以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、以下に説明する複数の実施形態において、第1実施形態と同等の部材には、同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
(第1実施形態)
まず、図1を参照して、本発明の各実施形態に係る部品実装システムは、3台(No.1〜No.3)の部品実装装置1を備えている。各部品実装装置1は、例えば、プリント基板Wのデュアルレーン式の生産ライン内に直列に設けられている。前記生産ラインは、互いに並行に設定された第1レーン及び第2レーンを構成し、これら第1レーン及び第2レーンの上流側から下流側にプリント基板Wを搬送して、順次、必要な加工を施すように構成されている。
以下の説明では、プリント基板Wの搬送方向(図1において、長手方向の左側から右側)を基板搬送方向とし、この基板搬送方向に沿う水平方向をX軸方向、X軸方向に直交する水平方向をY軸方向とする。また、Y軸方向において、図1の幅方向下側を仮に前方とする。
前記生産ラインにおいて、最上流の部品実装装置1(No.1)の上流側には、ローダ及び印刷装置が上流側から順に直線状に連結されている。また、最下流の部品実装装置1(No.3)の下流側には、リフロー装置及びアンローダ上流側から順に直線状に連結されている。
前記生産ラインは、ホストコンピュータの制御により、その稼動が制御される。プリント基板Wは、前記ローダから供給され、印刷装置によってクリーム半田等の実装作業が施された後、最上流の部品実装装置1に搬入される。この部品実装装置1は、この印刷済のプリント基板Wに電子部品を実装した後、下流側の部品実装装置1(No.2)に搬出する。搬出されたプリント基板Wには、電子部品が実装され、さらに最下流の部品実装装置1(No.3)にプリント基板Wが搬送される。最下流の部品実装装置1(No.3)は、前記リフロー装置に実装済のプリント基板Wを搬出する。搬出されたプリント基板Wは、前記リフロー装置によってリフロー処理が施された後、前記アンローダに回収される。
各部品実装装置1は、それぞれが制御装置20(No.2にのみ図示)を有する自律型の装置であって、それらの動作が各自の制御装置により個別に制御されるようになっている。一方、前記生産ラインは、LANシステムを介して各装置の制御装置に接続されるホストコンピュータが設けられている。このホストコンピュータは、生産対象となるプリント基板Wに対応する生産プログラム等に基づき、各装置の動作を統括的に制御するとともに、プリント基板Wの生産開始に先立ち、当該プリント基板の搬送方式や実装モードを決定する。詳しくは後述するように、部品実装装置1の制御装置20は、このホストコンピュータと通信することにより、ホストコンピュータによって決定された実装モードに基づき、各部の制御を行う。
次に、部品実装装置1の詳細について説明する。なお、第1実施形態における部品実装装置1は、3台とも原理的には同じ構成であるので、以下の説明では、中央のもの(No.2)単体について説明する。
部品実装装置1は、互いに平行にX軸方向に延び、かつY軸方向に並ぶ第1搬送装置2A及び第2搬送装置2Bと、両搬送装置2A及び2Bを挟んで対向配置された実装ヘッド装置3A及び3Bとを備えている。
第1搬送装置2Aは、前記生産ラインの第1レーン上に沿い、第2搬送装置2Bは、同第2レーン上に沿い、それぞれが前記生産ラインの搬送装置(或いは、部品実装システム)の一部を構成している。各搬送装置2A及び2Bは、それぞれがベルトコンベア、モータ、センサ等の機能部品を有し、これら機能部品が制御装置20に制御されるように構成されている。
各搬送装置2A及び2Bの略中央部分には、それぞれ基板停止位置Pnが設定されている。各搬送装置2A及び2Bによって、X軸方向上流側から搬送されたプリント基板Wは、基板停止位置Pnに搬入されて一時停止し、電子部品の実装作業に供される。電子部品の実装作業後は、そのプリント基板WがX軸方向下流側に搬出される。
基板停止位置Pnには、図外の基板固定機構がそれぞれ配備されている。これらの基板固定機構は、それぞれが各搬送装置2A及び2Bからプリント基板Wを持ち上げた状態で当該プリント基板Wを前記基板停止位置Pnに位置決め固定するものである。基板固定機構は、電子部品の実装作業に供するため、基板停止位置Pnに一時停止したプリント基板Wを固定した状態でリフトアップする。
実装作業の後、リフトアップされたプリント基板Wは、再び搬送装置2A、2Bに戻される。当該基板固定機構は、対応する搬送装置2A及び2Bに戻したプリント基板Wの固定を解除し、当該プリント基板Wを対応する搬送装置2A及び2Bに受け渡す。各搬送装置2A及び2Bは、受け渡されたプリント基板Wを基板停止位置Pnから下流側に搬送する。
次に、第1実装ヘッド装置3A及び第2実装ヘッド装置3Bは、それぞれが、部品供給部(それぞれ第1部品供給部11A、第2部品供給部11B)と、実装ヘッド(それぞれ第1実装ヘッド12A、第2実装ヘッド12B)とを有している。
第1部品供給部11A及び第2部品供給部11Bは、それぞれ両搬送装置2A及び2Bの外側に配置されている。具体的には、第1部品供給部11Aは第1搬送装置2Aの前側に配置され、第2部品供給部11Bは第2搬送装置2Bの後側に配置されている。
第1部品供給部11Aには、複数のテープフィーダ111が配備されている。また、第2部品供給部11Bには、複数のテープフィーダ112が配備されている。これらテープフィーダ111、112は、いずれもX軸方向に配列され、それぞれがY軸方向に沿って延びている。各テープフィーダ111、112は、集積回路(IC)、トランジスタ、抵抗、コンデンサ等の小型の電子部品を所定間隔で保持したテープが巻回されるリールと、このリールからテープを引出しながら電子部品をひとつずつテープフィーダ先端の部品供給位置に送り出す部品送り機構等とを備えている。尤も、第1部品供給部11A及び第2部品供給部11Bに配置されるテープフィーダ111、112は、上記構成に限定されるものではなく、トレイ上にパッケージ部品を載置した状態で供給するトレイテープフィーダ等、他の部品供給装置であってもよい。
前記実装ヘッド12A及び実装ヘッド12Bは、それぞれ対応する部品供給部11A、11Bのテープフィーダ111、112から部品を取り出してプリント基板W上に実装するものであり、前記基板停止位置Pnの上方に配備されている。
前記実装ヘッド12A、12Bは、それぞれ図外の装置によりX軸方向及びY軸方向に移動可能に設けられているとともに、上下方向に移動可能な複数の吸着ノズル15を備えている。各吸着ノズル15は、下方電子部品を吸着する吸着口を向けて上下に延びており、所定間隔を隔てて並設されている。各実装ヘッド12A、12Bは、テープフィーダ111、112の上方から当該吸着ノズル15を上下に駆動することにより、前記部品供給位置に供給された電子部品をテープフィーダ111、112からピックアップする一方、前記基板停止位置Pnに供されたプリント基板Wの上方に移動し、各吸着ノズル15を上下に駆動することにより、当該電子部品をプリント基板W上に実装するように構成されている。
ここで、第1実装ヘッド12Aは、第2実装ヘッド12Bよりも装置前側に配置されており、第1部品供給部11A及び第2部品供給部11Bから電子部品をピックアップして第1搬送装置2Aの基板停止位置Pnに供されたプリント基板Wと第2搬送装置2Bの基板停止位置Pnに供されたプリント基板Wとに電子部品を実装することが可能に構成されている。同様に、第2実装ヘッド12Bは、第1部品供給部11A及び第2部品供給部11Bから電子部品を取り出して第1搬送装置2Aの部品実装位置に供されたプリント基板W及び第2搬送装置2Bの部品実装位置に供されたプリント基板Wに電子部品を実装することが可能に構成されている。
この部品実装装置1では、その制御装置20による第1、第2搬送装置2A及び2B並びに実装ヘッド12A、12B等の制御により種々の実装モードに基づいて部品実装が可能となっている。各実装モードを実行するに当たり、第1、第2実装ヘッド装置3A及び3Bは、図2に示すように、定常状態において一枚のプリント基板Wを加工するために、基板搬入、実装作業、基板搬出というサイクルを繰り返す。以下の説明では、前記定常状態において、一枚のプリント基板Wを生産してから、このプリント基板Wの生産を完了し、次のプリント基板Wの生産を開始するまでの時間を「実装サイクルタイムCT」という。また、実装作業に要する時間を「実装時間」という。
