JP2008163219A - カーボンナノチューブ配合ポリイミド成形体およびカーボンナノチューブ配合ベルト - Google Patents

カーボンナノチューブ配合ポリイミド成形体およびカーボンナノチューブ配合ベルト Download PDF

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岳彦 杉本
Toshiaki Kasazaki
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Abstract

【課題】導電率の制御が簡単であり、かつ表面平滑性や電気的特性等に優れるカーボンナノチューブ配合ポリイミド成形体およびカーボンナノチューブ配合ベルトを提供することである。
【解決手段】導電剤が配合され遠心成形法により成形して得られる管状のポリイミド成形体であって、前記導電剤がカーボンナノチューブであり、表面の物性と裏面の物性とが実質的に同じであるカーボンナノチューブ配合ポリイミド成形体。前記カーボンナノチューブ配合ポリイミド成形体を用いたカーボンナノチューブ配合ベルトである。他のベルトとしては、基材1上に少なくとも弾性層2が設けられたベルトであって、基材1が本発明にかかるポリイミド樹脂からなり、弾性層2が本発明にかかるイミド変性エラストマーからなる。
【選択図】図1

Description

本発明は、導電性を有するカーボンナノチューブ配合ポリイミド成形体およびカーボンナノチューブ配合ベルトに関する。
ポリイミドの成形体は物理強度等に優れるので、例えばベルト等に用いられる。このベルトは、一般に、ポリイミド前駆体溶液を遠心成形法により成形して管状のポリイミド成形体を得、この管状の成形体を周方向に切断して得られる。
一方、一般的にベルトには導電性が求められる場合が多い。例えば画像形成装置において転写部で用いられる中間転写ベルトには、トナー転写の上でベルトの導電率を半導電領域にする必要がある。
ところが、ポリイミドは絶縁性なので導電性を付与する必要があり、導電性を付与する方法としては、例えばポリイミド前駆体溶液にカーボンブラックを導電剤として配合する方法がある。
特許文献1には、所定のナイロン塩型モノマー溶液に、高分子量のポリイミド前駆体溶液または高分子量のポリアミドイミド溶液を混合して混合溶液を調製し、該混合溶液にカーボンブラックを均一分散させてなる半導電性ポリイミド系前駆体組成物が記載されている。また、この組成物を回転成形法(遠心成形法)にて管状物に成形し、加熱処理してイミド化して得られる半導電性ポリイミド系管状物も記載されている。
ここで、カーボンブラックでベルトに半導電性を付与するには、通常、カーボンブラックを多量に添加しなければならず、このためベルト表面にカーボンブラック由来の凹凸が生じてベルトの表面平滑性が低下するという問題がある。また、カーボンブラックは、一定の添加量で急激に導電率が低下するいわゆるパーコレーション現象を起こすので、導電率の制御が難しい。さらに、遠心成形法でベルトを成形すると、遠心力によるカーボンブラックの偏りが発生する。カーボンブラックの偏りが発生すると、例えばベルトの表裏において導電率等に差が生じる。
特許文献1によると、前記管状物はフィルム表面と裏面の表面抵抗率の差が小さいという特性を備えているので、転写ベルト等として使用した場合には、優れた画像処理ができると記載されている。
しかしながら、導電剤にカーボンブラックを用いているので、表面平滑性が低下する問題や、導電率の制御が難しいという問題がある。
一方、上記のような問題に対して非特許文献1では、特定のカーボンブラックを用い、かつ特定の条件で遠心力の制御を行っているが、カーボンブラックの種類が限定されると共に、遠心力によるカーボンブラックの偏りを十分に抑制することができないという問題がある。
特開2005−247987号公報 西浦直樹、岡本健三、石川優、「回転成形法におけるカーボンブラック充填ポリイミドベルトの電気抵抗率に与える遠心力の影響」、成形加工、第16巻、第11号、2004年、p729-734
本発明の課題は、導電率の制御が簡単であり、かつ表面平滑性や電気的特性等に優れるカーボンナノチューブ配合ポリイミド成形体およびカーボンナノチューブ配合ベルトを提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の構成からなる解決手段を見出し、本発明を完成するに至った。
(1)導電剤が配合され遠心成形法により成形して得られる管状のポリイミド成形体であって、前記導電剤がカーボンナノチューブであり、表面の物性と裏面の物性とが実質的に同じであることを特徴とする、カーボンナノチューブ配合ポリイミド成形体。
(2)カーボンナノチューブの分散液を用いて遠心成形法により成形された前記(1)記載のカーボンナノチューブ配合ポリイミド成形体。
(3)ポリイミド成分がイミド変性エラストマーである前記(1)または(2)記載のカーボンナノチューブ配合ポリイミド成形体。
(4)前記イミド変性エラストマーは、下記一般式(I):
Figure 2008163219
[式中、R1は、芳香族環または脂肪族環を含む2価の有機基を示す。R2は、重量平均分子量100〜10,000の2価の有機基を示す。R3は、芳香族環、脂肪族環または脂肪族鎖を含む2価の有機基を示す。R4は、4個以上の炭素を含む4価の有機基を示す。nは1〜100の整数を示す。mは2〜100の整数を示す。]で表されるイミド変性ポリウレタンエラストマーである前記(3)記載のカーボンナノチューブ配合ポリイミド成形体。
(5)ポリイミド成分がポリイミド樹脂である前記(1)または(2)記載のカーボンナノチューブ配合ポリイミド成形体。
(6)表面および裏面における前記物性が表面抵抗率であり、該表面抵抗率が103〜1012Ω/□である前記(1)〜(5)のいずれかに記載のカーボンナノチューブ配合ポリイミド成形体。
(7)前記(1)〜(6)のいずれかに記載のカーボンナノチューブ配合ポリイミド成形体を用いたことを特徴とするカーボンナノチューブ配合ベルト。
(8)基材上に少なくとも弾性層が設けられたベルトであって、前記基材が前記(1),(2),(5),(6)のいずれかに記載のポリイミド樹脂からなり、前記弾性層が前記(1)〜(4),(6)のいずれかに記載のイミド変性エラストマーからなることを特徴とするカーボンナノチューブ配合ベルト。
(9)画像形成装置用である前記(7)または(8)記載のカーボンナノチューブ配合ベルト。
(10)カーボンナノチューブの分散液を配合したポリイミド前駆体溶液を遠心成形法により成形することを特徴とする、前記(1)〜(6)のいずれかに記載のカーボンナノチューブ配合ポリイミド成形体の製造方法。
なお、本発明にかかるポリイミド成形体において前記「表面の物性と裏面の物性とが実質的に同じである」とは、本発明にかかるポリイミド成形体を実際に用いる状態、すなわち実使用に適した配合量のカーボンナノチューブを含有した状態において、該成形体の表面の物性と裏面の物性とが実質的に同じであることを意味する。
本発明における前記「ポリイミド」とは、イミド成分を有するポリマーのことを意味し、樹脂およびエラストマーのいずれをも含む概念である。
前記(1)によれば、導電率を簡単に制御することができ、かつ表面平滑性や電気的特性等に優れるという効果を有する。すなわち、導電剤としてカーボンナノチューブを用いると、該カーボンナノチューブは、少量で高い導電率を発現することができ、かつその添加量と導電率との関係は直線的に変化するのでパーコレーション現象が発生せず、よって導電率を簡単に制御することができると共に、導電剤由来の凹凸が成形体表面に生じることによる成形体の表面平滑性が低下するのを抑制することができる。
しかも、このカーボンナノチューブをポリイミド前駆体溶液中に分散させると、該溶液中にカーボンナノチューブを均一に分散させることができるので、遠心成形法により成形しても、遠心力による導電剤の偏りが発生するのを抑制することができ、その結果、得られる成形体の表面の物性と裏面の物性とが実質的に同じになる。したがって、ベルトの表裏において導電率等に差が生じることを抑制することができ、優れた電気的特性を示すことができる。
