JP6399977B2 - 消臭性ガラス容器 - Google Patents
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Description
図1に示されるように、第1の実施形態の消臭性ガラス容器は、ガラス容器を構成するガラス壁1の表面に、ガラス質消臭剤2を保持させた構造を持つ。図1に示したガラス容器は食品包装用の広口壜であるがこれに限定されるものではなく、細口壜であっても、その他の任意の形状・用途のガラス容器とすることができる。ガラス質消臭剤2は、銅成分を含有するアルカリ−アルカリ土類−ホウケイ酸ガラスまたは銅成分を含有するアルカリ−アルカリ土類−ケイ酸塩ガラスからなる。
上記した銅成分を含有するアルカリ−アルカリ土類−ホウケイ酸ガラスは、SiO2:46〜70モル%、B2O3+R2O(R:アルカリ金属):15〜50モル%、R´O(R´:アルカリ土類金属):0〜10モル%、Al2O3:0〜6%、CuO:0.01〜23モル%含有するガラスである。ここで、B2O3:5〜20モル%、R2O:10〜30モル%とすることができる。
SiO2は、ガラスの構造骨格を形成する主成分であり、その含有量は46〜70モル%、好ましくは、51〜63モル%、更に好ましくは53〜62モル%とする。46モル%未満の場合、ガラスの化学的耐久性が不十分となり、またガラスが失透しやすくなり好ましくない。更に、46モル%未満の場合、ガラスの耐水性が不十分となり、水分存在下(大気中の水分を含む)で銅イオンが溶出しやすくなる結果、触媒作用による消臭効果よりも、イオン溶出によって起こる硫化反応による消臭効果が強くなるため好ましくない。70モル%を超える場合、融点が上昇することにより、ガラスの溶融性が困難となる他、粘度上昇も起こるため好ましくない。
B2O3は、ガラスの溶解性、清澄性を向上させる成分であり、特定の組成においてはガラスの構造骨格を形成する成分ともなる。B2O3は、その含有量によって、ガラスの安定性を大きく左右するものであり、本願発明ではガラスの融剤としての意味合いが大きい。その含有量は、B2O3の揮発量を勘案して、5〜20モル%、好ましくは8〜17モル%、さらに好ましくは10〜17モル%とする。20モル%を超える場合、B2O3は溶融過程において揮発しやすく、組成制御が困難となるため好ましくない。
R2O(R=Li、Na、K)は、ガラスの構造骨格におけるSiとOの結合を切断して非架橋酸素を形成し、その結果、ガラスの粘性を低下させ、成形性や溶解性を向上させる成分であり、B2O3同様の融剤である。その含有量は、R2Oの一種もしくは二種以上を、多成分との含有比も考慮しつつ、合計10〜30モル%、好ましくは13〜22モル%、更に好ましくは13〜19モル%とする。30モル%を超える場合、ガラスの化学的耐久性が不十分となる。具体的には、ガラス剤と大気中の水分が反応してブルームと称される白化現象が引き起こされる。ブルームが発生することにより、悪臭ガスとの接触面積が減少するため望ましくない。
前記のように、B2O3とR2Oは、共に、融剤として使用される。B2O3とR2Oの合計含有量が、15〜50モル%、好ましくは21〜39モル%の範囲が、安全に消臭効果を示す領域となる。15モル%未満の場合、ガラスの溶融性が不十分となり、成形の際に失透が発生しやすくなるため好ましくない。50モル%を超えると、ガラスの耐水性が不十分となり、水分存在下(大気中の水分を含む)で銅イオンが溶出しやすくなる結果、触媒作用による消臭効果よりも、イオン溶出によって起こる硫化反応による消臭効果が強くなるため好ましくない。また、50モル%を超えると、溶融の際に分相を起こしやすく、それに伴いガラス剤の消臭効果が不十分となるため好ましくない。
