以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施形態の詳細を説明する。まず、本実施形態に係るPET(PolyEthylene Terephthalate:ポリエチレンテレフタレート)ボトル成形用のプリフォーム1(予備成形体)の構成を詳細に説明する。図1は本実施形態に係るプリフォーム1の一例が示された断面図である。プリフォーム1は、有底筒状であって、口部10、首部15、胴中部16、及び底部17を軸方向に順次有する。プリフォーム1が延伸されることによってボトル状に成形される。図1には、口部10から底部17までが軸方向と平行にプリフォーム1の中心で切断された面が示されている。
なお、以下では、説明の便宜上、図1の状態のプリフォーム1において底部17に対する口部10の方向を上とする。
口部10は、軸方向の上端に、円形に開放された開口部11を有している。そして、口部10は、その外周面に、おねじ12と、カブラ13と、サポートリング14とを有している。図示せぬ蓋を取り付けるためのおねじ12は口部10の外周面から、プリフォーム1の径方向の外側に向かってらせん状に突出している。カブラ13は、おねじ12の下方で、径方向外側に向かって周回状に突出している。サポートリング14は、カブラ13の下方で周回状に、カブラ13よりも径方向外側まで突出している。
一般的に、サポートリング14から軸方向の上側の箇所ではプリフォーム1からボトル状に成形される際にその形状が変化しない。一方で、サポートリング14よりも下側の最大10 mmの範囲でもボトル状に成形される際にほとんど延伸されない。したがってここでは、プリフォーム1からボトル状に成形される際にその形状がほとんど変化しない範囲を口部10と定義することとする。そして、口部10は、図1に例示されるように、サポートリング14よりも軸方向下側の箇所の内径、及び外径が軸方向の上下において略同寸の略真円筒形状であっても良い。
このように、口部10は、ブロー成形機による成形後もその形状が変化しない。ここで、プリフォーム1の口部10の内径や外径(ねじ谷径に相当)、ねじ山径といった各部の寸法に特に限定はない。しかしながら、飲料用ボトルで標準的に用いられている寸法とされることが、既存の蓋の汎用性や、飲料用ボトルの密封性を確保できる点で好ましい。このため、口部10は例えば、PCO1810規格や、PCO1881規格に対応した寸法とされると良い。
首部15から軸方向下側は、プリフォーム1からの成形の際にボトルの形状となるように膨らまされる部分である。首部15の特に外径を軸方向の上下において略同寸に構成することもできる。しかしながら、図1に例示される首部15は、軸方向下側に向かってその内径、及び外径がともに縮径して逆円錐台筒状に構成されている。これによって、首部15よりも軸方向下側の断面積が小さくなり、プリフォーム1、及び成形されるボトルを軽量化することができる。一方で、首部15は、軸方向下側に向かって肉厚が増すように構成されている。これによって、首部15や、これに連なる胴中部16がボトル状とされる際に適切に延伸されて成形性を良好にすることができる。すなわち、首部15がこのように構成されることによって、プリフォーム1からブロー成形機で軽量化ボトルが成形される際のブロー成形性を良好にすることができる。
胴中部16は、内径、及び外径が、軸方向の上下において略同寸の略真円筒形状に構成されている。ただし、胴中部16には、プリフォーム1の作製の際に用いられる型からの取り出し、すなわち離型を容易にするための傾斜である抜き勾配が設けられていても良い。更に、胴中部16の内径、及び外径が軸方向の上下でわずかに変化していても良い。更に、軸方向の上下において、首部15、及び胴中部16の特に外径を略同寸に構成することもできる。
底部17は、外方に湾曲した略半球状に構成されている。底部17は、円錐形状であったり、角に丸みを持った円柱形状であったり、その他の形状であっても良い。
なお、首部15、及び胴中部16の外径は、12 mm以上、30 mm以下であることが既存の装置を用いることができる点で好ましい。更に、サポートリング14の下面から底部17の下端までの長さが35 mm以上、105 mm以下であることが、既存の装置、特にブロー成形機を用いることができる点で好ましい。
プリフォーム1は、首部15、及び胴中部16が多層に構成されて、外層18aと内層19aとの間に中間層20aを有する。図1に例示されるプリフォーム1はカブラ13の下から、胴中部16の下端まで中間層20aを有している。一方で、口部10、及び底部17の大部分は、プリフォーム1がボトル状とされた際には他の部位と比べて厚肉に形成され、中間層20aの機能の必要性がそれほど高くない。したがって、図1に例示されるプリフォーム1のこれらの箇所は中間層20aを有していない。
プリフォーム1は、中間層20aと、外層18a、及び内層19aのそれぞれとの間に接着層や接着剤を有していない。このため、プリフォーム1は使用後に、再資源化が妨げられることがない。一方で、各層の間が固く接着されているわけではないので外力によって層間剥離が起きてしまう可能性がある。しかしながら、中間層20aが口部10の端まで延びずに構成されていることによって破壊の起点になりやすい各層の界面の端が露出せず層間剥離が生じにくくされている。
プリフォーム1は、図1に例示されるように、中間層20aが、首部15を突き抜けて口部10に至るように構成されていることが好ましい。このとき、中間層20aの端が少なくとも、サポートリング14よりも軸方向の上側の箇所であると良い。そして、中間層20aが、サポートリング14を軸方向に貫いて構成されていることによって、サポートリング14の下側の部分が把持されてプリフォーム1が搬送される際の強度を確保することができる。
中間層20aは、胴中部16における厚みが首部15における厚みより大である。プリフォーム1は、ボトル状とされる際に首部15よりも、胴中部16の方が大きく延伸される。したがって、プリフォーム1は、胴中部16の中間層20aが延伸後に薄くなりすぎて機能が低下することがないような厚みで構成される。このため、プリフォーム1は、胴中部16の中間層20aの延伸後が首部15のそれよりも薄くならないようにボトル状とされる際の延伸倍率が考慮されて首部15が薄く、胴中部16が厚く構成される。プリフォーム1がこのように構成されることによって、中間層20aの延伸後においてもその機能を確保しつつ、中間層20aの成形材料の量を減少することができる。
