以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
[1.第1の実施の形態]
[1−1.現金自動預払機の全体構成]
図1に外観を示すように、現金自動預払機1は、箱状の筐体2を中心に構成されており、顧客との間で現金に関する取引を行うようになされている。
筐体2は、その前面2A側に顧客が対峙した状態で紙幣の投入やタッチパネルによる操作等をしやすい箇所、すなわち前面2Aの上部から上面に渡る箇所に、接客部3が設けられている。
接客部3は、顧客との間で現金や通帳等を直接やり取りすると共に、取引に関する情報の通知や操作指示の受付を行うようになされており、硬貨入出金口4、紙幣入出金口5、通帳挿入口6、カード挿入口7及び表示操作部8が設けられている。
硬貨入出金口4及び紙幣入出金口5は、顧客が入金する硬貨及び紙幣BLがそれぞれ投入されると共に、顧客へ出金する硬貨及び紙幣BLがそれぞれ排出される部分である。また硬貨入出金口4及び紙幣入出金口5は、それぞれに設けられたシャッタを駆動することにより開放又は閉塞するようになされている。因みに紙幣BLは、例えば長方形の紙で構成されている。
通帳挿入口6は、取引で使用される通帳が挿入され、取引が終了すると通帳が排出される部分である。この通帳挿入口6の奥部には、取引内容等を通帳に記録する通帳処理部(図示せず)が設けられている。
カード挿入口7は、キャッシュカード等の各種カードが挿入または排出される部分である。カード挿入口7の奥部には、各種カードに磁気記録された口座番号等の読み取りを行うカード処理部(図示せず)が設けられている。
表示操作部8は、取引に際して操作画面を表示するLCD(Liquid Crystal Display)と、取引の種類の選択、暗証番号や取引金額等を入力するタッチパネルとが一体化されている。
因みに筐体2は、前面2A側やその反対側(すなわち背面側)等の一部の側面が開閉可能な扉により構成されている。すなわち筐体2は、顧客との間で現金に関する取引を行う取引動作時には、各扉を閉塞することにより、内部に保有している紙幣BLや硬貨等を保護する。一方筐体2は、作業者等が保守作業を行う保守作業時には、必要に応じて各扉を開放することにより、内部の各部に対する作業を容易に行わせ得る。
図2は、図1の現金自動預払機1を矢印A方向から見た側面図であり、当該現金自動預払機1の内部構成のうち主に紙幣BLの処理に関する部分を示している。同図に示したように、現金自動預払機1の内部には、上側に接客部3、紙幣BLの金種や真偽を判定する鑑別部12及び入金された紙幣BLを一時的に保留する一時保留部13等が設けられており、下側に紙幣BLを金種別に貯蔵する紙幣貯蔵部15等が設けられている。
また現金自動預払機1の内部には、図中太線で示す搬送路に沿って各部の間で紙幣BLを搬送する搬送部11が設けられている。搬送部11は、紙幣BLの短辺方向を進行方向として搬送するようになされている。
この現金自動預払機1は、制御部10により全体を統括制御するようになされている。制御部10は、例えば顧客が紙幣BLを入金する入金取引を行う場合、表示操作部8を介して所定の操作入力を受け付けた後、紙幣入出金口5のシャッタを開いて紙幣BLを投入させる。
続いて制御部10は、投入された紙幣BLを搬送部11を介して鑑別部12へ搬送して鑑別させ、正常紙幣と鑑別された紙幣BLを一時保留部13へ搬送して一時的に保留する一方、取引すべきでないと鑑別された紙幣BLを紙幣入出金口5へ搬送して顧客に返却する。
その後制御部10は、表示操作部8を介して顧客に入金金額を確定させ、一時保留部13に保留している紙幣BLを再び鑑別部12へ搬送して金種を再鑑別させた後、さらに紙幣貯蔵部15へ搬送する。
紙幣貯蔵部15は、鑑別部12により損傷していないと鑑別された紙幣BLを、その金種に対応した各紙幣収納庫16へ搬送し、厚さ方向に重ねて集積するように収納させる。
また紙幣貯蔵部15は、鑑別部12により損傷していると鑑別されたた紙幣BLをリジェクト庫17へ搬送し、厚さ方向に重ねて集積するように収納させる。
[1−2.リジェクト庫の構成]
図3に側面図を示すように、リジェクト庫17は、筐体21内の空間22に紙幣BLを上下に重ねて集積するようになされている。
筐体21は、現金自動預払機1内に設置された際に前面2A(図1)側となる前側及びその反対の後側、当該前面2A側に対峙した顧客から見て左及び右となる左側及び右側、並びに下側及び上側の各面を隔壁として閉塞することにより、当該隔壁に囲まれた空間22を形成している。
空間22は、紙幣BLの長手方向及び短手方向をそれぞれ左右及び前後に向けた状態で、多数の紙幣BLを上方向に順次集積できるよう、各部の大きさが適宜規定されている。
