熱交換器の用途の1つとして、排熱を回収することが挙げられる。排熱は、使用されずに捨てられる熱であるため、排熱を回収して温度を上昇させる低温の流体の出口温度を、排熱を含む高温の流体の入口温度よりも高い温度にすることができれば、活用の幅が広がることとなる。
本発明は上述の課題に鑑み、低温の流体に相当する被加熱流体の出口温度を、高温の流体に相当する加熱源流体の入口温度よりも高くすることができる吸収式熱交換システムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る吸収式熱交換システムは、例えば図1に示すように、冷媒の蒸気Vgが凝縮して冷媒液Vfとなる際に放出した凝縮熱によって被加熱流体FLの温度を上昇させる凝縮部40と;凝縮部40から冷媒液Vfを導入し、導入した冷媒液Vfが蒸発して冷媒蒸気Veとなる際に必要な蒸発潜熱を加熱源流体FHから奪うことで加熱源流体FHの温度を低下させる蒸発部20と;蒸発部20から冷媒蒸気Veを導入すると共に凝縮部40において温度が上昇した被加熱流体FLを導入し、導入した冷媒蒸気Veを吸収液Saが吸収して濃度が低下した希溶液Swとなる際に放出した吸収熱によって導入した被加熱流体FLの温度を上昇させる吸収部10と;吸収部10から希溶液Swを導入し、導入した希溶液Swを加熱し希溶液Swから冷媒Vgを離脱させて濃度が上昇した濃溶液Saとするのに必要な熱を加熱源流体FHから奪うことで加熱源流体FHの温度を低下させる再生部30と;吸収部10において温度が上昇する前の被加熱流体FLと、吸収部10において温度が上昇する前の被加熱流体FLの温度を上昇させる昇温流体FHと、の間で熱交換を行わせる熱交換部80とを備え;吸収液Sa、Swと冷媒Ve、Vf、Vgとの吸収ヒートポンプサイクルによって、吸収部10は再生部30よりも内部の圧力及び温度が高くなり、蒸発部20は凝縮部40よりも内部の圧力及び温度が高くなるように構成されている。
このように構成すると、吸収部から流出する被加熱流体の温度を、蒸発部に流入する加熱源流体の温度よりも高くすることができる。
また、本発明の第2の態様に係る吸収式熱交換システムは、例えば図1に示すように、上記本発明の第1の態様に係る吸収式熱交換システム1において、蒸発部20において温度が低下した後の加熱源流体FHを、再生部30内の希溶液Swを加熱するために再生部30に導入するように構成されている。
このように構成すると、再生部において吸収液が過度に濃縮してしまうことを抑制することができる。
また、本発明の第3の態様に係る吸収式熱交換システムは、例えば図1に示すように、上記本発明の第2の態様に係る吸収式熱交換システム1において、熱交換部80は、再生部30において温度が低下した後の加熱源流体FHを昇温流体として導入する第1の熱交換部81を含んで構成されている。
このように構成すると、加熱源流体の全量を蒸発部及び再生部に導入することが可能となって蒸発部及び再生部に投入する熱量を最大化することができる。
また、本発明の第4の態様に係る吸収式熱交換システムは、例えば図2に示すように、上記本発明の第2の態様又は第3の態様に係る吸収式熱交換システム2において、熱交換部80は、蒸発部20に導入される前の加熱源流体FHから分岐された一部の加熱源流体FHsを昇温流体として導入する第2の熱交換部82を含んで構成されている。
このように構成すると、加熱源流体の分岐比に応じて、吸収部に導入される被加熱流体の温度を調節することができる。
また、本発明の第5の態様に係る吸収式熱交換システムは、例えば図2を参照して示すと、上記本発明の第4の態様に係る吸収式熱交換システム2において、吸収部10に導入される被加熱流体FLの温度が所定の温度になるように、蒸発部20に流入する加熱源流体FHの流量と第2の熱交換部82に流入する加熱源流体FHの流量との比が設定されている。
このように構成すると、吸収部に導入される被加熱流体の温度を所定の温度に設定することができる。
また、本発明の第6の態様に係る吸収式熱交換システムは、例えば図1を参照して示すと、上記本発明の第2の態様乃至第5の態様のいずれか1つの態様に係る吸収式熱交換システム1において、凝縮部40に導入される被加熱流体FLの温度が再生部30から流出した加熱源流体FHの温度よりも低く、吸収部10から流出する被加熱流体FLの温度が蒸発部20に流入する加熱源流体FHの温度よりも高くなるように、被加熱流体FLの流量と加熱源流体FHの流量との比が設定されている。
このように構成すると、吸収液と冷媒との吸収ヒートポンプサイクルを介して、加熱源流体が保有する熱のより多くを被加熱流体に移動させることができる。
また、本発明の第7の態様に係る吸収式熱交換システムは、例えば図5を参照して示すと、上記本発明の第1の態様に係る吸収式熱交換システム1Aにおいて、再生部30において温度が低下した後の加熱源流体FHを、蒸発部20内の冷媒液Vfを加熱するために蒸発部20に導入するように構成されている。
このように構成すると、蒸発部において温度が低下した後の加熱源流体を再生部に導入する場合に比べて、被加熱流体が得る熱量を増大させることができる。
また、本発明の第8の態様に係る吸収式熱交換システムは、例えば図5を参照して示すと、上記本発明の第7の態様に係る吸収式熱交換システム1Aにおいて、熱交換部80は、蒸発部20において温度が低下した後の加熱源流体FHを昇温流体として導入する第3の熱交換部81を含んで構成されている。
このように構成すると、加熱源流体の全量を蒸発部及び再生部に導入することが可能となって蒸発部及び再生部に投入する熱量を最大化することができる。
また、本発明の第9の態様に係る吸収式熱交換システムは、例えば図6を参照して示すと、上記本発明の第7の態様又は第8の態様に係る吸収式熱交換システム2Aにおいて、熱交換部80は、再生部30に導入される前の加熱源流体FHから分岐された一部の加熱源流体FHsを昇温流体として導入する第4の熱交換部82を含んで構成されている。
このように構成すると、加熱源流体の分岐比に応じて、吸収部に導入される被加熱流体の温度を調節することができる。
また、本発明の第10の態様に係る吸収式熱交換システムは、例えば図6を参照して示すと、上記本発明の第9の態様に係る吸収式熱交換システム2Aにおいて、吸収部10に導入される被加熱流体FLの温度が所定の温度になるように、再生部30に流入する加熱源流体FHの流量と第4の熱交換部82に流入する加熱源流体FHの流量との比が設定されている。
このように構成すると、吸収部に導入される被加熱流体の温度を所定の温度に設定することができる。
また、本発明の第11の態様に係る吸収式熱交換システムは、例えば図5を参照して示すと、上記本発明の第7の態様乃至第10の態様のいずれか1つの態様に係る吸収式熱交換システム1Aにおいて、凝縮部40に導入される被加熱流体FLの温度が蒸発部20から流出した加熱源流体FHの温度よりも低く、吸収部10から流出する被加熱流体FLの温度が再生部30に流入する加熱源流体FHの温度よりも高くなるように、被加熱流体FLの流量と加熱源流体FHの流量との比が設定されている。
このように構成すると、吸収液と冷媒との吸収ヒートポンプサイクルを介して、加熱源流体が保有する熱のより多くを被加熱流体に移動させることができる。
また、本発明の第12の態様に係る吸収式熱交換システムは、例えば図9を参照して示すと、上記本発明の第1の態様に係る吸収式熱交換システム1Bにおいて、蒸発部20に導入される加熱源流体FHと、再生部30に導入される加熱源流体FHとが、並列に導入されるように構成されている。
