JP6809776B2 - 重合体、樹脂組成物、樹脂成形体、および重合体の製造方法 - Google Patents

重合体、樹脂組成物、樹脂成形体、および重合体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、環構造を主鎖に有する新規重合体とその製造方法、ならびに当該重合体を含む樹脂組成物および樹脂成形体に関する。
アクリル重合体、ポリシクロオレフィン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステルなどの透明な重合体を含む樹脂組成物が、レンズ、プリズム、光ファイバー、光学フィルムのような光学部材の用途に幅広く使用されている。なかでもアクリル重合体は、光学的な透明性が高く、耐候性、機械的強度、成形加工性および表面硬度のバランスが高いといった特長を有する。
透明な重合体の中に、主鎖に環構造を有する重合体がある。上述した重合体のなかでは、ポリシクロオレフィン、ポリカーボネート、およびポリエステルの一種であるポリエチレンテレフタレート(PET)などがこれに該当する。アクリル重合体にも、主鎖に環構造を有する重合体が存在する。例えば、特許文献1(特許第4825409号)には、主鎖にラクトン環構造を有するアクリル重合体が開示されている。特許文献2(特開2006−328334号公報)には、主鎖にグルタルイミド構造を有するアクリル重合体が開示されている。特許文献3(特開2007−31537号公報)には、主鎖にN−置換マレイミド構造を有するアクリル重合体が開示されている。
一般に、アクリル重合体のガラス転移温度(Tg)は高いものでも100℃前後であるが、これらの文献には、主鎖に環構造を有するアクリル重合体がより高いTgを有することが示されている。重合体のTgが向上すると当該重合体を含む樹脂組成物、および当該組成物から構成される樹脂成形体の耐熱性が向上する。樹脂成形体が光学部材である場合、光学部材を備える製品に対する近年の強い要請、具体的な例として、製品のコンパクト化、高性能化、デザインの自由度向上などの観点から光源、電源部、バッテリー、回路基板といった発熱体の近傍に光学部材を配置する設計上の要請、に対応できる可能性が増すことになる。
特許第4825409号 特開2006−328334号公報 特開2007−31537号公報
本発明の目的の一つは、主鎖に環構造を有する新規重合体とその製造方法の提供にある。
本発明の新規重合体は、主鎖にピロリジノン環構造を有する。
別の側面から見た本発明の新規重合体は、ビニルモノマーを含む単量体群の重合により形成された前駆重合体であって、エステル基および/またはカルボキシル基とアミド基とを側鎖として有する前駆重合体を環化してなる重合体である。
本発明の樹脂組成物は、上記本発明の新規重合体を含む。
本発明の樹脂成形体は、上記本発明の樹脂組成物から構成される。
本発明の新規重合体の製造方法では、ビニルモノマーを含む単量体群の重合により形成された前駆重合体であって、エステル基および/またはカルボキシル基とアミド基とを側鎖として有する前駆重合体を環化して、主鎖にピロリジノン環構造を有する新規重合体を得る。
本発明によれば、主鎖に環構造を有する新規重合体とその製造方法が提供される。
実施例1で作製した重合体(1−1)および(1−2)の赤外分光分析(IR)スペクトルを、その差分とともに示す図である。 実施例1で作製した重合体(1−1)の1H−核磁気共鳴(NMR)スペクトルを示す図である。 実施例1で作製した重合体(1−2)の1H−NMRスペクトルを示す図である。 実施例3で作製した重合体(3−1)および(3−2)のIRスペクトルを、その差分とともに示す図である。 実施例3で作製した重合体(3−1)の1H−NMRスペクトルを示す図である。 実施例3で作製した重合体(3−2)の1H−NMRスペクトルを示す図である。
[重合体(A)]
本発明の重合体(A)は、主鎖にピロリジノン環構造を有する新規重合体である。重合体(A)は、典型的には非晶性の熱可塑性重合体である。
ピロリジノン環構造は、基本骨格として5員環のアミド環構造(環状アミド構造)を有する。この環状アミド構造は、5員環のラクタム構造(γ−ラクタム構造)でもある。重合体が主鎖にピロリジノン環構造を有するとは、5員環であるピロリジノン環構造の基本骨格を構成する5つの原子のうち少なくとも1つの原子、典型的にはアミド結合(−NHCO−)を構成しない3つの炭素原子、が当該重合体の主鎖に位置し、主鎖を構成することを意味する。
重合体(A)は、主鎖に位置するピロリジノン環構造に由来する特性を有する。特性は、例えば、熱的特性、光学的特性である。
熱的特性は、例えばガラス転移温度(Tg)であり、重合体(A)のTgはピロリジノン環構造を主鎖に有さない場合に比べて高くなる。
光学的特性は、例えば複屈折特性である。主鎖に位置するピロリジノン環構造によって、重合体(A)の複屈折発現性(位相差発現性)が向上する。ピロリジノン環構造は、重合体(A)に正または負の固有複屈折を与える作用を有する。より具体的に、ピロリジノン環構造は、基本的に重合体(A)に正の固有複屈折を与える作用を有するが、環構造の基本骨格に結合した置換基が嵩高いなどの場合、重合体(A)に負の固有複屈折を与えることがある。重合体(A)としての固有複屈折の正負は、当該重合体(A)が有する各構成単位が示す複屈折特性の兼ね合いにより決定される。例えば、ピロリジノン環構造が重合体(A)に正の固有複屈折を与える作用を有する場合においても、負の固有複屈折を与える作用を有する構成単位を重合体(A)がさらに有するとき、重合体(A)としての固有複屈折が負になることがある。
重合体(A)は、その他の特性、例えば、ピロリジノン環構造に含まれる(環状)アミド構造に基づく親水性、密着性、耐加水分解性、耐熱分解性などを有しうる。
重合体(A)はこれらの各特性に基づき、種々の用途に使用できる。用途は、例えば、光学部材である。上述した重合体(A)の熱的特性および光学的特性は、光学部材の有利な特徴になりうる。高いTgは、例えば、重合体(A)を含む光学部材の耐熱性の向上につながり、このような光学部材は、当該光学部材を備える製品の設計の自由度を向上させる。具体的な一例として、光学部材の一種である光学フィルムについて、当該フィルムを光源、電源部、回路基板などの発熱体に近接して配置することが可能となるため、液晶表示装置(LCD)などの画像表示装置の設計の自由度が向上する。高い複屈折発現性は、例えば、光学フィルムについて単位厚さあたりの位相差値の向上につながり、より薄いながらも設計された位相差値を達成した光学フィルムが実現する。複屈折発現性は、例えば、応力光学係数Crにより評価できる。Crの絶対値が大きいほど、複屈折発現性が高い。重合体(A)に正の固有複屈折を与える作用は、例えば、厚さ方向の位相差Rthが正である正の位相差フィルムの実現につながる。密着性、耐加水分解性および耐熱分解性の高さも、光学部材としての有利な点となる。
重合体(A)の用途は光学部材に限定されない。重合体(A)の用途は、例えば、感圧性接着剤、導電性接着剤、感光性接着剤、建材用接着剤、プリント基板用接着剤、透明シートまたはフィルム用接着剤、有機または無機繊維用接着剤などの接着剤;粘着シート、フィルム用粘着剤、電子デバイス用粘着剤、耐熱性粘着剤、熱伝導性粘着剤、導電性粘着剤などの粘着剤;二次電池の電極、機能性ファイバー、導電微粒子、金属微粒子、鱗片状フィラー、染料、インクジェット、カラーフィルター、インク、トナーなどに用いる各種のバインダー樹脂;ガスバリア、水蒸気バリア、表示素子、半導体封止、太陽電池、電子デバイスなどに用いる各種の封止材(剤);医療用または日用の抗菌、除菌および滅菌材;ハードコート、易接着コート、UV硬化樹脂、EB硬化樹脂、錆止め、防曇剤、帯電防止剤、難燃用コーティング剤、遮蔽コート、絶縁コートなどに用いる各種の機能性コーティング材(剤);熱硬化性粉体塗料などの粉体塗料;有機フィラー、保水剤、保湿剤などの化粧品用成分;キャパシタ、コンデンサ、電子機器などに用いるプリント基板および実装基板(フレキシブル基板を含む);潤滑油添加剤、粘度調整剤、粘度指数向上剤などの合成潤滑剤;ナノフィラー、ナノ微粒子、ナノ構造成型用材料などのナノ材料;パルプの凝集剤、分散剤、紙力増強剤などの紙の製造および加工に用いる薬剤;耐熱性が必要なプラスチック部材、フィルム、レンズ、包装材料、タイヤ、光学フィルム、偏光子保護フィルムなどの熱可塑性樹脂;高機能繊維、ナノ繊維、圧電繊維、不織布、フィルター用多孔質膜などの繊維;インク、インクジェット用インク、トナー、マイクロカプセルなどの記憶材料用ゲル化剤;各種の溶液またはペーストの粘度を調整する際に使用する増粘剤、より具体的な例として、二次電池の電極活性粒子を含むペースト、歯磨粉、液体洗剤などに使用される増粘剤;ガラスファイバーまたはカーボンファイバーといったファイバーに使用する分散剤または結束剤;である。
重合体(A)は、例えば、以下の式(1)に示すピロリジノン環構造を主鎖に有する。この環構造では、式(1)に示すように、アミド結合を構成していない3つの炭素原子(環構造の3位、4位および5位の炭素原子)が重合体(A)の主鎖に位置する(主鎖を構成する)。式(1)に示す環構造は、重合体(A)の構成単位(繰り返し単位)であっても、構成単位の一部を構成する構造であってもよい。後者の場合、当該構成単位は、その分子構造の一部として式(1)に示すピロリジノン環構造を含むことになる。
Figure 0006809776
