JP2013132228A - ミセル化ホップ抽出物およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ビール風味飲料の製造工程において、加熱処理をすることなく、該飲料にホップの香気を十分に付与することができるホップ抽出物の製造方法の提供。
【解決手段】ミセル化ホップ抽出物を製造する方法であって、加圧した第一の液体組成物と加圧した第二の液体組成物とを、噴射して互いに衝突させることを含んでなり、該第一の液体組成物がホップ抽出物を含有するものであり、かつ、該第二の液体組成物が水を含有するものである、方法。
【選択図】なし
【解決手段】ミセル化ホップ抽出物を製造する方法であって、加圧した第一の液体組成物と加圧した第二の液体組成物とを、噴射して互いに衝突させることを含んでなり、該第一の液体組成物がホップ抽出物を含有するものであり、かつ、該第二の液体組成物が水を含有するものである、方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、ミセル化ホップ抽出物およびその製造方法に関する。
ビール・発泡酒・雑酒などのアルコール飲料や非発酵麦芽飲料などのビール風味飲料には、ホップの爽快な苦味と香りを付与するために、ホップエキスなどのホップ抽出物が使用される。
しかしながら、ホップ抽出物それ自体は非親水性であるために、ビール風味飲料の原料として溶解させるためには高温の麦汁等に添加する必要があった。例えば、通常のビール製造工程では、麦芽ほか原料の糖化工程を経た麦汁の煮沸中、すなわち100℃の高温下でホップを添加し、ホップ精油成分の溶解を促進させる。こうして製造された飲料では、ホップ抽出物中の極微量成分が水に溶けて飲料中の芳香に寄与しているに過ぎないため、飲料に好ましいホップ香気を十分に付与することができなかった(例えば、非特許文献1:酒類総合研究所情報誌(平成21年2月17日第13号);非特許文献2:「醸造物の成分」(財団法人日本醸造協会:平成11年12月10日発行)、p.259〜261参照)。
ホップ香気付与方法としては、発酵の終了した低温の若ビールにホップを添加するドライホッピング(dry hopping)と呼ばれる方法もある。しかしながら、この方法には以下に示す問題点がある。
問題点A:ホップは若ビールに添加されるため、温度が10℃程度と低い。そのため、ホップ精油成分の溶解、ビールへの移行に少なくとも数日以上の長い期間を必要とする。そのため、安定した香気を得るためには、目的とした成分量に達したか否かを注意深く経時的に監視することが必要となり、労力を要する。
問題点B:添加したホップの毬花部分は、通常のビールの製法では麦汁煮沸後の静置工程で固体として分離できるが、ホップの毬花部分を貯蔵タンクに添加するドライホッピング法では、最終的にはビールろ過工程にて除去されることになる。遠心分離機等の併用による除去も考えられるが、微細粉となったホップ毬花は、一般的なビールろ過工程である珪藻土ろ過機において、閉塞物質となりろ過工程自体を困難とする原因となる。
問題点C:課題Bの解決のためにホップ毬花部分を含まないホップエキスを添加することも考えられるが、難水溶性であるため溶解度は極端に低くなり、目的香気が得ることができない。
問題点A:ホップは若ビールに添加されるため、温度が10℃程度と低い。そのため、ホップ精油成分の溶解、ビールへの移行に少なくとも数日以上の長い期間を必要とする。そのため、安定した香気を得るためには、目的とした成分量に達したか否かを注意深く経時的に監視することが必要となり、労力を要する。
問題点B:添加したホップの毬花部分は、通常のビールの製法では麦汁煮沸後の静置工程で固体として分離できるが、ホップの毬花部分を貯蔵タンクに添加するドライホッピング法では、最終的にはビールろ過工程にて除去されることになる。遠心分離機等の併用による除去も考えられるが、微細粉となったホップ毬花は、一般的なビールろ過工程である珪藻土ろ過機において、閉塞物質となりろ過工程自体を困難とする原因となる。
問題点C:課題Bの解決のためにホップ毬花部分を含まないホップエキスを添加することも考えられるが、難水溶性であるため溶解度は極端に低くなり、目的香気が得ることができない。
酒類総合研究所情報誌(平成21年2月17日第13号)
