JP6438833B2 - シート、シートを用いた研磨パッド、及びシートの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、半導体ウェハ等の基材や半導体デバイス、ハードディスクや光学用のガラス基板、レンズ、各種金属等の化学機械研磨法(CMP)による研磨に用いられる研磨パッドの研磨層として好ましく用いられるシート、シートを用いた研磨パッド、及びシートの製造方法に関する。
従来、半導体やシリコンウェハなどの基板材料や、ハードディスク,液晶ディスプレイ,レンズの材料であるガラスを鏡面加工したり、半導体デバイスの製造工程における絶縁膜や金属膜による凹凸を平坦化加工したりするために、水性スラリー等の研磨スラリーを用いて被研磨面を研磨パッドで研磨する化学機械研磨法(CMP)が用いられている。CMPにおいては、高精度化や低コスト化が求められており、従来以上の平坦性や平滑性を確保しつつ、表面のスクラッチの低減や、研磨速度およびその安定性の向上、更には、長時間使用可能であることなどの一層の高性能化が求められている。とくに、半導体デバイスの製造においては、近年の高集積化及び多層配線化の進展に伴い、少ない研磨量や短い研磨時間で被研磨材の表面(以下、被研磨面とも称する)を平坦化する性能である平坦化効率や、研磨時に被研磨面に傷をつけにくい性能である低スクラッチ性の向上が強く求められている。
研磨パッドとしては、研磨層として、不織布にポリウレタン樹脂を含浸させた不織布タイプのシートを用いた研磨パッドや、2液硬化型ポリウレタンを用いて注型発泡硬化後、適宜研削またはスライスすることにより製造される発泡ポリウレタンタイプのシートを用いた研磨パッドが知られている。一般に、不織布タイプの研磨パッドは低弾性で軟質であり、発泡ポリウレタンタイプの研磨パッドは高弾性で高剛性である。
従来の不織布タイプのシートを用いた研磨パッドは、発泡ポリウレタンタイプのシートを用いた研磨パッドに比べて、被研磨面に接触する面(以下、研磨面とも称する)が柔軟であるために被研磨面の低スクラッチ性には優れるが、その反面、低弾性であるために平坦化効率が低かった。また、不織布に含浸したポリウレタン樹脂が厚み方向に不均一に存在しやすいため、パッド磨耗に伴い研磨特性が変化する場合もあった。
一方、発泡ポリウレタンタイプのシートを用いた研磨パッドは、高剛性であるために平坦化効率は高いが、その反面、研磨時に被研磨面の凸部に対して局所的に荷重が掛かりやすいために低スクラッチ性に劣っていた。また、発泡ポリウレタンは製造時の反応及び発泡が不均一であるために発泡構造がばらつきやすく、発泡構造のばらつきは、研磨速度や平坦化効率等の研磨特性にばらつきを発生させる原因になるという問題もあった。さらに発泡ポリウレタン自身の硬度を向上させる技術的な限界により、平坦化効率のさらなる向上は難しかった。
不織布タイプの研磨パッド及び発泡ポリウレタンタイプの研磨パッドのそれぞれの問題を解決した、優れた平坦化効率と低スクラッチ性とを兼ね備えた研磨パッドが求められている。しかしながら、発泡ポリウレタンタイプの研磨パッドや従来の不織布タイプの研磨パッドでは、この要求を満たすことが難しかった。発泡ポリウレタンタイプの研磨パッドの平坦化効率をさらに向上させるためには、より高い硬度が必要である。しかしながら、研磨パッドの硬度を高くすると、一般に低スクラッチ性が低下する。従って、発泡ポリウレタンタイプの研磨パッドにおいては、高い平坦化効率と優れた低スクラッチ性とはトレードオフの関係になるために、優れた平坦化効率と低スクラッチ性とを充分に兼ね備えた研磨パッドを得ることは困難であった。
このような問題を解決する技術として、下記特許文献1及び下記特許文献2は、非水溶性の熱可塑性重合体中に水溶性物質を分散させたシートを用いた研磨パッドを開示し、下記特許文献3は、架橋重合体を含有する非水溶性マトリックス材中に水溶性粒子を分散させたシートを用いた研磨パッドを開示している。しかしながら、これらの研磨パッドは、高い平坦化効率と優れた低スクラッチ性との両立については充分なものではなかった。また、これらの研磨パッドは水溶性物質を含み、研磨中にこれらが溶出して研磨特性に悪影響を与えるおそれもあった。さらに、マトリックス中に水溶性物質が不均一に分散しやすいために、研磨特性がばらつきやすいと思われる。
ところで、研磨パッドに関する技術ではないが、下記特許文献4は、湿熱接着性繊維を含み、かつ不織繊維構造を有する成形体であって、不織繊維を構成する繊維が湿熱接着性繊維の融着により繊維接着率85%以下の割合で接着され、0.05〜0.7g/cm3の見掛け密度を有する、軽量で高通気性の成形体を開示する。
特開2000−34416号公報 特開2001−47355号公報 特開2001−334455号公報 WO2007/116676号パンフレット
本発明は、特に半導体基板やガラス、あるいはそれらの上などに形成された絶縁膜や金属膜などを研磨する際に、高い平坦化効率と優れた低スクラッチ性とを兼ね備え、且つ、長時間使用可能な研磨パッドを実現するシートを提供することを目的とする。
上述のように、高い平坦化効率を有する研磨パッドには、研磨層を形成するシート全体として高硬度が要求される。しかしこの場合には、被研磨面の凸部に対して局所的に荷重が掛かりやすくなるために低スクラッチ性が低下する。本発明者らは、上記目的を達成すべく検討を重ねた結果、優れた低スクラッチ性を実現するためには、研磨層全体として硬度を低下させる必要はなく、研磨面の表面近傍の弾性率を局所的に低下させればよいと考えた。すなわち、研磨層全体としては高硬度を維持させて高い平坦化効率を維持させる一方、研磨面のみの弾性率を低下させることにより優れた低スクラッチ性を確保できるのではないかと考えた。さらに、均一な空孔構造の形成により安定した研磨特性が得られると考え、鋭意検討した結果、本発明に想到した。
すなわち本発明の一局面は、湿熱処理により接着性を示す湿熱接着性樹脂(a)を含む複数の湿熱接着性繊維を互いに固着させて形成され、湿熱接着性樹脂(a)が吸水時の結晶融解温度が85〜165℃であり、且つ50℃の水に72時間浸漬後の吸水率が5質量%以下であるポリウレタン樹脂を含むシートある。このようなシートは、湿熱接着性繊維が互いに固着されて形成されている。このようなシートを用いた研磨層は、繊維間の湿熱接着による強固な接着によって高い強度や耐摩耗性を有しながら、水性スラリーと接触した際に繊維表面の湿熱接着性樹脂が軟化するために被研磨面に接触する研磨面付近は柔軟になり、被研磨面のスクラッチの発生を抑制することができる。その結果、高い平坦化効率と優れた低スクラッチ性とを両立させることができる。
また、ポリウレタン樹脂は、乾燥時の結晶融解温度が130〜230℃であることが、高い研磨速度が得られ、耐摩耗性にも優れることから好ましい。そして、ポリウレタン樹脂が、乾燥時の結晶融解温度(T1)と吸水時の結晶融解温度(T2)の差(T1−T2)が15〜100℃であることが、より良好な湿熱接着性を示すとともに、研磨時に吸水しても高い強度や耐摩耗性を維持する点から好ましい。
また、ポリウレタン樹脂が、50℃の水に72時間浸漬後のA硬度が90以上であることが、高い平坦化効率と研磨速度が得られる点から好ましい。
さらに、ポリウレタン樹脂の窒素原子含有率が、4〜8質量%であることが、湿熱接着性と吸水時の強度を両立させやすく、研磨時に吸水しても高い強度や耐摩耗性を維持する点から好ましい。
そして、湿熱接着性繊維は、湿熱接着性樹脂(a)と湿熱処理により接着性を示さない非湿熱接着性樹脂(b)とを含む繊維であり、湿熱接着性樹脂(a)が非湿熱接着性樹脂(b)の繊維の周囲の少なくとも一部分に、該繊維の長手方向に連続するように被着されている。また、とくには、湿熱接着性繊維が、非湿熱接着性樹脂(b)からなる芯部と湿熱接着性樹脂(a)からなる鞘部とを備える芯鞘型複合繊維であることが、繊維同士の接着性が高く研磨時に磨耗しにくく、剛性や硬さを調整しやすくなる点からも好ましい。
