JP6430163B2 - 複数のホップ香気が調和した好ましい香気を有する発酵麦芽飲料およびその製法 - Google Patents

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  • Distillation Of Fermentation Liquor, Processing Of Alcohols, Vinegar And Beer (AREA)

Description

本発明は、ホップ香気を有する発酵麦芽飲料およびその製法に関する。
ホップはビールに爽快な苦味と香りを付与する。ホップに由来する香りはビールのキャラクター形成に大きな影響を与えている。香気特徴を表現する言葉として、フローラル、スパイシー、シトラス、フルーティー、ホッピー、スパイシー、マスカット等が一般的に用いられている(非特許文献1〜5)。
ホップの使用方法によってホップ香気の強弱を制御することができる。通常ホップは、煮沸中の麦汁に添加するが、よりホップ香気を強調するために、煮沸終了直前、あるいはワーループールタンク静置中に添加し、できるだけ熱を加えないことで実現できる。以上の仕込み工程中でのホップ使用は、「ケトルホッピング」とも言われている。
さらにホップ香気を強調した場合は、「ドライホッピング」と言われる発酵中の低温の若ビールにホップを添加する方法もある(非特許文献6)。このドライホッピングしたビールは、ホップの香味を極端に強調できる一方で、ケトルホッピングしたビールに比べ、香味は、刺激感が強くかつ粗い官能評価上の印象を与える。
「ドライホッピング」によるホップ香気の強調、ならびに荒々しさの少ない「ケトルホッピング」の長所を合わせ持つ発酵麦芽飲料の製法として、添加前のホップを65℃以上90℃未満の温度で1分間以上60分間未満という条件下で予め加熱処理し、得られたホップを、前記方法に含まれる加熱操作を伴う全ての工程が終了し、加熱された原料混合物が冷却された後に原料混合物に添加する方法が開発されている(特許文献1〜3)。しかしながら、この方法では、用いるホップの品種によっては、得られるビールのホップ香気の複雑さが乏しく、ホップ香気そのものは強調されているものの、単調と感じられることがある。
一方で、ビール中に含まれる複数の香気成分の相乗効果によって、より好ましい香気が得られる例が開示されている(特許文献4および非特許文献7)。
T. Kishimoto et al., J. Agric. Food Chem., 54, 8855-8861, 2006 G. T. Eyres et al., J. Agric. Food Chem., 55, 6252-6261, 2007 V. E. Peacock, et al., J. Agric. Food Chem., 28, 774-777, 1980 K. C. Lam et al., J. Agric. Food Chem, 34, 763-770, 1986 V. E. Peacock et al., J. Agric. Food Chem., 29, 1265-1269, 1981 「醸造物の成分」(財団法人日本醸造協会:平成11年12月10日発行)、p.259〜261 Kiyoshi Takoi et al., J. Inst. Brew. 116(3), 251-260, 2010
特開2013−132272号公報 特開2013−132274号公報 特開2013−132275号公報 特開2010−252636号公報
本発明は、ホップの単純な特徴香に留まらず、複雑な香気を合わせ持ち、より好ましい香味を有する発酵麦芽飲料、およびその製法を提供することを目的とする。
本発明者らは、所定の条件を満たすホップ品種群から選択された複数種のホップを加熱処理した後、得られるホップを冷却後の原料混合物に添加することにより、ホップの単純な特徴香に留まらず、複雑な香気を合わせ持ち、より好ましい香味を有する発酵麦芽飲料が得られることを見出した。本発明はこの知見に基づくものである。
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)原料としてホップを用いて、ホップの複雑な香気を有する発酵麦芽飲料を製造する方法であって、
前記ホップが予め加熱処理に供されたものであり、
前記ホップが、前記方法に含まれる加熱操作を伴う全ての工程が終了し、加熱された原料混合物が冷却された後に、その原料混合物に添加され、
