JP2010214903A - 弾性シート材、中間転写ベルト、弾性シート材の製造方法および中間転写ベルトの製造方法 - Google Patents

弾性シート材、中間転写ベルト、弾性シート材の製造方法および中間転写ベルトの製造方法 Download PDF

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Yugo Sakaguchi
雄吾 坂口
Takehiko Sugimoto
岳彦 杉本
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Abstract

【課題】弾性が損なわれることなく優れた離型性が付与されており、画像形成装置の中間転写ベルト用として好適に使用できる弾性シート材、および該シート材を用いた中間転写ベルト、並びにこれらの製造方法を提供する。
【解決手段】イミド変性ポリウレタンエラストマーをシート状に成形した弾性シート材であって、該シート内に含有されたフッ素樹脂微粒子がシートの表面側に偏在していることを特徴とする弾性シート材、およびこの弾性シート材からなる弾性層を基材上に積層した画像形成装置用の転写ベルトである。上記弾性シート材および転写ベルトは遠心成形法により製造される。
【選択図】図1

Description

本発明は、画像形成装置の中間転写ベルト、搬送用ベルト、クッション性シート等に使用できる弾性シート、これを用いた画像形成装置の中間転写ベルト、該弾性シートの製造方法および該中間転写ベルトの製造方法に関する。
カラープリンター、複写機等の画像形成装置に使用される中間転写用ベルトは、ポリイミド樹脂の単層ベルトが市場の大半を占めているが、その表面硬度が高いため、ラフ紙などの凹凸の激しい印刷媒体に対してトナーの転写効率が悪い。その対策として、前述のポリイミド樹脂等の基材層上に、スチレンブタジエンゴム等の弾性層を設ける技術が公知である(特許文献1参照)。また、ポリイミド樹脂基材層上にイミド変性ポリウレタンエラストマーを弾性層として用いると、ポリイミド樹脂層との密着度が高いために好適であり、該技術により印刷速度・印刷精度の向上が達成される(特許文献2参照)。
弾性層としてイミド変性ポリウレタンエラストマー層を設けた中間転写ベルトでは、弾性層がトナー面側に設けられるため、そのままでは弾性体ゆえの摩擦性および粘着性によりトナーの離型が困難になり、トナー印刷像の転写性が劣るという問題がある。この問題は、弾性層の硬度を下げるほど顕著となる。そのため、該弾性層の上にさらにフッ素樹脂層またはシリコーン樹脂層である離型性樹脂層を設けることにより、この問題を解決することが行われている。図5は、従来の中間転写ベルトの一例を示す概略断面図であり、同図に示される中間転写ベルト7は、ポリイミド樹脂等の基材層4、イミド変性ポリウレタンエラストマー等の弾性層5およびフッ素樹脂等の離型性樹脂層6を、この順で、積層したベルトである。
しかし、上記の従来公知の中間転写ベルトでは、離型性樹脂層によりベルト表面が硬くなり弾性が損なわれる場合があり、また離型性樹脂層を積層する工程が増えるため製造が煩雑になり、更にまたコスト的にも不利である。
特開2003−131492号公報 特開2008−76560号公報
本発明の目的は、弾性が損なわれることなく優れた離型性が付与された弾性シート材、および該シート材を用いた画像形成装置の中間転写ベルトを提供することにある。
本発明の他の目的は、上記弾性シート材および中間転写ベルトの製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、イミド変性ポリウレタンエラストマー樹脂中にフッ素樹脂微粒子を分散させた状態で遠心成形すると、フッ素樹脂微粒子が表面側に偏在した弾性シート材が得られ、この弾性シート材の表面は弾性が損なわれることなく優れた離型性を有するという知見を得るに至った。さらに検討を重ねた結果、当該弾性シート材を弾性層として基材上に設ける場合には、すぐれたトナー転写性と離型性を備えた画像形成用装置の中間転写ベルトとして好適であるという知見を得、本発明を完成するに至った。
本発明の弾性シート材、中間転写ベルト、弾性シート材の製造方法および中間転写ベルトの製造方法は、以下の構成を有する。
(1) イミド変性ポリウレタンエラストマーをシート状に成形した弾性シート材であって、該シート内に含有されたフッ素樹脂微粒子がシートの表面側に偏在していることを特徴とする弾性シート材。
(2)前記イミド変性ポリウレタンエラストマーが、下記一般式(I):
[式中、R1は、芳香族環または脂肪族環を含む2価の有機基を示す。R2は、重量平均分子量100〜10,000の2価の有機基を示す。R3は、芳香族環、脂肪族環または脂肪族鎖を含む2価の有機基を示す。R4は、4個以上の炭素を含む4価の有機基を示す。nは1〜100の整数を示す。mは2〜100の整数を示す]で表されるものである上記(1)記載の弾性シート材。
(3)前記イミド変性ポリウレタンエラストマーの弾性率が1.0×106〜6.0×107Paである上記(1)〜(2)に記載の弾性シート材。
(4)フッ素樹脂微粒子の含有量が、イミド変性ポリウレタンエラストマー100重量部に対して5〜20重量部である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の弾性シート材。
(5)基材上に、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の弾性シート材からなる弾性層を積層したことを特徴とする、画像形成装置用の転写ベルト。
(6)基材が、ポリイミド樹脂層である上記(5)に記載の転写ベルト。
(7)フッ素樹脂微粒子を含有するイミド変性ポリウレタンエラストマーの前駆体溶液を円筒形の型内に仕込み、遠心成形して、表面側に前記フッ素樹脂微粒子が偏在したイミド変性ポリウレタンエラストマーからなるシートを得ることを特徴とする弾性シート材の製造方法。
