JP2014191175A - 位相差フィルムおよび画像表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】逆波長分散性を示す、より薄膜化に適応した位相差フィルムを提供する。
【解決手段】式(A)に示す単位と複素芳香族基を有するα,β−不飽和単量体単位とを構成単位に有する重合体を含む熱可塑性樹脂からなり、式(1)〜(4)を満たす位相差フィルム。(1)Re(590)>100nm;(2)Rth(590)>0nm;(3)Re(447)/Re(590)<1;(4)d<100μm。式(A)のR1〜R3は互いに独立して水素又は炭素数1〜20の有機残基。式(1)〜(4)のRe(447)及びRe(590)は各々測定波長447nm及び590nmでの位相差フィルムの面内位相差、Rth(590)は測定波長590nmでの位相差フィルムの厚さ方向位相差、dは位相差フィルムの厚さ。
【選択図】なし
【解決手段】式(A)に示す単位と複素芳香族基を有するα,β−不飽和単量体単位とを構成単位に有する重合体を含む熱可塑性樹脂からなり、式(1)〜(4)を満たす位相差フィルム。(1)Re(590)>100nm;(2)Rth(590)>0nm;(3)Re(447)/Re(590)<1;(4)d<100μm。式(A)のR1〜R3は互いに独立して水素又は炭素数1〜20の有機残基。式(1)〜(4)のRe(447)及びRe(590)は各々測定波長447nm及び590nmでの位相差フィルムの面内位相差、Rth(590)は測定波長590nmでの位相差フィルムの厚さ方向位相差、dは位相差フィルムの厚さ。
【選択図】なし
Description
本発明は、少なくとも可視光領域において、波長が短くなるほど位相差が小さくなる波長分散性(逆波長分散性)を示す位相差フィルムと、この位相差フィルムを備える画像表示装置とに関する。
高分子の配向により生じる複屈折を利用した、複屈折性を有する光学部材が、画像表示分野において幅広く使用されている。例えば、複屈折により生じる位相差を利用した位相差フィルムが、画像表示装置の色調補償、視野角補償などに広く使用されている。
画像表示装置では、電源部、発光部、回路基板などの発熱体に近接して位相差フィルムが配置されるため、耐熱性に優れる位相差フィルムが求められる。耐熱性を向上させた位相差フィルムの一種に、環構造が主鎖に導入されたアクリル系重合体からなる位相差フィルムがある。当該位相差フィルムでは、アクリル系重合体に由来する高い光学的透明性と、環構造に由来する高い耐熱性とが得られる。このような位相差フィルムが、例えば、特許文献1(国際公開第2005/054311号)および特許文献2(特開2011-186482号公報)に開示されている。特許文献1,2に開示されている位相差フィルムは、グルタルイミド単位を有するイミド化メタクリル系重合体からなる位相差フィルムである。特許文献3(特開2012-68430号公報)には、グルタルイミド単位を有するアクリル系重合体と、芳香族ビニル単量体単位を有する重合体とを含む、負の位相差フィルムが開示されている。
これとは別に、従来の位相差フィルムとは波長分散性が異なる位相差フィルムの開発が進められている。具体的に、従来の位相差フィルムは、重合体が通常有する光学的特性に基づき、光の波長が短くなるほど複屈折が大きくなる(位相差が大きくなる)波長分散性(順波長分散性)を示す。しかし、光学的な設計の自由度が高く、表示特性に優れる画像表示装置とするためには、これとは逆に、光の波長が短くなるほど複屈折が小さくなる(位相差が小さくなる)波長分散性を示す位相差フィルムが望まれる。本明細書では、少なくとも可視光領域において光の波長が短くなるほど複屈折が小さくなる波長分散性を、当業者の慣用の呼び名に従い、また、重合体および重合体により形成された光学部材が通常示す波長分散性とは逆であることに基づいて、「逆波長分散性」と呼ぶ。
特許文献4(特開2010-113054号公報)には、複素環構造を有するα,β−不飽和単量体単位を構成単位として有する熱可塑性樹脂からなる、逆波長分散性を示す光学フィルムが開示されている。特許文献4には、熱可塑性樹脂が主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂であってもよいこと、環構造が、エステル基、イミド基または酸無水物基を有する環構造であってもよいこと、より具体的に、ラクトン環構造、グルタルイミド構造または無水グルタル酸構造であってもよいことが記載されている。
画像表示装置の薄型化が進むにつれ、耐熱性に優れるだけでなく、あるいは逆波長分散性を示すだけでなく、必要な位相差を発現しながらも薄膜化された位相差フィルムが求められている。本発明は、逆波長分散性を示す位相差フィルムであって、位相差の発現性が高く、より薄膜化に適応した位相差フィルムの提供を目的とする。
本発明の位相差フィルムは、以下の式(A)に示される繰り返し単位(a)と、複素芳香族基を有するα,β−不飽和単量体単位(b)とを構成単位として有する重合体(C)を含む熱可塑性樹脂(E)からなり、以下の式(1)〜(4)を満たす。
(1)Re(590)>100nm
(2)Rth(590)>0nm
(3)Re(447)/Re(590)<1
(4)d<100μm
[式(A)において、R1、R2およびR3は互いに独立して、水素原子または炭素数1〜20の有機残基である。式(1)〜(4)において、Re(447)およびRe(590)は、それぞれ波長447nmおよび590nmの光に対する前記位相差フィルムの面内位相差であり、Rth(590)は波長590nmの光に対する前記位相差フィルムの厚さ方向の位相差であり、dは前記位相差フィルムの厚さである]
(2)Rth(590)>0nm
(3)Re(447)/Re(590)<1
(4)d<100μm
[式(A)において、R1、R2およびR3は互いに独立して、水素原子または炭素数1〜20の有機残基である。式(1)〜(4)において、Re(447)およびRe(590)は、それぞれ波長447nmおよび590nmの光に対する前記位相差フィルムの面内位相差であり、Rth(590)は波長590nmの光に対する前記位相差フィルムの厚さ方向の位相差であり、dは前記位相差フィルムの厚さである]
本発明の画像表示装置は、上記本発明の位相差フィルムを備える。
本発明によれば、逆波長分散性を示す位相差フィルムであって、位相差の発現性が高く、より薄膜化に適応した位相差フィルムを得ることができる。
本明細書における「樹脂(樹脂組成物)」は「重合体」よりも広い概念である。樹脂は、例えば1種または2種以上の重合体からなってもよいし、必要に応じて、重合体以外の材料、例えば紫外線吸収剤、酸化防止剤、フィラーなどの添加剤、相溶化剤、安定化剤などを含んでいてもよい。
[重合体(C)]
重合体(C)は、以下の式(A)に示される繰り返し単位(a)と、複素芳香族基を有するα,β−不飽和単量体単位(b);(以下、単に「単量体単位(b)」ともいう)とを構成単位として有する。式(A)において、R1、R2およびR3は互いに独立して、水素原子または炭素数1〜20の有機残基である。
重合体(C)は、以下の式(A)に示される繰り返し単位(a)と、複素芳香族基を有するα,β−不飽和単量体単位(b);(以下、単に「単量体単位(b)」ともいう)とを構成単位として有する。式(A)において、R1、R2およびR3は互いに独立して、水素原子または炭素数1〜20の有機残基である。
繰り返し単位(a)は、重合体(C)の主鎖に位置する環構造であり、当該重合体(C)に正の固有複屈折を与える作用を有する。一方、単量体単位(b)は、側鎖に複素芳香環を有しており、重合体(C)に負の固有複屈折を与える作用を有する。すなわち、重合体(C)は、当該重合体に与える固有複屈折の符号が互いに異なる少なくとも2種の構成単位を有する共重合体である。重合体(C)に配向が加えられると、繰り返し単位(a)および単量体単位(b)の各々に由来して生じた複屈折が互いに打ち消し合う。ここで、複屈折が打ち消し合う程度が波長によって異なるために、複屈折、例えば位相差、の逆波長分散性が得られる。
本発明の位相差フィルムは重合体(C)を含む熱可塑性樹脂(E)からなり、当該重合体(C)によって逆波長分散性が得られるため、例えば、単層でありながら逆波長分散性を示す位相差フィルムとすることができる。従来、複数の層を貼り合わせて逆波長分散性を実現する位相差フィルムが多数存在するが、このような位相差フィルムに比べて本発明の位相差フィルムは、薄膜化しながら逆波長分散性を得ることができる。
重合体に正(あるいは負)の固有複屈折を与える作用を有する構成単位とは、当該単位のホモポリマーを形成したときに、形成したホモポリマーの固有複屈折が正(あるいは負)となる構成単位をいう。重合体自体の固有複屈折の正負は、当該単位によって生じる複屈折と、重合体が有するその他の構成単位によって生じる複屈折との兼ね合いにより決定される。
繰り返し単位(a)は、重合体(C)の主鎖に位置するその環構造によって、重合体(C)に大きな正の位相差を与える。これに加えて、本発明者らは、単量体単位(b)を導入して共重合体とした場合においても、当該共重合体における繰り返し単位(a)の含有率を大きくする、例えば50モル%以上とする、ことができることを見出した。特許文献4に開示されている他の環構造、例えばラクトン環構造も、当該環構造を主鎖に有する重合体に大きな正の位相差を与える。しかし、構成単位として単量体単位(b)が存在する場合、当該重合体の形成時に単量体単位(b)がラクトン環構造の形成を阻害するため、当該重合体におけるラクトン環構造の含有率をあまり大きくすることができない。一方、本発明の位相差フィルムでは、単量体単位(b)を有しながらも重合体(C)における繰り返し単位(a)の含有率を大きくすることができるため、薄いながらも大きな位相差を示す、より薄膜化に適応した位相差フィルムとすることができる。
