以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施形態の詳細を説明する。まず、本実施形態に係るプラスチック容器の構成を詳細に説明する。本実施形態に係るプラスチック容器は、その原型であるプリフォーム(予備成形体)からブロー成形によって加工されるブロー成形容器である。図1は、本実施形態に係るプラスチック容器の一例としてのPETボトル1が示された正面図である。以下では、説明の便宜上、PETボトル1が正立されてその軸方向が上下に延びる図1の状態において中身が出し入れされる口部10を上とする。PETボトル1は、口部10、肩部20、胴部30、及び底部40を軸方向に順次有する。
口部10は、PETボトル1の軸方向に筒状に延びている。そして、口部10は、軸方向に垂直な断面が円環状である。口部10において、軸方向に垂直な径方向の内方が開口11となっている。開口11は中身の充填口及び注出口である。
口部10は、軸方向の中心よりも下側に、径方向の外側に向かって突出する環状のサポートリング12を有している。サポートリング12は、PETボトル1を成形したり搬送したりする際の支持に用いられている。
口部10は、その外周に、図示せぬ蓋を取り付けるためのおねじ13を有している。PETボトル1は、口部10に蓋を取り付けることによって密閉される。PETボトル1は密閉できる構成であれば良く、例えば打栓式の蓋が用いられる場合には、おねじ13に替えて突起や溝が口部10の外周や内周に形成されていれば良い。更に、PETボトル1は、開栓された後に、再密閉される必要がない場合には口部10の上端に、剥離可能な密封シールが取り付けられる構成であっても構わない。
サポートリング12とおねじ13との間には、口部10の外周から径方向の外側に向かって突出する環状のカブラ14が形成されていても良い。PETボトル1が搬送される際に搬送設備のグリッパが、カブラ14と、サポートリング12との間の凹部を挟んでPETボトル1を把持することができる。サポートリング12は、カブラ14よりも径方向の外側まで突出している。
口部10の特にサポートリング12から軸方向の上側は、高温での中身の充填に必要な耐熱性を有するようにいわゆる結晶化装置での加熱によって白くなるまで結晶化されていても良い。
口部10は、軸方向の下端に、首部15を有している。首部15は、軸方向の上端でサポートリング12と接続している。首部15は、その外径及び肉厚が軸方向の上下でほとんど変化しない真円筒状に形成されている。首部15はサポートリング12よりも外径が小である。したがって、サポートリング12の下面は、首部15の外周面を付け根として径方向の外側に向かって延びている。PETボトル1が搬送される際に搬送設備のグリッパは、サポートリング12の下面や、首部15の外周面を用いてPETボトル1を把持することができる。
胴部30は、軸方向の上端の接続部31で肩部20に連なる一方で、軸方向の下端で底部40に連なる。胴部30は、PETボトル1の最大外径を有する部位である。図1に例示される胴部30は軸方向に筒状に延びて略寸胴に形成されている。そして、胴部30は、軸方向に垂直な断面が円環状である。すなわち、PETボトル1はいわゆる丸ボトルである。
本実施形態に係るプラスチック容器は例示された略寸胴の胴部30に限らず軸方向の上下で径の異なる構成であっても構わない。更に、本実施形態に係るプラスチック容器は例示された丸ボトルに限らず、複数のパネルが周方向に連接されて構成される胴部を有するいわゆる角ボトルであっても構わない。
接続部31は寸胴であることが好ましい。これによって、接続部31の断面積が一定であるため、肩部20の形状によらずにPETボトル1の内容積を調整しやすくすることができるとともに、胴部30の形状によらずに、PETボトル1が横向きに載置された際の安定性を向上させることができる。特に、寸胴な接続部31を有するPETボトル1は自動販売機の内部に積載された際に横向きにされた状態を安定して維持することができるためPETボトル1が、自動販売機から正常に排出されるという特性であるベンダー適性を優れたものとすることができる。
図1に例示されるように胴部30は、圧力吸収パネル32を有している。圧力吸収パネル32は胴部30の周方向に等間隔で複数設けられている。これによって、隣り合う圧力吸収パネル32、32の間の領域には軸方向に延びる柱状部33が形作られている。これらは、周方向に、圧力吸収パネル32が広い幅で形成され、柱状部33が狭い幅で形成されている。これによって、圧力吸収パネル32は径方向の内外に変形可能に構成されているのに対し、柱状部33は、剛性が高められてほとんど変形しないように構成されている。柱状部33は、軸方向の上下に延びるいわゆる縦リブ(縦溝)と同様の機能を有しており胴部30の座屈強度を向上させている。
