本発明は、前記一般式(1)で表される化合物とエピハロヒドリンを反応させて得られる構造を有するエポキシ樹脂と、硬化剤とを必須成分とするエポキシ樹脂組成物ある。
前記一般式(1)で表される化合物において、mは繰り返し数であり、平均値は0<m<10であることが必要であり、好ましくは0.01<m<8であり、より好ましくは0.05<m<5であり、さらに好ましくは、0.1<m<3である。mが0ではヒドロキシ基量の低減が十分でなく、低誘電特性に効果がなく、mが10以上では高粘度となる恐れがある。ここで、平均値は数平均である。
また、前記一般式(1)中のXはそれぞれ独立して、2価の脂肪族環状炭化水素基、フェニレン基、ナフチレン基、置換基として炭素数1〜10の炭化水素基もしくはハロゲン原子を有するフェニレン基、置換基として炭素数1〜10の炭化水素基もしくはハロゲン原子を有するナフチレン基または前記一般式(2)のいずれかである。なお、置換基としての炭素数1〜10の炭化水素基の具体例としては、後述する前記一般式(2)中のR1と同じものが挙げられる。
前記一般式(2)中のR1はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基またはハロゲン原子のいずれかである。炭素数1〜10の炭化水素基の具体的な例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基などの炭素数1〜10の直鎖または分岐アルキル基や、シクロヘキシル基などの炭素数4〜10の環状アルキル基や、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、インダニル基などの炭素数6〜10の置換基を有していてもよいアリール基や、ベンジル基、フェネチル基、2−メチルベンジル基、3−メチルベンジル基、4−メチルベンジル基、2,6−ジメチルベンジル基、3,5−ジメチルベンジル基、α−メチルベンジル基などの炭素数7〜10の置換基を有していてもよいアラルキル基などの置換基が挙げられ、好ましい置換基はメチル基、エチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、α−メチルベンジル基である。
また、前記一般式(2)中のR2は単結合である。
また、前記一般式(1)中のYは前記一般式(3)で表されるスピロアセタール構造を有する基または前記一般式(4)で表されるスピロビインダン構造を有する基のいずれかの基である。
前記Yがスピロ環構造ではない前記一般式(1)で表される化合物とエピハロヒドリンを反応させて得られる構造を有するエポキシ樹脂と硬化剤からなるエポキシ樹脂組成物では、低誘電正接になるが低誘電率の硬化物が得られない。
前記一般式(3)中のR3はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、炭素数1〜10のアルコキシ基またはハロゲン原子のいずれかである。炭素数1〜10の炭化水素基の具体的な例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基などの炭素数1〜10の直鎖または分岐アルキル基や、シクロヘキシル基などの炭素数4〜10の環状アルキル基や、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、インダニル基などの炭素数6〜10の置換基を有していてもよいアリール基や、ベンジル基、フェネチル基、2−メチルベンジル基、3−メチルベンジル基、4−メチルベンジル基、2,6−ジメチルベンジル基、3,5−ジメチルベンジル基、α−メチルベンジル基などの炭素数7〜10の置換基を有していてもよいアラルキル基などの置換基が挙げられる。また、炭素数1〜10のアルコキシ基の具体的な例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基の炭素数1〜6の直鎖または分岐アルコキシ基や、シクロヘキシルオキシ基などの炭素数4〜10の環状アルコキシ基やフェノキシ基、ベンジルオキシ基、ナフチルオキシ基などの炭素数6〜10の芳香族アルコキシ基が挙げられる。これらの置換基の内、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、α−メチルベンジル基、メトキシ基、エトキシ基、ベンジルオキシ基が好ましい置換基であり、メチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、α−メチルベンジル基、メトキシ基、エトキシ基がより好ましい置換基である。
前記一般式(4)中のR4はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基またはハロゲン原子のいずれかである。炭素数1〜10の炭化水素基の具体的な例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基などの炭素数1〜10の直鎖または分岐アルキル基や、シクロヘキシル基などの炭素数4〜10の環状アルキル基や、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、インダニル基などの炭素数6〜10の置換基を有していてもよいアリール基や、ベンジル基、フェネチル基、2−メチルベンジル基、3−メチルベンジル基、4−メチルベンジル基、2,6−ジメチルベンジル基、3,5−ジメチルベンジル基、α−メチルベンジル基などの炭素数7〜10の置換基を有していてもよいアラルキル基などの置換基が挙げられ、好ましい置換基はメチル基、エチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、α−メチルベンジル基である。
なお、前記一般式(1)〜(8)において、同一の記号は、特段の断りがない限り、同一の意味を有する。
前記一般式(1)で表される化合物は、例えば、前記一般式(5)で表されるスピロ環構造を有するジヒドロキシ化合物(a)と前記一般式(6)で表されるハロゲン化アルキル基含有化合物(b)とを脱ハロゲン化水素縮合反応させることにより得ることができる。なお、mは前記ジヒドロキシ化合物(a)と前記ハロゲン化アルキル基含有化合物(b)のモル比からおよその計算が可能であり、モル比が1に近いほどmが大きくなる。しかし、両末端がヒドロキシ基となる必要があることから、(a)/(b)のモル比は1より大きくなる。
使用できる前記一般式(5)で表されるスピロ環構造を有するジヒドロキシ化合物(a)としては、スピロアセタール構造を有する前記一般式(7)で表される化合物やスピロビインダン構造を有する前記一般式(8)で表される化合物が好ましい。