また筐体21における前側面の上部には、前後方向に貫通する孔部が貫設されている。この孔部の近傍には、紙幣BLを空間22へ放出する放出部24が設けられている。この放出部24は、放出ローラ25、羽根車26及びプレッシャローラ28等の組み合わせにより構成されている。
図4に正面図を示すように、放出部24の下側では、放出ローラ25(25A及び25B)と羽根車26(26A、26B、26C、26D及び26E)とが左右方向に沿った細長い円柱状のシャフト27に貫通されている。シャフト27には、左側から順に、羽根車26A、放出ローラ25A、羽根車26B、26C、26D、放出ローラ25B、及び羽根車26Eがそれぞれ所定の間隔を空けて取り付けられている。
放出ローラ25(25A及び25B)は、円柱状に形成された円柱部31(31A及び31B)と、当該円柱部31A及び31Bの外側に設けられ、当該円柱部31A及び32Bとの境界部分から外側へ進むにつれて半径が徐々に拡大する円錐台状の円錐台部32(32A及び32B)とが接合された形状を有している。
また放出ローラ25のうち後述するプレッシャローラ28と当接する部分には、金属や硬質の樹脂のような比較的硬い材料で構成されると共に、周側面に摩擦部材が巻き付けられていることにより、紙幣BLに対し滑り難いようになされている。
羽根車26(26A、26B、26C、26D及び26E)は、図3に示したように、円柱状でなる中心部分の外周面から外方へ向けて、矩形板状でなる羽根が放射状に8本(8枚)延設されている。
この羽根車26は、例えばエラストマー樹脂のように、可撓性を有すると共に滑り難い材料により構成されている。このため羽根車26の各羽根は、紙幣BLに当接すると、弾性変形すると共に当該紙幣BLに当接した状態を維持し、当該紙幣BLとの間である程度の摩擦力を作用させることになる。
放出ローラ25及び羽根車26は、図示しない駆動機構によりシャフト27が軸芯を中心に矢印F方向(図3)に回転されると、当該シャフト27と共に矢印F方向に回転するようになされている。
放出部24における上側には、放出ローラ25の円柱部31とそれぞれ対向する箇所にプレッシャローラ28(28A及び28B)が設けられている。プレッシャローラ28は、放出ローラ25の円柱部31よりも左右方向の長さが短い(すなわち薄い)円柱状に構成されており、シャフト29(図3)に貫通されている。このシャフト29は、その軸芯を中心に自在に回転すると共に、例えば圧縮スプリング(図示せず)等の押圧手段により下方向へ押し付けられている。
かかる構成により放出部24は、シャフト27が回転駆動されることにより、放出ローラ25及び羽根車26を矢印F方向に回転させる。そして放出部24は、搬送部11(図2)を介して矢印E方向(図3)から紙幣BLが搬送されてくると、上側のプレッシャローラ28と下側の放出ローラ25との間に当該紙幣BLを挟み込み、後方へ進行させる。
このとき放出部24は、図4と対応する図5に示すように、放出ローラ25における円錐台部32の形状により、紙幣BLにおける左右の端部を上方向に持ち上げて後方へ進行させ、当該紙幣BLをそのままの形状で空間22内へ放出する。因みに羽根車26は、羽根の弾性力が比較的弱いため、紙幣BLを持ち上げることはできず、羽根を当該紙幣BLに当接させた状態となる。
以下では、図6に示すように、紙幣BLのうちプレッシャローラ28及び放出ローラ25に挟持された領域をそれぞれ挟持領域RA及びRBと呼び、当該挟持領域RA及びRBに挟まれた中央の領域を中央領域RCと呼び、さらに当該挟持領域RA及びRBよりも外方、すなわち左右の端部をそれぞれ端部領域RD及びREと呼ぶ。
一方、筐体21(図3)における後内側面の上部、すなわち空間22内で放出部24と対向する部分には、上下方向に長い四角柱状のビルストッパ30が2本、左右に隙間を介して設けられている。このビルストッパ30は、下端部に設けられた回動軸を介して筐体21の後側部分に取り付けられており、筐体21に対し当該回動軸を中心に回動し得るようになされている。
ビルストッパ30と筐体21の内側面との間には、スプリング(図示せず)が取り付けられている。すなわちビルストッパ30は、後方向への外力が加えられると、後方向へ回動すると共にスプリングを圧縮させることにより当該外力を吸収し、さらに当該スプリングの復元力により前方向へ向かう力が作用することになる。
因みにビルストッパ30は、その前面に、左右方向に延びる溝が上下方向に繰り返し形成されており、紙幣BLが衝突した時に当該紙幣BLの後側端部を滑らせないようになされている。
さらに筐体21の上側を形成する天板21Aの内側面には、紙幣BLが上方向へ進行することを防止するための上部ガイド23が取り付けられている。
上部ガイド23は、全体として直方体状に構成されている。上部ガイド23の下面は、放出ローラ25の円柱部31とプレッシャローラ28との当接面よりも上方に位置しており、その表面が平滑に形成されている。
