JP6390623B2 - ガラス部材およびガラス部材の製造方法 - Google Patents

ガラス部材およびガラス部材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、主面に強化処理が施されたガラス部材およびその製造方法に係り、特に、レーザー光により所望の形状に切断されたガラス部材およびその製造方法に関する。
半導体基板等の切断方法として、ステルスダイシング(登録商標)が知られている(例えば、特許文献1参照)。この切断方法は、半導体基板(例えば、シリコン(Si))を透過する波長のレーザー光を半導体基板内部に集光させて半導体基板内部に改質領域(キズ領域)を形成し、その後、テープエキスパンドなど外部応力を加えることにより、改質領域を起点として半導体基板に亀裂を生じさせて半導体基板を切断する技術である。
この切断方法では、半導体基板の主面にダメージを与えずに半導体基板内部に局所的・選択的に改質領域を形成できるため、一般的なブレードダイシングで問題となる半導体基板の主面にチッピング等の不具合が発生することを低減できる。また、切削加工と異なり発塵などの問題も少ない。このため、近年では、半導体基板に限られず、ガラス板の切断など広く用いられるようになっている。
特開2009−135342号公報
上記のレーザー光を用いてガラス板を切断する場合、レーザー光により切断予定線を走査し、ガラス板内部に改質領域を形成する。しかし、このガラス板として強化ガラスを用いる場合、ガラス板の表面に圧縮応力層が、ガラス板の内部にはそれに応じた引張応力層が形成されるため、強化処理が施されていないガラス板と同様の条件では、切断がうまくできない場合があった。また、このガラス板には光学機能やその他の機能を付与するために、基板主面に樹脂層を設けることがあり、その場合には、樹脂層も同時に所望の位置、形状で切断しなければならず、さらにガラス板の切断が難しくなっている。
切断が不十分な場合、レーザー出力を高めて切断をしやすくすることが考えられるが、その場合には、ガラスの改質領域が大きくなり、切断後のガラスの稜線(ガラスの主面と側面との境界)が荒れる傾向にあり、稜線が荒れた場合には切断後のガラスの強度が低くなってしまう問題がある。
そこで、本発明は、強化処理されたガラス内部にレーザー光を用いて改質領域を形成し、その改質領域に沿って切断することによって良好に切断されたガラス部材およびこの切断方法によって強度低下を生じさせずに良好に切断できるガラス部材の製造方法の提供を目的とする。
本発明者らは、このように強化処理が施されたガラスを切断する場合でも、切断後のガラス部材の強度を低下させることなく、効率良く切断するための方法を種々検討したところ、ガラス基体の内部に形成される引張応力(CT)、ガラス基体の破壊靭性(K1c)およびガラス基体のクラックイニシエーションロード(CIL)を所定の関係を満たすようにすることで上記目的を達成できることを見出した。
すなわち、本発明のガラス部材は、強化処理された主面と、内部に集光するようにして照射された光により形成された改質領域に沿って切断された切断面と、を有するガラス基体を本体とするガラス部材であって、前記強化処理により前記ガラス基体の板厚方向内部に形成される引張応力領域における中央部の引張応力(CT)、前記ガラスの破壊靭性(K1c)および前記ガラス基体のクラックイニシエーションロード(CIL)は、次の関係式(1)を満たすことを特徴とするものである。
Figure 0006390623
(式中、aは0.4〜7の正数を、bは2〜7の整数を表す。)
また、本発明のガラス部材の製造方法は、ガラス板の主面に強化処理を施して、該ガラス板の板厚方向内部に形成される引張応力領域における中央部の引張応力(CT)、前記ガラス板の破壊靭性(K1c)および前記ガラス板のクラックイニシエーションロード(CIL)が次の関係式(1)を満たすように強化処理する強化処理工程と、前記ガラス板の内部に集光するようにして光を照射し、選択的に改質領域を形成する改質工程と、前記改質領域に沿って前記ガラス板を切断する切断工程と、を有することを特徴とするものである。
Figure 0006390623
(式中、aは0.4〜7の正数を、bは2〜7の整数を表す。)
本発明のガラス部材およびその製造方法によれば、強化処理が施されたガラス部材であっても、所望の大きさ、形状に切断して得られる。そして、そのようにして得られたガラス部材は、切断面が滑らかに切断できていることに起因してガラス部材の曲げ強度の低下が抑制され、製品信頼性を向上させることができる。
第1の実施形態に係るガラス部材の側面図である。 図1Aのガラス部材に作用する応力の概略説明図である。 図1Aに示したガラス部材の製造方法を説明する図である。 図1Aに示したガラス部材の製造方法を説明する図である。 図1Aに示したガラス部材の製造方法を説明する図である。 第1の実施形態に係るガラス板の改質・切断に使用する切断装置の模式図である。 第1の実施形態に係るガラス板の改質工程を説明する図である。 第1の実施形態に係るガラス板の切断工程を説明する図である。 第1の実施形態に係るガラス板の切断工程を説明する図である。 第1の実施形態に係るガラス板の切断工程を説明する図である。 第1の実施形態に係るガラス部材を用いた撮像装置の断面図である。 第2の実施形態に係るガラス部材の側面図である。 第3の実施形態に係るガラス部材の断面図である。 第3の実施形態に係るガラス部材の平面図である。 例2で得られたガラス部材の側面(切断面)の写真である。 例5で得られたガラス部材の側面(切断面)の写真である。
以下、図面を参照しながら、実施形態に係るガラス部材およびガラス部材の製造方法について詳細に説明する。
(第1の実施形態)
[ガラス部材]
図1Aは、本発明の第1の実施形態に係るガラス部材100の側面図を示したものである。図1Aに示すように、本実施形態に係るガラス部材100は、その基体となるガラス基体110からなり、ガラス基体110は、その基体主面に強化処理により形成された圧縮応力層110aを有する。なお、本実施形態においては、ガラス基体110がそのままガラス部材100となっており、ガラス部材100とガラス基体110は同義である。
〈ガラス基体〉
ガラス基体110は、板状のガラスであり、その主面には強化処理により圧縮応力層110aが形成され、それに応じてガラス基体110の板厚方向内部には引張応力(CT)が作用する引張応力領域が形成されている。また、ガラス基体110は、ガラス内部に集光するようにして照射されるレーザー光により選択的に形成された改質領域Rに沿って切断された切断面を有する。
ガラス主面に圧縮応力層110aを形成する強化処理方法としては、風冷強化法(物理強化法)および化学強化法が代表的なものとして知られている。風冷強化法(物理強化法)は、軟化点付近まで加熱したガラス板主面を風冷などにより急速に冷却する手法である。また、化学強化法は、ガラス転移点以下の温度で、イオン交換により、ガラス板主面に存在するイオン半径が小さいアルカリ金属イオン(典型的にはLiイオン、Naイオン)を、イオン半径のより大きいアルカリイオン(典型的にはLiイオンに対してはNaイオンまたはKイオンであり、Naイオンに対してはKイオンである。)に交換する手法である。
本実施形態においては、いずれの強化手法であってもよい。しかし、例えば、ガラス基体110の厚さが2mm以下となるような厚みの薄いガラス板の場合には、風冷強化による主面と内部との温度差を確保しにくいため、圧縮応力層を形成することが困難である。また、風冷強化では、冷却温度のばらつきにより、ガラス板の平面性を損なう場合がある。特に、厚みの薄いガラス板については、平面性が損なわれる割合が高くなり、このような場合には、ガラスを後者の化学強化法によって強化することが好ましい。
本実施形態に用いられるガラス基体110は、ガラス主面が強化処理されており、ガラスの各特性が所定の関係を満たしているため、改質領域Rを形成するためのレーザー光の出力を小さくして切断の起点となるクラックを小さくしても、切断することができ、その結果、切断面と各主面との稜線の直線性が高く、機械的強度の高いガラスを得ることができる。
そして、ガラス基体110が満たす所定の関係とは、その破壊靭性(K1c)〔MPa・m1/2〕、引張応力領域の中央部の引張応力(CT)〔MPa〕およびクラックイニシエーションロード(CIL)〔kgf〕が、次の関係式(1)を満たすものである。
Figure 0006390623
(式中、aは0.4〜7の正数を、bは2〜7の整数を表す。)
この関係式(1)は、ガラス基体110の切断予定線から外れて、ガラス板が切断されることを抑制する指標であり、左辺の値が(3×CIL)μJ/pulseを超えると、切断予定線から外れることなく切断を行うことができ、ガラス基体110が得られる。なお、切断予定線は、ガラス基体110を所望の大きさ・数量に分断するための平面パターンであり、平面視において改質領域Rは切断予定線に沿って材料であるガラス板中に形成される。また、本願明細書において、破壊靭性(K1c)、クラックイニシエーションロード(CIL)は、強化処理前のガラスの特性をいうものである。