圧力吸収パネル32は、PETボトル1の内部の圧力(内圧)が変化した際に径方向の内外へと変形してPETボトル1の内容積を変化させるように構成されている。このように構成される圧力吸収パネル32は内圧の変化を吸収してPETボトル1が全体でいびつに変形してしまうことを防ぐ機能を有している。一方で、PETボトル1の内圧が変化した際にも、柱状部33を骨格として、胴部30の構造自体は維持される。したがって、胴部30が、圧力吸収パネル32と柱状部33とを有する構成によって、PETボトル1の内圧の変化を吸収し、PETボトル1のいびつな変形を防止することができる。
図1に例示される圧力吸収パネル32は、軸方向に沿った平行な2辺を有しかつ長軸が軸方向に延びる角丸長方形状である。図1に例示される胴部30は、6つの圧力吸収パネル32を有している。圧力吸収パネル32の各々は、段壁面34と、接続面35と、凸状リブ36とを有している。
段壁面34は、周囲の胴部30の外表面から径方向の内側に向かって1段くぼんでいる。段壁面34はすべての角が丸められた長方形状であり、軸方向に垂直な断面(水平断面)が、径方向の内側に向かって湾曲している。接続面35は段壁面34を取り囲んでいる。接続面35は、軸方向に平行にそれぞれ延びる2つの長方形状の辺と、軸方向の上下端で、それぞれ軸方向の外側が円弧状の2つの弓形(きゅうけい)状の辺とからなる4辺で構成されている。接続面35の4辺はいずれも、段壁面34が延びる方向に対して傾斜している。凸状リブ36は、段壁面34から径方向の外側に向かって突出して軸方向に直線状に延びている。凸状リブ36は、段壁面34の軸方向の上端から下端までの領域に延びている。凸状リブ36は複数形成されており周方向に等間隔に並んでいる。
PETボトル1の内部が減圧されて径方向の内側に向かって胴部30が引っ張られた際に段壁面34と凸状リブ36とによる凹凸面が引き伸ばされることによって圧力吸収パネル32は径方向の内側に向かって容易に変形するように構成されている。更に、1段くぼみ、かつ径方向の内側に向かって周方向で湾曲する段壁面34は、PETボトル1の内圧の変化、特に減圧変化に対応して湾曲が反転せずに変形するように構成されている。更に、接続面35は、圧力吸収パネル32の変形が周囲の胴部30に波及することを防ぐことができる。したがって、圧力吸収パネル32は、PETボトル1の内圧の変化、特に減圧変化を効果的に吸収し、PETボトル1のいびつな変形を防止することができる。
凸状リブ36によって、圧力吸収パネル32延いては胴部30の剛性が高まる。これによって、段壁面34の過度な変形を防いだり、胴部30に適度な硬さを持たせてPETボトル1を持ちやすくしたり、PETボトル1の座屈強度を高めたりすることができる。一方で、凸状リブ36が多くなりすぎると、圧力吸収パネル32が変形しにくくなって圧力吸収の機能が低下してしまう。したがって、凸状リブ36の本数及び寸法が適切となるように設計される。図1には、1つの圧力吸収パネル32に対して凸状リブ36が9本形成されている例が示されている。
圧力吸収パネル32は、図1に例示された構成には限らず、内圧変化を効果的に吸収してPETボトル1の変形を防止し、かつ賦形性を良好とする範囲で形状、個数、寸法、角度等が設計されれば良い。例えば、圧力吸収パネル32に替えて長方形状のパネルであっても良く、パネルが、軸方向の上下で周方向にねじれていても構わない。凸状リブ36についても、図1に例示された構成には限らず、凹状のリブであっても良く、これらのリブが任意の方向に延びていても良く、リブ同士が交差していても良く、更に、圧力吸収パネル32はリブを有していなくても構わない。
胴部30は、圧力吸収パネル32の上方と下方とにそれぞれ、周溝37と周溝38とを有している。周溝37及び周溝38は双方とも、いわゆる横リブ(横溝)と同様の機能を有しており、胴部30の側壁強度を向上させる。更に、周溝37及び周溝38はいずれも、軸方向の上下の荷重に対する弾性限界を大きくすることでクッションとして機能する。これによって、PETボトル1は、軸方向の上下の荷重に対して変位が大きくなるものの座屈が生じにくくなる。
