以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
[1.第1の実施の形態]
[1−1.現金自動預払機及び紙幣入出金機の構成]
図1に外観を示すように、現金自動預払機1は、箱状の筐体2を中心に構成されており、例えば金融機関等に設置され、この金融機関の顧客である利用者との間で入金処理や出金処理等の現金に関する取引を行うようになっている。
筐体2は、その前側に顧客が対峙した状態で紙幣の投入やタッチパネルによる操作等をしやすい箇所に顧客応対部3が設けられている。顧客応対部3は、顧客との間で例えば現金やカード等を直接やり取りすると共に、取引に関する情報の通知や操作指示の受付を行うようになされており、カード入出口4、入出金口5、操作表示部6、テンキー7、及びレシート発行口8が設けられている。
カード入出口4は、キャッシュカード等の各種カードが挿入または排出される部分である。カード入出口4の奥側には、各種カードに磁気記録された口座番号等の読み取りを行うカード処理部(図示せず)が設けられている。入出金口5は、顧客によって入金される紙幣が投入されると共に、顧客へ出金する紙幣が排出される。また入出金口5は、シャッタを駆動することにより開放又は閉塞するようになっている。因みに紙幣は、例えば長方形の紙で構成されている。
操作表示部6は、取引に際して操作画面を表示するLCD(Liquid Crystal Display)と、取引の種類の選択、暗証番号や取引金額等を入力するタッチセンサとが一体化されたタッチパネルとなっている。テンキー7は、「0」〜「9」の数字等の入力を受け付ける物理キーであり、暗証番号や取引金額等の入力操作時に用いられる。レシート発行口8は、取引処理の終了時に取引内容等を印字したレシートを発行する部分である。因みにレシート発行口8の奥側には、レシートに取引内容等を印字するレシート処理部(図示せず)が設けられている。
以下では、現金自動預払機1のうち顧客が対峙する側を前側とし、その反対を後側とし、当該前側に対峙した顧客から見て左及び右をそれぞれ左側及び右側とし、さらに上側及び下側を定義して説明する。
筐体2内には、現金自動預払機1全体を統括制御する主制御部9や、紙幣に関する種々の処理を行う紙幣入出金機10等が設けられている。主制御部9は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、図示しないROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、入金処理や出金処理等の種々の処理を行う。また主制御部9は、内部にRAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
紙幣入出金機10は、図2に側面図を示すように、内部に媒体としての紙幣に関する種々の処理を行う複数の部分が組み込まれている。紙幣入出金機10は、大きく分けて、上下方向のほぼ中央よりも上側部分を占める上部ブロック10Uと、その下側部分を占める下部ブロック10Lとにより構成されている。
上部ブロック10Uには、全体を統括制御する紙幣制御部11、顧客との間で紙幣を授受する接客部12、紙幣を各部へ搬送する搬送部13、紙幣を鑑別する認識部14、紙幣を一時的に収納する一時保留部15、及び偽券と鑑別された紙幣を収納する偽券庫18が設けられている。
紙幣制御部11は、主制御部9と同様、図示しないCPUを中心に構成されており、図示しないROMやフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、紙幣の搬送先を決定する処理や各部の動作を制御する処理等、種々の処理を行う。また紙幣制御部11は、内部にRAM及びフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
接客部12は、上部ブロック10U内における前上部に位置している。この接客部12は、顧客から受け取った紙幣及び顧客へ引き渡す紙幣を収容する収容器12Aを内部に有しており、その上方をシャッタ12Bにより開閉し得るようになっている。収容器12A内には、複数の紙幣が紙面を前後方向に向けて集積された状態で、すなわち前後方向に沿って整列された状態で収容される。また接客部12には、収容器12A内に1枚以上の紙幣が収容されているか否かを検知するためのセンサが組み込まれている。
接客部12における収容器12Aの前下方には、取込放出部12Cが設けられている。取込放出部12Cは、紙幣制御部11の制御に基づき、取込モード及び放出モードといった2種類の動作モードを切り替えて動作する。すなわち取込放出部12Cは、取込モードにおいて、収容器12A内の紙幣を1枚ずつに分離して所定の時間間隔毎に下方へ送り出し、搬送部13に引き渡す。また取込放出部12Cは、放出モードにおいて、搬送部13から受け取った紙幣を収容器12A内へ放出して集積させる。
搬送部13は、上部ブロック10U内における下端部分に、すなわち紙幣入出金機10全体における上下のほぼ中央を前後方向に横切るように位置しており、全体的に上下方向に薄く前後方向に細長い形状となっている。この搬送部13内には、多数の回転するローラや紙幣を案内する搬送ガイド等が適宜配置されており、紙幣の短手方向を進行方向として、主に前後方向に沿って搬送させるような直線状の搬送路が形成されている。
また搬送部13内には、複数の切替部が配置されている。各切替部は、紙幣を案内する搬送ガイド、回動可能なブレード及びその周囲に配置された複数のローラにより構成されている。ブレードは、所定のアクチュエータにより駆動され、回動することにより、紙幣の搬送方向を2通りに切り替える。各ローラは、紙幣の搬送路を挟んで互いに対向するように配置されている。この切替部は、紙幣制御部11の制御に従い、各紙幣の搬送先に応じてブレードの回動角度を変化させると共に各ローラを所定の回転方向へ回転させることにより、紙幣の搬送方向を適宜切り替えて所望の搬送先へ搬送する。
搬送部13は、図3に拡大図を示すように、大きく分けて中央付近に配置された一時保留切替部20と、当該一時保留切替部20の前側及び後側にそれぞれ配置された第1搬送部21及び第2搬送部22とにより構成されている。換言すれば、一時保留切替部20は、第1搬送部21及び第2搬送部22におけるそれぞれの紙幣の搬送路並びに後述する一時保留部15内の搬送路が交差する箇所に設けられている。この一時保留切替部20は、紙幣制御部11の制御に基づき、紙幣の搬送路を切り替えるようになっている(詳しくは後述する)。
第1搬送部21内には、前方から順に、リジェクト切替部24、認識部14及び切替部29が直列に配置されると共に、これらの間が比較的短い搬送短路によりそれぞれ接続されており、全体として前後方向に沿った概ね直線状の搬送路が形成されている。リジェクト切替部24及び切替部29は、それぞれ紙幣制御部11の制御に基づき、紙幣の搬送路を適宜切り替えるようになっている。
