以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施形態の詳細を説明する。まず、本実施形態に係るPET(PolyEthylene Terephthalate:ポリエチレンテレフタレート)ボトル成形用のプリフォーム1(予備成形体)の構成を詳細に説明する。図1は本実施形態に係るプリフォーム1の一例が示された断面図である。プリフォーム1は、有底筒状であって、口部10、胴部16、及び底部17が軸方向に順次設けられる。プリフォーム1が延伸されることによってボトル状に成形される。この際公知のブロー成形技術を用いるのが好適である。図1には、口部10から底部17までが軸方向と平行にプリフォーム1の中心で切断された面が示されている。
なお、以下では、説明の便宜上、図1の状態のプリフォーム1において底部17に対する口部10の方向を上とする。
口部10は、軸方向の上端に、円形に開放された開口部11を有している。開口部11は、環状の口天面15と円形の穴部11aを有している。そして、口部10は、その外周面に、おねじ12と、カブラ13と、サポートリング14とを有している。図示せぬ蓋を取り付けるためのおねじ12は口部10の外周面から、プリフォーム1の径方向の外側に向かってらせん状に突出している。カブラ13は、おねじ12の下方で、径方向外側に向かって周回状に突出している。サポートリング14は、カブラ13の下方で周回状に、カブラ13よりも径方向外側まで突出している。
一般的に、サポートリング14から軸方向の上側の箇所ではプリフォーム1からボトル状に成形される際にその形状が変化しない。一方で、サポートリング14よりも下側の最大10 mmの範囲でもボトル状に成形される際にほとんど延伸されない。したがってここでは、プリフォーム1からボトル状に成形される際にその形状がほとんど変化しない範囲を口部10と定義することとする。そして、口部10は、図1に例示されるように、サポートリング14よりも軸方向下側の箇所の内径、及び外径が軸方向の上下において略同寸の略真円筒形状であっても良い。
このように、口部10は、ブロー成形機による成形後もその形状が変化しない。ここで、プリフォーム1の口部10の内径や外径(ねじ谷径に相当)、ねじ山径といった各部の寸法に特に限定はない。しかしながら、飲料用ボトルで標準的に用いられている寸法とされることが、既存の蓋の汎用性や、飲料用ボトルの密封性を確保できる点で好ましい。このため、口部10は例えば、PCO1810規格や、PCO1881規格に対応した寸法とされると良い。
胴部16は、内径、及び外径が、軸方向の上下において略同寸の略真円筒形状に構成されている。ただし、胴部16には、プリフォーム1の作製の際に用いられる型からの取り出し、すなわち離型を容易にするための傾斜である抜き勾配が設けられていても良い。更に、胴部16の内径、及び外径が軸方向の上下でわずかに変化していても良い。更に、軸方向の上下において、胴部16の特に外径を略同寸に構成することもできる。
底部17は、外方に湾曲した略半球状に構成されている。底部17は、円錐形状であったり、角に丸みを持った円柱形状であったり、その他の形状であっても良い。
なお、胴部16の外径は、12 mm以上、30 mm以下であることが既存の装置を用いることができる点で好ましい。更に、サポートリング14の下面から底部17の下端までの長さが35 mm以上、105 mm以下であることが、既存の装置、特にブロー成形機を用いることができる点で好ましい。
プリフォーム1は、口部10が多層に構成されて、外層18aと内層19aとの間に第二の中間層20aを有する。図1に例示されるプリフォーム1はおねじ12の上端から、口部10の下端まで第二の中間層20aを有している。
また、底部17は、その基材層中に、中間層21を有する。中間層21は、基材層である、底部外側層23と、底部内側層22に挟まれるように構成されている。
一方で、胴部16は、中間層21、第二の中間層20aを有さない構成となっている。このように口部と底部に中間層を有する構成とすることで、口部、底部に特別な機能を持たせることができる。胴部16は、図1に例示されるプリフォーム1においては、第二の中間層20aを有していない。ただし、例えばバリア性に優れた中間層を胴部16に設けるなどの構成としてもよい。これによりさらなる多機能性を有するプリフォーム1とすることができる。
プリフォーム1は、第二の中間層20aと、外層18a、及び内層19aのそれぞれとの間に接着層や接着剤を有していない。また、第二の中間層21と、底部外側層23、および底部内側層22のそれぞれとの間に接着層や接着剤を有していない。このため、プリフォーム1は使用後に、再資源化が妨げられることがない。一方で、各層の間が固く接着されているわけではないので外力によって層間剥離が起きてしまう可能性がある。そこで、第二の中間層20aが口部10の端まで延びずに構成されていることによって破壊の起点になりやすい各層の界面の端が口天面15にて露出せず層間剥離が生じにくくされている。ただし、製造を容易にするために、各層の界面の端を口天面15にて露出させて構成してもよい。
また、同様に底部も、底部の外側に中間層21が露出しない構成であれば層間剥離が防止される効果があり、好適である。ただし、製造を容易にするために、底部の外側には底部外側層23のみが露出している構成としてもよい。
次に、口部10を中心に実施形態を詳述する。プリフォーム1は、図1に例示されるように、第二の中間層20aが、口部10の上端から下端にかけて連続して設けられている。このとき、好ましくは第二の中間層20aの端がおねじ12の上端である、いわゆるねじ始まり位置を上端として設けられているとよい。そして、第二の中間層20aが、ねじ始まり位置を上端として設けられていることで、後述するように第二の中間層が耐熱材料を用いていることから、ねじの噛み合わせがずれることがない。
