以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施形態の詳細を説明する。まず、本実施形態に係るプラスチックボトルの構成を詳細に説明する。図1は、本実施形態に係るプラスチックボトルの一例としてのPETボトル1が示された正面図であり、図2はPETボトル1の上面図である。PETボトル1は略角筒状のいわゆる角ボトルである。PETボトル1は、その原型であるプリフォームと称される試験管の形をした樹脂が延伸されて成形される。PETボトル1は、その軸方向に、口部10、肩部20、胴部30、及び底部40を順次有する。そして、胴部30は、複数の平面部31、及びPETボトル1の周方向で隣り合う平面部31をつなぐコーナー部32からなる角筒部を有する。
なお、以下では、説明の便宜上、PETボトル1の軸方向が上下に延びるように正立された図1の状態において容器内への中身の充填が行われる口部10を上とする。PETボトル1は、底部40から口部10までの全高H1を有して形成されている。
PETボトル1は、角筒部を有する角ボトルであれば良い。図2等に例示されるPETボトル1は、軸方向に直交する角筒部の断面が略正方形である。しかしながら、ここでの角ボトルとは、角筒部の断面が、略正多角形、例えば略正12角形であるものでも良く、複数の平面部31のそれぞれが周方向の長さの異なるものからなる例えば長方形であるものでも良い。
口部10は、中身の充填口、及び注出口となり、口部10に、図示せぬ蓋が取り付けられることによってPETボトル1が密閉される。口部10は、高温での中身の充填に必要な耐熱性を有するようにいわゆる結晶化装置での加熱によって白く着色されるまで結晶化されていても良い。
肩部20は、その上側が口部10に連なり、一方で、その下側が胴部30に連なる。肩部20は、軸方向の上側から下側に向かってPETボトル1の径方向に広がる角錐台筒状に構成される。
PETボトル1は、肩部20と胴部30との間を周方向に延びる稜線21を有する。稜線21は、PETボトル1の軸方向の荷重を吸収する機能を有する。稜線21は、軸方向にうねっており、コーナー部32において最も胴部30の側に位置する。コーナー部32の上の領域における肩部20はそのままでは、軸方向の荷重によって屈曲しやすい。しかしながら、稜線21が、コーナー部32において最も胴部30の側に位置する構成によって屈曲しやすい箇所に荷重が集中せずに分散し、PETボトル1の座屈強度が高まる。
肩部20には、平板状の複数のカット面が形成されている。そして、これらのカット面の境となる辺が主に、軸方向に延びることによって、PETボトル1の軸方向の荷重に対する支柱として機能している。
平面部31の上には、稜線21を底辺とした軸方向に長い二等辺三角形の領域がPETボトル1の外側に向けて突出する稜線22によって形成されている。更に、二等辺三角形の領域の内側ではPETボトル1の内側に向けて突出する3本の稜線23によって3つの三角形のパネルが形成されている。平面部31の上の領域における肩部20は、このように構成されることによって、PETボトル1の軸方向、及び径方向の荷重に対する強度が高まるとともに、PETボトル1の内部の圧力が変化した際にもいびつに変形することなくその形状が維持される。
更に、肩部20は、PETボトル1の外側に向けて突出し、コーナー部32における周方向の中心を起点に軸方向に延びる稜線24を有する。この稜線24は、押された際に、PETボトル1の内側に凹みやすい。更に、この稜線24の口部10の側と、稜線21における平面部31とコーナー部32との境との間にもPETボトル1の外側に向けて突出する稜線25が形成されている。したがって、コーナー部32の上の領域の肩部20には、中心角を二分する稜線24を有する扇形の沈みパネル26が形成されている。稜線25は、稜線24が押された際の変形が扇形の外の領域に波及することを防止する。
胴部30には、PETボトル1の中身の情報や、意匠性を高めるための模様等が印刷されたシュリンクラベルやロールラベル等のラベルが包装される。加熱収縮によって装着されるシュリンクラベルには熱収縮性の良い二軸延伸ポリスチレンフィルム等が用いられる。シュリンクラベルは、PETボトル1とは材料が異なるため、PETボトル1の使用後に再資源化される際には分離される。シュリンクラベルは主に、コーナー部32に引っかかって装着されているため、コーナー部32での引っかかりが取り除かれることではがしやすくなる。稜線24が押されると、コーナー部32の付近において、PETボトル1とラベルとの間に隙間ができてラベルがつかみやすくなるとともにコーナー部32の引っかかりが部分的に取り除かれ、ラベルを容易にはがすことができる。