図1及び図2を参照して、プリント基板Wが搬送装置2A(2B)によって搬送された時点から、図略の前記基板固定機構によるリフトアップ動作の完了時が図2の基板搬入である。また、前記基板固定機構リフトアップ動作が完了後から、実装ヘッド12A(12B)による実装作業が終了した時点までが図2の実装作業である。さらに、実装作業の終了後からプリント基板Wの送出動作が完了した時点までが図2の基板搬出である。
また、詳しくは後述するように、本実施形態の部品実装装置1は、図2(A)に示す同期搬送乗り入れ方式でも、図2(B)に示す非同期搬送方式でも実行される。
同期搬送乗り入れ方式では、双方のレーンにおいて、基板搬入、実装作業、基板搬出が同時に行われる。以下の説明では、同期搬送式乗り入れ方式で同時に搬入された2枚のプリント基板Wに電子部品を実装する際に要する実装時間を特に「同期実装時間MT」ともいう。
一方、非同期搬送乗り入れ方式(具体的には、後述する非同期搬送交互実装モード)では、個々のレーンにおいて、プリント基板Wが別々に搬入され、当該プリント基板Wに対して、実装作業がレーンごとに別々に実行されるため、第1レーンにおける実装時間MT1と第2レーンにおける実装時間MT2とは区別される。また、非同期搬送乗り入れ方式では、一つのレーンに停止しているプリント基板Wに対し、双方の実装ヘッド12A、12Bで電子部品を実装するため、一方のレーンでの部品実装作業と他方のレーンでの部品実装作業とが連続的に実行されることになる。そこで、以下の説明では、連続して搬入された2枚のプリント基板Wに電子部品を実装する際に要する時間NT、すなわち、個々のレーンでの実装時間MT1、MT2の和を特に「非同期実装時間NT」という。
さらに、非同期実装時間NTから同期実装時間MTを差し引いたときの差分、すなわち
DT=(MT1+MT2)−MT
=NT−MT (1)
を差分時間DTという。
上記定義より、差分時間DTが0よりも長い場合、同期実装時間MTの方が、非同期実装時間NTよりも短いことを示す。
上述した同期実装時間MT、非同期実装時間NT、非同期搬送方式での実装時間MT1、MT2の一例として、図2では、それぞれMT=45秒、NT=50秒、MT1=25秒、MT2=25秒を例示している。(1)式より、差分時間DTは、+5秒である。
次に、本実施形態の実装モードについて説明する。
本実施形態では、以下に示すように、「同期搬送乗り入れ実装モード」と「非同期搬送独立実装モード」と「非同期搬送交互実装モード」が用意されている。
<同期搬送乗り入れ実装モード>
この実装モードは、同期搬送乗り入れ方式の一例であり、第1搬送装置2Aに搬送されるプリント基板Wと第2搬送装置2Bに搬送されるプリント基板Wとを互いに同期搬送しながら、第1実装ヘッド12Aと第2実装ヘッド12Bとによって第1搬送装置2Aに搬送されるプリント基板Wに実装を行うとともに、第1実装ヘッド12Aと第2実装ヘッド12Bとによって第2搬送装置2Bに搬送されるプリント基板Wに実装を行うモードである。
すなわち、同期搬送乗り入れ実装モードにおいては、第1実装ヘッド12Aが第2レーンのプリント基板Wにも乗り入れて、一部の電子部品を実装するとともに、第2実装ヘッド12Bが第1レーンのプリント基板Wにも乗り入れて、一部の電子部品を実装する。この実装モードは、両プリント基板Wの実装時間に差があっても両プリント基板Wが同期搬送されるため、第1搬送装置2Aに搬送されるプリント基板Wと第2搬送装置2Bに搬送されるプリント基板Wとの生産数に差が生じない実装モードである。また、2枚のプリント基板Wを一枚のプリント基板であるかのように両方の実装ヘッド12A、12Bで電子部品を実装するので、2枚分の実装時間、すなわち、同期実装時間MTが非同期実装時間NTよりも短くなる。
<非同期搬送独立実装モード(非同期搬送非乗り入れ方式)>
この実装モードは、非同期搬送方式の一例であり、第1搬送装置2Aに搬送されるプリント基板Wと第2搬送装置2Bに搬送されるプリント基板Wを互いに非同期で搬送しながら、第1実装ヘッド12Aによって第1搬送装置2Aに搬送されるプリント基板Wにのみ部品実装を行う一方、第2実装ヘッド12Bによって第2搬送装置2Bに搬送されるプリント基板Wにのみ実装を行う実装モードである。従って、第1実装ヘッド12Aにより第2搬送装置2Bに搬送されるプリント基板Wに部品を実装する一方、第2実装ヘッド12Bにより第1搬送装置2Aに搬送されるプリント基板Wには部品を実装しない実装モードである。非同期搬送独立実装モードは、第1搬送装置2Aに搬送されるプリント基板Wの基板搬送及び実装作業と第2搬送装置2Bに搬送されるプリント基板Wの基板搬送及び実装作業とが完全に独立しているため、スループットが高い反面、両搬送装置2A及び2Bにおけるプリント基板Wの実装時間に差がある場合には、第1搬送装置2Aと第2搬送装置2Bとの間で生産されるプリント基板Wの台数に差が生じる実装モードである。
<非同期搬送交互実装モード(非同期搬送乗り入れ方式)>
この実装モードは、非同期搬送方式の一例であり、第1搬送装置2Aに搬送されるプリント基板Wと第2搬送装置2Bに搬送されるプリント基板Wを互いに非同期で搬送しながら、両方の実装ヘッド12A、12Bにより第1搬送装置2Aに搬送されるプリント基板W及び第2搬送装置2Bに搬送されるプリント基板Wに交互に実装を行う実装モードである。つまり、基板停止位置Pnに先に搬入された第1搬送装置2Aに搬送されるプリント基板W(又は第2搬送装置2Bに搬送されるプリント基板W)から順に両方の実装ヘッド12A、12Bを用いて実装を行うモードである。非同期搬送交互実装モードは、第1搬送装置2Aに搬送されるプリント基板Wの搬送及び実装作業と第2搬送装置2Bに搬送されるプリント基板Wの搬送及び実装作業とが交互に行われるため、両プリント基板Wの実装時間に差がある場合であってもその時間差を保ちながら第1搬送装置2Aに搬送されるプリント基板Wと第2搬送装置2Bに搬送されるプリント基板Wとが交互に生産される。そのため、第1搬送装置2Aに搬送されるプリント基板Wと第2搬送装置2Bに搬送されるプリント基板Wとの生産数に差が生じない実装モードである。
上述した各モードの選定は、最初は、生産ラインのホストコンピュータによって、生産ライン全体で実行される。ホストコンピュータは、生産対象である第1搬送装置2Aに搬送されるプリント基板W及び第2搬送装置2Bに搬送されるプリント基板Wの基板データに基づき、部品実装装置1の実装モードを決定する。このホストコンピュータによる実装モードの決定手順については、本件出願人が先に提案している出願に係る特開2012−99654号公報に詳細に説明されているので、ここでは、その説明を省略する。生産ラインのホストコンピュータは、部品実装装置1の制御装置20をはじめとする各装置の制御装置との通信制御を行ない、プリント基板Wの生産に先立って、決定された実装モードに基づくプログラムやデータを作成あるいは更新し、その後は、部品実装装置1の実装モードを含む各装置の動作を統括的に制御する。
次に、図3を参照しつつ、部品実装装置1の制御装置20について説明する。なお、図3に示す機能構成は、制御装置20の機能構成のうち、主に実装モードを決定するための構成を機能的に示している。
図3を参照して、制御装置20は、マイクロプロセッサ等で構成されるユニットであり、そのCPUが主制御部200を構成している。制御装置20を構成するマイクロプロセッサのバス21には、通信モジュールで構成された通信部210と、メモリ装置で具体化される記憶部220とが接続されている。また、制御装置20には、その外部機器として表示ユニット30及び入力ユニット40が上記バス21を介して接続されている。
前記主制御部200(本発明の制御部に相当する)は、上述のように、マイクロプロセッサのCPUから構成されており、記憶部220に記憶されている各種プログラムに基づき、第1搬送装置2A、第2搬送装置2B、第1実装ヘッド装置3A、第2実装ヘッド装置3Bを制御するものである。