(8)フッ素樹脂微粒子を含有するイミド変性ポリウレタンエラストマーの前駆体溶液を円筒形の型内に仕込み、遠心成形して、表面側に前記フッ素樹脂微粒子が偏在したイミド変性ポリウレタンエラストマーからなる弾性層を得;ついで、基材を構成する樹脂の前駆体溶液を円筒形の型内に仕込み、遠心成形して、前記弾性層を基材上に積層することを特徴とする、画像形成装置用の転写ベルトの製造方法。
(9)基材を構成する樹脂が、ポリイミド樹脂である(8)に記載の転写ベルトの製造方法。
本発明の弾性シート材は、イミド変性ポリウレタンエラストマーのシート表面側にフッ素樹脂微粒子が偏在しているので、イミド変性ポリウレタンエラストマー本来の弾性を損なうことなく、表面に離型性が付与されている、という効果がある。
本発明に係る上記弾性シート材からなる弾性層を基材上に積層した本発明の画像形成装置用の転写ベルトは、トナー転写性と離型性に優れている、という効果がある。しかも、別途離型層を設ける必要もないので、中間転写ベルトの厚さを薄くでき、且つ製造コストの低減も図ることができる。
なお、本発明の弾性シート材は、前記離型性と共に、低摩擦性や低濡れ性をも有するので、画像形成装置の転写ベルト以外にも、搬送用ベルトの表面層、クッション性シート等の広い用途に好適に使用できる。
本発明の弾性シート材の一実施形態である中間転写ベルトの一例を示す概略断面図である。 本発明の弾性シート材の他の実施形態を示す概略断面図である。 実施例1で得た弾性シート材の表面を示す走査型電子顕微鏡写真である。 実施例1で得た弾性シート材の断面を示す走査型電子顕微鏡写真である。 従来公知の中間転写ベルトの一例を示す概略断面図である。
<画像形成装置の中間転写ベルト>
以下、本発明の弾性シート材を画像形成装置用の転写ベルトに適用した例を挙げて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置用の転写ベルトを示す概略断面図である。同図に示すように、本実施形態にかかる中間転写ベルト5は、基材層4と、この基材層4上に設けられた弾性層3とを備える。弾性層3は、イミド変性ポリウレタンエラストマー1からなり、該エラストマー1の表面側にはフッ素樹脂微粒子の偏在域2が形成されている。
基材層4の材質としては、ポリイミド樹脂を用いるのが、イミド変性ポリウレタンエラストマー1と類似の構造を有するため、これらの層間の密着性が高いことによって、耐久性に優れる点から好ましい。
基材層4を構成するポリイミド樹脂は、特に限定されるものではなく、一般に、酸無水物とジアミン化合物から合成されたポリアミド酸を熱および触媒等によってイミド化することで得られる。具体的には、前記酸無水物としては、例えば無水ピロメリット酸、オキシジフタル酸二無水物、ビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルホン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、4,4’−(2,2’−ヘキサフルオロイソプロピリジン)ジフタル酸二無水物、シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、前記ジアミン化合物としては、例えば1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,7−ジアミノ−ジメチルジベンゾチオフェン−5,5’−ジオキシド、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、4,4’−ジアミノベンズアニリド、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン等の芳香族ジアミン等が挙げられ、例えば特許第2560727号公報に記載されているものが挙げられる。ポリイミド樹脂は、その構造上、高強度、高耐熱、低緩和特性等といった特性を有しており、これは精密回転が必要とされる用途に用いられるベルト材料に適している。したがって、ポリイミド樹脂を基材4に用いると、該ポリイミド樹脂が低伸張かつ高強度の張力保持体として機能し、ベルトの精密駆動が可能になる。前記ポリイミド樹脂は熱硬化性であるのが好ましい。
中間転写ベルトに半導電性を付与する上で、ポリイミド樹脂に導電剤を分散させる。これは、中間転写ベルトは、その表面に静電気を使ってトナーを担持するが、この時、導電率が低いとトナーを担持させるのに充分な帯電が行われず、導電率が高いとトナーが飛散してしまうためである。このため中間転写ベルトでは、ベルト表面抵抗値を、一般に、109〜1011Ω/cm2の範囲にコントロールする必要がある。前記導電剤としては、導電性もしくは半導電性の微粉末を使用でき、具体例としては、カーボンブラック,グラファイト等の導電性炭素系物質、アルミニウム,銅合金等の金属または合金、さらには酸化錫,酸化亜鉛,酸化アンチモン,酸化インジウム,チタン酸カリウム,酸化アンチモン−酸化錫複合酸化物(ATO),酸化インジウム−酸化錫複合酸化物(ITO)等の導電性金属酸化物等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
導電材の含有量としては、導電剤の種類やベルト表面抵抗値に応じて任意に選定すればよく、特に限定されるものではないが、例えばカーボンブラックの場合には、通常、ポリイミド樹脂100重量%に対して15〜20重量%程度の割合で含有するのが好ましい。
ポリイミド樹脂層である基材層4の厚みは20〜100μm程度、好ましくは60〜80μm程度であるのがよい。これにより、ベルトの剛性が高くなり、ベルトの回転時に発生するスラスト方向の荷重に対しても強くなる。
ここで、前記ポリイミド樹脂は機械特性に優れているため、中間転写ベルトとして用いる場合には、バイアスロールで中間転写ベルトを像担持体に押圧した時に、その押圧力によるベルトの変形が小さい。そして、このような状態で、電界を作用させてトナー像を静電的に中間転写ベルトに転写すると、一次転写部においてバイアスロールによる押圧力の荷重が集中し、その結果、トナー像が凝集して電荷密度が高くなるため、トナー層内部で放電が発生してトナーの極性を変化させることがある。このような要因によって、ライン画像が中抜けするホローキャラクタの画質欠陥が発生するが、この画質欠陥を防止する対策として、ポリイミド層である基材層4上に弾性層のイミド変性ポリウレタンエラストマーの弾性層3が設けられるので、ベルトの表面が柔軟になる。