なお、上記関係式(1)中のaおよびbは、ガラス基体110に用いられるガラスの種類や使用するレーザー光の波長による変数であり、例えば、実施例で使用したホウケイ酸ガラス(使用したレーザー光の波長は532nm)では、aが1.83、bが4であり、アルミノシリケートガラス(使用したレーザー光の波長は532nm)では、aが1.55、bが4である。また、ソーダライムガラス(使用したレーザー光の波長は532nm)では、aが1.85、bが4である。
上記関係式(1)および後述する関係式(2)、(3)、数式(b)、(c)の係数aは、以下に述べる方法で算出する。
係数aは、ガラス基体110の物性を用いて算出する方法、実験データを用いて算出する方法のいずれか一方を用いることにより求めることができる。
ガラス基体110の物性を用いて係数aを算出する方法は、以下の数式(a)を用いる。
Figure 0006390623
ここで、ρ:密度[kg/μm]、c:比熱[μJ/kg・K]、α:熱膨張係数[1/K]、E:ヤング率[MPa]である。
また、実験データを用いて算出する方法は、以下の手順にて行う。
ガラス板10(サイズ:50mm×50mm、厚さ:0.15〜0.3mm)を複数枚用意する。なお、ガラス板10は、ガラス基体110の材料となる切断される前のガラスをいい、後述するガラス板100の製造方法で用いるガラス板10と同義のものである(図2A〜図2C等参照)。すなわち、本発明において、ガラス板10はその主面に圧縮応力層が形成されたものである。
ガラス板に対して強化処理を行い、異なる強化特性を備える(CTの範囲が10〜30MPa間隔で、30MPa〜150MPaの範囲内)ガラス板10を得る。
強化処理済みのガラス板10の板厚方向中心に改質領域を形成する。この際、幅5mmの短冊状になるように1ラインごとに0.5μJ/pulseづつレーザーエネルギーを変えて9ラインをレーザー加工する。次いで、加工から1分後に、各ラインにおいて、ライン全体にクラックが表面到達しているか確認する。そして、ライン全体にクラックが表面到達しているレーザーエネルギー条件のうち、最も低いレーザーエネルギー条件を、ガラス板10を割断できる最低レーザーエネルギーとして求める。
次いで、上記と同様に異なる強化特性(CT)を備えるガラス板10の割断できる最低レーザーエネルギー(e)を以下の数式(b)により求める。
Figure 0006390623
そして、実験で得られた最低レーザーエネルギーおよび数式を用いて得られた最低レーザーエネルギーをグラフにプロットし、傾きが「1.0」となる係数aを求める。
上記関係式(1)および後述する関係式(2)、(3)、数式(b)、(c)の係数bは、以下に述べる方法で求める。
ガラス内部にレーザーを照射して改質領域を形成する場合、多光子吸収現象を発生させる必要がある。多光子吸収現象は、「エネルギーバンドギャップ(Eg)」を、「b×hν」(ここで、h:プランク定数、ν:レーザー光振動数=光速/波長)が上回る必要がある。ここで、「Eg」<「b×hν」の関係となる最少のb(整数)を係数bとする。なお、本願発明において、用いるレーザー光の波長は、532nmであり、この場合、hνは2.33eV、ガラスのEgは8eV前後であるため、bは4となる。
上記関係式(1)および後述する関係式(2)、(3)、数式(b)、(c)の係数a(正数)は、1〜3が好ましく、1〜2がより好ましい。また、係数b(整数)は、2〜5が好ましく、3〜5がより好ましい。
以下、ガラス基体110の特性について説明する。まず、ガラスの主面に形成される圧縮応力層110aの深さ(DOL)は、10μm以上が好ましく、12μm以上がより好ましく、15μm以上がさらに好ましい。一方、強化処理後にガラスを切断加工しやすくするために、DOLを70μm以下とすることが好ましい。
また、ガラス基体110の板厚方向内部に形成される引張応力領域の厚さ(ガラス基体の板厚−圧縮応力層の深さ(DOL)×2)は、30μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましい。
また、本実施形態に用いられるガラス基体110は、ガラス主面に形成される圧縮応力値(CS)が、200MPa以上が好ましく、300MPa以上がより好ましく、400MPa以上がさらに好ましい。一方、CSが高くなりすぎるとガラス内部の引張応力が極端に高くなるおそれがあるため、CSは900MPa以下とすることが好ましく、750MPa以下とすることがより好ましい。
ガラス基体110の主面に形成される圧縮応力値(CS)および圧縮応力層の深さ(DOL)は、表面応力計(折原製作所社製、FSM−6000)を用いて、干渉縞の本数とその間隔を観察して求めることができる。また、ガラス基体110の内部に形成される引張応力(CT)は、上記で測定したCSおよびDOLを用い、以下の式によって算出する。
CT=(CS×DOL)/(t−2×DOL)
なお、tはガラス基体110の板厚(μm)である。
図1Bは、図1Aのガラス部材に作用する応力を概略的に説明する図である。本発明に用いられるガラス基体110は、図1Bに示したように、表面に形成される圧縮応力層110aに応じてガラスの板厚方向内部には引張応力(CT)が作用する引張応力領域が形成される。ここで形成される引張応力領域において、その引張応力領域の中央部の引張応力は、50MPa以上であることが好ましい。これにより、より機械的強度の高いガラスが得られる。このCTは、より好ましくは70MPa以上であり、さらに好ましくは90MPa以上である。一方、CTが極端に高くなると、レーザー光により改質領域を形成した際、ガラスが自然破損するリスクが高くなるため、CTは200MPa以下とすることが好ましい。より好ましくは180MPa以下であり、さらに好ましくは160MPa以下である。CTを上記のように50MPa〜200MPaの範囲にすると、強化処理を施したガラス基体を製造する際、ガラス板10の切断を良好に行うことができる。なお、本明細書において説明するCTは、引張応力領域の中央部の値であり、一般にガラス基体110の中央部と一致するが、ガラス基体110の表面に形成される圧縮応力が表裏で異なる場合は、圧縮応力の小さい主面側に寄った領域になる場合もある。また、このCTは一般に引張応力領域における最大の引張応力を指す。
また、CTが、50MPa未満であっても、ガラスを切断するためのレーザー出力を下げる効果は得られ、レーザー光を同一の切断予定線上に走査する回数を減らす利点が得られる場合はあるものの、切断後のガラスが強化処理をしていないガラスと比較して曲げ強度が顕著に高くなることがない。そのため、CTは50MPa以上であることが好ましい。
また、本実施形態で用いられるガラス基体110は、破壊靭性(K1c)が0.2MPa・m1/2から0.90MPa・m1/2の範囲内、もしくは熱膨張係数が65×10−7/Kから150×10−7/Kの範囲内であることが好ましい。
ガラス基体110の破壊靭性(K1c)は、JIS R1607の破壊靱性測定法(IF法)で、次式によって算出される値(K1c)である。
1c=0.026・E1/2・P1/2・a/C3/2
ここで、E:ヤング率(Pa)、P:押し込み荷重(N)、a:圧痕対角線長さの平均の1/2(m)、C:亀裂長さの平均の1/2(m)である。
また、ガラス基体110の熱膨張係数は、JIS R3102の示差式による測定であって、100℃〜300℃の平均値である。
また、本実施形態で用いられるガラス基体110は、ガラス基体110の熱膨張係数が65×10−7/K未満であると、レーザー光にて切断前のガラス板10に改質領域Rを形成する際、改質領域Rにクラックが生じにくいためガラス板10の切断がしにくくなる。また、クラックが十分伸展するように改質領域Rに生じるクラックを大きく形成したとしても、板厚方向以外に伸展するクラックが大きくなるため、切断後のガラス部材100の切断面が粗くなる。これにより、ガラス部材100の寸法精度が悪く、曲げ強度が低くなるおそれがある。
一方、ガラス基体110の熱膨張係数が150×10−7/Kを超えると、レーザー光にてガラス板10に改質領域Rを形成する際、改質領域にクラックが生じ易すぎるため、ガラス板10の内部に形成した引張応力により、改質領域Rからガラス板10の表面に向けて意図しないクラックが自発的に発生しやすくなる。それら意図しないクラックは、切断予定線とは異なる方向に伸展するため、切断後のガラス基体110は、所望の形状のガラス基体として得られない場合がある。
ガラス基体110の熱膨張係数は、70×10−7/K〜140×10−7/Kであることがさらに好ましい。
また、本実施形態で用いられるガラス基体110は、ガラス基体110の破壊靱性(K1c)が0.90MPa・m1/2を超えると、レーザー光にてガラス板10に改質領域Rを形成する際、改質領域Rにクラックが生じにくいためガラス板10の切断がしにくくなる。さらに、改質領域Rを起点としてガラス板10を切断する際に、クラックが板厚方向に伸展しにくいため、無理に切断することになり、ガラス基体110の切断面が粗くなるとともに、寸法精度が悪くなる場合がある。また、クラックが十分伸展するように改質領域Rに生じるクラックを大きく形成したとしても、板厚方向以外に伸展するクラックが大きくなるため、切断後のガラス基体110の切断面が粗くなる場合がある。これにより、ガラス基体110の寸法精度が悪く、曲げ強度が低くなるおそれがある。
