以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る印刷装置の概略構成図である。図2は、図1に示す印刷装置の制御ブロック図である。以下の説明において、図1の紙面に直交する方向を前後方向とし、紙面表方向を前方とする。また、図1における紙面の上下左右を上下左右方向とする。
図1において太線で示す経路が、印刷媒体である用紙が搬送される搬送経路である。搬送経路のうち、実線で示す経路が印刷経路RP、一点鎖線で示す経路が循環経路RC、破線で示す経路が排紙経路RD、二点鎖線で示す経路が外部給紙経路RS1および内部給紙経路RS2である。以下の説明における上流、下流は、搬送経路における上流、下流を意味する。
図1、図2に示すように、第1実施形態に係る印刷装置1は、給紙部2と、ベルトプラテン搬送部3と、印刷部4と、循環搬送部5と、排紙部6と、操作パネル7と、制御部8と、各部を収納または保持する筐体9とを備える。
給紙部2は、未印刷の用紙Pをベルトプラテン搬送部3に給紙する。また、給紙部2は、両面印刷時に片面印刷後の用紙Pをベルトプラテン搬送部3に再給紙する。給紙部2は、搬送経路の最も上流側に配置されている。給紙部2は、外部給紙台11と、外部給紙ローラ12と、内部給紙台13A,13Bと、内部給紙ローラ14A,14Bと、内部給紙モータ15A,15Bと、内部給紙搬送ローラ16A〜16Cと、内部給紙搬送モータ17と、縦搬送ローラ18と、縦搬送モータ19と、レジストローラ20と、レジストモータ21と、用紙センサ22〜24とを備える。
外部給紙台11は、印刷に用いられる用紙Pが積載されるものである。外部給紙台11は、一部が筐体9の外部に露出して設置されている。
外部給紙ローラ12は、外部給紙台11に積層された用紙Pを1枚ずつ取り出すとともに、外部給紙経路RS1に沿ってレジストローラ20へ向けて用紙Pを搬送する。
内部給紙台13A,13Bは、印刷に用いられる用紙Pが積載されるものである。内部給紙台13A,13Bは、筐体9の内部に配置されている。
内部給紙ローラ14A,14Bは、それぞれ内部給紙台13A,13Bに積層された用紙Pを1枚ずつ取り出す。
内部給紙モータ15A,15Bは、それぞれ内部給紙ローラ14A,14Bを回転駆動させる。
内部給紙搬送ローラ16A,16Bは、それぞれ内部給紙ローラ14A,14Bにより内部給紙台13A,13Bから取り出された用紙Pを内部給紙搬送ローラ16Cへ搬送する。内部給紙搬送ローラ16Cは、内部給紙搬送ローラ16Aまたは内部給紙搬送ローラ16Bにより搬送されてきた用紙Pを縦搬送ローラ18へ搬送する。内部給紙搬送ローラ16Cは、内部給紙経路RS2の内部給紙ローラ14Aを起点とする部分と内部給紙ローラ14Bを起点とする部分との合流地点の下流側に配置されている。
内部給紙搬送モータ17は、内部給紙搬送ローラ16A〜16Cを回転駆動させる。
縦搬送ローラ18は、内部給紙経路RS2に沿って内部給紙搬送ローラ16Cから搬送されてくる用紙Pをレジストローラ20へ搬送する。また、縦搬送ローラ18は、両面印刷時に循環経路RCに沿って循環搬送された片面印刷後の用紙Pをレジストローラ20へ搬送する。縦搬送ローラ18は、循環経路RCの内部給紙経路RS2への合流地点の下流側において、内部給紙経路RS2に沿って配置されている。
縦搬送モータ19は、縦搬送ローラ18を回転駆動させる。また、縦搬送モータ19は、外部給紙ローラ12を回転駆動させる。縦搬送モータ19は、縦搬送ローラ18および外部給紙ローラ12にそれぞれ図示しないワンウェイクラッチを介して接続されている。これにより、縦搬送モータ19の一方向の回転駆動により縦搬送ローラ18が回転駆動され、縦搬送モータ19の他方向の回転駆動により外部給紙ローラ12が回転駆動されるようになっている。
レジストローラ20は、外部給紙ローラ12または縦搬送ローラ18により搬送されてきた用紙Pを一旦止めて斜行補正した後、後述のベルトプラテン26へ搬送する。レジストローラ20は、外部給紙経路RS1と内部給紙経路RS2との合流地点の下流側近傍の印刷経路RP上に配置されている。
レジストモータ21は、レジストローラ20を回転駆動させる。
用紙センサ22は、内部給紙台13A,13Bから取り出されて縦搬送ローラ18へ搬送される用紙Pを検出する。用紙センサ22は、内部給紙搬送ローラ16Cの下流側近傍に配置されている。
