JP2016018156A - 近赤外線吸収構造体、および、その製造方法 - Google Patents

近赤外線吸収構造体、および、その製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】可視光に対する透過率が高く、近赤外光を効果的に吸収することが可能であって、信頼性を向上可能な近赤外線吸収構造体等を提供する。
【解決手段】赤外吸収無機化合物と、下記(i)および(ii)の条件を満たすオルガノポリシロキサンとを含む近赤外線吸収構造体。
(i)T単位を95%以上含む。
(ii)赤外線吸収スペクトルにおいて、Si−OH結合による第1のピーク強度(K1)と、Si−O−Si結合による第2のピーク強度(K2)とが、0<K1/K2<0.01の関係を満たす。
【選択図】図1

Description

本発明は、近赤外線吸収構造体、および、その製造方法に関する。
CCD(Charge Coupled Device)やCMOSイメージセンサ(Complementary Metal Oxide Semiconductor Image Sensor)等の固体撮像素子を用いたデジタルスチルカメラ、デジタルビデオ、携帯電話カメラ等の撮像装置、受光素子を用いた自動露出計等の表示装置においては、従来、可視波長域から1100nm付近の近赤外波長域にわたる分光感度を有している。一方で、人間の視感度は可視波長域のみであるため、固体撮像素子または受光素子の感度を人間の視感度に近づけ、良好な色再現性を得るためには、撮像レンズと固体撮像素子または受光素子との間に近赤外線構造体を配置し視感度の補正を行う。
近年、近赤外線構造体においては、可視光について高い透過率を実現すると共に、赤外光を効果的に吸収するために、さまざまな技術が提案されている(たとえば、特許文献1,2を参照)。
特開2013−127613号公報 特表2013−526624号公報
従来の近赤外線吸収構造体は、赤外領域の光を効果的に吸収するが、信頼性が十分に高くなかった。そのため、高温または高湿の環境下で一定時間放置すると、近赤外線吸収特性が低下する、または、ヘーズが発生するなどの問題があった。
本発明は、赤外光を効果的に吸収することが可能であって、耐湿熱性および耐熱性が向上した近赤外線吸収構造体、および、その製造方法を提供することを目的とする。
本発明の近赤外線吸収構造体(以下、本吸収構造体という)は、赤外吸収無機化合物とオルガノポリシロキサンとを含む。本吸収構造体のオルガノポリシロキサンは、T単位からなり、赤外線吸収スペクトルにおいて、Si−OH結合による第1のピーク強度(K1)と、Si−O−Si結合による第2のピーク強度(K2)とが、0<K1/K2<0.01の関係を満たす。
本発明は、赤外光を効果的に吸収し、耐湿熱性と耐熱性が高い近赤外線吸収構造体、および、その製造方法を提供できる。
図1は、本発明に係る第1の実施形態の近赤外線吸収構造体を示す図である。 図2は、本発明に係る第2の実施形態の近赤外線吸収構造体を示す図である。
以下より、本吸収膜に係る実施形態の一例について、図面を参照して説明する。なお、本発明は、下記の実施形態に限定されない。また、図面においては、模式的に各部を示しており、各部の寸法比率等については、実際のものとは異なる場合がある。
本実施形態において、構造体の具体例としては、膜状、ブロック状、およびレンズ状等が挙げられる。
[A]近赤外線吸収構造体の構成
近赤外線吸収構造体は、赤外吸収無機化合物とオルガノポリシロキサンとを含む。近赤外線吸収構造体は、図1に示すようにオルガノポリシロキサンの自立膜の態様(第1の実施態様)や、図2に示すようにオルガノポリシロキサンの膜が基板上に形成された態様(第2の実施態様)が挙げられる。
[A−1]赤外吸収無機化合物
本実施形態において、赤外吸収無機化合物は、1100nm以上の波長の光(以下、赤外光という)を吸収する無機化合物である。赤外吸収無機化合物は、例えば、粒子である。該無機化合物としては、例えば、ITO(In−SnO系)、ATO(Sb−SnO系)、ホウ化ランタン、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウム、タングステン酸ルビジウム、および、タングステン酸セシウム等の無機化合物が挙げられる。
これらの無機化合物のうち、可視光の透過率が高く、赤外光を効果的に吸収するため、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウム、タングステン酸ルビジウム、および、タングステン酸セシウムからなる群から選ばれる1以上が好ましい。