通信部210は、制御装置20を構成するマイクロプロセッサのバス21に接続され、ローカルエリアネットワークを実現する所定のプロトコルに基づいて、制御装置20とホストコンピュータ又は、生産ラインに設けられた他の装置の制御装置との通信制御を行うものである。
次に、記憶部220(本発明の記憶部に相当する)は、前記主制御部200によって実行させる各種プログラム221、225と、これらプログラム221、225の実行に必要なデータ226〜229を備えている。
まず、前記プログラム221、225としては、搬送用プログラム221と、通信プログラム225とを備えている。
搬送用プログラム221は、上述した実装モードを実行するために必要なプログラムモジュールの集合体である。
通信プログラム225は、通信部210の動作を司るプログラムである。本実施形態では、この通信プログラム225を用いて通信部210に、ホストコンピュータとの通信を双方向で行わせることができる。各プログラム221、並びにデータ226〜229のうち、生産ライン全体で共有されるべきデータは、生産ラインのホストコンピュータによって、提供され、更新される。これらプログラムやデータの提供時又は更新時において、通信プログラム225が利用され、プログラムやデータのダウンロード等が行われる。また、通信プログラム225により、当該生産ラインに設けられた上流側及び下流側の装置の制御装置と通信して、各装置の運転状態を示す情報を収集することができるように構成されている。従って、直列に接続された複数の部品実装装置1は、それぞれが、上流側又は下流側の装置でプリント基板Wの処理時間や搬送状況等の運転状況を取得することが可能になっている。すなわち、最上流の部品実装装置1は、上流側の印刷装置や下流側の部品実装装置1と双方向通信が可能になっている。同様に、No.2の部品実装装置1は、上流側及び下流側の部品実装装置1(No.1、No.3)と、最下流の部品実装装置1は、上流側の部品実装装置1(No.2)及びリフロー装置と双方向通信が可能になっている。
次に、記憶部220には、基板データ226、設備データ227、運転状況データ228、運転状況判定データ229等がデータとして保存される。これらのデータは、いずれも2次元マトリックス状に分類・配列されて1又は複数のテーブルオブジェクトに格納され、必要に応じて相互に参照可能に関連づけられている。
基板データ226は、この部品実装装置1において生産されるプリント基板Wに関する情報であって、具体的には、当該生産ラインで生産される製造対象としてのプリント基板Wに関するマスタデータと、生産された個々の製品としてのプリント基板Wに関するトランザクションデータとを含む。マスタデータとしては、プリント基板Wの種類ごとに{サイズ、品番、実装部品の種類、実装部品の数量、実装位置(座標)、実装サイクルタイム}等々の各種情報を含む。また、トランザクションデータとしては、{生産年月日、生産台数、製造番号、良否判定フラグ}等々の各種情報を含む。
設備データ227は、部品実装装置1に関する情報であって、例えば部品の種類ごとに要する1個当たりの平均実装時間等、スループットの演算に必要な情報を含む。
運転状況データ228は、運転時のトランザクションデータであり、その項目として{検出日時、基板ID、現在位置、上流側搬送速度、下流側搬送速度、進捗率、エラーコード、基板待ち時間}を含む。これらのデータは一定の時間間隔で検出され、更新される。前記時間間隔は、後述するプログラムの切換要否判定タイミングにおいて、必ず必要なデータが検出されるように、充分短い時間、例えば数秒単位で行われる。{検出日時}は、運転状況データの検出時の日時を保存する項目である。{基板ID}は、搬送されている個々の基板を一意に特定するための情報である。{現在位置}は、その基板がデータ検出時点で存在するレーンと装置とを示す情報である。{上流側搬送速度、下流側搬送速度}は、それぞれプリント基板Wが上流側から自機に、又は自機から下流側に搬送されるときの速度である。{進捗率}は、前述の現在位置における作業の進捗率を示す情報である。{エラーコード}は、部品実装装置1以外の装置が起こしたエラーの種別を一意に示すコードである。運転状況データ228に保存されるエラーコードとしては、‘認識不良’、‘吸着エラー’、‘オペレータコール’等がある。検出時点において当該基板の現在位置でエラーが発生している場合にエラーコードが保存される。エラーが発生してない場合には、{エラーコード}の値は、Nullとなる。或いは、「異常なし」等、エラーが発生していないことを示す情報を保存してもよい。{基板待ち時間}は、検出時にエラーが発生している場合に、予測される基板待ち時間の演算値である。ここで、「基板待ち」とは、第1搬送装置2Aと第2搬送装置2Bのいずれか一方で、プリント基板Wが基板停止位置Pnに到着するのを待機する状態をいう。なお、運転状況データ228は、前記{基板ID}の値に基づき、二つのレーンに搬送される全てのプリント基板Wを一意に特定することが可能となっている。換言すれば、両方のレーンごとに、プリント基板WのIDとその現在位置、進捗率、発生したエラーコードを特定することが可能な値を保存する。
運転状況判定データ229は、後述する運転状況に基づく補正要否の判定に際し、部品実装装置1の運転状況や、生産ラインに配備されている部品実装装置1以外の装置の運転状況に基づいて、当該切換要否の判定に必要な情報である。例えば、運転状況判定データ229は、その項目として{エラーコード,標準待ち時間}を含む。{エラーコード}には、生産ラインで使用される全てのエラーコードが登録される。{標準待ち時間}は、エラーコードごとに予測される復旧に必要な時間である。なお、標準待ち時間は、過去のデータに基づく平均値であってもよく、統計上のモードであってもよい。このようにエラーコードごとに標準待ち時間を保存しておくことにより、部品実装装置1の主制御部200は、運転状況データ228に保存された個々の運転時におけるエラーコードの内容をこの運転状況判定データ229の{エラーコード}と関連づけて参照し、エラーの態様を特定することができる。よって、主制御部200は、エラーの態様ごと、すなわち、運転状況ごとに後述するようなプログラム切換処理の実行が可能となる。また、運転状況ごとに進捗率を次の更新時に補正することができ、運転状況データ228に保存される基板待ちの時間の予測精度を向上することも可能となる。
次に、主制御部200は、上述した各プログラム221、225並びに各種データ226〜229等により、以下に説明する運転制御部231を初めとする要素を機能的に備えている。
まず、主制御部200は、運転制御部231を備えている。運転制御部231は、第1搬送装置2A及び第2搬送装置2B並びに第1実装ヘッド装置3A及び第2実装ヘッド装置3Bの運転を制御する。運転制御部231は、基板データ226及び設備データ227に基づいて搬送用プログラム221を実行することにより、公知の装置と同様に部品実装装置1の動作を制御する。ここで、運転制御部231は、同期搬送乗り入れ方式による運転動作の基本として、上記運転動作の制御を実行する。「基本として」とは、例えば、初期状態やデフォルト時では、同期搬送乗り入れ方式を採用する一方、後述する補正処理が実行された場合には、デフォルトで決定された同期搬送乗り入れ方式による運転動作を変更したり、実装モードを変更したりすることができることをいう。
運転制御部231が最初に実行するプログラムは、前記生産ラインのホストコンピュータによって決定された実装モードに基づくものである。通常、ホストコンピュータは、生産対象となるプリント基板Wに適したプログラム(例えば、同期搬送用プログラム)を選定し、通信機能を介して、部品実装装置1を含む各装置に同プログラムを実行するように指示を出す。部品実装装置1の運転制御部231は、前記指示を受けて、対応するプログラムを実行する。
図2(A)(B)に示したように、同期実装時間MTは、非同期実装時間NTよりも短くなり、スループットが高くなる。そのため、本実施形態では、後述する手法により、可能な限り同期搬送乗り入れ方式が採用されるように構成されている。
