以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施形態の詳細を説明する。まず、本実施形態に係るプラスチックボトルの構成を詳細に説明する。図1は、本実施形態に係るプラスチックボトルの一例としてのPETボトル1が示された正面図であり、図2はPETボトル1の側面図である。PETボトル1は、口部10と、肩部20と、胴部30と、底部40とを有する。なお、以下では、説明の便宜上、PETボトル1の軸方向が上下に延びるように正立された図1や図2の状態において容器内への中身の充填が行われる口部10を上とする。
口部10は、いわゆる結晶化装置での加熱によって白く着色されるまで結晶化されたものではなく、透明であることが、PETボトル1の製造工程の合理化、及び高速化の観点から好ましい。
肩部20は、その上側が口部10に連なり、一方で、その下側が胴部30に連なる。肩部20は、上方から下方に向かって拡径する略円錐台筒状の形状を有する。肩部20は、PETボトル1の外側に湾曲していることが、PETボトル1の側壁強度を高めることや、容量を増やせる点で好ましい。ただし、口部10が把持されてPETボトル1が搬送される場合に肩部20が干渉するおそれがあることや、ブロー成形によってPETボトル1が形成される際の賦形性が良好でなくなることから、肩部20は、極度に外方、特に上方に湾曲することは好ましくない。
図3はPETボトル1の平面図である。ここで、図3を参照すると肩部20には、平面視で虹彩絞り状のリブ22がPETボトル1の外側に突出して形成されている。リブ22は、PETボトル1の軸方向の荷重に対して支柱の機能を有する。そして、リブ22は、虹彩絞り状に構成されることによって、PETボトル1の軸方向の荷重を周方向へと分散させることができる。したがって、虹彩絞り状のリブ22は、PETボトル1の座屈強度を高めることができる。
隣り合うリブ22,22の間には、略四角形の絞り羽根状パネル23が形成されている。絞り羽根状パネル23は、PETボトル1の内外、特に内側に変形可能に構成される。したがって、絞り羽根状パネル23は、PETボトル1の内圧の変化、特に減圧に追従して変形することによって圧吸収を行う機能を有する。一方で、PETボトル1の内圧が変化した際にもリブ22を骨格として肩部20の構造自体は保持される。図1等に例示されるように、絞り羽根状パネル23の胴部30の側における辺は下側に湾曲した円弧状に形成されている。絞り羽根状パネル23は、このように構成されることによって、PETボトル1の軸方向の荷重を円弧状の下側の辺によって吸収することができる。したがって、絞り羽根状パネル23は、肩部20の座屈強度を高めることができる。
このように構成される肩部20は、軽量性と、外力に対する高い強度とを併有し、かつ内部における陽圧、及び陰圧のいずれも吸収していびつな変形を抑えることができる。そして、例えば、PETボトル1が特に陰圧の状態において、倒れたり、PETボトル1に外部から何かが当たったりして肩部20に大きな力が加わったとしても肩部20が凹むことを防止することができる。
胴部30はその一部に、胴径の絞られたくびれ部50を有する。くびれ部50は、PETボトル1の持ちやすさを向上させることができる。更に、胴部30は、くびれ部50を挟んで軸方向の両側に胴径が最大の円筒部をそれぞれ有していることが好ましい。これによって、PETボトル1を横向きにしても、胴径が最大の円筒部のそれぞれが接地部位となり、安定して置くことができ、例えば、横向きに積載する自動販売機にも適用することができる。図1等に例示される胴部30は、肩部20に連なる上側円筒部60と、上側円筒部60に、上側連接部80を介して連なるくびれ部50と、くびれ部50に、下側連接部85を介して連なる下側円筒部70とを備えている。そして、胴部30には、上側円筒部60と、下側円筒部70とが最大胴径D1の円筒部として形成されている。
くびれ部50は、環状の周溝51と、周溝51を基準に軸方向の両側に圧吸収部52とを有する。くびれ部50は、軸方向の長さH2を有して形成されている。くびれ部50は、軸方向の長さH2が短すぎると、圧吸収部52の領域を充分に確保することができず、軸方向の長さH2が長すぎると、PETボトル1の強度を確保することが難しくなる。くびれ部50は、底部40から口部10までのPETボトル1の全高H1に対するくびれ部50の軸方向の長さH2の比(H2/H1)が0.2以上、0.6以下であることが好ましい。
周溝51は、PETボトル1の径方向内側に向かってくぼみ、水平方向の断面形状が円形であり、鉛直方向の断面形状が、平らな底面を有する略U字状である。周溝51は、くびれ部50の座屈強度を高めることができる。周溝51は、鉛直方向の断面形状が略円弧状であっても良く、高温の中身が充填された状態でPETボトル1がつられたとしても軸方向に伸びるように変形することが防止される。
周溝51は、胴径が最小の位置に形成されると、上下、及び水平のいずれからの荷重に対しても優れた強度を発揮する均整のとれた形状となって良い。そして、図1等に例示される周溝51は、胴径が最小の位置から更に径方向内側にくぼんで最小胴径D2となるように形成されている。このように、周溝51が最小胴径D2であると、PETボトル1の軸方向の荷重に対する応力が周溝51に集中する。その際に、周溝51が変形することでその応力を分散させることで、PETボトル1の特定の箇所が屈曲点となって座屈変形することが防止される。したがって、最小胴径D2の周溝51はPETボトル1の座屈強度を高めることができる。
上側円筒部60、及び下側円筒部70の最大胴径D1に対する周溝51の最小胴径D2の比(D2/D1)は、0.55以上、0.95以下であることが好ましく、0.6以上、0.7以下であることがより好ましい。このような構成とされることで、PETボトル1の軸方向の荷重に対する応力が胴部30の最小径である周溝51に集中し、PETボトル1の座屈強度を効果的に高めることができる。なお、(D2/D1)が0.95より大であると、PETボトル1の軸方向の荷重に対する応力が周溝51に集中せず、他の箇所例えば圧吸収部52に負荷がかかってしまう。一方で、(D2/D1)が0.55未満であると、PETボトル1の軸方向の荷重に対する応力が周溝51に集中しすぎてしまい、充分な座屈強度が得られない。
周溝51の深さが浅すぎると、PETボトル1の軸方向の荷重に対して応力が分散されにくくなり、PETボトル1が座屈変形しやすくなる。一方で、周溝51の深さが深すぎると、PETボトル1の成形時の賦形性が低下する。そして、最小胴径D2に対する周溝51の深さの比は、0.005以上、0.07以下であることが好ましく、0.03であることがより好ましい。
更に、周溝51の幅が広すぎても、PETボトル1の軸方向の荷重に対して応力が分散されにくくなり、PETボトル1が座屈変形しやすくなる。一方で、周溝51の幅が狭すぎても、PETボトル1の成形時の賦形性が低下する。そして、周溝51の深さに対する周溝51の幅の比は、0.5以上、5.0以下であることが好ましい。
圧吸収部52は、周溝51を基準に、軸方向の一側、すなわち上側の上側圧吸収部53と、軸方向の他側、すなわち下側の下側圧吸収部54とを有する。図1等に例示される上側圧吸収部53は周溝51から上側に向かって胴径が漸増し、下側圧吸収部54は、周溝51から下側に向かって胴径が漸増している。上側圧吸収部53、及び下側圧吸収部54は双方とも、PETボトル1の内部における陽圧、及び陰圧のいずれも吸収してPETボトル1のいびつな変形を抑える機能を有する。下側圧吸収部54の面積を単に拡大する構成では強度、特に座屈強度が低下してしまう。これに対し、PETボトル1は、下側圧吸収部54だけでなく上側圧吸収部53を更に有することで圧吸収部52の面積が拡大され、丸ボトルでは不足しがちな座屈強度を充分に確保しながら内圧の変化をより吸収するように構成される。
上側圧吸収部53は、平板(パネル)状の四角形パネル55aが周方向に複数連なって筒状に構成される。そして、四角形パネル55aは各々が、PETボトル1の内圧の変化に対応してPETボトル1の内外に変形するように構成される。図1等に例示される上側圧吸収部53は5個の四角形パネル55aを有している。したがって、上側圧吸収部53の水平方向の断面形状は略五角形を呈している。なお、隣り合う四角形パネル55a,55aの間には、面取りのなされた略平行四辺形の面取り部56aが形成されている。そして、四角形パネル55aは正面視で、上辺57aと、下辺58aと、左右の稜線59a,59aとによって区画された略平行四辺形になされている。
上辺57aは、図1等に例示されるように、上側に向かって円弧状に湾曲し、上側連接部80に接していることが好ましい。特に、上辺57aが、上側連接部80の溝底部と接する構成であると良い。上辺57aと、上側連接部80とが接することで上側連接部80にかかる荷重が上辺57aに分散され、上側連接部80への過度な応力の集中が防止される。更に、上側に向かって円弧状に湾曲した上辺57aは、PETボトル1の軸方向の荷重を吸収し、座屈強度を高めることができる。
下辺58aも、上辺57aと、略上下対称で同様である。すなわち、下辺58aは、図1等に例示されるように、下側に向かって円弧状に湾曲し、周溝51に接していることが好ましい。特に、下辺58aが、周溝51の溝底部と接する構成であると良い。下辺58aと、周溝51とが接することで周溝51にかかる荷重が下辺58aに分散され、周溝51への過度な応力の集中が防止される。更に、下側に向かって円弧状に湾曲した下辺58aは、PETボトル1の軸方向の荷重を吸収し、座屈強度を高めることができる。