一方、ガラス基体110の破壊靱性(K1c)が0.2MPa・m1/2未満であると、レーザー光にてガラス板10に改質領域Rを形成する際、改質領域にクラックが生じ易すぎるため、ガラス板10の内部に形成した引張応力により、改質領域Rからガラス板10の表面に向けて意図しないクラックが自発的に発生しやすくなる。それら意図しないクラックは、切断予定線とは異なる方向に伸展するため、切断後のガラス基体110は、所望の形状のガラスを得られない場合がある。ガラス基体110の破壊靱性(K1c)は、0.3MPa・m1/2〜0.8MPa・m1/2であることがさらに好ましい。
また、本実施形態におけるガラス基体110は、ガラス基体のクラックイニシエーションロード(CIL)は、1gf〜2kgfが好ましい。クラックイニシエーションロード(CIL)は、1gf未満だとわずかな荷重で傷つくことで実用上使用できない。また、このクラックイニシエーションロード(CIL)は2kgf超だとクラックを生成するために必要なレーザーエネルギーが高くなる。クラックイニシエーションロード(CIL)は、2gf〜1.5kgfがより好ましい。
ここで、「クラックイニシエーションロード(CIL)」は、以下の方法で求める。まず、両面を鏡面研磨した、板状のガラスを用意する。ビッカース硬度試験機にて、ビッカース圧子(先端部の角度は136°)を15秒押し込んだ後にビッカース圧子をはずし、15秒後に圧痕付近を観測する。観測では、圧痕のコーナーからクラックが何本発生しているかを調査する。測定は、1gf(0.0098N)、2gf(0.0196N)、5gf(0.049N)、10gf(0.0981N)、20gf(0.196N)、50gf(0.49N)、100gf(0.981N)、200gf(1.961N)、300gf(2.941N)、500gf(4.903N)、1kgf(9.807N)、2kgf(19.61N)、5kgf(49.03N)のビッカース圧子の押し込み荷重別に、1枚のガラスの十分離れた10箇所に対して圧痕を形成する。発生したクラック本数の平均値を荷重ごとに算出し、荷重とクラック本数との関係を、シグモイド関数を用いて回帰計算する。回帰計算結果から、クラック本数が2本となる荷重値をクラックイニシエーションロード(CIL)の値(gf)とする。なお、測定の雰囲気条件は、気温25℃、湿度約40%である。
そして、ガラス基体110は、上記説明したガラスの特性のうち、その板厚方向内部に形成される引張応力領域における中央部の引張応力(CT)、その破壊靭性(K1c)およびそのクラックイニシエーションロードが、上記関係式(1)を満たすものである。この関係式(1)を満たすようにすることで、ガラス板をレーザー改質処理により切断してガラス基体110を製造するにあたって、切断予定線に沿った切断を行うことができるとともに、切断面と各主面との稜線の直線性を高くでき、ガラス基体110の強度を良好なものとできる。
また、本実施形態で用いられるガラス基体110は、レーザー光により選択的に形成された改質領域Rに沿って切断された切断面を有する。すなわち、ガラス基体110は、その切断前のガラス板10を、所望の形状、大きさになるように、ガラス板10の内部にレーザー光により改質領域Rを形成し、外部から力を加えることで改質領域Rに沿ってガラス板10を切断して得られたものであるため、このガラス基体110の側面には、改質領域Rが露出しており、かつ、その改質領域Rに沿って、ガラスの板厚方向に切断された切断面を有する。
このとき改質領域Rは、圧縮応力層110aではなく、その内部の引張応力領域(ガラス板の板厚方向における中央部分を含む領域)に形成される。なお、ガラス基体110の板厚方向の改質領域Rの幅は、引張応力領域よりも小さいことが好ましい。
なお、この改質領域Rは、引張応力領域における中央部(通常、板厚方向においてガラス基体110の中央付近)に形成されるのが一般的であるが、それに限られず、ガラス基体110の一方の主面側に偏在するように形成されていてもよい。例えば、ガラス基体110の断面における板厚中央部分から一方の主面側に偏在させると、他方の切断線(平面視)のうねりが少なくなるため好ましい。このとき、改質領域Rを偏在させる場合には、引張応力領域の中央部も偏在するようにして、該中央部と改質領域Rとが同じ位置に形成されることが好ましい。
また、ガラス基体の破壊靭性(K1c)〔MPa・m1/2〕および前記引張応力領域の中央部の引張応力(CT)〔MPa〕は、次の関係式(2)
Figure 0006390623
(式中、aは0.4〜7の正数を、bは2〜7の整数を表す。)を満たすことが好ましい。
この関係式(2)は、ガラス基体110の切断予定線から外れて、ガラス板が切断されることを抑制する指標となる計算式とガラス基体110の形成における切断の容易さを示す指標である計算式との差をとったものである。このとき、その差が1.0μJ/pulseを超えると、ガラス基体110が切断予定線から外れて切断されることなく、かつ、切断を容易に行うことができる改質条件の適用範囲が広く、加工条件の設定自由度が十分に高いことを示し、ガラス部材の製造を安定して行うことができる。この差が1.0μJ/pulse以下であると、製造上起こりうるCT値のばらつきやレーザー出力の誤差によって、切断予定線から外れて切断されたり、切断自体が行えなくなったりするため、ガラス基体110を安定的に切断できる改質条件の設定が厳しくなり、ガラス部材の製造を安定的に行うことが難しくなる場合がある。ここでaおよびbは、上記関係式(1)と同様の内容を意味する。関係式(2)は、1.5以上となることが好ましく、2.0以上となることがさらに好ましい。
なお、関係式(2)左辺の左項(第1項)は、ガラス基体110の切断予定線から外れて、ガラス板が切断されることを抑制する指標であり、異なる強化特性(CT)を備えるガラス基体110を、切断予定線から外れることなく割断できる最大(上限の)レーザーエネルギーを意味するものであって、実施例では指標値Aとして示す。また、関係式(2)左辺の右項(第2項)は、ガラス基体110の形成における切断の容易さを示す指標であり、異なる強化特性(CT)を備えるガラス基体110を割断により得ることができる最低レーザーエネルギー(e)を意味するものであって、実施例では、指標値Bとして示す。したがって、関係式(2)は指標値Aと指標値Bとの差(指標値[A−B])が1.0以上を満たすことを意味する。
また、ガラス基体の破壊靭性(K1c)〔MPa・m1/2〕および前記引張応力領域の中央部の引張応力(CT)〔MPa〕は、次の関係式(3)でk<1を満たすことが好ましい。
Figure 0006390623
(式中、aは0.4〜7の正数を、bは2〜7の整数を表す。)
関係式(3)の左辺は、関係式(2)の左辺の右項(第2項)と同一であって、ガラス基体110の形成における切断の容易さを示す指標となる計算式である。また、関係式(3)の右辺は、強化処理をしていないガラスを切断できる最低レーザーエネルギーに係数kを掛けたものである。
係数kを1未満とすることで、強化処理したガラスをレーザー光を用いて切断する際、強化処理していないガラスを切断する場合と比較して、レーザー光のエネルギーを下げることが可能となる。これにより、切断面からガラス内部方向に残るクラックが小さくなり、強化処理したガラスの切断後の端面曲げ強度を、強化処理していないガラスと比較して高くすることができる。特に、係数kを0.5以下とすることで、強化処理したガラスの切断後の端面曲げ強度が強化処理していないガラスと比較して、200MPa以上高くすることができる。
また、ガラス基体110は、その表面に形成される圧縮応力領域の圧縮応力(CS)〔MPa〕、圧縮応力層の深さ(DOL)〔μm〕が、次の関係式(4)を満たすことが好ましい。
Figure 0006390623
この関係式(4)は、ガラス基体110の切断予定線から外れて、ガラス板10が切断されることを抑制する指標を上記とは異なる観点から示すものであり、この関係式を満たすと、切断予定線から外れることなく切断できた場合に、切断面における斜め模様の発生を抑制でき、ガラス基体110の強度(ガラスを切断した後の4点曲げ強度)を十分に確保できる。なお、関係式(4)は、25以下がより好ましい。
ここで、「斜め模様」とは、ガラス板10の切断後、ガラス基体110の切断面に観察される改質領域外に生じるクラックのことであり、このクラックが多数生じると、ガラス基体110自体の強度が低下し、特別な外力を作用させなくても、ガラス基体110内部に亀裂が生じて、ガラス部材として使用不可となってしまう。
ガラス基体110は、可視波長領域で透明な材料から適宜選択して使用できる。例えば、ホウケイ酸ガラスは、加工が容易で、光学面における傷や異物等の発生を抑制できるために好ましく、アルカリ成分を含むアルカリアルミノシリケートガラスは、化学強化処理することでガラス基体110の内部に引張応力領域を形成し易いために好ましい。
ホウケイ酸ガラスの具体例としては、質量%で、SiOを60〜85%、Alを1〜10%、Bを7〜20%、NaOを0〜15%、KOを0〜15%、LiOを0〜15%、ΣMO(Mは、Li、Na、K)を1〜15%、ΣM’O(M’は、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn)を0〜18%を含有するものが挙げられる。ここで、ΣMOはMOの合計量を、ΣM’OはM’Oの合計量を表す。