このように構成すると、蒸発部における加熱源流体からの抜熱量と再生部における加熱源流体からの抜熱量とを同程度にすることができる。さらに、被加熱流体が得る熱量を増大させつつ、再生部において吸収液が過度に濃縮することを抑制することができる。
また、本発明の第13の態様に係る吸収式熱交換システムは、例えば図10を参照して示すと、上記本発明の第12の態様に係る吸収式熱交換システム2Bにおいて、熱交換部80は、蒸発部20及び再生部30に導入される前の加熱源流体FHから分岐された一部の加熱源流体FHsを昇温流体として導入する第5の熱交換部82を含んで構成されている。
このように構成すると、加熱源流体の分岐比に応じて、吸収部に導入される被加熱流体の温度を調節することができる。
また、本発明の第14の態様に係る吸収式熱交換システムは、例えば図10を参照して示すと、上記本発明の第13の態様に係る吸収式熱交換システム2Bにおいて、吸収部10に導入される被加熱流体FLの温度が所定の温度になるように、蒸発部20及び再生部30に流入する加熱源流体FHの流量と第5の熱交換部82に流入する加熱源流体FHsの流量との比が設定されている。
このように構成すると、吸収部に導入される被加熱流体の温度を所定の温度に設定することができる。
また、本発明の第15の態様に係る吸収式熱交換システムは、例えば図11を参照して示すと、上記本発明の第12の態様乃至第14の態様のいずれか1つの態様に係る吸収式熱交換システム3Bにおいて、熱交換部80は、再生部30において温度が低下した後の加熱源流体FH及び蒸発部20において温度が低下した後の加熱源流体FHの少なくとも一方を昇温流体として導入する第6の熱交換部81を含んで構成されている。
このように構成すると、蒸発部において熱を奪われた加熱源流体及び再生部において熱を奪われた加熱源流体の少なくとも一方が保有している熱を有効利用することができ、熱利用効率を向上させることができる。
また、本発明の第16の態様に係る吸収式熱交換システムは、例えば図11を参照して示すと、上記本発明の第13の態様又は第14の態様に係る吸収式熱交換システム3Bにおいて、熱交換部80は、再生部30において温度が低下した後の加熱源流体FH及び蒸発部20において温度が低下した後の加熱源流体FHの少なくとも一方を昇温流体として導入する第6の熱交換部81を含んで構成され;第6の熱交換部81で温度が上昇した被加熱流体FLが第5の熱交換部82に導入され、第5の熱交換部82で温度が低下した加熱源流体FHsが第6の熱交換部81に導入されるように構成されている。
このように構成すると、被加熱流体と加熱源流体との熱交換を効率よく行わせることができる。
また、本発明の第17の態様に係る吸収式熱交換システムは、例えば図9を参照して示すと、上記本発明の第12の態様乃至第16の態様のいずれか1つの態様に係る吸収式熱交換システム1Bにおいて、凝縮部40に導入される被加熱流体FLの温度が蒸発部20及び再生部30から流出した加熱源流体FHの温度よりも低く、吸収部10から流出する被加熱流体FLの温度が蒸発部20及び再生部30に流入する加熱源流体FHの温度よりも高くなるように、被加熱流体FLの流量と加熱源流体FHの流量との比が設定されている。
このように構成すると、吸収液と冷媒との吸収ヒートポンプサイクルを介して、加熱源流体が保有する熱のより多くを被加熱流体に移動させることができる。
また、本発明の第18の態様に係る吸収式熱交換システムは、例えば図4に示すように、上記本発明の第1の態様乃至第17の態様のいずれか1つの態様に係る吸収式熱交換システム4において、凝縮部40から蒸発部20に搬送される冷媒液Vfと、熱交換部80から流出した昇温流体FHと、の間で熱交換を行わせる冷媒熱交換器99を備える。
このように構成すると、吸収式熱交換システムから流出する加熱源流体の温度を下げることができ、吸収式熱交換システムにおいて加熱源流体から回収する熱量を増加させることができる。
本発明によれば、吸収部から流出する被加熱流体の温度を、蒸発部に流入する加熱源流体の温度よりも高くすることができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
まず図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る吸収式熱交換システム1を説明する。図1は、吸収式熱交換システム1の模式的系統図である。吸収式熱交換システム1は、吸収液と冷媒との吸収ヒートポンプサイクルを利用して、低温流体FLの出口温度が高温流体FHの入口温度よりも高くなるように、低温流体FLと高温流体FHとの熱交換を行わせるシステムである。ここで、低温流体FLは、吸収式熱交換システム1において温度を上昇させる対象となる流体であり、被加熱流体に相当する。高温流体FHは、吸収式熱交換システム1において温度が低下する流体であり、加熱源流体に相当する。吸収式熱交換システム1は、吸収液S(Sa、Sw)と冷媒V(Ve、Vg、Vf)との吸収ヒートポンプサイクルが行われる主要機器を構成する吸収器10、蒸発器20、再生器30、及び凝縮器40を備え、さらに、第1熱交換部81を備えている。吸収器10、蒸発器20、再生器30、凝縮器40は、それぞれ、吸収部、蒸発部、再生部、凝縮部に相当する。
本明細書においては、吸収液に関し、ヒートポンプサイクル上における区別を容易にするために、性状やヒートポンプサイクル上の位置に応じて「希溶液Sw」や「濃溶液Sa」等と呼称するが、性状等を不問にするときは総称して「吸収液S」ということとする。同様に、冷媒に関し、ヒートポンプサイクル上における区別を容易にするために、性状やヒートポンプサイクル上の位置に応じて「蒸発器冷媒蒸気Ve」、「再生器冷媒蒸気Vg」、「冷媒液Vf」等と呼称するが、性状等を不問にするときは総称して「冷媒V」ということとする。本実施の形態では、吸収液S(吸収剤と冷媒Vとの混合物)としてLiBr水溶液が用いられており、冷媒Vとして水(H2O)が用いられている。
吸収器10は、低温流体FLの流路を構成する伝熱管12と、濃溶液Saを伝熱管12の表面に供給する濃溶液供給装置13とを内部に有している。吸収器10は、濃溶液供給装置13から濃溶液Saが伝熱管12の表面に供給され、濃溶液Saが蒸発器冷媒蒸気Veを吸収して希溶液Swとなる際に吸収熱を発生させる。この吸収熱を、伝熱管12を流れる低温流体FLが受熱して、低温流体FLが加熱されるように構成されている。
蒸発器20は、高温流体FHの流路を構成する熱源管22を、蒸発器缶胴21の内部に有している。蒸発器20は、蒸発器缶胴21の内部に冷媒液Vfを散布するノズルを有していない。このため、熱源管22は、蒸発器缶胴21内に貯留された冷媒液Vfに浸かるように配設されている(満液式蒸発器)。蒸発器20は、熱源管22周辺の冷媒液Vfが熱源管22内を流れる高温流体FHの熱で蒸発して蒸発器冷媒蒸気Veが発生するように構成されている。蒸発器缶胴21には、蒸発器缶胴21内に冷媒液Vfを供給する冷媒液管45が接続されている。
吸収器10と蒸発器20とは、相互に連通している。吸収器10と蒸発器20とが連通することにより、蒸発器20で発生した蒸発器冷媒蒸気Veを吸収器10に供給することができるように構成されている。