図1等に例示される肩部20に形成されている複数のカット面は平板状に形成されており、PETボトル1の外側や内側には湾曲していない。しかしながら、肩部20、特に扇形の沈みパネル26は、PETボトル1の外側に湾曲するように構成されていると、PETボトル1と、ラベルとの間により広い隙間ができて、ラベルをより容易にはがすことができる。
肩部20は、上述された構成には限定されないものの、PETボトル1の強度や形状の維持機能、ラベルのはがしやすさ等の点で稜線21や、稜線24を有する構成であることが好ましい。
胴部30は、角筒部としての上側角筒部50を有する。図2等に例示される上側角筒部50は、互いに同一の形状からなる4つの平面部31と、4つのコーナー部32とを有している。平面部31の周方向の長さは例えば31.6 mmとされる。
コーナー部32は径方向の外側に湾曲している。上側角筒部50は、径方向の寸法が上下で同一で、全体として略正四角筒の形状を有している。上側角筒部50は、外側に湾曲するコーナー部32を有することによって円筒に近い形状となり、その座屈強度が向上される。コーナー部32の曲率半径には特に限定はない。コーナー部32は例えば曲率半径19 mmとされる。
上側角筒部50は、対角距離D1、及び対面距離D2を有して構成される。対角距離D1は、対面距離D2よりも大である。対角距離D1は例えば82.5 mmとされ、対面距離D2は例えば69.4 mmとされる。
図3は、周溝51が拡大された正面図である。上側角筒部50は、径方向の内側に向かってくぼんで平面部31、及びコーナー部32を周方向に横切る複数の環状の周溝51を有する。周溝51は、径方向の荷重に耐える強度である側壁強度を高める機能を有する。更に、周溝51は、軸方向の荷重に対してクッションの役割を果たし、胴部30の座屈を防止する機能を有する。上側角筒部50の側壁強度が高まることで、上側角筒部50が把持された際に程よい反発力が生じてPETボトル1の持ちやすさが向上する。更に、上側角筒部50の側壁強度が高まることで、上側角筒部50へのラベルの取り付けやすさが向上する。
周溝51は、軸方向の断面が、平らな底面を有する略テーパ状やV字状とされていても良い。しかしながら、周溝51は、軸方向の断面において円弧状等のように湾曲した形状を有し、角を有していないことが好ましい。PETボトル1は、周溝51の軸方向の断面に角を有していない構成によって軸方向の荷重に対して屈曲せず座屈強度がより高められる。
周溝51は、平面部31の中でも、中央部31mにおいてと、周辺部31pにおいてとでは寸法が異なる。更に、周溝51は、平面部31においてと、コーナー部32においてとでも寸法が異なるように構成されていても良い。
ここで、中央部31mと、周辺部31pとの境界は厳密に定められている必要はなく、平面部31の周方向の中央付近と、中央を外れた付近とでは周溝51の寸法が異なるという傾向を有してPETボトル1が構成されていれば良い。そして、中央部31mと、周辺部31pとの境界は例えば、平面部31が周方向に3等分された領域がおおよその基準とされていても良い。
図3には、周溝51の中央部31mにおける幅である中央部幅Wm、周辺部31pにおける幅である周辺部幅Wp、及びコーナー部32における幅であるコーナー部幅Wcが示されている。周溝51は、平面部31において、広幅部51bと、狭幅部51nとを有する。例えば、平面部31の外周面と周溝51とのなす角度が小さいといったような成形しにくい箇所を広幅部51bとすることでPETボトル1の賦形性を良好なものとすることができる。
周溝51の幅が大きすぎると、軸方向の荷重に対する強度が低下するとともに、圧縮変形量が増大してしまう。一方で、周溝51の幅が小さすぎると、胴部30の賦形性が良好ではなくなってしまう。したがって、周溝51の幅は賦形性が良好、かつ軸方向の荷重に対する強度が確保される範囲で適宜設計される。周溝51は、中央部31mにおいて狭幅部51nとされ、周辺部31pにおいて広幅部51bとされていても良い。このように構成されることによって、周溝51の深さを中央部31mにおいて小に、周辺部31pにおいて大にすることができ、その際の賦形性をより良好なものとすることができる。中央部幅Wmは例えば3.0 mmとされ、周辺部幅Wpは例えば3.9 mmとされ、コーナー部幅Wcは例えば2.7 mmとされる。