「醸造物の成分」(財団法人日本醸造協会:平成11年12月10日発行)、p.259〜261
本発明は、ビール風味飲料の製造工程において、加熱処理をすることなく、該飲料にホップの香気を十分に付与することができるホップ抽出物およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、非親水性であるホップ抽出物を高圧下での噴射・衝突処理によってミセル化することにより、該ホップ抽出物に水溶性を与えることができることを見出した。本発明はこの知見に基づくものである。
すなわち、本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)ミセル化ホップ抽出物を製造する方法であって、加圧した第一の液体組成物と加圧した第二の液体組成物とを、噴射して互いに衝突させることを含んでなり、該第一の液体組成物がホップ抽出物を含有するものであり、かつ、該第二の液体組成物が水を含有するものである、方法。
(2)加圧する圧力が100Mpa〜245Mpaである、(1)に記載の方法。
(3)単位時間あたりに噴射される液体組成物の総量において、ホップ抽出物に対する水の重量比が3〜10倍である、(1)または(2)に記載の方法。
(4)得られるミセルの粒子径が1μm以下である、(1)〜(3)のいずれか一つに記載の方法。
(5)(1)〜(4)のいずれか一つに記載の方法によって製造された、ミセル化ホップ抽出物。
(6)ホップ抽出物により形成されるミセルを含んでなり、該ミセルの粒子径が1μm以下である、ミセル化ホップ抽出物。
(7)(5)または(6)に記載のミセル化ホップ抽出物を原料として製造された、ビール風味飲料。
(1)ミセル化ホップ抽出物を製造する方法であって、加圧した第一の液体組成物と加圧した第二の液体組成物とを、噴射して互いに衝突させることを含んでなり、該第一の液体組成物がホップ抽出物を含有するものであり、かつ、該第二の液体組成物が水を含有するものである、方法。
(2)加圧する圧力が100Mpa〜245Mpaである、(1)に記載の方法。
(3)単位時間あたりに噴射される液体組成物の総量において、ホップ抽出物に対する水の重量比が3〜10倍である、(1)または(2)に記載の方法。
(4)得られるミセルの粒子径が1μm以下である、(1)〜(3)のいずれか一つに記載の方法。
(5)(1)〜(4)のいずれか一つに記載の方法によって製造された、ミセル化ホップ抽出物。
(6)ホップ抽出物により形成されるミセルを含んでなり、該ミセルの粒子径が1μm以下である、ミセル化ホップ抽出物。
(7)(5)または(6)に記載のミセル化ホップ抽出物を原料として製造された、ビール風味飲料。
本発明によるミセル化ホップ抽出物は水溶性(親水性)であるため、加熱処理を行わなくとも、水性液体にホップの香気を迅速かつ十分に移行することができる。例えば、ビールの製造においては、加熱処理を伴わない発酵工程または貯蔵工程において本発明によるミセル化ホップ抽出物を添加することができ、これによりホップの香気を十分に麦汁に移すことができる。このように製造されるビール風味飲料は、ホップ抽出物の加熱処理を伴わずに製造されるため、ホップの揮発成分が保持されやすく、よって、香り豊かなビール風味飲料となる。
本発明による方法では、第一の液体組成物と第二の液体組成物とを、高圧噴射して互いに衝突させる。この第一の液体組成物はホップ抽出物を含有しており、かつ、第二の液体組成物は水を含有しており、その結果、上記の高圧噴射・衝突処理によってミセル化ホップ抽出物が得られる。
本明細書において「ホップ抽出物」とは、本発明による方法において原料として用いられる、ミセル化される前のホップ抽出物(ホップエキス)をいう。また、本明細書において「ミセル化ホップ抽出物」とは、本発明による方法によって製造される、ミセル化されたホップ抽出物を意味する。
本発明に用いられる第一または第二の液体組成物は、ホップ抽出物および水のいずれか一方または両方を含有する。ただし、第一の液体組成物はホップ抽出物を必須要素として含有し、第二の液体組成物は水を必須要素として含有する。例えば、第一の液体組成物はホップ抽出物のみを含有してもよいし、ホップ抽出物と水の混合物を含有してもよい。また、第二の液体組成物は水のみを含有してもよいし、ホップ抽出物と水の混合物を含有してもよい。第一および第二の液体組成物はそれぞれ、ホップ抽出物のミセル化を妨害しない他の成分、またはホップ抽出物のミセル化を促進する他の成分をさらに含有してもよい。