図1に例示されるように、第二の中間層20aは、口部10の下端までの範囲に設けられている。耐熱材料を用いた第二の中間層を口部10の範囲で設けることとすることで、後にブロー成形によりペットボトルに成形する際に、延伸しない部分にのみ第二の中間層を有する構成となる。これにより、胴部16の延伸部分は図1に例示されるように、中間層を有さないこととすることができる。本開示における中間層が胴部16にはみ出して設けられた場合には、製造上、型崩れが起こりやすい。よって、胴部16に第二の中間層20aを有さない構成は優れている。ただし、ここでいう第二の中間層20aが口部10にのみ設けられていることは、別個の中間層が胴部16に別個の中間層を設けることを排除するものではない。
第二の中間層20aが口部の範囲にのみ設けられた場合のPETボトルを図14に示した。また、中間層20が底部にのみ設けられた場合のPETボトルを図15に示した。
また、そのもととなるプリフォームを図16の(a)(b)にそれぞれ示した。
第二の中間層20aの厚みは、均一に設けられている。均一に設けられていることにより、熱が加わり基材層が変形する場合であっても、ゆがむことが少ない。ただし、口部10のサポートリング14の基材層中に、第二の中間層20aが、口部10から径方向に突出して設けられていてもよい。このようにするほうが容易にプリフォーム1を製造することができる。口部10の構成としては、基材層に囲まれて、第二の中間層がフランジのように、サポートリング14の基材層中に突出して設けられ、そのほかの部分の第二の中間層20aの厚みは、均一であるとの構成を有していてもよい。
第二の中間層20aは、全体の重量から第二の中間層20aの重量を除した値が、280ミリリットルペットボトル用のプリフォーム1においては、1.5重量パーセント~3重量パーセントであることが好ましい。これにより、プリフォーム1をブロー成形などにより成形したペットボトル2のリサイクル性が向上する。ペットボトルのサイズによってこの比率は異なりうるものの、この比率は口部の重量に対しての割合としては、5~10重量パーセントに相当する。第二の中間層20aの重量が少ないほど、リサイクル性は高まる。ただし、図示しない2リットルペットボトル用や、350ミリリットルペットボトル用のプリフォームにおいては、当然その比率は異なる。2リットルペットボトル用においても、3重量パーセントであればリサイクル性としては、上記の280ミリリットルペットボトル用のプリフォーム1と、異なるところはない。
中間層21は、全体の重量から中間層21と第二の中間層を合計した重量の値を除した値が、280ミリリットルペットボトル用のプリフォーム1においては、3重量パーセント~5重量パーセントであることが好ましい。これにより、プリフォーム1をブロー成形などにより成形したペットボトル2のリサイクル性が向上する。第二の中間層と中間層の合計が5重量パーセントを下回ることで、リサイクル性は一定の水準を満たすことになり、本開示のプリフォーム1はこの水準を満たすものである。
第二の中間層20aには、各種機能を発揮する材料を選択することができる。例えば、第二の中間層20aには、紫外線等の光の遮断性や、水蒸気等のガスバリア性を付与する材料を用いることができる。ここでの第二の中間層20aは、耐熱材料を用いることが好適である。ここで耐熱材料とは、ポリアリレートやナイロンなどの耐熱性を有する物質や、長瀬産業株式会社のTRITANTMを用いてもよい。熱可塑性ポリエステル樹脂で耐熱性に優れたものも、本発明の耐熱材料において用いることができる。
例示されたプリフォーム1の基材層である外層18a、及び内層19aの材料としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンや、エチレン-ビニルアルコール共重合体、植物等を原料としたポリ乳酸等のブロー成形が可能な種々の熱可塑性樹脂を用いることができる。しかしながら、外層18a、及び内層19aは、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート等のポリエステル、特に、ポリエチレンテレフタレートが主成分のPET層とされることが好ましい。なお、上述された樹脂には、成形品の品質を損なわない範囲で種々の添加剤、例えば着色剤、紫外線吸収剤、離型剤、滑剤、核剤、酸化防止剤、帯電防止剤を配合することができる。
プリフォーム1の外層18a、及び内層19aを構成するエチレンテレフタレート系熱可塑性樹脂としては、エステル反復部分の大部分、一般に70 mol%以上をエチレンテレフタレート単位が占めるものであり、ガラス転移点(Tg)が50 ℃以上、90 ℃以下であり、融点(Tm)が200 ℃以上、275 ℃以下の範囲にあるものが好適である。エチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルとして、ポリエチレンテレフタレートが耐圧性等の点で特に優れているものの、エチレンテレフタレート単位以外に、イソフタル酸や、ナフタレンジカルボン酸等の二塩基酸と、プロピレングリコール等のジオールからなるエステル単位を少量含む共重合ポリエステルも使用することができる。
ポリエチレンテレフタレートは熱可塑性の合成樹脂の中では生産量が最も多い。そして、ポリエチレンテレフタレート樹脂は、耐熱性、耐寒性や、耐薬品性、耐摩耗性に優れる等の種々の特性を有する。更に、ポリエチレンテレフタレート樹脂はその原料に占める石油の割合が他のプラスチックと比べて低く、リサイクルも可能である。このように、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする構成によれば、生産量の多い材料を用いることができ、その優れた種々の特性を活用することができる。