繰り返し単位(a)について、重合体(C)における複屈折の波長分散性を増大させるその作用は弱い。一方、単量体単位(b)は、重合体(C)における複屈折の波長分散性を増大させる非常に強い作用を有する。このように重合体(C)では、当該重合体の複屈折の波長分散性を増大させる程度が大きく異なる構成単位が組み合わされているため、当該重合体(C)を含む樹脂(E)からなる本発明の位相差フィルムは、逆波長分散性の制御の自由度が高い位相差フィルムとなる。また、当該作用の弱い繰り返し単位(a)が重合体(C)に正の固有複屈折を与える作用を有し、当該作用の非常に強い単量体単位(b)が重合体(C)に負の固有複屈折を与える作用を有することから、逆波長分散性を示す重合体(C)の固有複屈折は正となり、すなわち、逆波長分散性を示す正の位相差フィルムを得ることができる。これに加えて、重合体(C)における繰り返し単位(a)の含有率を増大できることで、波長分散性の制御の自由度はさらに大きくなる。単量体単位(b)は、重合体(C)の配向時に繰り返し単位(a)に由来する複屈折を打ち消すため、単量体単位(b)の含有率が過度に大きくなると逆波長分散性および正の位相差が失われることとなる。しかし、繰り返し単位(a)の含有率を増大できることで、逆波長分散性および正の位相差を保持したまま、重合体(C)における単量体単位(b)の含有率がとりうる範囲を大きくすることができるためである。
重合体の固有複屈折の正負は、重合体の分子鎖が一軸配向した層(例えば、シートあるいはフィルム)において、当該層の主面に垂直に入射した光のうち、当該層における分子鎖が配向する方向(配向軸)に平行な振動成分に対する層の屈折率n1から、配向軸に垂直な振動成分に対する層の屈折率n2を引いた値「n1−n2」に基づいて判断できる。固有複屈折の値は、各々の重合体について、その分子構造に基づく計算により求めることができる。樹脂組成物の固有複屈折の正負は、当該樹脂に含まれる各重合体によって生じる複屈折の兼ね合いにより決定される。
繰り返し単位(a)は、重合体(C)の主鎖に位置する環構造を含むが、当該環構造を主鎖に有する重合体(C)は、例えば特許文献4に開示されているラクトン環構造を主鎖に有する重合体に比べて柔軟である。ラクトン環構造を有する重合体では、当該重合体の形成方法上、環構造に隣接して必ずエステル部位が残留する。このため、当該重合体における環構造の剛直性が高く、重合体として硬く脆い傾向となる。これに対して、繰り返し単位(a)の環構造は柔軟であり、また、重合体(C)としての位相差の発現性が高く、同じ位相差をより薄い膜厚のフィルムで実現できることから、可撓性に優れるとともに、所定サイズへのカット時の耐破断性が高いなどハンドリング性に優れる位相差フィルムとすることができる。すなわち、光学特性のみならず、機械的特性に関しても本発明の位相差フィルムは有利である。
繰り返し単位(a)について、式(A)におけるR1およびR2が、互いに独立して、水素原子またはメチル基であり、R3が、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数3〜6のシクロアルキル基であることが好ましい。R3について、より好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基またはシクロヘキシル基である。R1〜R3が、これらの好ましい、またはより好ましい原子または基である場合、逆波長分散性を示す正の位相差フィルムをより確実に得ることができる。
単量体単位(b)は限定されず、例えば、当該単位(b)が有する複素芳香族基は特に限定されない。複素芳香族基におけるヘテロ原子は、典型的には酸素原子、硫黄原子または窒素原子であるが、重合体(C)における複屈折の波長分散性を増大させる作用が強く、逆波長分散性の制御の自由度をさらに高くできることから、窒素原子が好ましい。
複素芳香族基は、例えば、カルバゾール基、ピリジン基、イミダゾール基およびチオフェン基から選ばれる少なくとも1種である。
単量体単位(b)は、例えば、N−ビニルカルバゾール単位、ビニルピリジン単位、ビニルイミダゾール単位およびビニルチオフェン単位から選ばれる少なくとも1種である。
N−ビニルカルバゾール単位を、以下の式(B)に示す。
重合体(C)における複屈折の波長分散性を増大させる作用が特に強いことから、単量体単位(b)は、N−ビニルカルバゾール単位およびビニルピリジン単位から選ばれる少なくとも1種が好ましく、N−ビニルカルバゾール単位がより好ましい。
なお、単量体単位(b)、特にN−ビニルカルバゾール単位、が有する重合体(C)の複屈折の波長分散性を増大させる作用は、重合体に負の固有複屈折を与える作用を有する構成単位の一種であるスチレン単位などに比べて非常に大きい。
重合体(C)の全構成単位に占める繰り返し単位(a)の割合(重合体(C)における繰り返し単位(a)の含有率)は、例えば、50モル%以上であり、55モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましい。重合体(C)形成時における単量体単位(b)の存在に基づく環構造形成の阻害のおそれが小さいため、当該含有率を70モル%以上とすることもできる。当該含有率の上限は限定されないが、例えば、75モル%である。
重合体(C)における単量体単位(b)の含有率は、例えば、5〜20モル%であり、7〜18モル%が好ましく、8〜15モル%がより好ましい。
重合体(C)における繰り返し単位(a)の含有率が50モル%以上であるとともに、重合体(C)における単量体単位(b)の含有率に対する繰り返し単位(a)の含有率の比(a)/(b)が、モル比にして3.5〜7.5であることが好ましい。この範囲において、逆波長分散性を示すとともに、位相差の発現性に優れることで薄膜化に適応した位相差フィルムをより確実に得ることができる。比(a)/(b)の下限は、より好ましくは4.0であり、さらに好ましくは4.5である。
重合体(C)における繰り返し単位(a)の含有率および単量体単位(b)の含有率は、位相差フィルムとして得たい光学特性に応じて調整できる。
重合体(C)は、2種以上の繰り返し単位(a)および/または2種以上の単量体単位(b)を構成単位として有していてもよい。
重合体(C)は、繰り返し単位(a)および単量体単位(b)以外の構成単位を有していてもよい。
当該構成単位は、例えば、(メタ)アクリル酸エステル単位である。(メタ)アクリル酸エステル単位は、また、重合体(C)を後述する形成方法に従って形成した場合に、イミド化反応(イミド環形成反応)時に未反応のまま残留した構成単位として、重合体(C)に含まれることがある。この場合、重合体(C)における(メタ)アクリル酸エステル単位の含有率は、前駆体である重合体(D)における(メタ)アクリル酸エステル単位の含有率と、重合体(D)からイミド化反応によって重合体(C)を得る際のイミド化率とによって決定することができる。
(メタ)アクリル酸エステル単位は、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルの各単量体の重合により形成される単位である。なかでも、最終的に得られた位相差フィルムの熱安定性および光学特性が優れる点で、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、メタクリル酸メチル(MMA)がより好ましい。重合体(C)は、2種以上の(メタ)アクリル酸エステル単位を有していてもよい。
当該構成単位は、(メタ)アクリル酸エステル単位以外の構成単位であってもよい。当該構成単位は、例えば、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、酢酸ビニル、メタリルアルコール、アリルアルコール、2−ヒドロキシメチル−1−ブテンなどのアリルアルコール、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などの(メタ)アクリル酸、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチルなどの2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸などの2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸、N−ビニルピロリドンの各単量体の重合により形成される単位である。重合体(C)は、これらの構成単位を2種以上有していてもよい。
重合体(C)のガラス転移温度(Tg)は、例えば、120℃以上であり、その組成(構成単位の種類および含有率)によっては、130℃以上、さらには140℃以上とすることができる。
重合体(C)の重量平均分子量(Mw)は、例えば、7万〜20万であり、好ましくは8万〜16万、より好ましくは9万〜15万である。
重合体(C)は、典型的には、繰り返し単位(a)および単量体単位(b)が当該重合体の主鎖にランダムに配置されたランダム共重合体である。重合体(C)は、繰り返し単位(a)および単量体単位(b)を構成単位として有する限り、ブロック共重合体、グラフト共重合体などの他の共重合形態を有する共重合体でありうる。重合体(C)は架橋されていてもよい。
重合体(C)の形成方法は特に限定されない。例えば、イミド化可能な単位と単量体単位(b)とを構成単位として有する共重合体(前駆体(D))を形成し、前駆体(D)に対してイミド化反応(イミド環形成反応)を進行させればよい。そのためには、例えば、米国特許第3284425号、米国特許第4246374号、特開平2−153904号公報、国際公開第2005/108438号等に記載されている方法に基づき、アンモニアまたは置換アミンを用いて前駆体(D)をイミド化すればよい。アンモニアを用いた場合、式(A)におけるR3は水素原子となり、置換アミンを用いた場合、R3は当該置換基となる。イミド化可能な単位は、例えば、(メタ)アクリル酸エステル単位であり、この場合イミド化反応では、前駆体(D)が有する隣り合った2つの(メタ)アクリル酸エステル単位にイミド環化を進行させて、繰り返し単位(a)を形成することができる。前駆体(D)の主成分(前駆体(D)を構成する全構成単位のうち最も含有率が大きな構成単位;典型的には、含有率が50モル%以上の構成単位)が(メタ)アクリル酸エステル単位の場合、前駆体(D)はアクリル系重合体であり、当該前駆体(D)をイミド化して形成した重合体(C)はアクリル系重合体(イミド化アクリル系重合体)である。前駆体(D)は、公知の重合手法に従って形成することができる。
