[研磨パッドの構成]
本実施形態の研磨パッドは、平均断面積が0.01〜30μm2の範囲である極細単繊維から構成される繊維束から形成された繊維絡合体と、高分子弾性体とを含有し、前記高分子弾性体の一部が前記繊維束の内部に存在して、前記極細単繊維を集束しており、少なくとも一表面に、600本/mm2以上の前記極細単繊維が存在し、50℃の温水で飽和膨潤させたときの吸水率が5〜45質量%であり、50℃の温水で飽和膨潤したときの50℃における貯蔵弾性率[E’(50℃、wet)]が100〜800MPaであることを特徴とするものである。このような、研磨パッドは、極細単繊維から形成される、繊維密度の高い繊維束から形成された繊維絡合体の空隙部及び繊維束の内部に、気泡の少ない高分子弾性体を充填することにより得られる。
本実施形態の研磨パッドを添付する図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態の研磨パッド10の模式図を示す。図2は研磨パッド10の部分拡大模式図、図3は繊維束の断面模式図である。
図1、図2、及び図3中、1は極細単繊維から形成された繊維束、2は高分子弾性体、3は極細単繊維、4は空隙であり、4aは空隙4から形成される連通孔である。また、5は極細単繊維3からなる繊維束1により形成された繊維絡合体である。
繊維束1は0.01〜30μm2の範囲の平均断面積を有する一群の極細単繊維3から形成されている。また、図3に示すように、極細単繊維3は繊維束1の内部空間に存在する高分子弾性体2により集束されている。また、複数の繊維束1同士は、高分子弾性体2により結着されていることが好ましい。そして、繊維絡合体5は、繊維束1が絡合するように形成されている。また、繊維束1は、断面積が40μm2以上になるような繊維束を含有することが好ましい。そして、任意の厚み方向断面において観察される繊維束1の束密度は600束/mm2以上であることが好ましい。また、研磨パッド10は、空隙を除いた部分の体積割合が55〜95%の範囲になる範囲、すなわち、空隙率が5〜45%になる範囲で空隙4が存在している。空隙4の一部は、研磨パッド10の内部を連通するような連通孔4aを形成していることが好ましい。
また、本実施形態の研磨パッド10の表面には、600本/mm2以上の極細単繊維3が存在している。これにより研磨パッドと被研磨基材との接触面積が高くなるとともに、多量の砥粒スラリーを保持することができるために研磨レートが高くなる。さらに、研磨パッドの表面がソフトになるために、砥粒の凝集物が存在した場合に、該凝集物に荷重が集中することを抑制することができ、それにより、被研磨基材にスクラッチが発生することを抑制する。
本実施形態における繊維束は極細単繊維から形成されており、繊維束を構成する極細単繊維は高分子弾性体により集束されている。
繊維束を形成する極細単繊維は、その平均断面積が0.01〜30μm2の範囲であり、好ましくは、0.1〜20μm2の範囲である。前記極細単繊維の平均断面積が0.01μm2未満の場合には、研磨の際に、研磨パッドの表面近傍の繊維が充分に分繊またはフィブリル化せず、その結果、砥粒スラリーの保持力が低下する。一方、前記極細単繊維の平均断面積が30μm2を超える場合には、研磨パッドの表面が粗くなりすぎて研磨レートが低下し、また、繊維表面に凝集した砥粒がスクラッチを発生させやすくする。
繊維束の平均長さは、特に限定されないが、100mm以上、さらには、200mm以上であることが、極細単繊維の密度を容易に高めることができる点、研磨パッドの剛性を容易に高めることができる点、及び、繊維の抜けを抑制できる点から好ましい。前記繊維束の長さが短すぎる場合には、極細単繊維の高密度化が困難で、また、充分に高い剛性が得られず、さらに、研磨中に繊維が抜けやすくなる傾向がある。上限は、特に限定されず、例えば、後述するスパンボンド法により製造された不織布に由来する繊維絡合体を含有する場合には、物理的に切れていない限り、数m、数百m、数kmあるいはそれ以上の繊維長のものが含まれていてもよい。
本実施形態における繊維束は、断面積が40μm2以上の繊維束を含有することが好ましい。このような、太い繊維束を含有することにより、研磨パッドの剛性を高めることができる。なお、繊維束の断面積とは、繊維束断面における、繊維束を構成する極細単繊維及び繊維束内部に存在する高分子弾性体からなる断面の総面積である。
厚み方向断面に存在する40μm2以上の断面積を有する繊維束の割合としては、断面積当たりの繊維束の合計束数に対して25%以上であることが好ましい。また、特に高い平坦性が要求されるシリコンウエハ用、半導体ウエハ用、半導体デバイス用の研磨パッドにおいては、40%以上、さらには、50%以上であること、とくには、100%であることが好ましい。前記40μm2以上である繊維束の割合が低すぎる場合には、研磨レートが低下したり、平坦化性能が充分に高い研磨パッドが得られにくくなる傾向がある。
また、厚み方向断面に存在する繊維束の平均断面積としては80μm2以上、さらには、100μm2以上、とくには、120μm2以上、であることが充分に剛性の高い研磨パッドが得られる点から好ましい。前記平均断面積が低すぎる場合には、高い剛性が充分に維持できなくなく傾向がある。
本実施形態の研磨パッドにおいては、厚み方向断面に存在する、単位面積当たりの繊維束数が600束/mm2以上であることが好ましい。このように繊維束が高密度で存在することにより、研磨の際に研磨パッドの表面に表出した繊維束が分繊またはフィブリル化することにより極細単繊維を形成し、これにより、砥粒スラリーの保持性が高くなるとともに、表面がソフトになって、スクラッチの発生が抑制される。
繊維束の束密度としては、その厚み方向断面に存在する、単位面積当たりの繊維束数が600束/mm2以上、さらには、1000束/mm2以上であることが好ましく、4000束/mm2以下、さらには、3000束/mm2以下であることが好ましい。前記束密度が低すぎる場合には、研磨パッド表面に形成される極細単繊維の繊維密度が低くなって、研磨レートが低下したり、平坦化性能が低下する傾向がある。また前記束密度が高すぎる場合には、研磨パッド表面が緻密になりすぎて砥粒保持性が不充分になり、研磨レートが低下する傾向がある。なお、本実施形態の研磨パッドにおいては、厚み方向及び面方向において繊維束の繊維密度の斑が少ないことが、研磨安定性の点から好ましい。
本実施形態における繊維絡合体は、一般的な不織布よりも高密度である。具体的には、繊維絡合体の空隙を除いた部分の体積割合(繊維絡合体充填率)が、35%以上、さらには50%以上、であって、90%以下、さらには80%以下であることが好ましい。前記繊維絡合体充填率が低すぎる場合には、繊維絡合体の表面形状が粗くなりすぎて、得られる研磨パッドの表面が粗くなりすぎて平坦化性能が低下する傾向があり、また、研磨パッド表面の繊維密度が低くなる傾向がある。一方、前記繊維絡合体充填率が高すぎる場合には、繊維絡合体が緻密になり過ぎて、繊維束内部に高分子弾性体を充分に含浸させにくくなる。その結果、極細単繊維が充分に集束されなくなって、繊維が抜けて研磨の安定性が低下したり、脱落した繊維に砥粒が凝集したりする傾向がある。
本実施形態の研磨パッドを構成する極細単繊維の具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート、スルホイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート等から形成される芳香族ポリエステル繊維;ポリ乳酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリヒドロキシブチレート−ポリヒドロキシバリレート共重合体等から形成される脂肪族ポリエステル繊維;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6−12等から形成されるポリアミド繊維;ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、塩素系ポリオレフィンなどのポリオレフィン繊維;エチレン単位を25〜70モル%含有する変性ポリビニルアルコール等から形成される変性ポリビニルアルコール繊維;およびポリウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマーなどのエラストマー等から形成されるエラストマー繊維等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記極細単繊維の中でも、ガラス転移温度(Tg)が50℃以上、さらには60℃以上であって、吸水率が4質量%以下、さらには2質量%以下の熱可塑性樹脂からなる繊維が特に好ましい。
前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度がこのような範囲である場合には、より高い剛性を維持することができるために平坦化性能がさらに高くなり、また、研磨の際においても、剛性が経時的に低下することがなく、研磨安定性や研磨均一性に優れた研磨パッドが得られる。ガラス転移温度の上限は特に限定されないが、工業的な製造上、300℃以下、さらには、150℃以下であることが好ましい。
また、前記熱可塑性樹脂の吸水率が4質量%以下である場合には、研磨の際においても、研磨パッドが砥粒スラリーを吸収し過ぎないことにより、経時的な剛性の低下がより抑制される。このような場合には、経時的な平坦化性能の低下が抑制され、また、研磨レートや研磨均一性が変動しにくい研磨パッドが得られる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET、Tg77℃、吸水率1質量%)、イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート(Tg67〜77℃、吸水率1質量%)、スルホイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート(Tg67〜77℃、吸水率1〜4質量%)、ポリブチレンナフタレート(Tg85℃、吸水率1質量%)、ポリエチレンナフタレート(Tg124℃、吸水率1質量%)等から形成される芳香族ポリエステル系繊維;テレフタル酸とノナンジオールとメチルオクタンジオール共重合ポリアミド(Tg125〜140℃、吸水率1〜4質量%)等から形成される半芳香族ポリアミド系樹脂等が挙げられる。特に、PETおよびイソフタル酸変性PET等の変性PETは、後述する海島型複合繊維からなるウェブ絡合シートから極細単繊維を形成する湿熱処理工程において大幅に捲縮するために、緻密で高密度の繊維絡合体を形成することができること、研磨シートの剛性を高めやすいこと、及び、研磨の際に水分による経時変化を発生しにくいこと、等の点からも好ましい。
本実施形態の研磨パッドは、上記繊維絡合体に高分子弾性体が充填されて複合化された構造を有する。