また、湿熱接着性樹脂(a)と非湿熱接着性樹脂(b)との質量比(a/b)が15/85〜95/5であることが、研磨層として用いた場合に耐久性や耐摩耗性、接着性等のバランスに優れる点から好ましい。
また、湿熱接着性繊維の平均繊度が0.1〜10dtexであることが、研磨速度や研磨均一性に優れる点から好ましい。
また、見掛け密度が0.3〜1.2g/cmであることが、研磨層として用いた場合に平坦化効率と研磨速度の両立の点から好ましい。
また、上述した何れかのシートを研磨層として含む研磨パッドは、高い平坦化効率と優れた低スクラッチ性とを兼ね備える。また、研磨層の研磨面と反対側にクッション層が積層されている場合には、研磨均一性を向上させることができる点から好ましい。
また本発明の他の一局面は、吸水時の結晶融解温度が85〜165℃であり、且つ50℃の水に72時間浸漬後の吸水率が5質量%以下であるポリウレタン樹脂を含む、湿熱処理により接着性を示す湿熱接着性樹脂(a)と湿熱処理により接着性を示さない非湿熱接着性樹脂(b)とを含む湿熱接着性繊維を含有する繊維ウェブを製造する工程と、繊維ウェブを湿熱処理することにより繊維ウェブを形成する繊維を接着させて不織繊維基材を形成する工程と、不織繊維基材を、加熱加圧処理する工程とを含み、湿熱接着性繊維は、湿熱接着性樹脂(a)が非湿熱接着性樹脂(b)の繊維の周囲の少なくとも一部分に、該繊維の長手方向に連続するように被着されている、シートを製造する方法である。このような製造方法によれば、研磨パッドの研磨層として好ましく用いられるシートを容易に得ることができる。
本発明によれば、高い平坦化効率と優れた低スクラッチ性とを兼ね備え、且つ、パッド磨耗が少なく長時間使用可能な研磨パッドの研磨層に好ましく用いられるシートが得られる。
本発明に係るシートの一実施形態について詳しく説明する。
本実施形態のシートは、湿熱処理により接着性を示す湿熱接着性樹脂(a)を含む複数の湿熱接着性繊維を互いに固着させて形成され、湿熱接着性樹脂(a)が吸水時の結晶融解温度が85〜165℃であり、且つ50℃の水に72時間浸漬後の吸水率が5質量%以下であるポリウレタン樹脂を含む。
湿熱接着性繊維は湿熱処理により接着性を示す湿熱接着性樹脂を含む繊維であって、例えば、高温水蒸気や熱水に接触させる等の湿熱処理により接着性を帯び、湿熱接着性繊維同士、または、湿熱接着性繊維と湿熱処理により接着性を示さない非湿熱接着性繊維とを接着する繊維である。湿熱処理により湿熱接着性樹脂は軟化して流動したり変形したりするために繊維間を強固に接着することができる。そして、このようなシートを研磨パッドの研磨層として用いた場合、研磨面に湿熱接着性樹脂が存在することにより、水性スラリーの水分を吸水して研磨面付近のみが軟化することによりスクラッチの発生が抑制される。
湿熱接着性繊維としては、単一の湿熱接着性樹脂のみからなる繊維であっても、異なる種類の湿熱接着性樹脂同士を組み合わせて複合化された複合繊維であっても、湿熱処理により接着性を示さない非湿熱接着性樹脂と湿熱接着性樹脂を組み合わせて複合化された複合繊維であってもよい。なお、湿熱処理の条件は特に限定されないが、例えば、70〜150℃、さらには90〜130℃、とくには100〜120℃程度の高温水蒸気や熱水に接触させるような条件が挙げられる。
湿熱接着性樹脂としては、吸水時の結晶融解温度が85〜165℃であり、且つ50℃の水に72時間浸漬後の吸水率が5質量%以下であるポリウレタン樹脂を含むことが必要である。このようなポリウレタン樹脂を湿熱接着性樹脂として用いることにより、繊維間の強固な接着によって高い強度や耐摩耗性を有しながら、水性スラリーと接触した際に繊維表面の湿熱接着性樹脂が軟化するために被研磨面に接触する研磨面付近は柔軟になり、被研磨面のスクラッチの発生を抑制することができる。その結果、高い平坦化効率と優れた低スクラッチ性とを両立させることができる。吸水時の結晶融解温度が85℃より低い場合には、研磨時に吸水した際に研磨パッドの強度や硬度が低下して十分な耐摩耗性や研磨速度が得られない。一方、吸水時の結晶融解温度が165℃より高い場合には、湿熱接着性が低下して繊維間の接着が不十分なため、研磨パッドの耐摩耗性が劣る。また、50℃の水に72時間浸漬後の吸水率が5質量を超える場合には、研磨時の吸水により膨潤して過度に軟化するため、研磨速度が低下する。吸水時の結晶融解温度としては、95〜163℃、さらには105〜160℃、とくには115〜158℃、ことには125〜155℃であることが好ましい。また、50℃の水に72時間浸漬後の吸水率は、1〜4.5質量%、さらには1.5〜4質量%、とくには1.8〜3.5質量%、ことには2〜3質量%であることが好ましい。
湿熱接着性を示す上述のポリウレタン樹脂は、乾燥時の結晶融解温度が130〜230℃であることが、高い研磨速度が得られ、耐摩耗性にも優れる上、紡糸もしやすいことから好ましい。乾燥時の結晶融解温度が130℃より低い場合は、強度が不足し研磨速度や耐摩耗性が低下しやすい。一方、乾燥時の結晶融解温度が230℃を超えると、紡糸が難しくなる傾向である。乾燥時の結晶融解温度は、135〜220℃、さらには140〜210℃、とくには145〜200℃、ことには150〜190℃であることがより好ましい。なお、本発明においてポリウレタン樹脂の結晶融解温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定したハードセグメント由来の結晶融解ピークが最大となる温度である。ピークが2つ以上存在する場合には、融解熱が0.5J/g以上のピークのうち最も低温側にあるピークが最大となる温度を融点とした。
また、湿熱接着性を示すポリウレタン樹脂が、乾燥時の結晶融解温度(T1)と吸水時の結晶融解温度(T2)の差(T1−T2)が15〜100℃であることが、良好な湿熱接着性を示しながら吸水により過度に軟化しないため、研磨時に吸水しても高い強度や耐摩耗性を維持する点から好ましい。結晶融解温度の差(T1−T2)が、17〜90℃、さらには20〜80℃、とくには22〜70℃、ことには25〜60℃であることがより好ましい。
さらに、湿熱接着性を示すポリウレタン樹脂が、50℃の水に72時間浸漬後のA硬度が90以上であることが、高い平坦化効率と研磨速度が得られる点から好ましい。50℃の水に72時間浸漬後のA硬度が93以上、さらには95以上、とくには97以上、ことには98以上であることがより好ましい。
そして、湿熱接着性を示すポリウレタン樹脂の窒素原子含有率が、4〜8質量%であることが、湿熱接着性と吸水時の強度を両立させやすいことから好ましい。窒素原子含有率とは、ポリウレタンの全質量に占める、窒素原子の質量%を示し、原料の配合比から算出することができるほか、元素分析計等によって測定することができる。湿熱接着性を示すポリウレタン樹脂の窒素原子含有率が4.5〜7.8質量%、さらには5〜7.5質量%、とくには5.5〜7.3質量%、ことには6〜7質量%であることがより好ましい。
本発明に用いられる湿熱接着性を示すポリウレタン樹脂は、主鎖骨格中にウレタン結合を有するものであり、限定されるものではないが、公知の有機ジイソシアネート、数平均分子量約400〜4000の高分子ジオールおよび数平均分子量60〜350の低分子ジオールを反応させることにより得ることができる。本発明のパラメータを満たし、適切な湿熱接着性を付与するための手法は特に限定されないが、例えばポリウレタン樹脂の原料成分の一部として、ポリエチレングリコールやテトラエチレングリコール、ヘキサエチレングリコールなどの繰り返し単位数が3以上のポリオキシエチレン骨格を有するジオールや、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコールなどの二つの水酸基の間の原子数が3または5である低分子ジオールを用いることなどが挙げられ、これらの化合物をポリウレタン樹脂原料の7〜30質量%、好ましくは9〜25質量%用いることがよい。