可視域透過率が高く、1200nm以上の波長の光を効果的に吸収するため、無機化合物は、タングステン酸セシウムがより好ましい。
[A−2]オルガノポリシロキサン
オルガノポリシロキサンは、赤外吸収無機化合物において、バインダーである。オルガノポリシロキサンは、T単位を95%以上含み、赤外線吸収スペクトルにおいて、Si−OH結合による第1のピーク強度(K1)と、Si−O−Si結合による第2のピーク強度(K2)とが、0<K1/K2<0.01の関係を満たす。
本実施形態のオルガノポリシロキサンは、T単位(Si元素に3つの酸素原子が結合している基本単位)を95%以上含むので、赤外線吸収無機化合物が分散しやすい。そのため、近赤外線吸収構造体のヘーズを低減できる。赤外線吸収無機化合物を分散しやすくするため、T単位の割合は97%以上がより好ましい。オルガノポリシロキサン中のT単位の割合は、例えば、固体29Si−NMRのスペクトルの、各構造に由来するSiのピーク面積から算出できる。固体29Si−NMRのスペクトルにおいてT単位のピークの化学シフトは、−48〜−88ppm(ジメチルシリコーン由来のピークが−22ppmとした場合)に見られる。
オルガノポリシロキサンの骨格構造は、Si元素に結合された酸素原子の数により4つの基本単位に分けられる。オルガノポリシロキサンで形成された構造体を得るには、Si元素に3つの酸素元素と一つの有機基とが結合しているT単位、または、Si元素に4つの酸素元素が結合しているQ単位が必要である。本発明者らが検討した結果、オルガノポリシロキサン中の赤外吸収無機化合物の分散しやすさは、T単位の割合と相関があることを見出した。その結果、T単位の割合が高いオルガノポリシロキサンを使用することによって、無機化合物が均一に分散し、ヘーズが低い近赤外線吸収構造体が得られることを、本発明者らが見出した。
オルガノポリシロキサンは、可視光域で高い透明性を得るため、および、赤外吸収無機化合物との間の屈折率差を調整するために、Si元素に結合している一価の有機基がアルキル基である第1のT単位と、Si元素に結合している一価の有機基がアリール基である第2のT単位とを含むことが好ましい。オルガノポリシロキサンと赤外線吸収無機化合物との屈折率差が小さいときには、近赤外線吸収構造体のヘーズをより小さくできる。
オルガノポリシロキサンは、第1のT単位の数(N1)と、第2のT単位の数(N2)とが、0.2≦N1/(N1+N2)≦1.0の関係を満たしていることが好ましい。これにより、耐湿熱性と耐熱性が高いオルガノポリシロキサンが得られる。同様の理由で、N1とN2の関係は、0.3≦N1/(N1+N2)≦0.8を満たすことがより好ましく、0.35≦N1/(N1+N2)≦0.7を満たすことがさらに好ましい。
N1/(N1+N2)の値が0.2以上であれば、有機基の中に含まれるアリール基の割合が低いので、オルガノポリシロキサン内で有機基同士の立体障害を小さくできる。その結果、熱硬化後のオルガノポリシロキサンの架橋度を高くでき、耐湿熱性および耐熱性を高くできると考えられる。近赤外線吸収構造体と透明基材との積層体にする場合、近赤外線吸収構造体と透明基材との密着性を向上させるために、N1/(N1+N2)の値は0.8以下がより好ましい。
N1およびN2は、固体H−NMRスペクトルでの、Si−R基に由来するアルキル基(R)のピーク面積と、Si−Ar基に由来するアリール基(Ar)のピーク面積から算出される。アルキル基のピーク面積がN1の含有量に相当し、アリール基のピーク面積がN2の含有量に相当する。
第1のT単位に含まれるアルキル基の炭素数は、1〜12が好ましく、1〜3がより好ましく、1が特に好ましい。アルキル基の炭素数が1〜12であれば、オルガノポリシロキサンの耐湿熱性と耐水性を向上できる。また、該アルキル基は、炭素数が3以上の場合には、分子内の一部に分岐を有してもよい。
第2のT単位に含まれるアリール基は、芳香族環の一部の水素がハロゲンを除く官能基に置換されていてもよい。オルガノポリシロキサンの耐熱性を高める観点から、π−π電子相互作用を形成しやすいフェニル基がより好ましい。
本近赤外線吸収構造体のオルガノポリシロキサンは、赤外線吸収スペクトルにおいて、Si−OH結合による第1のピーク強度(K1)と、Si−O−Si結合による第2のピーク強度(K2)とが、0<K1/K2<0.01の関係を満たす。
