JP2005010294A - 積層体 - Google Patents
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Abstract
【課題】偏光膜、位相差フィルム、偏光膜保護フィルムからなる薄さ、軽量性に優れ、高温高湿条件下において耐久性にも優れ、偏光板としても用いることのできる積層体を提供する。
【解決手段】数平均分子量が1×103以上5×106以下であるマレイミド・オレフィン共重合体99〜40重量%、アクリロニトリル単位21〜45重量%を含むアクリロニトリル・スチレン共重合体1〜60重量%からなる樹脂組成物を延伸加工して得られる位相差フィルム(A)を偏光膜(B)の片面に積層し、偏光膜(B)の他方の面に偏光膜保護フィルム(C)を積層してなる積層体。
【選択図】 選択図なし。
【解決手段】数平均分子量が1×103以上5×106以下であるマレイミド・オレフィン共重合体99〜40重量%、アクリロニトリル単位21〜45重量%を含むアクリロニトリル・スチレン共重合体1〜60重量%からなる樹脂組成物を延伸加工して得られる位相差フィルム(A)を偏光膜(B)の片面に積層し、偏光膜(B)の他方の面に偏光膜保護フィルム(C)を積層してなる積層体。
【選択図】 選択図なし。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、偏光膜に位相差フィルム及び偏光膜保護フィルムを積層してなる積層体に関するものであり、更に詳細には、偏光膜、位相差フィルム、偏光膜保護フィルムからなる薄さ、軽量性に優れ、高温高湿条件下において耐久性にも優れ、偏光板としても用いることのできる積層体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、液晶表示装置(以下、LCDと記す。)は低電圧、低消費電力、軽量化である特徴を活かし、携帯機器、移動体通信機器、移動体搭載機器、パーソナルコンピュータ、テレビ、家庭用電気製品、オーディオ製品、産業機器等の表示装置として広く採用されている。LCDは、偏光膜を有する2枚の偏光板により液晶分子を挟み込み、偏光板の光フィルター機能と液晶分子の複屈折特性を利用して白黒表示を行う光学素子として知られ、LCDには偏光膜、該偏光膜の保護フィルム(以下、偏光膜保護フィルムと記す。)、位相差フィルム、光拡散フィルム、透明電極フィルム、防眩フィルム、反射防止フィルムなどの光学用高分子フィルムが用いられている。
【0003】
そして、該光学用高分子フィルムのなかでも位相差フィルム、偏光膜保護フィルムは、偏光膜の両面に偏光膜保護フィルムを積層し、さらに位相差フィルムを積層した積層体(一般的には、偏光板、場合によっては偏光フィルムとも称される。)として用いられる。なお、ここでいう位相差フィルムとは、透明フィルムを延伸配向してなるフィルムであり、その機能は、液晶分子と同様、フィルムの複屈折特性を利用して光の偏光状態を変化させることであり、LCDの表示特性、すなわちコントラストや視野角特性を向上させるために用いられる。一方、偏光膜保護フィルムは、偏光膜を保護する目的で用いられる。偏光膜は、自然光を直線偏光に変換する機能を有するフィルムであり、ポリビニルアルコール樹脂フィルムに二色性を示すヨウ素や色素を含有させて一軸延伸したフィルムが広く一般的に用いられている。ところが、該偏光膜は機械強度が低く、水、熱等による寸法変化、及び/又は水、熱、紫外線等による偏光特性の悪化が起こり易いため、通常、偏光膜保護フィルムを両面に貼り合わせた積層体がLCDに用いられている。また、位相差フィルムは偏光膜保護フィルムの偏光膜との貼り合せ面とは異なる側の面に粘着剤を介して貼り合せることが一般的である。
【0004】
従来、位相差フィルムとしては、例えばポリカーボネート樹脂(以下、PCと記す。)からなる位相差フィルムが良く知られており、偏光膜保護フィルムとしては、トリアセチルセルロース樹脂(以下、TACと記す。)からなる偏光膜保護フィルムが広く使用されている。
【0005】
また、マレイミド成分とオレフィン成分を有する共重合体からなる位相差フィルムが開示されており、保護フィルムとして用いることが提案されている(例えば特許文献1参照。)。さらに、マレイミド・オレフィン共重合体1〜99重量%、アクリロニトリル単位を21〜45重量%含むアクリロニトリル・スチレン共重合体99〜1重量%からなる組成物よりなる透明性フィルムが提案されている(例えば特許文献2参照。)。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−214325号公報
【特許文献2】
特開2000−080240号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そして、近年LCDの分野においてもLCD自体の軽量化、製造工程の簡略化によるコスト低減等の要求が高まりつつある。その中で、偏光板のような積層体の軽量化、製造工程の簡略化を達成しようとする場合、偏光膜保護フィルムを間に介せずに位相差フィルムを偏光膜に貼り合せ、位相差フィルムを偏光膜保護フィルムとして用いることによりフィルムの構成及び貼り合せ工程が簡略化されるとともに、LCDの特徴である薄さおよび軽量性が向上し、貼り合せコストをも軽減化することが提案される。
【0008】
しかし、従来より位相差フィルム、偏光膜保護フィルムとして用いられているPCフィルム、TACフィルムは、フィルムの応力変化に対する位相差の変化の程度を表す光弾性係数が大きいため、高温及び高温高湿下における寸法変化、曲げや反りなどのフィルムの変形に伴って発生する応力変化により位相差が変化し易い問題があり、これらの材料からは上記提案の積層体を得ることができない。
【0009】
また、特許文献1に提案された位相差フィルムは、光弾性係数は比較的小さいものではあるが、LCDに用いるには不十分である。また、フィルムとする際の成形加工性に劣り、光学フィルムに要求される高い表面平滑性や厚み精度が得られ難いといった課題がある。
【0010】
特許文献2に提案された透明フィルムは、あくまで透明であることを特徴とするフィルムに関するものであり、偏光板等の偏光膜に積層を行った積層体に関する検討は行われていない。
【0011】
そこで、本発明は、薄さ、軽量性に優れ、高温高湿条件下における耐久性にも優れ、偏光板としても用いることのできる積層体を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、特定のマレイミド・オレフィン共重合体及び特定組成からなるアクリロニトリル・スチレン共重合体を特定の割合で配合してなる樹脂組成物からなる位相差フィルムを偏光膜の一方の面に積層し、偏光膜の他方の面に偏光膜保護フィルムを積層してなる積層体が耐久性、薄さ、軽量性に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
即ち、本発明は、下記一般式(I)で示される単位40〜60モル%、下記一般式(II)で示される単位60〜40モル%からなり、数平均分子量が1×103以上5×106以下であるマレイミド・オレフィン共重合体99〜40重量%、アクリロニトリル単位21〜45重量%を含むアクリロニトリル・スチレン共重合体1〜60重量%からなる樹脂組成物を延伸加工して得られる位相差フィルム(A)を偏光膜(B)の片面に積層し、偏光膜(B)の他方の面に偏光膜保護フィルム(C)を積層してなることを特徴とする積層体に関するものである。
【0014】
【化3】
(R1は水素又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。)
【0015】
【化4】
(R2、R3はそれぞれ独立して水素又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。)
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0017】
本発明の積層体を構成する位相差フィルム(A)は、上記一般式(I)で示される単位40〜60モル%、上記一般式(II)で示される単位60〜40モル%からなり、数平均分子量が1×103以上5×106以下であるマレイミド・オレフィン共重合体99〜40重量%、アクリロニトリル単位21〜45重量%を含むアクリロニトリル・スチレン共重合体1〜60重量%からなる樹脂組成物を延伸加工して得られる位相差フィルムである。
【0018】
ここで、R1としては水素又は炭素数1〜6のアルキル基であり、炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができ、その中でも、特に耐熱性、成形性に優れる位相差フィルムが得られることからメチル基であることが好ましい。又、R2及びR3は各々独立して水素又は炭素数1〜6のアルキル基であり、炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができ、その中でも、特に耐熱性、成形性に優れる位相差フィルムが得られることからメチル基であることが好ましい。
【0019】
このようなマレイミド・オレフィン共重合体は、例えばマレイミド類とオレフィン類とのラジカル共重合反応により得ることができる。その際、一般式(I)で示される単位を誘導する化合物としては、例えばマレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−n−プロピルマレイミド、N−i−プロピルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−i−ブチルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド、N−n−ペンチルマレイミド、N−n−ヘキシルマレイミド、N−シクロプロピルマレイミド、N−シクロブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド類が例示され、耐熱性、機械特性、透明性に優れる位相差フィルムが得られることから特にN−メチルマレイミドが好ましい。さらに、これら化合物は1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0020】
また、一般式(II)で示される単位を誘導する化合物としては、例えばイソブテン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、2−メチル−1−ヘキセン等のオレフィン類が例示でき、このうち耐熱性、機械特性、透明性に優れる位相差フィルムが得られることから特にイソブテンが好ましい。また、これら化合物は1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0021】
マレイミド・オレフィン共重合体における一般式(I)で示される単位は、40〜60モル%であり、特に耐熱性、機械特性に優れるフィルムとなることから45〜55モル%であることが好ましい。ここで、一般式(I)で示される単位が60モル%を越える場合、得られるフィルムは脆くなる。一方、40モル%未満の場合、得られるフィルムの耐熱性が低下する。
【0022】