再生器30は、希溶液Swを加熱する高温流体FHを内部に流す熱源管32と、希溶液Swを熱源管32の表面に供給する希溶液供給装置33とを有している。熱源管32内を流れる高温流体FHは、蒸発器20の熱源管22内を流れた後の高温流体FHとなっている。蒸発器20の熱源管22と再生器30の熱源管32とは、高温流体FHを流す高温流体連絡管25で接続されている。再生器30の熱源管32の高温流体連絡管25が接続された端部とは反対側の端部には、高温流体排出管39が接続されている。高温流体排出管39は、高温流体FHを系外へ導く流路を構成する管である。再生器30は、希溶液供給装置33から供給された希溶液Swが高温流体FHに加熱されることにより、希溶液Swから冷媒Vが蒸発して濃度が上昇した濃溶液Saが生成されるように構成されている。希溶液Swから蒸発した冷媒Vは再生器冷媒蒸気Vgとして凝縮器40に移動するように構成されている。
凝縮器40は、低温流体FLが流れる伝熱管42を凝縮器缶胴41の内部に有している。伝熱管42内を流れる低温流体FLは、その後で吸収器10の伝熱管12内を流れる。凝縮器40の伝熱管42と吸収器10の伝熱管12とは、低温流体FLを流す低温流体連絡管15で接続されている。凝縮器40は、再生器30で発生した再生器冷媒蒸気Vgを導入し、これが凝縮して冷媒液Vfとなる際に放出した凝縮熱を、伝熱管42内を流れる低温流体FLが受熱して、低温流体FLが加熱されるように構成されている。再生器30と凝縮器40とは、相互に連通するように、再生器30の缶胴と凝縮器缶胴41とが一体に形成されている。再生器30と凝縮器40とが連通することにより、再生器30で発生した再生器冷媒蒸気Vgを凝縮器40に供給することができるように構成されている。
再生器30の濃溶液Saが貯留される部分と吸収器10の濃溶液供給装置13とは、濃溶液Saを流す濃溶液管35で接続されている。濃溶液管35には、濃溶液Saを圧送する溶液ポンプ35pが配設されている。吸収器10の希溶液Swが貯留される部分と希溶液供給装置33とは、希溶液Swを流す希溶液管36で接続されている。濃溶液管35及び希溶液管36には、濃溶液Saと希溶液Swとの間で熱交換を行わせる溶液熱交換器38が配設されている。凝縮器40の冷媒液Vfが貯留される部分と蒸発器缶胴21とは、冷媒液Vfを流す冷媒液管45で接続されている。冷媒液管45には、冷媒液Vfを圧送する冷媒ポンプ46が配設されている。
第1熱交換部81は、低温流体連絡管15及び高温流体排出管39に配設されており、低温流体連絡管15を流れる低温流体FLと高温流体排出管39を流れる高温流体FHとで熱交換を行わせるように構成されている。第1熱交換部81は、熱交換部80の一形態であり、第1の熱交換部に相当する。第1熱交換部81は、典型的にはシェルアンドチューブ型熱交換器で構成されているが、プレート型熱交換器等の、2つの流体の間で熱交換させる機器であってもよい。
吸収式熱交換システム1は、定常運転中、吸収器10の内部の圧力及び温度は再生器30の内部の圧力及び温度よりも高くなり、蒸発器20の内部の圧力及び温度は凝縮器40の内部の圧力及び温度よりも高くなる。吸収式熱交換システム1は、吸収器10、蒸発器20、再生器30、凝縮器40が、第2種吸収ヒートポンプの構成となっている。
引き続き図1を参照して、吸収式熱交換システム1の作用を説明する。まず、冷媒側の吸収ヒートポンプサイクルを説明する。凝縮器40では、再生器30で蒸発した再生器冷媒蒸気Vgを受け入れて、伝熱管42を流れる低温流体FLによって再生器冷媒蒸気Vgが冷却されて凝縮し、冷媒液Vfとなる。このとき、低温流体FLは、再生器冷媒蒸気Vgが凝縮する際に放出した凝縮熱によって温度が上昇する。凝縮した冷媒液Vfは、冷媒ポンプ46で蒸発器缶胴21に送られる。蒸発器缶胴21に送られた冷媒液Vfは、熱源管22内を流れる高温流体FHによって加熱され、蒸発して蒸発器冷媒蒸気Veとなる。このとき、高温流体FHは、冷媒液Vfに熱を奪われて温度が低下する。蒸発器20で発生した蒸発器冷媒蒸気Veは、蒸発器20と連通する吸収器10へと移動する。
次に溶液側の吸収ヒートポンプサイクルを説明する。吸収器10では、濃溶液Saが濃溶液供給装置13から供給され、この供給された濃溶液Saが蒸発器20から移動してきた蒸発器冷媒蒸気Veを吸収する。蒸発器冷媒蒸気Veを吸収した濃溶液Saは、濃度が低下して希溶液Swとなる。吸収器10では、濃溶液Saが蒸発器冷媒蒸気Veを吸収する際に吸収熱が発生する。この吸収熱により、伝熱管12を流れる低温流体FLが加熱され、低温流体FLの温度が上昇する。伝熱管12を流れる低温流体FLは、凝縮器40の伝熱管42及び第1熱交換部81を通過してきたものである。吸収器10で蒸発器冷媒蒸気Veを吸収した濃溶液Saは、濃度が低下して希溶液Swとなり、吸収器10の下部に貯留される。貯留された希溶液Swは、吸収器10と再生器30との内圧の差により再生器30に向かって希溶液管36を流れ、溶液熱交換器38で濃溶液Saと熱交換して温度が低下して、再生器30に至る。
再生器30に送られた希溶液Swは、希溶液供給装置33から供給され、熱源管32を流れる高温流体FHによって加熱され、供給された希溶液Sw中の冷媒が蒸発して濃溶液Saとなり、再生器30の下部に貯留される。このとき、高温流体FHは、希溶液Swに熱を奪われて温度が低下する。熱源管32を流れる高温流体FHは、蒸発器20の熱源管22を通過してきたものである。希溶液Swから蒸発した冷媒Vは、再生器冷媒蒸気Vgとして凝縮器40へと移動する。再生器30の下部に貯留された濃溶液Saは、溶液ポンプ35pにより、濃溶液管35を介して吸収器10の濃溶液供給装置13に圧送される。濃溶液管35を流れる濃溶液Saは、溶液熱交換器38で希溶液Swと熱交換して温度が上昇してから吸収器10に流入し、濃溶液供給装置13から供給され、以降、同様のサイクルを繰り返す。
吸収液S及び冷媒Vが上記のような吸収ヒートポンプサイクルを行う過程における、高温流体FH及び低温流体FLの温度の変化を、具体例を挙げて説明する。95℃で蒸発器20の熱源管22に流入した高温流体FHは、冷媒液Vfに熱を奪われて90℃に温度が低下する。蒸発器20から流出した高温流体FHは、高温流体連絡管25を流れた後、90℃で再生器30の熱源管32に流入する。熱源管32に流入した高温流体FHは、希溶液Swに熱を奪われて85℃に温度が低下する。再生器30で温度が低下した高温流体FHは、85℃で再生器30を流出し、高温流体排出管39を流れて第1熱交換部81に流入する。
他方、32℃で凝縮器40の伝熱管42に流入した低温流体FLは、再生器冷媒蒸気Vgが凝縮する際に放出した凝縮熱を得て、57℃に温度が上昇する。凝縮器40から流出した低温流体FLは、低温流体連絡管15を流れて第1熱交換部81に流入する。第1熱交換部81では、高温流体排出管39を流れる高温流体FHと低温流体連絡管15を流れる低温流体FLとの間で熱交換が行われ、85℃の高温流体FHは80℃に温度が低下し、57℃の低温流体FLは82℃に温度が上昇する。80℃に温度が低下した高温流体FHは、引き続き高温流体排出管39を流れて吸収式熱交換システム1から排出される。82℃に温度が上昇した低温流体FLは、吸収器10の伝熱管12に流入する。伝熱管12に流入した低温流体FLは、濃溶液Saが蒸発器冷媒蒸気Veを吸収する際に発生した吸収熱を得て107℃に温度が上昇する。吸収器10で温度が上昇した低温流体FLは、107℃で吸収器10を流出し、利用場所に供給される。