式(1)において、R1は、水素原子または−COR4基であり、R4は、水素原子、メチル基、フェニル基、炭素数2〜18の直鎖アルキル基、または炭素数3〜18のシクロアルキル基である。R2は、水素原子または−COOR5基であり、R5は、水素原子、メチル基、フェニル基、炭素数2〜18の直鎖アルキル基、または炭素数3〜18のシクロアルキル基である。R3は、水素原子、メチル基または−NHCOR6基であり、R6は、水素原子、メチル基、フェニル基、炭素数2〜18の直鎖アルキル基、または炭素数3〜18のシクロアルキル基である。R4〜R6は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
直鎖アルキル基の炭素数は2〜12が好ましく、2〜4がより好ましい。直鎖アルキル基は、例えば、エチル基、プロピル基、ブチル基である。シクロアルキル基の炭素数は3〜12が好ましく、3〜6がより好ましい。シクロアルキル基は、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基である。
1、R2およびR3の組み合わせの具体例は、R1が−COCH3基であり、R2が−COOCH3基であり、R3がCH3基である組み合わせである。別の例は、R1が−COCH3基であり、R2が−COOCH3基であり、R3が−NHCOCH3基である組み合わせである。
式(1)に示すピロリジノン環構造は、重合体(A)の主鎖上で連続していてもよい。この場合、連続するピロリジノン環構造は、隣接する環構造同士でスピロ環構造を形成する。ただし、式(1)に示すピロリジノン環構造が重合体(A)の構成単位の一部を構成する場合、例えば、重合体(A)が有する構成単位が、式(1)に示す環構造の3位または5位の炭素原子にメチレン基などのアルキレン基が結合した構造を有する構成単位である場合(より具体的な例は、後述の式(2)に示す構成単位である場合)、重合体(A)の主鎖における当該構成単位の連続は、環構造の間に重合体(A)の主鎖を構成するアルキレン基が位置していることから、主鎖上におけるピロリジノン環構造の連続に該当しない。この場合、ピロリジノン環構造同士は主鎖上で隣接していない、ともいえる。
式(1)に示すピロリジノン環構造が重合体(A)の主鎖上で連続する場合、互いに隣接する2つの環構造は、一方の環構造の3位の炭素原子と他方の環構造の5位の炭素原子とが同一の炭素原子であるスピロ環構造を形成する。そして、当該3位の炭素原子に結合したR3および当該5位の炭素原子に結合したR2は存在しない。
このような連続するピロリジノン環構造の例を、以下の式(3),(4)に示す。
Figure 0006809776
式(3)に示す構造は、2つのピロリジノン環構造が重合体(A)の主鎖上で連続しているスピロ環構造である。左側の環構造の3位の炭素原子と、当該環構造に隣接する右側の環構造の5位の炭素原子とは同一の炭素原子である。いずれの環構造についても、3位から5位の3つの炭素原子が重合体(A)の主鎖を構成する。左側の環構造の3位の炭素原子に結合したR3および右側の環構造の5位の炭素原子に結合したR2は存在しない。なお、左側の環構造のR1と右側の環構造のR1とは互いに同一であっても異なっていてもよく、互いに同一でありうる。
Figure 0006809776
式(4)に示す構造は、3つのピロリジノン環構造が主鎖上で連続しているスピロ環構造である。左端の環構造の3位の炭素原子と、当該環構造に隣接する中央の環構造の5位の炭素原子とは同一の炭素原子である。中央の環構造の3位の炭素原子と、当該環構造に隣接する右端の環構造の5位の炭素原子とは同一の炭素原子である。いずれの環構造についても3位から5位の3つの炭素原子が重合体(A)の主鎖を構成する。左端の環構造の3位の炭素原子に結合したR3、中央の環構造の5位の炭素原子に結合したR2および3位の炭素原子に結合したR3、ならびに右端の環構造の5位の炭素原子に結合したR2は存在しない。なお、各環構造のR1は互いに同一であっても異なっていてもよく、互いに同一でありうる。
このように、式(1)に示すピロリジノン環構造が重合体(A)の主鎖上で連続する場合、R2および/またはR3が存在しないことがある。このとき、R2および/R3は、存在しないのではなく、当該基が結合している炭素原子の結合の手(当該基が属する環構造の外部への結合の手)とともに隣接する環構造を形成している、と表現することもできる。
式(1)に示すピロリジノン環構造が重合体(A)の主鎖上で連続する場合、連続する数は限定されない。ある一つの例では、主鎖全体にわたって式(1)に示すピロリジノン環構造が連続する重合体(A)、換言すれば、式(1)に示すピロリジノン環構造を構成単位として、当該構成単位のみからなるホモポリマーである重合体(A)、でありうる。
重合体(A)は、ピロリジノン環構造(例えば、式(1)に示すピロリジノン環構造)を含む構成単位Pを有することになる。構成単位Pは、ピロリジノン環構造のみから構成されていてもよいし、ピロリジノン環構造と他の分子構造とから構成されていてもよい。他の分子構造は、例えば、ピロリジノン環構造の3位および/または5位の炭素原子に結合して、当該環構造とともに重合体(A)の主鎖を構成する分子構造であり、より具体的な例は、上述したメチレン基などのアルキレン基である。
ピロリジノン環構造と他の分子構造とから構成される構成単位Pの一例を、以下の式(2)に示す。式(2)のR3〜R5は、式(1)のR3〜R5と同じである。
Figure 0006809776
式(2)に示す構成単位Xは、ピロリジノン環構造と、当該環構造の3位の炭素原子に結合したメチレン基とから構成される単位である。メチレン基の炭素原子および環構造の3位から5位の炭素原子は、重合体(A)の主鎖を構成する。構成単位Xのピロリジノン環構造は、第三級アミド構造を、環の一部を構成する分子構造として含んでいる(第三級アミド構造を、環構造の一部として含んでいる)。構成単位Xが含むピロリジノン環構造は、式(1)に示すピロリジノン環構造であって、R1が−COR4基であり、R2が−COOR5基である環構造である。
構成単位Xは、重合体(A)に正の固有複屈折を与える作用を有する。なお、正(または負)の固有複屈折を重合体に与える作用を有する構成単位とは、当該単位のホモポリマーを形成したときに、当該ホモポリマーが正(または負)の固有複屈折を示す単位をいう。重合体(A)としての固有複屈折の正負は、構成単位Xだけではなく、重合体(A)が有する他の構成単位が示す複屈折特性との兼ね合いにより定まる。
構成単位Xは、例えば、R3〜R5がいずれもメチル基である単位である。このような構成単位Xを有する重合体(A)は、例えば、メタクリル酸メチル(MMA)とアセトアミドアクリル酸メチル(AcAAM)との共重合体を前駆重合体(B)として、隣り合うMMA単位とAcAAM単位との間に環化反応を進行させて形成できる。
重合体(A)は、ピロリジノン環構造を含む構成単位Pのみから構成されるホモポリマーであっても、構成単位Pと、構成単位P以外の構成単位Qとから構成される共重合体であってもよい。共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体でありうる。
重合体(A)は2種以上の構成単位Pを有しうるし、2種以上の構成単位Qを有しうる。
重合体(A)が構成単位Pと構成単位Qとから構成される共重合体である場合、重合体(A)は、構成単位Qの種類および含有率に応じて様々なさらなる特性を示す。構成単位Qは、例えば、(メタ)アクリル酸エステル単位、(メタ)アクリル酸単位、N−置換マレイミド単位、芳香族ビニル化合物単位、不飽和カルボン酸化合物単位、シアン化ビニル化合物単位、複素芳香族基を有するα,β−不飽和単量体単位である。
重合体(A)は、(メタ)アクリル酸エステル単位および(メタ)アクリル酸単位から選ばれる少なくとも1種を構成単位Qとして有していてもよい。この場合、重合体(A)の光学的な透明性がより高くなり、例えば光学部材としての用途により好適となる。共重合体である重合体(A)は、(メタ)アクリル酸エステル単位を構成単位Qとして有することが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル単位は、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、α−ヒドロキシアクリル酸メチル、α−ヒドロキシアクリル酸エチルの各(メタ)アクリル酸エステルの重合により形成される(これら各単量体に由来する)構成単位である。(メタ)アクリル酸エステル単位は、メタクリル酸メチル(MMA)単位、メタクリル酸エチル単位、メタクリル酸n−ブチル単位、メタクリル酸シクロヘキシル単位、メタクリル酸イソボルニル単位、メタアクリル酸ベンジル単位が好ましく、MMA単位がより好ましい。このとき、重合体(A)の光学的な透明性がさらに高くなる。
重合体(A)における(メタ)アクリル酸エステル単位の含有率が50重量%を超える場合、当該重合体(A)はアクリル重合体である。アクリル重合体である重合体(A)は、アクリル重合体が一般に有する特性、例えば、高い光学的透明性、ならびに機械的強度、成形加工性および表面硬度の高いバランスを示す。アクリル重合体である重合体(A)において(メタ)アクリル酸エステル単位の含有率の合計は、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、さらには90質量%以上でありうる。
式(2)に示す構成単位Xをはじめとして、構成単位Pの種類によっては、MMAなどの(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体を前駆重合体(B)として、当該前駆重合体(B)に環化反応を進行させて重合体(A)を形成できるが、この場合、重合体(A)は、未反応の単位として(メタ)アクリル酸エステル単位を有しうる。