図1に例示される周溝37及び周溝38のそれぞれは、胴部30の外表面から径方向の内側に向かってくぼんでおり胴部30を周回して延びている。周溝37及び周溝38の断面はいずれも、溝の両側が、PETボトル1の径方向の外側に向かって湾曲し、溝の底が平坦に形成されている。周溝37や周溝38は、溝の両側が直線状に形成されていても良く、平坦な底を有さずに全体として断面がU字状に形成されていても良い。
胴部30は、図1に例示された構成には限らず、圧力吸収パネル32や、周溝37、周溝38の形状、数、位置が任意に設計されていても良い。更に、胴部30は、圧力吸収パネル32や、周溝37、周溝38を有さなくても構わない。
底部40は、軸方向の上端で胴部30に連なる。底部40は、コーナー部41と、底壁42と、ドーム43とを有している。コーナー部41は、PETボトル1の軸方向の下側、及び径方向の外側に向かって湾曲している。平板環状の底壁42は胴部30に対して垂直方向に延びておりPETボトル1の接地面となっている。
図1において、隠れ線によって例示されるドーム43は、PETボトル1の内側(軸方向の上側)に向けて湾曲する円錐台状に形成されている。ドーム43は、PETボトル1の中身の熱や、内圧の変化による変形を防ぐ機能を有している。ドーム43は、内圧等を効果的に分散してPETボトル1の変形を防止し、かつ賦形性を良好とする範囲で接地面に対する傾斜の角度が設計されれば良い。更に、ドーム43は、径方向の内側において軸方向の上側に向けて複数段で突出するように構成されていても良い。更に、底部40には、ドーム43を補強する機能を有するリブ、例えば放射状リブが形成されていても良い。
底部40は、図1に例示された構成には限らず、中身の充填時のような熱によって変形しやすい状態でPETボトル1の内部が陽圧化しても軸方向の下側に向かって変形しにくい構成であると良い。特に、ドーム43は、熱によって仮に変形したとしても、少なくともPETボトル1の接地面よりも高く維持されるように設計されると良い。これによって、底部40が、底壁42より外側(軸方向の下側)に突出することが防止され、PETボトル1の寸法、特に全高が設計値よりも大となってしまったり、PETボトル1の接地面に凹凸が生じて座屈強度が低下してしまったりすることを防ぐことができる。
図2は、肩部20が拡大された正面図である。肩部20は、軸方向の上端で口部10に連なり、軸方向の下端で胴部30に連なる。肩部20の上端には面取りがされていても良い。肩部20は、径方向の中心を軸とした回転体の形状を有し、その水平断面が真円状の円環である。肩部20は、軸方向の上側から下側に向かってPETボトル1の径方向の外側に広がる略円錐台筒状に構成される。
肩部20は、径方向の中心を通って軸方向に平行な断面(垂直断面)の形状が直線である直線部21を有する。肩部20は、その水平断面が真円状の円環であるため、垂直断面の形状が図2における左右両側に、径方向に対向する2つの直線部21、21として表れる。図2等に例示されるPETボトル1の肩部20はその軸方向の上端を起点として大部分が、直線部21によって構成されている。これによって、肩部20の設計が容易となるとともにその賦形性が良好となる。更に、肩部20の大部分が直線部21によって構成されることでPETボトル1をすっきりとした外観とすることができる。
肩部20は、直線部21に滑らかに連なり、径方向の外側に凸の曲線部22を有する。曲線部22は、肩部20の正面視で上下からの荷重に対する応力を効果的に分散させる。その上で、直線部21と曲線部22との接続箇所は、滑らかに連なることによって、肩部20の正面視で上下からの荷重を受けた際に座屈が生じる際の起点である屈曲点になりにくくされている。したがって、肩部20は、直線部21に加えて曲線部22を有する構成によって、PETボトル1の軸方向及び径方向の荷重に対する強度、すなわち座屈強度及び側壁強度が高められる。直線部21が長くなるほど、軸方向の上下の荷重に対して屈曲しやすくなってしまう。しかしながら、屈曲しやすい箇所に曲線部22が配置されることでPETボトル1の座屈強度を高めることができる。
曲線部22は、単一な曲率半径r1を有していることが好ましい。これによって、肩部20の設計が容易となるとともにその賦形性が良好となる。更に、曲線部22が、単一な曲率半径r1を有して構成されると、軸方向の荷重に対する応力が効果的に分散されるとともに、屈曲点になりやすい箇所が形成されないためPETボトル1の座屈強度が高められる。
図2に例示されるように肩部20は、曲線部22の曲率半径r1よりも小の曲率半径r2を有する別の曲線部である小径曲線部23を有している。そして、肩部20は、小径曲線部23を介して胴部30に滑らかに連なることが好ましい。これによって、軸方向の荷重を受けた際に屈曲点になりやすい肩部20と胴部30との接続箇所に応力が集中することを防ぎ、PETボトル1の座屈強度が高められる。