湿熱接着性樹脂(a)のうち、上述のポリウレタン樹脂を80〜100質量%、さらには90〜100質量%、とくには95〜100質量%、ことには100質量%含むことが好ましい。
上述のポリウレタン樹脂と併用できる湿熱接着性樹脂としては、例えば、加水分解によりビニルアルコール骨格を形成するビニルエステル基含有単量体20〜100モル%と不飽和二重結合を有するその他の単量体80〜0モル%との重合体を加水分解(ケン化)して得られる重合体;カルボキシ基,水酸基,エーテル基およびアミド基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する単量体20〜100質量%と不飽和二重結合を有するその他の単量体80〜0質量%とを重合して得られる樹脂;セルロースまたはその誘導体;ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンなどのポリオキシアルキレン構造を骨格中に有する樹脂;等が挙げられる。
なお、加水分解によりビニルアルコール骨格を形成するビニルエステル基含有単量体の具体例としては、例えば酢酸ビニル,プロピオン酸ビニル,酪酸ビニル,カプロン酸ビニル等が挙げられる。また、不飽和二重結合を有するその他の単量体の具体例としては、例えば(メタ)アクリル酸メチル,(メタ)アクリル酸エチル,(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル,(メタ)アクリルアミド,N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド,スチレン,メチルビニルエーテル,ビニルピロリドン,エチレン,プロピレン,ブタジエン等が挙げられる。また、カルボキシ基,水酸基,エーテル基およびアミド基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する単量体の具体例としては、例えば(メタ)アクリル酸,(無水)マレイン酸,イタコン酸,(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル,4−ヒドロキシスチレン,メチルビニルエーテル,エチルビニルエーテル,(メタ)アクリルアミド,N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドおよびビニルピロリドン等が挙げられる。また、セルロースの誘導体の具体例としては、例えば、メチルセルロースなどのアルキルセルロースエーテル,ヒドロキシメチルセルロースなどのヒドロキシアルキルセルロースエーテル,カルボキシメチルセルロースなどのカルボキシアルキルセルロースエーテルまたはそれらの塩等が挙げられる。また、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン等のポリオキシアルキレン構造を骨格中に有する樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどを共重合したポリエステル等が挙げられる。なお、例えば、(メタ)アクリル酸のような表記は、メタアクリル酸またはアクリル酸を意味する。従って、(メタ)アクリルアミドの表記はメタクリルアミドまたはアクリルアミドを意味する。
また、湿熱接着性繊維が湿熱接着性樹脂と非湿熱接着性樹脂との複合繊維であるために、得られるシートの強度や硬さを調整しやすく、また均一な空隙構造としやすくなる。非湿熱接着性樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート,ポリトリメチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン系樹脂;ポリアミド6,ポリアミド66,ポリアミド610,ポリアミド10,ポリアミド12,ポリアミド6−12,ポリアミド9T等のポリアミド系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂;塩化ビニル系樹脂;スチレン系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;湿熱接着性を示さないポリウレタン系樹脂;熱可塑性エラストマー等の非水溶性樹脂が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、ポリエステル系樹脂やポリアミド系樹脂およびポリウレタン系樹脂が、とくにはポリエチレンテレフタレート、またはポリブチレンテレフタレート、およびそれらの構成成分の一部をシクロヘキサンジメタノールやイソフタル酸などで置き換えた変性品が、融点が十分に高く、耐熱性や繊維形成性とのバランスに優れる点から特に好ましい。
湿熱接着性樹脂が複合繊維の一成分として用いられる場合、湿熱接着性樹脂は、非湿熱接着性樹脂からなる繊維の表面に、その長手方向に連続するように被着されている。また、複合繊維の横断面の相構造としては、例えば、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型または多層貼合型、放射状貼合型、ランダム複合型等が挙げられる。これらの中では、湿熱接着性樹脂が鞘部を形成し、非湿熱接着性樹脂または他の湿熱接着性樹脂繊維が芯部を形成し、湿熱接着性樹脂が繊維の表面を覆う芯鞘型構造であることが、湿熱接着性が高い点から好ましい。また、湿熱接着性繊維は、非湿熱接着性繊維の表面に湿熱接着性樹脂をコートして形成されるような繊維であってもよい。
湿熱接着性繊維が湿熱接着性樹脂と非湿熱接着性樹脂との複合繊維である場合、湿熱接着性樹脂と非湿熱接着性樹脂との複合割合は湿熱接着性を維持する限り特に限定されず、複合繊維の横断面構造等に応じて適宜調整される。具体的には、例えば、湿熱接着性樹脂/非湿熱接着性樹脂が、15/85〜95/5、さらには20/80〜90/10、とくには25/75〜85/15、ことには30/70〜80/20程度であることが好ましい。なお、湿熱接着性樹脂の割合が少なすぎる場合には、繊維の長手方向に連続して均一にその表面を覆いにくくなるため、また、接着性を示す湿熱接着性樹脂の量が少なくなるために湿熱接着性が低下する傾向がある。一方、湿熱接着性樹脂の割合が多すぎる場合には、非湿熱接着性樹脂との複合化による強度や耐久性の向上効果が充分に得られなくなる場合がある。
また、繊維を構成する湿熱接着性樹脂および非湿熱接着性樹脂は、本発明の効果を阻害しない範囲で樹脂以外の他の成分を含有していてもよい。このような他の成分としては、例えば、無機粒子、有機粒子、酸化防止剤、耐熱安定剤、加工助剤、可塑剤、結晶核剤、帯電防止剤、着色剤、滑剤、離型剤、導電剤などが挙げられる。
シートを形成するための繊維成分としては、湿熱処理により接着性を示さない非湿熱接着性繊維を、本発明の効果を損なわない範囲で、湿熱接着性繊維に組み合わせて用いてもよい。非湿熱接着性繊維を形成する樹脂の具体例としては、湿熱接着性樹脂と非湿熱接着性樹脂との複合繊維を構成する非湿熱接着性樹脂として上述した樹脂が挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
湿熱接着性繊維と非湿熱接着性繊維とを組み合わせて用いる場合、その質量比は特に限定されないが、得られるシートの硬度や剛性、表面平滑性、良好な研磨速度や段差解消性、耐磨耗性等のバランスから、湿熱接着性繊維と非湿熱接着性繊維との合計量に対する非湿熱接着性繊維の含有割合は40質量%以下、さらには30質量%以下、とくには20質量%以下、ことには10質量%以下であることが好ましい。
また、シート中の上述のポリウレタン樹脂の割合としては、15〜95質量%、さらには25〜85質量%、とくには35〜75質量%であることが好ましい。