ポリエチレンテレフタレートは、エチレングリコール(エタン-1,2-ジオール)と、精製テレフタル酸との縮合重合によって得られる。ポリエチレンテレフタレートの重合触媒として、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、及びアルミニウム化合物の少なくとも一つが用いられることが好ましい。これらの触媒が用いられることによって、アンチモン化合物が用いられるよりも、高い透明性を有し、耐熱性に優れた容器を形成することができる。
プリフォーム1の全体に対する第二の中間層20aの量が多すぎるとプリフォーム1の使用後に再資源化が妨げられてしまう。一方で、プリフォーム1の全体に対する第二の中間層20aの量は少なすぎると、射出成形性が低下してしまう。より詳細には、プリフォーム1の成形の際に第二の中間層20aが充填されにくくなり、これを無理やり押し込むと変質や偏肉が生じて好ましくない。したがって、プリフォーム1の全体に占める第二の中間層20aの割合は1.5重量パーセント~3重量パーセントであることが好ましい。
また、第二の中間層20aは、口部のみに設けられており、他の胴部などには設けられていない構成とすることが好ましい。口部10の変形による液漏れ等を防止する機能を持たせるとともに、再資源化を容易にすることができるためである。製造上も、複数の中間層を異なる材質で多数とすることは容易ではない。この観点からは、中間層21と第二の中間層20aは同じ材料からなることが好適である。
なお、第二の中間層20aは単層に限らず多層で構成されていても良く、例えば耐熱材料を用いた耐熱層の他に、酸素バリア層を複数含んで構成されていても良い。例えば、プリフォーム1は、5層構造(PET層(外層18a)/酸素バリア層/耐熱層/酸素バリア層/PET層(内層19a))とされていても良い。第二の中間層20aの層数が更に増やされていても良く、プリフォーム1を最大で、7層構造とすることもできる。第二の中間層20aが多層で構成されることによって、第二の中間層20aの機能をより高めたり、第二の中間層20aに複数の機能を持たせたりすることができる。
本実施形態に係るプリフォーム1の製造方法では、口部10の基材層中において均一な厚みの第二の中間層20aが成形される。ただし、第二の中間層20aが口部10のサポートリング14内に突出するように成形されてもよい。このように製造されるプリフォーム1によれば、第二の中間層20aの延伸後において、延伸しない部分である口部10のみに中間層の範囲がとどまっていることから、中間層の延伸による形崩れ等を防止することができる。そして、口部のみに中間層を設けることで、口部10の耐熱性を確保しつつ、第二の中間層20aの成形材料の量を減少することができるため再資源化が容易となる。
次に、胴部16の本発明の実施形態を詳述する。図1に示されているように、胴部は基材層のみからなる単一の層として設けられている。ただし、この形態に限定されるものではなく、胴部は、別の酸素バリア層からなる別の中間層が設けられていてもよい。このようにすることでより多機能なプラスチックボトルを提供することができる。ただし、胴部16は基材層のみの単一の層を有しているとすることで、使用される耐熱材料等が、中間層21及び第二の中間層20aに使用される量だけで済み、その結果、再資源化が容易であったり、製造上も多種類の層で構成されたプリフォームの製造ではないので、容易に製造することができる。
次に、底部17の本発明の実施形態を詳述する。プリフォーム1は、図1に例示されるように、中間層21が、口部10の第二の中間層20aとは別個に独立して、底部に設けられている。便宜上軸方向に、口部10、胴部16、底部17の順に、口部10の方向を上、底部17の方向を下とする。底部17の下端から、下より5mm上方向に離隔した位置まで、連続して中間層21が設けられている。このように構成することによって、プラスチックボトルにおいて加熱時に転倒防止の効果がある。しかし、5mmという数値に中間層21の範囲は限定されるものではない。延伸倍率がごく低い部分である、下端から軸方向に、上に向けて最大約10mmの範囲を底部と定義することとする。通常、ペットボトルの下部と胴部の境にはリブが形成され、そのリブの下は下部である。ペットボトルのサイズによりこの値は異なりうる。そうすると、底部17の下端から5mm上の位置までに連続して設けられていなくとも、底部17の範囲内に中間層21を設けられていればよい。延伸倍率がごく低い部分のみに中間層を有する構成とすることで、形崩れを防止することができるため、好適である。
また、底部17の下端から5mm軸方向で上にむかって離隔した位置までの間の任意の位置で、中間層21は途切れる構成としてもよい。このようにすることで、耐熱材料の使用量を減らすことができ、また中間層21が底部17の下端に露出しない構成とすることで、層間剥離を防止し、より一層安全なプラスチックボトルに係るプリフォームとすることができる。なお、任意の位置とは底部の下端から軸方向に口部に向かって1mm~2mmであればよい。このようにすることで十分層間剥離を防止することができる。なお、底部17以外の部分には、中間層21は存在しない構成とするのが好適である。このようにすることで、再資源化の際に耐熱材料の使用量を減らすことができることから、再資源化が容易となる。ただし、この記述は、第二の中間層20aの存在に影響をあたえるものではない。