次に、主制御部200は、運転状況判定部232を備えている。運転状況判定部232は、部品実装装置1の運転状況のみならず、部品実装装置1の上流側の装置や下流側の装置の運転状況を判定する。例えば、第1、第2搬送装置2A、2Bのいずれか一方で基板待ちが生じた場合、運転状況判定部232は、基板待ちが生じている原因を上流側の装置と通信して検出する。また、実装済のプリント基板Wを搬出することができないで待機している状態(以下、「搬出待ち」という)が生じている場合には、当該搬出待ちが生じている原因を下流側の装置と通信して検出する。これにより、運転状況判定部232は、当該部品実装装置1の上流側に配置された装置や、下流側に配置された装置から、種々の情報を取得する情報取得部としても機能する。運転状況判定部232が取得可能な情報には、第1情報〜第2情報が含まれる。
第1情報は、第1搬送装置2A及び第2搬送装置2Bのそれぞれの基板搬入工程及び基板搬出工程に関する情報や、第1実装ヘッド装置3A及び第2実装ヘッド装置3Bの実装作業に関する情報を含む。基板搬入工程及び基板搬出工程に関する情報としては、プリント基板Wの有無、搬送動作での進捗や位置、基板待ち、搬出待ちの発生の有無等が例示される。また、実装作業に関する情報としては、実装済、未実装の電子部品の種類、実装が完了するまでの残り実装時間等が例示される。
第2情報は、第1レーンにおける第1実装ヘッド装置3Aの上流側の基板搬送状況に関する情報や、第2レーンにおける第2実装ヘッド装置の上流側の基板搬送状況に関する情報が含まれる。
第1情報〜第2情報において、「基板搬送状況に関する情報」とは、上流側の装置(No.1の部品実装装置1)又は下流側の装置(No.3の部品実装装置1)がプリント基板Wの搬出を開始するために要する時間や、上流側の装置又下流側の装置が搬出したプリント基板Wの現在位置、搬送速度、進捗率、エラーが発生した場合のエラーコード、基板待ち時間、同期待ち時間等が例示される。これらの情報は、上述した運転状況データ228として、一定時間間隔で検出され、保存・更新される。
第1実施形態においては、主として運転状況判定部232が取得した第1情報及び第2情報に基づいて、以下に説明する補正要否判定部233の判定処理が実行される。
次に、主制御部200は、補正要否判定部233を備えている。補正要否判定部233は、予め設定された条件に基づいて運転制御部が実行する運転制御を補正するための制御を司る。ここで、「補正」とは、運転制御部231の運転動作を修正することをいい、この修正は、実装モードを切り換えるプログラムの切換動作や、特定の処理(例えば、基板搬搬送処理や、部品実装作業等)のタイミング又は時間をデフォルトでの設定値よりも遅らせたり進めたりすることを含む。前記判定部233の判定動作としては、運転状況判定部232の判定結果(すなわち、運転状況データ228に保存された情報)に基づいて、運転状況判定データ229に登録されている当該運転状況(エラーコード)に対応する標準待ち時間を参照し、この標準待ち時間に基づいて実装モードを実現するプログラムの切換をすべきか否かを判定する処理を含む。この判定処理の詳細については、図4以下のフローチャート等に基づいて、さらに詳細に後述する。
次に、主制御部200は、補正実行部234を有している。同実行部234は、前記判定部233の判定結果に基づき、補正を実行する。
次に、制御装置20に接続された表示ユニット30は、いわゆるディスプレイで具体化され、液晶表示器等に、各種情報をグラフィカルユーザインターフェイス(GUI)で表示する。
また、入力ユニット40は、いわゆるキーボードやマウスなどのポインティングディバスで構成される。なお、入力ユニット40は、表示ユニット30によって表示されたGUIであってもよい。また、表示ユニット30のディスプレイに併設された操作キーを含んでいてもよい。
なお、上述した表示ユニット30及び入力ユニット40は、外部接続機器である必要はなく、制御装置20の本体ユニットと一体化されたものであってもよい。
次に、制御装置20の運転状況判定部232、補正要否判定部233、及び補正実行部234による補正処理について、図2の説明図、並びに図4及び図5のフローチャートを参照しながら説明する。ここで、図4のフローチャートは、生産ラインが実装モードとして、同期搬送乗り入れ方式を選定し、運転制御部231がこの選定に基づくプログラムモジュールを実行し、運転状況判定部232が前記時間間隔ごとに、それぞれのレーンについて、運転状況データ228を更新していることを前提にしている。また、図4のフローチャートは、レーンごとに独立して並行に実行可能なものである。
まず、運転制御部231の制御により、各搬送装置2A、2Bでは、プリント基板Wを搬送する基板搬入動作が実行される(ステップS1)。プリント基板Wが搬入されると、補正要否判定部233は、実装前補正処理サブルーチンを実行する(ステップS2)。この実装前補正処理サブルーチンでは、いずれか一方のレーンで基板の搬入が完了し、かつ当該プリント基板Wに実装作業が開始される前のタイミングで、補正の要否が判定され、必要に応じて、運転制御部231が実行するプログラムモジュールの切換が行われる。
ステップS2の実装前補正処理サブルーチンが実行された後、この処理により必要に応じて補正された運転動作となるように運転制御部231が各部の制御を実行し、電子部品の実装作業が行われる(ステップS3)。
実装作業が終了すると、搬出動作を運転制御部231が実行し、プリント基板Wの搬出工程が実行される(ステップS4)。この搬出工程の後、生産予定になっている全てのプリント基板Wの処理が完了したか否かが判定され(ステップS5)、未処理のプリント基板Wがある場合には、ステップS1に戻って上述した処理を繰り返し、未処理のプリント基板Wがない場合には、プログラムを終了する。
次に、図4の実装前補正処理サブルーチン(ステップS2)について、図5〜図7を参照しながら説明する。
この実装前補正処理サブルーチンでは、まず、前記一方のレーンに対向する対向レーン(すなわち、第2レーン)において、基板待ちが生じているか否かが判定される(ステップS21)。仮に基板待ちが生じている場合、運転状況判定部232は、通信部210を制御し、当該対向レーンにおける実装ヘッド装置3Bの上流側の装置(ここでは、No.1の部品実装装置1)の運転状況を取得する(ステップS22)。この処理では、補正要否判定部233は、運転状況判定部232によって判定された取得された第2情報を参照し、運転状況判定データ229のデータに基づいて、対向レーンの基板待ち時間Wtを演算する(ステップS23)。具体的には、運転状況判定部232が検出したエラーコードに基づいて、運転状況判定データ229から標準待ち時間を読み取り、判定タイミングを起算点とし、この標準待ち時間に搬入完了までの推定時間の終了時を終了時点として基板待ち時間Wtを演算する。
次いで、補正要否判定部233は、同期実装時間MTを演算し(ステップS24)、さらに非同期実装時間NTを演算する(ステップS25)。なお、非同期実装時間NTについては、非同期搬送独立実装モードを採用する場合と非同期搬送交互実装モードを採用する場合とによって異なるが、これらについては、運転状況に応じて予めいずれを選択すべきか決定していてもよく、或いは、このタイミングで両方の非同期実装時間NTをそれぞれ演算し、短い方を採用してもよい。
次に、演算された同期実装時間MT及び非同期実装時間NTに基づき、上記(1)式により、差分時間DTを演算する(ステップS26)。
さらに、補正要否判定部233は、ステップS26で演算された差分時間DTと基板待ち時間Wtとを比較する(ステップS27)。補正実行部234は、差分時間DTが基板待ち時間Wt以上の場合(DT≧Wt=True)には同期搬送乗り入れ方式を実行する一方(ステップS28)、差分時間DTが基板待ち時間Wtよりも短い場合(DT≧Wt=False)には、非同期搬送交互実装モードを実行する(ステップS29)。「非同期実装モード」としては、一方のプリント基板Wに対し、双方の実装ヘッド装置で電子部品を実装する「乗り入れ方式」と、一方のプリント基板Wに対し、当該レーンに対応する実装ヘッド装置のみで電子部品を実装する「非乗り入れ方式」のいずれを採用してもよい。
