以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
まず図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る吸収ヒートポンプ1を説明する。図1は、吸収ヒートポンプ1の模式的系統図である。吸収ヒートポンプ1は、二段昇温型の吸収ヒートポンプである。吸収ヒートポンプ1は、本実施の形態では、比較的利用価値の低い低温(例えば80℃〜90℃程度)の排温水hを熱源媒体として導入し、利用価値の高い被加熱媒体蒸気Wv(例えば、圧力が約0.2MPa(ゲージ圧)を超え、望ましくは0.8MPa(ゲージ圧)程度)を取り出すことができる、第二種吸収ヒートポンプである。吸収ヒートポンプ1は、主要構成機器として、高温吸収器10と、高温蒸発器20と、低温吸収器50と、低温蒸発器60と、再生器70と、凝縮器80とを備えている。また、吸収ヒートポンプ1は、被加熱媒体蒸気Wvを取り出す気液分離器90を備えている。
なお、以下の説明においては、吸収液(「溶液」という場合もある)に関し、ヒートポンプサイクル上における区別を容易にするために、性状やヒートポンプサイクル上の位置に応じて「高濃度溶液Sa」、「中濃度溶液Sb」、「低濃度溶液Sc」、「希溶液Sw」等と呼称するが、性状等を不問にするときは総称して「吸収液S」ということとする。同様に、冷媒に関し、ヒートポンプサイクル上における区別を容易にするために、性状やヒートポンプサイクル上の位置に応じて「高温冷媒蒸気Va」、「中温冷媒蒸気Vb」、「低温冷媒蒸気Vc」、「再生器冷媒蒸気Vg」、「冷媒液Vf」等と呼称するが、性状等を不問にするときは総称して「冷媒V」ということとする。本実施の形態では、吸収液S(吸収剤と冷媒Vとの混合物)としてLiBr水溶液が用いられており、冷媒Vとして水(H2O)が用いられている。また、被加熱媒体Wは、液体の被加熱媒体Wである被加熱媒体液Wq、気体の被加熱媒体Wである被加熱媒体蒸気Wv、被加熱媒体液Wqと被加熱媒体蒸気Wvとが混合した混合被加熱媒体Wm、補給水Wsの総称である。本実施の形態では、被加熱媒体Wとして水(H2O)が用いられている。
高温吸収器10は、被加熱媒体Wの流路を構成する伝熱管11と、高濃度溶液Saを散布する高濃度溶液散布ノズル12とを内部に有している。高濃度溶液散布ノズル12は、散布した高濃度溶液Saが伝熱管11に降りかかるように、伝熱管11の上方に配設されている。高温吸収器10は、高濃度溶液散布ノズル12から高濃度溶液Saが散布され、高濃度溶液Saが高温冷媒蒸気Vaを吸収する際に吸収熱を発生させる。この吸収熱を、伝熱管11を流れる被加熱媒体Wが受熱して、被加熱媒体Wが加熱されるように構成されている。高温吸収器10の下部には、中濃度溶液Sbが貯留される貯留部13が形成されている。中濃度溶液Sbは、高濃度溶液散布ノズル12から散布された高濃度溶液Saが高温冷媒蒸気Vaを吸収して、高濃度溶液Saから濃度が低下した吸収液Sである。伝熱管11は、中濃度溶液Sbに没入しないように、貯留部13よりも上方に配設されている。このようにすると、発生した吸収熱が伝熱管11内を流れる被加熱媒体Wに速やかに伝わり、吸収能力の回復を早めることができる。
高温蒸発器20は、高温吸収器10に高温冷媒蒸気Vaを供給する構成部材である。高温蒸発器20は、冷媒液Vf及び高温冷媒蒸気Vaを収容する冷媒気液分離胴21と、高温冷媒液供給管22と、高温冷媒蒸気受入管24とを有している。高温冷媒液供給管22は、冷媒液Vfを低温吸収器50の加熱管51に導く流路を構成する管である。高温冷媒蒸気受入管24は、低温吸収器50の加熱管51で冷媒液Vfが加熱されて生成された高温冷媒蒸気Vaあるいは高温冷媒蒸気Vaと冷媒液Vfとの冷媒気液混相を冷媒気液分離胴21まで案内する流路を構成する管である。冷媒気液分離胴21内には、高温冷媒蒸気Va中に含まれる冷媒Vの液滴を衝突分離させるバッフル板(不図示)が設けられている。本実施の形態では、低温吸収器50の加熱管51の内面を高温蒸発器20の伝熱面としている。また、高温蒸発器20には冷媒液Vfを導入する冷媒液管84が接続されている。高温冷媒液供給管22は、冷媒気液分離胴21の冷媒液Vfが貯留されている部分に一端が接続され、他端が加熱管51の一端に接続されている。高温冷媒液供給管22には、冷媒気液分離胴21内の冷媒液Vfを加熱管51に送る高温冷媒液ポンプ23が配設されている。高温冷媒蒸気受入管24は、冷媒気液分離胴21に一端が接続され、他端が加熱管51の他端に接続されている。なお、加熱管51の内部で冷媒液Vfが蒸気に変化して密度が大幅に減少するので、加熱管51を気泡ポンプとして機能させることとして、高温冷媒液ポンプ23を省略することとしてもよい。
高温蒸発器20と高温吸収器10とは、高温冷媒蒸気流路としての高温冷媒蒸気管29で接続されている。高温冷媒蒸気管29は、一方の端部が冷媒気液分離胴21の上部(典型的には頂部)に接続されており、他方の端部が高濃度溶液散布ノズル12よりも上方で高温吸収器10に接続されている。このような構成により、高温蒸発器20で生成された高温冷媒蒸気Vaを、高温冷媒蒸気管29を介して、高温吸収器10に供給することができるようになっている。
低温吸収器50は、冷媒液Vf及び高温冷媒蒸気Vaの流路を構成する加熱管51と、吸収液散布ノズル52とを内部に有している。加熱管51は、上述のように、一端に高温冷媒液供給管22が、他端に高温冷媒蒸気受入管24が、それぞれ接続されている。吸収液散布ノズル52は、本実施の形態では、中濃度溶液Sbを散布する。吸収液散布ノズル52は、散布した中濃度溶液Sbが加熱管51に降りかかるように、加熱管51の上方に配設されている。吸収液散布ノズル52には、中濃度溶液Sbを内部に流す中濃度溶液管15の一端が接続されている。低温吸収器50は、吸収液散布ノズル52から中濃度溶液Sbが散布され、中濃度溶液Sbが低温冷媒蒸気Vcを吸収する際に生じる吸収熱により、加熱管51を流れる冷媒液Vfを加熱して高温冷媒蒸気Vaを生成することができるように構成されている。低温吸収器50は、高温吸収器10よりも低い圧力(露点温度)で作動するように構成されており、高温吸収器10よりも作動温度が低くなっている。低温吸収器50の下部には、希溶液Swが貯留される貯留部53が形成されている。希溶液Swは、吸収液散布ノズル52から散布された吸収液S(本実施の形態では中濃度溶液Sb)が低温冷媒蒸気Vsを吸収して濃度が低下した吸収液Sである。希溶液Swは、高濃度溶液Sa及び中濃度溶液Sbと比較して、冷媒Vを多く含んでいる。加熱管51は、貯留部53よりも上方に配設されている。
