本発明のグルタルイミド樹脂の製造方法について、まず説明する。本発明のグルタルイミド樹脂の製造方法は、アミド基を有するアクリル系単量体とエステル基を有するアクリル系単量体とを含む単量体成分を有機溶媒中で共重合させて、アミド基含有アクリル系樹脂を得る工程(重合工程)と、前記アミド基含有アクリル系樹脂を溶融し、このアミド基含有アクリル系樹脂のアミド基とエステル基を環化縮合させる工程(環化縮合工程)とを有するものである。本発明のグルタルイミド樹脂の製造方法によれば、アミド基を有するアクリル系単量体とエステル基を有するアクリル系単量体を共重合させて得られたアミド基含有アクリル系樹脂を、環化縮合させてイミド化することでグルタルイミド樹脂を製造可能であり、アクリル酸等のカルボン酸やアミンの使用を必須としないため、酸価が小さく、アミン含有量が少ないグルタルイミド樹脂を得ることができる。また、環化縮合反応(イミド化反応)をアミド基含有アクリル系樹脂の溶融状態で行うことによりグルタルイミド樹脂を製造しているため、応力光学係数(Cr)の絶対値が小さいグルタルイミド樹脂を容易に得ることができる。以下、本発明のグルタルイミド樹脂の製造方法について詳しく説明する。
重合工程では、アミド基を有するアクリル系単量体とエステル基を有するアクリル系単量体とを含む単量体成分を有機溶媒中で共重合させて、アミド基含有アクリル系樹脂を得る。重合工程で用いられるアクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸化合物を用いることが好ましいが、それに限定されず、(メタ)アクリル酸化合物以外のα,β−不飽和カルボニル化合物を広く用いることができる。(メタ)アクリル酸以外のα,β−不飽和カルボニル化合物は、β位炭素に水素原子以外の置換基が結合していてもよく、α位炭素に水素原子やメチル基以外の置換基が結合していてもよい。なお、β位炭素に結合していてもよい水素原子以外の置換基としては、例えば、炭素数1〜8のアルキル基が挙げられる。α位炭素に結合していてもよい水素原子とメチル基以外の置換基としては、例えば、炭素数2〜8のアルキル基が挙げられる。α,β−不飽和カルボニル化合物のカルボニル基は、アミド基を有するアクリル系単量体の場合は、カルボニル基がアミド化されており(すなわちアミド基となっており)、エステル基を有するアクリル系単量体の場合は、カルボニル基がエステル化されている(すなわちエステル基となっている)。
アミド基を有するアクリル系単量体としては、下記式(3)で表される化合物(以下、「α,β−不飽和カルボン酸アミド」と称する場合がある)を用いることが好ましい。
式(3)において、R1およびR2はそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基、イソへキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。なかでも、R1およびR2としては、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、これにより、応力光学係数(Cr)の絶対値を小さいグルタルイミド樹脂を得やすくなり、またグルタルイミド樹脂をフィルム化して光学フィルムを製造した際に、複屈折の小さい光学フィルムを得やすくなる。式(3)のα,β−不飽和カルボン酸アミドの製造容易性の点からは、R1およびR2は、水素原子またはメチル基であることが好ましく、R1が水素原子で、R2が水素原子またはメチル基であることがより好ましい。すなわち、式(3)のα,β−不飽和カルボン酸アミドとしては、(メタ)アクリル酸アミドが好ましい。
式(3)において、R5は、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基または環構造を有する基を表す。R5の炭素数1〜18のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基、イソへキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。R5の環構造を有する基としては、例えば、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基、炭素数6〜10のアリール基等が挙げられる。炭素数3〜12のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。炭素数7〜12のアラルキル基としては、ベンジル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。炭素数6〜10のアリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基等が挙げられる。これらの中でも、R5としては、炭素数3〜12のシクロアルキル基または炭素数6〜10のアリール基が好ましく、これにより、応力光学係数(Cr)の絶対値が小さいグルタルイミド樹脂を得やすくなる。R5としては、より好ましくは、炭素数6〜10のアリール基であり、フェニル基、トリル基またはナフチル基がさらに好ましく、フェニル基が特に好ましい。
式(3)のα,β−不飽和カルボン酸アミドは、1種のみを用いてもよく、2種類以上併用してもよい。式(3)のα,β−不飽和カルボン酸アミドとしては、応力光学係数(Cr)の絶対値が小さいグルタルイミド樹脂が得やすくなる点から、R5が炭素数3〜12のシクロアルキル基または炭素数6〜10のアリール基である(メタ)アクリルアミドを用いることが好ましく、R5が炭素数6〜10のアリール基である(メタ)アクリルアミドがより好ましい。
エステル基を有するアクリル系単量体としては、下記式(4)で表される化合物(以下、「α,β−不飽和カルボン酸エステル」と称する場合がある)を用いることが好ましい。
式(4)において、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。R3およびR4の炭素数1〜8のアルキル基としては、上記のR1およびR2の炭素数1〜8のアルキル基として例示したアルキル基が挙げられる。なかでも、R3およびR4としては、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、これにより、応力光学係数(Cr)の絶対値を小さいグルタルイミド樹脂を得やすくなり、またグルタルイミド樹脂をフィルム化して光学フィルムを製造した際に、複屈折の小さい光学フィルムを得やすくなる。式(4)のα,β−不飽和カルボン酸エステルの製造容易性の点からは、R3およびR4は、水素原子またはメチル基であることが好ましく、R3が水素原子で、R4が水素原子またはメチル基であることがより好ましい。すなわち、式(4)のα,β−不飽和カルボン酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
式(4)において、R8は、炭素数1〜18のアルキル基または環構造を有する基を表す。R8の炭素数1〜18のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。R8の環構造を有する基としては、例えば、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基、炭素数6〜10のアリール基等が挙げられる。炭素数3〜12のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。炭素数7〜12のアラルキル基としては、ベンジル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。炭素数6〜10のアリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基等が挙げられる。これらの中でも、R8としては、炭素数1〜18のアルキル基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がさらに好ましく、メチル基、エチル基またはn−ブチル基がさらにより好ましく、メチル基またはエチル基が特に好ましく、これによりイミド化反応を進めやすくなり、グルタルイミド樹脂の耐熱性を高めることができる。
式(4)のα,β−不飽和カルボン酸エステルは、1種のみを用いてもよく、2種類以上併用してもよい。
重合に用いる単量体成分は、アミド基を有するアクリル系単量体とエステル基を有するアクリル系単量体以外の単量体を含んでいてもよい。なお、グルタルイミド樹脂を製造するに当たっては、アミド基を有するアクリル系単量体とエステル基を有するアクリル系単量体が主成分となるように単量体成分を構成することが好ましく、従って、全単量体成分100質量%中、アミド基を有するアクリル系単量体とエステル基を有するアクリル系単量体を合わせた配合量は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、95質量%以上が特に好ましい。
アミド基を有するアクリル系単量体とエステル基を有するアクリル系単量体の配合比は、得られるグルタルイミド樹脂に含まれるグルタルイミド単位とα,β−不飽和カルボン酸エステル由来の単位の所望量によって適宜調整すればよいが、アミド基を有するアクリル系単量体/エステル基を有するアクリル系単量体の配合比(モル基準)は、例えば、5/95以上が好ましく、8/92以上がより好ましく、10/90以上がさらに好ましく、また70/30以下が好ましく、60/40以下がより好ましく、50/50以下がさらに好ましい。
単量体成分には、得られるグルタルイミド樹脂の酸価を低減させる点から、カルボキシル基や酸無水物基を有するアクリル系単量体が多く含まれないことが好ましい。従って、全単量体成分100質量%中、カルボキシル基または酸無水物基を有するアクリル系単量体の配合量は5質量%以下とすることが好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。
単量体成分には、アミド基を有するアクリル系単量体とエステル基を有するアクリル系単量体以外の単量体として、スチレンを含んでいてもよいが、応力光学係数(Cr)の絶対値が小さいグルタルイミド樹脂を得ることが容易になる点から、スチレンはあまり多く用いないことが好ましい。従って、全単量体成分100質量%中、スチレンの配合量は5質量%以下とすることが好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。