図2に例示されるように曲線部22は小径曲線部23と滑らかに連なっていても良い。これによって、曲線部22と胴部30との接続箇所が屈曲点になりにくくなる。更に、曲線部22と小径曲線部23とが連なることによって、胴部30が延びる鉛直方向に対する曲線部22の角度の違いを小径曲線部23が吸収するため、肩部20の設計の自由度を上げることができる。
プラスチック容器が二軸延伸ブロー成形される際には、軸方向の長さがより短く成形されているプリフォームがプラスチック容器の軸(縦)方向に伸ばされており、延伸された部分の上側が薄肉になりやすく、下側が厚肉になりやすい傾向がある。このため、延伸された部分の上側、例えば肩部20と胴部30との付け根付近の強度が確保されにくい。しかしながら、PETボトル1は、肩部20の下端付近に曲線部22を有しており、これが、軸方向の荷重に対する応力を効果的に分散してPETボトル1の特に座屈強度を向上させる。
曲線部22の曲率半径r1が小さすぎると、直線部21との接続箇所が屈曲点となりやすくなってしまう。一方で、曲線部22の曲率半径r1が大きすぎると、小径曲線部23との接続箇所が屈曲点となりやすくなってしまう。したがって、曲線部22の曲率半径r1は6 mm以上、32 mm以下であることが好ましい。
プラスチック容器の胴径が小である場合には寸法に余裕がない場合が多く曲率半径r1が小となりやすい。一方で、プラスチック容器の胴径が大である場合には曲率半径r1が過小であると座屈強度が確保されにくくなる。したがって、接続部31の胴径Dに対する曲線部22の曲率半径r1の比は0.1以上、0.26以下であることが好ましい。
小径曲線部23の曲率半径r2が小さすぎると、胴部30との接続箇所が屈曲点となりやすくなってしまう。一方で、小径曲線部23の曲率半径r2が大きすぎると、肩部20の設計の自由度が下がってしまう。したがって、小径曲線部23の曲率半径r2は2 mm以上、曲率半径r1の65 %以下であることが好ましい。
径方向に対向する直線部21、21の成す角度が肩部20の開き角度θとされる。ここでの直線部21、21、及び開き角度θは上述された曲率半径r1等と同様に垂直断面の形状である。肩部20の垂直断面の形状と、正面視における肩部20の左右両端の形状とは同一であるものとしても差し支えはない。したがって、図2における直線部21、21は径方向に対向している。
開き角度θが小さすぎると、内容積が確保しにくくなる。一方で、開き角度θが大きすぎると、肩部20の上側で口部10が落ち込むように座屈しやすくなってしまい座屈強度が低下してしまう。したがって、開き角度θは100 °以上、135 °以下であることが好ましい。
肩部20に直線部21と曲線部22とを有するPETボトル1は直線のみの肩形状の構成と比べて開き角度θが大であっても座屈強度を高めることができる。したがって、PETボトル1では内容積を確保するために開き角度θを大としても座屈強度の低下が抑えられ、内容積と座屈強度との双方とも犠牲にすることがない
次に、別の実施形態に係るプラスチック容器の構成を詳細に説明する。ここでは、上述されたPETボトル1と相違する点を詳細に説明し、同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を適宜割愛する。図3は、別の実施形態に係るプラスチック容器の一例としてのPETボトル2が示された正面図である。PETボトル2は、口部10、肩部220、胴部30、及び底部40を軸方向に順次有する。PETボトル2の肩部220の構成はPETボトル1の肩部20とは異なっている。
図4は、肩部220が拡大された正面図である。PETボトル2は、肩部220に、直線部221と、曲率半径r1の曲線部222とを有している。しかしながら、PETボトル2では、軸方向の上端から、直線部221ではなく曲線部222が延びている。そして、PETボトル1の曲線部22とは異なり、PETボトル2の曲線部222は小径曲線部23と連なっていない。
このように、プラスチック容器は、PETボトル2のように肩部220が、曲線部222、直線部221、小径曲線部23を軸方向に順次有するように構成されていても良い。プラスチック容器は、このような構成であっても、既定の寸法の中でその内容積を確保しながら特にその座屈強度を高めることができる。