吸収式熱交換システム1では、上述のような温度関係を成り立たせるために、高温流体FHの流量に対する低温流体FLの流量の比を決定している。本実施の形態では、低温流体FLの流量を、高温流体FHの流量の約1/5としている。換言すれば、低温流体FLと高温流体FHとの流量比を約1:5としている。この流量比は、あらかじめ決められた値にしたがって採用したサイズの配管やオリフィス等を用いることで固定してもよく、バルブ等を用いて自動又は手動で調節可能に構成してもよい。このようにして、吸収式熱交換システム1から流出する低温流体FLの温度(107℃)を、吸収式熱交換システム1に流入する高温流体FHの温度(95℃)よりも高くすることができる。ここで、吸収式熱交換システム1は、高温流体FHと低温流体FLとの間で熱交換を行わせる一つの熱交換器とみることができる。従来の熱交換器では、低温の流体の流量を高温の流体の流量よりも少なくすれば、低温の流体の出口温度を、高温の流体の入口温度に近づけることはできたが、高温の流体の入口温度よりも高くすることができなかった。この点、本実施の形態に係る吸収式熱交換システム1では、上述のように、吸収式熱交換システム1から流出する低温流体FLの温度を、吸収式熱交換システム1に流入する高温流体FHの温度よりも高くすることができる。
以上で説明したように、本実施の形態に係る吸収式熱交換システム1によれば、第2種吸収ヒートポンプの機能を発揮する吸収器10、蒸発器20、再生器30、凝縮器40における吸収液Sと冷媒Vとの吸収ヒートポンプサイクルを介して間接的に高温流体FHと低温流体FLとの熱交換を行わせると共に、第1熱交換部81において直接的に高温流体FHと低温流体FLとの熱交換を行わせることで、低温流体FLが高温流体FHから熱を奪った上で、吸収式熱交換システム1から流出する低温流体FLの温度を、流入する高温流体FHの温度よりも高くすることができる。また、吸収式熱交換システム1では、凝縮器40を通過した低温流体FLを吸収器10に導入して低温流体FLの温度を上昇させているため、第2種吸収ヒートポンプでは必要となる冷却水が不要となり、これに伴う付帯設備(冷却水ポンプ、冷却塔等)が不要になる。また、吸収式熱交換システム1では、第2種吸収ヒートポンプのように冷却水に捨てる熱がなく、凝縮器40における凝縮熱を低温流体FLの加熱に利用しているため、効率(COP)が第2種吸収ヒートポンプよりも高く(概ね2倍程度)大型の熱交換器と同等にすることができる。また、吸収式熱交換システム1では、再生器30に流入する高温流体FHの温度が蒸発器20で熱を消費した分だけ低い温度になるので、再生器30における吸収液Sの濃度の上昇を抑制して吸収液Sが過度に濃縮してしまうことを回避することができる。
次に図2を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る吸収式熱交換システム2を説明する。図2は、吸収式熱交換システム2の模式的系統図である。吸収式熱交換システム2は、主として以下の点で吸収式熱交換システム1(図1参照)と異なっている。吸収式熱交換システム2は、蒸発器20に導入される前の高温流体FHの一部を分岐した部分高温流体FHsを、再生器30から流出した高温流体FHに合流させる高温流体迂回管29が設けられている。高温流体迂回管29の一端は、高温流体FHを熱源管22に導入する高温流体導入管24に接続されている。高温流体迂回管29の他端は、高温流体排出管39に接続されている。本実施の形態では、高温流体排出管39を流れる高温流体FHは、熱交換部80を介さずに系外に排出される。また、吸収式熱交換システム2は、第1熱交換部81(図1参照)に代えて、第2熱交換部82が設けられている。第2熱交換部82は、低温流体連絡管15を流れる低温流体FLと、高温流体迂回管29を流れる部分高温流体FHsとの間で熱交換を行わせる機器である。第2熱交換部82は、低温流体連絡管15及び高温流体迂回管29に配設されている。第2熱交換部82は、熱交換部80の一形態であり、第2の熱交換部に相当する。第2熱交換部82は、典型的にはシェルアンドチューブ型熱交換器で構成されているが、プレート型熱交換器等の、2つの流体の間で熱交換させる機器であってもよい。吸収式熱交換システム2の上記以外の構成は、吸収式熱交換システム1(図1参照)と同様である。
上述のように構成された吸収式熱交換システム2の作用は以下の通りである。吸収器10、蒸発器20、再生器30、凝縮器40における吸収液Sと冷媒Vとの吸収ヒートポンプサイクルは、吸収式熱交換システム1(図1参照)と同様に作用する。蒸発器20に向かって高温流体導入管24を流れる高温流体FHは、一部が分岐して部分高温流体FHsとして高温流体迂回管29に流入し、残りの高温流体FHが熱源管22に流入する。熱源管22に流入した高温流体FHは、冷媒液Vfに熱を奪われて温度が低下し、蒸発器20から流出して高温流体連絡管25を流れた後に再生器30の熱源管32に流入し、再生器30において希溶液Swに熱を奪われて温度が低下して再生器30を流出する。高温流体導入管24から高温流体迂回管29に流入した高温流体FHは、第2熱交換部82に流入する。他方、凝縮器40の伝熱管42に流入した低温流体FLは、再生器冷媒蒸気Vgが凝縮する際に放出した凝縮熱を得て温度が上昇し、凝縮器40から流出して第2熱交換部82に流入する。第2熱交換部82では、高温流体迂回管29を流れる部分高温流体FHsと低温流体連絡管15を流れる低温流体FLとの間で熱交換が行われ、部分高温流体FHsは温度が低下し、低温流体FLは温度が上昇する。第2熱交換部82において温度が低下した部分高温流体FHsは、高温流体迂回管29を介して高温流体排出管39を流れる高温流体FHと合流し、吸収式熱交換システム2から排出される。第2熱交換部82において温度が上昇した低温流体FLは、吸収器10の伝熱管12に流入し、吸収器10において濃溶液Saが蒸発器冷媒蒸気Veを吸収する際に発生した吸収熱を得て温度が上昇して吸収器10を流出し、利用場所に供給される。以上で説明したように、吸収式熱交換システム2によれば、高温流体導入管24を流れる高温流体FHの、熱源管22に流入する流量と高温流体迂回管29に流入する流量との比率に応じて、吸収器10の伝熱管12に導入される低温流体FLの温度を調節することができるため、吸収器10から流出する低温流体FLの温度を高くすることができる。換言すれば、吸収器10の伝熱管12に導入される低温流体FLの温度が所定の温度になるように、熱源管22に流入する高温流体FHの流量と高温流体迂回管29に流入する高温流体FHの流量との比を設定することができる。なお、この場合における流量比は、熱源管22及び高温流体迂回管29の各々についてあらかじめ決められた値にしたがって採用したサイズの配管やオリフィス等を用いることで固定してもよく、各々の管22、29のいずれかの位置に配置したバルブ等を用いて自動又は手動で調節可能に構成してもよい。
次に図3を参照して、本発明の第3の実施の形態に係る吸収式熱交換システム3を説明する。図3は、吸収式熱交換システム3の模式的系統図である。吸収式熱交換システム3は、吸収式熱交換システム1(図1参照)の構成に加えて、吸収式熱交換システム2(図2参照)が備える高温流体迂回管29及び第2熱交換部82が設けられている。高温流体迂回管29は、一端が高温流体導入管24に接続され、他端が第1熱交換部81よりも上流側の高温流体排出管39に接続されている。第2熱交換部82は、高温流体迂回管29と、第1熱交換部81よりも下流側の低温流体連絡管15とに配設されており、高温流体迂回管29を流れる部分高温流体FHsと第1熱交換部81を流出して低温流体連絡管15を流れる低温流体FLとの間で熱交換を行わせるように構成されている。吸収式熱交換システム3の上記以外の構成は、吸収式熱交換システム1(図1参照)と同様である。
