JP6369718B2 - ウォーム減速機に用いられるウォームホイールの製造方法 - Google Patents
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Description
ウォームシャフトとウォームホイールとの噛み合いには、バックラッシが必要であるが、走行時に、バックラッシに起因した歯打ち音(ラトル音)が発生するおそれがある。
しかしながら、ウォームホイールが回転方向の一方側に回転するときのみにおいて、噛み合い部においてウォームシャフトがウォームホイールから受ける噛み合い反力(駆動反力)が、ウォームシャフトの噛み合い部を、前記一端を中心として、ウォームホイール側(付勢部材の付勢方向と同じ側)へ付勢するモーメントを生じさせる。
特許文献1では、回転方向の相違による、摩擦抵抗トルクの差を抑制する効果は期待できる。
本発明の目的は、回転方向の相違による摩擦抵抗トルク差を抑制することができる安価なウォーム減速機に用いられるウォームホイールの製造方法を提供することである。
請求項3のように、互いに直交する3方向を左手人差し指方向(LIF)、左手親指方向(LTF)および左手中指方向(LMF)として、前記ウォームシャフトの軸方向第2端部側(X2)を左手人差し指方向に相当させ、前記ウォームシャフトの中心軸線および前記ウォームホイールの中心軸線の双方とは直交し前記ウォームシャフトの中心軸線に向かう方向を左手親指方向に相当させるときに、前記オフセット方向が、左手中指方向に相当していてもよい。
請求項2の発明によれば、共通のホブを用いて、オフセット方向へのオフセット量を変更することにより、進み角に関して仕様の異なる複数のウォームホイールを製造することができるので、可及的にウォーム減速機の製造コストを安くすることができる。また、製造されたウォームホイールでは、歯幅方向の中央位置における一対の歯面の進み角を互いに異ならせてある。このため、該ウォームホイールが用いられるウォーム減速機において、回転方向の相違による噛み合い反力の差を低減することができるので、回転方向の相違による摩擦抵抗トルクの差をより抑制することができる。
図1は本発明の一実施形態の製造方法により製造されたウォームホイールが用いられるウォーム減速機を含む電動パワーステアリング装置の概略構成を示す模式図である。図1に示すように、電動パワーステアリング装置1は、運転者のステアリングホイール2(操舵部材)の操作に基づき転舵輪3を転舵させる操舵機構4と、運転者のステアリング操作を補助するアシスト機構5を備えている。
ピニオンシャフト11の軸方向下端にはピニオン11aが設けられている。操舵機構4は、ピニオン11aと噛み合うラック12aを形成したラックシャフト12を備えている。ピニオン11aとラック12aとにより、運動変換機構であるラックアンドピニオン機構Aが形成されている。
ウォーム減速機15は、ハウジング17と、ウォームシャフト18と、ウォームシャフト18と噛み合うウォームホイール19と、電動モータ14の出力シャフト14aとウォームシャフト18とをトルク伝達可能に連結する動力伝達継手20とを含む。ウォームシャフト18、ウォームホイール19および動力伝達継手20は、ハウジング17内に収容されている。
また、電動パワーステアリング装置1には、運転者のステアリング操作に際してステアリングシャフト6に付与されるトルクである操舵トルクTを、コラムシャフト7の入力シャフト7aと出力シャフト7bとの相対回転に基づいて検出するトルクセンサ21が設けられている。一方、車両には、車速V(車両の走行速度)を検出する車速センサ22が設けられている。
本実施形態では、電動パワーステアリング装置1が、電動モータ14がコラムシャフト7に動力を付与する、いわゆるコラムアシストタイプである例に則して説明するが、これに限らず、本発明は、電動モータがピニオシャフトに動力を付与する、いわゆるピニオンアシストタイプの電動パワーステアリング装置に適用することができる。
ウォームシャフト18は、その軸長方向に離隔する第1端部18aおよび第2端部18bと、第1端部18aおよび第2端部18b間の中間部に設けられた歯部18cとを有する。
具体的には、動力伝達継手20は、ウォームシャフト18の第1端部18aに一体回転可能に連結された第1回転要素23と、電動モータ14の出力シャフト14aに一体回転可能に連結された第2回転要素24と、第1回転要素23と第2回転要素24との間に介在し、両回転要素23,24間にトルクを伝達するゴム等の弾性部材を含む中間要素25とを備えている。
