来の単位からなることが好ましい。特に、グラフト型オレフィン系重合体[R1]の側鎖は、実質的にプロピレン由来の単位からなるアイソタクチック規則性を有するプロピレン重合体であることが好ましい。
グラフト型オレフィン系重合体[R1]の側鎖を構成するプロピレン重合体の重量平均分子量は、5000〜100000の範囲内であることが好ましい。すなわち、グラフト型オレフィン系重合体[R1]は、重量平均分子量が5000〜100000であるプロピレン重合体であるマクロモノマーが、エチレン・α−オレフィン共重合体に結合した構造を有し、プロピレン重合体部位が側鎖となることが好ましい。前記重量平均分子量は、10000〜60000がより好ましい。
オレフィン系樹脂(β)に含まれるプロピレン重合体の割合(以下、割合Pともいう)をP質量%とするとき、Pは5〜60の範囲内である。ここで、オレフィン系樹脂(β)に含まれるプロピレン重合体とは、例えば後述する工程(B)において主鎖に取り込まれたポリプロピレン側鎖と、主鎖に取り込まれなかったポリプロピレン直鎖状ポリマーとの総和を示す。割合Pは8〜50質量%が好ましく、8〜40質量%がより好ましい。
オレフィン系樹脂(β)は、オルトジクロロベンゼンを溶媒として用いるクロス分別クロマトグラフ(CFC)により測定される微分溶出曲線のピーク温度が65℃未満である成分の、オレフィン系樹脂(β)に対する割合(以下、割合Eともいう)をE質量%とするとき、下記式(Eq−1)で表される値a(以下、a値ともいう)が1.4以上である。なお、下記式(Eq−1)において、Pは前記割合Pを示す。
a値は、1.6以上であることが好ましく、1.8以上であることがより好ましい。
オレフィン系樹脂(β)は、示差走査熱量分析(DSC)によって測定される融点(Tm)が120〜165℃の範囲内であり、ガラス転移温度(Tg)が−80〜−30℃の範囲内である。
オレフィン系樹脂(β)は、熱キシレン不溶解量が3.0質量%以下であり、2.5質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以下であることがより好ましく、1.5質量%以下であることがさらに好ましい。なお、該熱キシレン不溶解量は0質量%であってもよい。本発明に係るオレフィン系樹脂(β)は、熱キシレン不溶解量が3質量%以下であるため、プロピレン系樹脂(ω)に良好に分散することができ、その結果、所望の効果を発現する。一方、熱キシレン不溶解量が3質量%を超えると、プロピレン系樹脂組成物から得られた成形体において、ブツと呼ばれる外観不良が生じる。
W1:試験前のスクリーンおよびサンプルの合計の質量、W2:スクリーンの質量、W3:試験後のスクリーンおよびサンプルの合計の質量。
オレフィン系樹脂(β)は、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5〜5.0dl/gの範囲内である。前記極限粘度[η]は、1.0〜4.0dl/gが好ましく、1.0〜3.0dl/gがより好ましく、1.5〜3.0dl/gがさらに好ましい。前記極限粘度[η]が前記範囲内であることにより、オレフィン系樹脂(β)を含むプロピレン系樹脂組成物は、耐衝撃性に加え、良好な剛性や機械強度を有し、さらに良好な成形加工性も有する。なお、極限粘度[η]は、後述する方法により測定される値である。
オレフィン系樹脂(β)に含まれるエチレン由来の単位の割合が、オレフィン系樹脂(β)に含まれる全モノマー由来の単位に対して、20〜80mol%であることが好ましく、30〜80mol%であることがより好ましく、40〜80mol%であることがさらに好ましく、40〜75mol%であることが特に好ましい。前記割合が前記範囲内であることにより、オレフィン系樹脂(β)はエチレン・α−オレフィン共重合体をより多く含む態様となり、オレフィン系樹脂(β)を含むプロピレン系樹脂組成物は、耐衝撃性や破断伸びが良好になる。
オレフィン系樹脂(β)は、弾性率が200MPa以下であることが好ましい。弾性率は、100MPa以下であることがより好ましく、50MPa以下であることがさらに好ましい。
オレフィン系樹脂(β)は、示差走査熱量分析(DSC)により測定される融解ピークにおける融解熱量ΔHが、5〜50J/gの範囲内であることが好ましく、5〜40J/gの範囲内であることがより好ましく、10〜35J/gの範囲内であることがさらに好ましい。
オレフィン系樹脂(β)は、クロス分別クロマトグラフ(CFC)により測定される50℃以下のオルトジクロロベンゼン可溶成分の割合が、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
本発明に係るプロピレン系樹脂組成物の製造方法においては、下記工程(A)および工程(B)を含む方法により前記オレフィン系樹脂(β)を製造する。
(B)下記式[B]で表される架橋メタロセン化合物を含むオレフィン重合用触媒の存在下で、前記工程(A)で製造される前記末端不飽和ポリプロピレンと、エチレンと、炭素原子数3〜20のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のα−オレフィンとを共重合する工程。
工程(A)では、ジメチルシリルビスインデニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物[A]を含むオレフィン重合用触媒の存在下でプロピレンを重合し、末端不飽和ポリプロピレンを製造する。工程(A)は、グラフト型オレフィン系重合体[R1]のプロピレン重合体からなる側鎖の原料となる末端不飽和ポリプロピレンを製造する工程である。