用紙センサ23は、縦搬送ローラ18からレジストローラ20へ搬送される用紙Pを検出する。用紙センサ23は、縦搬送ローラ18の下流側近傍に配置されている。
用紙センサ24は、外部給紙ローラ12または縦搬送ローラ18により搬送されてレジストローラ20に進入する用紙Pを検出する。用紙センサ24は、レジストローラ20の上流側近傍に配置されている。
ベルトプラテン搬送部3は、給紙部2から搬送されてきた用紙Pを循環搬送部5または排紙部6へ搬送する。ベルトプラテン搬送部3は、給紙部2の下流側に配置されている。ベルトプラテン搬送部3は、ベルトプラテン(請求項の印刷搬送部に相当)26と、ベルトプラテンモータ27と、用紙センサ28とを備える。
ベルトプラテン26は、レジストローラ20により搬送されてきた用紙Pをベルト上に吸着保持して搬送する。ベルトプラテン26による用紙Pの搬送中に後述のインクジェットヘッド36からインクが吐出されることで、用紙Pに画像が印刷される。換言すれば、ベルトプラテン26は、印刷中の用紙Pを搬送する。ベルトプラテン26は、レジストローラ20の下流側に配置されている。
ベルトプラテン26は、後述の昇降駆動部32により、印刷位置、下限位置、および中間位置の間で上下動可能になっている。印刷位置は、印刷部4による印刷中のベルトプラテン26の位置である。印刷位置は、図1に示すベルトプラテン26の位置であり、インクジェットヘッド36の下側近傍にある。下限位置は、ベルトプラテン26を最大限に下降させた位置である。下限位置は、印刷位置より下方であって、後述する下部搬送ローラ51の上側近傍にある。中間位置は、印刷位置と下限位置との中間にある。
ベルトプラテンモータ27は、ベルトプラテン26のベルトを駆動させる。
用紙センサ28は、レジストローラ20からベルトプラテン26へ搬送される用紙Pを検出する。用紙センサ28は、レジストローラ20とベルトプラテン26の上流端との間に配置されている。
印刷部4は、用紙Pに印刷を行う。印刷部4は、ベルトプラテン26の上方に配置されている。印刷部4は、ヘッドユニット31と、昇降駆動部32とを備える。
ヘッドユニット31は、ベルトプラテン26により搬送される用紙Pにインクを吐出して画像を印刷する。ヘッドユニット31は、複数のインクジェットヘッド36と、ヘッドホルダ37とを備える。
インクジェットヘッド36は、前後方向(主走査方向)に沿って配置された複数のノズルを有し、ノズルからインクを吐出する。複数のインクジェットヘッド36は、用紙Pの搬送方向(左右方向)に沿って並列配置されている。
ヘッドホルダ37は、インクジェットヘッド36を保持する。ヘッドホルダ37は、筐体9内の所定位置に固定されている。
昇降駆動部32は、ベルトプラテン26を印刷位置、下限位置、および中間位置の間で昇降させる。昇降駆動部32は、ヘッドホルダ37内に配置されている。昇降駆動部32は、ワイヤ、プーリ、モータ等を有し、ワイヤによりベルトプラテン26を吊り下げ支持している。昇降駆動部32は、モータによりプーリを回転させてワイヤの巻き取りおよび繰り出しを行うことで、ベルトプラテン26を昇降させる。
循環搬送部5は、両面印刷時に片面印刷後の用紙Pを、ベルトプラテン26の下流端から縦搬送ローラ18へ循環経路RCに沿って搬送する。循環搬送部5から縦搬送ローラ18へ搬送された片面印刷後の用紙Pは、縦搬送ローラ18およびレジストローラ20によりベルトプラテン26へ搬送される。すなわち、両面印刷時において、循環搬送部5、縦搬送ローラ18、およびレジストローラ20が、片面印刷後の用紙Pをベルトプラテン26の下流端から上流端へ搬送する。循環搬送部5、縦搬送ローラ18、およびレジストローラ20により、請求項の両面搬送部が構成される。
循環搬送部5は、中間搬送部41と、反転部42と、下部搬送部43と、上昇搬送部44とを備える。
中間搬送部41は、両面印刷時に片面印刷後の用紙Pをベルトプラテン26から反転部42へ搬送する。中間搬送部41は、2対の中間搬送ローラ46と、中間搬送モータ47と、用紙センサ48とを備える。
中間搬送ローラ46は、ベルトプラテン26から送り出された片面印刷後の用紙Pを受け取り、後述の反転ローラ49へ搬送する。2対の中間搬送ローラ46は、ベルトプラテン26と反転ローラ49との間の循環経路RCに沿って配置されている。