特に、前記(2)によれば、カーボンナノチューブの分散液を用いて遠心成形法により成形するので、確実にポリイミド前駆体溶液中にカーボンナノチューブを均一分散させることができる。
前記(3)によれば、ポリイミド成分がイミド成分を有するエラストマー(すなわちイミド変性エラストマー)なので、物理強度等を保持しつつ、優れた柔軟性・屈曲性等を示すことができる。
前記(4)によれば、イミド変性エラストマーがポリウレタンをエラストマー成分とするイミド変性ポリウレタンエラストマーなので、より優れた柔軟性・屈曲性等を示すことができる。しかも、前記一般式(I)で表されるイミド変性ポリウレタンエラストマーは、主鎖に連続したイミドユニットを、その分布を制御しつつ所望の割合(イミド分率)で導入することができるので、弾性率を所望の値に調整することができる。
前記(5)によれば、ポリイミド成分がポリイミド樹脂なので、優れた物理強度・耐熱性等を示すことができる。
前記(6)によれば、表面および裏面における前記物性が表面抵抗率であり、該表面抵抗率が103〜1012Ω/□であるので、例えば画像形成装置用のベルトとして好適に使用することができる。
また、上記した効果を有する本発明にかかるポリイミド成形体を前記(7)のようにベルトに用いると、該ベルトは、表面平滑性に優れると共に、長期にわたり優れた電気特性等を示すことができる。
前記(8)によれば、基材上に少なくとも弾性層が設けられたベルトにおいて、基材を前記ポリイミド樹脂とし、弾性層を前記イミド変性エラストマーとするので、高精度駆動が可能になると共に、耐久性やトナーの転写性等を向上させることができる。
本発明にかかるベルトは、前記(9)のように画像形成装置用として用いると、本発明の有用性が増す上で好ましい。
本発明にかかるポリイミド成形体は、前記(10)のように、カーボンナノチューブの分散液を配合したポリイミド前駆体溶液を遠心成形法により成形すると、効率よく製造することができる。
<カーボンナノチューブ配合ポリイミド成形体>
本発明にかかるカーボンナノチューブ配合ポリイミド成形体(以下、「ポリイミド成形体」と言う。)は、導電剤が配合され遠心成形法により成形して得られる管状の遠心成形体である。
このようなポリイミド成形体は、導電剤を配合したポリイミド前駆体溶液を遠心成形法により成形して得られる。ここで、本発明では、前記導電剤としてカーボンナノチューブを用いる。カーボンナノチューブは、少量で高い導電率を発現することができ、かつその添加量と導電率との関係は直線的に変化するのでパーコレーション現象が発生せず、よって導電率を簡単に制御することができると共に、表面平滑性が低下するのを抑制することができる。
前記カーボンナノチューブとは、炭素で構成された直径がnmオーダーの単層もしくは複層の管のことを意味する。その特性値としては、特に限定されるものではなく、通常、直径は単層で0.4〜2nm、複層で10〜30nm程度、長さは単層、複層共に0.05〜15μm程度、体積抵抗値は単層、複層共に1.0×10-2〜8.0×10-2Ωcm程度であるのが好ましい。
前記カーボンナノチューブは、該カーボンナノチューブを適当な分散溶媒に分散させた分散液の形態で使用するのが好ましい。これにより、ポリイミド前駆体溶液中にカーボンナノチューブを均一に分散させることができるので、遠心成形法により成形しても、遠心力による導電剤の偏りが発生するのを抑制することができ、その結果、得られるポリイミド成形体の表面の物性と裏面の物性とが実質的に同じになる。ちなみにポリイミド成形体の表面とは、得られるポリイミド成形体において後述する遠心成形機のドラム内面に接していた側の面のことを意味する。また、ポリイミド成形体の裏面とは、遠心成形機のドラム内面に接していなかった側の面のことを意味する。
前記分散溶媒としては、例えば水系、エタノール系、イソプロピルアルコール(IPA)系、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)系、シクロヘキサノン系等が挙げられる。前記分散液中のカーボンナノチューブの配合量としては、分散液100重量%に対してカーボンナノチューブを0.5〜10重量%程度の割合で配合するのが好ましい。カーボンナノチューブを分散溶媒に分散させる方法としては、例えばアトライタ、ボールミル、ビーズミル、超音波分散機等が挙げられる。
ポリイミド前駆体溶液に対するカーボンナノチューブ分散液の配合量としては、特に限定されるものではなく、用途に応じて任意の割合で添加すればよいが、通常、ポリイミド前駆体溶液の固形分量100重量%に対してカーボンナノチューブ分散液の固形分量を0.1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%程度の割合で配合すればよい。これに対し、前記配合量が0.1重量%より少ないと、カーボンナノチューブによる効果が得られないおそれがあり、20重量%を超えると、必要以上に導電率を付与することになるので好ましくない。
ここで、カーボンナノチューブの分散液を用いると、ポリイミド前駆体溶液中にカーボンナノチューブを均一に分散させることができる理由としては、以下の理由が推察される。すなわち、カーボンナノチューブを適当な溶媒に分散させる際には、一般に、分散させるカーボンナノチューブの表面に例えば酸化処理等の表面処理を施したり、分散性を向上させるために分散剤(界面活性剤)等を添加する。この表面処理や分散剤等により、ポリイミド前駆体溶液中にカーボンナノチューブが均一に分散し、遠心力による導電剤の偏りが発生するのを抑制する。
前記分散剤としては、例えば環内にアミド基を含有するラクタム化合物、環内にエステル基を含有するラクトン化合物等を主体とする分散剤が挙げられる。具体的には、前記環内にアミド基を含有するラクタム化合物としては、例えばγ−ブチロラクタムやε−カプロラクタム等を含有する化合物であり、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドンとビニルアセテートとのコポリマー、ビニルピロリドンとビニルイミダゾールとのコポリマー、ビニルピロリドンとビニルカプロラクタムとのコポリマーのいずれか、またはこれらの組合せからなる化合物等が挙げられ、前記環内にエステル基を含有するラクトン化合物としては、例えばブチロラクトンやカプロラクトン等を含有するラクトン化合物であり、β−プロピオラクトン、ジメチルプロピオラクトン、バレロラクトン、カプリロラクトン、ラウロラクトン、パルミトラクトン、ステアラクトン、クロトラクトン、アンゲリラクトン等が挙げられる。
前記分散剤の添加量としては、カーボンナノチューブ100重量%に対して5〜300重量%程度が好ましい。このような分散剤は、例えば特開2006−327878号公報等に記載されている。
また、このようなカーボンナノチューブ分散液としては、例えば(株)ジェムコ製の以下に示すカーボンナノファイバー分散液等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
・同社製の商品名「CNF−T/水」:分散溶媒は水系、濃度1,3,5重量%、表面処理は酸化処理
・同社製の商品名「CNF−T/EtOH」:分散溶媒はエタノール系、濃度1,3,5重量%、表面処理は酸化処理
・同社製の商品名「CNF−T/IPA」:分散溶媒はIPA系、濃度1,3,5重量%、表面処理は酸化処理
・同社製の商品名「CNF−T/NMP」:分散溶媒NMP系、濃度1,3重量%、界面活性剤添加
・同社製の商品名「CNF−T/アノン」:分散溶媒シクロヘキサノン系、濃度1,3重量%、界面活性剤添加