稜線59aは、PETボトル1の周方向で隣り合う四角形パネル55aと面取り部56aとの境界線である。稜線59aは、最大胴径D1の箇所と、最小胴径D2の箇所との間に延びる。稜線59aは、PETボトル1の軸方向の荷重に対する支柱としての機能を有する。稜線59aは、鉛直線Lに対して角度θaの傾きを有していることが好ましい。稜線59aが傾きを有していることで、PETボトル1の軸方向の荷重が周方向に分散され、座屈強度を高めることができる。角度θaが大きすぎると、稜線59aの支柱としての機能が薄れる。したがって、角度θaは、0°以上、60°以下であることが好ましく、30°以上、40°以下であることがより好ましい。
なお、図示は省略されるものの、面取り部56aを有さず、周方向で隣り合う四角形パネル55a,55aが直接つながるように上側圧吸収部53を構成することもできる。この場合には、隣り合う四角形パネル55a,55aを区切る境界線が稜線59aと同様の構成とされれば良い。
しかしながら、上側圧吸収部53は面取り部56aを有することが好ましい。周方向に幅を有する面取り部56aによって、PETボトル1の上下方向から稜線59aにかかる荷重が分散され、稜線59aへの応力の過度な集中が防止され、座屈強度を高めることができる。
なお、面取り部56aは、平坦な面ではなく、PETボトル1の径方向外側に向かって湾曲するように丸みが加工されたいわゆるR面取りの形状とされていても良い。外側に向かって湾曲する面は、PETボトル1の径方向内側への変形量を大とすることができる。したがって、外側に向かって湾曲する面取り部56aは、PETボトル1の内部が特に減圧された際に、内側へと変形して内容積を変化させることで内圧の変化を吸収し、PETボトル1がいびつに変形することを防止する機能の一端を担う。
下側圧吸収部54は、上述された上側圧吸収部53と類似した構成を有する。すなわち、下側圧吸収部54は、平板状の四角形パネル55bが周方向に複数連なって筒状に構成される。そして、四角形パネル55bも各々が、PETボトル1の内圧の変化に対応してPETボトル1の内外に変形するように構成される。
図1等に例示される下側圧吸収部54は5個の四角形パネル55bを有している。したがって、下側圧吸収部54の水平方向の断面形状も略五角形を呈している。なお、隣り合う四角形パネル55b,55bの間には、面取りのなされた略平行四辺形の面取り部56bが形成されている。そして、四角形パネル55bは正面視で、上辺57bと、下辺58bと、左右の稜線59b,59bとによって区画された略平行四辺形になされている。ただし、上側圧吸収部53が横長の四角形パネル55aであるのに対し、下側圧吸収部54は縦長の四角形パネル55bによって構成されている。
上辺57bは、図1等に例示されるように、上側に向かって円弧状に湾曲し、周溝51に接していることが好ましい。特に、上辺57bが、周溝51の溝底部と接する構成であると良い。上辺57bと、周溝51とが接することで周溝51にかかる荷重が上辺57bに分散され、周溝51への過度な応力の集中が防止される。更に、上側に向かって円弧状に湾曲した上辺57bは、PETボトル1の軸方向の荷重を吸収し、座屈強度を高めることができる。
下辺58bも、上辺57bと、略上下対称で同様である。すなわち、下辺58bは、図1等に例示されるように、下側に向かって円弧状に湾曲し、下側連接部85に接していることが好ましい。特に、下辺58bが、下側連接部85の溝底部と接する構成であると良い。下辺58bと、下側連接部85とが接することで下側連接部85にかかる荷重が下辺58bに分散され、下側連接部85への過度な応力の集中が防止される。更に、下側に向かって円弧状に湾曲した下辺58bは、PETボトル1の軸方向の荷重を吸収し、座屈強度を高めることができる。
稜線59bは、PETボトル1の周方向で隣り合う四角形パネル55bと面取り部56bとの境界線である。稜線59bは、最小胴径D2の箇所と、最大胴径D1の箇所との間に延びる。稜線59bは、PETボトル1の軸方向の荷重に対する支柱としての機能を有する。稜線59bは、鉛直線Lに対して角度θbの傾きを有していることが好ましい。稜線59bが傾きを有していることで、PETボトル1の軸方向の荷重が周方向に分散され、座屈強度を高めることができる。角度θbが大きすぎると、稜線59bの支柱としての機能が薄れる。したがって、角度θbは、0°以上、60°以下であることが好ましく、30°以上、40°以下であることがより好ましい。
なお、稜線59aの傾きの角度θaと、稜線59bの傾きの角度θbとは同じであっても良いものの、異なっていると、PETボトル1のいびつな変形がより生じにくくなることからより好ましい。
図1等に例示のPETボトル1では、稜線59aの1本と、稜線59bの1本とが対をなしている。すなわち、対をなす稜線59aと、稜線59bとは連続する1本の線のように配置され、その稜線59aの下端と、その稜線59bの上端とが周方向で略同じ位置とされている。このように、稜線59aと、稜線59bとが対をなすことによって、周溝51に生じた応力を軸方向の両側にバランス良く分散することができる。更に、稜線59aと、稜線59bとが対をなす構成によって高い意匠性を有するPETボトル1を提供することができる。
なお、図示は省略されるものの、面取り部56bを有さず、周方向で隣り合う四角形パネル55b,55bが直接つながるように下側圧吸収部54を構成することもできる。この場合には、隣り合う四角形パネル55b,55bの境界線が稜線59bと同様の構成とされれば良い。
しかしながら、下側圧吸収部54は面取り部56bを有することが好ましい。周方向に幅を有する面取り部56bによって、PETボトル1の上下方向から稜線59bにかかる荷重が分散され、稜線59bへの応力の過度な集中が防止され、座屈強度を高めることができる。
なお、面取り部56bも、平坦な面ではなく、PETボトル1の径方向外側に向かって湾曲するように丸みが加工されたいわゆるR面取りの形状とされていても良い。外側に向かって湾曲する面は、PETボトル1の径方向内側への変形量を大とすることができる。したがって、外側に向かって湾曲する面取り部56bは、PETボトル1の内部が特に減圧された際に、内側へと変形して内容積を変化させることで圧力変化を吸収し、PETボトル1がいびつに変形することを防止する機能の一端を担う。
上述されたように、四角形パネル55a、及び四角形パネル55bは、PETボトル1の内外に変形可能に構成される。したがって、四角形パネル55a、及び四角形パネル55bは、PETボトル1の内圧の変化に追従して変形することによって圧吸収を行う機能を有する。一方で、PETボトル1の内圧が変化した際にも、上辺57a、下辺58a、及び左右の稜線59a,59aを骨格として上側圧吸収部53の構造自体は保持され、上辺57b、下辺58b、及び左右の稜線59b,59bを骨格として下側圧吸収部54の構造自体は保持される。
PETボトル1の内部では、中身の充填時の急激な温度変化、中身の充填時とPETボトル1の保管時との温度差、水分蒸発や酸化といった中身の状態の変化等に伴って圧力変化が生じる。そして、軽量化されたPETボトル1は、その肉厚が薄くなるため、内圧の変化の影響を受けて変形しやすくなる。PETボトル1の内外に変形可能に構成される四角形パネル55a、及び四角形パネル55bは、内圧が高まると、PETボトル1の外側に向かって押され、内圧が低まると、PETボトル1の内側に向かって押される。したがって、四角形パネル55a、及び四角形パネル55bは、PETボトル1の内圧が変化した際に、内外へと変形して内容積を変化させることで内圧の変化を吸収し、PETボトル1がいびつに変形することを防止する機能を有する。
四角形パネル55aや、四角形パネル55bは、各々の面積が小さすぎると変形しにくくなってPETボトル1の内圧の変化を吸収しにくくなる。一方で、四角形パネル55a、及び四角形パネル55bの各々の面積が大きすぎると、上側圧吸収部53、及び下側圧吸収部54それぞれの座屈強度、及び側壁強度が低下し、PETボトル1の剛性が充分でなくなる。更に、四角形パネル55a、及び四角形パネル55bの各々の面積が大きすぎると、よじれが生じるようになり、PETボトル1の変形がかえって大きくなってしまう。
ここで、四角形パネル55aの上辺57aと、下辺58aとの間の距離を上側四角形パネルの軸方向の長さHPa、四角形パネル55bの上辺57bと、下辺58bとの間の距離を下側四角形パネルの軸方向の長さHPbとそれぞれ定義する。そして、底部40の底壁42から口部10までのPETボトル1の全高H1に対する上側四角形パネルの軸方向の長さHPa、及び下側四角形パネルの軸方向の長さHPbの比が双方とも0.06以上、0.35以下であることが好ましい。
上側四角形パネルの軸方向の長さHPaと、下側四角形パネルの軸方向の長さHPbとは同じとされても構わない。しかしながら、一方側例えば、下側四角形パネルの軸方向の長さHPbが可及的に大とされ、上側四角形パネルの軸方向の長さHPaが可及的に小とされることが、内圧の変化の吸収量を高めながらPETボトル1の強度を保持することができて好ましい。ここで、下側四角形パネルの軸方向の長さHPbが可及的に大とは、仮に、上側の四角形パネル55aを有さない構成において、下側の四角形パネル55bが、強度を有しながら内圧の変化を最も吸収するような長さが目安とされる。一方で、上側四角形パネルの軸方向の長さHPaが可及的に小とは、上側の四角形パネル55aが少なくとも、内圧の変化を吸収するような長さが目安とされる。
なお、PETボトル1は、下側四角形パネルの軸方向の長さHPbが、上側四角形パネルの軸方向の長さHPaよりも小とされるように構成されていても良い。
一方で、四角形パネル55aの稜線59a,59a間の距離を上側四角形パネルの周方向の幅WPa、四角形パネル55bの稜線59b,59b間の距離を下側四角形パネルの周方向の幅WPbとそれぞれ定義する。そして、最大胴径D1に対する上側四角形パネルの周方向の幅WPa、及び下側四角形パネルの周方向の幅WPbの比が双方とも0.2以上、0.8以下であることが好ましい。