重合体(C)がイミド化アクリル系重合体である場合、アクリル系重合体に特有の高い光学的透明性、および高い表面硬度といった優れた機械的特性を有する位相差フィルムを得ることができる。
[熱可塑性樹脂(E)]
本発明の位相差フィルムを構成する熱可塑性樹脂(E)は、重合体(C)を含む。樹脂組成物(E)における重合体(C)の含有率は、通常、50重量%以上であり、80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましい。
本発明の位相差フィルムを構成する熱可塑性樹脂(E)は、重合体(C)を含む。樹脂組成物(E)における重合体(C)の含有率は、通常、50重量%以上であり、80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましい。
樹脂(E)は、正の固有複屈折を有する。
樹脂(E)のTgは、例えば120℃以上であり、その組成(構成単位の種類および含有率)によっては、130℃以上、さらには140℃以上とすることができる。
重合体(C)との相溶性が確保されるとともに本発明の効果が得られる限り、樹脂(E)は重合体(C)以外の重合体を含んでいてもよい。当該重合体は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)などのオレフィン系重合体;塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂などの含ハロゲン系重合体;ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610などのポリアミド;ポリアセタール;ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリオキシペンジレン;ポリアミドイミド;ゴム質重合体である。樹脂(E)は、2種以上のこれら重合体を含むことができる。
本発明の効果が得られる限り、樹脂(E)は、重合体以外の材料、例えば添加剤、を含むことができる。添加剤は、例えば、酸化防止剤、耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤などの安定剤;位相差上昇剤、位相差低減剤、位相差安定剤などの位相差調整剤;ガラス繊維、炭素繊維などの補強材;紫外線吸収剤;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモンなどの難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤を含む帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料などの着色剤;有機フィラー、無機フィラー、樹脂改質剤、可塑剤、滑剤である。樹脂(E)における添加剤の含有率は、好ましくは7重量%未満、より好ましくは2重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下である。
樹脂(E)の形成方法は特に限定されない。重合体(C)からなる樹脂(E)であれば、重合体(C)をそのまま樹脂(E)として使用すればよいし、樹脂(E)が上記他の重合体および/または添加剤を含む場合は、重合体(C)と、上記他の重合体および/または添加剤とを公知の混合方法で混合して形成できる。混合は、例えば、オムニミキサーなどの混合機でプレブレンドした後、得られた混合物を混練して実施できる。この場合、混練機は特に限定されず、例えば、単軸押出機、二軸押出機などの押出機や加圧ニーダーなど、公知の混練機を使用できる。
[位相差フィルム]
本発明の位相差フィルムは、繰り返し単位(a)と単量体単位(b)とを構成単位として有する重合体(C)を含む熱可塑性樹脂(E)からなる。重合体(C)を含むことにより、本発明の位相差フィルムは、逆波長分散性を示す位相差フィルムであって、位相差の発現性が高く、より薄膜化に適応した位相差フィルムとなる。
本発明の位相差フィルムは、繰り返し単位(a)と単量体単位(b)とを構成単位として有する重合体(C)を含む熱可塑性樹脂(E)からなる。重合体(C)を含むことにより、本発明の位相差フィルムは、逆波長分散性を示す位相差フィルムであって、位相差の発現性が高く、より薄膜化に適応した位相差フィルムとなる。
これにより、本発明の位相差フィルムは、光学特性に関する以下の式(1)〜(4)を満たす。
(1)Re(590)>100nm
(2)Rth(590)>0nm
(3)Re(447)/Re(590)<1
(4)d<100μm
(1)Re(590)>100nm
(2)Rth(590)>0nm
(3)Re(447)/Re(590)<1
(4)d<100μm
式(1)および(4)が、位相差の発現性が高く、より薄膜化に適応していることに対応する。ただし、本発明の位相差フィルムでは、正の位相差フィルムであることを示す式(2)および逆波長分散性を示す位相差フィルムであることを示す式(3)も同時に成立していることが、従来になく有利である。
式(1)のRe(590)は、波長590nmの光に対して位相差フィルムが示す面内位相差である。面内位相差Reは、式Re=(nx−ny)×dにより表される。ここで、nxは位相差フィルムの面内における遅相軸方向(フィルム面内において最大の屈折率を示す方向)の屈折率、nyは位相差フィルムの面内における進相軸方向(フィルム面内におけるnxと垂直な方向)の屈折率、dは位相差フィルムの厚さ(この式での単位はnm)である。本発明の位相差フィルムが示すRe(590)は100nmを超え、重合体(C)の組成および位相差フィルムの製造条件(例えば、延伸方法、延伸倍率および延伸温度などの延伸条件)によっては、120nm以上、さらには140nm以上となり、式(4)を満たすにもかかわらず、例えばλ/4板としての使用も可能となる。
本発明の位相差フィルムの厚さdは、式(4)に示すように100μm未満である。厚さdの下限は特に限定されないが、位相差フィルムとしての強度を確保する観点からは、例えば、20μmである。本発明の位相差フィルムは、位相差の発現性が高いことにより、例えば、Re(590)≧110nmかつd≦90μmとすることができ、重合体(C)の組成および位相差フィルムの製造条件によっては、Re(590)≧120nmかつd≦85μm、さらにはRe(590)≧130nmかつd≦80μmとすることができる。このような、薄膜化に適応した位相差フィルムを用いることによって、より薄型化が進んだ画像表示装置を構築できる。
式(2)のRth(590)は、波長590nmの光に対して位相差フィルムが示す厚さ方向の位相差である。厚さ方向の位相差Rthは、式Rth=[(nx+ny)/2−nz]×dにより表される。ここで、nx、nyおよびdは、面内位相差Reの説明において示すとおりであり、nzは位相差フィルムの厚さ方向の屈折率である。本発明の位相差フィルムが示すRth(590)は式(2)に示すように0(ゼロ)を超え、すなわち、本発明の位相差フィルムは正の位相差フィルムである。Rth(590)の範囲は、例えば、0<Rth(590)≦150nmであり、重合体(C)の組成および位相差フィルムの製造条件によっては、30nm≦Rth(590)≦145nm、さらには50nm≦Rth(590)≦140nmとすることができる。
式(3)は、波長447nmの光に対して位相差フィルムが示す面内位相差Re(447)がRe(590)よりも小さいこと、すなわち、本発明の位相差フィルムが逆波長分散性(少なくとも可視光領域において、波長が短くなるほど位相差が小さくなる光学特性)を示すことを意味している。比Re(447)/比(590)は、重合体(C)の組成および位相差フィルムの製造条件によっては、0.75≦Re(447)/比(590)≦0.98、さらには0.75≦Re(447)/比(590)≦0.93とすることができる。このような広帯域の位相差フィルムを用いることによって、表示特性に優れる画像表示装置を構築できる。
本発明の位相差フィルムは、重合体(C)を含むことにより、光学特性に関する上記式(1)〜(4)を満たしながら、可撓性およびハンドリング性に優れている。
本発明の位相差フィルムのTgは、例えば、120℃以上であり、重合体(C)および樹脂(E)の組成によっては、130℃以上、さらには140℃以上とすることができる。このように高いTgを有する位相差フィルムは、電源部、発光部、回路基板などの発熱体に近接して配置される画像表示装置への使用に適している。Tgの上限は限定されないが、位相差フィルムの生産性およびハンドリング性を考慮すると、好ましくは220℃以下、より好ましくは200℃以下である。位相差フィルムのTgは、通常、樹脂(E)のTgと同じである。
位相差フィルムの全光線透過率は、例えば85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは91%以上である。全光線透過率は、位相差フィルムの光学的透明性の指標となる。全光線透過率が85%未満の位相差フィルムは、光学用途に適さない。位相差フィルムの全光線透過率は、JIS K7361の規定に準拠して求めることができる。
位相差フィルムが示すヘイズは、厚さ100μmの値にして、例えば、5%以下であり、樹脂(E)の組成によっては、3%以下、さらには2%以下となる。なお、位相差フィルムが示すヘイズは、延伸前のフィルム(原フィルム)が示すヘイズに等しい。
位相差フィルムの表面には、必要に応じて各種の機能性コーティング層が形成されていてもよい。機能性コーティング層は、例えば、帯電防止層、粘接着剤層、接着層、易接着層、防眩(ノングレア)層、光触媒層などの防汚層、反射防止層、ハードコート層、紫外線遮蔽層、熱線遮蔽層、電磁波遮蔽層、ガスバリヤー層である。機能性コーティング層の形成は、任意の時点で行うことができる。
本発明の位相差フィルムは、従来の位相差フィルムと同様の用途に使用することができる。本発明の位相差フィルムは、例えば、得られる位相差に基づくリターデーションを光の波長の1/4とすることで、λ/4板として使用することができる。λ/4板は、例えば、偏光板と組み合わせて楕円偏光板とすることができ、楕円偏光板は、液晶表示装置(LCD)および有機電界発光表示装置などの画像表示装置における反射防止膜として好適に使用される。このように本発明の位相差フィルムは、偏光板などの光学部材と組み合わせて用いることができる。