ここで、前記ポリイミド前駆体溶液から得られるポリイミドはイミド変性エラストマーであるのが好ましい。すなわち、ポリイミド成分がイミド変性エラストマーであるのが好ましい。これにより、物理強度等を保持しつつ、優れた柔軟性・屈曲性等を示すことができる。この場合の前記ポリイミド前駆体溶液は、イミド変性エラストマーの前駆体であるポリウレタンアミド酸を含む溶液である。以下、本発明にかかるイミド変性エラストマーの一実施形態について、ポリウレタンアミド酸を含む溶液を含めて説明する。本実施形態において、前記イミド変性エラストマーとは、イミド成分を有するエラストマーのことを意味する。
前記エラストマー中のエラストマー成分としては、例えばポリウレタン、不飽和オレフィン系オリゴマー、アクリル系オリゴマー、フッ素ゴム系オリゴマー、シリコーン系オリゴマー等が挙げられ、イミド成分としては、例えば脂環式モノマー、複素環式モノマー、フェニルエーテル系モノマー、アルキル側鎖モノマー等が挙げられる。
本実施形態では、前記で例示したイミド変性エラストマーのうち、ポリウレタンをエラストマー成分とするイミド変性ポリウレタンエラストマー(以下、「ポリイミドウレタンエラストマー」や「PIUE」とも言う。)が好ましく、特に、前記一般式(I)で表されるPIUE(以下、「PIUE(I)」とも言う。)が好ましい。
PIUE(I)は、ポリウレタン(ポリウレタンプレポリマー)をエラストマー成分として含有すると共に、主鎖に連続した2つのイミドユニットを、その分布を制御しつつ所望の割合(イミド分率)で導入することができるので、弾性率を所望の値に調整することができ、よって物理強度等を保持しつつ、柔軟性・屈曲性等に優れるという効果を有する。かかるPIUE(I)は文献未記載の新規化合物である。
具体的には、前記一般式(I)において前記R1は、芳香族環または脂肪族環を含む2価の有機基を示すものであり、該有機基としては、例えば後述する反応行程式(A)に従ってポリウレタンプレポリマー(c)を合成する際に用いるジイソシアナート(a)の残基等が挙げられる。
前記R2は、重量平均分子量100〜10,000、好ましくは300〜5,000の2価の有機基を示すものであり、該有機基としては、例えば反応行程式(A)に従ってポリウレタンプレポリマー(c)を合成する際に用いるポリオール(b)の残基等が挙げられる。
前記R3は、芳香族環、脂肪族環または脂肪族鎖を含む2価の有機基を示すものであり、該有機基としては、例えば後述する反応行程式(B)に従ってポリウレタン−ウレア化合物(e)を合成する際に用いるジアミン化合物(d)の残基等が挙げられる。前記脂肪族鎖は、炭素数1のものも含む。
前記R4は、4個以上の炭素を含む4価の有機基を示すものであり、該有機基としては、例えば後述する反応行程式(C)に従ってイミド変性エラストマー(I)を合成する際に用いるテトラカルボン酸二無水物(f)の残基等が挙げられる。
前記nは1〜100の整数、好ましくは2〜50の整数を示す。前記mは2〜100の整数、好ましくは2〜50の整数を示す。
前記一般式(I)で表されるPIUEの具体例としては、下記式(1)で表されるPIUE等が挙げられる。
Figure 2008163219
[式中、nは1〜100の整数を示す。mは2〜100の整数を示す。xは10〜100の整数を示す。]
前記一般式(I)で表されるPIUEは、ジイソシアナートとポリオールから得た分子両末端にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーをジアミン化合物でウレア結合により鎖延長し、テトラカルボン酸二無水物でウレア結合部にイミドユニットを導入したブロック共重合体であるのが好ましい。このようなPIUEは、例えば以下に示すような反応工程式(A)〜(C)を経て製造することができる。
[反応行程式(A)]
Figure 2008163219
[式中、R1,R2,nは、前記と同じである。]
(ポリウレタンプレポリマー(c)の合成)
前記反応行程式(A)に示すように、まず、ジイソシアナート(a)とポリオール(b)から分子両末端にイソシアナート基を有するポリウレタンプレポリマー(c)を得る。PIUE(I)は、このポリウレタンプレポリマー(c)をエラストマー成分とするので、ゴム状領域(室温付近)の弾性率が低くなり、よりエラスティックにすることができると共に、このポリウレタンプレポリマー(c)の分子量を制御することにより、主鎖に連続した2つのイミドユニットを、その分布を制御しつつ所望の割合で導入することが可能となる。
具体的には、前記ジイソシアナート(a)としては、例えば2,4−トリレンジイソシアナート(TDI)、2,6−トリレンジイソシアナート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)、ポリメリックMDI(Cr.MDI)、ジアニシジンジイソシアナート(DADL)、ジフェニルエーテルジイソシアナート(PEDI)、ピトリレンジイソシアナート(TODI)、ナフタレンジイソシアナート(NDI)、ヘキサメチレンジイソシアナート(HMDI)、イソホロンジイソシアナート(IPDI)、リジンジイソシアナートメチルエステル(LDI)、メタキシリレンジイソシアナート(MXDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート(TMDI)、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート(TMDI)、ダイマー酸ジイソシアナート(DDI)、イソプロピリデンビス(4−シクロヘキシルイソシアナート)(IPCI)、シクロヘキシルメタンジイソシアナート(水添MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアナート(水添TDI)、TDI2量体(TT)が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよく、減圧蒸留したものを用いるのが好ましい。
前記ポリオール(b)としては、例えばポリプロピレングリコール(PPG)、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリマーポリオール等のポリエーテルポリオール;アジペート系ポリオール(縮合ポリエステルポリオール)、ポリカプロラクトン系ポリオール、ポリカーボネートポリオール等のポリエステルポリオール;ポリブタジエンポリオール;アクリルポリオール等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
ポリオール(b)は、70〜90℃、1〜5mmHg、10時間〜30時間程度の条件で減圧乾燥したものを用いるのが好ましい。また、ポリオール(b)の重量平均分子量は100〜10,000、好ましくは300〜5,000であるのが好ましい。前記重量平均分子量は、ポリオール(b)をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、得られた測定値をポリスチレン換算した値である。
反応は、前記で例示したジイソシアナート(a)とポリオール(b)とを所定の割合で混合した後、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下、室温で1時間〜5時間程度反応させればよい。ジイソシアナート(a)とポリオール(b)との混合比(モル)は、ジイソシアナート(a):ポリオール(b)=1.1:1.0〜2.0:1.0の範囲にするのが好ましい。これにより、得られるポリウレタンプレポリマー(c)の重量平均分子量を、下記で説明する所定の値にすることができる。
得られるポリウレタンプレポリマー(c)の重量平均分子量は、300〜50,000、好ましくは500〜45,000であるのがよい。この範囲内でポリウレタンプレポリマー(c)の重量平均分子量を制御して、イミドユニットを所望の割合で導入すると、物理強度等を保持しつつ、柔軟性・屈曲性等に優れるPIUE(I)を得ることができる。