動力伝達継手20の中間要素25の弾性部材が弾性変形することで、第1軸受33の軸受中心を中心として、電動モータ14の出力シャフト14aに対するウォームシャフト18の揺動が許容されている。
第1軸受33は、ウォームシャフト18の第1端部18aに一体回転可能に嵌合された内輪35と、ハウジング17に設けられた軸受孔36に固定された外輪37とを備えている。
外輪37が、軸受孔36の端部に設けられた位置決め段部38と、軸受孔36に設けられたねじ部にねじ嵌合された止定部材39との間で軸方向に挟持されている。これにより、外輪37の軸方向移動が規制されている。
ハウジング17には、第2軸受34を保持するための軸受孔53が設けられている。軸受孔53は、第2軸受34を、ウォームシャフト18とウォームホイール19の中心間距離D1(ウォームシャフト18の回転中心である中心軸線C1とウォームホイール19の回転中心である中心軸線C2との距離に相当)が増減する方向Y1,Y2(増加する方向Y1および減少する方向Y2)に偏倚可能に保持することのできる偏倚孔に形成されている。
図2のIII −III 線に沿う断面図である図3および斜視図である図4を参照して、付勢部材60は、第2軸受34の外輪54の外周54aを包囲する有端環状をなす主体部61と、主体部61の周方向の端部である第1端部61aおよび第2端部61bからそれぞれ折り曲げ状に延設された一対の回転規制部62と、各回転規制部62からそれぞれ折り曲げ状に延びる一対の片持ち状の弾性舌片63とを含む。
再び図3を参照して、ハウジング17の軸受孔53は、その内周の一部に、第2軸受34に対してウォームホイール19側(中心間距離D1が減少する方向Y2)とは反対の方向(中心間距離D1が増加する方向Y1)に窪む受け凹部64を形成している。付勢部材60の各弾性舌片63の先端は、軸受孔53の受け凹部64の底64cによって受けられ、各弾性舌片63の付勢力が、第2軸受34を介してウォームシャフト18の第2端部18bを、中心間距離D1が減少する方向Y2に付勢している。
図5は、ウォーム減速機15の要部の斜視図であり、図9(a)はウォームホーイルの歯部の拡大図である。図5および図9(a)に示すように、ウォームシャフト18の中心軸線C1を含みウォームホイールの中心軸線C2とは直交する平面Pが、無負荷時において、ウォームホイール19の歯幅方向Wの中央位置WCに配置される。
ウォームホイール19は、図6に示すように、ウォームホイール素材190に対してホブ70を用いた切削加工を施すことにより、形成されている。ホブ中心HCの回りに回転されるホブ70と、中心軸線C2の回りに回転されるウォームホイール素材190とは、同期回転される。
図5を参照して、ウォームシャフト18の軸方向第2端部側X2を左手人差し指方向LIFに相当させ、ウォームシャフト18の中心軸線C1およびウォームホイール19の中心軸線C2の双方とは直交しウォームホイール19の中心軸線C2に向かう方向K1を左手親指方向LTFに相当させる場合に、ホブ中心HCのオフセット方向OFFは、左手中指方向LMFに相当する。
逆に、ウォームシャフト18が、第2回転方向J2(第1端部18a側から見て反時計回り)に回転駆動されると、ウォームホイール19は、第2回転方向R2(反時計回り)に回転する。
噛み合い領域MAにおいては、第1歯面81が、ウォームシャフト18の軸方向第1端部側X1の歯面に相当し、第2歯面82が、ウォームシャフト18の軸方向第2端部側X2の歯面に相当する。
一方、破線で示される第1歯面810および第2歯面820は、オフセット配置しないホブにより切削加工が施されてなる比較例としてのウォームホイールの歯面である。
歯幅方向Wの中央位置WCにおける第1歯面81の歯形は、比較例の第1歯面810において、歯幅方向Wの中央位置WCから歯幅方向Wの他方側W2(オフセット方向OFFとは反対方向に相当)に離隔した位置に配置されている部分の歯形に相当する。すなわち、歯幅方向Wの中央位置WCにおける第1歯面81の圧力角α1および進み角β1は、それぞれ、比較例の第1歯面810において、歯幅方向Wの中央位置WCにおける圧力角および進み角よりも小さい。