図4は図1のIV−IV線断面図である。すなわち、図4には、上側角筒部50が、軸方向に直交する方向に、周溝51の軸方向の中心で切断された面が示されている。周溝51は、外周の断面が略角丸正方形とされており、中央部31mにおける深さである中央部深さDm、周辺部31pにおける深さである周辺部深さDp、及びコーナー部32における深さであるコーナー部深さDcを有して構成される。
周溝51は、平面部31の中央部31mにおいて、平面部31の周辺部31pにおいてよりも小の深さを有する。すなわち、周溝51の中央部深さDmは周辺部深さDpより小である。周溝51は、周辺部深さDpがより大に構成されることよって、肉厚が薄くされて軽量化が図られたPETボトル1においても胴部30の剛性を高める機能を有する。一方で、周溝51は、中央部深さDmがより小に構成されることよって平面部31の中央部31mに柔軟性を付与して、PETボトル1の平面部31が、径方向外側からの力を受けても屈曲せずにつぶれることを防ぐ機能を有する。中央部深さDmは例えば1.5 mmとされ、周辺部深さDpは例えば2.1 mmとされる。そして、平面部31の中において異なる深さを有する周溝51は、その深さが連続的に変化するような滑らかな曲線を周方向に描くように構成されている。
中央部深さDmと、周辺部深さDpとの差が小さすぎると上述された効果が発揮されなくなってしまう。一方で、周辺部深さDpに対して中央部深さDmが小さすぎると、軸方向の荷重に対する強度が低下するとともに、周辺部31pでつぶれが生じやすくなったり中央部31mが柔らかくなりすぎたりして持ちやすさが低下してしまう。これらの現象は、PETボトル1の軽量化のために胴部30が薄肉とされるほど厳しいものとなる。したがって、周溝51は、周辺部深さDpに対する中央部深さDmの比の値が0.45以上、0.95以下であることが好ましい。周溝51は、このように構成されることによって、周辺部31pの剛性を高めながら、径方向の荷重に対して特に、平面部31の中央部31mを屈曲しにくくし、PETボトル1をよりつぶれにくくすることができる。
このように、周溝51は、平面部31において、広幅部51bと、狭幅部51nとを有し、かつ平面部31の中央部31mにおいて、平面部31の周辺部31pにおいてよりも小の深さを有する。PETボトル1は、このように構成されることによって、賦形性が良好で、剛性を有しながらつぶれにくく、軽量性を有しながら優れた持ちやすさが実現される。
周溝51は、コーナー部32において、中央部31mにおいてよりも小の深さを有することが好ましい。すなわち、周溝51のコーナー部深さDcは中央部深さDmより小であることが好ましい。
このように構成される周溝51はコーナー部32において、剛性を残しながら軸方向の荷重に対して屈曲しにくくする機能を有する。すなわち、周溝51は、軸方向の荷重に対して特に、コーナー部32の強度を高め、PETボトル1の強度をより高めることができる。更に、周溝51は、平面部31において側壁強度を高めるため、PETボトル1を安定して横向きで積載することができる。更に、周溝51は、径方向において、PETボトル1の径方向中心からの距離があるコーナー部32での深さが小であるため凹凸の激しい形状とはならずに賦形性が良好である。
コーナー部32では周方向の中心で深さが最小となるように周溝51が形成されている。そして、コーナー部32においてと、平面部31においてとでは異なる深さを有する周溝51は、その深さが連続的に変化するような滑らかな曲線を周方向に描くように構成されている。コーナー部深さDcは例えば0.9 mmとされる。
なお、周溝51は、深さと、幅とが対応する構成であることが好ましい。このような構成によれば、PETボトル1の賦形性をより良好なものとすることができる。その際に、周溝51は、その深さが最大である平面部31の周辺部31pを基準としてその幅が設計されることで胴部30が凹凸の激しい形状とならずにその賦形性を良好なものとすることができる。
図1等に例示されるPETボトル1の上側角筒部50は周溝51を6本有している。ここで、周溝51は、互いに一定の間隔を有して配置されていると良い。このように構成される複数の周溝51のそれぞれが特に、径方向の荷重をより均等に分散し、PETボトル1をよりつぶれにくくすることができる。このため、図1等に例示されるように6本の周溝51は、深さ、及び幅の寸法がすべて同一に構成されるとともにそれぞれが、平行、かつ等間隔に配置されていると良い。
なお、PETボトル1の上側角筒部50が充分な肉厚を有している場合には周溝51を軸方向に対して斜めに延びる構成とすることもできる。
