特許文献1のブロー成形ボトルによれば、胴部の角壁に軸方向に延びる凹部を設けたので、角壁の剛性が強化され、角壁が強化された薄肉のボトルを製造することが可能となり、使用樹脂量の減少を図ることができるとされている。しかしながら、特許文献1では、角壁の剛性(強度)は考えられているものの側壁の強度については何ら考慮がなされていない。
一方でプラスチックボトルに内容物が充填された際には、水頭圧によってプラスチックボトルが外方に押される。これが、丸ボトルの場合には、圧力が、胴部の全周方向に分散するため、胴部の膨らみが生じにくい。それに対し、角ボトルの胴部には周方向に断面視で直線の部分が存在するので外側に凸になるいわゆる胴膨れと称される現象が生じやすく、プラスチックボトルがより軽量であるほどその現象が顕著になる。そして、内容物による水頭圧のかかりやすい胴部の下部の側壁において胴膨れが生じやすい。
プラスチックボトルに胴膨れが生じ、予め決められた設計寸法に対して凸になっていると、製造ラインや、自動販売機内で詰まってしまったり、段ボール等への箱詰めや商品棚への陳列の際に入らなくなってしまったり、商品価値が低下してしまったりする。したがって、軽量化された角型のプラスチックボトルには、強度の保持とともに寸法変化の防止が必要とされる。
そこで本発明の目的は、軽量化された角型のプラスチックボトルにおいて、高い強度、特に座屈強度が保持されながら胴部の膨らみ等による寸法変化が防止されるプラスチックボトルを提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明のプラスチックボトルは、口部と、肩部と、胴部と、底部とを有し、前記胴部は、複数の壁部と、前記壁部同士をつなぐコーナー部とからなり、前記壁部が、上壁部と、下壁部とに分割されているプラスチックボトルにおいて、前記壁部は、任意の方向に延びるリブを有し、前記下壁部の前記リブは、前記下壁部の両端部の間を水平方向に延びる複数の溝部であり、前記複数の溝部の内の下側に位置する前記溝部は、前記壁部の両端部から中央に向け、下方に湾曲した円弧状であり、前記下壁部は、水平方向に、前記壁部の両端部から前記中央に向け、前記プラスチックボトルの内方に湾曲することを特徴とする。
更に、複数の前記リブ同士が交差する交点を有し、前記交点が、前記壁部の前記水平方向の略中心を上下方向に延びる線上に位置することを特徴とする。
更に、複数の前記リブ同士が交差する交点を有し、前記交点が、前記上壁部、及び前記下壁部の少なくとも一方の面の中心付近に位置することを特徴とする。
更に、前記上壁部は、1段内方に凹んだ圧力吸収パネルを備え、前記上壁部の前記リブは、前記圧力吸収パネルの水平方向に延びる複数の凹状リブであることを特徴とする。
更に、前記上壁部と、前記下壁部との間に、前記壁部、及び前記コーナー部を横切る環状の周溝を有することを特徴とする。
更に、前記コーナー部は、縦方向に延びる縦溝を有することを特徴とする。
更に、前記縦溝の深さが、前記上壁部と、前記下壁部との間に設けられる、前記壁部、及び前記コーナー部を横切る環状の周溝の深さよりも大であることを特徴とする。
更に、前記胴部の前記コーナー部と、前記肩部との間には、面取りがなされた第1の面取り部を有することを特徴とする。
更に、前記胴部の前記コーナー部と、前記底部との間には、面取りがなされた第2の面取り部を有することを特徴とする。
更に、前記コーナー部が有する、縦方向に延びる縦溝は、前記両端部の間を水平方向に延びる前記複数の溝部の内の最下端の前記溝部の両端より下側に突出して延びることを特徴とする。
更に、前記最下端の前記溝部の下方には、前記コーナー部が有する、縦方向に延びる縦溝よりも下方に位置する別の溝部を有し、前記別の溝部の両端は、前記壁部の前記両端部まで延びないことを特徴とする。
更に、前記溝部は、前記中央での深さが最も大であることを特徴とする。
更に、前記コーナー部が有する、縦方向に延びる縦溝の深さが、前記溝部の前記中央での深さよりも大であることを特徴とする。
更に、前記上壁部と、前記下壁部との間に設けられる、前記壁部、及び前記コーナー部を横切る環状の周溝は、前記壁部の前記両端部から前記中央に向け、幅広となるように形成されることを特徴とする。
更に、前記肩部は、前記壁部、及び前記コーナー部に連接し、前記壁部に連接する前記肩部は、水平方向、及び垂直方向に分割された4つのパネルによって形成されることを特徴とする。
更に、前記壁部の前記両端部間の幅に対する前記壁部の前記中央での湾曲量の比は、0.01以上0.2以下であることを特徴とする。
更に、前記底部の接地面から前記上壁部と、前記下壁部との間に設けられる、前記壁部、及び前記コーナー部を横切る環状の周溝までの高さと、前記プラスチックボトルの全高との比が0.3以上0.8以下であることを特徴とする。
本発明のプラスチックボトルによれば、口部と、肩部と、胴部と、底部とを有し、胴部は、複数の壁部と、壁部同士をつなぐコーナー部とからなり、壁部が、上壁部と、下壁部とに分割されているプラスチックボトルにおいて、壁部は、任意の方向に延びるリブを有し、下壁部のリブは、下壁部の両端部の間を水平方向に延びる複数の溝部であり、複数の溝部の内の下側に位置する溝部は、壁部の両端部から中央に向け、下方に湾曲した円弧状であり、下壁部は、水平方向に、壁部の両端部から中央に向け、前記プラスチックボトルの内方に湾曲するので、軽量化した容器において、強度を保持しながら胴膨れを防止することができる。
更に、本発明のプラスチックボトルによれば、複数のリブ同士が交差する交点を有し、交点が、壁部の水平方向の略中心を上下方向に延びる線上に位置するので、軽量化した容器において、強度を保持しながら胴膨れを防止することができる。