アルカリ成分を含むアルカリアルミノシリケートガラスの具体例としては、下記酸化物基準のモル百分率表示で、SiOを55〜80%、Alを3〜16%、Bを0〜12%、NaOを5〜16%、KOを0〜15%、LiOを0〜15%、MgOを0〜15%、CaOを0〜3%、ΣM’O(M’は、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn)を0〜18%を含有するものが挙げられる。ここで、ΣM’OはM’Oの合計量を表す。
また、ここで使用するガラスとしては、フツリン酸塩系ガラスやリン酸塩系ガラスも使用できる。特に、CuOを添加したフツリン酸塩系ガラスもしくはリン酸塩系ガラスは、可視波長領域の光に対し高い透過率を有するとともに、CuOが近赤外波長領域の光を十分に吸収するため、良好な近赤外線カット機能を付与されたガラスとでき好ましい。
CuOを含有するフツリン酸塩系ガラスの具体例としては、質量%で、P 46〜70%、MgF 0〜25%、CaF 0〜25%、SrF 0〜25%、LiF 0〜20%、NaF 0〜10%、KF 0〜10%、ただし、LiF、NaF、KFの合量が1〜30%、AlF 0.2〜20%、ZnF 0〜15%(ただし、フッ化物総合計量の50%までを酸化物に置換可能)からなるフツリン酸塩系ガラス100質量部に対して、CuOを0.1〜5質量部、好ましくは0.3〜2質量部含有させたものが挙げられる。市販品としては、NF−50ガラス(旭硝子社製、商品名)等が例示される。
CuOを含有するリン酸塩系ガラスの具体例としては、質量%で、P 40〜85%、Al 8〜17%、B 0〜10%、LiO 0〜5%、NaO 0〜8%、KO 0〜10%、LiO+NaO+KO 0.1〜15%、SiO 0〜3%からなるリン酸塩系ガラス100質量部に対して、CuOを0.1〜5質量部、好ましくは0.3〜2質量部含有させたものが挙げられる。
ガラス基体110の厚みは、特に限定されないが、小型化、軽量化を図る点からは、0.1mm〜3mmの範囲が好ましく、0.1mm〜1mmの範囲がより好ましく、0.1mm〜0.5mmの範囲がさらに好ましい。
[ガラス部材の製造方法]
次に、本実施形態のガラス部材の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図2A〜図2Cは、ガラス部材の製造方法の一実施形態について、各工程を順番に説明する図である。
まず、ガラス板を用意し、このガラス板の少なくとも一方の主面に強化処理を施し、圧縮応力層10aを形成して、主面が強化処理されたガラス板10を得る(図2A)。このとき、強化処理は上記のように物理強化または化学強化によりなされる。また、圧縮応力層10aは、図2Aでは両方の主面に形成しているが、いずれか一方の主面に設けてもよい。
強化処理方法としては、風冷強化法(物理強化法)は、軟化点付近まで加熱したガラス板主面を風冷などにより急速に冷却すればよく、また、化学強化処理は、ガラス転移点以下の温度で、ガラス板主面に存在するアルカリ金属イオンを、イオン半径のより大きいアルカリイオンに交換する公知の方法によればよい。化学強化処理は、例えば、350℃〜550℃の溶融塩中にガラスを1〜72時間程度浸漬することで達成できる。化学強化処理に用いる溶融塩としては、カリウムイオンまたはナトリウムイオンを含むものであれば、特に限定されないが、例えば、硝酸カリウム(KNO)の溶融塩が好適に用いられる。その他、硝酸ナトリウム(NaNO)の溶融塩や硝酸カリウム(KNO)と硝酸ナトリウム(NaNO)とを混合した溶融塩を用いてもよい。
このガラス板10に対し、レーザー光の照射によりガラス板10の内部に、切断予定線に沿って改質領域Rを形成する(図2B)。なお、改質領域Rは、切断予定線に沿ってレーザー光を複数回走査することで形成してもよい。つまり、レーザー光の集光点をガラス板10の板厚方向に異ならせて、切断予定線に沿ってレーザー光を複数回走査するようにして改質領域を拡大させてもよい。なお、ガラス板10の内部に形成される改質領域Rを表すため、図2Bは、ガラス板10を切断予定線に沿った断面図として表した。
そして、ガラス板10に引張切断応力を加えると、これによりガラス板10が改質領域Rに沿って個片化される(図2C)。なお、図2Bでは、改質領域Rをガラスの断面に沿った形でしか示していないが、実際には、所望の大きさ、形状となるように改質領域Rを形成する。例えば、後述する図5A〜図5Cのようにガラス板10を平面視したとき格子状に改質領域を形成しておけば、平面形状が矩形または正方形状に切断され、一度に多数のガラス部材100を製造できる。
なお、上記図2B〜図2Cの改質領域Rの形成から切断操作について、上記では簡易に説明したが、以下、図3〜図5を参照しながらより詳細に説明する。
〈ガラス板の切断装置〉
図3は、実施形態に係るガラス板の切断装置500の模式図である。図3に示すように、切断装置500は、テーブル510と、駆動機構520と、レーザー光照射機構530と、光学系540と、距離測定系550と、制御機構560とを備える。
テーブル510は、切断対象であるガラス板10を載置するための台である。ガラス板10は、テーブル510上に載置される。なお、テーブル510は、図3に示すXYZ方向に移動可能に構成されている。また、テーブル510は、XY平面内において、図3に示すθ方向に回転可能に構成されている。
駆動機構520は、テーブル510に連結されており、制御機構560からの指示に基づいてテーブル510を水平方向(XY方向)、垂直方向(Z方向)および回転方向(θ方向)に移動させる。レーザー光照射機構530は、レーザー光Lを照射する光源である。なお、光源には、YAGレーザーを使用することが好ましい。高いレーザー強度を得ることができ、省電力、比較的安価であるためである。
YAGレーザーの場合、出力されるレーザー光Lの中心波長は、1064nmであるが、非線形光学結晶を用いて高調波を発生させることにより、中心波長532nm(緑色)のレーザー光や中心波長355nm(紫外線)のレーザー光を得ることもできる。本実施形態では、ガラス板10を切断するため、中心波長が532nmのレーザー光を出力する光源を使用している。中心波長が532nmのレーザー光が、ガラス板10をもっとも透過しやすく、切断に適しているためである。この波長のレーザー光は、後述する第2、第3の実施形態のような樹脂膜が形成されているガラス板の切断にも適したものである。
なお、レーザー光照射機構530には、パルスレーザー光を照射できるものを使用することが好ましい。また、レーザー光照射機構530は、ガラス板10の厚み(板厚)や形成する改質領域の大きさに応じて、レーザー光Lの波長、パルス幅、繰り返し周波数、照射時間、エネルギー強度等を任意に設定できるものを使用することが好ましい。
光学系540は、光学レンズOLを備え、レーザー光照射機構530からのレーザー光をガラス板10内部で収束させる。つまり、光学系540は、ガラス板10の内部に集光点Pを形成し、改質領域Rを形成する。距離測定系550は、例えば、レーザー距離計であり、三角測距方式によりガラス板10の主面までの距離Hを測定する。距離測定系550は、所定の時間間隔で(例えば、数ミリ秒ごと)ガラス板10の主面までの距離Hを測定し、制御機構560へ出力する。
制御機構560は、ガラス板10の切断予定線に沿ってレーザー光を照射するように、駆動機構520を制御してテーブル510を移動させ、レーザー光照射機構530からレーザー光をガラス板10に対して照射する。また、制御機構560は、距離測定系550から出力される距離情報に基づいて、テーブル510の高さを調整する。なお、制御機構560は、光学系540を制御してレーザー光の照射位置を調整してもよい。
すなわち、制御機構560は、光学系540とガラス板10との距離Hが一定の範囲内(例えば、±5μm)となるように、駆動機構520を制御し、ガラス板10の高さ方向(Z方向)の位置を調整する。なお、切断後のガラス板10の強度の観点から、ガラス板10の高さは、レーザー光の集光点が、ガラス板10の厚み方向の略中心となるように調整することが好ましい。
図4は、ガラス板10の改質工程の説明図である。図4に示すように、レーザー光の照射によりガラス板10内部に形成される改質領域Rは、ガラス板10の主面まで達していないことが好ましい。
〈切断方法〉
図5A〜図5Cは、ガラス板10の切断方法の説明図である。以下、図5A〜図5Cを参照して、ガラス板10の切断方法について説明する。
ガラス板10をエキスパンド用のテープT1に貼りつけて、図3を参照して説明した切断装置500のステージ510上に載置する(図5A)。なお、図5Aでは、1枚のガラス板10をテープT1に貼り付けているが、テープT1に貼り付けるガラス板10の枚数は何枚であってもよい。
次に、切断装置500を用いて、切断予定線に沿って、ガラス板10にレーザー光を照射し、改質領域Rを形成する(図5B)。なお、改質領域Rは、切断予定線に沿ってレーザー光を複数回走査することで形成してもよい。つまり、レーザー光の集光点をガラス板10の板厚方向に異ならせて、切断予定線に沿ってレーザー光を複数回走査するようにしてもよい。
このとき、ガラス板10のレーザー光入射側の主面に反射防止膜を形成しておくと、レーザー光がガラス板10の主面で反射されにくくなる。その場合、ガラス板10内部に入射されるレーザー光のエネルギー効率が低くなることを抑制することができる。その結果、所望の位置に所望の改質領域Rを形成できないといった問題の発生可能性を低減できる。