図6(A)に示すように、基板待ち時間Wtが比較的短い場合、基板待ち時間Wtが0のときの差分時間DTによって、基板待ち時間Wtが吸収されるので、依然、同期実装時間MTの方が非同期実装時間NTよりも短くなり、差分時間DTの方が基板待ち時間Wtよりも大きくなる(図6(B)(C)参照)。そのときには、同期搬送乗り入れ方式で電子部品の実装を続けていた方がスループットを高く維持することが可能となる。そのため、図5のステップS27では、差分時間DTの方が基板待ち時間Wtよりも大きいときには、同期搬送乗り入れ方式が実行されるように補正の要否が判断される。また、差分時間DTが0のときも、実装モードを切り換えるメリットはないので、そのまま同期搬送乗り入れ方式が維持されるように補正の要否が判断される。
一方、図7(A)に示すように、基板待ち時間Wtが比較的長い場合、同期実装時間MTの方が非同期実装時間NTよりも長くなり、差分時間DTの方が基板待ち時間Wtよりも短くなる(図7(B)(C)参照)。そのときには、両方のレーンで稼働率が低下するため、スループットは大幅に低下する。よって、図5のステップS27では、符号が負のときには、非同期搬送方式が実行されるように補正の要否が判断される。
さらに、ステップS21において、基板待ちが生じていないと判定された場合(ステップS21でNOの場合)は、基板待ち時間Wtが0であるから、直ちにステップS28が実行される。
ステップS28では、現在の実装モードが非同期搬送方式である場合には、同期搬送方式に変更される。また、現在の実装モードが同期搬送方式である場合には、そのまま同期搬送方式が維持される。
一方、ステップS29が実行された場合、現在の実装モードが非同期搬送方式である場合には、そのまま非同期搬送方式が維持される。また、現在の実装モードが同期搬送方式である場合には、非同期搬送方式に変更される。
なお、ステップS28、S29における上記切換処理は、双方のレーンにおいて、電子部品の実装が行われていない実装インターバル中に実行されるので、運転制御部231で処理されるトランザクションデータは、いずれも存在せず、特別な管理を必要としない。そのため、本実施形態では、プログラムの切換前に実装された電子部品に関するデータを管理する必要がなくなり、切換前後のプログラム実行時におけるデータ処理を容易かつ確実に実現することができ、実施が容易になるという利点がある。
ステップS28又はステップS29が実行された後、実装前補正処理サブルーチンは終了し、処理が図4のメインルーチンに復帰する。
以上説明したように、第1実施形態では、必要に応じて運転動作の補正を稼働中に動的に行うことにより、個々の運転状況に応じスループットを維持することが可能になる。また、補正は、少なくとも、第1実装ヘッド装置3A及び第2実装ヘッド装置3Bの基板搬入工程や基板搬出工程、並びに実装作業に関する情報を含む第1情報と、第1レーン及び第2レーンにおける第1実装ヘッド装置3A及び第2実装ヘッド装置3Bの上流側の運転状況に関する情報を含む第2情報とに基づいて、判断されるので、各レーンでの運転状況に応じて好適な補正を実現できるという利点がある。
また、第1実施形態では、補正要否判定部233は、同期搬送式乗り入れ方式で同時に搬入された2枚のプリント基板Wに電子部品を実装する際に要する同期実装時間MTを演算する処理(ステップS24)と、第1レーン及び第2レーンに非同期で連続して搬入された2枚のプリント基板Wに電子部品を実装する際に要する非同期実装時間NTを演算する処理(ステップS25)と、同期実装時間MTと非同期実装時間NTの差である差分時間DTを演算する処理(ステップS26)と、差分時間演算処理(ステップS26)に基づいて運転動作の補正要否を決定する処理(ステップS27)と、を実行する。このため第1実施形態では、同期実装時間MTと非同期実装時間NTの差分時間DTを演算することにより、この差分時間DTによって、実装モードを変更した場合の全体の処理時間を比較衡量することが可能となる。
また、第1実施形態では、補正要否判定部233は、第1レーン及び第2レーンのいずれか一方において基板待ちが生じた場合に、情報取得部としての運転状況判定部232が取得した情報に基づいて基板待ちに要する基板待ち時間Wtを演算する処理(ステップS23)と、基板待ち時間Wtと差分時間DTとを比較する処理(ステップS27)と、基板待ち時間Wtが差分時間DT以下のとき(DT≧Wt=True)は、運転制御部231の実行する実装モードが同期搬送乗り入れ方式となるように補正の要否を判定する処理(ステップS28)と、を実行する。このため第1実施形態では、いずれか一方のレーンで基板待ちが生じた場合に、同期実装時間MTと非同期実装時間NTとの差分時間DTが演算され、基板待ちに要する基板待ち時間Wtが差分時間DT以下のときは、同期搬送乗り入れ方式の実装モードが実行される。よって、基板待ちが生じても、直ちに運転動作を補正するのではなく、運転状況によってはステップS28が実行され、同期搬送乗り入れ方式が維持されるので、補正動作によって、実装モードが過度に変更されてプリント基板Wの同期が必要以上に崩されることを防止し、可及的に同期搬送乗り入れ方式を維持しつつ、稼働率の低下抑制を図ることができる。
また、第1実施形態では、補正要否判定部233は、基板待ち時間Wtが差分時間DTよりも長いときは、運転制御部231の実行する実装モードが、第1レーン及び第2レーンに非同期で搬送される非同期搬送方式となるように補正の要否を判定する処理(ステップS29)を実行する。このため第1実施形態では、基板待ち時間Wtが差分時間DTよりも長いとき(DT≧Wt=False)には、非同期搬送方式の実装モードが実行され、基板待ち時間Wtが相当長い運転状況であっても、いずれかのレーンに先に到着したプリント基板Wに電子部品が実装されるので、稼働率の低下抑制を図ることができる。上述したように、「非同期実装モード」としては、一方のプリント基板Wに対し、双方の実装ヘッド装置で電子部品を実装する「乗り入れ方式」(具体的には、非同期搬送交互実装モード)と、一方のプリント基板Wに対し、当該レーンに対応する実装ヘッド装置のみで電子部品を実装する「非乗り入れ方式」(具体的には、非同期搬送独立実装モード)のいずれを採用してもよい。
さらに、第1実施形態では、自機の実装モードを制御しているので、複数の部品実装装置を同一の生産ラインに直列に配置した態様においても、それぞれを同一仕様のプログラムで稼動することが可能となり、メンテナンスやプログラムの仕様変更を容易に行うことができる。
(第2実施形態)
次に、図8以下に示す本発明の別の実施形態(以下、第2実施形態という)について、説明する。第2実施形態においては、3台の部品実装装置1のうち、上流側の2台について、以下に説明する搬出前補正処理が実行できるように、運転状況判定部232、補正要否判定部233、補正実行部234の仕様が追加される。すなわち、図1に示したように、3台の部品実装装置1が直列に配置されている場合、上流側の部品実装装置が「上流側の装置」として機能する。
まず、運転状況データ228には、{同期待ち時間}が追加される。この項目には、同期待ち時間Ltが保存される。ここで同期待ち時間Ltとは、上流側のいずれかの部品実装装置1(例えば、No.2の部品実装装置1)におけるいずれかのレーンで実装作業が完了した時点(タイミングt0)から、下流側の部品実装装置1(No.3の部品実装装置1)において、同期搬送乗り入れ方式(同期搬送乗り入れ実装モード)を実行するために要する待機時間をいう。後述するように、同期待ち時間Ltを用いることにより、下流機でのスループットの向上を図ることが可能になる。なお、以下の説明では、実装作業が完了したと判定された部品実装装置1(以下の例では、No.2)を自機ともいい、その上流側の装置(No.1の部品実装装置1)及び下流側の装置(No.3の部品実装装置1)をそれぞれ上流機、下流機ともいう。また、実装作業が完了したと判断された一方のレーン(以下の例では、第2レーン)を自レーンといい、自レーンに対向する他方のレーン(第1レーン)を対向レーンともいう。