本発明による方法には、上記の第一の液体組成物および第二の液体組成物に加えて、1以上の追加の液体組成物を用いてもよい。つまり、本発明による方法では、1以上の追加の液体組成物を同時に高圧噴射し、上記の第一の液体組成物および第二の液体組成物に衝突させることも可能である。例えば、1つの追加の液体組成物を用いる場合には、第一の液体組成物および第二の液体組成物とあわせて合計3種の液体組成物を、高圧噴射して互いに衝突させる。このような追加の液体組成物は、ホップ抽出物および水のいずれか一方または両方を含有してもよいし、あるいは、ホップ抽出物のミセル化を妨害しない他の成分、またはホップ抽出物のミセル化を促進する他の成分を含有してもよい。
本発明に用いられる液体組成物は、高圧噴射処理において加圧され、この加圧の圧力によって噴射速度が制御される。本発明の好ましい実施態様によれば、液体組成物を加圧する圧力は100Mpa〜245Mpaとされる。
ホップ抽出物のミセル化においては、最終的に得られるミセル化ホップ抽出物に含まれるホップ抽出物(原料)と水の比率は重要な因子であり、これを最適化することによって、ミセルの粒子径を小さくすることができる。よって、最終的に得られるミセル化ホップ抽出物に、最適化されたホップ抽出物(原料)と水の比率を与えるように、噴射前の液体組成物を調製することが好ましい。従って、本発明の好ましい実施態様によれば、単位時間あたりに噴射される液体組成物の総量において、ホップ抽出物に対する水の重量比は3以上、例えば3〜10倍とされる。例えば、全ての液体組成物が同じ速度(圧力)で噴射される場合には、それら液体組成物を同容量ずつ混合したと仮定した場合の混合液におけるホップ抽出物に対する水の重量比を上記の比率に設定することができる。
本発明による方法によれば、微小な粒子径を有するミセルを形成することができ、処理条件を最適化することにより、特に粒子径が1μm以下のミセルを形成することができる。このような粒子径が1μm以下のミセル化ホップ抽出物は、非加熱下で水性液体(例えば飲料)にホップ香気を効率よく移す上で特に有利である。
本明細書においてミセルに対して用いられる「粒子径」とは、レーザ回折式粒度分布測定装置を用いて測定され、最頻値として得られた値を意味する。
本発明による方法は、上記の説明に従って、当業者であれば適切に実施することができる。例えば、液体に加圧してこれを高速噴射することのできる装置は、難水溶性のセルロースやキチン・キトサンを微細化処理するために既に利用されており、このような装置を本発明による方法に適用することが可能である。装置の具体例としては、湿式微粒化装置が挙げられる。
本発明に用いられるホップ抽出物の原料であるホップ(Humulus lupulus L.)は、クワ科に属する多年生植物である。ホップの種類は多く、例えば、ブリオン(Bullion)、ブリューワーズゴールド(Brewers Gold)、カスケード(Cascade)、チヌーク(Chinook)、クラスター(Cluster)、イーストケントゴールディング(East Kent Golding)、ファグルス(Fuggles)、ハレトウ(Hallertau)、マウントフッド(Mount Hood)、ノーザンブリューワー(Northan Brewer)、ペーレ(Perle)、ザーツ(Saaz)、スティリアン(Styrian)、テットナンガー(Tettnanger)、ウィラメット(Willamette)等が挙げられる。
本発明に用いられるホップ抽出物の原料には、上記のいずれの品種も好ましく用いることができる。また、ホップ抽出物の原料として、上記品種の2種以上を混合して用いてもよい。
本発明におけるホップ抽出物としては、例えば、市販のホップエキス、イソ化ホップエキス、異性化ホップエキス等を使用することができる。
また、本発明におけるホップ抽出物として、ホップの毬花(雌花)、毬果(未受精の雌花が成熟したもの)、葉、茎および苞等の各部位(好ましくはルプリンを含む毬花)を、そのまま、または圧縮若しくは粉砕した後、抽出操作に供することによって調製した液体状のホップ抽出物を使用することができる。