低温蒸発器60は、熱源媒体としての排温水hの流路を構成する第1の熱源媒体流路としての熱源管61と、冷媒液Vfを散布する冷媒液散布ノズル62とを内部に有している。冷媒液散布ノズル62は、散布した冷媒液Vfが熱源管61に降りかかるように、熱源管61の上方に配設されている。低温蒸発器60には、冷媒液Vfを内部に流す冷媒液管86の一端が接続されている。冷媒液管86には、低温蒸発器60に導入する冷媒液Vfの流量を調節する流量調節弁87が配設されている。低温蒸発器60の下部(典型的には底部)には、低温蒸発器60の下部に貯留された冷媒液Vfを冷媒液散布ノズル62へ導く低温冷媒液管65の一端が接続されている。低温冷媒液管65の他端は、冷媒液散布ノズル62に接続されている。低温冷媒液管65には、内部を流れる冷媒液Vfを圧送する低温冷媒液ポンプ66が配設されている。低温蒸発器60は、冷媒液散布ノズル62から冷媒液Vfが散布され、散布された冷媒液Vfが熱源管61内を流れる排温水hの熱で蒸発して低温冷媒蒸気Vcが発生するように構成されている。低温蒸発器60は、高温蒸発器20よりも低い圧力(露点温度)で作動するように構成されており、高温蒸発器20よりも作動温度が低くなっている。
低温吸収器50と低温蒸発器60とは、本実施の形態では、相互に連通するように1つの缶胴内に形成されている。低温吸収器50と低温蒸発器60とが連通することにより、低温蒸発器60で発生した低温冷媒蒸気Vcを低温吸収器50に供給することができるように構成されている。低温吸収器50と低温蒸発器60とは、典型的には、吸収液散布ノズル52より上方及び冷媒液散布ノズル62より上方で連通している。
再生器70は、熱源媒体としての排温水hの流路を構成する第2の熱源媒体管としての熱源管71と、希溶液Swを散布する希溶液散布ノズル72とを有している。本実施の形態では、低温蒸発器60の熱源管61を流れる排温水hと、再生器70の熱源管71を流れる排温水hとは同じ温水であり、熱源管61を流れた排温水hがその後熱源管71を流れるように配管(不図示)で接続されているが、各熱源管61、71に異なる熱源媒体が流れることとしてもよい。希溶液散布ノズル72は、散布した希溶液Swが熱源管71に降りかかるように、熱源管71の上方に配設されている。再生器70は、散布された希溶液Swが排温水hで加熱されることにより、希溶液Swから冷媒Vが蒸発して濃度が上昇した高濃度溶液Saが生成される。再生器70は、生成された高濃度溶液Saが下部に貯留されるように構成されている。
凝縮器80は、冷却媒体流路を形成する冷却水管81を有している。冷却水管81には、冷却媒体としての冷却水cが流れる。凝縮器80は、再生器70で発生した冷媒Vの蒸気である再生器冷媒蒸気Vgを導入し、これを冷却水cで冷却して凝縮させるように構成されている。冷却水管81は、再生器冷媒蒸気Vgを直接冷却することができるように、再生器冷媒蒸気Vgが凝縮した冷媒液Vfに浸らないように配設されている。凝縮器80には、凝縮した冷媒液Vfを高温蒸発器20及び低温蒸発器60に向けて送る冷媒液管88が接続されている。冷媒液管88は、高温蒸発器20に接続された冷媒液管84及び低温蒸発器60に接続された冷媒液管86に接続されており、凝縮器80内の冷媒液Vfを高温蒸発器20と低温蒸発器60とに分配することができるように構成されている。冷媒液管88には、冷媒液Vfを圧送するための凝縮冷媒ポンプ89が配設されている。
再生器70と凝縮器80とは、相互に連通するように1つの缶胴内に形成されている。再生器70と凝縮器80とが連通することにより、再生器70で発生した再生器冷媒蒸気Vgを凝縮器80に供給することができるように構成されている。再生器70と凝縮器80とは、上部の気相部で連通している。また、本実施の形態では、再生器70及び凝縮器80が、高温吸収器10、高温蒸発器20、低温吸収器50、低温蒸発器60の下方に設けられている。
再生器70の高濃度溶液Saが貯留される部分と、高温吸収器10の高濃度溶液散布ノズル12とは、高濃度溶液管75で接続されている。高濃度溶液管75には、再生器70内の高濃度溶液Saを高濃度溶液散布ノズル12に圧送する高濃度溶液ポンプ76が配設されている。高温吸収器10の貯留部13と、低温吸収器50の吸収液散布ノズル52とは、中濃度溶液管15で接続されている。低温吸収器50の貯留部53と、再生器70の希溶液散布ノズル72とは、希溶液管55で接続されている。希溶液管55には、低温吸収器50内の希溶液Swを再生器70に圧送する希溶液ポンプ56が配設されている。中濃度溶液管15及び高濃度溶液管75には、高温熱交換器18が配設されている。高温熱交換器18は、中濃度溶液管15を流れる中濃度溶液Sbと、高濃度溶液管75を流れる高濃度溶液Saとの間で熱交換を行わせる機器である。希溶液管55及び高濃度溶液管75には、低温熱交換器58が配設されている。低温熱交換器58は、希溶液管55を流れる希溶液Swと、高濃度溶液管75を流れる高濃度溶液Saとの間で熱交換を行わせる機器である。
高温吸収器10は、吸収ヒートポンプ1の高さを抑制する観点から、低温吸収器50の高さ以下の高さに配置されている。ここで、各吸収器の高さとは、各吸収器内に設けられている溶液の散布装置(高温吸収器10であれば高濃度溶液散布ノズル12、低温吸収器50であれば吸収液散布ノズル52)の高さをいうこととする。本実施の形態では、高温吸収器10と低温吸収器50とが同じ高さに配置されている。つまり、高温吸収器10内の中濃度溶液Sbは、少なくとも起動時には、位置ヘッドでは低温吸収器50に流入しない。低温吸収器50は、高温吸収器10に対して、このような高さに配置されていることとなる。高温吸収器10及び低温吸収器50がこのように配置されていると、吸収ヒートポンプ1の運転中は、両者の内圧の差によって、中濃度溶液Sbが高温吸収器10から低温吸収器50に流動する。しかし、中濃度溶液Sbを流動させることができるほど両者の内圧に差が生じていない起動時は、中濃度溶液Sbを流動させることができない。そこで、吸収ヒートポンプ1では、中濃度溶液Sbを低温吸収器50に圧送する溶液戻りポンプ36を、中濃度溶液管15に配設している。溶液戻りポンプ36は、高温吸収器10の中濃度溶液Sbを直接的に(他の吸収器を経由せずに)低温吸収器50に導くものであり、第1の吸収液戻りポンプに相当する。溶液戻りポンプ36は、インバータ制御、ON−OFF制御のどちらを採用してもよい。