更に、本発明のプラスチックボトルによれば、複数のリブ同士が交差する交点を有し、交点が、上壁部、及び下壁部の少なくとも一方の面の中心付近に位置するので、軽量化した容器において、強度を保持しながら胴膨れを防止することができる。
更に、本発明のプラスチックボトルによれば、上壁部は、1段内方に凹んだ圧力吸収パネルを備え、上壁部のリブは、圧力吸収パネルの水平方向に延びる複数の凹状リブであるので、軽量化した容器において、強度を保持しながら胴膨れをより防止することができる。
更に、本発明のプラスチックボトルによれば、上壁部と、下壁部との間に、壁部、及びコーナー部を横切る環状の周溝を有するので、側壁強度を向上させることができる。
更に、本発明のプラスチックボトルによれば、コーナー部は、縦方向に延びる縦溝を有するので、座屈強度を向上させることができる。
更に、本発明のプラスチックボトルによれば、縦溝の深さが、上壁部と、下壁部との間に設けられる、壁部、及びコーナー部を横切る環状の周溝の深さよりも大であるので、座屈強度をより向上させることができる。
更に、本発明のプラスチックボトルによれば、胴部のコーナー部と、肩部との間には、面取りがなされた第1の面取り部を有するので、座屈強度をより向上させることができる。
更に、本発明のプラスチックボトルによれば、胴部のコーナー部と、底部との間には、面取りがなされた第2の面取り部を有するので、座屈強度をより向上させることができる。
更に、本発明のプラスチックボトルによれば、コーナー部が有する、縦方向に延びる縦溝は、両端部の間を水平方向に延びる複数の溝部の内の最下端の溝部の両端より下側に突出して延びるので、底部に近い胴部のコーナー部での胴膨れを防止することができる。
更に、本発明のプラスチックボトルによれば、最下端の溝部の下方には、コーナー部が有する、縦方向に延びる縦溝よりも下方に位置する別の溝部を有し、別の溝部の両端は、壁部の両端部まで延びないので、底部に更に近い胴部での胴膨れを防止することができる。
更に、本発明のプラスチックボトルによれば、溝部は、中央での深さが最も大であるので、胴膨れをより防止することができる。
更に、本発明のプラスチックボトルによれば、コーナー部が有する、縦方向に延びる縦溝の深さが、溝部の中央での深さよりも大であるので、座屈強度をより向上させることができる。
更に、本発明のプラスチックボトルによれば、上壁部と、下壁部との間に設けられる、壁部、及びコーナー部を横切る環状の周溝は、壁部の両端部から中央に向け、幅広となるように形成されるので、壁部の強度、特に座屈強度をより向上させることができる。
更に、本発明のプラスチックボトルによれば、肩部は、壁部、及びコーナー部に連接し、壁部に連接する肩部は、水平方向、及び垂直方向に分割された4つのパネルによって形成されるので、肩部の強度を向上させることができる。
更に、本発明のプラスチックボトルによれば、壁部の両端部間の幅に対する壁部の中央での湾曲量の比は、0.01以上0.2以下であるので、強度を保持しながら胴膨れをより防止することができる。
更に、本発明のプラスチックボトルによれば、底部の接地面から上壁部と、下壁部との間に設けられる、壁部、及びコーナー部を横切る環状の周溝までの高さと、プラスチックボトルの全高との比が0.3以上0.8以下であるので、強度をより保持しながら胴膨れをより防止することができる。
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施形態の詳細を説明する。図1は本実施形態に係るプラスチックボトル1の一例が示された正面図である。図2は図1のプラスチックボトル1の平面図であり、図3は図1のプラスチックボトル1の底面図である。図4は図2のIV方向矢視図、すなわち、図1のプラスチックボトル1を平面視で周方向に45度回転させた方向からみたプラスチックボトル1の正面図である。なお、以下では、説明の便宜上、プラスチックボトル1を正立させた図1の状態において、容器内に内容物が充填されるプラスチックボトル1の口部10を上とする。
図1〜図3に示されるように、本実施形態に係るプラスチックボトル1は、口部10と、肩部20と、胴部30と、底部40とを有する。そして、胴部30は、複数の壁部31と、壁部31同士をつなぐコーナー部32とからなり、壁部31が、上壁部33と、下壁部34とに分割されているプラスチックボトル1において、少なくとも、下壁部34は、水平方向に、壁部31の両端部36、36から中央に向け、プラスチックボトル1の内方に湾曲することを特徴とする。
更に、上壁部33、及び下壁部34は、任意の方向に延びる凹状や凸状のリブを有していても良く、特に、下壁部34は、両端部36、36の間を水平方向に延びる複数のリブとしての溝部37を有していることが好ましい。更に、任意の方向に延びるリブが複数設けられる場合には、それらの交差した交点が形成されていることが好ましく、その交点が、上壁部33や下壁部34の中心付近に配置されていることがより好ましい。更に、凸状のリブは、両端部36、36より外方に突出しないことが好ましい。以下では、本実施形態に係るプラスチックボトル1の好適な態様として、水平方向の断面視が略正方形の角ボトルを例示し、詳細に説明する。
口部10は、内容物の充填口、及び注出口、あるいは飲み口となり、口部10に、図示せぬ蓋が取り付けられることによってプラスチックボトル1が密閉される。