また上部ガイド23は、図4に示したように、左右方向の長さが空間22における左右方向の長さよりも短く、おおむね左右の放出ローラ25A及び25Bにおける円錐台部32A及び32Bに対応する箇所に左右の側面が位置している。
ここでリジェクト庫17における各部の大きさ、長さや間隔等は、現金自動預払機1が対応すべき全種類の紙幣BLの大きさ等に応じて適切に定められている。このため放出部24は、プレッシャローラ28A及び28Bの間隔並びに放出ローラ25A及び25Bの間隔も紙幣BLに合わせて最適化されている。さらに上部ガイド23は、左右方向の長さや上下方向の高さが、紙幣BLの長手方向の長さや当該紙幣BLにおける端部領域RD及びREの長さ及び持ち上げられる角度等に合わせて最適化されている。
このため上部ガイド23は、図5に示したように、放出部24において上方向に持ち上げられた紙幣BLの左右の端部との干渉を回避することができる。これを換言すれば、上部ガイド23は、仮に紙幣BLが上方向へ進行しようとした場合、当該紙幣BLの中央領域RC並びに挟持領域RA及びRBと当接することにより、当該紙幣BLが上方向へ進行することを防止するようになされている。
[1−3.動作及び効果]
以上の構成において、第1の実施の形態によるリジェクト庫17は、搬送部11(図2)から紙幣BLが搬送されてくると、放出部24によりシャフト27と共に放出ローラ25及び羽根車26を矢印F方向に回転させ、当該紙幣BLを取り込む。
放出部24は、プレッシャローラ28により紙幣BLを放出ローラ25に押し付け、当該プレッシャローラ28及び放出ローラ25の間に当該紙幣BLを挟み込む。
このとき放出部24は、放出ローラ25の円錐台部32が円柱部31とプレッシャローラ28との当接面よりも上方へ突出しているため、紙幣BLの端部領域RD及びRE(図6)を上方へ持ち上げる。
さらに放出部24は、放出ローラ25を回転させることによりその回転駆動力を紙幣BLに伝達し、当該紙幣BLを後方向へ進行させる。これにより紙幣BLは、左右の端部領域RD及びREが上方へ持ち上げられ、全体としての上下方向に関する曲げ強度が高められた状態で空間22内へ放出される。
一方、天板21Aの下面に取り付けられた上部ガイド23は、左右の長さが紙幣BLの全長よりも短く、おおむね放出ローラ25A及び25Bの円錐台部32A及び32Bよりも内側の範囲にのみ設けられている。
これによりリジェクト庫17は、紙幣BLの端部領域RD及びREを上部ガイド23に当接させることなく十分に持ち上げた状態を維持したまま、空間22内を滑空させるように、後方へ向けてほぼ直進させることができる。
このとき上部ガイド23は、その下面を紙幣BLの中央領域RC並びに挟持領域RA及びRBと対向させることができ、当該紙幣BLが上方へ進行しないよう抑制することができる。
その後紙幣BLは、ビルストッパ30に衝突する。このときビルストッパ30は、前面に対し紙幣BLがほぼ垂直に衝突するため、当該紙幣BLの前端部分を下方に滑らせることなく溝により受け止め、スプリング(図示せず)の弾性作用により当該紙幣BLを前方へ押し返す。
すなわちリジェクト庫17は、放出部24による紙幣BLの放出後、当該紙幣BLを空間22内で後方へ向けてほぼ直進させることにより、ビルストッパ30によって前方へ押し返すことができるので、当該紙幣BLの先端を筐体21と集積済紙幣CBLとの間に潜り込ませる恐れを格段に低減することができる。
さらに羽根車26は、羽根により紙幣BLの前側端部近傍を下方向へ叩き付け、当該紙幣BLを集積済紙幣CBLの上に集積させる。
これによりリジェクト庫17は、集積済紙幣CBLの各紙幣BLに対し位置ずれや傾きを殆ど生じさせることなく、位置を揃えるように新たな紙幣BLを重ねることができるので、最終的に各紙幣BLを整然と集積することができる。
特に紙幣BLは、顧客に取り扱われる間に折り曲げられ、或いは丸められて曲げ強度が弱められた状態、いわゆるコシの弱い状態となっている場合がある。しかしながらリジェクト庫17は、このようにコシの弱い紙幣BLについても、端部領域RD及びREを持ち上げて曲げ強度を高めたまま空間22内を滑空させることができるので、最終的に整然と集積することができる。
以上の構成によれば、現金自動預払機1のリジェクト庫17は、放出部24のプレッシャローラ28及び放出ローラ25の間に紙幣BLを挟み込み、当該放出ローラ25の円錐台部32により端部領域RD及びREを上方へ持ち上げて後方へ進行させ、空間22内へ放出する。このときリジェクト庫17は、上部ガイド23をおおむね放出ローラ25A及び25Bの円錐台部32A及び32Bよりも内側の範囲にのみ設けたことにより、紙幣BLの端部領域RD及びREを当該上部ガイド23に当接させることなく、当該紙幣BLの上下方向への曲げ強度を高めたまま空間22内を後方へ向けてほぼ直進させることができる。この結果リジェクト庫17は、集積済紙幣CBLと位置を揃えるように新たな紙幣BLを重ねて、整然と集積することができる。