シートの見掛け密度は、0.3〜1.2g/cm、であることが好ましい。見掛け密度が0.3g/cm未満の場合には、シートを研磨層として用いた場合に、研磨面の空隙に水性スラリーが吸収されて被研磨面に供給されにくくなるため研磨速度が低下しやすく、剛性も低くなるために平坦性も低下する傾向である。一方、見掛け密度が1.2g/cmを超える場合には、研磨層の研磨面に露出する空隙が少なくなることにより水性スラリーの保持性が低下するため研磨速度が低下しやすい。見掛け密度が0.35〜1.15g/cm、さらには0.4〜1.1g/cm、とくには0.45〜1.05g/cm、ことには0.5〜1.0g/cmであることがより好ましい。
また、シートの硬さは見掛け密度と強く相関し、一般に見掛け密度が高いほど硬くなり、見掛け密度が低いほど軟らかくなる。シートを研磨層として用いた場合に、被研磨面に比べて研磨層が硬すぎる場合にはスクラッチが発生しやすくなる傾向があり、一方、研磨層が軟らかすぎる場合には研磨速度や平坦性、段差解消性が低下する場合があるため、研磨対象に応じて調整することが好ましい。例えば、研磨対象がシリコンのように研磨中に比較的軟質である場合は、見掛け密度が0.3〜1.0g/cm、さらには0.4〜0.9g/cm、とくには0.5〜0.8g/cmであることが好ましい。また、研磨対象が酸化ケイ素や窒化ケイ素、タングステンのように研磨中に比較的硬質である場合は、見掛け密度が0.5〜1.2g/cm、さらには0.6〜1.1g/cm、とくには0.7〜1.0g/cmであることが好ましい。そして、研磨対象が銅のように硬さがこれらの中間である場合には、見掛け密度が0.4〜1.1g/cm、さらには0.5〜1.0g/cm、とくには0.6〜0.9g/cmであることが好ましい。
次に、本実施形態のシートの製造方法の一例を説明する。
はじめに、上述したような湿熱接着性繊維を含む繊維のウェブを製造する。ウェブの製造方法の具体例としては、例えば、スパンボンド法、メルトブロ一法などの直接法を用いて溶融紡糸された繊維をそのまま積層するようにしてウェブ化する方法や、ステープル繊維をカーディングしてウェブ化するカード法やエアレイ法等の乾式法等、特に限定されない。これらの中では、特にステープル繊維を用いたカード法が好ましく用いられる。ステープル繊維を用いて得られたウェブとしては、例えば、ランダムウェブ、セミランダムウェブ、パラレルウェブ、クロスラップウェブなどが挙げられる。
繊維ウェブを形成する繊維の平均繊度は特に限定されないが、0.1〜10dtex、さらには0.5〜7dtex、とくには1〜5dtexであることが、シートの生産性、及びシートを研磨層として用いた場合に研磨速度や研磨均一性に優れる点から好ましい。
また、繊維ウェブを形成する繊維の平均繊維長も特に限定されないが、具体的には、例えば10〜100mm、さらには20〜80mm、とくには25〜75mm程度であることが好ましい。この範囲であれば、カード機による繊維間の開繊状態がより良好となり、各繊維が均一に分散した繊維ウェブを得ることができる。この為、繊維絡合も均一に形成でき、また繊維間の距離が近く湿熱処理によって繊維間の接着点となりやすい部位が数多く均一に形成されて湿熱接着性繊維の接着性が向上するために、シートの機械的強度が充分に維持される。
繊維ウェブを形成する繊維の横断面の形状も特に限定されない。具体例としては、例えば、一般的な中実断面形状である丸型断面や、偏平状,楕円状,多角形状,3〜14葉状,T字状,H字状,V字状,ドッグボーン(I字状),中空断面等の異型断面等が挙げられる。
次に、得られた繊維ウェブを湿熱処理することにより繊維同士を接着させて不織繊維基材を形成する。具体的には、例えば、得られた繊維ウェブをメッシュコンベアで搬送しながら、蒸気噴射装置のノズルから噴出される高温水蒸気(高圧スチーム)に接触させることにより繊維同士を接着させて不織繊維基材を得ることができる。
蒸気噴射装置から噴射される高温水蒸気は、気流であるため、水流絡合処理やニードルパンチ処理とは異なり、繊維ウェブ中の繊維を大きく動かさずに繊維ウェブの内部に進入する。そして、繊維ウェブ中に蒸気流が進入することにより、繊維ウェブを形成する湿熱接着性繊維中の湿熱接着性樹脂が接着性を帯び、繊維同士が接着される。このような方法によれば、湿熱処理が蒸気による高速気流下で短時間で行われるために、繊維表面に対しては熱が充分に付与され、一方、繊維内部に対しては過剰な熱が伝わる前に湿熱処理が終了する。そのため、蒸気の圧力や熱により繊維の形態が完全には失われることがない。その結果、繊維ウェブの溶融または軟化による大きな変形等が生じることなく、厚み方向に均一に接着された不織繊維基材が得られる。
なお、上述したような繊維ウェブを湿熱処理することにより得られる不織繊維基材は、ニードルパンチ等の機械的交絡によらないために、繊維ウェブ面に対して平行に繊維を配列した状態を維持することができる。すなわち、繊維ウェブ面に対して垂直な厚さ方向に配向した繊維が少なくなる。厚さ方向に沿って配向した繊維が多い場合には、その周辺に繊維配列の乱れが生じるために、得られる研磨層の空隙の大きさや分布がばらつきやすくなったり、研磨面の表面粗さが大きくなって段差解消性が悪化しやすい傾向がある。具体的には、例えば、研磨層の厚み方向の任意の断面を電子顕微鏡観察して得られる像において、厚さに対する30%以上の長さに連続して延びる繊維の本数の割合が10%以下であることが好ましい。
高温水蒸気の圧力は、繊維ウェブを湿熱処理することにより繊維同士を接着させうる限り特に限定されない。具体的には、例えば、0.05〜4MPa、さらには0.1〜3MPa、とくには0.2〜2MPa、ことには0.3〜1.5MPa程度であることが好ましい。蒸気の圧力や気流の速度が高すぎる場合には、繊維ウェブ中の繊維が動くことにより地合に乱れを生じたり、繊維形状を保持されない部分が生じたりする傾向がある。また、蒸気の圧力や気流の速度が低すぎる場合には、繊維ウェブを形成する繊維同士を接着させるのに充分に均一な熱量が付与されなかったり、水蒸気が繊維ウェブを充分に通過せず厚さ方向に接着斑が生じたりする場合がある。さらに、ノズルからの蒸気の均一噴出の制御が困難になる場合もある。高温水蒸気の温度としては、70〜150℃、さらには80〜140℃、とくには90〜130℃、ことには100〜120℃程度であることが好ましい。
このような湿熱処理により得られる不織繊維基材の見掛け密度としては、0.1〜0.7g/cm、さらには0.12〜0.6g/cm、とくには0.15〜0.5g/cm、ことには0.2〜0.4g/cm程度であることが好ましい。不織繊維基材の見掛け密度が低すぎる場合には研磨面の表面粗さが大きくなって段差解消性が低下する傾向がある。また、一方、不織繊維基材の見掛け密度が高すぎる場合には、繊維ウェブに蒸気が通過しにくくなることにより、厚さ方向に接着斑が生じやすくなる傾向がある。なお、見掛け密度はJIS L1913に準じて、厚さ(cm)および目付け(g/cm)を測定し、目付けを厚さで除することにより算出することができる。
上述したような湿熱処理を行うための装置の構成としては、コンベアやローラを用いて繊維ウェブを搬送しながら、繊維ウェブを蒸気や熱水に接触させるような構成であれば特に限定されないが、代表的な構成を以下に説明する。
互いの間隔を任意に調整可能な、上側のメッシュコンベアと下側のメッシュコンベアとを備える一対のコンベア装置を準備する。そして、コンベア装置の片側のメッシュコンベアの背面に、他の側のメッシュコンベアに向けて略垂直に蒸気を噴射するように蒸気噴射装置を配置する。そして、このような装置構成の湿熱処理装置において、不織繊維基材が目的とする厚みになるように上側のメッシュコンベアと下側のメッシュコンベアとの間隔を調整し、上側のメッシュコンベアと下側のメッシュコンベアとの間に繊維ウェブを介挿し、介挿した状態で繊維ウェブを搬送する。そして、搬送される繊維ウェブが蒸気噴射装置から噴射される蒸気に接触することにより、繊維ウェブを形成する繊維同士が接着されて不織繊維基材が形成される。