位相差フィルムの形成方法は特に限定されず、公知の手法に従えばよい。例えば、重合体(C)を含む樹脂(E)を、キャスト法、溶融成形法(例えば溶融押出成形、プレス成形)などによりフィルムに成形し、成形した当該フィルムを原フィルムとして延伸し、樹脂(E)に含まれる重合体を配向して形成することができる。延伸は、典型的には、一軸延伸、二軸延伸または斜め延伸である。
溶融押出成形に押出機を用いる場合、その種類は特に限定されず、単軸であっても二軸であっても多軸であってもよいが、そのL/D値は(Lは押出機のシリンダーの長さ、Dはシリンダー内径)、樹脂を十分に可塑化して良好な混練状態を得るために、好ましくは10以上100以下であり、より好ましくは15以上80以下であり、さらに好ましくは20以上60以下である。L/D値が10未満の場合、樹脂を十分に可塑化できず、良好な混練状態が得られないことがある。一方、L/D値が100を超えると、樹脂に対して過度に剪断発熱が加わることで、樹脂中の重合体が熱分解する可能性がある。
また、この場合、シリンダーの設定温度は、好ましくは200℃以上350℃以下であり、より好ましくは250℃以上300℃以下である。設定温度が200℃未満では、樹脂の溶融粘度が過度に高くなって、位相差フィルムの生産性が低下する。一方、設定温度が350℃を超えると、樹脂中の重合体が熱分解する可能性がある。
溶融押出成形に押出機を用いる場合、その構成は特に限定されないが、押出機が1個以上の開放ベント部を有することが好ましい。このような押出機を用いることによって、開放ベント部から分解ガスを吸引することができ、得られた位相差フィルムに残存する揮発成分の量を低減できる。開放ベント部から分解ガスを吸引するためには、例えば、開放ベント部を減圧状態にすればよく、その減圧度は、開放ベント部の圧力にして1.3〜931hPaの範囲が好ましく、13.3〜798hPaの範囲がより好ましい。開放ベント部の圧力が931hPaより高い場合、揮発成分、あるいは重合体の分解により発生する単量体成分などが、樹脂中に残存しやすい。一方、開放ベント部の圧力を1.3hPaより低く保つことは工業的に困難である。
位相差フィルムの製造にあたっては、ポリマーフィルターを用いて濾過を行うなどの濾過工程を併せて実施することが好ましい。濾過工程を実施することにより、樹脂中に存在する異物を除去できるため、得られたフィルムの外観上の欠点を低減できる。なお、ポリマーフィルターによる濾過時には、樹脂は高温の溶融状態となる。このため、ポリマーフィルターを通過する際に樹脂が劣化し、劣化により形成されたガス成分や着色劣化物が樹脂中に流れだして、得られたフィルムに、穴あき、流れ模様、流れスジなどの欠点が観察されることがある。この欠点は、特に位相差フィルムの連続成形時に観察されやすい。このため、ポリマーフィルターで濾過した樹脂を溶融成形する際の成形温度は、樹脂の溶融粘度を低下させ、ポリマーフィルターにおける樹脂の滞留時間を短くするために、例えば255〜350℃であり、260〜320℃が好ましい。
ポリマーフィルターの構成は特に限定されないが、ハウジング内に多数枚のリーフディスク型フィルターを配したフィルターを好適に用いることができる。リーフディスク型フィルターの濾材は、金属繊維不織布を焼結したタイプ、金属粉末を焼結したタイプ、金網を数枚積層したタイプ、あるいはこれらを組み合わせたハイブリッドタイプのいずれでもよいが、金属繊維不織布を焼結したタイプが最も好ましい。
ポリマーフィルターによる濾過精度は特に限定されないが、通常15μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。濾過精度が1μm以下になると、樹脂の滞留時間が長くなることで熱劣化が大きくなる他、位相差フィルムの生産性が低下する。一方、濾過精度が15μmを超えると、樹脂中の異物を除去することが難しくなる。
ポリマーフィルターにおける、時間あたりの樹脂処理量に対する濾過面積は特に限定されず、樹脂の処理量に応じて適宜設定できる。上記濾過面積は、例えば、0.001〜0.15m2/(kg/時間)である。
ポリマーフィルターの形状は特に限定されず、例えば、複数の樹脂流通口を有し、センターポール内に樹脂の流路を有する内流型;断面が複数の頂点もしくは面においてリーフディスクフィルタの内周面に接し、センターポールの外面に樹脂の流路がある外流型;などがある。特に、樹脂の滞留箇所の少ない外流型を用いることが好ましい。
ポリマーフィルターにおける樹脂の滞留時間に特に制限はないが、好ましくは20分以下であり、より好ましくは10分以下であり、さらに好ましくは5分以下である。また、濾過時におけるフィルター入口圧およびフィルター出口圧は、例えば、それぞれ3〜15MPaおよび0.3〜10MPaであり、圧力損失(フィルターの入口圧と出口圧との圧力差)は、1MPa〜15MPaの範囲が好ましい。圧力損失が1MPa以下になると、樹脂がフィルターを通過する流路に偏りが生じやすく、得られた位相差フィルムの品質が低下する傾向がある。一方、圧力損失が15MPaを超えると、ポリマーフィルターの破損が起こり易くなる。
ポリマーフィルターに導入される樹脂の温度は、その溶融粘度に応じて適宜設定すればよく、例えば250〜300℃であり、好ましくは255〜300℃であり、さらに好ましくは260〜300℃である。
ポリマーフィルターを用いた濾過工程の併用により、異物および/または着色物の少ない位相差フィルムを得る具体的な方法は、特に限定されない。例えば、(1)クリーン環境下で樹脂の形成および濾過を行い、引き続きクリーン環境下で樹脂の成形を行うプロセス、(2)異物または着色物を有する樹脂をクリーン環境下で濾過した後、引き続きクリーン環境下で樹脂の成形を行うプロセス、(3)異物または着色物を有する樹脂を、クリーン環境下で濾過すると同時に成形を行うプロセス、などが挙げられる。それぞれの工程毎に、複数回、ポリマーフィルターによる樹脂の濾過を行ってもよい。
ポリマーフィルターによって樹脂を濾過する際には、押出機とポリマーフィルターとの間にギアポンプを設置して、フィルター内の樹脂の圧力を安定化することが好ましい。
具体的な原フィルムの延伸方法は特に限定されず、公知の手法に従えばよい。一軸延伸は、例えば、フィルムの幅方向の変化を自由とする自由端一軸延伸である。二軸延伸は、例えば、逐次二軸延伸、同時二軸延伸である。延伸方法、延伸温度および延伸倍率は、目的とする位相差フィルムの光学特性および機械的特性に応じて、適宜、選択することができる。
[画像表示装置]
本発明の画像表示装置は、本発明の位相差フィルムを備える限り特に限定されない。本発明の画像表示装置は、例えば、反射型、透過型、半透過型のLCD;TN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型、IPS型などの各種の駆動方式のLCD;エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ;プラズマディスプレイ(PD);電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)などの各種の画像表示装置である。
本発明の画像表示装置は、本発明の位相差フィルムを備える限り特に限定されない。本発明の画像表示装置は、例えば、反射型、透過型、半透過型のLCD;TN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型、IPS型などの各種の駆動方式のLCD;エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ;プラズマディスプレイ(PD);電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)などの各種の画像表示装置である。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、以下に示す実施例に限定されない。
最初に、本実施例において作製した、重合体、熱可塑性樹脂およびフィルム(未延伸フィルム、位相差フィルム)の評価方法を示す。
[重合体の平均分子量]
重合体の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、以下の測定条件に従って、ポリスチレン換算により求めた。
測定システム:東ソー製GPCシステムHLC-8220
展開溶媒:クロロホルム(和光純薬工業製、特級)
溶媒流量:0.6mL/分
標準試料:TSK標準ポリスチレン(東ソー製、PS−オリゴマーキット)
測定側カラム構成:東ソー製、TSK-GEL super HZM-M 6.0X150、2本直列接続
東ソー製、TSK-GEL super HZ-L 4.6X35、1本
リファレンス側カラム構成:東ソー製、TSK-GEL Super H-RC 6.0X150、2本直列接続
カラム温度:40℃
重合体の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、以下の測定条件に従って、ポリスチレン換算により求めた。
測定システム:東ソー製GPCシステムHLC-8220
展開溶媒:クロロホルム(和光純薬工業製、特級)
溶媒流量:0.6mL/分
標準試料:TSK標準ポリスチレン(東ソー製、PS−オリゴマーキット)
測定側カラム構成:東ソー製、TSK-GEL super HZM-M 6.0X150、2本直列接続
東ソー製、TSK-GEL super HZ-L 4.6X35、1本
リファレンス側カラム構成:東ソー製、TSK-GEL Super H-RC 6.0X150、2本直列接続
カラム温度:40℃
[重合体のガラス転移温度]
重合体のガラス転移温度(Tg)は、JIS K7121に準拠して求めた。具体的には、示差走査熱量計(リガク製、DSC-8230)を用い、窒素ガス雰囲気下、約10mgのサンプルを常温から200℃まで昇温(昇温速度20℃/分)して得られたDSC曲線から、始点法により評価した。リファレンスにはα−アルミナを用いた。