前記ホップが、単独で用いた場合に発酵麦芽飲料に対して7.3以下のリナロール濃度(ppb)/5−メチル−ヘキサン酸濃度(ppb)比を与える第一の品種群から選択される少なくとも1種のホップと、単独で用いた場合に発酵麦芽飲料に対して23以上のリナロール濃度(ppb)/5−メチル−ヘキサン酸濃度(ppb)比を与える第二の品種群から選択される少なくとも1種のホップとを含んでなるものである、方法。
(2)前記第一の品種群が、マグナム種、ガリーナ種、ネルソンソービン種、アポロ種、ギャラクシー種、サミット種、トマホーク種およびシヌーク種からなり、
前記第二の品種群が、ハラタウトラディッション種、ミレニアム種、ナゲット種、ヘルスブルッカー種、ペルレ種およびザーツ種からなる、前記(1)に記載の方法。
(3)前記加熱処理が、65〜90℃の温度で行われる、前記(1)または(2)に記載の方法。
(4)前記加熱処理が、1〜60分間行われる、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)麦汁煮沸工程、麦汁静置工程、麦汁冷却工程および発酵工程を含んでなり、ホップが麦汁冷却工程の後に添加される、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6)前記(1)〜(5)のいずれかに記載の方法によって製造される、リナロール(Linalool)および5−メチル−ヘキサン酸(5-methyl-hexanoic acid)を少なくとも含んでなる発酵麦芽飲料であって、
リナロールの濃度が100ppb以上であり、
リナロール濃度(ppb)/5−メチル−ヘキサン酸濃度(ppb)比が7.7〜20である、発酵麦芽飲料。
本発明によれば、ホップの単純な特徴香に留まらず、複雑な香気を併せ持ち、より好ましい香味を有する発酵麦芽飲料が提供される。この発酵麦芽飲料は、「ドライホッピング」製法および「ケトルホッピング」製法の長所を合わせ持つ、ホップ香気が強調され、同時に、荒々しさの少ない発酵麦芽飲料である。特に、本発明の発酵麦芽飲料は、単調なフローラル香にやや複雑さが加わり、さらにフルーツ香も加わることで、より複雑な好ましい香気を有するものである。
発明の具体的説明
本発明による方法は、原料としてホップを用いて発酵麦芽飲料を製造する方法であり、該方法は、原料として添加するホップが所定の条件を満たす第一の品種群から選択される1以上のホップおよび異なる所定の条件を満たす第二の品種群から選択される1以上のホップを含むホップ混合物であり、これらのホップが所定の条件下で予め加熱処理されたものであり、かつ、ホップの添加が、ホップに余分な熱が加わらないよう、加熱操作を伴う工程が全て終了した後に行われることを特徴とする。
本発明において「発酵麦芽飲料」とは、炭素源、窒素源および水などを原料として酵母により発酵させた飲料であって、原料として少なくとも麦芽を使用した飲料を意味する。
このような発酵麦芽飲料としては、ビール、発泡酒、リキュール(例えば、酒税法上、「リキュール(発泡性)(1)」に分類される飲料)などが挙げられる。本発明による発酵麦芽飲料は、好ましくは、原料として少なくとも水、ホップ、および麦芽を使用した発酵麦芽飲料とされる。
本発明に用いられるホップ(Humulus lupulus L.)は、クワ科に属する多年生植物である。ホップの種類は多く、例えば、ブリオン(Bullion)、ブリューワーズゴールド(Brewers Gold)、カスケード(Cascade)、チヌーク(Chinook)、クラスター(Cluster)、イーストケントゴールディング(East Kent Golding)、ファグルス(Fuggles)、ハレトウ(Hallertau)、マウントフッド(Mount Hood)、ノーザンブリューワー(Northan Brewer)、ペーレ(Perle)、ザーツ(Saaz)、スティリアン(Styrian)、テットナンガー(Tettnanger)、ウィラメット(Willamette)、ヘルスブルッカー(Hersbrucker)等が挙げられる。
本発明に用いられるホップの第一の品種群は、単独で用いた場合に発酵麦芽飲料に対して7.3以下のリナロール濃度(ppb)/5−メチル−ヘキサン酸濃度(ppb)比を与える複数のホップ品種を含む。このような条件を満たすホップ品種は、そのホップ品種を単独で用いて、後述する実施例に記載の手順に従って試飲サンプルを作製し、後述する実施例に記載の手順に従ってリナロール濃度(ppb)/5−メチル−ヘキサン酸濃度(ppb)を測定することにより特定することができる。本発明の好ましい実施態様によれば、前記第一の品種群は、マグナム種、ガリーナ種、ネルソンソービン種、アポロ種、ギャラクシー種、サミット種、トマホーク種およびシヌーク種からなる。