前記一般式(7)で表される化合物は、例えば、ペンタエリスリトールと、ヒドロキシ基とホルミル基をそれぞれ1つずつ有する化合物とを、反応溶媒中で、酸触媒の存在下に、副成する水を留去しながら反応させることで得られる。ヒドロキシ基とホルミル基をそれぞれ1つずつ有する化合物の具体例としては、サリチルアルデヒド、3−ヒドロキシベンズアルデヒド、4−ヒドロキシベンズアルデヒド、バニリン、2−メトキシ−3−ヒドロキシベンズアルデヒド、2−メトキシ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド、2−メトキシ−5−ヒドロキシベンズアルデヒド、3−メトキシ−2−ヒドロキシベンズアルデヒド、3−メトキシ−5−ヒドロキシベンズアルデヒド、4−メトキシ−2−ヒドロキシベンズアルデヒド、4−メトキシ−5−ヒドロキシベンズアルデヒド、5−メトキシ−2−ヒドロキシベンズアルデヒド、6−メトキシ−2−ヒドロキシベンズアルデヒド、エチルバニリン、3−エトキシ−2−ヒドロキシベンズアルデヒド、3−エトキシ−5−ヒドロキシベンズアルデヒド、3−エトキシ−6−ヒドロキシベンズアルデヒド、3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド、3−メチル−2−ヒドロキシベンズアルデヒド、3−メチル−4−ヒドロキシベンズアルデヒド、4−メチル−2−ヒドロキシベンズアルデヒド、5−メチル−2−ヒドロキシベンズアルデヒド、3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンズアルデヒド、4,6−ジメチル−2−ヒドロキシベンズアルデヒドなどのヒドロキシベンズアルデヒドや、2−ヒドロキシ−1−ナフトアルデヒド、4−ヒドロキシ−1−ナフトアルデヒド、1−ヒドロキシ−2−ナフトアルデヒド、3−ヒドロキシ−2−ナフトアルデヒド、6−ヒドロキシ−2−ナフトアルデヒド、2−ヒドロキシ−7−メトキシ−1−ナフトアルデヒド、1−ヒドロキシ−5−メトキシ−2−ナフトアルデヒド、4−ヒドロキシ−5−メトキシ−2−ナフトアルデヒド、5−ヒドロキシ−4−メトキシ−2−ナフトアルデヒド、4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシ−2−ナフトアルデヒドなどのヒドロキシナフトアルデヒドが挙げられるがこれらに限定されるものではないし、これらを単独で使用しても2種類以上を併用してもよい。
前記一般式(7)で表される化合物の具体例としては、下記一般式(9)
(式中、R5はそれぞれ独立して、メチル基またはメトキシ基であり、q7はそれぞれ独立して0〜2までの整数である。)
または下記一般式(10)
(式中、R6はそれぞれ独立して、メチル基またはメトキシ基であり、q8はそれぞれ独立して0〜2までの整数である。)
または下記一般式(11)
(式中、q9、q10はそれぞれ独立して0〜4までの整数であり、q9+q10の平均値は0.1〜2である。)
などが挙げられるがこれらに限定されるものではないし、これらを単独で使用しても2種類以上を併用してもよい。
また、前記一般式(8)で表される化合物の具体例としては、下記一般式(12)
または下記一般式(13)
または下記一般式(14)
(式中、q11、q12はそれぞれ独立して0〜3までの整数であり、q11+q12の平均値は0.1〜2である。)
などが挙げられるがこれらに限定されるものではないし、これらを単独で使用しても2種類以上を併用してもよい。
また、使用できる前記一般式(6)で表されるハロゲン化アルキル基含有化合物(b)を具体的に例示すれば、ビスクロロメチルナフタレン、ビスクロロメチルビフェニル、ビスブロモメチルビフェニル、ビスクロロメチルフルオレンなどであり、さらに前記一般式(2)のR1と同義の、炭素数1〜10の炭化水素基またはハロゲン原子を有するこれらの化合物などが挙げられるがこれらに限定されるものではないし、これらを単独で使用しても2種類以上を併用してもよい。
本発明のエポキシ樹脂に適した前記一般式(1)で表される化合物を得るためには、前記で例示したジヒドロキシ化合物(a)と前記で例示したハロゲン化アルキル基含有化合物(b)とをどのように組み合わせてもよいが、前記ジヒドロキシ化合物(a)と前記ハロゲン化アルキル基含有化合物(b)とのより好ましい組み合わせは、ビスクロロメチルナフタレンと前記一般式(9)で表される化合物、ビスクロロメチルナフタレンと前記一般式(10)で表される化合物、ビスクロロメチルナフタレンと前記一般式(11)で表される化合物、ビスクロロメチルナフタレンと前記一般式(12)で表される化合物、ビスクロロメチルナフタレンと前記一般式(13)で表される化合物、ビスクロロメチルナフタレンと前記一般式(14)で表される化合物、ビスクロロメチルビフェニルと前記一般式(9)で表される化合物、ビスクロロメチルビフェニルと前記一般式(10)で表される化合物、ビスクロロメチルビフェニルと前記一般式(11)で表される化合物、ビスクロロメチルビフェニルと前記一般式(12)で表される化合物、ビスクロロメチルビフェニルと前記一般式(13)で表される化合物、ビスクロロメチルフルオレンと前記一般式(9)で表される化合物、ビスクロロメチルフルオレンと前記一般式(10)で表される化合物、ビスクロロメチルビフェニルと前記一般式(11)で表される化合物、ビスブロモメチルビフェニルと前記一般式(12)で表される化合物、ビスクロロメチルフルオレンと前記一般式(13)で表される化合物などが挙がられる。これらの中でもさらに好ましい組み合わせとして、接着性の点からビスクロロメチルナフタレンと前記一般式(9)で表される化合物、ビスクロロメチルビフェニルと前記一般式(9)で表される化合物、ビスクロロメチルビフェニルと前記一般式(11)で表される化合物が、耐熱性の点からビスクロロメチルナフタレンと前記一般式(9)で表される化合物、ビスクロロメチルナフタレンと前記一般式(11)で表される化合物、ビスクロロメチルナフタレンと前記一般式(12)で表される化合物、ビスクロロメチルビフェニルと前記一般式(12)で表される化合物、ビスクロロメチルビフェニルと前記一般式(13)で表される化合物、ビスクロロメチルビフェニルと前記一般式(14)で表される化合物が挙げられる。
また、前記エポキシ樹脂に適した前記一般式(1)で表される化合物を得るためには、前記ジヒドロキシ化合物(a)1.0モルに対し、前記ハロゲン化アルキル基含有化合物(b)を0.001〜1.0モルの範囲で反応させることが必要であり、好ましい範囲は0.01〜0.9モルであり、より好ましい範囲は0.05〜0.8モルであり、さらに好ましい範囲は0.1〜0.7モルである。前記ハロゲン化アルキル基含有化合物(b)が1モルを超えると、前記一般式(1)で表される化合物の末端基がハロゲンになるため、本発明のエポキシ樹脂が得られない。