オルガノポリシロキサンが、0<K1/K2<0.01の関係を満たすため、耐湿熱性と耐熱性が高い近赤外線吸収構造体が得られる。K1/K2の値はオルガノポリシロキサン中のSi−OH基残存率を表している。K1/K2の値が小さいほど、オルガノポリシロキサンの架橋度が高くなり、緻密になるので、耐湿熱性および耐熱性が向上する。また、K1/K2の値が0.01未満であれば、オルガノポリシロキサン中での赤外線吸収無機化合物の保持率が高くなり、分散性が高くなる。K1/K2の値が0超であれば、赤外吸収無機化合物を固定化できる。その結果、耐湿熱性および耐熱性試験で近赤外線吸収構造体のヘーズ値の変化を低くできる。
第1のピークと第2のピークは、FT−IR/ATR法で測定した赤外線吸収スペクトルでの以下の波数におけるピークをいう。
Si−OH:800−960cm−1
Si−O−Si:1000−1250cm−1
[A−3]赤外吸収無機化合物とオルガノポリシロキサンの混合割合(混合比)
赤外吸収無機化合物の質量割合は、赤外吸収構造体中の全質量に対して10〜50%が好ましい。赤外吸収無機化合物の質量割合が10%以上であれば、十分な赤外吸収特性が得られる。また、赤外吸収無機化合物の質量割合が50%以下であれば、赤外吸収構造体のヘーズを低くできるため好ましい。
[A−5]その他
近赤外線吸収構造体は、オルガノポリシロキサンに赤外吸収無機化合物の他に、適宜、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、色調補正色素、レベリング剤、帯電防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、分散剤、難燃剤、滑剤、可塑剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。紫外線吸収剤としては、可視光に対する透過性の点から、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、環状イミノエステル系等の化合物が挙げられる。
(第1の実施形態)
第1の実施形態の近赤外線吸収構造体20は、図1に示すように、自立膜である。近赤外線吸収構造体20の形状は用途に応じて適宜自由に設計できる。近赤外線吸収構造体20は、膜厚が比較的薄いフィルム状でもよく、膜厚が分厚いブロック状でもよい。さらに、断面形状も用途に応じて適宜自由に設計できる。近赤外線吸収構造体の形状は、例えば、矩形、球面レンズ、非球面レンズ形状などが挙げられる。
取り扱いの容易性や、赤外線吸収能を担保するため、近赤外線吸収構造体の平均膜厚は、0.03〜50μmの範囲であることが好ましく、0.5〜20μmの範囲であることが、より好ましい。
上記の「平均膜厚」は、接触式膜厚測定装置を用いて測定される、基板表面と膜表面との平均段差の距離をいう。ここでは、上記の「平均膜厚」は、ISO 5436−1に基づいて、最小二乗法によって、段差の底面と上面とのそれぞれに対して傾きが等しくなる直線を求め、その2つの直線間の距離を平均段差として算出される。
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、図2に示すように、透明基板10の一方の面に近赤外線吸収構造体20が設けられている積層体である。第2の実施形態は、透明基板10を有しているため、近赤外線吸収構造体20をより薄膜にでき、さらに、よりクラックの発生が少ない。
透明基板10は、透明な板状体であって可視光を透過する材料が好ましい。透明基板10としては、樹脂基板、ガラス基板等が挙げられる。透明基板10は、加工性、可視光の透過率に優れるため、ガラス基板が好ましい。
樹脂基板としては、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ノルボルネン系樹脂等の樹脂で形成された基板が挙げられる。
ガラス基板としては、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、化学強化ガラス、物理強化ガラス、銅を含有する燐酸塩ガラス、および、銅を含有する弗燐酸塩ガラスで形成された基板が挙げられる。燐酸塩ガラスは、ガラスの骨格の一部がSiOから構成される珪燐酸塩ガラスであってよい。