本実施形態にかかる弾性層3は、シート状に成形したイミド変性ポリウレタンエラストマー1からなり、表面側にフッ素樹脂微粒子の偏在域2を有する。このフッ素樹脂微粒子の偏在域2は、イミド変性ポリウレタンエラストマーを基材層4上に積層する際に、該イミド変性ポリウレタンエラストマー内に含有されたフッ素樹脂微粒子を弾性層3の表面側に偏在させたものである。
弾性層3の厚さは、特に限定されることなく、用途に応じて、適宜決定することができ、通常、20〜150μm程度であるのが好ましく、80〜130μm程度であるのがより好ましい。これにより、トナーの転写効果等が優れたものになる。これに対し、弾性層3の厚みが20μmより薄いと、弾性層3に要求される柔軟性、弾性が低下し、トナー転写性が低下するおそれがある。一方、弾性層の厚さが150μmを超えると、転写ベルトの総厚みが増して屈曲性等に悪影響を及ぼすおそれがある。
弾性層3を構成するイミド変性ポリウレタンエラストマー1は、その弾性率を任意に調整する必要があるが、本実施形態では、この弾性層がイミド変性ポリウレタンエラストマー1からなることにより、該イミド変性エラストマー中のイミド成分の含有率を調整すると、該エラストマーの弾性率を簡単に調整することができ、層1が所望の弾性率を有するようになる。該弾性率は、特に限定されるものではないが、通常、1.0×106〜6.0×107Pa程度の範囲になるように調整するのが好ましい。なお、前記弾性率は、後述するように、動的粘弾性測定装置を用いて測定して得られる50℃での貯蔵弾性率E’の値である。
弾性層3におけるフッ素樹脂微粒子の含有量は、イミド変性ポリウレタンエラストマー1(固形分)の100重量部に対して、1〜30重量部程度、好ましくは5〜20重量部であるのがよい。フッ素樹脂微粒子がこの範囲内でイミド変性ポリウレタンエラストマー1に含まれることにより、イミド変性ポリウレタンエラストマー1からなる弾性層3の厚み全体の1/5〜1/3程度の表面層側にフッ素樹脂微粒子の偏在域2が形成されていることが好ましい。偏在域2は、例えば、後述する製造方法において説明するように遠心成形法によって形成することができる。偏在域2の弾性層3の厚み全体に対する割合は、遠心成形法における回転数や、エラストマー1のワニスの粘度などによって調整可能である。
なお、偏在域2とは、フッ素樹脂微粒子が弾性層3の他の領域(例えば裏面側)よりも多く密集している領域をいう。偏在域2が存在するか否かは、図3、図4に示すように顕微鏡観察で判別可能である。
フッ素樹脂微粒子の材質としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−セキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等を挙げることができる。また、フッ素樹脂微粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、通常、0.3〜10μm程度であるのが適当である。フッ素樹脂微粒子の具体例としては、例えば、商品名KTL−8N、KTL−500F、KTL-450(以上、喜多村(株)製)、ルブロンL−2、ルブロンL−5(以上、ダイキン工業(株)製)等を挙げることができる。
弾性層3を構成するイミド変性ポリウレタンエラストマー1は、ポリウレタンをエラストマー成分とするイミド変性ポリウレタンエラストマー(以下、「ポリイミドウレタンエラストマー」や「PIUE」とも言う。)であり、柔軟性に優れ、転写ベルトとして用いる場合の基材ポリイミド層との接着性等に優れるという利点を有する。イミド変性ポリウレタンエラストマー樹脂としては、特に、前記一般式(I)で表されるPIUE(以下、「PIUE(I)」とも言う。)が好ましい。
PIUE(I)は、ポリウレタン(ポリウレタンプレポリマー)をエラストマー成分として含有すると共に、主鎖に連続した2つのイミドユニットを、その分布を制御しつつ所望の割合(イミド分率)で導入することができるので、弾性率を簡単に調整することができ、かつ柔軟性や基材との接着性等に優れるという効果がある。
具体的には、上記一般式(I)において前記R1は、芳香族環または脂肪族環を含む2価の有機基を示すものであり、該有機基としては、例えば後述する反応行程式(A)に従ってポリウレタンプレポリマー(c)を合成する際に用いるジイソシアナート(a)の残基等が挙げられる。
前記R2は、重量平均分子量100〜10,000、好ましくは300〜5,000の2価の有機基を示すものであり、該有機基としては、例えば反応行程式(A)に従ってポリウレタンプレポリマー(c)を合成する際に用いるポリオール(b)の残基等が挙げられる。
前記R3は、 芳香族環、脂肪族環または脂肪族鎖を含む2価の有機基を示すものであり、該有機基としては、例えば後述する反応行程式(B)に従ってポリウレタン−ウレア化合物(e)を合成する際に用いるジアミン化合物(d)の残基等が挙げられる。前記脂肪族鎖は、炭素数1のものも含む。
前記R4は、4個以上の炭素を含む4価の有機基を示すものであり、該有機基としては、例えば後述する反応行程式(C)に従ってイミド変性エラストマー(I)を合成する際に用いるテトラカルボン酸二無水物(f)の残基等が挙げられる。nは1〜100の整数、好ましくは2〜50の整数を示す。mは2〜100の整数、好ましくは2〜50の整数を示す。
前記一般式(I)で表されるPIUEの具体例としては、下記式(1)で表されるPIUE等が挙げられる。
[式中、nは1〜100の整数を示す。mは2〜100の整数を示す。xは10〜100の整数を示す。]
前記一般式(I)で表されるPIUEは、ジイソシアナートとポリオールから得た分子両末端にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーをジアミン化合物でウレア結合により鎖延長し、テトラカルボン酸二無水物でウレア結合部にイミドユニットを導入したブロック共重合体であるのが好ましい。このようなPIUEは、例えば以下に示すような反応工程式(A)〜(C)を経て製造することができる。
