以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、すべての図面において、同様の構成要素には同様の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。なお、本明細書では、図示するように前後左右上下の方向を規定して説明する。しかし、これは構成要素の相対関係を説明するために便宜的に規定するものであり、本発明にかかる製品の製造時や使用時の方向を必ずしも限定するものではない。
図1(a)は、本発明の第一実施形態の異物除去装置100における上部ノズルユニット70を示す底面図である。図1(b)は、本実施形態の異物除去装置100における下部ノズルユニット80および搬送手段10を示す平面図である。搬送手段10の搬送方向を前後方向と呼称し、搬送路20の面直方向を上下方向と呼称する。そして、前後方向および上下方向に対してともに直交する方向を左右方向と呼称する。図1(a)は上部ノズルユニット70を下方から仰視した底面図であり、図1(b)は下部ノズルユニット80を上方から俯瞰した平面図である。上部ノズルユニット70と下部ノズルユニット80とは、図1各図で示される各方向を互いに一致させ、吹出ノズル30aと吹出ノズル30bとを対面させて用いられる。
図2は、下部ノズルユニット80および搬送手段10の一部を示す平面図である。説明のため、上部ノズルユニット70(図1(a)参照)における吹出ノズル30aを下部ノズルユニット80に投影した形状を二点鎖線で示す。また、吹出ノズル30a、30bの形状を説明するため、下部ノズルユニット80の縦横比を図1(b)と相違させて前後寸法を強調して図示している。
図3は、吹出ノズル30a、30bから搬送路20に向けてエア90、91が吹き出される様子を示す模式図である。上部ノズルユニット70の下方斜視図と下部ノズルユニット80および被清掃体である基板Bの上方斜視図とを遠近表示してある。紙面奥行方向が基板Bの幅方向である。
図4は、図1(b)のVI−VI線断面図であり、異物除去装置100を搬送方向に切った断面模式図である。説明のため、図1(b)では基板Bが下部ノズルユニット80まで至っておらず後方に位置している状態を示し、図4では基板Bが下部ノズルユニット80よりも前方まで搬送されている状態を示している。
はじめに、本実施形態の概要について説明する。
図1および図4に示すように、本実施形態の異物除去装置100は、被清掃体(基板B)に付着している異物(図示せず)を、当該被清掃体(基板B)にエア90、91を吹き付けて除去する装置である。異物除去装置100は吹出ノズル30a、30bを備え、搬送手段10とともに用いられる。搬送手段10は、被清掃体(基板B)を搬送する搬送路20を有している。図3に示すように、一対の吹出ノズル30a、30bは、ともにスリット形状をなし、搬送路20の上方および下方にそれぞれ設けられて搬送路20に向けて面状にエア90、91を吹き出す。一対の吹出ノズル30a、30bのスリット方向は互いに異なるとともに、吹出ノズル30a、30bからそれぞれ吹き出される面状のエア90、91は、搬送路20において互いに交差することを特徴とする。
次に、本実施形態について詳細に説明する。
異物除去装置100は、被清掃体に対して気流を吹き付けることにより、当該被清掃体に付着している異物を除去するエア式のクリーナーである。被清掃体に吹き付けられる気流は、乾燥エアでもよく、または水などの液体の粒子がエアに混合したミストでもよい。
異物除去装置100によりクリーニングされる被清掃体としては各種基板やシート、フィルム、紙、布などの薄手の部材を広く例示することができる。基板としては、回路パターンが印刷形成されたプリント基板、ディスプレイ装置等に用いられるガラス基板、樹脂基板および金属板などを挙げることができる。本明細書では、シート状、フィルム状および板(プレート)状を区別せず、シート状と総称する。以下、本実施形態では被清掃体としてシート状の基板Bを例示する。基板Bは平坦でもよく、または基板Bには凹部が形成されていてもよく、または回路部品や治具などの凸状物品が基板Bの上面に設けられていてもよい。
異物除去装置100は、被清掃体(基板B)を搬送する搬送手段10とともに用いられる。異物除去装置100は、搬送手段10に組み込まれて一体に設けられてもよく、または既存の搬送手段10に対して後付けで装着可能に構成されてもよい。搬送手段10の構造は特に限定されないが、本実施形態では搬送ローラ14、15により異物除去装置100の前後方向に基板Bを搬送する搬送手段10を例示する。具体的には、本実施形態の異物除去装置100とともに用いられる搬送手段10は、搬送方向に並べて配置された複数本の搬送シャフト12(12aから12j)を有している。個々の搬送シャフト12は、搬送路20の幅方向に延在している。搬送シャフト12a〜12jは同一方向に回転駆動される。
搬送シャフト12a〜12cおよび12h〜12jの周囲には、大径のフランジ部13がそれぞれ複数箇所に形成されている。フランジ部13の周囲には搬送ローラ14が装着されている。また、搬送シャフト12d〜12gの周囲には、それぞれ複数個の搬送ローラ15が装着されている。搬送ローラ14、15はゴムなどの高摩擦材料からなり、搬送シャフト12a〜12jと一体に軸回転する。搬送シャフト12a〜12jは、図4において時計回りに軸回転する。搬送手段10は、搬送ローラ14、15に載置された基板Bを、図1(b)および図4に白抜矢印で示す搬送方向(前方)に搬送する。搬送路20は、多数の搬送ローラ14、15の各上端に接する帯状の仮想平面である。本実施形態の異物除去装置100における搬送路20は直線方向であるが、本発明はこれに限られない。搬送路20の一部または全部が湾曲していてもよい。搬送手段10の搬送方向とは基板Bの移動方向であり、搬送路20が湾曲している場合には搬送方向も搬送路20に沿う湾曲方向となる。搬送シャフト12は回転方向を正逆方向に反転可能としてもよい。搬送シャフト12を逆回転させた場合は、搬送方向および前後方向は反転する。