R´O(R´=Mg、Ca、Sr、Ba)は、ガラスの化学的耐久性を向上させる成分である。その含有量は、R´O(R´=Mg、Ca、Sr、Ba)の一種もしくは二種以上を、合計0〜10モル%、好ましくは2〜7モル%、更に好ましくは3〜6モル%とする。10モル%を超えると溶融時の粘性が高くなるとともに、ガラスが失透しやすくなるため好ましくない。なおR´Oは発明の消臭剤において必須成分ではなく、その含有量は0モル%でもよいが、2モル%以上とすることが好ましい。
Al2O3は、ガラスの化学的耐久性を向上させ、結晶構造安定性に影響を与える成分である。また、Al2O3は、ガラスの分相を抑制しガラス剤の均質性を高める働きをする。粘性を上げること、添加によってガラス中の銅イオンの酸化還元状態に影響を与える可能性があることから、その含有量は、6モル%以下、好ましくは5.5モル%以下、最も好ましくは4.5モル%以下とする。
CuOは、触媒として機能して、硫黄系悪臭物質の分解反応を促進し、硫黄系悪臭物質の消臭効果を奏するものである。その含有量は、0.01〜23モル%、好ましくは1〜13モル%、さらに好ましくは4〜13モル%とする。23モル%を超えると未溶解物が残留しやすくなる他、急冷の際や加工時に金属銅が析出しやすくなるため好ましくない。金属銅の析出に伴いガラスに変色を生じるため、ガラスの変色が問題となる用途には適さない。また、金属銅として析出した場合、被毒が進行してしまう。これに対し、CuOをガラス成分として含ませれば被毒が進行し難く、触媒機能を長期間に亘って安定して発揮することができる。
上記成分以外にも、微量成分として、ZnO、SrO、BaO、TiO2、ZrO2、Nb2O5、P2O5、Cs2O、Rb2O、TeO2、BeO、GeO2、Bi2O3、La2O3、Y2O3、WO3、MoO3、またはFe2O3等も含めることができる。さらに、F、Cl、SO3、Sb2O3、SnO2、あるいはCe等を清澄剤として添加してもよい。
また本発明ではガラス質消臭剤2として、銅成分を含有するアルカリ−アルカリ土類−ケイ酸塩ガラスを用いることもできる。このガラスは、SiO2:50〜70モル%、R2O:10〜33モル%、R´O:0〜15モル%、Al2O3:0〜6%、CuO:0.01〜23モル%含有するガラスである。
以下に本発明の実施例を示す。
調合溶融後に手吹きで型成形した表2の実験例1〜10のガラス容器に悪臭成分を封入し、室温で、経過時間に伴う袋内の悪臭濃度をガスクロマトグラフで測定した。実験例8は、耐久性の低いガラスであり、成形が困難であった。また、溶解性ガラス1〜4はいずれもガラス容器に成形不可能なガラス組成である。なお、銅成分を含まないブランクは、実験例6に該当する。その結果、表4の通り、実験例6を除いて、全て消臭効果が確認された。
窯で溶融されたソーダライムガラス素地へのカラーフィーダでの着色法の通り、カラーフィーダでガラス質消臭剤を添加した。その粒径は1cm以下である。撹拌し均一着色したもの、墨流し手法で意匠性をもたせたものを作製し、型成形した。これら表2の実験例11〜20のガラス容器に悪臭成分を封入し、室温で、経過時間に伴う袋内の悪臭濃度をガスクロマトグラフで測定した。また、溶解性ガラス1〜4はソーダライムガラス素地と特性が大きく異なることから、この方法で溶かし込むと品質不良となる。なお、銅成分を含まないブランクは、実施例Aで消臭効果がないことを確認済である。その結果、表5の通り、いずれも消臭効果が確認された。