肩部20は、その上側が口部10に連なり、一方で、その下側が胴部30に連なる。肩部20は、上方から下方に向かって拡径する略四角錐台の形状を有する。図2に示されるように、プラスチックボトル1は角ボトルであるため、肩部20は、時計回りに、肩部20A、肩部20B、肩部20C、及び肩部20Dの4面から構成される。より詳細には、肩部20は、互いに同一の形状からなる4つの壁部を有しており、更に、隣接する壁部同士の間にはコーナー部が形成されている。肩部20は、外方に湾曲した形状であることが、強度や、設計された形状への追従性を示す賦形性等の観点から好ましいものの、内方に湾曲した形状であっても良く、その形状は特に限定されない。なお、以下では、肩部20Aの含まれる1面を取り上げて説明を行い、必要に応じて、上述のような周方向の4面の各部位に対し、符号A〜Dを適宜付す。
肩部20は、詳細には、壁部31、及びコーナー部32に連接する。壁部31に連接する肩部20の壁部は、水平方向、及び垂直方向に分割された4つのパネル21、22、23、及び24によって形成されることが肩部の強度を向上させる観点から好ましい。なお、垂直方向の分割は、壁部31の中央から上方に延びる線上であることが強度を向上させる観点から好ましい。一方で、コーナー部32に連接する肩部20のコーナー部は、1つのパネル25によって形成されても良い。
胴部30は、互いに同一の形状からなる4つの壁部31(31A、31B、31C、及び31D)を有しており、全体として略正四角筒の形状を有している(図2参照)。更に、隣接する壁部31同士の間には外方に湾曲するコーナー部32(32A、32B、32C、及び32D)が形成されている(図2参照)。なお、コーナー部32は、外方に湾曲せずに平坦であっても良い。しかしながら、垂直方向の座屈強度の観点からコーナー部32は、外方に湾曲している方が円筒に近い形状となって好ましい。更に、胴部30は、正四角筒形状に限定されるものではなく、多面筒形状であれば良く、特に偶数の多面筒形状であれば、自動販売機に好適に利用可能であるため、より好ましい。更に、胴部30は長四角筒形状であっても良い。
壁部31は、上下方向の略中間部において、上壁部33と、下壁部34とに分割されている。上壁部33は、圧力吸収パネル35を備えている。一方で、下壁部34は、複数の溝部37を有している。これらの詳細については後述する。
上壁部33と、下壁部34との間には、壁部31、及びコーナー部32を横切る環状の周溝38を有することが好ましい。周溝38は、胴部30の水平方向の荷重に耐える強度である側壁強度を向上させる。底部40の接地面から周溝38までの高さH2と、プラスチックボトル1の全高H1との比H2/H1が0.3以上0.8以下であることが強度をより保持しながら胴膨れをより防止する本実施形態の効果を適切に発揮させる観点から好ましい。比H2/H1が0.3未満であると、プラスチックボトル1の成形時に底部40側まで樹脂が到達しにくい為、白化等の賦形不良が生じやすくなる。一方で、比H2/H1が0.8より大であると、側壁強度が低下することになる。
一方で、周溝38のような水平方向の補強リブが1本でも存在すると、そこがクッションとなり、上下方向の荷重に対して、座屈はしないものの変位が大きくなる。そして、変位が小さい範囲での座屈強度が下がる。そこで、周溝38が形成されている場合には、コーナー部32は、縦方向に延びる縦溝39を有することが好ましい(図1、及び図4参照)。縦溝39は、胴部30の座屈強度を向上させる。縦溝39は少なくとも1本形成される。場合によっては、縦溝39は2本から3本でも良い。縦溝39の数が多すぎると、凹凸が多くなり、賦形性が悪くなる。
プラスチックボトル1が箱詰めされる段ボールは、上からの荷重によって沈み、その沈み代は決まっている。したがって、その沈み代の範囲でのプラスチックボトル1の変位に対する耐荷重を強化することが重要である。そこで、本実施形態に係るプラスチックボトル1では、あえてクッションを設計的になくし、垂直方向に対する耐荷重を高めるように構成されている。
胴部30のコーナー部32と、肩部20のパネル25との間には、面取りがなされた面取り部50を有することが好ましい。面取り部50は、縦溝39の真上に位置する。胴部30と、肩部20との間、特にコーナー部32と、パネル25との間の領域には、上下方向の荷重に対して偏荷重がかかりやすい。そして、本実施形態に係るプラスチックボトル1の形状では、上下方向の荷重に対してスプリングが効きにくい構造のため、この領域が座屈の発生箇所になりやすい。そこで、この領域に、面取り部50が形成されると、荷重が集中することが防止され、プラスチックボトル1の座屈強度がより高まる。なお、面取りの傾斜は、コーナー部32から上方に延びる線を基準線として、基準線と、パネル25とのなす角度の半分となる角度であることが強度の観点からより好ましい。
次に、プラスチックボトル1の上壁部33の詳細について説明する。図5は上壁部33の正面部分の拡大図であり、図6は図5のVI−VI線断面図である。なお、図6では右側が、プラスチックボトル1の内方を示す。上壁部33は、1段内方に凹んだ圧力吸収パネル35を備え、圧力吸収パネル35は、水平方向に延びる複数の凹状リブ60を備えることが好ましい。圧力吸収パネル35は、プラスチックボトル1の内部の圧力変化、特に減圧変化を吸収し、かつプラスチックボトル1の強度、特に側壁強度を保持する。
圧力吸収パネル35は、周囲の上壁部33の表面から1段内方に凹んだ段壁面61と、段壁面61から更に内方に凹んで水平方向に直線状に延びる複数の凹状リブ60とを有する。更に、段壁面61の周囲を取り囲むように接続面62が形成されている。接続面62は、段壁面61に対して傾斜している。