なお、四角形パネル55a、及び55bの軸方向の長さHPa、及びHPbと、周方向の幅WPa、及びWPbとの縦横比は、均一に減圧できることから、例えば、長方形であれば、正方形により近い方が好ましく、平行四辺形であれば、ひし形により近い方が好ましい。
上側圧吸収部53を構成する四角形パネル55a、及び下側圧吸収部54を構成する四角形パネル55bはいずれも、その個数が多くなりすぎると、個々の四角形パネル55a、及び四角形パネル55bの面積が過度に小さくなる。そして、小さすぎる四角形パネル55a、及び四角形パネル55bはPETボトル1の内外に変形しにくくなることからPETボトル1の内圧の変化を吸収しにくくなる。
一方で、四角形パネル55a、及び四角形パネル55bの個数が少ないほど、上辺57a及び下辺58a、並びに上辺57b及び下辺58bの個々にかかる軸方向の荷重が大きくなるとともに各辺の一端から他端までの距離が長くなる。そして、四角形パネル55a、及び四角形パネル55bのいずれもその個数が少なすぎると、各辺が、PETボトル1の軸方向の荷重を充分に吸収することができなくなって屈曲点となり、PETボトル1は座屈変形しやすくなる。
上側圧吸収部53を構成する四角形パネル55a、及び下側圧吸収部54を構成する四角形パネル55bのそれぞれの個数は、3つ以上、9つ以下であることが好ましく、5つ以上、7つ以下であることがより好ましく、中でも、奇数個であることが更に好ましい。四角形パネル55aは奇数個であると、互いに相対することがなく、同様に、四角形パネル55bも奇数個であると、互いに相対することがない。このように構成される上側圧吸収部53、及び下側圧吸収部54は荷重を効果的に分散させ、それぞれの座屈強度、及び側壁強度を高めることができる。四角形パネル55aの個数と、四角形パネル55bの個数とは異なっていても良く、つり合いの観点から同じであっても良い。
なお、PETボトル1への荷重に対する応力が上側圧吸収部53の特定の箇所に集中することを防止する観点から上側圧吸収部53を構成する複数の四角形パネル55aは同一形状とされることが好ましい。これは、下側圧吸収部54についても同様である。
四角形パネル55a、及び四角形パネル55bのそれぞれの水平方向における断面形状は、PETボトル1の径方向内側に向かって湾曲した曲線状であっても良く、直線状であっても良く、外側に向かって湾曲した曲線状であっても良い。これは、PETボトル1の使用対象に応じて適宜設計される。
例えば、内側に向かって湾曲した四角形パネル55a、及び四角形パネル55bはPETボトル1の内圧が減少する際に速やか、かつ確実に内側に変形して高い応答性で内圧変化を吸収するもののその変形量が比較的小さく限られる。一方で、PETボトル1の内圧が増加する際には内圧変化を吸収する応答性がやや落ちるものの変形量をより大きくすることができ、より大きな内圧変化を吸収することができる。ただし、変形量が大きすぎると外側に向かって湾曲するように反転するおそれがある。この反転が、四角形パネル55a、及び四角形パネル55bの一部のみで生じると、外観が劣って商品価値が低下してしまう。なお、外側に向かって湾曲した四角形パネル55a、及び四角形パネル55bは上述の逆に作用する。
上側円筒部60は上下同径の円筒状である。上側円筒部60には、PETボトル1の径方向内側に向かってくぼんで周方向に環状に延びる複数の補強溝61,62,63,及び64が形成されている。補強溝61は、上側円筒部60の上部に位置する。補強溝62は、上側円筒部60の下部に位置する。補強溝63、及び補強溝64は、補強溝61と、補強溝62との間に位置する。補強溝61,62,63,及び64はいずれも、水平方向の断面形状が円形であり、鉛直断面の形状が略円弧状である。補強溝61,62,63,及び64によって上側円筒部60の側壁強度を高めることができる。そして、上側円筒部60の側壁強度が高まることで、PETボトル1が自動販売機から正常に排出されるか否かの特性であるベンダー適性や、上側円筒部60へのラベルの取り付けやすさ、PETボトル1の持ちやすさが向上する。
なお、補強溝61,62,63,及び64はいずれも、鉛直方向の断面形状が略円弧状であることによって、高温の中身が充填された状態でPETボトル1がつられたとしても、軸方向に伸びて胴径が縮まるように変形することが防止される。
補強溝61,62,63,及び64は、その深さが大とされるほど側壁強度が高められる一方で、PETボトル1の賦形性が低下する。したがって、補強溝61,62,63,及び64の内で必要最低限の箇所においてその深さが大とされることが好ましい。したがって、補強溝61,62,63,及び64にはその深さが大小のものが含まれる。
補強溝61,及び62は、補強溝63,及び64よりも深さが大である。深さが大とされる補強溝61と、補強溝62とによって各溝の付近における側壁強度が高められる。これによって例えば、自動販売機の押し出し板と接触する箇所の強度が高められる。更に、その効果は、各溝の付近のみにとどまらず、補強溝61と、補強溝62との間の領域まで及ぶ。したがって、補強溝61と、補強溝62との間の補強溝63,及び64の深さが小とされたり、補強溝63と、補強溝64との間隔が広げられたり、補強溝63,64の数が削減されたりしても、上側円筒部60の側壁強度が下がりにくくなる。更に、補強溝63や、補強溝64の凹凸が抑えられるため、例えば、シュリンクラベルが装着された際の外観不良が生じにくくなり、製造効率や、ラベルによるディスプレイ効果(宣伝効果)を向上させることができる。
補強溝61,62,63,及び64の深さが浅すぎると、上側円筒部60の側壁強度が高まらず、上側円筒部60がつぶれやすくなって、ベンダー適性や、PETボトル1の持ちやすさが低下してしまう。一方で、補強溝61,62,63,及び64の深さが深すぎると、PETボトル1の成形時の賦形性が低下するとともに、補強溝61,62,63,及び64を基点とした座屈が生じやすくなる。補強溝61,62,63,64の深さは、上側円筒部60の直径である最大胴径D1に対する比が0.005以上、0.07以下であることが好ましく、0.03であることがより好ましい。
補強溝61,62,63,及び64の幅が狭すぎると、PETボトル1の成形時の賦形性が低下しやすくなる。一方で、補強溝61,62,63,及び64の幅が広すぎると、上側円筒部60に取り付けられたシュリンクラベルに補強溝61,62,63,及び64の凹凸の影響が表れて外観不良になりやすく、延いては、購買意欲の低減につながる。補強溝61,62,63,及び64の幅は、補強溝61,62,63,64の深さに対する比が0.5以上、5.0以下であることが好ましい。
なお、ここでは、上側円筒部60に、4本の補強溝61,62,63,及び64が形成されている構成が例示された。しかしながら、その数は特に限定されるものではなく、上側円筒部60の上下方向の幅や、溝の深さ、幅等によって適宜設計されるものである。
下側円筒部70は上下同径の円筒状である。下側円筒部70には、PETボトル1の径方向内側に向かってくぼんで周方向に環状に延びる補強溝71が形成されている。補強溝71によって、下側円筒部70の側壁強度を高めることができる。
なお、補強溝71は、上述された補強溝61等と同様に構成されれば良い。更に、ここでは、下側円筒部70に、1本の補強溝71が形成されている構成が例示された。しかしながら、その数は特に限定されるものではなく、下側円筒部70の上下方向の幅や、補強溝71の深さ、幅等によって適宜設計されるものである。
胴部30、及び下側円筒部70の最も下側の領域がヒール部72である。ヒール部72は、PETボトル1が、その原型であるプリフォーム(予備成形体)からブロー成形される際に、プリフォームの底部からの距離が長く、その分だけ延伸倍率が高くなるので、薄肉化し、時には白化してしまいやすい箇所である。
上側連接部80、及び下側連接部85はいずれも、PETボトル1の径方向内側に向かってくぼんで周方向に環状に延びる周回溝であることが好ましい。上側連接部80、及び下側連接部85が周回溝とされることによって各連接部の付近の側壁強度を高めることができる。上側連接部80、及び下側連接部85は、水平方向の断面形状が円形であり、鉛直方向の断面形状が、平らな底面を有する略U字状である。上側連接部80、及び下側連接部85は、鉛直方向の断面形状が略円弧状であっても良く、高温の中身が充填された状態でPETボトル1がつられたとしても軸方向に伸びるように変形することが防止される。
上側連接部80、及び下側連接部85はいずれも、その深さが浅すぎると、側壁強度を高めることができず、ベンダー適性が低下する。一方で、上側連接部80、及び下側連接部85はいずれも、その深さが深すぎると、PETボトル1の成形時の賦形性が低下する。上側連接部80、及び下側連接部85の深さはそれぞれ、最小胴径D2に対する比が0.005以上、0.07以下であることが好ましく、0.03であることがより好ましい。
上側連接部80、及び下側連接部85の幅が広すぎると、側壁強度を高めることができず、ベンダー適性が低下する。一方で、上側連接部80、及び下側連接部85の幅が狭すぎると、PETボトル1の成形時の賦形性が低下する。上側連接部80、及び下側連接部85の幅はそれぞれ、上側連接部80、及び下側連接部85の深さに対する比が0.5以上、5.0以下であることが好ましい。
図4はPETボトル1の底面図である。底部40は、胴部30の下側円筒部70の下側に連なる。底部40は、コーナー部41と、底壁42と、ドーム43と、リブ44とを有している。コーナー部41は、PETボトル1の軸方向の下側、及び径方向の外側に向かって湾曲している。略平板環状の底壁42は、胴部30に対して垂直方向に延び、PETボトル1の接地面となる。ドーム43は、底壁42の内周において底壁42から、PETボトル1の内側(上側)に向かって突出しており、底部40の強度を向上させる機能を有する。なお、ドーム43には、ドーム43を補強する機能を有するリブ44が底面視で放射状に複数設けられている。