また、ポリウレタンプレポリマー(c)の重量平均分子量が、前記範囲内において小さいほど、ハードなPIUE(I)を得ることができる。これに対し、前記分子量が300より小さいと、PIUE(I)がハードになりすぎ、50,000より大きいと、ソフトになりすぎるおそれがあるので好ましくない。前記重量平均分子量は、ポリウレタンプレポリマー(c)をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、得られた測定値をポリスチレン換算した値である。
[反応行程式(B)]
Figure 2008163219
[式中、R1〜R3,n,mは、前記と同じである。]
(ポリウレタン−ウレア化合物(e)の合成)
前記で得られたポリウレタンプレポリマー(c)を用いて、反応行程式(B)に従ってイミド前駆体であるポリウレタン−ウレア化合物(e)を合成する。すなわち、ポリウレタンプレポリマー(c)をジアミン化合物(d)でウレア結合により鎖延長してポリウレタン−ウレア化合物(e)を得る。
具体的には、前記ジアミン化合物(d)としては、例えば1,4−ジアミノベンゼン(別名:p−フェニレンジアミン、略称:PPD)、1,3−ジアミノベンゼン(別名:m−フェニレンジアミン、略称:MPD)、2,4−ジアミノトルエン(別名:2,4−トルエンジアミン、略称:2、4−TDA)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(別名:4,4’−メチレンジアニリン、略称:MDA)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(別名:4,4’−オキシジアニリン、略称:ODA、DPE)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(別名:3,4’−オキシジアニリン、略称:3,4’−DPE)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(別名:o−トリジン、略称:TB)、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(別名:m−トリジン、略称:m−TB)、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(略称:TFMB)、3,7−ジアミノ−ジメチルジベンゾチオフェン−5,5−ジオキシド(別名:o−トリジンスルホン、略称:TSN)、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ビス(4−アミノフェニル)スルフィド(別名:4,4’−チオジアニリン、略称:ASD)、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(別名:4,4’−スルホニルジアニリン、略称:ASN)、4,4’−ジアミノベンズアニリド(略称:DABA)、1,n−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン(n=3,4,5、略称:DAnMG)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)−2,2−ジメチルプロパン(略称:DANPG)、1,2−ビス[2−(4−アミノフェノキシ)エトキシ]エタン(略称:DA3EG)、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(略称:FDA)、5(6)−アミノ−1−(4−アミノメチル)−1,3,3−トリメチルインダン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(略称:TPE−Q)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(別名:レゾルシンオキシジアニリン、略称:TPE−R)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(略称:APB)、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(略称:BAPB)、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン(略称:BAPP)、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(略称:BAPS)、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(略称:BAPS−M)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(略称:HFBAPP)、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(略称:MBAA)、4,6−ジヒドロキシ−1,3−フェニレンジアミン(別名:4,6−ジアミノレゾルシン)、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル(別名:3,3’−ジヒドロキシベンジジン、略称:HAB)、3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニル(別名:3,3’−ジアミノベンジジン、略称:TAB)等の炭素数6〜27の芳香族ジアミン化合物;1,6−ヘキサメチレンジアミン(HMDA)、1,8−オクタメチレンジアミン(OMDA)、1,9−ノナメチレンジアミン、1,12−ドデカメチレンジアミン(DMDA)、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(別名:イソホロンジアミン)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、シクロヘキサンジアミン等の炭素数6〜24の脂肪族または脂環式ジアミン化合物;1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等のシリコーン系ジアミン化合物等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
特に、1,6−ヘキサメチレンジアミン(HMDA)を用いるのが、強度に優れるPIUE(I)を得ることができるうえで好ましい。また、前記で例示したジアミン化合物(d)の選択によっても、PIUE(I)の弾性率を調整することができる。
反応は、ウレタンプレポリマー(c)と、前記で例示したジアミン化合物(d)とを等モル、好ましくはNCO/NH2比が1.0程度の割合で混合した後、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下、室温〜100℃、好ましくは50〜100℃において、2時間〜30時間程度で溶液重合反応または塊状重合反応させればよい。
前記溶液重合反応に使用できる溶媒としては、例えばN,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−ヘキシル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリドン等が挙げられ、特に、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−ヘキシル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリドンが好ましい。これらの溶媒は、1種または2種以上を混合して用いてもよく、定法に従い脱水処理したものを用いるのが好ましい。
[反応行程式(C)]
Figure 2008163219
[式中、R1〜R4,n,mは、前記と同じである。]
(PIUE(I)の合成)
前記で得られたポリウレタン−ウレア化合物(e)を用いて、反応行程式(C)に従って一般式(I)で表されるPIUEを合成する。すなわち、テトラカルボン酸二無水物(f)でウレア結合部にイミドユニットを導入してブロック共重合体であるPIUE(I)を得る。