ガラス基板の中でも、銅を含有するガラスで形成された基板が好ましい。銅を含有するガラスは、可視光に対して透過率が高く、波長が670〜800nmの領域および、波長が800nm以上である光の透過率が低い。銅を含有するガラスとしては、たとえば、NF−50(AGCテクノグラス(株)製 商品名)、BG−60、BG−61(以上、ショット社製 商品名)、CD5000(HOYA(株)製 商品名)等が挙げられる。また、上記した銅を含有するガラスに、例えば、Fe、MoO、WO、CeO、SbおよびVからなる群から選ばれる1以上の金属酸化物を含有させて、紫外線を吸収する特性を付与してもよい。
透明基板10の形状は、図2に示す形状に限定されず、たとえば、厚さ方向の断面が、矩形、正方形、および一部が曲線を有する形状等であってもよい。具体的には、断面が矩形および正方形の形状である透明基板10については、たとえば、カメラの窓材として使用できる。また、断面の一部が曲線を有する形状である透明基板10については、凸レンズや凹レンズ等の球面および非球面レンズ等として使用できる。
近赤外線吸収構造体の一主面上には、光の反射膜等の光学機能を有する膜を有してもよい。
光学機能を有する膜としては、誘電体多層膜が挙げられる。誘電体多層膜は、相対的に屈折率が低い誘電体層(低屈折率誘電体層)と、相対的に屈折率が高い誘電体層(高屈折率誘電体層)とが交互に積層された物が好ましい。このような誘電体多層膜の典型例としては、SiOとTiOの交互膜が挙げられる。各誘電体層の屈折率および、各誘電体層の膜厚、層数を調整することにより、所望の光を反射する膜が得られる。
本吸収構造体は、可視光透過率が70%以上であることが好ましく、72%以上であることがより好ましく、74%以上であることが特に好ましい。
本吸収構造体は、850nmでの透過率が20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることが特に好ましい。
本吸収構造体は、ヘーズが1%以下であることが好ましく、0.8%以下であることがより好ましく、0.7%以下であることが特に好ましい。
[B]近赤外線吸収構造体の製造方法
本実施形態の近赤外線吸収構造体の製造方法は、赤外吸収無機化合物とオルガノポリシロキサンのプレポリマーとを含む塗布液を基板上に塗布して塗布膜を形成し、塗布膜を加熱して製造する。
塗布液は、例えば、赤外線吸収無機化合物が溶媒に分散された分散液とオルガノポリシロキサンのプレポリマーとを混合して調整する。
近赤外線吸収無機化合物の溶媒は、たとえば、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチル、2−ヘプタノン、1−メトキシ−2−プロパノールアセテート等の有機溶媒、または、これらの混合物等を使用できる。
赤外線吸収無機化合物は上記した無機化合物が好適に使用される。
オルガノポリシロキサンのプレポリマーは、加水分解性のオルガノシラン化合物を反応系中で加水分解し、その後縮合により形成する。
オルガノシラン化合物としては、下記式1または式2に示すオルガノシラン化合物が好ましい。これらは、取り扱いが容易であって、耐熱性が高いオルガノポリシロキサンを形成できる。式1および式2において、官能基(−Z)は、水酸基、または、加水分解性基である。加水分解性基は、たとえば、ハロゲン、アルコキシ基、アシル基、またはアミノ基などが挙げられる。
(R−)Si(−Z) 式1
(Ar−)Si(−Z) 式2
式1において、アルキル基(R−)は、本近赤外線吸収構造体を構成するオルガノポリシロキサンの耐湿熱性を向上するために、炭素数が1〜12であることが好ましく。また、アルキル基は分岐鎖を有していてもよい。特に、加水分解および縮合反応の反応しやすさの観点から、アルキル基(R−)の炭素数は1〜3であることがより好ましい。式1に示す化合物としては、メチルトリクロロシラン(Me−Si−Cl)が特に好ましい。
式2において、アリール基は、本近赤外線吸収構造体を構成するオルガノポリシロキサンの耐湿熱性および耐熱性を向上させ、近赤外線吸収構造体のクラック発生を低減するために、好ましく用いられる。なお、アリール基(Ar−)は、芳香族環の一部の水素元素がハロゲン基を除く官能基に置換されていてもよく、加水分解および縮合反応の反応しやすさの観点から、フェニル基がより好ましい。式2に示す化合物としては、フェニルトリクロロシラン(Ph−Si−Cl)が特に好ましい。
プレポリマーは、有機溶媒中で前記オルガノシラン化合物の加水分解反応により形成できる。加水分解を行う際に溶液のpHを調整することにより、K1/K2の値を本実施形態の範囲に調整できる。前記pHはSiOHが安定に存在できる範囲が好ましく、具体的には、pHが0〜4の範囲または11〜12の範囲であることが好ましい。反応性の観点から、pHが11〜12の範囲であることがより好ましい。