ここで、PETボトル2の直線部221は、口部10の側における肩部220の端と接していない。そこで、口部10の側における肩部220の端において、対向する曲線部222、222それぞれについての接線224、224の成す角度が肩部220の開き角度θとされる。
PETボトル2では、直線部221が、小径曲線部23に連なるように構成されることによって、直線部221の向きを軸方向に垂直な方向から平行な方向に近づけることができ、直線部221の領域に、軸方向の荷重に対する屈曲点が生じにくくすることができる。一方で、曲線部222が、肩部220の軸方向の上端から延びるように構成されることによって軸方向の荷重に対する応力が効果的に分散されるとともにPETボトル2の内容積の確保が容易となる。
なお、接線224、224による開き角度θは、PETボトル1における直線部21、21による開き角度θと同様に100 °以上、160 °以下であることが好ましい。
そして、肩部220に直線部221と曲線部222とを有するPETボトル2も直線のみの肩形状の構成と比べて開き角度θが大であっても座屈強度を高めることができる。したがって、PETボトル2でも内容積を確保するために開き角度θを大としても座屈強度の低下が抑えられ、内容積と座屈強度との双方とも犠牲にすることがない。
PETボトル1の肩部20、及びPETボトル2の肩部220以外の形状は図1等の例示に限らずどのような形状であっても良い。例えば、本実施形態においては、図1に示された寸胴の丸ボトルに好適に用いることができる。しかしながら、本実施形態が適用されるプラスチック容器は寸胴の丸ボトルには限定されず、胴径が絞られたくびれ部を有するボトルであっても良い。そして、胴部30に設けられる圧力吸収用のパネルや、横溝、縦溝の形状についても自由に設計することができる。
本実施形態に係るPETボトル1やPETボトル2(以下ではまとめて、PETボトル1と称される)にはサイズによる限定はなく、種々のサイズに対して適用することができる。例えば、PETボトル1の内容積が80 ml以上、2000 ml以下であることが好ましく、200 mlから1000 mlであることがより好ましい。PETボトル1の軸方向の全長は90 mm以上、310 mm以下であっても良く、胴部30の胴径Dは40 mm以上、105 mm以下であっても良い。
更に、本実施形態に係るPETボトル1は軽量化ボトルを対象として好適に用いることもできる。そして、特に、軽量性を有しながら、PETボトル1の座屈強度を保つ観点から、内容積が例えば320 mlの場合には、材料の質量が12 g以上、22 g以下であると良い。
PETボトル1が例示されたプラスチック容器の材料としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンや、エチレン−ビニルアルコール共重合体、植物等を原料としたポリ乳酸等のブロー成形が可能な種々のプラスチックを用いることができる。しかしながら、プラスチック容器は、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、特に、ポリエチレンテレフタレートが主成分とされることが好ましい。なお、上述された樹脂には、成形品の品質を損なわない範囲で種々の添加剤、例えば着色剤、紫外線吸収剤、離型剤、滑剤、核剤、酸化防止剤、帯電防止剤を配合することができる。
PETボトル1を構成するエチレンテレフタレート系熱可塑性樹脂としては、エステル反復部分の大部分、一般に70 mol%以上をエチレンテレフタレート単位が占めるものであり、ガラス転移点(Tg)が50 ℃以上、90 ℃以下であり、融点(Tm)が200 ℃以上、275 ℃以下の範囲にあるものが好適である。エチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルとして、ポリエチレンテレフタレートが耐圧性等の点で特に優れているものの、エチレンテレフタレート単位以外に、イソフタル酸や、ナフタレンジカルボン酸等の二塩基酸と、プロピレングリコール等のジオールからなるエステル単位を少量含む共重合ポリエステルも使用することができる。
ポリエチレンテレフタレートは熱可塑性の合成樹脂の中では生産量が最も多い。そして、ポリエチレンテレフタレート樹脂は、耐熱性、耐寒性や、耐薬品性、耐摩耗性に優れる等の種々の特性を有する。更に、ポリエチレンテレフタレート樹脂はその原料に占める石油の割合が他のプラスチックと比べて低く、リサイクルも可能である。このように、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする構成によれば、生産量の多い材料を用いることができ、その優れた種々の特性を活用することができる。