単量体成分の重合は有機溶媒中で行うことが好ましい。有機溶媒としては、通常のラジカル重合反応で使用される溶媒を用いることができる。具体的には、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、アニソール等のエーテル;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のエステル;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール;アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル;クロロホルム;ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの溶媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、応力光学係数(Cr)の絶対値が小さいグルタルイミド樹脂を得ることが容易になる点から、有機溶媒は、芳香族炭化水素、ケトン、エーテル、エステルおよびニトリルから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。応力光学係数(Cr)の絶対値が小さいグルタルイミド樹脂を得るためには、アミド基を有するアクリル系単量体として、アミド基の窒素原子に環構造を有する基(例えば、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基、または炭素数6〜10のアリール基)が結合したα,β−不飽和カルボン酸アミドを用いることが有効となるが、重合反応の有機溶媒として、芳香族炭化水素、ケトン、エーテル、エステルおよびニトリルから選ばれる少なくとも1種を含む溶媒を用いれば、アミド基の窒素原子に環構造を有する基が結合したα,β−不飽和カルボン酸アミドを用いた場合でも(特に炭素数6〜10のアリール基が結合したα,β−不飽和カルボン酸アミドを用いた場合でも)、アミド基を有するアクリル系単量体が溶媒に十分に溶解し、重合反応を好適に行いやすくなる。具体的には、重合液の粘度を下げながら各単量体の重合率を向上させ、重合体の組成分布を小さくすることができ、その結果、応力光学係数(Cr)の絶対値が小さく、透明性に優れ、ゲル化や発泡が少ないグルタルイミド樹脂を、生産性に優れたプロセスで得ることが容易になる。また、成形加工の際に、未反応の残存アミド基が反応することによって着色やゲル化、発泡などの問題が起こることも、防止しやすくなる。
重合反応で用いる有機溶媒は、芳香族炭化水素、ケトン、エーテル、エステルおよびニトリルから選ばれる少なくとも1種を、20質量%以上の濃度で含むことが好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、75質量%以上が特に好ましい。なお、前記濃度は、重合反応で用いる有機溶媒が、芳香族炭化水素、ケトン、エーテル、エステルおよびニトリルから選ばれる2種以上を含む場合は、これらの合計濃度を意味する。なかでも、有機溶媒としては、トルエン、トルエンとメタノールの混合溶媒、トルエンとn−ブタノールの混合溶媒、メチルイソブチルケトン、アニソールまたは酢酸エチルを用いることが好ましい。
有機溶媒中の単量体成分の濃度は、重合条件や得られるアミド基含有アクリル系樹脂の所望する分子量等に応じて適宜設定すればよい。有機溶媒中の単量体成分の濃度は、例えば、有機溶媒100質量部に対して5質量部以上とすることが好ましく、10質量部以上がより好ましく、また300質量部以下が好ましく、200質量部以下がより好ましい。
重合反応の温度は、有機溶媒の種類や重合反応の進行度合に応じて適宜調整すればよいが、例えば、50℃以上が好ましく、55℃以上がより好ましく、また160℃以下が好ましく、145℃以下がより好ましい。重合反応の時間は、重合反応の進行度合に応じて適宜調整すればよいが、例えば、1〜48時間(好ましくは3〜24時間)行えばよい。
重合の際には公知の重合開始剤を用いてもよい。重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)・二塩酸塩、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)等のアゾ化合物;過硫酸カリウム等の過硫酸塩類;クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシオクトエート、t−アミルパーオキシイソノナノエート等の過酸化物等を用いることができる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。重合開始剤の使用量は、例えば、単量体成分100質量部に対して0.01〜3質量部とすることが好ましい。重合の際には、必要に応じて、連鎖移動剤等を使用してもよい。
重合工程で得られたアミド基含有アクリル系樹脂は、次に環化縮合工程に供する。環化縮合工程では、アミド基含有アクリル系樹脂を溶融し、アミド基含有アクリル系樹脂の有するアミド基とエステル基とを環化縮合(イミド化反応)させることにより、グルタルイミド樹脂を得る。
環化縮合工程では、イミド化反応を、アミド基含有アクリル系樹脂の溶融状態で行う。イミド化反応を、アミド基含有アクリル系樹脂の溶融状態で行うことにより、アミド基含有アクリル系樹脂の有するアミド基の求核性が低い場合でも、イミド化反応(すなわちアミド基とエステル基との縮合反応)を好適に進行させることができる。その結果、応力光学係数(Cr)の絶対値が小さいグルタルイミド樹脂を容易に製造することができる。
アミド基含有アクリル系樹脂の溶融は、アミド基含有アクリル系樹脂の軟化点以上に加熱すればよいが、当該加熱温度(反応温度)は180℃以上が好ましく、220℃以上がより好ましく、240℃以上がさらに好ましい。アミド基含有アクリル系樹脂をこのような温度に加熱して溶融することにより、イミド化反応を好適に行うことができる。一方、過剰な熱履歴によるアクリル系樹脂の分解を抑制し、グルタルイミド樹脂の透明性ならびに分子量の低下、樹脂の着色を抑制する点から、アミド基含有アクリル系樹脂の加熱温度(反応温度)は380℃以下が好ましく、360℃以下がより好ましく、340℃以下がさらに好ましく、320℃以下が特に好ましい。
環化縮合工程では、アミド基含有アクリル系樹脂を脱揮することが好ましく、これにより、重合工程から持ち込まれた有機溶媒や、アミド基とエステル基との縮合反応により副生したアルコール等を除去することができる。特に、アミド基とエステル基との縮合反応により副生したアルコールを除去することにより、アミド基とエステル基との縮合反応における反応平衡をイミド生成側に移行させ、得られるグルタルイミド樹脂のイミド化率を高めることが可能となる。
環化縮合工程では、効率的に脱揮を行う点から、アミド基含有アクリル系樹脂を減圧下で溶融することが好ましい。環化縮合工程での減圧は、例えば、絶対圧として80kPa以下とすることが好ましく、65kPa以下がより好ましく、50kPa以下がさらに好ましい。一方、減圧状態を実現するための設備が過剰仕様とならず、設備費を低く抑える点から、減圧する際の絶対圧は1kPa以上が好ましく、10kPa以上がより好ましく、20kPa以上がさらに好ましい。なお環化縮合工程での減圧は、環化縮合工程の少なくとも一部で実現されればよい。例えば、環化縮合工程の最後に減圧を行うことで、重合工程から持ち込まれた有機溶媒と、アミド基とエステル基との縮合反応により副生したアルコール等をまとめて脱揮してもよいし、環化縮合工程の最初に減圧を行うことで、重合工程から持ち込まれた有機溶媒を先に脱揮してもよい。また、環化縮合工程の全体にわたって減圧を行ってもよい。
環化縮合工程の時間(加熱時間)は、イミド化反応を十分に行う点から、10秒間以上が好ましく、30秒間以上がより好ましい。当該時間の上限は、環化縮合反応の進行度合を見ながら適宜設定すればよく、一義的に定められるものではないが、グルタルイミド樹脂の製造効率を勘案すれば、例えば60分以下が好ましく、30分以下がより好ましく、15分以下がさらに好ましい。
環化縮合反応に当たっては、触媒を用いることが好ましい。触媒は、アミド基含有アクリル系樹脂の溶融に先立って、アミド基含有アクリル系樹脂に添加することが好ましい。環化縮合反応の触媒としては、酸、塩基およびそれらの塩からなる群より選ばれた少なくとも1種を用いることができる。酸、塩基およびそれらの塩の種類は、特に限定されない。
酸としては、例えば、塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸、リン酸、亜リン酸、フェニルホスホン酸、リン酸メチル等が挙げられる。塩基としては、例えば、金属水酸化物、アミン、イミン、金属アルコキシド、水酸化アンモニウム塩等が挙げられる。酸および塩基の塩としては、例えば、酢酸金属塩、ステアリン酸金属塩等の有機酸金属塩;炭酸金属塩等が挙げられる。これらの触媒の中では、少量で優れた反応促進効果を示すことから、アルカリ金属を有する化合物が好ましい。アルカリ金属を有する化合物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムフェノキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムフェノキシド等のアルカリ金属アルコキシド;酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム等の有機酸アルカリ金属塩等が挙げられる。これらのアルカリ金属を有する化合物の中では、水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、酢酸リチウムおよび酢酸ナトリウムが好ましく、ナトリウムメトキシドおよび酢酸リチウムがより好ましい。
触媒の量は特に限定されないが、得られるグルタルイミド樹脂に着色などの悪影響を及ぼさず、グルタルイミド樹脂の透明性が低下しない範囲内で使用することが好ましい。触媒の量は、例えば、アミド基含有アクリル系樹脂100質量部に対して、0.01〜1質量部程度であることが好ましい。
イミド化反応を行う反応器は、バッチ式反応器でも連続式反応器でもよいが、反応器内の揮発成分等を放出するためのベントが設けられていることが好ましい。ベントは、単なる開放口であってもよいが、真空ポンプ等の減圧手段が連通して設けられていることが好ましい。
バッチ式反応器としては、撹拌手段を備えた圧力容器等を用いることができ、例えば、横型二軸反応装置(住友重機械工業社製、商品名:バイボラック)、竪型同心二軸撹拌槽(住友重機械工業社製、商品名:スーパーブレンド)等の高粘度に対応することができる反応器を用いることが好ましい。