本発明に用いられるホップの第二の品種群は、単独で用いた場合に発酵麦芽飲料に対して23以上のリナロール濃度(ppb)/5−メチル−ヘキサン酸濃度(ppb)比を与える複数のホップ品種を含む。このような条件を満たすホップ品種は、そのホップ品種を単独で用いて、後述する実施例に記載の手順に従って試飲サンプルを作製し、後述する実施例に記載の手順に従ってリナロール濃度(ppb)/5−メチル−ヘキサン酸濃度(ppb)を測定することにより特定することができる。本発明の好ましい実施態様によれば、前記第二の品種群は、ハラタウトラディッション種、ミレニアム種、ナゲット種、ヘルスブルッカー種、ペルレ種およびザーツ種からなる。
本発明の方法では、第一の品種群または第二の品種群に属するホップ品種に加えて、複雑な香気を有する好ましい香味という本発明の効果を害さない限りにおいて、上記の条件を満たさないホップ品種を用いることも可能である。しかし、本発明の好ましい実施態様によれば、本発明の方法において用いられる全てのホップ品種は、第一の品種群または第二の品種群に属するものとされる。
本発明に用いられるホップとしては、ホップの毬花(雌花)、毬果(未受精の雌花が成熟したもの)、葉、茎および苞等の各部位(好ましくはルプリンを含む毬花)を、そのまま、または圧縮若しくは粉砕した後に、使用することができる。
ホップの加熱処理の条件として、温度は65℃以上90℃未満とされ、特に65〜70℃が好ましい。また、処理時間は1分間以上60分間未満とされ、特に10〜60分間が好ましい。
ホップの加熱処理は、酵母の存在下において行ってもよい。ホップの加熱処理に用いられる酵母は、食品としての安全性が確認されている酵母であればよく、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・カールスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)、サッカロミセス・ジアスタティクス(Saccharomyces diastaticus)、ブレタノミセス・インテルメジウス(Brettanomyces intermedius)などの酵母であってよい。また、ホップ加熱処理用酵母としては、食用乾燥酵母やビール回収酵母なども好適に用いられる。ホップ加熱処理用酵母の添加量は特に制限されるものではないが、例えば、ホップの重量に対して1〜100質量%、好ましくは10〜50質量%、より好ましくは25〜40質量%とすることができる。酵母の存在下においてホップの加熱処理を行う場合には、加熱処理条件は、例えば、40〜90℃の温度で1〜60分間とすることができる。
ホップの加熱処理は、温度管理された水浴中で行なうことができる。例えば、ホップの加熱処理は、ホップに十分な量(例えば、ホップの重量に対して約10倍の重量)の水を加え、この水の温度を、上記の温度に上記の時間保持し、その後、直ちに室温(例えば約25℃)またはより低い温度(例えば15℃)まで冷却し、そのまま保存することにより行うことができる。
本発明による方法では、上述の加熱処理を経たホップは、該方法に含まれる加熱操作を伴う全ての工程が終了し、加熱された原料混合物が冷却された後に、その原料混合物に添加される。これにより、ホップに余分な熱が加わることを回避できる。ここで用いる「加熱操作」との用語は、自然な温度変化ではなく、加熱することを目的とした人為的な操作を意味するものであり、例えば、発酵工程における酵母の生理作用による発熱などは含まない。よって、例えば、上記の加熱操作を伴う工程には、麦汁煮沸工程は含まれるが、発酵工程は含まれない。また、「加熱された原料混合物が冷却された後」とは、加熱された原料混合物(例えば麦汁)が、放置されるか、あるいは積極的な冷却手段に供され、酵母による発酵工程の温度またはそれ以下の温度まで冷却された後を意味する。
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明による方法は、麦汁煮沸工程、麦汁静置工程、麦汁冷却工程および発酵工程を含んでなる。これらの工程は、通常の発酵麦芽飲料の製造において典型的に用いられる工程である。この実施態様では、予め加熱処理されたホップは、麦汁冷却工程の後に添加されることが好ましく、さらに好ましくは、麦汁冷却工程の後、かつ、発酵工程の直前に添加され、さらに好ましくは原料混合物(発酵前液)への酵母添加の直前またはこれと同時に添加される。
ホップの添加量は、通常の発酵麦芽飲料の製造に用いられる量であればよく、特に制限されない。また、ホップは、上述の加熱処理によりその密度が変化するが、この密度の変化を考慮してホップの添加量を決定することが望ましい。本発明の好ましい実施態様によれば、ホップの添加量は、発酵工程における発酵前液の容量に対して、加熱処理前のホップの重量として1〜6g/Lとなるように調整される。