なお、底部40は、図4等の例示に限らず、熱によって変形しやすい状態で陽圧化しても下側に変形しにくく構成されていれば良い。これによって、PETボトル1の満注容量が増え、内圧の変化がより大となることを防止することができる。ドーム43は、熱によって仮に変形したとしても少なくともPETボトル1の接地面よりも高く維持されるように設計される。これによって、底部40が、底壁42より外側(下側)に突出することが防止され、PETボトル1のがたつきや、転倒を防止することができる。
以上のように、本実施形態に係るPETボトル1は、口部10と、肩部20と、胴部30と、底部40とを有し、胴部30は、一部に、胴径の絞られたくびれ部50を有し、くびれ部50は、環状の周溝51と、周溝51を基準に軸方向の両側に、四角形パネル55a,及び55bがそれぞれ周方向に連なって構成され、PETボトル1の内圧の変化に対応してPETボトル1の内外に変形する圧吸収部52とを有する。本実施形態に係るPETボトル1では、軽量化されてもなお、軸方向、及び胴回り方向からの荷重に充分に耐え、内圧の変化を吸収して肩部20や、胴部30の凹みや、扁平、よじれ等の変形が充分に抑えられる。したがって、本実施形態によれば、軽量性と、外力に対する高い強度とを併有し、かつ内部における陽圧、及び陰圧のいずれも吸収して、過酷な条件下でも変形が抑えられるPETボトル1を提供することができる。
次に、変形例に係るプラスチックボトルの構成を詳細に説明する。図5は、変形例に係るPETボトル2が示された正面図であり、図6は変形例に係るPETボトル2の側面図である。PETボトル2は、周溝51を基準に軸方向の両側に並列する四角形パネル55a,及び55bのそれぞれの稜線59a,及び59bが周方向に互い違いに配置される点で異なる以外はPETボトル1と同じ構成、及び効果を有している。
PETボトル2はくびれ部50に、環状の周溝51と、周溝51を基準に軸方向の両側に圧吸収部52Aとを有する。そして、圧吸収部52Aは、周溝51を基準に、軸方向の上側の上側圧吸収部53Aと、軸方向の下側の下側圧吸収部54とを有する。上側圧吸収部53Aは、上側圧吸収部53と同様に、平板状の四角形パネル55aが周方向に複数連なって筒状に構成される。しかしながら、稜線59aと、稜線59bとが連続する1本の線のようには配置されず、その稜線59aの下端と、その稜線59bの上端とが周方向で異なる位置とされている。稜線59aの下端と、稜線59bの上端とが周方向で異なる位置とされることで周溝51に対して軸方向に接続する箇所が倍増し、側壁強度を高めるとともに、四角形パネル55aの変形と、四角形パネル55bの変形とを互いに影響しにくくすることができる。
図5、及び図6に例示される上側圧吸収部53Aは、下側圧吸収部54に対して上側圧吸収部53からは周方向に36°回転した状態で構成されている。このように、稜線59aの下端は、周方向に隣り合う稜線59b,59bの中間に配置されることがより好ましい。このように、稜線59aと、稜線59bとが周方向に互い違いに配置されることによって、周溝51に生じた応力を軸方向の両側にバランス良く分散することができ、より過酷な内圧の変化を起因としたPETボトル1のよじれ等の変形を抑えることができる。更に、稜線59aと、稜線59bとが周方向に互い違いに配置される構成によっても高い意匠性を有するPETボトル2を提供することができる。
本実施形態に係るPETボトル1、及びPETボトル2(以下では、PETボトル1と同様であるため記載を適宜省略する)にはサイズによる限定はなく、種々のサイズに対して適用することができる。例えば、PETボトル1の容積が100 ml以上、2000 ml以下であっても良い。PETボトル1の全高H1は100 mm以上、300 mm以下であっても良く、胴部30の最大胴径D1は30 mm以上、80 mm以下であっても良い。更に、本実施形態に係るPETボトル1は軽量化ボトルを対象として好適に用いることができる。PETボトル1の質量は例えば、1000 mlに対しては20 g以上、40 g未満、500 mlに対しては15 g以上、25 g未満であると良い。
PETボトル1が例示されたプラスチックボトルの材料としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンや、エチレン−ビニルアルコール共重合体、植物等を原料としたポリ乳酸等のブロー成形が可能な種々のプラスチックを用いることができる。しかしながら、プラスチックボトルは、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、特に、ポリエチレンテレフタレートが主成分とされることが好ましい。なお、上述された樹脂には、成形品の品質を損なわない範囲で種々の添加剤、例えば着色剤、紫外線吸収剤、離型剤、滑剤、核剤、酸化防止剤、帯電防止剤を配合することができる。
PETボトル1を構成するエチレンテレフタレート系熱可塑性樹脂としては、エステル反復部分の大部分、一般に70モル%以上をエチレンテレフタレート単位が占めるものであり、ガラス転移点(Tg)が50℃以上、90℃以下であり、融点(Tm)が200℃以上、275℃以下の範囲にあるものが好適である。エチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルとして、ポリエチレンテレフタレートが耐圧性等の点で特に優れているものの、エチレンテレフタレート単位以外に、イソフタル酸や、ナフタレンジカルボン酸等の二塩基酸と、プロピレングリコール等のジオールからなるエステル単位を少量含む共重合ポリエステルも使用することができる。
ポリエチレンテレフタレートは熱可塑性の合成樹脂の中では生産量が最も多い。そして、ポリエチレンテレフタレート樹脂は、耐熱性、耐寒性や、耐薬品性、耐摩耗性に優れる等の種々の特性を有する。更に、ポリエチレンテレフタレート樹脂はその原料に占める石油の割合が他のプラスチックと比べて低く、リサイクルも可能である。このように、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする構成によれば、生産量の多い材料を用いることができ、その優れた種々の特性を活用することができる。
ポリエチレンテレフタレートは、エチレングリコール(エタン−1,2−ジオール)と、精製テレフタル酸との縮合重合によって得られる。ポリエチレンテレフタレートの重合触媒として、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、及びアルミニウム化合物の少なくとも一つが用いられることが好ましい。これらの触媒が用いられることによって、アンチモン化合物が用いられるよりも、高い透明性を有し、耐熱性に優れた容器を形成することができる。
上述された材料が射出成形されたプリフォームがブロー成形されることによってプラスチックボトルを作製することができる。しかしながら、本実施形態に係るプラスチックボトルの一例としてのPETボトル1は過酷な状況にも対応している。このため、プリフォームからのPETボトル1の成形や、PETボトル1への高温の飲料の充填等の工程をすべてインライン方式で行う製造方法であるホットパックインプラントに本実施形態に係るPETボトル1を適用することもできる。
次に、このようなホットパックインプラントが具現された本実施形態に係る充填体の製造装置について詳細に説明する。図7は、本実施形態に係る充填体8の製造装置100が模式的に示された概略図である。本実施形態に係る充填体8の製造装置100は、プリフォーム5の胴部を加熱する加熱部と、プリフォーム5から金型を用いてPETボトル1をブロー成形する成形部と、PETボトル1に高温の液体を充填する充填部と、PETボトル1の口部10にキャップ7を装着する装着部と、PETボトル1の口部10とキャップ7とを転倒殺菌する転倒殺菌部と、PETボトル1を冷却する冷却部とを備える。そして、本実施形態に係る充填体8の製造装置100は、予備成形体であるプリフォーム5からPETボトル1を成形する装置や、PETボトル1に高温の液体を充填する装置等がすべてインライン方式で構成されることを特徴とする。
なお、ここでのインライン方式とは、成形部と、充填部とが連結しているシンクロ方式でも良く、成形部と、充填部とが離れてPETボトル1がエア搬送されるセパレート式でも良い。更に、本実施形態に係る充填体8の製造装置100においてインライン方式で構成される種々の装置の中にはプリフォーム5を形成する射出成形装置等が含まれていても良い。
ボトル成形機110は、加熱部としての加熱装置111と、成形部としての二軸延伸ブロー成形装置112とを有する。プリフォーム5がボトル状に成形されるにあたってまず、プリフォーム5の加熱が行われる。
図8は、プリフォーム5の加熱装置111の一例が示された断面図である。なお、図8は、プリフォーム5の搬送方向に対して垂直方向の断面を示す。
加熱装置111は、搬送装置113と、ヒータ114とを備える。搬送装置113は、プリフォーム5の胴部15を周方向に均等に加熱するために、プリフォーム5の軸を中心に回転させながら搬送するように構成される。ヒータ114は、複数の例えばハロゲンランプによって構成され、ブロー成形に適した温度、例えば115℃以上、135℃以下にプリフォーム5の胴部15を加熱するように構成されている。更に、加熱装置111は、ヒータ114からの熱をプリフォーム5の胴部15に反射させるための反射板115や、ヒータ114からの熱を加熱装置111の外方へ逃がさないようにするための遮蔽部材116等を備えていても良い。なお、図8の加熱装置111では、プリフォーム5は口部10が下側を向いた状態で搬送、及び加熱されている。