工程(B)では、前記式[B]で表される架橋メタロセン化合物(以下、架橋メタロセン化合物[B]とも示す)を含むオレフィン重合用触媒の存在下、前記工程(A)で製造される前記末端不飽和ポリプロピレンと、エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のα−オレフィンとを共重合する。
[m1]二つの配位子のうち、一つは置換基を有していてもよいシクロペンタジエニル基であり、他の一つは置換基を有するフルオレニル基(以下「置換フルオレニル基」ともいう)である。
[m2]二つの配位子が、アリール(aryl)基を有する炭素原子またはケイ素原子からなるアリール基含有共有結合架橋部(以下「架橋部」ともいう)によって結合されている。
前記式[B]中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ独立して、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基またはケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基を示す。末端ビニルポリプピレンを良好に取り込む観点から、R1、R2、R3およびR4は全て水素原子であるか、またはR1、R2、R3およびR4のいずれか一つ以上がメチル基であることが好ましい。
前記式[B]中、R5、R8、R9およびR12はそれぞれ独立して、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基またはケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基を示し、水素原子、炭化水素基またはケイ素含有基が好ましい。R6およびR11は、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基からなる群から選択される同一の原子または同一の基であり、水素原子、炭化水素基およびケイ素含有基からなる群から選択される同一の原子または同一の基が好ましい。R7およびR10は、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基からなる群から選択される同一の原子または同一の基であり、水素原子、炭化水素基およびケイ素含有基からなる群から選択される同一の原子または同一の基が好ましい。R6およびR7は互いに結合して環を形成していてもよく、R10およびR11は互いに結合して環を形成していてもよい。ただし、R6、R7、R10およびR11が全て水素原子であることはない。
前記式[B]中、R13およびR14はそれぞれ独立してアリール基を示し、Y1は炭素原子またはケイ素原子を示す。オレフィン重合体の製造において重要な点は、架橋部の架橋原子Y1が、互いに同一でも異なっていてもよいアリール(aryl)基であるR13およびR14を有することである。製造上の容易性から、R13およびR14は互いに同一であることが好ましい。
前記式[B]中、Qはハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、炭素数4〜10の中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子を示し、jは1〜4の整数を示し、jが2以上の整数である場合、複数のQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
以下に、架橋メタロセン化合物[B]の具体例を示す。なお、例示化合物中、オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニルとは、下記式[II]で示される構造の化合物に由来する基を示す。オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニルとは、下記式[III]で示される構造の化合物に由来する基を示す。ジベンゾフルオレニルとは、下記式[IV]で示される構造の化合物に由来する基を示す。1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニルとは、下記式[V]で示される構造の化合物に由来する基を示す。1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニルとは、下記式[VI]で示される構造の化合物に由来する基を示す。
前記工程(A)および前記工程(B)においては、オレフィン重合用触媒として用いられる遷移金属化合物[A]および架橋メタロセン化合物[B]と共に、化合物[C]を用いることが好ましい。
[C1]有機金属化合物としては、具体的には下記式(C1−a)で表される有機アルミニウム化合物、下記式(C1−b)で表される周期表第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物、および下記式(C1−c)で表される周期表第2族または第12族金属のジアルキル化合物が挙げられる。なお、[C1]有機金属化合物には、後述する[C2]有機アルミニウムオキシ化合物は含まれないものとする。
前記式(C1−a)中、RaおよびRbはそれぞれ独立して、炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜4の炭化水素基を示す。Yはハロゲン原子を示す。pは0<p≦3、qは0≦q<3、rは0≦r<3、sは0≦s<3であり、かつp+q+r+s=3である。