ここで、例えば、首部15の軸方向の中心における中間層20aの厚みt1、及び胴中部16の軸方向の中心における中間層20aの厚みt2を定義する。首部15の軸方向の中心は延伸されない箇所の影響を受けにくく、そして、胴中部16の軸方向の中心は延伸倍率が最大の箇所に程近い。
中間層20aの厚みt1や厚みt2は小さすぎると、中間層20aの有する機能を発揮しなくなってしまう。一方で、中間層20aの厚みt1や厚みt2は大きすぎると、費用対効果が低くなり、更に、プリフォーム1に用いられる成形材料の組み合わせによっては強度を確保することができなくなってしまう。更に、首部15に比べて胴中部16は延伸されやすく胴中部16の中間層20aの延伸後はより薄くなりやすい。したがって、厚みt1は、0.05 mm以上、0.8 mm以下であることが好ましく、厚みt2は、0.12 mm以上、1.0 mm以下であることが好ましい。
胴中部16における厚みt2に対する首部15における厚みt1の比の値t1/t2が大きすぎると上述された本実施形態に係る効果は発揮されなくなってしまう。一方で、比の値t1/t2が小さすぎると、首部15の中間層20aが延伸後に薄くなりすぎて機能が低下したり、胴中部16の中間層20aに用いられる成形材料の量が増大したり、成形材料の種類によってはプリフォーム1が延伸されにくくなってしまう。したがって、中間層20aは、比の値t1/t2が0.15以上、0.75以下であることが好ましく、0.20以上、0.65以下であることがより好ましく、0.20以上、0.45以下であることが特に好ましい。プリフォーム1は、この比の値t1/t2の範囲が、首部15の全体、及び胴中部16の全体に亘って成立するように構成されていても良い。
更に、胴中部16の軸方向の下端付近における中間層20aの厚みt3を定義する。プリフォーム1は、ボトル状とされる際に、胴中部16の軸方向の下端よりも軸方向の中心の方が大きく延伸される。更に、胴中部16の軸方向の下端では、プリフォーム1がボトル状とされた際に中間層20aの機能の必要性がそれほど高くない。そして、プリフォーム1がボトル状とされた際の中間層20aの厚さにむらがあると層間剥離が生じやすくなってしまう。したがって、厚みt3は、厚みt2よりも小さくて良く、厚みt1とは同等であっても良い。
なお、プリフォーム1の全体の肉厚は、首部15で3.5 mm以上、7.5 mm以下、胴中部16で6.0 mm以上、8.0 mm以下であることがボトルの軽量性、及び成形性の点で好ましい。
ここで、例えば、厚みt1、及び厚みt2と同様に、首部15の軸方向の中心におけるプリフォーム1の全体の肉厚T1、及び胴中部16の軸方向の中心におけるプリフォーム1の全体の肉厚T2を定義する。このとき、延伸の度合いが考慮され、胴中部16の肉厚T2に対する胴中部16における中間層20aの厚みt2の比の値t2/T2が、首部15の肉厚T1に対する首部15における中間層20aの厚みt1の比の値t1/T1より大であることが好ましい。すなわち、プリフォーム1は、t2/T2>t1/T1で構成されることが、中間層20aの延伸後においてもその機能を充分に確保しつつ、中間層20aの成形材料の量をより減少することができる点で好ましい。
中間層20aには、各種機能を発揮する材料を選択することができる。例えば、中間層20aには、紫外線等の光の遮断性や、水蒸気等のガスバリア性を付与する材料を用いることができる。ここでの中間層20aは、酸素を遮断する材料によって構成された酸素バリア層であると良い。本実施形態に係るプリフォーム1から成形されるボトルの材料の一例であるポリエチレンテレフタレートでは酸素透過性が零ではない。したがって、酸素がボトルを透過してボトル内に入ると中身を褐変させる等して劣化させてしまう。酸素透過性は、市場規模が拡大傾向にある加温販売用ボトルのような高温になると一段と増大して中身の劣化がより進みやすい。ここに、中間層20aとして酸素バリア層が用いられることで酸素の透過が遮断され、中身の劣化が防がれて保存性が向上される。
例示されたプリフォーム1の外層18a、及び内層19aの材料としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンや、エチレン−ビニルアルコール共重合体、植物等を原料としたポリ乳酸等のブロー成形が可能な種々の熱可塑性樹脂を用いることができる。しかしながら、外層18a、及び内層19aは、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート等のポリエステル、特に、ポリエチレンテレフタレートが主成分のPET層とされることが好ましい。なお、上述された樹脂には、成形品の品質を損なわない範囲で種々の添加剤、例えば着色剤、紫外線吸収剤、離型剤、滑剤、核剤、酸化防止剤、帯電防止剤を配合することができる。
プリフォーム1の外層18a、及び内層19aを構成するエチレンテレフタレート系熱可塑性樹脂としては、エステル反復部分の大部分、一般に70 mol%以上をエチレンテレフタレート単位が占めるものであり、ガラス転移点(Tg)が50 ℃以上、90 ℃以下であり、融点(Tm)が200 ℃以上、275 ℃以下の範囲にあるものが好適である。エチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルとして、ポリエチレンテレフタレートが耐圧性等の点で特に優れているものの、エチレンテレフタレート単位以外に、イソフタル酸や、ナフタレンジカルボン酸等の二塩基酸と、プロピレングリコール等のジオールからなるエステル単位を少量含む共重合ポリエステルも使用することができる。