また、上述のように、(メタ)アクリル酸エステル単位を構成単位として有する共重合体である前駆重合体(B)に環化反応を進行させて重合体(A)を形成できる場合、当該重合体(A)は、(メタ)アクリル酸エステルの誘導体と捉えることもできる。この場合、重合体(A)における構成単位Pおよび(メタ)アクリル酸エステル単位の含有率の合計が50質量%を超えるとき、重合体(A)はアクリル重合体である。含有率の合計は、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、さらには90質量%以上でありうる。なお、後述のように、(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体である前駆重合体(B)、すなわち、(メタ)アクリル酸エステル単位を構成単位として有する共重合体である前駆重合体(B)において、当該重合体(B)の側鎖にエステル基および/またはカルボキシル基とアミド基とが存在する限り、(メタ)アクリル酸エステルとの共重合の相手であるモノマーは限定されない。当該モノマーは、例えば、アミドアクリル酸エステルである。
N−置換マレイミド単位は、例えば、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド、N−トリブロモフェニルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、およびN−ベンジルマレイミドの各単量体に由来する構成単位である。N−置換マレイミド単位は、N−シクロヘキシルマレイミド単位、N−フェニルマレイミド単位が好ましい。
芳香族ビニル化合物単位は、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、α−クロロスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、o−クロロスチレン、2,5−ジクロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、ジビニルベンゼンの各芳香族ビニル化合物に由来する構成単位である。芳香族ビニル化合物単位は、スチレン単位が好ましい。
不飽和カルボン酸化合物単位は、例えば、クロトン酸などの酸およびこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩の重合により形成される構成単位である。なお、本明細書において、不飽和カルボン酸化合物単位には(メタ)アクリル酸単位が含まれない。
シアン化ビニル化合物単位は、例えば、(メタ)アクリロニトリル単位である。
複素芳香族基を有するα,β−不飽和単量体単位は、例えば、ビニルカルバゾール単位、ビニルピリジン単位、ビニルイミダゾール単位およびビニルチオフェン単位から選ばれる少なくとも1種である。
構成単位Qは、上述した単位を除くビニル化合物単位、例えば、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、ブテン、イソプレン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド;アジピン酸ジビニル、セバシン酸ジビニルなどのジビニルエステル類;ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−フェニルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などのスルホン酸およびこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩;の重合により形成される構成単位でありうる。
重合体(A)は、紫外線(UVA)吸収能を有する構成単位を有しうる。当該構成単位は、例えば、重合性基を導入したベンゾトリアゾール誘導体、トリアジン誘導体またはベンゾフェノン誘導体の重合により形成される構成単位である。これらの誘導体において、導入する重合性基は適宜選択でき、例えばビニル基である。
重合体(A)における構成単位Pの含有率は限定されないが、構成単位Pに由来する特性をより確実に得るためには、例えば30質量%以上であり、35質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましい。構成単位Pの含有率の上限は特に限定されず、100質量%またはそれ以下であってもよい。重合体(A)が他の構成単位Q、特に(メタ)アクリル酸エステル単位をさらに有する場合、構成単位Pの上限は例えば90質量%以下であり、85質量%以下、82質量%以下でありうる。
重合体(A)における各構成単位の含有率は、公知の手法、例えば1H核磁気共鳴(1H−NMR)あるいは赤外線分光分析(IR)により求めることができる。
重合体(A)が主鎖に有するピロリジノン環構造は、公知の手法、例えば1H−NMRあるいはIRにより確認できる。具体的な確認の例は、赤外吸収スペクトルにおいて、波数1690cm-1以上1710cm-1以下の範囲に、ピロリジノン環構造のカルボニル基の伸縮振動に帰属される吸収ピークが観察されるか否かの確認である。赤外吸収スペクトルにおいてピロリジノン環構造のカルボニル基の伸縮振動に帰属される吸収ピークが上記波数の範囲にあることは、5員環のラクタム環における赤外吸収域として、2006年9月15日刊行「『有機化合物のスペクトルによる同定法 第7版』東京化学同人」に記載されている。
ピロリジノン環構造の具体的な構造、重合体(A)における当該環構造の含有率、および重合体(A)が構成単位Qをさらに有する共重合体であるときの構成単位Qの種類および含有率によっては、赤外吸収スペクトルにおける上記吸収ピークが確認しづらいことがある。しかし、重合体(A)の構成によっては、重合体(A)を再加熱することで、重合体(A)の形成時に環化反応が進行することなく残留した構成単位間に改めて環化反応を進行させて、既に重合体(A)に存在している環構造と同じ環構造を形成できることがある。このとき、重合体(A)の再加熱の前後における赤外吸収スペクトルの差分をとることにより、主鎖のピロリジノン環構造を確認できる。すなわち、このとき重合体(A)は、当該重合体を200℃以上で加熱したときに、加熱前後の赤外吸収スペクトルの差分において、波数1690cm-1以上1710cm-1以下の範囲に吸収ピークが観察される重合体でありうる。
重合体(A)は、主鎖のピロリジノン環構造に基づき、高いTgを示す。重合体(A)のTgは、例えば110℃以上である。ピロリジノン環構造の種類およびその含有率、あるいはピロリジノン環構造を含む構成単位Pの構造およびその含有率によっては、重合体(A)のTgは、120℃以上、130℃以上、さらには160℃以上の値をとりうる。
後述の脱アルコール環化縮合反応により重合体(A)を形成した場合、当該重合体(A)には、環化反応時に生成したアルコールが残留しうる。このとき、重合体(A)における残留アルコールの含有量は、例えば10〜3000ppmである。
重合体(A)は、架橋剤等によって架橋されていてもよい。
重合体(A)は、例えば、以下に示す重合体(A)の製造方法により形成できる。
[重合体(A)の製造方法]
本発明の製造方法では、ビニルモノマーを含む単量体群の重合により形成された前駆重合体(B)であって、エステル基および/またはカルボキシル基とアミド基とを側鎖として有する前駆重合体(B)を環化して、主鎖にピロリジノン環構造を有する重合体(A)を得る。この環化では、エステル基および/またはカルボキシル基とアミド基との間に環化縮合反応を進行させて5員環のアミド環構造を形成する。このとき、エステル基および/またはカルボキシル基が、ピロリジノン環構造の2位の炭素原子を含むカルボニル基に変化し、アミド基が、ピロリジノン環構造の1位の窒素原子を含むアミン基に変化する。このアミン基は、式(1)に示すように、第2級または第3級アミン基である。
このような反応の例を、以下の式(5)に示す。
Figure 0006809776
式(5)のR1〜R4は、式(1)のR1〜R4と同様である。R7は、水素原子または炭素数1〜18の有機残基である。有機残基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基;エテニル基、プロペニル基などの不飽和脂肪族炭化水素基;フェニル基、ナフチル基などの芳香族炭化水素基;上記アルキル基、上記不飽和脂肪族炭化水素基および上記芳香族炭化水素基において、水素原子の一つ以上が、水酸基、カルボキシル基、エーテル基およびエステル基から選ばれる少なくとも1種の基により置換された基;である。R7は、直鎖アルキル基またはシクロアルキル基が好ましく、その炭素数は、1〜12が好ましく、1〜4がより好ましい。
式(5)に示す反応では、左辺の分子構造を有する前駆重合体(B)に環化反応を進行させて、右辺の構成単位Pを有する重合体(A)を形成する。この環化反応は、左辺に示す破線部が結合し、R7OHが脱離する縮合反応である。R7が水素原子のとき水が脱離し、すなわち、この反応は脱水環化縮合反応である。R7が有機残基のときアルコールが脱離し、すなわち、この反応は脱アルコール環化縮合反応である。例えば、R7がメチル基のとき、メタノールが脱離する。この反応は、前駆重合体(B)の分子鎖内で進行する。式(5)の右辺の構成単位Pは、式(1)に示すピロリジノン環構造と、当該環構造の3位の炭素原子に結合したメチレン基とを含む。