具体的には、前記テトラカルボン酸二無水物(f)としては、例えば無水ピロメリット酸(PMDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、ビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物(BPDA)、ベンゾフェノン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ジフェニルスルホン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)、m(p)−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、1−カルボキシメチル−2,3,5−シクロペンタントリカルボン酸−2,6:3,5−二無水物等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
反応は、ポリウレタン−ウレア化合物(e)とテトラカルボン酸二無水物(f)とのイミド化反応である。該イミド化反応は、溶媒下、無溶媒下のいずれであってもよい。溶媒下でイミド化反応を行う場合には、まず、ポリウレタン−ウレア化合物(e)と、前記で例示したテトラカルボン酸二無水物(f)とを所定の割合で溶媒に加え、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下、100〜300℃、好ましくは135〜200℃、より好ましくは150〜170℃において、1時間〜10時間程度反応させて、下記式(g)で表されるポリウレタンアミド酸(PUA)を含む溶液(PUA溶液)を得る(すなわちポリイミド前駆体溶液)。
Figure 2008163219
[式中、R1〜R4,n,mは、前記と同じである。]
ここで、ポリウレタン−ウレア化合物(e)とテトラカルボン酸二無水物(f)との混合は、ポリウレタン−ウレア化合物(e)の合成で使用したジアミン化合物(d)とテトラカルボン酸二無水物(f)との混合比(モル)が、ジアミン化合物(d):テトラカルボン酸二無水物(f)=1:2〜1:2.02の範囲となる割合で混合するのが好ましい。これにより、確実にウレア結合部にイミドユニットを導入することができる。
使用できる溶媒としては、前記反応行程式(B)の溶液重合反応に使用できる溶媒で例示したものと同じ溶媒を例示することができる。なお、反応行程式(B)において溶液重合反応でポリウレタン−ウレア化合物(e)を得た場合には、該溶媒中でイミド化反応を行えばよい。
ついで、前記で得たPUA溶液を例えば円筒金型に注入して、100〜300℃、好ましくは135〜200℃、より好ましくは150〜170℃において、100〜2,000rpm、30分〜2時間程度で円筒金型を回転させながら、遠心成形によりPUAをフィルム状に成膜する。
ついで、フィルム状のPUAを加熱処理(脱水縮合反応)することにより、フィルム状の一般式(I)で表されるPIUEを得ることができる。加熱処理は、PUAが熱分解しない条件であるのが好ましく、例えば減圧条件下において150〜450℃、好ましくは150〜250℃、1時間〜5時間程度であるのがよい。
一方、無溶媒下でイミド化反応を行う場合には、通常の攪拌槽型反応器の他、排気系を有する加熱手段を備えた押出機の中でも行うことができるので、得られるPIUE(I)を押し出して、そのままフィルム状に成形することができる。
前記のようにして得られるPIUE(I)は、ガラス転移温度(Tg)が、通常、−30〜−60℃であると共に、高い弾性を有し、かつゴム状弾性領域の温度範囲が広いものになる。この理由として、以下の理由が推察される。すなわち、前記で説明した通り、PIUE(I)は、主鎖に連続した2つのイミドユニットを、その分布を制御しつつ所望の割合(イミド分率)で導入することができるので、このイミドユニットからなるハードセグメントの凝集が均一かつ強固なものになる。このため、PIUE(I)は、より均一かつ強固なミクロ相分離構造を形成し、ガラス転移温度が低くなることで、ゴム状弾性領域の温度範囲が広くなる。
PIUE(I)の重量平均分子量は10,000〜1000,000、好ましくは50,000〜800,000、より好ましくは50,000〜500,000であるのがよい。前記重量平均分子量は、前記式(g)で表されるポリウレタンアミド酸(PUA)を含むPUA溶液をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、得られた測定値をポリスチレン換算した値から導き出した値である。なお、PIUE(I)ではなく、PUA溶液をGPCで測定するのは、PIUE(I)は、GPCの測定溶媒に不溶なためである。
PIUE(I)は弾性率を所望の値に調整することができる。具体的には、PIUE(I)のイミド分率(イミド成分含有率)、すなわちイミド変性エラストマー中のイミド成分の割合を調整することによって、弾性率を調整することができる。イミド分率は、弾性率等に応じて任意に選定すればよく、特に限定されるものではないが、通常、25重量%以下、好ましくは15重量%以下であるのがよく、下限値としては、通常、5重量%以上が妥当である。前記イミド分率は、原料、すなわちジイソシアナート(a)、ポリオール(b)、ジアミン化合物(d)およびテトラカルボン酸二無水物(f)の仕込み量から算出される値であり、より具体的には、下記式(α)から算出される値である。
Figure 2008163219
調整される弾性率の値としては、用途に応じて任意の値に調整すればよいが、通常、1.0×106〜1.0×109Paの範囲になるように調整される。前記弾性率は、動的粘弾性測定装置を用いて測定して得られる50℃での貯蔵弾性率E’の値である。
また、前記ポリイミド前駆体溶液から得られるポリイミドはポリイミド樹脂であってもよい。すなわち、ポリイミド成分がポリイミド樹脂であってもよい。これにより、優れた物理強度・耐熱性等を示すことができる。この場合の前記ポリイミド前駆体溶液は、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸のワニス(すなわちポリイミドワニス)である。
前記ポリアミド酸は、通常、酸無水物とジアミン化合物から合成される。前記酸無水物としては、例えば無水ピロメリット酸、オキシジフタル酸二無水物、ビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルホン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、4,4’−(2,2’−ヘキサフルオロイソプロピリジン)ジフタル酸二無水物、シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、前記ジアミン化合物としては、例えば1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,7−ジアミノ−ジメチルジベンゾチオフェン−5,5’−ジオキシド、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ビス(4-アミノフェニル)スルフィド、4,4’−ジアミノベンズアニリド、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン等の芳香族ジアミン等が挙げられ、例えば特許第2560727号公報に記載されているものが挙げられる。
このようなポリイミドワニスは、前記ポリアミド酸を適当な溶剤に加えてワニス化したものの他、市販のものを用いてもよく、例えば宇部興産(株)社製の商品名「UワニスA」等が挙げられる。そして、このポリアミド酸を熱および触媒等によってイミド化してポリイミド樹脂を得る。