前記ジヒドロキシ化合物(a)と前記ハロゲン化アルキル基含有化合物(b)との反応には脱ハロゲン化水素剤を存在させることが好ましく、その脱ハロゲン化水素剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物やトリエチルアミンなどの3級アミンが使用できるが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが反応速度の点から好ましい。これら脱ハロゲン化水素剤の使用量は特に限定されるものではないが、前記ジヒドロキシ化合物(a)1モルに対し1.8〜2.5モルが好ましく、2.0〜2.2モルがより好ましい。またその際、4級アンモニウム塩やクラウンエーテルなどの相関移動触媒を用いることによって反応速度を速めることができる。
また、前記反応は溶剤の存在下で行うことが好ましい。溶剤を使用する場合の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられるがこれらに限定されるものではないし、これらを単独で使用しても2種類以上を混合して用いてもよい。溶剤の使用量は仕込んだ原料の総量100質量部に対して通常50〜300質量部、好ましくは70〜250質量部である。
また、反応温度は通常20〜120℃、好ましくは30〜100℃、より好ましくは40〜80℃、さらに好ましくは50〜60℃である。20℃以下では反応が進行せず、100℃以上では副反応として親電子置換反応が起きる恐れがある。また、反応時間は通常1〜10時間であり、好ましくは2〜5時間である。
また、これらの反応は例えば適当な有機溶媒に前記ジヒドロキシ化合物(a)と前記ハロゲン化アルキル基含有化合物(b)を溶解し、それに脱ハロゲン化水素剤を滴下して反応が終結するまで撹拌を続ければよい。反応終了後、反応混合物の水洗浄液のpH値を3〜7になるようにリン酸ソーダなどの酸性化合物を添加して系内を中和する。その後、水洗処理を行って無機塩を系内から除去した後に、有機溶媒は蒸留回収することによって目的のエポキシ樹脂の中間体になる前記一般式(1)で表される化合物を得ることができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物に必須のエポキシ樹脂は、まず、前記ジヒドロキシ化合物(a)と前記ハロゲン化アルキル基含有化合物(b)を反応させて、前記一般式(1)で表される化合物を得た後、その化合物とエピハロヒドリンを反応させてヒドロキシ基をグリシジルエーテル化とすることで得られる下記一般式(15)
(式中、m、B、X、Yは、前記一般式(1)中のm、B、X、Yとそれぞれ同義であり、nは繰り返し数で、平均値は0≦n<10であり、Gはグリシジル基である。)
で表される化合物である。その反応の際に、エポキシ基が開環して重合した構造の成分や末端基がヒドロキシ基の成分などが少量生成することがあるが、このような成分が混入していても差し支えない。
前記一般式(15)のnは繰り返し数であり、その平均値は0≦n<10であり、0≦n<5が好ましく、0≦n<4がより好ましく、0≦n<3がさらに好ましい。nが10以上では高粘度となる恐れがある。また、エポキシ当量は特に規定がないが、2000g/eq.以下が好ましく、1000g/eq.以下がより好ましい。エポキシ当量が2000g/eq.より大きいと分子量が大きくなるために高粘度となる恐れがある。なお、前記一般式(1)のnの平均値は、前記エポキシ樹脂のエポキシ当量から計算で求めることができる。
前記ジヒドロキシ化合物(a)と前記ハロゲン化アルキル基含有化合物(b)を反応させて得られた前記一般式(1)で表される化合物から本発明のエポキシ樹脂を得る方法としては例えばそれ自体公知の方法が採用できる。例えば、前記で得られた前記一般式(1)で表される化合物とエピクロルヒドリン、エピブロムヒドリンなどのエピハロヒドリンの溶解混合物に水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物を添加し、または添加しながら20〜120℃、好ましくは、30〜80℃の範囲で1〜10時間反応させることにより本発明で用いるエポキシ樹脂を得ることができる。
エピハロヒドリンの使用量は、原料の前記一般式(1)で表される化合物中のヒドロキシ基1モルに対して、通常0.3〜20モル、好ましくは1.5〜15モル、より好ましくは2〜10モルの範囲が用いられる。エピハロヒドリンが2.5モルよりも少ない場合、エポキシ基と未反応水酸基が反応しやすくなるため、エポキシ基と未反応水酸基が付加反応して生成する基(−CH2CR(OH)CH2−、R:水素原子又はアルキル基)を含んだ高分子量物が得られる。一方、2.5モルよりも多い場合、理論構造物の含有量が高くなる。所望の特性によってエピハロヒドリンの量を適宜調節すればよい。
アルカリ金属水酸化物の使用量は、前記一般式(1)で表される化合物のヒドロキシ基1モルに対して、0.8〜2.5モル、好ましくは0.85〜2.0モル、より好ましくは0.9〜1.5モルの範囲である。
本発明のエポキシ樹脂組成物に必須のエポキシ樹脂を得る反応において、アルカリ金属水酸化物はその水溶液を使用してもよく、その場合は該アルカリ金属水酸化物の水溶液を連続的に反応系内に添加すると共に減圧下または常圧下連続的に水及びエピハロヒドリンを留出させ、さらに分液し水は除去しエピハロヒドリンは反応系内に連続的に戻す方法でもよい。
また、前記一般式(1)で表される化合物とエピハロヒドリンの溶解混合物にテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライドなどの4級アンモニウム塩を触媒として添加し50〜150℃で1〜5時間反応させて得られる、前記一般式(1)の化合物のハロヒドリンエーテル化物に、アルカリ金属水酸化物の固体または水溶液を加え、再び20〜120℃で1〜10時間反応させて脱ハロゲン化水素(閉環)させる方法でもよい。さらに、反応を円滑に進行させるためにメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジオキサンなどのエーテル類、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒などを添加して反応を行うことが好ましい。溶媒を使用する場合のその使用量は、エピハロヒドリンの100質量部に対し通常5〜50質量部、好ましくは10〜30質量部である。また非プロトン性極性溶媒を用いる場合はエピハロヒドリン100質量部に対し通常5〜100質量部、好ましくは10〜60質量部である。
これらのエポキシ化反応の反応物を水洗後または水洗無しに、加熱減圧下、110〜250℃、圧力0.00133MPa(10mmHg)以下でエピハロヒドリンや他の添加溶媒などを除去する。またさらに加水分解性ハロゲンの少ないエポキシ樹脂とするために、エピハロヒドリンなどを回収した後に得られる粗エポキシ樹脂を再びトルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えてさらに反応を行い閉環を確実なものにすることもできる。この場合、アルカリ金属水酸化物の使用量は粗エポキシ樹脂中に残存する加水分解性ハロゲン1モルに対して、通常0.5〜10モル、好ましくは1.2〜5モルである。反応温度は通常50〜120℃、反応時間は通常0.5〜3時間である。反応速度の向上を目的として、4級アンモニウム塩やクラウンエーテルなどの相関移動触媒を存在させてもよい。相関移動触媒を使用する場合のその使用量は、粗エポキシ樹脂100質量部に対して0.1〜3質量部の範囲が好ましい。