搬送シャフト12d〜12gは下部ノズルユニット80の形成領域の内部に配置されている。搬送シャフト12a〜12cおよび搬送シャフト12h〜12jは、下部ノズルユニット80の形成領域よりも前後方向の外部に配置されている。すなわち、本実施形態の異物除去装置100は、搬送手段10の搬送路20に組み込まれて一体に設けられている。搬送シャフト12d〜12gに装着された搬送ローラ15の外径は、搬送シャフト12a〜12cおよび搬送シャフト12h〜12jの周囲に装着された搬送ローラ14の外径よりも小径である。搬送ローラ14、15は、搬送シャフト12に対して、それぞれ奇数個ずつ左右対称に装着されている。本実施形態の搬送ローラ14、15は搬送シャフト12に沿って等間隔に配置されている。これにより、搬送シャフト12の軸方向の中央に搬送ローラ14、15が配置されることとなる。搬送シャフト12d〜12gは、搬送シャフト12a〜12cおよび搬送シャフト12h〜12jよりも高速で回転し、搬送ローラ15の接線方向速度は搬送ローラ14と同速である。これにより、搬送シャフト12a〜12jに亘って基板Bの搬送速度は一定となる。なお、第五実施形態(図8参照)にて後述するように、搬送手段10は搬送シャフト12(12a〜12cおよび12h〜12j)を備えていなくてもよく、異物除去装置100を既存の搬送手段10に対して後付けで設置してもよい。
基板Bは、異物除去装置100の前後寸法よりも長い長尺形状でもよく、または異物除去装置100の前後寸法よりも短い短尺形状でもよい。異物除去装置100は、基板Bを連続的に、または枚葉式に搬送して異物を除去する。基板Bから除去される異物としては、粒子状や薄片状などの塵埃のほか、水滴などの液滴を挙げることができる。本実施形態の異物除去装置100は、特に、固体の塵埃の除塵に好適に用いられる。
図1(b)に示すように、基板Bには回路パターンなどのワーク領域Wが幅方向(左右方向)に並んで2箇所に形成されて二面付けされている。説明のため、ワーク領域Wにハッチングを付す。基板Bの幅中央には非ワーク領域NWが設けられ、搬送シャフト12の中央に配置された搬送ローラ14、15が非ワーク領域NWを下方支持する。
下部ノズルユニット80は、搬送シャフト12d〜12gと、搬送路20の下方から基板Bに向ってエア91を吹き出す吹出ノズル30bとを備えている。吹出ノズル30bには、雰囲気圧(大気圧)よりも高圧の気体を貯留する下部高圧室84が連通している。下部高圧室84にはブロワやコンプレッサ(図示せず)が接続されて高圧の気体が供給される。本実施形態では、下部高圧室84に空気を貯留してエア91として吹き出すことを例示するが、これに代えて窒素ガスなどの不活性ガスを下部高圧室84に貯留して吹出ノズル30bから吹き出してもよい。
下部高圧室84は、前後方向に対向する一対の平行なノズル平板85a、85bにより構成されている。ノズル平板85a、85bの対向間隔は段差部86で縮小している。段差部86にはスリット部87が連通しており、スリット部87の上端には吹出ノズル30bが形成されている。本実施形態のスリット部87および吹出ノズル30bは、図1に示すように平面視でV字状をなしている。V字状のスリット幅は、スリット部87よりも吹出ノズル30bにおいてより小さくなっている。これにより、下部高圧室84に供給された高圧空気は段差部86、スリット部87および吹出ノズル30bで段階的に縮流および加速されて、V字状の面状のエアカーテンとなってエア91として上向きに吹き出される。
なお、本明細書においてエア90、91が面状であるとは、吹出ノズル30a、30bのスリット形状の延在長さに比べてエア90、91の厚み寸法が十分に小さいことをいう。ここでいう面状とは平面状と曲面状とを含む。吹出ノズル30a、30bから吹き出されたエア90、91は、拡散して厚み寸法が増大してもよい。
下部ノズルユニット80は、基板Bから除去された異物を含むエア91を吸い込む吸引口82を更に備えている。吸引口82は、吹出ノズル30bに対して搬送方向の前方および後方にそれぞれ設けられている。吸引口82には下部吸気室88がそれぞれ連通している。下部吸気室88にはブロワや減圧ポンプ(図示せず)が接続され、下部吸気室88は雰囲気圧よりも低圧に減圧される。
本実施形態の吸引口82は、吹出ノズル30bの前後に隣接する搬送シャフト12e、12fの各両側に沿って設けられている。吸引口82に関しては図2を用いて後述する。
吹出ノズル30bから搬送路20に向って上向きに吹き出されたエア91は、搬送路20に基板Bが載置されていない場合は搬送路20を通過して上部ノズルユニット70に衝突する。搬送路20に基板Bが載置されている場合、吹出ノズル30bから吹き出されたエア91は基板Bの下面に衝突して気流方向を前方または後方に転向させ、吸引口82より吸引される。これにより、吹出ノズル30bから吸引口82に向かうエア91の定常的な流れが形成され、ベンチュリ効果により基板Bは下方に引き寄せられて搬送ローラ14、15に密着して搬送される。
上部ノズルユニット70は、下部ノズルユニット80と上下略対称の構造を有している。上部ノズルユニット70は、搬送シャフト12d〜12gとそれぞれ対向する4本のローラシャフト72と、搬送路20の上方から基板Bに向ってエア90を吹き出す吹出ノズル30aとを備えている。吹出ノズル30aには、雰囲気圧(大気圧)よりも高圧の気体を貯留する上部高圧室74が連通している。上部高圧室74にはブロワまたはコンプレッサ(図示せず)が接続されて高圧の気体が供給される。下部高圧室84に接続されるブロワまたはコンプレッサと、上部高圧室74に接続されるブロワまたはコンプレッサとは共用してもよい。
上部高圧室74は、前後方向に対向する一対の平行なノズル平板75a、75bにより構成されており、ノズル平板75a、75bの対向間隔は段差部76で縮小している。段差部76にはスリット部77が連通しており、スリット部77の下端には吹出ノズル30aが形成されている。スリット部77および吹出ノズル30aの形状は、搬送路20に関して、下部ノズルユニット80のスリット部87および吹出ノズル30bと鏡面対称である。上部高圧室74に供給された高圧空気は段差部76、スリット部77および吹出ノズル30aで段階的に縮流および加速されて、V字状の面状のエアカーテンとなってエア90として下向きに吹き出される。