気液分離器90は、高温吸収器10の伝熱管11を流れて加熱された被加熱媒体Wを導入し、被加熱媒体蒸気Wvと被加熱媒体液Wqとを分離する機器である。気液分離器90の下部と高温吸収器10の伝熱管11の一端とは、被加熱媒体液Wqを伝熱管11に導く被加熱媒体液管92で接続されている。被加熱媒体液管92には、被加熱媒体液Wqを伝熱管11に向けて圧送する被加熱媒体ポンプ93が配設されている。内部が気相部となる気液分離器90の側面と伝熱管11の他端とは、加熱された被加熱媒体Wを気液分離器90に導く加熱後被加熱媒体管94で接続されている。また、気液分離器90には、蒸気として系外に供給された分の被加熱媒体Wを補うための補給水Wsを系外から導入する補給水管95が接続されている。補給水管95には、気液分離器90に向けて補給水Wsを圧送する補給水ポンプ96が配設されている。また、気液分離器90には、被加熱媒体蒸気Wvを系外に供給する被加熱媒体蒸気供給管99が上部(典型的には頂部)に接続されている。気液分離器90は、伝熱管11内で被加熱媒体液Wqの一部が蒸発して被加熱媒体液Wqと被加熱媒体蒸気Wvとが混合した混合被加熱媒体Wmを導入してもよく、被加熱媒体液Wqのまま気液分離器90に導いて減圧し一部を気化させて混合被加熱媒体Wmとしたものを気液分離させるようにしてもよい。
引き続き図1を参照して、吸収ヒートポンプ1の作用を説明する。まず、冷媒側のサイクルを説明する。凝縮器80では、再生器70で発生した再生器冷媒蒸気Vgを受け入れて、冷却水管81を流れる冷却水cで再生器冷媒蒸気Vgを冷却して凝縮し、冷媒液Vfとする。凝縮した冷媒液Vfは、凝縮冷媒ポンプ89で高温蒸発器20及び低温蒸発器60に向けて圧送される。凝縮冷媒ポンプ89で圧送された冷媒液Vfは、冷媒液管88を流れた後、冷媒液管84と冷媒液管86とに分流される。冷媒液管84を流れる冷媒液Vfは、冷媒気液分離胴21に導入される。冷媒液管86を流れる冷媒液Vfは、低温蒸発器60に導入される。
低温蒸発器60に導入された冷媒液Vfは、低温冷媒液ポンプ66によって冷媒液散布ノズル62に圧送され、冷媒液散布ノズル62から熱源管61に向けて散布される。冷媒液散布ノズル62から散布された冷媒液Vfは、熱源管61内を流れる排温水hによって加熱され蒸発して低温冷媒蒸気Vcとなる。低温蒸発器60で発生した低温冷媒蒸気Vcは、低温蒸発器60と連通する低温吸収器50へと移動する。他方、冷媒気液分離胴21に導入された冷媒液Vfは、高温冷媒液ポンプ23によって低温吸収器50の加熱管51に送られる。加熱管51に送られた冷媒液Vfは、低温吸収器50において、低温蒸発器60から移動してきた低温冷媒蒸気Vcが中濃度溶液Sbに吸収される際に発生する吸収熱により加熱され、この加熱により蒸発して高温冷媒蒸気Vaとなる。加熱管51内で発生した高温冷媒蒸気Vaは、高温蒸発器20に向かって高温冷媒蒸気受入管24を流れ、冷媒気液分離胴21に至る。なお、高温冷媒蒸気Vaは、冷媒液Vfよりも密度が小さい。したがって、高温冷媒液ポンプ23は、冷媒気液分離胴21内の冷媒液Vfを、加熱管51に到達させることができる能力があれば足りる。冷媒気液分離胴21に流入した高温冷媒蒸気Vaは、高温冷媒蒸気管29を介して高温蒸発器20と連通する高温吸収器10へと移動する。
次に吸収ヒートポンプ1の吸収液側のサイクルを説明する。高温吸収器10では、高濃度溶液Saが高濃度溶液散布ノズル12から散布され、この散布された高濃度溶液Saが高温蒸発器20から移動してきた高温冷媒蒸気Vaを吸収する。高温冷媒蒸気Vaを吸収した高濃度溶液Saは、濃度が低下して中濃度溶液Sbとなる。高温吸収器10では、高濃度溶液Saが高温冷媒蒸気Vaを吸収する際に吸収熱が発生する。この吸収熱により、伝熱管11を流れる被加熱媒体液Wqが加熱される。ここで、被加熱媒体蒸気Wvを取り出すための気液分離器90まわりの作用について説明する。
気液分離器90には、系外から補給水Wsが補給水管95を介して導入される。補給水Wsは、補給水ポンプ96により補給水管95を圧送され、気液分離器90に導入される。気液分離器90に導入された補給水Wsは、被加熱媒体液Wqとして気液分離器90の下部に貯留される。気液分離器90の下部に貯留されている被加熱媒体液Wqは、被加熱媒体ポンプ93で高温吸収器10の伝熱管11に送られる。伝熱管11に送られた被加熱媒体液Wqは、高温吸収器10における上述の吸収熱により加熱される。伝熱管11で加熱された被加熱媒体液Wqは、一部が蒸発して被加熱媒体蒸気Wvとなった混合被加熱媒体Wmとして、あるいは温度が上昇した被加熱媒体液Wqとして、気液分離器90に向けて加熱後被加熱媒体管94を流れる。加熱後被加熱媒体管94を、温度が上昇した被加熱媒体液Wqが流れる場合、被加熱媒体液Wqは、気液分離器90に導入される際に減圧され、一部が蒸発して被加熱媒体蒸気Wvとなった混合被加熱媒体Wmとして気液分離器90に導入される。気液分離器90に導入された混合被加熱媒体Wmは、被加熱媒体液Wqと被加熱媒体蒸気Wvとが分離される。分離された被加熱媒体液Wqは、気液分離器90の下部に貯留され、再び高温吸収器10の伝熱管11に送られる。他方、分離された被加熱媒体蒸気Wvは、被加熱媒体蒸気供給管99に導出され、蒸気利用場所に供給される。本実施の形態では、0.8MPa(ゲージ圧)程度の被加熱媒体蒸気Wvが導出される。
再び吸収ヒートポンプ1の吸収液側のサイクルの説明に戻る。高温吸収器10で高温冷媒蒸気Vaを吸収した高濃度溶液Saは、濃度が低下して中濃度溶液Sbとなり、貯留部13に貯留される。貯留部13内の中濃度溶液Sbは、低温吸収器50に向かって中濃度溶液管15を流れ、高温熱交換器18で高濃度溶液Saと熱交換して温度が低下した後に、吸収液散布ノズル52に至る。ここで、吸収ヒートポンプ1は、前述のように、高温吸収器10内の中濃度溶液Sbが位置ヘッドでは低温吸収器50に流入しない高さに高温吸収器10及び低温吸収器50が配置されている。したがって、吸収ヒートポンプ1の起動時の、高温吸収器10と低温吸収器50との間に内圧の差が生じていないときは、溶液戻りポンプ36を起動して、高温吸収器10内の中濃度溶液Sbを溶液戻りポンプ36で低温吸収器50に圧送する。その後、吸収ヒートポンプ1が定常運転状態となると、高温吸収器10の内部圧力が低温吸収器50の内部圧力よりも高くなり、両者の内圧の差によって、高温吸収器10内の中濃度溶液Sbを低温吸収器50に搬送することができるようになる。このため、吸収ヒートポンプ1が定常運転状態になったら、溶液戻りポンプ36を止めることができる。なお、ここでいう定常運転状態とは、高濃度溶液Sa及び中濃度溶液Sbが予定されている濃度となった状態である。