中間搬送モータ47は、2対の中間搬送ローラ46を回転駆動させる。また、中間搬送モータ47は、後述する2対の排紙ローラ63を回転駆動させる。
用紙センサ48は、中間搬送ローラ46により反転ローラ49へ搬送される用紙Pを検出する。用紙センサ48は、上流側の中間搬送ローラ46の下流側近傍に配置されている。
反転部42は、片面印刷後の用紙Pを表裏反転する。反転部42は、反転ローラ49と、反転モータ50とを備える。
反転ローラ49は、中間搬送ローラ46により搬送されてきた用紙Pをスイッチバックすることで表裏反転する。反転ローラ49は、循環経路RCに沿って、中間搬送ローラ46の下流側に配置されている。
反転モータ50は、反転ローラ49を回転駆動させる。
下部搬送部43は、反転部42から上昇搬送部44へ用紙Pを搬送する。下部搬送部43は、ベルトプラテン26の下方に配置されている。下部搬送部43は、3対の下部搬送ローラ51と、下部搬送モータ52と、用紙センサ53,54と、下部ジャム解除機構55とを備える。
下部搬送ローラ51は、反転ローラ49によりスイッチバックされた用紙Pを上昇搬送ローラ56へ搬送する。3対の下部搬送ローラ51は、ベルトプラテン26の下方の、循環経路RCの水平部分に沿って配置されている。
下部搬送モータ52は、上流側の2対の下部搬送ローラ51を回転駆動させる。なお、最下流の下部搬送ローラ51は、後述の上昇搬送モータ57により回転駆動される。
用紙センサ53,54は、反転ローラ49によるスイッチバック後、循環経路RCに沿って縦搬送ローラ18へ搬送される用紙Pを検出する。用紙センサ53は、最上流の下部搬送ローラ51の下流側近傍に配置されている。用紙センサ54は、最下流の下部搬送ローラ51の下流側近傍に配置されている。
下部ジャム解除機構55は、3対の下部搬送ローラ51における各対の上側の下部搬送ローラ51、および循環経路RCの上側のガイド板(図示せず)を前方に引き出す機構である。ユーザが手動により下部ジャム解除機構55を操作し、上側の下部搬送ローラ51およびガイド板を手前に引き出すことで、ジャム発生時の下部搬送部43における残留用紙を取り除くことができる。
なお、印刷装置1には、下部ジャム解除機構55以外にも、ジャム発生時の残留用紙をユーザが取り除けるようにするための機構(図示せず)が適宜の位置に設けられている。
上昇搬送部44は、下部搬送部43から縦搬送ローラ18へ用紙Pを搬送する。上昇搬送部44は、上昇搬送ローラ56と、上昇搬送モータ57とを備える。
上昇搬送ローラ56は、下部搬送ローラ51から搬送されてきた用紙Pを縦搬送ローラ18へ搬送する。上昇搬送ローラ56は、循環経路RCの下部搬送ローラ51が配置された水平部分の下流端と内部給紙経路RS2への合流地点との間の上昇部分に配置されている。
上昇搬送モータ57は、上昇搬送ローラ56および最下流の下部搬送ローラ51を回転駆動させる。
排紙部6は、印刷済みの用紙Pを排紙する。排紙部6は、切替部61と、ソレノイド62と、3対の排紙ローラ63と、排紙モータ64と、用紙センサ65,66と、排紙台67とを備える。
切替部61は、用紙Pの搬送経路を排紙経路RDと循環経路RCとの間で切り替える。切替部61は、排紙経路RDと循環経路RCとの分岐地点に配置されている。
ソレノイド62は、切替部61を駆動させる。
排紙ローラ63は、ベルトプラテン26から搬送されてくる用紙Pを受け取って排紙台67へ排紙する。排紙ローラ63は、排紙経路RDに沿って配置されている。
排紙モータ64は、最下流の排紙ローラ63を回転駆動させる。なお、上流側の2対の排紙ローラ63は、中間搬送モータ47により回転駆動される。
用紙センサ65,66は、排紙経路RDに沿って搬送される用紙Pを検出する。用紙センサ65は、切替部61と最上流の排紙ローラ63との間に配置されている。用紙センサ66は、最下流の排紙ローラ63の上流側近傍に配置されている。
排紙台67は、排紙ローラ63により排紙された用紙Pが積載されるものである。排紙台67は、排紙経路RDの下流端に配置されている。
操作パネル7は、各種の入力画面等を表示するとともに、ユーザによる入力操作を受け付ける。操作パネル7は、表示部71と、入力部72とを備える。
表示部71は、各種の入力画面等を表示する。表示部71は、液晶表示パネル等を有する。
入力部72は、ユーザによる入力操作を受け付け、操作に応じた操作信号を出力する。入力部72は、各種の操作キー、タッチパネル等を有する。