吹出ノズル30aに対して搬送方向の前後には、基板Bから除去された異物を含むエア90を吸い込む吸引口78が設けられている。吸引口78には上部吸気室79がそれぞれ連通しており、上部吸気室79にはブロワまたは減圧ポンプ(図示せず)が接続されて雰囲気圧よりも低圧に減圧される。吹出ノズル30aから搬送路20に向って下向きに吹き出されたエア90は、搬送路20に基板Bが載置されていない場合は搬送路20を通過して下部ノズルユニット80に衝突する。搬送路20に基板Bが載置されている場合には、吹出ノズル30aから吹き出されたエア90は基板Bの上面に衝突して気流方向を前方または後方に転向させ、吸引口78より吸引される。これにより、吹出ノズル30aから吸引口78に向かうエア90の定常的な流れが形成され、ベンチュリ効果により基板Bに対して上向きの力を及ぼす。下部ノズルユニット80の下部吸気室88における吸引圧を、上部ノズルユニット70の上部吸気室79における吸引圧よりも大きくするとよい。吸引圧とは大気圧からの減圧量の絶対値である。本実施形態によれば、下部ノズルユニット80から吹き出されるエア91が生成するベンチュリ効果が上部ノズルユニット70のエア90によるベンチュリ効果よりも卓越し、基板Bが搬送手段10から浮き上がることはない。
上部ノズルユニット70のローラシャフト72の周囲には押えローラ73が装着されている。押えローラ73の外径は、下部ノズルユニット80の搬送ローラ15の外径と等しくてもよく、または相違してもよい。押えローラ73はローラシャフト72と一体に回転する。ローラシャフト72は、搬送シャフト12d〜12gと逆方向(図4における反時計回り)に回転する。押えローラ73の下端は、ノズルヘッド40aよりも僅かに下方に突出している。これにより、基板Bにばたつきが発生して搬送路20から離間した場合にも、ローラシャフト72の押えローラ73が基板Bの上面に接してこれを搬送方向に送ることで、基板Bが上部ノズルユニット70の吸引口78に吸着することを防止する。かかる意味で、ローラシャフト72および押えローラ73は、異物除去装置100とともに用いられる搬送手段10の一部を構成している。
図1(a)に示すように、ローラシャフト72には、幅中央および基板Bのワーク領域Wの各外側の合計3箇所に押えローラ73が装着され、それ以外の中間部に押えローラ73が装着されていない点で、下部ノズルユニット80における搬送シャフト12d〜12gと相違する。これにより、基板Bにばたつきが発生して搬送路20から離間した場合も、ローラシャフト72の押えローラ73は基板Bの上面側のワーク領域Wとは接触せず、非ワーク領域NWともっぱら接触し、ワーク領域Wを損傷することがない。また、基板Bの可撓性が小さく、すなわち基板Bの曲げ剛性が大きく基板Bがリジッドな部材である場合は、搬送シャフト12d〜12gの搬送ローラ15およびローラシャフト72の押えローラ73を、それぞれ幅両側の2箇所のみに設け、幅中央の搬送ローラ15およびローラシャフト72を省略してもよい。具体的には、基板Bの通過領域のうち、ワーク領域Wに対して幅方向の両外側に対応する位置にのみ、搬送ローラ15および押えローラ73を設けてもよい。これにより、図1(b)に示すようにワーク領域Wが幅方向に偶数箇所に設けられて幅中央に非ワーク領域NWが設けられている基板Bに代えて、任意の数および形状のワーク領域Wを有する基板Bを搬送する場合にも、搬送ローラ15および押えローラ73をワーク領域Wの下面および上面に接触させることがない。
図4に示すように、本実施形態における上部ノズルユニット70と下部ノズルユニット80との対向方向は上下方向であり、吹出ノズル30aと吹出ノズル30bとは上下に対向している。搬送路20で搬送される基板Bの上面から吹出ノズル30aまでの面直方向距離(ノズルギャップG)と、搬送路20(すなわち基板Bの下面)から吹出ノズル30bまでの面直方向距離とは略等しいが、完全に同一である必要はない。搬送路20に載置される基板Bの厚み中心を基準にして吹出ノズル30aまでの面直方向距離と吹出ノズル30bまでの面直方向距離とを同一にしてもよく、または基板Bの上面を基準にして吹出ノズル30aまでの面直方向距離(ノズルギャップG)と吹出ノズル30bまでの面直方向距離とを同一にしてもよい。
本実施形態では、吹出ノズル30aから基板B(搬送路20)に対して面直下方にエア90を吹き出し、吹出ノズル30bから基板B(搬送路20)に対して面直上方にエア91を吹き出す。エア90とエア91とは搬送路20において互いに交差し、言い換えると基板Bの面内方向の同位置に対してエア90とエア91が表裏面(上下面)から衝突する。これにより、基板Bを上下両側からエア90、91で挟持して押さえることができる。面状のエアカーテンとして吹き出されるエア90とエア91とは、全体的に正面衝突することなく、互いに交差する。このため、特許文献1や特許文献2の装置のように面状のエア同士が激しく不安定に衝突することがない。吹出ノズル30a、30bの幅寸法(左右方向の寸法)は、基板Bの幅寸法と同一であるか、または基板Bの幅寸法よりも大きい。より具体的には、本実施形態の吹出ノズル30a、30bの幅寸法は、いずれも基板Bの幅寸法よりも大きく、かつ互いに等しい。また、吹出ノズル30aは、ローラシャフト72の両端に設けられた押えローラ73よりも幅方向の両外側まで延在している(図1(a)参照)。吹出ノズル30bも同様に、搬送シャフト12d〜12gの両端に設けられた搬送ローラ15よりも幅方向の両外側まで延在している(図1(b)参照)。これにより、基板Bのうち搬送方向に沿って延在する幅両側の側端部28を含む基板Bの全幅領域に対して、エア90、91が吹き付けられて異物が除去される(図3参照)。なお、本実施形態に代えて、エア90とエア91とが搬送路20において互いに交差するかぎりにおいて、エア90またはエア91の一方または両方を基板B(搬送路20)に対して前方または後方に斜めに吹き出してもよい。