ポリエチレンテレフタレートは、エチレングリコール(エタン−1,2−ジオール)と、精製テレフタル酸との縮合重合によって得られる。ポリエチレンテレフタレートの重合触媒として、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、及びアルミニウム化合物の少なくとも一つが用いられることが好ましい。これらの触媒が用いられることによって、アンチモン化合物が用いられるよりも、高い透明性を有し、耐熱性に優れた容器を形成することができる。
上述された材料が成形されることによって本実施形態に係るプラスチック容器を作製することができる。プラスチック容器は、射出成形によるプリフォームの作製と、二軸延伸ブロー成形によるプリフォームからプラスチック容器への加工とを組み合わせた成形法であることが好ましい。二軸延伸ブロー成形が用いられたプラスチック容器は延伸効果が高く強度に優れる。
プリフォームは、成形された後に箱入れされて倉庫等でいったん保管されても良く、そのまま、引き続き、次の工程へと進められても良い。すなわち、プリフォームの成形と、二軸延伸ブロー成形とが別の場所や装置で行われる、いわゆるコールドパリソン方式(2ステージ方式)であっても良く、双方が、同じ場所や装置で行われる、いわゆるホットパリソン方式(1ステージ方式)であっても良い。更に、プリフォームの成形から中身の充填等に至るまでの製造工程がインラインで連続的なものであっても良い。
PETボトル1への中身の充填方法についても限定されない。したがって、PETボトル1は、ホット充填に用いられても、アセプティック充填に用いられても良い。
以上のように、PETボトル1(PETボトル2)は、口部10、肩部20(肩部220)、胴部30、及び底部40を軸方向に順次有し、肩部20は、軸方向に垂直な径方向の中心を通って軸方向に平行な断面(垂直断面)の形状が直線である直線部21(直線部221)と、直線部21に滑らかに連なり、径方向の外側に凸の曲線部22(曲線部222)とを有する。
このように構成されるPETボトル1やPETボトル2は、既定の寸法の中で内容積が確保されていながら特に座屈強度に優れるものとすることができる。
以下に、実施例を示して、本開示を更に詳細、かつ具体的に説明する。しかしながら、本開示は、以下の実施例に限定されるものではない。
<材料、及び製造方法>
[実施例1]
21.8 gのポリエチレンテレフタレート製のプリフォームが二軸延伸ブロー成形され、図3等に示されるPETボトル2の通常ボトルが作製された。PETボトル2は、図4に示されるように肩部220が、曲線部222、直線部221、小径曲線部23を軸方向に順次有するように構成されていた。PETボトル2は、曲線部222の曲率半径r1が21.2mm、小径曲線部23の曲率半径r2が4 mmとされ、接線224、224の開き角度θが157.0 °とされた。このとき、直線部221、221の成す角度は79.1 °であった。口部10と肩部220との間には4 mmの半径で丸み面取りがされた。
すべての実施例及び比較例のボトルは、全高が138mm、胴径Dが68mm、満注容量が336mlに統一することとされた。そして、各例のボトルには、320mlの水が充填された上で図示せぬ蓋で閉栓されて充填体が作製された。
肩形状が各例で異なるボトルの全高を変えることなく満注容量をそろえるために胴部30の上端、すなわち接続部31の軸方向の長さを変える対応がとられた。そして、実施例1に係るPETボトル2では、底壁42から接続部31の上端までの軸方向の長さ(胴部高さ)が92.58 mmとされた。
更に、同様にして、18.3 gのポリエチレンテレフタレート製のプリフォームが二軸延伸ブロー成形され図3等に示されるPETボトル2の軽量化ボトルによる充填体が作製された。これらの実施例1に係るPETボトル2は、肩部220が、軸方向に垂直な径方向の中心を通る垂直断面の形状が直線である直線部221と、直線部221に滑らかに連なり、径方向の外側に凸の曲線部222とを有する等といった本実施形態に係る特徴を有していた。
[比較例1]
図5は、比較例1のPETボトル300の正面図である。PETボトル300は、口部10、肩部320、胴部30、及び底部40を軸方向に順次有し、肩部320が、単一な曲率半径r1を有する曲線部322によって構成されていた。そして、PETボトル300は、実施例1の直線部221に相当する構成を有していなかった。したがって、比較例1に係る充填体は、本実施形態に係る特徴を有していなかった。