前駆重合体(B)は、その側鎖にエステル基および/またはカルボキシル基を有するとともにアミド基を有する。より具体的に、式(5)の前駆重合体(B)は、側鎖にエステル基(カルボキシルエステル基;R7が有機残基)および/またはカルボキシル基(R7が水素原子)を有する構成単位と、側鎖にアミド基を有する構成単位とを有する共重合体である。いずれの構成単位もビニルモノマーに由来する単位である。このように、前駆重合体(B)は、ビニルモノマーを含む単量体群の重合により形成できる。より具体的に、式(5)の前駆重合体(B)は、エステル基および/またはカルボキシル基を有するビニルモノマーAと、アミド基を有するビニルモノマーBとを含む単量体群の重合により形成された共重合体である。この前駆重合体(B)において、側鎖のエステル基および/またはカルボキシル基とアミド基とは、その間に、前駆重合体(B)の主鎖に位置するメチレン基が一つ(炭素原子が一つ)挿入された位置関係にある。式(5)に示す例では、前駆重合体(B)の主鎖に位置する3つの炭素原子、側鎖に位置するカルボキシル基および/またはエステル基の炭素原子、ならびにアミド基の窒素原子により、ピロリジノン環構造が形成される。
式(5)の前駆重合体(B)の側鎖の窒素原子には−COR4基が結合しているが、右辺の構成単位Pのピロリジノン環構造における窒素原子にはR1(水素原子または−COR4基)が結合している。すなわち、重合体(A)ではR1として水素原子をとりうる。これは、環化反応時またはそれ以降に重合体に加えられる熱により、−COR4基の脱離が生じうるためである。これ以降に示す、前駆重合体(B)から重合体(A)を形成する反応の例においても同様である。−COR4基の脱離は、例えば、後述する環化反応において触媒(環化触媒)を使用するとともに当該触媒を環化後の重合体に残留させることにより促進できる。
このときのビニルモノマーAの例を以下の式(6)に、ビニルモノマーBの例を以下の式(7)に示す。式(6)のR3は式(1)のR3と同様であり、R7は式(5)のR7と同様である。式(7)のR2およびR4は、それぞれ式(1)のR2およびR4と同様である。式(6)に示すビニルモノマーAは、(メタ)アクリル酸エステル単位(R3が水素原子またはメチル基であり、R7が有機残基である)、または(メタ)アクリル酸単位(R3が水素原子またはメチル基であり、R7が水素原子である)でありうる。形成した重合体(A)の光学的な透明性がより高くなることから、ビニルモノマーAは、アクリル酸またはメタクリル酸メチル(MMA)が好ましい。
Figure 0006809776
Figure 0006809776
前駆重合体(B)は、2種以上のビニルモノマーAおよび/または2種以上のビニルモノマーBを含む単量体群の重合により形成された重合体であってもよい。すなわち、前駆重合体(B)は、2種以上のビニルモノマーAに由来する2種以上の構成単位および/または2種以上のビニルモノマーBに由来する2種以上の構成単位を有していてもよい。
式(5)に示す反応のより具体的な例を、以下の式(8)に示す。
Figure 0006809776
式(8)のR3〜R5は、式(2)のR3〜R5と同様である。R7は、式(5)のR7と同様である。式(8)に示す反応では、左辺の分子構造を有する前駆重合体(B)に環化反応(左辺の分子構造における破線部を結合させるとともにR7OHを脱離させる反応)を進行させて、右辺の構成単位Pを有する重合体(A)を形成する。右辺の構成単位Pは、式(2)に示す構成単位Xである。
式(8)の前駆重合体(B)は、エステル基および/またはカルボキシル基を有するビニルモノマーAと、アミド基を有するビニルモノマーBとを含む単量体群の重合により形成された共重合体である。ただし、式(8)の前駆重合体(B)では、ビニルモノマーBがアミド基とともにエステル基および/またはカルボキシル基をさらに有する。
このときのビニルモノマーAの例を以下の式(9)に、ビニルモノマーBの例を以下の式(10)に示す。
Figure 0006809776
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式(9)のR3およびR7は、それぞれ式(2)のR3および式(5)のR7と同様である。式(10)のR4およびR5は、それぞれ式(2)のR4およびR5と同様である。
式(10)に示すモノマーBは、アミドアクリル酸エステルでありうる。アミドアクリル酸エステルは、エステル基および/またはカルボキシル基とアミド基とをともに有するビニルモノマーである。
式(7)および式(10)に示すビニルモノマーBは、いずれもアミドアクリル酸エステルでありうるが、アミドアクリル酸エステルは、例えば、アセトアミドアクリル酸メチル(AcAAM)、アセトアミドアクリル酸エチル、アセトアミドアクリル酸n−ブチル、アセトアミドアクリル酸n−dドデシル、アセトアミドアクリル酸シクロヘキシル、アセトアミドアクリル酸フェニルである。
前駆重合体(B)がビニルモノマーAとビニルモノマーBとの共重合体であるとき、当該重合体(B)におけるモノマーAに由来する構成単位Y1と、モノマーBに由来する構成単位Y2との含有率の比は特に限定されないが、質量比にして、例えばY1:Y2=95〜50:5〜50であり、90〜50:10〜50が好ましく、85〜50:15〜50がより好ましい。構成単位Y1が(メタ)アクリル酸エステル単位である場合、当該前駆重合体(B)から形成した重合体(A)は、未反応の(メタ)アクリル酸エステル単位を構成単位として有しうる。
式(6)および(9)に示すビニルモノマーAと、式(7)および(10)に示すビニルモノマーBとは、置換基の種類によっては同一のビニルモノマーでありうる。すなわち、前駆重合体(B)は、当該同一のビニルモノマーのホモポリマーであってもよい。このビニルモノマーは、各式に示す分子構造から理解できるように、エステル基および/またはカルボキシル基とアミド基とをともに有するビニルモノマーCである。すなわち、前駆重合体(B)は、エステル基および/またはカルボキシル基とアミド基とを有するビニルモノマーCを含む単量体群の重合により形成された重合体であってもよい。前駆重合体(B)がこのようなホモポリマーである場合、重合体(A)を形成したときの前駆重合体(B)からのTgの上昇が特に大きくなる。
ビニルモノマーCは、例えば、アミドアクリル酸エステルである。
ビニルモノマーCのホモポリマーである前駆重合体(B)から重合体(A)を形成する環化反応の例を、以下の式(11)に示す。式(11)に示す例では、アミドアクリル酸エステルのホモポリマーである前駆重合体(B)に環化反応を進行させて、重合体(A)を形成している。
Figure 0006809776
式(11)のR4およびR5は、式(1)のR4およびR5と同様である。式(11)に示す例では、R2が−COOR5基であり、R3が−NHCOR4基である式(1)に示すピロリジノン環構造を含む構成単位Pを形成している。式(11)に示す反応では、左辺の分子構造を有する前駆重合体(B)に環化反応(左辺の分子構造における破線部を結合させるとともにR5OHを脱離させる反応)を進行させて、右辺の構成単位Pを有する重合体(A)を形成する。
ビニルモノマーCのホモポリマーである前駆重合体(B)から重合体(A)を形成する環化反応の別の例を、以下の式(12)に示す。式(12)に示す例では、アミドアクリル酸エステルのホモポリマーである前駆重合体(B)に環化反応を進行させて、重合体(A)を形成している。
Figure 0006809776
式(12)のR4およびR5は、式(1)のR4およびR5と同様である。式(12)に示す例では、主鎖上で隣接する2つのピロリジノン環構造のスピロ環構造が形成された重合体(A)を形成している。各ピロリジノン環構造は、R2が−COOR5基であり、R3が−NHCOR4基である式(1)に示す構造である。式(12)では、互いに隣接する左端および中央のビニルモノマーC間、ならびに互いに隣接する中央および右端のビニルモノマーC間で環化反応(左辺の分子構造における破線部を結合させるとともにR5OHを脱離させる反応)を進行させている。ここから理解できるように、全ての隣接するビニルモノマーC間で環化縮合反応を進行させることにより、式(1)に示すピロリジノン環構造から構成される構成単位のみを有するホモポリマーである重合体(A)を形成することも可能である。また、ビニルモノマーAおよびBの共重合体である前駆重合体(B)においても、ビニルモノマーBの種類によっては、当該モノマーBに由来する構成単位が連続した領域において、環化反応によりピロリジノン環構造のスピロ環構造を形成しうる。
スピロ環構造が形成された重合体(A)、特に当該ホモポリマーである重合体(A)は、ピロリジノン環構造に基づく特性が特に顕著となることが期待される。当該特性は、例えば非常に高いTgである。このような非常に高いTgを有する重合体(A)は、非常に高い耐熱性が要求される用途への使用が期待される。
前駆重合体(B)が共重合体である場合、当該重合体(B)は、ランダム共重合体、交互共重合体でありうる。
前駆重合体(B)は、2種以上のアミドアクリル酸エステルの共重合体でありうる。
前駆重合体(B)が、ビニルモノマーAとビニルモノマーBとを含む単量体群の重合により形成された共重合体である場合、当該単量体群はビニルモノマーCをさらに含んでいてもよい。前駆重合体(B)が、ビニルモノマーCを含む単量体群の重合により形成された重合体である場合、当該単量体群は、ビニルモノマーAおよび/またはビニルモノマーBをさらに含んでいてもよい。
前駆重合体(B)は、ビニルモノマーA〜C以外の単量体に由来する構成単位をさらに有していてもよい。この場合、当該構成単位をさらに有する重合体(A)を形成できる。当該構成単位は、例えば、重合体(A)の説明において上述した、構成単位P以外の構成単位Qである。
(前駆重合体(B)の形成)