前記式(C1−b)中、M3はLi、NaまたはKを示す。Rcは炭素数1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示す。
前記式(C1−c)中、RdおよびReはそれぞれ独立して、炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜4の炭化水素基を示す。M4はMg、ZnまたはCdである。
前記式(C−1a−1)中、RaおよびRbはそれぞれ独立して、炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜4の炭化水素基を示す。pは1.5≦p≦3である。
前記式(C−1a−2)中、Raは炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜4の炭化水素基を示す。Yはハロゲン原子を示す。pは0<p<3の数である。
前記式(C−1a−3)中、Raは炭素数1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、pは好ましくは2≦p<3の数である。
前記式(C−1a−4)中、RaおよびRbはそれぞれ独立して、炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜4の炭化水素基を示す。Yはハロゲン原子を示す。pは0<p≦3、qは0≦q<3、sは0≦s<3であり、かつp+q+s=3である。
トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec−ブチルアルミニウム、トリtert−ブチルアルミニウムなどのトリ分岐鎖アルキルアルミニウム;
トリシクロヘキシルアルミニウムなどのトリシクロアルキルアルミニウム;
トリフェニルアルミニウム、トリトリルアルミニウムなどのトリアリールアルミニウム;
ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライド;
(i−C4H9)xAly(C5H10)z(式中、x、y、zは正の数であり、z≧2xである)などで表されるトリイソプレニルアルミニウムなどのトリアルケニルアルミニウム;
イソブチルアルミニウムメトキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシド;
ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド;
エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシド;
Ra 2.5Al(ORb)0.5で表される平均組成を有する、部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム(式中、RaおよびRbはそれぞれ独立して、炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜4の炭化水素基を示す);
ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウム(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシド)などのジアルキルアルミニウムアリーロキシド;
ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムハライド;
エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;
エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライドなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム;
ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド;
エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドなどその他の部分的に水素化されたアルキルアルミニウム;
エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウムなどを挙げることができる。
[C2]有機アルミニウムオキシ化合物としては、公知のアルミノキサンであってもよく、また特開平2−78687号公報に例示されているような、ベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。[C2]有機アルミニウムオキシ化合物としては、具体的には、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン等が挙げられる。
(1)吸着水を含有する化合物または結晶水を含有する塩類、例えば塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第1セリウム水和物などの炭化水素媒体懸濁液に、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物を添加して、吸着水または結晶水と有機アルミニウム化合物とを反応させる方法。(2)ベンゼン、トルエン、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどの媒体中で、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に直接、水、氷または水蒸気を作用させる方法。
