以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施形態の詳細を説明する。まず、本実施形態に係るプラスチックボトルの構成を詳細に説明する。本実施形態に係るプラスチックボトルは、その原型であるプリフォーム(予備成形体)からブロー成形によって加工されるブロー成形容器である。図1は、本実施形態に係るプラスチックボトルの一例としてのPETボトル1が示された正面図であり、図2はPETボトル1の上面図である。以下では、説明の便宜上、PETボトル1が正立されてその軸方向が上下に延びる図1の状態において中身が出し入れされる口部10を上とする。PETボトル1は、口部10、首部20、胴部30、及び底部50を少なくとも有する。PETボトル1の軸方向の長さは例えば191 mmとされる。
略筒状の口部10の上端は平面視で円環状であり、その内周側は開口11である(図2参照)。開口11は、中身の充填口、及び注出口となる。一方で、口部10は、その下端に、PETボトル1の径方向の外側に向かって突出する環状のサポートリング12を有する。サポートリング12は、PETボトル1がブロー成形されたり、搬送されたりする際の支持に用いられる。口部10の軸方向の長さは例えば21.01 mmとされる。
口部10は、その外周に、図示せぬ蓋が取り付けられるためのおねじ13を有している。PETボトル1は、口部10に蓋が取り付けられることによって密閉される。PETボトル1は密閉できる構成であれば良く、例えば打栓式の蓋が用いられる場合には、おねじ13に替えて突起や溝条が、口部10の外周や内周に形成されていれば良い。
サポートリング12とおねじ13との間には、口部10の外周から径方向外側に向かって突出する環状のカブラ14が形成されていても良い。PETボトル1が搬送される際に図示せぬ搬送設備が備えるグリッパが、カブラ14と、サポートリング12との間の凹溝を挟んでPETボトル1を把持することができる。サポートリング12は、カブラ14よりも径方向外側まで突出している。
口部10の形状や寸法に特に限定はない。しかしながら、口部10は、例えばPCO(Plastic Closure Only)1810規格や、PCO1881規格に対応した寸法とされると汎用性の点で良い。
口部10は、高温での中身の充填に必要な耐熱性を有するようにいわゆる結晶化装置での加熱によって白く着色されるまで結晶化されていても良い。口部10は、非結晶のものでは、ガラス転移点(Tg)よりも低い温度例えば75 ℃、結晶化されたものでは例えば95 ℃までの充填に対応できると良い。
図3は図1のIII−III線断面図である。PETボトル1は、口部10と、胴部30との間に例えば鶴首状の首部20を有する。首部20は、軸方向の上端で口部10に連なっている。図3等に例示される首部20は、その外径が、軸方向の下側に向かってわずかに広がる略円錐台状である。一方で、首部20の肉厚は、軸方向の下側に向かってより薄肉となっている。更に、図1に例示されるように首部20はその上側に、径の細い小径部21を有していても良い。PETボトル1が搬送される際にグリッパが、小径部21を挟んでPETボトル1を把持することができる。小径部21はその外径が、軸方向の上下で同一の略真円筒形状である。小径部21の軸方向の長さは例えば5 mmとされる。
首部20を有することによって、PETボトル1をワインボトルのように意匠性に優れた形状とすることができる。更に、PETボトル1は、首部20を有することによって、中身の液面が空気に触れる面積が減って中身の酸化が最小限に抑えられる。このため、中身の保存性を高めるとともに、PETボトル1の内部の圧力(内圧)を変化しにくくすることができる。
PETボトル1は、首部20と、底部50との間に胴部30を有する。胴部30の外周面は平面視(断面視)で略正多角形状である(図2参照)。胴部30は、その胴径(外径や内径)、及び肉厚が軸方向の上下でほとんど変化しない略正多角筒形状である。ここで、胴径とは、肉厚の中心における直径であり、内径よりも大、外径よりも小である。
胴部30は、PETボトル1の軸方向に延びる滑面で構成されるパネル31と、パネル31と隣接して軸方向に延びる柱32とを有する(図1参照)。胴部30は、パネル31と、柱32とが、PETボトル1の周方向に交互に繰り返される多面構造である。
ここでの滑面とは、部分的な出っ張りやくぼみのような段差のない面のことである。ここでの滑面には、平坦な面だけでなく湾曲する面も含まれる。パネル31には、段差や、屈曲している箇所が含まれていない。パネル31は、軸方向に延びる滑面で構成されることによって径方向の内外へと動きやすくなっている。
一方で、柱32は平面視で、弧を描くようにして曲げられて構成されることによって剛性が高められている(図2参照)。この柱32が軸方向に延びることによって、軸方向の上下からの荷重に耐える強度である座屈強度が高められている。胴部30の座屈強度が高まることで、座屈変形の発生を効果的に防ぎ、PETボトル1が段積みされた際に荷崩れを起こしてしまうことが防止される。