そして、次に、プリフォーム1の製造方法の一例を詳細に説明する。図2は、プリフォーム1の製造装置の一例として、射出成形装置30のホットランナーノズル31の概略が示された断面図である。射出成形装置30は、内部にスクリュを備える図示せぬ加熱シリンダと、ホットランナーノズル31と、金型32とを備えている。射出成形装置30は、成形材料が、加熱シリンダで、例えば270 ℃~300 ℃に加熱されることによって溶融可塑化され、スクリュによって、ホットランナーノズル31を介して金型32に送り出されるように構成されている。
ホットランナーノズル31は軸方向に長い構成である。ホットランナーノズル31は、直線状流路33aと、第1の円筒状流路33bと、第2の円筒状流路34と、開閉弁の一例であるチェック弁35とを有している。各流路は、略軸方向に延びている。ホットランナーノズル31は、第1の注入口36と、第2の注入口37と、射出口38とを更に有している。
射出口38は、ホットランナーノズル31の一端の中心に形成されている。そして、射出口38は金型32と連通している。一方で、第1の注入口36、及び第2の注入口37はホットランナーノズル31の他端寄りの側面にそれぞれ形成されている。そして、第1の注入口36、及び第2の注入口37のそれぞれは別々の加熱シリンダと接続されている。すなわち、ホットランナーノズル31は、第1の注入口36、及び第2の注入口37からそれぞれ第1の成形材料、及び第2の成形材料を注入することができるように構成されている。成形材料は、第1の注入口36、及び第2の注入口37から射出口38に向かって流れる。このため、図1において下側に示されているホットランナーノズル31の他端が成形材料の上流側となる。
直線状流路33aは、第1の注入口36から径方向に延びる流路と連通し、ホットランナーノズル31の中央部を射出口38まで直線状に延びている。第1の円筒状流路33bは、直線状流路33aから分岐した後に、直線状流路33aの径方向外方を通り、射出口38に近い第1の合流点39aで直線状流路33aと合流している。第2の円筒状流路34は、第2の注入口37から径方向に延びる流路と連通し、直線状流路33aと、第1の円筒状流路33bとの間に延びて第1の合流点39aよりも上流の第2の合流点39bで直線状流路33aと合流している。
ホットランナーノズル31は、第2の合流点39bに、第2の円筒状流路34を閉鎖するチェック弁35を有している。チェック弁35は、第2の合流点39bにおける直線状流路33aを通過する第1の成形材料と第2の円筒状流路34を通過する第2の成形材料との射出圧の差に応じて軸方向に動くように構成されている。そして、チェック弁35は、第2の成形材料の射出圧が高い場合には第2の円筒状流路34を開放するように構成されている。このような作用を果たすのであればチェック弁35は、他の構成であっても構わない。
複数に分割されて構成される金型32は、プリフォーム1に対応する形状の空隙であるキャビティ32a、及びプリフォーム1の底部17に対応する位置にゲート32bを有している。キャビティ32aは、ゲート32bを介して、ホットランナーノズル31の射出口38に連通している。金型32には、金型32を加熱する図示せぬヒータと、金型32を冷却する図示せぬ冷却機とが設けられている。金型32は、ヒータによって加熱されたキャビティ32aに溶融した成形材料が注入、及び加圧された後に冷却機によって冷却され、プリフォーム1が成形されるように構成されている。
図3は、共射出される各成形材料の射出率と時間との関係が模式的に示されたグラフである。射出率は、単位時間[s]当たりに射出される各成形材料の質量[g]で示されている。そして、ここでは、第1の成形材料には、ポリエチレンテレフタレート(以下では、PET樹脂aと称す)が注入され、第2の成形材料には、ポリアリレート(以下では、耐熱性樹脂bと称す)が注入される例が示されている。そして、例えば、プリフォーム1の製造方法は、図3に示されるように、第1の成形材料を射出する工程(ステップS1)と、第1の成形材料より高い射出率で第2の成形材料を射出する工程(ステップS4~ステップS5)と、第2成形の材料より高い射出率で第1の成形材料を射出する工程(ステップS5)とを有し、第1の成形材料より高い射出率で第2の材料を射出する工程(ステップS4~ステップS5)において、第2の成形材料の射出率を漸増する工程(ステップS4)を含む。そして、この方法によれば、製造されたプリフォーム1の第二の中間層20aの延伸後においてもその機能を確保しつつ、第二の中間層20aの成形材料の量を減少することができる。
この図の射出タイミングに従い射出成形を行うことで、口天面に第二の中間層20aが露出していない、本発明のプリフォームの一形態を成形することができる。
まず、PET樹脂aが射出される(ステップS1)。図4は、ホットランナーノズル31からキャビティ32aへと各成形材料が流動する状態(ステップS1)の概略が示された断面図である。PET樹脂aは、第1の注入口36(図2参照)から、直線状流路33a(PET樹脂a1)、及び第1の円筒状流路33b(PET樹脂a2)のいずれかを経由して第1の合流点39aで合流し、その後、射出口38、ゲート32bの順に流動してキャビティ32aに充填される。図4に例示されるように、直線状流路33a(PET樹脂a1)、及び第1の円筒状流路33b(PET樹脂a2)のそれぞれを経由したPET樹脂aの流れがPET樹脂層A1、及びPET樹脂層A2を構成し、PET樹脂層Aとしてキャビティ32aに充填されている。
この段階では、耐熱性樹脂bは射出されておらず、PET樹脂a1の射出圧を受けるチェック弁35によって第2の円筒状流路34は閉鎖されている。