反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、さらに、加熱減圧下トルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤を留去することにより本発明のエポキシ樹脂組成物に必須のエポキシ樹脂が得られる。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物に必須のエポキシ樹脂を得るより好ましい方法としては、前述した前記ジヒドロキシ化合物(a)と前記ハロゲン化アルキル基含有化合物(b)を反応した後、中和工程を経て前記一般式(1)で表される化合物として反応系外に取り出すという操作を行わないで、直ちにエピハロヒドリンと反応させる方法が挙げられる。この方法では、前記ジヒドロキシ化合物(a)と前記ハロゲン化アルキル基含有化合物(b)との反応において脱ハロゲン化水素剤としてアルカリ金属水酸化物を使用し、残存したアルカリ金属水酸化物もエポキシ化反応に使用するアルカリ金属水酸化物として加算して考える。
本発明のエポキシ樹脂組成物に用いる前記硬化剤としては、各種フェノール樹脂類や酸無水物類、アミン類、ヒドラジッド類、活性エステル類などの通常使用されるエポキシ樹脂用硬化剤を使用することができ、これらの硬化剤は単独で使用しても2種類以上併用してもよい。また、低誘電正接化には硬化後に官能基濃度の低くなる硬化剤が好ましく、高ヒドロキシ基当量フェノール樹脂や活性エステル類が好ましい。
前記フェノール樹脂類を具体的に例示すれば、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック、ナフトールノボラック、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂などに代表される3価以上のフェノール化合物、さらにはフェノール類、ナフトール類または、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール、ナフタレンジオールなどの2価フェノール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−キシリレングリコール、p−キシリレングリコールジメチルエーテル、ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼン、ジメトキシメチルビフェニル類、ジビニルビフェニル、ジイソプロペニルビフェニル類などの架橋剤との反応により合成される多価フェノール化合物、フェノール類とビスクロロメチルビフェニルなどから得られるビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、ナフトール類とパラキシリレンジクロライドなどから合成されるナフトールアラルキル樹脂類などが挙げられる。
前記酸無水物類を具体的に例示すれば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、メチルナジック酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
前記アミン類を具体的に例示すれば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メタキシレンジアミン、イソホロンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルエーテル、ジシアンジアミドやダイマー酸などの酸類とポリアミン類との縮合物であるポリアミドアミンなどのアミン系化合物などが挙げられる。
前記ヒドラジッド類を具体的に例示すれば、アジピン酸ヒドラジッド、セパチン酸ヒドラジッド、イソフタル酸ヒドラジッドなどが挙げられる。
前記活性エステル類を具体的に例示すれば、EPICLON HPC−8000−65T(DIC株式会社製)が挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物において、前記エポキシ樹脂のエポキシ基1モルに対して、前記硬化剤の活性水素基が0.4〜1.2モルの範囲が好ましく、0.5〜1.1モルがより好ましく、0.7〜1.0モルがさらに好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物には必要に応じて硬化促進剤を使用することができる。使用できる硬化促進剤を具体的に例示すれば、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7などの第3級アミン類、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィントリフェニルボランなどのホスフィン類、オクチル酸スズなどの金属化合物が挙げられる。これらの硬化促進剤は単独で使用しても2種類以上併用してもよい。これらの硬化促進剤は本発明のエポキシ樹脂組成物中の前記エポキシ樹脂100質量部に対して0.02〜5.0質量部が必要に応じて用いられる。これらの硬化促進剤を用いることにより、硬化温度を下げたり、硬化時間を短縮することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂成分として前記一般式(1)で表される化合物とエピハロヒドリンから得られる前記エポキシ樹脂を必須のエポキシ樹脂としているが、本発明の目的を損なわない範囲で他のエポキシ樹脂を併用することもできる。
併用できる他のエポキシ樹脂を具体的に例示すれば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールフルオレン、4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、レゾルシン、ナフタレンジオール類などの2価のフェノール類のエポキシ化物、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラックなどの3価以上のフェノール類のエポキシ化物、ジシクロペンタジエンとフェノール類から得られる共縮合樹脂のエポキシ化物、クレゾール類とホルムアルデヒドとアルコキシ基置換ナフタレン類から得られる共縮合樹脂のエポキシ化物、フェノール類とパラキシリレンジクロライドなどから得られるフェノールアラルキル樹脂のエポキシ化物、フェノール類とビスクロロメチルビフェニルなどから得られるビフェニルアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物、ナフトール類とパラキシリレンジクロライドなどから合成されるナフトールアラルキル樹脂類のエポキシ化物などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は単独で使用しても2種類以上併用してもよい。これらの配合量は、本発明の目的を損なわない範囲であればよいが、本発明の前記エポキシ樹脂と他のエポキシ樹脂の合計に対して、好ましくは50質量%未満であり、より好ましくは40質量%未満であり、さらに好ましくは25質量%未満である。