上壁部33の表面が平坦な構成であると、容器が保持された際の変形が著しくなる。そこで、凹状リブ60を有する構成とされることによって、上壁部33の剛性が高まる。しかしながら、凹状リブ60が多くなりすぎると、圧力吸収パネル35が、プラスチックボトル1の内方に変形できなくなり、圧力吸収の機能が失われる。したがって、凹状リブ60の本数、及び寸法が適切となるように設計される。図5、及び図6の例示では凹状リブ60は10本配置されている。
上壁部33の表面から1段内方に凹んだ段壁面61の深さsは、周囲の上壁部33の表面から0.5〜2mm、好ましくは1mmである。深さsが小であると、プラスチックボトル1の内圧変化による荷重を吸収しにくくなり、一方で、深さsが大であると、プラスチックボトル1の成形時に、賦形不良や、過延伸による白化が発生しやすくなる。
各凹状リブ60は、接続面62の左端から右端まで連続的に延びている。そして、凹状リブ60は、圧力吸収パネル35の接続面62を除いた上端から下端まで上下方向の全域にわたって形成されている。なお、凹状リブ60は、各圧力吸収パネル35の上下方向の全域にわたって形成されている場合に限らず、各圧力吸収パネル35の一部、例えば各圧力吸収パネル35の上半分、下半分や、上下方向の中央部のみに形成されていても良い。
凹状リブ60は、圧力吸収パネル35内において、少なくとも4本以上12本以下配置されることが好ましい。凹状リブ60が4本以上とされることによって、減圧吸収機能を充分に発揮することができ、更に、プラスチックボトル1に加わった応力を分散させ、プラスチックボトル1を補強する効果が充分に得られる。
図6に示されるように、段壁面61の表面は、略平坦状の平坦面61aである。そして、凹状リブ60の底部には、略平坦状の平坦面60aが形成されている。更に、段壁面61と、凹状リブ60との間には傾斜面63が形成されている。
ここで、段壁面61における肉厚をtとしたとき、凹状リブ60の深さd1、すなわち平坦面61aと、平坦面60aとの距離d1は、t≦d1≦10t、より好ましくはt≦d1≦5tという関係にある。d1≦tであると、段壁面61と、凹状リブ60とが形状として成り立ちにくくなる。一方で、d1が大であると、賦形性が悪くなりやすい。
段壁面61の幅aは、2d1≦a≦20d1とすることが好ましい。段壁面61は、ブロー成形金型では凹んだ形状となるため、2d1≦aとすることによってブロー成形時に段壁面61を賦形しやすくなる。なお、経験則上、ブロー成形時に賦形しやすくするためには、幅は、深さの2倍以上(2d1≦a)とすることが好ましい。一方で、段壁面61の幅aを20d1以下(a≦20d1)とすることによって、減圧吸収機能や補強機能を充分発揮することができる。なお、各圧力吸収パネル35の複数の段壁面61はすべて同一の幅aを有していても良い。
凹状リブ60の幅bは、d1≦b≦20d1とすることが好ましく、2d1≦b≦20d1とすることが更に好ましい。凹状リブ60は、ブロー成形金型では高さd1の突起部となるため、幅bに対してd1が大きすぎないことによって、ブロー成形金型の突起部が大きくなりすぎることがない。このため、ブロー成形金型の突起部に相当する部分の強度が弱くなることが防止される。したがって、少なくとも幅bはd1以上とすることが好ましく、d1の2倍以上とすることがより好ましい。一方で、凹状リブ60の幅bを20d1以下(b≦20d1)とすることによって、減圧吸収機能や補強機能を充分発揮することができる。なお、各圧力吸収パネル35の複数の凹状リブ60はすべて同一の幅bを有していても良い。
傾斜面44の角度θ1、θ2については、0度≦θ1、θ2≦80度であることが好ましい。ブロー成形性や、成形後の離型性を考慮すると、5度≦θ1、θ2≦80度であることがより好ましい。なお、θ1と、θ2とは互いに同一の値であっても良く、互いに異なる値であっても良い。
なお、1つのプラスチックボトル1、又は1つの圧力吸収パネル35において、各寸法a、b、d1等は、各々がすべて同じ値である必要はなく、上述した関係を満たす異なる値であっても良い。
プラスチックボトル1はわずかながら、酸素の透過性を有している。そして、プラスチックボトル1内での保存が長期間に及ぶと、内容物によっては酸化が起こり、これによって、プラスチックボトル1内が減圧する。その他にも、内容物の充填時と、保管時との温度差によってもプラスチックボトル1の内部の圧力が変化する。内部で減圧が生じたプラスチックボトル1は内方に引っ張られて変形が生じる。このとき、圧力吸収パネル35は、段壁面61と、凹状リブ60との凹凸面が伸ばされることによって容易に内方に向けて変形する。圧力吸収パネル35は、プラスチックボトル1内が減圧された際に、プラスチックボトル1の内方に凹むことによって、プラスチックボトル1全体の変形を防止する役割を果たす。すなわち、圧力吸収パネル35は、プラスチックボトル1の上壁部33の外方には出っ張らず、内方にはある程度凹むように構成されている。
なお、圧力吸収パネル35は、プラスチックボトル1内が増圧された際にもプラスチックボトル1全体の変形を防止する役割を果たす。このような構成を有する圧力吸収パネル35によって、プラスチックボトル1の開栓時に、プラスチックボトル1の壁が内方へ押圧されて内容物が口部10から押し出されてこぼれることも防止することができる。そして、圧力吸収パネル35は、胴部30の剛性を高めることができる。