次に、テープT1を白抜き矢印の方向に拡張することで、ガラス板10に引張切断応力を加える。これにより、ガラス板10に形成された改質領域Rを起点として、切断予定線に沿ってガラス板10が個片化される(図5C)。
以上のように、本実施形態に係るガラス板の切断方法およびガラス板によれば、ガラス板10は、その内部に形成された改質領域Rを起点としてクラックが生じ、ガラス板10を容易に切断することができる。また、改質領域Rに形成したクラックがガラス板10を平面方向に引っ張ることで、ガラス板の板厚方向に伸展しやすく、ガラス板の切断面が粗くなりにくいとともに、良好な寸法精度を得ることができる。
なお、本実施形態においては、ガラス板10の主面に強化処理により圧縮応力層10aを形成し、板厚方向内部に形成される引張領域の中央部において引張応力(CT)を形成している。そのため、ガラス板10の内部に形成された改質領域Rには、クラックを拡げる方向に作用する応力が存在しており、改質領域Rを起点としたクラックが(強化処理していない場合と比較して)短くても板厚方向に伸展しやすい。また、このガラス板10は、上記説明したガラス基体110と同様の特性を有するものとしておく。すなわち、その破壊靭性(K1c)、引張応力領域の中央部の引張応力(CT)およびクラックイニシエーションロード(CIL)が、次の関係式(1)を満たすものとする。
Figure 0006390623
(式中、aは0.4〜7の正数を、bは2〜7の整数を表す。)
そのため、改質領域Rを形成する際のレーザー光の出力を小さくすることができ、改質領域R自体の幅を小さくすることができる。また、それに伴い切断面と各主面との稜線の直線性が高く、ガラス板10の強度を高めることができる。
図6は、上記のようにして切断したガラス部材100を撮像装置400に使用した一例を示す断面図である。撮像装置400は、固体撮像素子410(例えば、CCDやCMOS)を内蔵した筐体420に上記のガラス部材100を接着し、内部を気密封着したものである。このガラス部材100を使用することで、端部に生じたチッピング等を起点としてガラス部材にひびが発生する懸念を抑制することができる。この結果、信頼性の高い撮像装置400を提供することができる。
(第2の実施形態)
[ガラス部材]
図7は、本発明の第2の実施形態に係るガラス部材200の側面図を示したものである。図7に示すように、本実施形態に係るガラス部材200は、その基体となるガラス基体210と、ガラス基体210の一方の主面に形成された樹脂層220と、を有し、ガラス基体210は、その基体主面に強化処理により形成された圧縮応力層210aを有する。なお、ここで示したガラス部材200は、赤外線カットフィルタを例示したものである。
以下、本実施形態について説明するが、ここで示したガラス基体210は、第1の実施形態で説明したガラス基体110と同一であるため、説明を省略する。
〈樹脂層〉
樹脂層220は、ガラス基体210の主面に設けられた樹脂製の膜であり、所定の光学機能を有する膜を形成している。ここで、樹脂層220は、赤外線吸収膜、紫外線吸収膜等の光学機能膜が挙げられる。本実施形態では、赤外線吸収膜の場合を例に以下説明する。
樹脂層220が赤外線吸収膜である場合、一般に、赤外波長領域の光を吸収する赤外線吸収剤を含む透明樹脂から構成される。
樹脂層220に用いる透明樹脂は、可視波長領域の光を透過するものであればよく、例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アセテート系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル樹脂、アリルエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミドエーテル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂等が挙げられる。
また、樹脂層220に含まれる赤外波長領域の光を吸収する赤外線吸収剤は、ITO(In−TiO系)、ATO(ZnO−TiO系)、ホウ化ランタン等の無機微粒子や、シアニン系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ジチオール金属錯体系化合物、ジイモニウム系化合物、ポリメチン系化合物、フタリド化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、インドフェノール系化合物等の有機系色素が挙げられる。
その他、無機微粒子として、少なくともCuおよび/またはPを含む酸化物の結晶子からなり、数平均凝集粒子径が5〜200nmのものであり、好ましくは、下記化学式(1)で表わされる化合物の結晶子からなり、数平均凝集粒子径が5〜200nmのものが使用できる。
1/nCuPO …(1)
(式中、Aは、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs)、アルカリ土類金属(Mg、Ca、Sr、Ba)およびNHからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、添字のnは、Aがアルカリ金属またはNHの場合は1であり、Aがアルカリ土類金属の場合は2である。)
このような結晶子からなるものは、結晶構造に起因する赤外線吸収特性を維持でき、また、結晶子が微粒子であるため、赤外光吸収膜中に高濃度で含有でき、単位長あたりの吸収能を大きくできることから好ましい。
無機微粒子は、耐候性、耐酸性、耐水性等の向上や主面改質によるバインダ樹脂との相溶性の向上を目的に、公知の方法で主面処理がされていてもよい。
また、有機系色素として、アセトンに溶解して測定される波長領域400〜1000nmの光の吸収スペクトルにおいて、ピーク波長が695±1nmであり半値全幅が35±5nmである極大吸収ピークを有する色素が使用できる。このような色素は、近赤外線カットフィルタに求められる波長630〜700nm付近の間で急峻に吸光度が変化するため好ましい。
赤外線吸収剤は1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
また、この樹脂層220中には、上記成分以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で必要に応じて任意成分を含有してもよい。任意成分としては、具体的には、色調補正色素、紫外線吸収剤、レベリング剤、帯電防止剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、分散剤、難燃剤、滑剤、可塑剤等が挙げられる。また、後述する近赤外線吸収層を形成する際に用いる塗工液に添加する成分、例えば、シランカップリング剤、熱もしくは光重合開始剤、重合触媒に由来する成分等が挙げられる。
この樹脂層220の膜厚は、特に限定されるものではなく、用途、すなわち使用する装置内の配置スペースや要求される吸収特性等に応じて適宜定められる。上記膜厚は、0.1μm〜100μmが好ましい。膜厚が0.1μm未満では、赤外線吸収能を十分に発現できないおそれがある。一方、膜厚が100μm超では切断しにくくなる場合がある。また、膜厚は0.5μm〜50μmがより好ましい。この範囲にあれば、十分な赤外線吸収能と膜厚の平坦性を両立できる。
また、樹脂層220は、一般に、脆性材料よりも粘っこい性質を有し、例えば、その靱性(アイゾット衝撃値:JIS K7110)は10J/m〜1000J/mの範囲であることが好ましい。また、樹脂層220のヤング率は10GPa以下であることが好ましい。ガラス部材表面に樹脂層を設けた場合、上記のような樹脂の物性により切断が難しくなってしまう場合がある。しかし、本実施形態のガラス部材においては、強化処理されていないガラスと比較しガラス基体の切断による形成が良好に行えるだけでなく、上記のように粘っこい樹脂層220が形成されていても、樹脂層220まで含めて良好に切断できる。そのため、ガラス部材の切断面が滑らかで、樹脂のバリ等も有しない、筐体への適用が良好なガラス部材が得られる。
なお、図7では、樹脂層220は一方の面にのみ形成しているが、これを両面に設けてもよい。その際、樹脂層220の機能を形成する層ごとに異なるものとして、ガラス部材全体として所定の機能を有するように設計することが好ましい。
また、図7では、ガラス基体210の主面に直接樹脂層220を形成しているが、ガラス基体210と樹脂層220の間または樹脂層220の上もしくはガラス基体210の上に他の光学機能層を設けてもよい。このとき、光学機能層は、例えば、MgFの単層膜やAl・TiOとZrOとの混合物膜・MgFを積層した多層膜やSiO・TiOの交互多層膜などで構成される反射防止膜や、SiO・TiO等、屈折率の異なる誘電体膜を積層した多層膜で構成される紫外線(UV)および赤外線(IR)をカットするUVIRカット膜等の公知の光学機能膜が挙げられる。
[ガラス部材の製造方法]