第2搬送部22内には、後方から順に、切替部25、26、27及び28がほぼ直列に配置されており、第1搬送部21と同様、これらの間が比較的短い搬送短路によりそれぞれ接続されることで、全体として前後方向に沿った概ね直線状の搬送路が形成されている。切替部25〜28は、それぞれ紙幣制御部11の制御に基づき、紙幣の搬送路を適宜切り替えるようになっている。また第1搬送部21及び第2搬送部22は、それぞれ搬送路中に数枚程度の紙幣を止めて貯留し得るようになっている。
認識部14は、第1搬送部21内に組み込まれており、紙幣の搬送路上で接客部12と一時保留切替部20との間に位置している。この認識部14は、内部に厚みセンサ、イメージセンサ及び磁気センサといった複数種類のセンサが組み込まれており、搬送される紙幣の金種、真偽、正損(損傷しているか否か)、及び表裏等を認識し、その認識結果を紙幣制御部11へ送出する。
一時保留部15は、いわゆるテープエスクロ方式を採用しており、円筒状のドラムの周側面に紙幣をテープと共に巻き付けることで当該紙幣を収納し、またこの周側面から当該テープを引き剥がすことで紙幣を繰り出す。また一時保留部15は、一時保留切替部20との間で紙幣を案内する搬送ガイドを有しており、この搬送ガイドに沿って紙幣の搬送路を形成している。
偽券庫18は、上部ブロック10U内における後端近傍であって、搬送部13の真上に隣接する位置に設けられており、内部に紙幣を収納する空間を有している。この偽券庫18は、認識部14及び紙幣制御部11により偽造紙幣(以下、偽券と呼ぶ)と判断された紙幣が搬送部13により搬送されてくると、これを内部に収納する。
下部ブロック10Lは、その全ての周側面が頑強な金庫筐体10Sにより覆われている。この金庫筐体10Sの内部には、後側から前側へ向けて、5個の紙幣収納庫16(16A、16B、16C、16D及び16E)並びにリジェクト庫17が設けられている。因みに紙幣収納庫16及びリジェクト庫17は、金庫筐体10Sに対し着脱可能に構成されている。
各紙幣収納庫16は、何れも同様に構成されており、上下方向に長い直方体状に形成されると共に内部に紙幣を集積して収納する空間を有している。また各紙幣収納庫16は、それぞれ収納すべき紙幣の金種が予め設定されている。この紙幣収納庫16は、認識部14及び紙幣制御部11により損傷の程度が小さく再利用が可能であると判断された紙幣が、その金種に応じて搬送部13により搬送されてくると、当該紙幣を内部に集積して収納する。また紙幣収納庫16は、紙幣制御部11から紙幣を繰り出す指示を受け付けると、集積している紙幣を1枚ずつに分離して繰り出し、搬送部13に受け渡す。
リジェクト庫17は、上下方向に長い直方体状に形成されると共に内部に紙幣を集積して収納する空間を有している。このリジェクト庫17は、認識部14及び紙幣制御部11により損傷の程度が大きく再利用すべきで無いと判断された紙幣(いわゆるリジェクト紙幣)が搬送部13により搬送されてくると、当該紙幣を内部に収納する。
このように紙幣入出金機10は、搬送部13の一時保留切替部20により、第1搬送部21、一時保留部15及び第2搬送部22の間で紙幣の搬送路を切り替えるようになっている。
[1−2.一時保留切替部の構成]
次に、一時保留切替部20の構成について説明する。図4に模式的な左側面図を示すように、一時保留切替部20は、複数の搬送ガイド31と、複数のローラ32と、回動軸33と、複数のブレード34と、アクチュエータ35とにより構成されている。
搬送ガイド31は、第1搬送部21(図3)、一時保留部15(図2)及び第2搬送部22(図3)の各搬送ガイドとそれぞれ連続した3本の搬送路を形成しており、この搬送路に沿って紙幣を案内する。各ローラ32は、中心軸を左右方向に向けた短い円柱状の部材を、互いに左右方向に離れた箇所に複数配置している。またローラ32は、各搬送路の両側に配置されており、当該搬送路を挟んで対向する他方のローラ32に対し、当該搬送路内で当接している。このローラ32は、図示しないモータから駆動力が伝達されることにより回転し、他方のローラ32との間に紙幣を挟んでいる場合、この紙幣に対し駆動力を伝達し、搬送路に沿って進行させることができる。
回動軸33は、中心軸を左右方向に向けた細長い円柱状に形成されており、図示しない軸受により回動可能に支持されている。ブレード34は、図5に模式的な平面図を示すように、左右方向に薄い板状であり、左右方向から見て頂角が比較的狭い二等辺三角形ないし楔形に形成されている(図3)。各ブレード34は、互いの方向を揃えて回動軸33に順次貫通されており、互いに左右方向に間隔を空けている。以下、回動軸33に対するブレード34の頂角が向いた方向を、当該ブレード34の方向と見なす。
因みに一時保留切替部20では、各ローラ32及び各ブレード34が互いに干渉しないよう、それぞれの左右方向の位置が調整されている。また搬送ガイド31には、ブレード34及びローラ32と干渉しないよう、スリットや孔が適宜形成されている。アクチュエータ35は、回動軸33と連結された出力軸を有しており、紙幣制御部11の制御に基づいて出力軸及び回動軸33を回動させる(詳しくは後述する)。
ここで、一時保留切替部20における紙幣の搬送方向は、搬送ガイド31及びブレード34の構成により、図6に示すように、当該ブレード34の方向に応じて6通りの搬送路W1、W2、W3、W4、W5及びW6に切り替えることが想定される。ただし実際の一時保留切替部20は、アクチュエータ35の制約により、図6に示した6通りのうち一部の方向にのみ、ブレード34を回動させ得るようになっている。
[1−3.アクチュエータの構成]
アクチュエータ35は、図7に斜視図を示すと共に図8(A)及び(B)並びに図9(A)及び(B)に平面図を示すように、大きく分けて入力軸41、出力軸42、入力軸回動部43、切替移動部44、出力伝達部45及び切替駆動部46により構成されている。これらの部品は、中空の箱状に構成された筐体40(図5)内に組み込まれている。なお説明の都合上、以下では切替移動部44、出力伝達部45及び切替駆動部46をまとめて切替伝達部47とも呼ぶ。また図8(A)及び(B)並びに図9(A)及び(B)は、それぞれ左側面図及び正面図を左右に並べて示している。
入力軸41は、左右方向に沿った仮想的な入力中心線41Cを中心とした円柱状に形成されており、筐体40(図5)により、この入力中心線41Cを中心に回動し得るように支持されている。また入力軸41は、左側約半分の範囲において、上端近傍が削られることにより平面部41Aが形成されている。説明の都合上、以下では、上述した入力中心線41Cを中心とした回動角度を入力軸41の回動角度と見なす。