本発明の一つの実施態様によれば、本発明による方法は、少なくとも水、麦芽、およびホップを含んでなる発酵前液を発酵させることにより実施することができる。すなわち、麦芽等の醸造原料から調製された麦汁(発酵前液)に発酵用ビール酵母を添加して発酵を行い、所望により発酵液を低温にて貯蔵した後、ろ過工程により酵母を除去することにより、発酵麦芽飲料を製造することができる。ここで、ホップは、上述の加熱処理を経たもののみを使用し、上述した通りの時期および量で添加される。
本発明による発酵麦芽飲料の製造方法では、ホップ、麦芽以外に、米、とうもろこし、こうりゃん、馬鈴薯、でんぷん、糖類(例えば、液糖)等の酒税法で定める副原料や、タンパク質分解物、酵母エキス等の窒素源、香料、色素、起泡・泡持ち向上剤、水質調整剤、発酵助成剤等のその他の添加物を醸造原料として使用することができる。また、未発芽の麦類(例えば、未発芽大麦(エキス化したものを含む)、未発芽小麦(エキス化したものを含む))を醸造原料として使用してもよい。得られた発酵麦芽飲料は、(i)減圧若しくは常圧で蒸留してアルコールおよび低沸点成分を除去するか、あるいは(ii)逆浸透(RO)膜にてアルコールおよび低分子成分を除去することによって、非アルコール発酵麦芽飲料とすることもできる。
本発明の方法によって得られる発酵麦芽飲料は、ホップの単純な特徴香に留まらず、複雑な香気を併せ持ち、より好ましい香味を有する発酵麦芽飲料である。そして、後述の実施例において、この発酵麦芽飲料について、香気成分であるリナロール(Linalool)の定量および5−メチル−ヘキサン酸(5-methyl-hexanoic acid)の定量がなされ、これら成分の好適な濃度および濃度比が見出されている。従って、本発明のさらなる側面によれば、リナロール(Linalool)および5−メチル−ヘキサン酸(5-methyl-hexanoic acid)を所定の含有量で含有する発酵麦芽飲料が提供される。
一つの実施態様では、本発明による発酵麦芽飲料におけるリナロールの濃度は100ppb以上とされる。リナロール濃度の上昇に伴って好ましいホップの香気が強くなるため、リナロール濃度の上限は特に限定されない。本発明の好ましい実施態様によれば、リナロール濃度の上限は700ppbとされ、より好ましくは600ppbとされる。本明細書に用いられる「ppb」は、質量/容量(w/v)の濃度を表す。
一つの実施態様では、本発明による発酵麦芽飲料において、リナロール濃度(ppb)/5−メチル−ヘキサン酸濃度(ppb)比は7.7〜20、好ましくは7.7〜18とされる。
本発明による発酵麦芽飲料中のリナロールおよび5−メチル−ヘキサン酸の含有量は、質量分析計付きガスクロマトグラフィー(GC/MS)により測定することができる。このGC/MS分析は、後述の実施例に記載の手順によって行うことができる。
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
実施例1:ビール製造に用いるホップの品種選択の検討
本実施例では、様々なホップに加熱処理を加え、得られたホップを用いて製造したビールについて官能評価を行い、ホップの組み合わせの適切な選択条件、および選択されたホップを用いて得られた飲料の好ましい香気成分量を検討した。
(1)各種試飲サンプルの調製
麦芽使用比率を100%として調製した麦汁糖度12.5度の仕込麦汁を調製した。この仕込麦汁に対し、電気ヒーターを用いて、一定強度で60分間煮沸を行ったところ、蒸発率は10%であった。その後、麦汁を90℃で60分間静置させた。濾紙により濾過を行った後に、氷水中で麦汁を冷却した。得られた発酵前液にビール酵母を添加して1週間主発酵を行い、その後さらに4日間後発酵を行うことにより、試飲サンプルを得た。
ホップは、次のように前処理し、上記発酵前液に添加した。ホップの添加濃度は、発酵前液に対して3g/Lとした。ホップは、10倍量の蒸留水中に添加した後、65℃で10〜60分間、恒温水槽で処理し、直ちに氷水中で15℃まで冷却した。ホップの添加時期は、酵母添加の直前とした。
(2)各種試飲サンプルの官能評価
添加するホップの添加前の処理およびホップの組み合わせの効果を調べるために、得られた試飲サンプルを対象として3名の訓練されたパネルによる官能評価を行った。評価基準は表1に示すとおりとした。
Figure 0006430163
(3)質量分析計付きガスクロマトグラフィー(GC/MS)によるホップ香気成分の分析による指標成分濃度の算出