[2.第2の実施の形態]
第2の実施の形態による現金自動預払機101は、第1の実施の形態による現金自動預払機1と比較して、リジェクト庫17に代わるリジェクト庫117を有する点が異なるものの、他の点については同様に構成されている。
[2−1.リジェクト庫の構成]
リジェクト庫117は、リジェクト庫17と比較して、放出部24に代わる放出部124を有する点が相違するものの、他の点については同様に構成されている。
放出部124は、図5と対応する図8に示すように、放出ローラ25(25A及び25B)並びに羽根車26(26A〜26E)に代わる放出ローラ125(125A及び125B)並びに羽根車126(126A〜126E)を有する点が相違するものの、他の点は放出部24と同様に構成されている。
放出ローラ125は、放出ローラ25における円錐台部32が円柱部31と同径の円柱となっており、全体として円柱状に構成されている。
羽根車126は、羽根車26と同様の形状に形成されている。一方、羽根車126の構成材料は、羽根車26と同様に可撓性を有すると共に滑り難い性質を有するものの、より硬くなっている。このため羽根車126の羽根は、羽根車26の羽根と比較して撓み難く、いわば弾性力が強くなっている。
これにより羽根車126の羽根は、特に張力が加えられていない状態の紙幣BLであれば持ち上げることができ、左右方向に張力が加えられた状態の紙幣BLであれば、僅かに持ち上げることができる。
かかる構成により放出部124は、外部から紙幣BLが搬送され放出ローラ125とプレッシャローラ28との間に挟まれると、図8に示したように、最外方の羽根車126A及び126Eが殆ど撓まず、紙幣BLにおける左右の端部領域RD及びREを上方向に持ち上げる。
また羽根車126B、126C及び126Dは、左右それぞれにおいて放出ローラ125及びプレッシャローラ28の間に挟まれることにより左右方向に張力が生じた状態となっている紙幣BLの中央領域RCを、上方向へ小さく持ち上げる。
すなわち放出部124は、紙幣BLについて、左右の端部領域RD及びREを大きく持ち上げるだけでなく、左右の放出ローラ125及びプレッシャローラ28の間に挟まれる挟持領域RA及びRBの内側となる中央領域RCを上方向へ小さく持ち上げた状態で、空間22内へ放出することになる。
因みに上部ガイド23は、羽根車126B、126C及び126Dにより小さく持ち上げられた紙幣BLの中央領域RCよりも上側に、その下面が位置するように構成されている。
[2−2.動作及び効果]
以上の構成において、第2の実施の形態によるリジェクト庫117は、搬送部11(図2)から紙幣BLが搬送されてくると、放出部124によりシャフト27と共に放出ローラ25及び羽根車126を矢印F方向(図3)に回転させ、当該紙幣BLを取り込む。
放出部124は、プレッシャローラ28により紙幣BLを放出ローラ125に押し付け、当該プレッシャローラ28及び放出ローラ125の間に当該紙幣BLを挟み込む。
このとき放出部124は、羽根車126A及び126Eにおける羽根の弾性力により紙幣BLの端部領域RD及びREを大きく持ち上げ、また羽根車126B、126C及び126Dにおける羽根の弾性力により紙幣BLの中央領域RCを小さく持ち上げて、後方向へ進行させる。
これにより紙幣BLは、特に中央領域RCについて上下方向に関する曲げ強度が第1の実施の形態よりも高められるため、全体としての上下方向に関する曲げ強度も第1の実施の形態より高められた状態で空間22内へ放出される。
このとき上部ガイド23は、第1の実施の形態と同様、その下面を紙幣BLの中央領域RC並びに挟持領域RA及びRBと対向させて上方への進行を抑制すると共に、端部領域RD及びREと当接することなく十分に持ち上げた状態を維持させたまま、すなわち上下方向に関する曲げ強度を高めたまま、空間22内を後方へ向けてほぼ直進させることができる。
この結果リジェクト庫117は、第1の実施の形態と同様、当該紙幣BLの先端を筐体21と集積済紙幣CBLとの間に潜り込ませる恐れを格段に低減することができると共に、集積済紙幣CBLの各紙幣BLに対し位置ずれや傾きを殆ど生じさせることなく、位置を揃えるように新たな紙幣BLを重ねることができるので、最終的に各紙幣BLを整然と集積することができる。
またリジェクト庫117は、その他の点についても第1の実施の形態と同様の作用効果を奏し得る。