更に、マレイミド・オレフィン共重合体は、必要に応じ本発明の目的を損なわない範囲で他のモノマー成分より誘導される単位を含有するものであってもよく、そのような他のモノマー成分としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン誘導体;メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸又はそのエステル類;アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸又はそのエステル類;酢酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピオビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;無水マレイン酸;アクリロニトリルより選ばれる1種類以上の化合物が挙げられ、その含有率としては5モル%以下であることが好ましい。
【0023】
マレイミド・オレフィン共重合体は、公知の重合方法、例えば塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、沈殿重合法、及び乳化重合法のいずれもが採用可能であり、その中でも透明性、色調に優れるフィルムが得られることから沈殿重合法により得られるものであることが好ましい。
【0024】
重合反応の際に用いる重合開始剤としては、例えばベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物;2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−ブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)等のアゾ系開始剤、等が挙げられる。
【0025】
溶液重合法、沈殿重合法において用いられる溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族溶媒;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコールなどのアルコール系溶媒;シクロヘキサン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、酢酸イソプロピル、芳香族系溶媒とアルコール系溶媒の混合溶媒などが挙げられる。
【0026】
その際の重合温度は、開始剤の分解温度に応じて適宜設定することができるが、一般的には40〜150℃の範囲で行うことが好ましい。
【0027】
また、マレイミド・オレフィン共重合体は、別法として無水マレイン酸・オレフィン共重合体をアンモニア及び/又はアルキルアミンを用いて、後イミド化することによっても得ることができる。
【0028】
このような後イミド化反応は、例えば無水マレイン酸・オレフィン共重合体をメタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール溶媒;ベンゼン、トルエンなどの芳香族系溶媒;酢酸エチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶媒;芳香族系溶媒とアルコール系溶媒の混合溶媒などに溶解あるいは分散させ、アンモニア及び/又はアルキルアミンと50〜250℃の温度で反応させることによりアミド化反応とイミド化反応を連続的に行う方法、アンモニア及び/又はアルキルアミンと反応させてアミド体を得た後、該アミド体を加熱して脱水閉環させ、イミド化を行う方法、等により製造することができる。
【0029】
本発明に用いられる位相差フィルム(A)を構成するマレイミド・オレフィン共重合体は、数平均分子量(Mn)が1×103以上5×106以下であり、特に機械特性とフィルム成形時の加工性のバランスに優れることから1×104以上5×105以下が好ましい。数平均分子量が5×106を超える場合、フィルム成形時の加工性が乏しくなり、厚み精度や表面平滑性が劣るフィルムとなる。一方、数平均分子量が1×103未満の場合、得られるフィルムの機械強度が乏しくなる。ここで、本発明における数平均分子量とは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ(GPC)により求めた標準ポリスチレン換算値のことである。
【0030】
本発明で位相差フィルム(A)を構成するアクリロニトリル・スチレン共重合体としては、アクリロニトリル単位を21〜45重量%含むアクリロニトリル・スチレン共重合体である。ここで、アクリロニトリル単位が21重量%未満、又は、45重量%を越える場合、上記マレイミド・オレフィン共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体との相溶性が低下し、得られるフィルムは不透明になり、また耐熱性も低下するため、位相差フィルム(A)として用いることはできず、本発明の積層体を得ることはできない。
【0031】
位相差フィルム(A)を構成する上記マレイミド・オレフィン共重合体と上記アクリロニトリル・スチレン共重合体の配合割合は、マレイミド・オレフィン共重合体99〜40重量%とアクリロニトリル・スチレン共重合体1〜60重量%であり、特に加工性に優れ、耐熱性、光学特性のバランスに優れた位相差フィルムが得られることからマレイミド・オレフィン共重合体90〜50重量%とアクリロニトリル・スチレン共重合体10〜50重量であることが好ましい。マレイミド・オレフィン共重合体が40重量%未満である場合、フィルムの耐熱性、光線透過率が低下するため好ましくない。また、マレイミド・オレフィン共重合体が99重量%を超える場合には、光弾性係数が大きくなるため、フィルムの光学特性の安定性が不十分となり、さらに、フィルム成形時の加工性が乏しくなるため、光学フィルムに要求される高い表面平滑性や厚み精度が得られ難い問題がある。
【0032】
本発明の積層体は位相差フィルム(A)、偏光膜(B)、および偏光膜保護フィルム(C)により構成され、本発明の積層体を構成する位相差フィルム(A)は、2次元あるいは3次元方向の屈折率が制御された位相差フィルムである。フィルム面内における遅相軸方向の屈折率をNx、フィルム面内における遅相軸方向に直交する方位の屈折率をNy、フィルム表面の法線方向の屈折率をNzとした場合、延伸方法や延伸条件によって、該屈折率の大小関係が異なるフィルムとすることができる。本発明に用いることのできる位相差フィルム(A)の3次元方向の屈折率は、例えば、Nx>Ny=Nz、Nx=Ny>Nz、Nx=Ny<Nz、Nx>Ny>Nz、Nx=Nz>Ny、Nx>Nz>Nyなどの関係を有するものが好ましい。また、互いに直交する2つの軸の屈折率差である複屈折と光が透過する媒体の光路長の積で定義される位相差は、位相差フィルムの最も重要な光学特性であるため、LCDの表示特性に大きな影響を与える。位相差フィルムの位相差は、主に液晶層の位相差特性に合わせて最適化されるため、本発明に用いられる位相差フィルム(A)の面方向の位相差は、液晶層の位相差との適合性に優れることから546nmの光に対して50nm〜400nmであることが特に好ましい。
【0033】
また、本発明に用いられる位相差フィルム(A)は、一般式(I)で示される単位40〜60モル%、一般式(II)で示される単位60〜40モル%からなり、数平均分子量が1×103以上5×106以下であるマレイミド・オレフィン共重合体99〜40重量%、アクリロニトリル単位21〜45重量%を含むアクリロニトリル・スチレン共重合体60〜1重量%からなる樹脂組成物よりなる位相差フィルムを2枚以上重ね合わせてなる位相差フィルムであっても良く、例えば、特開平10−068816号公報に開示されるように、光の波長をλとした場合、位相差が1/2λとなるように制御された位相差フィルムと1/4λとなるように制御された位相差フィルムを貼り合せた位相差フィルムなどとして用いることができる。
【0034】
また、位相差フィルム(A)の位相差の斑は小さい程好ましく、特に本発明における位相差フィルム(A)の位相差の斑は、546nmの光に対して50nm以下であることが好ましく、特に30nm以下であることが好ましい。
【0035】
本発明の積層体を構成する偏光膜(B)は、偏光機能を有する膜であれば特に制限はなく、一般的に偏光膜として用いられているものでよく、そのような偏光膜としては、例えばポリビニルアルコールフィルムに二色性を示すヨウ素や色素を含有させて一軸延伸したフィルム、特開2002−905462号公報、2002−174722号公報に提案されている方法により得られる偏光膜、等を挙げることができる。
【0036】
本発明の積層体を構成する偏光膜保護フィルム(C)は、位相差フィルム(A)が積層された偏光膜(B)の面に対する他方の面を保護する目的で用いられており、該目的を満足するフィルムであれば特に制限はなく、例えば一般的に偏光膜保護フィルムとして用いられているTACからなる溶液キャスト法で作製されたフィルムを挙げることができる。また、該偏光膜保護フィルム(C)としては、特に光弾性係数の小さい特徴を有することなどから、一般式(I)で示される単位40〜60モル%、一般式(II)で示される単位60〜40モル%からなり、数平均分子量が1×103以上5×106以下であるマレイミド・オレフィン共重合体99〜40重量%、好ましくは80〜40重量%であり、アクリロニトリル単位21〜45重量%を含むアクリロニトリル・スチレン共重合体60〜1重量%、好ましくは60〜20重量%からなる樹脂組成物よりなるフィルムを偏光膜保護フィルムとして用いることが好ましい。その際には偏光膜保護フィルム(C)は位相差フィルム(A)とは逆に、光の偏光状態に影響を与えない光学等方性の高いフィルムであることが望まれるため、偏光膜保護フィルム(C)の位相差は、546nmの光に対して50nm以下であることが特に好ましい。
【0037】
本発明を構成する位相差フィルム(A)は、マレイミド・オレフィン共重合体及びアクリロニトリル・スチレン共重合体からなる樹脂組成物を成形してなる透明フィルムを用い、延伸加工することにより得られる。また、偏光膜保護フィルム(C)は、例えばマレイミド・オレフィン共重合体及びアクリロニトリル・スチレン共重合体からなる樹脂組成物を透明フィルムに成形することによって得ることができる。
【0038】
該透明フィルム(以下、原反フィルムと記す場合がある。)を得るためのフィルム成形方法は、例えば溶液キャスト法、溶融押出法、等の一般的な成形方法を行うことができる。ここで、溶液キャスト法は、高粘度の樹脂溶液(ドープ)を支持基板上に流延した後、加熱して大部分の溶媒を除去して自立性のあるフィルムとして支持基板から剥離し、さらに加熱乾燥して残りの溶媒を除去するフィルムの成膜法であり、光学等方性、厚み精度に優れるフィルムを得ることができる。一方、溶融押出法は、インフレーション法とTダイ法に大別され、いずれの溶融押出法も高い生産性を特徴とするが、厚み精度や表面平滑性の高いフィルムが得られ易いTダイ法が、原反フィルムの成形方法として好ましい。
【0039】
また、位相差フィルム(A)は、原反フィルムを延伸加工することにより得られる。延伸加工工程は、原反フィルムを成形する工程内で連続して行う工程、原反フィルムを一旦巻き取った後、該フィルムを延伸加工装置に供して延伸加工する工程、等がある。
【0040】