有機溶媒は、オルガノシラン化合物を溶解できればよく、具体的には、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチル、2−ヘプタノン、1−メトキシ−2−プロパノールアセテートなどが使用できる。
つぎに、塗布液を基体上に塗布して塗布膜を形成する。
塗布方法は、公知のコーティング法を適用でき、製造したい近赤外線吸収構造体の膜厚に応じて適宜選択すればよい。コーティング法としては、ワイヤーバーコーティング法、浸漬コーティング法、キャストコーティング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラーコーティング法、カーテンコーティング法、スリットダイコーター法、グラビアコーター法、スリットリバースコーター法、マイクログラビア法、または、コンマコーター法等を使用できる。その他、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法等が挙げられる。
近赤外線吸収構造体が自立膜である場合(図1参照)、塗布液を塗布する基板は、剥離性があることが好ましい。これにより、加熱後にオルガノポリシロキサンを基板から容易に剥離できる。このような基板としては、PTFEシート等が挙げられる。
近赤外線吸収構造体と透明基板との積層体を得る場合(図2参照)には、塗布液を塗布する基板を透明基板にすることが好ましい。これにより、少ない工程で積層体が得られる。透明基板としては、樹脂基板やガラス基板が挙げられる。加工性が優れると共に、可視光の透過率が高いため、透明基板はガラス基板が好ましい。塗布液と透明基板との密着性を高めるため、塗布液を塗布する前に、透明基板を前処理することが好ましい。
前処理剤としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−N’−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン類、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン類、ビニルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン類、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を使用できる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
塗布膜を加熱することで、プレポリマーの熱硬化と塗布液の溶媒の除去をして、赤外線吸収無機化合物を含むオルガノポリシロキサンからなる近赤外線吸収構造体を形成する。塗布膜を加熱する条件は、塗布液の溶媒の沸点に応じて任意に設定すればよい。
加熱温度は、60〜350℃が好ましく、80〜180℃がより好ましい。加熱温度を60〜350℃とすれば、オルガノポリシロキサンのT単位を95%以上にできる。
加熱時間は、5〜120分が好ましい。加熱は、1回でもよく、2回以上でもよい。さらに、2回以上の加熱を行うときには、段階的に温度を上げてもよく、段階的に温度を下げてもよい。
また、加熱する前に、大気中において塗布膜の風乾を行ってもよく、減圧下において乾燥を行ってもよい。加熱前に塗布膜を乾燥することで、溶媒を除去しやすくなる。
自立膜の近赤外線吸収構造体を製造する場合、近赤外線吸収構造体を基板上に形成した後、基板から近赤外線吸収構造体を剥離する。これにより、自立膜の近赤外線吸収構造体が得られる。
本吸収構造体は、撮像装置(デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、監視カメラ、車載用カメラ、ウェブカメラ等)、自動露出計、プラズマ・ディスプレイ・パネル(PDP)において、近赤外カットフィルタとして好適に使用できる。本吸収膜は、撮像装置において、撮像レンズと固体撮像素子との間、撮像レンズとカメラの窓材との間の少なくとも一方に配置され、好適に用いられる。本吸収膜は、撮像装置の固体撮像素子、自動露出計の受光素子、撮像レンズ、PDP等の各機器に、粘着剤層を用いて貼り付けることができる。また、車両(自動車等)のガラス窓やランプに貼り付けてもよい。
つぎに、実施例について具体的に説明する。本発明は、下記に示す実施例に限定されない。なお、例1、例3〜7、例10〜13、例16は、実施例であり、例2と例8,例9,例14,例15は、比較例である。
Figure 2016018156