ポリエチレンテレフタレートは熱可塑性の合成樹脂の中では生産量が最も多い。そして、ポリエチレンテレフタレート樹脂は、耐熱性、耐寒性や、耐薬品性、耐摩耗性に優れる等の種々の特性を有する。更に、ポリエチレンテレフタレート樹脂はその原料に占める石油の割合が他のプラスチックと比べて低く、リサイクルも可能である。このように、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする構成によれば、生産量の多い材料を用いることができ、その優れた種々の特性を活用することができる。
ポリエチレンテレフタレートは、エチレングリコール(エタン−1,2−ジオール)と、精製テレフタル酸との縮合重合によって得られる。ポリエチレンテレフタレートの重合触媒として、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、及びアルミニウム化合物の少なくとも一つが用いられることが好ましい。これらの触媒が用いられることによって、アンチモン化合物が用いられるよりも、高い透明性を有し、耐熱性に優れた容器を形成することができる。
一方で、例示された酸素バリア性に優れるプリフォーム1の中間層20aの材料としては、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアセタール(POM)、ポリグリコール酸(PGA)等のブロー成形が可能な種々の熱可塑性樹脂を用いることができる。しかしながら、プリフォーム1の中間層20aは、無延伸ポリアミド(CNY)、2軸延伸ポリアミド(ONY)、特に、ポリ(メタキシリレンアジパミド)(H−[NHCH2(C6H4)CH2NHCOC4H8CO]n−OH)が主原料とされることが好ましい。
上述された材料は、自身の有する酸素バリア性を利用して酸素透過量を低減させており、パッシブバリア材と称される。これに対し、酸素を積極的に吸収して酸素透過量を低減させる材料はアクティブバリア材と称される。中間層20aの材料にはアクティブバリア材が用いられても良い。中間層20aの材料にアクティブバリア材が用いられている場合にはボトルの中身の溶存酸素や、ヘッドスペースに含まれる酸素も効果的に吸収することができる。
アクティブバリア材には、上述されたポリ(メタキシリレンアジパミド)に、遷移金属系触媒を含む無機酸塩や有機酸塩の錯塩を含有するものを用いることができる。遷移金属系触媒は、酸素との反応性を高めるために必要とされる。遷移金属としては、マンガン、ニッケル、銅、ロジウム、ルテニウム等を用いることができるものの酸素吸収速度の高いコバルトを用いることが好ましい。遷移金属は、炭酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、第三リン酸塩、第二リン酸塩、有機酸塩、ハロゲン化物等と組み合わせて用いられる。より具体的には、酢酸コバルト、2−エチルへキサン酸コバルト、ネオデカン酸コバルト、ステアリン酸コバルト等がポリ(メタキシリレンアジパミド)に添加されることが好ましい。
プリフォーム1の全体に対する中間層20aの量が多すぎるとプリフォーム1の使用後に再資源化が妨げられてしまう。一方で、プリフォーム1の全体に対する中間層20aの量は少なすぎると、射出成形性が低下してしまう。より詳細には、プリフォーム1の成形の際に中間層20aが充填されにくくなり、これを無理やり押し込むと変質や偏肉が生じて好ましくない。したがって、プリフォーム1の全体に占める中間層20aの割合は2 wt%以上、20 wt%以下であることが好ましい。
なお、中間層20aは単層に限らず多層で構成されていても良く、例えば酸素バリア層を複数含んで構成されていても良い。例えば、プリフォーム1は、5層構造(PET層(外層18a)/酸素バリア層/PET層/酸素バリア層/PET層(内層19a))とされていても良い。中間層20aの層数が更に増やされていても良く、プリフォーム1を最大で、7層構造とすることもできる。中間層20aが多層で構成されることによって、中間層20aの機能をより高めたり、中間層20aに複数の機能を持たせたりすることができる。
本実施形態に係るプリフォーム1の製造方法では、胴中部16における厚みt2が首部15における厚みt1より大となるように中間層20aが成形される。このように製造されるプリフォーム1によれば、中間層20aの延伸後においてもその機能を確保しつつ、中間層20aの成形材料の量を減少することができる。
そこで、次に、プリフォーム1の製造方法の一例を詳細に説明する。図2は、プリフォーム1の製造装置の一例として、射出成形装置30のホットランナーノズル31の概略が示された断面図である。射出成形装置30は、内部にスクリュを備える図示せぬ加熱シリンダと、ホットランナーノズル31と、金型32とを備えている。射出成形装置30は、成形材料が、加熱シリンダで、例えば270 ℃〜300 ℃に加熱されることによって溶融可塑化され、スクリュによって、ホットランナーノズル31を介して金型32に送り出されるように構成されている。
ホットランナーノズル31は軸方向に長い構成である。ホットランナーノズル31は、直線状流路33aと、第1の円筒状流路33bと、第2の円筒状流路34と、開閉弁の一例であるチェック弁35とを有している。各流路は、略軸方向に延びている。ホットランナーノズル31は、第1の注入口36と、第2の注入口37と、射出口38とを更に有している。
射出口38は、ホットランナーノズル31の一端の中心に形成されている。そして、射出口38は金型32と連通している。一方で、第1の注入口36、及び第2の注入口37はホットランナーノズル31の他端寄りの側面にそれぞれ形成されている。そして、第1の注入口36、及び第2の注入口37のそれぞれは別々の加熱シリンダと接続されている。すなわち、ホットランナーノズル31は、第1の注入口36、及び第2の注入口37からそれぞれ第1の成形材料、及び第2の成形材料を注入することができるように構成されている。成形材料は、第1の注入口36、及び第2の注入口37から射出口38に向かって流れる。このため、図1において下側に示されているホットランナーノズル31の他端が成形材料の上流側となる。