本発明のエポキシ樹脂組成物には、粘度調整用として溶剤も用いることができる。用いることができる溶剤を具体的に例示すれば、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド類、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、メタノール、エタノールなどのアルコール類、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素類が挙げられる。これらの溶剤は単独で使用しても2種類以上混合して使用してもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、特性を損ねない範囲でエポキシ樹脂以外の硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を配合してもよい。具体的に例示すれば、フェノール樹脂、アクリル樹脂、石油樹脂、インデン樹脂、インデンクマロン樹脂、フェノキシ樹脂、シアネート樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ビニル化合物、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリビニルホルマールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明のエポキシ樹脂組成物には必要に応じてフィラーを用いることができる。具体的に例示すれば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、タルク、焼成タルク、クレー、カオリン、水酸化チタン、ガラス粉末、シリカバルーンなどの無機フィラーが挙げられるが、有機系または無機系の耐湿顔料、鱗片状顔料など顔料などを配合してもよい。一般的無機充填剤を用いる理由として、耐衝撃性の向上が挙げられる。また、ガラス繊維、パルプ繊維、合成繊維、セラミック繊維などの繊維質充填剤や、微粒子ゴム、熱可塑性エラストマーなどの有機充填剤などを配合することができる。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物中には、必要に応じて、難燃剤、揺変性付与材、流動性向上剤などの添加剤を配合してもよい。揺変性付与材としては、シリコン系、ヒマシ油系、脂肪族アマイドワックス、酸化ポリエチレンワックス、有機ベントナイト系などを挙げ類ことができる。さらに必要に応じて、本発明の樹脂組成物には、カルナバワックス、OPワックスなどの離型剤、カーボンブラックなどの着色剤、三酸化アンチモンなどの難燃剤、シリコンオイルなどの低応力化剤、ステアリン酸カルシウムなどの潤滑剤を配合できる。
次に、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて得られるプリプレグについて説明する。シート状基材としては、ガラスなどの無機繊維や、ポリエステルなど、ポリアミン、ポリアクリル、ポリイミド、芳香族ポリアミドなどの有機質繊維の織布または不織布を用いることができるが、これに限定されるものではない。本発明のエポキシ樹脂組成物及び基材からプリプレグを製造する方法としては、特に限定するものではなく、例えば前記シート状基材を、前記エポキシ樹脂組成物を溶剤で粘度調整した樹脂ワニスに浸漬して含浸した後、加熱乾燥して樹脂成分を半硬化(Bステージ化)して得られるものであり、例えば100〜200℃で1〜40分間加熱乾燥することができる。ここで、プリプレグ中の樹脂量は、樹脂分30〜80質量%とすることが好ましい。
次に、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて得られる接着シートについて説明する。接着シートを製造する方法としては、特に限定するものではないが、例えばポリエステルフィルム、ポリイミドフィルムなどのエポキシ樹脂組成物に溶解しないキャリアフィルム上に、本発明のエポキシ樹脂組成物を好ましくは5〜100μmの厚みに塗布した後、100〜200℃で1〜40分間加熱乾燥してシート状に成型する。一般にキャスティング法と呼ばれる方法で樹脂シートが形成されるものである。この時エポキシ樹脂組成物を塗布するシートにはあらかじめ離型剤にて表面処理を施しておくと、成型された接着シートを容易に剥離することができる。ここで接着シートの厚みは5〜80μmに形成することが望ましい。このようにして得られた接着シートは通常、絶縁を有する絶縁接着シートとなるが、前記エポキシ樹脂組成物に導電性を有する金属や金属コーティングされた微粒子を混合することで、導電性接着シートを得ることができる。
次に、本発明のプリプレグや絶縁接着シートを用いて積層板を製造する方法を説明する。プリプレグを用いて積層板を形成する場合は、プリプレグを一枚または複数枚積層し、片側または両側に金属箔を配置して積層物を構成し、この積層物を加熱・加圧して積層一体化する。ここで金属箔としては、銅、アルミニウム、真鍮、ニッケルなどの単独、合金、複合の金属箔を用いることができる。積層物を加熱加圧する条件としては、エポキシ樹脂組成物が硬化する条件で適宜調整して加熱加圧すればよいが、加圧の圧力があまり低いと、得られる積層板の内部に気泡が残留し、電気的特性が低下する場合があるため、成型性を満足する条件で加圧することが望ましい。例えば温度を160〜220℃、圧力を0.49〜4.9MPa(5〜50kgf/cm2)、加熱時間を40〜240分間にそれぞれ設定することができる。さらにこのようにして得られた単層の積層板を内層材として、多層板を作成することができる。この場合、まず積層板にアディティブ法やサブトラクティブ法などにて回路形成を施し、形成された回路表面を酸溶液で処理して黒化処理を施して、内層材を得る。この内層材の、片面または両側の回路形成面に、プリプレグや絶縁接着シートにて絶縁層を形成するとともに、絶縁層の表面に導体層を形成して、多層板を形成するものである。絶縁接着シートにて絶縁層を形成する場合は、複数枚の内層材の回路形成面に絶縁接着シートを配置して積層物を形成する。あるいは内層材の回路形成面と金属箔の間に絶縁接着シートを配置して積層物を形成する。