プラスチックボトル1の上壁部33はラベルが装着される部位である。ラベルは、例えば、プラスチックボトル1に被せられた筒状のポリスチレン(PS:PolyStyrene)や、ポリエチレンテレフタラート(PET:PolyEthylene Terephthalate)等の熱収縮性フィルムに熱風を当てて収縮させるシュリンクラベルによって装着される。そして、筒状の熱収縮性フィルムの寸法は予め定められた値に決まっているので、上壁部33が膨れていると、熱収縮性フィルムが詰まったり、入らなかったりする不具合が生じる。
しかしながら、圧力吸収パネル35を備えることによって、上壁部33の外方への出っ張りが阻止され、ラベルの装着が円滑に行われ、生産性を向上させることができる。更に、圧力吸収パネル35を備えることによって、プラスチックボトル1に内容物が充填された商品の外観を良好に保ち、商品価値の低下を防止することができる。
なお、上述のように、圧力吸収パネル35は、水平方向に延びる複数の凹状リブ60を備えることが好ましいものの、上壁部33は、任意の方向に延びる凹状や凸状の図示せぬリブを有していても良い。任意の方向に延びるリブが上壁部33に複数設けられる場合にはリブ同士が交差するように形成されることが上壁部33の強度の観点から好ましい。更に、リブ同士の交点の少なくとも一つが、上壁部33の左右方向の略中心を上下方向に延びる線上に位置することが好ましく、上壁部33の中心付近に位置することが胴膨れ等による寸法変化の防止の観点からより好ましい。したがって、リブは、X字形状や、十字形状等に形成されると良い。これらの形状を有するプラスチックボトル1は意匠性により優れている。
更に、凸状のリブの場合には、リブの凸部が、上壁部33の表面より外方に突出しないことが好ましい。すなわち、上壁部33の表面から1段内方に凹んだ段壁面61から外方に突出するリブは、その突出高さが、上壁部33の表面と同じか、それ以下とされる。したがって、凸状のリブの突出方向の真横からプラスチックボトル1を見ると凸状のリブは見えない。このように構成されるリブは、プラスチックボトル1の対面の寸法に影響を与えない。したがって、本実施形態に係るプラスチックボトル1は段ボール等への箱詰めの積載効率が優れている。更に、本実施形態に係るプラスチックボトル1は、シュリンクラベルの装着に影響を与えない効果も有している。
次に、周溝38の構成について詳述する。図7は周溝38の正面部分の拡大図である。周溝38は、壁部31の両端部から中央に向け、幅広となるように形成される。すなわち、壁部31の両端部における周溝38の幅c1より、壁部31の中央における周溝38の幅c2が大である。この構成によって、胴部30の剛性を高めることができる。
c2/c1の比は1.1〜3.0であることが座屈強度、及び賦形性の観点から好ましい。c2/c1の比が1.1よりも小であると、応力の集中を防止する効果が発揮されにくくなる。一方で、c2/c1の比が3.0よりも大であると、垂直荷重時に屈曲点になってしまう。
次に、下壁部34の構成について詳述する。図8は下壁部の正面部分の拡大図であり、図9は図8のIX−IX線断面図であり、図10は図8のX−X線断面図である。なお、図9では右側が、図10では上側が、プラスチックボトル1の内方を示す。
下壁部34は、水平方向に、壁部31の両端部36、36から中央に向け、プラスチックボトル1の内方に湾曲している。内方に湾曲する下壁部34を有する構成によって、プラスチックボトル1の強度が保持されるとともに、プラスチックボトル1に充填される内容物の水頭圧による胴膨れが防止される。更に、好ましくは、下壁部34は、両端部36、36の間を水平方向に延びる複数の溝部37を有する。内方に湾曲する下壁部34に、溝部37を有する構成によって、プラスチックボトル1の強度が保持されるとともに、プラスチックボトル1に充填される内容物の水頭圧による胴膨れが防止され、満注容量の増加や、プラスチックボトル1の寸法変化が防止される。
下壁部34は、上壁部33とは異なり、圧力吸収用のパネルを備えていない。下側に圧力吸収用のパネルを備えたボトルが落下した場合には衝撃によってパネルが飛び出てしまいやすい。そして、飛び出てしまったパネルは戻らずに外観不良となって、商品価値が低下する。このため、本実施形態では、このような不具合を防止するためと、胴膨れを防止するために下壁部34は、圧力吸収用のパネルを備えない構成とされている。
下壁部34は、水平方向に、壁部31の両端部36、36から中央に向け、プラスチックボトル1の内方に湾曲している(図10参照)。一方で、垂直方向においても、下壁部34の上下端から中央(図9の溝部37dと溝部37eとの間付近)に向け、プラスチックボトル1の内方に湾曲している(図9参照)。
壁部31の両端部36、36を結ぶ線から壁部31の中央での湾曲量d2は、1mm以上6mm以下であることが、強度を保持しながら胴膨れをより防止する観点から好ましい。湾曲量d2が1mmより小であると、胴膨れを防止する効果が発揮されにくくなる。一方で、湾曲量d2が6mmより大であると、垂直荷重時に屈曲点になってしまう。そして、壁部31の両端部36、36の幅w1に対する壁部31の中央での湾曲量d2の比d2/w1は、0.01以上0.2以下であることが好ましい。幅w1と湾曲量d2との比d2/w1が0.01より小であると、胴膨れを防止する効果が発揮されにくくなる。一方で、幅w1と湾曲量d2との比d2/w1が0.2より大であると、垂直荷重時に屈曲点になってしまう。
内方に湾曲する下壁部34は、両端部36、36の間を水平方向に延びる複数の溝部37a〜溝部37gを有する。図8の例示では、溝部37a〜溝部37gが7本形成されている。これらの溝部37の構成によって剛性が高まり、胴膨れが阻止される。溝部37は、少なくとも4本以上配置されることが好ましい。溝部37が4本以上とされることによって、胴膨れ防止機能を充分に発揮することができ、更に、プラスチックボトル1に加わった応力を分散させ、プラスチックボトル1を補強する効果が充分に得られる。
