JP6362693B2 - 空冷式単気筒エンジン及び鞍乗型車両 - Google Patents
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Description
シリンダボディに形成されるシリンダ孔の内壁面は、周方向に温度ムラが生じやすい。シリンダボディの全周とシリンダヘッドに設けられたウォータージャケットに、潤滑オイルを流した場合、シリンダ孔の内壁面の温度の高くなりやすい部分は、ある程度温度を低下させることができる。しかし、シリンダボディの全周に潤滑オイルを流したことにより、シリンダ孔の内壁面の元々温度が低い部分は逆に温度が高くなってしまう場合がある。そのため、シリンダ孔の内壁面において潤滑オイルの蒸発量が依然多くなって、潤滑オイルの消費量を十分に低減できていないことに気付いた。
ピストンが収容されるシリンダ孔を形成するシリンダ部を備えたシリンダボディと、前記シリンダ孔と共に燃焼室を区画し、燃焼室に連通する吸気通路及び排気通路が形成されたシリンダヘッドとを備えた空冷式単気筒エンジンでは、シリンダ孔の内壁面の温度は周方向にムラが生じやすい。シリンダ孔の内壁面の温度が高温になりやすい周方向一部分にオイルジャケットを設けることにより、当該周方向一部分にフィン部だけを設けてオイルジャケットを設けない場合に比べて、シリンダ孔の内壁面における当該周方向一部分の温度を低下できる。
また、内部を、SAE粘度分類による低温粘度グレードが20Wよりも低い潤滑オイルが充満状態で流れるオイルジャケットをシリンダボディに設ける場合、オイルジャケットをシリンダボディの全周に設けることが考えられる。しかし、そうすると、シリンダ孔の内壁面の温度が高温になりやすい周方向一部分だけでなく、シリンダ孔の内壁面の温度が比較的低くなりやすい周方向一部分にも、オイルジャケットを設けることになる。シリンダ孔の内壁面の温度が比較的低くなりやすい周方向一部分にオイルジャケットを設けた場合、当該周方向一部分にフィン部を設けてオイルジャケットを設けない場合に比べて、シリンダ孔の内壁面における当該周方向一部分の温度が上昇してしまう。これに対して、本発明では、オイルジャケットの周方向範囲がフィン部の周方向範囲よりも小さい周方向範囲になるように、フィン部とオイルジャケットとを組み合わせてシリンダボディに設けている。そのため、シリンダ孔の内壁面の温度が高温になりやすい周方向一部分にオイルジャケットを設けて、温度が比較的低くなりやすい部分にはオイルジャケットを設けない構成にできる。それにより、オイルジャケットをシリンダボディの全周に設ける場合に比べて、シリンダ孔の内壁面の周方向全域の温度を低下させることができると共に、シリンダ孔の内壁面のうち高温になりやすい周方向一部分の温度をより低下させることができる。
また、シリンダボディにオイルジャケットを設けるため、シリンダヘッドにのみオイルジャケットを設ける場合に比べて、シリンダ孔に近い位置にオイルジャケットを設けることができる。そのため、シリンダ孔の内壁面の温度を効率的に低下させることができる。
また、シリンダ孔の内壁面の温度を低下させるために、エンジンが元々備えている潤滑オイルを利用しているため、製造コストの増加を抑えることができる。
したがって、本発明の空冷式単気筒エンジンは、製造コストの増加を抑えつつ、潤滑オイルの消費量を低減できる。
また、潤滑オイルの粘度が低いほど、潤滑オイルは蒸発しやすい。これに対して、本発明の空冷式単気筒エンジンは、シリンダ孔の内壁面における潤滑オイルの蒸発を抑制するオイル蒸発抑制部を備えている。そのため、潤滑オイルとして、SAE粘度分類による低温粘度グレードが20Wよりも低い潤滑オイルを用いても、シリンダ孔の内壁面における潤滑オイルの蒸発を抑制することができる。
また、潤滑オイルの粘度が低いほど、オイルジャケットを流れる潤滑オイルの単時間当たりの流量が多くなり、シリンダ孔の内壁面の温度をより低下させることができる。したがって、潤滑オイルの低温粘度グレードが20Wよりも低いことにより、オイル蒸発抑制部によるシリンダ孔の内壁面における潤滑オイルの蒸発を抑制する効果をより高めることができる。
なお、本発明において、オイル蒸発抑制部が、ピストンの上死点と下死点の中間位置よりもシリンダヘッド側に設けられるとは、オイル蒸発抑制部の少なくとも一部が、ピストンの上死点と下死点の中間位置よりもシリンダヘッド側に設けられることである。
また、オイルジャケットとヘッドオイルジャケットは、シリンダ軸方向に互いに近い位置に設けられている。そのため、オイルジャケットとヘッドオイルジャケットが離れた位置に設けられる場合に比べて、オイルジャケットとヘッドオイルジャケットに潤滑オイルを供給する構成を簡易化でき、製造コストを低減できる。
また、オイルジャケットに潤滑オイルを供給する構成が、ヘッドオイルジャケットに潤滑オイルを供給する構成を兼ねることができるため、製造コストを低減できる。
なお、本発明において、シリンダ軸線が車両上下方向に延びている状態とは、シリンダ軸線が厳密に車両上下方向に延びている場合だけでなく、シリンダ軸線が車両上下方向に対して±45°の範囲で傾斜している場合を含む。
以下、本発明の第1実施形態について説明する。本実施形態は、図1に示す自動二輪車1のエンジンに本発明の空冷式単気筒エンジンを適用した一例である。なお、以下の説明において、前後方向とは、自動二輪車1の後述するシート8に着座したライダーから視た車両前後方向のことであり、左右方向とは、シート8に着座したライダーから視たときの車両左右方向(車両幅方向)のことである。また、各図面の矢印F方向と矢印B方向は、前方と後方を表しており、矢印L方向と矢印R方向は、左方と右方を表しており、矢印U方向と矢印D方向は、上方と下方を表している。