直線状流路33aは、第1の注入口36から径方向に延びる流路と連通し、ホットランナーノズル31の中央部を射出口38まで直線状に延びている。第1の円筒状流路33bは、直線状流路33aから分岐した後に、直線状流路33aの径方向外方を通り、射出口38に近い第1の合流点39aで直線状流路33aと合流している。第2の円筒状流路34は、第2の注入口37から径方向に延びる流路と連通し、直線状流路33aと、第1の円筒状流路33bとの間に延びて第1の合流点39aよりも上流の第2の合流点39bで直線状流路33aと合流している。
ホットランナーノズル31は、第2の合流点39bに、第2の円筒状流路34を閉鎖するチェック弁35を有している。チェック弁35は、第2の合流点39bにおける直線状流路33aを通過する第1の成形材料と第2の円筒状流路34を通過する第2の成形材料との射出圧の差に応じて軸方向に動くように構成されている。そして、チェック弁35は、第2の成形材料の射出圧が高い場合には第2の円筒状流路34を開放するように構成されている。このような作用を果たすのであればチェック弁35は、他の構成であっても構わない。
複数に分割されて構成される金型32は、プリフォーム1に対応する形状の空隙であるキャビティ32a、及びプリフォーム1の底部17に対応する位置にゲート32bを有している。キャビティ32aは、ゲート32bを介して、ホットランナーノズル31の射出口38に連通している。金型32には、金型32を加熱する図示せぬヒータと、金型32を冷却する図示せぬ冷却機とが設けられている。金型32は、ヒータによって加熱されたキャビティ32aに溶融した成形材料が注入、及び加圧された後に冷却機によって冷却され、プリフォーム1が成形されるように構成されている。
図3は、共射出される各成形材料の射出率と時間との関係が模式的に示されたグラフである。射出率は、単位時間[s]当たりに射出される各成形材料の質量[g]で示されている。図3において、第1の成形材料は実線で示され、第2の成形材料は破線で示されている。そして、ここでは、第1の成形材料には、ポリエチレンテレフタレート(以下では、PET樹脂aと称す)が注入され、第2の成形材料には、ポリ(メタキシリレンアジパミド)(以下では、酸素バリア性樹脂bと称す)が注入される例が示されている。
まず、PET樹脂aが射出される(ステップS1)。図4は、ホットランナーノズル31からキャビティ32aへと各成形材料が流動する状態(ステップS1)の概略が示された断面図である。PET樹脂aは、第1の注入口36(図2参照)から、直線状流路33a(PET樹脂a1)、及び第1の円筒状流路33b(PET樹脂a2)のいずれかを経由して第1の合流点39aで合流し、その後、射出口38、ゲート32bの順に流動してキャビティ32aに充填される。図4に例示されるように、直線状流路33a(PET樹脂a1)、及び第1の円筒状流路33b(PET樹脂a2)のそれぞれを経由したPET樹脂aの流れがPET樹脂層A1、及びPET樹脂層A2を構成し、PET樹脂層Aとしてキャビティ32aに充填されている。
この段階では、酸素バリア性樹脂bは射出されておらず、PET樹脂a1の射出圧を受けるチェック弁35によって第2の円筒状流路34は閉鎖されている。
次に、PET樹脂aが、予め定められた射出率まで下げられて射出される(ステップS2)。この下げられた射出率は、次の段階において射出される酸素バリア性樹脂bの射出率との兼ね合いで決まる。ここで、ステップS1においても、この予め下げられた射出率でPET樹脂aが射出された場合に口部10の寸法不良やヒケ等の賦形不良が生じないのであれば、ステップS2が省略されても良い。
次に、PET樹脂aより高い射出率で酸素バリア性樹脂bが射出される(ステップS3)。図5は、ホットランナーノズル31からキャビティ32aへと各成形材料が流動する状態(ステップS3)の概略が示された断面図である。酸素バリア性樹脂bが射出される圧力によってチェック弁35が動き、第2の円筒状流路34は開放される。そして、図5に例示されるように、直線状流路33aを経由したPET樹脂層A1と、第1の円筒状流路33bを経由したPET樹脂層A2との間に酸素バリア性樹脂層Bが形成されている。酸素バリア性樹脂層Bは、成形型に接触せずに流動して温度の低下が少なく粘度が高まらないのでPET樹脂層A1、及びA2よりも高い速度で流動している。
次に、酸素バリア性樹脂bの射出率が漸増するように射出される(ステップS4)。図6は、ホットランナーノズル31からキャビティ32aへと各成形材料が流動する状態(ステップS4)の概略が示された断面図である。図6に例示されるように、酸素バリア性樹脂bの射出率が漸増することによって酸素バリア性樹脂層Bが徐々に厚くなるように射出される。このような工程を経ることによって、プリフォーム1の中間層20aは、胴中部16における厚みt2が首部15における厚みt1より大となるように成形することができる(図1参照)。
次に、高い射出率を維持したままで酸素バリア性樹脂bが射出される(ステップS5)。酸素バリア性樹脂bの射出率が高く維持されていることによって酸素バリア性樹脂層Bが厚いままで射出される。
次に、酸素バリア性樹脂bの射出率が漸減して零となるまで射出されるとともにPET樹脂aの射出率が漸増するように射出される(ステップS6)。酸素バリア性樹脂bの射出率が漸減することによって酸素バリア性樹脂層Bが徐々に薄くなるように射出された後に途切れる。そして、酸素バリア性樹脂bの射出率が零となることによってチェック弁35が動き、第2の円筒状流路34が閉鎖される。
次に、PET樹脂aが予め定められた射出率に維持されて射出される(ステップS7)。図7は、ホットランナーノズル31からキャビティ32aへと各成形材料が流動する状態(ステップS7)の概略が示された断面図である。図7に例示されるように、酸素バリア性樹脂層BがPET樹脂層Aによって押し込まれていく。
最後に、キャビティ32aの内部が充満されるまでPET樹脂aが射出される(ステップS8)。PET樹脂aの射出率が漸減し、そして、キャビティ32aの内部が充満されるとPET樹脂aの射出率が零となり、その後は、PET樹脂aが逆流しないように保圧が行われる。そして、キャビティ32aの内部で成形材料が冷却された後に、金型32が開き、成形されたプリフォーム1が取り出される。