なお、背面に蒸気噴射装置が配されたメッシュコンベアに対向する、他の側のメッシュコンベアの背面には、必要に応じて蒸気を吸引排出するためのサクションボックスを配置してもよい。サクションボックスを配置することにより、繊維ウェブに蒸気を効果的に通過させることができる。また、蒸気噴射装置とサクションボックスとは一組のみであっても、例えばコンベア装置の上流側と下流側に1組ずつ配するように、複数組設けるような構成であってもよい。なお、コンベア装置の上流側と下流側に1組ずつ配する場合、上流側と下流側の蒸気噴射装置とサクションボックスとを互いに逆方向に向くように配置することが好ましい。このように配置することにより、繊維ウェブの表面及び裏面の両面から蒸気を通過させるために、厚み方向の接着斑を抑制することができる。また、蒸気噴射装置とサクションボックスを一組のみ配置する場合には、一度蒸気噴射装置で湿熱処理した繊維ウェブを、表裏を反転させて再度蒸気噴射装置で湿熱処理することにより、厚み方向の接着斑を抑制することができる。また、サクションボックスを配置しない場合には、その代わりにステンレス板などを設置して蒸気が抜けない構造にすることにより、一旦繊維ウェブを通過した蒸気がステンレス板で留められるために蒸気の保温効果によって接着斑が抑制される。これらは、目的とする不織繊維基材の目付けや見掛け密度により適宜使い分けてもよい。
また、不織繊維基材の見掛け密度を調整するためには、目付け量を調整した繊維ウェブを用い、上側のメッシュコンベアと下側のメッシュコンベアとの間、またはローラーのギャップ等を調整して、所定の厚さに圧縮した状態で蒸気を噴射することが好ましい。特に、高密度の成形体を得ようとする場合には、繊維ウェブを充分に圧縮した状態で湿熱処理することが好ましい。また、メッシュコンベアの場合には、急激に繊維ウェブを圧縮することが難しいために、メッシュコンベアの張力を高く設定し、上流側から下流側に向かって徐々に上側のメッシュコンベアと下側のメッシュコンベアとのクリアランスを狭めていくことが好ましい。なお、コンベアベルトやローラー表面の材質は、蒸気処理に耐えられるものであれば特に制限はなく金属ネットや樹脂ネットなどが用いられるが、特に耐熱処理したポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、あるいはポリアリレートや全芳香族系ポリエステル等の耐熱性樹脂であることが好ましい。
次に、所望の空隙率に調整するために、湿熱処理により得られた不織繊維基材を熱プレスや加熱ロール等を用いて高密度化してもよい。なお、この場合、加熱温度を繊維表面の樹脂の融点よりやや低い温度で行うことにより、表面にスキン層が形成されて厚さ方向に繊維の接着斑やシートの密度斑が発生することを抑制できる。例えば、熱プレスの条件としては、湿熱接着性繊維に含まれる湿熱接着性樹脂の融点よりも、5〜30℃、さらには7〜25℃、とくには10〜20℃低い温度で、1〜100MPa、さらには3〜50MPa、とくには5〜30MPaの圧力で行うような条件が挙げられる。この際、上記した熱プレスの前に、湿熱接着性樹脂の融点より好ましくは30〜100℃、さらには35〜90℃、とくには40〜80℃低い温度で、予備的に熱プレスを行ってもよい。このように二段階で高密度化を行うことにより、一段目で繊維の接着を防止しながらある程度高密度化し、二段目で繊維を接着させつつ高密度化することができる。この結果、スキン層形成の防止効果が一層高くなり、厚み方向にさらに均一に高密度化することができる。なお、このような高密度化する処理においても、蒸気処理を併用することができるが、その場合にも湿熱接着性樹脂が完全に溶融しないような温度に設定することが好ましい。
以上のようにして、研磨パッドの研磨層として好ましく用いられる本実施形態のシートが製造される。研磨パッドの研磨層として用いられる場合、シートは、裁断,切削,スライス,打ち抜きなどにより、研磨層に適した形状に加工される。このようにして得られたシートは、繊維ウェブを機械的に絡合させたり、熱プレスにより熱接着させたようなシートに比べて、全体的に均一に繊維が接着されているために均一性に優れるとともに、接着された繊維により低い空隙率、すなわち高密度に仕上げられているために、高い硬度や耐久性、表面平滑性が得られる。
本実施形態のシートを研磨層として用いた研磨パッドは、研磨層のみからなる単層の研磨パッドとしても、研磨層の研磨面に対して反対側の面にクッション性を付与するために、発泡構造または無発泡構造を有するエラストマーシートやエラストマーを含浸させた不織布等からなる公知のクッション層を積層したような複層構造の研磨パッドとして用いてもよい。クッション層は、粘着剤や接着剤を用いてシートに積層される。クッション層のアスカーC硬度としては、30〜80であることが平坦性と研磨均一性に優れる点から好ましい。
研磨層の厚さは特に限定されないが、0.6〜4.0mm、さらには0.8〜3.5mm、とくには1.0〜3.0mm、ことには1.2〜2.5mmであることが研磨性能とパッド寿命の観点から好ましい。研磨層が薄すぎる場合には研磨パッドの寿命が短くなり、また、研磨装置の定盤や積層されたクッション層の影響を受けやすくなるために研磨層が摩耗するにつれて研磨性能が不安定になる傾向がある。また、研磨層が厚すぎる場合には剛性が高くなり、クッション層を積層しても研磨均一性が低下することがある上、取り扱いが難しくなる傾向がある。
また、研磨層の表面には、必要に応じて研削,レーザー加工,エンボス加工等により、水性スラリーを保持させるための溝や穴を形成することが好ましい。このような溝や穴の深さとしては、研磨層の厚みに対して、30〜90%、さらには35〜85%、とくには40〜80%であることが、クッション層を積層した場合には特に、研磨均一性と平坦化性能のバランスに優れる点から好ましい。さらに、研磨層の表面を、サンドペーパー、針布、ダイヤモンド等によりバフ処理しても良い。
研磨パッドの研磨対象は特に制限されないが、例えば、シリコンウェハなどの半導体基板やガラス基板の研磨の他、半導体デバイスや液晶ディスプレイデバイスのような、基板上に絶縁膜や金属膜などが形成された基材の研磨に好ましく用いられる。研磨方法としては、化学機械研磨装置(CMP装置)と水性スラリーを用いた化学機械研磨法(CMP)が好ましく用いられる。CMPとしては、例えば、CMP装置の研磨定盤に研磨層を備える研磨パッドを貼り付け、研磨層表面に水性スラリーを供給しながら、研磨パッドに被研磨物を押し当てながら加圧し、研磨定盤と被研磨物をともに回転させることにより被研磨物の表面を研磨する方法が挙げられる。なお、研磨前や研磨中には、必要に応じて、ダイヤモンドドレッサーやナイロンブラシ等のドレッサーを使用して研磨面をコンディショニングして整えることが好ましい。
次に、本発明に係るシートを用いた研磨パッド及びシートの製造方法を実施例により具体的に説明する。なお、本発明の範囲はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
[製造例1]
数平均分子量850のポリテトラメチレングリコール[略号:PTG850]、数平均分子量600のポリエチレングリコール[略号:PEG600]、1,4−ブタンジオール[略号:BD]および4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート[略号:MDI]を、PTG850:PEG600:BD:MDIの質量比が13.9:13.9:16.8:55.4となるような割合で用いて、定量ポンプにより同軸で回転する2軸押出機に連続的に供給して、連続溶融重合を行って熱可塑性ポリウレタン(以下、TPU−1)を製造した。なお、原料配合比から算出したTPU−1の窒素原子含有量は6.2質量%であった。
[製造例2]
数平均分子量1000のポリオキシテトラメチレン−ポリオキシエチレン−グリコール(オキシテトラメチレン骨格とオキシエチレン骨格の質量比が35:65であるランダム共重合体)[日油株式会社製「ポリセリンDC1100」]、BD、1,5−ヘキサンジオール[略号:PD]およびMDIを、DC1100:BD:PD:MDIの質量比が22.0:15.5:4.5:58.0となるような割合で用いて、定量ポンプにより同軸で回転する2軸押出機に連続的に供給して、連続溶融重合を行って熱可塑性ポリウレタン(以下、TPU−2)を製造した。なお、原料配合比から算出したTPU−1の窒素原子含有量は6.5質量%であった。