以上の構成によれば、現金自動預払機101のリジェクト庫117は、放出部124のプレッシャローラ28及び放出ローラ125の間に紙幣BLを挟み込み、羽根車126により端部領域RD及びRE並びに中央領域RCを上方へ持ち上げて後方へ進行させ、空間22内へ放出する。このときリジェクト庫117は、上部ガイド23をおおむね放出ローラ25A及び25Bの円錐台部32A及び32Bよりも内側の範囲にのみ設けたことにより、紙幣BLの上方へ持ち上げられた端部領域RD及びREを当該上部ガイド23に当接させることなく、紙幣BLの上下方向への曲げ強度を高めたまま空間22内を後方へ向けてほぼ直進させることができる。この結果リジェクト庫117は、集積済紙幣CBLと位置を揃えるように新たな紙幣BLを重ねて、整然と集積することができる。
[3.第3の実施の形態]
第3の実施の形態による現金自動預払機201は、第2の実施の形態による現金自動預払機101と比較して、リジェクト庫117に代わるリジェクト庫217を有する点が異なるものの、他の点については同様に構成されている。
[3−1.リジェクト庫の構成]
リジェクト庫217は、リジェクト庫117と比較して、放出部124に代わる放出部224を有する点が相違するものの、他の点については同様に構成されている。
放出部224は、放出部124と比較して、図3及び図7の一部と対応する図9並びに図8と対応する図10に示すように、プレッシャローラ28A及び28Bの間に突出レバー241が設けられ、羽根車126Cが省略されている点が相違するものの、他の点については同様に構成されている。
突出レバー241は、全体として上下方向に細長い直方体状に構成されており、最下端が錐体状に形成されると共に、上端近傍に回動部241Aが設けられている。回動部241Aは、突出レバー241全体をプレッシャローラ28と同軸に回動させ得るようになされている。
また回動部241Aは、図示しないトーションスプリングにより突出レバー241全体を所定の付勢力で矢印G方向に付勢しており、さらに図示しないストッパにより図9に示したように突出レバー241の長手方向が真下からやや後方を向いた角度で停止させる。このとき突出レバー241の下端部分は、プレッシャローラ28と放出ローラ125との当接面よりも下方へ飛び出した状態となる。
このため突出レバー241は、左右のプレッシャローラ28のほぼ中間となる箇所において、紙幣BLの中央領域RCにおける中央部分を下方へ押し下げることになる。このとき突出レバー241は、回動部241Aにより矢印G方向へ付勢されていることにより、紙幣BLに対し適切な力を加えるようになされている。
[3−2.動作及び効果]
以上の構成において、第3の実施の形態によるリジェクト庫217は、搬送部11(図2)から紙幣BLが搬送されてくると、放出部224によりシャフト27と共に放出ローラ25及び羽根車126を所定の回転速度で矢印F方向に回転させ、当該紙幣BLを取り込む。
放出部224は、プレッシャローラ28により紙幣BLを放出ローラ125に押し付け、当該プレッシャローラ28及び放出ローラ125の間に当該紙幣BLを挟み込む。
このとき放出部224は、羽根車126A及び126Eが羽根の弾性力により紙幣BLにおける左右の両端を大きく持ち上げ、また羽根車126B及び126Dにより紙幣BLの中央領域RCにおける外方寄りの部分を小さく持ち上げ、さらに当該中央領域RCにおける中央部分を突出レバー241により下方へ押し下げて、後方向へ進行させる。
特に突出レバー241は、前後方向に関し、プレッシャローラ28及び放出ローラ125により紙幣BLを挟持する箇所及び羽根車126により紙幣BLを持ち上げる箇所とほぼ同等の箇所に設けられている。
このため放出部224は、羽根車126により端部領域RD及びRE並びに中央領域RCを持ち上げるとほぼ同時に中央部分を下方へ押し下げることができるため、その形状(図10)を崩すことなく空間22内へ放出させることができる。
これにより紙幣BLは、特に中央領域RCについて上下方向に関する曲げ強度が第2の実施の形態よりもさらに高められるため、全体としての上下方向に関する曲げ強度も第2の実施の形態よりさらに高められた状態で、空間22内へ放出される。
このとき上部ガイド23は、第1及び第2の実施の形態と同様、その下面を紙幣BLの中央領域RC並びに挟持領域RA及びRBと対向させて上方への進行を抑制すると共に、上方へ持ち上げられた端部領域RD及びREと当接することなく十分に持ち上げた状態を維持させたまま、すなわち上下方向に関する曲げ強度を高めたまま、空間22内を後方へ向けてほぼ直進させることができる。
この結果リジェクト庫217は、第1及び第2の実施の形態と同様、当該紙幣BLの先端を筐体21と集積済紙幣CBLとの間に潜り込ませる恐れを格段に低減することができると共に、集積済紙幣CBLの各紙幣BLに対し位置ずれや傾きを殆ど生じさせることなく、位置を揃えるように新たな紙幣BLを重ねることができるので、最終的に各紙幣BLを整然と集積することができる。
またリジェクト庫217は、その他の点についても第2の実施の形態と同様の作用効果を奏し得る。