なお、各成形材料を射出する圧力や、射出率はそれぞれの粘度の差等に応じて適宜設計される。
以上のように、本実施形態に係るプリフォーム1の製造方法は、胴中部16における厚みt2が首部15における厚みt1より大となるように中間層20aを成形する手順を含んで構成される。
例えば、プリフォーム1の製造装置は、ホットランナーノズル31が、第1の注入口36から延びる直線状流路33aと、直線状流路33aから分岐した後に第1の合流点39aで合流する第1の円筒状流路33bと、第2の注入口37から直線状流路33aと第1の円筒状流路33bとの間に延びて第1の合流点39aよりも上流の第2の合流点39bで直線状流路33aと合流する第2の円筒状流路34と、第2の合流点39bにおける直線状流路33aを通過する第1の材料と第2の円筒状流路34を通過する第2の材料との射出圧の差に応じて第2の円筒状流路34を開放するチェック弁35とを有し、プリフォーム1に対応するキャビティ32a、及びプリフォーム1の底部17に対応する位置にゲート32bを有する金型32と、ゲート32bに連通するホットランナーノズル31とを備える。
そして、例えば、プリフォーム1の製造方法は、第1の材料を射出する工程(ステップS1)と、第1の材料より高い射出率で第2の材料を射出する工程(ステップS3〜ステップS5)と、第2の材料より高い射出率で第1の材料を射出する工程(ステップS7)とを有し、第1の材料より高い射出率で第2の材料を射出する工程(ステップS3〜ステップS5)において、第2の材料の射出率を漸増する工程(ステップS4)を含む。そして、この方法によれば、製造されたプリフォーム1の中間層20aの延伸後においてもその機能を確保しつつ、中間層20aの成形材料の量を減少することができる。
なお、製造方法は、胴中部16における厚みt2が首部15における厚みt1より大である中間層20aを有するプリフォーム1が形成されれば他の方法であっても構わない。例えば、PET樹脂a、酸素バリア性樹脂b、PET樹脂aの順に可塑化して押し出して酸素バリア性樹脂bがU字状に内包された溶融樹脂塊(ビレット)を生成し、これを圧縮成形することでプリフォーム1が製造される方法であっても良い。
成形されたプリフォーム1は、箱積み、いわゆるパレタイジングされて倉庫等でいったん保管されても良く、そのまま、引き続き、次の工程へと進められても良い。すなわち、プリフォーム1の成形と、ブロー成形とが別の場所や装置で行われる、いわゆるコールドパリソン方式(2ステージ方式)であっても良く、プリフォーム1の成形と、ブロー成形とが同じの場所や装置で行われる、いわゆるホットパリソン方式(1ステージ方式)であっても良い。更に、プリフォーム1の成形から内容物の充填等に至るまでの製造工程がインラインで連続的なものであっても良い。
次に、本実施形態に係るプリフォーム1からボトル状に成形する方法の一例を詳細に説明する。プリフォーム1がボトル状に成形されるにあたってまず、プリフォーム1の加熱が行われる。図8は、プリフォーム1の加熱装置40の一例が示された断面図である。なお、図8は、プリフォーム1の搬送方向に対して垂直方向の断面を示す。
加熱装置40は、搬送装置41と、ヒータ42とを備えている。搬送装置41は、プリフォーム1を周方向に均等に加熱するために、プリフォーム1の軸を中心に回転させながら搬送するように構成されている。ヒータ42は、複数の例えばハロゲンランプによって構成され、ブロー成形に適した温度例えば80 ℃〜140 ℃にプリフォーム1を加熱するように構成されている。更に、加熱装置40は、ヒータ42からの熱をプリフォーム1に反射させるための反射板43や、ヒータ42からの熱を加熱装置40の外方へ逃がさないようにするための遮蔽部材44等を備えていても良い。なお、図8の加熱装置40では、プリフォーム1は口部10が下側を向いた状態で搬送、及び加熱されている。
ここで、図8に例示の首部15は、口部10の側から胴中部16の側に向かって縮径している。このような縮径している部分は、ヒータ42との位置関係がより遠くなるので、縮径していない部分より温まりにくく、ブロー成形によって延伸されにくい。一方で、首部15は、口部10の側から胴中部16の側に向かって肉厚が増している。厚肉の部分は、プリフォーム1の熱容量がより大きくなるため、ヒータ42によってより温まりにくくなる半面で、いったん温まると冷めにくくなる。したがって、首部15の内で、胴中部16の側はブロー成形によって延伸されやすい。このように、図8に例示のプリフォーム1は、延伸の度合いがその位置によって大きく変化する首部15において、軽量化されて薄肉に形成されている樹脂がより効率的に延伸される設計となっている。
加熱されたプリフォーム1は次に、ブロー成形機によって、プラスチックボトル例えばPETボトル2に成形される。図9は、プリフォーム1と、ブロー成形後のPETボトル2とが模式的に示された断面図である。ブロー成形機の一例としての二軸延伸ブロー成形装置50は、金型51と、延伸ロッド52と、図示せぬ高圧エア供給装置と、これらを制御する図示せぬ制御装置とを備えている。なお、図9には、下向きのブロー成形方法が例示されているものの、材料が重力の影響を受けにくい上向きのブロー成形方法が用いられても良い。
ここで、PETボトル2は、口部10と、肩部60と、胴部70と、底部80とを有する。ブロー成形の前後においておおよそ、プリフォーム1の首部15がPETボトル2の肩部60に対応し、プリフォーム1の胴中部16がPETボトル2の胴部70に対応する。
金型51は、形成されるPETボトル2に対応した形状を有して例えば、胴部70に対応して半割りで構成される胴金型51aと、底部80に対応した底金型51bとを有する。金型51の表面の温度は、PETボトル2の用途、特に耐熱性に応じて例えば30 ℃〜130 ℃に制御されるように構成されている。