このように、複数の周溝51が、中央部31mにおいて狭幅部51nとされる上側角筒部50はその表面に、平面部31の中央部31mにより軸方向に長い平坦な箇所を取れて凹凸が抑えられる。このため、上側角筒部50にラベルを装着しやすくなるとともにラベルが装着された際の外観不良が生じにくくなり、PETボトル1の製造効率や、ラベルによるディスプレイ効果(宣伝効果)を向上させることができる。
なお、図1等には、上側角筒部50に、6本の周溝51が形成されている例が示された。しかしながら、その数は特に限定されるものではなく、上側角筒部50の軸方向の長さや、周溝51の深さ、幅等によって適宜設計されるものである。更に、すべての周溝51の深さが同一に設計されるのではなく、上側、例えば2本の周溝51、特に周辺部31pでの深さが下側の周溝51の深さよりも小とされていても良い。このように構成されることによって、軸方向の荷重に対する変形が生じやすい上側の周溝51への応力集中を分散することができる。
角ボトルが、軸方向に長い場合には周溝51の数を増やすことで側壁強度が高まる。しかしながら、周溝51の数が増えることで軸方向の荷重による圧縮変形量がより大となる。そこで、PETボトル1は、軸方向の荷重に対する圧縮変形量をより抑制するため、及び座屈強度をより強化するために軸方向に直交する断面が円形の円筒部60を有する構成とされていても良い。その際には、円筒部60においても持ちやすさと強度とが兼ね備えられていると良い。PETボトル1の図示せぬキャップを開栓する際には円筒部60が把持され、中身を注出する際には上側角筒部50が把持されるといったような使い分けの可能なPETボトル1が構成されても良い。
円筒部60は、くびれ部61を有している。くびれ部61は、胴部30が径方向に絞られてなる。くびれ部61は、座屈強度を効果的に高めることができる。更に、くびれ部61は、胴回りが短いため握りやすい。したがって、くびれ部61は把持部としても機能し、PETボトル1を持ちやすくすることができる。
くびれ部61は、軸方向に延びるリブ62を有している。リブ62は、PETボトル1の径方向外側に向けて突出している。リブ62は、PETボトル1の軸方向、及び径方向の双方の荷重に対する支柱としての機能を有する。リブ62は、くびれ部61の周方向に複数配置されている。複数のリブ62が配置されたくびれ部61は、強度が向上して変形しにくくなり、PETボトル1を持ちやすくすることができる。更に、リブ62は、握られた指にかかり、PETボトル1を持ちやすくすることができる。
図1等に例示されるようにリブ62は、周方向へのねじれを有している。リブ62がねじれを有していることによって握られた指に更にかかりやすくなり、PETボトル1がより持ちやすくなる。更に、リブ62がねじれを有していることによって軸方向の荷重が周方向に分散され、PETボトル1の座屈強度を高めることができる。リブ62は例えば、鉛直線に対して45度の傾きとされる。
くびれ部61の上端では、隣り合うリブ62が上辺63によって接続されている。上辺63は上側に向かって円弧状に湾曲している。同様に、くびれ部61の下端では、隣り合うリブ62が下辺64によって接続されている。下辺64は下側に向かって円弧状に湾曲している。上辺63、及び下辺64が形成されることによって円筒部60は変形しにくくなり、PETボトル1を持ちやすくすることができる。更に、湾曲した上辺63、及び下辺64は、PETボトル1の軸方向の荷重を吸収し、座屈強度を高めることができる。そして、隣り合う2本のリブ62を対辺とし、この対辺と、上辺63と、下辺64とによって長円状のパネル65が形成されている。したがって、くびれ部61は、径方向の内側に湾曲したパネル65が周方向に複数連なって筒状に構成されている。
なお、上辺63よりも上側の領域、及び下辺64よりも下側の領域は上下同径の円筒状である。PETボトル1の径方向においてこの円筒と、上側角筒部50との大小関係に制限はないものの、PETボトル1の積載効率等の観点から円筒部60は、上側角筒部50の内接円であることが好ましい。
リブ62を含めてパネル65は、上辺63、及び下辺64を起点として軸方向の中心に向かって径を縮小するように曲面状にそがれた形状を有している。そして、リブ62は、くびれ部61の軸方向に直交する任意の断面において径方向の中心からの距離が最大となるように構成される。すなわち、くびれ部61の外周の断面は、リブ62を頂点とした多角形となる。このように構成されるPETボトル1は、軽量性と、外力に対する高い強度とを併有し、かつ持ちやすい。