次に、PET樹脂aが、予め定められた射出率まで下げられて射出される(ステップS2)。この下げられた射出率は、次の段階において射出される耐熱性樹脂bの射出率との兼ね合いで決まる。ここで、ステップS1においても、この予め下げられた射出率でPET樹脂aが射出された場合に口部10の寸法不良やヒケ等の賦形不良が生じないのであれば、ステップS2が省略されても良い。
次に、PET樹脂a1より高い射出率で耐熱性樹脂bが射出される(ステップS3)。図5は、ホットランナーノズル31からキャビティ32aへと各成形材料が流動する状態(ステップS3)の概略が示された断面図である。耐熱性樹脂bが射出される圧力によってチェック弁35が動き、第2の円筒状流路34は開放される。そして、図5に例示されるように、直線状流路33aを経由したPET樹脂層A1と、第1の円筒状流路33bを経由したPET樹脂層A2との間に耐熱性樹脂層Bが形成されている。耐熱性樹脂層Bは、成形型に接触せずに流動して温度の低下が少なく粘度が高まらないのでPET樹脂層A1、及びA2よりも高い速度で流動している。
次に、耐熱性樹脂bの射出率が同程度に保たれながら射出される(ステップS4)。図6は、ホットランナーノズル31からキャビティ32aへと各成形材料が流動する状態(ステップS4)の概略が示された断面図である。
次に、耐熱性樹脂bの射出率が漸減して零となるまで射出されるとともにPET樹脂aの射出率が漸増するように射出される(ステップS5)。耐熱性樹脂bの射出率が漸減することによって耐熱性樹脂層Bが徐々に薄くなるように射出された後に途切れる。そして、耐熱性樹脂bの射出率が零となることによってチェック弁35が動き、第2の円筒状流路34が閉鎖される。
次に、PET樹脂aが予め定められた射出率に維持されて射出される(ステップS6)。図7は、ホットランナーノズル31からキャビティ32aへと各成形材料が流動する状態(ステップS6)の概略が示された断面図である。図7に例示されるように、耐熱樹脂層BがPET樹脂層Aによって押し込まれていく。
次に、ステップ2と同様に、PET樹脂aが、予め定められた射出率まで下げられて射出される。(ステップ7)
次に、ステップ3と同様にPET樹脂a1より高い射出率で耐熱性樹脂dが射出される(ステップS8)。
最後に、キャビティ32aの内部が充満されるまでPET樹脂aと耐熱性樹脂dが射出される(ステップS9)。PET樹脂aと耐熱性樹脂dの射出率が漸減し、そして、キャビティ32aの内部が充満されるとPET樹脂aと耐熱性樹脂dの射出率が零となり、その後は、PET樹脂aと耐熱性樹脂dが逆流しないように保圧が行われる。そして、キャビティ32aの内部で成形材料が冷却された後に、金型32が開き、成形されたプリフォーム1が取り出される。
また、この射出タイミングとは別の製造方法として、以下の方法を挙げることができる。すなわち、PET樹脂aと耐熱性樹脂dを同時に射出終了した場合、ホットランナーノズル31には耐熱性樹脂dとPET樹脂aが両方とも残ってしまう。そのため、製造方法として、耐熱性樹脂bと耐熱性樹脂dを全く同様の材料とし、かつ次のプリフォームを製造開始する際に、時間をおかずに連続して製造するとともに、同時に射出を再開することで、効率よく中間層を有するプリフォームの製造をすることができる。ただし、上記の製造方法によると、製造されるプリフォームは口天面15に中間層が露出するプリフォームとなることから、本発明の製造方法はこれに限られるものではないのは当然である。
図12は、ステップ6、ステップ9のキャビティ32a内の状況を示したものである。(a)図と(b)図は、後に口部10の基材層となる部分101と、中間層となる部分102を示したものである。キャビティ32aの中を、口部10となる部分101を上とすると、上方向に口部の基材層となる部分101と中間層となる部分102が流動していく。(ステップ6)
そして、(c)図は、口部の基材層となる部分101と中間層となる部分102が所定の場所に到着し、底部の第二の中間層となるべき部分112が射出を終え、すべての射出が終了した時点を現したものである。(ステップ9以降)
このように共射出成形が行われ、本開示のプリフォームが成形される。
なお、各成形材料を射出する圧力や、射出率はそれぞれの粘度の差等に応じて適宜設計される。
以上のように、本実施形態に係るプリフォーム1の製造方法は、第二の中間層20aを均一に成形する手順を含んで構成される。
例えば、プリフォーム1の製造装置は、ホットランナーノズル31が、第1の注入口36から延びる直線状流路33aと、直線状流路33aから分岐した後に第1の合流点39aで合流する第1の円筒状流路33bと、第2の注入口37から直線状流路33aと第1の円筒状流路33bとの間に延びて第1の合流点39aよりも上流の第2の合流点39bで直線状流路33aと合流する第2の円筒状流路34と、第2の合流点39bにおける直線状流路33aを通過する第1の材料と第2の円筒状流路34を通過する第2の材料との射出圧の差に応じて第2の円筒状流路34を開放するチェック弁35とを有し、プリフォーム1に対応するキャビティ32a、及びプリフォーム1の底部17に対応する位置にゲート32bを有する金型32と、ゲート32bに連通するホットランナーノズル31とを備える。
なお、製造方法は、他の方法であっても構わない。例えば、PET樹脂a、耐熱性樹脂b、PET樹脂aの順に可塑化して押し出して耐熱性樹脂bがU字状に内包された溶融樹脂塊(ビレット)を生成し、これを圧縮成形することでプリフォーム1が製造される方法であっても良い。
成形されたプリフォーム1は、箱積み、いわゆるパレタイジングされて倉庫等でいったん保管されても良く、そのまま、引き続き、次の工程へと進められても良い。すなわち、プリフォーム1の成形と、ブロー成形とが別の場所や装置で行われる、いわゆるコールドパリソン方式(2ステージ方式)であっても良く、プリフォーム1の成形と、ブロー成形とが同じの場所や装置で行われる、いわゆるホットパリソン方式(1ステージ方式)であっても良い。更に、プリフォーム1の成形から内容物の充填等に至るまでの製造工程がインラインで連続的なものであっても良い。