以下、図2および図3を用いて本実施形態の吹出ノズル30a、30bについて更に詳細に説明する。
図2に示すように、本実施形態の一対の吹出ノズル30a、30bは、搬送路20の平面視で互いに交差している。吹出ノズル30aと吹出ノズル30bとは上下方向に対向しており、搬送路20に対して面直方向にエア90、91を吹き出す(図4参照)。
吹出ノズル30a、30bの少なくとも一方(本実施形態では両方)は、屈曲形状をなしている。吹出ノズル30a、30bが屈曲形状をなすとは、スリット形状の吹出ノズル30a、30bの延在方向(スリット方向)が少なくとも1箇所において屈曲または湾曲していることをいう。本明細書では屈曲と湾曲とを区別せず、スリット形状が所定の曲率半径をもって湾曲している場合も「屈曲」と呼称する。
本実施形態の吹出ノズル30a、30bの屈曲形状は、それぞれ1箇所の屈曲点34a、34bを有するとともに、この屈曲点34a、34bを除いて直線部32により構成されている。吹出ノズル30a、30bのスリット幅は均一であり、一例として0.2mm以上0.5mm以下とすることができる。吹出ノズル30a、30bの屈曲形状は、屈曲点34a、34bにおいて、スリット幅よりも大きな曲率半径で滑らかに湾曲している。
本実施形態の異物除去装置100においては、一対の吹出ノズル30a、30bが、ともに屈曲形状をなしている。搬送路20の平面視で、吹出ノズル30a、30bの屈曲形状の屈曲点34a、34bは、搬送路20の面内方向の異なる位置に設けられている。屈曲点34a、34bは搬送路20の面内方向における幅方向(左右方向)または搬送方向(前後方向)の少なくとも一方に関して異なる位置に設けられている。
より具体的には、本実施形態における一対の吹出ノズル30a、30bの屈曲点34a、34bは、搬送手段10の搬送方向(前後方向)に関して異なる位置に設けられている。これにより、図3に示すように、下部ノズルユニット80に差し掛かる基板Bの先端部25に対して、エア90の屈曲ライン92と、エア91の屈曲ライン93とが同時に衝突することがない。これにより、基板Bの先端部25のばたつきを抑制することができる。なお、本実施形態に代えて、後述する第四実施形態のように屈曲点34a、34bを搬送方向の同位置かつ幅方向の異なる位置に設けてもよい。
屈曲形状の屈曲点34a、34bは、搬送路20の平面視で、搬送路20の幅方向の略中央に位置している。これにより、吹出ノズル30a、30bは平面視でV字状をなしている。直線部32は、幅方向(左右方向)に対して斜めに傾斜している。
図3に示すように、吹出ノズル30aから下向きに吹き出されるエア90は屈曲点34aに対応する屈曲ライン92を中心として幅方向に左右対称に屈曲した曲面状のエアカーテンとなる。屈曲ライン92は、屈曲点34aから吹き出されたエア90が通過する領域である。同様に、吹出ノズル30bから上向きに吹き出されるエア91は、屈曲点34bに対応する屈曲ライン93を中心として幅方向に左右対称に屈曲した曲面状のエアカーテンとなる。屈曲ライン93は、屈曲点34bから吹き出されたエア91が通過する領域である。
屈曲した曲面状のエア90が搬送路20と交差する形状(交差形状21)は、搬送方向の後方に突出するV字状となる。一方、屈曲した曲面状のエア91が搬送路20と交差する形状(交差形状22)は、搬送方向の前方に突出するV字状となる。図3において、交差形状21を実線で示し、交差形状22を破線で示す。基板Bの搬送方向を図3に矢印で示す。交差形状21と交差形状22とは、搬送路20において交点23にて互いに交差する。これにより、面状のエア90、91は、搬送路20において互いに交差している。本実施形態では、面状のエア90、91は、搬送路20において2点の交点23で互いに交差している。
交差形状21、22がV字状をなすことで、基板Bの上面および下面に幅方向(左右方向)の外向きの速度成分をもってエア90、91が衝突して付勢力(清掃力)を負荷するため、基板Bから吹き飛ばされた異物が基板Bに再付着することが防止される。
また、交差形状21および交差形状22は、交点23の近傍の局所領域を除き、基板Bの幅方向の略全体に亘って、搬送方向に関して前後の異なる位置に形成される。また、吹出ノズル30a、30bの幅寸法が基板Bの幅寸法よりも大きいため、交差形状21および交差形状22は基板Bの幅全体に形成される。搬送される基板Bの上面および下面のうち、交点23を通過する局所領域に対してはエア90、91が同時に吹き付けられ、交点23以外の略全幅領域に対してはエア90、91が異なるタイミングで複数回に亘って吹き付けられることとなる。このため、基板Bの先端部25および後端部(図示せず)、基板Bに形成されている通孔部26、27、ならびに側端部28に対して、エア90、91が異なるタイミングかつ異なる流れ方向で通過する。具体的には、図3に示す本実施形態の場合、基板Bの幅中央の近傍に形成された通孔部26に対しては、吹出ノズル30aの屈曲点34aから吹き出されたエア90の屈曲ライン92が下向きに通過した後に、吹出ノズル30bの屈曲点34bから吹き出されたエア91の屈曲ライン93が上向きに通過する。これにより、通孔部26に付着している異物に対して、エア90とエア91が2回に亘ってこれを吹き飛ばして除去することができる。また、基板Bの幅両側に形成された通孔部27に対しては、吹出ノズル30bから吹き出されたエア91の平面部分が上向きに通過した後に、吹出ノズル30aから吹き出されたエア90の平面部分が下向きに通過する。これにより、通孔部27に付着している異物に対しても、エア90とエア91が2回に亘ってこれを吹き飛ばして除去することができる。同様に、先端部25や、対向する一対の側端部28の全長に対しても、エア90とエア91が2回に亘って異物を除去する。言い換えると、基板Bの先端部25や通孔部26、27および側端部28など異物が付着しやすい端縁(エッジ)に対して、エア90、91が互いに干渉して減速することなく異なるタイミングで下方および上方に各1回ずつ吹き抜ける。このため、本実施形態の異物除去装置100によれば、基板Bのうち交点23を通過する局所領域を除く略全幅領域に関して、異物が残留しやすい先端部25や通孔部26、27、側端部28についてもエア90、91によって良好に異物を除去することができる。また、異物が固体の塵埃である場合には基板Bの端縁(エッジ)に対して異物が強固に付着していることがあるが、かかる場合でも異物除去装置100によれば上述のようにエア90、91が異なる方向に複数回に亘って吹き抜けるため基板Bから塵埃を良好に除塵することができる。