延伸ロッド52は金型51内を伸縮自在に構成される。そして、延伸ロッド52は、金型51に口部10の取り付けられたプリフォーム1の首部15、及び胴中部16を縦(軸)方向に延伸するように構成される。高圧エア供給装置からは、温度調節された高圧エアhが吹き出されるように構成される。高圧エアhは、金型51に取り付けられたプリフォーム1の内部に供給されれば良く、延伸ロッド52から吹き出されても良く、延伸ロッド52とは別の部材から吹き出されても構わない。高圧エアhは、プリフォーム1の首部15、及び胴中部16を横(径)方向に延伸するとともに、延伸の後に、首部15、及び胴中部16の表面温度を下げるように構成される。
加熱されたプリフォーム1は、二軸延伸ブロー成形装置50の金型51に装着される。その後には、金型51に装着されたプリフォーム1の首部15、及び胴中部16が延伸ロッド52によって縦方向に延伸される。この際のプリフォーム1からPETボトル2への縦延伸倍率は1.8倍以上、4.0倍以下であることが好ましい。
ここで、縦延伸倍率とは、プリフォーム1のサポートリング14の下面から底部17の下端までの長さH1に対するPETボトル2のサポートリング14の下面から底部80の下端までの長さH2の比(H2/H1)である。非晶部と、結晶部との集合体であるアモルファス構造を有するプリフォーム1の分子は延伸によって配向結晶化がおこり、その結果として、PETボトル2の強度や、剛性、耐熱性等が上がる。縦延伸倍率が1.8未満の場合にはPETボトル2(プリフォーム1)の分子の配向性が上がらず、一方で、縦延伸倍率が4.1以上の場合にはPETボトル2が成形しにくくなる。
更に、縦方向に延伸されたプリフォーム1の胴中部16が高圧エアhによって横方向に、金型51に当たるまで延伸される。この際のプリフォーム1からPETボトル2への横延伸倍率は1.5倍以上、6.0倍以下であることが好ましい。
ここで、横延伸倍率とは、プリフォーム1の胴中部16における胴径D1に対するPETボトル2の胴部70における胴径D2の比(D2/D1)である。なお、胴部70の対向するそれぞれの壁面における肉厚の中心間の距離が胴部70の胴径D2とされる。プリフォーム1の分子は横方向の延伸によっても同様に配向結晶化がおこり、その結果として、PETボトル2の強度や、剛性、耐熱性等が上がる。横延伸倍率が1.5未満の場合にはPETボトル2(プリフォーム1)の分子の配向性が上がらず、一方で、横延伸倍率が6.1以上の場合にはPETボトル2が成形しにくくなる。
このように、二軸延伸ブロー成形装置50による成形が、縦方向の延伸倍率が1.8倍以上、4.0倍以下、横方向の延伸倍率が1.5倍以上、6.0倍以下の二軸延伸ブロー成形である構成によれば、プリフォーム1からより良好なブロー成形性で軽量化されたPETボトル2を成形することができる。
以上のように、本実施形態に係るPETボトル2はプリフォーム1が、二軸延伸ブロー成形装置50でボトル状に成形される。そして、二軸延伸ブロー成形装置50が用いられることによって効果的に、本実施形態に係るプリフォーム1から良好なブロー成形性で軽量化されたPETボトル2を成形することができる。
なお、本実施形態においては、成形されるPETボトル2の用途が限定されない。したがって、PETボトル2は、耐圧性や耐熱性等を有するように成形されても良い。
次に、本実施形態に係るプリフォーム1から形成されるPETボトル2の構成を詳細に説明する。図10は、本実施形態に係るプリフォーム1から形成されたPETボトル2が示された正面図である。図10に例示されたPETボトル2は軸方向とは垂直方向の断面視が略円形の丸ボトルである。上述されたように、PETボトル2は、口部10と、肩部60と、胴部70と、底部80とを有する。そして、上述されたように、PETボトル2の口部10の構成はプリフォーム1の口部10の構成と同様である。
口部10は、中身の充填口、及び注出口となり、口部10に、図示せぬ蓋が取り付けられることによってPETボトル2が密閉される。口部10は、高温での中身の充填に必要な耐熱性を有するようにいわゆる結晶化装置での加熱によって白く着色されるまで結晶化されていても良い。結晶化は、PETボトル2の成形前に行われても良く、PETボトル2の成形後に行われても良い。
肩部60はその上側が、サポートリング14の下方で口部10に連なり、一方で、その下側が、胴部70に連なる。肩部60は、上方から下方に向かって拡径する略円錐台の形状を有する。
胴部70は、円筒の形状を有している。胴部70は、圧力吸収パネルや、横溝、縦溝を有していても良い。
底部80はその上側が、胴部70の下側に連なる。図10に例示された底部80はいわゆるペタロイド形状である。底部80は、凹部81や、脚部82、谷部83等を有している。底部80の径方向中央に位置する凹部81は、PETボトル2の内側(軸方向上側)に向かって突出するように構成されている。脚部82は、凹部81から径方向外側に放射状に、軸方向の下側に向かって延びている。脚部82は、PETボトル2の接地面となる。隣り合う脚部82の間には谷部83が形成されている。谷部83は、凹部81から、径方向外側、かつ軸方向の上側に向かって延びている。底部80の構成は、図10の例示に限らず、内容物に対応した形状、例えば放射状にリブが設けられた形状であっても良い。
図11は、PETボトル2の断面図である。更に、図11では、肩部60の領域A、及び胴部70の領域Bが拡大されて示されている。PETボトル2は、肩部60、及び胴部70が多層に構成されて、外層18と内層19との間に中間層20を有する。PETボトル2は、プリフォーム1と同様に、中間層20が、肩部60を突き抜けて口部10に至るように構成されていることが好ましい。このとき、中間層20の端が少なくとも、サポートリング14よりも軸方向の上側の箇所であると良い。そして、中間層20が、サポートリング14を軸方向に貫いて構成されていることによって、サポートリング14の下側の部分が把持されてPETボトル2が搬送される際の強度を充分に確保することができる。
中間層20は、胴部70における厚みが肩部60における厚み以上である。胴部70は、PETボトル2の中でも表面積が広い箇所であり、かつその肉厚が薄いため、中間層20の機能の必要性が高い。PETボトル2は、胴部70においてプリフォーム1からの延伸後にも、薄くなりすぎて機能が低下することがないような中間層20の厚みで構成される。このため、中間層20は、胴部70における厚みが肩部60における厚み以上で構成される。PETボトル2がこのように構成されることによって、中間層20の機能を確保しつつ、中間層20の成形材料の量を減少することができる。