なお、溝部37は、コーナー部32には形成されておらず、プラスチックボトル1の周方向には連続していない。周方向には非連続の溝部37の構成によって、プラスチックボトル1が座屈しやすくなることが防止されている。
溝部37は、内方に湾曲する下壁部34から更に内方に窪んでいる(図10参照)。溝部37の断面形状は、図9に示されるように湾曲する以外にも、直線状であっても、更に、底面を有していても良い。各溝部37の深さd3は、湾曲する下壁部34の表面を基準として均一であることが好ましいものの、図10に示されるように、水平方向の中央付近において最も大であることがより好ましい。下壁部34の中心において胴膨れが生じやすいため、溝部37の深さd3が、水平方向の中央付近において大であると、下壁部34の中心が外方に凸とならない。
しかしながら、深さd3が大であると、胴膨れの防止の効果を有するものの、凹凸の激しい形状になり、賦形がしにくくなる。しかも、軽量化されたプラスチックボトル1ではなおさら賦形がしにくい。したがって、水平方向の中央付近での溝部37の深さd3は、3mm以上10mm以下であることが好ましい。
複数の溝部37の内で、少なくとも下側に位置する溝部37e〜溝部37gは、壁部31の両端部36から中央に向け、下方に湾曲した円弧状であっても良い。プラスチックボトル1の下壁部34は、底部40に近づくほどその肉厚が薄くなる上に、水頭圧が高まる。したがって、底部40に近い箇所ほど胴膨れが生じやすい。そこで、下壁部34の底部40に近い箇所を溝部37が覆うようにするために、溝部37e〜溝部37gは下方に湾曲している。下方に湾曲した円弧状の溝部37e〜溝部37gの構成によって、底部40に近い箇所の剛性が高まり、胴膨れが阻止される。なお、下側に位置する溝部37e〜溝部37gに限らず、上側に位置する溝部37a〜溝部37dも、下方に湾曲した円弧状であっても良い。
ただし、溝部37gの端部37Eが、縦溝39の下端39Eよりも下に位置すると、端部37Eで胴膨れが生じやすくなる。したがって、図8に示されるように、縦溝39は、両端部36、36の間を水平方向に延びる複数の溝部37の内の最下端の溝部37gの両端37Eより下側の下端39Eまで突出して延びるように構成される。すなわち、下端の溝部37gの始点は、縦溝39の下端39Eよりも上に位置する。この構成によって、底部40に近い胴部30のコーナー部32での胴膨れが防止される。
最下端の溝部37gの下方には、縦溝39よりも下方に位置する別の溝部37hを有し、別の溝部37hの両端は、壁部31の両端部36まで延びない。これによって、下壁部34の更に底部40に近い箇所を溝部37が覆うようにされている。ただし、この領域の溝部37は、縦溝39の位置まで延びるように設けると、そこが、座屈しやすい箇所になるので、コーナー部32までは至らない下壁部34の途中まで設けられている。このような別の溝部37hの構成によって、底部40に近い胴部30での座屈が防止される。このような別の溝部37hと、上述された溝部37a〜溝部37gとによって、下壁部34の上端から下端まで上下方向の全域を覆うように構成されることが好ましい。なお、別の溝部37hの幅や、深さ等の形状や、隣接する溝部37との距離等は、上述された溝部37と同様で構わない。
なお、溝部37の形状は、プラスチックボトル1の元となるプリフォームの質量によって変更されても良い。すなわち、プリフォームの質量が軽量になるほど、プラスチックボトル1の肉厚が薄くなるので、上述された円弧状の溝部37e〜溝部37gが設けられることが好ましい。例えば、1000mL容器では20.5g以上30g以下、500mL容器では12g以上15g以下の場合に、溝部37が円弧状とされることが好ましい。
一方で、例えば、1000mL容器では30g以上35g以下の場合に、溝部37がすべて直線となされることも可能である。なお、この範囲のプリフォームの質量の場合には、充分な強度が確保されるため、溝部37を省略することも可能である。更に、例えば、500mL容器では15g以上20g以下の場合に、溝部37がすべて直線となされることも可能であり、溝部37を省略することも可能である。図11は下壁部34の変形例の正面図である。図8に例示された溝部37e〜溝部37hに替えて、変形例では、溝部37i〜溝部37lを有している。この範囲のプリフォームの質量の場合には、溝部37がすべて直線であっても、プラスチックボトル1の強度保持、及び胴膨れ防止を可能とするプラスチックボトル1の肉厚を有している。なお、変形例は、上述された各部位の位置関係と同様であり、そして、同様の効果を奏する。
なお、上述のように、下壁部34は、両端部36、36の間を水平方向に延びる複数の溝部37a〜溝部37gを有することが好ましいものの、下壁部34は、任意の方向に延びる図示せぬ凹状や凸状のリブを有していても良い。任意の方向に延びるリブが下壁部34に複数設けられる場合にはリブ同士が交差するように形成されることが下壁部34の強度の観点から好ましい。更に、リブ同士の交点の少なくとも一つが、両端部36、36の間の略中心を上下方向に延びる線上に位置することが好ましく、下壁部34の中心付近に位置することが胴膨れ等による寸法変化の防止の観点からより好ましい。したがって、リブは、X字形状や、十字形状等に形成されると良い。これらの形状を有するプラスチックボトル1は意匠性により優れている。
