JP6424054B2 - 柔軟導電材料およびその製造方法、並びに柔軟導電材料を用いたトランスデューサ、導電性テープ部材、フレキシブル配線板、電磁波シールド - Google Patents

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本発明は、高分子材料を用いた柔軟なトランスデューサの電極や配線等に好適な柔軟導電材料に関する。
エラストマー等の高分子材料を利用して、柔軟性が高く、小型で軽量なトランスデューサが開発されている。この種のトランスデューサは、例えば、電極間にエラストマー製の誘電層を介装して構成される。電極間の印加電圧を変化させると、誘電層が伸縮する。したがって、柔軟なトランスデューサにおいては、電極や配線においても、誘電層の変形に追従できるような伸縮性が要求される。伸縮可能な電極および配線の材料としては、例えば特許文献1、2に記載されているように、エラストマーに炭素材料等の導電剤を配合した導電材料が知られている。
炭素材料としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ等が用いられるが、近年、黒鉛の構成単位であるグラフェンや、黒鉛を剥離することにより黒鉛よりもグラフェンの積層数を少なくした薄片化黒鉛が注目されている。グラフェンや薄片化黒鉛は、大きな比表面積を有するため、少量でも導電性を向上させることができる。よって、グラフェンや薄片化黒鉛は、導電剤として有用である。
グラフェンや薄片化黒鉛は、黒鉛を剥離して得ることができる。例えば、特許文献3には、黒鉛と五員環を含有する環状化合物とを含む分散液を振とうした後、超音波処理して、薄片化黒鉛の分散液を製造する方法が開示されている。特許文献4には、酸化黒鉛を含む分散液に超音波を照射して酸化黒鉛を薄片化した後、さらに超音波を照射して薄片化された酸化黒鉛を還元して、薄片化黒鉛の分散液を製造する方法が開示されている。
特開2009−227985号公報 国際公開第2013/146254号 特開2011−136881号公報 特開2011−144060号公報 特許第5364866号公報 特開2013−75795号公報
しかしながら、従来の方法によると、比較的短時間で黒鉛の剥離を充分に進行させることは難しい。酸化黒鉛を薄片化して還元する方法では、黒鉛を酸化する工程、薄片化する工程、還元する工程などの多くの工程が必要になる。このため、薄片化黒鉛の製造に時間を要し、手間がかかる。また、薄片化した酸化黒鉛を還元して得られる薄片化黒鉛には、導電性が低いという問題がある。
一方、グラフェンや薄片化黒鉛は、凝集しやすい。このため、グラフェンや薄片化黒鉛を液中に分散させることは難しく、分散してもすぐに再凝集してしまうという問題がある。この点、特許文献5には、薄片化黒鉛を樹脂中に配合した場合に、樹脂との親和性を高めることを目的として、薄片化黒鉛に水酸基を導入する方法が開示されている。しかしながら、この方法によると、薄片化黒鉛を製造した後、さらに水酸基を導入するための工程が必要になる。また、薄片化黒鉛を分散させるマトリクスとして、水酸基と親和性の良い樹脂しか使用することができない。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、グラフェンや薄片化黒鉛をマトリクス中に分散させることにより、伸縮する基材への追従性に優れ伸張時においても電気抵抗が増加しにくい柔軟導電材料を提供することを課題とする。また、グラフェンや薄片化黒鉛を容易に製造し、かつ、マトリクス中に分散させて、伸縮する基材への追従性に優れ伸張時においても電気抵抗が増加しにくい柔軟導電材料を製造する方法を提供することを課題とする。さらに、電極や配線に起因する性能低下が生じにくく、耐久性に優れるトランスデューサを提供することを課題とする。また、性能が低下しにくく、耐久性に優れる導電性テープ部材、フレキシブル配線板、電磁波シールドを提供することを課題とする。
(1)上記課題を解決するため、本発明の柔軟導電材料は、多環芳香族成分とオリゴマー成分とがアミド結合またはイミド結合してなる重合体を含みガラス転移点が20℃以下であるマトリクスに、グラフェンおよび薄片化黒鉛の少なくとも一方を含む導電剤が分散されてなることを特徴とする。
本発明の柔軟導電材料のマトリクスは、多環芳香族成分とオリゴマー成分とがアミド結合またはイミド結合した重合体(以下、適宜「重合体」と称す)を含む。重合体の多環芳香族成分は、π−π相互作用により、グラフェンおよび薄片化黒鉛との親和性に優れる。これにより、グラフェンおよび薄片化黒鉛の凝集が抑制され、分散性が向上する。したがって、本発明の柔軟導電材料においては、導電剤の含有量が比較的少量でも、比表面積が大きいグラフェンおよび薄片化黒鉛の少なくとも一方(以下、適宜「グラフェン等」と称す)が高分散されていることにより、高い導電性を得ることができる。
また、重合体はオリゴマー成分を含み、マトリクスのガラス転移点は20℃以下である。このため、マトリクスは柔軟である。また、オリゴマー成分と相溶なエラストマーを選択することにより、重合体とエラストマーとを混合してマトリクスを構成することも可能である。この場合、マトリクスの柔軟性がより向上する。このように、本発明の柔軟導電材料は、高い導電性を有し、伸縮する基材への追従性に優れる。また、高分散したグラフェン等により形成された導電経路は、伸張時においても絶たれにくい。このため、伸張時においても電気抵抗が増加しにくい。
なお、上記特許文献2には、グラフェン、水系溶剤、および高分子分散剤を含むナノカーボン水系分散液が開示されている。しかしながら、特許文献2に記載されているのは、塗料、インキ等に用いられる水系の分散液であり、上記重合体をマトリクスとする本発明の柔軟導電材料とは異なる。高分子分散剤のA−Bブロックコポリマーは、90質量%以上がメタクリル系モノマーから構成されており、AブロックとBブロックとはアミド結合またはイミド結合していない。この点において、特許文献2に記載の高分子分散剤は、本発明における重合体とは異なる。
(2)本発明の柔軟導電材料の製造方法は、上記本発明の柔軟導電材料を製造するための方法であって、多環芳香族化合物と、末端がアミノ基で変性されたオリゴマーと、を重合して、多環芳香族成分とオリゴマー成分とがアミド結合またはイミド結合してなる重合体を合成する重合体合成工程と、該重合体を有機溶剤に溶解したポリマー溶液に黒鉛粉末を含む導電剤を添加して、分散処理を行うことにより該黒鉛を薄片化して導電塗料を調製する導電塗料調製工程と、該導電塗料を基材に塗布して硬化させる硬化工程と、を有することを特徴とする。
本発明の製造方法の導電塗料調製工程においては、まず、合成した重合体を有機溶剤に溶解してポリマー溶液を調製し、当該ポリマー溶液に黒鉛粉末を含む導電剤を添加する。重合体の多環芳香族成分は黒鉛との親和性に優れる。このため、重合体が黒鉛の層間に進入して、黒鉛を剥離しやすくする。次に、黒鉛粉末を含むポリマー溶液を分散処理する。これにより、黒鉛から単層あるいは複数層が剥離され、薄片化が進行する。単層あるいは複数層に薄片化された黒鉛、すなわちグラフェンや薄片化黒鉛は、重合体のπ−π相互作用により、再凝集しにくい。このようにして、本工程により、グラフェンおよび薄片化黒鉛の少なくとも一方がポリマー溶液に分散された導電塗料が得られる。そして、次の硬化工程において、導電塗料を硬化させることにより、上記本発明の柔軟導電材料を得ることができる。
このように、本発明の製造方法によると、グラフェンや薄片化黒鉛を容易に製造し、かつ、再凝集させずにマトリクス中に分散させることができる。したがって、上記本発明の柔軟導電材料を容易に製造することができる。