このように、柱32は、高い剛性を有し、胴部30を補強する機能を有する。一方で、パネル31は、径方向の内外へと変形しやすく、PETボトル1の内圧が減少した際に、径方向内側へと動いて、内容積を減少させることで内圧の変化を吸収する機能を有する。特に、PETボトル1の内圧が減少した際に、パネル31が、内圧の減少に応じて径方向の内側に動き、柱32が、その動きの影響が他の箇所に伝播することを抑えることによって胴部30の略正多角形状が維持されている。したがって、胴部30は、柱32と、パネル31とを有することによって、軸方向の上下からの荷重による変形、及び内圧の減少による変形が抑えられる。このように、PETボトル1は、丸ボトルの外形が維持されながら軽量化が図られ、かつ座屈強度、及び減圧強度が高められる。
柱32は、胴部30における軸方向の両端の間に延びている。この柱32は、胴部30の軸方向の全長に亘ってその剛性を高める機能を有する。PETボトル1は、このように構成されることによって、軸方向の上下からの荷重による変形、及び内圧の減少による変形がより抑えられる。
柱32とパネル31とは滑らかに接続されている。これによって、パネル31と柱32との接続部に段差や屈曲点が生じず、丸ボトルに近い形状が保たれている。こうして、胴部30の上からラベルが巻かれても跡がつきにくくされている。したがって、胴部30が真円筒のワインボトルのようにPETボトル1を意匠性に優れた形状とすることができる。
隣り合う柱32は平行であることが好ましい。隣り合う柱32で囲まれたパネル31は長方形となる。これによって、PETボトル1が荷重を受けた際にねじれの力が生じにくくなる。更に、パネル31、及び柱32がそれぞれ、周方向に等間隔で配置されることが好ましい。これによって、パネル31、及び柱32は均整のとれた配置となり、外部から荷重を受けたり、内圧に変化が生じたりしても特定の箇所に応力が集中しにくくなってPETボトル1がいびつに変形することが防止される。
ここで、パネル31、及び柱32の周方向の距離をそれぞれの幅とする。パネル31に関して、PETボトル1の周方向に最大となる箇所の長さをパネル31の幅Bcと定義する。同様に、柱32に関して、PETボトル1の周方向の長さを柱32の幅Bpと定義する。パネル31の幅Bcに対して柱32の幅Bpが小さすぎると、外部からの荷重に対する補強効果が弱まってしまうとともにパネル31が変形しやすくなりすぎてしまう。一方で、パネル31の幅Bcに対して柱32の幅Bpが大きすぎるとパネル31が変形しにくくなってしまう。
したがって、パネル31の幅Bcと、柱32の幅Bpとが明確に区別できる場合において、パネル31における幅Bcに対する柱32における幅Bpの比の値は、0.20以上、0.45以下であることが好ましい。これによって、PETボトル1は、高い座屈強度と、高い減圧吸収機能とを兼ね備えることができる。PETボトル1のパネル31における幅Bcに対する柱32における幅Bpの比の値は例えば0.261とされる。
パネル31の数が少なすぎると、外部からの荷重に対する補強効果が弱まってしまうとともにパネル31が変形しやすくなりすぎてしまう。一方で、パネル31の数が多すぎるとパネル31が変形しにくくなってしまう。したがって、パネル31は4以上、18以下で構成されることが好ましい。これによって、PETボトル1は、高い座屈強度と、高い減圧吸収機能とを兼ね備えることができる。PETボトル1の柱32は例えば8で構成される。
なお、軸方向の上下からの荷重によって特にパネル31が径方向に変形してしまう、いわゆるバックリングを防ぐ観点においてはパネル31は奇数であることが好ましい。一方で、PETボトル1の持ちやすさの観点ではパネル31は偶数であることが好ましい。
PETボトル1を横向きにされると、パネル31が接地部位となって、安定して置くことができる。PETボトル1の対向するパネル31の胴径は例えば54.5 mmとされる。
柱32の外周面は、PETボトル1の径方向の寸法が最も大きい最大外径を有する位置となっている。ここで、柱32は、胴径に対して肉厚が極めて小さい。したがって、胴径の値には外径や内径が替わりに用いられても問題ない。そこで、柱32の位置するPETボトル1の最大の胴径を最大胴径D1と定義する。PETボトル1の最大胴径D1は例えば58.0 mmとされる。
最大胴径D1に対して単一のパネル31の面積が小さすぎると減圧吸収機能が低下してしまう。一方で、最大胴径D1に対して単一のパネル31の面積が大きすぎると、外部からの荷重に対する補強効果が弱まってしまうとともにパネル31が変形しやすくなりすぎてしまう。
最大胴径D1に対して単一のパネル31の幅Bcが小さすぎるとパネル31が径方向の内外に動きにくくなってしまう。一方で、最大胴径D1に対して単一のパネル31の幅Bcが大きすぎると、外部からの荷重に対する補強効果が弱まってしまうとともにパネル31が変形しやすくなりすぎてしまう。したがって、最大胴径D1に対する単一のパネル31における幅Bcの比の値が0.20以上、0.55以下であることが好ましい。これによって、PETボトル1は、高い座屈強度と、高い減圧吸収機能とを兼ね備えることができる。
胴部30の肉厚が薄すぎるとPETボトル1の強度が低下してしまう。一方で、胴部30の肉厚が厚すぎるとPETボトル1の軽量性が失われてしまう。したがって、胴部30の肉厚が0.10 mm以上、0.50 mm以下であることが好ましい。これによって、PETボトル1は、より軽量化が図られ、かつ高い座屈強度と、高い減圧吸収機能とを兼ね備えることができる。