次に、上流側の装置としての部品実装装置1(No.1、No.2)においては、運転制御部231が、第1レーンと第2レーンにそれぞれ同時に搬送されたプリント基板Wに対し、同期搬送乗り入れ方式を運転動作の基本として、下流側の部品実装装置1(No.1の装置にとって、No.2の装置、また、No.2の装置にとって、No.3の装置)の運転動作を決定する運転動作決定部としても機能する。他方、下流側の部品実装装置1の運転制御部231は、上流側の部品実装装置1の運転制御部231によって実行される運転動作に基づいて、各部の運転動作を制御することができるようにも構成されている。具体的には、上流側の部品実装装置1における運転制御部231が、例えば同期搬送乗り入れ実装モードでプリント基板Wを搬出しているときは、下流側の部品実装装置1は、この運転動作に基づき、同期搬送乗り入れ実装モードでプリント基板Wの実装動作を実行するように各部を制御する。また、他の運転モードについても同様である。
さらに、上流側の部品実装装置1の運転状況判定部232は、No.3の部品実装装置1における第1搬送装置2A及び第2搬送装置2Bのそれぞれの基板搬入工程及び基板搬出工程に関する情報並びにNo.3の部品実装装置1における第1実装ヘッド装置3A及び第2実装ヘッド装置3Bの実装作業に関する下流側情報と、No.3の部品実装装置1の上流側におけるプリント基板Wの搬送状況に関する上流側情報とを取得し、下流機における同期実装時間MT、実装時間MT1、MT2、非同期実装時間NTを演算することができるようになっている。これにより、上流機の残り時間ta、下流機の残り時間tb、自機の残り時間tcを取得することが可能になっている。「残り時間」とは、ある判定タイミング(後述する図10及び図12の例では、タイミングt0)を開始時点としたときに、プリント基板Wに対する実装作業が完了するまでの時間をいう。また、「取得」とは、残り時間ta〜tcを値として取得する場合でなく、残り時間ta〜tcを演算するために必要な値に基づいて、演算する処理であってもよい。
次に、第2実施形態では、補正要否判定部233、補正実行部234の仕様が第1実施形態から変更され、実装前補正処理サブルーチンに代えて、図8、図9に示す搬出前補正処理サブルーチン(ステップS10)が実行される。このため、第2実施形態において、補正要否判定部233は、プリント基板Wの到着を待機する状態である基板待ちが生じた場合に、運転状況判定部232が取得した情報に基づいて運転制御部231による運転動作を補正する要否を判定することが可能になる。また、補正実行部234は、補正要否判定部233の判定結果に基づいて、運転動作を補正するように運転制御部231を制御する。なお、補正実行部234は、下流機が補正前の自機のデータを取り込んで、矛盾した判断をすることを避けるため、以下に説明する搬出前補正処理サブルーチンを実行する前に、下流機における運転状況データの更新を禁止する措置をとる。この処理は、例えば、データのロック処理を実行したり、或いは下流機において関連するデータを強制的に同期する処理を実行したりすることにより、容易に実現することができるので、ここでは説明を省略する。下流機においては、ロック処理によって、補正後のデータのみによって運転動作の判定処理が行われることになる。
次に、第2実施形態の運転動作について説明する。
まず、図8を参照して、第2実施形態においては、基板搬入処理(ステップS1)から実装作業(ステップS3)が実行された後、搬出前補正処理サブルーチンが実行される(ステップS10)。この搬出前補正処理サブルーチンは、実装済のプリント基板Wを搬出するタイミングを運転状況に基づいて制御することにより、下流機における稼働率の向上を図るものである。
搬出前補正処理サブルーチンを実行した後、運転制御部231は、当該サブルーチンによって決定されたタイミングで、各レーンにおけるプリント基板Wを搬出する(ステップS4)。その後は、図4の第1実施形態と同様に、この搬出工程の後、生産予定になっている全てのプリント基板Wの処理が完了したか否かが判定され(ステップS5)、未処理のプリント基板Wがある場合には、ステップS1に戻って上述した処理を繰り返し、未処理のプリント基板Wがない場合には、プログラムを終了する。
次に、図8の搬出前補正処理サブルーチン(ステップS10)の概要について、図9を参照しながら説明する。
この搬出前補正処理サブルーチンでは、運転状況判定部232は、通信部210を制御し、当該レーンにおける実装ヘッド装置3Bの上流側の装置(No.1)及び下流側の装置(No.3)の運転状況に関する情報を取得し、対向レーンにプリント基板Wがあるか否かを判定する(ステップS101)。
このステップS101の処理において、補正要否判定部233は、運転状況判定部232によって判定された運転状況を参照し、自機、上流機、及び下流機の全てについて、対向レーンにおける運転状況に関する情報を取得する。この運転状況に関する情報には、上述した残り時間ta、tb、tcが含まれる。
一方、ステップS101の判定がNOの場合、すなわち、対向レーンにおいて自機の実装ヘッド装置(第1実装ヘッド装置3A)にプリント基板Wがない場合、補正要否判定部233は、まず、対向レーンにおける上流機の残り時間ta及び下流機の残り時間tbを取得する(ステップS103)。次いで、自機の実装ヘッド装置における残り時間tcを、当該レーンにおける実装時間MT1に設定する(ステップS104)。
ステップS102又はステップS104が実行された後、補正要否判定部233は、演算又は設定された残り時間ta、tb、tcに基づき、対向レーンにおける自機の同期待ち時間Ltを式
Lt=ta+tc−tb (2)
により演算する(ステップS105)。非同期搬送方式では、各レーンにおいて、実装作業の完了するタイミングがばらつくので、同期待ち時間を演算することにより、同期した場合と非同期の場合とによって、下流機でのスループットの比較衡量を図ることが可能になる。
(2)式の右辺で、(ta+tc)は、第1レーンと第2レーンの実装作業を同期させるために必要な遅延時間を意味する。遅延時間が差分時間DTよりも長い場合には、同期を待たずに非同期で搬送した方が、効率がよいことになる。また、(2)式の右辺で(ta+tc)から下流機の残り時間tbを引くこととしているのは、下流機での稼働率を考慮するためである。すなわち、下流機で実装作業が完了していない場合には、対向レーンでプリント基板Wを搬出しても実装作業を行うことができないので、下流機の残り時間tbを遅延時間(ta+tc)から差し引いて、下流機での稼働率がより高くなる方を選択できるようにしているのである。
次いで、補正要否判定部233は、下流機での同期実装時間MTを演算し(ステップS106)、さらに下流機での非同期実装時間NTを演算する(ステップS107)。なお、非同期実装時間NTについては、ステップS25の場合と同様に、運転状況に応じて予めいずれを選択すべきか決定していてもよく、或いは、このタイミングで両方の非同期実装時間NTをそれぞれ演算し、短い方を採用してもよい。
次いで、補正要否判定部233は、演算された同期実装時間MT及び非同期実装時間NTに基づき、上記(1)式により下流機での差分時間DTを演算する(ステップS108)。
さらに、補正要否判定部233は、ステップS108で演算された差分時間DTと同期待ち時間Ltとを比較する(ステップS109)。補正実行部234は、Ltが差分時間DT以下の場合(DT≧Lt=True)には、遅延処理を実行する一方(ステップS110)、Ltが差分時間DTよりも長い場合(DT≧Lt=False)には、非同期で搬送する非同期搬送処理を実行する(ステップS111)。
ステップS110における遅延処理では、自レーン(第2レーン)のプリント基板Wが搬出されるタイミング又は搬出時の搬送速度を調整する等して、自レーン(第2レーン)におけるプリント基板Wの搬出と対向レーン(第1レーン)におけるプリント基板Wの搬出とを同期させ、両プリント基板Wが同時に下流機に搬出されるように運転制御部231による運転制御が補正される。
また、下流機においては、自機における補正後の結果が運転状況データとして下流機の運転状況データ228が更新される。そのため、ステップS110における遅延処理が実行される場合には、下流機の補正要否判定部233の判定により、運転モードが同期搬送乗り入れ実装モードに変更される。この遅延処理の後に、搬出前補正処理サブルーチンは終了し、処理が図4のメインルーチンに復帰する。一方、ステップS111が実行された場合、自レーンのプリント基板Wは、対向レーンと非同期で直ちに搬出される。その場合、下流機においては、下流機の補正要否判定部233の判定により、実装モードが非同期搬送方式に変更される。