ここで、抽出方法は特に制限されず、ビール醸造に使用される方法をはじめ、一般に用いられる方法を広く用いることができる。例えば、溶媒中にホップの毬花、その圧縮物や粉砕物などを冷浸、温浸等によって浸漬する方法;加温し、攪拌しながら抽出を行い、濾過して抽出液を得る方法;またはパーコレーション法等が挙げられる。
その他の抽出方法として、超臨界二酸化炭素抽出法および液化炭酸ガス抽出法を挙げることができる。このうち超臨界二酸化炭素抽出法は、ポリフェノール成分が少なく、苦味質と精油成分がより高く濃縮されるなどの特徴を有する。本発明において、かかる超臨界二酸化炭素抽出法は、ホップ抽出物の調製に好適に用いられる抽出法である。
各種抽出方法により得られた抽出液は、必要に応じてろ過または遠心分離によって固形物を除去した後、使用の態様により、そのままホップ抽出物とするか、または溶媒を一部留去もしくは濃縮してもよい。また、濃縮または乾燥の後、さらに非溶解性溶媒で洗浄して精製し、これを更に適当な溶剤に溶解もしくは懸濁して、ホップ抽出物とすることもできる。
本発明によるミセル化ホップ抽出物は、飲料の製造に用いることにより、その飲料にホップの香気、すなわちビール風味を付与することができる。よって、本発明によれば、本発明によるミセル化ホップ抽出物を原料としてビール風味飲料を製造する方法、およびこうして製造されたビール風味飲料が提供される。
ビール風味飲料の製造方法において、本発明によるミセル化ホップ抽出物の添加時期は、製造工程のいずれの時点でもよい。特に、本発明によるミセル化ホップ抽出物は、加熱処理を必要とする工程以外の発酵工程や貯蔵工程において好適に用いることができる。
本明細書において「ビール風味飲料」とは、通常にビールを製造した場合、すなわち、酵母等による発酵に基づいてビールを製造した場合に得られるビール特有の味わいおよび香りを有する飲料を意味し、例えば、ビール、発泡酒、リキュール等の発酵麦芽飲料や、完全無アルコール麦芽飲料等の非発酵麦芽飲料が挙げられる。また、ビール様飲料である限り、麦芽飲料に限定されるものではない。
ビール風味飲料が、例えば、発酵麦芽飲料である場合には、ビール風味飲料は、通常、少なくとも水、麦芽およびホップを含んでなる発酵前液を発酵させることにより製造することができる。すなわち、通常の方法では、麦芽等の醸造原料から調製された麦汁(発酵前液)に発酵用ビール酵母を添加して発酵を行い、所望により発酵液を低温にて貯蔵した後、ろ過工程により酵母が除去される。本発明によるミセル化ホップ抽出物を原料として用いる場合には、上記のホップに代えて、あるいはホップに加えて、発酵工程または貯蔵工程中に添加することが好ましい。
ビール風味飲料が発酵麦芽飲料である場合には、さらに、米、とうもろこし、こうりゃん、馬鈴薯、でんぷん、糖類(例えば、液糖)等の酒税法で定める副原料や、タンパク質分解物や酵母エキス等の窒素源、香料、色素、起泡・泡持ち向上剤、水質調整剤、発酵助成剤等のその他の添加物を、醸造原料として使用することができる。また、未発芽の麦類(例えば、未発芽大麦(エキス化したものを含む)、未発芽小麦(エキス化したものを含む))を醸造原料として使用してもよい。得られた発酵麦芽飲料は、(i)減圧若しくは常圧で蒸留してアルコールおよび低沸点成分を除去するか、あるいは(ii)逆浸透(RO)膜にてアルコールおよび低分子成分を除去することによって、非アルコール発酵麦芽飲料とすることもできる。
ビール風味飲料が、麦や麦芽を使用しないビール様発酵飲料である場合には、ビール風味飲料は、発酵麦芽飲料の製造手順に準じて、通常は、少なくとも水およびホップを含んでなる発酵前液を発酵させることにより製造することができる。発酵前液には、水およびホップの他に炭素源(例えば、液糖などの糖類)、窒素源(例えば、タンパク質分解物や酵母エキスなどのアミノ酸供給源)を添加することができ、必要に応じて、香料、色素、起泡・泡持ち向上剤、水質調整剤、発酵助成剤等のその他の添加物等を添加することができる。本発明によるミセル化ホップ抽出物を原料として用いる場合には、上記のホップに代えて、あるいはホップに加えて、発酵工程中に添加することが好ましい。得られたビール様発酵飲料は、(i)減圧若しくは常圧で蒸留してアルコールおよび低沸点成分を除去するか、あるいは(ii)逆浸透(RO)膜にてアルコールおよび低分子成分を除去することによって、非アルコール・ビール様発酵飲料とすることもできる。