低温吸収器50では、吸収液散布ノズル52に流入した中濃度溶液Sbが加熱管51に向けて散布される。散布された中濃度溶液Sbは、低温蒸発器60から移動してきた低温冷媒蒸気Vcを吸収する。低温冷媒蒸気Vcを吸収した中濃度溶液Sbは、濃度が低下して希溶液Swとなる。低温吸収器50では、中濃度溶液Sbが低温冷媒蒸気Vcを吸収する際に吸収熱が発生する。この吸収熱により、加熱管51を流れる冷媒液Vfが加熱され、高温冷媒蒸気Vaが生成される。低温吸収器50内の希溶液Swは、重力及び希溶液ポンプ56により再生器70に向かって希溶液管55を流れる。この際、希溶液Swは、低温熱交換器58で高濃度溶液Saと熱交換して温度が低下した後に、再生器70に導入される。なお、希溶液ポンプ56が作動しなくても希溶液Swが再生器70に流入する場合は、希溶液ポンプ56を停止するとよい。再生器70に送られた希溶液Swは、希溶液散布ノズル72から散布される。希溶液散布ノズル72から散布された希溶液Swは、熱源管71を流れる排温水h(本実施の形態では約80℃前後)によって加熱され、散布された希溶液Sw中の冷媒が蒸発して高濃度溶液Saとなり、再生器70の下部に貯留される。他方、希溶液Swから蒸発した冷媒Vは、再生器冷媒蒸気Vgとして凝縮器80へと移動する。再生器70の下部に貯留された高濃度溶液Saは、高濃度溶液ポンプ76により、高濃度溶液管75を介して高温吸収器10の高濃度溶液散布ノズル12に圧送される。高濃度溶液管75を流れる高濃度溶液Saは、低温熱交換器58で希溶液Swと熱交換して温度が上昇し、次いで高温熱交換器18で中濃度溶液Sbと熱交換してさらに温度が上昇してから高温吸収器10に流入し、高濃度溶液散布ノズル12から散布される。以降、同様のサイクルを繰り返す。
以上で説明したように、本実施の形態に係る吸収ヒートポンプ1は、全高を抑制するために、高温吸収器10内の中濃度溶液Sbが位置ヘッドでは低温吸収器50に流入しない高さに、高温吸収器10及び低温吸収器50が配置されている場合でも、溶液戻りポンプ36で吸収液Sを低温吸収器50に導くことができ、吸収ヒートポンプ1の安定した起動が可能になる。
次に図2を参照して、本発明の第1の実施の形態の第1の変形例に係る吸収ヒートポンプ1Aを説明する。図2は、吸収ヒートポンプ1Aの模式的系統図である。吸収ヒートポンプ1Aは、三段昇温型の吸収ヒートポンプである。吸収ヒートポンプ1Aは、吸収ヒートポンプ1(図1参照)と比較して、以下の点が異なっている。吸収ヒートポンプ1Aは、吸収ヒートポンプ1(図1参照)の構成に加えて、中温吸収器30及び中温蒸発器40を備えている。中温吸収器30は、高温吸収器10よりも作動温度及び作動圧力が低く、低温吸収器50よりも作動温度及び作動圧力が高い吸収器である。中温蒸発器40は、高温蒸発器20よりも作動温度及び作動圧力が低く、低温蒸発器60よりも作動温度及び作動圧力が高い蒸発器である。
中温吸収器30は、冷媒液Vf及び高温冷媒蒸気Vaの流路を構成する加熱管31と、吸収液散布ノズル32とを内部に有している。加熱管31は、一端に高温冷媒液供給管22が、他端に高温冷媒蒸気受入管24が、それぞれ接続されている。つまり、本変形例では、高温冷媒液供給管22が高温蒸発器20内の冷媒液Vfを中温吸収器30の加熱管31に導く流路を構成し、高温冷媒蒸気受入管24が中温吸収器30の加熱管31で冷媒液Vfが加熱されて生成された高温冷媒蒸気Vaあるいは高温冷媒蒸気Vaと冷媒液Vfとの冷媒気液混相を冷媒気液分離胴21まで案内する流路を構成し、中温吸収器30の加熱管31の内面を高温蒸発器20の伝熱面としている。吸収液散布ノズル32は、本変形例では、中濃度溶液Sbを散布する。つまり、本変形例では、中濃度溶液管15が、低温吸収器50の吸収液散布ノズル52ではなく、中温吸収器30の吸収液散布ノズル32に接続されている。また、本変形例では、溶液戻りポンプ36に代えて、溶液戻りポンプ16が中濃度溶液管15に設けられている。溶液戻りポンプ16は、第2の吸収液戻りポンプに相当する。吸収液散布ノズル32は、散布した中濃度溶液Sbが加熱管31に降りかかるように、加熱管31の上方に配設されている。中温吸収器30は、吸収液散布ノズル32から中濃度溶液Sbが散布され、中濃度溶液Sbが中温冷媒蒸気Vbを吸収する際に生じる吸収熱により、加熱管31を流れる冷媒液Vfを加熱して高温冷媒蒸気Vaを生成することができるように構成されている。中温吸収器30の下部には、低濃度溶液Scが貯留される貯留部33が形成されている。低濃度溶液Scは、吸収液散布ノズル32から散布された中濃度溶液Sbが中温冷媒蒸気Vbを吸収して濃度が低下した吸収液Sであり、低温吸収器50で生じる希溶液Swよりも濃度が高い。加熱管31は、貯留部33よりも上方に配設されている。
中温蒸発器40は、中温吸収器30に中温冷媒蒸気Vbを供給する構成部材である。中温蒸発器40は、冷媒液Vf及び中温冷媒蒸気Vbを収容する冷媒気液分離胴41と、中温冷媒液供給管42と、中温冷媒蒸気受入管44とを有している。中温冷媒液供給管42は、冷媒液Vfを低温吸収器50の加熱管51に導く流路を構成する管である。中温冷媒蒸気受入管44は、低温吸収器50の加熱管51で冷媒液Vfが加熱されて生成された中温冷媒蒸気Vbあるいは中温冷媒蒸気Vbと冷媒液Vfとの冷媒気液混相を冷媒気液分離胴41まで案内する流路を構成する管である。冷媒気液分離胴41は、高温蒸発器20の冷媒気液分離胴21と同様に構成されている。本変形例では、低温吸収器50の加熱管51の内面を中温蒸発器40の伝熱面としている。また、中温蒸発器40には冷媒液Vfを導入する冷媒液管84が接続されている。他方、吸収ヒートポンプ1(図1参照)では冷媒液管84が接続されていた高温蒸発器20には、冷媒液管84に代えて、冷媒液管88から分岐した冷媒液管82が接続されている。中温蒸発器40に接続された冷媒液管84には、流量調節弁85が配設されている。中温冷媒液供給管42は、冷媒気液分離胴41の冷媒液Vfが貯留されている部分に一端が接続され、他端が加熱管51の一端に接続されている。中温冷媒液供給管42には、冷媒気液分離胴41内の冷媒液Vfを加熱管51に送る中温冷媒液ポンプ43が配設されている。中温冷媒蒸気受入管44は、冷媒気液分離胴41に一端が接続され、他端が加熱管51の他端に接続されている。なお、加熱管51の内部で冷媒液Vfが蒸気に変化して密度が大幅に減少するので、加熱管51を気泡ポンプとして機能させることとして、中温冷媒液ポンプ43を省略することとしてもよい。