パネル31は、最大胴径D1未満の領域で、径方向の内側に向かって湾曲していても良い。パネル31がこのように構成されることによって減圧強度をより高めることができる。
柱32は、軸方向に延びて周方向にある程度の幅を有する平坦な面を有していると荷重が、ある一点に集中して屈曲しやすくなってしまう。したがって、柱32は、軸方向に直交する断面がすべて曲線で構成されることが好ましい。これによって、特に座屈強度をより高めることができる。
柱32の半径が小さすぎると賦形性が低下してしまう。一方で、柱32の半径が大きすぎると、胴部30の剛性が高まらず、PETボトル1の座屈強度や減圧強度を高めることができなくなってしまう。したがって、柱32の曲率半径は3 mm以上、15 mm以下であることが好ましい。これによって、PETボトル1を良好な賦形性で、座屈強度や減圧強度を高めることができる。
肩部25は、その上端が首部20に連なっている。肩部25は、首部20と、これらとは径の異なる胴部30等とをつなぎ合わせる部位である。肩部25は、軸方向の上端から下端に向かって径が拡大する略円錐台筒状に形成される。図1に例示されるように、肩部25は、PETボトル1の内側に向かって湾曲して首部20と滑らかにつながっている。
PETボトル1は、肩部25と胴部30とをつなぎ合わせる上側連接部40と、胴部30と底部50とをつなぎ合わせる下側連接部45とを有していても良い。
上側連接部40は、PETボトル1の外側に向かって湾曲して胴部30と滑らかにつながっている。上側連接部40は、PETボトル1の外側に湾曲していることが、PETボトル1の内圧の変化に対する耐性、設計された形状への追従性を示す賦形性、容量等の観点で好ましい。ただし、ブロー成形によるPETボトル1の形成の際に賦形性が良好でなくなることから、上側連接部40は、極度に外側、特に上側に湾曲することは好ましくない。
胴部30のパネル31と、柱32とは双方とも、上側連接部40まで連続して延びていても良い。上側連接部40は、パネル41と、柱42とを有している。パネル41は、パネル31と同様に径方向の内外へと変形しやすく、PETボトル1の内圧が減少した際に、内容積を減少させることで内圧の変化を吸収する機能を有している。一方で、柱42は、柱32と同様に高い剛性を有し、上側連接部40を補強する機能を有している。
下側連接部45は、PETボトル1の軸方向の下側、及び径方向の外側に向かって湾曲している。胴部30のパネル31と、柱32とは双方とも、下側連接部45まで連続して延びていても良い。下側連接部45は、パネル46と、柱47とを有している。パネル46は、パネル31と同様に径方向の内外へと変形しやすく、PETボトル1の内圧が減少した際に、内容積を減少させることで内圧の変化を吸収する機能を有している。一方で、柱47は、柱32と同様に高い剛性を有し、下側連接部45を補強する機能を有している。
このように、PETボトル1は、内圧の変化を吸収する機能を有するパネル41、及びパネル46も含んでいる。したがって、PETボトル1は、パネル31だけでなく、パネル41、及びパネル46を含んで構成されることによって内圧の減少によるPETボトル1の変形がより抑えられる。
パネル41、及び柱42は肩部25にまで延びていても良い。肩部25においても、PETボトル1の内圧の減少を吸収することができるようになる。
図4はPETボトル1の底面図である。底部50は、下側連接部45の径方向内側に連なっている。底部50は、底壁51と、ドーム52とを有している。略平板環状の底壁51は、胴部30の延びる軸方向に対して垂直方向に延び、PETボトル1の接地面となる。底壁51はその直径が例えば42 mmとされる。
ドーム52は、PETボトル1の内側(軸方向の上側)に向けて湾曲する中空半球状に形成されている(図3参照)。ドーム52は、PETボトル1の中身の温度や、内圧の変化による変形を防ぐ機能を有する。ドーム52は、内圧等を効果的に分散してPETボトル1の変形を防止し、かつ賦形性を良好とする範囲で接地面に対する傾斜の角度が設計されれば良い。図3に例示されるドーム52はワインボトルに似せて凹凸を有していない。しかしながら、ドーム52は、図3等の例示に限らず、変形を防ぐための放射状リブや円周状リブを有していても良い。ドーム52は、その頂点の接地面からの突出高さが例えば10 mmとされる。
底部50は、充填時のような熱によって変形しやすい状態で陽圧化しても下側に変形しにくく構成されていれば良い。これによって、PETボトル1の満注容量が設計値よりも増え、容器内で空気が占める割合が増えることによって内圧の変化がより大となることを防止することができる。底部50は、底面が凹凸、例えばペタロイド形状であっても構わない。ドーム52は、熱によって仮に変形したとしても少なくともPETボトル1の接地面よりも高く維持されるように設計される。これによって、底部50が、底壁51より外側(下側)に突出することが防止され、PETボトル1のがたつきや、転倒を防止することができる。
本実施形態に係るPETボトル1にはサイズによる限定はなく、種々のサイズに対して適用することができる。例えば、PETボトル1の内容積が80 ml以上、1000 ml以下であることが好ましく、150 mlから720 mlであることがより好ましい。PETボトル1の軸方向の全長は90 mm以上、220 mm以下であっても良く、胴部30の最大胴径D1は45 mm以上、80 mm以下であっても良い。