重合体のガラス転移温度(Tg)は、JIS K7121に準拠して求めた。具体的には、示差走査熱量計(リガク製、DSC-8230)を用い、窒素ガス雰囲気下、約10mgのサンプルを常温から200℃まで昇温(昇温速度20℃/分)して得られたDSC曲線から、始点法により評価した。リファレンスにはα−アルミナを用いた。
[繰り返し単位(a)の定量]
重合体における繰り返し単位(a)の含有率は、以下のようにして求めた。
重合体における繰り返し単位(a)の含有率は、以下のようにして求めた。
最初に、前駆体である、イミド化反応を進行させる前の重合体について、エステルカルボニル基の含有量を評価した。具体的には、当該前駆体の重合時に形成した重合溶液に含まれる未反応の単量体の量をガスクロマトグラフィー(島津製作所製、GC17A)により測定し、反応容器に仕込んだ単量体の量と測定した当該量とから、前駆体に含まれるエステルカルボニル基の量を算出した。
これとは別に、イミド化反応を進行させた後の重合体について、そのIRスペクトルを測定し、波長1670cm-1付近にあるイミドカルボニル基の吸収強度と、波長1720cm-1付近にあるエステルカルボニル基の吸収強度との比から、当該重合体のイミド化率を求めた。IRスペクトルの測定には、VARIAN製EXCALIBURを用いた。
次に、これらの結果から、重合体における繰り返し単位(a)の含有率を求めた。前駆体におけるエステルカルボニル基の量にイミド化率を乗じると、イミド化反応後の重合体における繰り返し単位(a)の含有率を得ることができる。
[ラクトン環構造の定量]
比較例4(製造例8)の重合体における主鎖のラクトン環構造の含有率は、ダイナミックTG法により、以下のようにして求めた。
比較例4(製造例8)の重合体における主鎖のラクトン環構造の含有率は、ダイナミックTG法により、以下のようにして求めた。
最初に、ラクトン環構造を主鎖に有する重合体に対して差動型示差熱天秤(リガク製、ThermoPlus2 TG−8120)を用いてダイナミックTG測定を実施し、150℃から300℃の間の重量減少率を測定して、得られた値を実測重量減少率(X)とした。150℃は、重合体に残存する水酸基およびエステル基が環化縮合反応を開始する温度であり、300℃は、重合体の熱分解が始まる温度である。これとは別に、前駆体である、ラクトン環化反応を進行させる前の重合体に含まれる全ての水酸基が脱アルコール反応を起こしてラクトン環が形成されたと仮定して、その反応による重量減少率(すなわち、前駆体の脱アルコール環化縮合反応率が100%であったと仮定したときの重量減少率)を算出し、理論重量減少率(Y)とした。具体的には、理論重量減少率(Y)は、前駆体における、脱アルコール反応に関与する水酸基を有する構成単位の含有率から求めることができる。なお、前駆体の組成は、測定対象である重合体の組成から導いた。
次に、式[1−(実測重量減少率(X)/理論重量減少率(Y))]×100(%)により、重合体の脱アルコール反応率を求めた。測定対象である重合体において、求めた脱アルコール反応率の分だけラクトン環構造が形成されていると考えられる。そこで、前駆体における、脱アルコール反応に関与する水酸基を有する構成単位の含有率に、求めた脱アルコール反応率を乗じ、ラクトン環構造の重量に換算することで、重合体におけるラクトン環構造の含有率とした。
[単量体単位(b)の定量]
重合体における単量体単位(b)の含有率は、当該重合体に対して1H−NMRを測定して得たケミカルシフトから求めた。具体的には、芳香族に由来する吸収と脂肪族に由来する吸収との積分比から算出した。1H−NMRの測定には、BRUKER製、AVANCE300Mを用いた。
重合体における単量体単位(b)の含有率は、当該重合体に対して1H−NMRを測定して得たケミカルシフトから求めた。具体的には、芳香族に由来する吸収と脂肪族に由来する吸収との積分比から算出した。1H−NMRの測定には、BRUKER製、AVANCE300Mを用いた。
[耐折曲げ特性]
重合体をフィルムとしたときの可撓性の評価として、当該フィルムの耐折曲げ特性を評価した。具体的には、得られた重合体を手動式加熱プレス機(井元製作所製、IMC−180C型)を用いて、温度280℃、圧力30MPaで5分間溶融プレス成形して、フィルム(未延伸フィルム、厚さ100μm)を作製し、作製したフィルムを25℃、65%RHの雰囲気下、折り曲げ半径1mmで180°折り曲げて、その際、フィルムにクラックが生じなければ「○」、クラックが生じれば「×」とした。
重合体をフィルムとしたときの可撓性の評価として、当該フィルムの耐折曲げ特性を評価した。具体的には、得られた重合体を手動式加熱プレス機(井元製作所製、IMC−180C型)を用いて、温度280℃、圧力30MPaで5分間溶融プレス成形して、フィルム(未延伸フィルム、厚さ100μm)を作製し、作製したフィルムを25℃、65%RHの雰囲気下、折り曲げ半径1mmで180°折り曲げて、その際、フィルムにクラックが生じなければ「○」、クラックが生じれば「×」とした。
[ハサミカット特性]
位相差フィルムのハンドリング性の評価として、当該フィルムのハサミカット特性を評価した。具体的には、作製した位相差フィルムを、25℃、65%RHの雰囲気下、その作製時の一軸延伸の方向および当該方向とはフィルム面内において直交する方向のそれぞれの方向に沿ってハサミでカットし、2方向ともにカット部に割れが生じなかった場合を「○」、カットする方向によってカット部に割れが生じた場合(1方向のみ割れが生じた場合)を「△」、2方向ともにカット部に割れが生じた場合を「×」とした。
位相差フィルムのハンドリング性の評価として、当該フィルムのハサミカット特性を評価した。具体的には、作製した位相差フィルムを、25℃、65%RHの雰囲気下、その作製時の一軸延伸の方向および当該方向とはフィルム面内において直交する方向のそれぞれの方向に沿ってハサミでカットし、2方向ともにカット部に割れが生じなかった場合を「○」、カットする方向によってカット部に割れが生じた場合(1方向のみ割れが生じた場合)を「△」、2方向ともにカット部に割れが生じた場合を「×」とした。
[応力光学係数:Cr]
重合体をフィルムとしたときの応力光学係数Cr(測定波長590nm)は、耐折曲げ特性の評価試料と同様に作製した未延伸フィルム(厚さ100μm)を、重合体のTg+3℃の延伸温度で自由端一軸延伸して求めた。具体的には、最初に、サイズ20mm×60mmに切り出した未延伸フィルムを、チャック間距離を40mmとして一対のクリップ(上部クリップおよび下部クリップ)で挟み、オーブン(アズワン製、DOV−450A)内に配置した治具に上部クリップを引っかけることで、当該オーブン内に未延伸フィルムを吊り下げた。次に、下部クリップに10〜300gの範囲の錘をつけることで、未延伸フィルムに1N以下の一定荷重を印加した後、オーブン内の温度を未延伸フィルムを構成する重合体のTg+3℃の温度に保持してフィルムを30分間加熱した。次に、オーブンの加熱を停止し、そのままフィルムをオーブン内で自然に徐冷させた。オーブン内の温度が重合体のTg−30℃に達した時点でフィルムを取り出し、取り出したフィルムの厚さおよび波長590nmの光に対する面内位相差Re(590)を測定して、当該フィルムの面内複屈折(Δn)を算出した。これとは別に、錘の荷重によって延伸された後のフィルムの断面積を求め、当該断面積と錘の荷重とから、フィルムに印加された応力(σ)を計算した。錘の重量を変化させながら、それぞれの荷重についてΔnおよびσを求め、得られたσに対するΔnの傾きを応力光学係数Cr(Pa-1)とした。なお、面内位相差Re(590)を測定する際の配向角が延伸方向(荷重印加方向)に対して0°近傍の場合、応力光学係数Crの符号は正となる。この場合、重合体の固有複屈折は正であり、正の位相差フィルムが得られる。一方、配向角が延伸方向に対して90°近傍の場合、応力光学係数Crの符号は負となる。この場合、重合体の固有複屈折は負であり、負の位相差フィルムが得られる。
重合体をフィルムとしたときの応力光学係数Cr(測定波長590nm)は、耐折曲げ特性の評価試料と同様に作製した未延伸フィルム(厚さ100μm)を、重合体のTg+3℃の延伸温度で自由端一軸延伸して求めた。具体的には、最初に、サイズ20mm×60mmに切り出した未延伸フィルムを、チャック間距離を40mmとして一対のクリップ(上部クリップおよび下部クリップ)で挟み、オーブン(アズワン製、DOV−450A)内に配置した治具に上部クリップを引っかけることで、当該オーブン内に未延伸フィルムを吊り下げた。次に、下部クリップに10〜300gの範囲の錘をつけることで、未延伸フィルムに1N以下の一定荷重を印加した後、オーブン内の温度を未延伸フィルムを構成する重合体のTg+3℃の温度に保持してフィルムを30分間加熱した。次に、オーブンの加熱を停止し、そのままフィルムをオーブン内で自然に徐冷させた。オーブン内の温度が重合体のTg−30℃に達した時点でフィルムを取り出し、取り出したフィルムの厚さおよび波長590nmの光に対する面内位相差Re(590)を測定して、当該フィルムの面内複屈折(Δn)を算出した。これとは別に、錘の荷重によって延伸された後のフィルムの断面積を求め、当該断面積と錘の荷重とから、フィルムに印加された応力(σ)を計算した。錘の重量を変化させながら、それぞれの荷重についてΔnおよびσを求め、得られたσに対するΔnの傾きを応力光学係数Cr(Pa-1)とした。なお、面内位相差Re(590)を測定する際の配向角が延伸方向(荷重印加方向)に対して0°近傍の場合、応力光学係数Crの符号は正となる。この場合、重合体の固有複屈折は正であり、正の位相差フィルムが得られる。一方、配向角が延伸方向に対して90°近傍の場合、応力光学係数Crの符号は負となる。この場合、重合体の固有複屈折は負であり、負の位相差フィルムが得られる。
[位相差フィルムの屈折率異方性]