制御部8は、印刷装置1の各部の動作を制御する。制御部8は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えて構成される。
具体的には、制御部8は、給紙部2により用紙Pをベルトプラテン26に給紙し、ベルトプラテン26により用紙Pを搬送しつつ、インクジェットヘッド36からインクを吐出して用紙Pに印刷するよう制御する。両面印刷の場合、制御部8は、片面印刷後の用紙Pを循環搬送部5により表裏反転して給紙部2の縦搬送ローラ18へ搬送し、縦搬送ローラ18およびレジストローラ20によりベルトプラテン26に再給紙して未印刷面に印刷するよう制御する。制御部8は、印刷済みの用紙Pを排紙部6により排紙するよう制御する。
制御部8は、印刷動作時において、用紙ジャムが発生した場合、用紙ジャムの発生後の残留用紙の位置に応じて、ジャム解除時のベルトプラテン26の位置を決定する。そして、制御部8は、決定した位置にベルトプラテン26を配置するよう昇降駆動部32を制御する。
次に、印刷装置1の動作について説明する。
印刷ジョブが入力されると、制御部8は、印刷動作を実行する。制御部8は、印刷ジョブに含まれる片面/両面印刷設定情報を取得し、その内容に応じて、片面印刷または両面印刷を実行する。
片面印刷設定の場合、制御部8は、外部給紙台11および内部給紙台13A,13Bのいずれかから未印刷の用紙Pを取り出し、ベルトプラテン26へ順次給紙するよう給紙部2を制御する。制御部8は、ベルトプラテン26において所定の紙間で各用紙Pが搬送されるようなタイミングで順次給紙するよう給紙部2を制御する。これにより、複数枚の用紙Pが搬送経路上で同時に搬送される。
給紙された用紙Pは、ベルトプラテン26において所定の印刷搬送速度で搬送されつつ、インクジェットヘッド36から吐出されるインクにより印刷される。ここで、ベルトプラテン26は印刷位置に配置されている。印刷された用紙Pは、切替部61により排紙経路RDへ導かれ、排紙ローラ63により搬送されて、排紙台67へ排紙される。
両面印刷設定の場合、制御部8は、片面印刷時の給紙タイミングに対して、各用紙Pの給紙タイミング間の時間が2倍となるタイミングで未印刷の用紙Pを順次給紙するよう給紙部2を制御する。
給紙された用紙Pは、片面印刷時と同様に、印刷位置に配置されたベルトプラテン26により搬送されつつ印刷される。片面印刷後の用紙Pは、切替部61により循環経路RCに導かれ、中間搬送ローラ46により反転ローラ49へ搬送される。反転ローラ49に到達すると、用紙Pは、反転ローラ49によりスイッチバックされる。次いで、片面印刷後の用紙Pは、下部搬送ローラ51および上昇搬送ローラ56により縦搬送ローラ18へ搬送される。そして、片面印刷後の用紙Pは、縦搬送ローラ18およびレジストローラ20によりベルトプラテン26に再給紙される。
ここで、片面印刷後の用紙Pは、順次給紙される未印刷の用紙Pと交互にベルトプラテン26に送られるようなタイミングで再給紙される。上述のように、両面印刷では、片面印刷の場合の給紙タイミングに対して、各用紙Pの給紙タイミング間の時間が2倍である。このため、未印刷の用紙Pの間に片面印刷後の用紙Pを挿入し、未印刷の用紙Pの給紙と交互に片面印刷後の用紙Pを再給紙することが可能になっている。
片面印刷後の用紙Pは、反転ローラ49によりスイッチバックされたため、未印刷面を上向きにしてベルトプラテン26へ送られる。片面印刷後の用紙Pは、ベルトプラテン26により搬送されつつ未印刷面に印刷される。そして、両面印刷済みの用紙Pは、切替部61により排紙経路RDへ導かれ、排紙ローラ63により搬送されて、排紙台67へ排紙される。
上述のように、両面印刷では、未印刷の用紙Pの給紙と交互に片面印刷後の用紙Pの再給紙が行われることで、ベルトプラテン26上で、未印刷の用紙Pの一方の面への印刷と、片面印刷後の用紙Pの未印刷面への印刷とが交互に行われる。これにより、片面印刷時と同等の片面あたりの生産性で両面印刷が行われる。
上述のような片面印刷または両面印刷の実行中、制御部8は、用紙ジャムが発生したか否かを判断する。具体的には、制御部8は、用紙センサ22〜24,28,48,53,54,65,66の少なくともいずれかにおける用紙Pの検出タイミングが理論値より閾値以上遅れた場合、用紙ジャムが発生したと判断する。