更に、本実施形態に係るPETボトル1は軽量化ボトルを対象として好適に用いることもできる。そして、特に、より軽量性を有しながら、軸方向の上下からの荷重による変形、及び内圧の減少による変形が抑えられる強度を保つ観点から、PETボトル1の内容積に対する質量の比の値が0.02 g/ml以上、0.12 g/ml以下であることが好ましく、0.06 g/ml以下であることがより好ましい。このように構成されるPETボトル1は、丸ボトルの外形が維持されながらより軽量化が図られ、かつ座屈強度、及び減圧強度が高められる。
PETボトル1が例示されたプラスチックボトルの材料としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンや、エチレン−ビニルアルコール共重合体、植物等を原料としたポリ乳酸等のブロー成形が可能な種々のプラスチックを用いることができる。しかしながら、プラスチックボトルは、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、特に、ポリエチレンテレフタレートが主成分とされることが好ましい。なお、上述された樹脂には、成形品の品質を損なわない範囲で種々の添加剤、例えば着色剤、紫外線吸収剤、離型剤、滑剤、核剤、酸化防止剤、帯電防止剤を配合することができる。
PETボトル1を構成するエチレンテレフタレート系熱可塑性樹脂としては、エステル反復部分の大部分、一般に70 mol%以上をエチレンテレフタレート単位が占めるものであり、ガラス転移点(Tg)が60 ℃以上、90 ℃以下であり、融点(Tm)が200 ℃以上、275 ℃以下の範囲にあるものが好適である。エチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルとして、ポリエチレンテレフタレートが耐圧性等の点で特に優れているものの、エチレンテレフタレート単位以外に、イソフタル酸や、ナフタレンジカルボン酸等の二塩基酸と、プロピレングリコール等のジオールからなるエステル単位を少量含む共重合ポリエステルも使用することができる。
ポリエチレンテレフタレートは熱可塑性の合成樹脂の中では生産量が最も多い。そして、ポリエチレンテレフタレート樹脂は、耐熱性、耐寒性や、耐薬品性、耐摩耗性に優れる等の種々の特性を有する。更に、ポリエチレンテレフタレート樹脂はその原料に占める石油の割合が他のプラスチックと比べて低く、リサイクルも可能である。このように、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする構成によれば、生産量の多い材料を用いることができ、その優れた種々の特性を活用することができる。
ポリエチレンテレフタレートは、エチレングリコール(エタン−1,2−ジオール)と、精製テレフタル酸との縮合重合によって得られる。ポリエチレンテレフタレートの重合触媒として、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、及びアルミニウム化合物の少なくとも一つが用いられることが好ましい。これらの触媒が用いられることによって、アンチモン化合物が用いられるよりも、高い透明性を有し、耐熱性に優れた容器を形成することができる。
上述された材料が例えば射出成形されたプリフォームが延伸されることによってプラスチックボトル、例えばPETボトル1を作製することができる。ただし、上述されたような特徴を有するようにPETボトル1が作製されるのであればその製造方法は特に限定されない。プリフォームは、上述された材料による単層の構成に限らず多層で構成されていても構わない。プリフォームは、多層の場合には、例えば中間層として、酸素バリア層や、水蒸気バリア層等を有していても良い。
図5は、本実施形態に係るプラスチックボトルを成形するためのプリフォーム6の一例が示された断面図である。プリフォーム6は、軸方向の一端側が開放された有底筒状であって、開放された側の口部10と、底の側の胴部60とを備える。プリフォーム6の軸方向の長さは例えば72.3 mmとされる。
口部10は、プリフォーム6から、プラスチックボトルにブロー成形された後にもその形状が変化しない。したがって、口部10は、上述されたPETボトル1と同様の構成を有している。すなわち、口部10は、軸方向の上端の内周側が開口11であるとともに、サポートリング12と、おねじ13と、カブラ14とを有している。
胴部60は、円筒状であって、ブロー成形の際に、ボトルの形状となるように膨らむ部分である。胴部60は、首部61、径縮小部62、胴中部63、及び底部64を軸方向に順次有している。
首部61は、口部10のサポートリング12の下面に連接されている。首部61は、その胴径、及び肉厚が軸方向の上下でほとんど変化しない略真円筒形状である。ただし、首部61には、射出成形によるプリフォーム6の作製の際に用いられる型からの取り出し、すなわち離型を容易にするための傾斜である抜き勾配が設けられていても良い。更に、首部61の胴径、及び肉厚が軸方向の上下でわずかに変化していても良い。首部61の軸方向の長さは例えば3.3 mmとされ、外径は例えば25.8 mmとされ、内径は例えば21.4 mmとされる。