[製造例3]
数平均分子量1000のポリテトラメチレングリコール[略号:PTG1000]、1,6−ヘキサンジオール[略号:HD]、2,2-ジメチル−1,3−プロパンジオール[略号:NPG]、ジエチレングリコール[略号:DEG]およびMDIを、PTG1000:HD:NPG:DEG:MDIの質量比が14.2:16.3:4.8:4.9:59.8となるような割合で用いて、定量ポンプにより同軸で回転する2軸押出機に連続的に供給して、連続溶融重合を行って熱可塑性ポリウレタン(以下、TPU−3)を製造した。なお、原料配合比から算出したTPU−3の窒素原子含有量は6.7質量%であった。
[比較製造例1]
数平均分子量2000のポリテトラメチレングリコール[略号:PTG2000]、BD、3−メチル−1,5−ペンタンジオール[略号:MPD]およびMDIを、PTG2000:BD:MPD:MDIの質量比が31.8:12.7:5.5:50.0となるような割合で用いて、定量ポンプにより同軸で回転する2軸押出機に連続的に供給して、連続溶融重合を行って熱可塑性ポリウレタン(以下、TPU−4)を製造した。なお、原料配合比から算出したTPU−4の窒素原子含有量は5.6質量%であった。
[比較製造例2]
PTG1000、BDおよびMDIを、PTG1000:BD:MDIの質量比が20.0:20.2:59.8となるような割合で用いて、定量ポンプにより同軸で回転する2軸押出機に連続的に供給して、連続溶融重合を行って熱可塑性ポリウレタン(以下、TPU−5)を製造した。なお、原料配合比から算出したTPU−5の窒素原子含有量は6.7質量%であった。
[比較製造例3]
数平均分子量1500のポリテトラメチレングリコール[略号:PTG1500]、トリエチレングリコール[略号:TEG]およびMDIを、PTG1500:TEG:MDIの質量比が13.5:32.0:54.5となるような割合で用いて、定量ポンプにより同軸で回転する2軸押出機に連続的に供給して、連続溶融重合を行って熱可塑性ポリウレタン(以下、TPU−6)を製造した。なお、原料配合比から算出したTPU−6の窒素原子含有量は6.1質量%であった。
[TPU−1〜6の評価]
TPU−1〜6の各種特性を以下のようにして評価した。
〈乾燥時の結晶融解温度〉
熱プレスによって厚みが約300μmのフィルムを作成した後、25℃、50%RHの条件下に3日間置いた。そして、測定サンプルの質量が約4mgとなるように切り抜いて通常アルミニウムパンに入れ、TAインスツメント社製示差走査熱量計「Q2000」を用いて、−30℃から250℃まで昇温速度10℃/分で測定を行った。
〈吸水時の結晶融解温度〉
熱プレスによって厚みが約300μmのフィルムを作成した後、50℃の水に、72時間浸漬した。そして50℃の水から取り出した直後、フィルムの最表面の余分な水滴等を拭き取ってから測定サンプルの質量が約4mgとなるように切り抜いて、同質量の水とともに高容量パンに入れ、TAインスツメント社製示差走査熱量計「Q2000」を用いて、30℃から250℃まで昇温速度10℃/分で測定を行った。
〈50℃の水に72時間浸漬後の吸水率〉
熱プレスによって厚みが約300μmのフィルムを作成した後、25℃、50%RHの条件下に3日間置いた。放置後の質量を測定し、乾燥時の質量とした。次いで、50℃の水に、乾燥させたフィルムを72時間浸漬した。そして50℃の水から取り出した直後、フィルムの最表面の余分な水滴等を拭き取り、吸水後の質量を測定した。次式により、吸水率を算出した。
吸水率(%)=[(吸水後の質量−乾燥時の質量)/乾燥時の質量]×100
〈50℃の水に72時間浸漬後のA硬度〉
熱プレスによって厚みが約300μmのフィルムを作成した後、50℃の水に、72時間浸漬した。そして、JIS K6253に準じたデュロメータ硬さ試験(タイプA)により、硬さを測定した。
結果をまとめて表1に示す。
Figure 0006438833
[実施例1]
湿熱接着性繊維として、芯成分がポリブチレンテレフタレート(PBT)、鞘成分が製造例1で得られたTPU−1である芯鞘型複合ステープル繊維(3.0dtex、51mm長、鞘成分と芯成分の質量比=60/40)を準備した。この芯鞘型複合ステープル繊維100質量%を用いて、カード法により目付約850g/mのカードウェブを作製した。このカードウェブを、コンベア装置とその経路に水蒸気を噴射させる水蒸気噴射装置とを備えた湿熱処理装置に移送した。
なお、コンベア装置は、50メッシュ,幅500mmのポリカーボネート製エンドレスネットからなる、上側メッシュコンベアと下側メッシュコンベアとを備え、それらがそれぞれ同速度で同方向に進行し、かつ、互いの間隔を任意に調整可能な一対のメッシュコンベアを備える。また、コンベア装置の上流側には、下側メッシュコンベアの裏側に、搬送されるカードウェブに向かってネットを介して高温水蒸気を吹き付ける水蒸気噴射装置が配置されており、一方、上側メッシュコンベアの裏側にはサクション装置が配置されている。逆に、コンベアの下流側では、下側メッシュコンベアの裏側に同様のサクション装置が配置されており、上側メッシュコンベア内の裏側に同様の水蒸気噴射装置が配置されている。各水蒸気噴射装置は、コンベアの幅方向に沿って1mmピッチで1列に並べられた複数の孔径0.3mmのノズルを有する。また、ノズルはメッシュコンベアのネットの裏側にほぼ接するように配置されている。このような構成によれば、カードウェブの表裏の両面に対して高温水蒸気が吹き付けられる。
各水蒸気噴射装置から0.6MPaの高温水蒸気を略垂直に噴出させることにより、搬送されるカードウェブに水蒸気処理を施した。なお、コンベアの搬送速度は3m/分であり、厚み約4mmの不織繊維基材が得られるように上側メッシュコンベアと下側メッシュコンベアとの間隔を調整した。このようにして、湿熱性接着性繊維同士が湿熱接着して形成された厚み約4mmの不織繊維基材が得られた。
そして、得られた不織繊維基材を、一段目の熱プレスとして、厚さ1.7mmのスペーサーを用いて140℃、15MPaの条件で5分間熱プレスを行った。そして、さらに二段目の熱プレスとして、厚さ1.5mmのスペーサーを用いて、170℃,15MPaの条件で5分間熱プレスを行い、高密度化したシートを得た。次いで、シートの厚さが1.2mmになるように両面からを均一に切削することによりシート1を製造した。シート1の見掛け密度は0.54g/cmであった。
[実施例2]
実施例1において、目付約850g/mのカードウェブの代わりに目付約1100g/mのカードウェブを作製した以外は同様の条件で、厚み約4mmの不織繊維基材を得た。そして、得られた不織繊維基材の二段目の熱プレスを170℃で行う代わりに175℃で行った以外は実施例1と同様の条件で熱プレスして高密度化したシートを得た。次いで、シートの厚さが1.2mmになるように両面からを均一に切削することによりシート2を製造した。シート2の見掛け密度は0.73g/cmであった。
[実施例3]
実施例1において、目付約850g/mのカードウェブの代わりに目付約2500g/mのカードウェブを作製した以外は同様の条件で、厚み約6mmの不織繊維基材を得た。そして、得られた不織繊維基材を、厚さ3.0mmのスペーサーを用いて140℃、15MPaの条件で5分間の熱プレスを行った後、厚さ2.8mmのスペーサーを用いて、175℃,15MPaの条件で5分間の熱プレスをさらに行うことにより、高密度化したシートを得た。次いで、シートの厚さが2.0mmになるように両面からを均一に切削することによりシート3を製造した。シート3の見掛け密度は0.85g/cmであった。
[実施例4]