[反応行程式(A)]
[式中、R1,R2,nは、前記と同じである。]
(ポリウレタンプレポリマー(c)の合成)
上記反応行程式(A)に示すように、まず、ジイソシアナート(a)とポリオール(b)から分子両末端にイソシアナート基を有するポリウレタンプレポリマー(c)を得る。PIUE(I)は、このポリウレタンプレポリマー(c)をエラストマー成分とするので、ゴム状領域(室温付近)の弾性率が低くなり、よりエラスティックにすることができると共に、このポリウレタンプレポリマー(c)の分子量を制御することにより、主鎖に連続した2つのイミドユニットを、その分布を制御しつつ所望の割合で導入することが可能となる。
具体的には、前記ジイソシアナート(a)としては、例えば2,4−トリレンジイソシアナート(TDI)、2,6−トリレンジイソシアナート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)、ポリメリックMDI、ジアニシジンジイソシアナート(DADL)、ジフェニルエーテルジイソシアナート(PEDI)、ピトリレンジイソシアナート(TODI)、ナフタレンジイソシアナート(NDI)、ヘキサメチレンジイソシアナート(HMDI)、イソホロンジイソシアナート(IPDI)、リジンジイソシアナートメチルエステル(LDI)、メタキシリレンジイソシアナート(MXDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート(TMDI)、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート(TMDI)、ダイマー酸ジイソシアナート(DDI)、イソプロピリデンビス(4−シクロヘキシルイソシアナート)(IPCI)、シクロヘキシルメタンジイソシアナート(水添MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアナート(水添TDI)、TDI2量体(TT)が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよく、減圧蒸留したものを用いるのが好ましい。
前記ポリオール(b)としては、例えばポリプロピレングリコール(PPG)、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリマーポリオール等のポリエーテルポリオール;アジペート系ポリオール(縮合ポリエステルポリオール)、ポリカプロラクトン系ポリオール、ポリカーボネートポリオール等のポリエステルポリオール;ポリブタジエンポリオール;アクリルポリオール等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
ポリオール(b)は、70〜90℃、1〜5mmHg、10時間〜30時間程度の条件で減圧乾燥したものを用いるのが好ましい。また、ポリオール(b)の重量平均分子量は100〜10,000、好ましくは300〜5,000であるのが好ましい。前記重量平均分子量は、ポリオール(b)をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、得られた測定値をポリスチレン換算した値である。
反応は、上記で例示したジイソシアナート(a)とポリオール(b)とを所定の割合で混合した後、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下、室温で1時間〜5時間程度反応させればよい。ジイソシアナート(a)とポリオール(b)との混合比(モル)は、ジイソシアナート(a):ポリオール(b)=1.1:1.0〜2.0:1.0の範囲にするのが好ましい。これにより、得られるポリウレタンプレポリマー(c)の重量平均分子量を、下記で説明する所定の値にすることができる。
得られるポリウレタンプレポリマー(c)の重量平均分子量は、300〜50,000、好ましくは500〜45,000であるのがよい。この範囲内でポリウレタンプレポリマー(c)の重量平均分子量を制御して、イミドユニットを所望の割合で導入すると、柔軟性やポリイミドの基材層との接着性等に優れるPIUE(I)を得ることができる。
また、ポリウレタンプレポリマー(c)の重量平均分子量が、前記範囲内において小さいほど、ハードなPIUE(I)を得ることができる。これに対し、前記分子量が300より小さいと、PIUE(I)がハードになりすぎ、50,000より大きいと、ソフトになりすぎるおそれがあるので好ましくない。前記重量平均分子量は、ポリウレタンプレポリマー(c)をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、得られた測定値をポリスチレン換算した値である。
[反応行程式(B)]
[式中、R1〜R3,n,mは、前記と同じである。]
(ポリウレタン−ウレア化合物(e)の合成)
上記で得られたポリウレタンプレポリマー(c)を用いて、反応行程式(B)に従ってイミド前駆体であるポリウレタン−ウレア化合物(e)を合成する。すなわち、ポリウレタンプレポリマー(c)をジアミン化合物(d)でウレア結合により鎖延長してポリウレタン−ウレア化合物(e)を得る。