径縮小部62は例えば、首部61の側から胴中部63の側に向かって径が縮小する逆円錐台状に構成されている。すなわち、径縮小部62の胴径は、軸方向の上端より下端において小とされている。これによって、首部61よりも軸方向の下側の断面積が小さくなり、プリフォーム6、及びブロー成形されるプラスチックボトルを軽量化することができる。更に、径縮小部62は、ブロー成形性を良好にする観点から、首部61の側から胴中部63の側に向かって厚みが増すように構成されていても良い。すなわち、径縮小部62の肉厚は、軸方向の上端より下端において大とされていても良い。径縮小部62の軸方向の長さは例えば11.2 mmとされる。
なお、径縮小部62は、その外径が、軸方向の上下でほとんど変化しないように構成されていても良い。すなわち、軸方向の上下において、首部61、径縮小部62、及び胴中部63の特に外径を略同寸に構成することもできる。
胴中部63は、その胴径、及び肉厚が軸方向の上下にほとんど変化しない略真円筒形状である。胴中部63の胴径は、首部61の胴径以下に構成されている。首部61と同様に胴中部63にも抜き勾配が設けられていても良く、その胴径、及び肉厚が軸方向の上下でわずかに変化していても良い。胴中部63の外径は例えば31.24 mm〜31.45 mmとされ、内径は例えば25.24 mm〜25.45 mmとされる。
首部61の胴径と、胴中部63の胴径との差が大になるほど胴中部63の内径が小になる。そして、首部61の胴径と、胴中部63の胴径との差が大きくなりすぎるとプリフォーム6の射出成形時に金型に過剰な圧力がかかり、その結果としてプリフォーム6に偏肉が生じると、ブロー成形の際に延伸に偏りが生じてPETボトル1の成形がうまくいかなくなってしまうおそれがある。したがって、首部61の胴径と、胴中部63の胴径D2との差が5 mm以下であっても良い。これによって、偏肉が小のプリフォーム6を用いることができ、結果として、より良好なブロー成形性を得ることができる。
一方で、胴中部63の外径が小のプリフォーム6が用いられると例えば鶴首状の首部20のブロー成形がより容易となる。
底部64は、プリフォーム6の外側(軸方向の下側)に向かって湾曲した略半球状に構成されている。なお、底部64は、円錐形状であったり、角に丸みを持った円柱形状であったり、その他の形状であっても良い。底部64には、プリフォーム6が射出成形によって作製される際の溶融樹脂の流入口(ゲート)において付随的に形成された固化した部分が付着している。図5には、その部分が切り取られた後の形態が示されている。
なお、サポートリング12の下面から底部64の下端までの距離である胴部60の長さH2は10 mm以上、120 mm以下であることが好ましい。更に、胴中部63の胴径D2は10 mm以上、40 mm以下であることが好ましい。
次に、本実施形態に係るプラスチックボトルをプリフォーム6からブロー成形する方法の一例を詳細に説明する。プラスチックボトルがプリフォーム6からブロー成形される際にはまず、プリフォーム6の加熱が行われる。図6は、プリフォーム6の加熱装置70の一例が示された断面図である。図6は、プリフォーム6の搬送方向に対して垂直方向の断面を示している。
加熱装置70は、搬送装置71と、ヒータ72とを備えている。搬送装置71は、プリフォーム6の胴部60を周方向に均等に加熱するために、プリフォーム6の軸を中心に回転させながら搬送するように構成されている。ヒータ72は、複数の例えばハロゲンランプによって構成され、ブロー成形に適した温度、例えば80 ℃〜140 ℃に胴部60を加熱するように構成されている。更に、加熱装置70は、ヒータ72からの熱を胴部60に反射させるための反射板73や、ヒータ72からの熱を加熱装置70の外方へ逃がさないようにするための遮蔽部材74等を備えていても良い。なお、図6の加熱装置70では、プリフォーム6は口部10が下側を向いた状態で搬送されながら加熱されている。
ここで、図6等に例示の径縮小部62は、首部61の側から胴中部63の側に向かって径が縮小している。このような径が縮小している部分は、ヒータ72との位置関係がより遠くなるので、径が縮小していない部分より温まりにくく、ブロー成形によって延伸されにくい。一方で、径縮小部62は、口部10の側から胴中部63の側に向かって肉厚が増している。厚肉の部分は、プリフォーム6の熱容量がより大きくなるため、ヒータ72によってより温まりにくくなる半面で、いったん温まると冷めにくくなる。したがって、径縮小部62の内で、胴中部63の側はブロー成形によって延伸されやすい。このように、図6等に例示のプリフォーム6は、延伸の度合いがその位置によって大きく変化する径縮小部62において樹脂がより効率的に延伸される設計となっている。
加熱されたプリフォーム6は次に、ブロー成形機によって、プラスチックボトル、例えばPETボトル1に成形される。図7は、プリフォーム6と、ブロー成形後のPETボトル1とが模式的に示された断面図である。ブロー成形機の一例としての二軸延伸ブロー成形装置80は、金型81と、延伸ロッド82と、図示せぬ高圧エア供給装置と、これらを制御する図示せぬ制御装置とを備えている。図7には、下向きのブロー成形方法が例示されているものの、材料が重力の影響を受けにくい上向きのブロー成形方法が用いられても良い。