そしてこの積層物を加熱加圧して一体成型することにより、絶縁接着シートの硬化物を絶縁層として形成するとともに、内層材の多層化を形成する。あるいは内層材と導体層である金属箔を絶縁接着シートの硬化物を絶縁層として形成するものである。ここで、金属箔としては、内層材として用いられる積層板に用いたものと同様のものを用いることができる。また加熱加圧成形は、内層材の成型と同様の条件にて行うことができる。積層板にエポキシ樹脂組成物を塗布して絶縁層を形成する場合は、内層材の最外層の回路形成面樹脂を前記エポキシ樹脂組成物を好ましくは5〜100μmの厚みに塗布した後、100〜200℃で1〜90分加熱乾燥してシート状に形成する。一般にキャスティング法と呼ばれる方法で形成されるものである。乾燥後の厚みは5〜80μmに形成することが望ましい。このようにして形成された多層積層板の表面に、さらにアディティブ法やサブストラクティブ法にてバイアホール形成や回路形成を施して、プリント配線板を形成することができる。またさらにこのプリント配線板を内層材として前記工法を繰り返すことにより、さらに多層の積層板を形成することができるものである。またプリプレグにて絶縁層を形成する場合は、内層材の回路形成面に、プリプレグを一枚または複数枚を積層したものを配置し、さらにその外側に金属箔を配置して積層物を形成する。そしてこの積層物を加熱加圧して一体成型することにより、プリプレグの硬化物を絶縁層として形成するとともに、その外側の金属箔を導体層として形成するものである。ここで、金属箔としては、内層板として用いられる積層板に用いたものと同様のものを用いることもできる。また加熱加圧成形は、内層材の成型と同様の条件にて行うことができる。このようにして成形された多層積層板の表面に、さらにアディティブ法やサブトラクティブ法にてバイアホール形成や回路形成を施して、プリント配線板を成型することができる。またさらにこのプリント配線板を内層材として前記工法を繰り返すことにより、さらに多層の多層板を形成することができるものである。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物を加熱硬化させれば、エポキシ樹脂硬化物とすることができ、この硬化物は低誘電特性、耐熱性、低吸湿性などの点で優れたものとなる。また、この硬化物は、エポキシ樹脂組成物を注型、圧縮形成、トランスファー形成などの方法により、成型加工して得ることができる。この際の温度は通常、120〜250℃の範囲である。
本発明のエポキシ樹脂組成物とその組成物を使用して得られたプリプレグ、接着シート、積層板、封止剤、注型物、硬化物は、優れた低誘電特性、耐熱性、低吸湿性、接着性に優れた特性を示すものであった。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例において、特に断りがない限り「部」は質量部を表し、「%」は質量%を表す。また、本発明では以下の試験方法を使用した。
(1)エポキシ当量の測定
JIS K 7236規格に準拠して測定した。具体的には、電位差滴定装置を用い、溶媒としてメチルエチルケトンを使用し、臭素化テトラエチルアンモニウム酢酸溶液を加え、0.1mol/L過塩素酸−酢酸溶液を用いた。
(2)軟化点の測定
JIS K 7234規格、環球法に準拠して測定した。具体的には、自動軟化点装置(株式会社メイテック製、ASP−MG4)を用いた。
(3)ガラス転移温度の測定
JIS K 7121、示差走査熱量測定に準拠して測定した。SII社製EXTER DSC6200を使用して、20℃から10℃/分の昇温速度により測定し、2サイクル目に得られたDSCチャートの補外ガラス転移開始温度(Tig)より求めた。
(4)比誘電率及び誘電正接の測定
空洞共振法(ベクトルネットワークアナライザー(VNA)E8363B(アジレント・テクノロジー製)、空洞共振器摂動法誘電率測定装置(関東電子応用開発製))によって、1GHzの値を測定した。
(5)接着力の測定
JIS K 6854−1に準拠し、島津製作所製オートグラフにて、25℃雰囲気下、50mm/min.により測定した。
(6)耐水性の測定
耐水性の指標としてPCT後ハンダ耐熱を測定した。JIS C 6481に準じて作製した試験片を121℃、0.2MPaのオートクレーブ中に3時間処理した後、260℃のハンダ浴中につけて、20分以上膨れやはがれが生じなかったものを○とし、10分以内に膨れやはがれが生じたものを×とし、それ以外を△と評価した。
(7)引張り強度
JIS K 7113に準じた。
合成例1
撹拌装置、温度計、窒素ガス導入装置、冷却管及び水分離器を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、4−ヒドロキシベンズアルデヒド244部、ペンタエリスリトール136部、トルエン800部、N,N−ジメチルホルムアミド80部及びp−トルエンスルホン酸3.8部を仕込み、トルエンの還流温度(107〜112℃)で6時間、反応を行った。この間に生成した水はトルエンと共に系外へ留去した。反応終了後、反応系内の温度を80℃に下げたところ、結晶が析出したので、さらに温度を40℃まで下げた後、結晶を濾別し、水洗後、80℃で24時間乾燥を行い、下記一般式(16)
で表されるスピロ環構造を有するジヒドロキシ化合物(a1)を305部得た。
撹拌装置、温度計、窒素ガス導入装置、冷却管及び滴下装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、得られた前記ジヒドロキシ化合物(a1)172部、ビス(2−メトキシエチル)エーテル(以下、DEDMと略す)43部及びp−トルエンスルホン酸0.21部を仕込み、撹拌しながら135℃まで昇温した。同温度を保持しながらスチレン52部を3時間かけて滴下した。滴下終了後さらに同温度にて7時間反応を継続した。その後、減圧下でDEDMを除去して、下記一般式(17)
(式中、q13、q14はそれぞれ独立して0〜2までの整数であり、q13+q14の平均値は1である。)
で表されるスピロ環構造を有するジヒドロキシ化合物(a2)を222部得た。
撹拌装置、温度計、窒素ガス導入装置、冷却管、油水分離器及び滴下装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、メタノール320部と水酸化カリウム30部を仕込み撹拌しながら、得られた前記ジヒドロキシ化合物(a2)112部を仕込み、アルカリ金属塩とした。その後、4,4’−ビスクロロメチルビフェニル(以下、BCMBと略す)19部とDEDM100部を仕込み、撹拌しながら75℃まで昇温し、同温度を保持しながら2時間反応した。反応終了後、0.0067MPa(50mmHg)の減圧下100℃まで昇温し、メタノール全量を留去したのち、エピクロルヒドリン250部を仕込み、撹拌溶解した。均一に溶解後、0.024MPa(180mmHg)の減圧下75℃に保ち、48%水酸化ナトリウム水溶液12部を2時間かけて滴下し、この滴下中に還流留出した水とエピクロルヒドリンを分離層で分離しエピクロルヒドリンは反応容器に戻し、水は系外に除いて反応した。滴下終了後、同条件でさらに1時間反応を継続した。反応終了後、濾過により生成した塩を除き、さらに水洗を行った後、エピクロルヒドリン及びDEDMを減圧留去し、エポキシ樹脂(e1)を120部得た。得られたエポキシ樹脂(e1)のエポキシ当量は416g/eq.だった。