連続式反応器としては、押出機等を用いることができる。押出機は、シリンダと、シリンダ内に設けられたスクリューとを有し、加熱手段を備えていることが好ましい。押出機は、スクリューの本数に応じて、単軸押出機、二軸押出機、多軸押出機等の種類が存在するが、アミド基含有アクリル系樹脂を効率よく混合することができることから、二軸押出機を用いることが好ましい。二軸押出機としては、例えば、非噛合い型同方向回転式二軸押出機、噛合い型同方向回転式二軸押出機、非噛合い型異方向回転式二軸押出機、噛合い型異方向回転式二軸押出機等が挙げられる。これらの押出機は、それぞれ単独で用いてもよく、2機以上を直列に接続してもよい。二軸押出機の中でも、噛合い型同方向回転式二軸押出機は、高速回転が可能であり、効率よく混合することができるため好ましい。
押出機には、重合工程から持ち込まれた有機溶媒やアミド基とエステル基との縮合反応により副生したアルコール等を除去(脱揮)するために、ベントが備えられることが好ましい。ベントは、大気圧以下に減圧させることができるものであることが好ましい。ベントの数は、1つだけであってもよく、複数であってもよい。ベントは、アミド基含有アクリル系樹脂の押出機内での移送方向に対して、少なくとも、原料投入部(アミド基含有アクリル系樹脂が反応器内に供給される箇所)の下流側に設けられることが好ましく、原料投入部の上流側にも設けられてもよい。
アミド基含有アクリル系樹脂のイミド化は、アミド基含有アクリル系樹脂を押出機の原料投入部から供給し、アミド基含有アクリル系樹脂を加熱して溶融させ、シリンダ内に充満させることにより、行うことができる。この際、押出機内に供給されたアミド基含有アクリル系樹脂を、スクリューで混練しながら押出機の上流側から下流側へ移送される過程でイミド化反応が進み、押出機の下流側からグルタルイミド樹脂が排出される。押出機の下流側には、押出機からグルタルイミド樹脂を吐出するダイス部が設けられていることが好ましく、ダイス部からグルタルイミド樹脂を吐出することにより、所定の形状(フィルム状や棒状)に成形することができる。例えば、棒状に成形されたグルタルイミド樹脂を細かく切断すれば、ペレットを製造することができる。
なお、押出機を用いて環化縮合工程を実施する場合、減圧度(減圧の際の圧力)は、ベントにおける吸引圧を意味する。また、環化縮合工程の時間は、押出機がイミド化反応のみを行うものである場合、原料投入部から排出部(ダイス部)までの滞留時間を意味する。
本発明のグルタルイミド樹脂の製造方法によれば、アミド基を有するアクリル系単量体とエステル基を有するアクリル系単量体を共重合させて得られたアミド基含有アクリル系樹脂を、溶融状態で環化縮合反応させることにより、アミド基含有アクリル系樹脂の有するアミド基の求核性が低い場合でも、環化縮合反応を好適に進行させることができ、複屈折の小さいグルタルイミド樹脂を容易に得ることができる。そして、イミド化剤としてアミンを用いる必要がないため、得られるグルタルイミド樹脂のアミン含有量を低いものとすることができる。また、炭酸ジメチル等のエステル化剤を用いたエステル化工程を行わなくても、酸価の小さいグルタルイミド樹脂を容易に得ることができる。
次に本発明のグルタルイミド樹脂について説明する。本発明のグルタルイミド樹脂は、応力光学係数(Cr)の絶対値が0.3×10-9Pa-1以下であり、酸価が0.5mmol/g以下であり、アミン含有量が50ppm(質量基準)未満であるものである。本発明のグルタルイミド樹脂は、上記に説明した製造方法により容易に製造することができる。本発明のグルタルイミド樹脂は、応力光学係数(Cr)の絶対値が0.3×10-9Pa-1以下であるため、複屈折の小さいものとなる。また、酸価が0.5mmol/g以下であり、アミン含有量が50ppm(質量基準)未満であるため、湿熱下での耐久性に優れ、成形加工時にアミンに由来する臭気の発生を抑えることができる。
グルタルイミド樹脂の応力光学係数(Cr)の絶対値は、当該樹脂を延伸させて得られる延伸フィルムの屈折率の異方性を抑制し、複屈折を小さくする観点から、0.2×10-9Pa-1以下がより好ましい。グルタルイミド樹脂の応力光学係数(Cr)は、実施例に記載の方法に基づき求める。
グルタルイミド樹脂の酸価は、湿熱下での耐久性を向上させる観点から、0.3mmol/g以下であることが好ましく、0.2mmol/g以下がより好ましく、0.1mmol/g以下がさらに好ましい。グルタルイミド樹脂の酸価は、実施例に記載の方法に基づき求める。
グルタルイミド樹脂のアミン含有量は、成形加工時の臭気を低減する点から、30ppm(質量基準)未満がより好ましく、20ppm(質量基準)未満がさらに好ましい。グルタルイミド樹脂のアミン含有量は、実施例に記載の方法に基づき求める。なお、グルタルイミド樹脂のアミン含有量は、グルタルイミド樹脂のイミド基に対応したアミン化合物の含有量を意味し、グルタルイミド樹脂に含まれ得るエステル基との反応により副生するN置換体のアミン化合物も含むものとする。例えば、ポリメタクリル酸メチルとアニリンとからグルタルイミド樹脂を製造する場合を想定すると、グルタルイミド樹脂には、アミンとして、残存のアニリンに加え、N−メチルアニリンとN,N−ジメチルアニリンの2種が副生する。従って、イミド基の窒素原子がフェニル基で置換されたグルタルイミド単位とメタクリル酸メチル由来の繰り返し単位を有するグルタルイミド樹脂の場合は、アミン含有量は、アニリンとN−メチルアニリンとN,N−ジメチルアニリンの合計含有量を意味する。
グルタルイミド樹脂は、アミジン含有量が30ppm(質量基準)未満であることが好ましく、20ppm(質量基準)未満がより好ましく、10ppm(質量基準)未満がさらに好ましい。グルタルイミド樹脂は通常、その残存カルボン酸基や酸無水物基を、ジアザビシクロウンデセン等のアミジンを触媒として用いてエステル化して酸価を低減することが多いが、本発明では、アクリル酸などのカルボン酸基含有単量体を必須としなくてもグルタルイミド樹脂を製造可能であり、またアミジンなどのエステル化触媒の使用を必須としなくても、酸価を低減できる。そのためアミジンの含有量を低減することができる。アミジンを減らすと、グルタルイミド樹脂は臭気の点でさらに改善される。さらにアミジンを減らすことで、樹脂の着色も抑制できる。これらの点から、本発明のグルタルイミド樹脂は、アミジン含有量が30ppm(質量基準)未満であることが好ましい。
グルタルイミド樹脂のアミジン含有量は、実施例に記載の方法に基づき求める。なお、グルタルイミド樹脂のアミジン含有量は、エステル化触媒としてのアミジン化合物の含有量を意味し、エステル化触媒としてのアミジン化合物としては、通常、ジアザビシクロウンデンセンやジアザビシクロノネンが用いられる。従って、本発明におけるアミジン含有量は、ジアザビシクロウンデンセンとジアザビシクロノネンとを合わせた含有量を意味するものとする。
グルタルイミド樹脂は、着色の少ないものとする点から、10質量%THF(テトラヒドロフラン)溶液としたときの波長390nmの吸光度が1.3以下であることが好ましく、1.0以下がより好ましく、0.7以下がさらに好ましく、0.4以下が特に好ましい。例えば、エステル化触媒としてジアザビシクロウンデセンを用いた場合、波長390nm付近に吸光度のピークが現れ、これに基づきグルタルイミド樹脂の着色が起こりやすくなるが、本発明のグルタルイミド樹脂によれば、酸価を低減するためにエステル化触媒の使用を必須としていないため、波長390nm付近での吸光が抑えられ、樹脂の着色が低減されたものとなる。なお、吸光度は光路長1cmのセルを用いて測定し、詳細は実施例の記載に基づく。
グルタルイミド樹脂は、主鎖にグルタルイミド構造を有するものであれば、それ以外の構造は特に限定されないが、下記式(1)で表される繰り返し単位(以下、「グルタルイミド単位」と称する場合がある)を有していることが好ましい。
式(1)のグルタルイミド単位において、R1、R2、R3、R4およびR5は上記と同じ意味を表す。すなわち、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表し、R5は、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基または環構造を有する基を表す。式(1)のグルタルイミド単位としては、R1、R2、R3およびR4が、水素原子またはメチル基であることが好ましく、R1とR3が水素原子で、R2とR4が水素原子またはメチル基であることがより好ましく、これにより、グルタルイミド樹脂をフィルム化して光学フィルムを製造した際に、複屈折の小さい光学フィルムを得やすくなり、グルタルイミド樹脂の製造も容易になる。またR5が、炭素数3〜12のシクロアルキル基または炭素数6〜10のアリール基であることが好ましく、炭素数6〜10のアリール基であることがより好ましく、これにより、応力光学係数(Cr)の絶対値が小さいグルタルイミド樹脂を得やすくなる。
グルタルイミド樹脂は、式(1)のグルタルイミド単位を、1種のみを含んでいてもよく、2種類以上含んでいてもよい。
グルタルイミド樹脂は、式(1)のグルタルイミド単位に加え、下記式(2)で表される繰り返し単位(以下、「α,β−不飽和カルボン酸エステル由来の単位」と称する場合がある)を有していることが好ましい。
式(2)のα,β−不飽和カルボン酸エステル由来の単位において、R6およびR7は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。R6およびR7の炭素数1〜8のアルキル基としては、R1およびR2の炭素数1〜8のアルキル基として例示したアルキル基が挙げられる。なかでも、R6およびR7としては、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、これにより、応力光学係数(Cr)の絶対値を小さいグルタルイミド樹脂を得やすくなり、またグルタルイミド樹脂をフィルム化して光学フィルムを製造した際に、複屈折の小さい光学フィルムを得やすくなる。グルタルイミド樹脂の製造容易性の点からは、R6およびR7は、水素原子またはメチル基であることが好ましく、R6が水素原子で、R7が水素原子またはメチル基であることがより好ましい。
式(2)のα,β−不飽和カルボン酸エステル由来の単位において、R8は上記と同じ意味を表す。すなわち、R8は、炭素数1〜18のアルキル基または環構造を有する基を表す。R8としては、炭素数1〜18のアルキル基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がさらに好ましく、メチル基、エチル基またはn−ブチル基がさらにより好ましく、メチル基またはエチル基が特に好ましく、これによりイミド化反応を進めやすくなる。