原反フィルムの延伸方法は、一般的にフィルム面方向に延伸するフラット法延伸とチューブ状に膨らませて延伸するチューブラ法延伸に大きく分類され、その中でも厚み及び延伸倍率を精度よく制御できるフラット法延伸を行うことが好ましい。また、フラット法延伸は、一軸延伸法と二軸延伸法に分類され、一軸延伸法としては、自由幅一軸延伸法と一定幅一軸延伸法がある。一方、二軸延伸法としては、二段階自由幅二軸延伸法、逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法があり、さらに逐次二軸延伸には全テンター方式とロールテンター方式がある。位相差フィルム(A)を製造する際の延伸方法としては、上記のいずれの延伸方法を用いても良く、要求される位相差フィルムの3次元方向の屈折率および位相差量を得るために最も適した方法を選択すればよい。
【0041】
位相差フィルム(A)を得る際の延伸条件には、特に制限はなく、その中でもフィルムに厚みむらが発生し難く、得られるフィルムが機械的特性、光学的特性に優れることから示差走査熱量計(DSC)で測定した樹脂組成物のガラス転移温度に対して1℃〜40℃高い延伸温度条件のもと、延伸倍率1.1〜3倍の範囲に延伸することが特に好ましい。
【0042】
また、本発明を構成する偏光膜保護フィルム(C)も、必要に応じ位相差フィルム(A)と同様、延伸加工されたものであってもよい。
【0043】
本発明は、上記位相差フィルム(A)を偏光膜(B)の片面に積層し、偏光膜(B)の他方の面に偏光膜保護フィルム(C)を積層してなる薄さ、軽量性に優れ、高温高湿条件下における耐久性にも優れた積層体である。ここで、位相差フィルム(A)と偏光膜(B)、および偏光膜保護フィルム(C)と偏光膜(B)の積層方法としては、積層が可能であればいかなる方法を用いてもよく、位相差フィルム(A)と偏光膜(B)との積層方法を例にとると、例えば次の方法で行うことができる。
【0044】
位相差フィルム(A)または偏光膜(B)の少なくともいずれか一方の面に粘接着剤を塗布し、該粘接着剤が乾燥及び/又は硬化する前に位相差フィルム(A)と偏光膜(B)を貼り合せ、次いで、該粘接着剤を乾燥及び/又は硬化させる方法。また、該粘接着剤としては、例えばエマルジョン型粘接着剤、有機溶剤系または水系のポリマー溶液型粘接着剤、溶剤系または非溶剤系の二液反応型粘接着剤、紫外線硬化型粘接着剤、加熱硬化型粘接着剤、常温硬化型粘接着剤、触媒硬化型粘接着剤、ホットメルト接着剤等を挙げることができる。位相差フィルム(A)と偏光膜(B)の間の粘接着層、保護フィルム(C)と偏光膜(B)の間の粘接着層のそれぞれの厚みは、通常0.1〜50μmであることが好ましく、特に0.5〜10μmであることが好ましい。
【0045】
本発明の積層体は、撓み難くハンドリング性に優れ、薄さと軽量性を向上させることが可能となることから厚みが60〜250μmであることが好ましい。
【0046】
本発明の積層体は、発明の主旨を超えない範囲で添加剤を含有した位相差フィルム(A)、偏光膜保護フィルム(C)よりなるものであってもよく、その際の添加剤の添加方法としては、樹脂組成物を製造する工程で添加する方法、樹脂組成物および添加剤をドライブレンドしてフィルム成形に供する方法等が挙げられる。また、該添加剤は粘接着剤(層)に含有されていてもよい。
【0047】
該添加剤としては、例えば界面活性剤、高分子電解質、導電性錯体、無機フィラー、顔料、染料、酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤等の一般的な添加剤が挙げられ、以下にその詳細を示すが、本発明はこれらになんら制限されるものではない。
【0048】
酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、その他酸化防止剤が挙げられ、これら酸化防止剤はそれぞれ単独で用いてもよく、それぞれを併用して用いても良い。そして、相乗的に酸化防止作用が向上することからヒンダードフェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤を併用して用いることが好ましく、その際には例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤100重量部に対してリン系酸化防止剤を100〜500重量部で混合して使用することが特に好ましい。また、酸化防止剤の添加量としては、位相差フィルム(A)、偏光膜保護フィルム(C)を構成する樹脂又は樹脂組成物、好ましくはマレイミド・オレフィン共重合体及びアクリロニトリル・スチレン共重合体からなる樹脂組成物100重量部に対して0.001〜2重量部が好ましく、特に0.01〜1重量部の範囲であることが好ましい。
【0049】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えばペンタエリスリトール−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、チオジエチレン−ビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド)、ジエチル((3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル)メチル)ホスフェート、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−t−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス(3−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート)、ヘキサメチレン−ビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス((4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−t−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンなどが挙げられる。
【0050】
リン系酸化防止剤としては、例えばトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル)エチルエステル亜りん酸、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)(1,1−ビフェニル)−4,4’−ジイルビスホスフォナイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトール−ジホスファイト、テトラキス(2,4−t−ブチルフェニル)(1,1−ビフェニル)−4,4’−ジイルビスホスフォナイト、ジ−t−ブチル−m−クレジル−ホスフォナイト、などが挙げられる。
【0051】
また、ヒンダードアミン系光安定剤を用いることができ、ヒンダードアミン系光安定剤としては、得られるフィルムの熱着色抑制効果に優れることから分子量が1000以上のものが好ましく、特に1500以上であることが好ましい。さらに、ヒンダードアミン系光安定剤の添加量は、熱着色防止効果および光安定化効果に優れることから位相差フィルム(A)、偏光膜保護フィルム(C)を構成する樹脂又は樹脂組成物、好ましくはマレイミド・オレフィン共重合体及びアクリロニトリル・スチレン共重合体からなる樹脂組成物100重量部に対して0.01重量部〜1.5重量部を用いることが好ましく、特に0.05重量部〜1.0重量部が好ましく、さらに0.1重量部〜0.5重量部であることが好ましい。
【0052】
このようなヒンダードアミン系光安定剤としては、例えばポリ((6−モルフォリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ))(分子量1600)、ポリ((6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5―トリアジン−2、4−ジイル)((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ))(分子量2000〜3100)、ジブチルアミン−1,3,5−トリアジン−N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物(分子量2600〜3400)、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス( N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物(分子量2000以上)、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン縮合物(分子量3100〜4000)などが挙げられ、これらは一種類以上で用いることができる。
【0053】
紫外線吸収剤として、例えばベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、トリアジン、ベンゾエートなどの紫外線吸収剤を必要に応じて添加することもできる。
【0054】
また、滑剤が添加されていても良く、滑剤の添加量は1〜10000ppmが好ましく、特に5〜2000ppmが好ましく、さらに10〜500ppmであることが好ましい。そのような滑剤としては、例えば流動パラフィン、天然パラフィン、ポリエチレンワックスなどの脂肪族炭化水素系滑剤;セチルアルコール、ステアリルアルコール、ステアリン酸などの高級脂肪族系アルコール・高級脂肪酸系滑剤;ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、パルミチン酸アミド、メチレンビスステアロアミドなどの脂肪族アマイド系滑剤;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウムなどの金属石鹸系滑剤;ステアリン酸ブチル、ステアリン酸エチレングリコールなどの脂肪酸エステル系滑剤;複合滑剤などが挙げられる。
【0055】
【実施例】
以下に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によりなんら制限されるものではない。
【0056】
実施例に示された諸物性は以下の方法により測定した。
【0057】
〜数平均分子量〜
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)(東ソー株式会社製、商品名HLC−802A)を用い測定したマレイミド・オレフィン共重合体の溶出曲線により、標準ポリスチレン換算値として求めた。
【0058】
〜マレイミド・オレフィン共重合体、アクリロニトリル・スチレン共重合体の組成比〜
元素分析、1H−NMR測定により求めた。
【0059】
〜樹脂又は樹脂組成物のガラス転移温度〜
示差走査熱量計(セイコー電子工業株式会社製、商品名DSC200)を用い、昇温速度10℃/分で測定した。
【0060】
〜フィルムおよび積層体の厚み〜
ダイヤルゲージ(株式会社ミツトヨ製、商品名ID−C125B)を用いてフィルム、積層体の中心部を測定した。
【0061】
〜フィルムおよび積層体の厚み斑〜
フィルムおよび積層体の中心部および端部から15mm中心側に位置する部分の厚みを測定し、2点間の厚みの差を厚み斑とした。
【0062】
〜フィルムおよび積層体の位相差〜
全自動複屈折計(王子計測機器株式会社製、商品名KOBRA−21ADH)を用い、測定波長546nmの条件で測定した。