(3)本発明のトランスデューサは、ポリマー製の誘電層と、該誘電層を介して配置されている複数の電極と、複数の該電極に各々接続されている配線と、を備え、該電極および該配線の少なくとも一方は、上記(1)の構成の柔軟導電材料からなることを特徴とする。
トランスデューサは、ある種類のエネルギーを他の種類のエネルギーに変換する装置である。トランスデューサには、機械エネルギーと電気エネルギーとの変換を行うアクチュエータ、センサ、発電素子等、あるいは音響エネルギーと電気エネルギーとの変換を行うスピーカ、マイクロフォン等が含まれる。
本発明の柔軟導電材料から形成される電極、配線は、柔軟で、高い導電性を有し、伸張時にも電気抵抗が増加しにくい。このため、本発明のトランスデューサによると、誘電層の動きが、電極や配線により規制されにくい。また、伸縮を繰り返しても、電極、配線の電気抵抗が増加しにくい。したがって、本発明のトランスデューサにおいては、電極や配線に起因した性能の低下が生じにくい。よって、本発明のトランスデューサは、耐久性に優れる。
(4)本発明の導電性テープ部材は、上記(1)の構成の柔軟導電材料からなる導電膜と、該導電膜の厚さ方向の少なくとも一面に配置されている離型シートと、を備えることを特徴とする。
本発明の導電性テープ部材は、トランスデューサ等における柔軟な電極および配線、柔軟な電極と回路基板の配線との接続部材として有用である。本発明の柔軟導電材料から形成される導電膜は、柔軟で、高い導電性を有し、伸張時にも電気抵抗が増加しにくい。このため、本発明の導電性テープ部材によると、相手部材に追従して変形を繰り返しても、電気抵抗が増加しにくい。また、相手部材との界面に応力が集中しにくいため、破断しにくい。したがって、本発明の導電性テープ部材は、性能が低下しにくく、耐久性に優れる。
本発明の導電性テープ部材は、容易に運搬することができ、作業性に優れる。離型シートは、導電膜の厚さ方向の一面のみに配置されてもよく、両面に配置されてもよい。例えば、導電膜の一面のみに離型シートが配置されている場合、まず導電膜の他面を相手部材に圧着し、次に離型シートを剥離して、表出した一面を別の相手部材に圧着すればよい。導電膜の両面に離型シートが配置されている場合、まず一方の離型シートを剥離して、表出した一面を相手部材に圧着し、次に他方の離型シートを剥離して、表出した他面を別の相手部材に圧着すればよい。このように、本発明の導電性テープ部材によると、加熱することなく容易に導電膜を相手部材に接着することができる。また、導電膜の厚さ方向両面に離型シートを配置する、または厚さ方向一面に離型シートを配置して導電膜を内側にして巻回することにより、本発明の導電性テープ部材の運搬がより容易になる。
(5)本発明のフレキシブル配線板は、弾性基材と、該弾性基材の表面に配置されている配線と、を備え、該配線の少なくとも一部は、上記(1)の構成の柔軟導電材料からなることを特徴とする。
本発明のフレキシブル配線板によると、弾性基材の変形に追従して配線が伸縮する。よって、本発明のフレキシブル配線板は、可動部品や複雑形状の部品の配線として好適である。また、伸縮を繰り返しても、配線の電気抵抗が増加しにくい。したがって、本発明のフレキシブル配線板は、性能が低下しにくく、耐久性に優れる。
(6)本発明の電磁波シールドは、上記(1)の構成の柔軟導電材料からなることを特徴とする。
本発明の柔軟導電材料は、導電塗料を基材に塗布、硬化して製造することができる。このため、本発明の柔軟導電材料は、電磁波シールドとして、電磁波を遮蔽したい様々な部位に配置しやすい。また、本発明の電磁波シールドによると、相手部材に追従して変形を繰り返しても、電気抵抗が増加しにくい。したがって、本発明の電磁波シールドは、性能が低下しにくく、耐久性に優れる。
本発明のトランスデューサの一実施形態であるアクチュエータの断面模式図であって、(a)は電圧オフ状態、(b)は電圧オン状態を示す。 本発明の導電性テープ部材の一実施形態の断面図である。 本発明のフレキシブル配線板の一実施形態の上面透過図である。 実施例2の分散液の7日間放置後の写真である。 比較例1の分散液の7日間放置後の写真である。 実施例2の分散液のTEM写真である(倍率3万倍)。 比較例1の分散液(沈殿物)のTEM写真である(倍率3万倍)。 実施例2の分散液および比較例1の分散液(沈殿物)のラマンスペクトルである。 導電剤として膨張黒鉛を使用した導電材料における、導電剤の含有量と体積抵抗率との関係を示すグラフである。 導電剤として薄片化黒鉛を使用した導電材料における、導電剤の含有量と体積抵抗率との関係を示すグラフである。 導電剤として天然黒鉛を使用した導電材料における、導電剤の含有量と体積抵抗率との関係を示すグラフである。 実施例3、6、12〜14、18および比較例2、8の導電材料における伸張率に対する体積抵抗率の変化を示すグラフである。
<柔軟導電材料>
本発明の柔軟導電材料は、マトリクスに、グラフェンおよび薄片化黒鉛の少なくとも一方を含む導電剤が分散されてなる。当該マトリクスは、多環芳香族成分とオリゴマー成分とがアミド結合またはイミド結合してなる重合体を含み、ガラス転移点が20℃以下である。
重合体の多環芳香族成分は、グラフェンおよび薄片化黒鉛との親和性を担う成分であり、芳香環を含む複数の環構造を有する。環の数および配列は、特に限定されない。多環芳香族成分は、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、ペリレン環、ナフタセン環のうちのいずれかを有することが望ましい。重合体の柔軟性を考慮すると、ベンゼン環が繋がったビフェニル構造、ナフタレン環を有する構造が好適である。
多環芳香族成分とアミド結合またはイミド結合しているオリゴマー成分は、重合体に柔軟性を付与する成分である。また、マトリクスをより柔軟にするためにエラストマーが配合される場合には、当該マトリクスとの親和性を担う部分である。この場合、オリゴマー成分は、必要に応じて配合されるエラストマー、具体的には、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、フッ素ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、ポリエーテル、天然ゴムのうちのいずれかに相溶なものが好適である。
重合体のガラス転移点(Tg)が低いほど、マトリクスが柔軟になる。重合体のTgは、20℃以下、好適には10℃以下、さらには0℃以下であることが望ましい。重合体の重量平均分子量は、柔軟性を考慮して、100以上10万以下であることが望ましい。1万以上であるとより好適である。
マトリクスは、重合体のみから構成されてもよく、重合体に加えて他のエラストマーを含んで構成されてもよい。後者の場合、エラストマーとしては、架橋ゴムあるいは熱可塑性エラストマーの中から、重合体、具体的には重合体に含まれるオリゴマー成分に対する相溶性が良好なものを選択するとよい。エラストマーとしては、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、フッ素ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、天然ゴム、ポリエーテルから選ばれる一種以上を用いればよい。重合体とエラストマーとは、単に混合されているだけでもよいが、架橋していてもよい。重合体が水酸基等の官能基を有する場合には、重合体とエラストマーとを架橋させることができる。