出力軸42は、入力軸41と同様に、左右方向に沿った仮想的な出力中心線42Cを中心とした円柱状に形成されており、やはり筐体40(図5)により、この出力中心線42Cを中心に回動し得るように支持されている。説明の都合上、以下では、上述した出力中心線42Cを中心として回動した場合の角度を出力軸42の回動角度と見なす。また出力軸42は、筐体40に形成された孔部から左端近傍を当該筐体40の外方に突出させ、上述した回動軸33と連結されている(図5)。
入力軸回動部43は、電磁コイル51、鉄芯52、アマチュアプレート53、並びに永久磁石54及び55により、いわゆるロータリーソレノイドを構成している。電磁コイル51は、左右方向に沿った仮想的な中心軸の周囲を周回するように電線が巻回されており、筐体40の内壁に対し、入力軸41及び出力軸42を上下方向に結ぶ仮想的な直線上に位置するように固定されている。この電磁コイル51は、電線に対し極性が設定された上で電流が供給されることにより、その左側面にN極又はS極の磁力を発生させる。鉄芯52は、磁性体である鉄で構成されており、電磁コイル51の中心に挿通されている。
アマチュアプレート53は、左右方向に薄く、左右方向から見て釣り鐘型の板状に形成されている。このアマチュアプレート53は、上端近傍に形成された孔部に入力軸41が挿通され、当該入力軸41に対し固定されている。さらにアマチュアプレート53の右面には、前後に離れた2箇所に、永久磁石54及び55が埋め込まれている。永久磁石54は、左右方向に薄い直方体状に形成され、右側面をS極としている。一方、永久磁石55は、永久磁石54と同様の直方体状に形成され、右側面をN極としている。
かかる構成により入力軸回動部43は、例えば電磁コイル51に所定の極性で電流が供給された場合、左側面にN極の磁力を発生させる。これにより電磁コイル51は、右側面をN極とする永久磁石55と反発する一方、右側面をS極とする永久磁石54を引き寄せ、入力軸41及びアマチュアプレート53を一体に回動させる。
やがて入力軸回動部43は、図8(A)に示したように、電磁コイル51に永久磁石54を最も近接させた角度で入力軸41を静止させる。以下、この状態を第1入力状態と呼ぶ。因みに入力軸回動部43は、電磁コイル51に対する電流の供給を遮断した場合、永久磁石54と鉄芯52との間で引力が作用するため、第1入力状態をそのまま維持できる。
また入力軸回動部43は、電磁コイル51にこれと反対の極性で電流が供給された場合、左側面にS極の磁力を発生させる。これにより電磁コイル51は、右側面をS極とする永久磁石54と反発する一方、右側面をN極とする永久磁石55を引き寄せ、入力軸41及びアマチュアプレート53を一体に回動させる。
やがて入力軸回動部43は、図8(B)に示したように、電磁コイル51に永久磁石55を最も近接させた角度で入力軸41を静止させる。以下、この状態を第2入力状態と呼ぶ。因みに入力軸回動部43は、電磁コイル51に対する電流の供給を遮断した場合、今度は永久磁石55と鉄芯52との間で引力が作用するため、やはり第2入力状態をそのまま維持できる。
切替移動部44は、挿通部61、入力伝達腕部62、第1伝達突起63及び第2伝達突起64により構成されている。挿通部61は、中心軸を左右方向に向けた円筒状に形成されており、外径が入力軸41の外径よりも一回り大きくなっている。この挿通部61には、左右方向に貫通する貫通孔61Hが穿設されている。貫通孔61Hは、入力軸41の外径よりも僅かに大きい丸孔状となっており、平面部41Aと対応する箇所に、平面状の平面部61HAが形成されている。
このため挿通部61は、貫通孔61Hが入力軸41の左側に挿通されると、当該入力軸41に沿って左右方向に移動することができる。ここで挿通部61は、平面部61HAと平面部41Aとの干渉により、入力中心線41Cを中心とした回転または回動が制限されるため、入力軸41に対する左右方向への移動のみが可能となる。これを換言すれば、挿通部61は、入力軸回動部43により入力軸41と共に回動する。
入力伝達腕部62は、左右方向に薄く上下方向に長い直方体状ないし薄板状に形成されており、上端が挿通部61の下側面に固定されている。このため入力伝達腕部62は、入力軸41に対し挿通部61と共に左右方向へ移動し、且つ当該入力軸41と共に回動する。
第1伝達突起63は、中心軸を左右方向に向けた小さな円柱状に形成されており、入力伝達腕部62の右側面に、右方向へ向けて立設されている。第2伝達突起64は、第1伝達突起63と同様に中心軸を左右方向に向けた小さな円柱状に形成されており、入力伝達腕部62の左側面に、左方向へ向けて立設されている。すなわち第1伝達突起63及び第2伝達突起64は、入力伝達腕部62の右側面及び左側面において、周囲よりも右方向及び左方向へそれぞれ突出した形状となっている。
また、入力軸41の中心軸から第2伝達突起64までの距離は、当該入力軸41の中心軸から第1伝達突起63までの距離と相違している。因みに第2伝達突起64は、入力軸41の入力中心線41Cを基準として、第1伝達突起63と同一の放射方向に設けられている。
出力伝達部45は、第1出力伝達体71及び第2出力伝達体72により構成されている。第1出力伝達体71は、入力伝達腕部62と同様、左右方向に薄く細長い直方体状ないし薄板状に形成されており、長手方向の一端が出力軸42に固定されている。第1出力伝達体71における出力軸42と反対側の端部である外端の近傍には、第1伝達孔71Hが穿設されている。第1伝達孔71Hは、第1出力伝達体71を左右方向に貫通しており、出力中心線42Cを中心とした放射方向に沿った長孔となっている。
第2出力伝達体72は、第1出力伝達体71と同様、左右方向に薄く細長い直方体状ないし薄板状に形成されており、長手方向の一端が出力軸42に対し、第1出力伝達体71の左側へやや離れた箇所に固定されている。この第2出力伝達体72は、出力軸42に対し、第1出力伝達体71よりも左側に固定されており、且つその長手方向を、出力中心線42Cに対し第1出力伝達体71と異なる放射方向へ向けている。第2出力伝達体72における外端の近傍には、第2伝達孔72Hが穿設されている。第2伝達孔72Hは、第1伝達孔71Hと同様、第2出力伝達体72を左右方向に貫通しており、出力中心線42Cを中心とした放射方向に沿った長孔となっている。
因みに第1出力伝達体71及び第2出力伝達体72は、図8(A)及び図9(A)に示したように、入力軸41が第1入力状態であるときに、入力伝達腕部62の第1伝達突起63及び第2伝達突起64に対し第1伝達孔71H及び第2伝達孔72Hの位置をそれぞれ合わせるように、出力軸42に対する取付角度が調整されている。
伝達比率切替部としての切替駆動部46は、電磁コイル81、鉄芯82、永久磁石83及びばね84により構成されている。電磁コイル81は、入力軸回動部43の電磁コイル51と同様、左右方向に沿った仮想的な中心軸の周囲を周回するように電線が巻回されており、筐体40(図5)の内壁に固定されている。鉄芯82は、鉄芯52と同様、磁性体である鉄で構成されており、電磁コイル81の中心に挿通されている。永久磁石83は、切替移動部44の入力伝達腕部62における左側面に固定されており、所定の磁極(例えばN極)を左側に向けている。