グルタルイミド樹脂は、式(2)のα,β−不飽和カルボン酸エステル由来の単位を、1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
グルタルイミド樹脂が、式(1)のグルタルイミド単位に加え、式(2)のα,β−不飽和カルボン酸エステル由来の単位を有していれば、グルタルイミド樹脂の耐熱性や透明性を高めやすくなるとともに、複屈折を小さくすることが容易になる。すなわち、このグルタルイミド樹脂は、グルタルイミド単位に基づき弱い正の複屈折を示し、α,β−不飽和カルボン酸エステル由来の単位に基づき弱い負の複屈折を示し、両者の複屈折が互いに打ち消しあうので、全体として低複屈折を示すものとなる。また、フィルム等への成形性が向上し、機械的強度を高めやすくなる。
グルタルイミド樹脂は、式(1)のグルタルイミド単位の含有率が5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、また85質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、75質量%以下がさらに好ましい。式(1)のグルタルイミド単位の含有率が5質量%以上であれば、耐熱性および透明性が向上し、複屈折を小さくすることが容易になる。グルタルイミド単位の含有率が85質量%以下であれば、フィルム等への成形性が向上し、機械的強度を高めやすくなり、また複屈折を小さくすることが容易になる。
グルタルイミド樹脂は、式(2)のα,β−不飽和カルボン酸エステル由来の単位の含有率が15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上がより好ましく、25質量%以上がさらに好ましく、また95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下がさらに好ましい。α,β−不飽和カルボン酸エステル由来の単位の含有率が15質量%以上であれば、フィルム等への成形性が向上し、機械的強度を高めやすくなり、また複屈折を小さくすることが容易になる。α,β−不飽和カルボン酸エステル由来の単位の含有率が95質量%以下であれば、耐熱性および透明性が向上し、複屈折を小さくすることが容易になる。
式(1)のグルタルイミド単位と式(2)のα,β−不飽和カルボン酸エステル由来の単位とアミド基を有するアクリル系単量体由来の単位の含有比率は、1H−NMRにて求めることができる。具体的には、アミド基を有するアクリル系単量体由来の単位のアミドプロトンと、アミド基を有するアクリル系単量体由来および式(1)のN上の置換基R5のプロトンと、式(2)のエステル基の酸素に隣接した炭素上のプロトンの比から、アミド基を有するアクリル系単量体由来の単位と式(1)と式(2)の各単位の含有比率を求めることができる。さらに、グルタルイミド樹脂の酸価およびグルタルイミド樹脂中のカルボン酸基をメチル化した後の酸価を測定することで、グルタルイミド樹脂中のカルボン酸基含有単位と酸無水物基含有単位の含有比率を求めることができる。これらを総合することで、式(1)と式(2)、アミド基を有するアクリル系単量体由来の単位、カルボン酸基含有単位と酸無水物基含有単位の各単位の含有率を求めることができる。
グルタルイミド樹脂には、式(1)のグルタルイミド単位と式(2)のα,β−不飽和カルボン酸エステル由来の単位以外の繰り返し単位が含まれていてもよい。なお、グルタルイミド樹脂は、グルタルイミド単位とα,β−不飽和カルボン酸エステル由来の単位を主成分として含むことが好ましく、従って、グルタルイミド樹脂中、グルタルイミド単位とα,β−不飽和エステル由来の単位とを合わせた含有率は、50質量%以上となることが好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、95質量%以上が特に好ましい。グルタルイミド樹脂は、例えば繰り返し単位としてスチレン由来の単位を有していてもよいが、応力光学係数(Cr)の絶対値が小さいグルタルイミド樹脂が得やすくなる点から、スチレン由来の単位はあまり多く含まないことが好ましい。従って、グルタルイミド樹脂中のスチレン由来の単位の含有率は5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。
グルタルイミド樹脂は、ガラス転移温度が130℃以上であることが好ましく、135℃以上がより好ましく、140℃以上がさらに好ましい。グルタルイミド樹脂がこのようなガラス転移温度を有していれば、グルタルイミド樹脂を、耐熱性が求められる用途、例えば画像表示装置やレンズ材料等の用途への適用が可能となる。なお、グルタルイミド樹脂のガラス転移温度の上限については、フィルム等への成形加工性を向上させる点から、250℃以下が好ましく、230℃以下がより好ましく、210℃以下がさらに好ましく、200℃以下が特に好ましい。グルタルイミド樹脂のガラス転移温度は、実施例に記載の方法に基づき求める。
グルタルイミド樹脂の重量平均分子量は、フィルム等へ成形加工した際の機械的強度を高める観点から、10,000以上が好ましく、30,000以上がより好ましく、また、フィルム等へ成形する際の加工性を向上させる観点から、500,000以下が好ましく、300,000以下がより好ましい。グルタルイミド樹脂の重量平均分子量は、実施例に記載の方法に基づき求める。
グルタルイミド樹脂は、成形加工性を向上させる点から、厚さ200μmの未延伸フィルムに成形したときの吸水率が、3.0%以下であることが好ましく、2.5%以下がより好ましく、2.0%以下がさらに好ましい。吸水率は、実施例に記載の方法に基づき求める。
グルタルイミド樹脂は、透明性を高める点から、厚さ100μmの未延伸フィルムに成形したときのヘイズが、3.0%以下であることが好ましく、2.0%以下がより好ましく、1.0%以下がさらに好ましい。ヘイズは、実施例に記載の方法に基づき求める。
グルタルイミド樹脂は、光学フィルムへの適用を想定した場合、できるだけ無色に近いことが好ましく、従ってグルタルイミド樹脂は、厚さ100μmの未延伸フィルムに成形したときのb*値が、5.0以下であることが好ましく、3.0以下がより好ましく、2.0以下がさらに好ましい。b*値は、実施例に記載の方法に基づき求める。
グルタルイミド樹脂は、他の熱可塑性樹脂と共に用いてもよく、例えば、ポリマーブレンドやポリマーアロイにしてもよい。他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)等のオレフィン重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル等のハロゲン化ビニル重合体;ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系重合体;ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体等のスチレン系重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等のセルロースアシレート;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610等のポリアミド;ポリアセタール;ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリオキシベンジレン;ポリアミドイミド;ポリブタジエン系ゴムあるいはアクリル系ゴムを配合したABS樹脂、ASA樹脂等のゴム質重合体等が挙げられる。
グルタルイミド樹脂は、種々の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等の酸化防止剤;耐光安定化剤、耐候安定化剤、熱安定化剤等の安定化剤;ガラス繊維、炭素繊維等の補強材;近赤外線吸収剤;紫外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモン等の難燃化剤;アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン界面活性剤等の帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料等の着色剤;有機充填材、無機充填材等の充填材;樹脂改質剤;可塑剤;滑剤等が挙げられる。
本発明のグルタルイミド樹脂は、例えば、食品分野、医療分野、電子・電気分野、光学分野、民生分野、土木建築分野などの各種用途に用いることができる。なかでも、電子・電気分野、光学分野などの用途に好適に用いることができる。電子・電気分野の用途としては、例えば、フレキシブルプリント基板用フィルム、フィルムコンデンサー、高周波回路基板フィルム、アンテナ基板フィルム、電池セパレーター用フィルム、離型フィルム等の電気・電子部品が挙げられる。光学分野の用途としては、例えば、位相差フィルム、偏光フィルム、光拡散シート、集光シート、光カード、タッチパネル基板フィルム、フレキシブルディスプレイ基板フィルム等の光学フィルムや、カメラ用レンズ、赤外線等のセンサー用レンズ、光ピックアップレンズ等のレンズ等が挙げられる。なかでもグルタルイミド樹脂は、光学フィルムやレンズ等の光学デバイスの材料として好適に使用することができる。
光学フィルムやレンズ等は、グルタルイミド樹脂を用い、例えば、Tダイ法、インフレーション法等の溶融押出成形法、射出成形法、キャスト成形法、プレス成形法等によって製造することができる。溶融押出法によって光学フィルムを製造する場合は、例えば、単軸押出機、二軸押出機等を用いることができる。
光学フィルムは、機械的強度を高めたり、所定の位相差を達成する観点から、一軸延伸または二軸延伸されていることが好ましく、二軸延伸されていることがより好ましい。つまり、光学フィルムは、一軸延伸フィルムまたは二軸延伸フィルムであることが好ましく、二軸延伸フィルムであることがより好ましい。本発明の光学フィルムを二軸延伸させる方法としては、例えば、逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法等が挙げられる。
光学フィルムを延伸させる際の延伸温度は、破断させずに光学フィルムを延伸させるとともに、十分に分子配向させる観点から、グルタルイミド樹脂のガラス転移温度よりも20℃低い温度から当該ガラス転移温度よりも50℃高い温度までの温度範囲であることが好ましく、より好ましくはグルタルイミド樹脂のガラス転移温度よりも10℃低い温度から当該ガラス転移温度よりも30℃高い温度までの温度範囲である。