次に、本実施形態のガラス部材の製造方法について説明する。本実施形態は、基本的に、第1の実施形態におけるガラス部材の製造方法と同様の方法で行うが、本実施形態においては樹脂層220を設けているため、その工程が付加される。すなわち、ガラス板の主面を強化処理してガラス板10を得た後、改質領域Rを形成する前に、ガラス板10の主面に樹脂層を形成する工程を追加すればよく、樹脂層を形成した後は、第1の実施形態と同様に、改質領域を形成し、切断操作を行えばよい。以下、樹脂層を形成する工程のみ説明する。
図2Aのように強化処理されたガラス板10の圧縮応力層10aの主面に、樹脂層を設け、樹脂層付きガラス板を得る。この樹脂層は上記説明した樹脂層と同じ構成のものである。ここで樹脂層をガラス板10の主面に形成するには、常法に従えばよく、例えば、赤外線吸収色素および透明樹脂の原料成分を溶媒に分散または溶解させて調製した塗工液を、ガラス板10上に塗工し、乾燥させ、さらに必要に応じて硬化させることにより製造できる。赤外線吸収能を有する樹脂層をこのような方法で成膜することで、所望の膜厚で均一に製造できる。上記任意成分を含む場合、塗工液に任意成分を含有させればよい。
上記溶媒としては、具体的には、アセトン、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシエチル等のエステル類;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メトキシエタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−ブトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ガソリン、軽油、灯油等の炭化水素類;アセトニトリル、ニトロメタン、水等が挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。
樹脂層は、例えば、透明樹脂、赤外線吸収剤、および必要に応じて配合される他の添加剤を、分散媒または溶媒に分散または溶解させて塗工液を調製し、塗工した後、乾燥させることにより形成できる。塗工、乾燥は、複数回に分けて実施できる。また、その際、含有成分の異なる複数の塗工液を調製し、これらを順に塗工、乾燥させてもよい。具体的には、例えば、前述の有機系色素を含む塗工液と、ITO粒子を含む塗工液をそれぞれ個別に調製し、これらを順に塗工し、乾燥させてもよい。
分散媒または溶媒としては、水、アルコール、ケトン、エーテル、エステル、アルデヒド、アミン、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。塗工液には、必要に応じて分散剤を配合できる。
塗工液の調製には、自転・公転式ミキサー、ビーズミル、遊星ミル、超音波ホモジナイザ等の撹拌装置を使用できる。高い透明性を確保するためには、撹拌を十分に行うことが好ましい。撹拌は、連続的に行ってもよく、断続的に行ってもよい。
また、塗工液の塗工には、スピンコート法、バーコート法、ディップコート法、キャスト法、スプレーコート法、ビードコート法、ワイヤーバーコート法、ブレードコート法、ローラーコート法、カーテンコート法、スリットダイコート法、グラビアコート法、スリットリバースコート法、マイクログラビア法、コンマコート法等を使用できる。その他、バーコーター法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法等も使用できる。
ガラス板10上に上記塗工液を塗工した後、乾燥させることで該ガラス板10上に樹脂層が形成される。塗工液が透明樹脂の原料成分を含有する場合には、さらに硬化処理を行う。反応が熱硬化の場合は乾燥と硬化を同時に行うことができるが、光硬化の場合は、乾燥と別に硬化処理を設ける。
なお、樹脂層は、透明樹脂の種類によっては、押出成形によりフィルム状に製造することも可能であり、さらに、このように製造した複数のフィルムを積層し熱圧着等により一体化させることもできる。また、剥離性の基材上に形成された樹脂層を剥離することにより製造することもできる。このようにして単体で得られる樹脂層を、常法により、例えば接着剤等を用いて、ガラス板10上に貼着させることで、樹脂層を有する樹脂層付きガラス板が得られる。
なお、上記説明では樹脂層220について赤外線吸収機能を主に光学機能を有する場合を説明したが、それ以外にも保護機能、反射防止機能、防塵機能、帯電防止機能等を付加するための樹脂層であってもよい。上記各機能を付与する膜としては、ガラス部材の光学特性を妨げないようなものであれば特に限定されずに使用できる。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。この実施形態は、図8A、図8Bに示したように、主面が強化処理されたガラス基体310と、このガラス基体310の一方の主面に形成された可視波長域の光は透過するが、紫外波長領域および赤外波長領域の光は反射する誘電体多層膜からなる紫外・赤外光反射膜320と、ガラス基体310の他方の主面に形成された反射防止膜330と、さらに、ガラス基体310の少なくとも一方の主面側に形成された樹脂層340と、が形成されてなるガラス部材300である。こちらも第2の実施形態と同様に、近赤外線カットフィルタを概略的に示したものであるが、図8Aは本実施形態における近赤外線カットフィルタを概略的に示す断面図、図8Bはその平面図である。
ガラス基体310は、第2の実施形態で説明したガラス基体210と同一のものを適用できる。すなわち、主面に強化処理が施されたガラス基体である。また、紫外・赤外反射膜320および反射防止膜330は、公知の膜を適用できる。
すなわち、紫外・赤外反射膜320としては、低屈折率誘電体層と高屈折率誘電体層とをスパッタリング法や真空蒸着法等により交互に積層した誘電体多層膜から構成される。低屈折率誘電体層を構成する材料としては、屈折率が1.6以下、好ましくは1.2〜1.6の材料が使用される。具体的には、シリカ(SiO)、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、六フッ化アルミニウムナトリウム等が使用される。また、高屈折率誘電体層を構成する材料としては、屈折率が1.7以上、好ましくは1.7〜2.5の材料が使用される。具体的には、チタニア(TiO)、ジルコニア、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化ランタン、イットリア、酸化亜鉛、硫化亜鉛等が使用される。なお、屈折率は、波長550nmの光に対する屈折率をいう。
誘電体多層膜は、スパッタリング法や真空蒸着法の他、イオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法等によっても形成できる。スパッタリング法やイオンプレーティング法は、いわゆるプラズマ雰囲気処理であることから、ガラス基体310に対する密着性を向上できる。
反射防止膜330は、近赤外線カットフィルタであるガラス300に入射した光の反射を防止することにより透過率を向上させ、効率良く入射光を利用する機能を有するもので、従来より知られる材料および方法により形成できる。具体的には、反射防止膜330は、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法等により形成したシリカ、チタニア、五酸化タンタル、フッ化マグネシウム、ジルコニア、アルミナ等の1層以上の膜や、ゾルゲル法、塗布法等により形成したシリカケート系、シリコーン系、フッ化メタクリレート系等から構成される。反射防止膜330の厚みは、通常、100〜600nmの範囲である。
そして、この第3の実施形態においては、樹脂層340として、ガラス基体310の少なくも一方の主面側に、樹脂製の枠状遮光膜(以下、単に「遮光膜」ともいう)が形成されている。
この遮光膜は、可視光吸収剤となるカーボンブラック、チタンブラック等の無機または有機着色剤を含有する遮光性の樹脂によって、ガラス基体310の紫外・赤外光反射膜320側の主面に形成されている。樹脂の種類は特に限定されるものではなく、紫外波長領域等の光の照射によって硬化する光硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれも使用可能である。なお、ここで、「遮光性」とは、主として光を吸収することにより光の透過を遮断する性質をいう。このような遮光性を有する樹脂からなる遮光膜は、本実施形態の近赤外線カットフィルタであるガラス300を、後述するような、撮像素子を内蔵した撮像装置に使用したときに、撮像素子に入射する光の量を調節したり、迷光をカットしたりする、いわゆる絞りとして機能する。
この遮光膜(樹脂層340)は、例えば次のような方法で形成できる。
まず、ガラス基体310の紫外・赤外光反射膜320の主面全体に、遮光性を有する光硬化性樹脂を塗布し乾燥させて光硬化性樹脂塗布層を形成する。光硬化性樹脂の塗布方法としては、スピンコート法、バーコート法、ディップコート法、キャスト法、スプレーコート法、ビードコート法、ワイヤーバーコート法、ブレードコート法、ローラーコート法、カーテンコート法、スリットダイコート法、グラビアコート法、スリットリバースコート法、マイクログラビア法、コンマコート法等を使用できる。塗布は、複数回に分けて実施してもよい。また、塗布に先立って、紫外・赤外光反射膜320に対する密着性を高めるために、紫外・赤外光反射膜320の主面にヘキサメチルジシラザン(HMDS)等によるカップリング処理を行ってもよい。