前駆重合体(B)の形成方法は特に限定されない。形成した前駆重合体(B)がエステル基および/またはカルボキシル基とアミド基とを側鎖として有するようにモノマーを選択し、当該モノマーを含む単量体群を重合すればよい。単量体群は、必要に応じて、重合体(B)の形成に必須であるモノマー以外のモノマーを含んでいてもよい。当該モノマーは、例えば、重合により構成単位Qとなるモノマーである。
単量体群は、例えば、エステル基および/またはカルボキシル基を有するビニルモノマーAと、アミド基を有するビニルモノマーBとを含む。単量体群は、例えば、エステル基および/またはカルボキシル基とアミド基とを有するビニルモノマーCを含む。ビニルモノマーAの例は、(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリル酸であり、ビニルモノマーBおよびCの例は、アミドアクリル酸エステルである。
単量体群の重合方法は特に限定されず、溶液重合などの公知の重合方法を適用できる。溶液重合を選択した場合、重合溶媒は特に限定されず、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン系炭化水素類;メタノール、エタノールなどのアルコール類;水、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、テトラヒドロフランである。
前駆重合体(B)の重合にあたっては、必要に応じて、重合開始剤、連鎖移動剤などを使用できる。重合開始剤は特に限定されないが、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどの有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)などのアゾ化合物;である。これらの重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、重合開始剤の使用量は、単量体群に含まれるモノマーの組み合わせ、あるいは重合条件などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。
重合温度などの重合条件は、適宜、設定できる。
単量体群に含まれるモノマー間に重合速度差がある場合、重合に供する単量体群に含まれる各モノマーの含有率に比べて、重合により形成した前駆重合体(B)における上記モノマーに由来する各構成単位の含有率について、重合速度が速いモノマーに由来する構成単位の含有率が相対的に大きくなる傾向がある。このため、共重合体である前駆重合体(B)であって、当該重合体(B)を構成する各構成単位の含有率および/または含有率比について望む値を有する重合体(B)を得るために、重合に供する単量体群における各モノマーの含有率に留意したり、重合方法を制御したり(例えば、重合速度の速いモノマーの一部または全てを滴下により重合系に供給する)して、形成した前駆重合体(B)における各構成単位の含有率を適宜調整できる。
(環化反応)
前駆重合体(B)を環化する方法は限定されない。例えば、前駆重合体(B)を加熱することにより、当該重合体(B)の分子鎖内でアミド環化反応である環化縮合反応を進行させて重合体(A)を形成できる。
前駆重合体(B)の加熱により環化反応を進行させる場合、加熱温度は、例えば150℃以上であり、200℃以上好ましい。前駆重合体(B)の加熱は、前駆重合体(B)が固体の状態、溶媒に溶解している状態などの任意の状態で実施することができる。固体の状態で加熱する場合は、環化反応の速やかな進行のために、粉末、粒子などの表面積が大きい形態を有する前駆重合体(B)とすることが好ましい。また、式(5),(8),(11),(12)の右辺に記載されている、環化反応により生成したアルコールまたは水を除去することで環化反応を速やかに進行させるために、減圧下における加熱が好ましい。減圧の程度は、例えば、絶対圧にして26.6kPa以下である。すなわち、前駆重合体(B)を26.6kPa以下の圧力下で加熱することにより環化反応を進行させてもよい。減圧の程度は、13.3kPa以下が好ましく、2.7kPa以下がより好ましい。
環化反応を進行させる際には、必要に応じて、当該反応を促進させる触媒を使用してもよい。触媒を使用する場合、均一な反応のために、前駆重合体(B)が溶媒に溶解している状態での加熱が好ましい。
触媒には、例えば、酸、塩基およびこれらの塩、金属錯体、ならびに金属酸化物から選ばれる少なくとも1種を使用できる。酸、塩基およびこれらの塩、金属錯体、ならびに金属酸化物の種類は、特に限定されない。形成される重合体(A)、または当該重合体(A)を含む樹脂組成物(C)もしくは樹脂成形体が透明性の重要視される用途に使用される場合、触媒は、これらの透明性が低下せず、着色などの悪影響が生じない範囲で使用することが好ましい。
酸は限定されず、例えば、塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸、リン酸、亜リン酸、フェニルホスホン酸、有機カルボン酸、リン酸エステルである。塩基は限定されず、例えば、金属水酸化物、アミン類、イミン類、アルカリ金属誘導体、アルコキシド類、水酸化アンモニウム塩である。酸および塩基の塩は限定されず、例えば、金属カルボン酸塩、金属炭酸塩である。金属カルボン酸塩、金属炭酸塩の金属は、形成される重合体(A)、樹脂組成物(C)または樹脂成形体の特性を阻害せず、かつこれらの廃棄時に環境汚染を招くことがない限り限定されず、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどのアルカリ土類金属;亜鉛;ジルコニウム;銅;鉄である。金属カルボン酸塩を構成するカルボン酸は限定されず、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、オクチル酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、トリデカン酸、ペンタデカン酸、ヘプタデカン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸である。金属錯体は限定されず、例えばその有機成分の例は、アセチルアセトンである。金属酸化物は限定されず、例えば、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウムである。
このような製造方法の側面から見た本発明の重合体(A)は、ビニルモノマーを含む単量体群の重合により形成された前駆重合体(B)であって、エステル基および/またはカルボキシル基とアミド基とを側鎖として有する前駆重合体(B)を環化してなる重合体である。
上述のように前駆重合体(B)は、例えば、エステル基および/またはカルボキシル基を有するビニルモノマーAと、アミド基を有するビニルモノマーBとを含む単量体群の重合により形成された共重合体でありうる。また、前駆重合体(B)は、例えば、エステル基および/またはカルボキシル基とアミド基とを有するビニルモノマーCを含む単量体群の重合により形成された重合体でありうるし、ビニルモノマーCのホモポリマーでもありうる。ビニルモノマーA,BおよびCの例は上述のとおりである。具体的に、ビニルモノマーAは、例えば(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリル酸から選ばれる少なくとも1種である。
[樹脂組成物(C)]
本発明の樹脂組成物(C)は、重合体(A)を含む。樹脂組成物は、典型的には熱可塑性樹脂組成物であり、非晶性の熱可塑性樹脂組成物である。樹脂組成物(C)は2種以上の重合体(A)を含みうる。
樹脂組成物(C)は重合体(A)に由来する様々な特性を示す。当該特性は、例えば熱的特性、光学的特性である。熱的特性は、例えばTgであり、樹脂組成物(C)のTgは重合体(A)に由来して高くなる。樹脂組成物(C)のTgは、例えば110℃以上であり、重合体(A)の種類および含有率によっては、120℃以上、140℃以上、さらには160℃以上の値をとりうる。
光学的特性は、例えば複屈折特性であり、樹脂組成物(C)は重合体(A)に由来して高い複屈折発現性(位相差発現性)を示す。高い位相差発現性は、例えば、高い応力光学係数Crの絶対値により評価できる。重合体(A)の種類および含有率によっては樹脂組成物(C)は正の固有複屈折を示し、このとき樹脂組成物(C)によって、例えば正の位相差フィルムを形成できる。なお、樹脂組成物(C)としての固有複屈折は、重合体(A)だけではなく、樹脂組成物(C)が含む他の重合体が示す固有複屈折との兼ね合いにより定まる。
樹脂組成物(C)は、重合体(A)に由来するその他の種々の特性を有しうる。これらの特性に基づき、樹脂組成物(C)は光学部材をはじめとして、上述した重合体(A)の用途と同様の用途に使用できる。
樹脂組成物(C)は重合体(A)以外の他の重合体を含んでいてもよい。光学部材に樹脂組成物(C)を用いる場合、光学的透明性を確保するために、他の重合体は重合体(A)と相溶することが好ましい。
当該他の重合体は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)などのオレフィン系重合体;塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂などの含ハロゲン系重合体;ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610などのポリアミド;ポリアセタール;ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリオキシペンジレン;ポリアミドイミド;ゴム質重合体である。樹脂組成物(C)は、2種以上のこれら重合体を含みうる。