【0063】
〜積層体の加熱収縮率〜
JIS−Z1709に準拠し、フィルムMD方向(流れ方向)の加熱収縮率を測定した。
【0064】
〜高温試験〜
得られた積層体を温度120℃、1時間の環境に放置し、位相差及び加熱収縮率を測定した。
【0065】
加熱放置の前後による位相差の差を高温試験評価の1つとした。
【0066】
〜高温高湿試験〜
得られた積層体を温度60℃、湿度90%、100時間の環境に放置し、位相差及び加熱収縮率を測定した。
【0067】
加熱放置の前後による位相差の差を高温高湿試験評価の1つとした。
【0068】
合成例1(マレイミド・オレフィン共重合体の合成)
攪拌機、窒素導入管、温度計および脱気管の付いた反応釜にN−メチルマレイミド100重量部に対し、t−ブチルパーオキシネオデカノエート0.67重量部およびトルエンとメタノールの混合溶媒(1:1重量比)1050重量部を仕込み、窒素で数回パージした後、イソブテン400重量部を仕込み、60℃で6時間反応を行った。得られたN−メチルマレイミド・イソブテン共重合体粒子を遠心分離後乾燥した。得られたN−メチルマレイミド・イソブテン共重合体の元素分析結果(C;64.7重量%、H;7.8重量%、N;8.4重量%)より、生成N−メチルマレイミド・イソブテン共重合体中のN−メチルマレイミド単位及びイソブテン単位は、それぞれ50モル%であった。得られたN−メチルマレイミド・イソブテン共重合体の数平均分子量(Mn)は90000であった。
【0069】
作製例1(位相差フィルムの作製)
合成例1により得られたN−メチルマレイミド・イソブテン共重合体80重量%およびアクリロニトリル含量30重量%のアクリロニトリル・スチレン共重合体20重量%をドライブレンドした後、30mmφ2軸押出機(株式会社日本製鋼所製、商品名TEX30)に供し、溶融混練の後、ペレタイズした。得られた樹脂組成物ペレットのガラス転移温度は140℃であった。
【0070】
得られた樹脂組成物ペレットをTダイ溶融押出法によりフィルム化し、両端25mmの部分を裁断して幅約200mm、厚み170μm、厚み斑2μmのフィルムを得た。得られたフィルムは厚み精度、表面平滑性に優れていた。
【0071】
該フィルムを15cm四方角に裁断して2軸延伸試験装置(株式会社東洋精機製作所製)に設置し、フィルム温度を150℃に加熱した後、一定幅となるように1軸方向に延伸速度15mm/分にて1.7倍に延伸して位相差フィルム(1)とした。得られた位相差フィルム(1)の厚みは100μm、位相差は304nmであった。
【0072】
作製例2(位相差フィルムの作製)
作製例1と同様にして得られた樹脂組成物ペレットをTダイ溶融押出法によりフィルム化し、両端25mmの部分を裁断して幅約200mm、厚み130μm、厚み斑2μmのフィルムを得た。得られたフィルムは厚み精度、表面平滑性に優れていた。次いで、得られたフィルムを15cm四方角に裁断して2軸延伸試験装置(株式会社東洋精機製作所製)に設置し、フィルム温度を150℃に加熱した後、一定幅となるように1軸方向に延伸速度15mm/分にて1.6倍に延伸して位相差フィルム(2)とした。得られた位相差フィルム(2)の厚みは80μm、位相差は273nmであった。
【0073】
また、作成例1と同様にして得られた樹脂組成物ペレットをTダイ溶融押出法によりフィルム化し、両端25mmの部分を裁断して幅約200mm、厚み65μm、厚み斑2μmのフィルムを得た。得られたフィルムは厚み精度、表面平滑性に優れていた。次いで、得られたフィルムを15cm四方角に裁断して2軸延伸試験装置(株式会社東洋精機製作所製)に設置し、フィルム温度を150℃に加熱した後、一定幅となるように1軸方向に延伸速度15mm/分にて1.3倍に延伸して位相差フィルム(3)とした。得られた位相差フィルム(3)の厚みは50μm、位相差は135nmであった。
【0074】
次いで、位相差フィルム(2)の一方の面にポリエステルポリオールとイソシアネートの酢酸エチル溶液をバーコーターにより塗布した後、位相差フィルム(3)に貼り合せ、120℃で1時間熱処理することにより、位相差フィルム(2)/位相差フィルム(3)を重ね合わせた積層体である位相差フィルム(4)を得た。
【0075】
比較作製例1(位相差フィルムの作製)
合成例1により得られたN−メチルマレイミド・イソブテン共重合体を30mmφ2軸押出機(株式会社日本製鋼所製、商品名TEX30)に供し、溶融混練の後、ペレタイズした。得られた樹脂ペレットのガラス転移温度は160℃であった。
【0076】
得られた樹脂ペレットをTダイ溶融押出法によりフィルム化し、両端25mmの部分を裁断して幅約200mm、厚み170μm、厚み斑12μmのフィルムを得た。得られたフィルムは厚み精度、表面平滑性に乏しいものであった。
【0077】
該フィルムを15cm四方角に裁断して2軸延伸試験装置(株式会社東洋精機製作所製)に設置し、フィルム温度を175℃に加熱した後、一定幅となるように1軸方向に延伸速度10mm/分にて1.7倍に延伸して位相差フィルム(5)とした。得られた位相差フィルム(5)の厚みは100μm、位相差は358nmであった。
【0078】
比較作製例2(位相差フィルムの作製)
厚み100μmのポリカーボネート樹脂フィルム(三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製、商品名ユーピロンFE−2000)を15cm四方角に裁断して2軸延伸試験装置(株式会社東洋精機製作所製)に設置し、フィルム温度を160℃に加熱した後、一定幅となるように1軸方向に延伸速度10mm/分にて1.3倍に延伸して位相差フィルム(6)とした。得られた位相差フィルム(6)の厚みは75μm、位相差は720nmであった。
【0079】
作製例3(偏光膜保護フィルムの作製)
合成例1により得られたN−メチルマレイミド・イソブテン共重合体60重量%およびアクリロニトリル含量30重量%のアクリロニトリル・スチレン共重合体40重量%をドライブレンドした後、30mmφ2軸押出機(株式会社日本製鋼所製、商品名TEX30)に供し、溶融混練の後、ペレタイズした。得られた樹脂組成物ペレットのガラス転移温度は129℃であった。
【0080】
得られた樹脂組成物ペレットをTダイ溶融押出法によりフィルム化し、両端25mmの部分を裁断して幅約200mm、厚み60μm、厚み斑2μmの偏光膜保護フィルムを得た。得られたフィルムは厚み精度、表面平滑性に優れていた。
【0081】
実施例1
作製例1により得られた位相差フィルム(1)および作製例3により得られた偏光膜保護フィルムの一方の面にポリエステルポリオールとイソシアネートの酢酸エチル溶液をバーコーターにより塗布した後、30μmのポリビニルアルコール−ヨウ素系偏光膜の片面に該位相差フィルム(1)を貼り、もう一方の面に偏光膜保護フィルムを貼り合せ、120℃で1時間熱処理することにより、位相差フィルム(1)/偏光膜/偏光膜保護フィルムからなる積層体を得た。
【0082】
得られた積層体の厚みは195μmであり、薄さ、軽量性に優れる積層体であった。次いで、得られた積層体を用い、高温試験および高温高湿試験を行った。その結果を表1に示す。
【0083】
比較例1
作製例3により得られた2枚の偏光膜保護フィルムの一方の面にポリエステルポリオールとイソシアネートの酢酸エチル溶液をバーコーターにより塗布した後、厚み30μmのポリビニルアルコール−ヨウ素系偏光膜の両面にそれぞれ該偏光膜保護フィルムを貼り合せ、120℃で1時間熱処理することにより、偏光膜保護フィルム/偏光膜/偏光膜保護フィルムからなる積層体(1)を得た。次いで、作製例1により得られた位相差フィルム(1)の片面にポリエステルポリオールとイソシアネートの酢酸エチル溶液をバーコーターにより塗布した後、該位相差フィルム(1)を積層体(1)の一方の面に貼り合せ、120℃で1時間熱処理することにより、偏光膜保護フィルム/偏光膜/偏光膜保護フィルム/位相差フィルム(1)からなる従来の偏光板と同様の積層構造を有する積層体(2)を得た。
【0084】
得られた積層体(2)の厚みは255μmであり、薄さ、軽量性に乏しい積層体であった。次いで、得られた積層体(2)を用い、高温試験および高温高湿試験を行った。その結果を表1に示す。
【0085】
比較例2
作成例1により得られた位相差フィルム(1)の代わりに、比較作製例1により得られた位相差フィルム(5)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
【0086】
得られた積層体の厚みは195μmであり、薄さ、軽量性には優れるものの、厚み斑が大きく、厚み精度に乏しい積層体であった。次いで、得られた積層体を用い、高温試験および高温高湿試験を行った。高温試験及び高温高湿試験による位相差変化は比較的大きいものであった。その結果を表1に示す。
【0087】
実施例2
作成例1により得られた位相差フィルム(1)の代わりに、作製例2により得られた位相差フィルム(4)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
【0088】
得られた積層体の厚みは225μmであり、薄さ、軽量性には優れるものであった。次いで、得られた積層体を用い、高温試験および高温高湿試験を行った。その結果を表2に示す。
【0089】
比較例3
厚み80μmのTACフィルムを偏光膜保護フィルムとして用い、2枚の該TACフィルムのそれぞれ片面にポリビニルアルコール系接着剤をバーコーターにより塗布した後、厚み30μmのポリビニルアルコール−ヨウ素系偏光膜の両面のそれぞれにTACフィルムを貼り合せ、70℃で30分間熱処理することにより、偏光膜保護フィルム/偏光膜/偏光膜保護フィルムからなる積層体を得た。
【0090】
得られた積層体の厚みは200μmであった。次いで、得られた積層体を用い、高温試験および高温高湿試験を行った。高温試験及び高温高湿試験による位相差変化は比較的大きく、加熱収縮率は大きいものであった。その結果を表2に示す。
【0091】
比較例4
厚み80μmのTACフィルムを偏光膜保護フィルムとして用い、該TACフィルムの片面にポリビニルアルコール系接着剤をバーコーターにより塗布した後、30μmのポリビニルアルコール−ヨウ素系偏光膜の片面に該TACフィルムを貼り合せ、70℃で30分間熱処理することにより、偏光膜保護フィルム/偏光膜の構成からなる積層体(3)を得た。次いで、比較作製例2により得られた位相差フィルム(6)の片面にポリエステルポリオールとイソシアネートの酢酸エチル溶液をバーコーターにより塗布した後、該位相差フィルムを積層体(3)の偏光膜に貼り合せ、120℃で1時間熱処理することにより、偏光膜保護フィルム/偏光膜/位相差フィルム(6)からなる積層体(4)を得た。
【0092】
得られた積層体(4)の厚みは190μmであった。次いで、得られた積層体(4)を用い、高温試験および高温高湿試験を行った。高温試験及び高温高湿試験による位相差変化、加熱収縮率は極めて大きいものであった。その結果を表2に示す。
【0093】
【表1】
【表2】
【発明の効果】