また、交差形状21、22がV字状をなすことで、搬送される基板Bに対してエア90、91の付勢力が左右対称に安定して負荷されるため、基板Bのばたつきが抑制される。また、上述のように下部ノズルユニット80に設けられた搬送シャフト12d〜12gの搬送ローラ15は、搬送シャフト12の軸方向の中央に配置されている(図1(b)参照)。このため、エア90の屈曲ライン92によって下向きに付勢される基板Bが、かかる中央の搬送ローラ15によって下支えされ、基板Bのばたつきが更に抑制される。
本実施形態では、吹出ノズル30aの屈曲点34aが搬送方向の後方に位置し、吹出ノズル30bの屈曲点34bが搬送方向の前方に位置することを例示するが、本発明はこれに限られない。屈曲点34a、34bを搬送方向の異なる位置に設けることで、基板Bが下部ノズルユニット80に差し掛かる前の状態(初期状態)において、屈曲した曲面状のエア90、91同士は、屈曲ライン92、93から離間した直線部32において交差する。以下、基板Bが搬送路20に載置されていないか、または搬送路20に載置されている基板Bが下部ノズルユニット80に差し掛かっていない状態を、異物除去装置100の初期状態と呼称する。本実施形態によれば、エア90、91の吹き出し状態が微小に変動した場合でもエア90、91同士の交差位置が僅かに変動するだけであり、エア90、91の流れ方向は実質的に変動しない。このため、基板Bの搬送状態が安定し、不測のばたつきの発生が防止される。
一対の吹出ノズル30a、30bは、搬送路20の平面視で、搬送路20の幅方向を対称軸AXとして互いに鏡面対称形状である。言い換えると、吹出ノズル30a、30bは平面視で前後対称であり、吹出ノズル30a、30bの屈曲点34a、34bは前後方向に並んでいる。これにより、搬送される基板Bに対して、前後方向に延びる同一ラインの表裏面(上下面)に屈曲ライン92、93が衝突する。そして、本実施形態のように屈曲点34a、34bを搬送路20の幅方向の略中央に位置させることで、基板Bの幅中央の非ワーク領域NW(図1(b)参照)に対してエア90、91の屈曲ライン92、93が衝突することとなる。このため、ワーク領域Wの内部に対しては吹出ノズル30a、30bの直線部32からエア90、91が吹き付けられて異物は搬送方向の斜め外向きに吹き飛ばされ、再付着することなく吸引口82および吸引口78(図4参照)に吸引される。
図1(a)に示すように、上部ノズルユニット70は、スリット形状の吹出ノズル30aが開口形成された平坦なノズルヘッド40aを備えている。また、図1(b)および図3に示すように、下部ノズルユニット80は、スリット形状の吹出ノズル30bが開口形成された平坦なノズルヘッド40bを備えている。図4に示すように、スリット形状の吹出ノズル30a、30bが開口形成された平坦なノズルヘッド40a、40bは、搬送路20の上方および下方に互いに対向して配置されている。ノズルヘッド40a、40bは実質的に平坦面で構成され、搬送路20に対してそれぞれ平行に対向して配置されている。
そして、一対のうちの一のノズルヘッド40aの吹出ノズル30aから吹き出されるエア90は、対向する他のノズルヘッド40bにおいて吹出ノズル30bが開口形成されていないノズル非形成領域42(図2参照)に衝突する。ノズル非形成領域42は、吹出ノズル30bが開口形成されているノズル形成領域41とは異なる位置に仮想的に区画される、ノズルヘッド40b上の仮想領域である。ノズル非形成領域42は、ノズル形成領域41に対して搬送方向の異なる位置に設けられている。図2に示すように、本実施形態では屈曲したノズル形成領域41がノズルヘッド40bの略中央に設けられ、ノズル非形成領域42はノズル形成領域41に対して搬送方向の前後両側に設けられている。
異物除去装置100の初期状態において、吹出ノズル30aから下向きに吹き出されるエア90は、エア91と交差する一部を除き、下部ノズルユニット80における平坦面であるノズルヘッド40bの上面に衝突する。これにより、エア90はノズルヘッド40bに沿って流れ方向が転向される。
図2に示すように、ノズルヘッド40bは、第一ヘッド部43、第二ヘッド部44および側縁部45からなる。第一ヘッド部43と第二ヘッド部44とは前後方向に僅かに離間させて並べて配置されている。第一ヘッド部43と第二ヘッド部44との間隙が吹出ノズル30bにあたる。第一ヘッド部43と第二ヘッド部44とを前後方向に相対的に位置調整可能とし、吹出ノズル30bのスリット間隔を可変にしてもよい。側縁部45は、スリット状の吹出ノズル30bの左右方向の両側をそれぞれ終端させる部材である。第一ヘッド部43、第二ヘッド部44および側縁部45の上面は平坦かつ互いに面一であり、これらの上面が合わさってノズルヘッド40bが構成されている。
上部ノズルユニット70は、吹出ノズル30aの屈曲方向が吹出ノズル30bと相違し、かつ搬送路20に関して下部ノズルユニット80と対称に配置されている点を除き、下部ノズルユニット80と共通の構造を有している。吹出ノズル30bから上向きに吹き出されるエア91と、上部ノズルユニット70のノズルヘッド40aとの関係も同様である。上部ノズルユニット70に関する重複する説明は省略する。