ここで、ブロー成形の前後においておおよそ、プリフォーム6の径縮小部62がPETボトル1の例えば鶴首状の首部20に対応し、プリフォーム6の胴中部63がPETボトル1の胴部30に対応し、プリフォーム6の底部64がPETボトル1の底部50に対応する。
金型81は、形成されるPETボトル1に対応した形状を有して例えば、胴部30に対応して半割りで構成される胴金型81aと、底部50に対応した底金型81bとを有する。金型81の表面の温度は、PETボトル1の用途、特に耐熱性に応じて例えば30 ℃〜130 ℃に制御されるように構成されている。
金型81には粗面加工が施されていても良い。これによって、ブロー成形されたPETボトル1の金型81からの剥離特性を向上させることができるとともに、PETボトル1を平滑面とは異なる触感へと加工することができる。更に、粗面となったPETボトル1の表面で透過光を拡散させることができ、透明度の高い容器とは異なる意匠性を付与することができる。
延伸ロッド82は金型81内を伸縮自在に構成される。そして、延伸ロッド82は、金型81に口部10の取り付けられたプリフォーム6の胴部60を縦(軸)方向に延伸するように構成される。胴部60が縦方向に延伸される際に延伸ロッド82の外周面が当たらない範囲までプリフォーム6の特に胴中部63の内径を細くすることができる。
高圧エア供給装置からは、温度調節された高圧エアhが吹き出されるように構成される。高圧エアhは、金型81に取り付けられたプリフォーム6の内部に供給されれば良く、延伸ロッド82から吹き出されても良く、延伸ロッド82とは別の部材から吹き出されても構わない。高圧エアhは、プリフォーム6の胴部60を横(径)方向に延伸するとともに、延伸の後に、胴部60の表面温度を下げるように構成されている。
図6、及び図7に例示されたプラスチックボトルの製造方法は、加熱されたプリフォーム6を金型81に装着する工程と、延伸ロッド82で、プリフォーム6の胴部60を軸方向に伸ばす縦延伸工程と、空気を注入してプリフォーム6の胴部60を径方向に膨張させる横延伸工程とを有する。
プリフォーム6が、金型81に装着される際にはサポートリング12を支えとして口部10が動かないようにされる。その後には、プリフォーム6の胴部60が延伸ロッド82によって縦方向に延伸される。この際のプリフォーム6からPETボトル1への縦延伸倍率は1.8倍以上、4.0倍以下であることが好ましい。
ここで、縦延伸倍率とは、プリフォーム6の胴部60の長さH2に対するPETボトル1のサポートリング12の下面から底部50の下端までの長さH1の比(H1/H2)である。非晶部と、結晶部との集合体であるアモルファス構造を有するプリフォーム6の分子は延伸によって配向結晶化がおこり、その結果として、PETボトル1の強度や、剛性、耐熱性等が上がる。縦延伸倍率が1.8未満の場合にはPETボトル1(プリフォーム6)の分子の配向性が上がらず、一方で、縦延伸倍率が4.0より大の場合にはPETボトル1が成形しにくくなる。
更に、縦方向に延伸されたプリフォーム6の胴部60が高圧エアhによって横方向に、金型81に当たるまで延伸される。この際のプリフォーム6からPETボトル1への横延伸倍率は1.5倍以上、6.0倍以下であることが好ましい。
ここで、横延伸倍率とは、プリフォーム6の胴中部63における胴径D2に対するPETボトル1の胴部30における最大胴径D1の比(D1/D2)である。ここでは、上述されたように、胴部30の対向する壁面が最も離れた位置、この場合では柱32における径が胴部30の最大胴径D1とされる。プリフォーム6の分子は横方向の延伸によっても同様に配向結晶化がおこり、その結果として、PETボトル1の強度や、剛性、耐熱性等が上がる。横延伸倍率が1.5未満の場合にはPETボトル1(プリフォーム6)の分子の配向性が上がらず、一方で、横延伸倍率が6.0より大の場合にはPETボトル1が成形しにくくなる。
このように、二軸延伸ブロー成形装置80による成形が、縦方向の延伸倍率が1.8倍以上、4.0倍以下、横方向の延伸倍率が1.5倍以上、6.0倍以下の二軸延伸ブロー成形である構成によれば、プリフォーム6からより良好なブロー成形性でPETボトル1を成形することができる。
例えば鶴首状の首部20を有する本実施形態に係るプラスチックボトルの製造方法では、縦延伸工程で、プリフォーム6、特に径縮小部62の胴径が縮小するまでプリフォーム6を軸方向に伸ばしてから横延伸工程に進むと良い。このような縦延伸工程によって、特に、径縮小部62から金型81までの隙間をより大きくすることができる。これによって、縦延伸工程において、径縮小部62等が金型81と接触しにくくなる。そして、プリフォーム6の形状によらずに、例えば鶴首状の首部20を良好に形成することができる。
ここで、図5や図7に例示される径縮小部62の最小の胴径は胴中部63の胴径D2と略等しい。このような構成の場合において縦延伸工程で、径縮小部62の最小の胴径に当たる胴中部63の胴径D2が65 %〜95 %に縮小するまでプリフォーム6を伸ばしてから横延伸工程に進むと、より良好なブロー成形性を得ることができる。