本発明の積層体は、薄さ、軽量性に優れ、高い耐久性を有するため、偏光板としてLCDなどの構成材として好適に使用することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、偏光膜に位相差フィルム及び偏光膜保護フィルムを積層してなる積層体に関するものであり、更に詳細には、偏光膜、位相差フィルム、偏光膜保護フィルムからなる薄さ、軽量性に優れ、高温高湿条件下において耐久性にも優れ、偏光板としても用いることのできる積層体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、液晶表示装置(以下、LCDと記す。)は低電圧、低消費電力、軽量化である特徴を活かし、携帯機器、移動体通信機器、移動体搭載機器、パーソナルコンピュータ、テレビ、家庭用電気製品、オーディオ製品、産業機器等の表示装置として広く採用されている。LCDは、偏光膜を有する2枚の偏光板により液晶分子を挟み込み、偏光板の光フィルター機能と液晶分子の複屈折特性を利用して白黒表示を行う光学素子として知られ、LCDには偏光膜、該偏光膜の保護フィルム(以下、偏光膜保護フィルムと記す。)、位相差フィルム、光拡散フィルム、透明電極フィルム、防眩フィルム、反射防止フィルムなどの光学用高分子フィルムが用いられている。
【0003】
そして、該光学用高分子フィルムのなかでも位相差フィルム、偏光膜保護フィルムは、偏光膜の両面に偏光膜保護フィルムを積層し、さらに位相差フィルムを積層した積層体(一般的には、偏光板、場合によっては偏光フィルムとも称される。)として用いられる。なお、ここでいう位相差フィルムとは、透明フィルムを延伸配向してなるフィルムであり、その機能は、液晶分子と同様、フィルムの複屈折特性を利用して光の偏光状態を変化させることであり、LCDの表示特性、すなわちコントラストや視野角特性を向上させるために用いられる。一方、偏光膜保護フィルムは、偏光膜を保護する目的で用いられる。偏光膜は、自然光を直線偏光に変換する機能を有するフィルムであり、ポリビニルアルコール樹脂フィルムに二色性を示すヨウ素や色素を含有させて一軸延伸したフィルムが広く一般的に用いられている。ところが、該偏光膜は機械強度が低く、水、熱等による寸法変化、及び/又は水、熱、紫外線等による偏光特性の悪化が起こり易いため、通常、偏光膜保護フィルムを両面に貼り合わせた積層体がLCDに用いられている。また、位相差フィルムは偏光膜保護フィルムの偏光膜との貼り合せ面とは異なる側の面に粘着剤を介して貼り合せることが一般的である。
【0004】
従来、位相差フィルムとしては、例えばポリカーボネート樹脂(以下、PCと記す。)からなる位相差フィルムが良く知られており、偏光膜保護フィルムとしては、トリアセチルセルロース樹脂(以下、TACと記す。)からなる偏光膜保護フィルムが広く使用されている。
【0005】
また、マレイミド成分とオレフィン成分を有する共重合体からなる位相差フィルムが開示されており、保護フィルムとして用いることが提案されている(例えば特許文献1参照。)。さらに、マレイミド・オレフィン共重合体1〜99重量%、アクリロニトリル単位を21〜45重量%含むアクリロニトリル・スチレン共重合体99〜1重量%からなる組成物よりなる透明性フィルムが提案されている(例えば特許文献2参照。)。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−214325号公報
【特許文献2】
特開2000−080240号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そして、近年LCDの分野においてもLCD自体の軽量化、製造工程の簡略化によるコスト低減等の要求が高まりつつある。その中で、偏光板のような積層体の軽量化、製造工程の簡略化を達成しようとする場合、偏光膜保護フィルムを間に介せずに位相差フィルムを偏光膜に貼り合せ、位相差フィルムを偏光膜保護フィルムとして用いることによりフィルムの構成及び貼り合せ工程が簡略化されるとともに、LCDの特徴である薄さおよび軽量性が向上し、貼り合せコストをも軽減化することが提案される。
【0008】
しかし、従来より位相差フィルム、偏光膜保護フィルムとして用いられているPCフィルム、TACフィルムは、フィルムの応力変化に対する位相差の変化の程度を表す光弾性係数が大きいため、高温及び高温高湿下における寸法変化、曲げや反りなどのフィルムの変形に伴って発生する応力変化により位相差が変化し易い問題があり、これらの材料からは上記提案の積層体を得ることができない。
【0009】
また、特許文献1に提案された位相差フィルムは、光弾性係数は比較的小さいものではあるが、LCDに用いるには不十分である。また、フィルムとする際の成形加工性に劣り、光学フィルムに要求される高い表面平滑性や厚み精度が得られ難いといった課題がある。
【0010】
特許文献2に提案された透明フィルムは、あくまで透明であることを特徴とするフィルムに関するものであり、偏光板等の偏光膜に積層を行った積層体に関する検討は行われていない。
【0011】
そこで、本発明は、薄さ、軽量性に優れ、高温高湿条件下における耐久性にも優れ、偏光板としても用いることのできる積層体を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、特定のマレイミド・オレフィン共重合体及び特定組成からなるアクリロニトリル・スチレン共重合体を特定の割合で配合してなる樹脂組成物からなる位相差フィルムを偏光膜の一方の面に積層し、偏光膜の他方の面に偏光膜保護フィルムを積層してなる積層体が耐久性、薄さ、軽量性に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
即ち、本発明は、下記一般式(I)で示される単位40〜60モル%、下記一般式(II)で示される単位60〜40モル%からなり、数平均分子量が1×103以上5×106以下であるマレイミド・オレフィン共重合体99〜40重量%、アクリロニトリル単位21〜45重量%を含むアクリロニトリル・スチレン共重合体1〜60重量%からなる樹脂組成物を延伸加工して得られる位相差フィルム(A)を偏光膜(B)の片面に積層し、偏光膜(B)の他方の面に偏光膜保護フィルム(C)を積層してなることを特徴とする積層体に関するものである。
【0014】
【化3】
(R1は水素又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。)
【0015】
【化4】
(R2、R3はそれぞれ独立して水素又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。)
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0017】
本発明の積層体を構成する位相差フィルム(A)は、上記一般式(I)で示される単位40〜60モル%、上記一般式(II)で示される単位60〜40モル%からなり、数平均分子量が1×103以上5×106以下であるマレイミド・オレフィン共重合体99〜40重量%、アクリロニトリル単位21〜45重量%を含むアクリロニトリル・スチレン共重合体1〜60重量%からなる樹脂組成物を延伸加工して得られる位相差フィルムである。
【0018】
ここで、R1としては水素又は炭素数1〜6のアルキル基であり、炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができ、その中でも、特に耐熱性、成形性に優れる位相差フィルムが得られることからメチル基であることが好ましい。又、R2及びR3は各々独立して水素又は炭素数1〜6のアルキル基であり、炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができ、その中でも、特に耐熱性、成形性に優れる位相差フィルムが得られることからメチル基であることが好ましい。
【0019】
このようなマレイミド・オレフィン共重合体は、例えばマレイミド類とオレフィン類とのラジカル共重合反応により得ることができる。その際、一般式(I)で示される単位を誘導する化合物としては、例えばマレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−n−プロピルマレイミド、N−i−プロピルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−i−ブチルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド、N−n−ペンチルマレイミド、N−n−ヘキシルマレイミド、N−シクロプロピルマレイミド、N−シクロブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド類が例示され、耐熱性、機械特性、透明性に優れる位相差フィルムが得られることから特にN−メチルマレイミドが好ましい。さらに、これら化合物は1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0020】
また、一般式(II)で示される単位を誘導する化合物としては、例えばイソブテン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、2−メチル−1−ヘキセン等のオレフィン類が例示でき、このうち耐熱性、機械特性、透明性に優れる位相差フィルムが得られることから特にイソブテンが好ましい。また、これら化合物は1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0021】
マレイミド・オレフィン共重合体における一般式(I)で示される単位は、40〜60モル%であり、特に耐熱性、機械特性に優れるフィルムとなることから45〜55モル%であることが好ましい。ここで、一般式(I)で示される単位が60モル%を越える場合、得られるフィルムは脆くなる。一方、40モル%未満の場合、得られるフィルムの耐熱性が低下する。
【0022】
更に、マレイミド・オレフィン共重合体は、必要に応じ本発明の目的を損なわない範囲で他のモノマー成分より誘導される単位を含有するものであってもよく、そのような他のモノマー成分としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン誘導体;メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸又はそのエステル類;アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸又はそのエステル類;酢酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピオビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;無水マレイン酸;アクリロニトリルより選ばれる1種類以上の化合物が挙げられ、その含有率としては5モル%以下であることが好ましい。
【0023】
マレイミド・オレフィン共重合体は、公知の重合方法、例えば塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、沈殿重合法、及び乳化重合法のいずれもが採用可能であり、その中でも透明性、色調に優れるフィルムが得られることから沈殿重合法により得られるものであることが好ましい。
【0024】
重合反応の際に用いる重合開始剤としては、例えばベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物;2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−ブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)等のアゾ系開始剤、等が挙げられる。