ステップS110の遅延処理又はステップS111の非同期搬送処理が実行された後、搬出前補正処理サブルーチンは、終了し、処理が図8のメインルーチンに復帰する。なお、上記各処理は、双方のレーンにおいて、電子部品の実装が行われていない実装インターバル中に実行されるので、運転制御部231で処理されるトランザクションデータは、いずれも存在せず、特別な管理を必要としない。そのため、本実施形態では、プログラムの切換前に実装された電子部品に関するデータを管理する必要がなくなり、切換前後のプログラム実行時におけるデータ処理を容易かつ確実に実現することができ、実施が容易になるという利点がある。
次に、図9のフローチャートの実行例について、図10〜図13を参照しながらさらに詳細に説明する。なお、図10〜図13では、簡略化のため、搬入及び搬出に要する処理時間を0秒とみなし、実装サイクルごとに「処理」と表記し、実装サイクルタイムを全体として同期実装時間MT、非同期実装時間NT、実装時間MT1、MT2を表記している。
まず、図10の例では、上流機(No.1)では、同期搬送乗り入れ実装モード(同期搬送乗り入れ方式)でプリント基板Wが2枚同時に生産されている一方、自機(No.2)及び下流機(No.3)では、非同期搬送交互実装モード(非同期搬送乗り入れ方式)が採用されている。その場合の自機(No.2)の第2レーンにおいて、タイミングt0で部品実装作業が終了したときの一例を示している。このタイミングt0において、上流機では、双方のレーンにおいて、部品実装作業が完了し、残り時間taは、0になっている。また、下流機では、第1レーンにおいて、残り時間tbが23秒になっている。さらに、自機の第1レーンにおける部品実装作業をこれから開始するところであり、残り時間tcは、25秒になっている。
タイミングt0において、図9のサブルーチンが実行されると、ステップS101の判定がYESとなり、ステップS102が実行され、上流機、下流機、自機の対向レーンにおける残り時間ta=0秒、tb=23秒、tc=25秒がそれぞれ取得される。
次いで、ステップS105が実行され、同期待ち時間Ltが演算される。図10に示すように、同図の例における同期待ち時間Ltは、下流機の第1レーンにおいて、プリント基板Wの処理が完了するタイミングt1の時点から、自機の第1レーンにおいて、プリント基板Wの処理が完了するタイミングt2の時点までとなる。図10の場合、Ltは、2秒である。
次いで、ステップS106〜S108が実行され、演算された下流機での同期実装時間MT及び非同期実装時間NTに基づき、上記(1)式により、下流機での差分時間DTが演算される。図2に示した例の数値を代入すると、差分時間DTは、+5秒である。
次いで、ステップS109が実行される。この場合、差分時間DTの方が同期待ち時間よりも長い(DT≧Lt=True)ので、補正実行部234は、補正要否判定部233の判定結果に基づき、同期搬送乗り入れ方式を実行する。これにより、自機の第2レーンでは、同期待ち時間Ltが経過するタイミングt2まで第1レーンの実装作業を待機し、タイミングt2後に同時に下流機に双方のプリント基板Wを搬出する。この結果、下流機においては、図11(A)に示すように、2枚のプリント基板Wの実装をタイミングt3で完了することが可能になる。
仮に、同期待ち時間Ltを待機せずに直ちに第2レーンのプリント基板Wを搬出した場合、図11(B)の結果となる。図11(B)においては、下流機の第2レーンでは、同期待ち時間Ltの開始タイミングであるタイミングt1から非同期搬送方式により電子部品を実装することが可能になる。しかしながら、Lt<DTなので、このタイミングt1から非同期方式で電子部品を実装しても、Lt待機後の差分時間RT(=DT−Lt)は、差分時間DTと符号を揃えると+3秒となり、同期搬送乗り入れ方式の方がよりスループットが向上することが確認される。
次に、図12の例について説明する。
図12の例では、いずれの部品実装装置1(No.1〜No.3)においても、非同期搬送交互実装モード(非同期搬送乗り入れ方式)が実行されている場合の自機(No.2)の第2レーンにおいて、タイミングt0で部品実装作業が終了したときの一例を示している。このタイミングt0において、上流機では、第1レーンにおいて、部品実装作業の残り時間taが、16秒になっている。また、下流機では、第1レーンにおいて、残り時間tbが23秒になっている。さらに、自機の第1レーンには、プリント基板Wが未搬入になっている。ここで非同期搬送交互実装モード(非同期搬送乗り入れ方式)を実行した場合、自機のレーン1における実装時間MT1は、25秒である。
この図12の例では、タイミングt0において、自機の第1レーンにプリント基板Wが搬送されていないので、図9のサブルーチンが実行された場合に、ステップS101がNOとなり、ステップS103が実行され、ta=16秒、tb=23秒がそれぞれ取得される。次いで、ステップS104が実行され、対向レーンにおける自機の残り時間tcが25秒に設定される。
次いで、ステップS105が実行され、同期待ち時間Ltが演算される。図12の場合、同期待ち時間Ltは、下流機の第1レーンにおいてプリント基板Wの処理が完了するタイミングt2の時点から、自機の第1レーンにおいてプリント基板Wの処理が完了するタイミングt3の時点までとなる。図12の場合、Ltは、18秒である。
次いで、補正要否判定部233は、下流機での同期実装時間MTを演算し(ステップS106)、さらに非同期実装時間NTを演算する(ステップS107)。なお、非同期実装時間NTについては、上記と同様である。
次いで、ステップS108が実行され、下流機での同期実装時間MT及び非同期実装時間NTに基づき、上記(1)式により、下流機での差分時間DTが演算される。図2に示した例の数値を代入すると、差分時間DTは、+5秒である。
次いで、ステップS109が実行される。この場合、Ltは、DTよりも長いので、補正実行部234は、補正要否判定部233の判定結果(DT≧LT=False)に基づき、非同期搬送処理(ステップS111)を実行する。下流機(No.3)において、第2レーンに搬入されたプリント基板Wに電子部品を直ちに実行することができないものの、依然、残り時間tb(23秒)経過後は、直ちに下流機で第2レーンに搬入されたプリント基板Wに実装作業を行うことができるので、非同期搬送交互実装モードで電子部品を実装した方が、下流機(No.3)における稼働率が高くなるからである。このような残り時間tbを考慮した判定は、(2)式により実現される。その結果、図13(B)に示すように、タイミングt2の時点で直ちにプリント基板Wに実装作業を実行することができる。この実装作業は、タイミングt2から第2レーンの実装時間MT2が経過したタイミングt5で終了する。タイミングt5が終了する時点では、既に対向レーン(第1レーン)において自機から下流機にプリント基板Wが搬送されているので、下流機の対向レーンでは、タイミングt5から直ちに部品実装作業を実行することができる。下流機における第1レーンでの実装作業は、タイミングt5から第1の実装時間MT1が経過したタイミングt6で終了する。よって、非同期で搬出した場合、下流機では、判定タイミングから73秒後に連続して2枚のプリント基板Wを実行することが可能となる。
これに対し、仮に図13(A)に示すように、同期待ち時間Ltが経過するタイミングt3まで下流機の第2レーンでの実装作業を待機した場合、2枚のプリント基板Wの実装作業が完了するのは、このタイミングt3から45秒後のタイミングt4となる。タイミングt4は、判定タイミングから96秒後である。よって、下流機におけるLt待機後の差分時間RT(=DT−Lt)は、差分時間DTと符号を揃えると−23秒となり、非同期搬送乗り入れ方式の方がよりスループットが向上することが確認される。