図9は、プリフォーム5と、ブロー成形後のPETボトル1とが模式的に示された断面図である。二軸延伸ブロー成形装置112は、金型117と、延伸ロッド118と、図示せぬエア供給装置と、これらを制御する制御装置とによって構成される。なお、図9には、下向きのブロー成形方法の二軸延伸ブロー成形装置112が例示されているものの、材料が重力の影響を受けにくい上向きのブロー成形方法が用いられても良い。
金型117は、形成されるPETボトル1に対応した形状を有して例えば、胴部30に対応して半割りで構成される胴金型117aと、底部40に対応した底金型117bとを有する。胴金型117aの表面の温度は、例えば80℃以上、125℃以下、好ましくは90℃以上、120℃以下、より好ましくは90℃以上、115℃以下に制御されるように構成されている。一方で、底金型117bの表面の温度は、5℃以上、30℃以下に制御されるように構成されている。なお、胴金型117aの表面の温度は、ポリエチレンテレフタレートのガラス転移点(Tg)を超えている。
金型117の表面の温度が120℃以下とされることによって、金型117の材質として例えば、重量が大きく、取り扱う上での作業負荷の大きなステンレスの焼き入れ焼き戻し鋼や、金型用鋼材ではなくアルミニウムを用いることができる。アルミニウムが用いられることによって、金型117の加工が容易となって設計の自由度が上がるとともに、作製費用を抑えることができる。また金型117の重量が軽くなるため、金型交換作業が容易となる。
胴金型117aは、少なくとも一部の表面、より具体的にはPETボトル1のヒール部72と接触する箇所にしぼ加工(粗面加工)が行われた粗面部117Rを有することが好ましい。粗面部117Rの形成方法には特に限定はなく、サンドブラストや研磨処理等の物理的な処理方法であっても良く、エッチング等の化学的な処理方法であっても良い。ヒール部72は一般的に賦型しにくい箇所である。これは、本実施形態に係る充填体8の製造装置100において設定されているプリフォーム5の加熱温度や、胴金型117aの表面の温度において特に顕著となる。しかしながら、ヒール部72と接触する箇所に粗面部117Rが設けられることによって離形が良くなり、局所的な過度な収縮が生じることが防止され、その結果としてPETボトル1の賦形性が向上する。
底金型117bの中央には、凹面状の受け部117cが形成されていることが好ましい。受け部117cは、延伸ロッド118の先端が入り込むように構成されている。受け部117cは、延伸ロッド118によってプリフォーム5が延伸される際に底部18が、径方向に偏心することを防止する機能を有する。
延伸ロッド118は金型117の内部を伸縮自在に構成される。そして、延伸ロッド118は、金型117に口部10の取り付けられたプリフォーム5の胴部15を縦(軸)方向に延伸するように構成される。エア供給装置からは、圧力、及び温度の調節されたエアPが吹き出されるように構成される。エアPは、金型117に取り付けられたプリフォーム5の内部に供給されれば良く、延伸ロッド118から吹き出されても良く、延伸ロッド118とは別の部材から吹き出されても構わない。エアPは、プリフォーム5の胴部15を横(径)方向に延伸するように構成される。延伸ロッド118から吹き出されるエアPは、胴部15の表面温度を下げて急冷させるとともに、耐熱性を向上させる。
図7に示されるように、ホット充填機120は、充填部としてのフィラ121と、装着部としてのキャッパ122とを有する。フィラ121は、加温殺菌された高温の液体の中身例えば飲料6を高温、例えば71℃以上、95℃以下、より好ましくは81℃以上、90℃以下でそのまま、PETボトル1に注入するように構成されている。装着部としてのキャッパ122は、飲料6の充填されたPETボトル1の口部10にキャップ7を装着するように構成される。なお、PETボトル1は、装着されたキャップ7によって密封され、充填体8を構成する。
転倒殺菌部としての転倒殺菌機130は、充填体8を予め定められた時間例えば30秒90度以上に傾けて、高温の飲料6の熱によって、充填体8の内部特に、PETボトル1の口部10と、キャップ7とを殺菌するように構成される。なお、殺菌時間は、飲料6の種類、及び温度に応じて適宜設計される。
冷却部としてのパストライザ140は、熱交換液としての複数の温度の水を貯留する例えば4槽の恒温槽と、ノズル等の噴出口とを有する。パストライザ140は、高温水例えば65℃の水を散布して充填体8を外側から加温殺菌した後に、散布する水の温度を段階的に下げていき、最終段階で、低温水例えば30℃の水を散布して充填体8(PETボトル1)を冷却するものである。パストライザ140による冷却は、充填体8に充填された飲料6の風味の変化を防ぐ効果を有する。パストライザ140の1槽目に収容される液体の温度は65℃以下であることが好ましい。65℃以下で、充填体8を急冷させることによってPETボトル1の胴部30への熱によるダメージを少なくすることができる。
充填体8の製造装置100は、これらの装置の後段として、ラベラ、及びケーサ150、並びに印字装置、及び検査装置等を有する。ラベラは、充填体8(PETボトル1)にラベルを貼りつけるものである。ケーサは、予め定められた数例えば24本毎に充填体8を段ボールに箱詰めするものである。以上に挙げられた装置等が用いられて本実施形態に係る充填体8が製造される。
次に、本実施形態に係る充填体8の製造方法について詳細に説明する。図10は、本実施形態に係る充填体8の製造工程の概要が示された流れ図である。本実施形態は少なくとも、プリフォーム5の胴部15を加熱する工程と、プリフォーム5から金型117を用いてPETボトル1をブロー成形する工程と、PETボトル1に高温の飲料6を充填する工程と、PETボトル1の口部10にキャップ7を装着する工程と、PETボトル1の口部10とキャップ7とを転倒殺菌する工程と、PETボトル1を冷却する工程とを備える。そして、本実施形態は、プリフォーム5からのPETボトル1の成形や、PETボトル1への高温の飲料6の充填等の工程をすべてインライン方式で行うことを特徴とする。以下では、各工程を更に詳細に説明する。
まず、ボトル成形機110へのプリフォーム5の供給が行われる(ステップS1)。本実施形態に係る充填体8の製造方法においては口部10が非結晶の状態のプリフォーム5が用いられる。ただし、口部10の開口端の側が例えば160℃〜180℃程度で加熱処理され、部分的に結晶化がなされていても良い。供給されたプリフォーム5は整列された上で搬送される。
なお、上述されたように、本実施形態に係る充填体8の製造装置100にはプリフォーム5を形成する射出成形装置や圧縮成形装置、圧縮射出成形装置等がインライン方式で構成されていても良い。そして、この場合には、ボトル成形機110へ供給されるプリフォーム5の射出成形装置での形成がインライン方式で行われる。そして、ボトル成形機110へはプリフォーム5がコールドパリソン方式や、ホットパリソン方式で、かつインライン方式で供給される。
次に、プリフォーム5の加熱が行われる(ステップS2)。ボトル成形機110の加熱装置111に搬送されたプリフォーム5の胴部15は複数のヒータ114によって、例えば115℃以上、135℃以下の温度に加熱される。
加熱されるプリフォーム5の温度が115℃未満の場合には耐熱性が不足しており、その後に成形されたPETボトル1は、高温の中身を充填するホット充填に対応することができず、いびつに変形する。一方で、加熱されるプリフォーム5の温度が135℃を超える場合にはボトル成形前のプリフォーム5は結晶化しすぎてブロー成形ができなくなる。その点で、加熱されるプリフォーム5の温度が135℃以下であれば結晶化が多少進むものの、ブロー成形することは可能な状態である。
次に、プリフォーム5の延伸によるPETボトル1のブロー成形が行われる(ステップS3)。加熱されたプリフォーム5は、二軸延伸ブロー成形装置112の金型117に装着される。本実施形態に係る充填体8の製造方法においては胴金型117aの表面の温度が80℃以上、125℃以下、好ましくは90℃以上、120℃以下、より好ましくは90℃以上、115℃以下とされる。この範囲の温度とされることによって、PETボトル1の外表面、特に胴部30が結晶化され、耐熱性を有する構成となる。したがって、後の工程において、高温の飲料6を充填することを可能としたPETボトル1を作製することができる。胴金型117aの表面の温度が80℃未満の場合には耐熱性が低くなり、一方で、胴金型117aの表面の温度が125℃を超える場合には、PETボトル1が胴金型117aに接触した際の初期収縮が大きくなって変形、すなわちヒケが発生しやすくなる。
ここで、本実施形態においては、加熱されるプリフォーム5の温度、及び胴金型117aの表面の温度がともに一定水準を上回ることで、その効果が具現される。そして、プリフォーム5の胴部15の温度は、胴金型117aの表面の温度より高いことがより好ましい。胴部15の温度が、胴金型117aの表面の温度より高いと上述された初期収縮が起こりにくくなる。
まず、金型117に装着されたプリフォーム5の胴部15が延伸ロッド118によって縦方向に延伸される。プリフォーム5は、延伸される際に温度が高いほど底部18が偏心しやすい。そして、偏心して延伸されてしまうと、そのずれた方向に変形しやすくなって好ましくない。しかしながら、底金型117bの中央に設けられた受け部117cが延伸ロッド118の先端を中心へと誘導することによってプリフォーム5は、その温度が高く設定されていても偏心して延伸されることが防止される。