パネル65の個数は、PETボトル1の強度を保ちながら持ちやすさを高める観点から適宜設計されれば良い。図1等に例示されるPETボトル1のパネル65は同一形状の6つで構成されている。
くびれ部61の軸方向の長さは、PETボトル1の持ちやすさを有しながら強度を保つ観点で設計されれば良く少なくとも第一指の幅より長いと良い。周方向へのねじれを有しているリブ62、並びに曲面状にそがれた形状を有しているリブ62、及びパネル65による構成では把持に用いられる例えば第一指と、第三指とがくびれ部61にぴったりと合ってPETボトル1が持ちやすい。円筒部60の軸方向の長さは、第三指に沿った第二指、及び第四指が必ずしも収まらなくても良く、例えば38.5 mmとされる。
図5はPETボトル1の底面図である。胴部30は、円筒部60を有する構成である場合には、上側角筒部50と同様に平面部31、及びコーナー部32からなる下側角筒部70を有していることが好ましい。そして、上側角筒部50、及び下側角筒部70の対面距離D2が同一に形成されることによって上側角筒部50、及び下側角筒部70の各々の平面部31が接地部位となってPETボトル1を軸方向が水平とされた横向きの状態で安定して置くことができる。更に、上側角筒部50、及び下側角筒部70の対面距離D2が同一に形成されることによって複数のPETボトル1が箱詰めされる際に安定して収納することができる。
図1等に例示される下側角筒部70には2本の周溝71が形成されている。下側角筒部70は、把持されることが多くはなく、剛性については必要とされるものの、持ちやすさについての重要度は上側角筒部50ほどには高くない。したがって、下側角筒部70の周溝71は、周溝51の特徴を有する構成を必ずしも有していなくても構わない。すなわち、周溝71の中央部深さDmは周辺部深さDpより小でなくても良い。しかしながら、下側角筒部70においても、周溝51と同様の構成の周溝71が設けられることによって剛性、及びつぶれにくさを付与することができて好ましい。このため、下側角筒部70は、上側角筒部50と同様の構成とされていても良い。このように構成されることによって例えば、PETボトル1が両手で把持された際に、添えられた手によって下側角筒部70がつぶれることが防止されて持ちやすい。
PETボトル1は、底部40から、上側角筒部50の下端までの下側高さH2を有して形成されている。全高H1に対する下側高さH2の比の値(H2/H1)が小さすぎると、上側角筒部50の下方に、円筒部60や、下側角筒部70を構成することができなくなり、PETボトル1の容量(高さ)によっては強度を保つことが難しくなってしまう。一方で、H2/H1が大きすぎると上側角筒部50が小さくなってラベルを表示する面積が狭くなってしまう。更に、上側角筒部50の面積が狭くなると、PETボトル1を把持する箇所が限られることになってその操作性が低下してしまう。したがって、PETボトル1は、全高H1に対する下側高さH2の比の値(H2/H1)が0.20以上、0.49以下であることが好ましい。全高H1に対する下側高さH2の比の値(H2/H1)は例えば0.39とされる。
上側角筒部50は、剛性を有しながらつぶれにくく、軽量性を有しながら優れた持ちやすさが実現されるため、PETボトル1の重心よりも下側までその領域を広げることもできる。したがって、PETボトル1は、広い範囲で、上側角筒部50を把持部とすることができるとともにラベルを装着する面積を広く取ることができる。
上側角筒部50、及び下側角筒部70と、円筒部60とはそれぞれ、径方向にくぼんで周方向に延びる連接溝80、及び連接溝85を介して接続されることが好ましい。連接溝80、及び連接溝85は、軸方向の荷重をクッションとして受け止め、連接部分の屈曲を防ぐ機能を有する。更に、連接溝80、及び連接溝85は、連接部分の付近の側壁強度を高める機能を有する。連接溝80、及び連接溝85は、軸方向に直交する断面が円形とされており、軸方向の断面が平らな底面を有する略テーパ状とされている。連接溝80、及び連接溝85は、鉛直方向の断面が円弧状やV字状とされていても良い。
連接溝80、及び連接溝85は、その深さが浅すぎると、座屈強度を高めにくくなってしまう。一方で、連接溝80、及び連接溝85は、その深さが深すぎると、PETボトル1の成形時の賦形性が低下しやすくなってしまう。連接溝80、及び連接溝85の深さは、円筒部60の外径の最大部に対する比の値が0.005以上、0.07以下であることが好ましく、0.03であることがより好ましい。