ここで、前記した通り本発明にかかるポリイミド成形体は、表面の物性と裏面の物性とが実質的に同じである。前記物性としては、例えば表面抵抗率、体積抵抗率、表面平滑性、摩擦係数等が挙げられる。
前記物性が表面抵抗率の場合には、該表面抵抗率が103〜1012Ω/□、好ましくは107〜1012Ω/□であるのがよい。これにより、例えば画像形成装置用のベルト、すなわち転写部で用いられる中間転写ベルト、定着部で用いられる定着ベルト、駆動部で用いられる駆動ベルト等として好適に使用することができる。
一方、中間転写ベルトとして使用する場合には、表面抵抗率が103Ω/□より小さいと、トナーを担持するのに充分な帯電を行うことができず、1012Ω/□より大きいと、トナーが飛散するおそれがある。特に、中間転写ベルトの場合には、トナーを担持するのに充分な帯電を確実に行う上で、表面抵抗率の下限値は107Ω/□であるのが好ましい。また、定着ベルト、駆動ベルトとして使用する場合にも、帯電防止の上で、表面抵抗率は1012Ω/□以下であることが必要である。前記表面抵抗率は、例えば後述するように、三菱化学社製の「ハイレスターMCP−HT450」を用いて印加電圧10Vの条件で測定して得られた値である。
表面抵抗率を前記所定の範囲にするには、ポリイミド前駆体溶液の固形分量100重量%に対してカーボンナノチューブ分散液の固形分量を0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜6重量%の割合で配合すればよい。これに対し、配合量が前記した範囲外であると、所定の表面抵抗率を得られないおそれがある。
また、表面の表面抵抗率と、裏面の表面抵抗率とが実質的に同じであるといえるためには、本発明にかかるポリイミド成形体を実際に用いる状態、すなわち実使用に適した配合量のカーボンナノチューブを含有した状態において、表面および裏面における表面抵抗率の標準偏差(σ)が0.3以下、望ましくは0.05〜0.1であればよい。
<カーボンナノチューブ配合ベルト>
次に、前記したポリイミド成形体の一使用形態であるベルトの一実施形態について説明する。本実施形態にかかるカーボンナノチューブ配合ベルト(以下、「ベルト」と言う。)は、前記したポリイミド成形体を用いたものである。したがって、このベルトは、導電率の制御が簡単であり、かつ表面平滑性や電気的特性等に優れるという効果を有する。
ベルトは、ポリイミド成形体からなる単層ベルトであってもよく、耐久性やトナーの転写性を向上させる上で、図1(a)に示すように、前記したポリイミド樹脂(すなわちポリイミド成分がポリイミド樹脂であるカーボンナノチューブ配合ポリイミド成形体)を基材1とし、該基材1上に前記したイミド変性エラストマー(すなわちポリイミド成分がイミド変性エラストマーであるカーボンナノチューブ配合ポリイミド成形体)からなる弾性層2を設けた2層ベルト10、図1(b)に示すように、弾性層2上にさらに離型性樹脂層3を設けた3層ベルト20であってもよい。なお、2層ベルト10,3層ベルト20の構成は、前記した構成に限定されるものではなく、例えば基材1としてカーボンナノチューブを配合していないポリイミド樹脂を用いてもよい。これと同様に、弾性層2としてカーボンナノチューブを配合していないイミド変性エラストマーを用いてもよい。
2層ベルト10または3層ベルト20において、基材1の厚みは50〜200μm、好ましくは100〜150μmであるのがよい。これにより、ベルトの剛性が高くなり、ベルトの回転時に発生するスラスト方向の荷重に対しても強くなる。
弾性層2は、ベルトに柔軟性を付与するためのものである。この弾性層2はイミド変性エラストマーからなるので、ポリイミド樹脂からなる基材1との親和性に優れ、両者が剥離することによる耐久性の低下を抑制することができる。また、該イミド変性エラストマー中のイミド成分の含有率を調整して、該エラストマーの弾性率を所望の値に調整することができるので、優れた柔軟性および屈曲性等を示すことができる。調整される弾性率は、通常、1.0×106〜1.0×109Pa程度であるのが好ましい。なお、単層ベルトの弾性率についても、前記所定の弾性率を例示することができる。
弾性層2の厚みは50〜1,000μm、好ましくは100〜200μmであるのがよい。これにより、例えばトナーの転写効果等が優れたものになる。これに対し、弾性層2の厚みが50μmより薄いと、弾性層2に要求される柔軟性が低下し、1,000μmより大きいと、ベルトの総厚みが増して屈曲性などに悪影響を及ぼすので好ましくない。
離型性樹脂層3は、ベルトに表面性やトナーの離型性等を付与するためのものである。この離型性樹脂層3としては、離型性、耐熱性および屈曲耐性等の上で、フッ素樹脂等が好ましく、該フッ素樹脂としては、例えばテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。このような離型性樹脂層3を弾性層2上に設けると、シリコーンオイル等を使用しなくてもトナーの離型性が得られると共に、紙粉固着防止効果等が得られ、オイルレス化を図ることができる。
離型性樹脂層3は、トナーおよび紙粉の離型性等を確保し、かつ弾性層2の柔軟性を損なわないような厚さで弾性層2上に設けるのが好ましい。このような離型性樹脂層3の厚みとしては5〜50μm、好ましくは10〜30μmであるのがよい。これに対し、離型性樹脂層3の厚みが5μmより薄いと、十分な離型性が得られず耐久性にも劣り、50μmより大きいと、弾性層2の柔軟性を損なうおそれがある。
ベルトの総厚みは、通常、50〜300μm程度、好ましくは100〜200μmであるのがよく、特に、中間転写ベルトとして使用する場合には、100〜150μmであるのがよい。これに対し、ベルトの総厚みが前記した厚みよりも薄いと、物理強度が低下するおそれがあり、前記した厚みよりも大きいと、ロール屈曲部での変形によって、ベルト表面に応力が集中してクラックが発生するおそれがある。
前記したベルトは、例えば画像形成装置用のベルト(すなわち転写部で用いられる中間転写ベルト、定着部で用いられる定着ベルト、駆動部で用いられる駆動ベルト等)として好適に用いることができる。
<製造方法>
次に、前記したポリイミド成形体の製造方法の一実施形態について、イミド変性エラストマーに前記したPIUE(I)を、得られる成形体としてベルトを例に挙げて説明する。
まず、イミド変性エラストマーからなるシームレスな単層ベルトを得る場合には、前記で説明したPUA溶液を調製する。このPUA溶液は、固形分量を10〜30重量%、好ましくは20重量%程度に調製するのが好ましい。
ついで、このPUA溶液に導電剤としてカーボンナノチューブ分散液を配合する。カーボンナノチューブ分散液の配合量としては、表面抵抗率が所定の範囲になるような前記した割合、すなわちPUA溶液の固形分量100重量%に対してカーボンナノチューブ分散液の固形分量を0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜6重量%の割合で配合すればよい。
カーボンナノチューブを配合したPUA溶液は、密閉式攪拌機を用いて回転数50〜150rpm程度、20〜40分程度の時間をかけて攪拌した後、回転数10〜30rpm程度、5〜15分程度の時間をかけて脱泡処理を行うのが好ましい。なお、攪拌機は、前記した密閉式攪拌機に限定されるものではなく、例えばロールミル、ビーズミル、ホモジナイザー等を用いてもよく、さらに例示したこれら以外の公知の攪拌機を用いてもよい。
ついで、このPUA溶液を遠心成形機に投入する。PUA溶液の投入は、遠心成形機を110〜130℃、好ましくは120℃程度に加熱し、かつ400〜600rpm、好ましくは500rpm程度で回転させた状態で投入するのが好ましい。これにより、PUA溶液をドラム全体に充分に延伸させることができる。また、遠心成形機のドラム内面には離型処理を施す、離型剤を塗布する、あるいは離型性を有する樹脂層を形成する等の表面処理を施しておくのが好ましい。これにより、得られるPUAフィルムを遠心成型機から簡単に取り外すことができる。