合成例2
撹拌装置、温度計、窒素ガス導入装置、冷却管及び水分離器を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、4−ヒドロキシベンズアルデヒド122部、バニリン152部、ペンタエリスリトール136部、トルエン900部、N,N−ジメチルホルムアミド90部及びp−トルエンスルホン酸3.8部を仕込み、トルエンの還流温度(107〜112℃)で10時間、反応を行った。この間に生成した水はトルエンと共に系外へ留去した。反応終了後、系内の温度を80℃に下げ、15%の水酸化ナトリウム水溶液4部を添加して、p−トルエンスルホン酸を中和した。次いで、トルエン及びN,N−ジメチルホルムアミドを、減圧留去して、下記一般式(18)
(式中、q15はそれぞれ独立して0または1である。)
で表されるスピロ環構造を有するジヒドロキシ化合物(a3)を360部得た。
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、メタノール350部と水酸化カリウム58部を仕込み撹拌しながら、得られた前記ジヒドロキシ化合物(a3)187部を仕込み、アルカリ金属塩とした。その後、BCMB63部とDEDM200部を仕込み、撹拌しながら75℃まで昇温し、同温度を保持しながら2時間反応した。反応終了後、0.0067MPaの減圧下100℃まで昇温し、メタノール全量を留去したのち、エピクロルヒドリン300部を仕込み、撹拌溶解した。均一に溶解後、0.024MPaの減圧下75℃に保ち、48%水酸化ナトリウム水溶液20部を2時間かけて滴下し、この滴下中に還流留出した水とエピクロルヒドリンを分離層で分離しエピクロルヒドリンは反応容器に戻し、水は系外に除いて反応した。滴下終了後、同条件でさらに1時間反応を継続した。反応終了後、エピクロルヒドリン及びDEDMを減圧留去し、トルエン600部に溶解した後、水洗により生成した塩を除いた。その後、溶媒であるトルエンを減圧留去し、エポキシ樹脂(e2)を220部得た。得られたエポキシ樹脂(e2)のエポキシ当量は521g/eq.だった。
合成例3
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、メタノール330部と水酸化カリウム57部を仕込み撹拌しながら、下記一般式(19)
で表される3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン−6,6’−ジオール154部を仕込み、アルカリ金属塩とした。その後、BCMB20部とDEDM200部を仕込み、撹拌しながら75℃まで昇温し、2時間反応した。反応終了後、0.0067MPaの減圧下100℃まで昇温し、メタノール全量を留去したのち、エピクロルヒドリン450部を入れ、撹拌溶解した。均一に溶解後、0.024MPaの減圧下75℃に保ち、48%水酸化ナトリウム水溶液35部を2時間かけて滴下し、この滴下中に還流留出した水とエピクロルヒドリンを分離層で分離しエピクロルヒドリンは反応容器に戻し、水は系外に除いて反応した。滴下終了後、同条件でさらに1時間反応を継続した。反応終了後、濾過により生成した塩を除き、さらに水洗を行った後、エピクロルヒドリン及びDEDMを減圧留去し、エポキシ樹脂(e3)を180部得た。得られたエポキシ樹脂(e3)のエポキシ当量は256g/eq.だった。
合成例4
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、メタノール320部と水酸化カリウム29部を仕込み撹拌しながら、合成例1で得られた前記ジヒドロキシ化合物(a2)112部を仕込み、アルカリ金属塩とした。その後、α、α’−パラキシレンジクロライド7部とDEDM100部を仕込み、撹拌しながら75℃まで昇温し、同温度を保持しながら2時間反応した。反応終了後、0.0067MPaの減圧下100℃まで昇温し、メタノール全量を留去したのち、エピクロルヒドリン250部を仕込み、撹拌溶解した。均一に溶解後、0.024MPaの減圧下75℃に保ち、48%水酸化ナトリウム水溶液18部を2時間かけて滴下し、この滴下中に還流留出した水とエピクロルヒドリンを分離層で分離しエピクロルヒドリンは反応容器に戻し、水は系外に除いて反応した。滴下終了後、同条件でさらに1時間反応を継続した。反応終了後、エピクロルヒドリン及びDEDMを減圧留去し、トルエン600部に溶解した後、水洗により生成した塩を除いた。その後、溶媒であるトルエンを減圧留去し、エポキシ樹脂(e4)を120部得た。得られたエポキシ樹脂(e4)のエポキシ当量は330g/eq.だった。
合成例5
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、純水10部と水酸化カリウム58部を仕込み撹拌しながら、合成例1で得られた前記ジヒドロキシ化合物(a1)172部を仕込み、アルカリ金属塩とした。その後、1,4−ビス(クロロメチル)ナフタレンと1,5−ビス(クロロメチル)ナフタレンの混合物67.5部とDEDMを200部仕込み、撹拌しながら75℃まで昇温し、同温度を保持しながら2時間反応した。反応終了後、エピクロルヒドリン250部を仕込み、撹拌溶解した。均一に溶解後、0.024MPaの減圧下75℃に保ち、48%水酸化ナトリウム水溶液15.6部を2時間かけて滴下し、この滴下中に還流留出した水とエピクロルヒドリンを分離層で分離しエピクロルヒドリンは反応容器に戻し、水は系外に除いて反応した。滴下終了後、同条件でさらに1時間反応を継続した。反応終了後、エピクロルヒドリン及びDEDMを減圧留去し、トルエン600部に溶解した後、水洗により生成した塩を除いた。その後、溶媒であるトルエンを減圧留去し、エポキシ樹脂(e5)を200部得た。得られたエポキシ樹脂(e5)のエポキシ当量は602g/eq.だった。
比較合成例1
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、合成例2で得られた前記ジヒドロキシ化合物(a3)187部、エピクロルヒドリン600部、DEDM200部を入れ撹拌溶解した。均一に溶解後、0.024MPaの減圧下75℃に保ち、48%水酸化ナトリウム水溶液125部を3時間かけて滴下し、この滴下中に還流留出した水とエピクロルヒドリンを分離層で分離しエピクロルヒドリンは反応容器に戻し、水は系外に除いて反応した。滴下終了後、同条件でさらに1時間反応を継続した。反応終了後、濾過により生成した塩を除き、さらに水洗したのちエピクロルヒドリン及びDEDMを減圧留去し、エポキシ樹脂(e6)を200部得た。得られたエポキシ樹脂(e6)のエポキシ当量は245g/eq.だった。