本明細書においては、重合体とエラストマーとの相溶性の良否を次のようにして判断する。まず、エラストマーポリマーが溶解可能な溶剤を選択し、重合体とエラストマーポリマーとを当該溶剤に溶解したポリマー溶液を調製する。次に、調製したポリマー溶液を基材表面に塗布し、加熱するなどして塗膜を乾燥させる。そして、得られたポリマー膜をマイクロスコープにて観察し、重合体が分離した部分(分離部)の有無を観察する。ここで、最大長さが1μm以上の分離部が観察されれば相溶性は不良と判断し、最大長さが1μm以上の分離部が観察されなければ相溶性は良好、すなわち、重合体とエラストマーとは相溶である、と判断する。
導電剤は、グラフェンおよび薄片化黒鉛の少なくとも一方を含む。グラフェンは、黒鉛(グラファイト)の1層分であり、炭素原子の六員環が平面状に連なった構造を有する。薄片化黒鉛は、複数のグラフェンの積層体である。薄片化黒鉛におけるグラフェンの積層数は、元の黒鉛よりも少ない。積層数は、数層〜数十層であればよい。グラフェンおよび薄片化黒鉛は、黒鉛を剥離して製造される。製造方法の詳細は、後述する柔軟導電材料の製造方法において説明する。
導電剤としては、グラフェン等に加えて、カーボンブラック、カーボンナノチューブ等の導電性炭素粉末や、銀、金、銅、ニッケル、ロジウム、パラジウム、クロム、チタン、白金、鉄、およびこれらの合金等の金属粉末が配合されていてもよい。カーボンナノチューブは、単層、多層のいずれでもよい。なかでも、スーパーグロース法により製造される単層カーボンナノチューブ(SGCNT)は、長さが数百μm〜数mm程度であり、大きなアスペクト比を有する。したがって、SGCNTを加えると、マトリクス中に緻密な導電経路を形成することができる。これにより、導電性をより高めることができ、伸張時の電気抵抗増加をより抑制することができる。
導電剤の含有量は、柔軟導電材料の柔軟性と導電性とを考慮して、適宜調整すればよい。例えば、柔軟性の観点から、本発明の柔軟導電材料の弾性率は、40MPa以下であることが望ましい。この場合、導電剤の含有量を、マトリクス100質量部に対して50質量部以下にするとよい。30質量部以下にすると、より好適である。また、本発明の柔軟導電材料の自然状態の体積抵抗率は、10Ω・cm以下であることが望ましい。自然状態とは、柔軟導電材料に荷重が加わっていない状態であり、柔軟導電材料が伸張等の変形をしていない状態を意味する。柔軟性と導電性との両方を満足する本発明の柔軟導電材料は、トランスデューサ、フレキシブル配線板等の電極、配線の他、電磁波シールドとして好適である。
<柔軟導電材料の製造方法>
本発明の柔軟導電材料の製造方法は、重合体合成工程と、導電塗料調製工程と、硬化工程と、を有する。以下、各工程を順に説明する。
[重合体合成工程]
本工程においては、多環芳香族化合物と、末端がアミノ基で変性されたオリゴマーと、を重合して、多環芳香族成分とオリゴマー成分とがアミド結合またはイミド結合してなる重合体を合成する。
多環芳香族化合物としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、ペリレン環、ナフタセン環のうちのいずれかを有する化合物を用いることが望ましい。重合体の柔軟性を考慮すると、ベンゼン環が繋がったビフェニル構造や、ナフタレン環を有する化合物が好適である。重合体の多環芳香族成分がナフタレン環を有する場合、π−π相互作用により重合体が黒鉛の層間に侵入しやすいため、剥離効果が高い。よって、ナフタレン環を有する化合物がより好適である。
多環芳香族化合物としては、例えば、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、4,4′−オキシジフタル酸無水物、ペリロ[1,12−bcd]チオフェン−3,4,9,10−テトラカルボン酸無水物、3,3′,4,4′−p−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、9H−キサンテン−2,3,6,7−テトラカルボン酸2,3:6,7−二無水物、4,4’−[m−スルホニルビス(フェニレンスルファニル)]ジフタル酸無水物等が挙げられる。
末端がアミノ基で変性されたオリゴマーとしては、重合体に柔軟性を発現させるという観点から、重量平均分子量が100以上10万以下のものを用いることが望ましい。重合体のTgが20℃以下、好適には10℃以下、さらには0℃以下になるように、オリゴマーを選択するとよい。また、マトリクスをより柔軟にするためにエラストマーが配合される場合には、当該エラストマーとの相溶性を考慮して選択するとよい。例えば、両末端アミノ変性シリコーン、両末端アミノ変性ポリエーテル等が挙げられる。
多環芳香族成分とオリゴマー成分とがアミド結合している重合体を合成する場合には、両成分がイミド結合している重合体の合成時に必要な、アミド結合をイミド結合へ変換するための加熱工程が不要になる、という利点がある。また、アミド結合により生じたカルボキシ基を利用した架橋反応や修飾反応が可能であるという利点もある。
[導電塗料調製工程]
本工程においては、合成した重合体を有機溶剤に溶解したポリマー溶液に黒鉛粉末を含む導電剤を添加して、分散処理を行うことにより該黒鉛を薄片化して導電塗料を調製する。
有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)等のアルコール類、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)等のケトン類、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類、酢酸エチル等のエステル類等を使用すればよい。マトリクスにエラストマーを加える場合、有機溶剤は、当該エラストマーのポリマーを溶解可能なものが望ましい。
黒鉛としては、天然黒鉛や人造黒鉛を用いればよい。加熱によりガスを発生する物質が黒鉛の層間に挿入された膨張黒鉛や、薄片化処理された市販の薄片化黒鉛を用いてもよい。薄片化しやすいという理由から、膨張黒鉛が好適である。
導電剤として添加する材料は、黒鉛粉末のみでもよく、黒鉛粉末に、カーボンブラック、カーボンナノチューブ等の導電性炭素粉末や、銀、金、銅、ニッケル、ロジウム、パラジウム、クロム、チタン、白金、鉄、およびこれらの合金等の金属粉末を加えてもよい。
分散処理は、超音波を照射したり、ビーズミル、ジェットミル等を用いて行うことができる。分散処理においては、黒鉛の剥離だけでなく微細化も行われる。よって、分散処理を過剰に行うと、得られるグラフェン等の粒子径が小さくなる。グラフェン等の粒子径が小さ過ぎると、マトリクス中においてグラフェン等同士が接触しにくくなり、導電性の向上効果が小さくなる。したがって、分散処理の方法に応じて、条件、時間等を調整することが望ましい。
例えば、超音波を照射する場合には、周波数20〜50kHz、出力10〜50W程度で行うことが望ましい。照射時間は、30分〜6時間程度が望ましい。
柔軟導電材料のマトリクスとして、重合体に加えて他のエラストマーを含有させる場合には、本工程の分散処理後の分散液に、当該エラストマーのポリマーを添加して導電塗料を調製すればよい。エラストマーとしては、架橋ゴムあるいは熱可塑性エラストマーの中から、重合体に含まれるオリゴマー成分に対する相溶性が良好なものを選択するとよい。例えば、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、フッ素ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、天然ゴム、ポリエーテルから選ばれる一種以上を用いることができる。
導電塗料には、必要に応じて、架橋剤、架橋促進剤、架橋助剤、可塑剤、加工助剤、老化防止剤、軟化剤、着色剤等の添加剤を配合してもよい。
[硬化工程]
本工程においては、調製した導電塗料を基材に塗布して硬化させる。エラストマーのポリマーを添加して導電塗料を調製した場合、得られる柔軟導電材料において、マトリクスの重合体とエラストマーとは、単に混合しているだけでもよく、架橋していてもよい。