ばね84は、コイルスプリングでなり、その内径が入力軸41の外径よりも大きくなっており、中心軸を左右方向に向けて螺旋状に巻回されている。このばね84は、自然長から圧縮された状態で入力軸41に挿通されており、その左端を筐体40の内側面に当接させると共に、右端を切替移動部44の挿通部61における左側面に当接させている。
かかる構成により切替駆動部46は、例えば電磁コイル81に所定の極性で電流が供給された場合、右側面にN極の磁力を発生させる。このとき切替移動部44は、図8(A)に示すように、入力伝達腕部62に固定され左側にN極を向けた永久磁石83により右方向へ押し出される。ここで切替移動部44は、出力軸42が所定の回動角度であれば、第1伝達突起63を第1出力伝達体71の第1伝達孔71Hに挿通させる。因みに切替駆動部46は、この状態で電磁コイル81に対する電流の供給が遮断されたとしても、ばね84の復元力により、切替移動部44を右側に押し付けた状態を維持できる。
これによりアクチュエータ35は、入力軸41が入力軸回動部43により回動された場合、その力を入力伝達腕部62の第1伝達突起63から第1出力伝達体71の第1伝達孔71Hへ伝達することにより、図8(B)に示すように、出力軸42を回動させることができる。すなわちアクチュエータ35は、入力伝達腕部62及び第1出力伝達体71により、いわゆるリンク機構を形成する。以下、このように第1伝達突起63を第1伝達孔71Hに挿通させた状態を第1伝達状態とも呼ぶ。
また切替駆動部46は、例えば電磁コイル81に上記と反対の極性で電流が供給された場合、右側面にS極の磁力を発生させる。このとき切替移動部44は、図9(A)に示したように、入力伝達腕部62に固定され左側にN極を向けた永久磁石83により左方向へ引き寄せられる。ここで切替移動部44は、出力軸42が所定の回動角度であれば、第2伝達突起64を第2出力伝達体72の第2伝達孔72Hに挿通させる。因みに切替駆動部46は、この状態で電磁コイル81に対する電流の供給が遮断されたとしても、鉄芯82により永久磁石83を引き寄せ続けるため、切替移動部44を左側に引き寄せた状態を維持できる。
これによりアクチュエータ35は、入力軸41が入力軸回動部43により回動された場合、その力を入力伝達腕部62の第2伝達突起64から第2出力伝達体72の第2伝達孔72Hへ伝達することにより、図9(B)に示すように、出力軸42を回動させることができる。すなわちアクチュエータ35は、この場合、入力伝達腕部62及び第2出力伝達体72によりリンク機構を形成する。以下、このように第2伝達突起64を第2伝達孔72Hに挿通させた状態を第2伝達状態とも呼ぶ。
このようにアクチュエータ35は、切替駆動部46により切替移動部44を入力軸41に沿って左右方向へ移動させることにより第1伝達状態(図8(A))又は第2伝達状態(図9(A))に切り替えた上で、入力軸回動部43による入力軸41を回動させる力を出力軸42に伝達して回動させるようになっている。
[1−4.出力軸の回動角度及びその切替]
次に、アクチュエータ35における出力軸42の回動角度及びその切替について、図10(A)及び(B)並びに図11(A)及び(B)を参照しながら説明する。なお、図10(A)及び(B)は、図8(A)及び(B)における入力軸41、入力伝達腕部62、第1伝達突起63、第1出力伝達体71及び出力軸42を抽出した左側面図である。また図11(A)及び(B)は、図9(A)及び(B)における入力軸41、入力伝達腕部62、第2伝達突起64、第2出力伝達体72及び出力軸42を抽出した左側面図である。
アクチュエータ35の入力軸41は、上述したように、入力軸回動部43(図7)により回動される。この入力軸回動部43は、その構造上、入力軸41及びアマチュアプレート53を、第1入力状態(図8(A))又は第2入力状態(図8(B))にのみ回動させることができ、他の角度に回動させることはできない。
ここで、図10(A)に示すように、入力軸41及び出力軸42の中心同士を結ぶ仮想的な直線35Xを定義すると共に、入力軸41の入力中心線41C及び第1伝達突起63の中心を結ぶ入力伝達腕部62に沿った仮想的な直線63Xと、出力軸42の出力中心線42C及び第1伝達突起63の中心を結ぶ第1出力伝達体71に沿った仮想的な直線71Xを定義する。この場合、第1伝達突起63の中心は、入力伝達腕部62から第1出力伝達体71に力を伝達する伝達点と見なすことができる。さらに、直線63X及び直線71Xの長さの比率を、K:Lとする。
また、直線35Xを下方向に延長した仮想的な直線を基準線35Bと定義した上で、出力軸42の中心から外方へ向かう仮想的な直線のうち、第1入力状態(図10(A)及び図11(A))において基準線35Bと重なる方向を指す矢印を仮想矢印42Xと定義し、またこのときの出力軸42の状態を初期出力状態とも呼ぶ。この仮想矢印42Xは、出力軸42と共に回動するものとする。このため、基準線35Bに対する仮想矢印42Xのなす角度は、出力軸42の初期出力状態からの回動角度を表す。
アクチュエータ35は、第1伝達突起63を第1伝達孔71Hに挿通させた第1伝達状態において、入力軸回動部43(図7)によって入力軸41を第1入力状態から第2入力状態へ回動させることにより、出力軸42を回動させ、図10(A)と対応する図10(B)に示した状態となる。ここで、入力軸41の回動角度を角度θとし、出力軸42の回動角度を角度αとすると、この角度αは、上述した比率K:L及び角度θを用いることにより、次の(1)式のように表すことができる。
α=(K/L)θ ……(1)
ここで係数(K/L)は、入力軸41から切替伝達部47(切替移動部44、出力伝達部45及び切替駆動部46)を介して出力軸42へ回動を伝達する際の減速比を表す値となる。
次に、図11(A)に示すように、直線35Xに加えて、入力軸41の入力中心線41C及び第2伝達突起64の中心を結ぶ入力伝達腕部62に沿った仮想的な直線64Xと、出力軸42の出力中心線42C及び第2伝達突起64の中心を結ぶ第2出力伝達体72に沿った仮想的な直線72Xを定義する。この場合も、第2伝達突起64の中心は、入力伝達腕部62から第2出力伝達体72に力を伝達する伝達点と見なすことができる。さらに、直線64X及び直線72Xの長さの比率を、M:Nとする。
アクチュエータ35は、第2伝達突起64を第2伝達孔72Hに挿通させた第2伝達状態において、入力軸回動部43(図7)により入力軸41を第1入力状態から第2入力状態へ回動させることにより、出力軸42を回動させ、図11(A)と対応する図11(B)に示した状態となる。ここで、入力軸41の回動角度を角度θとし、出力軸42の回動角度を角度βとすると、この角度βは、上述した比率M:N及び角度θを用いることにより、次の(2)式のように表すことができる。