本実施形態において用いられる高分子弾性体の具体例としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル−アクリロニトリル系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル−オレフィン系樹脂、(メタ)アクリル酸系エステル−(水添)イソプレン系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル−ブタジエン系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、スチレン−水添イソプレン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル−酢酸ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、エチレン−オレフィン系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、及び、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。
前記高分子弾性体としては、吸水率が0.5〜8質量%、さらには、1〜6質量%の高分子弾性体が特に好ましい。高分子弾性体の吸水率がこのような範囲である場合には、研磨の際に研磨パッドに対する砥粒スラリーの高い濡れ性を維持できるとともに、剛性が経時的に低下することをより抑制することができる。これにより、高い研磨レートや、研磨均一性や研磨安定性を維持することができる。なお、高分子弾性体の吸水率とは、乾燥処理した高分子弾性体フィルムを室温の水に浸漬して飽和膨潤させたときの吸水率である。
このような吸水率を有する高分子弾性体は、高分子弾性体を構成する高分子の架橋密度を調整したり、官能基を導入すること等により得ることができる。
具体的には、例えば高分子弾性体に、カルボキシル基、スルホン酸基、及び、炭素数3以下のポリアルキレングリコール基からなる群から選ばれる少なくとも1種の親水性基を導入することにより、吸水率や親水性を調整することができる。これにより、研磨の際における、研磨パッドの砥粒スラリーに対する濡れ性を向上させることができる。
このような親水性基は高分子弾性体を製造する際のモノマー成分として、親水性基を有する成分を共重合することにより、高分子弾性体に導入することができる。このような親水性基を有するモノマー成分の共重合割合としては、0.1〜20質量%、更には、0.5〜10質量%であることが、吸水による膨潤軟化を最小限に抑えつつ、吸水率や濡れ性を高めることができる点から好ましい。
高分子弾性体は、それぞれ単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、ポリウレタン系樹脂が、極細単繊維を集束したり、繊維束同士を結着したりするための接着性に優れており、研磨パッドの硬度を高め、研磨での経時的安定性に優れている点から好ましい。また、とくに、カルボキシル基、スルホン酸基、及び、炭素数3以下のポリアルキレングリコール基からなる群から選ばれる少なくとも1種の親水性基を有するポリウレタン樹脂が、研磨パッドの剛性、濡れ性、及び研磨の際の経時的安定性が高い点から好ましい。
前記高分子弾性体としては、150℃における貯蔵弾性率[E’(150℃、dry)]が0.1〜100MPa、さらには、1〜80MPaであることが好ましい。このような高分子弾性率は、高分子弾性体に架橋構造を形成させることにより得ることができる。なお、高分子弾性体が親水性基を有する場合には、一般に水で膨潤しやすく吸水率が高くなりすぎる傾向がある。このような場合には、架橋密度を調整することにより、吸水率を制御することができる。
本実施形態の研磨パッドは、従来から知られた、一般的な不織布タイプの研磨パッドに比べて、空隙を除いた部分の体積割合(研磨パッド充填率)が高い、すなわち、空隙率が低い。
具体的には、研磨パッド充填率は55〜95%であり、好ましくは60〜90%、さらに好ましくは、60〜80%の範囲である。前記研磨パッド充填率が55%未満の場合には、表面の粗さが粗くなりすぎて研磨レートが低下し、また、平坦化性能が低下する。また、研磨中に硬度が変化して研磨安定性が低下する。一方、研磨パッド充填率が95%を超える場合には、砥粒スラリーを充分に保持できなくなって、研磨レートが低下する。また、研磨パッドの剛性が高くなりすぎることにより、被研磨基材の表面の反りやうねりに追従しにくくなり、その結果、被研磨基材の全表面に対する平坦性(グローバル平坦性)が低下する。なお、前記研磨パッド充填率は、研磨パッドの見掛け密度を求め、また、研磨パッドの各構成材料の構成比およびそれぞれの密度から空隙率が0%のときの密度(理論密度)を算出し、「研磨パッドの見掛け密度/理論密度×100(%)」の式により算出することができる。
本実施形態の研磨パッドにおいては、繊維束を形成する極細単繊維は、高分子弾性体により集束されている。このように、極細単繊維が集束されていることにより、研磨パッドの剛性が高くなる。極細単繊維が集束されていない場合には、極細単繊維が柔軟性を帯びるために、高い平坦化性能が得られない。また、繊維の抜けが多くなり、抜けた繊維に砥粒が凝集しやすくなる。ここで、極細単繊維が集束されているとは、繊維束内部に存在する極細単繊維の大部分が、繊維束内部に存在する高分子弾性体により接着され拘束されている状態を意味する。
また、複数の繊維束同士は、繊維束の外側に存在する高分子弾性体により結着されて、塊(バルク)状に存在していることが好ましい。このように、繊維束同士が結着されることにより、研磨パッドの形態安定性が向上して、研磨安定性が向上する。
極細単繊維の集束状態、及び、繊維束同士の結着状態は研磨パッドの断面の顕微鏡写真により確認することができる。
極細単繊維を集束している高分子弾性体、及び、繊維束同士を結着している高分子弾性体は非多孔質状であることが好ましい。なお、非多孔質状とは、多孔質状、または、スポンジ状(以下、単に、多孔質状とも言う)の高分子弾性体が有するような空隙(独立気泡)を実質的に有さない状態を意味する。具体的には、例えば、溶剤系ポリウレタンを凝固させて得られるような、微細な空隙を多数有する高分子弾性体ではないことを意味する。集束または結着している高分子弾性体が非多孔質状である場合には、摩耗しにくく、また、研磨時のスラリー屑やパッド屑が空隙に堆積しにくくなるために、高い研磨レートを長時間維持することができる。更に、極細単繊維に対する接着強度が高くなるために、繊維の抜けに起因するスクラッチの発生を抑制することができる。さらに、より高い剛性が得られるために、平坦化性能に優れた研磨パッドが得られる。
本実施形態の研磨パッド中の繊維絡合体と高分子弾性体との比率は、質量比で、90/10〜55/45、さらには、85/15〜65/35の範囲であることが好ましい。繊維絡合体と高分子弾性体との質量比率が上記範囲である場合には、繊維束の断面積を大きくさせやすく、また、研磨パッド表面に表出する極細単繊維の密度を充分に高めることができる。その結果、研磨安定性、研磨レート、及び、被研磨基板の平坦性をより高めることができる。前記比率が高すぎる場合には繊維束の内部に高分子弾性体を充分に充填することが困難になり、低すぎる場合には繊維密度が不充分になる傾向がある。
本実施形態の研磨パッドは、少なくとも一表面に、平均断面積が0.01〜30μm2の極細単繊維が600本/mm2以上、好ましくは1000本/mm2以上、さらに好ましくは、2000本/mm2以上の繊維密度で存在する。このように研磨パッド表面に極細単繊維が高い繊維密度で存在するために、砥粒の保持性が高くなり、また、被研磨基材に対して高い接触面積を維持することができる。また、研磨パッドの表面がソフトになるために、スクラッチが生じにくくなる。前記極細単繊維の繊維密度が600本/mm2未満の場合には、スラリーの保持性が低下して、研磨レートや研磨均一性が低下し、また、砥粒の凝集物が存在する場合にはスクラッチが発生しやすくなる。前記繊維密度の上限は特に限定されないが、工業的な生産性の観点から、1000000本/mm2程度以下であることが好ましい。なお、表面における、極細単繊維は、研磨前のシーズニング処理や研磨時のドレッシィング処理、またはバフィング等の起毛処理やその他の研磨処理により、集束された繊維束の先端部のみが極細単繊維に分繊されたものであってもよい。また、表面に極細単繊維が存在している限り、繊維が表面と平行に存在(繊維が寝た状態)していても、立毛状態であってもよく、繊維に起因した凹凸を形成していても良い。
本実施形態の研磨パッドは、50℃の温水で飽和膨潤させたときの吸水率が5〜45質量%、好ましくは10〜30質量%である。前記吸水率が5質量%未満の場合には、砥粒スラリーの保持量が少なくなって、研磨レートが低下し、平坦性が低下する。また、前記吸水率が45質量%を超える場合には、研磨中に硬度等の特性が変化しやすくなるために、研磨レートが経時的に低下する。
研磨パッドは連通孔を有することが、吸水率を高めることが容易である点から好ましい。独立気泡のみでは研磨パッドに水が吸水されにくいため、5〜45質量%の吸水率にすることは困難である。ここで、連通孔とは、研磨パッドの表面と裏面とを貫通する孔を意味する。
なお、連通孔構造における吸水率は研磨パッドの空隙に相関することから、研磨パッド中の空隙の割合を調整することにより、吸水率を調整することができる。連通孔の存在は、研磨パッドの表面に滴下した水が、研磨パッドの連通孔を通じて、研磨パッドの裏面に表出することにより確認できる。
また、本実施形態の研磨パッドは、50℃の温水で飽和膨潤させたときの50℃における貯蔵弾性率[E’(50℃、wet)]が100〜800MPa、好ましくは200〜600MPaの範囲である。CMPによる研磨においては、研磨が進行するにつれて摩擦熱により研磨パッドの温度が50℃程度にまで高くなる。また、研磨は砥粒スラリーの存在下、湿潤状態で行われる。研磨パッドが50℃の温水で飽和膨潤させたときの50℃における貯蔵弾性率が100MPa未満の場合には、研磨が進行するにつれて研磨パッドの剛性が低下する。その結果、研磨レートや、平坦化性能が低下する傾向がある。また、前記研磨パッドの50℃における貯蔵弾性率が800MPaを超える場合には、研磨の際の剛性が高すぎてスクラッチが発生しやすくなる。
さらに、本実施形態の研磨パッドは、50℃の温水で飽和膨潤させたときの50℃における損失弾性率[E’’(50℃、wet)]が13〜130MPa、さらには、30〜100MPaの範囲であることが好ましい。前記損失弾性率が低すぎる場合には、研磨パッドが研磨中に塑性変形(永久変形)することにより形状が変化して、研磨レートが経時的に低下する傾向がある。一方、前記損失弾性率が高すぎる場合には、塑性変形しにくいために研磨パッドの柔軟性(クッション性)が低下して被研磨基材との密着性が低下することにより、平坦化性能が低下する傾向がある。
さらに、本実施形態の研磨パッドは、50℃における貯蔵弾性率[E’(50℃、dry)]と50℃の温水で飽和膨潤したときの50℃における貯蔵弾性率[E’(50℃、wet)]との比[E’(50℃、dry)/E’(50℃、wet)]が、2.5以下、さらには1.8以下であって、0.5以上であることが好ましい。前記[E’(50℃、dry)/E’(50℃、wet)]が高すぎる場合には、研磨の際に研磨パッドが砥粒スラリーを徐々に吸水することにより、剛性が低下していく傾向があり、そのために、研磨レートや研磨均一性が変動することにより、研磨安定性が低下しやすい傾向がある。
さらに、本実施形態の研磨パッドは、50℃の温水で飽和膨潤したときの23℃における貯蔵弾性率[E’(23℃、wet)]と50℃の温水で飽和膨潤したときの50℃における貯蔵弾性率[E’(50℃、wet)]との比[E’(23℃、wet)/E’(50℃、wet)]が2.5以下、さらには1.8以下であって、0.5以上であることが好ましい。研磨の際に研磨パッドの表面は、局部的、又は全体的に23〜50℃程度にまで変化する。このような場合において、前記[E’(23℃、wet)/E’(50℃、wet)]が高すぎる場合には、研磨の際に局部的な温度の上昇により、研磨パッドの剛性が部分的に低下する傾向がある。これにより、研磨レートや研磨均一性が変動したり、研磨安定性が低下する傾向がある。