以上の構成によれば、現金自動預払機201のリジェクト庫217は、放出部224のプレッシャローラ28及び放出ローラ125の間に紙幣BLを挟み込み、羽根車126により端部領域RD及びRE並びに中央領域RCを上方へ持ち上げ、さらに突出レバー241により中央領域RCの中央部分を下方へ押し下げた状態で後方へ進行させ、空間22内へ放出する。このときリジェクト庫217は、上部ガイド23を主に紙幣BLの中央領域RC並びに挟持領域RA及びRBと対向する範囲に設けたことにより、紙幣BLの上方へ持ち上げられた端部領域RD及びREを当該上部ガイド23に当接させることなく、紙幣BLの上下方向への曲げ強度を高めたまま空間22内を後方へ向けてほぼ直進させることができる。この結果リジェクト庫217は、集積済紙幣CBLと位置を揃えるように新たな紙幣BLを重ねて、整然と集積することができる。
[4.他の実施の形態]
なお上述した実施の形態においては、上部ガイド23を直方体状に形成すると共に主に紙幣BLの中央領域RC並びに挟持領域RA及びRBと対向する範囲内に止め、紙幣BLの端部領域RD及びREと対応する部分を省略するようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば図11に上部ガイド323として示すように、端部領域RD及びREと対応する部分に斜面を有するような形状としても良い。この場合、要は空間22内に放出された紙幣BLが後方向へ向けて直進する時に、持ち上げられた端部領域RD及びREを下方向へ押し戻してしまうこと、すなわち当該紙幣BLの上下方向に関する曲げ強度の低下を回避できれば良い。
また上述した実施の形態においては、主に紙幣BLの中央領域RC並びに挟持領域RA及びRBと対向する全範囲を占めるように上部ガイド23を設けた場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば図12に上部ガイド333として示すように、3個の部材333A、333B及び333Cを左右方向に間隔を空けて設けることにより、紙幣BLの中央領域RC並びに挟持領域RA及びRBと対向する範囲の一部を占めるような上部ガイドを設けるようにしても良い。これにより上部ガイド333は、紙幣BLが上方へ進行しようとしてその先端が下面に当接した際に、摩擦による抵抗を小さく抑えることができるので、紙幣BLの後方への進行速度を大きく低減させることなく、ビルストッパ30へ到達させることができる。
この場合、要は空間22内へ放出された紙幣BLが上方へ進行しようとした時に、上部ガイドの下面が紙幣BLの中央領域RC並びに挟持領域RA及びRBの一部と当接することにより上方への進行を抑制でき、また当該紙幣BLを引っかけることなく、後方へ進行するよう案内できれば良い。
さらに上述した第3の実施の形態においては、上部ガイド23の下面を平面状に形成するようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば図13に示すように、紙幣BLが部分的に持ち上げられて形成された形状に合わせて起伏を設けるようにしても良い。これにより、放出後の紙幣BLが自然形状、すなわち平板状に戻ることを抑制して、上下方向への曲げ強度を高めた状態を維持させることができる。
さらに上述した実施の形態においては、前後方向に関し上部ガイド23の断面形状を一様とするようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば図11と対応する図14に上部ガイド343として示すように、前後方向に関し断面形状を徐々に変化させるようにしても良い。特に上部ガイド343の場合、後方へ進むに連れて、左右の斜面の傾斜が小さくなり中央部分と同様の水平面に近づいていく。このため上部ガイド343は、空間22内へ紙幣BLが放出された時には上方へ持ち上げられていた端部領域RD及びREを、紙幣BLが後方へ進行するに連れて徐々に下方へ押し下げていき、ビルストッパ30との衝突時点ではほぼ平面状に戻すことができるので、最終的に当該紙幣BLを集積済紙幣CBLと揃えるように位置を合わせて集積させることができる。
さらに上述した第1の実施の形態においては、放出ローラ25の一部分として回転する円錐台部32により紙幣BLの端部領域RD及びREを上方へ持ち上げるようにした場合について述べた(図5)。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば放出ローラ25を円柱部31のみにより構成すると共に、円錐台部32を独立して設け、或いは当該円錐台部32の位置に回転しない突起や斜面等を設け、当該突起や斜面等により紙幣BLの端部領域RD及びREを上方へ持ち上げるようにしても良い。この場合、突起や斜面等の表面を平滑化することにより紙幣BLを円滑に進行させることが望ましい。