β=(M/N)θ ……(2)
ここで、図8〜図11から分かるように、アクチュエータ35では、直線63Xよりも直線64Xの方が長く、直線71Xよりも直線72Xの方が短い。このためアクチュエータ35では、それぞれの減速比を表す値(K/L)よりも値(M/N)の方が大きい。すなわちアクチュエータ35では、角度αよりも角度βの方が大きくなる。
換言すれば、アクチュエータ35は、入力軸41から切替伝達部47(切替移動部44、出力伝達部45及び切替駆動部46)を介して出力軸42へ回動を伝達する際の減速比を、(K/L)又は(M/N)に切り替えることができる。
また、アクチュエータ35における出力軸42の回動角度を、入力軸41の角度(第1入力状態又は第2入力状態)及び切替移動部44の位置(右側又は左側)に応じて整理すると、図12の状態遷移図として表すことができる。図中、太線の長方形が個々の状態を表しており、その中の値が出力軸42の回動角度を表している。因みに値「0」は、出力軸42が初期出力状態(図10(A)等)であることを意味する。
このようにアクチュエータ35は、図12からも分かるように、入力軸回動部43(図7)による入力軸41の回動角度が1通りの角度θであるにも関わらず、切替駆動部46によって第1伝達状態(図8)又は第2伝達状態(図9)に切り替えることにより、出力軸42の回動角度を角度α(図10)又は角度β(図11)に切り替えることができる。
[1−5.動作及び効果]
以上の構成において、第1の実施の形態による現金自動預払機1の紙幣入出金機10は、搬送部13の一時保留切替部20を構成するアクチュエータ35において、切替駆動部46によって切替移動部44を左右方向へ移動させることにより、互いの減速比が異なる第1伝達状態(図8)又は第2伝達状態(図9)に切り替える。これによりアクチュエータ35は、入力軸回動部43(図7)による入力軸41の回動角度が1通りの角度θのみであるにも関わらず、出力軸42の回動角度を角度α及び角度βの2通りに切り替えることができる。
このときアクチュエータ35は、入力軸41の回動角度が1通りの角度θであることから、出力軸42の回動角度が角度α及び角度βの何れであっても、入力軸回動部43による入力軸41の回動に要する時間が一定となる。これによりアクチュエータ35は、例えばブレード34を第6角度(図6(F))及び第5角度(図6(E))の間で回動させる場合と、この第6角度及び第3角度(図6(C))の間で回動させる場合とで、同等の時間で回動を完了することができる。
これを換言すれば、アクチュエータ35は、入力軸41の回動手段が単一の入力軸回動部43であり、その回動角度が角度θに固定されているため、当該入力軸41から出力軸42までの力の伝達経路を切替伝達部47において切り替え、当該出力軸42の回動角度を切り替えたとしても、回動に要する時間をほぼ一定に維持できる。
以上の構成によれば、第1の実施の形態による現金自動預払機1の紙幣入出金機10は、アクチュエータ35において、切替駆動部46によって切替移動部44を左右方向へ移動させ、第1伝達状態(図8)又は第2伝達状態(図9)に切り替える。このときアクチュエータ35は、入力軸回動部43による入力軸41の回動角度が1通りの角度θであるため、出力軸42の回動角度を角度α及び角度βの2通りに切り替えながらも、その回動に要する時間を同等に保つことができる。
[2.第2の実施の形態]
第2の実施の形態による現金自動預払機101(図1)は、第1の実施の形態による現金自動預払機1と比較して、紙幣入出金機10に代わる紙幣入出金機110を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。紙幣入出金機110(図2)は、紙幣入出金機10と比較して、搬送部13に代わる搬送部113を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
搬送部113(図3)は、搬送部13と比較して、一時保留切替部20に代わる一時保留切替部120を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。一時保留切替部120(図4及び図5)は、一時保留切替部20と比較して、アクチュエータ35に代わるアクチュエータ135を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
アクチュエータ135は、図8及び図9と対応する図13及び図14に示すように、アクチュエータ35と比較して、切替移動部44及び出力伝達部45に代わる切替移動部144及び出力伝達部145を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。なお図12及び図13では、切替駆動部46を省略している。
切替移動部144は、切替移動部44と同様の挿通部61の他、入力伝達腕部62、第1伝達突起63及び第2伝達突起64に代わる第1入力伝達体163及び第2入力伝達体164を有している。第1入力伝達体163は、左右方向に薄い板状に形成されているものの、入力伝達腕部62(図7等)とは異なり、入力軸41の中心軸を中心とした扇形に形成されている。また第1入力伝達体163の円弧部分には、歯型163Gが形成されている。すなわち第1入力伝達体163は、円板の周側部分に歯型が形成された歯車の一部を扇形に切り出したような形状となっている。なお図の都合上、図13等では歯型163G等を簡略化し単なる円弧として表している。
また第2入力伝達体164は、第1入力伝達体163と同様に、入力軸41の中心軸を中心とした扇形に形成されており、第1入力伝達体163の右側に隣接して配置されている。ただし第2入力伝達体164は、第1入力伝達体163よりも扇形の半径が小さくなっている。この第2入力伝達体164における円弧部分にも、歯型164Gが形成されている。
出力伝達部145は、第1出力伝達体71及び第2出力伝達体72に代わる第1出力伝達体171及び第2出力伝達体172により構成されている。第1出力伝達体171は、出力軸42に取り付けられており、第1入力伝達体163を上下に反転させたような、扇形の板状に形成されている。また第1出力伝達体171の円弧部分には、やはり第1入力伝達体163と同様に歯型171Gが形成されている。
また第1出力伝達体171における扇形部分の半径は、入力軸41の入力中心線41C及び出力軸42の出力中心線42Cを結ぶ仮想的な直線35X(図10等)の長さから、第1入力伝達体163における扇形部分の半径を差し引いた長さに相当する。このため第1出力伝達体171は、図13(A)に示したように、切替移動部144が左側へ移動されている場合、当該切替移動部144の第1入力伝達体163に設けられた歯型163Gと、当該第1出力伝達体171の歯型171Gとを互いに噛み合わせることができる。