窯で溶融されたガラス素地にガラス質消臭剤を印刷加工し、表面成形した。また、溶解性ガラス1〜4はいずれもソーダライムガラス素地と特性が大きく異なることから、印刷には不向きであった。溶解性ガラスとの比較には、バインダーと混合してスプレーコートした(含有率1質量%)。これら表2の実験例21〜27のガラス容器に悪臭成分を封入し、室温で、経過時間に伴う袋内の悪臭濃度をガスクロマトグラフで測定した。なお、銅成分を含まないブランクは、実施例Aで消臭効果がないことを確認済である。その結果、表6の通り、溶解性ガラスは消臭限界に達したのに対し、前記実験例は、消臭総量が大きいことが確認された。溶解性ガラスは、露出量に応じて消臭限界が決定するのに対し、銅成分を含有したガラス質消臭剤は触媒作用を示すため、少量でも消臭総量が期待できる。しかし、ガラスは組成によって連続的に変化し、その効果も触媒反応から溶解性ガラスの吸着反応まで連続的に変化する。実験例28は、耐久性が低下した組成のため、溶解性ガラス同様に吸着反応を示し、消臭限界に達したことが確認された。
なお、本発明で用いたガラス質消臭剤の基本特性を、次の通り確認した。
D50=4.2μmまで粉砕した表1の組成番号6からなるガラス1gとメチルメルカプタンを5Lのテドラーバッグに封入し、室温で、経過時間に伴う袋内のメチルメルカプタン、ジメチルジスルフィドをガスクロマトグラフで測定した。またブランクとして、ガラス質消臭剤なしで同様の操作を行った。なお、事前にガスクロマトグラフ質量分析計にて、袋内に存在するガス成分がこの二成分のみであることを確認していた。その結果、図3の通り、本発明のガラス質消臭剤がメチルメルカプタンを分解し、ジメチルジスルフィドを生成する作用を示すことを確認した。
D50=5.0μmまで粉砕した表1の組成番号6、9、表3の溶解性ガラス1からなるガラス200mgに対し、pH=7.4の0.1mоl・L−1のリン酸緩衝溶液200μLを添加した。そこに9.2mоl・L−1のDMPO(LABOTEC.製、LM−2110)10μLを添加し、シェイクした。DMPO添加時点から10秒後、1分後、5分後にシェイクをやめ、溶液のみをヘマトクリット管で採取し、ESR(日本電子株式会社製、FR−30、Xバンド)測定を実施した。また、ガラスを除いたものをブランクとした。全て、室温、蛍光灯下で実施した。当手法は、ラジカル測定の一般的手法であるスピントラップ法に該当し、DMPOがラジカルを補足するとスピンアダクトが生成する。この生成物(DMPO−OH)をESRで検出した。なお、検出値の単位は、基準物質Mn2+に対するピーク面積値比率(エリアシングル/エリアマンガン、S/M)である。その結果を表7に示す。組成番号6のガラスはDMPO−OHの生成が確認されたのに対し、組成番号9、溶解性ガラス1はブランクと同様にバックグラウンドの値を示しただけであった。本発明のガラス質消臭剤がラジカルを発生する可能性が高いことが確認された。
2 ガラス質消臭剤
Claims (4)
- 容器を構成するガラス壁にガラス質消臭剤を保持させるか、溶かし込み、内容物が発生する臭気を抑制する消臭性ガラス容器であって、
このガラス質消臭剤は銅成分を含有するアルカリ−アルカリ土類−ホウケイ酸ガラスまたは銅成分を含有するアルカリ−アルカリ土類−ケイ酸塩ガラスからなり、
銅成分を溶出させることなくガラス中に保持させたまま、銅成分の触媒作用により、容器内の空気中の悪臭成分を分解する機能を有することを特徴とする消臭性ガラス容器。 - ガラス質消臭剤をガラス壁の表面に保持させたことを特徴とする請求項1記載の消臭性ガラス容器。
- ガラス壁がガラス質消臭剤を部分的に溶かし込んだガラスにより構成されていることを特徴とする請求項1記載の消臭性ガラス容器。
- ガラス壁が、ガラス質消臭剤を溶かしたガラスにより構成されていることを特徴とする請求項1記載の消臭性ガラス容器。
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