この際のプリフォーム5からPETボトル1への縦延伸倍率は1.8以上、4.0以下であることが好ましい。ここで、縦延伸倍率とは、プリフォーム5の胴部15の高さH3(図9参照)に対するPETボトル1の胴部30の高さH4(図9参照)の比(H4/H3)である。非晶部と、結晶部との集合体であるアモルファス構造を有するプリフォーム5の分子は延伸によって配向結晶化がおこり、その結果として、PETボトル1の強度、剛性、及び耐熱性が上がる。したがって、後の工程において、高温の飲料6を充填することを可能としたPETボトル1を作製することができる。縦延伸倍率が1.8未満の場合にはプリフォーム5の分子の配向性が上がらず、一方で、縦延伸倍率が4.0を超える場合にはPETボトル1が成形しにくくなる。
更に、エア供給装置から、圧力、及び温度の調節されたエアPが吹き出されてプリフォーム5の内部に供給される。まず、プリフォーム5の縦方向への延伸とともに供給される例えば5 bar以上、16 bar以下の低圧エアP1によってプリフォーム5の胴部15が横方向に、胴金型117aに当たらない程度に延伸(プリブロー)される。その後に、プリフォーム5の胴部15が、例えば20 bar以上、38 bar以下の高圧エアP2によって横方向に、胴金型117aに当たるまで0.5秒から1.5秒程度で延伸される。
この際のプリフォーム5からPETボトル1への横延伸倍率は1.8以上、3.0以下であることが好ましい。ここで、横延伸倍率とは、プリフォーム5の胴部15の外径D3(図9参照)に対するPETボトル1の胴部30の外径(最大胴径D1)(図1、及び図9参照)の比(D1/D3)である。プリフォーム5の分子は横方向の延伸によっても同様に配向結晶化がおこり、その結果として、PETボトル1の強度、剛性、及び耐熱性が上がる。したがって、後の工程において、高温の飲料6を充填することを可能としたPETボトル1を作製することができる。横延伸倍率が1.8未満の場合にはプリフォーム5の分子の配向性が上がらず、一方で、横延伸倍率が3.0を超える場合にはPETボトル1が成形しにくくなる。
なお、PETボトル1の胴部30の結晶化が進み過ぎて延伸しにくくならないように、プリフォーム5が金型117に装着されてからPETボトル1の形状に延伸されるまでは予め定められた時間内に収まるように制御される。
本実施形態に係る充填体8の製造方法において、ブロー成形する工程の中で、PETボトル1に冷却エアの吹き付けが更に行われても良い(ステップS4)。図11は、PETボトル1への冷却エアC1の吹き付けの一例が示された概略図である。
二軸延伸ブロー成形装置112の金型117に二軸延伸ブロー成形されたPETボトル1が張り付く。そして、延伸ロッド118が、金型117、及びPETボトル1の内側に配置される。延伸ロッド118には、冷却エア吹き付け部119が設けられている。冷却エア吹き付け部119は、エア供給装置に連通しており、圧力、及び温度の調節された高圧の冷却エアC1が吹き出されるように構成されている。冷却エア吹き付け部119を備えることによって、PETボトル1が胴金型117aに接触した際の初期収縮による変形を改善することができる。なお、冷却エアC1の圧力は高圧エアP2と同じで良く、冷却エアC1の吹き付けの時間は高圧エアP2の1/20から1/3程度で良い。より詳細には、冷却エアC1の吹き付けの時間は、0.05秒から0.6秒、及び高圧エアP2の時間の1%から90%、より好ましくは5%から30%のいずれかであることが好ましい。
延伸ロッド118には径(横)方向に通気孔が形成されており、PETボトル1の胴部30の内表面に対して略垂直方向に冷却エアC1が吹き付けられる。PETボトル1の胴部30は胴金型117aに触れるとすぐに収縮が始まる。そこに、冷却エアC1が吹き付けられることによって胴部30が、胴金型117aの方向に押し付けられてその変形が抑えられるとともに胴部30に耐熱性が付与される。したがって、ブロー成形されて高温状態のPETボトル1の胴部30は冷却エアC1が吹き付けられることによって結晶化がより促進される。冷却エアC1の温度は、1℃以上、30℃以下であることが好ましい。冷却エアC1の温度が1℃未満の場合には、胴部30に温度分布が生じてひずみが発生しやすくなり、一方で、冷却エアC1の温度が30℃を超える場合には、胴部30が冷却されにくくなって、その耐熱性が落ちる。
別の方法として、延伸ロッド118から吹き出される高圧エアP2を段階的に冷却エアC1に切り替えるようになされても良い。この方法によっても、PETボトル1の胴部30は結晶化が促進される。ブロー成形における高圧エアP2を吹き込む工程の内でその終了段階から例えば1%から90%、より好ましくは5%から30%の時間において冷却エアC1の割合を漸増させるようになされると良い。なお、その時間が短すぎる場合には、この方法による効果が表れにくくなり、時間が長すぎる場合には、胴部30の結晶化が促進されにくくなる。
なお、PETボトル1の胴部30の外表面側にも冷却エアC1を吹き付けることが好ましい。こうすることで、PETボトル1の胴部30の外表面側も結晶化が促進される。なお、胴部30の外表面への冷却エアC1の吹き付けは金型117が開いてから行われても良く、次の工程に移るまで吹き付けが継続されるようになされても良い。
このように、PETボトル1の胴部30に冷却エアC1が吹き付けられることによって、胴部30の収縮を効果的に抑えながら胴部30に耐熱性を付与することができ、更に、胴部30の表面温度を速やかに下げてPETボトル1の作製に要する速度を短縮することができる。更に、PETボトル1の胴部30に冷却エアC1の吹き付けが行われる場合には胴部30の収縮を効果的に抑えることができるため、胴金型117aの表面の温度を例えば125℃のようにより高く設定することができる。したがって、冷却エアC1の吹き付けが行われることによって、結晶化をより促進することができ、より高い温度の耐熱性を有するPETボトル1を作製することができる。
ここで、PETボトル1を構成する主原料のポリエチレンテレフタレートは、分子鎖が結晶化した結晶領域部分(結晶部)と、結晶化していない非晶領域部分(非晶部)とが混在している。ポリエチレンテレフタレートは、非晶部が流動性をもつガラス転移温度の約70℃以上、かつ結晶部も流動する融点の約260℃以下、特に140℃〜160℃程度で加熱処理されると、分子鎖の配向が起こって結晶部の割合が増える性質を有する。このような、結晶部と、非晶部との和に対する結晶部は結晶化度と称される。そして、結晶化度が高いほど分子間力が強まるため耐熱性が向上することとなる。
なお、結晶部は、非晶部よりも密度が高いため、結晶化度が高いほど密度も高くなる。すなわち、ポリエチレンテレフタレートは、密度が高いほど耐熱性が高くなる特性を有する。更に、非晶部と、結晶部とでは屈折率が異なることによってこれらの境界で散乱が起こるため、結晶部が増えるほど光が散乱しやすくなって、ヘーズ(可視光領域での透過光の内の散乱光の百分率)が高くなる。すなわち、ポリエチレンテレフタレートは、ヘーズが高いほど耐熱性が高くなる特性を有する。
PETボトル1の胴部30の結晶化度は、25%以上、45%以下であることが好ましく、25%以上、39%以下であることがより好ましい。結晶化度がこの範囲であればプリフォーム5から、耐熱性を有するPETボトル1を賦形性良く成形することができる。なお、PETボトル1の胴部30の結晶化度は密度から導出することができる。その他に、PETボトル1の胴部30の結晶化度はラマン分光分析によっても評価することができる。
本実施形態に係る充填体8の製造方法によって作製されたPETボトル1の胴部30の密度は1.367 g/cm3以上、1.387 g/cm3以下である。PETボトル1の胴部30の密度は、胴部30の一部を例えば1 cm四方に切り取った切り取り片を試料として、比重法、例えば密度勾配管法によって測定することができる。インライン方式で構成される製造装置100で作製された充填体8におけるPETボトル1の胴部30の密度を測定することによって、本実施形態に係る充填体8の製造方法が用いられたか否かを判定することができる。
更に、本実施形態に係る充填体8の製造方法によって作製されたPETボトル1の胴部30の引張破壊ひずみは40%以上、68%以下である。
PETボトル1の胴部30の引張破壊ひずみの計測方法としては、胴部30の一部が、例えば短辺10 mm×長辺50 mmに切り出された切り取り片が試料とされ、長辺方向に延びる試料の一方が固定された上で85℃で、300 mm/分で長辺方向に引っ張られる。そして、PETボトル1の胴部30の引張破壊ひずみは、何%引っ張った際に切れるかを計測することによって調べることができる。インライン方式で構成される製造装置100で作製された充填体8におけるPETボトル1の胴部30の引張破壊ひずみを計測することによって、本実施形態に係る充填体8の製造方法が用いられたか否かを判定することができる。なお、ここでは、試料が切れる際に示す最大の荷重が引張強さであり、更に断面積で除された値が引張応力である。
ブロー成形されたPETボトル1は金型117から離れる。本実施形態に係る充填体8の製造方法においてはインライン方式であるためブロー成形の時間が可及的に短くされており、PETボトル1に収縮が生じやすい状況になっている。しかしながら、胴金型117aの粗面部117Rにはしぼ加工が行われているため、粗面部117Rとヒール部72とは、ベタな面ではなく点での接触となり、ヒール部72が内側に収縮したり、波打ったりすることがなくヒケが生じにくい。したがって、PETボトル1の賦形性を良好にすることができる。更に、本実施形態に係る充填体8の製造方法では、耐熱ボトルと比べて製造の時間を短縮することができ、製造効率を高め、製造費用を下げることができる。