PUA溶液を遠心成形機に投入した後、遠心成形機の回転数を900〜1,100rpm、好ましくは1,000rpm程度に上げ、20〜40分間、好ましくは30分間程度で熱処理をした後、50〜70℃、好ましくは60℃程度にまで冷却して、ドラム内面にPUAフィルムを形成する。
形成されたPUAフィルムを室温まで冷却した後、該PUAフィルムをドラムから取り外し、収縮による変形を防ぐため、表面離型処理を施した金型にセットする。ついで、減圧条件下で300〜400℃、好ましくは350℃程度で20〜40分間、好ましくは30分間程度で熱処理を行い、管状の一般式(I)で表されるPIUEを得る。この管状のPIUEを適切な大きさにスリットしてイミド変性エラストマーからなるシームレスな単層ベルトを得る。なお、ポリイミドワニスを用いた単層ベルトの場合も同様の方法で作成すればよい。
次に、シームレスな2層ベルト10または3層ベルト20の製造方法について説明する。まず、前記した単層ベルトと同様にしてカーボンナノチューブ分散液を配合したPUA溶液を調製すると共に、ポリイミドワニスを調製する。ポリイミドワニスの固形分量としては、10〜30重量%、好ましくは15〜25重量%、より好ましくは18重量%程度であるのがよい。
ついで、このポリイミドワニスにも、カーボンナノチューブ分散液を配合する。具体的には、ポリイミドワニスの固形分量100重量%に対してカーボンナノチューブ分散液の固形分量を0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜6重量%の割合で配合するのがよい。カーボンナノチューブを配合したポリイミドワニスは、攪拌機で30分〜2時間、好ましくは1時間程度攪拌しながら脱泡処理を行うのが好ましい。前記攪拌機としては、例えば前記したカーボンナノチューブ分散液を配合したPUA溶液を攪拌する際に挙げた攪拌機と同じ攪拌機を例示することができる。
ついで、単層ベルトと同様にしてPUA溶液を遠心成形機に投入し、ドラム内面にPUAフィルムを形成した後、ドラムを400〜600rpm、好ましくは500rpm程度で回転させながら、前記で調製したポリイミドワニスを前記PUAフィルム内面に注入する。その後、回転数を50〜200rpm、好ましくは100rpm程度で回転させると共に、110〜130℃、好ましくは120℃程度に加熱し、30〜60分間、好ましくは45分間程度で熱処理を行ことで積層管状物(基材1、弾性層2)を形成する。
形成した積層管状物を室温まで冷却した後、該積層管状物をドラムから取り外し、収縮による変形を防ぐため、表面離型処理を施した金型にセットする。ここで、3層ベルト20にする場合には、積層管状物の表面にフッ素樹脂等をコーティングして離型樹脂層3を形成する。
ついで、減圧条件下で300〜400℃、好ましくは350℃程度で20〜40分間、好ましくは30分間程度で熱処理を行い、得られた積層管状物を適切な大きさにスリットして、シームレスな2層ベルト10または3層ベルト20を得る。
なお、効率よくシームレスな2層ベルト10または3層ベルト20を得る上で、遠心成形法により連続して基材1、弾性層2を得る場合について説明したが、例えば前記で説明した遠心成形法の条件で、管状のシームレスな基材1,弾性層2をそれぞれ調製すると共に、押出成形法等で管状のシームレスな離型性樹脂層3を調製し、これらを1液性または2液性のシリコーン系弾性接着剤、ウレタン系弾性接着剤、シート状ホットメルト型のシリコーン系接着剤,シラン変性ポリイミド系接着剤等や、加熱加圧等で一体化することにより、シームレスな2層ベルト10または3層ベルト20を得てもよい。また、基材1を構成するポリイミド樹脂、弾性層2を構成するイミド変性エラストマーのいずれにもカーボンナノチューブを配合する場合について説明したが、前記した通り、例えば基材1としてカーボンナノチューブを配合していないポリイミド樹脂を用いてもよい。これと同様に、弾性層2としてカーボンナノチューブを配合していないイミド変性エラストマーを用いてもよい。
また、ポリイミド樹脂からなるシームレスな単層ベルトを得る場合には、PUA溶液を遠心成形機に投入せず、離型樹脂層3を形成しない以外は、前記した2層ベルト10または3層ベルト20の製造方法と同様にして行えばよい。
以下、合成例および実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の合成例および実施例のみに限定されるものではない。
<合成例>
PUA溶液の合成方法について、下記式に基づいて説明する。
Figure 2008163219
[式中、nは1〜100の整数を示す。mは2〜100の整数を示す。xは5〜100の整数を示す。]
(ポリウレタンプレポリマー(j)の合成)
まず、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)(h)[日本ポリウレタン工業(株)社製]を減圧蒸留した。また、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)(i)[保土谷化学(株)社製の商品名「PTMG1000」、重量平均分子量:1,000]を80℃、2〜3mmHg、24時間の条件で減圧乾燥した。
ついで、前記MDI(h)23.8gと、PTMG(i)76.2gとを、攪拌機およびガス導入管を備えた500mlの四つ口セパラブルフラスコにそれぞれ加え、アルゴン雰囲気下、80℃で2時間攪拌して、分子両末端にイソシアナート基を有するポリウレタンプレポリマー(j)を得た。このポリウレタンプレポリマー(j)をGPCで測定した結果、ポリスチレン換算した値で重量平均分子量は4.6×104であった。
(ポリウレタン−ウレア化合物(l)の合成)
前記で得たポリウレタンプレポリマー(j)10gを脱水処理したN−メチル−2−ピロリドン(NMP)60mlに溶解させたものと、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MDA)(k)0.378gを脱水処理したNMP20mlに溶解させたものとを、攪拌機およびガス導入管を備えた500mlの四つ口セパラブルフラスコにそれぞれ加え、アルゴン雰囲気下、室温(23℃)で24時間攪拌して、ポリウレタン−ウレア化合物(l)の溶液を得た。
(PUA溶液の合成)
前記で得たポリウレタン−ウレア化合物(l)の溶液中に、無水ピロメリット酸(PMDA)(m)0.831gを加え、アルゴンガス雰囲気下、150℃で2時間攪拌して、ポリウレタンアミド酸(PUA)溶液を得た。
ちなみに、このPUA溶液を遠心成形機に流し込み、150℃で1,000rpm、1時間遠心成形してPUAシートを得、このPUAシートを減圧デシケータ内で200℃、2時間加熱処理(脱水縮合反応)すると、厚さ100μmのシート状のPIUE(1)が得られた(イミド分率:15重量%)。前記イミド分率は、前記式(α)から算出して得た値である。得られたPIUE(1)について、KBr法にてIRスペクトルを測定した結果、1780cm-1、1720cm-1および1380cm-1にイミド環に由来する吸収が観察された。
[実施例1〜5]
<試験片の作製>
前記合成例で得たPUA溶液にカーボンナノチューブの分散液を配合し、ついでこの溶液を遠心成形法により成形して試験片を作製した。具体的には、密閉式攪拌機内にPUA溶液50gを添加した後、導電剤としてカーボンナノチューブの分散液を前記PUA溶液の固形分量100重量%に対して表1に示す割合で配合した。なお、前記カーボンナノチューブの分散液は、(株)ジェムコ製の商品名「CNF−T/NMP」であり、固形分換算して添加した。
ついで、前記密閉式攪拌機を回転数100rpm、40分間の条件で攪拌させた後、回転数20rpm、10分間の条件で真空脱泡処理を行い、PUA/カーボンナノチューブ混合溶液を得た。