次に、光硬化性樹脂塗布層に、遮光膜に対応する位置を開口させる形状を設けたフォトマスクを介して、光を照射する。照射する光は、例えば、光硬化性樹脂が紫外波長領域の光によって硬化するものであれば、少なくともそのような紫外波長領域の光を含む光を照射する。これにより、光が照射された部分の光硬化性樹脂が硬化する。
次に、未照射部の光硬化性樹脂を現像により選択的に除去する。現像は、ウエット現像、ドライ現像等が用いられる。ウエット現像の場合は、アルカリ性水溶液、水系現像液、有機溶剤等、光硬化性樹脂の種類に対応した現像液を用いて、ディップ方式、スプレー方式、ブラッシング、スラッピング等の公知の方法により行える。これにより、遮光膜が形成される。必要に応じて、加熱、または光を照射することにより、遮光膜340をさらに硬化させてもよい。
遮光膜340は、さらに、印刷法、転写法、インクジェット法等によっても形成できる。印刷法としては、例えば、スクリーン印刷、フレキソ印刷、凸版印刷法等が挙げられる。これらの方法は、フォトマスクによる露光や現像を行わなくても、所望の形状の遮光膜を形成できる利点がある。
遮光膜の厚みは、0.1〜400μmであることが好ましい。0.1μm未満では十分な遮光特性が得られないおそれがある。一方、400μmを超えると、フィルタ全体の厚みが大きくなり、撮像装置の小型化、軽量化が困難になる。また、樹脂を硬化させる際に、硬化収縮による歪みが発生しやすくな遮光膜の厚みは、0.2〜100μmであるとより好ましく、0.5〜10μmであるとより一層好ましい。
なお、本実施形態においては、ガラス基体310の紫外・赤外光反射膜320が形成される主面とは反対側の主面に、反射防止膜330に代えて、あるいは、反射防止膜330とガラス基体310との間に、紫外波長領域および赤外波長領域の光を反射する誘電体多層膜からなる第2の紫外・赤外光反射膜を設けてもよい。また、紫外・赤外光反射膜320に代えて、あるいは紫外・赤外光反射膜320上に第2の反射防止膜が設けられていてもよい。また、紫外・赤外光反射膜320に代えて反射防止膜を設け、反射防止膜330に代えて赤外波長領域の光を吸収する色素を含有する樹脂層を設けてもよい。
また、以上説明した実施形態は、光学フィルタが近赤外線カット機能を持つフィルタの例であるが、近赤外線カット機能に限らず、ローパスフィルタ、NDフィルタ、色調フィルタ、光増幅フィルタ等の機能を有するものであってもよい。
本発明は、以上説明した実施の形態の記載内容に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはいうまでもない。また、本発明のガラス部材とは、例えば前述の光学フィルタとして用いられるガラス部材に適したものであるが、これに限らず、ディスプレイ用ガラスなどのガラス部材や着色成分を含有するガラス部材であってもよい。
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
(例1)
ガラス板として板状のアルミノシリケートガラス(旭硝子社製、板厚0.320mm、寸法100mm×100mm)を用意した。このガラス板の熱膨張係数は、72×10−7/K、破壊靭性は、0.75MPa・m1/2ある。このガラス板を、温度400℃、濃度100%の硝酸カリウム(KNO)の溶融塩中に2時間浸漬させて、ガラス板表面のナトリウムイオンをカリウムイオンとイオン交換させ、化学強化処理を行った。この化学強化処理によって、ガラス板の板厚方向内部に形成された引張応力領域の中央部(ガラス表面から板厚方向に0.160mmの位置)に61MPaの引張応力(CT)を形成した。なお、ガラス板の表面圧縮応力(CS)は770MPa、ガラス板の表面圧縮層の深さ(DOL)は22μmであった。
得られた化学強化処理後のガラス板を以下に示す切断条件により、5mm×5mmの正方形状に切断し、側面の板厚方向の中心付近に改質領域が形成された切断面を有するガラス部材を製造した。
ガラス板の内部に選択的に改質領域を形成する工程では、以下の条件を用いた。レーザー光源としてYAGレーザー(中心波長1064nm)を用い、それを変調して中心波長532nmのレーザー光をガラス板に入射させた。また、レーザー出力は改質領域がガラス板主面に達しない程度で適切な出力を選択した。レーザー光の集光点は、ガラス板の板厚方向において、中心付近となるようにした。なお、ガラス板へのレーザー光の走査回数は、1回である。
次いで、改質領域を形成したガラス板を、延伸性を有する樹脂フィルムに貼り付け、その樹脂フィルムをガラス板の平面方向に引っ張ることで、ガラス板の改質領域を起点とし、改質領域に形成されたクラックをガラス板の主面にまで伸展させることでガラス板の厚み方向に割れを生じさせ、改質領域に沿ってガラス板を切断しガラス部材を作製した。
ガラス板のCIL、K1c、板厚、強化条件(硝酸カリウムの濃度、処理温度、処理時間)、強化特性(表面圧縮応力(CS)、表面圧縮層の深さ(DOL)、引張応力(CT)を表1に、関係式(1)に関する指標値A、関係式(2)の右項に関する指標値B、関係式(2)に関する指標値A−B、関係式(4)に関する指標値C、レーザー出力、切断の可否、切断後の4点曲げ強度、斜め模様の有無を表2に示した。
(例2〜5)
例1と同じガラス板に、温度400℃、濃度100%の硝酸カリウム(KNO)の溶融塩中への浸漬時間を表1に記載したように変えて、ガラス板表面のナトリウムイオンをカリウムイオンとイオン交換させ、化学強化処理を行った以外は、例1と同一の操作によりガラス板の製造と切断を行った。この化学強化処理によって、ガラス板の板厚方向中央部に引張応力(CT)を形成した。表2に記載した切断条件により、例1と同様の操作によりガラス板を切断しガラス部材を作製した。ガラス板の特性、板厚、強化条件、強化特性、各指標値、改質処理条件、切断の可否、4点曲げ強度、斜め模様の有無、について、それぞれ表1および表2にまとめて示した。また、例2および例5で得られたガラス部材の側面(切断面)の写真をそれぞれ図9および図10に示した。
(例6〜14)
例1と同じガラス板に、温度400℃、硝酸カリウム(KNO)の濃度96質量%または85質量%の硝酸カリウム(KNO)と硝酸ナトリウム(NaNO3)の混合溶融塩の種類、該溶融塩中への浸漬時間、を表1に記載したように変えて、ガラス板表面のナトリウムイオンをカリウムイオンとイオン交換させ、化学強化処理を行った以外は、例1と同一の操作によりガラス板の製造と切断を行った。この化学強化処理によって、ガラス板の板厚方向中央部に引張応力(CT)を形成した。表2に記載した切断条件により、例1と同様の操作によりガラス板を切断しガラス部材を作製した。ガラス板の特性、板厚、強化条件、強化特性、各指標値、改質処理条件、切断の可否、4点曲げ強度、斜め模様の有無、について、それぞれ表1および表2にまとめて示した。
(例15〜25)
使用するガラス板の厚さ、化学強化処理の条件を、表1に記載のとおりとした以外は例1と同一の操作によりガラス部材を作製した。ガラス板の特性、板厚、強化条件、強化特性、各指標値、改質処理条件、切断の可否、4点曲げ強度、斜め模様の有無、について、それぞれ表1および表2にまとめて示した。
(例26〜28)
ガラス板として板状のホウケイ酸ガラス(ショット社製、商品名:D263、板厚0.15mm、寸法100mm×100mm)を用意した。このガラス板の熱膨張係数は、72×10−7/K、破壊靭性(K1c)は、0.67MPa・m1/2、クラックイニシエーションロード(CIL)は2.1kgfである。化学強化処理の条件を、表1に記載のとおりとした以外は例1と同一の操作によりガラス部材を作製した。ガラス板の特性、板厚、強化条件、強化特性、各指標値、改質処理条件、切断の可否、4点曲げ強度、斜め模様の有無、について、それぞれ表1および表2にまとめて示した。
Figure 0006390623
Figure 0006390623
なお、表2の強化特性における指標値Aは、明細書中で説明した関係式(1)式の左辺(関係式(2)の左辺における第1項と同じ)の値、指標値Bは、明細書中で説明した関係式(2)の左辺の第2項の値、指標値A−Bは、明細書中で説明した関係式(2)の左辺の値、をそれぞれ表す。
これらの結果から、例1〜22、24、26、27においては、指標値Aが(3×CIL)μJ/pulseを超えており関係式(1)を満たしている。そのため、いずれの例も、切断予定線から外れることなく、切断操作を良好に行うことができることが確認できた。さらに、例1〜13、15〜21、24、26〜27は、指標値A−Bが1.0μJ/pulseを超えており関係式(2)を満たしている。そのため、改質条件の適用範囲が広いものであって、切断操作を容易に、かつ、良好に行うことができより好ましい例である。
また、比較例として、強化処理を行わないガラス部材について、実施例と同様の評価を行った。結果を表3に示す。
Figure 0006390623
例29は、同一の板厚の実施例と比較し、大幅に4点曲げ強度が低かった。また、割断を行うために、レーザー光を切断予定線に対して2回走査する必要があった。例30は、同一の板厚の実施例と比較し、大幅に4点曲げ強度が低かった。例31は、同一の板厚の実施例と比較し、4点曲げ強度が低かった。