これによりアクチュエータ135は、入力軸41が入力軸回動部43により回動された場合、その力を第1入力伝達体163の歯型163Gから第1出力伝達体171の歯型171Gへ伝達することにより、出力軸42を回動させて、図13(B)に示す状態とすることができる。以下、このように第1入力伝達体163の歯型163Gを第1出力伝達体171の歯型171Gと噛み合わせた状態を、この実施の形態における第1伝達状態とも呼ぶ。
さらに、第1入力伝達体163における扇形部分の半径と、第1出力伝達体171における扇形部分の半径との比率は、第1の実施の形態における直線63X及び直線71Xの長さの比率(図10(A))と同様、K:Lとなっている。このためアクチュエータ135では、第1の実施の形態と同様、入力軸41の回動角度である角度θと、出力軸42の回動角度である角度αとの関係を、上述した(1)式により表すことができる。
第2出力伝達体172は、出力軸42に対し、第1出力伝達体171の左側へやや離れた箇所に取り付けられており、第1出力伝達体171と同様、扇形の板状に形成されている。また第2出力伝達体172の円弧部分には、やはり第1出力伝達体171と同様に歯型172Gが形成されている。
また第2出力伝達体172における扇形部分の半径は、仮想的な直線35Xの長さから、第2入力伝達体164における扇形部分の半径を差し引いた長さに相当する。このため第2出力伝達体172は、図14(A)に示したように、切替移動部144が右側へ移動されている場合、当該切替移動部144の第2入力伝達体164に設けられた歯型164Gと、当該第2出力伝達体172の歯型172Gとを互いに噛み合わせることができる。
これによりアクチュエータ135は、入力軸41が入力軸回動部43により回動された場合、その力を第2入力伝達体164の歯型164Gから第2出力伝達体172の歯型172Gへ伝達することにより、出力軸42を回動させて、図14(B)に示す状態とすることができる。以下、このように第2入力伝達体164の歯型164Gを第2出力伝達体172の歯型172Gと噛み合わせた状態を、この実施の形態における第2伝達状態とも呼ぶ。
さらに、第2入力伝達体164における扇形部分の半径と、第2出力伝達体172における扇形部分の半径との比率は、第1の実施の形態における直線64X及び直線72Xの長さの比率(図11(A))と同様、M:Nとなっている。このためアクチュエータ135では、第1の実施の形態と同様、入力軸41の回動角度である角度θと、出力軸42の回動角度である角度βとの関係を、上述した(2)式により表すことができる。
以上の構成において、第2の実施の形態による現金自動預払機101の紙幣入出金機110におけるアクチュエータ135は、切替駆動部46によって切替移動部44を左右方向へ移動させることにより、互いの減速比が異なる第1伝達状態(図13)又は第2伝達状態(図14)に切り替える。これによりアクチュエータ135は、第1の実施の形態と同様、入力軸回動部43(図7)による入力軸41の回動角度が1通りの角度θのみであるにも関わらず、出力軸42の回動角度を角度α及び角度βの2通りに切り替えることができる。
このときアクチュエータ135は、やはり第1の実施の形態と同様、出力軸42の回動角度を角度α又は角度βに切り替えたとしても、回動に要する時間をほぼ一定に維持できる。
以上の構成によれば、第2の実施の形態による現金自動預払機101の紙幣入出金機110は、アクチュエータ135において、切替駆動部46によって切替移動部44を左右方向へ移動させ、第1伝達状態(図13)又は第2伝達状態(図14)に切り替える。このときアクチュエータ135は、入力軸回動部43による入力軸41の回動角度が1通りの角度θであるため、出力軸42の回動角度を角度α及び角度βの2通りに切り替えながらも、その回動に要する時間を同等に保つことができる。
[3.第3の実施の形態]
第3の実施の形態による現金自動預払機201(図1)は、第1の実施の形態による現金自動預払機1と比較して、紙幣入出金機10に代わる紙幣入出金機210を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。紙幣入出金機210(図2)は、紙幣入出金機10と比較して、搬送部13に代わる搬送部213を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
搬送部213(図3)は、搬送部13と比較して、一時保留切替部20に代わる一時保留切替部220を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。一時保留切替部220(図4及び図5)は、一時保留切替部20と比較して、アクチュエータ35に代わるアクチュエータ235を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
アクチュエータ235は、図7と対応する図15に示すように、アクチュエータ35と比較して、出力伝達部45に代わる出力伝達部245を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。以下では、切替移動部44、出力伝達部245及び切替駆動部46をまとめて切替伝達部247とも呼ぶ。出力伝達部245は、出力伝達部45と比較して、第3出力伝達体273が追加されている点において相違するものの、第1出力伝達体71及び第2出力伝達体72については同様に構成されている。
第3出力伝達体273は、第1出力伝達体71と同様、左右方向に薄く細長い直方体状ないし薄い板状に形成されており、第1出力伝達体71の左側に隣接した状態で、出力軸42に対し長手方向の一端が固定されている。第3出力伝達体273における外端の近傍には、第1伝達孔71Hと同様の第3伝達孔273Hが穿設されている。この第3出力伝達体273は、その長手方向を、出力中心線42Cに対し、第1出力伝達体71及び第2出力伝達体72の何れとも異なる放射方向へ向けている。
かかる構成によりアクチュエータ235は、入力軸41が第1入力状態にあり、出力軸42が初期出力状態にあり、且つ切替駆動部46により切替移動部44を右側に移動させているとき、第1の実施の形態と同様に、第1伝達突起63を第1出力伝達体71の第1伝達孔71Hに挿通させた第1伝達状態となる(図8)。このためアクチュエータ235は、入力軸41が入力軸回動部43により第1入力状態から第2入力状態へ回動された場合、出力軸42を角度αだけ回動させることができる(図10)。