樹脂組成物(C)における重合体(A)の含有率は、通常、50質量%以上であり、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。樹脂組成物(C)は、重合体として重合体(A)のみを含んでいてもよい。
樹脂組成物(C)は、重合体以外の材料、例えば添加剤、を含むことができる。添加剤は、例えば、酸化防止剤、耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤などの安定剤;位相差上昇剤、位相差低減剤、位相差安定剤などの位相差調整剤;ガラス繊維、炭素繊維などの補強材;紫外線吸収剤;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモンなどの難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤を含む帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料などの着色剤;有機フィラー、無機フィラー、樹脂改質剤、可塑剤、滑剤である。樹脂組成物(C)における添加剤の含有率は、好ましくは7質量%未満、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
樹脂組成物(C)の形成方法は特に限定されない。重合体(A)からなる樹脂組成物(C)であれば、重合体(A)をそのまま樹脂組成物(C)として使用すればよいし、樹脂組成物(C)が上記他の重合体および/または添加剤を含む場合は、重合体(A)と、上記他の重合体および/または添加剤とを公知の混合方法で混合して形成できる。混合は、例えば、オムニミキサーなどの混合機でプレブレンドした後、得られた混合物を混練して実施できる。混練機は特に限定されず、例えば、単軸押出機、二軸押出機などの押出機や加圧ニーダーなど、公知の混練機を使用できる。
[樹脂成形体]
本発明の樹脂成形体は、重合体(A)を含む熱可塑性樹脂組成物(C)から構成される。樹脂成形体の用途は限定されず、重合体(A)ならびに樹脂組成物(C)が含む他の重合体および/または添加剤に由来して得られる特性に応じて選択できる。本発明の樹脂成形体は、例えば、光学用途に使用する光学部材である。
光学部材は、例えば、レンズ、プリズム、光ファイバー、光学フィルムである。光学フィルムは、例えば、各種の光ディスク(VD、CD、DVD、MD、LDなど)の基板の保護フィルム、液晶表示装置(LCD)などの画像表示装置が備える位相差フィルムおよび偏光子保護フィルム、ならびに視野角補償フィルム、光拡散フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、輝度向上フィルム、タッチパネル用導電フィルムである。
本発明の樹脂成形体は、重合体(A)の高いTgに由来する耐熱性を有しうる。このため、本発明の樹脂成形体の用途の自由度は高く、本発明の樹脂成形体の使用により様々な効果が得られる。例えば、光学フィルムである本発明の樹脂成形体の使用により、LCDなどの画像表示装置の設計の自由度が向上する。
本発明の樹脂成形体は、高い光学的透明性を有しうる。例えば、JIS K7361の規定に準拠して求めた全光線透過率にして、85%以上、90%以上、さらには91%以上の樹脂成形体、典型的にはフィルム、とすることが可能である。
本発明の樹脂成形体は、表面の低いヘイズを有しうる。例えば、JIS K7136の規定に準拠して求めたヘイズにして、5%以下、3%以下、さらには2%以下のヘイズを有する樹脂成形体、典型的にはフィルム、とすることが可能である。
本発明の樹脂成形体は、位相差フィルムでありうる。位相差フィルムは、例えば、厚さ方向の位相差Rthが正である正の位相差フィルムである。位相差フィルムは、例えば、λ/4板、楕円偏光板でありうる。
本発明の樹脂成形体は、他の部材と組み合わせることができる。例えば、光学フィルムである本発明の樹脂成形体を、他の光学部材と組み合わせてもよい。
本発明の樹脂成形体の表面には、必要に応じて各種の機能性コーティング層が形成されていてもよい。機能性コーティング層は、例えば、帯電防止層、粘接着剤層、接着層、易接着層、防眩(ノングレア)層、光触媒層などの防汚層、反射防止層、ハードコート層、紫外線遮蔽層、熱線遮蔽層、電磁波遮蔽層、ガスバリヤー層である。
本発明の樹脂成形体のその他の用途は、例えば、上述した重合体(A)の用途と同様の用途である。
本発明の樹脂成形体の形成方法は特に限定されない。溶融押出法、キャスト法、プレス成形法などの公知の成形手法により樹脂組成物(C)を成形して、本発明の樹脂成形体を形成することができる。必要に応じて、成形手法と公知の他の手法、例えば延伸手法、とを組み合わせてもよい。位相差フィルムを得るためには、樹脂組成物を成形して得たフィルム(原フィルム)の延伸が必要である。
本発明の樹脂成形体を備える製品は特に限定されず、例えば、画像表示装置である。画像表示装置は、例えば、光学フィルムである本発明の樹脂成形体を備える。画像表示装置は特に限定されず、例えば、反射型、透過型、半透過型のLCD;TN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型、IPS型などの各種の駆動方式のLCD;エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ;プラズマディスプレイ(PD);電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)である。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、以下に示す実施例に限定されない。
本実施例において、MMAおよびAcAAMは、それぞれメタクリル酸メチルおよび2−アセトアミドアクリル酸メチルの略称である。
最初に、本実施例において作製した重合体の評価方法を示す。
[構成単位の構造]
作製した重合体の構成単位がどのような分子構造を有しているのかについて、赤外分光分析(IR)、1H−核磁気共鳴(NMR)および13C−NMRにより評価した。IRの評価は、赤外分光分析装置(Varian製、Excalibur Series)を用いて、全反射測定法(ATR法)により実施した。測定条件は、スキャンスピード5kHz、分解能4cm-1とした。1H−NMRの評価は、核磁気共鳴分光計(BRUKER製、AV300M)を用いて実施した。測定溶媒には重クロロホルム(和光純薬製)を使用した。13C−NMRの評価は、核磁気共鳴分光計(BRUKER製、AVANCEIII)を用いて実施した。測定溶媒には重ジメチルスルホキシド(和光純薬製)を使用した。
[重合体における構成単位の含有率]
作製した前駆重合体におけるAcAAM単位の含有率は、重合反応時に得られた重合溶液に残留する未反応単量体の量から算出した。未反応単量体の量は、ガスクロマトグラフィー(島津製作所製、GC2010)により求めた。
[ガラス転移温度(Tg)]
作製した重合体(前駆重合体を含む)のTgは、JIS K7121の規定に準拠して求めた。具体的には、示差走査熱量計(リガク製、DSC−8230)を用い、窒素ガス雰囲気下、約10mgのサンプルを常温から300℃まで昇温(昇温速度20℃/分)して得られたDSC曲線から、始点法により評価した。リファレンスには、α−アルミナを用いた。
[応力光学係数Cr]
作製した重合体をフィルムとしたときの応力光学係数Cr(測定波長590nm)は、以下のようにして求めた。
最初に、作製した重合体を210℃の熱プレスにより製膜して、当該重合体の未延伸フィルム(厚さ190μm)を得た。次に、作製した未延伸フィルムをサイズ20mm×60mmで切り出して、Cr評価用の試験片を得た。次に、試験片の一方の短辺に、延伸の際、当該試験片に1N/mm2以下の応力が加わる重量の錘を選択して取り付けた後、重合体のTg+20℃に保持した定温乾燥機(アズワン製、DOV−450A)に収容し、1時間放置した。試験片を定温乾燥機に収容する際には、試験片の他方の短辺をチャックにより固定し、錘により試験片に加わった応力によって試験片がその長辺方向(鉛直方向)に自由端一軸延伸されるようにした。また、収容する際、試験片におけるチャック−錘間の距離を40mmとした。
1時間の加熱延伸後、乾燥機のヒーターを切り、そのまま試験片を乾燥機内で自然に徐冷させた。オーブン内の温度が重合体のTg−40℃に達した時点で試験片(一軸延伸フィルム)を取り出し、取り出した試験片の厚さおよび波長590nmの光に対する面内位相差Reを測定して、当該試験片の面内複屈折Δnを算出した。これとは別に、錘の荷重によって延伸された後の試験片の断面積を求め、当該断面積と錘の荷重とから、フィルムに印加された応力σ(Pa)を計算した。錘の重量を変化させながら、それぞれの荷重についてΔnおよびσを求め、得られたσに対するΔnの傾きを最小二乗法により求めて、これを応力光学係数Cr(Pa-1)とした。面内位相差Reを測定する際の配向角が延伸方向(荷重印加方向)に対して0°近傍の場合、応力光学係数Crの符号は正となる。この場合、重合体の固有複屈折は正である。一方、配向角が延伸方向に対して90°近傍の場合、応力光学係数Crの符号は負となる。この場合、重合体の固有複屈折は負である。Crの絶対値が大きいほど、延伸による複屈折の発現性が高くなる。
試験片の面内位相差Re(nm)は、位相差測定装置(王子計測機器製、KOBRA-WR)を用いて求めた。面内位相差Reは、試験片(フィルム)面内の遅相軸方向(フィルム面内において最大の屈折率を示す方向)の屈折率nx、同面内の進相軸方向(遅相軸方向と直交する方向)の屈折率ny、およびフィルムの厚さd(nm)を用いて、式(nx−ny)×dにより示される値である。nx−nyの値が面内複屈折Δnに相当する。