光学フィルムの延伸倍率は、縦方向および当該縦方向に直交する横方向のいずれの方向においても、機械的強度を高めたり、位相差を調整する観点から、それぞれ、1.5〜3倍程度であることが好ましく、1.5〜2.5倍程度であることがより好ましい。
延伸された光学フィルム(延伸光学フィルム)の寸法変化率は、例えばITOフィルム等の二次加工が施されたフィルムの耐久性を向上させる観点から、1.0%以下であることが好ましく、0.7%以下がより好ましく、0.5%以下がさらに好ましく、0.2%以下が特に好ましい。光学フィルムの寸法変化率は、実施例に記載の方法に基づき求める。
光学フィルムの厚さは、その用途によって異なるので一概には定めることはできない。例えば、光学フィルムを、液晶表示装置、有機EL表示装置などの画像表示装置に用いられる保護フィルム、反射防止フィルム、偏光フィルム等の用途に用いる場合には、当該光学フィルムの厚さは、1μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、20μm以上がさらに好ましく、また250μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、80μm以下がさらに好ましい。また、例えば、光学フィルムをITOフィルム、銀ナノワイヤーフィルム、メタルメッシュフィルム等に用いられる透明導電性フィルム等の用途に用いる場合には、当該光学フィルムの厚さは、20μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、40μm以上がさらに好ましく、また400μm以下が好ましく、350μm以下がより好ましく、300μm以下がさらに好ましい。
光学フィルムの面内位相差Reは、光学フィルムの屈折率の異方性を抑制し、複屈折を小さくする観点から、20nm以下が好ましく、10nm以下がより好ましく、5nm以下がさらに好ましく、3nm以下が特に好ましい。また、光学フィルムの厚さ方向位相差Rthの絶対値は、面内位相差Reと同様に、光学フィルムの屈折率の異方性を抑制し、複屈折を小さくする観点から、20nm以下が好ましく、10nm以下がより好ましく、5nm以下がさらに好ましく、3nm以下が特に好ましい。例えば、上記に説明した応力光学係数(Cr)の絶対値を0.3×10-9Pa-1以下に制御することにより、二軸延伸後における光学フィルムの厚さ方向位相差Rthの絶対値を20nm以下とすることができる。
光学フィルムの面内位相差Reおよび厚さ方向位相差Rthは、位相差フィルム・光学材料検査装置(大塚電子社製、RETS−100)を用い、波長590nmの光で、入射角40°の条件で測定することにより求める。光学フィルムの面内位相差Reは、式:Re=(nx−ny)×d(式中、nxは波長590nmの光に対する遅相軸方向(光学フィルムの面内において最大の屈折率を示す方向)の屈折率、nyは進相軸方向(光学フィルムの面内におけるnxと垂直な方向)の屈折率、dは光学フィルムの厚さ(nm)を表す)に基づいて求められる。また、厚さ方向位相差Rthは、式:Rth={(nx+ny)/2−nz}×d(式中、nxは波長590nmの光に対する遅相軸方向の屈折率、nyは進相軸方向の屈折率、nzはフィルムの厚さ方向の屈折率、dはフィルムの厚さ(nm)を表す)に基づいて求められる。
光学フィルムの光弾性係数の絶対値は、光漏れ、特に高温高湿度の環境下における光漏れを抑制する観点から、10×10-12Pa-1以下が好ましく、6×10-12Pa-1以下がより好ましい。光学フィルムの光弾性係数は次の方法に従い求める。すなわち、光学フィルムの延伸方向を長辺として20mm×50mmに切り出してサンプルを作製し、このサンプルをエリプソメーター(日本分光社製、M−150)の光弾性計測ユニットに装着し、延伸方向と平行に5〜25Nの応力荷重を印加しながら複屈折を3点で計測し、波長590nmの光を用い、応力に対する複屈折の傾きを光弾性係数として求める。
光学フィルムの60〜100℃の温度範囲における線膨張係数は、高温環境下における寸法変化を抑制する観点から、80×10-6K-1以下が好ましく、70×10-6K-1以下がより好ましい。光学フィルムの60〜100℃における線膨張係数は、熱機械測定装置(島津製作所社製、TMA−60)を用い、測定荷重5g、昇温速度5℃/minで、60℃から100℃に昇温する際の傾きとして求める。なお、測定用のサンプルは、光学フィルムを延伸方向を長辺として5mm×20mmの大きさに切り出し、これを60℃で15時間の前処理を行った後、室温まで冷却することにより調製する。
光学フィルムの吸水率は、例えばITOフィルムへの成形加工性を向上させる観点から、3.0%以下であることが好ましく、2.5%以下がより好ましく、2.0%以下がさらに好ましい。光学フィルムの吸水率は次の方法により求める。すなわち、光学フィルムを80℃で24時間乾燥させた後、その質量Xを測定する。次に、乾燥後の光学フィルムを85℃、相対湿度85%の恒温槽内で保管することによって吸水させ、250時間経過後に恒温槽から取り出し、吸水後の光学フィルムの質量Yを測定する。測定した質量X,Yの値から、式:{(Y−X)/X}×100に基づき、吸水率を求める。
光学フィルムは透明性が高いことが好ましく、従って、ヘイズが3.0%以下であることが好ましく、2.0%以下がより好ましく、1.0%以下がさらに好ましい。ヘイズは、実施例に記載の方法に基づき求める。ヘイズは、濁度計(日本電色工業製、NDH−5000)を用いて、JIS K 7136の規定に準拠して求める。
光学フィルムはできるだけ無色に近いことが好ましく、従って、b*値が5.0以下であることが好ましく、3.0以下がより好ましく、2.0以下がさらに好ましい。b*値は、実施例に記載の方法に基づき求める。b*値は、分光色差計(日本電色工業製、SE−6000)を用いて、JIS Z 8730の規定に準拠して求める。
光学フィルムには、必要に応じて、少なくとも一方の表面にコーティング層が形成されていてもよい。コーティング層としては、例えば、帯電防止層、粘着剤層、接着剤層、易接着層、防眩(ノングレア)層、光触媒層、防汚層、反射防止層、ハードコート層、紫外線遮蔽層、熱線遮蔽層、電磁波遮蔽層、ガスバリヤー層等が挙げられる。
光学フィルムは、例えば、光ディスクの保護フィルム、液晶表示装置等の画像表示装置の偏光板に用いられる偏光子保護フィルム、位相差フィルム、視野角補償フィルム、光拡散フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、輝度向上フィルム、タッチパネル用導電フィルム、拡散板、導光体、プリズムシート等の用途に用いることが期待されるものである。従って、光学フィルムは、例えば、液晶表示装置等の画像表示装置等の用途に好適に使用することができる。
光学フィルムの表面に透明導電層が形成された光学フィルムは、透明導電性フィルムとして用いることができる。透明導電層としては、例えば、インジウム−スズ系酸化物(ITO)層等の赤外線を反射する性質を有する無機化合物層、銀、銅、ニッケル、タングステン等の金属からなる金属メッシュ層などが挙げられる。透明導電層は、光学フィルムの少なくとも一方面に形成されればよい。
光学フィルムの表面には光学調整層が形成されていてもよい。光学調整層は、入射される光線の透過率または反射率を適宜調整するための層である。光学調整層は、例えば、特開2006−201450号公報などに記載されているように、屈折率が相対的に低い低屈折率層と屈折率が相対的に高い高屈折率層とを交互に積層させることによって形成させることができる。
本願は、2015年3月23日に出願された日本国特許出願第2015−059250号と2015年9月18日に出願された日本国特許出願第2015−185794号に基づく優先権の利益を主張するものである。2015年3月23日に出願された日本国特許出願第2015−059250号と2015年9月18日に出願された日本国特許出願第2015−185794号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
以下に、実施例を示すことにより本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは全て本発明の技術的範囲に包含される。
(1) 分析方法
(1−1) 重量平均分子量
樹脂の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン換算により求めた。測定に用いた装置および測定条件は以下の通りである。
−システム:東ソー社製、商品名:GPCシステムHLC−8220
−測定側カラム構成:ガードカラム(東ソー社製、TSKguardcolumn SuperHZ−L)、分離カラム(東ソー社製、TSKgel SuperHZM−Mを2本接続)
−リファレンス側カラム構成:リファレンスカラム(東ソー社製、TSKgel SuperH−RC)
−展開溶媒:テトラヒドロフラン(和光純薬工業社製、特級)
−溶媒流量:0.6mL/分
−標準試料:TSK標準ポリスチレン(東ソー社製、PS−オリゴマーキット)
−カラム温度:40℃
(1−2) ガラス転移温度(Tg)
ガラス転移温度は、JIS K 7121の規定に準拠して求めた。具体的には、示差走査熱量計(リガク社製、Thermo plus EVO DSC−8230)を用い、窒素ガス雰囲気下、約10mgのサンプルを常温から200℃まで昇温(昇温速度20℃/分)して得られたDSC曲線から、始点法により評価した。リファレンスには、α−アルミナを用いた。
(1−3) 式(2)で表される繰り返し単位の含有率
グルタルイミド樹脂において、式(2)で表される繰り返し単位の含有率は、NMR測定装置(Varian社製、Unity Plus400)を用いて1H−NMRスペクトルを測定することによって求めた。具体的には、重アセトンにグルタルイミド樹脂(質量:a)と、内標として1,1,2,2−テトラクロロエタン(分子量:167.85、質量:b)を溶解させ、内標(5.9ppm、2プロトン分)とエステルカルボニル基に隣接したR8のプロトンに由来するピークの面積比、すなわちエステルカルボニル基に隣接したR8のプロトンに由来するピーク面積Aと内標プロトンに由来するピーク面積Bとの比(ピーク面積A/ピーク面積B)から、式(2)で表される繰り返し単位の含有率を算出した。
例えば、式(2)で表される繰り返し単位のR6が水素原子であり、R7がメチル基であり、R8がメチル基である場合(繰り返し単位の分子量は100.12)、式(2)で表される繰り返し単位の含有率(質量%)は、式:{(ピーク面積A/ピーク面積B)×(2/3)×(b/167.85)×(1/100.12)}×(100/a)から算出することができる。