[合成例1]オルガノポリシロキサンのプレポリマーAの合成
容量が3Lの四口フラスコに、800mLのメチルイソブチルケトンと800mLの炭酸ナトリウム水溶液(濃度1.5M)を加えた。40℃の温度条件で、149.5g(1.0mol)のメチルトリクロロシランを滴下した。次に、60℃の温度条件で、1時間反応させた。その後、有機溶媒層をイオン交換水で洗浄して有機溶媒を除去した。これにより、オルガノポリシロキサンのプレポリマーAの白色固体(45.7g(収率82%))を得た。
[合成例2]〜[合成例7]オルガノポリシロキサンのプレポリマーB〜Gの合成
メチルトリクロロシランとフェニルトリクロロシランとを表1に示す混合モル比で混合すること以外は、合成例1と同様にして、オルガノポリシロキサンのプレポリマーB〜Gの白色固体を得た。
プレポリマーA〜Gをキシレンに分散して20質量%の塗布液を得た。各塗布液をガラス基板(厚さ0.3mm,無アルカリガラス(AGCテクノグラス(株)製、商品名:AN100)の一方の主面にスピンコート法で塗布して塗布膜を形成した。次に、塗布膜を120℃で60分間加熱してオルガノポリシロキサンとガラス基板からなる積層体を得た。オルガノポリシロキサンをガラス基板から剥離し、カミソリ刃で削り出したサンプルを使用した。
各サンプルにおいて、オルガノポリシロキサンに含まれるSi−OH結合による第一のピーク強度(K1)とSi−O−Si結合による第2のピーク強度(K2)とを測定し、K1/K2の値を算出した。結果を表3にします。
K1およびK2は、赤外分光光度計(サーモフィッシャー・サイエンティフィック社製)を用いて、FT−IR/ATR法によって求めた。なお、各結合に由来するFT−IRの波数は、以下のとおりである。
Si−OH:800−960cm−1
Si−O−Si:1000−1250cm−1
核磁気共鳴分析装置(固体29Si−NMR:JEOL RESONANCE株式会社製、ECP600)を用いて、各合成例のサンプルに含有するT単位の含有量(モル%)を求めた。
T単位の含有量(モル%)は、固体29Si−NMRの下記T単位のピーク面積から求めた。
また、各構造に由来する固体29Si−NMRの化学シフトは、以下のとおりであり、T単位が存在することを確認した。
T単位の化学シフト:−48〜−88ppm
測定法はDDMAS法であり、測定条件は、パルス幅1.9μsec、パルス繰り返しの待ち時間300sec、積算回数300scan以上、MAS回転速度10KHzとした。化学シフトの基準はジメチルシリコーン由来のピークである−22ppmとした。
核磁気共鳴分析装置(固体1H−NMR:JEOL RESONANCE株式会社製、ECP600)を用いて、各合成例のサンプルについて、Si−Me基に由来するMe基のピーク面積(N1)およびSi−Ph基に由来するPh基のピーク面積(N2)を求めた。その求めた値から、N1/(N1+N2)の値を算出した。その結果を表3に示す。
各構造に由来する固体1H−NMRの化学シフトは、以下のとおりである。
・Si−Me基に由来するMe基(N1):−10〜4ppm
・Si−Ph基に由来するPh基(N2):4〜18ppm
核磁気共鳴の測定はDepth2を用い、測定条件はパルス幅2.3μsec、パルス繰り返しの待ち時間15sec、積算回数16scan、MAS回転速度22KHzとした。化学シフトの基準はアダマンタン由来のピークである1.7ppmとした。
<試験・評価>
以下に示すように作製した各例の赤外線吸収構造体または積層体について、下記に示す試験および評価を行った。表2と表3に、評価の結果を示す。
[耐湿熱性試験]
各例の赤外線吸収構造体または積層体を、恒温槽中で、85℃で85%RHの条件で1000時間放置した。各例の赤外線吸収構造体または積層体について、恒温槽に放置する前と放置した後で、波長が1200nmである場合における分光透過率の変化、ヘーズ変化、および、密着性変化を評価した。
分光透過率については、分光光度計(島津製作所社製、SolidSpec−3700DUV)を用いて測定した。表2および表3で、各例の赤外線吸収構造体または積層体の分光透過率が20%未満である場合を、「○」と評価し、20%以上の場合を「×」とした。
ヘーズについては、JIS K7105(6.4)に準拠する方法で、ヘーズメーター(スガ試験機株式会社製、型式:HGM−2)を用いて測定した。表2および表3で、各例の赤外線吸収構造体または積層体のヘーズ値が、1未満である場合を「○」と評価し、1以上である場合を「×」とした。