具体的には、前記ジアミン化合物(d)としては、例えば1,4−ジアミノベンゼン(別名:p−フェニレンジアミン、略称:PPD)、1,3−ジアミノベンゼン(別名:m−フェニレンジアミン、略称:MPD)、2,4−ジアミノトルエン(別名:2,4−トルエンジアミン、略称:2、4−TDA)、4,4’− ジアミノジフェニルメタン(別名:4,4’−メチレンジアニリン、略称:MDA)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(別名:4,4’−オキシジアニリン、略称:ODA、DPE)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(別名:3,4’−オキシジアニリン、略称:3,4’−DPE)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(別名:o−トリジン、略称:TB)、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(別名:m−トリジン、略 称:m−TB)、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(略称:TFMB)、3,7−ジアミノ−ジメチルジベンゾチオフェ ン−5,5−ジオキシド(別名:o−トリジンスルホン、略称:TSN)、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ビス(4−アミノフェニル)スルフィド(別名:4,4’−チオジアニリン、略称:ASD)、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(別 名:4,4’−スルホニルジアニリン、略称:ASN)、4,4’−ジアミノベンズアニリド(略称:DABA)、1,n−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン(n=3,4,5、略称:DAnMG)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)−2,2−ジメチルプロパン(略称:DANPG)、1,2−ビス[2−(4−アミノフェノキシ)エトキシ]エタン(略称:DA3EG)、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(略称:FDA)、5(6)−アミノ−1−(4−アミノメチル)−1,3,3−トリメチルインダン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(略称:TPE−Q)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(別名:レゾルシンオキシジアニリン、略称:TPE−R)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(略称:APB)、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(略称:BAPB)、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス (4−アミノフェノキシフェニル)プロパン(略称:BAPP)、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(略称:BAPS)、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(略称:BAPS−M)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(略称:HFBAPP)、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(略称:MBAA)、4,6−ジヒドロキシ−1,3−フェニレンジアミン(別名:4,6−ジアミノレゾルシン)、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル(別名:3,3’−ジヒドロキシベンジジン、略称:HAB)、3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニル(別名:3,3’−ジアミノベンジジン、略称:TAB)等の炭素数6〜27の芳香族ジアミン化 合物;1,6−ヘキサメチレンジアミン(HMDA)、1,8−オクタメチレンジアミン(OMDA)、1,9−ノナメチレンジアミン、1,12−ドデカメチレンジアミン(DMDA)、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(別名:イソホロンジアミン)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、シクロヘキサンジアミン等の炭素数6〜24の脂肪族または脂環式ジアミン化合物;1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等のシリコーン系ジアミン化合物等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
特に、1,6−ヘキサメチレンジアミン(HMDA)を用いるのが、強度に優れるPIUE(I)を得ることができるうえで好ましい。また、上記で例示したジアミン化合物(d)の選択によっても、PIUE(I)の弾性率を調整することができる。
反応は、ウレタンプレポリマー(c)と、上記で例示したジアミン化合物(d)とを等モル、好ましくはNCO/NH2比が1.0程度の割合で混合した後、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下、室温〜100℃、好ましくは50〜100℃において、2時間〜30時間程度で溶液重合反応または塊状重合反応させればよい。
前記溶液重合反応に使用できる溶媒としては、例えばN,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−ヘキシル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリドン等が挙げられ、特に、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−ヘキシル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリドンが好ましい。これらの溶媒は、1種または2種以上を混合して用いてもよく、定法に従い脱水処理したものを用いるのが好ましい。
[反応行程式(C)]
[式中、R1〜R4,n,mは、前記と同じである。]
(PIUE(I)の合成)
上記で得られたポリウレタン−ウレア化合物(e)を用いて、反応行程式(C)に従って一般式(I)で表されるPIUEを合成する。すなわち、テトラカルボン酸二無水物(f)でウレア結合部にイミドユニットを導入してブロック共重合体であるPIUE(I)を得る。