次に、本実施形態に係るプリフォーム1からボトル状に成形する方法の一例を詳細に説明する。プリフォーム1がボトル状に成形されるにあたってまず、プリフォーム1の加熱が行われる。図8は、プリフォーム1の加熱装置40の一例が示された断面図である。なお、図8は、プリフォーム1の搬送方向に対して垂直方向の断面を示す。
加熱装置40は、搬送装置41と、ヒータ42とを備えている。搬送装置41は、プリフォーム1を周方向に均等に加熱するために、プリフォーム1の軸を中心に回転させながら搬送するように構成されている。ヒータ42は、複数の例えばハロゲンランプによって構成され、ブロー成形に適した温度例えば80 ℃~140 ℃にプリフォーム1を加熱するように構成されている。更に、加熱装置40は、ヒータ42からの熱をプリフォーム1に反射させるための反射板43や、ヒータ42からの熱を加熱装置40の外方へ逃がさないようにするための遮蔽部材44等を備えていても良い。なお、図8の加熱装置40では、プリフォーム1は口部10が下側を向いた状態で搬送、及び加熱されている。
加熱されたプリフォーム1は次に、ブロー成形機によって、プラスチックボトル例えばPETボトル2に成形される。図9は、プリフォーム1と、ブロー成形後のPETボトル2とが模式的に示された断面図である。ブロー成形機の一例としての二軸延伸ブロー成形装置50は、金型51と、延伸ロッド52と、図示せぬ高圧エア供給装置と、これらを制御する図示せぬ制御装置とを備えている。なお、図9には、下向きのブロー成形方法が例示されているものの、材料が重力の影響を受けにくい上向きのブロー成形方法が用いられても良い。
ここで、PETボトル2は、上部30と、胴部70と、下部80とを有する。ブロー成形の前後においておおよそ、プリフォーム1の口部10がPETボトル2の上部30に対応し、プリフォーム1の底部17がPETボトル2の下部80に対応する。
金型51は、形成されるPETボトル2に対応した形状を有しており、例えば、胴部70に対応して半割りで構成される胴金型51aと、下部80に対応した底金型51bとを有する。金型51の表面の温度は、PETボトル2の用途、特に耐熱性に応じて例えば30 ℃~130 ℃に制御されるように構成されている。
延伸ロッド52は金型51内を伸縮自在に構成される。そして、延伸ロッド52は、金型51に口部10の取り付けられたプリフォーム1の首部15、及び胴部16を縦(軸)方向に延伸するように構成される。高圧エア供給装置からは、温度調節された高圧エアhが吹き出されるように構成される。高圧エアhは、金型51に取り付けられたプリフォーム1の内部に供給されれば良く、延伸ロッド52から吹き出されても良く、延伸ロッド52とは別の部材から吹き出されても構わない。高圧エアhは、プリフォーム1の胴部16を横(径)方向に延伸するとともに、延伸の後に胴部16の表面温度を下げるように構成される。
加熱されたプリフォーム1は、二軸延伸ブロー成形装置50の金型51に装着される。その後には、金型51に装着されたプリフォーム1の胴部16が延伸ロッド52によって縦方向に延伸される。この際のプリフォーム1からPETボトル2への縦延伸倍率は1.8倍以上、4.0倍以下であることが好ましい。
ここで、縦延伸倍率とは、プリフォーム1のサポートリング14の下面から底部17の下端までの長さに対するPETボトル2のサポートリング14の下面から下部80の下端までの長さの比である。非晶部と、結晶部との集合体であるアモルファス構造を有するプリフォーム1の分子は延伸によって配向結晶化がおこり、その結果として、PETボトル2の強度や、剛性、耐熱性等が上がる。縦延伸倍率が1.8未満の場合にはPETボトル2(プリフォーム1)の分子の配向性が上がらず、一方で、縦延伸倍率が4.1以上の場合にはPETボトル2が成形しにくくなる。
更に、縦方向に延伸されたプリフォーム1の胴中部16が高圧エアhによって横方向に、金型51に当たるまで延伸される。この際のプリフォーム1からPETボトル2への横延伸倍率は1.5倍以上、6.0倍以下であることが好ましい。
ここで、横延伸倍率とは、プリフォーム1の胴中部16における胴径に対するPETボトル2の胴部70における胴径の比である。なお、胴部70の対向するそれぞれの壁面における肉厚の中心間の距離が胴部70の胴径とされる。プリフォーム1の分子は横方向の延伸によっても同様に配向結晶化がおこり、その結果として、PETボトル2の強度や、剛性、耐熱性等が上がる。横延伸倍率が1.5未満の場合にはPETボトル2(プリフォーム1)の分子の配向性が上がらず、一方で、横延伸倍率が6.1以上の場合にはPETボトル2が成形しにくくなる。
このように、二軸延伸ブロー成形装置50による成形が、縦方向の延伸倍率が1.8倍以上、4.0倍以下、横方向の延伸倍率が1.5倍以上、6.0倍以下の二軸延伸ブロー成形である構成によれば、プリフォーム1からより良好なブロー成形性で軽量化されたPETボトル2を成形することができる。
以上のように、本実施形態に係るPETボトル2はプリフォーム1が、二軸延伸ブロー成形装置50でボトル状に成形される。そして、二軸延伸ブロー成形装置50が用いられることによって効果的に、本実施形態に係るプリフォーム1から良好なブロー成形性で軽量化されたPETボトル2を成形することができる。
なお、本実施形態においては、成形されるPETボトル2の用途が限定されない。したがって、PETボトル2は、耐圧性や酸素バリア性等を有するように成形されても良い。