【0025】
溶液重合法、沈殿重合法において用いられる溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族溶媒;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコールなどのアルコール系溶媒;シクロヘキサン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、酢酸イソプロピル、芳香族系溶媒とアルコール系溶媒の混合溶媒などが挙げられる。
【0026】
その際の重合温度は、開始剤の分解温度に応じて適宜設定することができるが、一般的には40〜150℃の範囲で行うことが好ましい。
【0027】
また、マレイミド・オレフィン共重合体は、別法として無水マレイン酸・オレフィン共重合体をアンモニア及び/又はアルキルアミンを用いて、後イミド化することによっても得ることができる。
【0028】
このような後イミド化反応は、例えば無水マレイン酸・オレフィン共重合体をメタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール溶媒;ベンゼン、トルエンなどの芳香族系溶媒;酢酸エチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶媒;芳香族系溶媒とアルコール系溶媒の混合溶媒などに溶解あるいは分散させ、アンモニア及び/又はアルキルアミンと50〜250℃の温度で反応させることによりアミド化反応とイミド化反応を連続的に行う方法、アンモニア及び/又はアルキルアミンと反応させてアミド体を得た後、該アミド体を加熱して脱水閉環させ、イミド化を行う方法、等により製造することができる。
【0029】
本発明に用いられる位相差フィルム(A)を構成するマレイミド・オレフィン共重合体は、数平均分子量(Mn)が1×103以上5×106以下であり、特に機械特性とフィルム成形時の加工性のバランスに優れることから1×104以上5×105以下が好ましい。数平均分子量が5×106を超える場合、フィルム成形時の加工性が乏しくなり、厚み精度や表面平滑性が劣るフィルムとなる。一方、数平均分子量が1×103未満の場合、得られるフィルムの機械強度が乏しくなる。ここで、本発明における数平均分子量とは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ(GPC)により求めた標準ポリスチレン換算値のことである。
【0030】
本発明で位相差フィルム(A)を構成するアクリロニトリル・スチレン共重合体としては、アクリロニトリル単位を21〜45重量%含むアクリロニトリル・スチレン共重合体である。ここで、アクリロニトリル単位が21重量%未満、又は、45重量%を越える場合、上記マレイミド・オレフィン共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体との相溶性が低下し、得られるフィルムは不透明になり、また耐熱性も低下するため、位相差フィルム(A)として用いることはできず、本発明の積層体を得ることはできない。
【0031】
位相差フィルム(A)を構成する上記マレイミド・オレフィン共重合体と上記アクリロニトリル・スチレン共重合体の配合割合は、マレイミド・オレフィン共重合体99〜40重量%とアクリロニトリル・スチレン共重合体1〜60重量%であり、特に加工性に優れ、耐熱性、光学特性のバランスに優れた位相差フィルムが得られることからマレイミド・オレフィン共重合体90〜50重量%とアクリロニトリル・スチレン共重合体10〜50重量であることが好ましい。マレイミド・オレフィン共重合体が40重量%未満である場合、フィルムの耐熱性、光線透過率が低下するため好ましくない。また、マレイミド・オレフィン共重合体が99重量%を超える場合には、光弾性係数が大きくなるため、フィルムの光学特性の安定性が不十分となり、さらに、フィルム成形時の加工性が乏しくなるため、光学フィルムに要求される高い表面平滑性や厚み精度が得られ難い問題がある。
【0032】
本発明の積層体は位相差フィルム(A)、偏光膜(B)、および偏光膜保護フィルム(C)により構成され、本発明の積層体を構成する位相差フィルム(A)は、2次元あるいは3次元方向の屈折率が制御された位相差フィルムである。フィルム面内における遅相軸方向の屈折率をNx、フィルム面内における遅相軸方向に直交する方位の屈折率をNy、フィルム表面の法線方向の屈折率をNzとした場合、延伸方法や延伸条件によって、該屈折率の大小関係が異なるフィルムとすることができる。本発明に用いることのできる位相差フィルム(A)の3次元方向の屈折率は、例えば、Nx>Ny=Nz、Nx=Ny>Nz、Nx=Ny<Nz、Nx>Ny>Nz、Nx=Nz>Ny、Nx>Nz>Nyなどの関係を有するものが好ましい。また、互いに直交する2つの軸の屈折率差である複屈折と光が透過する媒体の光路長の積で定義される位相差は、位相差フィルムの最も重要な光学特性であるため、LCDの表示特性に大きな影響を与える。位相差フィルムの位相差は、主に液晶層の位相差特性に合わせて最適化されるため、本発明に用いられる位相差フィルム(A)の面方向の位相差は、液晶層の位相差との適合性に優れることから546nmの光に対して50nm〜400nmであることが特に好ましい。
【0033】
また、本発明に用いられる位相差フィルム(A)は、一般式(I)で示される単位40〜60モル%、一般式(II)で示される単位60〜40モル%からなり、数平均分子量が1×103以上5×106以下であるマレイミド・オレフィン共重合体99〜40重量%、アクリロニトリル単位21〜45重量%を含むアクリロニトリル・スチレン共重合体60〜1重量%からなる樹脂組成物よりなる位相差フィルムを2枚以上重ね合わせてなる位相差フィルムであっても良く、例えば、特開平10−068816号公報に開示されるように、光の波長をλとした場合、位相差が1/2λとなるように制御された位相差フィルムと1/4λとなるように制御された位相差フィルムを貼り合せた位相差フィルムなどとして用いることができる。
【0034】
また、位相差フィルム(A)の位相差の斑は小さい程好ましく、特に本発明における位相差フィルム(A)の位相差の斑は、546nmの光に対して50nm以下であることが好ましく、特に30nm以下であることが好ましい。
【0035】
本発明の積層体を構成する偏光膜(B)は、偏光機能を有する膜であれば特に制限はなく、一般的に偏光膜として用いられているものでよく、そのような偏光膜としては、例えばポリビニルアルコールフィルムに二色性を示すヨウ素や色素を含有させて一軸延伸したフィルム、特開2002−905462号公報、2002−174722号公報に提案されている方法により得られる偏光膜、等を挙げることができる。
【0036】
本発明の積層体を構成する偏光膜保護フィルム(C)は、位相差フィルム(A)が積層された偏光膜(B)の面に対する他方の面を保護する目的で用いられており、該目的を満足するフィルムであれば特に制限はなく、例えば一般的に偏光膜保護フィルムとして用いられているTACからなる溶液キャスト法で作製されたフィルムを挙げることができる。また、該偏光膜保護フィルム(C)としては、特に光弾性係数の小さい特徴を有することなどから、一般式(I)で示される単位40〜60モル%、一般式(II)で示される単位60〜40モル%からなり、数平均分子量が1×103以上5×106以下であるマレイミド・オレフィン共重合体99〜40重量%、好ましくは80〜40重量%であり、アクリロニトリル単位21〜45重量%を含むアクリロニトリル・スチレン共重合体60〜1重量%、好ましくは60〜20重量%からなる樹脂組成物よりなるフィルムを偏光膜保護フィルムとして用いることが好ましい。その際には偏光膜保護フィルム(C)は位相差フィルム(A)とは逆に、光の偏光状態に影響を与えない光学等方性の高いフィルムであることが望まれるため、偏光膜保護フィルム(C)の位相差は、546nmの光に対して50nm以下であることが特に好ましい。
【0037】
本発明を構成する位相差フィルム(A)は、マレイミド・オレフィン共重合体及びアクリロニトリル・スチレン共重合体からなる樹脂組成物を成形してなる透明フィルムを用い、延伸加工することにより得られる。また、偏光膜保護フィルム(C)は、例えばマレイミド・オレフィン共重合体及びアクリロニトリル・スチレン共重合体からなる樹脂組成物を透明フィルムに成形することによって得ることができる。
【0038】
該透明フィルム(以下、原反フィルムと記す場合がある。)を得るためのフィルム成形方法は、例えば溶液キャスト法、溶融押出法、等の一般的な成形方法を行うことができる。ここで、溶液キャスト法は、高粘度の樹脂溶液(ドープ)を支持基板上に流延した後、加熱して大部分の溶媒を除去して自立性のあるフィルムとして支持基板から剥離し、さらに加熱乾燥して残りの溶媒を除去するフィルムの成膜法であり、光学等方性、厚み精度に優れるフィルムを得ることができる。一方、溶融押出法は、インフレーション法とTダイ法に大別され、いずれの溶融押出法も高い生産性を特徴とするが、厚み精度や表面平滑性の高いフィルムが得られ易いTダイ法が、原反フィルムの成形方法として好ましい。
【0039】
また、位相差フィルム(A)は、原反フィルムを延伸加工することにより得られる。延伸加工工程は、原反フィルムを成形する工程内で連続して行う工程、原反フィルムを一旦巻き取った後、該フィルムを延伸加工装置に供して延伸加工する工程、等がある。
【0040】
原反フィルムの延伸方法は、一般的にフィルム面方向に延伸するフラット法延伸とチューブ状に膨らませて延伸するチューブラ法延伸に大きく分類され、その中でも厚み及び延伸倍率を精度よく制御できるフラット法延伸を行うことが好ましい。また、フラット法延伸は、一軸延伸法と二軸延伸法に分類され、一軸延伸法としては、自由幅一軸延伸法と一定幅一軸延伸法がある。一方、二軸延伸法としては、二段階自由幅二軸延伸法、逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法があり、さらに逐次二軸延伸には全テンター方式とロールテンター方式がある。位相差フィルム(A)を製造する際の延伸方法としては、上記のいずれの延伸方法を用いても良く、要求される位相差フィルムの3次元方向の屈折率および位相差量を得るために最も適した方法を選択すればよい。
【0041】
位相差フィルム(A)を得る際の延伸条件には、特に制限はなく、その中でもフィルムに厚みむらが発生し難く、得られるフィルムが機械的特性、光学的特性に優れることから示差走査熱量計(DSC)で測定した樹脂組成物のガラス転移温度に対して1℃〜40℃高い延伸温度条件のもと、延伸倍率1.1〜3倍の範囲に延伸することが特に好ましい。
【0042】
また、本発明を構成する偏光膜保護フィルム(C)も、必要に応じ位相差フィルム(A)と同様、延伸加工されたものであってもよい。
【0043】
本発明は、上記位相差フィルム(A)を偏光膜(B)の片面に積層し、偏光膜(B)の他方の面に偏光膜保護フィルム(C)を積層してなる薄さ、軽量性に優れ、高温高湿条件下における耐久性にも優れた積層体である。ここで、位相差フィルム(A)と偏光膜(B)、および偏光膜保護フィルム(C)と偏光膜(B)の積層方法としては、積層が可能であればいかなる方法を用いてもよく、位相差フィルム(A)と偏光膜(B)との積層方法を例にとると、例えば次の方法で行うことができる。