実施例3と同様にして、厚み約6mmの不織繊維基材を得た。そして、得られた不織繊維基材を、厚さ2.6mmのスペーサーを用いて140℃、15MPaの条件で5分間の熱プレスを行った後、厚さ2.5mmのスペーサーを用いて、170℃,15MPaの条件で5分間の熱プレスをさらに行うことにより、高密度化したシートを得た。そして、シートの厚さが2.0mmになるように両面からを均一に切削することによりシート4を製造した。シート4の見掛け密度は0.97g/cmであった。
[実施例5]
実施例1において、湿熱接着性繊維として、芯成分が製造例5で得られたTPU−5、鞘成分が製造例2で得られたTPU−2である芯鞘型複合ステープル繊維(5.0dtex、51mm長、鞘成分と芯成分の質量比=40/60)を用いて、目付約850g/mのカードウェブの代わりに目付約900g/mのカードウェブを作製した以外は同様の条件で、厚み約4mmの不織繊維基材を得た。そして、得られた不織繊維基材を実施例1と同様の条件で熱プレスおよび切削を行い、厚み1.2mmのシート5を製造した。シート5の見掛け密度は0.62g/cmであった。
[実施例6]
実施例1において、湿熱接着性繊維として、芯成分が変性モノマーとしてイソフタル酸15モル%を共重合させた変性ポリエチレンテレフタレート(変性PET)、鞘成分が製造例3で得られたTPU−3である芯鞘型複合ステープル繊維(1.7dtex、51mm長、鞘成分と芯成分の質量比=75/25)を用いて、目付約850g/mのカードウェブの代わりに目付約2500g/mのカードウェブを作製した以外は同様の条件で、厚み約6mmの不織繊維基材を得た。そして、得られた不織繊維基材を、厚さ3.1mmのスペーサーを用いて120℃、15MPaの条件で5分間の熱プレスを行った後、厚さ3.0mmのスペーサーを用いて、148℃,15MPaの条件で5分間の熱プレスをさらに行うことにより、高密度化したシートを得た。そして、シートの厚さが2.0mmになるように両面からを均一に切削することによりシート6を製造した。シート6の見掛け密度は0.81g/cmであった。
[実施例7]
実施例6と同様にして、厚み約6mmの不織繊維基材を得た。そして、得られた不織繊維基材を厚さ2.7mmのスペーサーを用いて110℃、15MPaの条件で5分間の熱プレスを行った後、厚さ2.4mmのスペーサーを用いて144℃、15MPaの条件で5分間熱プレスをさらに行うことにより、高密度化したシートを得た。そして、シートの厚さが2.0mmになるように両面からを均一に切削することによりシート7を製造した。シート7の見掛け密度は0.99g/cmであった。
[比較例1]
実施例1において、湿熱接着性繊維の代わりに、非湿熱接着性繊維の熱融着性繊維である、芯成分がPBT、鞘成分が製造例4で得られたTPU−4である芯鞘型複合ステープル繊維(3.0dtex、51mm長、鞘成分と芯成分の質量比=60/40)を用いた以外は実施例1と同様にしてシート8を製造した。シート8の見掛け密度は0.52g/cmであった。
[比較例2]
実施例3において、湿熱接着性繊維の代わりに、非湿熱接着性繊維の熱融着性繊維である、芯成分がPBT、鞘成分が製造例5で得られたTPU−5である芯鞘型複合ステープル繊維(3.0dtex、51mm長、鞘成分と芯成分の質量比=75/25)を用いた以外は実施例3と同様にしてシート9を製造した。シート9の見掛け密度は0.84g/cmであった。
[比較例3]
実施例2において、湿熱接着性繊維として、芯成分がPBT、鞘成分が参考例6で得られたTPU−6である芯鞘型複合ステープル繊維(3.0dtex、51mm長、鞘成分と芯成分の質量比=60/40)を用いた以外は実施例2と同様にしてシート10を製造した。シート10の見掛け密度は0.74g/cmであった。
[比較例4]
実施例4において、湿熱接着性繊維として、芯成分がPBT、鞘成分が参考例6で得られたTPU−6である芯鞘型複合ステープル繊維(3.0dtex、51mm長、鞘成分と芯成分の質量比=60/40)を用いた以外は実施例4と同様にしてシート11を製造した。シート11の見掛け密度は0.98g/cmであった。
[比較例5]
実施例3において、湿熱接着性繊維として、芯成分がポリエチレンテレフタレート(PET)、鞘成分がエチレン共重合率44モル%、ケン化度98.4モル%であるエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)である芯鞘型複合ステープル繊維(3.0dtex、51mm長、鞘成分と芯成分の質量比=60/40)を用いた以外は同様の条件で、厚み約6mmの不織繊維基材を得た。得られた不織繊維基材を厚さ3.0mmのスペーサーを用いて90℃、15MPaの条件で5分間の熱プレスを行った後、厚さ2.8mmのスペーサーを用いて152℃、15MPaの条件で5分間熱プレスをさらに行うことにより、高密度化したシートを得た。そして、シートの厚さが2.0mmになるように両面からを均一に切削することによりシート12を製造した。シート12の見掛け密度は0.87g/cmであった。
得られたシートの結果をまとめて表2に示す。
Figure 0006438833
[シリコンウェハ研磨性能評価]
シリコンウェハの研磨に適した見かけ密度の低い、実施例1,2,5,及び比較例1,3で得られたシート1,2,5,8,10及び市販品の研磨パッドの研磨性能を次のようにして評価した。
各シートを直径38cmの円形状に切り出した。そして、切り出された円形状のシートの表面に、幅1.0mm、深さ0.6mmの溝を10.0mm間隔で格子状に形成した後、裏面に両面テープを貼り、直径が38cmの円形状の研磨パッドを作製した。なお、市販品の研磨パッドとしては、見掛け密度0.79g/cmである発泡ポリウレタン研磨パッド(ニッタハース社製「IC1000」)に同様の溝を形成したものを用いた。そして、得られた各研磨パッドのパターンウェハ研磨性能を以下のようにして評価した。
研磨装置の研磨定盤に研磨パッドを貼り付けた。そして、ドレッサー回転数140rpm、研磨パッド回転数100rpm、ドレッサー荷重5Nの条件で、150mL/分の速度で純水を流しながらダイヤモンドドレッサーを用いて、研磨パッド表面を60分間コンディショニングした。なお、(株)エム・エー・ティー製「BC−15」を研磨装置として用い、ダイヤモンド番手#325、台金直径190mmの(株)アライドマテリアル製のダイヤモンドドレッサーを用いた。
そして、研磨パッド回転数100rpm、ウェハ回転数99rpm、研磨圧力55kPaの条件で、酸化ケイ素砥粒を含有する水性スラリー(キャボット社製「Semi−Sperse25」)100質量部に対して、純水100質量部を添加して混合した液を、200mL/分の速度で供給しながら、直径100mmの単結晶シリコンウェハ(密度2.33g/cm)を、コンディショニングを行わずに120秒間研磨した。
そして、60秒間のコンディショニングを行った後、新たなウェハに交換して再度研磨及びコンディショニングを繰り返し、同様にして合計20枚のシリコンウェハを研磨した。
そして、20枚目に研磨されたシリコンウェハについて、研磨速度、スクラッチの有無を測定した。また、使用前後のパッド溝深さの変化を測定した。パッド溝深さの変化はパッドの耐摩耗性、すなわち使用可能時間の評価である。
〈研磨速度の測定〉
研磨前および研磨後のウェハの質量を測定し、研磨前後の質量差と、ウェハの面積および密度より研磨速度を求めた。
〈スクラッチ測定〉
研磨後のウェハ表面を、キーエンス社製レーザー顕微鏡「VK−X200」を使用して倍率1000倍でランダムに20ヶ所観察して、傷の有無を確認した
〈パッド溝深さの減少量〉
使用可能時間の指標として、研磨前および研磨後のパッド中心から100mmの位置における溝深さをノギスで測定し、減少量を求めた。
結果をまとめて表3に示す。
Figure 0006438833
表3の結果から、実施例1,2,5で用いた湿熱接着性を示すポリウレタン樹脂を含む繊維はいずれも強固に湿熱接着されてシートが形成されている。このような実施例1,2,5のシートを研磨層として用いた研磨パッドはいずれもスクラッチが発生せず、また、研磨速度も高い上、溝減少量が少なく耐摩耗性にも優れていた。一方、比較例1および3で用いた湿熱接着性を示さない繊維は、熱融着のみにより固着されてシートが形成されている。このような比較例1および3のシートを研磨層として用いた研磨パッドは、研磨速度が低く、また溝減少量が多く耐摩耗性が劣っていた。また、市販の発泡ポリウレタンパッドを用いた研磨パッドは、研磨速度が低く、スクラッチも発生した。