導電塗料の塗布方法は、特に限定されない。例えば、インクジェット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、パッド印刷、リソグラフィー等の印刷法の他、ディップ法、スプレー法、バーコート法等が挙げられる。基材としては、伸縮性を有するエラストマーシートの他、ポリイミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等からなる屈曲性を有する樹脂シート等が挙げられる。本発明の柔軟導電材料を、伸縮可能な基材の表面に形成した場合には、柔軟性が高く、伸張時にも電気抵抗が増加しにくいという効果を、より発揮させることができる。塗膜の硬化温度は、用いた溶剤の種類や、エラストマーの架橋温度等を考慮して適宜決定すればよい。
<トランスデューサ>
本発明のトランスデューサは、ポリマー製の誘電層と、該誘電層を介して配置されている複数の電極と、複数の該電極に各々接続されている配線と、を備える。本発明のトランスデューサは、誘電層と電極とを交互に積層させた積層構造を有していてもよい。
誘電層は、ポリマー、すなわち、樹脂またはエラストマーから形成される。エラストマーは、伸縮性を有するため好適である。なかでも、変位量および発生力を大きくするという観点から、比誘電率の高いエラストマーを用いることが望ましい。具体的には、常温における比誘電率(100Hz)が2以上、さらには5以上のエラストマーが望ましい。例えば、エステル基、カルボキシ基、水酸基、ハロゲン基、アミド基、スルホン基、ウレタン基、ニトリル基等の極性官能基を有するエラストマー、あるいは、これらの極性官能基を有する極性低分子量化合物を添加したエラストマーを採用するとよい。好適なエラストマーとしては、シリコーンゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、アクリルゴム、ウレタンゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン等が挙げられる。なお、「ポリマー製」とは、誘電層のベース材料が、樹脂またはエラストマーであることを意味する。よって、エラストマーまたは樹脂成分の他に、添加剤等の他の成分を含んでいても構わない。
誘電層の厚さは、トランスデューサの用途等に応じて適宜決定すればよい。例えば、アクチュエータの場合、小型化、低電位駆動化、および変位量を大きくする等の観点から、誘電層の厚さは薄い方が望ましい。この場合、絶縁破壊性等をも考慮して、誘電層の厚さを、1μm以上1000μm(1mm)以下とすることが望ましい。5μm以上200μm以下とすると、より好適である。
電極および配線の少なくとも一方は、本発明の柔軟導電材料からなる。本発明の柔軟導電材料の構成、および製造方法については、上述した通りである。よって、ここでは説明を省略する。また、本発明のトランスデューサの電極、配線においても、本発明の柔軟導電材料の好適な態様を採用することが望ましい。マトリクスが重合体のみからなる柔軟導電材料を用いた場合、誘電層に対する追従性および接着性を向上させるという観点から、電極、配線の表面を覆うようにカバー層を積層してもよい。以下、本発明のトランスデューサの一実施形態として、アクチュエータの実施形態を説明する。
図1に、本実施形態のアクチュエータの断面模式図を示す。(a)は電圧オフ状態、(b)は電圧オン状態を各々示す。
図1に示すように、アクチュエータ1は、誘電層10と、電極11a、11bと、配線12a、12bと、を備えている。誘電層10は、シリコーンゴム製である。電極11aは、誘電層10の上面の略全体を覆うように、配置されている。同様に、電極11bは、誘電層10の下面の略全体を覆うように、配置されている。電極11a、11bは、各々、配線12a、12bを介して電源13に接続されている。電極11a、11bは、重合体とアクリルゴムとを含むマトリクスに、グラフェン等が分散されてなる本発明の柔軟導電材料からなる。重合体は、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物(NTCDA)と両末端アミノ変性ポリエーテルとから合成されたNTCDA−ポリエーテルイミド(後述する実施例における重合体(A−2))である。マトリクスのガラス転移点は−53℃である。
オフ状態からオン状態に切り替える際は、一対の電極11a、11b間に電圧を印加する。電圧の印加により、誘電層10の厚さは薄くなり、その分だけ、図1(b)中白抜き矢印で示すように、電極11a、11b面に対して平行方向に伸張する。これにより、アクチュエータ1は、図中上下方向および左右方向の駆動力を出力する。
本実施形態によると、電極11a、11bは、柔軟で伸縮性を有する。このため、誘電層10の動きが、電極11a、11bにより規制されにくい。よって、アクチュエータ1によると、大きな力および変位量を得ることができる。また、電極11a、11bは、高い導電性を有する。加えて、電極11a、11bにおいては、伸縮を繰り返しても、電気抵抗が増加しにくい。したがって、アクチュエータ1においては、電極11a、11bに起因した性能の低下が生じにくい。よって、アクチュエータ1は、耐久性に優れる。
<導電性テープ部材>
本発明の導電性テープ部材は、本発明の柔軟導電材料からなる導電膜と、該導電膜の厚さ方向の少なくとも一面に配置されている離型シートと、を備える。
本発明の柔軟導電材料の構成、および製造方法については、上述した通りである。よって、ここでは説明を省略する。また、本発明の導電性テープ部材においても、本発明の柔軟導電材料の好適な態様を採用することが望ましい。
図2に、本発明の導電性テープ部材の一実施形態の断面図を示す。図2に示すように、導電性テープ部材2は、導電膜20と、第一離型シート21と、第二離型シート22と、を備えている。
導電膜20は、長方形の薄膜状を呈しており、重合体とアクリルゴムとを含むマトリクスに、グラフェン等および単層カーボンナノチューブが分散されてなる本発明の柔軟導電材料からなる。重合体は、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物(NTCDA)と両末端アミノ変性ポリエーテルとから合成されたNTCDA−ポリエーテルイミド(後述する実施例における重合体(A−2))である。第一離型シート21は、導電膜20の下面201に配置されている。第一離型シート21はPET製であり、導電膜20と同じ長方形の薄膜状を呈している。第二離型シート22は、導電膜20の上面202に配置されている。第二離型シート22もPET製であり、導電膜20と同じ長方形の薄膜状を呈している。
導電性テープ部材2を相手部材(図略)に接着するには、まず第二離型シート22を剥離して、表出した上面202を相手部材に圧着する。次に第一離型シート21を剥離して、表出した下面201を別の相手部材に圧着する。このように、導電性テープ部材2によると、容易に導電膜20を相手部材に接着することができる。
導電膜20は、柔軟で、高い導電性を有し、伸張時にも電気抵抗が増加しにくい。このため、導電性テープ部材2によると、相手部材に追従して変形を繰り返しても、電気抵抗が増加しにくい。また、相手部材との界面に応力が集中しにくいため、破断しにくい。したがって、導電性テープ部材2は、性能が低下しにくく、耐久性に優れる。
本実施形態においては、離型シートとしてPET製のシートを用いたが、離型シートの材質は、特に限定されない。例えば、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられる。本実施形態においては、離型シートを導電膜の厚さ方向両面(図2中、下面201および上面202)に配置したが、離型シートは、導電膜の厚さ方向一面のみに配置されてもよい。