比較合成例2
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、メタノール320部と水酸化カリウム58部を仕込み撹拌しながら、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)スルホン153部を仕込み、アルカリ金属塩とした。その後、BCMB37部とDEDM200部を仕込み、撹拌しながら75℃まで昇温し、同温度を保持しながら2時間反応した。反応終了後、0.0067MPaの減圧下100℃まで昇温し、メタノール全量を留去したのち、エピクロルヒドリン450部を仕込み、撹拌溶解した。均一に溶解後、0.024MPaの減圧下75℃に保ち、48%水酸化ナトリウム水溶液30部を2時間かけて滴下し、この滴下中に還流留出した水とエピクロルヒドリンを分離層で分離しエピクロルヒドリンは反応容器に戻し、水は系外に除いて反応した。滴下終了後、同条件でさらに1時間反応を継続した。反応終了後、濾過により生成した塩を除き、さらに水洗したのちエピクロルヒドリン及びDEDMを留去し、エポキシ樹脂(e7)を185部得た。得られたエポキシ樹脂(e7)のエポキシ当量は313g/eq.だった。
実施例1〜5及び比較例1〜3
表1に示す配合処方によりエポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、及び溶剤を配合し、不揮発分が50%のエポキシ樹脂組成物ワニスを得た。エポキシ樹脂、硬化剤、及び硬化促進剤は予めメチルエチルケトン(MEK)に溶解して使用した。得られたエポキシ樹脂組成物ワニスをガラスクロス(日東紡株式会社製、IPC規格の2116)に含浸させた後、その含浸クロスを熱風循環オーブン中にて、150℃で8分間乾燥させ、Bステージ状のプリプレグを得た。さらに、得られたプリプレグ4枚と銅箔(三井金属鉱業株式会社製、3EC−III、厚み35μm)を重ね、130℃×15分+190℃×80分の温度条件で2MPaの真空プレスを行い、0.5mm厚の両面銅張積層板を得た。得られた両面銅張積層板を用いて、ガラス転移温度、接着力、及び耐水性の評価を行った。また、Bステージ状のプリプレグのガラスクロスからBステージ状の樹脂組成物を分離し、190℃×80分の温度条件で2MPaの真空プレスを行い、比誘電率及び誘電正接評価用の硬化物を得た。評価結果を表2に示す。
なお、表1中のYD−903NはビスフェノールA型固形エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、エポトートYD−903N、エポキシ当量=812g/eq.、軟化点=96℃)を、PNはフェノールノボラック樹脂(昭和電工株式会社製、ショウノールBRG−557、フェノール性ヒドロキシ基当量=105g/eq.、軟化点=86℃)を、2E4MZは2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成株式会社製)をそれぞれ表す。
表2の結果より、比較例1は、スピロ構造を有するが一般式(1)で表されれる化合物ではないため、耐水性は良いが、接着力は弱く誘電特性が劣っている。比較例2は、ジヒドロキシ化合物とハロゲン化アルキル基含有化合物から得られた一般式(1)で表される化合物に類似しているが、スピロ構造を持たないため、誘電正接は低いが、比誘電率の低下が十分ではない。比較例3は、一般式的な中分子エポキシ樹脂の例であり、接着力は良いが、耐水性や誘電特性が劣っている。それに対し、実施例は、接着力、耐水性、誘電特性ともに優れている。
実施例6〜8及び比較例4〜5
表3に示す配合処方によりエポキシ樹脂、硬化剤、及び硬化促進剤を配合し、加熱ニーダーに入れて加熱混合し、樹脂組成物を得た。次に高強度炭素繊維(東レ株式会社製、T700、引張り強さ4.8GPa、引張弾性率235GPa)を一方向に引き揃えた後に、得られた樹脂組成物を加熱溶融し、圧力を加えて含浸させて樹脂含有率35%の一方向炭素繊維プリプレグを得た。得られたプリプレグを長さ30cm、幅30cmに裁断したものを繊維方向が同一になるように17枚積層して積層体を形成し、リリースクロスを重ねた後、ブリーダークロスを重ね、さらにブリーダークロスを重ね、ナイロンパックで包み、成形用スタックを形成した。この形成用スタックを130℃、1時間の条件下でオートクレーブ成形して、繊維体積含有率60%の炭素繊維複合材料を得た。得られた炭素繊維複合材料を用いて、ガラス転移温度、曲げ強度、及び曲げ弾性率の評価を行った。なお、プリプレグ中の樹脂含有率の測定法はJIS K 7071に、繊維体積含有率はJIS H 7401に準じて測定した。また、加熱ニーダーに入れて加熱混合した樹脂組成物を、190℃×80分の温度条件で2MPaの真空プレスを行い、比誘電率及び誘電正接評価用の硬化物を得た。評価結果を表4に示す。
なお、表3中のYD−011はビスフェノールA型固形エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、エポトートYD−011、エポキシ当量=475g/eq.、軟化点=68℃)を、DICYはジシアンジアミド(活性水素当量=21g/eq.)を、DCMUは3,4−ジクロロフェニル−1,1−ジメチルウレア(保土谷化学工業株式会社製)を、それぞれ表す。
表4の結果より、比較例では誘電特性が劣っているのに対し、実施例では強度的には有意差がなく誘電特性が向上している。
実施例9〜11及び比較例6〜8
表5に示す配合処方によりエポキシ樹脂、硬化剤、及び硬化促進剤を配合し、120℃に加熱しながら、撹枠し均一化してエポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を減圧下で脱泡した後、金型に注型し、熱風循環オーブン中にて、150℃で2時間、次いで、180℃で3時間硬化して注型硬化物を得た。得られた注型硬化物を用いて、ガラス転移温度、比誘電率、及び誘電正接の評価を行った。評価結果を表6に示す。
なお、表5中の2E4MZは表1の2E4MZと同義である。また、表中のMHは4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸とヘキサヒドロ無水フタル酸の混合物(新日本理化株式会社製、リカシッドMH−700、活性水素当量=164g/eq.)を、AAはジエチルジアミノジフェニルメタン(日本化薬株式会社製、カヤハードAA、活性水素当量=63g/eq.、粘度=2500mPa・s/25℃)を、それぞれ表す。
表6の結果より、比較例では誘電特性が劣っているのに対し、実施例では誘電特性が向上している。