次に、本実施形態に係るプリフォーム1から形成されるPETボトル2の構成を詳細に説明する。図10は、本実施形態に係るプリフォーム1から形成されたPETボトル2が示された正面図である。図10に例示されたPETボトル2は軸方向とは垂直方向の断面視が略円形の丸ボトルである。上述されたように、PETボトル2は、上部30と、胴部70と、下部80とを有する。そして、上述されたように、PETボトル2の上部30の構成はプリフォーム1の口部10の構成と同様である。
上部30は、中身の充填口、及び注出口となり、上部30に、図示せぬ蓋が取り付けられることによってPETボトル2が密閉される。
胴部70は、上部と隣接する部分が上方から下方に向かって拡径する略円錐台の形状を有している。胴部において、該略円錐台の形状の部分と底部の間の部分は、円筒の形状を有している。胴部70は、圧力吸収パネルや、横溝、縦溝を有していても良い。
図13に示すように下部80はその上側が、胴部70の下側に連なる。図13に例示された下部80はいわゆるペタロイド形状である。下部80は、凹部81や、脚部82、谷部83等を有している。下部80の径方向中央に位置する凹部81は、PETボトル2の内側(軸方向上側)に向かって突出するように構成されている。脚部82は、凹部81から径方向外側に放射状に、軸方向の下側に向かって延びている。脚部82は、PETボトル2の接地面となる。隣り合う脚部82の間には谷部83が形成されている。谷部83は、凹部81から、径方向外側、かつ軸方向の上側に向かって延びている。下部80の構成は、図13の例示に限らず、内容物に対応した形状、例えば放射状にリブが設けられた形状であっても良い。
図11は、PETボトル2の断面図である。更に、図11では、上部30の領域Aが拡大されて示されている。PETボトル2は、上部30が多層に構成されて、外層18と内層19との間に第二の中間層20を有する。PETボトル2は、プリフォーム1と同様に、第二の中間層20が、上部10の基材層中に構成されていることが好ましい。このとき、図1、図16に示されるプリフォームにおける第二の中間層20の上端が、ねじ始まり位置と同じ位置もしくはその上であると、キャップとおねじの噛み合わせが悪くなることがなくなり、良い。
口天面より1mm下から第二の中間層が始まり、サポートリング下3mmまで第二の中間層が連続して存する構成では、ねじ始まり位置より上から第二の中間層が形成されることになり、耐熱性樹脂を用いた第二の中間層の場合、口部の耐熱性が増し、好ましいこととなる。ただし、この口天面下1mm~サポートリング下3mm範囲に連続して第二の中間層20があればよい。ただし、成型時の延伸しやすさを考慮すると、口天面より3mm下から始まり、サポートリングから下に4mmまでの第二の中間層20とし、サポートリング下は短い第二の中間層20としたほうが、成形性は向上するためより好ましい。
更に図11では、下部80の領域Bが拡大されて示されている。PETボトル2は、下部80が多層に構成されて、底部内側層22と底部外側層23との間に中間層21を有する。PETボトル2は、プリフォーム1と同様に、中間層21が、下部80の基材層中に構成されていることが好ましい。このとき、中間層21が、下部80の延伸率が低い部分にとどまっていると、型崩れのないペットボトルとなり、なおよい。
このため、延伸率が低いプリフォームの底部17において、図1、16に示すプリフォームの底部17の中間層21は、プリフォームの底部を下、口部を上とした場合に、プリフォームの下端より上に向けて1mm離隔した位置から、5mm離隔した位置までの間に設けられていることが好ましい。ただ、プリフォームの下端より上に向けて1mm離隔した位置から、5mm離隔した位置まで連続して設けられているとさらに好適である。
なお、第二の中間層20及び中間層21の種類や、材料、量、層構成等については上述されたプリフォーム1と同様である。
PETボトル2の特にサポートリング14よりも下の形状は、図10等の例示に限らず、プリフォーム1がブロー成形されることによって形成されるものであればどのような形状であっても良い。例えば、本実施形態においては、図10に示された丸ボトルを好適に形成することができる。しかしながら、本実施形態において形成されるプラスチックボトルは丸ボトルには限定されず、角ボトルであっても良い。更に、胴部70の幅が下方に向けて拡開する形状であっても良い。そして、胴部70に形成される圧力吸収パネルや、横溝、縦溝の形状についても自由に設計することができる。
本実施形態に係るPETボトル2にはサイズによる限定はなく、種々のサイズに対して適用することができる。例えば、PETボトル2の容積が100 ml以上、1000 ml以下であっても良く、特に、容積が200 ml以上、700 ml以下であるPETボトル2に対して好適である。PETボトル2の全高は120 mm以上、260 mm以下であっても良く、胴部70の胴径は40 mm以上、75 mm以下であっても良い。
更に、本実施形態に係るPETボトル2は軽量化ボトルを対象として好適に用いることができる。PETボトル2の質量は例えば、200 mlの内容積に対しては12 g以上、14 g未満、550 mlの内容積に対しては13 g以上、15 g未満であると良い。そして、特に、軽量性を有し、中間層20の機能を確保しながらPETボトル2の強度を保つ観点から、PETボトル2の内容積に対する質量の比の値が0.0125 g/ml以上、0.0700 g/ml以下であることが好ましい。
上述された材料が射出成形されたプリフォーム1がブロー成形されることによってプラスチックボトルを作製することができる。そして、材料として、ポリエチレンテレフタレートが用いられることによって、本実施形態に係るプラスチックボトルの一例としてのPETボトル2が作製される。そして、PETボトル2と、充填される液体とによって充填体が構成される。充填体は、PETボトル2の上部30から飲料や調味料等の液体が充填され、上部30に装着される図示せぬ蓋によって密封されることによって製造される。