本実施形態に係る充填体8の製造方法によって作製されたPETボトル1のヒール部72の表面粗さ(Ra)は0.3 μm以上、3 μm以下である。この程度の表面粗さであれば、耐熱性を有しながら透明であるという特徴を維持することができる。ヒール部72の表面粗さの指標としては例えば、算術平均粗さRaを用いることができる。算術平均粗さRaの計測方法としては、レーザ顕微鏡によって得られた3次元データを画像解析することによって調べることができる。インライン方式で構成される製造装置100で作製された充填体8におけるPETボトル1の胴部30、特にヒール部72の表面粗さを計測することによって、本実施形態に係る充填体8の製造方法が用いられたか否かを判定することができる。
次に、図10に示されるように、ホット充填機120へのPETボトル1の供給が行われる(ステップS5)。本実施形態に係る充填体8の製造装置100はインライン方式で構成されているため、成形されたPETボトル1は速やかに、ホット充填機120に供給される。供給されたPETボトル1は、例えば複数の回転する円板状の搬送ホイールの各々の外周部に取り付けられたグリッパによって順次受け渡しが行われ、フィラ121まで運ばれる。なお、PETボトル1の成形後、ホット充填機120に供給されるまでの時間は10秒以内であることが好ましい。このように、本実施形態に係る充填体8の製造方法はインライン方式であるため、PETボトル1が加湿による耐熱性の低下が少ない状態で飲料6の充填に供される。
一方で、ホット充填機120では、PETボトル1に充填される飲料6の加温殺菌が行われる(ステップS6)。加温殺菌は、飲料6の特性、例えば酸性度や水分活性に応じて、120℃で4分間や、85℃で30分間等といったように所定の温度、及び保持時間に適宜設定されてなされる。
そして、ホット充填機120のフィラ121においてPETボトル1への飲料6の充填が行われる(ステップS7)。フィラ121は、加温殺菌された高温の液体の中身例えば飲料6を高温、例えば71℃以上、95℃以下、より好ましくは81℃以上、90℃以下でそのまま、PETボトル1に注入する。飲料6の充填されたPETボトル1は同様に、グリッパによって順次受け渡しが行われ、キャッパ122まで運ばれる。
本実施形態に係る方法で作製されたPETボトル1は、ホット充填として広く供されている胴金型117aの温度が160℃以上で成形されたようなもの程には耐熱性を有していない。しかしながら、PETボトル1は、上述された温度範囲、例えば71℃以上、95℃以下、より好ましくは81℃以上、90℃以下の高温の飲料6が充填されるのに充分な耐熱性を有するように作製される。そして、本実施形態に係る充填体8の製造方法においては、PETボトル1が成形された直後の最も耐熱性が維持された時点での飲料6の充填が行われる方法が用いられる。したがって、本実施形態に係る充填体8の製造方法によれば、PETボトル1に、高温の飲料6を問題なく充填することができる。
このように、PETボトル1は高温の飲料6を充填することを可能としている。このため、例えば71℃以上、95℃以下、より好ましくは81℃以上、90℃以下の高温の飲料6でPETボトル1の内面を充分に殺菌することができる。そして、充分な殺菌が行われることによって、充填体8に飲料6とともに酸素が封入されても好気性の雑菌が繁殖する危険性が極めて低いため、PETボトル1に飲料6が必ずしも満注充填されなくても構わない。したがって、本実施形態に係る方法によれば、充填が満注であるほど生じやすくなるPETボトル1の外面における菌の繁殖を効果的に防止することができる。
なお、上述されたように、本実施形態に係る充填体8の製造方法においては、PETボトル1のブロー成形と、PETボトル1への飲料6の充填とがインライン方式で行われるため、PETボトル1の耐熱性が高い状態で維持されている。しかしながら、PETボトル1の耐熱性をより維持する観点からは、充填体8の製造装置100の内で少なくとも、PETボトル1のブロー成形が行われてからPETボトル1への飲料6の充填が行われるまでの間の領域においては予め定められた湿度以下、好ましくは40%以下の環境でPETボトル1が保持されるとなお良い。
次に、ホット充填機120のキャッパ122にはキャップ7の供給が行われる(ステップS8)。なお、キャップ7に対しては、例えば紫外線照射による滅菌が行われても構わないものの、本実施形態に係る充填体8の製造方法においてはキャップ7が、飲料6の充填前には非滅菌であっても良い。なお、キャップ7が滅菌されることによって、飲料6の充填温度や、パストライザ140の温度を下げることができ、充填体8の製造の際に必要とされるPETボトル1の耐熱性を下げることができる。
そして、キャッパ122において、PETボトル1へのキャップ7の装着が行われる(ステップS9)。これによって、本実施形態に係る充填体8が形成される。なお、ここまでの工程は、例えば無菌領域のような清浄度や、温度、湿度等の環境条件について管理が行われている空間において実行されることが好ましい。形成された充填体8は例えばコンベア等の搬送帯によって転倒殺菌機130まで運ばれる。
次に、転倒殺菌機130によって充填体8の転倒殺菌が行われる(ステップS10)。転倒殺菌機130は充填体8を例えば横倒ししながら搬送する。充填体8が転倒されることによってキャップ7や、PETボトル1の特に口部10付近の内面は高温の飲料6と接触することで殺菌される。
続いて、パストライザ140によって充填体8の冷却が行われる(ステップS11)。上述されたように、パストライザ140の1槽目に収容される液体の温度は65℃以下であることが好ましい。65℃以下で、充填体8を急冷させることによってPETボトル1の口部10への熱によるダメージを少なくすることができる。その後に、パストライザ140の2槽目以降によって充填体8の内部の飲料6の液温が段階的に下げられていき、最終的には常温となるまで冷却される。
その後に、ラベラ、及びケーサ150によって充填体8にラベルが貼りつけられた上で段ボールに箱詰めされる。以上の方法によって本実施形態に係る充填体8が製造される。
本実施形態に係る充填体8の製造方法によって作製された充填体8の減圧量は1 kPa以上、20 kPa以下である。充填体8の減圧量は、圧力計、例えば隔膜(ダイアフラム)式圧力計によって測定することができる。減圧量の測定は、圧力計が備える検出器と連通する穿孔針を充填体8のヘッドスペースに差し込んで行われる。インライン方式で構成される製造装置100で作製された充填体8の減圧量を測定することによって、本実施形態に係る充填体8の製造方法が用いられたか否かを判定することができる。なお、この際の充填体8の減圧量には内容物に応じた値が適宜設定される。
以上に説明が行われた各工程を備えることによって、ホット充填に適用可能な耐熱性を有するPETボトル1、及び飲料6がホット充填された充填体8がインラインで作製される充填体8の製造方法を提供することができる。なお、本実施形態に係るPETボトル1は、インラインでない製造方法に適用することもできる。
本実施形態に係る充填体8の製造方法によれば、予め成形されたプラスチックボトルが内容物の充填装置に供給される方法とは異なり、PETボトル1が成形されてから時間をおかずに高温の飲料6を充填する工程に進むことができる。このため、PETボトル1の胴部30の結晶化度が下がる前に充填が始められ、その耐熱性を低下させずに高温の飲料6を充填することができる。なお、ボトル成形機110(二軸延伸ブロー成形装置112)と、ホット充填機120(フィラ121)との間のPETボトル1の搬送路を単に接続するよりもこれらの機械を1つの装置として結合することで、その効果はより高まる。
広く用いられている耐熱ボトルが成形される際には胴金型117aの温度が、例えば150℃以上、165℃以下のように高く設定されている。胴金型117aの温度が上がると、初期収縮が大きくなって変形が生じたり、金型117の材質が限定されて費用が嵩んだり、外部環境、特に気温との温度差が大きくなって耐熱ボトルの耐熱性や形状等の品質のばらつきが大きくなったりする。更に、胴金型117aの温度が上がると、高圧エアP2が吹き付けられる時間を増やす必要があり、製造能力が落ちる。これに対し、本実施形態に係る充填体8の製造方法によれば、広く用いられている耐熱ボトルよりもPETボトル1の耐熱性が低くても高温の飲料6を充填することが可能であって胴金型117aの温度を下げることができる。このため、本実施形態に係る充填体8の製造方法によれば上述された問題が生じることを防止することができる。
更に、本実施形態に係る充填体8の製造方法によれば、予め成形されたプラスチックボトルが内容物の充填装置に供給される方法よりも高速でPETボトル1の成形ができるインライン方式が用いられているため、充填体8の製造の費用を下げることができる。
更に、本実施形態に係る充填体8の製造方法によれば、PETボトル1ではなくプリフォーム5が供給される方式が用いられているため、材料の輸送の費用を下げることができる。すなわち、PETボトル1がインラインで成形される場合には、充填体8の製造装置100に供給される容器の形態をPETボトル1より嵩の小さなプリフォーム5へと変更することができ、容器の製造元からの輸送本数を大幅に、例えば6倍以上に増やすことが可能となる。したがって、PETボトル1のボトル成形機110がインライン化された本実施形態に係る充填体8の製造装置100、及び製造方法は、容器の輸送費用の削減や、環境負荷の低減に寄与することとなる。
次に、別の実施形態に係る充填体8の製造方法について詳細に説明する。図12は、別の実施形態に係る充填体8の製造工程の概要が示された流れ図である。別の実施形態に係る充填体8の製造方法は図10に示される製造方法に対し、PETボトル1に冷却エアC1を吹き付ける工程(ステップS4)が省略されることを特徴とする。なお、ここでは、別の実施形態に係る製造方法において、図10に示される製造方法と同様の部分の説明については適宜省略される。