サンプル中の香気成分をC18固相カラムで抽出し、ジクロロメタン溶出画分をGC/MSに供した。定量は内部標準法を用いた。内部標準物質にはボルネオール(Borneol)を用い、試料中25ppbになるよう添加した。定量値は、ppbを単位とする濃度として算出した。GC/MSにおけるホップ香気成分の分析条件は以下のとおりである。
Figure 0006430163
(4)異なる香気特徴を持った2つのホップ品種をブレンドした試飲サンプルの評価
ホップとして、単調なフローラル香を持ったドイツ産ハラタウトラディッション(Hopsteiner社)と、フルーツ香を持ち、青臭および樹脂様香気が強いという特徴を持ったドイツ産マグナム(Hopsteiner社)を用いて試飲サンプルを作製した。試飲サンプルの官能評価の結果を、2種のホップの配合量とともに表3に示す。
Figure 0006430163
試験4〜7のサンプルは、マグナムを0.25g/L〜1.00g/Lの量で、さらにハラタウトラディッションを2.75g/L〜2.00g/Lの量でブレンドしたものである。これらの試飲サンプルは、単調なフローラル香に複雑さが加わり、さらにフルーツ香も加わることで、より複雑な、より好ましい香気を有していた。
試験2および試験3のサンプルは、マグナムを0.15g/L〜0.20g/Lの量で、さらにハラタウトラディッションを2.85g/L〜2.80g/Lの量でブレンドしたものである。これらの試飲サンプルは、単調なフローラル香にやや複雑さが加わり、さらにフルーツ香も加わることで、より複雑な好ましい香気を有していた。
試験1のサンプルは、マグナムを0.10g/Lの量で、さらにハラタウトラディッションを2.90g/Lの量でブレンドしたものである。この試飲サンプルは、単調なフローラル香を有するにとどまり、好ましいとは言えない香気を有していた。
試験8のサンプルは、マグナムを1.50g/Lの量で、さらにハラタウトラディッションを1.50g/Lの量でブレンドしたものである。この試飲サンプルは、マグナムに由来する青草様の香気が強すぎ、好ましいとは言えない香気を有していた。試験9のサンプルは、さらにマグナムの比率を上げたものであるが、青草様香気に加え、樹脂様香気が強く、好ましくない香気を有していた。
この試験では、単調なフローラル香を持ったハラタウトラディッションに、異なる香気特長を持ったマグナムを特定の比率でブレンドすることにより、より好ましい香気が得られることが分かった。
(5)試飲サンプルの成分分析
上記(4)で作製した試飲サンプルを分析し、好ましい香気を得るための指標成分の探索を行った。その結果、マグナム種のホップは、5−メチル−ヘキサン酸(5-methyl hexanoic acid)の含有量が特徴的に高いことが分かった。そこで、各試飲サンプル中の5−メチル−ヘキサン酸の含有量を分析した。また、ホップ香気の全体の強度を示す指標として、リナロール(Linalool)を分析した。その結果を、表3に記載の官能評価結果とともに表4に示す。
Figure 0006430163
試験1から試験9に向けてマグナム種の配合量が増えるにつれて、5−メチル−ヘキサン酸が16.8ppbから53.1ppbにまで増加した。また、5−メチル−ヘキサン酸に対するリナロールの比率も変化し、21.1から4.2にまで減少した。
成分分析結果と官能評価結果とを対比したところ、5−メチル−ヘキサン酸含有量に対するリナロール含有量の比率は、7.7〜20であることが好ましく、7.7〜18であることがさらに好ましいことが判明した。
(6)様々なホップ品種を用いて得られた試飲サンプルの成分分析とホップ品種配合試験
他の品種を用いた場合の官能評価結果および成分分析値を把握するため、様々なホップ品種を用いて、各品種単独の試飲サンプルを作製し、官能評価および成分分析を行った。その結果を表5に示した。ホップ添加量は3g/Lとした。
Figure 0006430163
供試したホップ品種は、官能評価の結果、以下の3つのグループに分けることができた:
A:青草様香気および樹脂様香気が強く、好ましいと言えない、あるいは好ましくない;
B:複雑でかつ特徴香が強く、より好ましい;ならびに
C:特徴となる香気が強いものの、単調であり、好ましいと言えない。
興味深いことに、上記(5)において見出された好ましい範囲、すなわち5−メチル−ヘキサン酸に対するリナロールの比率が7.7〜20、にあるのはグループBのみであり、グループAは、当該比率が7.3以下の品種群であった。一方で、グループCは当該比率が23以上の品種群であった。