(実施例1)
14.90質量部のAcAAMと、84.75質量部のクロロホルムおよび0.068質量部のアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)とを反応容器に収容し、容器内を窒素置換した。次に、容器を60℃のオイルバスにより10時間加熱して、AcAAMの溶液重合を進行させた。次に、形成された重合溶液を過剰のメチルエチルケトンに投入して再沈殿させた後、得られた沈殿物を圧力0.13kPa、温度60℃の条件下で1時間以上真空乾燥して揮発成分を除去し、前駆重合体である固体状の重合体(1−1)を得た。重合体(1−1)のTgは198℃であった。重合体(1−1)は、AcAAMのホモポリマーである。
次に、重合体(1−1)を圧力0.13kPa、温度240℃の条件で1時間加熱して、固体状の重合体(1−2)を得た。重合体(1−2)のTgは300℃までの上記測定温度では評価できなかったことから、300℃を超えると考えられる。
重合体(1−1)および(1−2)のIR評価結果を図1に示す。図1には、重合体(1−1)および(1−2)のIRスペクトルの他、重合体(1−2)のIRスペクトルから重合体(1−1)のIRスペクトルを差し引いた差分を併せて示す。差分スペクトルに現れている吸収ピークが、240℃での上記加熱により形成された重合体(1−2)の分子構造に対応していることになる。なお、図1の縦軸は「吸収」を示すが、差分スペクトルを含む3つのスペクトルの比較をより容易にするために各スペクトルのベースラインを互いにオフセットさせて表示していることから、図1の縦軸には具体的な数値を記載していない。以降の図4についても同様である。
図1に示すように、差分スペクトルには、ピロリジノン環構造のカルボニル基の伸縮振動に帰属される吸収ピーク(波数1704cm-1)が確認され、240℃の上記加熱により、重合体(1−2)にピロリジノン環構造が形成されていることが確認された。
重合体(1−1)および(1−2)の1H−NMR評価結果を図2,3にそれぞれ示す。図2に示すように、重合体(1−1)のNMRスペクトルでは、AcAAM単位のアセトアミド基に帰属されるピークが1.89−1.96ppmに、メチルエステル構造に帰属されるピークが3.61−3.69ppmに、第二級アミド構造に帰属されるピークが6.65ppmに、それぞれ確認された。一方、重合体(1−2)のNMRスペクトルでは、AcAAM単位の第二級アミド構造に帰属されるピークが消失するとともに、環構造を構成するアセチルアミド基に帰属される大きなピークが2.54ppmに新たに確認された。すなわち、重合体(1−1)は式(1)に示すピロリジノン環構造を有さないが、重合体(1−2)は式(1)に示すピロリジノン環構造を主鎖に有すること、すなわち、上記加熱により式(1)に示すピロリジノン環構造が形成されたことが確認された。
これとは別に、重合体(1−2)の環化率を、逆ゲート付きデカップリング法による13C−NMR測定から求めた。13C−NMRプロファイルにおける各ピークの帰属は、edited−HSQCにより行った。重合体(1−2)の環化率は、主鎖構造中の4級炭素に帰属されるピークの積分値と、メトキシ基の1級炭素に帰属されるピークの積分値とから求めた。環化反応が進行していない場合、モノマー構造から、主鎖構造中の4級炭素に帰属されるピークの積分値と、メトキシ基の1級炭素に帰属されるピークの積分値とが同じになると想定される。環化反応が進行すると、脱メタノール反応によってメトキシ基のピーク積分値が小さくなる一方で、主鎖構造中の4級炭素のピーク積分値は変化しないと想定される。すなわち、環化反応後において、メトキシ基のピーク積分値と主鎖構造中の4級炭素のピーク積分値との比は、残メトキシ基の割合を示し、これは、当該比が環化反応の未反応率を示すことを意味する。このようにして求めた重合体(1−2)の未反応率(未環化率)は26%であり、すなわち環化率は74%であった。環化率が50%以上であることからも、重合体(1−2)には、2以上のピロリジノン環構造が連続するスピロ環構造が形成されていることが想定される。
(実施例2)
1.07質量部のAcAAMおよび14.15質量部のMMAと、84.75質量部のクロロホルムおよび0.032質量部のAIBNとを反応容器に収容し、容器内を窒素置換した。次に、容器を60℃のオイルバスにより10時間加熱して、AcAAMとMMAとの溶液重合を進行させた。次に、形成された重合溶液を過剰のイソプロピルアルコールに投入して再沈殿させた後、得られた沈殿物を圧力0.13kPa、温度60℃の条件下で1時間以上真空乾燥して揮発成分を除去し、前駆重合体である固体状の重合体(2−1)を得た。重合体(2−1)のTgは129℃であり、重合体(2−1)におけるAcAAM単位の含有率は41.7質量%であった。重合体(2−1)は、AcAAMとMMAとの共重合体である。
次に、重合体(2−1)を圧力0.13kPa、温度240℃の条件で1時間加熱して、固体状の重合体(2−2)を得た。重合体(2−2)のTgは148℃であった。
(実施例3)
2.10質量部のAcAAMおよび13.10質量部のMMAと、84.75質量部のクロロホルムおよび0.032質量部のAIBNとを反応容器に収容し、容器内を窒素置換した。次に、密栓した容器を60℃のオイルバスにより10時間加熱して、AcAAMとMMAとの溶液重合を進行させた。次に、形成された重合溶液を過剰のイソプロピルアルコールに投入して再沈殿させた後、得られた沈殿物を圧力0.13kPa、温度60℃の条件下で1時間以上真空乾燥して揮発成分を除去し、前駆体である固体状の重合体(3−1)を得た。重合体(3−1)のTgは138℃であり、重合体(3−1)におけるAcAAM単位の含有率は54.8質量%であった。重合体(3−1)は、AcAAMとMMAとの共重合体である。
次に、重合体(3−1)を圧力0.13kPa、温度240℃の条件で1時間加熱して、固体状の重合体(3−2)を得た。重合体(3−2)のTgは171℃であった。
重合体(3−1)および(3−2)のIR評価結果を図4に示す。図4には、重合体(3−1)および(3−2)のIRスペクトルの他、重合体(3−2)のIRスペクトルから重合体(3−1)のIRスペクトルを差し引いた差分を併せて示す。差分スペクトルに現れている吸収ピークが、240℃での上記加熱により形成された重合体(3−2)の分子構造に対応していることになる。
図4に示すように、差分スペクトルには、ピロリジノン環構造のカルボニル基の伸縮振動に帰属される吸収ピーク(波数1704cm-1)が確認され、240℃の上記加熱により、重合体(3−2)にピロリジノン環構造が形成されていることが確認された。
重合体(3−1)および(3−2)の1H−NMR評価結果を図5,6にそれぞれ示す。図5に示すように、重合体(3−1)のNMRスペクトルでは、AcAAM単位のアセトアミド基に帰属されるピークが1.84−1.90ppmに、メチルエステル構造に帰属されるピークが3.58−3.69ppmに、第二級アミド構造に帰属されるピークが6.32ppmに、それぞれ確認された。一方、重合体(3−2)のNMRスペクトルでは、AcAAM単位の第二級アミド構造に帰属されるピークが消失するとともに、環構造を構成するアセチルアミド基に帰属される大きなピークが2.49ppmに新たに確認された。すなわち、重合体(3−1)は式(1)に示すピロリジノン環構造を有さないが、重合体(3−2)は式(1)に示すピロリジノン環構造を主鎖に有すること、すなわち、上記加熱により式(1)に示すピロリジノン環構造が形成されたことが確認された。
重合体(3−2)のCrは+65×10-11Pa-1であり、重合体(3−2)は正の固有複屈折を有していた。そして、このCrの値が正であることは、MMA単位とAcAAM単位との環化反応により形成されるピロリジノン環構造の具体的な分子構造から判断すると、当該環構造が重合体(3−2)の主鎖に存在していることをさらに支持している。
(実施例4)
3.07質量部のAcAAMおよび12.16質量部のMMAと、84.75質量部のクロロホルムおよび0.032質量部のAIBNとを反応容器に添加し、容器内を窒素置換した。次に、容器を60℃のオイルバスにより10時間加熱して、AcAAMとMMAとの容器重合を進行させた。次に、形成された重合溶液を過剰のイソプロピルアルコールに投入して再沈殿させた後、得られた沈殿物を圧力0.13kPa、温度60℃の条件下で1時間以上真空乾燥して揮発成分を除去し、前駆体である固体状の重合体(4−1)を得た。重合体(4−1)のTgは159℃であり、重合体(4−1)におけるAcAAM単位の含有率は81.7質量%であった。重合体(4−1)は、AcAAMとMMAとの共重合体である。
次に、重合体(4−1)を圧力0.13kPa、温度240℃の条件で1時間加熱して、固体状の重合体(4−2)を得た。重合体(4−2)のTgは179℃であった。
(参考例)
市販のポリメタクリル酸メチル(PMMA、住友化学製スミペックスEX)のTgおよびCrを評価したところ、Tgは105℃であり、Crは−15×10-11Pa-1であった。
各実施例で作製した前駆重合体の組成ならびに前駆重合体および重合体のTgを、以下の表1にまとめる。
Figure 0006809776
本発明の新規重合体は、例えば、光学部材の用途に使用できる。光学部材は、例えば、レンズ、プリズム、光ファイバー、光学フィルムである。

Claims (20)

  1. 以下の式(1)に示すピロリジノン環構造を主鎖に有する重合体。