連接溝80、及び連接溝85の幅が広すぎると、側壁強度を高めにくくなってしまう。一方で、連接溝80、及び連接溝85の幅が狭すぎると、PETボトル1の成形時の賦形性が低下しやすくなってしまう。連接溝80、及び連接溝85の幅は、連接溝80、及び連接溝85の深さに対する比の値が0.5以上、5.0以下であることが好ましい。
なお、連接溝80の上端に接する上側角筒部50のコーナー部32には面取り部52が形成されていても良い。同様に、連接溝85の下端に接する下側角筒部70のコーナー部32にも面取り部72が形成されていても良い。更に、下側角筒部70の下端のコーナー部32にも面取り部73が形成されていても良い。面取り部52や、面取り部72、面取り部73が形成されることによって、屈曲しやすいコーナー部32に軸方向の荷重が集中せずに分散し、PETボトル1の座屈強度が高まる。
底部40は、胴部30の下側角筒部70の下側に連なる。底部40は、コーナー部41と、底壁42と、ドーム43とを有している。コーナー部41は、PETボトル1の軸方向の下側、及び径方向の外側に向かって湾曲している。略平板環状の底壁42は、胴部30に対して垂直方向に延び、PETボトル1の接地面となる。
ドーム43は、PETボトル1の内側(軸方向の上側)に向けて湾曲する中空半球状に形成されている。ドーム43は、PETボトル1の中身の温度や、内部の圧力の変化による変形を防ぐ機能を有する。ドーム43は、圧力等を効果的に分散して変形を防止し、かつ賦形性を良好とする範囲で接地面に対する傾斜の角度が設計されれば良い。ドーム43は、図1等に例示されるように径方向の内側において軸方向の上側に向けて複数段で突出するように構成されていても良い。
図5に例示されるドーム43は、放射状リブ44と、円周状リブ45とをそれぞれ8つ有している。放射状リブ44はそれぞれが、底面視で放射状に延びている。円周状リブ45は、隣り合う放射状リブ44の間を底面視で円周状に延びている。放射状リブ44は、ドーム43よりも軸方向の上側に向けて突出するように形成されている。反対に、円周状リブ45は、ドーム43よりも軸方向の下側に向けて突出するように形成されている。放射状リブ44、及び円周状リブ45はいずれも、ドーム43を補強する機能を有する。放射状リブ44、及び円周状リブ45は、過延伸による白化や、PETボトル1の賦形性の低下が起こらない範囲で突出するように形成されれば良い。
底部40の径方向中央、すなわち、ドーム43の頂上には、凹面状の受け部46が形成されていても良い。受け部46は、PETボトル1が、原型であるプリフォームから延伸されて成形される際に延伸ロッドの先端が入り込むように構成されている。受け部46は、延伸ロッドによって底部40が、径方向に偏心することを防止する機能を有する。
なお、底部40は、図5等の例示に限らず、熱によって変形しやすい状態で陽圧化しても下側に変形しにくく構成されていれば良い。これによって、PETボトル1の満注容量が設計値よりも増え、容器内で空気が占める割合が増えることによって内圧の変化がより大となることを防止することができる。ドーム43は、熱によって仮に変形したとしても少なくともPETボトル1の接地面よりも高く維持されるように設計される。これによって、底部40が、底壁42より外側(下側)に突出することが防止され、PETボトル1のがたつきや、転倒を防止することができる。
本実施形態に係るPETボトル1にはサイズによる限定はなく、種々のサイズに対して適用することができる。しかしながら、より大型のボトルであると、本実施形態に係るPETボトル1の構成による効果がより発揮されて好ましい。例えば、PETボトル1の内容積が680 ml以上、2500 ml以下であることが好ましく、850 mlから2000 mlであることがより好ましい。PETボトル1の全高H1は190 mm以上、320 mm以下であっても良く、胴部30の対面距離D2は60 mm以上、100 mm以下であっても良い。
更に、本実施形態に係るPETボトル1は軽量化ボトルを対象として好適に用いることができる。そして、特に、軽量性を有し、内圧の変化の吸収量を高めながらPETボトル1の強度を保つ観点から、PETボトル1の内容積に対する質量の比の値が0.0105 g/ml以上、0.0300 g/ml以下であることが好ましい。