作製した位相差フィルムが示す、波長449nmの光に対する面内位相差Re(449)、波長590nmの光に対する面内位相差Re(590)、および厚さ方向の位相差Rth(590)は、位相差測定装置(王子計測器製、KOBRA−WR)を用いて測定した。具体的には、測定項目として入射角依存性(単独N計算)を選択し、傾斜中心軸を遅相軸に、入射角を40°に、それぞれ設定して、多波長アッベ屈折計(アタゴ製、デジタルアッベ屈折計DR−M2)で別途測定した位相差フィルムの平均屈折率、およびデジマチックマイクロメーター(ミツトヨ製)を用いて別途測定した位相差フィルムの膜厚dを入力して測定した。位相差フィルムの波長分散性の指標となる比Re(447)/Re(590)は、このようにして測定したRe(447)およびRe(590)から算出した。
作製した位相差フィルムが示す、波長449nmの光に対する面内位相差Re(449)、波長590nmの光に対する面内位相差Re(590)、および厚さ方向の位相差Rth(590)は、位相差測定装置(王子計測器製、KOBRA−WR)を用いて測定した。具体的には、測定項目として入射角依存性(単独N計算)を選択し、傾斜中心軸を遅相軸に、入射角を40°に、それぞれ設定して、多波長アッベ屈折計(アタゴ製、デジタルアッベ屈折計DR−M2)で別途測定した位相差フィルムの平均屈折率、およびデジマチックマイクロメーター(ミツトヨ製)を用いて別途測定した位相差フィルムの膜厚dを入力して測定した。位相差フィルムの波長分散性の指標となる比Re(447)/Re(590)は、このようにして測定したRe(447)およびRe(590)から算出した。
(製造例1)
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管および滴下ロートを備えた反応容器に、N−ビニルカルバゾール(NVCZ)13重量部、メタクリル酸メチル(MMA)61.5重量部、および重合溶媒としてトルエン61重量部を仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温させた。昇温に伴う環流が始まったところで、重合開始剤として0.1重量部のt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富製、ルペロックス570)を添加するとともに、MMA25.5重量部、トルエン20.9重量部および上記t−アミルパーオキシイソノナノエート0.25重量部の混合溶液を2時間かけて滴下しながら、約105〜110℃の還流下で溶液重合を進行させた。
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管および滴下ロートを備えた反応容器に、N−ビニルカルバゾール(NVCZ)13重量部、メタクリル酸メチル(MMA)61.5重量部、および重合溶媒としてトルエン61重量部を仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温させた。昇温に伴う環流が始まったところで、重合開始剤として0.1重量部のt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富製、ルペロックス570)を添加するとともに、MMA25.5重量部、トルエン20.9重量部および上記t−アミルパーオキシイソノナノエート0.25重量部の混合溶液を2時間かけて滴下しながら、約105〜110℃の還流下で溶液重合を進行させた。
次に、得られた重合溶液内の重合体をn−ヘキサンを用いて沈殿させ、沈殿物を真空乾燥機に収容して揮発成分を脱揮させて、NVCZ単位およびMMA単位を構成単位として有する、前駆体である透明な重合体(D−1)を得た。重合体(D−1)のMwは13.4万、Tgは124℃であった。
次に、作製した重合体(D−1)8重量部を、SUS316製の耐圧容器(耐圧硝子工業製、内容量100mL)に仕込み、さらにトルエン12重量部およびモノメチルアミン40重量%メタノール溶液(和光純薬工業製)6.2重量部を添加して、内温を200℃に上げ、環化縮合反応であるイミド化反応を2時間進行させた。次に、容器の内容物を放冷した後、含まれる重合体をn−ヘキサンを用いて沈殿させ、沈殿物を真空乾燥機に収容して揮発成分を脱揮させて、繰り返し単位(a)、NVCZ単位および未反応のMMA単位を構成単位として有する重合体(C−1)を得た。繰り返し単位(a)におけるR1〜R3は、いずれもメチル基である。重合体(C−1)における繰り返し単位(a)の含有率(イミド環量)は72.0モル%、NVCZ単位の含有率は12.0モル%、モル比(a)/(b)は6.00であった。また、Tgは191℃、Crは+1.05×10-9Pa-1であった。
(製造例2)
重合体(D−1)をイミド化する際における、モノメチルアミン40重量%メタノール溶液の添加量を5.4重量部とした以外は製造例1と同様にして、繰り返し単位(a)、NVCZ単位およびMMA単位を構成単位として有する重合体(C−2)を得た。重合体(C−2)における繰り返し単位(a)の含有率(イミド環量)は71.0モル%、NVCZ単位の含有率は13.0モル%、モル比(a)/(b)は5.46であった。また、Tgは187℃、Crは+0.75×10-9Pa-1であった。
重合体(D−1)をイミド化する際における、モノメチルアミン40重量%メタノール溶液の添加量を5.4重量部とした以外は製造例1と同様にして、繰り返し単位(a)、NVCZ単位およびMMA単位を構成単位として有する重合体(C−2)を得た。重合体(C−2)における繰り返し単位(a)の含有率(イミド環量)は71.0モル%、NVCZ単位の含有率は13.0モル%、モル比(a)/(b)は5.46であった。また、Tgは187℃、Crは+0.75×10-9Pa-1であった。
(製造例3)
前駆体である重合体の作製時に仕込むNVCZ、MMAおよびトルエンの量を、それぞれ15重量部、51重量部および54重量部とするとともに、当該重合体の重合時に滴下する混合溶液をMMA34重量部、トルエン27.8重量部および上記t−アミルパーオキシイソノナノエート0.25重量部の混合溶液とした以外は、製造例1と同様にして、NVCZ単位およびMMA単位を構成単位として有する、前駆体である透明な重合体(D−2)を得た。重合体(D−2)のMwは13.6万、Tgは126℃であった。
前駆体である重合体の作製時に仕込むNVCZ、MMAおよびトルエンの量を、それぞれ15重量部、51重量部および54重量部とするとともに、当該重合体の重合時に滴下する混合溶液をMMA34重量部、トルエン27.8重量部および上記t−アミルパーオキシイソノナノエート0.25重量部の混合溶液とした以外は、製造例1と同様にして、NVCZ単位およびMMA単位を構成単位として有する、前駆体である透明な重合体(D−2)を得た。重合体(D−2)のMwは13.6万、Tgは126℃であった。
次に、作製した(D−2)に対して、製造例1と同様にイミド化反応を進行させ、繰り返し単位(a)、NVCZ単位および未反応のMMA単位を構成単位として有する重合体(C−3)を得た。重合体(C−3)における繰り返し単位(a)の含有率(イミド環量)は70.0モル%、NVCZ単位の含有率は15.0モル%、モル比(a)/(b)は4.67であった。また、Tgは191℃、Crは+0.38×10-9Pa-1であった。
(製造例4)
重合体(D−2)をイミド環化する際における、モノメチルアミン40重量%メタノール溶液の添加量を4.4重量部とした以外は製造例3と同様にして、繰り返し単位(a)、NVCZ単位およびMMA単位を構成単位として有する重合体(C−4)を得た。重合体(C−4)における繰り返し単位(a)の含有率(イミド環量)は60.0モル%、NVCZ単位の含有率は11.5モル%、モル比(a)/(b)は5.22であった。また、Tgは179℃、Crは+0.55×10-9Pa-1であった。
重合体(D−2)をイミド環化する際における、モノメチルアミン40重量%メタノール溶液の添加量を4.4重量部とした以外は製造例3と同様にして、繰り返し単位(a)、NVCZ単位およびMMA単位を構成単位として有する重合体(C−4)を得た。重合体(C−4)における繰り返し単位(a)の含有率(イミド環量)は60.0モル%、NVCZ単位の含有率は11.5モル%、モル比(a)/(b)は5.22であった。また、Tgは179℃、Crは+0.55×10-9Pa-1であった。
(製造例5)
前駆体である重合体の作製時に仕込むNVCZ、MMAおよびトルエンの量を、それぞれ10重量部、63重量部および59.7重量部とするとともに、当該重合体の重合時に滴下する混合溶液をMMA27重量部、トルエン22.1重量部および上記t−アミルパーオキシイソノナノエート0.25重量部の混合溶液とした以外は、製造例1と同様にして、NVCZ単位およびMMA単位を構成単位として有する、前駆体である透明な重合体(D−3)を得た。重合体(D−3)のMwは13.2万、Tgは123℃であった。
前駆体である重合体の作製時に仕込むNVCZ、MMAおよびトルエンの量を、それぞれ10重量部、63重量部および59.7重量部とするとともに、当該重合体の重合時に滴下する混合溶液をMMA27重量部、トルエン22.1重量部および上記t−アミルパーオキシイソノナノエート0.25重量部の混合溶液とした以外は、製造例1と同様にして、NVCZ単位およびMMA単位を構成単位として有する、前駆体である透明な重合体(D−3)を得た。重合体(D−3)のMwは13.2万、Tgは123℃であった。
次に、作製した(D−3)に対して、モノメチルアミン40重量%メタノール溶液の添加量を1.8重量部とした以外は製造例1と同様にイミド環化反応を進行させて、繰り返し単位(a)、NVCZ単位および未反応のMMA単位を構成単位として有する重合体(F−1)を得た。重合体(F−1)における繰り返し単位(a)の含有率(イミド環量)は44.0モル%、NVCZ単位の含有率は8.0モル%、モル比(a)/(b)は5.5であった。また、Tgは138℃、Crは+0.2×10-9Pa-1であった。なお、重合体(D−3)の組成は、特許文献4(特開2010-113054号公報)の実施例における製造例3の組成と同一であり、重合体(F−1)の組成は、同文献の実施例における実施例2の組成と同一である。
(製造例6)