なお、PETボトル2への内容物の充填方法についても限定されない。したがって、PETボトル2は、ホット充填に用いられても、アセプティック充填に用いられても良い。
以上のように、PETボトル2は、上部30、胴部70、及び下部80を軸方向に順次有し、上部30が多層に構成されて、外層18と内層19との間に第二の中間層20を有する。このような構成によれば、第二の中間層20の機能を確保しつつ、第二の中間層20の成形材料の量を減少することができる。もちろん成形材料を削減した分、別の中間層を別の部位に設けることもできる。
以下に、実施例を示して、本開示を更に詳細、かつ具体的に説明する。しかしながら、本開示は、以下の実施例に限定されるものではない。
<材料、及び製造方法>
[実施例1]
外層18、及び内層19にはポリエチレンテレフタレート(PET樹脂a)が用いられ、第二の中間層20a及び中間層21には、ポリアレート(耐熱性樹脂b)が用いられ、全体で22gのプリフォーム1が図3等に示される方法によって作製された。プリフォーム1の全体に占める耐熱性樹脂bの割合は5重量パーセントとされた。
そして、プリフォーム1から、図10等に示される満注容量が530 mlのPETボトル2がブロー成形によって作製された。PETボトル2には、510 mlの水が充填された後に蓋が装着され、充填体が作製された。
実施例1に係るプリフォーム1の中間層21は、底部の基材層中に連続して設けられている、中間層21は、底部の下端から、口部に向かって軸方向に5mm離隔した位置までの範囲内に連続して設けられている、中間層21は耐熱性樹脂bより成っている等といった本実施形態に係る特徴を有していた。
また、実施例1に係るプリフォームは第二の中間層20も備え、第二の中間層は、例えば均一の厚みである、口部の基材層に囲まれている等といった本実施形態に係る特徴を有していた。
実施例1のプリフォームは21.8gであった。このプリフォームをブロー成形をし、図10のような、容量が280ミリリットルで満注容量295ミリリットルのPETボトルが作製された。PETボトルが作製された。ブロー成型機にはLB01が用いられた。
[比較例1]
比較例1に係るプリフォームでは、口部10に第二の中間層20aは設けられておらず、底部17にも中間層21は設けられていなかった。したがって、比較例1では、本実施形態に係る特徴を有していなかった。比較例1のプリフォームは21.8gであった。このプリフォームをブロー成形をし、図10の容量が280ミリリットルで満注容量295ミリリットルのPETボトルが作製された。ブロー成型機にはLB01が用いられた。
<評価方法>
(耐熱層の材料の使用量)
実施例1並びに比較例1の各PETボトルに使用された耐熱層の材料の質量によって使用量の削減が達成できているか否かが判定された。使用量の削減の判定には、各PETボトル(各プリフォーム)の全体に占める耐熱性樹脂bの割り合いが20 wt%より大か、以下か、及び5 wt%より大か、以下かが閾値として設定された。表1には、各PETボトルにおける耐熱層の材料使用量の削減率についての評価の結果が示され、◎:削減率が極めて高い、○:削減率が高い、×:削減率が低い、で表記されている。
(耐熱性評価)
実施例1並びに比較例1の各ペットボトルに耐熱層を設けるかによって、耐熱性が十分に達成できているか否かが判定された。
実施例1並びに比較例1の各ペットボトルの耐熱性が十分に達成できているかが判定された。耐熱性の判定には、保存条件を70度、保存期間を1週間として常温水を充填し、保温庫に保管した後、ペットボトルの底部が変形しているか、口部が変化しているかをそれぞれ評価した。それをまとめたものが表2である。
口部の第二の中間層に関しては、比較例1でネジ山径の膨張変化量を測定したところ、0.35mmであり、ネジ谷径は0.14mm、サポートリング径は0.76mm、サポートリング下径は1.52mmであった。これに対し、実施例1では、ネジ山径で0.09mm、ネジ谷径で0.05mm、サポートリング径で0.22mm、サポートリング下径で0.35mmと、いずれも低い数値であった。そのため、耐熱性としては、比較例1よりも実施例1のほうが優れているものとされた。
また、底部の中間層に関しては、ゲート深さの変化量を比較例1と実施例1で比較した。ゲート深さとは、ボトル底部接地面から底部中心部にある凹部81までの高さである。
その結果、比較例1の変化量は6.3mmであったのに対し、実施例1は5.0mmの変化量であり、実施例1のほうが変化量が少なく優れていることが示された。
(総合評価)
上述された耐熱層の材料の使用量、耐熱性評価1、耐熱性評価2に基づいて、実施例1~2並びに比較例1~2の各PETボトル(各充填体)の総合評価がなされた。表1には、総合評価の結果が示されている。総合評価は、◎:極めて良好、○:良好、×:適性なし、で表記されている。
上述された実施例から以下の点が導き出された。実施例1に係るPETボトル2(充填体)では、耐熱層の材料の使用量の削減率が高く構成されていながら、耐熱性を充分に有していた。比較例1では、耐熱性が不足していた。
以上の実施例の結果から、口部10及び底部17に中間層が設けられることによって、耐熱性を備え、かつ耐熱層の材料の使用量が削減されることが示された。したがって、本実施形態では、中間層21の機能が確保されていながら、中間層21の成形材料の量が減少されたPETボトル2、プリフォーム1、及びプリフォーム1の製造方法を提供することができることが示された。