<フレキシブル配線板>
本発明のフレキシブル配線板は、弾性基材と、該弾性基材の表面に配置されている配線と、を備える。弾性基材の材質は、特に限定されない。例えば、伸縮性を有する材料として、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、イソブチレンイソプレンゴム、各種の熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
配線の少なくとも一部は、本発明の柔軟導電材料からなる。本発明の柔軟導電材料の構成、および製造方法については、上述した通りである。よって、ここでは説明を省略する。また、本発明のフレキシブル配線板においても、本発明の柔軟導電材料の好適な態様を採用することが望ましい。配線は、材質の異なる二層以上の導電層から形成されていてもよい。この場合、弾性基材と接する導電層を、本発明の柔軟導電材料から形成することが望ましい。以下、本発明のフレキシブル配線板の実施形態を説明する。
まず、本実施形態のフレキシブル配線板の構成について説明する。図3に、本実施形態のフレキシブル配線板の上面透過図を示す。なお、図3中、裏側の電極、配線については細線で示す。図3に示すように、フレキシブル配線板6は、弾性基材60と、表側電極01X〜16Xと、裏側電極01Y〜16Yと、表側配線01x〜16xと、裏側配線01y〜16yと、表側配線用コネクタ61と、裏側配線用コネクタ62と、を備えている。
弾性基材60は、ウレタンゴム製であって、シート状を呈している。表側電極01X〜16Xは、弾性基材60の上面に、合計16本配置されている。表側電極01X〜16Xは、各々、帯状を呈している。表側電極01X〜16Xは、各々、X方向(左右方向)に延在している。表側電極01X〜16Xは、Y方向(前後方向)に、所定間隔ごとに離間して、互いに略平行になるように、配置されている。同様に、裏側電極01Y〜16Yは、弾性基材60の下面に、合計16本配置されている。裏側電極01Y〜16Yは、各々、帯状を呈している。裏側電極01Y〜16Yは、各々、Y方向に延在している。裏側電極01Y〜16Yは、X方向に、所定間隔ごとに離間して、互いに略平行になるように、配置されている。図3にハッチングで示すように、弾性基材60を挟んで、表側電極01X〜16Xと裏側電極01Y〜16Yとが交差する部分(重複する部分)により、荷重等を検出する検出部が形成されている。
表側配線01x〜16xは、弾性基材60の上面に、合計16本配置されている。表側配線01x〜16xは、各々、線状を呈している。表側配線01x〜16xは、重合体とアクリルゴムとを含むマトリクスに、グラフェン等が分散されてなる本発明の柔軟導電材料からなる。重合体は、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物(NTCDA)と両末端アミノ変性ポリエーテルとから合成されたNTCDA−ポリエーテルイミド(後述する実施例における重合体(A−2))である。表側配線用コネクタ61は、弾性基材60の左後隅に配置されている。表側配線01x〜16xは、各々、表側電極01X〜16Xの左端と、表側配線用コネクタ61と、を接続している。また、弾性基材60の上面、表側電極01X〜16X、表側配線01x〜16xは、上方から、表側カバーフィルム(図略)により覆われている。
裏側配線01y〜16yは、弾性基材60の下面に、合計16本配置されている。裏側配線01y〜16yは、各々、線状を呈している。裏側配線01y〜16yは、表側配線01x〜16xと同じ本発明の柔軟導電材料からなる。裏側配線用コネクタ62は、弾性基材60の左前隅に配置されている。裏側配線01y〜16yは、各々、裏側電極01Y〜16Yの前端と、裏側配線用コネクタ62と、を接続している。また、弾性基材60の下面、裏側電極01Y〜16Y、裏側配線01y〜16yは、下方から、裏側カバーフィルム(図略)により覆われている。
表側配線用コネクタ61、裏側配線用コネクタ62には、各々、演算部(図略)が電気的に接続されている。演算部には、表側配線01x〜16xおよび裏側配線01y〜16yから、検出部におけるインピーダンスが入力される。これに基づいて、面圧分布が測定される。
次に、本実施形態のフレキシブル配線板6の作用効果について説明する。本実施形態によると、表側配線01x〜16xおよび裏側配線01y〜16yは、各々、柔軟で伸縮可能である。このため、表側配線01x〜16xおよび裏側配線01y〜16yは、弾性基材60の変形に追従して変形することができる。また、表側配線01x〜16xおよび裏側配線01y〜16yの電気抵抗は、伸縮を繰り返しても増加しにくい。したがって、フレキシブル配線板6は、性能が低下しにくく、耐久性に優れる。
<電磁波シールド>
本発明の電磁波シールドは、本発明の柔軟導電材料からなる。電磁波シールドは、電子機器の内部で発生した電磁波が外部に漏れるのを抑制したり、外部からの電磁波を内部へ侵入させにくくする役割を果たす。例えば、電子機器の筐体の内周面に、電磁波シールドを配置する場合には、本発明の柔軟導電材料を製造するための導電塗料を、電子機器の筐体の内周面に塗布し、硬化させればよい。同様にして、トランスデューサの表面を覆うように、電磁波シールドを配置してもよい。また、電子機器の隙間にガスケットとして配置する場合には、導電塗料を所望の形状に成形すればよい。
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
<重合体の製造>
[重合体(A−2)]
重合体として、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物(NTCDA)−ポリエーテルイミドを製造した。反応工程を次式(A)に示す。
まず、NTCDA(分子量268.18)を4.02g(15.00mmol)秤量し、溶剤のテトラヒドロフラン(THF)200mlと共に三つ口フラスコに入れ、窒素バブリングを30分間行った。次に、両末端アミノ変性ポリエーテルのポリ(プロピレングリコール)ビス(2−アミノプロピルエーテル)(ハンツマンコーポレーション製「ジェファーミン(登録商標)D2000」、分子量2000)を30.00g(15.00mmol)秤量し、撹拌しながら三つ口フラスコに注入し、窒素雰囲気下、65℃で10時間加熱還流することにより重合反応を行った。反応終了後、減圧乾燥によりTHFを除去して、式(A−1)に示す構造のNTCDA−ポリエーテルアミドを得た。
続いて、NTCDA−ポリエーテルアミドをナスフラスコに入れ、200℃で6時間加熱還流を行った後、減圧乾燥して、式(A−2)に示す構造のNTCDA−ポリエーテルイミドを得た。得られたNTCDA−ポリエーテルイミドについて、赤外分光法(IR)による測定を行ったところ、赤外線吸収スペクトルの1780cm−1、1720cm−1、1380cm−1においてイミド由来のピークを確認した。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により分子量を測定したところ、重量平均分子量は15000であった。示差走査熱量計(DSC、(株)日立ハイテクサイエンス製「DSC6220」)によりガラス転移点を測定したところ、−53.0℃であった。
[重合体(B−2)]
重合体として、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)−ポリエーテルイミドを製造した。反応工程を次式(B)に示す。