さらに上述した第3の実施の形態においては、中央領域RCが僅かに上方へ持ち上げられた状態で、その中央部分を突出レバー241により下方へ押し下げるようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば第1の実施の形態のように中央領域RCを持ち上げることなく挟持領域RA及びRBと同等の高さとする場合に、当該中央領域RCの中央部分を突出レバー241により下方へ押し下げるようにしても良い。
さらに上述した第3の実施の形態においては、回動部241Aを中心に突出レバー241を回動させるようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば突出レバー241を上下方向へ揺動可能に構成すると共に所定のスプリング等により下方向へ付勢するようにしても良く、或いは突出レバー241を固定するようにしても良い。要は、突出レバー241により適切な力を紙幣BLに加えることができれば良い。
さらに上述した第3の実施の形態においては、突出レバー241を1個のみ設けるようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば第2の実施の形態における羽根車126B及び126Cの間と、羽根車126C及び126Dの間とに対応する箇所にそれぞれ突出レバー241を設けるなど、当該突出レバー241を2個以上設けるようにしても良い。
さらに上述した第1の実施の形態においては、放出ローラ25及びプレッシャローラ28をそれぞれ2個ずつ設け、羽根車26を5個又設けるようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば、紙幣BLの長手方向の長さ等に応じて、放出ローラ25及びプレッシャローラ28をそれぞれ4個ずつ設け、羽根車26を7個設ける等、それぞれ任意数を設けるようにしても良い。要は、紙幣BLを安定的に進行させると共に空間22内へ放出できれば良い。この場合、紙幣BLのうち、最も外方に位置する放出ローラ25及びプレッシャローラ28よりも外方の部分を上方向に持ち上げれば良い。第2及び第3の実施の形態についても同様であり、この場合放出ローラ25及びプレッシャローラ28に挟まれた部分を上方に小さく持ち上げれば良い。
また放出ローラ25(又は125)及びプレッシャローラ28並びに羽根車26(又は126)の左右方向に関する位置についても、紙幣BLの長手方向の長さ等に応じて適宜定めることができる。例えば第2の実施の形態において、紙幣BLにおける長手方向の(すなわち左右方向の)長さが長い場合、図8と対応する図15に示すリジェクト庫417のように構成することが考えられる。
このリジェクト庫417は、リジェクト庫117(図8)と比較して、放出ローラ125A及び125Bと羽根車126A及び126Eとの間隔を広げ、また上部ガイド23の上下方向の長さを長く、すなわち放出ローラ125とプレッシャローラ28との当接面から天板21Aまでの距離が長くなっている。
このリジェクト庫417は、第2の実施の形態におけるリジェクト庫117と同様、紙幣BLの上下方向に関する曲げ強度を高めて空間22内を直進させることができる。
また、第1の実施の形態において紙幣BLにおける長手方向の長さが短い場合、図5と対応する図16に示すリジェクト庫517のように構成することが考えられる。
リジェクト庫517は、放出ローラ25A及び25Bと羽根車26A及び26Eとの間隔を狭め、また上部ガイド23の上下方向の長さを短く、すなわち放出ローラ25とプレッシャローラ28との当接面から天板21Aまでの距離を短くなっている。さらにリジェクト庫517では、羽根車26B〜26Dに代わる羽根車126B〜126Dにより、第2の実施の形態と同様に紙幣BLの中央領域RCを僅かに上方へ持ち上げている。
このリジェクト庫517は、第1の実施の形態におけるリジェクト庫17と同様、紙幣BLの上下方向に関する曲げ強度を高めて空間22内を直進させることができる。
さらに、リジェクト庫17が対応すべき紙幣BLが複数種類でありそれぞれの長手方向の長さが異なる場合には、羽根車126A及び126E最も長い紙幣BLの左右両端が天板21Aや上部ガイド23に当接せず、且つ最も短い紙幣BLについて端部領域RD及びREを確実に持ち上げることができれば良い。