更に、凸状のリブは、下壁部34の両端部36、36の間を結んだ表面より外方に突出しないことが好ましい。すなわち、内方に湾曲する下壁部34から外方に突出する凸状のリブは、その突出高さが、下壁部34の両端部36、36の間を結んだ表面と同じか、それ以下とされる。したがって、凸状のリブにおける突出方向の真横からプラスチックボトル1を見ると凸状のリブは見えない。このように構成される凸状のリブや、上述の凹状のリブは、プラスチックボトル1の対面の寸法に影響を与えない。したがって、本実施形態に係るプラスチックボトル1は段ボール等への箱詰めの積載効率が優れている。更に、本実施形態に係るプラスチックボトル1は、シュリンクラベルの装着に影響を与えない効果も有している。
なお、下壁部34の凹状や凸状のリブと、上述の上壁部33の凹状や凸状のリブとの構成は、矛盾しない範囲で任意に組み合わせ可能である。
次に、それぞれの溝の寸法等について詳述する。図12は図4のXII−XII線断面図であり、図13は図4のXIII−XIII線断面図である。いずれも、プラスチックボトル1の水平方向の切断面が示されている。したがって、縦溝39は幅方向が示され、周溝38は延びる(周回)方向が示されている。
縦溝39は、幅w2、深さd4を有する。なお、幅w2、及び深さd4は、コーナー部32において、プラスチックボトル1の最外方に突出している箇所を基準とする。そして、縦溝39の上端、及び下端での傾斜部を除いて均一の深さd4でプラスチックボトル1の縦方向に延びる。
縦溝39の幅w2は、1mm以上5mm以下であることが好ましい。縦溝39の幅w2が、1mmより小であると、効果がなくなるとともに、賦形性が悪くなる。一方で、縦溝39の幅w2が、5mmより大であると、コーナー部32を広げることが必要となって望ましくない。
縦溝39の深さd4は、0.5mm以上3mm以下であることが好ましい。縦溝39の深さd4が、0.5mmより小であると、効果がなくなる。一方で、縦溝39の深さd4が、3mmより大であると、賦形性が悪くなりやすい。
図13に示されるように、周溝38は、深さd5を有する。縦溝39の深さd4は、周溝38の深さd5よりも大であり、d4/d5の比は1.1〜1.5であることが座屈強度、及び賦形性の観点から好ましい。d4/d5の比が1.1よりも小であると、プラスチックボトル1が、垂直方向の荷重を受けた際に変形が生じやすくなる。一方で、d4/d5の比が1.5よりも大であると、賦形性が悪くなりやすい。
本実施形態に係るプラスチックボトル1にはサイズによる限定はなく、種々のサイズに対して適用することができる。例えば、プラスチックボトル1の容積が200ml〜2000mlであっても良く、特に、容積が500ml〜1000mlであるプラスチックボトル1に対して好適である。とりわけ、プラスチックボトル1の全高H1が120mm〜260mmであり、胴部30の直径が40mm〜70mmであることが好ましく、本実施形態に係るプラスチックボトル1の奏する効果を好適に得ることができる。
プラスチックボトル1を構成する熱可塑性樹脂として、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、又はこれらの共重合体等の熱可塑性ポリエステル、これらの樹脂、あるいは他の樹脂とのブレンド物が好適であり、特に、ポリエチレンテレフタレート等のエチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルを好適に使用することができる。更に、アクリロニトリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体等も使用することができる。更に、植物由来のバイオマス系プラスチック、例えば、ポリ乳酸(PLA)を用いることも可能である。上述された樹脂には、成形品の品質を損なわない範囲で、種々の添加剤、例えば、着色剤、紫外線吸収剤、離型剤、滑剤、核剤、酸化防止剤、帯電防止剤等を配合することができる。なお、プラスチックボトル1は、過酸化水素、過酢酸を添加して無菌化させることが好ましい。
プラスチックボトル1を構成するエチレンテレフタレート系熱可塑性樹脂として、エステル反復部分の大部分、一般に70モル%以上をエチレンテレフタレート単位が占めるものであり、ガラス転移点(Tg)が50〜90℃であり、融点(Tm)が200〜275℃の範囲にあるものが好適である。また、エチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルとして、ポリエチレンテレフタレートが耐圧性等の点で特に優れているものの、エチレンテレフタレート単位以外に、イソフタル酸や、ナフタレンジカルボン酸等の二塩基酸と、プロピレングリコール等のジオールからなるエステル単位を少量含む共重合ポリエステルも使用することができる。
更に、プラスチックボトル1は、二層以上の熱可塑性ポリエステル層により構成することもできる。更に、プラスチックボトル1は、二層以上の熱可塑性ポリエステル層により構成する場合には、層間にバリア層や、酸素吸収層等の中間層を備えることができる。酸素吸収層としては、酸化可能有機成分、及び遷移金属触媒の組み合わせ、あるいは実質的に酸化しないガスバリア性樹脂等を含む層を使用することができる。
プラスチックボトル1は、上述の材料を射出成形して製作したプリフォームをブロー成形によって成形することにより作製することができる。