上記(4)では、グループCに属するハラタウトラディッションと、グループAに属するマグナムとをブレンドすることで、より好ましい結果が得られた。そこで、グループCとグループAからそれぞれ少なくとも1品種ずつを選択してブレンドし、試飲サンプルを作製し、官能評価および成分分析を行った。その結果を表6に示す。
Figure 0006430163
試験10および試験11のサンプルは、グループCに属するハラタウトラディッションとグループAに属するギャラクシーをブレンドしたものである。試験12のサンプルは、グループCに属するザーツとグループAに属するネルソンソービンをブレンドしたものである。試験13および試験14のサンプルは、グループCに属するハラタウトラディッションとグループAに属するネルソンソービンをブレンドしたものである。試験15のサンプルは、グループCに属するハラタウトラディッションと、グループAに属するギャラクシーおよびマグナムの計3種をブレンドしたものである。
官能評価の結果、単独では単調であった香気(表5)が、いずれのサンプルにおいても複雑でより好ましい結果となった。全サンプルにおいてホップ香の強度は強く、リナロールの濃度は100ppb以上であった。また、5−メチル−ヘキサン酸含有量に対するリナロール含有量の比率は、8.4〜17.4であり、上記(5)において見出された好ましい範囲、すなわち5−メチル−ヘキサン酸に対するリナロールの比率が7.7〜20、の範囲内であることが判明した。
以上から、単純な特徴香に留まらず、複雑な香気を合わせ持ち、より好ましい香味を有する飲料を得るためには、
(i) 5−メチル−ヘキサン酸含有量に対するリナロール含有量の比率が7.7〜20、より好ましくは7.7〜18の範囲であること;
(ii) 用いるホップが、前記比率が7.3以下の品種群と前記比率が23以上の品種群からそれぞれ1品種以上を選択し、ブレンドすること;ならびに
(iii) ホップ香の強度の指標として、リナロール含有量が100ppb以上であること、
が好ましいものと考えられた。
(7)市販品の官能評価および成分分析
8種類の市販品の官能評価および成分分析の結果を表7に示す。
Figure 0006430163
その結果、官能評価において好ましい市販品は無かった。また、市販品1〜6は、リナロール含有量が100ppb以下であり、強いホップ香気が感じられなかった。市販品7および8は、強いホップ香気は感じられるものの、前者は単調であり、後者は青草様香気と樹脂様香気がやや強く、好ましいとは言えなかった。全ての市販品で、5−メチル−ヘキサン酸含有量に対するリナロール含有量の比率は、7.7〜20の範囲外であった。

Claims (4)

  1. 原料としてホップを用いて、ホップの複雑な香気を有する発酵麦芽飲料を製造する方法であって、
    前記ホップが予め加熱処理に供されたものであり、
    前記ホップが、前記方法に含まれる加熱操作を伴う全ての工程が終了し、加熱された原料混合物が冷却された後に、その原料混合物に添加され、
    前記ホップが、単独で用いた場合に発酵麦芽飲料に対して7.3以下のリナロール濃度(ppb)/5−メチル−ヘキサン酸濃度(ppb)比を与える第一の品種群から選択される少なくとも1種のホップと、単独で用いた場合に発酵麦芽飲料に対して23以上のリナロール濃度(ppb)/5−メチル−ヘキサン酸濃度(ppb)比を与える第二の品種群から選択される少なくとも1種のホップとを含んでなるものであり、
    前記第一の品種群が、マグナム種、ガリーナ種、ネルソンソービン種、アポロ種、ギャラクシー種、サミット種、トマホーク種およびシヌーク種からなり、
    前記第二の品種群が、ハラタウトラディッション種、ミレニアム種、ナゲット種、ヘルスブルッカー種、ペルレ種およびザーツ種からなり、
    製造される発酵麦芽飲料におけるリナロール濃度(ppb)/5−メチル−ヘキサン酸濃度(ppb)比が7.7〜20であり、
    製造される発酵麦芽飲料におけるリナロール濃度が100〜700ppbである、方法。
  2. 前記加熱処理が、65〜90℃の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
  3. 前記加熱処理が、1〜60分間行われる、請求項1または2に記載の方法。
  4. 麦汁煮沸工程、麦汁静置工程、麦汁冷却工程および発酵工程を含んでなり、ホップが麦汁冷却工程の後に添加される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
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