よって、本発明のガラス部材は、強化処理をしていないガラス部材に対して、高い機械的強度が得られることがわかる。
次に実施例における数式(c)について確認した。
各実施例の以下に示す数式(c)で算出されるm(関係式(3)の右辺における係数k以外)の値を計算した。
Figure 0006390623
例1〜例14と同一のガラス板(強化処理をしない)のmは22.3μJ/pulse、例15〜例21と同一のガラス板(強化処理をしない)のmは15.8μJ/pulse、例22〜例23と同一のガラス板(強化処理をしない)のmは16.8μJ/pulse、例24〜例25と同一のガラス板(強化処理をしない)のmは15.8μJ/pulse、例26〜例28と同一のガラス板(強化処理をしない)のmは14.5μJ/pulseである。
関係式(3)の左辺は前述の指標値Bと同一であることから、各実施例のガラス板は、いずれも係数kが1未満である。また、各実施例において、係数kの値が小さい実施例ほど、強化処理をしていない同一のガラス板と比較して4点曲げ強度が高いことがわかる。
しかし、例5のように関係式(4)を満たさない場合、上記係数kの値が比較的小さいにも関わらず、強化処理をしていない同一のガラス板と比較して4点曲げ強度は若干高いだけであり、関係式(4)を満たすように強化処理をされている同一のガラス板を良好に割断した例と比較して4点曲げ強度が低いことが分かる。このことから、関係式(4)を満たす例1〜4、6〜22、24、26、27は、より高い4点曲げ強度を得られる好ましい例である。
本発明のガラス部材およびその製造方法は、強化処理が施されているガラス板、さらには樹脂層が形成されているガラス板についても良好に切断操作を行うことができ、電子機器に内蔵される半導体装置(例えば、固体撮像素子(CCDやCMOS等)を有する装置)のカバーガラスや近赤外線カットフィルタ等に好適に用いることができる。
100,200,300…ガラス部材、110,210,310…ガラス基体、220,340…樹脂層、320…紫外・赤外反射膜、330…反射防止膜、500…ガラス板の切断装置、510…テーブル、510…ステージ、520…駆動機構、530…レーザー光照射機構、540…光学系、550…距離測定系、560…制御機構、OL…光学レンズ、T1…テープ、L…レーザー光。

Claims (24)

  1. 強化処理された主面と、内部に集光するようにして照射された光により形成された改質領域に沿って切断された切断面と、を有するガラス基体を本体とするガラス部材であって、
    前記強化処理により前記ガラス基体の板厚方向内部に形成される引張応力領域における中央部の引張応力(CT)、前記ガラス基体の破壊靭性(K1c)および前記ガラス基体のクラックイニシエーションロード(CIL)は、次の関係式(1)を満たすことを特徴とするガラス部材。
    Figure 0006390623
    (式中、aは0.4〜7の正数を、bは2〜7の整数を表す。)
  2. 前記ガラス基体の破壊靭性(K1c)および前記引張応力領域の中央部の引張応力(CT)は、次の関係式(2)を満たすことを特徴とする請求項1に記載のガラス部材。
    Figure 0006390623
    (式中、aは0.4〜7の正数を、bは2〜7の整数を表す。)
  3. 前記ガラス基体の破壊靭性(K1c)および前記引張応力領域の中央部の引張応力(CT)は、次の関係式(3)において、k<1を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載のガラス部材。
    Figure 0006390623
    (式中、aは0.4〜7の正数を、bは2〜7の整数を表す。)
  4. 前記強化処理により前記ガラス基体の板厚方向内部に形成される引張応力領域において、該引張応力領域の中央部の引張応力(CT)が、50MPa〜200MPaであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のガラス部材。
  5. 前記ガラス基体の表面に形成される圧縮応力領域の圧縮応力(CS)および前記圧縮応力領域の深さ(DOL)は、次の関係式(4)を満たすことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のガラス部材。
    Figure 0006390623
  6. 前記改質領域は、前記引張応力領域に形成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のガラス部材。
  7. 前記ガラス基体のクラックイニシエーションロード(CIL)は、2kgf未満であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のガラス部材。
  8. 前記ガラス基体の板厚(t)が、0.1〜0.6mmであることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のガラス部材。
  9. 前記ガラス基体の少なくとも一方の主面に、樹脂層が形成されていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載のガラス部材。
  10. 前記樹脂層は、前記ガラス基体の一方の主面のみに形成されており、
    前記改質領域は、前記樹脂層が形成された主面側に偏在していることを特徴とする請求項9に記載のガラス部材。
  11. 前記樹脂層は、赤外線吸収色素を含有することを特徴とする請求項9または10に記載のガラス部材。
  12. 前記樹脂層は、可視光吸収色素を含有することを特徴とする請求項9ないし11のいずれか1項に記載のガラス部材。
  13. 前記樹脂層または前記ガラス基体が赤外線吸収能を有する請求項1ないし12のいずれか1項に記載のガラス部材。
  14. ガラス板の主面に強化処理を施して、該ガラス板の板厚方向内部に形成される引張応力領域における中央部の引張応力(CT)、前記ガラス板の破壊靭性(K1c)および前記ガラス板のクラックイニシエーションロード(CIL)が次の関係式(1)を満たすように強化処理する強化処理工程と、
    前記ガラス板の内部に集光するようにして光を照射し、選択的に改質領域を形成する改質工程と、
    前記改質領域に沿って前記ガラス板を切断する切断工程と、
    を有することを特徴とするガラス部材の製造方法。
    Figure 0006390623
    (式中、aは0.4〜7の正数を、bは2〜7の整数を表す。)
  15. 前記強化処理工程では、前記ガラス板の板厚方向内部に形成される引張応力領域における中央部の引張応力(CT)、前記ガラス板の破壊靭性(K1c)が次の関係式(2)を満たすように強化処理することを特徴とする請求項14に記載のガラス部材の製造方法。
    Figure 0006390623
    (式中、aは0.4〜7の正数を、bは2〜7の整数を表す。)
  16. 前記強化処理工程では、前記ガラス板の破壊靭性(K1c)および前記引張応力領域の中央部の引張応力(CT)は、次の関係式(3)において、k<1を満たすように強化処理することを特徴とする請求項14または15に記載のガラス部材の製造方法。
    Figure 0006390623
    (式中、aは0.4〜7の正数を、bは2〜7の整数を表す。)
  17. 前記強化処理工程では、ガラス板の主面に強化処理を施して、該ガラス板の板厚方向内部に形成される引張応力領域における中央部の引張応力(CT)を50MPa〜200MPaとすることを特徴とする請求項14ないし16のいずれかに記載のガラス部材の製造方法。
  18. 前記強化処理工程では、前記ガラス板の表面に形成される圧縮応力領域の圧縮応力(CS)および前記圧縮応力領域の深さ(DOL)は、次の関係式(4)を満たすように強化処理することを特徴とする請求項14ないし17のいずれか1項に記載のガラス部材の製造方法。
    Figure 0006390623
  19. 前記改質領域は、前記引張応力領域に形成されることを特徴とする請求項14ないし18のいずれか1項に記載のガラス部材の製造方法。
  20. 前記ガラス基体のクラックイニシエーションロード(CIL)は、2kgf未満であることを特徴とする請求項14ないし19のいずれか1項に記載のガラス部材の製造方法。
  21. 前記ガラス基体の板厚(t)は、0.1〜0.6mmであることを特徴とする請求項14ないし20のいずれか1項に記載のガラス部材の製造方法。
  22. 前記強化処理工程により形成される前記ガラス板表面の圧縮応力領域の圧縮応力(CS)は、200MPa〜800MPaであることを特徴とする請求項14ないし21のいずれか1項に記載のガラス部材の製造方法。
  23. 前記強化処理が施されたガラス板の少なくとも一方の主面に樹脂層を形成する樹脂層形成工程を備えることを特徴とする請求項14ないし22のいずれか1項に記載のガラス部材の製造方法。
  24. 前記樹脂層形成工程において、前記ガラス板の一方の主面のみに樹脂層を形成し、かつ、前記改質工程において、前記改質領域を前記樹脂層が形成された主面側に偏在するように形成することを特徴とする請求項23に記載のガラス部材の製造方法。
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