例えば、ポリウレタン弾性体は、貯蔵弾性率の温度依存性が大きく、また、吸水することによりその温度依存性は変化するが、一般的に、ポリウレタン弾性体の[E’(23℃、wet)/E’(50℃、wet)]は大きい(例えば、2.5〜20程度)。本実施形態の研磨パッドにおいては、例えば、ガラス転移温度が50℃以上で吸水率が4質量%以下のような熱可塑性樹脂からなる極細単繊維を高充填することにより、研磨パッドの[E’(23℃、wet)/E’(50℃、wet)]を低くすることができる。
本実施形態の研磨パッドの見掛け密度は、0.7〜1.2g/cm3、さらには、0.8〜1.2g/cm3の範囲であることが、剛性に優れている点から好ましい。
また、本実施形態の研磨パッドの23℃におけるJIS−D硬度は、45〜75、さらには50〜70程度であることが好ましい。前記D硬度が高すぎる場合にはスクラッチが発生しやすくなり、低すぎる場合には平坦化性能が低下する傾向がある。なお、本実施形態の研磨パッドは、表面に極細単繊維が高い繊維密度で形成されるために、極細単繊維を含有しない研磨パッドに比べて表面がソフトである。そのために、D硬度を高めてもスクラッチが発生しにくい。
さらに、本実施形態の研磨パッドは、50℃の温水で飽和膨潤させたときの23℃におけるJIS−D硬度[D(23℃、wet)]が50〜70であることが好ましい。なお、[D(23℃、wet)]が50〜70は、[E’(50℃、wet)]が130〜800MPa程度の研磨パッドにより得られる。
また、50℃の温水で飽和膨潤させたときの23℃における研磨パッドのD硬度[D(23℃、wet)]と23℃における研磨パッドのD硬度[D(23℃、dry)]の比率([D(23℃、wet)]/[D(23℃、dry)]は、0.9〜1.1程度であることが好ましい。前記比率が0.9以上の研磨パッドは、[E’(50℃、dry)]/[E’(50℃、wet)]が2.5以下程度の研磨パッドにより得られる。
なお、50℃の温水で飽和膨潤させたときの23℃における研磨パッドのD硬度[D(23℃、wet)]が47〜70である場合には、50℃の温水で飽和膨潤させた時のC硬度[C(23℃、wet)]が90〜99、50℃の温水で飽和膨潤させた時のA硬度[A(23℃、wet)]では91〜99程度にほぼ対応する。
また、本実施形態の研磨パッドは、テーバー摩耗(摩耗輪H−22、荷重500g、1000回)での摩耗減量が10〜150mg、さらには、20〜100mgであることが好ましい。摩擦減量が小さすぎる場合には、研磨中のドレッシング処理等において表面構造が自己更新されにくく、目詰まりが起こりやすくなって、研磨レートが低下したり、研磨パッド寿命が短くなりやすい。一方、摩耗減量が大きすぎる場合には、繊維が抜けやすくなり、そのために、研磨安定性が低下したり、脱落した繊維によりスクラッチが発生しやすくなる。また、研磨パッドの寿命も短くなる。本実施形態の研磨パッドは、摩耗しにくい集束された高い繊維密度の極細単繊維の繊維束からなる繊維絡合体と、高分子弾性体との比率を調整することにより摩耗減量を適宜調整することができる。
本実施形態の研磨パッドは、バフィング等によるパッド平坦化処理や、ダイヤモンド等のパッドドレッシングを用いた研磨前のシーズニング処理(コンディショニング処理)や、研磨時のドレッシィング処理を施すことにより、表面近傍に存在する繊維束を分繊、又はフィブリル化することにより研磨パッドの表面に極細単繊維を形成させていることが好ましい。
[研磨パッドの製造方法]
次に、本実施形態の研磨パッドの製造方法の一例について詳しく説明する。
本実施形態の研磨パッドの製造方法は、特に限定されず、具体的な例としては、以下のような方法が挙げられる。
水溶性熱可塑性樹脂5〜50質量%と非水溶性熱可塑性樹脂95〜50質量%とを溶融紡糸して得られる海島型複合繊維からなる長繊維ウェブを製造するウェブ製造工程と、前記長繊維ウェブを複数枚重ねて絡合させることによりウェブ絡合シートを形成するウェブ絡合工程と、前記ウェブ絡合シートを湿熱収縮させることにより、面積収縮率が35%以上になるように収縮させる湿熱収縮処理工程と、前記ウェブ絡合シート中の前記水溶性熱可塑性樹脂を熱水中で溶解することにより、極細単繊維からなる繊維絡合体を形成する繊維絡合体形成工程と、前記繊維絡合体に高分子弾性体を形成するための高分子弾性体の水性液を含浸及び乾燥凝固させる高分子弾性体充填工程、とを備えるような研磨パッドの製造方法が挙げられる。
前記製造方法においては、長繊維を含有するウェブ絡合シートを湿熱収縮させる工程を経ることにより、短繊維を含有するウェブ絡合シートを湿熱収縮させる場合に比べて、ウェブ絡合シートを大きく収縮させることができ、そのために、極細単繊維の繊維密度が緻密になる。そして、ウェブ絡合シートの水溶性熱可塑性樹脂を溶解抽出することにより、極細単繊維の繊維束からなる繊維絡合体が形成される。このとき、水溶性熱可塑性樹脂が溶解抽出された部分に空隙が形成される。そして、この空隙に高分子弾性体の水性液を含浸及び乾燥凝固させることにより、繊維束を構成する極細単繊維が集束されるとともに、繊維束同士も集束される。このようにして、繊維密度が高く、空隙率が低く、極細単繊維が集束された剛性が高い研磨パッドが得られる。このようにして、極細単繊維の繊維密度が高く、また、50℃の温水で飽和膨潤させたときの吸水率が5〜45質量%になるような量の空隙を有する研磨パッドが得られる。
以下に各工程について、詳しく説明する。
(1)ウェブ製造工程
本工程においては、はじめに、水溶性熱可塑性樹脂5〜50質量%と非水溶性熱可塑性樹脂95〜50質量%とを溶融紡糸して得られる海島型複合繊維からなる長繊維ウェブを製造する。
前記海島型複合繊維は、水溶性熱可塑性樹脂と、前記水溶性熱可塑性樹脂との相溶性が低い非水溶性熱可塑性樹脂とを溶融紡糸することにより得られる。そして、このような海島型複合繊維から前記水溶性熱可塑性樹脂を溶解除去または分解除去することにより、極細単繊維が形成される。海島型複合繊維の太さは、工業性の観点から、0.5〜3デシテックスであることが好ましい。
なお、本実施形態においては、極細単繊維を形成するための複合繊維として海島型複合繊維について詳しく説明するが、海島型繊維の代わりに多層積層型断面繊維等の公知の極細繊維発生型繊維を用いてもよい。
前記水溶性熱可塑性樹脂としては、水、アルカリ性水溶液、酸性水溶液等により、溶解除去または分解除去できる熱可塑性樹脂であって、溶融紡糸が可能な樹脂が好ましく用いられる。このような、水溶性熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール共重合体等のポリビニルアルコール系樹脂(PVA系樹脂);ポリエチレングリコール及び/又はスルホン酸アルカリ金属塩を共重合成分として含有する変性ポリエステル;ポリエチレンオキシド等が挙げられる。これらの中では、特に、PVA系樹脂が以下の理由により、好ましく用いられる。
PVA系樹脂を水溶性熱可塑性樹成分とする海島型複合繊維を用いた場合、PVA系樹脂を溶解することにより形成される極細単繊維が大きく捲縮する。このときに繊維が緻密になり、繊維密度がとくに高い繊維絡合体が得られる。また、PVA系樹脂を水溶性熱可塑性樹脂成分とする海島型複合繊維を用いた場合、PVA系樹脂を溶解させるときに、形成される極細単繊維や高分子弾性体は実質的に分解または溶解されないので、極細単繊維や高分子弾性体の物性低下が起こりにくい。さらに、環境負荷も小さい。
PVA系樹脂は、ビニルエステル単位を主体とする共重合体をケン化することにより得られる。ビニルエステル単位を形成するためのビニル単量体の具体例としては、例えば、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、及び、バーサティック酸ビニル等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、酢酸ビニルが工業性の点から好ましい。
PVA系樹脂は、ビニルエステル単位のみからなるホモPVAであっても、ビニルエステル単位以外の共重合単量体単位を構成単位として含有する変性PVAであってもよい。溶融紡糸性、水溶性、繊維物性を制御できる点から、変性PVAがより好ましい。ビニルエステル単位以外の共重合単量体単位の具体例としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテンなどの炭素数4以下のα−オレフィン類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類等が挙げられる。ビニルエステル単位以外の共重合単量体単位の含有割合としては、1〜20モル%、さらには、4〜15モル%とくには、6〜13モル%の範囲であることが好ましい。これらの中ではエチレン単位を4〜15モル%、さらには、6〜13モル%含有するエチレン変性PVAが海島型複合繊維の物性が高くなる点から好ましい。
PVA系樹脂の粘度平均重合度は、200〜500、さらには、230〜470、とくには、250〜450の範囲であることが、安定な海島構造を形成する点、溶融紡糸性に優れた溶融粘度を示す点、及び、溶解時の溶解速度が速い点から好ましい。なお、前記重合度は、JIS−K6726に準じて測定される。すなわち、PVA樹脂を再ケン化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η]から次式により求められる。
粘度平均重合度P=([η]×103/8.29)(1/0.62)
PVA系樹脂のケン化度としては、90〜99.99モル%、さらには93〜99.98モル%、とくには、94〜99.97モル%、殊には、96〜99.96モル%の範囲であることが好ましい。前記ケン化度がこのような範囲である場合には、水溶性に優れ、熱安定性が良好で、溶融紡糸性に優れ、また、生分解性にも優れたPVA系樹脂が得られる。
前記PVA系樹脂の融点としては、160〜250℃、さらには170〜227℃、特には175〜224℃、殊には180〜220℃の範囲であることが、機械的特性及び熱安定性に優れる点、及び溶融紡糸性に優れる点から好ましい。なお、前記PVA系樹脂の融点が高すぎる場合には、融点と分解温度が近づくために、溶融紡糸の際に分解を生じることにより、溶融紡糸性が低下する傾向がある。
また、前記PVA系樹脂の融点が、前記非水溶性熱可塑性樹脂の融点に比べて低すぎる場合には、溶融紡糸性が低下する点から好ましくない。このような観点から、PVA系樹脂の融点は、前記非水溶性熱可塑性樹脂の融点に比べて60℃以上、さらには、30℃以上低すぎないことが好ましい。
前記非水溶性熱可塑性樹脂としては、水、アルカリ性水溶液、酸性水溶液等により、溶解除去または分解除去されない熱可塑性樹脂であって、溶融紡糸が可能な樹脂が好ましく用いられる。
前記非水溶性熱可塑性樹脂の具体例としては、上述した、研磨パッドを構成する極細単繊維を形成するために用いられる、各種熱可塑性樹脂が用いられうる。
前記非水溶性熱可塑性樹脂は各種添加剤を含有してもよい。前記添加剤の具体例としては、例えば、触媒、着色防止剤、耐熱剤、難燃剤、滑剤、防汚剤、蛍光増白剤、艶消剤、着色剤、光沢改良剤、制電剤、芳香剤、消臭剤、抗菌剤、防ダニ剤、無機微粒子等が挙げられる。