    Figure 0006809776
    式(1)において、R1は、水素原子または−COR4基であり、R4は、水素原子、メチル基、フェニル基、炭素数2〜18の直鎖アルキル基、または炭素数3〜18のシクロアルキル基である。R2は、水素原子または−COOR5基であり、R5は、水素原子、メチル基、フェニル基、炭素数2〜18の直鎖アルキル基、または炭素数3〜18のシクロアルキル基である。R3は、水素原子、メチル基または−NHCOR6基であり、R6は、水素原子、メチル基、フェニル基、炭素数2〜18の直鎖アルキル基、または炭素数3〜18のシクロアルキル基である。ただし、R2が水素原子である場合には、R3は−NHCOR6基であり、R3が水素原子またはメチル基である場合には、R2は−COOR5基である。また、R 1 が水素原子であり、R 2 が−COOR 5 基であり、R 5 がメチル基であり、かつ、R 3 が水素原子またはメチル基である場合を除く。
    式(1)に示すピロリジノン環構造は前記主鎖上で連続していてもよく、この場合、互いに隣接する当該環構造は、一方の前記環構造の3位の炭素原子と他方の前記環構造の5位の炭素原子とが同一の炭素原子であるスピロ環構造を形成し、当該3位の炭素原子に結合したR3および当該5位の炭素原子に結合したR2は存在しない。
  2. (メタ)アクリル酸エステル単位および(メタ)アクリル酸単位から選ばれる少なくとも1種を構成単位としてさらに有する請求項1に記載の重合体。
  3. 以下の式(1)に示すピロリジノン環構造を主鎖に有し、
    (メタ)アクリル酸エステル単位および(メタ)アクリル酸単位から選ばれる少なくとも1種を構成単位としてさらに有する重合体。
    Figure 0006809776
    式(1)において、R 1 は、水素原子または−COR 4 基であり、R 4 は、水素原子、メチル基、フェニル基、炭素数2〜18の直鎖アルキル基、または炭素数3〜18のシクロアルキル基である。R 2 は、水素原子または−COOR 5 基であり、R 5 は、水素原子、メチル基、フェニル基、炭素数2〜18の直鎖アルキル基、または炭素数3〜18のシクロアルキル基である。R 3 は、水素原子、メチル基または−NHCOR 6 基であり、R 6 は、水素原子、メチル基、フェニル基、炭素数2〜18の直鎖アルキル基、または炭素数3〜18のシクロアルキル基である。ただし、R 2 が水素原子である場合には、R 3 は−NHCOR 6 基であり、R 3 が水素原子またはメチル基である場合には、R 2 は−COOR 5 基である。
    式(1)に示すピロリジノン環構造は前記主鎖上で連続していてもよく、この場合、互いに隣接する当該環構造は、一方の前記環構造の3位の炭素原子と他方の前記環構造の5位の炭素原子とが同一の炭素原子であるスピロ環構造を形成し、当該3位の炭素原子に結合したR 3 および当該5位の炭素原子に結合したR 2 は存在しない。
  4. 前記ピロリジノン環構造を含む構成単位Pとして、当該ピロリジノン環構造のみから構成される単位、および/または以下の式(2)に示す単位Xを有する請求項1〜のいずれかに記載の重合体。
    Figure 0006809776
    式(2)において、R3は、水素原子、メチル基または−NHCOR6基であり、R6は、水素原子、メチル基、フェニル基、炭素数2〜18の直鎖アルキル基、または炭素数3〜18のシクロアルキル基である。R4およびR5は、互いに独立して、水素原子、メチル基、フェニル基、炭素数2〜18の直鎖アルキル基、または炭素数3〜18のシクロアルキル基である。
  5. 前記式(2)において、R3が−NHCOR6基であり、R4、R5およびR6が互いに独立して、メチル基、炭素数2〜18の直鎖アルキル基、または炭素数3〜18のシクロアルキル基である請求項に記載の重合体。
  6. ガラス転移温度が110℃以上である請求項1〜のいずれかに記載の重合体。
  7. 赤外吸収スペクトルにおいて、波数1690cm-1以上1710cm-1以下の範囲に、ピロリジノン環構造のカルボニル基の伸縮振動に帰属される吸収ピークが観察される請求項1〜のいずれかに記載の重合体。
  8. 200℃以上で加熱したときに、
    加熱前後の赤外吸収スペクトルの差分において、波数1690cm-1以上1710cm-1以下の範囲に吸収ピークが観察される請求項1〜のいずれかに記載の重合体。
  9. 残留アルコールの含有量が10〜3000ppmである請求項1〜のいずれかに記載の重合体。
  10. 前記構成単位Pが、前記ピロリジノン環構造のみから構成される単位、および/または前記単位Xであり、
    前記構成単位Pの含有率が30質量%以上である請求項またはに記載の重合体。
  11. 以下の式(1)に示すピロリジノン環構造を主鎖に有し、
    前記ピロリジノン環構造を含む構成単位Pとして、当該ピロリジノン環構造のみから構成される単位、および/または以下の式(2)に示す単位Xのみを有し、
    (メタ)アクリル酸エステル単位を構成単位としてさらに有し、
    前記構成単位Pおよび前記(メタ)アクリル酸エステル単位の含有率の合計が50質量%以上である重合体。
    Figure 0006809776
    式(1)において、R 1 は、水素原子または−COR 4 基であり、R 4 は、水素原子、メチル基、フェニル基、炭素数2〜18の直鎖アルキル基、または炭素数3〜18のシクロアルキル基である。R 2 は、水素原子または−COOR 5 基であり、R 5 は、水素原子、メチル基、フェニル基、炭素数2〜18の直鎖アルキル基、または炭素数3〜18のシクロアルキル基である。R 3 は、水素原子、メチル基または−NHCOR 6 基であり、R 6 は、水素原子、メチル基、フェニル基、炭素数2〜18の直鎖アルキル基、または炭素数3〜18のシクロアルキル基である。ただし、R 2 が水素原子である場合には、R 3 は−NHCOR 6 基であり、R 3 が水素原子またはメチル基である場合には、R 2 は−COOR 5 基である。
    式(1)に示すピロリジノン環構造は前記主鎖上で連続していてもよく、この場合、互いに隣接する当該環構造は、一方の前記環構造の3位の炭素原子と他方の前記環構造の5位の炭素原子とが同一の炭素原子であるスピロ環構造を形成し、当該3位の炭素原子に結合したR 3 および当該5位の炭素原子に結合したR 2 は存在しない。
    Figure 0006809776
    式(2)において、R3は、水素原子、メチル基または−NHCOR6基であり、R6は、水素原子、メチル基、フェニル基、炭素数2〜18の直鎖アルキル基、または炭素数3〜18のシクロアルキル基である。R4およびR5は、互いに独立して、水素原子、メチル基、フェニル基、炭素数2〜18の直鎖アルキル基、または炭素数3〜18のシクロアルキル基である。
  12. 請求項1〜1のいずれかに記載の重合体を含む樹脂組成物。
  13. 請求項1に記載の樹脂組成物から構成される樹脂成形体。
  14. 光学部材である請求項1に記載の樹脂成形体。
  15. 以下の式(1)に示すピロリジノン環構造を主鎖に有する重合体の製造方法であって、
    ビニルモノマーを含む単量体群の重合により形成された前駆重合体であって、エステル基および/またはカルボキシル基とアミド基とを側鎖として有する前駆重合体を環化して、前記重合体を得る、重合体の製造方法。
    Figure 0006809776
    式(1)において、R 1 は、水素原子または−COR 4 基であり、R 4 は、水素原子、メチル基、フェニル基、炭素数2〜18の直鎖アルキル基、または炭素数3〜18のシクロアルキル基である。R 2 は、水素原子または−COOR 5 基であり、R 5 は、水素原子、メチル基、フェニル基、炭素数2〜18の直鎖アルキル基、または炭素数3〜18のシクロアルキル基である。R 3 は、水素原子、メチル基または−NHCOR 6 基であり、R 6 は、水素原子、メチル基、フェニル基、炭素数2〜18の直鎖アルキル基、または炭素数3〜18のシクロアルキル基である。ただし、R 2 が水素原子である場合には、R 3 は−NHCOR 6 基であり、R 3 が水素原子またはメチル基である場合には、R 2 は−COOR 5 基である。
    式(1)に示すピロリジノン環構造は前記主鎖上で連続していてもよく、この場合、互いに隣接する当該環構造は、一方の前記環構造の3位の炭素原子と他方の前記環構造の5位の炭素原子とが同一の炭素原子であるスピロ環構造を形成し、当該3位の炭素原子に結合したR 3 および当該5位の炭素原子に結合したR 2 は存在しない。
  16. 前記前駆重合体が、
    エステル基および/またはカルボキシル基を有するビニルモノマーAと、アミド基を有するビニルモノマーBとを含む単量体群の重合により形成された共重合体、または、
    エステル基および/またはカルボキシル基と、アミド基とを有するビニルモノマーCを含む単量体群の重合体により形成された重合体である請求項1に記載の重合体の製造方法。
  17. 前記前駆重合体の環化を、当該前駆重合体の加熱により進行させる請求項1または16に記載の重合体の製造方法。
  18. 前記加熱の温度が150℃以上である請求項17に記載の重合体の製造方法。
  19. 前記加熱を減圧下にて進行させる請求項17または18に記載の重合体の製造方法。
  20. 前記加熱を、絶対圧にして26.6kPa以下の減圧下にて進行させる請求項17または18に記載の重合体の製造方法。
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