具体的には、前記テトラカルボン酸二無水物(f)としては、例えば無水ピロメリット酸(PMDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、ビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物(BPDA)、ベンゾフェノン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ジフェニルスルホン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)、m(p)−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、1−カルボキシメチル−2,3,5−シクロペンタントリカルボン酸−2,6:3,5−二無水物等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
反応は、ポリウレタン−ウレア化合物(e)とテトラカルボン酸二無水物(f)とのイミド化反応である。該イミド化反応は、溶媒下、無溶媒下のいずれであってもよい。溶媒下でイミド化反応を行う場合には、まず、ポリウレタン−ウレア化合物(e)と、上記で例示したテトラカルボン酸二無水物(f)とを所定の割合で溶媒に加え、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下、100〜300℃、好ましくは135〜200℃、より好ましくは150〜170℃において、1時間〜10時間程度反応させて、下記式(g)で表されるポリウレタンアミド酸(PUA)を含む溶液(PUA溶液)を得る。
[式中、R1〜R4,n,mは、前記と同じである。]
ここで、ポリウレタン−ウレア化合物(e)とテトラカルボン酸二無水物(f)との混合は、ポリウレタン−ウレア化合物(e)の合成で使用したジアミン化合物(d)とテトラカルボン酸二無水物(f)との混合比(モル)が、ジアミン化合物(d):テトラカルボン酸二無水物(f)=1:2〜1:2.02の範囲となる割合で混合するのが好ましい。これにより、確実にウレア結合部にイミドユニットを導入することができる。
使用できる溶媒としては、上記反応行程式(B)の溶液重合反応に使用できる溶媒で例示したものと同じ溶媒を例示することができる。なお、反応行程式(B)において溶液重合反応でポリウレタン−ウレア化合物(e)を得た場合には、該溶媒中でイミド化反応を行えばよい。
ついで、上記で得たPUA溶液を、例えば円筒金型に注入して、100〜300℃、好ましくは135〜200℃、より好ましくは150〜170℃において、100〜2,000rpmの回転数で円筒金型を30分〜2時間程度回転させながら、遠心成形によりPUAをフィルム状に成膜する。本発明においては、このPUA溶液に、前記フッ素樹脂微粒子が、イミド変性ポリウレタンエラストマー樹脂の固形分100重量部に対して、5〜20量部程度の割合で含有分散されている。
ついで、フィルム状のPUAを加熱処理(脱水縮合反応)することにより、フィルム状の一般式(I)で表されるPIUEを得ることができる。加熱処理は、PUAが熱分解しない条件であるのが好ましく、例えば減圧条件下において150〜450℃、好ましくは150〜250℃、1時間〜5時間程度であるのがよい。
上記のようにして得られるPIUE(I)は、ガラス転移温度(Tg)が、通常、−30〜−60℃であると共に、高い弾性を有し、かつゴム状弾性領域の温度範囲が広いものになる。この理由として、以下の理由が推察される。すなわち、上記で説明した通り、PIUE(I)は、主鎖に連続した2つのイミドユニットを、その分布を制御しつつ所望の割合(イミド分率)で導入することができるので、このイミドユニットからなるハードセグメントの凝集が均一かつ強固なものになる。このため、PIUE(I)は、より均一かつ強固なミクロ相分離構造を形成し、ガラス転移温度が低くなることで、ゴム状弾性領域の温度範囲が広くなる。
PIUE(I)の重量平均分子量は10,000〜1000,000、好ましくは50,000〜800,000、より好ましくは50,000〜500,000であるのがよい。前記重量平均分子量は、上記式(g)で表されるポリウレタンアミド酸(PUA)を含むPUA溶液をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、得られた測定値をポリスチレン換算した値から導き出した値である。なお、PIUE(I)ではなく、PUA溶液をGPCで測定するのは、PIUE(I)は、GPCの測定溶媒に不溶なためである。
また、PIUE(I)のイミド分率(イミド成分含有率)、すなわちイミド変性エラストマー中のイミド成分の割合を調整すると、弾性率を簡単に調整することができる。イミド分率は、弾性率等に応じて任意に選定すればよく、特に限定されるものではないが、通常、25重量%以下、好ましくは15重量%以下であるのがよく、下限値としては、通常、5重量%以上が妥当である。前記イミド分率は、原料、すなわちジイソシアナート(a)、ポリオール(b)、ジアミン化合物(d)およびテトラカルボン酸二無水物(f)の仕込み量から算出される値であり、より具体的には、下記式(α)から算出される値である。
<製造方法>
ついで、上記で説明したベルト10の製造方法の一実施形態について説明する。なお、弾性層4を構成するイミド変性エラストマーにPIU(I)を用いた場合について説明する。
シームレスなベルト10は、例えば遠心成形法により得ることができる。すなわち、まず、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸のワニス(ポリイミドワニス) と、上記で説明したPUA溶液とを調製する。ポリイミドワニスは、特に限定されるものではなく、ポリアミド酸を適当な溶剤に加えてワニス化したものの他、市販のものを用いてもよく、具体例としては、宇部興産(株)社製の商品名「UワニスA」等が挙げられる。