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
実施例1:ミセル化ホップ抽出物の製造
湿式微粒化装置((株)スギノマシン社製)を用いてホップエキス(エタノール抽出エキス、ドイツスタイナー社製)と水のそれぞれを高速噴射し、両者を衝突させることにより、ミセル化ホップエキスを製造した。
湿式微粒化装置((株)スギノマシン社製)を用いてホップエキス(エタノール抽出エキス、ドイツスタイナー社製)と水のそれぞれを高速噴射し、両者を衝突させることにより、ミセル化ホップエキスを製造した。
安定したミセル状態を得るために、処理条件を検討した。安定的ミセル状態は、処理後の1日以内に水とホップエキスが分離することなく、分散した状態を保つことが望ましいが、検討の結果、この分散状態と粒子径に密接な関係があることが分かった。具体的には、ホップエキスの粒子径が小さいほど、処理後、水とホップエキスが分離せず、ミセル状態を保ちやすい傾向があり、特に1μm未満の場合には、処理液は1日後でも乳白色の状態、すなわちミセル状態が維持できていた。この粒子径の測定には、島津製作所のレーザ回折式粒度分布測定装置を用い、最頻値として得られた値を粒子径とした。
処理条件としては、噴射圧力を200Mpaに固定し、単位時間あたりに噴射される液体の総量における水とホップエキスの重量比率および高圧噴射処理の回数を変更した。その結果を表1に示す。
表1から明らかなように、ホップエキスと水とを1対1で混合し、高圧噴射・衝突処理を行っていない場合には、ホップエキスは35μmの粒子径を示し、水とホップエキスが分離した状態にあった。
これに対し、ホップエキスと水の重量比率を1対1とし、高圧噴射・衝突処理の回数を5回または10回とした場合には、ホップエキスの粒子径はそれぞれ30μmおよび22μmとなり、混和状態に改善が見られた。
さらに、ホップエキスと水の重量比率を1対3とし、高圧噴射・衝突処理の回数を1回または5回とすると、ホップエキスの粒子径は非常に小さく、それぞれ0.4μmおよび0.3μmとなり、乳白色の状態、すなわちミセル状態が維持されていた。
以上の結果から、ホップエキスを安定的なミセル状態にするには、指標として、ホップエキスの粒子径が1μm以下の大きさであることが望ましいとの結論を得た。
さらに、噴射圧力を100Mpaから245Mpaへ変化させ、かつ、単位時間あたりに噴射される液体の総量におけるホップエキスと水の重量比率を1:5から1:10に変化させ、処理回数を1回から5回に変化させて試験を行った。その結果を表2に示す。
その結果、いずれの試験区においても粒子径は1μm以下となり、良好なミセル状態が得られることが分かった。
実施例2:ミセル化ホップ抽出物によるホップ香気の付与
ホップ香気付与方法としては、発酵の終了した低温の若ビールにホップを添加するドライホッピング(dry hopping)と呼ばれる方法がある。しかしながら、この方法には、ホップ香気の付与に少なくとも数日以上の長い期間を必要とし(問題点A)、一般的なビールろ過工程である珪藻土ろ過機において、添加したホップ毬花部分が閉塞物質となり(問題点B)、ホップ毬花部分に代えてホップエキスを用いたとしても、ホップエキスの難水溶性により目標とする香気が十分に得られない(問題点C)、という問題点がある。
ホップ香気付与方法としては、発酵の終了した低温の若ビールにホップを添加するドライホッピング(dry hopping)と呼ばれる方法がある。しかしながら、この方法には、ホップ香気の付与に少なくとも数日以上の長い期間を必要とし(問題点A)、一般的なビールろ過工程である珪藻土ろ過機において、添加したホップ毬花部分が閉塞物質となり(問題点B)、ホップ毬花部分に代えてホップエキスを用いたとしても、ホップエキスの難水溶性により目標とする香気が十分に得られない(問題点C)、という問題点がある。
本実施例では、このドライホッピング法に関わる製造工程上の課題を、ミセル化ホップエキスによって解決できることを示す。
<サンプル調製方法>