(3)デカン、ベンゼン、トルエンなどの媒体中で、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に、ジメチルスズオキシド、ジブチルスズオキシドなどの有機スズ酸化物を反応させる方法。
前記式(IV)中、R19は、前記式(III)におけるR17と同じ基を示す。
前記[C3]遷移金属化合物[A]または架橋メタロセン化合物[B]と反応してイオン対を形成する化合物(以下、「[C3]イオン化イオン性化合物」という)としては、特開平1−501950号公報、特開平1−502036号公報、特開平3−179005号公報、特開平3−179006号公報、特開平3−207703号公報、特開平3−207704号公報、米国特許第5321106号明細書などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物などを挙げることができる。さらに、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も挙げることができる。
ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ノナボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕デカボレートなどのアニオンの塩;
トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ドデカハイドライドドデカボレート)コバルト酸塩(III)などの金属ボランアニオンの塩などが挙げられる。
本発明では、オレフィン系樹脂(β)の製造において、前記工程(A)および前記工程(B)に加え、必要に応じて、前記工程(B)で生成する重合体を回収する工程(C)を実施してもよい。本工程は、前記工程(A)および前記工程(B)において用いられる有機溶剤を分離してポリマーを取り出し、製品形態に変換する工程であり、溶媒濃縮、押し出し脱気、ペレタイズ等の既存のポリオレフィン樹脂を製造する工程であれば特段制限はない。
本発明に係る成形体は、本発明に係るプロピレン系樹脂組成物の成形体である。本発明に係るプロピレン系樹脂組成物は、剛性を保持したまま耐衝撃性の向上を図ることができ、剛性と耐衝撃性のバランスに優れることから、射出成形、押出成形、インフレーション成形、ブロー成形、押出ブロー成形、射出ブロー成形、プレス成形、真空成形、カレンダー成形、発泡成形などの公知の成形方法により、各種成形体に成形することができる。本発明に係る成形体は、自動車部品、食品用途や医療用途などの容器、食品用途や電子材料用途の包材など公知の多様な用途に適用することができる。また、該成形体は、フィルム、シート、テープ、その他の用途にも適用できる。
オレフィン系樹脂(β)の融点(Tm)および融解熱量ΔHは、以下の条件でDSC測定を行い求めた。示差走査熱量計(商品名:RDC220、SII社)を用いて、約10mgの試料を窒素雰囲気下、30℃から昇温速度50℃/分で200℃まで昇温し、その温度で10分間保持した。さらに降温速度10℃/分で30℃まで冷却し、その温度で5分間保持した後、昇温速度10℃/分で200℃まで昇温した。この2度目の昇温の際に観測される吸熱ピークを融解ピークとし、その融解ピークが現れる温度を融点(Tm)として求めた。また、融解熱量ΔHは、前記融解ピークの面積を算出して求めた。なお、融解ピークが多峰性の場合は、全体の融解ピークの面積を算出して求めた。
ガラス転移温度(Tg)の測定は、以下の条件でDSC測定を行い求めた。示差走査熱量計(商品名:RDC220、SII社)を用いて、約10mgの試料を窒素雰囲気下、30℃から昇温速度50℃/分で200℃まで昇温し、その温度で10分間保持した。さらに降温速度10℃/分で−100℃まで冷却し、その温度で5分間保持した後、昇温速度10℃/分で200℃まで昇温した。ガラス転移温度(Tg)は、2度目の昇温の際に、比熱の変化によりDSC曲線が屈曲し、ベースラインが平行移動する形で感知される。この屈曲より低温のベースラインの接線と、屈曲した部分で傾きが最大となる点の接線との交点の温度をガラス転移温度(Tg)とした。
試料を熱プレス(180℃、加熱5分−冷却1分)により厚み0.4mmのシート状にし、細かく裁断した。それを約100mg秤量し、325メッシュのスクリーンに包んで、密閉容器中にて30mLのp−キシレンに、140℃で3時間浸漬した。次に、そのスクリーンを取り出し、80℃にて2時間以上、恒量になるまで乾燥した。熱キシレン不溶解量(質量%)を、次式により算出した。
W1:試験前のスクリーンおよびサンプルの質量、W2:スクリーンの質量、W3:試験後のスクリーンおよびサンプルの質量。
工程(B)において用いられる末端不飽和ポリプロピレンの質量と、得られたオレフィン系樹脂(β)の質量の比率から、割合Pを算出した。
オルトジクロロベンゼンを溶媒としたクロス分別クロマトグラフ(CFC)により測定される微分溶出曲線のピーク値が65℃未満である成分のオレフィン系樹脂(β)に対する割合E、および50℃以下のオルトジクロロベンゼン可溶成分の割合(質量%)の算出方法は、以下のとおりである。