まず、BPDA(分子量294.22)を4.41g(15.00mmol)秤量し、THF200mlと共に三つ口フラスコに入れ、窒素バブリングを30分間行った。次に、ポリ(プロピレングリコール)ビス(2−アミノプロピルエーテル)(同上)を30.00g(15.00mmol)秤量し、撹拌しながら三つ口フラスコに注入し、窒素雰囲気下、65℃で10時間加熱還流することにより重合反応を行った。反応終了後、減圧乾燥によりTHFを除去して、式(B−1)に示す構造のBPDA−ポリエーテルアミドを得た。
続いて、BPDA−ポリエーテルアミドをナスフラスコに入れ、200℃で6時間加熱還流を行った後、減圧乾燥して、式(B−2)に示す構造のBPDA−ポリエーテルイミドを得た。得られたBPDA−ポリエーテルイミドについて、IR測定を行ったところ、赤外線吸収スペクトルの1780cm−1、1720cm−1、1380cm−1においてイミド由来のピークを確認した。GPCにより分子量を測定したところ、重量平均分子量は12000であった。DSCによりガラス転移点を測定したところ、−45.0℃であった。
[重合体(C−2)]
重合体として、NTCDA−ポリシロキサンイミドを製造した。反応工程を次式(C)に示す。
まず、NTCDA(分子量268.18)を5.03g(18.76mmol)秤量し、THF200mlと共に三つ口フラスコに入れ、窒素バブリングを30分間行った。次に、両末端アミノ変性シリコーン(信越化学工業(株)製「X22−161A」、分子量1600)を30.00g(18.76mmol)秤量し、撹拌しながら三つ口フラスコに注入し、窒素雰囲気下、65℃で10時間加熱還流することにより重合反応を行った。反応終了後、減圧乾燥によりTHFを除去して、式(C−1)に示す構造のNTCDA−ポリシロキサンアミドを得た。
続いて、得られたNTCDA−ポリシロキサンアミドをナスフラスコに入れ、200℃で6時間加熱還流を行った後、減圧乾燥して、式(C−2)に示す構造のNTCDA−ポリシロキサンイミドを得た。得られたNTCDA−ポリシロキサンイミドについて、IR測定を行ったところ、赤外線吸収スペクトルの1780cm−1、1720cm−1、1380cm−1においてイミド由来のピークを確認した。GPCにより分子量を測定したところ、重量平均分子量は26800であった。DSCによりガラス転移点を測定したところ、−45.0℃であった。
<導電材料の製造>
製造した重合体を用いて、実施例1〜18の導電材料を製造した。実施例1〜18の導電材料は、本発明の柔軟導電材料に含まれる。比較のため、製造した重合体を用いずに、比較例1〜11の導電材料を製造した。
[実施例1]
重合体(A−2)のNTCDA−ポリエーテルイミド100質量部を溶剤のメチルエチルケトン(MEK)に溶解して、ポリマー溶液を調製した。ポリマー溶液に、導電剤として膨張黒鉛粉末(日本黒鉛工業(株)製「EXP−P」)50質量部を添加して、被処理液を調製した。被処理液に、超音波を30分間照射して、分散処理を行った。超音波の周波数は45kHz、出力は30Wとした。分散処理後の分散液を導電塗料とした。得られた導電塗料を、PET製の基材表面にバーコート法により塗布し、150℃下で1時間加熱して、塗膜を乾燥させた。このようにして、厚さ30μmの薄膜状の導電材料を製造した。
[実施例2]
重合体(A−2)のNTCDA−ポリエーテルイミド9質量部をMEKに溶解して、ポリマー溶液を調製した。ポリマー溶液に、導電剤として膨張黒鉛粉末(同上)10質量部を添加して、被処理液を調製した。被処理液に、超音波を30分間照射して、分散処理を行った。超音波の周波数は45kHz、出力は30Wとした。分散処理後の分散液に、アクリルゴムポリマー(日本ゼオン(株)製「Nipol(登録商標)AR53L」)91質量部を溶解して、導電塗料を調製した。得られた導電塗料を、PET製の基材表面にバーコート法により塗布し、150℃下で1時間加熱して、塗膜を乾燥させた。このようにして、厚さ30μmの薄膜状の導電材料を製造した。重合体(A−2)とアクリルゴムポリマーとから製造された本導電材料のマトリクスについて、DSCによりガラス転移点を測定したところ、−53℃であった。
[実施例3]
導電剤の膨張黒鉛粉末の添加量を、30質量部に変更した以外は、実施例2と同様にして、導電塗料を調製し、導電材料を製造した。
[実施例4]
導電剤の膨張黒鉛粉末の添加量を、50質量部に変更した以外は、実施例2と同様にして、導電塗料を調製し、導電材料を製造した。
[実施例5]
重合体(A−2)を、重合体(B−2)のBPDA−ポリエーテルイミドに変更した以外は、実施例2と同様にして、導電塗料を調製し、導電材料を製造した。アクリルゴムポリマーと重合体(B−2)とから製造された本導電材料のマトリクスについて、DSCによりガラス転移点を測定したところ、−48℃であった。
[実施例6]
重合体(B−2)を使用した実施例5において、導電剤の膨張黒鉛粉末の添加量を30質量部に変更して、導電塗料を調製し、導電材料を製造した。
[実施例7]
重合体(B−2)を使用した実施例5において、導電剤の膨張黒鉛粉末の添加量を50質量部に変更して、導電塗料を調製し、導電材料を製造した。
[実施例8]
導電剤の膨張黒鉛粉末を、薄片化黒鉛粉末(日本黒鉛工業(株)製「GR15」)に変更した以外は、実施例2と同様にして、導電塗料を調製し、導電材料を製造した。
[実施例9]
導電剤の膨張黒鉛粉末を、薄片化黒鉛粉末(同上)に変更し、さらにその添加量を50質量部に変更した以外は、実施例2と同様にして、導電塗料を調製し、導電材料を製造した。
[実施例10]
導電剤の膨張黒鉛粉末を、天然黒鉛粉末(伊藤黒鉛工業(株)製「CNP−7」)に変更した以外は、実施例2と同様にして、導電塗料を調製し、導電材料を製造した。
[実施例11]
導電剤の膨張黒鉛粉末を、天然黒鉛粉末(同上)に変更し、さらにその添加量を50質量部に変更した以外は、実施例2と同様にして、導電塗料を調製し、導電材料を製造した。
[実施例12]
導電剤として、膨張黒鉛粉末(同上)22質量部および単層カーボンナノチューブ(独立行政法人産業技術総合研究所製「スーパーグロースCNT」)3質量部を使用した以外は、実施例2と同様にして、導電塗料を調製し、導電材料を製造した。
[実施例13]
導電剤として、膨張黒鉛粉末および単層カーボンナノチューブを使用した実施例12において、分散処理の方法を変更して、導電塗料を調製し、導電材料を製造した。分散処理は、直径0.5mmのガラスビーズを充填したビーズミル((株)シンマルエンタープライゼス製「ダイノミル」)を用いて行った。ビーズミルによる分散処理は、30分間行った。
[実施例14]
導電剤として、膨張黒鉛粉末および単層カーボンナノチューブを使用した実施例12において、分散処理の方法を変更して、導電塗料を調製し、導電材料を製造した。分散処理は、ジェットミル((株)常光製「ナノジェットパル(登録商標)JN20」)を用いて行った。ジェットミルの圧力は150MPaとした。ジェットミルによる分散処理は、30分間行った。
[実施例15]
導電剤として、膨張黒鉛粉末および単層カーボンナノチューブを使用した実施例12において、さらに、ゴムポリマーをアクリルゴムからウレタンゴム(東洋紡(株)製「バイロン(登録商標)GK570」)に変更して、導電塗料を調製し、導電材料を製造した。ウレタンゴムポリマーと重合体(A−2)とから製造された本導電材料のマトリクスについて、DSCによりガラス転移点を測定したところ、−3℃であった。
[実施例16]