【0044】
位相差フィルム(A)または偏光膜(B)の少なくともいずれか一方の面に粘接着剤を塗布し、該粘接着剤が乾燥及び/又は硬化する前に位相差フィルム(A)と偏光膜(B)を貼り合せ、次いで、該粘接着剤を乾燥及び/又は硬化させる方法。また、該粘接着剤としては、例えばエマルジョン型粘接着剤、有機溶剤系または水系のポリマー溶液型粘接着剤、溶剤系または非溶剤系の二液反応型粘接着剤、紫外線硬化型粘接着剤、加熱硬化型粘接着剤、常温硬化型粘接着剤、触媒硬化型粘接着剤、ホットメルト接着剤等を挙げることができる。位相差フィルム(A)と偏光膜(B)の間の粘接着層、保護フィルム(C)と偏光膜(B)の間の粘接着層のそれぞれの厚みは、通常0.1〜50μmであることが好ましく、特に0.5〜10μmであることが好ましい。
【0045】
本発明の積層体は、撓み難くハンドリング性に優れ、薄さと軽量性を向上させることが可能となることから厚みが60〜250μmであることが好ましい。
【0046】
本発明の積層体は、発明の主旨を超えない範囲で添加剤を含有した位相差フィルム(A)、偏光膜保護フィルム(C)よりなるものであってもよく、その際の添加剤の添加方法としては、樹脂組成物を製造する工程で添加する方法、樹脂組成物および添加剤をドライブレンドしてフィルム成形に供する方法等が挙げられる。また、該添加剤は粘接着剤(層)に含有されていてもよい。
【0047】
該添加剤としては、例えば界面活性剤、高分子電解質、導電性錯体、無機フィラー、顔料、染料、酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤等の一般的な添加剤が挙げられ、以下にその詳細を示すが、本発明はこれらになんら制限されるものではない。
【0048】
酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、その他酸化防止剤が挙げられ、これら酸化防止剤はそれぞれ単独で用いてもよく、それぞれを併用して用いても良い。そして、相乗的に酸化防止作用が向上することからヒンダードフェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤を併用して用いることが好ましく、その際には例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤100重量部に対してリン系酸化防止剤を100〜500重量部で混合して使用することが特に好ましい。また、酸化防止剤の添加量としては、位相差フィルム(A)、偏光膜保護フィルム(C)を構成する樹脂又は樹脂組成物、好ましくはマレイミド・オレフィン共重合体及びアクリロニトリル・スチレン共重合体からなる樹脂組成物100重量部に対して0.001〜2重量部が好ましく、特に0.01〜1重量部の範囲であることが好ましい。
【0049】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えばペンタエリスリトール−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、チオジエチレン−ビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド)、ジエチル((3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル)メチル)ホスフェート、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−t−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス(3−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート)、ヘキサメチレン−ビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス((4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−t−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンなどが挙げられる。
【0050】
リン系酸化防止剤としては、例えばトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル)エチルエステル亜りん酸、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)(1,1−ビフェニル)−4,4’−ジイルビスホスフォナイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトール−ジホスファイト、テトラキス(2,4−t−ブチルフェニル)(1,1−ビフェニル)−4,4’−ジイルビスホスフォナイト、ジ−t−ブチル−m−クレジル−ホスフォナイト、などが挙げられる。
【0051】
また、ヒンダードアミン系光安定剤を用いることができ、ヒンダードアミン系光安定剤としては、得られるフィルムの熱着色抑制効果に優れることから分子量が1000以上のものが好ましく、特に1500以上であることが好ましい。さらに、ヒンダードアミン系光安定剤の添加量は、熱着色防止効果および光安定化効果に優れることから位相差フィルム(A)、偏光膜保護フィルム(C)を構成する樹脂又は樹脂組成物、好ましくはマレイミド・オレフィン共重合体及びアクリロニトリル・スチレン共重合体からなる樹脂組成物100重量部に対して0.01重量部〜1.5重量部を用いることが好ましく、特に0.05重量部〜1.0重量部が好ましく、さらに0.1重量部〜0.5重量部であることが好ましい。
【0052】
このようなヒンダードアミン系光安定剤としては、例えばポリ((6−モルフォリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ))(分子量1600)、ポリ((6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5―トリアジン−2、4−ジイル)((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ))(分子量2000〜3100)、ジブチルアミン−1,3,5−トリアジン−N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物(分子量2600〜3400)、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス( N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物(分子量2000以上)、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン縮合物(分子量3100〜4000)などが挙げられ、これらは一種類以上で用いることができる。
【0053】
紫外線吸収剤として、例えばベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、トリアジン、ベンゾエートなどの紫外線吸収剤を必要に応じて添加することもできる。
【0054】
また、滑剤が添加されていても良く、滑剤の添加量は1〜10000ppmが好ましく、特に5〜2000ppmが好ましく、さらに10〜500ppmであることが好ましい。そのような滑剤としては、例えば流動パラフィン、天然パラフィン、ポリエチレンワックスなどの脂肪族炭化水素系滑剤;セチルアルコール、ステアリルアルコール、ステアリン酸などの高級脂肪族系アルコール・高級脂肪酸系滑剤;ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、パルミチン酸アミド、メチレンビスステアロアミドなどの脂肪族アマイド系滑剤;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウムなどの金属石鹸系滑剤;ステアリン酸ブチル、ステアリン酸エチレングリコールなどの脂肪酸エステル系滑剤;複合滑剤などが挙げられる。
【0055】
【実施例】
以下に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によりなんら制限されるものではない。
【0056】
実施例に示された諸物性は以下の方法により測定した。
【0057】
〜数平均分子量〜
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)(東ソー株式会社製、商品名HLC−802A)を用い測定したマレイミド・オレフィン共重合体の溶出曲線により、標準ポリスチレン換算値として求めた。
【0058】
〜マレイミド・オレフィン共重合体、アクリロニトリル・スチレン共重合体の組成比〜
元素分析、1H−NMR測定により求めた。
【0059】
〜樹脂又は樹脂組成物のガラス転移温度〜
示差走査熱量計(セイコー電子工業株式会社製、商品名DSC200)を用い、昇温速度10℃/分で測定した。
【0060】
〜フィルムおよび積層体の厚み〜
ダイヤルゲージ(株式会社ミツトヨ製、商品名ID−C125B)を用いてフィルム、積層体の中心部を測定した。
【0061】
〜フィルムおよび積層体の厚み斑〜
フィルムおよび積層体の中心部および端部から15mm中心側に位置する部分の厚みを測定し、2点間の厚みの差を厚み斑とした。
【0062】
〜フィルムおよび積層体の位相差〜
全自動複屈折計(王子計測機器株式会社製、商品名KOBRA−21ADH)を用い、測定波長546nmの条件で測定した。
【0063】
〜積層体の加熱収縮率〜
JIS−Z1709に準拠し、フィルムMD方向(流れ方向)の加熱収縮率を測定した。
【0064】
〜高温試験〜
得られた積層体を温度120℃、1時間の環境に放置し、位相差及び加熱収縮率を測定した。
【0065】
加熱放置の前後による位相差の差を高温試験評価の1つとした。
【0066】
〜高温高湿試験〜
得られた積層体を温度60℃、湿度90%、100時間の環境に放置し、位相差及び加熱収縮率を測定した。
【0067】
加熱放置の前後による位相差の差を高温高湿試験評価の1つとした。
【0068】
合成例1(マレイミド・オレフィン共重合体の合成)
攪拌機、窒素導入管、温度計および脱気管の付いた反応釜にN−メチルマレイミド100重量部に対し、t−ブチルパーオキシネオデカノエート0.67重量部およびトルエンとメタノールの混合溶媒(1:1重量比)1050重量部を仕込み、窒素で数回パージした後、イソブテン400重量部を仕込み、60℃で6時間反応を行った。得られたN−メチルマレイミド・イソブテン共重合体粒子を遠心分離後乾燥した。得られたN−メチルマレイミド・イソブテン共重合体の元素分析結果(C;64.7重量%、H;7.8重量%、N;8.4重量%)より、生成N−メチルマレイミド・イソブテン共重合体中のN−メチルマレイミド単位及びイソブテン単位は、それぞれ50モル%であった。得られたN−メチルマレイミド・イソブテン共重合体の数平均分子量(Mn)は90000であった。
【0069】
作製例1(位相差フィルムの作製)