ここで、例えば、肩部60の軸方向の中心における中間層20の厚みt4、及び胴部70の軸方向の中心における中間層20の厚みt5を定義する。肩部60の軸方向の中心は延伸されない箇所の影響を受けにくく、そして、胴部70の軸方向の中心は延伸倍率が最大の箇所に程近い。
中間層20の厚みt4や厚みt5は小さすぎると、中間層20の有する機能を発揮しなくなってしまう。一方で、中間層20の厚みt4や厚みt5は大きすぎると、費用対効果が低くなり、更に、PETボトル2に用いられている成形材料の組み合わせによっては強度を確保することができなくなってしまう。したがって、厚みt4は、0.002 mm以上、0.05 mm以下であることが好ましく、厚みt5は、0.005 mm以上、0.08 mm以下であることが好ましい。
胴部70における厚みt5に対する肩部60における厚みt4の比の値t4/t5が大きすぎると上述された本実施形態に係る効果は発揮されなくなってしまう。一方で、比の値t4/t5が小さすぎると、層間剥離が生じやすくなったり、成形材料の種類によってはPETボトル2の強度が低下してしまう。したがって、中間層20は、比の値t4/t5が0.30以上、1.00以下であることが好ましく、0.40以上、0.90以下であることがより好ましい。PETボトル2は、この比の値t4/t5の範囲が、肩部60の全体、及び胴部70の全体に亘って成立するように構成されていても良い。
一方で、中間層20は、層間剥離を防ぐ観点において、肩部60における厚みt4と、胴部70における厚みt5とが略等しく構成されることが特に好ましい。すなわち、中間層20は、比の値t4/t5が1.00に近い構成とされることによって層間剥離を防ぐことができる。
なお、胴部70の成形後の肉厚は、0.07 mm以上、0.35 mm以下であることが好ましい。胴部70の肉厚がこの範囲であれば、プリフォーム1からより良好なブロー成形性で軽量化されたPETボトル2を成形することができる。
ここで、例えば、厚みt4、及び厚みt5と同様に、肩部60の軸方向の中心におけるPETボトル2の全体の肉厚T4、及び胴部70の軸方向の中心におけるPETボトル2の全体の肉厚T5を定義する。このとき、延伸の度合いが考慮され、胴部70の肉厚T5に対する胴部70における中間層20の厚みt5の比の値t5/T5が、肩部60の肉厚T4に対する肩部60における中間層20の厚みt4の比の値t4/T4より大であることが好ましい。すなわち、PETボトル2は、t5/T5>t4/T4で構成されることが、中間層20の機能を充分に確保しつつ、中間層20の成形材料の量をより減少することができる点で好ましい。
なお、中間層20の種類や、材料、量、層構成等については上述されたプリフォーム1と同様である。
PETボトル2の特にサポートリング14よりも下の形状は、図10等の例示に限らず、プリフォーム1がブロー成形されることによって形成されるものであればどのような形状であっても良い。例えば、本実施形態においては、図10に示された丸ボトルを好適に形成することができる。しかしながら、本実施形態において形成されるプラスチックボトルは丸ボトルには限定されず、角ボトルであっても良い。更に、胴部70の幅が下方に向けて拡開する形状であっても良い。そして、胴部70に形成される圧力吸収パネルや、横溝、縦溝の形状についても自由に設計することができる。
本実施形態に係るPETボトル2にはサイズによる限定はなく、種々のサイズに対して適用することができる。例えば、PETボトル2の容積が100 ml以上、1000 ml以下であっても良く、特に、容積が200 ml以上、700 ml以下であるPETボトル2に対して好適である。PETボトル2の全高は120 mm以上、260 mm以下であっても良く、胴部70の胴径D2は40 mm以上、75 mm以下であっても良い。
更に、本実施形態に係るPETボトル2は軽量化ボトルを対象として好適に用いることができる。PETボトル2の質量は例えば、200 mlの内容積に対しては12 g以上、14 g未満、550 mlの内容積に対しては13 g以上、15 g未満であると良い。そして、特に、軽量性を有し、中間層20の機能を確保しながらPETボトル2の強度を保つ観点から、PETボトル2の内容積に対する質量の比の値が0.0125 g/ml以上、0.0700 g/ml以下であることが好ましい。
上述された材料が射出成形されたプリフォーム1がブロー成形されることによってプラスチックボトルを作製することができる。そして、材料として、ポリエチレンテレフタレートが用いられることによって、本実施形態に係るプラスチックボトルの一例としてのPETボトル2が作製される。そして、PETボトル2と、充填される液体とによって充填体が構成される。充填体は、PETボトル2の口部10から飲料や調味料等の液体が充填され、口部10に装着される図示せぬ蓋によって密封されることによって製造される。
なお、PETボトル2への内容物の充填方法についても限定されない。したがって、PETボトル2は、ホット充填に用いられても、アセプティック充填に用いられても良い。
以上のように、PETボトル2は、口部10、肩部60、胴部70、及び底部80を軸方向に順次有し、少なくとも、肩部60、及び胴部70が多層に構成されて、外層18と内層19との間に中間層20を有し、中間層20は、胴部70における厚みt5が肩部60における厚みt4以上である。このような構成によれば、中間層20の機能を確保しつつ、中間層20の成形材料の量を減少することができる。
なお、本実施形態に係るPETボトル2では、中間層20が、胴部70における厚みt5が肩部60における厚みt4以上であれば上述されたものとは異なる構成とされていても良い。
以下に、実施例を示して、本開示を更に詳細、かつ具体的に説明する。しかしながら、本開示は、以下の実施例に限定されるものではない。
<材料、及び製造方法>
[実施例1]