検出器(内蔵):赤外分光光度計 IR4(Polymer ChAR)
検出波長:3.42μm(2,920cm−1);固定
試料濃度:120mg/30mL、注入量:0.5mL
降温時間:1.0℃/分
溶出区分:4.0℃間隔(−20℃〜140℃)
GPCカラム:Shodex HT−806M×3本(商品名、昭和電工社製)
GPCカラム温度:140℃
GPCカラム較正:単分散ポリスチレン(東ソー社製)
分子量較正法:汎用較正法(ポリスチレン換算)
移動相:o−ジクロロベンゼン(BHT添加)
流量:1.0mL/分。
弾性率(引張弾性率)は、ASTM D638に準拠して測定した。
極限粘度[η]は135℃のデカリン中で測定した。具体的には、約20mgの樹脂をデカリン25mLに溶解させた後、ウベローデ粘度計を用い、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリンを5mL加えて希釈した後、前記と同様にして比粘度ηspを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を、極限粘度[η](単位:dl/g)として求めた(下記式参照)。
ポリマーのエチレンおよびα−オレフィンの組成比分析、並びに末端不飽和ポリプロピレンの立体規則性の確認を目的として、次の条件で13C−NMR測定を実施した。
測定核:13C(125MHz)
測定モード:シングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング
パルス幅:45°(5.00μ秒)
ポイント数:64k
測定範囲:250ppm(−55〜195ppm)
繰り返し時間:5.5秒
積算回数:512回
測定溶媒:オルトジクロロベンゼン/ベンゼン−d6(4/1 v/v)
試料濃度:ca.60mg/0.6mL
測定温度:120℃
ウインドウ関数:exponential(BF:1.0Hz)
ケミカルシフト基準:ベンゼン−d6(128.0ppm)。
末端不飽和ポリプロピレンの末端構造の分析のため、次の条件で1H−NMR測定を実施した。
測定核:13H(400MHz)
測定モード:シングルパルス
パルス幅:45°(5.25μ秒)
ポイント数:32k
測定範囲:20ppm(−4〜16ppm)
繰り返し時間:5.5秒
積算回数:64回
測定溶媒:1,1,2,2−テトラクロロエタン−d2
試料濃度:ca.60mg/0.6mL
測定温度:120℃
ウインドウ関数:exponential(BF:0.12Hz)
ケミカルシフト基準:1,1,2,2−テトラクロロエタン(5.91ppm)。
ポリマーの分子量分析のために、次の条件でGPC分析を実施した。
カラム:TSKgel GMH6−HTx2 TSKgel GMH6−HTLx2(商品名、いずれも東ソー社製、内径7.5mm×長さ30cm)
カラム温度:140℃
移動相:オルトジクロロベンゼン(0.025%ジブチルヒドロキシトルエン含有)
検出器:示差屈折計
流量:1.0mL/分
試料濃度:0.15%(w/v)
注入量:0.5mL
サンプリング時間間隔:1秒
カラム校正:単分散ポリスチレン(東ソー社製)。
メルトフローレートは、ASTM D1238Eに準拠して、2.16kg荷重で測定した。測定温度は230℃とした。
重合体の立体規則性の指標の1つであり、そのミクロタクティシティーを調べたペンタド分率(mmmm(%))は、プロピレン系樹脂(ω)において、Macromolecules,8,687(1975)に基づいて帰属した13C−NMRスペクトルのピーク強度比より算出した。13C−NMRスペクトルは、装置としてEX−400(商品名、日本電子製)を用い、TMSを基準とし、温度130℃、o−ジクロロベンゼン溶媒を用いて測定した。アイソタクチックペンタド分率は、末端不飽和ポリプロピレンM−2についても測定した。
サンプル20〜30mgを1,2,4−トリクロロベンゼン/重ベンゼン(質量比:2/1)溶液0.6mLに溶解した後、炭素核磁気共鳴分析(13C−NMR)を行った。プロピレン、エチレンの定量はダイアッド連鎖分布より求めた。プロピレン−エチレン共重合体の場合、PP=Sαα、EP=Sαγ+Sαβ、EE=1/2(Sβδ+Sδδ)+1/4Sγδを用い、以下の計算式により求めた。
メタロセン触媒プロピレン単独重合体(ω1)の融点(Tm)は、Diamond DSC(商品名、パーキンエルマー社製)を用いて、以下のようにして測定した。サンプルを230℃で融解させてシート状にした後、約5mgの当該シート状サンプル試料を、B014−3021/B700−1014サンプルパン(商品名、パーキンエルマー社製)に充填した。サンプルを、窒素雰囲気下、230℃まで昇温して10分間保持した後、10℃/分で30℃まで冷却した。このときに観測された結晶化に由来するピークのピーク頂点から、結晶化温度(Tc)を算出した。続いて、サンプルを、窒素雰囲気下、30℃で1分間保持した後、10℃/分で230℃まで昇温させた。このときに観測された結晶溶融ピークのピーク頂点から、融点(Tm)を算出した。結晶融解ピークが複数観測された場合、最も高温側のピークをα相の融解によるピークとし、それ以外の低温側のピークをβ相の融解によるピークとした。
曲げ弾性率は、JIS K7171に従って、下記の条件で測定した。
曲げ速度:2mm/分
曲げスパン:64mm。
シャルピー衝撃試験を、JIS K7111に従って下記の条件で行い、シャルピー衝撃強度(kJ/m2)を測定した。
試験片:10mm(幅)×80mm(長さ)×4mm(厚さ)