[パターンウェハ研磨性能評価]
パターンウェハの研磨に適した見かけ密度の高い、実施例3,4,6,7及び比較例2,4,5で得られたシート3,4,6,7,9,11,12及び市販品の研磨パッドのパターンウェハの研磨性能を次のようにして評価した。
各シートを直径38cmの円形状に切り出した。そして、切り出された円形状のシートの表面に、幅1.0mm、深さ1.0mmの溝を6.0mm間隔で同心円状に形成し、直径が38cmの円形状の研磨層を作製した。そして、得られた研磨層の裏面に、厚み1.0mm,C硬度50の発泡ポリウレタンシートをクッション層として貼りあわせることにより、研磨パッドを得た。なお、市販品の研磨パッドとしては、下層にクッション層を有する見掛け密度0.81g/cmである発泡ポリウレタン研磨パッド(ニッタハース社製「IC1400」)に同様の溝を形成したものを用いた。そして、得られた各研磨パッドのパターンウェハ研磨性能を以下のようにして評価した。
研磨装置の研磨定盤に研磨パッドを貼り付けた。そして、ドレッサー回転数140rpm、研磨パッド回転数100rpm、ドレッサー荷重5Nの条件で、150mL/分の速度で純水を流しながらダイヤモンドドレッサーを用いて、研磨パッド表面を60分間コンディショニングした。なお、(株)エム・エー・ティー製「BC−15」を研磨装置として用い、ダイヤモンド番手#200、台金直径190mmの(株)アライドマテリアル製のダイヤモンドドレッサーを用いた。
そして、研磨パッド回転数100rpm、ウェハ回転数99rpm、研磨圧力24kPaの条件で、酸化セリウム砥粒を含有する水性スラリー(日立化成社製「HS−8005」)100質量部に純水1900質量部を添加して混合した液を、100mL/分の速度で供給しながら、初期膜厚1000nmでパターンのない酸化ケイ素膜(プラズマ化学蒸着により形成されたPETEOS酸化ケイ素膜)を表面に有する直径50mmのシリコンウェハを、コンディショニングを行わずに60秒間研磨した。
そして、30秒間のコンディショニングを行った後、新たなウェハに交換して再度研磨及びコンディショニングを繰り返し、同様にして合計10枚のウェハを研磨した。
次に、凸部と凹部が交互に繰り返し並んだ凹凸パターンを有する、SKW社製STI研磨評価用パターンウェハ「SKW3−2」を上記と同様の条件で1枚研磨した。なお、このパターンウェハは様々なパターンの領域を有するものであり、膜厚および段差の測定対象として、凸部幅100μmおよび凹部幅100μmのパターンからなる領域(パターン1)と4mm四方の凹部のみからなる領域(パターン2)を選択した。このパターン1は凸部と凹部の初期段差が550nmであり、パターン凸部はシリコンウェハ上に膜厚15nmの酸化ケイ素膜、その上に膜厚140nmの窒化ケイ素膜、さらにその上に膜厚700nmの酸化ケイ素膜(高密度プラズマ化学蒸着により形成されたHDP酸化ケイ素膜)を積層した構造であり、パターン凹部はシリコンウェハをエッチングして溝を形成した後に膜厚700nmのHDP酸化ケイ素膜を形成した構造である。そして、凹部のみからなるパターン2は、パターン1の凹部と同じ構造である。このパターンウェハの研磨において、研磨によりパターン1の凸部の窒化ケイ素膜上に積層された酸化ケイ素膜が消失するまでの時間、及びその時点におけるパターン1の凸部と凹部との段差、並びにその時点におけるパターン1の凹部とパターン2の凹部の酸化ケイ素膜の膜厚差(「パターン1の凹部の酸化ケイ素膜の厚み」−「パターン2の凹部の酸化ケイ素膜の厚み」)を求めた。パターンウェハの研磨時間が短く、パターン1の段差が小さく、且つパターン1とパターン2の酸化ケイ素膜の厚み差が小さいほど研磨速度と平坦性、段差解消性に優れる。なお、パターンウェハの段差は、表面粗さ測定機((株)ミツトヨ製「SJ−400」)を用い、標準スタイラス、測定レンジ80μm、JIS2001、GAUSSフィルタ、カットオフ値λc2.5mm、およびカットオフ値λs8.0μmの設定で測定を行い、断面曲線から求めた。
結果をまとめて表4に示す。
Figure 0006438833
表4の結果から、実施例3,4,6,7で用いた湿熱接着性を示すポリウレタン樹脂を含む繊維はいずれも強固に湿熱接着されてシートが形成されている。このような実施例3,4,6,7のシートを用いた研磨パッドはいずれも研磨速度が高いため研磨に要する時間が短く、また、研磨後の段差やパターンによる差も小さく段差解消性や平坦性にも優れていた。一方、比較例2,4及び5のシートを用いた研磨パッドは、段差が劣っており、パターンによる差も大きくなった。
本発明のシートを用いた研磨パッドは、半導体基板やガラス基板、あるいはそれらの表面に形成された酸化ケイ素膜のような絶縁膜や銅膜のような金属膜の化学機械研磨等に好ましく用いられる。

Claims (11)

  1. 湿熱処理により接着性を示す湿熱接着性樹脂(a)を含む複数の湿熱接着性繊維を互いに固着させて形成され、前記湿熱接着性樹脂(a)が、吸水時の結晶融解温度が85〜165℃であり、且つ50℃の水に72時間浸漬後の吸水率が5質量%以下であるポリウレタン樹脂を含み、
    前記湿熱接着性繊維は、前記湿熱接着性樹脂(a)と湿熱処理により接着性を示さない非湿熱接着性樹脂(b)とを含む繊維であり、前記湿熱接着性樹脂(a)が前記非湿熱接着性樹脂(b)の繊維の周囲の少なくとも一部分に、該繊維の長手方向に連続するように被着されていることを特徴とするシート。
  2. 前記ポリウレタン樹脂が、乾燥時の結晶融解温度(T1)が130〜230℃であり、吸水時の結晶融解温度(T2)との差(T1−T2)が15〜100℃である請求項1に記載のシート。
  3. 前記ポリウレタン樹脂が、50℃の水に72時間浸漬後のA硬度が90以上である請求項1または2に記載のシート。
  4. 前記ポリウレタン樹脂の窒素原子含有率が、4〜8質量%である請求項1〜3の何れか1項に記載のシート。
  5. 前記湿熱接着性繊維が、前記非湿熱接着性樹脂(b)の繊維からなる芯部と、前記湿熱接着性樹脂(a)からなる鞘部とを備える芯鞘型複合繊維である請求項1〜4の何れか1項に記載のシート。
  6. 前記湿熱接着性樹脂(a)と前記非湿熱接着性樹脂(b)との質量比(a/b)が15/85〜95/5である請求項1〜5の何れか1項に記載のシート。
  7. 前記湿熱接着性繊維の平均繊度が0.1〜10dtexである請求項1〜6の何れか1項に記載のシート。
  8. 見掛け密度が0.3〜1.2g/cmである請求項1〜7の何れか1項に記載のシート。
  9. 請求項1〜8の何れか1項に記載のシートを研磨層として備えることを特徴とする研磨パッド。
  10. 前記研磨層の研磨面と反対側に、クッション層が積層されている請求項9に記載の研磨パッド。
  11. 吸水時の結晶融解温度が85〜165℃であり、且つ50℃の水に72時間浸漬後の吸水率が5質量%以下であるポリウレタン樹脂を含む、湿熱処理により接着性を示す湿熱接着性樹脂(a)と湿熱処理により接着性を示さない非湿熱接着性樹脂(b)とを含む湿熱接着性繊維を含有する繊維ウェブを製造する工程と、
    前記繊維ウェブを湿熱処理することにより前記繊維ウェブを形成する繊維を接着させて不織繊維基材を形成する工程と、
    前記不織繊維基材を、加熱加圧処理する工程と、を含み、
    前記湿熱接着性繊維は、前記湿熱接着性樹脂(a)が前記非湿熱接着性樹脂(b)の繊維の周囲の少なくとも一部分に、該繊維の長手方向に連続するように被着されていることを特徴とする、シートを製造する方法。
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