上述のように構成された吸収式熱交換システム3の作用は以下の通りである。吸収器10、蒸発器20、再生器30、凝縮器40における吸収液Sと冷媒Vとの吸収ヒートポンプサイクルは、吸収式熱交換システム1(図1参照)と同様に作用する。蒸発器20に向かって高温流体導入管24を流れる高温流体FHは、一部が分岐して高温流体迂回管29に流入し、残りが熱源管22に流入する。熱源管22に流入した高温流体FHは、冷媒液Vfに熱を奪われて温度が低下し、蒸発器20から流出して高温流体連絡管25を流れた後に再生器30の熱源管32に流入し、再生器30において希溶液Swに熱を奪われて温度が低下して再生器30を流出する。他方、凝縮器40の伝熱管42に流入した低温流体FLは、再生器冷媒蒸気Vgが凝縮する際に放出した凝縮熱を得て温度が上昇し、凝縮器40を出てから流入した第1熱交換部81において高温流体FHとの熱交換で温度が上昇し、第1熱交換部81を出てから流入した第2熱交換部82において部分高温流体FHsとの熱交換で温度が上昇し、その後に第2熱交換部82から流出し吸収器10の伝熱管12に流入して、吸収器10において濃溶液Saが蒸発器冷媒蒸気Veを吸収する際に発生した吸収熱を得て温度が上昇して吸収器10を流出し、利用場所に供給される。高温流体導入管24から高温流体迂回管29に流入した部分高温流体FHsは、第2熱交換部82に流入して低温流体FLとの間で熱交換が行われて温度が低下し、その後に高温流体排出管39を流れる高温流体FHと合流して第1熱交換部81に流入し、第1熱交換部81において低温流体FLとの間で熱交換が行われて温度が低下し、第1熱交換部81から流出して吸収式熱交換システム3から排出される。以上で説明したように、吸収式熱交換システム3によれば、吸収式熱交換システム1(図1参照)に比べて吸収器10の伝熱管12に流入する低温流体FLの温度を高くすることができるため、吸収器10から流出する低温流体FLの温度を高くすることができる。
次に図4を参照して、本発明の第4の実施の形態に係る吸収式熱交換システム4を説明する。図4は、吸収式熱交換システム4の模式的系統図である。吸収式熱交換システム4は、主として以下の点で吸収式熱交換システム1(図1参照)と異なっている。吸収式熱交換システム4は、吸収式熱交換システム1(図1参照)の構成に加えて、冷媒熱交換器99を備えている。冷媒熱交換器99は、凝縮器40から蒸発器20に向かう冷媒液Vfと、第1熱交換部81から流出した高温流体FHとの間で熱交換を行わせる機器である。冷媒熱交換器99は、冷媒ポンプ46よりも下流側の冷媒液管45及び第1熱交換部81よりも下流側の高温流体排出管39に配設されている。冷媒熱交換器99には、シェルアンドチューブ型やプレート型の熱交換器が用いられる。吸収式熱交換システム4の上記以外の構成は、吸収式熱交換システム1(図1参照)と同様である。
上述のように構成された吸収式熱交換システム4の作用は以下の通りである。吸収器10、蒸発器20、再生器30、凝縮器40における吸収液Sと冷媒Vとの吸収ヒートポンプサイクルは、凝縮器40から蒸発器20に向かう冷媒液Vfの温度変化を除き、吸収式熱交換システム1(図1参照)と同様に作用する。高温流体FHの流路及び温度変化は、第1熱交換部81から流出するまでは、吸収式熱交換システム1(図1参照)と同様に作用する。低温流体FLの流路及び温度変化は、吸収式熱交換システム1(図1参照)と同様に作用する。そして、冷媒熱交換器99を備える吸収式熱交換システム4においては、凝縮器40から蒸発器20に向かう冷媒液Vfと、第1熱交換部81から流出した高温流体FHとの間で熱交換が行われ、冷媒液Vfの温度が上昇し、高温流体FHの温度が低下する。冷媒熱交換器99から流出した冷媒液Vfは、温度が上昇して蒸発器20に流入するので、蒸発器20において蒸発するのに必要な熱量を抑制することができ、これに伴って温度低下が抑制された高温流体FHが保有する熱量を第1熱交換部81における熱交換に利用することができて、吸収器10に流入する低温流体FLの温度を上昇させることができる。他方、冷媒熱交換器99から流出した高温流体FHは、温度が低下して吸収式熱交換システム4から排出されることとなり、吸収式熱交換システム4における高温流体FHの回収熱量を増やすことができる。
なお、冷媒熱交換器99は、吸収式熱交換システム2(図2参照)あるいは吸収式熱交換システム3(図3参照)に設置することもできる。
次に図5を参照して、本発明の第1の実施の形態の第1の変形例に係る吸収式熱交換システム1Aを説明する。図5は、吸収式熱交換システム1Aの模式的系統図である。吸収式熱交換システム1Aは、主として以下の点で吸収式熱交換システム1(図1参照)と異なっている。主要な相違点は、高温流体FHの流れ方向が、吸収式熱交換システム1(図1参照)では蒸発器20を流れた後に再生器30を流れていたのに対し、本変形例に係る吸収式熱交換システム1Aでは再生器30を流れた後に蒸発器20を流れるようになっている。この相違に伴って、高温流体導入管24が再生器30の熱源管32の高温流体連絡管25が接続された端部とは反対側の端部に接続されており、高温流体排出管39が蒸発器20の熱源管22の高温流体連絡管25が接続された端部とは反対側の端部に接続されている。なお、吸収式熱交換システム1Aでは、第1熱交換部81が第3の熱交換部に相当する。吸収式熱交換システム1Aの上記以外の構成は、吸収式熱交換システム1(図1参照)と同様である。
上述のように構成された吸収式熱交換システム1Aでは、吸収器10、蒸発器20、再生器30、凝縮器40における吸収液Sと冷媒Vとの吸収ヒートポンプサイクルは、吸収式熱交換システム1(図1参照)と同様に作用する。高温流体FHの流路及び温度変化は以下の通りである。高温流体FHは、まず、再生器30の熱源管32に流入する。熱源管32に流入した高温流体FHは、希溶液Swに熱を奪われて温度が低下する。再生器30から流出した高温流体FHは、高温流体連絡管25を流れた後、蒸発器20の熱源管22に流入する。熱源管22に流入した高温流体FHは、冷媒液Vfに熱を奪われて温度が低下する。蒸発器で温度が低下した高温流体FHは、蒸発器20を流出し、高温流体排出管39を流れて第1熱交換部81に流入する。以降は、吸収式熱交換システム1(図1参照)と同様に作用する。低温流体FLの流路及び温度変化は、吸収式熱交換システム1(図1参照)と同様に作用する。吸収式熱交換システム1Aにおいては、凝縮器40に導入される低温流体FLの温度が蒸発器20から流出した高温流体FHの温度よりも低く、吸収器10から流出する低温流体FLの温度が再生器30に流入する高温流体FHの温度よりも高くなるように、低温流体FLの流量に対する高温流体FHの流量の比を決定しており、例えば低温流体FLの流量を高温流体FHの流量の約1/5とすることができる。吸収式熱交換システム1Aでは、再生器30に流入する高温流体FHの温度が、吸収式熱交換システム1(図1参照)のように蒸発器20を通過した後に再生器30に流入する場合よりも高くなるので、再生器30における吸収液Sの濃度を高くすることができ、出力を増大させることができる。また、吸収式熱交換システム1Aでは、吸収式熱交換システム1(図1参照)の場合よりも、蒸発器20に流入する高温流体FHの温度が低くなるので、蒸発器20及び吸収器10に作用する内圧を低くすることができる。蒸発器20及び吸収器10に作用する内圧が大気圧を超える場合には、当該内圧を低くすることにより蒸発器20及び吸収器10を構成する缶胴の耐圧力を低く構成できてよい。