ノッチは機械加工である。
熱変形温度は、JIS K7191−1に準拠して測定した。すなわち、試験片の両端を加熱浴槽中で支え、下で中央の荷重棒によって試験片に所定の曲げ応力(0.45MPaの一定荷重)を加えつつ、加熱媒体の温度を2℃/分の速度で上昇させ、試験片のたわみが所定の量に達したときの加熱媒体の温度をもって、熱変形温度とした。
トルエンは、GlassContour社製の有機溶媒精製装置を用いて精製したものを用いた。アルミノキサンのトルエン溶液は、日本アルキルアルミ社製の20質量%メチルアルミノキサン/トルエン溶液を用いた。トリイソブチルアルミニウムは、東ソー・ファインケム社製のものをトルエンで希釈(1.0mol/L)して用いた。その他の試薬については、特に断りのない限り、市販品(高純度グレード)をそのまま使用した。
工程(A):末端不飽和ポリプロピレン(M−2)の製造
充分に窒素置換した内容積1Lのステンレス製オートクレーブに、窒素気流下、トルエン500mLおよびメチルアルミノキサン(PMAOとも記す)のトルエン溶液(1.5mol/L)0.67mL(1.0mmol)を入れた。その後、オートクレーブを閉鎖し、85℃に昇温した。次に、600rpmで重合器内部を撹拌しながらプロピレン分圧を0.3MPaに昇圧し、引き続き85℃を維持した。そこにジメチルシリルビス(2−メチル−4−フィニルインデニル)ジルコニウムジクロリドのトルエン溶液(0.0010mol/L)を1.0mL(0.001mmol)圧入し、重合を開始した。プロピレンガスを連続的に供給しながら圧力を保ち、85℃で20分間重合を行った後、5mLのメタノールを圧入することにより重合を停止した。得られた重合反応液を、少量の塩酸を含む1.5リットルのメタノールに加え、重合体を析出させた。析出物をメタノールで洗浄後、80℃にて10時間減圧乾燥し、末端不飽和ポリプロピレン(M−2)14.9gを得た。得られた末端不飽和ポリプロピレン(M−2)の分析結果は、以下の通りであった。
末端ビニル基(個/1000C):0.27
mmmm(%):94
重量平均分子量:55300。
充分に窒素置換した内容積1Lのガラス製反応器に、前記末端不飽和ポリプロピレン(M−2)10.0gとキシレン500mLを入れた後、97℃に昇温して末端不飽和ポリプロピレン(M−2)を溶解させた。そこに、600rpmで重合器内部を撹拌しながら、エチレンおよび1−ブテンを、それぞれ120L/時間および15L/時間で連続的に供給し、液相および気相を飽和させた。引き続きエチレンおよび1−ブテンを連続的に供給した状態で、トリイソブチルアルミニウム(iBu3Alとも記す)のデカン溶液(1.0mol/L)を1.0mL(1.00mmol)、触媒として下記式で示される化合物のトルエン溶液(0.0020mol/L)を5.0mL(0.01mmol)、ついでトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(Ph3CB(C6F5)4とも記す)のトルエン溶液(4.0mmol/L)を6.25mL(0.025mmol)加え、常圧下、97℃で40分間重合を行った。重合の停止は、少量のイソブタノールを添加することにより行った。得られた重合反応液を、少量の塩酸を含む1.5Lのメタノール中に加え、重合体を析出させた。析出物をメタノールで洗浄した後、80℃にて10時間減圧乾燥し、31.4gのオレフィン系樹脂(β−3)を得た。なお、触媒として使用した下記式で示される化合物は、公知の方法によって合成した。得られたオレフィン系樹脂(β−3)の分析結果は、以下のとおりである。
割合E(質量%):39.4
a値:1.9
120℃以上の融解ピークTm(℃):146.5
融解熱量ΔH(J/g):30.4
ガラス転移温度Tg(℃):−67.9
熱キシレン不溶解量(質量%):1.5
極限粘度[η](dl/g):2.2
エチレン由来の単位の割合(mol%):58.8
50℃以下のo−ジクロロベンゼン可溶成分量(質量%):38.2
弾性率(MPa):29
側鎖を構成するプロピレン重合体の重量平均分子量:55300
主鎖を構成するエチレン・1−ブテン共重合体の重量平均分子量:140000。
(1)遷移金属化合物の合成
国際公開第2014/050816号の[実施例5A]記載の方法に準拠して、遷移金属化合物((8−オクタメチルフルオレン−12’−イル−(2−tert−ブチル−8−メチル−3,3b,4,5,6,7,7a,8−オクタヒドロシクロペンタ[a]インデン))ジルコニウムジクロライド)を調製した。
充分に窒素置換した内容積110L、攪拌機付きの反応槽に、室温で、脱水トルエン42.9Lと、窒素気流下、180℃で6時間乾燥したシリカゲル(商品名:H122、AGCエスアイテック株式会社製)638gとを添加した。その後、撹拌しながら内温を47℃まで昇温してトリイソブチルアルミニウム63gを加え、さらに内温を50℃まで昇温し、メチルアルミノキサンのトルエン溶液(アルベマール社製、18.4質量%)2.13Lを加え、50℃で30分間撹拌した。次に、内温95℃まで昇温して4時間撹拌した。内温を60℃まで降温し、撹拌を停止して92分間静置して固体成分を沈降させた後、上澄み液の除去及び脱水トルエンによる洗浄を2回行うことにより、シリカ担持メチルアルミノキサンを得た。