次に、前記水溶性熱可塑性樹脂と前記非水溶性熱可塑性樹脂とを溶融紡糸して海島型複合繊維を形成し、得られた海島型複合繊維から長繊維ウェブを形成する方法について、詳しく説明する。
前記長繊維ウェブは、例えば、前記水溶性熱可塑性樹脂と前記非水溶性熱可塑性樹脂とを溶融紡糸することにより複合化した後、スパンボンド法により、延伸後、堆積させることにより得られる。このように、スパンボンド法によりウェブを形成することにより、繊維の抜けが少なく、繊維密度が高く、形態安定性が良好な海島型複合繊維からなる長繊維ウェブが得られる。なお、長繊維とは、短繊維を製造するときのような切断工程を経ずに製造された繊維である。
海島型複合繊維の製造においては、水溶性熱可塑性樹脂5〜50質量%、好ましくは10〜40質量%と非水溶性熱可塑性樹脂95〜50質量%、好ましくは90〜60質量%とがそれぞれ溶融紡糸され、複合化される。水溶性熱可塑性樹脂と非水溶性熱可塑性樹脂との質量割合がこのような範囲である場合には、高密度の繊維絡合体が得られ、また、極細単繊維の形成性にも優れる。前記水溶性熱可塑性樹脂の割合が50質量%を超える場合には、充分に高い繊維密度を有する繊維束が得られず、一方、5質量%未満の場合には、紡糸時に繊維束の形成性に問題が生じ易く、均一な繊維束、即ち極細単繊維同士が十分にフィブリル化しないことから、研磨安定性が低下する傾向にある。
水溶性熱可塑性樹脂と非水溶性熱可塑性樹脂とを溶融紡糸により複合化した後、スパンボンド法により、長繊維ウェブを形成する方法について、以下に詳しく説明する。
はじめに、水溶性熱可塑性樹脂及び非水溶性熱可塑性樹脂をそれぞれ別々の押出機により溶融混練し、それぞれ異なる紡糸口金から溶融樹脂のストランドを同時に吐出させる。そして、吐出されたストランドを複合ノズルで複合させた後、紡糸ヘッドのノズル孔から吐出させることにより海島型複合繊維を形成する。溶融複合紡糸においては、海島型複合繊維における島数は4〜4000島/繊維、さらには10〜1000島/繊維にすることが、単繊維繊度が小さく且つ単繊維密度の高い繊維束が得られる点から好ましい。
前記海島型複合繊維は冷却装置で冷却された後、エアジェット・ノズルなどの吸引装置を用いて目的の繊度となるように1000〜6000m/分の引き取り速度に相当する速度の高速気流により延伸される。その後、延伸された複合繊維を移動式の捕集面の上に堆積することにより長繊維ウェブが形成される。なお、このとき、必要に応じて堆積された長繊維ウェブを、部分的に圧着してもよい。長繊維ウェブの目付量は、20〜500g/m2の範囲であることが均一な繊維絡合体が得られ、また、工業性の点から好ましい。
(2)ウェブ絡合工程
次に、得られた長繊維ウェブを複数枚重ねて絡合させることによりウェブ絡合シートを形成するための、ウェブ絡合工程について説明する。
ウェブ絡合シートは、ニードルパンチや高圧水流処理等の公知の不織布製造方法を用いて長繊維ウェブに絡合処理を施すことにより形成される。以下に、代表例として、ニードルパンチによる絡合処理について詳しく説明する。
はじめに、長繊維ウェブに針折れ防止油剤、帯電防止油剤、絡合向上油剤などのシリコーン系油剤または鉱物油系油剤を付与する。なお、目付ムラを低減させるために、2枚以上の繊維ウェブを、クロスラッパーにより重ね合わせ、油剤を付与してもよい。
その後、例えば、ニードルパンチにより三次元的に繊維を絡合させる絡合処理を行う。ニードルパンチ処理を行うことにより、繊維密度が高く、繊維の抜けを起こしにくいウェブ絡合シートが得られる。なお、ウェブ絡合シートの目付量は、目的とする研磨パッドの厚さ等に応じて適宜選択されるが、具体的には、例えば、100〜1500g/m2の範囲であることが取扱い性に優れる点から好ましい。
油剤の種類や量、及び、ニードルパンチにおけるニードル形状、ニードル深度、パンチ数などのニードル条件は、ウェブ絡合シートの層間剥離力が高くなるような条件が適宜選択される。バーブ数は針折れが生じない範囲で多いほうが好ましく、具体的には、例えば、1〜9バーブの中から選ばれる。ニードル深度は重ね合わせたウェブ表面までバーブが貫通するような条件、かつ、ウェブ表面にニードルパンチ後の模様が強く出ない範囲で設定することが好ましい。また、ニードルパンチ数はニードル形状、油剤の種類と使用量等により調整されるが、具体的には、500〜5000パンチ/cm2が好ましい。また、絡合処理後の目付量が、絡合処理前の目付量の質量比で1.2倍以上、さらには、1.5倍以上となるように絡合処理することが、繊維密度が高い繊維絡合体が得られ、また、繊維の抜けを低減できる点から好ましい。上限は特に限定されないが、処理速度の低下による製造コストの増大を避ける点で4倍以下であることが好ましい。
ウェブ絡合シートの層間剥離力は、2kg/2.5cm以上、さらには、4kg/2.
5cm以上であることが、形態保持性が良好で、且つ、繊維の抜けが少なく、繊維密度が高い繊維絡合体が得られる点から好ましい。なお、層間剥離力は、三次元絡合の度合いの目安になる。層間剥離力が小さすぎる場合には、繊維絡合体の繊維密度が充分に高くない。また、絡合不織布の層間剥離力の上限は特に限定されないが、絡合処理効率の点から30kg/2.5cm以下であることが好ましい。
また、研磨パッドの硬さを調節する目的で、必要に応じて、上記のようにして得られた不織布であるウェブ絡合シートにさらに極細単繊維からなる編物または織物(編織物)を重ねて、ニードルパンチング処理および/または高圧水流処理により絡合処理を行うことにより、編織物が絡合一体化された絡合不織布、例えば、編織物/絡合不織布、絡合不織布/編織物/絡合不織布などの積層構造体をウェブ絡合シートとして用いてもよい。
前記編織物を構成する極細単繊維は、特に限定されない。具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエステルエラストマー等から形成されるポリエステル系繊維;ナイロン6、ナイロン66、芳香族ポリアミド、ポリアミドエラストマー等から形成されるポリアミド系繊維;ウレタン系ポリマー、オレフィン系ポリマー、アクリロニトリル系ポリマー等からなる繊維が好ましく用いられる。これらの中では、PET、PBT、ナイロン6、ナイロン66等から形成される繊維が、工業性の点から好ましい。
また、前記編織物を形成するための海島型複合繊維の除去成分の具体例としては、例えば、ポリスチレンおよびその共重合体、ポリエチレン、PVA系樹脂、共重合ポリエステル、共重合ポリアミド等が挙げられる。これらの中では、溶解除去する際に大きな収縮を生じる点からPVA系樹脂が好ましく用いられる。
(3)湿熱収縮処理工程
次に、ウェブ絡合シートを湿熱収縮させることにより、ウェブ絡合シートの繊維密度及び絡合度合を高めるための湿熱収縮処理工程について説明する。なお、本工程においては、長繊維を含有するウェブ絡合シートを湿熱収縮させることにより、短繊維を含有するウェブ絡合シートを湿熱収縮させる場合に比べて、ウェブ絡合シートを大きく収縮させることができ、そのために、極細単繊維の繊維密度が特に高くなる。
湿熱収縮処理は、スチーム加熱により行うことが好ましい。
スチーム加熱条件としては、雰囲気温度が60〜130℃の範囲で、相対湿度75%以上、さらには相対湿度90%以上で、60〜600秒間加熱処理することが好ましい。このような加熱条件の場合には、ウェブ絡合シートを高収縮率で収縮させることができるので好ましい。なお、相対湿度が低すぎる場合には、繊維に接触した水分が速やかに乾燥することにより、収縮が不充分になる傾向がある。
湿熱収縮処理は、前記ウェブ絡合シートを面積収縮率が35%以上、さらには、40%以上になるように収縮させる。このように高い収縮率で収縮させることにより、高い繊維密度が得られる。前記面積収縮率の上限は特に限定されないが、収縮の限度や処理効率の点から80%以下程度であることが好ましい。
なお、面積収縮率(%)は、下記式(1):
(収縮処理前のシート面の面積−収縮処理後のシート面の面積)/収縮処理前のシート面の面積×100・・・(1)、により計算される。前記面積は、シートの表面の面積と裏面の面積の平均面積を意味する。
このように湿熱収縮処理されたウェブ絡合シートは、海島型複合繊維の熱変形温度以上の温度で加熱ロールや加熱プレスすることにより、さらに、繊維密度が高められてもよい。
また、湿熱収縮処理前後におけるウェブ絡合シートの目付量の変化としては、収縮処理後の目付量が、収縮処理前の目付量に比べて、1.2倍(質量比)以上、さらには、1.5倍以上で、4倍以下、さらには3倍以下であることが好ましい。
(4)繊維束結着工程
次に、収縮処理された前記ウェブ絡合シートに第一の高分子弾性体の水性液を含浸及び乾燥凝固させることにより、前記長繊維を結着させる繊維束結着工程について説明する。
本工程においては、収縮処理された前記ウェブ絡合シートに、高分子弾性体の水性液を含浸させ、乾燥凝固させることにより、前記ウェブ絡合シートに高分子弾性体を充填する。水性液の状態で高分子弾性体を含浸させ、乾燥凝固させることにより、非多孔質状の高分子弾性体を形成することができる。また、高分子弾性体の水性液は、高濃度にしやすく、また、粘度が低く含浸浸透性が良好なために、高充填しやすく、繊維を強く接着することが出来る。
高分子弾性体の水性液とは、高分子弾性体を形成する成分を水系媒体に溶解した水性溶液、又は、高分子弾性体を形成する成分を水系媒体に分散させた水性分散液である。なお、水性分散液には、懸濁分散液及び乳化分散液が含まれる。特に、耐水性に優れている点から、水性分散液を用いることがより好ましい。
高分子弾性体としては、極細単繊維に対する結着性が高い点から、水素結合性高分子弾性体が好ましい。水素結合性高分子弾性体とは、例えば、ポリウレタン系弾性体、ポリアミド系弾性体、ポリビニルアルコール系弾性体等のように、水素結合により結晶化あるいは凝集する高分子弾性体である。水素結合性高分子弾性体は、接着性が高く、繊維絡合体の形態保持性を向上させ、また、繊維の抜けを抑制する。
以下に、高分子弾性体としてポリウレタン系弾性体を用いる場合について、代表例として詳しく説明する。
ポリウレタン系弾性体としては、平均分子量200〜6000の高分子ポリオールと有機ポリイソシアネ−トと、鎖伸長剤とを、所定のモル比で反応させることにより得られる各種のポリウレタン樹脂が挙げられる。
前記高分子ポリオールの具体例としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(メチルテトラメチレングリコール)などのポリエーテル系ポリオールおよびその共重合体;ポリブチレンアジペートジオール、ポリブチレンセバケートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンアジペート)ジオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンセバケート)ジオール、ポリカプロラクトンジオールなどのポリエステル系ポリオールおよびその共重合体;ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンカーボネート)ジオール、ポリペンタメチレンカーボネートジオール、ポリテトラメチレンカーボネートジオールなどのポリカーボネート系ポリオールおよびその共重合体;ポリエステルカーボネートポリオール等が挙げられる。また、必要に応じて、3官能アルコールや4官能アルコールなどの多官能アルコール、又は、短鎖アルコールを併用してもよい。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。特に、非晶性のポリカーボネート系ポリオール、脂環式ポリカーボネート系ポリオール、直鎖状ポリカーボネート系ポリオール、及び、これらのポリカーボネート系ポリオールとポリエーテル系ポリオール又はポリエステル系ポリオールとの混合物を用いることが、耐加水分解性や耐酸化性等の耐久性に優れた研磨シートが得られる点から好ましい。また、炭素数5以下、特には炭素数3以下のポリアルキレングリコール基を含有する水性高分子弾性体は、水に対する濡れ性がとくに良好になる点から好ましい。