更に、別の基準として縦延伸工程で、径縮小部62の最小の胴径に当たる胴中部63の胴径D2が、ブロー成形品であるPETボトル1の例えば鶴首状の首部20の外径に対して55 %〜95 %に縮小するまでプリフォーム6を伸ばしてから横延伸工程に進むと、より良好なブロー成形性を得ることができる。
PETボトル1と、充填される液体と、蓋とによって充填体が構成される。充填体は、PETボトル1の口部10から飲料や調味料等の液体が充填され、口部10に装着される図示せぬ蓋によって密封されることによって製造される。
蓋は、中身を受ける器を兼ねて構成されていても良い。更に、充填体は、蓋の上から覆う別体の器を備えていても良い。これらの器は、例えばワインや、清涼飲料水を飲むためのグラス状のコップであっても良く、日本酒や焼酎を飲むための杯であっても良く、しょうゆ差し等の卓上調味料の中身を入れるための手塩皿であっても良く、濃縮液の体積を量るための計量カップであっても良い。
PETボトル1には、中身の情報や、意匠性を高めるための模様等が印刷されたシュリンクラベルや、ロールラベル、ストレッチラベル、タックラベル等のラベルが包装されても良い。ラベルは、胴部30や、口部10、首部20等、PETボトル1の一部を覆うものであっても良く、PETボトル1の全体を覆うフルシュリンクラベルであっても良い。加熱収縮によって装着されるシュリンクラベルには熱収縮性の良い二軸延伸ポリスチレンフィルム等が用いられれば良い。巻き付けられたラベルの重ね合わせ部が接着剤によって貼り合わせられるロールラベルにはポリプロピレンフィルム等が用いられれば良い。更に、これらのラベルには、再生延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが用いられても良い。
PETボトル1は、充填される高温の液体に対する耐熱性を有している。したがって、充填体の製造にはPETボトル1に、高温に熱して滅菌した中身を詰めてPETボトル1と蓋との殺菌を行う高温充填、いわゆるホット充填を用いることができる。
PETボトル1は、内圧の変化、特に陰圧を吸収する機能に優れる。ここで、より具体的に、充填時における高温の液体の温度は55 ℃以上、90 ℃未満である。一方で、冷却後における中身の温度は、0 ℃以上、30 ℃以下である。PETボトル1は、このような温度変化に伴う内圧の減少、すなわち陰圧を充分に吸収する機能を有する。
一方で、充填体の製造には、高温短時間で殺菌した中身をすぐに冷却して常温で、PETボトル1に詰める無菌充填、いわゆるアセプティック充填が用いられても良い。
本実施形態に係る充填体の圧力減少量は1 kPa以上、40 kPa以下である。特に、20 kPa〜40 kPaのような大きな圧力減少量を充填体の内部に有していてもいびつな変形が生じないようにPETボトル1が構成されている。充填体の圧力変化量は、圧力計、例えば隔膜(ダイアフラム)式圧力計によって測定される。圧力変化量の測定は、圧力計が備える検出器と連通する穿孔針を充填体のヘッドスペースに差し込んで行われれば良い。
次に、PETボトル1の作用を詳細に説明する。上述されたように、PETボトル1には、ホット充填によって、中身として、例えば70 ℃の飲料が非結晶の口部10から詰められた後に、蓋が取り付けられることによってPETボトル1が密封される。このようにして製造された充填体は、冷却部としてのパストライザが散布する水の温度を段階的に下げていくことによって最終的に低温、例えば30 ℃になるまで冷却される。
充填体が冷却されることによって、飲料、及び飲料の上部に封入されている気体も冷却され、それぞれの体積が減少する。これによって、密封されたPETボトル1の内部は陰圧化(減圧)される。内部が陰圧化されることによってPETボトル1の各部が内側に向かって引っ張られる。
しかしながら、パネル31は陰圧に追従して変形して内容積を変化させることによって効果的に、圧吸収を行う。一方で、剛性を有する柱32は、骨格となって、胴部30の構造を保持する。更に、PETボトル1は、パネル41、及びパネル46を含んでおり、これらは、効果的に、圧吸収を補助する。したがって、PETボトル1は、冷却されて、その内部が陰圧化されたとしても、肩部25や胴部30、底部50がへこむ等といったようにいびつに変形することがなく、良好な外観と、持ちやすさとを維持することができる。
以上のように、PETボトル1は、胴部30は、PETボトル1の軸方向に延びる滑面で構成されるパネル31と、パネル31と隣接して軸方向に延びる柱32とを有し、パネル31と、柱32とが、PETボトル1の周方向に交互に繰り返される多面構造である。このような構成によれば、丸ボトルの外形が維持されながら軽量化が図られ、かつ座屈強度、及び減圧強度が高められたPETボトル1を提供することができる。
更に、充填体は、PETボトル1と、充填される液体と、蓋とによって構成される。このような構成によれば、丸ボトルの外形が維持されながら軽量化が図られ、かつ座屈強度、及び減圧強度が高められた充填体を提供することができる。
本実施形態に係るPETボトル1、及び充填体は、ごつごつした圧力吸収パネルを有さないワインボトルに似た形状でありながら内圧の減少による変形が抑えられ、意匠性と、機能性とが両立している。
なお、本実施形態に係るプラスチックボトル、及び充填体は、胴部30は、パネル31と、柱32とが、PETボトル1の周方向に交互に繰り返される多面構造である構成であればその他の構成が異なっていても良い。