充分に窒素置換した内容積110L、攪拌機付きの反応槽に、前記(2)で得られたシリカ担持メチルアルミノキサン985gを装入した。そこへ、室温にて脱水トルエン50Lを加えて撹拌しながら35℃まで昇温した。その後、界面活性剤(商品名:アデカプルロニックL−71、ADEKA社製)20.0gを脱水n−ヘプタン1.0Lで希釈して反応槽に加え、45分間撹拌し担持を行った。撹拌を停止し156分間静置して固体成分を沈降させた後、上澄み液の除去及び脱水n−ヘプタンによる洗浄を2回行った。
充分に窒素置換した内容積270L、攪拌機付きの反応槽に、予め脱水n−ヘプタン76.6Lを装入し、室温にてトリイソブチルアルミニウム150gを脱水n−ヘプタンで希釈し反応槽に加えた後、撹拌しながら内温を35℃まで昇温した。前記(3)で得られた担持触媒947gを移液した後、反応槽内を脱圧し、内温を35℃に保ちながらエチレンを210g/時間で60分間、420g/時間で60分間、550g/時間で240分間、合計で2830g装入し、360分間撹拌しながら反応させた。重合終了後、撹拌を停止し84分間静置して固体成分を沈降させ、上澄み液の除去及び脱水n−ヘプタンによる洗浄を2回行った。得られた前重合触媒を脱水n−ヘプタンに再懸濁し、固体触媒成分濃度が21.9g/Lとなるように脱水n−ヘプタンにより調整した。得られた前重合触媒は、固体触媒成分1g当たりポリエチレンを3g含んでいた。
内容積70Lの攪拌機付きベッセル型重合器に、プロピレン116.8kg/時間、水素を気相部の水素濃度が1.4mol%になるように供給した。前記(4)で得られた前重合触媒スラリーを固体触媒成分として2.7g/時間、トリエチルアルミニウム8.7mL/時間を連続的に供給した。重合温度70℃、圧力は2.97MPa/Gで行った。
融点(Tm):162℃
GPCで求めた重量平均分子量:160000
GPCで求めた分子量分布(Mw/Mn):2.3。
(1)固体状チタン触媒成分(固体触媒成分)の調製
攪拌機付きの反応槽に、無水塩化マグネシウム95.2g、デカン442mLおよび2−エチルヘキシルアルコール390.6gを装入し、130℃で2時間加熱反応を行い均一溶液とした後、この溶液中に無水フタル酸21.3gを添加し、さらに130℃にて1時間攪拌混合を行い、無水フタル酸を溶解させた。
前記(1)で得られた固体状チタン触媒成分100g、トリエチルアルミニウム39.3mL、ヘプタン100Lを、内容量200Lの攪拌機付きオートクレーブに入れ、内温15〜20℃に保ち、プロピレン600gを加えて、60分間攪拌しながら反応させ、触媒スラリーを得た。
内容量58Lのジャケット付循環式管状重合器にプロピレンを43kg/時間、水素を177NL/時間、前記(2)で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として0.58g/時間、トリエチルアルミニウムを3.1mL/時間、ジシクロペンチルジメトキシシランを3.3mL/時間で連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状重合器の温度は70℃であり、圧力は3.53MPa/Gであった。
アイソタクチックペンタッド分率(mmmm):97.8%。
オレフィン系樹脂(β)として調製例1で製造されたオレフィン系樹脂(β−3)23質量部、プロピレン系樹脂(ω)として、製造例1で製造されたメタロセン触媒プロピレン単独重合体(ω1−h)34質量部、および製造例2で製造されたチタン触媒プロピレン単独重合体(ω2−h)23質量部、タルク(商品名:JM−209、浅田製粉(株)製)20質量部、耐熱安定剤IRGANOX1010(商品名、チバガイギー(株)製)0.1質量部、耐熱安定剤IRGAFOS168(商品名、チバガイギー(株)製)0.1質量部、ステアリン酸カルシウム0.1質量部をタンブラーにて混合後、二軸押出機にて下記の条件で溶融混練してペレット状のプロピレン系樹脂組成物を調製した。該ペレット状のプロピレン系樹脂組成物を用いて、射出成形機にて下記の条件で試験片を作製した。各樹脂組成物を用いて製造した射出成形体(試験片)の物性を表1に示す。
<溶融混練条件>
同方向二軸混練機:KZW−15(商品名、(株)テクノベル社製)
混練温度:190℃
スクリュー回転数:500rpm
フィーダー回転数:40rpm
<JIS小型試験片/射出成形条件>
射出成形機:EC40(商品名、東芝機械(株)製)
シリンダー温度:190℃
金型温度:40℃
射出時間−保圧時間:13秒(一次充填時間:1秒)
冷却時間:15秒。
実施例1において、メタロセン触媒プロピレン単独重合体(ω1−h)の代わりにチタン触媒プロピレン単独重合体(ω2−h)を用いた、すなわち、プロピレン系樹脂(ω)全量をチタン触媒プロピレン重合体(ω2−h)とした以外は、実施例1と同様にプロピレン系樹脂組成物を調製し、試験片を作製した。得られた射出成形体(試験片)の物性を表1に示す。
実施例1において、調製例1で製造されたオレフィン系樹脂(β−3)の代わりに、エチレン・1−ブテン共重合体(商品名:タフマーA0550S、三井化学製、エチレン含量=80モル%、MFR=1g/10分)を用いた以外は、実施例1と同様にプロピレン系樹脂組成物を調製し、試験片を作製した。得られた射出成形体(試験片)の物性を表1に示す。
オレフィン系樹脂(β)として本発明で定義された成分(β−3)を用いた場合、プロピレン系樹脂(ω)としてメタロセン触媒プロピレン単独重合体(ω1)を全く含まない比較例1のプロピレン系樹脂組成物に比べ、成分(ω1)を部分含有する実施例1のプロピレン系樹脂組成物は、剛性(FM)をほぼ維持したまま常温耐衝撃性(シャルピー衝撃強度(23℃))を顕著に向上できることがわかった。一方で、メタロセン触媒プロピレン単独重合体(ω1)を含む場合であっても、本願発明で定義されたオレフィン系樹脂(β)を含まない比較例2のプロピレン系樹脂組成物は、常温耐衝撃性(シャルピー衝撃強度(23℃))が、本発明実施例1のプロピレン系樹脂組成物と比べて大きく劣る結果であった。