用紙ジャムが発生したと判断すると、制御部8は、給紙部2、ベルトプラテン搬送部3、循環搬送部5、および排紙部6による用紙搬送を停止する。
次いで、制御部8は、ベルトプラテン配置処理を行う。ベルトプラテン配置処理は、ジャム解除時のベルトプラテン26の位置を決定し、決定した位置にベルトプラテン26を配置する処理である。
ベルトプラテン配置処理について説明する。図3は、第1実施形態におけるベルトプラテン配置処理のフローチャートである。図3のフローチャートの処理は、ジャム発生により用紙搬送が停止されたことにより開始となる。
図3のステップS1において、制御部8は、ベルトプラテン26および下部搬送部43の両方に残留用紙があるか否かを判断する。
ここで、残留用紙は、用紙ジャム発生により用紙搬送が停止されたときに搬送経路に残留している用紙Pである。制御部8は、用紙センサ22〜24,28,48,53,54,65,66における用紙検出タイミングと、中間搬送モータ47等の各部のモータに設置されたエンコーダの出力パルス数により、用紙搬送停止時の搬送経路上における残留用紙の位置を把握している。制御部8は、ベルトプラテン26上に少なくとも一部が載っている残留用紙がある場合、ベルトプラテン26に残留用紙があると判断する。また、制御部8は、少なくともいずれか1対の下部搬送ローラ51にニップされている残留用紙がある場合、下部搬送部43に残留用紙があると判断する。
ベルトプラテン26および下部搬送部43の両方に残留用紙があると判断した場合(ステップS1:YES)、ステップS2において、制御部8は、図4に示すように、昇降駆動部32によりベルトプラテン26を印刷位置から中間位置へ移動させる。ベルトプラテン26を中間位置に配置することで、ユーザが下部ジャム解除機構55を操作して下部搬送部43から残留用紙を取り除くための作業スペースと、ベルトプラテン26から残留用紙を取り除くための作業スペースとが確保される。これにより、ベルトプラテン配置処理が終了となる。
ベルトプラテン26および下部搬送部43の少なくともいずれか一方に残留用紙がないと判断した場合(ステップS1:NO)、ステップS3において、制御部8は、下部搬送部43に残留用紙があるか否かを判断する。
下部搬送部43に残留用紙があると判断した場合(ステップS3:YES)、ステップS4において、制御部8は、ベルトプラテン26を、図1に示すベルトプラテン26の位置である印刷位置に維持させる。これにより、ベルトプラテン配置処理が終了となる。
ステップS3で「YES」と判断されるのは、下部搬送部43に残留用紙があり、ベルトプラテン26には残留用紙がない場合である。そこで、この場合、制御部8は、ベルトプラテン26を印刷位置に維持することで、ユーザが下部搬送部43から残留用紙を取り除くための作業スペースを十分に確保する。
下部搬送部43に残留用紙はないと判断した場合(ステップS3:NO)、ステップS5において、制御部8は、図5に示すように、昇降駆動部32によりベルトプラテン26を印刷位置から下限位置へ移動させる。これにより、ベルトプラテン配置処理が終了となる。
下部搬送部43に残留用紙がない場合は、下部搬送部43から残留用紙を取り除く作業は不要である。そこで、制御部8は、ベルトプラテン26を下限位置に配置し、ベルトプラテン26から残留用紙を取り除く場合の作業スペースを十分に確保する。
ベルトプラテン配置処理が終了すると、制御部8は、用紙ジャムの発生を通知するとともにジャム解除の作業をユーザに促すジャム通知画面を表示部71に表示させる。ジャム通知画面には、残留用紙を取り除く手順が表示される。ユーザは、ジャム通知画面を確認して、印刷装置1から残留用紙を取り除くことで、用紙ジャムを解除できる。
以上説明したように、印刷装置1では、制御部8は、用紙ジャムの発生後の残留用紙の位置に応じて、ジャム解除時のベルトプラテン26の位置を決定する。具体的には、下部搬送部43に残留用紙がない場合、制御部8は、ジャム解除時のベルトプラテン26の位置を下限位置に決定する。下部搬送部43に残留用紙があり、ベルトプラテン26には残留用紙がない場合、制御部8は、ジャム解除時のベルトプラテン26の位置を印刷位置に決定する。ベルトプラテン26および下部搬送部43の両方に残留用紙がある場合、制御部8は、ジャム解除時のベルトプラテン26の位置を中間位置に決定する。そして、制御部8は、決定した位置にベルトプラテン26を配置するよう昇降駆動部32を制御する。