上記で得た混合溶液を遠心成形機に投入して遠心成形し、図2(a)に示すようなシームレスの単層ベルト30を得た。なお、遠心成形は、回転数1000rpm、加熱温度120℃、加熱時間30分とし、遠心成形後に200℃で2時間熱処理を行った。ついで、得られた単層ベルト30をカッターでカットして、図2(b)に示すような幅50mm、長さ150mm、厚さ0.1mmのシート状の試験片31を得た。
<評価>
上記で得た各試験片について、表面抵抗率を測定した。測定方法を以下に示すと共に、その結果を表1および図3,図4に示す。
(表面抵抗率の測定方法)
試験片の表面および裏面のそれぞれ3箇所を、三菱化学社製の「ハイレスターMCP−HT450」を用いて印加電圧10Vの条件で測定し、得られた値の平均値を算出した。なお、試験片の表面および裏面とは、図2(a)に示すように、ベルト30における表面30a,裏面30bをそれぞれ意味する。ちなみに、表面30aは、遠心成形機のドラム内面に接していた面である。また、試験片の3箇所とは、図2(b)に示すような領域I〜IIIを意味する。
[比較例1〜5]
導電剤をカーボンナノチューブの分散液に代えて、カーボンブラック(キャボットジャパン社製の商品名「MOGAL-L」)にし、該カーボンブラックを前記PUA溶液の固形分量100重量%に対して表1に示す割合で配合した以外は、前記実施例1〜5と同様にして、PUA/カーボンブラック混合溶液を得た。ついで、この混合溶液を前記実施例1〜5と同様にして遠心成形法で成形して試験片を得た。この試験片について、前記実施例1〜5と同様にして表面抵抗率を測定した。その結果を表1および図5,図6に示す。
Figure 2008163219
表1および図3,図4から明らかなように、ポリイミド前駆体溶液から得られるポリイミドがイミド変性エラストマーである場合において、実施例1〜5(カーボンナノチューブの分散液)は、表面の表面抵抗率と裏面の表面抵抗率とが実質的に同じであることがわかる。これに対し、比較例1〜5(MOGAL-L)は、表1および図5,図6から明らかなように、表面の表面抵抗率と裏面の表面抵抗率とのバラツキが大きい結果を示した。
[実施例6]
前記合成例で得たPUA溶液に代えて、ポリイミドワニス(宇部興産(株)社製の商品名「UワニスA」)を用い、カーボンナノチューブの分散液を前記ポリイミドワニスの固形分量100重量%に対して5重量%で配合した以外は、前記実施例1〜5と同様にして、ポリイミド/カーボンナノチューブ混合溶液を得た。ついで、この混合溶液を前記実施例1〜5と同様にして遠心成形法で成形して、図7に示すような試験片32を得た。
上記で得た試験片について、測定箇所を図2(b)に示す領域I〜IIIの3箇所に代えて、図7に示す領域I〜VIの6箇所にした以外は、前記実施例1〜5と同様にして表面抵抗率を測定した。その結果を表2および図8に示す。
[比較例6]
導電剤をカーボンナノチューブの分散液に代えて、カーボンブラック(キャボットジャパン社製の商品名「MOGAL-L」)にし、該カーボンブラックをポリイミドワニスの固形分量100重量%に対して20重量%で配合した以外は、前記実施例6と同様にして、ポリイミド/カーボンブラック混合溶液を得た。ついで、この混合溶液を前記実施例1〜5と同様にして遠心成形法で成形して試験片を得た。この試験片について、前記実施例6と同様にして表面抵抗率を測定した。その結果を表2および図9に示す。
Figure 2008163219
表2および図8から明らかなように、ポリイミド前駆体溶液から得られるポリイミドがポリイミド樹脂である場合において、実施例6(カーボンナノチューブの分散液)は、表面の表面抵抗率と裏面の表面抵抗率とが実質的に同じであることがわかる。これに対し、比較例6(MOGAL-L)は、表2および図9から明らかなように、表面の表面抵抗率と裏面の表面抵抗率とのバラツキが大きい結果を示した。
以上、本発明の一実施形態について示したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更や改良したものにも適用できることは言うまでもない。例えば、前記した実施形態では、ポリイミド成形体の一使用形態としてベルトを例に挙げて説明したが、本発明にかかるポリイミド成形体の使用形態はこれに限定されるものではない。具体例としては、例えばシート、フィルム、チューブ、ホース、ロールギア、パッキング材、防音材、防振材、ブーツ、ガスケット、ベルトラミネート製品、被覆材、パーベーパレーション用の分離膜、光学非線形材料、弾性繊維、圧電素子、アクチュエーター、その他の各種自動車部品、工業機械部品、スポーツ用品等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(a),(b)は、本発明の一実施形態にかかるベルトを示す拡大概略断面図である。 (a),(b)は、実施例1〜5における試験片および表面抵抗率の測定方法を示す概略説明図である。 実施例1〜5の表面抵抗率の測定結果(裏面)を示すグラフである。 実施例1〜5の表面抵抗率の測定結果(表面)を示すグラフである。 比較例1〜5の表面抵抗率の測定結果(裏面)を示すグラフである。 比較例1〜5の表面抵抗率の測定結果(表面)を示すグラフである。 実施例6における試験片および表面抵抗率の測定方法を示す概略説明図である。 実施例6の表面抵抗率の測定結果を示すグラフである。 比較例6の表面抵抗率の測定結果を示すグラフである。
符号の説明
1 基材
2 弾性層
3 離型性樹脂層
10 2層ベルト
20 3層ベルト

Claims (10)

  1. 導電剤が配合され遠心成形法により成形して得られる管状のポリイミド成形体であって、前記導電剤がカーボンナノチューブであり、表面の物性と裏面の物性とが実質的に同じであることを特徴とする、カーボンナノチューブ配合ポリイミド成形体。
  2. カーボンナノチューブの分散液を用いて遠心成形法により成形された請求項1記載のカーボンナノチューブ配合ポリイミド成形体。
  3. ポリイミド成分がイミド変性エラストマーである請求項1または2記載のカーボンナノチューブ配合ポリイミド成形体。
  4. 前記イミド変性エラストマーは、下記一般式(I):
    Figure 2008163219
    [式中、R1は、芳香族環または脂肪族環を含む2価の有機基を示す。R2は、重量平均分子量100〜10,000の2価の有機基を示す。R3は、芳香族環、脂肪族環または脂肪族鎖を含む2価の有機基を示す。R4は、4個以上の炭素を含む4価の有機基を示す。nは1〜100の整数を示す。mは2〜100の整数を示す。]で表されるイミド変性ポリウレタンエラストマーである請求項3記載のカーボンナノチューブ配合ポリイミド成形体。
  5. ポリイミド成分がポリイミド樹脂である請求項1または2記載のカーボンナノチューブ配合ポリイミド成形体。
  6. 表面および裏面における前記物性が表面抵抗率であり、該表面抵抗率が103〜1012Ω/□である請求項1〜5のいずれかに記載のカーボンナノチューブ配合ポリイミド成形体。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載のカーボンナノチューブ配合ポリイミド成形体を用いたことを特徴とするカーボンナノチューブ配合ベルト。
  8. 基材上に少なくとも弾性層が設けられたベルトであって、
    前記基材が請求項1,2,5,6のいずれかに記載のポリイミド樹脂からなり、
    前記弾性層が請求項1〜4,6のいずれかに記載のイミド変性エラストマーからなることを特徴とするカーボンナノチューブ配合ベルト。
  9. 画像形成装置用である請求項7または8記載のカーボンナノチューブ配合ベルト。
  10. カーボンナノチューブの分散液を配合したポリイミド前駆体溶液を遠心成形法により成形することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のカーボンナノチューブ配合ポリイミド成形体の製造方法。
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