中温蒸発器40と中温吸収器30とは、中温冷媒蒸気流路としての中温冷媒蒸気管49で接続されている。中温冷媒蒸気管49は、一方の端部が冷媒気液分離胴41の上部(典型的には頂部)に接続されており、他方の端部が吸収液散布ノズル32よりも上方で中温吸収器30に接続されている。このような構成により、中温蒸発器40で生成された中温冷媒蒸気Vbを、中温冷媒蒸気管49を介して、中温吸収器30に供給することができるようになっている。中温吸収器30の貯留部33と、低温吸収器50の吸収液散布ノズル52とは、低濃度溶液Scを流す低濃度溶液管35で接続されている。低濃度溶液管35には、溶液戻りポンプ36が設けられている。溶液戻りポンプ36は、本変形例では、高温吸収器10の吸収液Sを、中温吸収器30を介して(間接的に)低温吸収器50に導くものであり、第1の吸収液戻りポンプに相当する。低濃度溶液管35及び高濃度溶液管75には、中温熱交換器38が配設されている。中温熱交換器38は、低濃度溶液管35を流れる低濃度溶液Scと、高濃度溶液管75を流れる高濃度溶液Saとの間で熱交換を行わせる機器である。中温熱交換器38は、高濃度溶液管75に沿って見て、低温熱交換器58と高温熱交換器18との間に配設されている。
吸収ヒートポンプ1Aは、高さを抑制する観点から、中温吸収器30が、低温吸収器50の高さ以下の高さに配置されている。本変形例では、中温吸収器30と低温吸収器50とが同じ高さに配置されている。つまり、低温吸収器50は、中温吸収器30内の低濃度溶液Scが、位置ヘッドでは低温吸収器50に流入しない高さに配置されていることとなる。また、吸収ヒートポンプ1Aは、設置面積を抑制する観点から、高温吸収器10が、中温吸収器30の下方に配置されている。換言すれば、中温吸収器30と高温吸収器10とは、上下に並んでいる。吸収ヒートポンプ1Aの上記以外の構成は、吸収ヒートポンプ1と同様である。
上述のように構成された吸収ヒートポンプ1Aの作用は、以下の点で、吸収ヒートポンプ1(図1参照)と異なる。吸収ヒートポンプ1Aの冷媒側のサイクルに関し、凝縮器80で凝縮した冷媒液Vfは、凝縮冷媒ポンプ89で高温蒸発器20、中温蒸発器40及び低温蒸発器60に向けて圧送される。凝縮冷媒ポンプ89で圧送された冷媒液Vfは、冷媒液管88を流れた後、冷媒液管82と冷媒液管83とに分流される。冷媒液管82を流れる冷媒液Vfは、冷媒気液分離胴21に導入される。他方、冷媒液管83を流れる冷媒液Vfは、冷媒液管84と冷媒液管86とに分流される。冷媒液管84を流れる冷媒液Vfは、冷媒気液分離胴41に導入される。なお、冷媒液管86を流れる冷媒液Vfが低温蒸発器60に導入されるのは、吸収ヒートポンプ1(図1参照)と同様である。低温蒸発器60では、吸収ヒートポンプ1(図1参照)と同様に、低温冷媒蒸気Vcが発生し、発生した低温冷媒蒸気Vcは低温吸収器50へと移動する。
冷媒気液分離胴41に導入された冷媒液Vfは、中温冷媒液ポンプ43によって低温吸収器50の加熱管51に送られる。加熱管51に送られた冷媒液Vfは、低温吸収器50において、低温蒸発器60から移動してきた低温冷媒蒸気Vcが低濃度溶液Scに吸収される際に発生する吸収熱により加熱され、この加熱により蒸発して中温冷媒蒸気Vbとなる。加熱管51内で発生した中温冷媒蒸気Vbは、中温蒸発器40に向かって中温冷媒蒸気受入管44を流れ、冷媒気液分離胴41に至る。冷媒気液分離胴41に流入した中温冷媒蒸気Vbは、中温冷媒蒸気管49を流れて中温吸収器30へと移動する。他方、冷媒気液分離胴21に導入された冷媒液Vfは、高温冷媒液ポンプ23によって中温吸収器30の加熱管31に送られる。加熱管31に送られた冷媒液Vfは、中温吸収器30において、中温蒸発器40から移動してきた中温冷媒蒸気Vbが中濃度溶液Sbに吸収される際に発生する吸収熱により加熱され、この加熱により蒸発して高温冷媒蒸気Vaとなる。加熱管31内で発生した高温冷媒蒸気Vaは、高温蒸発器20に向かって高温冷媒蒸気受入管24を流れ、冷媒気液分離胴21に至る。冷媒気液分離胴21に流入した高温冷媒蒸気Vaは、高温冷媒蒸気管29を流れて高温吸収器10へと移動する。
吸収ヒートポンプ1Aの吸収液側のサイクルに関し、高温吸収器10及び気液分離器90まわりにおける作用は、吸収ヒートポンプ1(図1参照)と同様である。高温吸収器10の貯留部13内の中濃度溶液Sbは、中温吸収器30に向かって中濃度溶液管15を流れ、高温熱交換器18で高濃度溶液Saと熱交換して温度が低下した後に、吸収液散布ノズル32に至る。ここで、吸収ヒートポンプ1Aは、前述のように、高温吸収器10が中温吸収器30の下方に配置されており、高温吸収器10内の中濃度溶液Sbが位置ヘッドでは中温吸収器30に流入しない高さに高温吸収器10及び中温吸収器30が配置されている。したがって、吸収ヒートポンプ1Aの起動時の、高温吸収器10と中温吸収器30との間に内圧の差が生じていないときは、溶液戻りポンプ16を起動して、高温吸収器10内の中濃度溶液Sbを溶液戻りポンプ16で中温吸収器30に圧送する。その後、吸収ヒートポンプ1Aが定常運転状態となると、高温吸収器10の内部圧力が中温吸収器30の内部圧力よりも高くなり、両者の内圧の差によって、高温吸収器10内の中濃度溶液Sbを中温吸収器30に搬送することができるようになる。このため、吸収ヒートポンプ1Aが定常運転状態になったら、溶液戻りポンプ16を止めることができる。
中温吸収器30では、吸収液散布ノズル32に流入した中濃度溶液Sbが加熱管31に向けて散布される。散布された中濃度溶液Sbは、中温蒸発器40から移動してきた中温冷媒蒸気Vbを吸収する。中温冷媒蒸気Vbを吸収した中濃度溶液Sbは、濃度が低下して低濃度溶液Scとなり、貯留部33に貯留される。中温吸収器30では、中濃度溶液Sbが中温冷媒蒸気Vbを吸収する際に吸収熱が発生する。この吸収熱により、加熱管31を流れる冷媒液Vfが加熱され、高温冷媒蒸気Vaが生成される。中温吸収器30の貯留部33内の低濃度溶液Scは、低温吸収器50に向かって低濃度溶液管35を流れ、中温熱交換器38で高濃度溶液Saと熱交換して温度が低下した後に、吸収液散布ノズル52に至る。ここで、吸収ヒートポンプ1Aは、前述のように、中温吸収器30内の低濃度溶液Scが位置ヘッドでは低温吸収器50に流入しない高さに中温吸収器30及び低温吸収器50が配置されている。したがって、吸収ヒートポンプ1Aの起動時の、中温吸収器30と低温吸収器50との間に内圧の差が生じていないときは、溶液戻りポンプ36を起動して、中温吸収器30内の低濃度溶液Scを溶液戻りポンプ36で低温吸収器50に圧送する。その後、吸収ヒートポンプ1Aが定常運転状態となると、中温吸収器30の内部圧力が低温吸収器50の内部圧力よりも高くなり、両者の内圧の差によって、中温吸収器30内の低濃度溶液Scを低温吸収器50に搬送することができるようになる。このため、吸収ヒートポンプ1Aが定常運転状態になったら、溶液戻りポンプ36を止めることができる。