(1−4) アミド単位残存率
グルタルイミド樹脂のアミド単位残存率は、NMR測定装置(Varian社製、Unity Plus400)を用いて1H−NMRスペクトルを測定することによって求めた。具体的には、重アセトンにグルタルイミド樹脂を溶解させ、アミド単位のN上のプロトンに由来するピーク面積Cと、イミド構造のN上の置換基R5のプロトンに由来するピーク面積Dとの比(ピーク面積C/ピーク面積D)から、アミド単位残存率を計算した。
例えば、イミド構造のN上の置換基R5がフェニル基である場合、対応するアミド単位のN上のプロトンとフェニル基のプロトン比は1/5であるため、アミド単位残存率は、式:{(ピーク面積C/ピーク面積D)−1/5}/(1/5)×100から算出することができる。
(1−5) 応力光学係数(Cr)
グルタルイミド樹脂のペレットを、手動式加熱プレス機(井元製作所社製、IMC−180C型)を用い、250℃の温度で40MPaの圧力にて2分間溶融プレス成形し、厚さが100μmの未延伸フィルムを作製した。未延伸フィルムを60mm×20mmの長方形に切り出し、1N/mm2以下の応力となるように重りを選択し、未延伸フィルムの下端に取り付けた。この未延伸フィルムを、グルタルイミド樹脂のガラス転移温度よりも3℃高い温度で定温乾燥機(アズワン社製、DOV−450A)にチャック間距離40mmでセットし、当該温度で約30分間保持して延伸を行った後、加熱を停止し、グルタルイミド樹脂のガラス転移温度よりも40℃低い温度となるまで約1℃/分の冷却速度で冷却した。その後、得られた延伸フィルムを定温乾燥機から取り出し、延伸後のフィルムの長さと厚さ、および重りの質量を測定し、延伸後のフィルムの面内位相差Reを測定した。さらに、応力が1N/mm2以下となるように4種類の質量の重りを用いて前記と同様にして延伸後のフィルムの長さと厚さ、および重りの質量を測定し、延伸後のフィルムの面内位相差Reを測定した。
以上の結果に基づき、高分子学会編「透明プラスチックの最前線(ポリマーフロンティア21シリーズ)」、(株)エヌ・ティー・エス、2006年10月、37−44頁に記載の測定方法に基づいて応力光学係数(Cr)を算出した。具体的には、Δn(nx−ny)をy軸に、σをx軸にプロットし、最小二乗法で得られた直線の傾きを求め、その傾きの値を応力光学係数(Cr)とした。なお、nxはフィルムの面内における遅相軸方向(フィルム面内において最大の屈折率を示す方向)の屈折率を表し、nyはフィルムの面内における進相軸方向(フィルム面内においてnxと垂直な方向)の屈折率を表し、σは延伸に対する応力(N/m2)を表す。
(1−6) アミン含有量およびアミジン含有量
グルタルイミド樹脂のアミン含有量とアミジン含有量は、ガスクロマトグラフィー(島津製作所社製、GC2010)を用いて求めた。メチルアミン(水溶液)、ジメチルアミン(水溶液)、トリメチルアミン(水溶液)、アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)のそれぞれとトリデカンをアセトンに溶解させた検量線溶液を調製し、それらをガスクロマトグラフィーで測定し、ピーク面積から検量線を作成した。次いで、グルタルイミド樹脂とトリデカンをアセトンに溶解させたサンプル溶液を調製し同様に測定した。内部標準法により、アミンおよびアミジンの樹脂中の含有量を求めた。測定条件は以下の通りである。
−カラム:RESTEK Rxi−624Sil MS 0.25mmID 30m
−温度:40℃(5分保持)+40℃〜310℃(10℃/分)+310℃(10分保持)
−注入口温度:250℃
−検出器温度:315℃
−キャリアガス:ヘリウム(カラム流量1.27mL/分)
−注入量:1.0μL
−内部標準試料:トリデカン
−希釈溶剤:アセトン
(1−7) 酸価
塩化メチレン24.94gにグルタルイミド樹脂0.15gを溶解させ、メタノール14.85gを添加し、3時間撹拌した。その後、この溶液に1質量%フェノールフタレインエタノール溶液を2滴添加し、撹拌しながら、0.1N水酸化ナトリウム水溶液を加え、室温で1時間撹拌を継続し、このときの0.1N水酸化ナトリウム水溶液の使用量をA(mL)とした。この溶液に0.1N塩酸を滴下して溶液の赤紫色が消失するまでの0.1N塩酸の滴下量B(mL)を測定した。次に、塩化メチレン24.94gとメタノール14.85gの混合液に1質量%フェノールフタレインエタノール溶液を2滴添加し、撹拌しながら、0.1N水酸化ナトリウム水溶液を加え、室温で1時間撹拌を継続し、このときの0.1N水酸化ナトリウム水溶液の使用量をC(mL)とした。この溶液に0.1N塩酸を滴下して溶液の赤紫色が消失するまでの0.1N塩酸の滴下量D(mL)を測定した。樹脂中に残存する酸成分の量(カルボキシル基および酸無水物基の合計量)、すなわち酸価を次式により求めた:酸価(mmol/g)=0.1×{(A−B)−(C−D)}/0.15。
(1−8) 吸光度
吸光度は、グルタルイミド樹脂のテトラヒドロフラン(THF)溶液(樹脂濃度10質量%)を厚さ1cmのセルに入れ、分光光度計(島津製作所社製、UV−3100)を用いて、波長200nm〜800nmの範囲で測定し、そのうちの波長390nmでの測定値を用いて算出した。
(1−9) 吸水率
グルタルイミド樹脂のペレットを、手動式加熱プレス機(井元製作所社製、IMC−180C型)を用い、250℃の温度で20MPaの圧力にて2分間溶融プレス成形し、厚さが200μmの未延伸フィルムを作製した。得られた未延伸フィルムを80℃で24時間乾燥させた後、その質量(X)を測定した。次に、前記で得られた未延伸フィルムを85℃、相対湿度85%の恒温槽内で保管することによって吸水させ、250時間経過後に恒温槽から取り出し、吸水後の未延伸フィルムの質量(Y)を測定した。未延伸フィルムの吸水率を次式により求めた:吸水率(%)={(Y−X)/X}×100。
(1−10) ヘイズ
グルタルイミド樹脂のペレットを、手動式加熱プレス機(井元製作所社製、IMC−180C型)を用い、250℃の温度で40MPaの圧力にて2分間溶融プレス成形し、厚さが100μmの未延伸フィルムを作製した。作製した未延伸フィルムのヘイズを、濁度計(日本電色工業製、NDH−5000)を用いて、JIS K 7136の規定に準拠して求めた。
(1−11) b*値
グルタルイミド樹脂のペレットを、手動式加熱プレス機(井元製作所社製、IMC−180C型)を用い、250℃の温度で40MPaの圧力にて2分間溶融プレス成形し、厚さが100μmの未延伸フィルムを作製した。作製した未延伸フィルムのb*値を、分光色差計(日本電色工業製、SE−6000)を用いて、JIS Z 8730の規定に準拠して求めた。
(1−12) 寸法変化率
溶融押出で得られた未延伸フィルムを96mm×96mmの大きさに切り出し、逐次二軸延伸機(東洋精機製作所社製、X−6S)を用い、Tg+20℃の温度にて240mm/分の延伸速度で縦方向(MD方向)および横方向(TD方向)の順にそれぞれ延伸倍率が2倍となるように逐次二軸延伸を行った。未延伸フィルムの二軸延伸を行った後、得られた延伸フィルムを速やかに試験装置から取り出して冷却することにより、厚さ40μmのフィルムを得て、これを裁断することにより、40mm×40mmの大きさのサンプル3枚を作製した。サンプルの四辺の長さ(La1、La2、La3、La4)をデジタルノギスで測定した。次に、前記サンプルを、温度85℃、相対湿度85%の恒温槽内で保管し、250時間経過後に恒温槽から取り出し、サンプルの四片の長さ(Lb1、Lb2、Lb3、Lb4)を再度測定した。サンプル3枚の各辺における寸法変化率を次式により求めた:寸法変化率(%)=|(Lb−La)/La|×100(式中、Laは試験前における一辺の長さ、Lbは試験後における一片の長さを表す)。求めたサンプル3枚の各辺の寸法変化率の平均値を求め、その各辺の平均値の和を4で除することにより、フィルムの寸法変化率とした。
(1−13) フィルムの厚さ
グルタルイミド樹脂を成形して得たフィルムの厚さは、デジマチックマイクロメーター(ミツトヨ社製)により求めた。
(2) グルタルイミド樹脂の製造
(2−1) 実施例1
撹拌装置、温度センサー、冷却管および窒素ガス導入管を備えた反応釜に、N−フェニルメタクリルアミド(PMAM)25質量部、メタクリル酸メチル(MMA)60質量部、トルエン56.5質量部、および酸化防止剤(ADEKA社製、商品名:アデカスタブ(登録商標、以下同)2112)0.05質量部を仕込み、反応釜内に窒素ガスを通じながら105℃まで昇温させた。昇温に伴う還流が始まった時点で、重合開始剤としてt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富社製、商品名:ルペロックス(登録商標、以下同)570)0.10質量部を反応釜内に添加するとともに、トルエン20.5質量部にt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富社製、商品名:ルペロックス570)0.21質量部を溶解させた溶液、およびメタクリル酸メチル15質量部をトルエン15.0質量部に溶解させた溶液を2時間かけて反応釜内に滴下しながら、約100〜107℃の還流下で溶液重合を行った。t−アミルパーオキシイソノナノエートとメタクリル酸メチルの滴下終了2時間後に、トルエン29.8質量部を加えて希釈し、さらに3時間後にt−アミルパーオキシオクトエート(アルケマ吉富社製、商品名:ルペロックス575)0.05質量部を添加し、2時間かけて熟成を行うことにより、重合体溶液を得た。得られた重合体溶液に含まれるアミド基含有アクリル系樹脂におけるN−フェニルメタクリルアミド由来の繰り返し単位の含有率は23.3質量%であった。また、当該アミド基含有アクリル系樹脂の重量平均分子量は20万であった。
次に、環化縮合反応の触媒(環化触媒)であるナトリウムメトキシド0.1質量部をメタノール9.9質量部に溶解させた触媒溶液を、約90〜100℃の温度で反応釜内の重合体溶液に滴下し、均一な触媒含有重合体溶液を得た。得られた触媒含有重合体溶液を、バレル温度270℃、回転数300rpm、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)、リアベント数が1個、フォアベント数が2個のベントタイプスクリュー二軸押出機(孔径:15mm、L/D:45)内に、樹脂量換算で300g/hの処理速度で導入し、この押出機内の脱揮を行い、軸内滞留時間3.6分間程度で押し出すことにより、透明なグルタルイミド樹脂のペレットを得た。得られたグルタルイミド樹脂は、式(1)において、R1とR3が水素原子、R2とR4がメチル基、R5がフェニル基である繰り返し単位と、式(2)において、R6が水素原子、R7がメチル基、R8がメチル基である繰り返し単位を有しており、重量平均分子量が17万、ガラス転移温度が144℃であった。グルタルイミド樹脂のN−フェニルメタクリルアミド由来のアミド単位残存率は0%、式(2)で表される繰り返し単位の含有率は66.9質量%、応力光学係数(Cr)は−0.17×10-9Pa-1、酸価は0.01mmol/g、アミン含有量とアミジン含有量は検出限界以下(10質量ppm未満)、吸水率は1.7%であった。