重合体(C−2)のNTCDA−ポリシロキサンイミド9質量部をトルエンに溶解して、ポリマー溶液を調製した。ポリマー溶液に、導電剤として膨張黒鉛粉末(同上)22質量部および単層カーボンナノチューブ(同上)3質量部を添加して、被処理液を調製した。被処理液に、超音波を30分間照射して、分散処理を行った。超音波の周波数は45kHz、出力は30Wとした。分散処理後の分散液に、シリコーンゴムポリマー(信越化学工業(株)製「KE−1935」)91質量部を溶解して、導電塗料を調製した。得られた導電塗料を、PET製の基材表面にバーコート法により塗布し、150℃下で1時間加熱して、塗膜を乾燥させた。このようにして、厚さ30μmの薄膜状の導電材料を製造した。重合体(C−2)とシリコーンゴムポリマーとから製造された本導電材料のマトリクスについて、DSCによりガラス転移点を測定したところ、−43℃であった。
[実施例17]
導電剤として、膨張黒鉛粉末(同上)22質量部および多層カーボンナノチューブ(Nanocyl社製「NC7000」)20質量部を使用した以外は、実施例2と同様にして、導電塗料を調製し、導電材料を製造した。
[実施例18]
ジェットミルを用いて分散処理を行った実施例14において、溶剤としてMEKではなく酢酸エチルを使用して被処理液を調製した。これ以外は、実施例14と同様にして、導電塗料を調製し、導電材料を製造した。
[比較例1]
重合体を使用せずに分散処理を行って、導電材料を製造した。まず、導電剤の膨張黒鉛粉末(同上)10質量部をMEKに添加して、被処理液を調製した。被処理液に、超音波を30分間照射して、分散処理を行った。超音波の周波数は45kHz、出力は30Wとした。分散処理後の分散液に、アクリルゴムポリマー(同上)100質量部を溶解して、導電塗料を調製した。得られた導電塗料を、PET製の基材表面にバーコート法により塗布し、150℃下で1時間加熱して、塗膜を乾燥させた。このようにして、厚さ30μmの薄膜状の導電材料を製造した。
[比較例2]
導電剤の膨張黒鉛粉末の添加量を、30質量部に変更した以外は、比較例1と同様にして、導電塗料を調製し、導電材料を製造した。
[比較例3]
導電剤の膨張黒鉛粉末の添加量を、50質量部に変更した以外は、比較例1と同様にして、導電塗料を調製し、導電材料を製造した。
[比較例4]
導電剤の膨張黒鉛粉末を、薄片化黒鉛粉末(同上)に変更した以外は、比較例1と同様にして、導電塗料を調製し、導電材料を製造した。
[比較例5]
導電剤の膨張黒鉛粉末を、薄片化黒鉛粉末(同上)に変更し、さらにその添加量を50質量部に変更した以外は、比較例1と同様にして、導電塗料を調製し、導電材料を製造した。
[比較例6]
導電剤の膨張黒鉛粉末を、天然黒鉛粉末(同上)に変更した以外は、比較例1と同様にして、導電塗料を調製し、導電材料を製造した。
[比較例7]
導電剤の膨張黒鉛粉末を、天然黒鉛粉末(同上)に変更し、さらにその添加量を50質量部に変更した以外は、比較例1と同様にして、導電塗料を調製し、導電材料を製造した。
[比較例8]
導電剤として、膨張黒鉛粉末(同上)22質量部および単層カーボンナノチューブ(同上)3質量部を使用した以外は、比較例1と同様にして、導電塗料を調製し、導電材料を製造した。
[比較例9]
導電剤として、膨張黒鉛粉末および単層カーボンナノチューブを使用した比較例8において、さらに、ゴムポリマーをアクリルゴムからウレタンゴム(同上)に変更して、導電塗料を調製し、導電材料を製造した。
[比較例10]
導電剤として、膨張黒鉛粉末および単層カーボンナノチューブを使用した比較例8において、さらに、ゴムポリマーをアクリルゴムからシリコーンゴム(同上)に変更して、導電塗料を調製し、導電材料を製造した。被処理液の調製においては、溶剤としてMEKではなくトルエンを使用した。
[比較例11]
導電剤として、膨張黒鉛粉末(同上)22質量部および多層カーボンナノチューブ(Nanocyl社製「NC7000」)20質量部を使用した以外は、比較例1と同様にして、導電塗料を調製し、導電材料を製造した。
<導電材料の評価>
[評価方法]
(1)グラフェン等の生成確認
実施例2と比較例1について、次の方法により、分散処理後の分散液におけるグラフェン等の生成を確認した。まず、分散処理後の分散液を7日間放置した。そして、放置後の分散液を、透過型電子顕微鏡(TEM、日本電子(株)製「JEM−2100」)により観察した。また、放置後の分散液のラマンスペクトルを、レーザーラマン顕微鏡(ナノフォトン(株)製「RAMAN−11i」、レーザー波長:532nm)により測定した。比較例1の分散液は、放置後に沈殿物と上澄みとの二層に分離した(後出の図5参照)。したがって、比較例1の分散液については、沈殿物をTEM観察し、沈殿物のラマンスペクトルを測定した。また、放置後の分散液を1ml採取して、PTFE製メンブレンフィルタ(孔径0.1μm)にてろ過した。比較例1の分散液については、上澄みを1ml採取して、上記同様にろ過した。そして、ろ別された固形分を80℃で3時間乾燥した後、固形分の質量を測定して、採取した液の剥離物濃度を算出した。
(2)導電性
まず、伸張する前の自然状態(初期)における導電材料の体積抵抗率を、測定した。体積抵抗率の測定は、JIS K6271(2008)の平行端子電極法に準じて行った。体積抵抗率の測定において、導電材料(試験片)を支持する絶縁樹脂製支持具には、市販のゴムシート(住友スリーエム(株)製「VHB(登録商標)4910」)を用いた。次に、導電材料を支持具と共に一軸方向に伸張率30%で伸張させて、体積抵抗率を測定した。伸張率は、次式(i)により算出した値である。
伸張率(%)=(ΔL/L)×100・・・(i)
[L:試験片の標線間距離、ΔL:試験片の標線間距離の伸張による増加分]
(3)柔軟性
JIS K6254:2010に準じて引張試験を行い、25%歪みの静的せん断弾性率を測定した。測定には、短冊状1号形の試験片を用い、引張速度は100mm/minとした。
(4)重合体とエラストマーとの相溶性
重合体およびエラストマーをマトリクスとする実施例2〜18について、重合体とエラストマーとの相溶性を評価した。まず、重合体とゴムポリマーとを溶剤に溶解したポリマー溶液を、PET製の基材表面に塗布し、150℃下で1時間加熱して塗膜を乾燥させた。溶剤としては、アクリルゴム、ウレタンゴムポリマーの場合にはメチルエチルケトンを使用し、シリコーンゴムの場合にはトルエンを使用した。得られたポリマー膜をマイクロスコープにて観察し、最大長さが1μm以上の分離部が観察されれば相溶性は不良、当該分離部が観察されなければ相溶性は良好(後出の表1、表2中、○印で示す)と判定した。
[評価結果]
実施例および比較例の各導電材料の原料組成および評価結果を、表1〜表3にまとめて示す。
まず、実施例2と比較例1とにおいて、グラフェン等の生成を確認した結果を説明する。図4に、実施例2の分散液の7日間放置後の写真を示す。図5に、比較例1の分散液の7日間放置後の写真を示す。図6に、実施例2の分散液のTEM写真を示す(倍率3万倍)。図7に、比較例1の分散液(沈殿物)のTEM写真を示す(倍率3万倍)。図8に、実施例2の分散液および比較例1の分散液(沈殿物)のラマンスペクトルを示す。
図4に示すように、実施例2の分散液には、7日間経過しても沈殿物が見られなかった。これにより、実施例2の分散液においては、導電剤の良好な分散状態が保たれていることがわかる。一方、図5に示すように、比較例1の分散液においては、導電剤のほとんどが沈殿した。また、図6、図7を比較すると、実施例2の分散液において、より薄い薄片が生成されていることがわかる。そして、図8に示すラマンスペクトルを比較すると、比較例1においては、2700cm−1付近に2Dバンドと呼ばれるピークがあるのに対し、実施例2の2Dバンドは低波数側にシフトし、グラフェンの2Dバンドが現れる2680cm−1に近づいている。これにより、実施例2の分散液においては、黒鉛の剥離が進行し、グラフェンや薄片化黒鉛が生成されていることが確認された。また、実施例2の分散液の剥離物濃度は1mg/mlであったのに対して、比較例1の上澄みの剥離物濃度は0mg/mlであった。