PUA溶液は、固形分量を10〜30重量%、好ましくは20重量%程度に調製するのが好ましい。そして、このPUA溶液に、前記したフッ素樹脂微粒子を分散させる。
ベルト成形では、まず、上記PUA溶液を、110〜130℃、好ましくは120℃ 程度に加熱した遠心成形機に注入する。なお、遠心成形機ドラム内面には離型処理を施す、離経剤を塗布する、あるいは樹脂で離形性を持った層を形成するなどしておくのが、下記のようにして得られる積層フィルムを遠心成型機から簡単に取り外すことができる上で好ましい。
ついで、この遠心成形機ドラムを、400〜600rpm、好ましくは500rpm程度で回転させながらPUA溶液を投入し、該PUA溶液を充分にドラム全体に延伸させる。その後、回転数を900〜1,100rpm、好ましくは1,000rpm程度に上げ、20〜40分間、好ましくは30分間程度で熱処理をした後、50〜70℃、好ましくは60℃程度にまで冷却してドラム内面にPUAシートを形成する。
遠心成形機ドラムの内面と接触するPUAシートの表面側には遠心力によりPUA溶液内のフッ素樹脂微粒子が偏在し、偏在域2が形成される。
ついで、ドラムを400〜600rpm、好ましくは500rpm程度で回転させながら、上記で調製したポリイミドワニスを上記PUAシート内面に注入し、その後回転数を50〜200rpm、好ましくは100rpm程度で回転させると共に、110〜130℃、好ましくは120℃程度に加熱し、30〜60分間、好ましくは45分間程度で熱処理を行ことで積層フィルム(基材2、弾性層3)を形成する。
室温まで冷却した後、ドラムから積層シートを取り外し、収縮による変形を防ぐため、表面離型処理を施した金型にセットし、表面にフッ素樹脂等をコーティングして離型樹脂層4を形成した後、減圧条件下で300〜400℃、好ましくは350℃ 程度で20〜4 0分間、好ましくは30分間程度で熱処理を行う。ついで、得られたシートを適切な大きさにスリットすることで、シームレスな転写ベルト10を得る。
なお、上記で説明した実施形態では、効率よくシームレスなベルト10を得る上で、遠心成形により連続して基材4、弾性層3を得る場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、例えば上記で説明した遠心成形の条件で、円筒状のシームレスな基材4,弾性層3(すなわち本発明にかかる弾性シート材)をそれぞれ作製し、これらを接着剤、例えば1液性または2液性のシリコーン系弾性接着剤、ウレタン系弾性接着剤、シート状ホットメルト型のシリコーン系接着剤, シラン変性ポリイミド系接着剤等を用いたり、加熱加圧等で一体化することにより、シームレスなベルト転写10を得てもよい。
上記のようにして得た転写ベルト10は、総厚み100〜150μmとするのが好ましい。
一方、ベルト1の総厚みが前記したこれらの厚みよりも薄いと、中間転写ベルトや定着ベルトとして必要な機械特性を満足させることが困難である。また、これらの厚みよりも大きいと、ロール屈曲部での変形によって、ベルト表面の応力が集中して、離型性樹脂層4 にクラックが発生する等の問題が生じる場合がある。
以上、本発明にかかる画像形成装置の中間転写ベルトについて説明したが、本発明の弾性シート材は画像形成装置の定着ベルトとして用いることもできる。定着ベルトとして用いる場合には、総厚み200〜300μmとするのが好ましい。
また、本発明の弾性シート材は、中間転写ベルト以外にも、搬送用ベルトの表面層、クッション性シート等の広い用途に好適に使用できる。この場合には、図2に示すように、フッ素樹脂微粒子の偏在域2を有するイミド変性ポリウレタンエラストマー1からなる弾性シート材31を単独で使用することができるが、この弾性シート材31を他の基材やシートもしくはフィルムと貼り合わせて使用することもできる。
なお、本発明において、シートとはフィルムも含む概念である。
以下、合成例、実施例および比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の各例のみによって、限定されるものではない。
[合成例]
(ポリウレタンプレポリマーの合成)
まず、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)[日本ポリウレタン工業(株)社製]を減圧蒸留した。また、ポリカーボネート系ポリオール(日本ポリウレタン工業(株)社製のニッポラン980R(商品名)、重量平均分子量:2000)を80℃、2〜3mmHg、24時間の 条件で減圧乾燥した。
ついで、上記MDIの25.15gと、ポリカーボネート系ポリオール114.85gとを、攪拌機およびガス導入管を備えた500mlの四つ口セパラブルフラスコにそれぞれ加え、窒素ガス雰囲気下、80℃で2時間攪拌して、分子両末端にイソシアナート基を有するポリウレタンプレポリマー(j)を得た。このポリウレタンプレポリマー(j)をGPCで測定した結果、ポリスチレン換算した値で重量平均分子量は4.6×104であった。
(ポリウレタン−ウレア化合物(l)の合成)
上記で得たポリウレタンプレポリマー10gを脱水処理したN−メチル−2−ピロリドン(NMP)60mlに溶解させたものと、p−フェニレンジアミン(PDA)0.33gを脱水処理したNMP20mlに溶解させたものとを、攪拌機およびガス導入管を備えた500mlの四つ口セパラブルフラスコにそれぞれ加え、アルゴン雰囲気下、室温(23℃)で24時間攪拌して、ポリウレタン−ウレア化合物(l)の溶液を得た。
(PIUE(1)の合成)
上記で得たポリウレタン−ウレア化合物(l)の溶液中に、無水ピロメリット酸(PMDA)0.73gを加え、窒素ガス雰囲気下、150℃で2時間攪拌して、ポリウレタンアミド酸(PUA)溶液を得た。ついで、該PUA溶液を遠心成形機に流し込み、150℃で520rpm、2時間遠心成形してPUAシートを得た。このPUAシートを送風オーブン内で200℃、2時間加熱処理(脱水縮合反応)して、厚さ100μmのシート状のPIUE(1)を得た(イミド分率:15重量%)。なお、前記イミド分率は、前記式(α)から算出して得た値である。