低温吸収器50における作用は、吸収液散布ノズル52から散布されるのが、吸収ヒートポンプ1(図1参照)では中濃度溶液Sbであったものが、低濃度溶液Scに変わる点を除き、吸収ヒートポンプ1(図1参照)と同様である。再生器70における作用は、吸収ヒートポンプ1(図1参照)と同様である。なお、吸収ヒートポンプ1Aでは、再生器70から高温吸収器10に向けて高濃度溶液管75を流れる高濃度溶液Saが、低温熱交換器58で希溶液Swと熱交換して温度が上昇し、次いで中温熱交換器38で低濃度溶液Scと熱交換してさらに温度が上昇し、次いで高温熱交換器18で中濃度溶液Sbと熱交換してさらに温度が上昇してから高温吸収器10に流入する。
以上で説明したように、本変形例に係る吸収ヒートポンプ1Aは、高温吸収器10内の中濃度溶液Sbが位置ヘッドでは中温吸収器30に流入しない高さに、中温吸収器30内の低濃度溶液Scが位置ヘッドでは低温吸収器50に流入しない高さに、高温吸収器10、中温吸収器30及び低温吸収器50が配置されている場合でも、溶液戻りポンプ16で中濃度溶液Sbを中温吸収器30に、溶液戻りポンプ36で低濃度溶液Scを低温吸収器50に、それぞれ導くことができ、吸収ヒートポンプ1Aの安定した起動が可能になる。また、吸収ヒートポンプ1Aは、中温吸収器30が高温吸収器10よりも高所に配置され、中温吸収器30と低温吸収器50とが同じ高さに配置されているので、高温冷媒蒸気管29及び中温冷媒蒸気管49の長さを抑制することができる。高温冷媒蒸気管29及び中温冷媒蒸気管49は、気体である蒸気を搬送する管であって口径が大きくなりがちであるから、長さを抑制することができると大きなメリットとなる。
次に図3を参照して、本発明の第1の実施の形態の第2の変形例に係る吸収ヒートポンプ1Bを説明する。図3は、吸収ヒートポンプ1Bの模式的系統図である。吸収ヒートポンプ1Bは、三段昇温型の吸収ヒートポンプである。吸収ヒートポンプ1Bは、吸収ヒートポンプ1A(図2参照)と比較して、以下の点が異なっている。吸収ヒートポンプ1Bは、高温吸収器10が中温吸収器30の上方に配置された状態で、高温吸収器10と中温吸収器30とが上下に並んでいる。このように配置されていることで、吸収ヒートポンプ1Bの起動時の、高温吸収器10と中温吸収器30との間に内圧の差が生じていないときでも、高温吸収器10内の中濃度溶液Sbを位置ヘッドで中温吸収器30に流動させることができる。このため、吸収ヒートポンプ1Bでは、吸収ヒートポンプ1A(図2参照)が備えていた溶液戻りポンプ16(図2参照)を備えていない。吸収ヒートポンプ1Bは、高温吸収器10と低温吸収器50とが同じ高さに配置されているが、高温吸収器10が低温吸収器50の高さ以下の高さに配置されていてもよい。吸収ヒートポンプ1Bの上記以外の構成は、吸収液S及び冷媒Vの流路構成を含めて、吸収ヒートポンプ1A(図2参照)と同様である。したがって、吸収ヒートポンプ1Bにおいても、低温吸収器50は、中温吸収器30内の低濃度溶液Scが、位置ヘッドでは低温吸収器50に流入しない高さに配置されている。
上述のように構成された吸収ヒートポンプ1Bの作用は、高温吸収器10と中温吸収器30との間に内圧の差が生じていないときに高温吸収器10内の中濃度溶液Sbを位置ヘッドで中温吸収器30に流動させる点を除き、吸収ヒートポンプ1A(図2参照)と同様である。したがって、吸収ヒートポンプ1Bは、起動時の、中温吸収器30と低温吸収器50との間に内圧の差が生じていないときに、溶液戻りポンプ36で低濃度溶液Scを低温吸収器50に導くことができ、吸収ヒートポンプ1Bの安定した起動が可能になる。なお、吸収ヒートポンプ1Bが定常運転状態となると、中温吸収器30の内部圧力が低温吸収器50の内部圧力よりも高くなる。中温吸収器30が低温吸収器50よりも低所に配置された吸収ヒートポンプ1Bでは、定常運転時の中温吸収器30と低温吸収器50との内圧の差によって、中温吸収器30内の低濃度溶液Scを低温吸収器50に搬送することができる場合は溶液戻りポンプ36を止めることができる。また、吸収ヒートポンプ1Bは、高温吸収器10と中温吸収器30とを鉛直上下に配置しているので、設置面積を抑制することができる。
次に図4を参照して、本発明の第1の実施の形態の第3の変形例に係る吸収ヒートポンプ1Cを説明する。図4は、吸収ヒートポンプ1Cの模式的系統図である。吸収ヒートポンプ1Cは、三段昇温型の吸収ヒートポンプである。吸収ヒートポンプ1Cは、吸収ヒートポンプ1A(図2参照)と比較して、以下の点が異なっている。吸収ヒートポンプ1Cは、高温吸収器10及び中温吸収器30が、低温吸収器50と同じ高さに配置されている。中温吸収器30は、中温蒸発器40に対して極力近くに配置するのが好ましく、高温吸収器10は、高温蒸発器20に対して極力近くに配置するのが好ましい。このように配置すると、高温冷媒蒸気管29及び中温冷媒蒸気管49の長さを抑制することができる。高温冷媒蒸気管29及び中温冷媒蒸気管49は、気体である蒸気を搬送する管であって口径が大きくなりがちであるから、長さを抑制することができると大きなメリットとなる。吸収ヒートポンプ1Cの上記以外の構成は、吸収液S及び冷媒Vの流路構成を含めて、吸収ヒートポンプ1A(図2参照)と同様である。したがって、吸収ヒートポンプ1Cにおいても、低温吸収器50は、中温吸収器30内の低濃度溶液Scが、位置ヘッドでは低温吸収器50に流入しない高さに配置されている。また、中温吸収器30は、高温吸収器10内の中濃度溶液Sbが、位置ヘッドでは中温吸収器30に流入しない高さに配置されている。
上述のように構成された吸収ヒートポンプ1Cの作用は、吸収ヒートポンプ1A(図2参照)と同様である。したがって、吸収ヒートポンプ1Cは、起動時の、高温吸収器10と中温吸収器30との間に内圧の差が生じていないときに、溶液戻りポンプ16で中濃度溶液Sbを中温吸収器30に導くことができる。また、起動時の、中温吸収器30と低温吸収器50との間に内圧の差が生じていないときに、溶液戻りポンプ36で低濃度溶液Scを低温吸収器50に導くことができる。このため、吸収ヒートポンプ1Cの安定した起動が可能になる。なお、吸収ヒートポンプ1Cが定常運転状態となると、高温吸収器10の内部圧力が中温吸収器30の内部圧力よりも高くなり、両者の内圧の差によって、高温吸収器10内の中濃度溶液Sbを中温吸収器30に搬送することができるようになる。また、中温吸収器30の内部圧力が低温吸収器50の内部圧力よりも高くなり、両者の内圧の差によって、中温吸収器30内の低濃度溶液Scを低温吸収器50に搬送することができるようになる。このため、吸収ヒートポンプ1Cが定常運転状態になったら、溶液戻りポンプ16及び溶液戻りポンプ36を止めることができる。