次に、表1〜表3に示した評価結果を説明する。マトリクス100質量部に対して導電剤の含有量が50質量部以下の実施例1〜18のうち、実施例10、15以外の導電材料においては、自然状態の体積抵抗率が10Ω・cm以下であり、かつ、弾性率が40MPa以下であった。実施例10の導電材料においては、導電剤の含有量が少ない。このため、導電剤の含有量が多い実施例11の導電材料と比較して、弾性率は小さいが導電性は低下した。しかし、重合体を含まない比較例6と比較すると、導電性は大幅に向上した。実施例15の導電材料のマトリクスは、ウレタンゴムおよび重合体(A−2)からなる。この場合、マトリクスが異なり導電剤が同じ実施例12〜14、16と比較して弾性率は大きくなった。しかし、マトリクスが同じで重合体を含まない比較例9の導電材料と比較すると、導電性は大幅に向上した。
実施例1〜18で使用した重合体とエラストマーとの相溶性は、いずれも良好であった。また、実施例12〜14の結果からわかるように、超音波照射、ビーズミル、ジェットミルのいずれの分散処理方法においても、良好な結果が得られた。
図9に、導電剤として膨張黒鉛を使用した実施例2〜4、実施例5〜7、および比較例1〜3の導電材料における、導電剤の含有量と体積抵抗率との関係を示す。図9に示すように、重合体を含む実施例2〜4および実施例5〜7の導電材料の方が、自然状態の体積抵抗率が小さいことがわかる。そして、導電剤の含有量が多くなるほど、体積抵抗率は小さくなった。また、表1、表3に示すように、重合体を含む実施例2〜4および実施例5〜7の導電材料の方が、伸張時における体積抵抗率が小さく、弾性率も小さいことが確認された。
図10に、導電剤として薄片化黒鉛を使用した実施例8、9および比較例4、5の導電材料における、導電剤の含有量と体積抵抗率との関係を示す。図10に示すように、重合体を含む実施例8、9の導電材料の方が、自然状態の体積抵抗率が小さいことがわかる。そして、導電剤の含有量が多くなるほど、体積抵抗率は小さくなった。また、表1、表3に示すように、重合体を含む実施例8、9の導電材料の方が、伸張時における体積抵抗率が小さく、弾性率も小さいことが確認された。
図11に、導電剤として天然黒鉛を使用した実施例10、11および比較例6、7の導電材料における、導電剤の含有量と体積抵抗率との関係を示す。図11に示すように、重合体を含む実施例10、11の導電材料の方が、自然状態の体積抵抗率が小さいことがわかる。そして、導電剤の含有量が多くなるほど、体積抵抗率は小さくなった。また、表1、表3に示すように、重合体を含む実施例10、11の導電材料の方が、伸張時における体積抵抗率が小さく、弾性率も小さいことが確認された。
表2、表3において、重合体の有無のみが異なる実施例12と比較例8、実施例15と比較例9、実施例16と比較例10、実施例17と比較例11を各々比較すると、いずれも重合体を含む実施例の導電材料の方が、自然状態、伸張時の両方において体積抵抗率が小さく、弾性率も小さくなった。また、実施例12〜14の結果から、導電剤として単層カーボンナノチューブを加えると、導電性がより向上することがわかる。
図12に、実施例3、6、12〜14、18および比較例2、8の導電材料における伸張率に対する体積抵抗率の変化を示す。体積抵抗率の測定は、先の[評価方法](2)導電性において説明した方法で行った。図12に示すように、実施例3、6、12〜14、18の導電材料においては、伸張率が80%と大きくなっても、体積抵抗率は10Ω・cm以下であり、高い導電性を示した。
以上より、重合体を用いると、黒鉛を容易に薄片化できると共に、生成したグラフェンや薄片化黒鉛をマトリクス中に分散させて、柔軟で導電性の良好な導電材料を実現できることが確認された。
本発明の柔軟導電材料は、柔軟なトランスデューサ、フレキシブル配線板等の電極、配線の他、電子機器、ウェアラブルデバイス等に使用される電磁波シールドに好適である。本発明の柔軟導電材料を電極、配線、電磁波シールドに用いることにより、ロボットの可動部、介護用機器、輸送機器の内装等の柔軟な部位に実装される電子機器の耐久性を、向上させることができる。
1:アクチュエータ(トランスデューサ)、10:誘電層、11a、11b:電極、12a、12b:配線、13:電源。
2:導電性テープ部材、20:導電膜、21:第一離型シート、22:第二離型シート、201:下面、202:上面。
6:フレキシブル配線板、60:弾性基材、61:表側配線用コネクタ、62:裏側配線用コネクタ、01X〜16X:表側電極、01Y〜16Y:裏側電極、01x〜16x:表側配線、01y〜16y:裏側配線。

Claims (10)

  1. 多環芳香族成分とオリゴマー成分とがアミド結合またはイミド結合してなる重合体を含みガラス転移点が20℃以下であるマトリクスに、グラフェンおよび薄片化黒鉛の少なくとも一方を含む導電剤が分散されてなり、
    該多環芳香族成分は、ナフタレン環を有する構造、またはベンゼン環が繋がったビフェニル構造を有し、
    該オリゴマー成分は、ポリエーテルまたはポリシロキサンであることを特徴とする柔軟導電材料。
  2. 前記マトリクスは、前記オリゴマー成分と相溶なエラストマーを含む請求項1に記載の柔軟導電材料。
  3. 前記導電剤の含有量は、前記マトリクス100質量部に対して50質量部以下であり、
    自然状態の体積抵抗率が10Ω・cm以下であり、弾性率が40MPa以下である請求項1または請求項2に記載の柔軟導電材料。
  4. 電極、配線、および電磁波シールドのうちの少なくとも一つに用いられる請求項1ないし請求項のいずれかに記載の柔軟導電材料。
  5. 請求項1に記載の柔軟導電材料の製造方法であって、
    多環芳香族化合物と、末端がアミノ基で変性されたオリゴマーと、を重合して、多環芳香族成分とオリゴマー成分とがアミド結合またはイミド結合してなる重合体を合成する重合体合成工程と、
    該重合体を有機溶剤に溶解したポリマー溶液に黒鉛粉末を含む導電剤を添加して、分散処理を行うことにより該黒鉛を薄片化して導電塗料を調製する導電塗料調製工程と、
    該導電塗料を基材に塗布して硬化させる硬化工程と、
    を有し、
    該多環芳香族化合物は、ナフタレン環を有する構造、またはベンゼン環が繋がったビフェニル構造を有し、
    該オリゴマーは、ポリエーテルまたはポリシロキサンであることを特徴とする柔軟導電材料の製造方法。
  6. 前記柔軟導電材料のマトリクスは、前記オリゴマーと相溶なエラストマーを含み、
    前記導電塗料調製工程は、前記分散処理後の分散液に、該エラストマーのポリマーを添加して導電塗料を調製する請求項に記載の柔軟導電材料の製造方法。
  7. ポリマー製の誘電層と、該誘電層を介して配置されている複数の電極と、複数の該電極に各々接続されている配線と、を備え、
    該電極および該配線の少なくとも一方は、請求項1ないし請求項のいずれかに記載の柔軟導電材料からなることを特徴とするトランスデューサ。
  8. 請求項1ないし請求項のいずれかに記載の柔軟導電材料からなる導電膜と、該導電膜の厚さ方向の少なくとも一面に配置されている離型シートと、を備えることを特徴とする導電性テープ部材。
  9. 弾性基材と、該弾性基材の表面に配置されている配線と、を備え、
    該配線の少なくとも一部は、請求項1ないし請求項のいずれかに記載の柔軟導電材料からなることを特徴とするフレキシブル配線板。
  10. 請求項1ないし請求項のいずれかに記載の柔軟導電材料からなることを特徴とする電磁波シールド。
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