得られたPIUE(1)について、KBr法にてIRスペクトルを測定した。その結果、1780cm−1、1720cm−1および1380cm−1にイミド環に由来する吸収が観察された。
上記で得たPIUE(1)について、弾性率を測定した。すなわち、セイコーインスツルメンツ社(Seiko Instruments Inc.)製の動的粘弾性測定装置「DMS6100」を用いて、10Hz、5℃/分、−100〜400℃の昇温過程にて、50℃での貯蔵弾性率E’を測定したところ、弾性率は2.4×10Paであった。
[実施例1]
上記合成例で得たPIUE溶液(すなわち合成例において脱水縮合反応させる前のPUA溶液)を濃度は15重量%で、粘度は120cpに調整した。このPUA溶液に、フッ素樹脂微粒子(商品名「KTL−8N」、平均粒子径3μm、喜多村(株)製)をポリマー固形分100重量部当たり10重量部添加して、ホモジナイザーで15000rpm×5分の条件で分散させた。分散液をアルミニウム製の円筒金型(内径100mm)の内側に仕込み、120℃で120分間遠心成形(回転数520rpm)を行った。成形後、金型ごとオーブンに投入し、200℃で120分間の条件で熱処理した。金型を放冷後、シートを脱型して、厚さ100μmの弾性シート材を得た。
得られた弾性シート材について、走査型電子顕微鏡(SEM)によりフッ素樹脂微粒子の分散状態を調べた。図3に、実施例1で得た弾性シート材の表面の走査型電子顕微鏡写真(倍率:300倍)を示す。また、図4に、実施例1で得た本発明弾性シート材の断面の走査型電子顕微鏡写真(倍率:400倍)を示す。
これらの走査型電子顕微鏡写真から、実施例1のシート材には、断面のSEM像にはフッ素樹脂微粒子が、シート材の総厚みに対して、表面側から1/3〜2/5程度の領域に偏在しているのが確認され、表面SEM像でもフッ素樹脂微粒子の存在が確認される。
[比較例1]
フッ素樹脂微粒子を投入しない以外は、実施例1と同様にして弾性シート材を得た。
次に、実施例1および比較例1で得た各弾性シート材について、弾性率およびタック性の試験を行った。試験方法および結果は、下記の通りである。
<弾性率>
被検シートの弾性率を、下記条件で調べた。
測定方法:動的粘弾性測定
測定周波数:1Hz
弾性率読み取り温度:50℃
測定結果は、実施例1の弾性シート材が−5.7×10Paであり、比較例1の弾性シート材が−4.6×10Paであった。従って、本発明の弾性シート材は、フッ素樹脂微粒子を入れているにもかかわらず、十分に優れた弾性を有していることが分かった。
<タック性>
ステンレス鋼板上に、実施例1および比較例1の各弾性シート材をそれぞれ並べて載置した。その各シート上に直径1.98mm(2.5/32インチ)のステンレス製ボールを置いた状態で、上記ステンレス鋼板の一端を徐々に立ち上げ、水平面に対する傾斜角度を大きくしていったとき、ボールが先に転がり出す弾性シート材を確認した。試験は、5回行った。試験結果を表1に示した。
上記タック性の試験結果より、実施例1のシート材は、比較例1のシート材よりも表面が滑らかになっており、優れた離型性を有していることが分かる。
[実施例2]
実施例1において、上記合成例で得たPIUE溶液にフッ素樹脂微粒子を分散させた分散液を円筒金型の内側に仕込み、遠心成形を行った後、得られたPIUEフィルム内面に宇部興産(株)製の商品名UワニスA」を注入し、120℃で90分間遠心成形を行いて熱処理して積層フィルムを得た。
ついで、この積層フィルムをドラムから取り外し、金型にはめて350℃で30分熱処理を行い、片面がポリイミド、他面がイミド変性ポリウレタンエラストマーの構造、すなわちポリイミド樹脂からなる基材と、この基材上に設けられるPIUE(1)からなる弾性層とで構成されたシームレスな画像形成装置用転写ベルトを得た。
1 イミド変性ポリウレタンエラストマー
2 フッ素樹脂微粒子の偏在域
3,31 弾性シート材
4 基材
5 弾性層
7 転写ベルト
10 転写ベルト

Claims (9)

  1. イミド変性ポリウレタンエラストマーをシート状に成形した弾性シート材であって、該シート内に含有されたフッ素樹脂微粒子がシートの表面側に偏在していることを特徴とする弾性シート材。
  2. 前記イミド変性ポリウレタンエラストマーが、下記一般式(I):
    [式中、R1は、芳香族環または脂肪族環を含む2価の有機基を示す。R2は、重量平均分子量100〜10,000の2価の有機基を示す。R3は、芳香族環、脂肪族環または脂肪族鎖を含む2価の有機基を示す。R4は、4個以上の炭素を含む4価の有機基を示す。nは1〜100の整数を示す。mは2〜100の整数を示す]で表されるものである請求項1に記載の弾性シート材。
  3. 前記イミド変性ポリウレタンエラストマーの弾性率が1.0×106〜6.0×107Paである請求項1または2に記載の弾性シート材。
  4. フッ素樹脂微粒子の含有量が、イミド変性ポリウレタンエラストマー100重量部に対して5〜20重量部である請求項1〜3のいずれかに記載の弾性シート材。
  5. 基材上に、請求項1〜4のいずれかに記載の弾性シート材からなる弾性層を積層したことを特徴とする、画像形成装置用の転写ベルト。
  6. 前記基材が、ポリイミド樹脂層である請求項5に記載の中間転写ベルト。
  7. フッ素樹脂微粒子を含有するイミド変性ポリウレタンエラストマーの前駆体溶液を円筒形の型内に仕込み、遠心成形して、表面側に前記フッ素樹脂微粒子が偏在したイミド変性ポリウレタンエラストマーからなるシートを得ることを特徴とする弾性シート材の製造方法。
  8. フッ素樹脂微粒子を含有するイミド変性ポリウレタンエラストマーの前駆体溶液を円筒形の型内に仕込み、遠心成形して、表面側に前記フッ素樹脂微粒子が偏在したイミド変性ポリウレタンエラストマーからなる弾性層を得、
    ついで、基材を構成する樹脂の前駆体溶液を円筒形の型内に仕込み、遠心成形して、前記弾性層を基材上に積層することを特徴とする、画像形成装置用の転写ベルトの製造方法。
  9. 基材を構成する樹脂が、ポリイミド樹脂である請求項8に記載の転写ベルトの製造方法。
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