次に図6及び図7を参照して、本発明の第2の実施の形態及び第3の実施の形態のそれぞれの第1の変形例に係る吸収式熱交換システム2A、3Aを説明する。図6は、吸収式熱交換システム2Aの模式的系統図である。図7は、吸収式熱交換システム3Aの模式的系統図である。吸収式熱交換システム2A、3Aの要点は、吸収式熱交換システム2(図2参照)、3(図3参照)の構成において、高温流体FHの流れ方向が吸収式熱交換システム1A(図5参照)のように再生器30を流れた後に蒸発器20を流れるようになっていることである。これに伴い、吸収式熱交換システム2A、3Aでは、それぞれ、吸収式熱交換システム1A(図5参照)と同様、高温流体導入管24が再生器30の熱源管32の高温流体連絡管25が接続された端部とは反対側の端部に接続されており、高温流体排出管39が蒸発器20の熱源管22の高温流体連絡管25が接続された端部とは反対側の端部に接続されている。吸収式熱交換システム2A、3Aでは、第2熱交換部82が第4の熱交換部に相当する。さらに、吸収式熱交換システム3Aでは、第1熱交換部81が第3の熱交換部に相当する。吸収式熱交換システム2Aの上記以外の構成は、吸収式熱交換システム2(図2参照)と同様である。吸収式熱交換システム3Aの上記以外の構成は、吸収式熱交換システム3(図3参照)と同様である。
このように構成された吸収式熱交換システム2A、3Aでは、それぞれ、高温流体FHが再生器30を流れた後に蒸発器20を流れる点を除き、吸収式熱交換システム2(図2参照)、3(図3参照)と同様に作用する。吸収式熱交換システム2A、3Aによれば、高温流体導入管24を流れる高温流体FHの、熱源管32に流入する流量と高温流体迂回管29に流入する流量との比率に応じて、吸収器10の伝熱管12に導入される低温流体FLの温度を調節することができるため、吸収器10から流出する低温流体FLの温度を高くすることができる。換言すれば、吸収器10の伝熱管12に導入される低温流体FLの温度が所定の温度になるように、熱源管32に流入する高温流体FHの流量と高温流体迂回管29に流入する部分高温流体FHsの流量との比を設定することができる。なお、この場合における流量比は、熱源管32及び高温流体迂回管29の各々についてあらかじめ決められた値にしたがって採用したサイズの配管やオリフィス等を用いることで固定してもよく、各々の管32、29のいずれかの位置に配置したバルブ等を用いて自動又は手動で調節可能に構成してもよい。
次に図8を参照して、本発明の第4の実施の形態の第1の変形例に係る吸収式熱交換システム4Aを説明する。図8は、吸収式熱交換システム4Aの模式的系統図である。吸収式熱交換システム4Aの要点は、吸収式熱交換システム4(図4参照)の構成において、高温流体FHの流れ方向が吸収式熱交換システム1A(図5参照)のように再生器30を流れた後に蒸発器20を流れるようになっていることである。これに伴い、吸収式熱交換システム4Aでは、吸収式熱交換システム1A(図5参照)と同様、高温流体導入管24が再生器30の熱源管32の高温流体連絡管25が接続された端部とは反対側の端部に接続されており、高温流体排出管39が蒸発器20の熱源管22の高温流体連絡管25が接続された端部とは反対側の端部に接続されている。吸収式熱交換システム4Aでは、第1熱交換部81が第3の熱交換部に相当する。吸収式熱交換システム4Aの上記以外の構成は、吸収式熱交換システム4(図4参照)と同様である。
このように構成された吸収式熱交換システム4Aでは、高温流体FHが再生器30を流れた後に蒸発器20を流れる点を除き、吸収式熱交換システム4(図4参照)と同様に作用する。吸収式熱交換システム4Aによれば、冷媒熱交換器99から流出した冷媒液Vfは、温度が上昇して蒸発器20に流入するので、蒸発器20において蒸発するのに必要な熱量を抑制することができ、これに伴って温度低下が抑制された高温流体FHが保有する熱量を第1熱交換部81における熱交換に利用することができて、吸収器10に流入する低温流体FLの温度を上昇させることができる一方、冷媒熱交換器99から流出した高温流体FHは、温度が低下して吸収式熱交換システム4Aから排出されることとなり、吸収式熱交換システム4Aにおける高温流体FHの回収熱量を増やすことができる。なお、冷媒熱交換器99は、吸収式熱交換システム2A(図6参照)あるいは吸収式熱交換システム3A(図7参照)に設置することもできる。
次に図9を参照して、本発明の第1の実施の形態の第2の変形例に係る吸収式熱交換システム1Bを説明する。図9は、吸収式熱交換システム1Bの模式的系統図である。吸収式熱交換システム1Bは、主として以下の点で吸収式熱交換システム1(図1参照)と異なっている。主要な相違点は、高温流体FHの流れが、吸収式熱交換システム1(図1参照)では蒸発器20を流れた後に再生器30を流れていたのに対し、本変形例に係る吸収式熱交換システム1Bでは蒸発器20と再生器30とに並列に流れるようになっている。高温流体FHが蒸発器20と再生器30とに並列に流れるようにすることで、高温流体FHが蒸気の場合に、蒸発器20の熱源管22内における蒸気の凝縮状況と、再生器30の熱源管32内における蒸気の凝縮状況とを同じ状態に近づけることができ、吸収ヒートポンプサイクルを安定的に作動させることができる。
吸収式熱交換システム1Bでは、高温流体導入管24から再生器高温流体導入管34が分岐しており、再生器高温流体導入管34の他端は再生器30の熱源管32に接続されている。蒸発器20の熱源管22の、高温流体導入管24が接続された端部とは反対側の端部には、蒸発器高温流体排出管28の一端が接続されている。蒸発器高温流体排出管28の他端は、高温流体排出管39に接続されている。吸収式熱交換システム1Bでは、高温流体連絡管25(図1参照)は設けられていない。また、高温流体排出管39は、第1熱交換部81(図1参照)に導かれておらず、高温流体排出管39を流れる高温流体FHは吸収式熱交換システム1Bの外に排出されるようになっている。本変形例では、凝縮器40から流出した低温流体FLと熱交換を行うのは、高温流体FH由来の流体ではなく、外部から導入した外部熱源流体FEとなっている。このようにすると、高温流体FHが蒸気の場合に蒸発器20及び再生器30から流出した高温流体FHの凝縮液を低温流体FLとの熱交換に利用したときに生じ得る熱量不足を回避することができる。本変形例では、第1熱交換部81(図1参照)に代えて、外部熱交換部88が設けられている。外部熱交換部88は、凝縮器40から流出した低温流体FLと外部熱源流体FEとで熱交換を行わせるように構成されており、熱交換部80の一形態である。外部熱交換部88は、低温流体連絡管15及び外部熱源流体管89に配設されている。外部熱源流体管89は、外部熱源流体FEを流す流路を構成する管である。吸収式熱交換システム1Bの上記以外の構成は、吸収式熱交換システム1(図1参照)と同様である。