図6は、比較例1の肩部320が拡大された正面図である。PETボトル300は、曲線部322の曲率半径rが23.0 mmとされ、接線324、324の開き角度θが157.2 °とされ、胴部高さが89.63 mmとされた。したがって、比較例1のPETボトル300は、実施例1に係るPETボトル2と接線324、324の開き角度θが略同様の形状であった。
[実施例2]
実施例2のPETボトル1は、図2に示されるように肩部20が、直線部21、曲線部22、小径曲線部23を軸方向に順次有するように構成されている点で実施例1のPETボトル2とは異なっていた。しかしながら、実施例2に係るPETボトル1も肩部20が、軸方向に垂直な径方向の中心を通る垂直断面の形状が直線である直線部21と、直線部21に滑らかに連なり、径方向の外側に凸の曲線部22とを有する等といった本実施形態に係る特徴を有していた。
図2に示されるようにPETボトル1は、曲線部22の曲率半径r1が12.2 mm、小径曲線部23の曲率半径r2が4 mmとされ、直線部21の開き角度θが121.5 °とされ、胴部高さが93.43 mmとされた。
[比較例2]
図7は、比較例2のPETボトル400の正面図である。PETボトル400は、口部10、肩部420、胴部30、及び底部40を軸方向に順次有し、肩部420が、直線部421と、小径曲線部423とによって構成されていた。そして、PETボトル400は、実施例2の曲線部22に相当する構成を有していなかった。したがって、比較例2に係る充填体は、本実施形態に係る特徴を有していなかった。
図8は、比較例2の肩部420が拡大された正面図である。PETボトル400は、小径曲線部423の曲率半径r2が4 mmとされ、直線部421、421の開き角度θが118.6 °とされ、胴部高さが95.29 mmとされた。したがって、比較例2のPETボトル400は、実施例2に係るPETボトル1と開き角度θが略同様の形状であった。
<評価方法>
(座屈強度試験)
実施例1、実施例2、比較例1、及び比較例2の各充填体の正立した状態での座屈強度試験が行われた。座屈強度の測定には、Agr Top Wave社製のテスター、TOP LOAD TESTER MODEL NO.C506−02−0001が用いられた。口部10の上から一定速度で荷重が加えられ、いわゆる降伏の状態となる最大荷重が座屈強度の指標の座屈荷重[N]とされ、その時点での変位が座屈変位[mm]とされた。表1及び表2には、座屈強度試験の結果が示されている。
上述された実施例1と比較例1との結果から以下の点が導き出された。実施例1と比較例1とではその開き角度θが略同じ値であって、実施例1の肩部220が直線部221を有して構成され、比較例1の肩部320が曲線部322によって構成されていた。
一般的に、プラスチック容器の強度、特に座屈強度を高めるには直線よりも曲線による形状の方が良いとされている。しかしながら、実施例1のPETボトル2では直線部221が付加されたもののこれに更に、曲線部222が付加されることで、曲線の形状からなる比較例1のPETボトル300をやや上回る座屈強度が得られていた。すなわち、直線部221を有して構成される肩部220の一部に付加された曲線部222が軸方向の荷重に対する応力を効果的に分散してPETボトル2の特に座屈強度を高めることが示された。この傾向は、通常ボトル及び軽量化ボトルの双方で同様であった。
実施例2と、比較例2との結果から以下の点が導き出された。実施例2と比較例2とではその開き角度θが略同じ値であって、比較例2の肩部420が直線部421によって構成されていたのに対し、実施例2の肩部20は、直線部21に滑らかに連なり、径方向の外側に凸の曲線部22を有して構成されていた。実施例2では、軸方向の荷重を受けた際に屈曲点になりやすい部位の1つである肩部20と胴部30との接続箇所の近くに付加された曲線部22がPETボトル1の座屈強度を有意に高めることが示された。
実施例2と、比較例2とでは特に、軽量化ボトルにおいて、座屈変位がやや大となるものの座屈強度がより高められていた。そして、軽量化ボトルにおいて、比較例2と略同じ値の開き角度θを有する実施例2では、材料の質量が3.5 g大である比較例2の通常ボトルを上回るほどに座屈強度が高められていた。
以上のような実施例の結果から本実施形態では、既定の寸法の中で内容積が確保されていながら特に座屈強度に優れるPETボトル1やPETボトル2を提供することができることが示された。