またアクチュエータ235は、図9と対応する図16に示すように、入力軸41が第1入力状態にあり、出力軸42が初期出力状態にあり、且つ切替駆動部46により切替移動部44を左側に移動させているとき、第1の実施の形態と同様に、第2伝達突起64を第2出力伝達体72の第2伝達孔72Hに挿通させた第2伝達状態となる。このためアクチュエータ235は、図11に示したように、入力軸41が入力軸回動部43により第1入力状態から第2入力状態へ回動された場合、出力軸42を角度βだけ回動させることができる。
ここでアクチュエータ235は、図16(B)に示したように、入力軸41が第2入力状態にあり、且つ出力軸42が初期出力状態から角度βだけ回動しているとき、第1伝達突起63と第3伝達孔273Hとが互いに対応する位置となるよう、出力軸42に対する第3出力伝達体273の取付角度が調整されている。
このためアクチュエータ235は、入力軸41が第2入力状態にあり、且つ出力軸42が初期出力状態から角度βだけ回動しているときに、切替駆動部46により切替移動部44を右側へ移動させることにより、図17(A)に示すように、第1伝達突起63を第3出力伝達体273の第3伝達孔273Hに挿通させることができる。
これによりアクチュエータ235は、入力軸41が入力軸回動部43により第2入力状態から第1入力状態へ回動された場合、その力を入力伝達腕部62の第1伝達突起63から第3出力伝達体73の第3伝達孔73Hへ伝達することにより、出力軸42を回動させ、図17(B)に示す状態となる。以下、このように第1伝達突起63を第3伝達孔273Hに挿通させた状態を第3伝達状態とも呼ぶ。
ここで、図10(A)及び図11(A)と対応する図18(A)に示すように、仮想的な直線35X及び直線63Xに加えて、出力軸42の出力中心線42C及び第1伝達突起63の中心を結ぶ第3出力伝達体273に沿った仮想的な直線273Xを定義する。さらに、直線63X及び直線273Xの長さの比率を、Q:Rとする。
アクチュエータ235は、この第3伝達状態において、入力軸回動部43(図7)によって入力軸41を第2入力状態から第1入力状態へ回動させることにより、図18(A)と対応する図18(B)に示した状態となる。ここで、入力軸41の回動角度を角度θとし、出力軸42の回動角度を角度γとすると、この角度γは、上述した比率Q:R及び角度θを用いることにより、次の(3)式のように表すことができる。
γ=(Q/R)θ ……(3)
すなわちアクチュエータ235は、入力軸41から切替伝達部247(切替移動部44、出力伝達部245及び切替駆動部46)を介して出力軸42へ回動を伝達する際の減速比を、(K/L)、(M/N)又は(Q/R)に切り替えることができる。
また出力軸42は、図17(B)及び図18(B)に示した状態において、初期出力状態(図11(A))から角度βだけ回動し、さらに反対方向へ角度γだけ回動している。すなわちこのときの出力軸42における基準線35Bからの回動角度は、角度(β−γ)となる。
さらに、アクチュエータ235における出力軸42の回動角度を、入力軸41の角度(第1入力状態又は第2入力状態)及び切替移動部44の位置(右側又は左側)に応じて整理すると、図12と対応する図19の状態遷移図として表すことができる。
このようにアクチュエータ235は、第1入力状態において第1伝達状態(図8)又は第2伝達状態(図16)に切り替えることに加えて、第2入力状態において第2伝達状態又は第3伝達状態(図17)に切り替えることにより、出力軸42の回動角度を角度α、角度β又は角度γに切り替えることができる。
以上の構成において、第3の実施の形態による現金自動預払機201の紙幣入出金機210におけるアクチュエータ235は、入力軸41を回動させると共に切替移動部44を左右方向へ移動させることにより、互いの減速比が異なる第1伝達状態(図8)、第2伝達状態(図16)又は第3伝達状態(図17)に切り替える。これによりアクチュエータ235は、入力軸回動部43(図7)による入力軸41の回動角度が1通りの角度θのみであるにも関わらず、出力軸42の回動角度を角度α、角度β及び角度γの3通りに切り替えることができる。
このときアクチュエータ235は、出力軸42の回動角度を角度α、角度β又は角度γの何れに切り替えたとしても、やはり第1の実施の形態と同様、回動に要する時間をほぼ一定に維持できる。
特にアクチュエータ235は、第1伝達状態において第1出力伝達体71の第1伝達孔71Hに挿通される第1伝達突起63を、第3伝達状態(図17)において、第3出力伝達体273の第3伝達孔273Hに挿通させるようにした。このためアクチュエータ235は、切替駆動部46によって切替移動部44を左側又は右側といった2通りの位置に切り替えることと、入力軸41の回動角度とを組み合わせることで、力の伝達経路を3通りに切り替えることができる。すなわちアクチュエータ235は、切替駆動部46によって切替移動部44を3通りの位置に切り替える場合と比較して、その構成を簡素化することができる。
以上の構成によれば、第3の実施の形態による現金自動預払機201の紙幣入出金機210は、アクチュエータ235において、入力軸回動部43により入力軸41を回動させると共に切替駆動部46によって切替移動部44を左右方向へ移動させ、第1伝達状態(図8)、第2伝達状態(図16)又は第3伝達状態(図17)に切り替える。このときアクチュエータ235は、入力軸回動部43による入力軸41の回動角度が1通りの角度θであるため、出力軸42の回動角度を角度α、角度β及び角度γの3通りに切り替えながらも、その回動に要する時間を何れも同等に保つことができる。
[4.他の実施の形態]
なお上述した第1及び第3の実施の形態においては、切替伝達部47及び247としていわゆるリンク機構を形成することにより、また第2の実施の形態においては、歯型163G等を噛み合わせた歯車機構により、それぞれ入力軸41の回動する力を出力軸42に伝達する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、周知の種々の機構により力を伝達するようにしても良い。例えば、第3の実施の形態におけるリンク機構を、第2の実施の形態と同様の歯車機構に置き換えても良い。要は、力を伝達する伝達経路を複数に切替可能とすることにより、減速比を変更すること、すなわち入力軸41における1通りの回動角度に対して、力の伝達経路を切り替えることにより、出力軸42を複数通りの回動角度で回動させることができれば良い。またこれらの機構は、力の伝達経路ごとに異なるものを組み合わせても良く、例えば第1の実施の形態において第1伝達突起63及び第1出力伝達体71(図8)に代えて、第2の実施の形態における第1入力伝達体163及び第1出力伝達体171(図13)を設けても良い。