上述のように構成された吸収式熱交換システム1Bでは、吸収器10、蒸発器20、再生器30、凝縮器40における吸収液Sと冷媒Vとの吸収ヒートポンプサイクルは、吸収式熱交換システム1(図1参照)と同様に作用する。高温流体FHは、高温流体導入管24を介して蒸発器20の熱源管22に流入すると共に、再生器高温流体導入管34を介して再生器30の熱源管32に流入する。熱源管22に流入した高温流体FHは、冷媒液Vfに熱を奪われて温度が低下して、蒸発器20を流出する。他方、熱源管32に流入した高温流体FHは、希溶液Swに熱を奪われて温度が低下して、再生器30を流出する。蒸発器20から流出した高温流体FHは蒸発器高温流体排出管28を流れ、再生器30から流出した高温流体FHは高温流体排出管39を流れ、両者は合流して吸収式熱交換システム1Bの外に排出される。外部熱交換部88においては、凝縮器40から流出した低温流体FLが、外部熱源流体FEと熱交換して温度が上昇した後に、吸収器10の伝熱管12に流入する。吸収式熱交換システム1Bでは、高温流体FHを蒸気とした場合に、高温流体FHの潜熱が大きくなり、この潜熱のすべてを熱源として利用すると、熱源の温度を蒸気の温度に維持したまま高温流体FHから大きな熱量を取り出すことができるため、高温流体FHを温水とした場合(例えば低温流体FLの流量が高温流体FHの流量の約1/5)よりも、大きな流量の低温流体FLを取り出すことができる。本変形例では、このような低温流体FLと高温流体FHとの流量比で、凝縮器40に導入される低温流体FLの温度が蒸発器20及び再生器30から流出した高温流体FHの温度よりも低く、吸収器10から流出する低温流体FLの温度が蒸発器20及び再生器30に流入する高温流体FHの温度よりも高くなるようにすることができる。また、吸収式熱交換システム1Bでは、高温流体FHを蒸気とした場合に、高温流体FHの流量を低温流体FLの流量よりも小さくすることができるので(例えば高温流体FHの流量が低温流体FLの流量の約1/5乃至1/10)、高温流体FHの流路を構成する管の径を小さくすることができると共に、高温流体FHを搬送するためのポンプを省略することができる。また、吸収式熱交換システム1Bでは、再生器30に流入する高温流体FHの温度と蒸発器20に流入する高温流体FHの温度とが同じになるので、高温流体FHが蒸発器20を通過した後に再生器30に流入する吸収式熱交換システム1(図1参照)の場合よりも低温流体FLが得る熱量を増大させつつ、高温流体FHが再生器30を通過した後に蒸発器20に流入する吸収式熱交換システム1A(図5参照)の場合よりも再生器30における吸収液Sの濃度の上昇を抑制することができる。以上の吸収式熱交換システム1Bの説明では、凝縮器40から流出した低温流体FLを外部熱交換部88において外部熱源流体EFと熱交換させることとしたが、外部熱交換部88及び外部熱源流体管89に代えて、吸収式熱交換システム1(図1参照)と同様に高温流体排出管39が通る第1熱交換部81を設け、蒸発器20及び再生器30それぞれから流出して合流した高温流体FHを第1熱交換部81に導くように高温流体排出管39を配置して、蒸発器20及び再生器30から流出して合流した高温流体FHを、凝縮器40から流出した低温流体FLとの熱交換に利用してもよい。このようにすると外部熱源流体FEが不要になる。
次に図10及び図11を参照して、本発明の第2の実施の形態及び第3の実施の形態のそれぞれの第2の変形例に係る吸収式熱交換システム2B、3Bを説明する。図10は、吸収式熱交換システム2Bの模式的系統図である。図11は、吸収式熱交換システム3Bの模式的系統図である。吸収式熱交換システム2B、3Bの要点は、吸収式熱交換システム2(図2参照)、3(図3参照)の構成において、高温流体FHが吸収式熱交換システム1B(図9参照)のように蒸発器20と再生器30とに並列に流れるようになっていることである。これに伴い、吸収式熱交換システム2B、3Bでは、それぞれ、吸収式熱交換システム1B(図9参照)と同様、高温流体導入管24から再生器高温流体導入管34が分岐しており、再生器高温流体導入管34の他端は再生器30の熱源管32に接続されている。蒸発器20の熱源管22の、高温流体導入管24が接続された端部とは反対側の端部には、蒸発器高温流体排出管28の一端が接続されている。蒸発器高温流体排出管28の他端は、高温流体排出管39に接続されている。なお、吸収式熱交換システム2B、3Bでは、外部熱交換部88(図9参照)が設けられていない。吸収式熱交換システム2Bは、吸収式熱交換システム2(図2参照)と同様に、第2熱交換部82が設けられており、第2熱交換部82が第5の熱交換部に相当する。ただし、吸収式熱交換システム2Bでは、蒸発器高温流体排出管28が接続された後の高温流体排出管39の他端が第2熱交換部82に接続され、蒸発器高温流体排出管28を流れる高温流体FHと高温流体排出管39を流れる高温流体FHとが合流したものが、高温流体迂回管29から第2熱交換部82に流入した部分高温流体FHsと合流するように構成されている点で、吸収式熱交換システム2(図2参照)と異なっている。他方、吸収式熱交換システム3Bは、吸収式熱交換システム3(図3参照)と同様に、第1熱交換部81及び第2熱交換部82が設けられており、第1熱交換部81が第6の熱交換部に相当し、第2熱交換部82が第5の熱交換部に相当する。吸収式熱交換システム2Bの上記以外の構成は、吸収式熱交換システム2(図2参照)と同様である。吸収式熱交換システム3Bの上記以外の構成は、吸収式熱交換システム3(図3参照)と同様である。
このように構成された吸収式熱交換システム2B、3Bでは、それぞれ、高温流体FHが蒸発器20と再生器30とに並列に流れる点を除き、吸収式熱交換システム2(図2参照)、3(図3参照)と同様に作用する。吸収式熱交換システム2B、3Bによれば、高温流体導入管24を流れる高温流体FHの、熱源管22及び熱源管32に流入する流量と高温流体迂回管29に流入する流量との比率に応じて、吸収器10の伝熱管12に導入される低温流体FLの温度を調節することができるため、吸収器10の伝熱管12に導入される低温流体FLの温度が所定の温度になるように、熱源管22及び熱源管32に流入する高温流体FHの流量と高温流体迂回管29に流入する高温流体FHの流量との比を設定することができる。なお、この場合における流量比は、熱源管22及び熱源管32並びに高温流体迂回管29の各々についてあらかじめ決められた値にしたがって採用したサイズの配管やオリフィス等を用いることで固定してもよく、各々の管22、32、29のいずれかの位置に配置したバルブ等を用いて自動又は手動で調節可能に構成してもよい。
また、吸収式熱交換システム2Bでは、高温流体FHを蒸気とした場合には、蒸気である部分高温流体FHsの温度と、蒸発器20及び再生器30を流れて熱を奪われて少なくとも一部が凝縮して凝縮水となった後に高温流体排出管39を流れる高温流体FHの温度とは近い温度にある。第2熱交換部82においては、互いに近い温度にある部分高温流体FHsと凝縮水を含む高温流体FHとが合流したものを、低温流体FLを加熱するための熱源としているので、部分高温流体FHsの蒸気だけでなく高温流体FHに含まれる凝縮水も加熱源として利用できて熱効率がよい。なお、ここで挙げた例にかかわらず、蒸発器20及び再生器30を流れてから高温流体排出管39を流れた高温流体FHを、第2熱交換部82に導入せず、低温流体FLを加熱するための熱源として利用しない簡単な構成としてもよい。