Claims (6)
- 示差走査熱量分析(DSC)によって測定される融点(Tm)が158℃以上であるプロピレン単独重合体を含有するプロピレン系樹脂(ω)50〜98質量%と、前記プロピレン系樹脂(ω)以外の下記要件(I)〜(VI)を満たすオレフィン系樹脂(β)2〜50質量%(ここで、プロピレン系樹脂(ω)とオレフィン系樹脂(β)の合計は100質量%である)とを含有するプロピレン系樹脂組成物の製造方法であって、前記プロピレン単独重合体を、メタロセン触媒を用いて製造し、前記オレフィン系樹脂(β)を下記工程(A)および工程(B)を含む方法により製造することを特徴とするプロピレン系樹脂組成物の製造方法。
(I)前記オレフィン系樹脂(β)が、エチレン・α−オレフィン共重合体からなる主鎖およびプロピレン重合体からなる側鎖を有するグラフト型オレフィン系重合体[R1]を含む。
(II)前記オレフィン系樹脂(β)に含まれるプロピレン重合体の割合をP質量%とするとき、Pが5〜60の範囲内である。
(III)オルトジクロロベンゼンを溶媒として用いるクロス分別クロマトグラフ(CFC)により測定される微分溶出曲線のピーク値が65℃未満である成分の、前記オレフィン系樹脂(β)に対する割合をE質量%とするとき、下記式(Eq−1)で表される値aが1.4以上である。
a=(100−E)/P (Eq−1)
(IV)示差走査熱量分析(DSC)によって測定される融点(Tm)が120〜165℃の範囲内であり、ガラス転移温度(Tg)が−80〜−30℃の範囲内である。
(V)熱キシレン不溶解量が3質量%以下である。
(VI)135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5〜5.0dl/gの範囲内である。
(A)ジメチルシリルビスインデニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物[A]を含むオレフィン重合用触媒の存在下でプロピレンを重合し、末端不飽和ポリプロピレンを製造する工程、
(B)下記式[B]で表される架橋メタロセン化合物を含むオレフィン重合用触媒の存在下で、前記工程(A)で製造される前記末端不飽和ポリプロピレンと、エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のα−オレフィンとを共重合する工程。
R 6 およびR 11 は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基からなる群から選択される同一の原子または同一の基である。
R 7 およびR 10 は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基からなる群から選択される同一の原子または同一の基である。
R 6 およびR 7 は互いに結合して環を形成していてもよく、R 10 およびR 11 は互いに結合して環を形成していてもよい。ただし、R 6 、R 7 、R 10 およびR 11 が全て水素原子であることはない。
R 13 およびR 14 はそれぞれ独立してアリール基を示す。
Y 1 は炭素原子またはケイ素原子を示す。
M 1 はジルコニウム原子またはハフニウム原子を示す。
Qはハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、炭素数4〜10の中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子を示し、jは1〜4の整数を示し、jが2以上の整数である場合、複数のQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。) - 前記オレフィン系樹脂(β)に含まれるエチレン由来の単位の割合が、前記オレフィン系樹脂(β)に含まれる全モノマー由来の単位に対して20〜80mol%の範囲内である、請求項1に記載のプロピレン系樹脂組成物の製造方法。
- 前記グラフト型オレフィン系重合体[R1]の側鎖を構成する前記プロピレン重合体のアイソタクチックペンタッド分率(mmmm)が93%以上である、請求項1または2に記載のプロピレン系樹脂組成物の製造方法。
- 前記グラフト型オレフィン系重合体[R1]の側鎖を構成する前記プロピレン重合体の重量平均分子量が5000〜100000の範囲内である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のプロピレン系樹脂組成物の製造方法。
- 前記グラフト型オレフィン系重合体[R1]の主鎖を構成する前記エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量が50000〜200000の範囲内である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプロピレン系樹脂組成物の製造方法。
- 前記工程(B)が、90℃以上で共重合を行う溶液重合工程である請求項1〜5のいずれか一項に記載のプロピレン系樹脂組成物の製造方法。
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