密着性については、例3〜16に関して測定した。透明基板の上に形成した赤外線吸収構造体の表面に、接着テープ(セロハンテープ(登録商標),ニチバン(株)社製,商品名CT24)を貼付した後に、接着テープを剥離した。この貼付けと剥離とを5回繰り返した。そして、赤外線吸収構造体が透明基板から脱落するか否かを評価した。脱落が観察されない場合を「○」とし、1回でも脱落が観察された場合を「×」とした。
[耐熱試験]
各例の赤外線吸収構造体または積層体を、熱風循環式のオーブン中に置いて、150℃の条件で24時間加熱した。耐湿熱性試験の場合と同様に、波長が1200nmである場合における分光透過率の変化、およびヘーズ変化を評価した。その結果を表2および表3に示す。
(例1)
例1では、プレポリマーA2.0gとタングステン酸セシウム溶液(平均粒子径44nmのCs0.33WO、住友金属鉱山(株)社製、商品名「YMF−01」、固形分濃度14質量%)1.0gとを混合して塗工液を調製した。
厚さ1mmのPTFEシートの表面に、その調整した塗工液をバーコート法で塗布した後に、50℃で60分間、真空乾燥して塗布膜を形成した。次に、その形成した塗布膜を80℃で60分加熱した後に、更に120℃で60分間加熱して塗布膜を硬化させることによって、近赤外線吸収構造体を形成した。その形成した近赤外線吸収構造体をPTFEシートから剥離して、自立膜の近赤外線吸収構造体を得た。近赤外線吸収構造体の平均膜厚は、20.0μmであった。
(例2)
プレポリマーAをメチルシリコーンレジン(信越シリコーン社製、商品名KR220L)2.0gに変えたこと以外は、例1と同様の方法で、塗工液を調製した。
この塗工液を使用して、例1と同様に、PTFEシート上に近赤外線吸収構造体を形成した。近赤外線吸収構造体をPTFEシートから剥離したが、剥離後の近赤外線吸収構造体は、自立膜でなかった。このため、例2では、自立膜の赤外吸収膜を得ることができなかった。
Figure 2016018156
(例3)
例3では、プレポリマーA5.0gと例1で用いたタングステン酸セシウム溶液2.5gとを混合して、塗工液を調製した。その調製した塗工液をガラス基板(厚さ0.3mm,無アルカリガラス(AGCテクノグラス(株)製、商品名:AN100)の一方の主面にスピンコート法で塗布して塗布膜を形成した。次に、その形成した塗布膜を120℃で60分間加熱することによって、近赤外線吸収構造体とガラス基板からなる積層体を得た。近赤外線吸収構造体の平均膜厚は5μmであった。
(例4〜16)
例4〜例16では、透明基板、赤外線吸収無機化合物、およびプレポリマーを表3に記載のように例3から変更すること以外は、例3と同様にして積層体を得た。各例の近赤外線吸収構造体の平均膜厚を表3に示す。表3において、NF−50Tは、銅を含有する弗燐酸塩ガラス(厚さ0.3mm,AGCテクノグラス(株)製、商品名:NF−50T)である。なお、例14〜16で使用したプレポリマーX,Y,Zは、それぞれ、商品名がKR400、KR500およびKR220L(信越シリコーン社製)のシリコーンレジンである。
Figure 2016018156
10…透明基板、20…近赤外線吸収構造体

Claims (5)

  1. 赤外吸収無機化合物と、下記(i)および(ii)の条件を満たすオルガノポリシロキサンとを含む近赤外線吸収構造体。
    (i)T単位を95%以上含む。
    (ii)赤外線吸収スペクトルにおいて、Si−OH結合による第1のピーク強度(K1)と、Si−O−Si結合による第2のピーク強度(K2)とが、0<K1/K2<0.01の関係を満たす。
  2. 前記T単位は、Si元素に結合している一価の基がアルキル基である第1のT単位と、Si元素に結合している一価の基がアリール基である第2のT単位とを含み、前記バインダーは、前記第1のT単位の数(N1)と、前記第2のT単位の数(N2)とが、0.2≦N1/(N1+N2)≦1.0の関係を満たす請求項1に記載の近赤外線吸収構造体。
  3. 前記赤外吸収無機化合物が、タングステン酸セシウムである請求項1または2に記載の近赤外線吸収構造体。
  4. 透明基板の一主面上に請求項1〜3のいずれか1項に記載の近赤外線吸収構造体を有する積層体。
  5. 赤外吸収無機化合物とオルガノポリシロキサンのプレポリマーとを含む塗布液を基板上に塗布して塗布膜を形成し、塗布膜を加熱する近赤外線吸収構造体の製造方法。
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