吸収式熱交換システム3Bは、吸収式熱交換システム2Bにおいて部分高温流体FHs及び高温流体FHの両流体を熱源として導入する第2熱交換部82を、部分高温流体FHsだけを熱源とする第2熱交換部82と、部分高温流体FHs及び高温流体FHが合流した流体を熱源とする第1熱交換部81と、に分けたものである。高温流体FHを蒸気とした場合、第2熱交換部82において少なくとも一部が凝縮して凝縮水となった部分高温流体FHsの温度と、蒸発器20及び再生器30を流れて熱を奪われて少なくとも一部が凝縮して凝縮水となって高温流体排出管39を流れる高温流体FHの温度とは近い温度にある。第1熱交換部81においては、互いに近い温度にある凝縮水を含む部分高温流体FHsと凝縮水を含む高温流体FHとが合流したものを、低温流体FLを加熱するための熱源としているので、部分高温流体FHsに含まれる凝縮水及び高温流体FHに含まれる凝縮水も低温流体FLを加熱するための加熱源として利用することができて熱効率がよい。さらに、第2熱交換部82を流出した部分高温流体FHsと高温流体排出管39を流れた高温流体FHとが共に蒸気が凝縮した凝縮水となっている場合には、第2熱交換部82は蒸気を熱源とした熱交換器となり、第1熱交換部81は凝縮水を熱源とした熱交換器となる。すると、第2熱交換部82と第1熱交換部81とを、熱源の流体種類に応じて、各々最適に構成できて熱効率を向上させることができる。なお、ここで挙げた例にかかわらず、蒸発器20及び再生器30を流れてから高温流体排出管39を流れる高温流体FHを、第2熱交換部82より下流の高温流体迂回管29に導入せず、低温流体FLを加熱するための熱源として利用しない簡単な構成としてもよい。
次に図12を参照して、本発明の第4の実施の形態の第2の変形例に係る吸収式熱交換システム4Bを説明する。図12は、吸収式熱交換システム4Bの模式的系統図である。吸収式熱交換システム4Bの要点は、吸収式熱交換システム4(図4参照)の構成において、高温流体FHが吸収式熱交換システム3B(図11参照)のように蒸発器20と再生器30とに並列に流れるようになっていることである。これに伴い、吸収式熱交換システム4Bでは、吸収式熱交換システム3B(図11参照)と同様、高温流体導入管24から再生器高温流体導入管34が分岐しており、再生器高温流体導入管34の他端は再生器30の熱源管32に接続されている。蒸発器20の熱源管22の、高温流体導入管24が接続された端部とは反対側の端部には、蒸発器高温流体排出管28の一端が接続されている。蒸発器高温流体排出管28の他端は、高温流体排出管39に接続されている。吸収式熱交換システム4Bは、吸収式熱交換システム4(図4参照)で設けられていた第1熱交換部81に代えて、低温流体FLと部分高温流体FHsとで熱交換する第2熱交換部82が設けられており、第2熱交換部82が第5の熱交換部に相当する。吸収式熱交換システム4Bでは、蒸発器高温流体排出管28が接続された後の高温流体排出管39の他端が第2熱交換部82に接続され、蒸発器高温流体排出管28を流れる高温流体FHと高温流体排出管39を流れる高温流体FHとが合流したものが、高温流体迂回管29から第2熱交換部82に流入した部分高温流体FHsと合流するように構成されている。吸収式熱交換システム4Bの上記以外の構成は、吸収式熱交換システム4(図4参照)と同様である。
このように構成された吸収式熱交換システム4Bでは、高温流体FHが蒸発器20と再生器30とに並列に流れる点、並びに蒸発器20及び再生器30に導入される前の高温流体FHから分岐された一部の高温流体FHsが第2熱交換部82に導入される点を除き、吸収式熱交換システム4(図4参照)と同様に作用する。吸収式熱交換システム4Bにおいても、吸収式熱交換システム2B(図10参照)と同様に、高温流体FHを蒸気とした場合には、蒸気である高温流体FHは蒸発器20及び再生器30を流れて熱を奪われて少なくとも一部が凝縮して凝縮水となる。第2熱交換部82においては、高温流体FHに含まれる凝縮水も低温流体FLを加熱する加熱源として利用できるので熱効率がよい。吸収式熱交換システム4Bによれば、冷媒熱交換器99から流出した冷媒液Vfは、温度が上昇して蒸発器20に流入するので、蒸発器20において蒸発するのに必要な熱量を抑制することができ、これに伴って増加した高温流体迂回管29を流れる高温流体FHが保有する熱量を第2熱交換部82における熱交換に利用することができて、吸収器10に流入する低温流体FLの温度を上昇させることができる一方、冷媒熱交換器99から流出した高温流体FHは、温度が低下して吸収式熱交換システム4Bから排出されることとなり、吸収式熱交換システム4Bにおける高温流体FHの回収熱量を増やすことができる。なお、ここで挙げた例にかかわらず、蒸発器20及び再生器30を並列に流れてから高温流体排出管39を流れる高温流体FHを、第2熱交換部82に導入せず、低温流体FLを加熱するための熱源として利用しない簡単な構成としてもよい。また、冷媒熱交換器99は、吸収式熱交換システム2B(図10参照)あるいは吸収式熱交換システム3B(図11参照)に設置することもできる。
以上で説明した吸収式熱交換システム1、2、3、4、1A、2A、3A、4A、1B、2B、3B、4Bにおいて、高温流体FHは液体(典型的には温水)及び蒸気のいずれでも可能であるが、蒸気とする場合は、蒸発器20及び再生器30に並列に導入する吸収式熱交換システム1B、2B、3B、4Bに適用することが好ましい。
以上の説明では、蒸発器20が満液式であるとしたが、流下液膜式であってもよい。蒸発器を流下液膜式とする場合は、蒸発器缶胴21内の上部に冷媒液Vfを供給する冷媒液供給装置を設け、満液式の場合に蒸発器缶胴21に接続することとしていた冷媒液管45の端部を、冷媒液供給装置に接続すればよい。また、蒸発器缶胴21の下部の冷媒液Vfを冷媒液供給装置に供給する配管及びポンプを設けてもよい。
以上の説明では、吸収ヒートポンプサイクルが行われる吸収器10、蒸発器20、再生器30、凝縮器40が単段で構成されている例を説明したが、これらを多段で構成してもよい。例えば、吸収ヒートポンプサイクルを二段昇温型とする場合、吸収器10及び蒸発器20を、高温側の高温吸収器(以下、説明の便宜上、符号「10」に「H」を添えて表す。)及び高温蒸発器(以下、説明の便宜上、符号「20」に「H」を添えて表す。)と、低温側の低温吸収器(以下、説明の便宜上、符号「10」に「L」を添えて表す。)及び低温蒸発器(以下、説明の便宜上、符号「20」に「L」を添えて表す。)とに分ければよい。高温吸収器10Hは低温吸収器10Lよりも内圧が高く、高温蒸発器20Hは低温蒸発器20Lよりも内圧が高い。高温吸収器10Hと高温蒸発器20Hとは、典型的には、高温蒸発器20Hの冷媒Vの蒸気を高温吸収器10Hに移動させることができるように上部で連通している。低温吸収器10Lと低温蒸発器20Lとは、典型的には、低温蒸発器20Lの冷媒Vの蒸気を低温吸収器10Lに移動させることができるように上部で連通している。凝縮器40の伝熱管42から流出した低温流体FLは、低温吸収器10Lには流入せずに高温吸収器10Hに流入して高温吸収器10Hで加熱される。高温流体FHは、高温蒸発器20Hには導入されずに低温蒸発器20Lに導入される。低温吸収器10Lは低温蒸発器20Lから移動してきた冷媒Vの蒸気を吸収液Sが吸収する際の吸収熱で高温蒸発器20H内の冷媒液Vfを加熱して高温蒸発器20H内に冷媒Vの蒸気を発生させ、発生した高温蒸発器20H内の冷媒Vの蒸気は高温吸収器10Hに移動して高温吸収器10H内の吸収液Sに吸収される際の吸収熱で低温流体FLを加熱するように構成される。