前記有機ポリイソシアネートの具体例としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂肪族あるいは脂環族ジイソシアネート等の無黄変型ジイソシアネート;2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートポリウレタン等の芳香族ジイソシアネート、等が挙げられる。また、必要に応じて、トリメチロールプロパン等の3官能アルコールやペンタエリスリトール等の4官能アルコールなどの多官能アルコール、又は、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の短鎖アルコールを併用してもよい。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートが、繊維に対する接着性が高く、また、硬度が高い研磨パッドが得られる点から好ましい。
前記鎖伸長剤の具体例としては、例えば、ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジンおよびその誘導体、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドなどのジアミン類;ジエチレントリアミンなどのトリアミン類;トリエチレンテトラミンなどのテトラミン類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオールなどのジオール類;トリメチロールプロパンなどのトリオール類;ペンタエリスリトールなどのペンタオール類;アミノエチルアルコール、アミノプロピルアルコールなどのアミノアルコール類等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、ヒドラジン、ピペラジン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミンおよびその誘導体、エチレントリアミンなどのトリアミンの中から2種以上組み合わせて用いることが、短時間で硬化反応が完了する点から好ましい。また、鎖伸長反応時に、鎖伸長剤とともに、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミンなどのモノアミン類;4−アミノブタン酸、6−アミノヘキサン酸などのカルボキシル基含有モノアミン化合物;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのモノオール類を併用してもよい。
また、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)吉草酸などのカルボキシル基含有ジオール等を併用して、ポリウレタン系弾性体の骨格にカルボキシル基などのイオン性基を導入することにより、水に対する濡れ性をさらに向上させることができる。
また、高分子弾性体の吸水率や貯蔵弾性率を制御するために、ポリウレタンを形成するモノマー単位が有する官能基と反応し得る官能基を分子内に2個以上含有する架橋剤や、ポリイソシアネート系化合物、多官能ブロックイソシアネート系化合物等の自己架橋性の化合物を添加することのより、架橋構造を形成することが好ましい。
前記モノマー単位の官能基と架橋剤の官能基との組み合わせとしては、カルボキシル基とオキサゾリン基、カルボキシル基とカルボジイミド基、カルボキシル基とエポキシ基、カルボキシル基とシクロカーボネート基、カルボキシル基とアジリジン基、カルボニル基とヒドラジン誘導体、ヒドラジド誘導体などが挙げられる。これらの中では、カルボキシル基を有するモノマー単位とオキサゾリン基、カルボジイミド基またはエポキシ基を有する架橋剤と組み合わせ、水酸基またはアミノ基を有するモノマー単位とブロックイソシアネート基を有する架橋剤との組み合わせ、およびカルボニル基を有するモノマー単位とヒドラジン誘導体またはヒドラジド誘導体との組み合わせが、架橋形成が容易であり、得られる研磨パッドの剛性や耐磨耗性が優れる点から、特に好ましい。なお、架橋構造は、極細繊維絡合体にポリウレタン樹脂を付与した後の熱処理工程において形成することが、高分子弾性体の水性液の安定性を維持する点から好ましい。これらの中でも、架橋性能や水性液のポットライフ性が優れ、また安全面でも問題のないカルボジイミド基および/またはオキサゾリン基が特に好ましい。カルボジイミド基を有する架橋剤としては、例えば日清紡績株式会社製「カルボジライトE−01」、「カルボジライトE−02」、「カルボジライトV−02」などの水分散カルボジイミド系化合物を挙げることができる。また、オキサゾリン基を有する架橋剤としては、例えば日本触媒株式会社製「エポクロスK−2010E」、「エポクロスK−2020E」、「エポクロスWS−500」などの水分散オキサゾリン系化合物を挙げることができる。架橋剤の配合量としては、ポリウレタン系樹脂に対して、架橋剤の有効成分が1〜20質量%であることが好ましく、1.5〜1質量%であることがより好ましく、2〜10質量%であることがさらに好ましい。
また、極細単繊維との接着性を高め繊維束の剛性を高める点から、ポリウレタン系樹脂中の高分子ポリオールの成分の含有率としては、65質量%以下、さらには、60質量%以下であることが好ましい。また、40質量%以上、さらには、45質量%以上であることが適度な弾性を付与することによりスクラッチの発生を抑制することができる点から好ましい。
また、ポリウレタン樹脂は、浸透剤、消泡剤、滑剤、撥水剤、撥油剤、増粘剤、増量剤、硬化促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光剤、防黴剤、発泡剤、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなどの水溶性高分子化合物、染料、顔料、無機微粒子などをさらに含有してもよい。
ポリウレタン樹脂を水性溶液または水性分散液にする方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。具体的には、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、水酸基などの親水性基を有する単量体を共重合成分として用いることにより、水性媒体に対する分散性をポリウレタン樹脂に付与する方法、または、ポリウレタン樹脂に界面活性剤を添加して、乳化又は懸濁させる方法が挙げられる。また、水性高分子弾性体は水に対する濡れ性に優れる特性が有り、砥粒を均一且つ多量に保持ことに有利である。
前記乳化又は懸濁に用いられる界面活性剤の具体例としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体などのノニオン性界面活性剤などが挙げられる。また、反応性を有する、いわゆる反応性界面活性剤を用いてもよい。また、界面活性剤の曇点を適宜選ぶことにより、ポリウレタン樹脂に感熱ゲル化性を付与することもできる。
ポリウレタン樹脂の水性分散液の分散平均粒子径としては、0.01〜1μm、さらには、0.03〜0.5μmであることが好ましい。
本工程においては、高分子弾性体を形成するために、従来一般的に用いられている高分子弾性体の有機溶媒溶液を用いる代わりに、高分子弾性体の水性液を用いている。このように高分子弾性体の水性液を用いることにより、より高い濃度で高分子弾性体を含有する樹脂液を含浸させることができる。そして、これにより、得られる研磨パッドの空隙率を低下させることができる。
高分子弾性体の水性液の含浸する固形分濃度は、15質量%以上、さらには、25質量%以上であることが、空隙率を充分に低下させることができる点から好ましい。
前記ウェブ絡合シートに高分子弾性体の水性液を含浸する方法としては、例えば、ナイフコーター、バーコーター、又はロールコーターを用いて、または、ディッピングする方法が挙げられる。
そして、高分子弾性体の水性液が含浸されたウェブ絡合シートを乾燥することにより、高分子弾性体を凝固させることができる。乾燥方法としては、50〜200℃の乾燥装置中で熱処理する方法や、赤外線加熱の後に乾燥機中で熱処理する方法等が挙げられる。
なお、前記ウェブ絡合シートに高分子弾性体の水性液を含浸させた後、乾燥する場合、該水性液がウェブ絡合シートの表層に移行(マイグレーション)することにより、均一な充填状態が得られないことがある。このような場合には、水性液の高分子弾性体の粒径を調整すること;高分子弾性体のイオン性基の種類や量を調整すること、あるいは、pH等を変えてその安定性を調整すること;1価または2価のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩、ノニオン系乳化剤、会合型水溶性増粘剤、水溶性シリコーン系化合物などの会合型感熱ゲル化剤、または、水溶性ポリウレタン系化合物を併用すること等により、40〜100℃程度における水分散安定性を低下させること;等によりマイグレーションを抑制することができる。なお、必要に応じて、高分子弾性体が表面に偏在するようにマイグレーションさせてもよい。
(5)極細単繊維形成工程
次に、前記繊維束結着工程の後、水溶性熱可塑性樹脂を熱水中で溶解することにより、極細単繊維を形成する極細単繊維形成工程について説明する。
本工程は、ウェブ絡合シートと高分子弾性体との複合体を形成した後に、水溶性熱可塑性樹脂を除去することにより極細単繊維を形成する工程である。このとき、前記ウェブ絡合シートの水溶性熱可塑性樹脂が溶解抽出された部分に空隙が形成される。そして、この空隙に、後の高分子弾性体充填工程において、第二の高分子弾性体を充填することにより、極細単繊維が集束される。
極細単繊維化処理は、ウェブ絡合シートと水性高分子弾性体との複合体を、水、アルカリ性水溶液、酸性水溶液等で熱水加熱処理することにより、水溶性熱可塑性樹脂を溶解除去、または、分解除去する処理である。
熱水加熱処理条件の具体例としては、例えば、第1段階として、65〜90℃の熱水中に5〜300秒間浸漬した後、さらに、第2段階として、85〜100℃の熱水中で100〜600秒間処理することが好ましい。また、溶解効率を高めるために、必要に応じてロールでのニップ処理、高圧水流処理、超音波処理、シャワー処理、攪拌処理、揉み処理などを行ってもよい。
本工程においては、海島型複合繊維から水溶性熱可塑性樹脂を溶解して極細単繊維を形成する際に、極細単繊維が大きく捲縮される。この捲縮により繊維密度がさらに高くなるために、高い繊維密度の繊維絡合体が得られる。
(6)高分子弾性体充填工程
次に、極細単繊維形成工程(5)で形成された極細単繊維から形成される繊維束内部に第二の高分子弾性体を充填する工程について説明する。