次に、得られたグルタルイミド樹脂のペレットを、単軸押出機(孔径:20mm、L/D:25)に入れ、Tダイ温度を275℃に調節し、コートハンガータイプTダイ(幅150mm)から溶融押出を行い、ロール温度145℃の冷却ロール上に吐出し、厚さ160μmの未延伸フィルムを作製した。このとき、アミン由来の強い臭気は発生しなかった。
(2−2) 実施例2
撹拌装置、温度センサー、冷却管および窒素ガス導入管を備えた反応釜に、N−フェニルメタクリルアミド(PMAM)32質量部、メタクリル酸メチル(MMA)54.4質量部、トルエン57.4質量部、および酸化防止剤(ADEKA社製、商品名:アデカスタブ2112)0.05質量部を仕込み、反応釜内に窒素ガスを通じながら105℃まで昇温させた。昇温に伴う還流が始まった時点で、重合開始剤としてt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富社製、商品名:ルペロックス570)0.107質量部を反応釜内に添加するとともに、トルエン22.6質量部にt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富社製、商品名:ルペロックス570)0.226質量部を溶解させた溶液、およびメタクリル酸メチル13.6質量部をトルエン13.6質量部に溶解させた溶液を4時間かけて反応釜内に滴下しながら、約100〜107℃の還流下で溶液重合を行った。t−アミルパーオキシイソノナノエートとメタクリル酸メチルの滴下開始2時間後に、メチルイソブチルケトン(MIBK)28.2質量部を加えて希釈し、t−アミルパーオキシイソノナノエートとメタクリル酸メチルの滴下終了後に熟成を5時間行うことにより、重合体溶液を得た。得られた重合体溶液に含まれるアミド基含有アクリル系樹脂におけるN−フェニルメタクリルアミド由来の繰り返し単位の含有率は31.0質量%であった。また、当該アミド基含有アクリル系樹脂の重量平均分子量は23万であった。
次に、環化縮合反応の触媒(環化触媒)であるナトリウムメトキシド0.1質量部をメタノール9.9質量部に溶解させた触媒溶液を、約90〜100℃の温度で反応釜内の重合体溶液に滴下し、均一な触媒含有重合体溶液を得た。得られた触媒含有重合体溶液を、バレル温度290℃、回転数300rpm、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)、リアベント数が1個、フォアベント数が2個のベントタイプスクリュー二軸押出機(孔径:15mm、L/D:45)内に、樹脂量換算で300g/hの処理速度で導入し、この押出機内の脱揮を行い、軸内滞留時間3.6分間程度で押し出すことにより、透明なグルタルイミド樹脂のペレットを得た。得られたグルタルイミド樹脂は、式(1)において、R1とR3が水素原子、R2とR4がメチル基、R5がフェニル基である繰り返し単位と、式(2)において、R6が水素原子、R7がメチル基、R8がメチル基である繰り返し単位を有しており、重量平均分子量が17万、ガラス転移温度が156℃であった。グルタルイミド樹脂のN−フェニルメタクリルアミド由来のアミド単位残存率は0%、式(2)で表される繰り返し単位の含有率は55.9質量%、応力光学係数(Cr)は−0.17×10-9Pa-1、酸価は0.02mmol/g、アミン含有量とアミジン含有量は検出限界以下、吸水率は1.8%であった。
次に、得られたグルタルイミド樹脂のペレットを、単軸押出機(孔径:20mm、L/D:25)に入れ、Tダイ温度を285℃に調節し、コートハンガータイプTダイ(幅150mm)から溶融押出を行い、ロール温度155℃の冷却ロール上に吐出し、厚さ160μmの未延伸フィルムを作製した。このとき、アミン由来の強い臭気は発生しなかった。
(2−3) 実施例3
撹拌装置、温度センサー、冷却管および窒素ガス導入管を備えた反応釜に、N−フェニルメタクリルアミド(PMAM)35質量部、メタクリル酸メチル(MMA)52.0質量部、1,4−ジオキサン71.0質量部、n−ドデシルメルカプタン0.05質量部、および酸化防止剤(ADEKA社製、商品名:アデカスタブ2112)0.05質量部を仕込み、反応釜内に窒素ガスを通じながら105℃まで昇温させた。昇温に伴う還流が始まった時点で、重合開始剤としてt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富社製、商品名:ルペロックス570)0.053質量部を反応釜内に添加するとともに、1,4−ジオキサン10.6質量部にt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富社製、商品名:ルペロックス570)0.106質量部を溶解させた溶液、およびメタクリル酸メチル13.0質量部を1,4−ジオキサン4.3質量部に溶解させた溶液を2時間かけて反応釜内に滴下しながら、約100〜107℃の還流下で溶液重合を行った。t−アミルパーオキシイソノナノエートとメタクリル酸メチルの滴下終了1.5時間後および3時間後に、1,4−ジオキサンをそれぞれ13.7質量部、22.2質量部加えて希釈し、t−アミルパーオキシイソノナノエートとメタクリル酸メチルの滴下終了後に熟成を6時間行うことにより、重合体溶液を得た。得られた重合体溶液に含まれるアミド基含有アクリル系樹脂におけるN−フェニルメタクリルアミド由来の繰り返し単位の含有率は34.0質量%であった。また、当該アミド基含有アクリル系樹脂の重量平均分子量は22万であった。
次に、環化縮合反応の触媒(環化触媒)であるナトリウムメトキシド0.1質量部をメタノール9.9質量部に溶解させた触媒溶液を、約90〜100℃の温度で反応釜内の重合体溶液に滴下し、均一な触媒含有重合体溶液を得た。得られた触媒含有重合体溶液を、バレル温度290℃、回転数300rpm、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)、リアベント数が1個、フォアベント数が2個のベントタイプスクリュー二軸押出機(孔径:15mm、L/D:45)内に、樹脂量換算で300g/hの処理速度で導入し、この押出機内の脱揮を行い、軸内滞留時間3.6分間程度で押し出すことにより、透明なグルタルイミド樹脂のペレットを得た。得られたグルタルイミド樹脂は、式(1)において、R1とR3が水素原子、R2とR4がメチル基、R5がフェニル基である繰り返し単位と、式(2)において、R6が水素原子、R7がメチル基、R8がメチル基である繰り返し単位を有しており、重量平均分子量が18万、ガラス転移温度が162℃であった。グルタルイミド樹脂のN−フェニルメタクリルアミド由来のアミド単位残存率は0%、式(2)で表される繰り返し単位の含有率は52.2質量%、応力光学係数(Cr)は−0.16×10-9Pa-1、酸価は0.01mmol/g、アミン含有量とアミジン含有量は検出限界以下、吸水率は1.8%であった。
次に、得られたグルタルイミド樹脂のペレットを、単軸押出機(孔径:20mm、L/D:25)に入れ、Tダイ温度を285℃に調節し、コートハンガータイプTダイ(幅150mm)から溶融押出を行い、ロール温度155℃の冷却ロール上に吐出し、厚さ160μmの未延伸フィルムを作製した。このとき、アミン由来の強い臭気は発生しなかった。
(2−4) 実施例4
撹拌装置、温度センサー、冷却管および窒素ガス導入管を備えた反応釜に、N−フェニルメタクリルアミド(PMAM)35質量部、メタクリル酸メチル(MMA)39.0質量部、トルエン29.4質量部とメタノール19.6質量部の混合溶媒、および酸化防止剤(ADEKA社製、商品名:アデカスタブ2112)0.05質量部を仕込み、反応釜内に窒素ガスを通じながら73℃まで昇温させた。昇温に伴う還流が始まった時点で、重合開始剤としてジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬工業社製、商品名:V−601)0.15質量部を反応釜内に添加するとともに、トルエン16.7質量部とメタノール11.1質量部との混合溶媒にジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬工業社製、商品名:V−601)0.25質量部を溶解させた溶液、およびメタクリル酸メチル26.0質量部を、それぞれ2時間かけて反応釜内に滴下しながら、約69〜74℃の還流下で溶液重合を行った。ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)とメタクリル酸メチルの滴下終了後に熟成を6時間行い、続いてジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬工業社製、商品名:V−601)0.025質量部を添加し、さらに4.5時間の熟成を行うことにより、重合体溶液を得た。得られた重合体溶液に含まれるアミド基含有アクリル系樹脂におけるN−フェニルメタクリルアミド由来の繰り返し単位の含有率は34.3質量%であった。また、当該アミド基含有アクリル系樹脂の重量平均分子量は17万であった。
次に、環化縮合反応の触媒(環化触媒)であるナトリウムメトキシド0.1質量部をメタノール9.9質量部に溶解させた触媒溶液を、約60〜65℃の温度で反応釜内の重合体溶液に滴下し、均一な触媒含有重合体溶液を得た。得られた触媒含有重合体溶液を、バレル温度290℃、回転数300rpm、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)、リアベント数が1個、フォアベント数が2個のベントタイプスクリュー二軸押出機(孔径:15mm、L/D:45)内に、樹脂量換算で300g/hの処理速度で導入し、この押出機内の脱揮を行い、軸内滞留時間3.6分間程度で押し出すことにより、透明なグルタルイミド樹脂のペレットを得た。得られたグルタルイミド樹脂は、式(1)において、R1とR3が水素原子、R2とR4がメチル基、R5がフェニル基である繰り返し単位と、式(2)において、R6が水素原子、R7がメチル基、R8がメチル基である繰り返し単位を有しており、重量平均分子量が15万、ガラス転移温度が161℃であった。グルタルイミド樹脂のN−フェニルメタクリルアミド由来のアミド単位残存率は0%、式(2)で表される繰り返し単位の含有率は51.3質量%、応力光学係数(Cr)は−0.11×10-9Pa-1、酸価は0.01mmol/g、アミン含有量とアミジン含有量は検出限界以下、吸水率は1.8%であった。