本実施形態のノズルヘッド40a、40bは、吹出ノズル30a、30bが開口形成されているノズル形成領域41と、このノズル形成領域41に対して搬送方向の異なる位置に設けられたノズル非形成領域42と、を有している。一対のノズルヘッド40a、40bは、搬送路20の面内方向の同位置に対向して配置されている。吹出ノズル30a、30bから被清掃体(基板B)に対して、エア90、91は垂直に吹き出される。
このため、本実施形態の異物除去装置100は、初期状態におけるエア90、91の流動状態が安定し、基板Bが下部ノズルユニット80に差し掛かる瞬間にも、基板Bに発生するばたつきを抑制することができる。
異物除去装置100は、ノズルヘッド40bにおける搬送方向の前縁46および後縁47にそれぞれ隣接して開口形成された吸引口82と、これらの吸引口82を負圧に吸引してエアを吸い込む吸込手段(下部吸気室88:図4参照)と、を備えている(図2参照)。具体的には、下部ノズルユニット80のノズルヘッド40bと、当該ノズルヘッド40bに対して搬送方向の両側に隣接する搬送シャフト12e、12fと、の間に吸引口82がそれぞれ形成されている。
同様に、異物除去装置100は、図1(a)に示すように、ノズルヘッド40aにおける搬送方向の前縁56および後縁57にそれぞれ隣接して開口形成された吸引口78と、これらの吸引口78を負圧に吸引してエアを吸い込む吸込手段(上部吸気室79:図4参照)と、を備えている。具体的には、上部ノズルユニット70のノズルヘッド40aと、その前後に配置されたローラシャフト72と、の間に吸引口78が形成されている。吸込手段(上部吸気室79、下部吸気室88)は、基板Bから除去された異物をそれぞれ含むエア90、91を、搬送方向の前後両側の吸引口78、82から吸い込む。
ノズルヘッド40a、40bにおける、吹出ノズル30a、30bから前縁56、46または後縁57、47までの搬送方向の距離の最小値と最大値を、それぞれLmin、Lmaxと呼称する。図2には、下部ノズルユニット80のノズルヘッド40bにおけるLmin、Lmaxを図示する。本実施形態の吹出ノズル30bでは、屈曲点34bから後縁47までの搬送方向の距離と、吹出ノズル30bの両端から前縁46までの搬送方向の距離とは互いに略等しく、これらが最小値(Lmin)となっている。この最小値(Lmin)は、搬送方向にみたノズル非形成領域42の最小寸法である。本実施形態のノズルヘッド40bは長方形状をなし、前縁46と後縁47との距離は一定である。したがって、屈曲点34bから前縁46までの搬送方向の距離と、吹出ノズル30bの両端から後縁47までの搬送方向の距離とは互いに略等しく、これらが最大値(Lmax)となる。
なお、上部ノズルユニット70のノズルヘッド40aにおけるLmin、Lmaxの位置関係は、図2に示すノズルヘッド40bにおける位置関係と前後対称であり、またノズルヘッド40aにおけるLminおよびLmaxの値は、それぞれノズルヘッド40bにおける値と共通である。
異物除去装置100は、一対のノズルヘッド40aまたは40bのいずれかが一方または両方が、以下の式(1)および式(2)を満たしている。より具体的には、本実施形態の場合、一対のノズルヘッド40aまたは40bの両方が以下の式(1)および式(2)を満たしている。すなわち、ノズルヘッド40aにおける上記の最小値(Lmin)および最大値(Lmax)と、当該ノズルヘッド40aの吹出ノズル30aから被清掃体(基板B)までの面直方向距離(G:図4参照)とは、以下の式(1)および式(2)を満たしている。同様に、ノズルヘッド40bにおける最小値(Lmin)および最大値(Lmax)と、吹出ノズル30bから被清掃体(基板B)までの面直方向距離とは、以下の式(1)および式(2)を満たしている。
(数1)
Lmin>G ・・・(1)
(数2)
Lmax<10×G ・・・(2)
上記の式(1)および(2)の意味について、上部ノズルユニット70のノズルヘッド40aを例に説明する。下部ノズルユニット80のノズルヘッド40bに関しても同様である。
ここで、Lminが過少であると、対向する吹出ノズル30bから上向きに吹き出されたエア91がノズルヘッド40aのノズル非形成領域42で十分に転向されずに吸引口78に吸引されるため、初期状態において気流が乱れることとなる。これに対し、本実施形態のように上記の式(1)を満たすことで、エア91がノズルヘッド40aに衝突して十分に転向してから吸引口78に吸引されるため、初期状態において異物除去装置100の気流が安定する。
一方、Lmaxが過大であると、吹出ノズル30aから下向きに吹き出されて基板Bの上面に衝突して異物を除去したエア90が、所定の渦流を形成したのち、再びノズルヘッド40aに衝突して基板Bに向かうこととなる。このため、基板Bから除去された異物が基板Bに再付着する虞が生じる。これに対し、本実施形態のように上記の式(2)を満たすことで、エア90が基板Bの上面に衝突して異物を吹き飛ばしたのち、この異物が基板Bに再付着することなく吸引口78から吸引されて異物除去装置100の外部に排出される。
一例として、ノズルギャップG(図4参照)は、1mm以上3mm以下とすることができる。Lminは、上記の式(1)を満たし、かつ2mm以上10mm以下とすることができる。そして、Lmaxは、Lminよりも大きく、上記の式(2)を満たし、かつ5mm以上20mm以下とすることができる。
また、本実施形態の異物除去装置100においては、搬送方向に関して、吸引口82の開口寸法は、上記の最小値(Lmin)よりも小さい。なお、搬送方向に関する吸引口82の開口寸法とは、図2に示す平面視における、搬送シャフト12e、12fの外径と、下部ノズルユニット80のノズルヘッド40bの前縁46または後縁47との距離D1である。
本実施形態のように吸引口82の開口寸法をノズル非形成領域42の最小寸法よりも小さくすることで、初期状態においてノズルヘッド40bの平坦部に衝突したエア90をノズルヘッド40bの面内方向に十分に転向させてから吸引口82より吸引することができる。これにより、下部ノズルユニット80に向って吹き出されたエア90がノズルヘッド40bの前縁46、後縁47や搬送シャフト12e、12fに直接に衝突して流動方向が不安定に乱れることを低減して基板Bのばたつきを抑制することができる。