また上述した第1の実施の形態においては、入力軸41の入力中心線41Cを基準として同一の放射方向に第1伝達突起63及び第2伝達突起64を設ける場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、入力中心線41Cに対し、第1伝達突起63及び第2伝達突起64を互いに異なる放射方向に設けても良い。この場合、これに応じて、出力軸42の出力中心線42Cに対する第1出力伝達体71及び第2出力伝達体72の取付方向を調整すれば良い。要は、入力軸41が第1入力状態である場合に第1伝達状態及び第2伝達状態に切り替えることができれば良い。第3の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、切替移動部44を入力軸41に沿って移動させることにより、第1伝達状態及び第2伝達状態を切り替える場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば切替移動部44を入力軸41に対し固定する一方、出力伝達部45の第1出力伝達体71及び第2出力伝達体72を一体として出力軸42に沿って移動させることにより、第1伝達状態及び第2伝達状態を切り替えるようにしても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、切替移動部44を入力軸41に沿って右側又は左側の2箇所へ移動させることにより、出力軸42への力の伝達経路を2通りに切り替える場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば切替移動部44を入力軸41に沿って3箇所以上に移動させるようにし、出力軸42への力の伝達経路を3通り以上に切り替えるようにしても良い。また、切替移動部44の移動方向は左右に限らず、他の方向でも良い。さらには、切替移動部44を直線状では無く曲線状や折れ線状など、種々の線に沿って移動させても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、いわゆるロータリーソレノイドでなる入力軸回動部43(図7)により入力軸41を回動させる場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば図7と対応する図20(A)に示すように、アクチュエータ335において、ステッピングモータでなる入力軸回動部343により入力軸41を回動させても良い。
或いは、図20(B)に示すように、アクチュエータ435において、直動式のソレノイドを有する入力軸回動部443により入力軸41を回動させても良い。この入力軸回動部443は、直動式のソレノイド451により出力軸452を上下方向に移動させ、当該出力軸452の先端近傍に回動機構453を介して連動腕部454を接続し、当該連動腕部454の反対側に入力軸41を固定している。また出力軸452の下端は、ばね455により下方へ付勢されている。かかる構成によりアクチュエータ435は、出力軸452を上下方向へ移動させることにより、入力軸41を回動させることができる。要は、種々の構成でなる入力軸回動部により入力軸41を回動させるようにしても良い。また、切替駆動部46(図7)についても、電磁コイル81及び永久磁石83の磁力を利用した機構に限らず、種々の機構により切替移動部44を左右方向へ移動させるようにしても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、前後方向に沿って概ね直線状の搬送路を形成する搬送部13内に設ける一時保留切替部20のアクチュエータ35に本発明を適用する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば図2と対応する図21に示す紙幣入出金機510において、円弧状に湾曲した搬送路を形成する搬送部513に設ける切替部520のブレードを回動させるアクチュエータに本発明を適用しても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、ブレード34を、左右方向から見て頂角が比較的狭い二等辺三角形ないし楔形とする場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば左右方向から見て円弧状ないし三日月状とする等、種々の形状としても良い。要は、アクチュエータ35によって回動されることにより、紙幣の搬送方向を切り替えることができれば良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、紙葉状の媒体である紙幣の取引処理を行う現金自動預払機1において、紙幣の搬送路を切り替える一時保留切替部20に本発明を適用する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば金融機関の窓口等に設置され、主に金融機関の職員が使用する紙幣処理装置(いわゆるテラーマシン)等、紙幣を取り扱う種々の装置において、紙幣の搬送路を切り替える切替部のアクチュエータに本発明を適用しても良い。さらには、例えば各種金券や証券、或いは入場券や葉書等、紙葉状の媒体を取り扱う種々の装置において、この媒体の搬送路を切り替える切替部に本発明を適用しても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、紙幣の搬送方向を切り替える一時保留切替部20において、ブレード34を回動させるアクチュエータ35に本発明を適用する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、種々の物体を回動させるアクチュエータに適用しても良い。例えば、流体を搬送する管の途中に設けられた弁を回動させることにより開閉させるアクチュエータに対し、本発明を適用しても良い。この場合、弁の開く度合を複数段階に切り替えることができ、且つその切替を一定の時間で完了することができる。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
さらに上述した実施の形態においては、入力軸としての入力軸41と、回動部としての入力軸回動部43と、出力軸としての出力軸42と、切替伝達部としての切替伝達部47とによってアクチュエータとしてのアクチュエータ35を構成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる入力軸と、回動部と、出力軸と、切替伝達部とによってアクチュエータを構成しても良い。
さらに上述した実施の形態においては、搬送ガイドとしての搬送ガイド31と、ブレードとしてのブレード34と、入力軸としての入力軸41と、回動部としての入力軸回動部43と、出力軸としての出力軸42と、切替伝達部としての切替伝達部47とによってアクチュエータとしてのアクチュエータ35を構成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる搬送ガイドと、ブレードと、入力軸と、回動部と、出力軸と、切替伝達部とによってアクチュエータを構成しても良い。