評価に用いたサンプルを次の通り調製した。仕込麦汁糖度10度に調整した仕込麦汁(仕込時の麦芽使用比率67%,副原料(米・コーングリッツ・コーンスターチ)使用比率33%)を煮沸試験に用いた。煮沸試験は、電気ヒーターで麦汁を加温煮沸し、煮沸強度は一定とし、60分間で蒸発率が10%となるようにコントロールして行った。その後、95℃で60分間麦汁を静置した。ろ紙でろ過した後、氷水で冷却した麦汁にビール酵母を添加し、1週間の主発酵、4日間の後発酵を行なった。得られたサンプルを試飲用貯酒サンプルとした。ホップの添加量および添加時期は後述のとおりとした。
評価に用いたサンプルを次の通り調製した。仕込麦汁糖度10度に調整した仕込麦汁(仕込時の麦芽使用比率67%,副原料(米・コーングリッツ・コーンスターチ)使用比率33%)を煮沸試験に用いた。煮沸試験は、電気ヒーターで麦汁を加温煮沸し、煮沸強度は一定とし、60分間で蒸発率が10%となるようにコントロールして行った。その後、95℃で60分間麦汁を静置した。ろ紙でろ過した後、氷水で冷却した麦汁にビール酵母を添加し、1週間の主発酵、4日間の後発酵を行なった。得られたサンプルを試飲用貯酒サンプルとした。ホップの添加量および添加時期は後述のとおりとした。
<官能評価>
官能評価は、3名の官能評価パネルが試飲を行った。
官能評価は、3名の官能評価パネルが試飲を行った。
<試飲用サンプルの質量分析計付きガスクロマトグラフィー(GC/MS)によるホップ香気成分の分析による指標成分濃度の算出>
サンプル中の香気成分をC18固相カラムで抽出し、ジクロロメタン溶出画分をGC/MSに供した。定量は内部標準法を用いた。内部標準物質にはボルネオール(Borneol)を用い、試料中25ppbになるよう添加した。GC/MSにおけるホップ香気成分の分析条件は以下のとおりである。
サンプル中の香気成分をC18固相カラムで抽出し、ジクロロメタン溶出画分をGC/MSに供した。定量は内部標準法を用いた。内部標準物質にはボルネオール(Borneol)を用い、試料中25ppbになるよう添加した。GC/MSにおけるホップ香気成分の分析条件は以下のとおりである。
<試験>
対照サンプルとして、アメリカ産カスケード種ホップペレット(アメリカハース社)を3g/Lの濃度で主発酵の2日目に添加したものを用意した。試験サンプルとしては、ミセル化ホップエキスを主発酵の2日目に添加したものを用意した。用いたミセル化ホップエキスは、対照サンプルと同じ品種のホップを用い、超臨界炭酸ガス抽出(日本分光社製抽出機、12Mpa、60℃、4時間抽出、ホップエキス回収率=抽出エキス重量/抽出に供したホップ重量=12%)したホップエキスを、ホップエキス:水=1:3で、噴出圧力200MPa、処理回数5回で噴射・衝突処理することによって調製した。ミセル化ホップエキスの添加量は、ホップエキス回収率から計算し、ホップ添加量3g/Lに相当するように計算した。
対照サンプルとして、アメリカ産カスケード種ホップペレット(アメリカハース社)を3g/Lの濃度で主発酵の2日目に添加したものを用意した。試験サンプルとしては、ミセル化ホップエキスを主発酵の2日目に添加したものを用意した。用いたミセル化ホップエキスは、対照サンプルと同じ品種のホップを用い、超臨界炭酸ガス抽出(日本分光社製抽出機、12Mpa、60℃、4時間抽出、ホップエキス回収率=抽出エキス重量/抽出に供したホップ重量=12%)したホップエキスを、ホップエキス:水=1:3で、噴出圧力200MPa、処理回数5回で噴射・衝突処理することによって調製した。ミセル化ホップエキスの添加量は、ホップエキス回収率から計算し、ホップ添加量3g/Lに相当するように計算した。
得られた試験サンプルおよび対照サンプルを試飲し、評価を行った。その結果、ミセル化ホップエキスを添加した試験サンプルと、ホップペレットを添加した対照サンプルはともに、ホップ香気の特徴が付与されていることが確認された。しかし、ホップ香気の強度において、試験サンプルは対照サンプルよりもやや弱いとの評価となった。
次に、試験サンプルおよび対照サンプルを、質量分析計付きガスクロマトグラフィー(GC/MS)によるホップ香気成分の分析に供した。結果を図1に示す。