次に図5を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る吸収ヒートポンプ2を説明する。図5は、吸収ヒートポンプ2の模式的系統図である。吸収ヒートポンプ2は、二段昇温型の吸収ヒートポンプである。吸収ヒートポンプ2は、吸収ヒートポンプ1(図1参照)と比較して、以下の点が異なっている。吸収ヒートポンプ2は、吸収ヒートポンプ1(図1参照)が備えていた溶液戻りポンプ36(図1参照)を備えていない。他方、吸収ヒートポンプ2は、第1バイパス17を備えている。第1バイパス17は、第1のバイパス流路としての第1バイパス管17sと、第1の弁17vとを有している。第1バイパス管17sは、中濃度溶液管15を流れる中濃度溶液Sbを、低温吸収器50を経由せずに再生器70へ導く管である。第1バイパス管17sは、一端が中濃度溶液管15に接続され、他端が再生器70に接続されている。なお、図5では、第1バイパス管17sの一端が、高温熱交換器18よりも下流側の中濃度溶液管15に接続されているが、高温熱交換器18よりも上流側の中濃度溶液管15に接続されていてもよい。第1の弁17vは、第1バイパス管17sに配設されている。第1の弁17vは、開にすることで第1バイパス管17sに中濃度溶液Sbを流すことができ、閉にすることで第1バイパス管17sの流路を遮断することができるように構成されている。第1バイパス17は、高温吸収器10の中濃度溶液Sbを直接的に(他の吸収器を経由せずに)再生器70に導く構成であり、吸収液戻り手段に相当する。また、吸収ヒートポンプ2は、低温熱交換器58と高温熱交換器18との間の高濃度溶液管75と、高温熱交換器18よりも下流側の中濃度溶液管15とが、低温近道管77で接続されている。低温近道管77には、内部を流れる吸収液Sの流量を調節可能な低温近道弁77vが配設されている。低温近道管77の接続部と高温熱交換器18との間の高濃度溶液管75には、内部を流れる吸収液Sの流量を調節可能な第1高濃度溶液弁175vが配設されている。低温近道管77の接続部と高温熱交換器18との間の中濃度溶液管15には、逆止弁19が配設されている。逆止弁19は、高温吸収器10側から低温吸収器50側への吸収液Sの流れを許し、その逆方向の流れを許さないように配設されている。吸収ヒートポンプ2の上記以外の構成は、吸収ヒートポンプ1A(図2参照)と同様である。したがって、吸収ヒートポンプ2においても、低温吸収器50は、高温吸収器10内の中濃度溶液Sbが、位置ヘッドでは低温吸収器50に流入しない高さに配置されている。
上述のように構成された吸収ヒートポンプ2の作用は、定常運転時は吸収ヒートポンプ1(図1参照)と同様である。なお、吸収ヒートポンプ2の定常運転時は、第1高濃度溶液弁175vが開になっており、第1の弁17v及び低温近道弁77vが閉になっている。吸収ヒートポンプ2は、吸収ヒートポンプ1(図1参照)の説明で述べたように、高温吸収器10内の中濃度溶液Sbが位置ヘッドでは低温吸収器50に流入しない高さに高温吸収器10及び低温吸収器50が配置されている。したがって、吸収ヒートポンプ2の起動時の、高温吸収器10と低温吸収器50との間に内圧の差が生じていないときは、まず、第1高濃度溶液弁175v及び低温近道弁77vを開けると共に高濃度溶液ポンプ76を起動して、再生器70内の吸収液Sを高温吸収器10及び低温吸収器50に導く。このとき、再生器70内の吸収液Sが高温吸収器10及び低温吸収器50に適切に供給されるように、第1高濃度溶液弁175v及び/又は低温近道弁77vの開度を調節するとよい。そして、吸収ヒートポンプ2の起動時は、高温吸収器10内の吸収液Sが低温吸収器50に戻らないので、第1の弁17vを開にする。すると、高温吸収器10内の吸収液Sは、位置ヘッドにより、第1バイパス管17sを流れて再生器70に流入する。他方、低温吸収器50内の吸収液Sは、位置ヘッドで再生器70に戻る。このように、吸収ヒートポンプ2の起動初期は、吸収液Sが、再生器70と高温吸収器10との間を循環すると共に、再生器70と低温吸収器50との間を循環する。すると、高温吸収器10の内部圧力が徐々に上昇していくので、第1の弁17v及び低温近道弁77vを徐々に閉める。そして、高温吸収器10内の中濃度溶液Sbを、高温吸収器10と低温吸収器50との内圧の差によって低温吸収器50に搬送できるようになったら、第1の弁17v及び低温近道弁77vを全閉にして定常運転に移行する。このように、吸収ヒートポンプ2は、起動時の、高温吸収器10と低温吸収器50との間に内圧の差が生じていないときに、第1バイパス管17sを介して高温吸収器10内の吸収液Sを再生器70に導くことができ、吸収ヒートポンプ2の安定した起動が可能になる。なお、第1の弁17v、低温近道弁77v、第1高濃度溶液弁175vの開閉は、制御装置(不図示)によって行われるが、手動で行ってもよい。
次に図6を参照して、本発明の第2の実施の形態の変形例に係る吸収ヒートポンプ2Aを説明する。図6は、吸収ヒートポンプ2Aの模式的系統図である。吸収ヒートポンプ2Aは、三段昇温型の吸収ヒートポンプである。吸収ヒートポンプ2Aは、吸収ヒートポンプ1C(図4参照)と比較して、以下の点が異なっている。吸収ヒートポンプ2Aは、吸収ヒートポンプ1C(図4参照)が備えていた溶液戻りポンプ16(図4参照)及び溶液戻りポンプ36(図4参照)を備えていない。他方、吸収ヒートポンプ2Aは、第1バイパス17と、第2バイパス37とを備えている。第1バイパス17は、吸収ヒートポンプ2(図5参照)に設けられている第1バイパス17と、構成、配置、機能が同じである。ただし、図6では、第1バイパス管17sの一端が高温熱交換器18よりも上流側の中濃度溶液管15に接続されているが、高温熱交換器18よりも下流側の中濃度溶液管15に接続されていてもよい。
第2バイパス37は、第2のバイパス流路としての第2バイパス管37sと、第2の弁37vとを有している。第2バイパス管37sは、低濃度溶液管35を流れる低濃度溶液Scを、低温吸収器50を経由せずに再生器70へ導く管である。第2バイパス管37sは、一端が低濃度溶液管35に接続され、他端が再生器70に接続されている。なお、図6では、第2バイパス管37sの一端が、中温熱交換器38よりも上流側の低濃度溶液管35に接続されているが、中温熱交換器38よりも下流側の低濃度溶液管35に接続されていてもよい。第2の弁37vは、第2バイパス管37sに配設されている。第2の弁37vは、開にすることで第2バイパス管37sに低濃度溶液Scを流すことができ、閉にすることで第2バイパス管37sの流路を遮断することができるように構成されている。