図10(a)に示すように、ウォームホイール19が第1回転方向R1(時計回り)に回転するときには、両歯面81,82のうち第2歯面82が、ウォームシャフト18に対する接触歯面となる。また、このとき、ウォームシャフト18の中心軸線C1は、その第2端部側部分C1bが歯幅方向Wの中央位置WCよりも歯幅方向Wの他方側W2(オフセット方向OFFとは反対側)に変位するように傾斜する。
ここで、第2歯面82の歯当たり領域HA2における圧力角および進み角は、比較例の第2歯面820の歯当たり領域(図示せず)における圧力角および進み角よりも、それぞれ大きくなっている。これにより、第2歯面82が接触歯面となるときの摩擦抵抗トルクを低減することができる。
第1歯面81の歯当たり領域HA1における圧力角および進み角は、比較例の第1歯面810の歯当たり領域(図示せず)における圧力角および進み角よりも、それぞれ大きくなっている。これにより、第1歯面81が接触歯面となるときの摩擦抵抗トルクを増大することができる。
本実施形態によれば、ホブ中心HCを歯幅方向Wの一方側W1にオフセット配置したホブ加工により、ウォームホイール19の歯溝40を区画する第1歯面81および第2歯面82の圧力角を、歯幅方向Wの中央位置WCにおいて、それぞれα1,α2として互いに異ならせてある。これにより、回転方向の相違による噛み合い反力の差を低減することができるので、回転方向の相違による摩擦抵抗トルクの差を抑制することができる。共通のホブ30を用いて、オフセット方向OFFへのオフセット量eを変更することにより、仕様の異なる複数のウォームホイール19を製造することができるので、可及的に製造コストを安くすることができる。
また、本実施形態に係るウォームホイール19の製造方法において、ホブ中心HCが歯幅方向Wの中央位置WCから幅歯方向Wの一方側W1であるオフセット方向OFFにオフセットされたホブ30を用いて、歯溝40を形成する第1歯面81および第2歯面82の歯幅方向の中央位置における圧力角α1,α2が、互いに異なるように第1歯面81,第2歯面82を切削加工する。したがって、共通のホブ30を用いて、オフセット方向OFFへのオフセット量eを変更することにより、圧力角に関して仕様の異なる複数のウォームホイール19を製造することができるので、可及的に製造コストを安くすることができる。
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲記載の範囲内で種々の変更を施すことができる。
Claims (3)
- 電動モータと駆動連結される第1端部および前記第1端部とは反対側の第2端部を含むウォームシャフトと、各歯溝を区画する一対の歯面を含むウォームホイールと、前記ウォームシャフトおよび前記ウォームホイールを収容し、前記ウォームシャフトの第2端部を第1端部を中心として揺動可能に支持するハウジングと、前記ハウジングにより支持され、前記ウォームシャフトの第2端部をウォームホイール側へ弾性的に付勢する付勢部材と、を備え、前記ウォームシャフトの中心軸線を含み前記ウォームホイールの中心軸線とは直交する平面が、前記ウォームホイールの歯幅方向の中央位置に配置されるウォーム減速機に用いられるウォームホイールの製造方法であって、
ホブ中心が歯幅方向の中央位置から幅歯方向の一方側であるオフセット方向にオフセット配置されたホブを用いてウォームホイール素材を切削加工することにより、歯溝を形成する一対の歯面の圧力角が歯幅方向の中央位置において互いに異なるように前記一対の歯面を形成する、ウォーム減速機に用いられるウォームホイールの製造方法。 - 請求項1に記載のウォーム減速機に用いられるウォームホイールの製造方法において、 前記切削加工するときに、前記一対の歯面の進み角が歯幅方向の中央位置において互いに異なるように前記一対の歯面が切削加工される、ウォーム減速機に用いられるウォームホイールの製造方法。
- 請求項1又は2に記載のウォーム減速機に用いられるウォームホイールの製造方法において、
互いに直交する3方向を左手人差し指方向、左手親指方向および左手中指方向として、 前記ウォームシャフトの軸方向第2端部側を左手人差し指方向に相当させ、前記ウォームシャフトの中心軸線および前記ウォームホイールの中心軸線の双方とは直交し前記ウォームシャフトの中心軸線に向かう方向を左手親指方向に相当させるときに、前記オフセット方向は、左手中指方向に相当する、ウォーム減速機に用いられるウォームホイールの製造方法。
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