ただし、本実施形態に代えて、搬送方向に関して、吸引口82の開口寸法を、吹出ノズル30bから前縁46または後縁47までの距離の最小値(Lmin)よりも大きくしてもよい。特に、基板Bの曲げ剛性が大きくリジッドな部材である場合には、基板Bの撓み変形が小さいため、吸引口82の開口寸法を十分に大きくすることが可能である。これにより、基板Bから除去された異物を吸引口82より効率的に吸引して排出することができる。
なお本実施形態については種々の変形を許容する。たとえば、本実施形態では吹出ノズル30a、30bのスリット形状を前後方向に逆向きのV字状としたが、本発明はこれにかぎられない。
以下、吹出ノズル30a、30bの形状をV字状から相違させた第二から第四実施形態について説明する。
図5(a)は、本発明の第二実施形態の下部ノズルユニット80の平面図である。同図には、上部ノズルユニット70(図1(a)参照)における吹出ノズル30aを下部ノズルユニット80に投影した形状を二点鎖線で示してある。図5(b)は、本実施形態の吹出ノズル30a、30bから搬送路20に向けてエア90、91が吹き出される様子を示す模式図である。上部ノズルユニット70の下方斜視図と下部ノズルユニット80および基板Bの上方斜視図とを遠近表示してある。
本実施形態の吹出ノズル30a、30bのスリット形状は、左右方向に対して所定の傾斜角度で斜めに延在する直線状をなしている点で第一実施形態と相違する。吹出ノズル30aから下向きに吹き出されるエア90と、吹出ノズル30bから上向きに吹き出されるエア91は、ともに平面状をなす。
そして、一対の吹出ノズル30a、30bが搬送路20の平面視で搬送路20の幅方向(左右方向)を対称軸AXとして互いに鏡面対称形状である点で、第一実施形態と共通する。
これにより、本実施形態の吹出ノズル30a、30bは搬送路20の平面視でX字状をなし、エア90と搬送路20との交差形状21と、エア91と搬送路20との交差形状22とは、搬送路20において幅方向(左右方向)の中央で交差する。これにより、面状に吹き出されるエア90とエア91とは中央の一部のみで衝突し、辺の全長に亘って不安定に衝突することがない。このため、エア90、91の状態が変動しても被清掃体(基板B)に作用する付勢力は実質的に変動せず、被清掃体(基板B)のばたつきを抑制することができる。
なお、吹出ノズル30a、30bが屈曲点34a、34bを有する第一実施形態の異物除去装置100は、直線部32(図2参照)の傾斜角度を第二実施形態と共通とした場合、ノズル形成領域41の前後寸法を略半分に低減することが可能である。このため、第一実施形態によれば、上部ノズルユニット70および下部ノズルユニット80の前後寸法を抑制し、搬送シャフト12eと搬送シャフト12fとの距離を近づけることができる。これにより、搬送シャフト12eからオーバーハングして下部ノズルユニット80を通過する基板Bの先端部25(図3参照)を搬送シャフト12fで直ちに安定して支持することができる。また、ノズルヘッド40bの前後に位置する一対の吸引口82で基板Bを吸引する間隔が短縮されるため、エア90、91が吹き付けられて面直方向に撓もうとする基板Bの変形が吸引力によって抑制される。このため、基板Bに対してエア90、91が安定して吹き付けられるため異物が好適に除去される。
図6(a)は、本発明の第三実施形態の下部ノズルユニット80の平面図である。同図には、上部ノズルユニット70(図1(a)参照)における吹出ノズル30aを下部ノズルユニット80に投影した形状を二点鎖線で示してある。図6(b)は、本実施形態の吹出ノズル30a、30bから搬送路20に向けてエア90、91が吹き出される様子を示す模式図である。上部ノズルユニット70の下方斜視図と下部ノズルユニット80および基板Bの上方斜視図とを遠近表示してある。
本実施形態の吹出ノズル30a、30bは、それぞれ複数個の屈曲点34a、34bを有している点で第一実施形態と相違する。具体的には、本実施形態の吹出ノズル30a、30bは、それぞれ3個の屈曲点34a、34bを有し、平面視でW字状をなしている。
そして、吹出ノズル30a、30bの少なくとも一方が屈曲形状をなしている点、および一対の吹出ノズル30a、30bの屈曲点34a、34bが搬送手段10の搬送方向(前後方向)に関して異なる位置に設けられている点で第一実施形態と共通する。
また、一対の吹出ノズル30a、30bが搬送路20の幅方向を対称軸AXとして互いに鏡面対称形状である点でも第一実施形態と共通する。
本実施形態によれば、吹出ノズル30a、30bのスリット形状が複数個の屈曲点34a、34bを有していることで、直線部32の傾斜角度を第一実施形態と共通とした場合に、吹出ノズル30bのノズル形成領域41および下部ノズルユニット80の前後寸法を更に低減することが可能である。
図7(a)は、本発明の第四実施形態の下部ノズルユニット80の平面図である。同図には、上部ノズルユニット70(図1(a)参照)における吹出ノズル30aを下部ノズルユニット80に投影した形状を二点鎖線で示してある。図7(b)は、本実施形態の吹出ノズル30a、30bから搬送路20に向けてエア90、91が吹き出される様子を示す模式図である。上部ノズルユニット70の下方斜視図と下部ノズルユニット80および基板Bの上方斜視図とを遠近表示してある。
本実施形態の吹出ノズル30a、30bのスリット形状は略V字状であり、搬送路20の平面視で幅方向(左右方向)に鏡面対称形状をなしている。
すなわち、本実施形態は、吹出ノズル30a、30bの少なくとも一方(本実施形態では両方)が屈曲形状をなしている点で第一実施形態と共通する。また、一対の吹出ノズル30a、30bがともに屈曲形状をなしており、搬送路20の平面視で吹出ノズル30a、30bの屈曲形状の屈曲点34a、34bが搬送路20の面内方向の異なる位置に設けられている点でも第一実施形態と共通する。