別の実施形態に係る製造方法では、図10に示される製造方法と同様に、プリフォーム5の延伸によるPETボトル1のブロー成形が行われる(ステップS3)。ただし、別の実施形態に係る充填体8の製造方法においては胴金型117aの表面の温度が80℃以上、115℃以下とされる。
ここでも、ステップS2において加熱されるプリフォーム5の胴部15の温度は、胴金型117aの表面の温度より高くされることが好ましい。胴部15の温度が、胴金型117aの表面の温度より高いと初期収縮が起こりにくくなる。
そして、図10に示される製造方法と同様に、金型117に装着されたプリフォーム5の胴部15が延伸ロッド118によって縦方向に延伸される。更に、縦方向に延伸されたプリフォーム5の胴部15が高圧エアP2によって横方向に、胴金型117aに当たるまで延伸される。
別の実施形態に係る充填体8の製造方法では、ブロー成形する工程の中で、PETボトル1に冷却エアC1の吹き付け(ステップS4)が省略される。しかしながら、別の実施形態に係る充填体8の製造方法においては胴金型117aの表面の温度が80℃以上、115℃以下とされるとともに、加熱されるプリフォーム5の胴部15の温度は、胴金型117aの表面の温度より高くされる。これによって、プリフォーム5の胴部15が延伸されて胴金型117aに当たった際の初期収縮が効果的に抑えられる。したがって、別の実施形態に係る充填体8の製造方法では、PETボトル1に冷却エアC1を吹き付ける工程(ステップS4)が省略されても、ホット充填に適用可能な耐熱性を有するPETボトル1、及び飲料6がホット充填された充填体8を作製することができる。
なお、ブロー成形が行われたPETボトル1はホット充填機120への供給が行われ(ステップS5)、その後は、図10に示される製造方法と同様の工程を経て充填体8が作製される。
別の実施形態に係る充填体8の製造方法は図10に示される製造方法と同様の効果を奏する。
これに加えて、別の実施形態に係る充填体8の製造方法では胴金型117aの表面の温度がより低く設定できるため、金型117の材質として例えば、ステンレスの焼き入れ焼き戻し鋼や、金型用鋼材ではなくアルミニウムを用いることができる。アルミニウムが用いられることによって、金型117の加工が容易となって設計の自由度が上がるとともに、作製費用を抑えることができる。更に、別の実施形態に係る充填体8の製造方法では冷却エアC1の吹き付けを行うための装置を不要とすることができる。したがって、冷却エア吹き付け部119を備えていない二軸延伸ブロー成形装置112を用いることができ、汎用性を高めることができる。更に、別の実施形態に係る充填体8の製造方法では、冷却エアC1を吹き付ける工程(ステップS4)が不要であるため、PETボトル1、及び飲料6がホット充填された充填体8の作製の速度を向上させることができる。
以上に説明がなされたように、本実施形態に係る充填体8の製造方法は、プリフォーム5の胴部15を加熱する工程と、プリフォーム5から金型117を用いてPETボトル1をブロー成形する工程と、PETボトル1に高温の飲料6を充填する工程と、PETボトル1の口部10にキャップ7を装着する工程と、PETボトル1の口部10とキャップ7とを転倒殺菌する工程と、PETボトル1を冷却する工程とを備え、すべての工程をインライン方式で行うことを特徴とする。
そして、本実施形態によれば軽量性と、外力に対する高い強度とを併有し、かつ内部における陽圧、及び陰圧のいずれも吸収して、過酷な条件下でも変形が抑えられるPETボトル1、充填体8、及び充填体8の製造方法を提供することができる。
以下に、実施例を示して、本開示を更に詳細、かつ具体的に説明する。しかしながら、本開示は、以下の実施例に限定されるものではない。
<材料、及び製造方法>
[実施例1]
ポリエチレンテレフタレート製で透明の口部10を有する22gのプリフォーム5が用いられた。そして、図1等に示される本実施形態に係る満注容量が520 mlのPETボトル1と、85℃で充填された500 mlの水とによって構成される充填体8が図10に示される充填体8の製造方法によってプリフォーム5からインラインで作製された。その際に、プリフォーム5の胴部15は118℃に加熱され、胴金型117aの表面の温度は115℃とされた。ブロー成形する工程(ステップS3)には、PETボトル1に冷却エアC1を吹き付ける工程(ステップS4)が含まれた。
実施例1に係る充填体8は、胴部30が、一部に、胴径の絞られたくびれ部50を有し、くびれ部50は、環状の周溝51と、周溝51を基準に軸方向の両側に、四角形パネル55a,及び55bが周方向に連なって構成され、PETボトル1の内圧の変化に対応してPETボトル1の内外に変形する圧吸収部52とを有する等といった本実施形態に係る特徴を有していた。
[実施例2]
実施例2では、図5等に示されるPETボトル2が用いられた以外は実施例1と同様であった。したがって、実施例2に係る充填体8も、実施例1に係る充填体8と同様に本実施形態に係る特徴を有していた。
[比較例1]
比較例1では、図13に示されるPETボトル200が用いられた以外は実施例1と同様であった。PETボトル200は、くびれ部を有しておらず、長辺が軸方向に延びる長円の圧吸収パネル201を有し、隣り合う圧吸収パネル201,201の間には軸方向に延びる柱202を有している。したがって、比較例1に係る充填体は、本実施形態に係る特徴を有していなかった。
[比較例2]
比較例2では、25gのプリフォームが用いられ、そして、図14に示されるPETボトル300が用いられた以外は実施例1と同様であった。PETボトル300は、くびれ部301を有しているものの、周溝302を基準に軸方向の片(下)側のみに、圧吸収部303を有している。したがって、比較例2に係る充填体は、本実施形態に係る特徴を有していなかった。
[比較例3]
比較例3では、22 gのプリフォーム5が用いられた以外は比較例2と同様であった。したがって、比較例3に係る充填体は、本実施形態に係る特徴を有していなかった。
<評価方法>
(軽量性)
実施例1、及び実施例2、並びに比較例1、比較例2、及び比較例3の各PETボトルが形成段階で抜き取られ、その重量によって軽量化が達成できているか否かが判定された。軽量化の判定には、25g以上か、未満かが閾値として設定された。表1には、各PETボトルにおける軽量性の評価の結果が示され、○:軽量性あり、×:軽量性なし、で表記されている。
(座屈強度試験)
実施例1、及び実施例2、並びに比較例1、比較例2、及び比較例3の各充填体について各PETボトルの正立した状態での座屈強度が測定された。座屈強度の測定には、AGR社製のテスター、TOP LOADが用いられた。各口部の上から一定速度で荷重が加えられ、いわゆる降伏の状態となる最大荷重が座屈強度とされた。座屈強度の判定には、250 N以上か、未満かが閾値として設定された。表1には、各充填体における座屈強度の評価の結果が示され、○:座屈強度あり、×:座屈強度不足、で表記されている。
(側壁強度試験)
実施例1、及び実施例2、並びに比較例1、比較例2、及び比較例3の各充填体について各PETボトルの横置きされた状態での各胴部の側壁強度試験が行われた。側壁強度試験には、AGR社製のテスター、TOP LOADが用いられた。各PETボトルが転がらないように固定された上で各胴部の上から一定速度で60 Nとなるまで荷重が加えられた。側壁強度の判定には、60 Nの荷重が加えられた際の最大胴径D1が61 mm以上か、未満かが閾値として設定された。表1には、各充填体における側壁強度の評価の結果が示され、○:側壁強度あり、×:側壁強度不足、で表記されている。
(耐圧性能試験)
実施例1、及び実施例2、並びに比較例1、比較例2、及び比較例3の各充填体の耐圧性能が測定された。各口部に、穿孔針が差し込まれた上で中身が吸い出されPETボトルが明確に変形した時点での吸い出し量が耐圧性能の指標とされた。耐圧性能の判定には、30 ml以上か、未満かが閾値として設定された。表1には、各充填体における耐圧性能の評価の結果が示され、○:耐圧性能あり、×:耐圧性能不足、で表記されている。
(総合評価)
上述された軽量性、座屈強度試験、側壁強度試験、及び耐圧性能試験に基づいて、実施例1、及び実施例2、並びに比較例1、比較例2、及び比較例3の各PETボトル(各充填体)の総合評価がなされた。表1には、総合評価の結果が示されている。総合評価は、○:良好、×:適性なし、で表記されている。
上述された実施例から以下の点が導き出された。表1に示されたように、実施例1、及び実施例2では、軽量化されていながら、座屈強度、及び側壁強度を充分に有し、かつ耐圧性能にも優れていた。一方で、比較例1では、軽量化されていたものの、座屈強度、及び側壁強度が不足した。比較例2、及び比較例3の結果を比較すると、比較例2のように軽量化がやや不足する場合には、座屈強度、及び側壁強度を充分に有し、かつ耐圧性能にも優れているのに対し、比較例3で示されたように軽量化された場合には、耐圧性能が不足した。
以上の実施例の結果から、本実施形態に係るPETボトル1、及び充填体8では、軽量化されてもなお、上下方向、及び胴回り方向からの荷重に充分に耐え、内圧の変化を吸収して肩部20や、胴部30の凹みや、扁平、よじれ等の変形が充分に抑えられることが示された。しかも、本実施形態に係る充填体8の製造方法によれば、このような特徴を有するPETボトル1、及び充填体8を問題なく製造できることが示された。したがって、本実施形態では、軽量性と、外力に対する高い強度とを併有し、かつ内部における陽圧、及び陰圧のいずれも吸収して、過酷な条件下でも変形を抑えるPETボトル1、充填体8、及び充填体8の製造方法を提供することができることが示された。