さらに上述した第1の実施の形態においては、シャフト27と一体に回転する放出ローラ25により紙幣BLを空間22内へ放出させるようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば放出ローラ25を省略し、隣接する搬送部11(図2)を構成する搬送ベルトの終端部分から紙幣BLを空間22内へ放出させるようにしても良く、或いは所定のブロワ等から放出する気流により紙幣BLを空間22内へ放出させる等、種々の手法を用いて紙幣BLを空間22内へ放出するようにしても良い。これらの場合、上述したように円錐台部32に代わる突起や斜面等を設けることにより、紙幣BLの端部領域RD及びREを上方へ持ち上げるようにすることができる。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、放出部24において、紙幣BLの走行経路の下側にシャフト27と共に回転駆動される放出ローラ25を設け、上側にプレッシャローラ28を設けるようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、紙幣BLの走行経路の上側に回転駆動される放出ローラ25を設け、下側にプレッシャローラ28を設けるようにしても良く、或いは上下双方に回転駆動される放出ローラ25を設けるようにしても良い。この場合、下側に配置されるローラにおける左右の外方を円錐台部32のように大径化すれば良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、放出ローラ25と羽根車26とを同一のシャフト27に貫通させ、これらを一体に回転させるようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、放出ローラ25と羽根車26とを互いに異なるシャフトに貫通させ、互いに独立して回転させるようにしても良い。さらには放出ローラ25A及び25Bを互いに独立に回転させ、或いは羽根車26A〜26Eをそれぞれ独立に回転させるようにしても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
さらに上述した実施の形態においては、リジェクト紙幣を収納するリジェクト庫17、117又は127に本発明を適用するようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば紙幣収納庫16や、顧客が取り忘れた紙幣を収納する取忘れ紙幣収納庫等、所定の空間内に紙幣を放出して集積する種々の箇所に適用するようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、リジェクト庫17、117又は127において紙幣BLを外部へ排出する機構を設けないようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば本発明を紙幣収納庫16に適用する場合に、集積済紙幣CBLのうち最上層の紙幣BLを順次分離して排出する排出機構を設けるようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、紙幣BLを短手方向に沿って搬送すると共に空間22内へ放出するようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、当該紙幣BLを長手方向に沿って搬送ると共に空間22内へ放出するようにしても良い。この場合、紙幣BLの短手方向の幅に合わせて、放出ローラ25及びプレッシャローラ28並びに羽根車26等を配置すると共にその数を定めれば良い。
さらに上述した実施の形態においては、現金を取引する現金自動預払機1のリジェクト庫17、117又は217において、媒体としての紙幣BLを集積するようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば商品券や金券、入場券等のような薄く撓ませることができるような、すなわち端部領域RD及びREを持ち上げることができるような紙葉状の媒体を集積する種々の装置に適用するようにしても良い。この場合、媒体の大きさや形状に応じて上部ガイド23の左右方向及び上下方向の長さを適宜定めれば良い。
さらに上述した実施の形態においては、筐体としての筐体21と、放出部としての放出部24、124又は224と、持ち上げ部としての円錐台部32又は羽根車126と、上部ガイドとしての上部ガイド23とによって媒体集積装置としてのリジェクト庫17、117又は217を構成する場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる筐体と、放出部と、持ち上げ部と、上部ガイドとによって媒体集積装置を構成するようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、受付部としての接客部3と、搬送部としての搬送部11と、筐体としての筐体21と、放出部としての放出部24、124又は224と、持ち上げ部としての円錐台部32又は羽根車126と、上部ガイドとしての上部ガイド23とによって媒体集積装置としてのリジェクト庫17、117又は217を構成する場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる受付部と、搬送部と、筐体と、放出部と、持ち上げ部と、上部ガイドとによって媒体集積装置を構成するようにしても良い。