そして、本実施形態の吹出ノズル30a、30bは、搬送路20の平面視で屈曲点34a、34bが互いに搬送方向の同位置かつ幅方向の異なる位置に設けられている点で第一実施形態と相違している。すなわち、搬送路20の平面視で、一対の吹出ノズル30a、30bは幅方向に鏡面対称ではなく、屈曲点34a、34bが前後方向ではなく幅方向(左右方向)に並んでいる。
本実施形態の吹出ノズル30a、30bでも、エア90と搬送路20との交差形状21と、エア91と搬送路20との交差形状22とは、搬送路20において交差する。これにより、V字状の曲面状に吹き出されるエア90とエア91とは一部のみで局所的に衝突し、辺の全長に亘って不安定に衝突することがないため、基板Bのばたつきを抑制することができる。
図8は、本発明の第五実施形態の異物除去装置100および搬送手段11の断面模式図である。同図に示す搬送手段11は、搬送シャフト12に代えて送出ロール16および巻取ロール17を備える点で図4に示した搬送手段10と相違する。
送出ロール16の周囲にはシート状の長尺かつ可撓性の基板Bが巻き付けられており、図8に矢印で示すように軸回転することで基板Bを送り出すロール体である。巻取ロール17は、送出ロール16と同方向に軸回転して基板Bを巻き取るロール体である。基板Bは、送出ロール16と巻取ロール17とに亘って所定の張力をもって張架されている。巻取ロール17を回転させて基板Bを引き取りながら、送出ロール16から基板Bを送り出すことで基板Bは搬送される。これにより、基板Bに沿って空中に搬送路20が仮想平面として形成される。
本実施形態の異物除去装置100は、送出ロール16と巻取ロール17とからなる既存の搬送手段11に対して、後付けにより設置して用いられる。具体的には、被清掃体(基板B)の上方および下方に上部ノズルユニット70および下部ノズルユニット80を対向して設置し、基板Bの下面を下部ノズルユニット80の搬送シャフト12d〜12gで下支えするとともに、吹出ノズル30aと基板Bとを所定の面直方向距離として用いられる。異物除去装置100の構成は第一実施形態と共通であるため重複する説明は省略する。
本実施形態の異物除去装置100によれば、既存の搬送手段11に対して上部ノズルユニット70および下部ノズルユニット80を設置するだけで、搬送手段11により搬送される基板Bから異物を除去することが可能である。そして、第一実施形態の搬送手段10のように搬送シャフト12(図4参照)を持たずとも、本実施形態で用いられる搬送手段11のように基板Bの一端または両端を駆動してこれを搬送するものでもよい。本実施形態によれば、簡易な構造の搬送手段11に対して異物除去装置100を装着して用いることができるため、基板Bの搬送ラインを柔軟に設計することができる。
本発明の異物除去装置の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はない。複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
本発明の上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)被清掃体に付着している異物を前記被清掃体にエアを吹き付けて除去する異物除去装置であって、前記被清掃体を搬送する搬送路の上方および下方にそれぞれ設けられて前記搬送路に向けて面状にエアを吹き出すスリット形状の一対の吹出ノズルを備え、一対の前記吹出ノズルのスリット方向が互いに異なるとともに、前記吹出ノズルからそれぞれ吹き出される面状の前記エアが前記搬送路において互いに交差することを特徴とする異物除去装置。
(2)一対の前記吹出ノズルが、前記搬送路の平面視で互いに交差している上記(1)に記載の異物除去装置。
(3)前記吹出ノズルの少なくとも一方が屈曲形状をなしている上記(1)または(2)に記載の異物除去装置。
(4)前記屈曲形状の屈曲点が、前記搬送路の平面視で前記搬送路の幅方向の略中央に位置している上記(3)に記載の異物除去装置。
(5)一対の前記吹出ノズルがともに屈曲形状をなしており、前記搬送路の平面視で前記屈曲形状の屈曲点が前記搬送路の面内方向の異なる位置に設けられている上記(3)または(4)に記載の異物除去装置。
(6)一対の前記吹出ノズルの前記屈曲点が、前記被清掃体の搬送方向に関して異なる位置に設けられている上記(5)に記載の異物除去装置。
(7)一対の前記吹出ノズルが、前記搬送路の平面視で、前記搬送路の幅方向を対称軸として互いに鏡面対称形状である上記(1)から(6)のいずれか一項に記載の異物除去装置。
(8)前記スリット形状の前記吹出ノズルが開口形成された平坦なノズルヘッドが前記搬送路の上方および下方に互いに対向して配置されており、一の前記ノズルヘッドの前記吹出ノズルから吹き出される前記エアが、対向する他の前記ノズルヘッドにおいて前記吹出ノズルが開口形成されていないノズル非形成領域に衝突することを特徴とする上記(1)から(7)のいずれか一項に記載の異物除去装置。
(9)前記ノズルヘッドは、前記吹出ノズルが開口形成されているノズル形成領域と、前記ノズル形成領域に対して前記被清掃体の搬送方向の異なる位置に設けられた前記ノズル非形成領域と、を有し、一対の前記ノズルヘッドが前記搬送路の面内方向の同位置に対向して配置され、前記吹出ノズルから前記被清掃体に対して前記エアが垂直に吹き出されることを特徴とする上記(8)に記載の異物除去装置。
(10)前記ノズルヘッドにおける前記搬送方向の前縁および後縁にそれぞれ隣接して開口形成された吸引口と、前記吸引口を負圧に吸引してエアを吸い込む吸込手段と、を更に備え、当該ノズルヘッドにおける前記吹出ノズルから前記前縁または前記後縁までの前記搬送方向の距離の最小値(Lmin)および最大値(Lmax)と、当該ノズルヘッドの前記吹出ノズルから前記被清掃体の上面までの面直方向距離であるノズルギャップ(G)と、が以下の式(1)および式(2);
Lmin>G ・・・(1)
Lmax<10×G ・・・(2)
を満たすことを特徴とする上記(9)に記載の異物除去装置。