次に、得られたグルタルイミド樹脂のペレットを、単軸押出機(孔径:20mm、L/D:25)に入れ、Tダイ温度を285℃に調節し、コートハンガータイプTダイ(幅150mm)から溶融押出を行い、ロール温度155℃の冷却ロール上に吐出し、厚さ160μmの未延伸フィルムを作製した。このとき、アミン由来の強い臭気は発生しなかった。
(2−5) 実施例5
撹拌装置、温度センサー、冷却管および窒素ガス導入管を備えた反応釜に、N−フェニルメタクリルアミド(PMAM)35質量部、メタクリル酸メチル(MMA)39.0質量部、トルエン48.3質量部とn−ブタノール12.1質量部の混合溶媒、および酸化防止剤(ADEKA社製、商品名:アデカスタブ2112)0.05質量部を仕込み、反応釜内に窒素ガスを通じながら105℃まで昇温させた。昇温に伴う還流が始まった時点で、重合開始剤としてt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富社製、商品名:ルペロックス570)0.213質量部を反応釜内に添加するとともに、トルエン20.2質量部とn−ブタノール5.0質量部との混合溶媒にt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富社製、商品名:ルペロックス570)0.372質量部を溶解させた溶液、およびメタクリル酸メチル26.0質量部を、それぞれ2時間かけて反応釜内に滴下しながら、約99〜110℃の還流下で溶液重合を行った。t−アミルパーオキシイソノナノエートとメタクリル酸メチルの滴下終了後に熟成を6時間行い、続いてジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬工業社製、商品名:V−601)0.025質量部を1時間おきに8回添加したのち、さらに1時間の熟成を行うことにより、重合体溶液を得た。得られた重合体溶液に含まれるアミド基含有アクリル系樹脂におけるN−フェニルメタクリルアミド由来の繰り返し単位の含有率は34.5質量%であった。また、当該アミド基含有アクリル系樹脂の重量平均分子量は13万であった。
次に、環化縮合反応の触媒(環化触媒)であるナトリウムメトキシド0.01質量部をメタノール9.99質量部に溶解させた触媒溶液を、約60〜65℃の温度で反応釜内の重合体溶液に滴下し、均一な触媒含有重合体溶液を得た。得られた触媒含有重合体溶液を、バレル温度300℃、回転数300rpm、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)、リアベント数が1個、フォアベント数が2個のベントタイプスクリュー二軸押出機(孔径:15mm、L/D:45)内に、樹脂量換算で360g/hの処理速度で導入し、この押出機内の脱揮を行い、軸内滞留時間3.6分間程度で押し出すことにより、透明なグルタルイミド樹脂のペレットを得た。得られたグルタルイミド樹脂は、式(1)において、R1とR3が水素原子、R2とR4がメチル基、R5がフェニル基である繰り返し単位と、式(2)において、R6が水素原子、R7がメチル基、R8がメチル基である繰り返し単位を有しており、重量平均分子量が11万、ガラス転移温度が158℃であった。グルタルイミド樹脂のN−フェニルメタクリルアミド由来のアミド単位残存率は0%、式(2)で表される繰り返し単位の含有率は55.6質量%、応力光学係数(Cr)は−0.15×10-9Pa-1、酸価は0.01mmol/g、アミン含有量とアミジン含有量は検出限界以下、吸水率は1.8%であった。
次に、得られたグルタルイミド樹脂のペレットを、単軸押出機(孔径:20mm、L/D:25)に入れ、Tダイ温度を285℃に調節し、コートハンガータイプTダイ(幅150mm)から溶融押出を行い、ロール温度155℃の冷却ロール上に吐出し、厚さ160μmの未延伸フィルムを作製した。このとき、アミン由来の強い臭気は発生しなかった。
(2−6) 比較例1
市販のメタクリル酸メチル−スチレン共重合体(新日鐵住金化学社製、エスチレン(登録商標)MS−800)を、バレル温度230℃、回転数300rpm、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)、ベント数が1個のベントタイプスクリュー二軸押出機(孔径:15mm、L/D:45)内に、樹脂量換算で420g/hの処理速度でホッパーから導入し、ホッパーの後よりメチルアミンを22.4g/hで注入し、軸内滞留時間5.6分間程度で押し出すことにより、透明なグルタルイミド樹脂のペレットを得た。得られたグルタルイミド樹脂は、式(1)において、R1とR3が水素原子、R2とR4がメチル基、R5がメチル基である繰り返し単位と、式(2)において、R6が水素原子、R7がメチル基、R8がメチル基である繰り返し単位を有しており、重量平均分子量が9万、ガラス転移温度が160℃であった。グルタルイミド樹脂のアミド単位残存率は0%、式(2)で表される繰り返し単位の含有率は82.7質量%、応力光学係数(Cr)は0.93×10-9Pa-1、酸価は1.25mmol/g、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミンから構成されるアミン含有量の合計は100ppm(質量基準)、アミジン含有量は検出限界以下、吸水率は3.6%であった。
次に、得られたグルタルイミド樹脂のペレットを、単軸押出機(孔径:20mm、L/D:25)に入れ、Tダイ温度を285℃に調節し、コートハンガータイプTダイ(幅150mm)から溶融押出を行い、ロール温度155℃の冷却ロール上に吐出し、厚さ160μmの未延伸フィルムを作製した。このとき、アミン由来の強い臭気が発生した。
(2−7) 比較例2
撹拌装置、温度センサー、冷却管および窒素ガス導入管を備えた反応釜に、メタクリル酸メチル(MMA)79.4質量部、メタクリル酸(MAA)20.6質量部、重合溶媒としてトルエン90.0質量部とメタノール22.5質量部の混合溶媒、および酸化防止剤(ADEKA社製、商品名:アデカスタブ2112)0.05質量部を仕込み、反応釜内に窒素ガスを通じながら73℃まで昇温させた。昇温に伴う還流が始まった時点で、重合開始剤としてジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬工業社製、商品名:V−601)0.25質量部を反応釜内に添加するとともに、トルエン7.3質量部とメタノール1.8質量部との混合溶媒にジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬工業社製、商品名:V−601)0.35質量部を溶解させた溶液を2時間かけて反応釜内に滴下しながら、約71〜76℃の還流下で溶液重合を行った。ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)の滴下終了後に、4時間かけて熟成を行うことにより、重合体溶液を得た。得られた重合体溶液に含まれるアクリル系樹脂におけるメタクリル酸に由来の繰り返し単位の含有率は20.6質量%であった。また、当該アクリル系樹脂の重量平均分子量は11万であった。
次に、環化縮合反応の触媒(環化触媒)であるナトリウムメトキシド0.1質量部をメタノール9.9質量部に溶解させた触媒溶液を、20分間かけて約65〜70℃の温度で反応釜内の重合体溶液に滴下し、均一な触媒含有重合体溶液を得た。得られた触媒含有重合体溶液を、バレル温度290℃、回転数238rpm、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)、リアベント数が1個、フォアベント数が2個のベントタイプスクリュー二軸押出機(孔径:15mm、L/D:45)内に、樹脂量換算で300g/hの処理速度で導入し、この押出機内の脱揮を行い、軸内滞留時間0.9分間程度で押し出すことにより、透明な無水グルタル酸構造含有アクリル系樹脂のペレットを得た。得られた無水グルタル酸構造含有アクリル系樹脂の重量平均分子量は10万であり、ガラス転移温度は131℃であった。
次に、得られた無水グルタル酸構造含有アクリル系樹脂のペレットを、バレル温度290℃、回転数300rpm、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)、ベント数が1個のベントタイプスクリュー二軸押出機(孔径:15mm、L/D:45)内に、樹脂量換算で420g/hの処理速度でホッパーから導入し、ホッパーの後よりアニリンを液添ポンプにて162g/hの投入速度で注入し、軸内滞留時間5.6分間程度で押し出すことにより、透明なグルタルイミド樹脂のペレットを得た。得られたグルタルイミド樹脂は、式(1)において、R1とR3が水素原子、R2とR4がメチル基、R5がフェニル基である繰り返し単位と、式(2)において、R6が水素原子、R7がメチル基、R8がメチル基である繰り返し単位を有しており、重量平均分子量が9.4万、ガラス転移温度が161℃であった。グルタルイミド樹脂のアミド単位残存率は0%、式(2)で表される繰り返し単位の含有率は37.3質量%、応力光学係数(Cr)は0.12×10-9Pa-1、酸価は1.27mmol/g、アニリン、メチルアニリン、ジメチルアニリンから構成されるアミン含有量の合計は50ppm(質量基準)、アミジン含有量は検出限界以下、吸水率は3.5%であった。
次に、得られたグルタルイミド樹脂のペレットを、単軸押出機(孔径:20mm、L/D:25)に入れ、Tダイ温度を285℃に調節し、コートハンガータイプTダイ(幅150mm)から溶融押出を行い、ロール温度155℃の冷却ロール上に吐出し、厚さ160μmの未延伸フィルムを作製した。このとき、アミン由来の強い臭気が発生した。
(2−8) 結果
実施例1〜5と比較例1,2の結果を表1にまとめる。表1の結果から分かるように、本発明の製造方法により得られたグルタルイミド樹脂は、応力光学係数(Cr)が小さく、酸価が小さく、アミン含有量が低いものとなった。そのため、寸法安定性に優れ、フィルム成形時の臭気も抑えられたものとなった。さらに、ヘイズやb*値も小さく、フィルムに成形した際、無色で透明性の高い光学フィルムが得られることが分かった。