重合体(D−3)をイミド環化する際における、モノメチルアミン40重量%メタノール溶液の添加量を6.2重量部とした以外は製造例5と同様にして、繰り返し単位(a)、NVCZ単位およびMMA単位を構成単位として有する重合体(F−2)を得た。重合体(F−2)における繰り返し単位(a)の含有率(イミド環量)は74.0モル%、NVCZ単位の含有率は9.0モル%、モル比(a)/(b)は8.22であった。また、Tgは191℃、Crは+1.45×10-9Pa-1であった。
重合体(D−3)をイミド環化する際における、モノメチルアミン40重量%メタノール溶液の添加量を6.2重量部とした以外は製造例5と同様にして、繰り返し単位(a)、NVCZ単位およびMMA単位を構成単位として有する重合体(F−2)を得た。重合体(F−2)における繰り返し単位(a)の含有率(イミド環量)は74.0モル%、NVCZ単位の含有率は9.0モル%、モル比(a)/(b)は8.22であった。また、Tgは191℃、Crは+1.45×10-9Pa-1であった。
(製造例7)
前駆体である重合体の作製時に仕込むNVCZ、MMAおよびトルエンの量を、それぞれ20重量部、56重量部および62.2重量部とするとともに、当該重合体の重合時に滴下する混合溶液をMMA24重量部、トルエン19.6重量部および上記t−アミルパーオキシイソノナノエート0.25重量部の混合溶液とした以外は、製造例1と同様にして、NVCZ単位およびMMA単位を構成単位として有する、前駆体である透明な重合体(D−4)を得た。重合体(D−4)のMwは14.3万、Tgは121℃であった。
前駆体である重合体の作製時に仕込むNVCZ、MMAおよびトルエンの量を、それぞれ20重量部、56重量部および62.2重量部とするとともに、当該重合体の重合時に滴下する混合溶液をMMA24重量部、トルエン19.6重量部および上記t−アミルパーオキシイソノナノエート0.25重量部の混合溶液とした以外は、製造例1と同様にして、NVCZ単位およびMMA単位を構成単位として有する、前駆体である透明な重合体(D−4)を得た。重合体(D−4)のMwは14.3万、Tgは121℃であった。
次に、作製した(D−4)に対して、製造例1と同様にイミド化反応を進行させ、繰り返し単位(a)、NVCZ単位および未反応のMMA単位を構成単位として有する重合体(F−3)を得た。重合体(F−3)における繰り返し単位(a)の含有率(イミド環量)は66.0モル%、NVCZ単位の含有率は19.0モル%、モル比(a)/(b)は3.47であった。また、Tgは184℃、Crは−0.25×10-9Pa-1であった。
(製造例8)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管および滴下ロートを備えた反応容器に、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸(MHMA)15重量部、MMA27重量部、アクリル酸メチル(MA)10重量部、NVCZ6重量部、ならびに重合溶媒としてトルエン37重量部およびメタノール2重量部を仕込んだ。次に、反応容器に窒素ガスを導入しながら95℃まで昇温させ、昇温に伴う環流が始まったところで、重合開始剤としてt−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(アルケマ吉富製、ルペロックス575)0.03重量部を添加するとともに、MHMA15重量部、MMA27重量部、トルエン43重量部およびt−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.09重量部の混合溶液を2時間かけて滴下しながら、約90〜100℃の還流下で溶液重合を進行させた。
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管および滴下ロートを備えた反応容器に、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸(MHMA)15重量部、MMA27重量部、アクリル酸メチル(MA)10重量部、NVCZ6重量部、ならびに重合溶媒としてトルエン37重量部およびメタノール2重量部を仕込んだ。次に、反応容器に窒素ガスを導入しながら95℃まで昇温させ、昇温に伴う環流が始まったところで、重合開始剤としてt−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(アルケマ吉富製、ルペロックス575)0.03重量部を添加するとともに、MHMA15重量部、MMA27重量部、トルエン43重量部およびt−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.09重量部の混合溶液を2時間かけて滴下しながら、約90〜100℃の還流下で溶液重合を進行させた。
次に、得られた重合溶液に、ラクトン環化触媒としてリン酸オクチル(堺化学工業製、Phoslex A−8)0.2重量部を添加し、80℃〜105℃の還流下で2時間、ラクトン環化縮合反応を進行させた。
次に、得られた重合溶液を熱交換器に通して240℃まで昇温させた後、バレル温度240℃、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)、リアベント数1個およびフォアベント数4個(上流側から第1、第2、第3、第4ベントと称する)、先端部にリーフディスク型のポリマーフィルター(濾過精度5μm)が配置されたベントタイプスクリュー二軸押出機(L/D=52)に、樹脂量換算で100重量部/時の処理速度で導入し、脱揮を行った。その際、別途準備しておいた酸化防止剤/環化触媒失活剤の混合溶液を1.5重量部/時の投入速度で第2ベントの後ろから、イオン交換水を0.5重量部/時の投入速度で第3ベントの後ろから、それぞれ投入した。酸化防止剤/環化触媒失活剤の混合溶液は、酸化防止剤として5重量部のペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(BASFジャパン製、イルガノックス1010)と、失活剤として80重量部のオクチル酸亜鉛(日本化学産業製、ニッカオクチクス亜鉛3.6%)とを、トルエン65重量部に溶解させて調製した。
このようにして、ラクトン環構造を主鎖に有し、NVCZ単位ならびにラクトン環化反応に対して未反応であったMMA単位およびMHMA単位を構成単位として有する透明な重合体(F−4)を得た。重合体(F−4)におけるラクトン環構造の含有率は37.6モル%、NVCZ単位の含有率は4.5モル%、NVCZ単位の含有率に対するラクトン環構造の含有率の比(モル比)は8.36であった。また、Mwは11.5万、Tgは131℃、Crは+0.36×10-9Pa-1であった。
(実施例1)
製造例1で作製した重合体(C−1)を、手動式加熱プレス機(井元製作所製、IMC−180C型)を用いて、温度280℃、圧力30MPaで5分間溶融プレス成形して、厚さ60μmの未延伸フィルムを得た。なお、未延伸フィルムの厚さは、Re(590)が120nm程度の位相差フィルムを以下の延伸条件で得ることを目標として設定した。以降の実施例および比較例においても同様である。延伸条件は、全ての実施例および比較例において同一である。
製造例1で作製した重合体(C−1)を、手動式加熱プレス機(井元製作所製、IMC−180C型)を用いて、温度280℃、圧力30MPaで5分間溶融プレス成形して、厚さ60μmの未延伸フィルムを得た。なお、未延伸フィルムの厚さは、Re(590)が120nm程度の位相差フィルムを以下の延伸条件で得ることを目標として設定した。以降の実施例および比較例においても同様である。延伸条件は、全ての実施例および比較例において同一である。
次に、作製した未延伸フィルムを、恒温槽付きオートグラフ(島津製作所製、AG−X)を用いて自由端一軸延伸することで、一軸延伸フィルムである位相差フィルム(厚さ40μm)を得た。延伸は、未延伸フィルムをオートグラフにセットする際のチャック間距離が40mm、延伸温度が重合体のTg+10℃、当該温度における予熱時間が3分、延伸倍率が2倍の延伸条件で行った。
このようにして作製した位相差フィルムのRe(447)が122.5nm、Re(590)が125nm、Rth(590)が63nm、Re(447)/Re(590)が0.98であった。また、当該位相差フィルムのハサミカット特性は「○」、重合体(C−1)をフィルムとしたときの当該フィルムの耐折曲げ特性は「○」であった。
(実施例2)
重合体(C−1)の代わりに製造例2で作製した重合体(C−2)を用い、作製した未延伸フィルムの厚さを上記目標を考慮して70μmとした以外は実施例1と同様にして、一軸延伸フィルムである位相差フィルム(厚さ50μm)を得た。
重合体(C−1)の代わりに製造例2で作製した重合体(C−2)を用い、作製した未延伸フィルムの厚さを上記目標を考慮して70μmとした以外は実施例1と同様にして、一軸延伸フィルムである位相差フィルム(厚さ50μm)を得た。
このようにして作製した位相差フィルムのRe(447)が125.5nm、Re(590)が141nm、Rth(590)が71nm、Re(447)/Re(590)が0.89であった。また、当該位相差フィルムのハサミカット特性は「○」、重合体(C−2)をフィルムとしたときの当該フィルムの耐折曲げ特性は「○」であった。
(実施例3)
重合体(C−1)の代わりに製造例3で作製した重合体(C−3)を用い、作製した未延伸フィルムの厚さを上記目標を考慮して120μmとした以外は実施例1と同様にして、一軸延伸フィルムである位相差フィルム(厚さ85μm)を得た。
重合体(C−1)の代わりに製造例3で作製した重合体(C−3)を用い、作製した未延伸フィルムの厚さを上記目標を考慮して120μmとした以外は実施例1と同様にして、一軸延伸フィルムである位相差フィルム(厚さ85μm)を得た。
このようにして作製した位相差フィルムのRe(447)が93nm、Re(590)が121nm、Rth(590)が61nm、Re(447)/Re(590)が0.77であった。また、当該位相差フィルムのハサミカット特性は「○」、重合体(C−3)をフィルムとしたときの当該フィルムの耐折曲げ特性は「○」であった。
(実施例4)
重合体(C−1)の代わりに製造例4で作製した重合体(C−4)を用い、作製した未延伸フィルムの厚さを上記目標を考慮して100μmとした以外は実施例1と同様にして、一軸延伸フィルムである位相差フィルム(厚さ68μm)を得た。