これにより、ベルトプラテン26および下部搬送部43における残留用紙を取り除くための作業スペースを確保できるようにベルトプラテン26を配置することができる。この結果、ジャム解除時の利便性を向上できる。
なお、下部搬送部43およびベルトプラテン26の両方に残留用紙がある場合、まず、印刷位置および下限位置のうちの一方の位置にベルトプラテン26を配置し、下部搬送部43またはベルトプラテン26から残留用紙が取り除かれた後、他方の位置にベルトプラテン26を移動させるようにしてもよい。
(第2実施形態)
次に、上述した実施形態のベルトプラテン配置処理を変更した第2実施形態について説明する。図6は、第2実施形態におけるベルトプラテン配置処理のフローチャートである。図6のフローチャートの処理は、ジャム発生により用紙搬送が停止されたことにより開始となる。
図6のステップS11において、制御部8は、ジャム発生時に実行していた印刷が両面印刷であるか否かを判断する。
実行していた印刷が両面印刷であると判断した場合(ステップS11:YES)、ステップS12において、制御部8は、下部搬送部43に残留用紙があるか否かを判断する。
下部搬送部43に残留用紙があると判断した場合(ステップS12:YES)、ステップS13において、制御部8は、ベルトプラテン26に残留用紙があるか否かを判断する。
ベルトプラテン26に残留用紙があると判断した場合(ステップS13:YES)、ステップS14において、制御部8は、ベルトプラテン26を印刷位置から中間位置へ移動させる。これにより、ベルトプラテン配置処理が終了となる。
ステップS13で「YES」と判断されるのは、ベルトプラテン26および下部搬送部43の両方に残留用紙がある場合である。そこで、この場合、制御部8は、ベルトプラテン26を中間位置に配置することで、ユーザが下部搬送部43から残留用紙を取り除くための作業スペースと、ベルトプラテン26から残留用紙を取り除くための作業スペースとを確保する。
ステップS11において、実行していた印刷が片面印刷であると判断した場合(ステップS11:NO)、ステップS15において、制御部8は、ベルトプラテン26を印刷位置から下限位置へ移動させる。これにより、ベルトプラテン配置処理が終了となる。
片面印刷の場合は、下部搬送部43に残留用紙があることはない。そこで、片面印刷の場合、制御部8は、ベルトプラテン26を下限位置に配置することで、ベルトプラテン26から残留用紙を取り除く場合の作業スペースを十分に確保する。
ステップS12において、下部搬送部43に残留用紙はないと判断した場合(ステップS12:NO)、ステップS15において、制御部8は、ベルトプラテン26を印刷位置から下限位置へ移動させる。これにより、ベルトプラテン配置処理が終了となる。
両面印刷の場合でも、下部搬送部43に残留用紙がない場合は、下部搬送部43から残留用紙を取り除く作業は不要である。そこで、この場合、制御部8は、ベルトプラテン26を下限位置に配置し、ベルトプラテン26から残留用紙を取り除く場合の作業スペースを十分に確保する。
ステップS13において、ベルトプラテン26に残留用紙はないと判断した場合(ステップS13:NO)、制御部8は、ステップS16において、ベルトプラテン26を印刷位置に維持させる。これにより、ベルトプラテン配置処理が終了となる。
ステップS13で「NO」と判断されるのは、下部搬送部43に残留用紙があり、ベルトプラテン26には残留用紙がない場合である。そこで、この場合、制御部8は、ベルトプラテン26を印刷位置に維持することで、ユーザが下部搬送部43から残留用紙を取り除くための作業スペースを十分に確保する。
以上説明したように、印刷装置1では、制御部8は、用紙ジャムが発生した場合、実行していた印刷が片面印刷および両面印刷のどちらであるか、および残留用紙の位置に応じて、ジャム解除時のベルトプラテン26の位置を決定する。そして、制御部8は、決定した位置にベルトプラテン26を配置するよう昇降駆動部32を制御する。これにより、ベルトプラテン26および下部搬送部43における残留用紙を取り除くための作業スペースを確保できるようにベルトプラテン26を配置することができる。この結果、ジャム解除時の利便性を向上できる。