以上に説明がなされたように、本実施形態に係るプラスチックボトル1は、胴部30は、複数の壁部31と、壁部31同士をつなぐコーナー部32とからなり、壁部31が、上壁部33と、下壁部34とに分割されているプラスチックボトル1において、少なくとも、下壁部34は、水平方向に、壁部31の両端部36、36から中央に向け、プラスチックボトル1の内方に湾曲し、両端部36、36の間を水平方向に延びる複数の溝部37を有する。そして、本実施形態に係る構成によれば、軽量化された角型のプラスチックボトル1において、高い強度、特に座屈強度が保持されながら胴部の膨らみ等による寸法変化が防止される。
以下に、実施例、及び比較例を示して、本発明を更に詳細、かつ具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
<材料>
[実施例1]
図1に示される本実施形態に係るプラスチックボトル1が用いられた。すなわち、プラスチックボトル1は、下壁部34が、プラスチックボトル1の内方に湾曲し、両端部36、36の間を水平方向に延びる複数の溝部37を有し、上壁部33が、圧力吸収パネル35を備え、縦溝39の深さが、溝部37や周溝38より深く、面取り部50を有する等といった特徴を有している。プラスチックボトル1は、ポリエチレンテレフタレート製であり、重量が25gで、容量が900mlであった。プラスチックボトル1は、プリフォームをブロー成形することによって作製された。
[比較例1]
図14〜図16に示される、口部310と、肩部320と、胴部330と、底部340とを備えた構成であって、900ml用のプラスチックボトル300が比較例1として供試された。
ここで、図14はプラスチックボトル300の正面図、図15は図14のプラスチックボトル300の平面図、図16は図14のプラスチックボトル300の底面図である。肩部320は、四つの側面321を有しており、下方に向かって拡開する略四角錐台状に形成されている。肩部320の隣接する側面321の接合部には、面取り322が設けられる。側面321には、水平断面が略V字状に内方へと窪んだ凹み部323を複数備える。胴部330は、4つの側面331を有する略四角筒形状である。胴部330の隣接する側面331の接合部には、面取り332が設けられる。胴部330は、上下方向の中央近傍に環状の周溝380を備える。このような構成のプラスチックボトル300は、35gのプリフォームがブロー成形されることで作製された。
[比較例2]
上述の比較例1と同様の構成の900ml用のプラスチックボトルが比較例2として供試された。プラスチックボトル300は、25gのプリフォームがブロー成形されることで作製された。
[比較例3]
図17〜図19に示す、口部410と、肩部420と、胴部430と、底部440とを備えた構成であって、900ml用のプラスチックボトル400が比較例3として供試された。
ここで、図17はプラスチックボトル400の正面図、図18は図17のプラスチックボトル400の平面図、図19は図17のプラスチックボトル400の底面図である。肩部420は、下方に向かって拡開する略円錐台状に形成されている。胴部430は、円筒状であり、上下方向に同一径である。胴部430は、内方に窪んだ環状の周溝からなる補強溝480を複数備える。このような構成のプラスチックボトル400は、25gのプリフォームがブロー成形されることで作製された。
<方法>
(垂直座屈強度試験)
実施例1、並びに比較例1、2、及び3のプラスチックボトルにヘッドスペースが20mlになるように緑茶が充填され口部がキャップによって密封された。この内容物が充填されたプラスチックボトルの正立した状態でのそれぞれの5mmまでの変位に対する垂直座屈強度が測定された。この垂直座屈強度の測定は、AGR社製のテスター、TOP LOADが使用された。表1には、試験の結果が示されている。
(積載効率)
実施例1、並びに比較例1、2、及び3のプラスチックボトルにおける1パレットに積載される本数の比較が行われた。積載効率は、○:1パレットに積載される本数が400本、×:1パレットに積載される本数が400本未満、で表記されている。
(組付試験)
実施例1、並びに比較例1、2、及び3のプラスチックボトルにヘッドスペースが20mlになるように緑茶が充填され、口部がキャップによって密封された。この内容物が充填されたプラスチックボトルが、縦3本、横4本に配列されてダンボールに箱詰めされた。このプラスチックボトルが詰められたダンボールが段積みされ、3段積みの組付可否の組付試験がそれぞれ行われた。表1には、試験の結果が示されている。組付可否は、○:荷崩れなし、×:荷崩れ発生、で表記されている。
(総合評価)
垂直座屈強度試験、1パレット本数、及び組付試験に基づいて、実施例1、並びに比較例1、2、及び3のプラスチックボトルの総合評価がなされた。表1には、総合評価の結果が示されている。○:良好、△:適性はあるが良好ではない、×:適性なし、で表記されている。
上述された実施例から以下の点が導き出された。表1に示すように、実施例1は、軽量化を図ることができ、組付性を満たすだけの座屈強度、減圧適正ととともに胴膨れ防止機能を有していた。なお、比較例1は、プリフォームが35gであって、軽量化を図ることができていない。比較例2は、垂直座屈強度が弱く、胴膨れしていたため積載効率も低下し、更に組付性を有していなかった。比較例3は、圧吸収部を備えないため、減圧適性を有しておらず、積載効率も低かった。
上述された実施例から、本実施形態に係るプラスチックボトル1は、その構成によって、軽量化された角型のプラスチックボトルにおいて、高い強度、特に座屈強度が保持されながら胴部の膨らみ等による寸法変化が防止するものであることが示された。