極細単繊維形成工程(5)において、ウェブ絡合シートと水性高分子弾性体との複合体を形成した後に、海島型繊維に極細単繊維化処理を施すことにより、水溶性熱可塑性樹脂が除去されて繊維束の内部に空隙が形成される。本工程においては、このような空隙に高分子弾性体を充填することにより、極細単繊維を集束するとともに、研磨パッドの見かけの体積に対する真の体積の割合を高めることができる。
極細単繊維が繊維束を形成している場合には、該極細単繊維は高分子弾性体により集束されて拘束されやすい。この理由は、極細単繊維からなる繊維束には、毛細管現象により高分子弾性体の水性液が含浸されやすく、極細単繊維が寄り集まっている繊維束内部が効果的に集束されるためであると考えられる。
本工程に用いられる第二の高分子弾性体の水性液は、繊維束結着工程(4)で用いられる第一の高分子弾性体の水性液と同様のものが用いられうる。なお、繊維接着性などを制御する目的で、第一の高分子弾性体の水性液と第二の高分子弾性体の水性液とが別の種類であってもよい。
本工程において極細単繊維から形成される繊維束内部に高分子弾性体を充填する方法は、繊維束結着工程(4)で用いられる方法と同様の方法が適用できる。具体的には、極細単繊維化された繊維絡合体と繊維束結着工程(4)で充填された第一の高分子弾性体との複合体に、第二の高分子弾性体の水性液を含浸させた後、乾燥凝固させる方法が用いられる。このようにして、研磨パッドが形成される。
なお、上記製造方法においては、50℃の温水で飽和膨潤させたときの吸水率は、研磨パッド充填率を調整することや、極細単繊維の親水性や、高分子弾性体の親水性や架橋蜜度等を調整することにより適宜調整することができる。具体的には、研磨パッド充填率を55〜95%の範囲とし、更に、均一に吸水することから極細単繊維或いは高分子弾性体に親水性基を含有させること等により調整することができる。特に、研磨性能への悪影響が少なく均一に吸水する点で、高分子弾性体に親水性基を含有することが好ましい。
また、50℃の温水で飽和膨潤したときの50℃における貯蔵弾性率[E’(50℃、wet)]は、研磨パッド充填率を調整することや、極細単繊維の繊度や高分子弾性体の組成や架橋密度等を調整することにより適宜調整することができる。具体的には、研磨パッド充填率を55〜95%の範囲とし、更に、繊維絡合体と高分子弾性体との比率を10/90〜45/55とすること、及び、極細単繊維や高分子弾性体の組成や吸水率を調整することにより適宜調整できる。
[研磨パッドの他の製造方法]
本実施形態の研磨パッドの製造方法の他の例としては、以下の方法が挙げられる。
(1)水溶性熱可塑性樹脂5〜50質量%と非水溶性熱可塑性樹脂95〜50質量%とを溶融紡糸して得られる海島型複合繊維からなる長繊維ウェブを製造するウェブ製造工程と、(2)前記長繊維ウェブを複数枚重ねて絡合させることによりウェブ絡合シートを形成するウェブ絡合工程と、(3)前記ウェブ絡合シートを湿熱収縮させることにより、面積収縮率が35%以上になるように収縮させる湿熱収縮処理工程と、(4)前記収縮した前記ウェブ絡合シート中の前記水溶性熱可塑性樹脂を熱水中で溶解することにより、極細単繊維の繊維束からなる繊維絡合体を形成する工程と、(5)前記繊維絡合体に高分子弾性体の水性液を含浸及び乾燥凝固させる高分子弾性体充填工程とを備える製造方法。
前記製造方法においては、水溶性熱可塑性樹脂5〜50質量%と非水溶性熱可塑性樹脂95〜50質量%とを水溶性熱可塑性樹脂と非水溶性熱可塑性樹脂とを溶融紡糸して得られる長繊維の海島型複合繊維からなるウェブ絡合シートを湿熱収縮させることにより繊維密度が高められる。そして、収縮されたウェブ絡合シート中の海島型複合繊維の海成分を形成する水溶性熱可塑性樹脂を溶解抽出することにより、繊維束からなる繊維絡合体が形成される。そして、得られた繊維絡合体に高分子弾性体の水性液を含浸及び乾燥凝固させることにより研磨パッドが得られる。このように、予め極細単繊維化された繊維束から形成される繊維絡合体に高分子弾性体を充填することにより、繊維束を構成する極細単繊維が集束されるとともに、繊維束同士も結着される。このような方法によっても、本実施形態の研磨パッドは得られる。なお、本製造方法に用いられる各種成分、ウェブ絡合シートの製造条件、熱収縮処理条件、及び、高分子弾性体の充填条件等は、前記第一の製造方法で説明したのと同様の方法が用いられる。
[研磨パッドの後加工]
得られた研磨パッドは、必要に応じて、成形処理、平坦化処理、起毛処理、積層処理、及び表面処理等の後加工処理が施されてもよい。
前記成形処理、及び平坦化処理は、得られた研磨パッドを研削により所定の厚みに熱プレス成形したり、所定の外形に切断したりする加工である。研磨パッドとしては、厚み0.5〜3mm程度に研削加工されたものであることが好ましい。
前記起毛処理とは、サンドペーパー、針布、ダイヤモンド等により研磨パッド表面に機械的な摩擦力や研磨力を与えて、集束された極細単繊維を分繊する処理である。このような起毛処理により、研磨パッド表層部に存在する繊維束がフィブリル化され、表面に多数の極細単繊維が形成される。
前記積層処理とは、得られた研磨パッドを基材に張り合わせて積層化することにより剛性を調整する処理である。例えば、研磨パッドを硬度の低い弾性体シートと積層することにより、被研磨面のグローバル平坦性(非研磨基材全体の平坦性)を向上させることができる。なお、積層の際の接着は、溶融接着でも、接着剤や粘着剤を介した接着であってもよい。前記基材の具体例としては、例えば、ポリウレタン等からなる弾性スポンジ体;ポリウレタンを含浸した不織布(例えば、ニッタ・ハース(株)製の商品名Suba400);天然ゴム、ニトリルゴム、ポリブタジエンゴム、シリコーンゴムなどのゴムやポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性エラストマーからなる弾性樹脂フィルム;発泡プラスチック;編物、織物等のシート状基材が挙げられる。
また、前記表面処理は、砥粒スラリーの保持性や排出性を調整するために研磨パッド表面に、格子状、同心円状、渦巻き状等の溝や孔を形成する処理である。
[研磨方法]
以下に、本実施形態の研磨パッドを用いた研磨の一例として、ケミカルメカニカル研磨(CMP)について、図4の模式説明図を参照しながら説明する。
図4中、20は研磨装置、21はターンテーブル、22は砥粒スラリー供給管、23はコンディショナ、24は被研磨基材である。また、ターンテーブル21の表面には、研磨パッド10が貼られている。
ターンテーブル21は研磨装置20に備えられた図略のモータにより高速回転される。CMPにおいては、高速回転するターンテーブル21に貼られた研磨パッド10に砥粒スラリー供給管22から砥粒スラリー25が少量ずつ供給される。そして、被研磨基材24は、研磨装置20に備えられた図略の荷重手段により荷重が掛けられることにより、その表面が研磨される。また、研磨パッド10は、研磨の経時変化を抑制するために、コンディショナ23により表面の目立てが施される。
砥粒スラリーは、水やオイルなどの液状媒体に、シリカ、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素等の研磨剤が分散されたスラリーである。また、砥粒スラリーは、必要に応じて、塩基、酸、界面活性剤などの成分を含有してもよい。
また、CMPを行うに際し、必要に応じ、研磨スラリーと共に、潤滑油、冷却剤などを供給してもよい。
前記コンディショナとしては、好ましくは#50〜#1000、さらに好ましくは#100〜#600の範囲のダイヤモンド等のドレッサーが用いられる。なお、コンディショニングは被研磨基材24を研磨する前に行っても、研磨中に行ってもよい。また、被研磨基材24の研磨と研磨パッド10のコンディショニングとを交互に行ってもよい。ダイヤモンドドレッサーの番手が小さすぎる場合には、表面粗さが粗くなる傾向があり、一方、大きすぎる場合には、コンディショニングに時間がかかる傾向がある。
本実施形態の研磨パッドは、シリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、半導体ウエハ、半導体デバイス、液晶部材、光学素子、水晶、光学基板、電子回路基板、電子回路マスク基板、多層配線基板、ハードディスク、MEMS(マイクロ−エレクトロ−メカニカルシステムズ)基材等の研磨に好ましく用いられる。
半導体ウエハや半導体デバイスの具体例としては、例えば、酸化シリコン、酸化フッ化シリコン、有機ポリマーなどの絶縁膜;銅、アルミニウム、タングステンなどの配線材金属膜;タンタル、チタン、窒化タンタル、窒化チタンなどのバリアメタル膜を表面に有する基材が挙げられる。
研磨においては、一次研磨、二次研磨(調整研磨)、仕上げ研磨、鏡面研磨等何れの研磨にも用いられる。また、研磨部分としては、基材の表面、裏面、端面のいずれであってもよい。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
[実施例1]
水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系樹脂(PVA系樹脂)と、変性度6モル%のイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレ−ト(変性PET)とを25:75(質量比)の割合で溶融複合紡糸用口金から吐出することにより、海島型複合繊維を形成した。なお、溶融複合紡糸用口金は、島数が25島/繊維で、口金温度は260℃であった。そして、エジェクター圧力を紡糸速度4000m/minとなるように調整して、平均繊度2.0dtexの長繊維をネット上に捕集することにより、目付量30g/m2のスパンボンドシート(長繊維ウェブ)が得られた。
得られたスパンボンドシートをクロスラッピングにより18枚重ねて、総目付が540g/m2の重ね合わせウェブを作製した。そして、得られた重ね合わせウェブに、針折れ防止油剤をスプレーした。次に、バーブ数1個でニードル番手42番のニードル針、及びバーブ数6個でニードル番手42番のニードル針を用いて、重ね合わせウェブを1800パンチ/cm2でニードルパンチ処理して絡合させることにより、ウェブ絡合シートを得た。得られたウェブ絡合シートの目付量は830g/m2、層間剥離力は12.0kg/2.5cmであった。また、ニードルパンチ処理による面積収縮率は35%であった。
次に、得られたウェブ絡合シートを70℃、95%RHの条件で90秒間スチーム処理した。このときの面積収縮率は52%であった。そして、140℃のオーブン中で乾燥させた後、140℃で熱プレスすることにより、目付量1720g/m2、見掛け密度0.80g/cm3、厚み2.15mmのウェブ絡合シートを得た。このとき、熱プレス後のウェブ絡合シートの厚みは、熱プレス前の0.70倍であった。
次に、熱プレスされたウェブ絡合シートに、第1のポリウレタン弾性体として、ポリウレタン弾性体Aの水性分散液(固形分濃度40質量%)を含浸させた。なお、ポリウレタン弾性体Aは、ポリカーボネート系ポリオールと、炭素数2〜3のポリアルキレングリコールと、炭素数4のポリアルキレングリコールとを、6:0.5:3.5(モル比)で混合したポリカーボネート/ポリエーテル(6/4)系をポリオール成分として得られた無黄変型ポリウレタン樹脂を含浸させ、熱処理することにより得られた、吸水率5質量%、150℃における貯蔵弾性率[E’(150℃、dry)]が60MPaの高分子弾性体である。このとき水分散液の付着量はウェブ絡合シートの質量に対して、17質量%であった。そして、水分散液が含浸されたウェブ絡合シートを90℃、50%RH雰囲気下で凝固処理し、さらに、140℃で乾燥処理した後、140℃で熱プレスすることにより、目付量2000g/m2、見掛け密度1.03g/cm3、厚み1.9mmのシートを得た。このとき、熱プレス後のウェブ絡合シートの厚みは、熱プレス前の0.90倍であった。そして、バフィング処理を行って表面と裏面とを平坦化した。