また、吸収ヒートポンプ2Aは、低温熱交換器58と中温熱交換器38との間の高濃度溶液管75と、中温熱交換器38よりも下流側の低濃度溶液管35とが、低温近道管77で接続されている。低温近道管77には、内部を流れる吸収液Sの流量を調節可能な低温近道弁77vが配設されている。低温近道管77の接続部と中温熱交換器38との間の高濃度溶液管75には、内部を流れる吸収液Sの流量を調節可能な第1高濃度溶液弁175vが配設されている。低温近道管77の接続部と中温熱交換器38との間の低濃度溶液管35には、逆止弁39が配設されている。逆止弁39は、中温吸収器30側から低温吸収器50側への吸収液Sの流れを許し、その逆方向の流れを許さないように配設されている。また、吸収ヒートポンプ2Aは、中温熱交換器38と高温熱交換器18との間の高濃度溶液管75と、高温熱交換器18よりも下流側の中濃度溶液管15とが、中温近道管78で接続されている。中温近道管78には、内部を流れる吸収液Sの流量を調節可能な中温近道弁78vが配設されている。中温近道管78の接続部と高温熱交換器18との間の高濃度溶液管75には、内部を流れる吸収液Sの流量を調節可能な第2高濃度溶液弁275vが配設されている。中温近道管78の接続部と高温熱交換器18との間の中濃度溶液管15には、逆止弁19が配設されている。逆止弁19は、高温吸収器10側から中温吸収器30側への吸収液Sの流れを許し、その逆方向の流れを許さないように配設されている。吸収ヒートポンプ2Aの上記以外の構成は、吸収ヒートポンプ1C(図4参照)と同様である。したがって、吸収ヒートポンプ2Aにおいても、低温吸収器50は、中温吸収器30内の低濃度溶液Scが、位置ヘッドでは低温吸収器50に流入しない高さに配置されている。また、中温吸収器30は、高温吸収器10内の中濃度溶液Sbが、位置ヘッドでは中温吸収器30に流入しない高さに配置されている。
上述のように構成された吸収ヒートポンプ2Aの作用は、定常運転時は吸収ヒートポンプ1C(図4参照)と同様である。なお、吸収ヒートポンプ2Aの定常運転時は、第1高濃度溶液弁175v及び第2高濃度溶液弁275vが開になっており、第1の弁17v、第2の弁37v、低温近道弁77v及び中温近道弁78vが閉になっている。吸収ヒートポンプ2Aは、吸収ヒートポンプ1C(図4参照)の説明で述べたように、高温吸収器10内の中濃度溶液Sbが位置ヘッドでは中温吸収器30に流入しない高さに高温吸収器10及び中温吸収器30が配置されている。また、中温吸収器30及び低温吸収器50は、中温吸収器30内の低濃度溶液Scが位置ヘッドでは低温吸収器50に流入しない高さに配置されている。したがって、吸収ヒートポンプ2Aの起動時の、高温吸収器10と中温吸収器30との間に内圧の差が生じていないとき、及び中温吸収器30と低温吸収器50との間に内圧の差が生じていないときは、まず、第1高濃度溶液弁175v、第2高濃度溶液弁275v、低温近道弁77v及び中温近道弁78vを開けると共に高濃度溶液ポンプ76を起動して、再生器70内の吸収液Sを高温吸収器10、中温吸収器30及び低温吸収器50に導く。このとき、再生器70内の吸収液Sが高温吸収器10、中温吸収器30及び低温吸収器50に適切に供給されるように、第1高濃度溶液弁175v及び/又は第2高濃度溶液弁275v及び/又は低温近道弁77v及び/又は中温近道弁78vの開度を調節するとよい。そして、吸収ヒートポンプ2Aの起動時は、高温吸収器10内の吸収液Sが中温吸収器30に戻らず、また、中温吸収器30内の吸収液Sが低温吸収器50に戻らないので、第1の弁17v及び第2の弁37vを開にする。第1の弁17vを開にすると、高温吸収器10内の吸収液Sは、位置ヘッドにより、第1バイパス管17sを流れて再生器70に流入する。第2の弁37vを開にすると、中温吸収器30内の吸収液Sは、位置ヘッドにより、第2バイパス管37sを流れて再生器70に流入する。低温吸収器50内の吸収液Sは、位置ヘッドで再生器70に戻る。このように、吸収ヒートポンプ2Aの起動初期は、吸収液Sが、再生器70と高温吸収器10との間を循環し、再生器70と中温吸収器30との間を循環し、再生器70と低温吸収器50との間を循環する。すると、高温吸収器10の内部圧力が徐々に上昇していくので、第1の弁17v及び中温近道弁78vを徐々に閉める。また、中温吸収器30の内部圧力が徐々に上昇していくので、第2の弁37v及び低温近道弁77vを徐々に閉める。そして、高温吸収器10内の中濃度溶液Sbを、高温吸収器10と中温吸収器30との内圧の差によって中温吸収器30に搬送できるようになったら、第1の弁17v及び中温近道弁78vを全閉にする。高温吸収器10内の中濃度溶液Sbが高温吸収器10と中温吸収器30との内圧の差で中温吸収器30に流入するようになったとき、第2バイパス37は、高温吸収器10の吸収液Sを、中温吸収器30を介して(間接的に)再生器70に導くこととなる。この場合の第2バイパス37は、吸収液戻り手段として機能していると見ることができる。他方、中温吸収器30内の低濃度溶液Scを、中温吸収器30と低温吸収器50との内圧の差によって低温吸収器50に搬送できるようになったら、第2の弁37v及び低温近道弁77vを全閉にする。中温近道弁78v及び低温近道弁77vを全閉にすることで定常運転に移行する。このように、吸収ヒートポンプ2Aは、起動時の、高温吸収器10と中温吸収器30との間に内圧の差が生じていないときに第1バイパス管17sを介して高温吸収器10内の吸収液Sを再生器70に導くことができ、中温吸収器30と低温吸収器50との間に内圧の差が生じていないときに第2バイパス管37sを介して中温吸収器30内の吸収液Sを再生器70に導くことができ、吸収ヒートポンプ2Aの安定した起動が可能になる。なお、第1の弁17vの開閉、第2の弁37v、低温近道弁77v、中温近道弁78v、第1高濃度溶液弁175v、第2高濃度溶液弁275vの開閉は、制御装置(不図示)によって行われるが、手動で行ってもよい。
以上の説明では、吸収ヒートポンプ1、1A、1B、1Cは、起動時に、溶液戻りポンプ36によって高温吸収器10内の吸収液Sを直接的又は間接的に低温吸収器50に導くこととし、吸収ヒートポンプ2、2Aは、起動時に、第1バイパス17によって高温吸収器10内の吸収液Sを直接的又は間接的に再生器70に導くこととしたが、各吸収ヒートポンプ1、1A、1B、1Cの構成に対して、吸収ヒートポンプ2、2Aの第1バイパス17の構成を設け、起動時に、高温吸収器10内の吸収液Sを直接的又は間接的に低温吸収器50に導くと共に、高温吸収器10内の吸収液Sを直接的又は間接的に再生器70に導くこととしてもよい。また、吸収ヒートポンプ1A、1B、1Cをベースとして第1バイパス17を付加した構成においては、さらに吸収ヒートポンプ2Aの第2バイパス37の構成を設け、起動時に、高温吸収器10内の吸収液Sを直接的又は間接的に低温吸収器50に導くと共に、高温吸収器10内の吸収液Sを再生器70に導く、及び/又は中温吸収器30内の吸収液Sを再生器70に導くこととしてもよい。