以上説明したように、本発明の第2実施形態では、部品実装装置1(例えば、No.3)とこの部品実装装置1の上流側に直列に配置された装置(例えば、No.2)とが採用されている部品実装システムにおいて、上流側の部品実装装置1の運転制御部231が、同期搬送乗り入れ方式を運転動作の基本として、下流側の部品実装装置1の運転動作を決定する運転動作決定部としても機能するとともに、上流側の部品実装装置1の補正要否判定部233の判定結果に基づき、上流側の部品実装装置1の補正実行部234が運転動作決定部としての運転制御部231を上述のように制御する。これにより、複数の部品実装装置1(No.1〜No.3)が採用されている部品実装システムにおいて、必要に応じて下流側に搬出されるプリント基板Wの搬出タイミングの補正を稼働中に動的に行うことにより、個々の運転状況に応じ、下流側の部品実装装置1におけるスループットを維持することが可能になる。また、補正は、少なくとも、各部品実装装置1における第1搬送装置2A及び第2搬送装置2Bのそれぞれの基板搬入工程及び基板搬出工程に関する情報並びに各部品実装装置1における第1実装ヘッド装置3A及び第2実装ヘッド装置3Bの実装作業に関する情報を含む下流側情報と、下流の部品実装装置(No.3)の上流側におけるプリント基板Wの搬送状況に関する搬送情報(No.1、No.2の部品実装装置1における第1情報及び第2情報)とに基づいて、判断されるので、各レーンでの運転状況に応じて下流側の部品実装装置1の稼働率が高く維持されるように好適な補正を実現できるという利点がある。
また、第2実施形態では、補正要否判定部233は、下流側に搬出された2枚のプリント基板Wに対し、下流側の第1実装ヘッド装置3A及び第2実装ヘッド装置3Bが同期搬送式乗り入れ方式で同時に電子部品を実装する際に要する同期実装時間MTを演算する処理と、下流側に搬出された2枚のプリント基板Wに対し、下流側の第1実装ヘッド装置3A及び第2実装ヘッド装置3Bが非同期で連続して電子部品を実装する際に要する非同期実装時間NTを演算する処理と、同期実装時間MTと非同期実装時間NTの差である差分時間DTを演算する処理と、差分時間演算処理(ステップS26)に基づいて運転動作の補正要否を決定する処理と、を実行する。このため、第2実施形態では、下流側の部品実装装置1における同期実装時間MTと非同期実装時間NTの差分時間DTを演算することにより、下流側の実装システムにおいて、実装モードを変更した場合の全体の処理時間を比較衡量することが可能となる。
また、第2実施形態では、上流側に配置された部品実装装置1(No.2)が上流側の装置として機能するとともに、No.2の部品実装装置1の補正要否判定部233は、当該No.2の部品実装装置1の第1実装ヘッド装置3A及び第2実装ヘッド装置3Bのいずれか一方における電子部品の実装作業が完了した場合(上流側の装置のいずれか一方のレーンにおける処理)が完了した場合であって、他方の実装作業(処理)が未完了のときに、当該一方のレーンにおいて実装作業を完了したプリント基板Wを他方のレーンにおいて搬出されるプリント基板Wと同期して搬出するための待機に要する同期待ち時間を演算する処理と、同期待ち時間を差分時間DTと比較する処理と、を実行し、補正実行部は、同期待ち時間が差分時間DT以下のとき(DT≧Lt=True)は、双方のレーンのプリント基板Wが同時に搬出されるように基板搬出タイミングを補正する処理を実行する。このため、第2実施形態では、例えば基板待ちが生じて非同期実装モードが採用され、それぞれのレーンで個別に電子部品の実装作業が行われた場合において、一方のレーンと他方のレーンとの間で実装作業が完了したタイミングがずれているときには、一律に非同期でプリント基板Wを搬送するのではなく、搬出に先立って同期待ち時間が演算される。そして、同期待ち時間が差分時間DT以下のときは、あえて同期待ちのため、基板搬出動作が遅延される。これによって、下流側の部品実装装置1においてより稼働率を高めることが可能となる。また、一時的に非同期実装モードを採用した場合でも、比較的稼働率の低下を抑制した状態で元の同期搬送方式の実装モードに復帰することができ、より効率的にスループットの維持を図ることができる。なお同期待ち時間に関する処理は、同期搬送方式であって乗り入れ方式が採用されていない場合、又は、同期搬送乗り入れ方式であっても、いずれかのレーンで搬出待ちが生じている場合にも、実行するようにしてもよい。また、「遅延」方法としては、プリント基板Wの搬出タイミングが同時になるようにしてもよく、下流側へのプリント基板Wの搬入が同時になるように一方のプリント基板Wの搬送速度を遅らせてもよい。さらにまた、自機から下流機に制御信号を出力して、非同期実装モードが採用されている場合であっても、下流機で実装モードが同期搬送方式に変更されるように処理してもよい。その場合には、プリント基板Wが到着するタイミングが異なっていても、下流機では、同期搬送方式で2枚のプリント基板Wに電子部品が同時に実装される。
また、第2実施形態では、No.2の部品実装装置1における補正実行部234は、同期待ち時間が差分時間DTよりも長いとき(DT≧Wt=False)は、他方のレーンのプリント基板Wを先に搬出するように、運転動作決定部としてのNo.2の部品実装装置1における運転制御部231を制御する。このため、第2実施形態では、基板待ちが却って弊害のある場合に非同期に切り換えて下流側での稼働率の低減を抑制することが可能となる。
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることはいうまでもない。
例えば、上述した実施形態では、運転状況判定部232を独立したモジュールとして説明しているが、主制御部200による運転状況判定機能は、必ずしも独立したモジュールを必要とするものではなく、補正要否判定部233や補正実行部234の機能の一部として実現されるものであってもよい。
また、上述した実施形態では、各装置の動作を統括的に制御するためにホストコンピュータを設けているが、このホストコンピュータは、必須ではない。例えば、各装置同士が互いに通信することで、ホストコンピュータを持たない構成を採用してもよい。
また、第1実施形態における実装前補正処理(ステップS2)と、第2実施形態における搬出前補正処理(ステップS10)とは、実行タイミングが異なる場合が多いため、それぞれの部品実装装置1において実行可能な構成にしておき、両処理が競合するタイミングの場合にいずれかの制御を優先して、競合を回避するようにしてもよい。
また、上述した実施形態では、同期待ち時間Ltに関する処理(ステップS4の搬出前補正処理サブルーチン)は、非同期搬送方式の実装モードが実行されるときを例に説明したが、この例に限らず、例えば、同期搬送方式であって乗り入れ方式が採用されていない場合、又は、同期搬送乗り入れ方式であっても、いずれかのレーンで搬出待ちが生じている場合にも、実行するようにしてもよい。
また、第2実施形態における搬出前補正処理(ステップS10)において、同期待ち時間Ltを演算する際には、情報取得部としての運転状況判定部232は、各レーンにおいて発生したエラー情報をも取得し、補正要否判定部233が、このエラーコードに基づいて、同期待ち時間Ltを演算するようにしてもよい。エラー情報は、エラーの種類を特定し、復旧時間を演算する際に利用可能な情報であり、例えば、第1実施形態において説明したエラーコードが例示される。その場合には、同期待ち時間を演算する際に、各レーンにおける実装ヘッド装置の上流側から搬送されるプリント基板Wの残り時間をも参照することができるので、より正確に同期待ち時間を演算することができる。特に、基板待ちの原因が上流側において生じているときに同期待ち時間の演算に正確に反映することができるので、非効率な実装モードの切換を回避することができる。
さらに、第2実施形態を実現する当たり、例えば、No.1の部品実装装置1を下流側の部品実装装置とし、この部品実装装置の上流側に配置される印刷装置を上流側の装置として構成してもよい。その場合には、印刷装置が決定した運転動作に基づいて、No.1の部品実装装置1のスループット向上を図ることが可能になる。
さらに、第2実施形態を実現する当たり、当該上流側の装置の運転動作を制御する「運転制御部」、当該運転動作を決定する「運転動作決定部」、運転動作の補正要否を判定する「要否判定部」、及び要否判定部の判定結果に基づいて補正を実行する「補正実行部」は、部品実装システムを構成するいずれかの装置に配置されていればよい。例えば、各部品実装装置1の制御ユニットとは、別の制御装置(ファクトリコンピュータ)を設け、この制御装置にこれら「運転制御部」、「運転動作決定部」、「要否判定部」、及び「補正実行部」として機能するプログラムやデータをインストールしてもよい。