図1では、ホップ由来の成分としてミルセン(Myrcene)、リナロール(Linalool)およびβ−シトロネロール(β-Citronellol)の含有量を比較した。試験サンプルは、対照サンプルに近い成分量を有しており、リナロールでは両者とも100ppbを超える高い濃度であり、この結果は、官能試験において明確にホップ香気が感じられることと一致した。ただし、ミルセン、リナロールおよびβ−シトロネロールの全てにおいて、試験サンプルは、対照サンプルよりもやや低い値を示した。このことは、官能試験におけるホップ香気の強度の評価結果と一致した。試験サンプルは、対照サンプルに匹敵するホップ香気を有することが分かった。
試験サンプルのホップ香気が低かった原因として、炭酸ガスホップエキス作製時の回収率が100%ではなかったことが原因と推定できるが、添加量を増加することで通常のホップ添加と同等のホップ香気強度が得られることは、問題なく可能と考えられた。
以上のように、問題点Bおよび問題点Cは、ホップ毬花部分を含まないホップエキスを用い、これをミセル化することで水溶性を増し、ドライホッピング法による香気と同等の香気が得ることができ、ビールろ過工程での問題を解決することが可能となった。
問題点Aについては、本発明ではミセル化によって水溶性を増した上でホップエキスの添加を行うため、添加したホップエキスの香気成分がそのままビールに移行するため、成分移行に必要な期間が大幅に短縮されるだけでなく、目標成分量に応じて添加量を調整すればよい為、香気管理がより簡便で、安定した香気を得ることができる。
Claims (7)
- ミセル化ホップ抽出物を製造する方法であって、加圧した第一の液体組成物と加圧した第二の液体組成物とを、噴射して互いに衝突させることを含んでなり、該第一の液体組成物がホップ抽出物を含有するものであり、かつ、該第二の液体組成物が水を含有するものである、方法。
- 加圧する圧力が100Mpa〜245Mpaである、請求項1に記載の方法。
- 単位時間あたりに噴射される液体組成物の総量において、ホップ抽出物に対する水の重量比が3〜10倍である、請求項1または2に記載の方法。
- 得られるミセルの粒子径が1μm以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法によって製造された、ミセル化ホップ抽出物。
- ホップ抽出物により形成されるミセルを含んでなり、該ミセルの粒子径が1μm以下である、ミセル化ホップ抽出物。
- 請求項5または6に記載のミセル化ホップ抽出物を原料として製造された、ビール風味飲料。
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JP2011283804A JP2013132228A (ja) | 2011-12-26 | 2011-12-26 | ミセル化ホップ抽出物およびその製造方法 |
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Cited By (3)
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---|---|---|---|---|
JP2015107073A (ja) * | 2013-12-04 | 2015-06-11 | アサヒビール株式会社 | ビールテイスト飲料及びその製造方法 |
JP2016021926A (ja) * | 2014-07-22 | 2016-02-08 | キリン株式会社 | 複数のホップ香気が調和した好ましい香気を有する発酵麦芽飲料およびその製法 |
JP2017079695A (ja) * | 2015-10-30 | 2017-05-18 | サッポロビール株式会社 | ビールテイスト飲料、ビールテイスト飲料の製造方法及びビールテイスト飲料の呈味改善方法 |
-
2011
- 2011-12-26 JP JP2011283804A patent/JP2013132228A/ja active Pending
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JP2015107073A (ja) * | 2013-12-04 | 2015-06-11 | アサヒビール株式会社 | ビールテイスト飲料及びその製造方法 |
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