次に、ポリウレタン弾性体Aが充填されたウェブ絡合シートをニップ処理、及び高圧水流処理しながら95℃の熱水中に10分間浸漬することによりPVA系樹脂を溶解除去し、さらに、乾燥することにより、極細単繊維の平均繊度が0.085dtex、目付量1440g/m2、見掛け密度0.78g/cm3、厚み1.85mmである、ポリウレタン弾性体Aと繊維絡合体との複合体を得た。
そして、前記複合体に、第2のポリウレタン弾性体として、ポリウレタン弾性体Bの水性分散液(固形分濃度40質量%)を含浸させた。なお、ポリウレタン弾性体Bは、ポリカーボネート系ポリオールをポリオール成分とし、カルボキシル基含有モノマーを2.0質量%含有した無黄変型ポリウレタン樹脂100質量部にカルボジイミド系架橋剤7質量部を添加して、熱処理することにより架橋構造を形成させた高分子弾性体である。ポリウレタン弾性体Bの吸水率は2質量%、150℃における貯蔵弾性率[E’(150℃、dry)]は40MPaであった。このとき水性分散液の固形分付着量はウェブ絡合シートの質量に対して、17質量%であった。次に、水性分散液が含浸されたウェブ絡合シートを90℃、50%RH雰囲気下で凝固処理し、さらに、140℃で乾燥処理することにより、研磨パッド前駆体が得られた。得られた研磨パッド前駆体は、目付量1720g/m2、見掛け密度0.92g/cm3、厚さ1.85mmであった。
得られた研磨パッド前駆体は、研削加工され、さらに、直径51cmの円形状に切断され、表面に幅2.0mm、深さ1.0mmの溝を格子状に15.0mm間隔で形成することにより、目付量1560g/m2、見掛け密度0.92g/cm3、厚さ1.7mmの円形状の研磨パッドが得られた。
なお、得られた研磨パッドは以下の評価方法により、評価された。
(1)極細単繊維の平均断面積、及び、繊維束内部の極細単繊維の集束状態の確認
得られた研磨パッドをカッター刃を用いて厚み方向に切断することにより、厚み方向の切断面を形成した。そして、得られた切断面を酸化オスミウムで染色した。そして、前記切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で500〜1000倍で観察し、その画像を撮影した。そして、得られた画像から切断面に存在する極細単繊維の断面積を求めた。ランダムに選択した100個の断面積を平均した値を平均断面積とした。また、極細単繊維の集束状態は、得られた画像を観察し、繊維束の外周を構成する極細単繊維のみならず、内部の極細単繊維同士が高分子弾性体によって接着一体化されている状態を集束されている場合を「有」、繊維束の内部に高分子弾性体が存在していないか、あるいは、わずかしか存在しておらず、極細単繊維同士が殆ど接着一体化されていない状態を集束されていない場合を「無」と判断した。
(2)単位面積当たりの繊維束の束数(繊維束密度)
前記「(1)極細単繊維の平均断面積、及び、繊維束内部の極細単繊維の集束状態の確認」の評価で用いた画像を観察し、切断面に存在する繊維束のうち、切断面に対してほぼ垂直に存在する繊維束の束数を数えた。画像1枚あたりの繊維束の本数を数えた部分の面積は約0.5mm2であった。そして、数えられた繊維束の束数を0.5mm2で割ることにより1mm2当たりに存在する繊維束の束数を計算した。10枚の画像について単位面積当たりの繊維束の束数を求め、得られた10個の値を平均した値を、繊維束の単位面積当たりの束数とした。
(3)繊維束の平均断面積、及び断面積が40μm2/束以上である繊維束の割合
研磨パッドをランダムな方向に複数個所切断し、得られた切断面を酸化オスミウムで染色した。そして、前記各切断面をSEMにより500〜1000倍で観察し、その画像を撮影した。得られた画像から繊維束の断面をランダムに1000個選択した。そして、各繊維束の断面積を測定した。そして、測定された1000個の断面積の平均を求めた。また、断面積が40μm2/束以上である繊維束の数を数え、断面積が40μm2以上である繊維束の割合(%)を求めた。
(4)研磨パッドの表面における極細単繊維の平均断面積および繊維密度
研磨した後の研磨パッドの表面を酸化オスミウムで染色した。そして染色された表面をSEMにより100〜200倍で観察し、その画像を10枚撮影した。そして、得られた各画像から極細単繊維の平均断面積および密度(1mm2あたりの極細単繊維の本数)を求めた。そして、算出された10点の平均断面積及び密度をさらに平均した値を、表面における極細単繊維の断面積および繊維密度とした。
(5)50℃の温水で飽和膨潤させたときの吸水率
得られた研磨パッドを縦4cm×横10cmに切り抜いた。そして、20℃、65%RHの条件下に3日間放置して乾燥した。そして、50℃の温水中でディップ及びニップを3回繰り返した後、50℃の温水中に3日間浸漬することにより飽和膨潤させた。そして、温水から取り出した研磨パッドの表面に付着した水滴をJKワイパー150−S(株式会社クレシア製)で拭き取った。そして、研磨パッドの乾燥直後の質量と、飽和膨潤後の質量から、下記式により50℃の温水で飽和膨潤させたときの吸水率を求めた。
吸水率(%)=
(飽和膨潤時の研磨パッドの質量−乾燥直後の研磨パッドの質量)/乾燥直後の研磨パッドの質量×100
(6)50℃の温水で飽和膨潤したときの50℃における貯蔵弾性率及び損失弾性率
得られた研磨パッドを縦4cm×横0.5cmに切り抜いてサンプルを作製した。そして、サンプル厚みをマイクロメーターで測定した。そして、50℃の温水中でディップ及びニップを3回繰り返した後、50℃の温水中に3日間浸漬することにより飽和膨潤させた。そして、温水から取り出した研磨パッドの表面に付着した水滴をJKワイパー150−S(株式会社クレシア製)で拭き取った。そして膨潤処理後のサンプルを用いて、動的粘弾性測定装置(DVEレオスペクトラー、(株)レオロジー社製)により、周波数11Hz、昇温速度3℃/分の条件で、50℃における貯蔵弾性率[E’(50℃、wet)]および損失弾性率[E’’(50℃、wet)]を求めた。
(7)研磨パッドの見掛け密度及び研磨パッド充填率
JIS K 7112に準じて、得られた研磨パッドの見掛け密度を測定した。一方、研磨パッドを構成する各構成成分の構成比率と各構成成分の密度とから、空隙が存在しない場合の繊維絡合体と高分子弾性体との複合体の理論密度を算出した。そして、前記理論密度に対する前記見掛け密度の割合を、研磨パッド充填率(研磨パッドの空隙を除いた部分の体積割合)とした。なお、各成分の密度は、例えば、変性PET(1.38g/cm3)、ポリウレタン弾性体(1.05g/cm3)、PVA系樹脂(1.25g/cm3)である。
(8)繊維絡合体充填率
(5)で求めた研磨パッド充填率から、高分子弾性体の密度と構成比率の積から求めた高分子弾性体の充填率を減じることにより、繊維絡合体の繊維絡合体充填率を算出した。
(9)ウェブ絡合シートの層間剥離力
JIS K6854−3に準拠し、湿熱収縮処理前のウェブ絡合シートを縦23cm、幅2.5cmの形状に切断して試験片を作製した。そして、前記試験片の一端に、厚み方向に対して垂直な方向で、厚み方向の中央部にカミソリで切れ目を入れた後、手で引っ張って約100mm剥離した。そして得られた2つの剥離部分の両端を引張試験機のチャックに挟んだ。そして、引張試験機により、引張速度100mm/分で引っ張ったときの応力−ひずみ曲線(SS曲線)を得、その平坦部分の平均応力から層間剥離力を求めた。なお、N=3のときの平均値を層間剥離力とした。
(10)研磨パッドのD硬度
JIS K 7311に準じて、研磨パッドの23℃におけるD硬度を測定した。
(11)連通孔構造の有無
研磨パッドの表面に滴下した水が、研磨パッドの連通孔を通じて、研磨パッドの裏面に表出するか否かにより、連通孔構造の有無を確認した。
(12)研磨パッドの研磨性能評価
円形状研磨パッドの裏面に粘着テープを貼り付けた後、CMP研磨装置(株式会社野村製作所製「PP0−60S」)に装着した。そして、番手#325のダイヤモンドドレッサー(三菱マテリアル株式会社製のMEC325L)を用いて、圧力177kPa、ドレッサー回転数110回転/分の条件で、蒸留水を120mL/分の速度で流しながら18分間研磨パッド表面を研削することによりコンディショニング(シーズニング)を行った。
次に、プラテン回転数50回転/分、ヘッド回転数49回転/分、研磨圧力35kPaの条件において、キャボット社製砥粒スラリーSS12を120ml/分の速度で供給しながら、酸化膜表面を有する直径6インチのシリコンウエハを100秒間研磨した。そして、研磨後のシリコンウエハ面内の任意の49点の厚みを測定し、各点における研磨された厚みを研磨時間で除することにより、研磨レート(nm/分)を求めた。そして、49点の研磨レートの平均値を研磨レート(R)とし、また、その標準偏差(σ)を求めた。
そして、下式により平坦性を評価した。なお、平坦性の値が小さいほど、平坦化性能に優れていることを示す。
平坦性(%)=(σ/R)×100
次に、前記研磨した研磨パッドを湿潤状態で25℃で24時間放置した。そして、その後、シーズニングを行った後、再度、同様に研磨を行った後の、研磨レート(R)及び平坦性を求めた。
さらに、シーズニングと研磨とを交互に300回繰り返し、300回目の研磨時の研磨レート(R)及び平坦性を求めた。
また、上記研磨後のシリコンウエハの表面に存在する0.16μm以上の大きさの傷の数をウエハ表面検査装置Surfscan SP1(KLA−Tencor社製)を用いて、測定することにより、スクラッチ性を評価した。
〈評価結果〉
得られた研磨パッドの極細単繊維の平均断面積は6.5μm2であり、50℃の温水で飽和膨潤させたときの吸水率は18%であった。また、50℃の温水で飽和膨潤させたときの50℃における貯蔵弾性率[E’(50℃、wet)]は450MPa、50℃における損失弾性率[E’’(50℃、wet)]は56MPaであった。また、研磨パッド表面の極細単繊維の平均断面積が6.5μm2であり、その繊維密度は3200本/mm2であった。また、研磨パッド充填率は72%であり、繊維絡合体充填率は45%であった。また、研磨パッドが連通孔を有していることを水が浸透、通過することにより確認した。また、繊維絡合体とポリウレタン弾性体との質量比率は69/31であった。また、D硬度は63であった。
また、SEMによる観察から、ポリウレタン弾性体が繊維束の内部に存在しており、極細単繊維を集束していることが確認された。また、高分子弾性体が前記繊維束同士を結着していることが確認された。また、前記ポリウレタン弾性体が非多孔質状であることが確認された。このときのSEM写真の一例を、図3及び図4に示す。
また、断面積が40μm2以上である繊維束の割合は90%であって、繊維束の平均断面積は150μm2であった。また、研磨パッド断面の単位面積当たりの繊維束の束数は1500束/mm2であった。結果を表1にまとめて示す。
[実施例2]
ウェブ絡合シートを熱プレスする工程までは実施例1と同様に行い、熱プレスされたウェブ絡合シートを得た。