外層18、及び内層19にはポリエチレンテレフタレート(PET樹脂a)が用いられ、中間層20には、ポリアミド(酸素バリア性樹脂b)が用いられ、全体で22 gのプリフォーム1が図3等に示される方法によって作製された。プリフォーム1の全体に占める酸素バリア性樹脂bの割り合いは5 wt%とされた。図3に示されるステップS3からS5までのPET樹脂aの射出率は1.5 g/sとされた。一方で、酸素バリア性樹脂bの射出率は、ステップS3で2.3 g/sとされ、ステップS5で3.3 g/sとされた。
そして、プリフォーム1から、図10等に示される満注容量が530 mlのPETボトル2がブロー成形によって作製された。PETボトル2には、510 mlの水が充填された後に蓋が装着され、充填体が作製された。
実施例1に係るプリフォーム1の酸素バリア層は、胴中部16、例えばその軸方向の中心における厚みt2が首部15、例えばその軸方向の中心における厚みt1より大である等といった本実施形態に係る特徴を有していた。更に、実施例1に係るPETボトル2の酸素バリア層は、胴部70、例えばその軸方向の中心における厚みt5が肩部60、例えばその軸方向の中心における厚みt4以上である等といった本実施形態に係る特徴を有していた。
[比較例1]
比較例1では、ステップS4、及びステップS5が省略された。そして、ステップS3での酸素バリア性樹脂bの射出率は3.0 g/sとされ、ステップS4、及びステップS5が省略された分だけステップS3の時間が延長された。こうして、比較例1では、厚みt1、及び厚みt2が略等しく形成されたこと以外は実施例1と同様であった。したがって、比較例1では、本実施形態に係る特徴を有していなかった。
[比較例2]
比較例2では、ステップS3での酸素バリア性樹脂bの射出率は4.8 g/sとされたこと以外は比較例1と同様であった。したがって、比較例2に係る充填体も、本実施形態に係る特徴を有していなかった。比較例2では、酸素バリア性樹脂bの割り合いは8 wt%であった。
<評価方法>
(酸素バリア層の材料の使用量)
実施例1、並びに比較例1、及び比較例2の各PETボトルに使用された酸素バリア層の材料の質量によって使用量の削減が達成できているか否かが判定された。使用量の削減の判定には、各PETボトル(各プリフォーム)の全体に占める酸素バリア性樹脂bの割り合いが20 wt%より大か、以下か、及び5 wt%より大か、以下かが閾値として設定された。表1には、各PETボトルにおける酸素バリア層の材料使用量の削減率についての評価の結果が示され、◎:削減率が極めて高い、○:削減率が高い、×:削減率が低い、で表記されている。
(酸素透過度)
実施例1、並びに比較例1、及び比較例2の各充填体を構成する各PETボトルの酸素透過度が測定された。酸素透過度の測定は、温度が23 ℃、湿度が50 %RHの条件下で、酸素透過率測定装置(OX−TRAN、MOCON社)によって行われた。この測定は、JIS K 7126−2に準拠した等圧法である。
実施例1、並びに比較例1、及び比較例2の各PETボトルが酸素透過率測定装置にアダプタを介して取り付けられ、各PETボトルの酸素透過度が測定された。各PETボトルの酸素透過度の単位は[cc/(day・0.21 atm)]であり、容器全体での酸素透過度が示されている。酸素透過度の判定には、0.045 cc/(day・0.21 atm)以上か、未満かが閾値として設定された。表1には、各PETボトルにおける酸素透過度の評価の結果が示され、○:酸素バリア性あり、×:酸素バリア性不足、で表記されている。
(層間剥離強度)
実施例1、並びに比較例1、及び比較例2の各充填体を構成する各PETボトルの層間剥離強度が測定された。層間剥離強度の測定には、1 mm×1 mmの押圧面を有し、150 mmの長さを有する角柱が用いられた。各PETボトルの水平方向から胴部70が角柱で押され、層間剥離が生じた際の荷重(力)が層間剥離強度とされた。層間剥離強度の判定には、40 N以上か、未満かが閾値として設定された。表1には、各充填体における層間剥離強度の評価の結果が示され、○:層間剥離強度あり、×:層間剥離強度不足、で表記されている。
(総合評価)
上述された酸素バリア層の材料の使用量、酸素透過度、及び層間剥離強度に基づいて、実施例1、並びに比較例1、及び比較例2の各PETボトル(各充填体)の総合評価がなされた。表1には、総合評価の結果が示されている。総合評価は、◎:極めて良好、○:良好、×:適性なし、で表記されている。
上述された実施例から以下の点が導き出された。実施例1に係るPETボトル2(充填体)では、酸素バリア層の材料の使用量が削減されて構成されていながら、酸素バリア性を充分に有していた。
一方で、比較例1では、酸素バリア層の材料の使用量が削減されたものの、酸素バリア性が不足していた。比較例2では、酸素バリア性を充分に有していたものの、酸素バリア層の材料の使用量が削減しきれていなかった。比較例2では、酸素バリア層の材料の使用量が多いにもかかわらず酸素バリア性は実施例1と大差がなく、酸素バリア層の材料が肩部60に無駄に集中して充填されてしまっていたものと推測された。したがって、比較例2では、実施例1に係るPETボトル2と比べて、費用対効果が低く、更に、使用後の再資源化の効率も低いことが示された。
比較例2の酸素透過度の結果でも推測されたように、実施例1と比べると、比較例1では、厚みt4と、厚みt5とで大きなむらがあり、これが、きっかけとなって層間剥離しやすくなったものと考えられた。一方で、実施例1に係るPETボトル2は層間剥離しにくい強度を有していた。これは、実施例1では、厚みt4と、厚みt5とが均一に近い状態であったためと考えられた。
以上の実施例の結果から、本実施形態に係るプリフォーム1、及びPETボトル2(充填体)では、酸素バリア層の材料の量が少なくても、酸素バリア性を充分に有し、酸素バリア層の厚みt4や、厚みt5にむらがないことによって層間剥離が生じにくいことが示された。したがって、本実施形態では、中間層20の機能が確保されていながら、中間層20の成形材料の量が減少されたPETボトル2、プリフォーム1、及びプリフォーム1の製造方法を提供することができることが示された。