具体的には、制御部8は、片面印刷の場合、ジャム解除時のベルトプラテン26の位置を下限位置に決定し、両面印刷の場合、下部搬送部43およびベルトプラテン26における残留用紙の有無に応じて、ジャム解除時のベルトプラテン26の位置を決定する。これにより、ジャム発生時の状況に応じてジャム解除時の適切なベルトプラテン26の位置を決定できる。
なお、残留用紙の位置にかかわらず、実行していた印刷が片面印刷および両面印刷のどちらであるかに応じて、ジャム解除時のベルトプラテン26の位置を決定するようにしてもよい。具体的には、制御部8は、用紙ジャムの発生時において、実行していた印刷が片面印刷の場合、ジャム解除時のベルトプラテン26の位置を下限位置に決定し、両面印刷の場合、ジャム解除時のベルトプラテン26の位置を中間位置に決定するようにしてもよい。このようにしても、ベルトプラテン26および下部搬送部43における残留用紙を取り除くための作業スペースを確保できるようにベルトプラテン26を配置することができ、ジャム解除時の利便性を向上できる。
(第3実施形態)
次に、上述した実施形態のベルトプラテン配置処理を変更した第3実施形態について説明する。図7は、第3実施形態におけるベルトプラテン配置処理のフローチャートである。
図7のステップS21〜S23の処理は、前述した図6のステップS11〜S13の処理と同様である。
ステップS23において、ベルトプラテン26に残留用紙があると判断した場合(ステップS23:YES)、ステップS24において、制御部8は、ジャムの発生位置および残留用紙の位置に基づき、ベルトプラテン26の残留用紙を排紙可能であるか否かを判断する。
具体的には、制御部8は、用紙センサ65,66以外の用紙センサがジャム検出センサであり、循環経路RCと印刷経路RPとに跨る位置に残留用紙がない場合、ベルトプラテン26の残留用紙を排紙可能であると判断する。ここで、ジャム検出センサは、用紙Pの検出タイミングが理論値より閾値以上遅れた用紙センサである。
用紙センサ65または用紙センサ66がジャム検出センサである場合は、ベルトプラテン26の上流端から排紙台67までの搬送経路において用紙ジャムが発生しているため、ベルトプラテン26の残留用紙を排紙することはできない。両面印刷では、用紙センサ65,66以外の用紙センサがジャム検出センサである場合でも、循環経路RCと印刷経路RPとに跨る位置に残留用紙がある場合は、この残留用紙がベルトプラテン26から排紙部6への搬送の妨げになるため、ベルトプラテン26の残留用紙を排紙することはできない。これに対し、両面印刷において、ジャム検出センサが用紙センサ65,66以外の用紙センサであり、循環経路RCと印刷経路RPとに跨る位置に残留用紙がない場合は、ベルトプラテン26および排紙部6の残留用紙を排紙できる。
ベルトプラテン26の残留用紙を排紙可能であると判断した場合(ステップS24:YES)、ステップS25において、制御部8は、ベルトプラテン26の残留用紙を排紙するよう制御する。ここで、排紙部6に残留用紙がある場合は、排紙部6の残留用紙とともに、ベルトプラテン26の残留用紙が排紙される。
次いで、ステップS26において、制御部8は、ベルトプラテン26を印刷位置に維持させる。これにより、ベルトプラテン配置処理が終了となる。
両面印刷において、ステップS25でベルトプラテン26の残留用紙を排紙した場合、下部搬送部43に残留用紙があり、ベルトプラテン26には残留用紙がない状態となる。そこで、この場合、制御部8は、ベルトプラテン26を印刷位置に維持することで、ユーザが下部搬送部43から残留用紙を取り除くための作業スペースを十分に確保する。
ステップS22において、下部搬送部43に残留用紙はないと判断した場合(ステップS22:NO)、ステップS27において、制御部8は、ベルトプラテン26を印刷位置から下限位置へ移動させる。これにより、ベルトプラテン配置処理が終了となる。
ステップS23において、ベルトプラテン26に残留用紙はないと判断した場合(ステップS23:NO)、制御部8は、ステップS26に進み、ベルトプラテン26を印刷位置に維持させる。これにより、ベルトプラテン配置処理が終了となる。
ステップS24において、ベルトプラテン26の残留用紙は排紙不可能であると判断した場合(ステップS24:NO)、ステップS28において、制御部8は、ベルトプラテン26を印刷位置から中間位置へ移動させる。これにより、ベルトプラテン配置処理が終了となる。