次に、熱プレスされたウェブ絡合シートを95℃の熱水中に10分間浸漬してPVA系樹脂を溶解除去することにより、極細単繊維の繊維束からなる繊維絡合体を得た。そして、得られた繊維絡合体にポリウレタン弾性体Aの水性分散液(固形分濃度50質量%)を含浸させた。このとき水分散液の固形分付着量は繊維絡合体の質量に対して、44質量%であった。次に、水分散液が含浸された繊維絡合体を90℃、50%RH雰囲気下で凝固処理した。そして、140℃で乾燥処理した後、さらに、140℃で熱プレスすることにより研磨パッド前駆体が得られた。そして、得られた研磨パッド前駆体は、実施例1と同様にして後加工され、目付量1500g/m2、見掛け密度0.88g/cm3、厚さ1.7mmの円形状の研磨パッドが得られた。結果を表1にまとめて示す。
[実施例3]
海島型複合繊維を形成するために、島数25島/繊維の溶融複合紡糸用口金を用いる代わりに、島数64島/繊維の溶融複合紡糸用口金を用い、ウェブ絡合シートに含浸させる第1のポリウレタン弾性体の水性分散液、及び、第2の無黄変型ポリウレタン弾性体の水性分散液の固形分付着量を各々17質量%にする代わりに、各々12質量%にした以外は実施例1と同様にして研磨パッドを得た。得られた研磨パッドは、目付量1500g/m2、見掛け密度0.88g/cm3、厚さ1.7mmであった。結果を表1にまとめて示す。
[実施例4]
海島型複合繊維の製造において、PVA系樹脂と変性PETの比率を25:75とする代わりに、15:85とし、また、第1のポリウレタン弾性体の水性分散液、及び第2のポリウレタン弾性体の水性分散液の固形分濃度をそれぞれ50質量%とした以外は、実施例1と同様にして研磨パッドを得た。得られた研磨パッドは、目付量1900g/m2、見掛け密度1.12g/cm3、厚み1.7m、研磨パッド充填率90%、繊維絡合体とポリウレタン弾性体との質量比率は58/42であった。結果を表1にまとめて示す。
[実施例5]
ウェブ絡合シートを70℃、95%RHの条件で90秒間スチーム処理することにより、面積収縮率を52%にする代わりに、70℃、60%RHの条件で90秒間スチーム処理することにより、面積収縮率を35%に調整すること以外は、実施例1と同様にしてウェブ絡合シートを得た。なお、収縮され、熱プレスされて得られたウェブ絡合シートは、目付量1290g/m2、見掛け密度0.60g/cm3、厚み2.15mmであった。
そして、得られた収縮されたウェブ絡合シートを用いて、第1のポリウレタン弾性体の水性分散液、及び第2のポリウレタン弾性体の水性分散液の固形分濃度をそれぞれ25質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして研磨パッドを得た。得られた研磨パッドは、目付量1190g/m2、見掛け密度0.72g/cm3、厚み1.7m、研磨パッド充填率58%、繊維絡合体とポリウレタン弾性体との質量比率は67/33であった。結果を表1にまとめて示す。
[実施例6]
海島型複合繊維を形成するために、島数25島/繊維の溶融複合紡糸用口金を用いる代わりに、島数5島/繊維の溶融複合紡糸用口金を用いた以外は実施例1と同様にして研磨パッドを得た。得られた研磨パッドは、目付量1580g/m2、見掛け密度0.88g/cm3、厚み1.8m、SEMによる観察から、表面の繊維密度は700本/mm2であった。結果を表1にまとめて示す。
[実施例7]
海島型複合繊維の形成において、変性PETの代わりに、ポリアミド6とポリアミド12とポリアミド66の共重合ポリアミド(Tg55℃、吸水率6質量%)を用いて海島型複合繊維を製造した以外は、実施例1と同様にして研磨パッドを得た。得られた研磨パッドは、目付量1390g/m2、見掛け密度0.80g/cm3、厚み1.7mmであった。結果を表1にまとめて示す。
[実施例8]
「(10)研磨パッドの研磨性能評価」において、キャボット社製砥粒スラリーSS12を用いる代わりに、昭和電工製砥粒スラリーGPL−C1010を用いた以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1にまとめて示す。
[実施例9]
「(10)研磨パッドの研磨性能評価」において、シリコンウエハを銅プレートに変更し、研磨に用いるスラリーをフジミインコーポレーテッド製PL7101(35%過酸化水素水混合量=スラリー1000gあたり30cc)、スラリー流量を200ml/分に変更した以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1にまとめて示す。
[実施例10]
「(10)研磨パッドの研磨性能評価」において、シリコンウエハをベアシリコンウエハに変更した以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1にまとめて示す。
[比較例1]
PETを溶融紡糸することにより、平均繊度2dtexのPET長繊維を溶融紡糸し、得られた長繊維をネット上に捕集することにより、目付量30g/m2のスパンボンドシート(長繊維ウェブ)を得た。
得られたスパンボンドシートから、実施例1と同様にして重ね合わせウェブを作製した。そして、得られた重ね合わせウェブを実施例1と同様に、ニードルパンチ処理して絡合させることにより、ウェブ絡合シートを得た。得られたウェブ絡合シートの目付量は840g/m2、層間剥離力は12kg/2.5cmであった。次に、得られたウェブ絡合シートを70℃、95%RHの条件で90秒間スチーム処理した。そして、140℃のオーブン中で乾燥させた後、140℃で熱プレスすることによりウェブ絡合シートを得た。
次に、熱プレスされたウェブ絡合シートに、ポリウレタン弾性体Aの水性分散液(固形分濃度40質量%)を含浸させた。このとき水分散液の付着量はウェブ絡合シートの質量に対して、17質量%であった。そして、水分散液が含浸されたウェブ絡合シートを90℃、90%RH雰囲気条件で凝固処理し、さらに、140℃で乾燥処理した。そして、バフィング処理を行って表面と裏面とを平坦化して、研磨パッドを得た。得られた研磨パッドを実施例1と同様にして評価した。結果を表1にまとめて示す。
[比較例2]
PVA系樹脂と変性PETとを40:60(質量比)の割合で溶融複合紡糸用口金から吐出することにより、海島型複合繊維を形成した。そして得られた海島型複合繊維を延伸及び捲縮した後、カットすることにより、繊度6dtex、繊維長51mmの短繊維を得た。得られた短繊維をカード及びクロスラッパーすることにより、目付量30g/m2の短繊維ウェブが得られた。
スパンボンドシート(長繊維ウェブ)を用いる代わりに、得られた短繊維ウェブを用いた以外は実施例1と同様にして研磨パッドを作成し、評価した。なお、短繊維ウェブから得られたウェブ絡合シートをスチーム処理したときの面積収縮率は30%であった。結果を表1にまとめて示す。
[比較例3]
実施例1と同様にして製造された、熱プレスされたウェブ絡合シートに、ポリウレタン弾性体Aの水性分散液(固形分濃度40質量%)を含浸させた。このとき水分散液の付着量はウェブ絡合シートの質量に対して、34質量%であった。そして、水分散液が含浸されたウェブ絡合シートを90℃、50%RH雰囲気で凝固処理し、さらに、140℃で乾燥処理した。そして、バフィング処理を行って表面と裏面とを平坦化した。次に、ポリウレタン弾性体Aが充填されたウェブ絡合シートを95℃の熱水中に10分間浸漬してPVA系樹脂を溶解除去し、さらに、乾燥することにより研磨パッドを得た。
得られた研磨パッド中の繊維束の内部には、ポリウレタン弾性体がほとんど存在しておらす、極細単繊維は実質的に集束されていなかった。得られた研磨パッドを実施例1と同様にして評価した。結果を表1にまとめて示す。また、得られた研磨パッド断面の100倍のSEM写真を図7に示す。
[比較例4]
高分子弾性体として、ポリウレタン弾性体の水性分散液を用いてポリウレタン弾性体を形成する代わりに、N,N−ジメチルホルムアミド溶液に溶解させたポリウレタン樹脂溶液(固形分濃度12質量%)を含浸し40℃のDMFと水の混合液中で湿式凝固させてポリウレタン弾性体を形成した以外は実施例1と同様にして研磨パッドを作成した。得られた研磨パッドの研磨パッド充填率は57%で、ポリウレタン弾性体が多孔質状に存在していた。また、SEMによる断面観察から、得られた研磨パッドにおいては、繊維束の内部にポリウレタン弾性体が少量存在していたが、実質的に集束されていなかった。また、断面積が40μm2以上である繊維束の割合は5%であった。また、繊維絡合体充填率は43%であった。
結果を表1にまとめて示す。なお、研磨性能評価においては、スクラッチ性や研磨安定性が悪く、また、研磨中における繊維の脱落が見られた。また、研磨中の目詰まりが多かった。
[比較例5]
極細単繊維化した後にポリウレタン弾性体を充填する代わりに、メチルメタクリレートモノマーをシートに浸漬し窒素中で重合した以外は、実施例1と同様にして研磨パッドを作成した。得られた研磨パッド充填率は98%であった。評価結果を表1に示す。
本発明に係る実施例1〜7の研磨パッドは、何れも研磨レートに優れており、また平坦化性能も優れており、さらに、スクラッチの発生も少なかった。これは、繊維束を構成する極細単繊維が高分子弾性体により集束されているために、高い剛性を維持することができ、また、50℃の温水で飽和膨潤したときの50℃における貯蔵弾性率[E’(50℃、wet)]が100〜800MPaに調整されていることにより、研磨の際に摩擦熱が発生した場合においても、高い剛性を長時間維持することができ、これらにより、高い平坦化性能が得られるものと考えられる。また、50℃の温水で飽和膨潤させたときの吸水率が5〜45質量%の範囲であること、及び、研磨パッド表面に高い繊維密度で極細単繊維が表出しているために、砥粒スラリーを充分に保持することができる。これにより、高い研磨レートが得られると思われる。また、研磨パッド表面に表出した極細単繊維がクッションの役割をして、局所的な荷重が掛かりにくいこと、及び、繊維が抜けないこと等により、スクラッチの発生を抑制するものと考えられる。また、研磨条件を代えて研磨性能を評価した実施例8〜10においても、研磨安定性に優れており、また、平坦化性能が優れていた。
一方、極細単繊維を用いる代わりに、通常の繊度のPET繊維を用いた比較例1の研磨パッドにおいては、研磨パッド表面に繊度の高いPET繊維が表出しているために、極細単繊維のようなクッション性がないためにスクラッチが多く発生した。また、砥粒スラリーの保持性も悪いために研磨レートも低かった。また、長繊維ウェブを用いる代わりに、短繊維ウェブを用いて得られた比較例2の研磨パッドは、研磨レート及び平坦化性能が低く、また、スクラッチ性も低かった。これは、研磨時における剛性が低く、また、研磨パッド表面の極細単繊維が少ないこと等によるものであると考えられる。また、長時間用いた場合には、平坦化性能が大幅に低下した。これは、研磨パッドが砥粒スラリーを経時的に吸収することにより、研磨パッドが変形するためであると考えられる。また、極細単繊維が集束されていない比較例3及び比較例4においては、繊維束が集束されている実施例1に比べて、研磨時における剛性が著しく低いために、平坦化性能が低く、また、スクラッチの発生が多く見られた。また、研磨パッド充填率が98%と高い比較例5の研磨パッドにおいては、研磨レートが低く、またスクラッチの発生も多かった。これは、表面に表出する単繊維が少なく、また、空隙が少なすぎるために砥粒保持性が悪くなること、及び、研磨の際に剛性が高すぎることによると思われる。