PETボトル1が例示されたプラスチックボトルの材料としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンや、エチレン−ビニルアルコール共重合体、植物等を原料としたポリ乳酸等のブロー成形が可能な種々のプラスチックを用いることができる。しかしながら、プラスチックボトルは、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、特に、ポリエチレンテレフタレートが主成分とされることが好ましい。なお、上述された樹脂には、成形品の品質を損なわない範囲で種々の添加剤、例えば着色剤、紫外線吸収剤、離型剤、滑剤、核剤、酸化防止剤、帯電防止剤を配合することができる。
PETボトル1を構成するエチレンテレフタレート系熱可塑性樹脂としては、エステル反復部分の大部分、一般に70モル%以上をエチレンテレフタレート単位が占めるものであり、ガラス転移点(Tg)が50℃以上、90℃以下であり、融点(Tm)が200℃以上、275℃以下の範囲にあるものが好適である。エチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルとして、ポリエチレンテレフタレートが耐圧性等の点で特に優れているものの、エチレンテレフタレート単位以外に、イソフタル酸や、ナフタレンジカルボン酸等の二塩基酸と、プロピレングリコール等のジオールからなるエステル単位を少量含む共重合ポリエステルも使用することができる。
ポリエチレンテレフタレートは熱可塑性の合成樹脂の中では生産量が最も多い。そして、ポリエチレンテレフタレート樹脂は、耐熱性、耐寒性や、耐薬品性、耐摩耗性に優れる等の種々の特性を有する。更に、ポリエチレンテレフタレート樹脂はその原料に占める石油の割合が他のプラスチックと比べて低く、リサイクルも可能である。このように、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする構成によれば、生産量の多い材料を用いることができ、その優れた種々の特性を活用することができる。
ポリエチレンテレフタレートは、エチレングリコール(エタン−1,2−ジオール)と、精製テレフタル酸との縮合重合によって得られる。ポリエチレンテレフタレートの重合触媒として、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、及びアルミニウム化合物の少なくとも一つが用いられることが好ましい。これらの触媒が用いられることによって、アンチモン化合物が用いられるよりも、高い透明性を有し、耐熱性に優れた容器を形成することができる。
上述された材料が射出成形されたプリフォームがブロー成形されることによってプラスチックボトルを作製することができる。そして、材料として、ポリエチレンテレフタレートが用いられることによって、本実施形態に係るプラスチックボトルの一例としてのPETボトル1が作製される。そして、PETボトル1と、充填される液体とによって充填体が構成される。充填体は、PETボトル1の口部10から飲料や調味料等の液体が充填され、口部10に装着される図示せぬ蓋によって密封されることによって製造される。
以上のように、PETボトル1は、口部10、肩部20、胴部30、及び底部40を軸方向に順次有し、胴部30は、複数の平面部31、及び周方向で隣り合う平面部31をつなぐコーナー部32からなる上側角筒部50を有し、上側角筒部50は、PETボトル1を周回する周溝51を有し、周溝51は、平面部31において、広幅部51bと、狭幅部51nとを有し、かつ平面部31の中央部31mにおいて、平面部31の周辺部31pにおいてよりも小の深さを有する。このような構成によれば、賦形性が良好で、剛性を有しながらつぶれにくく、軽量性を有しながら持ちやすさに優れた角型のPETボトル1を提供することができる。
更に、充填体は、PETボトル1と、充填される液体とによって構成される。このような構成によれば、賦形性が良好で、剛性を有しながらつぶれにくく、軽量性を有しながら持ちやすさに優れた角型のPETボトル1が用いられた充填体を提供することができる。
なお、本実施形態に係るPETボトル1、及び充填体では、角筒部としての上側角筒部50に形成される周溝51以外については上述されたものとは異なる構成とされていても良い。
以下に、実施例を示して、本開示を更に詳細、かつ具体的に説明する。しかしながら、本開示は、以下の実施例に限定されるものではない。
<材料、及び製造方法>
[実施例1]
24 gのポリエチレンテレフタレート製で満注容量が940 mlの図1等に示されるPETボトル1が用いられた。PETボトル1の中央部深さDmは1.5 mm、周辺部深さDpは2.1 mmとされた。PETボトル1には、900 mlの水が充填された上で図示せぬキャップで閉栓されて充填体が作製された。