ステップS24で「NO」と判断されるのは、ベルトプラテン26および下部搬送部43の両方に残留用紙があり、ベルトプラテン26の残留用紙の排紙が不可能な場合である。そこで、この場合、制御部8は、ベルトプラテン26を中間位置に配置することで、ユーザが下部搬送部43から残留用紙を取り除くための作業スペースと、ベルトプラテン26から残留用紙を取り除くための作業スペースとを確保する。
ステップS21において、実行していた印刷が片面印刷であると判断した場合(ステップS21:NO)、ステップS29において、制御部8は、ベルトプラテン26に残留用紙があるか否かを判断する。
ベルトプラテン26に残留用紙はないと判断した場合(ステップS29:NO)、制御部8は、ステップS26に進み、ベルトプラテン26を印刷位置に維持させる。これにより、ベルトプラテン配置処理が終了となる。
ベルトプラテン26に残留用紙があると判断した場合(ステップS29:YES)、ステップS30において、制御部8は、ジャムの発生位置に基づき、ベルトプラテン26の残留用紙を排紙可能であるか否かを判断する。具体的には、制御部8は、用紙センサ65,66以外の用紙センサがジャム検出センサである場合、ベルトプラテン26の残留用紙を排紙可能であると判断する。
片面印刷の場合、用紙センサ65,66以外でジャム検出センサになり得るのは、用紙センサ22〜24,28である。用紙センサ22〜24,28でジャムが検出された場合、ジャムの発生位置はベルトプラテン26より上流側である。このため、ベルトプラテン26の残留用紙は排紙可能である。
ベルトプラテン26の残留用紙を排紙可能であると判断した場合(ステップS30:YES)、制御部8は、ステップS25に進む。そして、制御部8は、ベルトプラテン26の残留用紙を排紙させ(ステップS25)、ベルトプラテン26を印刷位置に維持させる(ステップS26)。これにより、ベルトプラテン配置処理が終了となる。
ベルトプラテン26の残留用紙が排紙されると、ベルトプラテン26には残留用紙がない状態となる。この場合、ベルトプラテン26から残留用紙を取り除く作業は不要なため、制御部8は、ベルトプラテン26を印刷位置に維持する。
ベルトプラテン26の残留用紙は排紙不可能であると判断した場合(ステップS30:NO)、制御部8は、ステップS27に進み、ベルトプラテン26を印刷位置から下限位置へ移動させる。これにより、ベルトプラテン配置処理が終了となる。
ステップS30で「NO」と判断された場合、ユーザがベルトプラテン26の残留用紙を取り除く必要がある。そこで、この場合、制御部8は、ベルトプラテン26を下限位置に配置し、ベルトプラテン26から残留用紙を取り除くための作業スペースを十分に確保する。
以上説明したように、第3実施形態では、制御部8は、ベルトプラテン26に残留用紙がある場合、用紙ジャムの発生位置および残留用紙の位置に基づき、ベルトプラテン26の残留用紙を排紙可能であるか否かを判断する。制御部8は、ベルトプラテン26の残留用紙を排紙可能であると判断した場合は、ベルトプラテン26の残留用紙を排紙部6により排紙させるとともに、ジャム解除時のベルトプラテン26の位置を印刷位置に決定する。
これにより、残留用紙が減少するので、ジャム解除時に印刷装置1から残留用紙を取り除く作業を軽減できる。また、両面印刷の場合では、用紙ジャム発生による搬送停止時に下部搬送部43およびベルトプラテン26の両方に残留用紙があった場合でも、ベルトプラテン26の残留用紙の排紙により、ベルトプラテン26が印刷位置に配置された状態で、下部搬送部43の残留用紙を取り除く作業を行えるようになることがある。したがって、ベルトプラテン26が中間位置に配置された状態で残留用紙を取り除く作業を行うのと比較して作業が容易になることがあるため、利便性が向上する。
(その他の実施形態)
上述のように、本発明は第1〜第3実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
第1実施形態および第2実施形態においても、第3実施形態のように、ベルトプラテン26に残留用紙があり、ベルトプラテン26の残留用紙を排紙可能であると判断した場合、制御部8は、ベルトプラテン26の残留用紙を排紙部6により排紙させるとともに、ジャム解除時のベルトプラテン26の位置を印刷位置に決定するようにしてもよい。
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。