以下に、実施例を示して、本開示を更に詳細、かつ具体的に説明する。しかしながら、本開示は、以下の実施例に限定されるものではない。
<材料、及び製造方法>
[実施例1]
ポリエチレンテレフタレート製で非結晶で透明の口部10を有する23gのプリフォーム6が用いられた。そして、図1等に示される本実施形態に係る満注容量が350 mlのPETボトル1と、70 ℃で充填された330 mlの水とによって構成され、パストライザによって30 ℃まで冷却されて充填体が作製された。実施例1に係るPETボトル1は、胴部30は、パネル31と、柱32とが、PETボトル1の周方向に交互に繰り返される多面構造である等といった本実施形態に係る特徴を有していた。
[比較例1]
比較例1では、図8に示されるPETボトル100が用いられた以外は実施例1と同様であった。PETボトル100は、PETボトル1のパネル31、及び柱32に相当する構成を有しておらず、胴部130が単純な円筒状の周面131によって構成されている。更に、PETボトル100は、上側連接部140、及び下側連接部145に、PETボトル1のパネル41、及びパネル46、並びに柱42、及び柱47に相当する構成を有していない。したがって、比較例1に係る充填体は、本実施形態に係る特徴を有していなかった。
[比較例2]
比較例2では、28 gのPETボトル100が用いられた以外は比較例1と同様であった。したがって、比較例2に係る充填体は、本実施形態に係る特徴を有していなかった。
<評価方法>
(軽量性)
実施例1のPETボトル1、比較例1のPETボトル100、及び比較例2のPETボトル100の重量によって軽量化が達成できているか否かが判定された。軽量化の判定には、25 g以上か、未満かが閾値として設定された。表1には、各PETボトルにおける軽量性の評価の結果が示され、○:軽量性あり、×:軽量性なし、で表記されている。
(座屈強度試験)
実施例1、比較例1、及び比較例2の各充填体の正立した状態での座屈強度試験が行われた。座屈強度の測定には、AGR社製のテスター、TOP LOADが用いられた。口部10の上から一定速度で荷重が加えられ、いわゆる降伏の状態となる最大荷重が座屈強度とされた。座屈強度の判定には、250 N以上か、未満かが閾値として設定された。表1には、各充填体における座屈強度の評価の結果が示され、○:座屈強度あり、×:座屈強度不足、で表記されている。
(耐減圧性能試験)
実施例1のPETボトル1、比較例1のPETボトル100、及び比較例2のPETボトル100が用いられ、空寸(ヘッドスペース)が20 mlとなるまで、上述された充填体とは異なる温度の85 ℃で水が充填されることによって別の充填体が作製された。それぞれの充填体はパストライザによって30 ℃まで冷却された。耐減圧性能は、容器のいびつな変形の有無が目視によって判定された。表1には、各充填体における耐減圧性能の評価の結果が示され、○:耐減圧性能あり、×:耐減圧性能不足、で表記されている。
(モニタリング調査)
実施例1のPETボトル1、比較例1のPETボトル100、及び比較例2のPETボトル100が用いられ、空寸(ヘッドスペース)が20 mlとなるまで、上述された充填体とは異なる温度の60 ℃で水が充填されることによって更に別の充填体が作製された。それぞれの充填体はパストライザによって30 ℃まで冷却された。20代〜70代の100人のモニタに、各充填体を観察していただき、ガラス瓶のワインボトルと類似しているか否かを判定していただいた。各充填体について、類似しているものが1点、似ていないものが0点として集計された。表1には、合計点数が表記されている。
(総合評価)
上述された軽量性、座屈強度試験、耐減圧性能試験、及びモニタリング調査に基づいて、実施例1のPETボトル1、並びに比較例1、及び比較例2のPETボトル100のそれぞれ(各充填体)の総合評価がなされた。表1には、総合評価の結果が示されている。総合評価は、○:良好、×:適性なし、で表記されている。
上述された実施例から以下の点が導き出された。表1に示されたように実施例1では、軽量性を有しながら、座屈強度を充分に有し、かつ耐減圧性能に優れていた。そして、多くのモニタから、陰圧の状態においてもワインボトルとの類似性が保たれていたことが支持された。一方で、比較例1では、軽量性を有していたものの、座屈強度、及び耐減圧性能が不足した。更に、比較例1は、胴部130の耐減圧性能が低いため陰圧の状態では変形が生じ、ワインボトルと似ているとは判定されなかった。比較例2では、座屈強度を充分に有していたものの、それ以外の軽量性、及び耐減圧性能が不足した。更に、比較例2の充填体も、胴部130の耐減圧性能が低いため陰圧の状態では変形が生じ、ワインボトルと似ているとは判定されない場合があった。
以上の実施例の結果から、本実施形態に係るPETボトル1、及び充填体では、上下方向からの荷重に充分に耐え、陰圧の変化を吸収して変形が充分に抑えられ、高い意匠性が保持されることが示された。更に、本実施形態に係るPETボトル1、及び充填体は持ちやすさも優れていた。したがって、本実施形態では、高い意匠性を有しながら軽量化が図られ、かつ座屈強度、及び減圧強度が高められたPETボトル1、及び充填体を提供することができることが示された。