実施例1に係るPETボトル1、及び充填体は上側角筒部50に、PETボトル1を周回する周溝51を有し、周溝51は、平面部31において、広幅部51bと、狭幅部51nとを有し、かつ平面部31の中央部31mにおいて、平面部31の周辺部31pにおいてよりも小の深さを有する等といった本実施形態に係る特徴を有していた。
[比較例1]
図6は、実施例1の図3に対応するPETボトル200の周溝251の断面図である。比較例1では、周溝51とは形状の異なる図6に示される周溝251を有するPETボトル200が用いられた以外は実施例1と同様であった。PETボトル200の胴部230の上側角筒部250にはPETボトル200を周回する周溝251が形成されていた。しかしながら、周溝251は、平面部231の中央部231mにおいても、平面部231の周辺部231pにおいても同一の深さを有していた。比較例1のPETボトル200では周溝251の深さは、実施例1のPETボトル1における周辺部深さDpと同じ2.1 mmとされた。したがって、比較例1に係る充填体は、本実施形態に係る特徴を有していなかった。
[比較例2]
比較例2では、28 gであること以外は比較例1と同様であった。したがって、比較例2に係る充填体も、本実施形態に係る特徴を有していなかった。
[比較例3]
比較例3では、周溝251の深さが、実施例1のPETボトル1における中央部深さDmと同じ1.5 mmとされたこと以外は比較例1と同様であった。したがって、比較例3に係る充填体も、本実施形態に係る特徴を有していなかった。
[比較例4]
比較例4では、28 gであること以外は比較例3と同様であった。したがって、比較例4に係る充填体も、本実施形態に係る特徴を有していなかった。
<評価方法>
(軽量性)
実施例1、並びに比較例1、比較例2、比較例3、及び比較例4の各PETボトルの質量によって軽量化が達成できているか否かが判定された。軽量化の判定には、24 gより大か、以下かが閾値として設定された。表1には、各PETボトルにおける軽量性の評価の結果が示され、○:軽量性あり、×:軽量性なし、で表記されている。
(側壁強度試験)
実施例1、並びに比較例1、比較例2、比較例3、及び比較例4の各充填体が横置きにされた状態での上側角筒部50、及び上側角筒部250の側壁強度が測定された。側壁強度の測定には、AGR社製のテスター、TOP LOADが用いられた。平面部31の中央部31m、及び平面部231の中央部231mの上から一定速度で荷重が加えられ、5 mm変位した段階での荷重が側壁強度とされた。側壁強度の判定には、40 N以上か、未満かが閾値として設定された。表1には、各充填体における側壁強度の評価の結果が示され、○:側壁強度あり、×:側壁強度不足、で表記されている。
(モニタリング調査)
実施例1、並びに比較例1、比較例2、比較例3、及び比較例4の各充填体が用意され、20代〜70代の100人のモニタに、上側角筒部50の平面部31、及び上側角筒部250の平面部231を持った上で中身を注出していただいた。その際に、つぶれが生じなかったものが一点として集計された。表1には、合計点数が表記されている。
(総合評価)
上述された軽量性、側壁強度試験、及びモニタリング調査に基づいて、実施例1、並びに比較例1、比較例2、比較例3、及び比較例4の各PETボトル(各充填体)の総合評価がなされた。表1には、総合評価の結果が示されている。総合評価は、○:良好、×:適性なし、で表記されている。
上述された実施例から以下の点が導き出された。実施例1に係るPETボトル1(充填体)では、軽量性を有して構成されており、側壁強度を充分に有しながらつぶれにくかった。そして、多くのモニタからその持ちやすさが支持された。
一方で、比較例1では、軽量化され、側壁強度も充分に有していたものの、つぶれが生じてしまった。比較例2では、つぶれにくさが改善したものの充分ではなく、軽量性も有していなかった。比較例3では、軽量化されたものの、側壁強度が不足していたため、不可逆的な屈曲こそ生じなかったものの注出の間にはつぶれが生じ、持ちやすさが不充分であった。そして、比較例4のように軽量化がやや不足する場合には、側壁強度、及びつぶれにくさが満たされた。
以上の実施例の結果から、本実施形態に係るPETボトル1、及び充填体では、軽量化されてもなお、側壁強度、すなわち剛性を充分に有しながらつぶれが生じにくく、持ちやすさも兼ね備えていることが示された。したがって、本実施形態では、剛性を有しながらつぶれにくく、軽量性を有しながら持ちやすさに優れた角型のPETボトル1を提供することができることが示された。