重合体(C−1)の代わりに製造例4で作製した重合体(C−4)を用い、作製した未延伸フィルムの厚さを上記目標を考慮して100μmとした以外は実施例1と同様にして、一軸延伸フィルムである位相差フィルム(厚さ68μm)を得た。
このようにして作製した位相差フィルムのRe(447)が124.6nm、Re(590)が140nm、Rth(590)が72nm、Re(447)/Re(590)が0.89であった。また、当該位相差フィルムのハサミカット特性は「○」、重合体(C−4)をフィルムとしたときの当該フィルムの耐折曲げ特性は「○」であった。
(比較例1)
重合体(C−1)の代わりに製造例5で作製した重合体(F−1)を用い、作製した未延伸フィルムの厚さを上記目標を考慮して156μmとした以外は実施例1と同様にして、一軸延伸フィルムである位相差フィルム(厚さ110μm)を得た。
重合体(C−1)の代わりに製造例5で作製した重合体(F−1)を用い、作製した未延伸フィルムの厚さを上記目標を考慮して156μmとした以外は実施例1と同様にして、一軸延伸フィルムである位相差フィルム(厚さ110μm)を得た。
このようにして作製した位相差フィルムのRe(447)が121.6nm、Re(590)が128nm、Rth(590)が64nm、Re(447)/Re(590)が0.95であった。また、当該位相差フィルムのハサミカット特性は「△」、重合体(F−1)をフィルムとしたときの当該フィルムの耐折曲げ特性は「○」であった。
(比較例2)
重合体(C−1)の代わりに製造例6で作製した重合体(F−2)を用い、作製した未延伸フィルムの厚さを上記目標を考慮して72μmとした以外は実施例1と同様にして、一軸延伸フィルムである位相差フィルム(厚さ50μm)を得た。
重合体(C−1)の代わりに製造例6で作製した重合体(F−2)を用い、作製した未延伸フィルムの厚さを上記目標を考慮して72μmとした以外は実施例1と同様にして、一軸延伸フィルムである位相差フィルム(厚さ50μm)を得た。
このようにして作製した位相差フィルムのRe(447)が273nm、Re(590)が270nm、Rth(590)が135nm、Re(447)/Re(590)が1.01であった。また、当該位相差フィルムのハサミカット特性は「○」、重合体(F−2)をフィルムとしたときの当該フィルムの耐折曲げ特性は「○」であった。
(比較例3)
重合体(C−1)の代わりに製造例7で作製した重合体(F−3)を用い、作製した未延伸フィルムの厚さを上記目標を考慮して140μmとした以外は実施例1と同様にして、一軸延伸フィルムである位相差フィルム(厚さ100μm)を得た。
重合体(C−1)の代わりに製造例7で作製した重合体(F−3)を用い、作製した未延伸フィルムの厚さを上記目標を考慮して140μmとした以外は実施例1と同様にして、一軸延伸フィルムである位相差フィルム(厚さ100μm)を得た。
このようにして作製した位相差フィルムのRe(447)が174nm、Re(590)が145nm、Rth(590)が−73nm、Re(447)/Re(590)が1.20であった。また、当該位相差フィルムのハサミカット特性は「△」、重合体(F−3)をフィルムとしたときの当該フィルムの耐折曲げ特性は「○」であった。
(比較例4)
重合体(C−1)の代わりに製造例8で作製した重合体(F−4)を用い、作製した未延伸フィルムの厚さを上記目標を考慮して120μmとした以外は実施例1と同様にして、一軸延伸フィルムである位相差フィルム(厚さ85μm)を得た。
重合体(C−1)の代わりに製造例8で作製した重合体(F−4)を用い、作製した未延伸フィルムの厚さを上記目標を考慮して120μmとした以外は実施例1と同様にして、一軸延伸フィルムである位相差フィルム(厚さ85μm)を得た。
このようにして作製した位相差フィルムのRe(447)が102nm、Re(590)が115nm、Rth(590)が63nm、Re(447)/Re(590)が0.89であった。また、当該位相差フィルムのハサミカット特性は「×」、重合体(F−4)をフィルムとしたときの当該フィルムの耐折曲げ特性は「×」であった。
実施例1〜4および比較例1〜4の結果を、以下の表1にまとめる。
表1にまとめるように、実施例1〜4で作製した位相差フィルムは、逆波長分散性を示すとともに、薄いながらも大きな位相差を示す正の位相差フィルムであった。また、可撓性およびハンドリング性に優れていた。
一方、比較例1の位相差フィルムは、当該フィルムを構成する重合体における繰り返し単位(a)の含有率が50モル%未満であり、位相差の発現性が実施例に比べて小さかった。また、位相差の発現性が小さいことにより、フィルムの厚さが増大したため、ハサミカット特性が実施例に比べて悪くなった。比較例2の位相差フィルムでは、当該フィルムを構成する重合体における比(a)/(b)が8.22と大きく、逆波長分散性が得られなかった。比較例3の位相差フィルムでは、当該フィルムを構成する重合体における比(a)/(b)が3.47と小さく、負の位相差フィルムとなった。ラクトン環構造を主鎖に有する比較例4の位相差フィルムは、位相差の発現性が実施例に比べて小さいとともに、耐折曲げ特性およびハサミカット特性に劣っていた。
本発明の位相差フィルムは、従来の位相差フィルムと同様に、LCD、有機ELディスプレイ(OLED)をはじめとする画像表示装置に広く使用できる。また、本発明の位相差フィルムの使用により、画像表示装置の表示特性が向上する。
Claims (7)
- 以下の式(A)に示される繰り返し単位(a)と、複素芳香族基を有するα,β−不飽和単量体単位(b)とを構成単位として有する重合体を含む熱可塑性樹脂からなり、
以下の式(1)〜(4)を満たす、位相差フィルム。
(2)Rth(590)>0nm
(3)Re(447)/Re(590)<1
(4)d<100μm
[式(A)において、R1、R2およびR3は互いに独立して、水素原子または炭素数1〜20の有機残基である。式(1)〜(4)において、Re(447)およびRe(590)は、それぞれ波長447nmおよび590nmの光に対する前記位相差フィルムの面内位相差であり、Rth(590)は波長590nmの光に対する前記位相差フィルムの厚さ方向の位相差であり、dは前記位相差フィルムの厚さである] - 前記重合体における前記繰り返し単位(a)の含有率が50モル%以上であり、
前記重合体における前記繰り返し単位(a)および前記単量体単位(b)の含有率の比(a)/(b)が、モル比にして3.5〜7.5である、請求項1に記載の位相差フィルム。 - ガラス転移温度が120℃以上である、請求項1または2に記載の位相差フィルム。
- 前記単量体単位(b)がN−ビニルカルバゾール単位である、請求項1〜3のいずれかに記載の位相差フィルム。
- 前記式(A)におけるR1およびR2が、互いに独立して、水素原子またはメチル基であり、R3が、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数3〜6のシクロアルキル基である、請求項1〜4のいずれかに記載の位相差フィルム。
- 前記重合体がイミド化アクリル系重合体である、請求項1〜5のいずれかに記載の位相差フィルム。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の位相差フィルムを備える画像表示装置。
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Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2017075248A (ja) * | 2015-10-15 | 2017-04-20 | 株式会社日本触媒 | 重合体とこれを含む樹脂組成物および樹脂成形体、重合体の製造方法、共重合体ならびに新規モノマー |
JP2020063436A (ja) * | 2018-10-16 | 2020-04-23 | 旭化成株式会社 | メタクリル系樹脂、メタクリル系樹脂組成物、成形体、及び光学部品並びに自動車部品 |
US11970556B2 (en) | 2018-10-16 | 2024-04-30 | Asahi Kasei Kabushiki Kaisha | Methacrylic resin, method of manufacturing methacrylic resin, methacrylic resin composition, shaped article, optical components, and automotive part |
JP7502507B2 (ja) | 2018-07-13 | 2024-06-18 | 旭化成株式会社 | メタクリル系樹脂、成形体、光学部品又は自動車部品 |
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2013
- 2013-03-27 JP JP2013066207A patent/JP2014191175A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2017075248A (ja) * | 2015-10-15 | 2017-04-20 | 株式会社日本触媒 | 重合体とこれを含む樹脂組成物および樹脂成形体、重合体の製造方法、共重合体ならびに新規モノマー |
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US11970556B2 (en) | 2018-10-16 | 2024-04-30 | Asahi Kasei Kabushiki Kaisha | Methacrylic resin, method of manufacturing methacrylic resin, methacrylic resin composition, shaped article, optical components, and automotive part |
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