合成例1により得られたN−メチルマレイミド・イソブテン共重合体80重量%およびアクリロニトリル含量30重量%のアクリロニトリル・スチレン共重合体20重量%をドライブレンドした後、30mmφ2軸押出機(株式会社日本製鋼所製、商品名TEX30)に供し、溶融混練の後、ペレタイズした。得られた樹脂組成物ペレットのガラス転移温度は140℃であった。
【0070】
得られた樹脂組成物ペレットをTダイ溶融押出法によりフィルム化し、両端25mmの部分を裁断して幅約200mm、厚み170μm、厚み斑2μmのフィルムを得た。得られたフィルムは厚み精度、表面平滑性に優れていた。
【0071】
該フィルムを15cm四方角に裁断して2軸延伸試験装置(株式会社東洋精機製作所製)に設置し、フィルム温度を150℃に加熱した後、一定幅となるように1軸方向に延伸速度15mm/分にて1.7倍に延伸して位相差フィルム(1)とした。得られた位相差フィルム(1)の厚みは100μm、位相差は304nmであった。
【0072】
作製例2(位相差フィルムの作製)
作製例1と同様にして得られた樹脂組成物ペレットをTダイ溶融押出法によりフィルム化し、両端25mmの部分を裁断して幅約200mm、厚み130μm、厚み斑2μmのフィルムを得た。得られたフィルムは厚み精度、表面平滑性に優れていた。次いで、得られたフィルムを15cm四方角に裁断して2軸延伸試験装置(株式会社東洋精機製作所製)に設置し、フィルム温度を150℃に加熱した後、一定幅となるように1軸方向に延伸速度15mm/分にて1.6倍に延伸して位相差フィルム(2)とした。得られた位相差フィルム(2)の厚みは80μm、位相差は273nmであった。
【0073】
また、作成例1と同様にして得られた樹脂組成物ペレットをTダイ溶融押出法によりフィルム化し、両端25mmの部分を裁断して幅約200mm、厚み65μm、厚み斑2μmのフィルムを得た。得られたフィルムは厚み精度、表面平滑性に優れていた。次いで、得られたフィルムを15cm四方角に裁断して2軸延伸試験装置(株式会社東洋精機製作所製)に設置し、フィルム温度を150℃に加熱した後、一定幅となるように1軸方向に延伸速度15mm/分にて1.3倍に延伸して位相差フィルム(3)とした。得られた位相差フィルム(3)の厚みは50μm、位相差は135nmであった。
【0074】
次いで、位相差フィルム(2)の一方の面にポリエステルポリオールとイソシアネートの酢酸エチル溶液をバーコーターにより塗布した後、位相差フィルム(3)に貼り合せ、120℃で1時間熱処理することにより、位相差フィルム(2)/位相差フィルム(3)を重ね合わせた積層体である位相差フィルム(4)を得た。
【0075】
比較作製例1(位相差フィルムの作製)
合成例1により得られたN−メチルマレイミド・イソブテン共重合体を30mmφ2軸押出機(株式会社日本製鋼所製、商品名TEX30)に供し、溶融混練の後、ペレタイズした。得られた樹脂ペレットのガラス転移温度は160℃であった。
【0076】
得られた樹脂ペレットをTダイ溶融押出法によりフィルム化し、両端25mmの部分を裁断して幅約200mm、厚み170μm、厚み斑12μmのフィルムを得た。得られたフィルムは厚み精度、表面平滑性に乏しいものであった。
【0077】
該フィルムを15cm四方角に裁断して2軸延伸試験装置(株式会社東洋精機製作所製)に設置し、フィルム温度を175℃に加熱した後、一定幅となるように1軸方向に延伸速度10mm/分にて1.7倍に延伸して位相差フィルム(5)とした。得られた位相差フィルム(5)の厚みは100μm、位相差は358nmであった。
【0078】
比較作製例2(位相差フィルムの作製)
厚み100μmのポリカーボネート樹脂フィルム(三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製、商品名ユーピロンFE−2000)を15cm四方角に裁断して2軸延伸試験装置(株式会社東洋精機製作所製)に設置し、フィルム温度を160℃に加熱した後、一定幅となるように1軸方向に延伸速度10mm/分にて1.3倍に延伸して位相差フィルム(6)とした。得られた位相差フィルム(6)の厚みは75μm、位相差は720nmであった。
【0079】
作製例3(偏光膜保護フィルムの作製)
合成例1により得られたN−メチルマレイミド・イソブテン共重合体60重量%およびアクリロニトリル含量30重量%のアクリロニトリル・スチレン共重合体40重量%をドライブレンドした後、30mmφ2軸押出機(株式会社日本製鋼所製、商品名TEX30)に供し、溶融混練の後、ペレタイズした。得られた樹脂組成物ペレットのガラス転移温度は129℃であった。
【0080】
得られた樹脂組成物ペレットをTダイ溶融押出法によりフィルム化し、両端25mmの部分を裁断して幅約200mm、厚み60μm、厚み斑2μmの偏光膜保護フィルムを得た。得られたフィルムは厚み精度、表面平滑性に優れていた。
【0081】
実施例1
作製例1により得られた位相差フィルム(1)および作製例3により得られた偏光膜保護フィルムの一方の面にポリエステルポリオールとイソシアネートの酢酸エチル溶液をバーコーターにより塗布した後、30μmのポリビニルアルコール−ヨウ素系偏光膜の片面に該位相差フィルム(1)を貼り、もう一方の面に偏光膜保護フィルムを貼り合せ、120℃で1時間熱処理することにより、位相差フィルム(1)/偏光膜/偏光膜保護フィルムからなる積層体を得た。
【0082】
得られた積層体の厚みは195μmであり、薄さ、軽量性に優れる積層体であった。次いで、得られた積層体を用い、高温試験および高温高湿試験を行った。その結果を表1に示す。
【0083】
比較例1
作製例3により得られた2枚の偏光膜保護フィルムの一方の面にポリエステルポリオールとイソシアネートの酢酸エチル溶液をバーコーターにより塗布した後、厚み30μmのポリビニルアルコール−ヨウ素系偏光膜の両面にそれぞれ該偏光膜保護フィルムを貼り合せ、120℃で1時間熱処理することにより、偏光膜保護フィルム/偏光膜/偏光膜保護フィルムからなる積層体(1)を得た。次いで、作製例1により得られた位相差フィルム(1)の片面にポリエステルポリオールとイソシアネートの酢酸エチル溶液をバーコーターにより塗布した後、該位相差フィルム(1)を積層体(1)の一方の面に貼り合せ、120℃で1時間熱処理することにより、偏光膜保護フィルム/偏光膜/偏光膜保護フィルム/位相差フィルム(1)からなる従来の偏光板と同様の積層構造を有する積層体(2)を得た。
【0084】
得られた積層体(2)の厚みは255μmであり、薄さ、軽量性に乏しい積層体であった。次いで、得られた積層体(2)を用い、高温試験および高温高湿試験を行った。その結果を表1に示す。
【0085】
比較例2
作成例1により得られた位相差フィルム(1)の代わりに、比較作製例1により得られた位相差フィルム(5)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
【0086】
得られた積層体の厚みは195μmであり、薄さ、軽量性には優れるものの、厚み斑が大きく、厚み精度に乏しい積層体であった。次いで、得られた積層体を用い、高温試験および高温高湿試験を行った。高温試験及び高温高湿試験による位相差変化は比較的大きいものであった。その結果を表1に示す。
【0087】
実施例2
作成例1により得られた位相差フィルム(1)の代わりに、作製例2により得られた位相差フィルム(4)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
【0088】
得られた積層体の厚みは225μmであり、薄さ、軽量性には優れるものであった。次いで、得られた積層体を用い、高温試験および高温高湿試験を行った。その結果を表2に示す。
【0089】
比較例3
厚み80μmのTACフィルムを偏光膜保護フィルムとして用い、2枚の該TACフィルムのそれぞれ片面にポリビニルアルコール系接着剤をバーコーターにより塗布した後、厚み30μmのポリビニルアルコール−ヨウ素系偏光膜の両面のそれぞれにTACフィルムを貼り合せ、70℃で30分間熱処理することにより、偏光膜保護フィルム/偏光膜/偏光膜保護フィルムからなる積層体を得た。
【0090】
得られた積層体の厚みは200μmであった。次いで、得られた積層体を用い、高温試験および高温高湿試験を行った。高温試験及び高温高湿試験による位相差変化は比較的大きく、加熱収縮率は大きいものであった。その結果を表2に示す。
【0091】
比較例4
厚み80μmのTACフィルムを偏光膜保護フィルムとして用い、該TACフィルムの片面にポリビニルアルコール系接着剤をバーコーターにより塗布した後、30μmのポリビニルアルコール−ヨウ素系偏光膜の片面に該TACフィルムを貼り合せ、70℃で30分間熱処理することにより、偏光膜保護フィルム/偏光膜の構成からなる積層体(3)を得た。次いで、比較作製例2により得られた位相差フィルム(6)の片面にポリエステルポリオールとイソシアネートの酢酸エチル溶液をバーコーターにより塗布した後、該位相差フィルムを積層体(3)の偏光膜に貼り合せ、120℃で1時間熱処理することにより、偏光膜保護フィルム/偏光膜/位相差フィルム(6)からなる積層体(4)を得た。
【0092】
得られた積層体(4)の厚みは190μmであった。次いで、得られた積層体(4)を用い、高温試験および高温高湿試験を行った。高温試験及び高温高湿試験による位相差変化、加熱収縮率は極めて大きいものであった。その結果を表2に示す。
【0093】
【表1】
【表2】
【発明の効果】
本発明の積層体は、薄さ、軽量性に優れ、高い耐久性を有するため、偏光板としてLCDなどの構成材として好適に使用することができる。
Claims (5)
- 位相差フィルム(A)が、波長546nmの光に対する面方向の位相差50nm〜400nmを有する位相差フィルムであることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
- 偏光膜保護フィルム(C)が、上記一般式(I)で示される単位40〜60モル%、上記一般式(II)で示される単位60〜40モル%からなり、数平均分子量が1×103以上5×106以下であるマレイミド・オレフィン共重合体99〜40重量%、アクリロニトリル単位21〜45重量%を含むアクリロニトリル・スチレン共重合体60〜1重量%からなる樹脂組成物よりなるフィルム、又は、トリアセチルセルロース樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の積層体。
- 積層体の厚みが60〜250μmの範囲であることを特徴とする請求項1〜3に記載の積層体。
- 位相差フィルム(A)が、上記一般式(I)で示される単位40〜60モル%、上記一般式(II)で示される単位60〜40モル%からなり、数平均分子量が1×103以上5×106以下であるマレイミド・オレフィン共重合体99〜40重量%、アクリロニトリル単位21〜45重量%を含むアクリロニトリル・スチレン共重合体60〜1重量%からなる樹脂組成物よりなる位相差フィルムを2枚以上重ね合わせてなる位相差フィルムであることを特徴とする請求項1〜4に記載の積層体。
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2003
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