図1に示すように、本実施形態の自動二輪車1は、スクータである。自動二輪車1は、前輪2と、後輪3と、車体フレーム4とを備えている。車体フレーム4は、全体として前後方向に延びた形態である。
エンジン12(本発明の空冷式単気筒エンジン)は、強制空冷式のエンジンである。また、エンジン12は、OHC(Over Head Camshaft)型の4サイクル単気筒エンジンである。図2および図3に示すように、エンジン12は、クランクケース20と、クランクケース20の前端部に取り付けられたシリンダボディ21と、シリンダボディ21の前端部に取り付けられたシリンダヘッド22と、シリンダヘッド22の前端部に取り付けられたヘッドカバー23と、シュラウド24を備えている。なお、図2ではシュラウド24の表示を省略している。また、図2は、クランクケース20の左側面と、シリンダボディ21、シリンダヘッド22、ヘッドカバー23の断面を表示している。
本実施形態のエンジン12は、フィン部54と、このフィン部54の周方向範囲よりも小さい周方向範囲に形成され、且つ、内部を潤滑オイルが充満状態で流れるオイルジャケット50bとを含むオイル蒸発抑制部を備えている。オイル蒸発抑制部は、シリンダボディ21にフィン部54とオイルジャケット50bを設けるという技術思想と、オイルジャケット50bの周方向範囲をフィン部54の周方向範囲よりも小さく形成するという技術思想によって成り立っている。
シリンダ孔50aの内壁面の温度は周方向にムラが生じやすい。シリンダ孔50aの内壁面の温度が高温になりやすい周方向一部分にオイルジャケット50bを設けることにより、当該周方向一部分にフィン部だけを設けてオイルジャケットを設けない場合(比較例1)に比べて、シリンダ孔の内壁面における当該周方向一部分の温度を低下できる。
また、オイルジャケット50bは、フィン部54の周方向範囲よりも小さい周方向範囲に設けられる。そのため、シリンダ孔50aの内壁面の温度が高温になりやすい周方向一部分にオイルジャケット50bを設けて、温度が比較的低くなりやすい部分にはオイルジャケット50bを設けない構成にできる。それにより、オイルジャケットをシリンダボディの全周に設ける場合(比較例2)に比べて、シリンダ孔50aの内壁面の周方向全域の温度を低下させることができると共に、シリンダ孔50aの内壁面のうち高温になりやすい周方向一部分の温度をより低下させることができる。
したがって、本実施形態のエンジン12は、製造コストの増加を抑えつつ、潤滑オイルの消費量を低減できる。
ところが、近年では、燃費向上のために、粘度の低い潤滑オイルがエンジンに使用されるようになった。それにより、潤滑オイルが蒸発しやすくなり、潤滑オイルの消費量が多くなるという問題が発生した。
また、潤滑オイルの粘度が低いほど、オイルジャケット50bを流れる潤滑オイルの単時間当たりの流量が多くなり、シリンダ孔50aの内壁面の温度をより低下させることができる。したがって、潤滑オイルの低温粘度グレードが20Wよりも低いことにより、オイル蒸発抑制部によるシリンダ孔50aの内壁面における潤滑オイルの蒸発を抑制する効果をより高めることができる。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。但し、上記第1実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を用いて適宜その説明を省略する。本実施形態は、図7に示す自動二輪車201のエンジンに本発明の空冷式単気筒エンジンを適用した一例である。以下の説明で用いる前後方向および左右方向の定義は、第1実施形態と同様である。
図7に示すように、本実施形態の自動二輪車201は、いわゆるアンダーボーン型の自動二輪車である。自動二輪車201は、前輪202と、後輪203と、車体フレーム204とを備えている。車体フレーム204は、全体として前後方向に延びた形態である。
エンジンユニット211は、自然空冷式のエンジンユニットである。また、エンジンユニット211は、OHC(Over Head Camshaft)型の4サイクル単気筒エンジンユニットである。エンジンユニット211は、本発明の空冷式単気筒エンジンに相当する。
次に、本発明の第3実施形態について説明する。但し、上記第1実施形態および第2実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を用いて適宜その説明を省略する。本実施形態は、図10に示す自動二輪車301のエンジンに本発明の空冷式単気筒エンジンを適用した一例である。以下の説明で用いる前後方向および左右方向の定義は、第1実施形態と同様である。
図10に示すように本実施形態の自動二輪車301は、スポーツタイプの自動二輪車である。なお、本実施形態のエンジンは、オンロード型のモーターサイクルに適用してもよく、オフロード型のモーターサイクルに適用してもよい。自動二輪車301は、前輪302と、後輪303と、車体フレーム304とを備えている。車体フレーム304は、全体として前後方向に延びた形態である。
エンジンユニット311は、自然空冷式のエンジンユニットである。また、エンジンユニット311は、OHC(Over Head Camshaft)型の4サイクル単気筒エンジンユニットである。エンジンユニット311は、本発明の空冷式単気筒エンジンに相当する。
また、上記第3実施形態では、シリンダボディ321のフィン部354は、シリンダボディ321の全周に設けられているが、フィン部354の周方向に関する位置は、これに限定されるものではない。例えば、フィン部354をチェーン室55側の部分以外の部分に設けてもよい。
第3実施形態では、シリンダ軸線が上下方向に延びている。そのため、走行時の風向きはシリンダ軸線に交差する方向となり、シリンダボディ321の外表面のうち前面(排気通路63側の面)が最も風を受ける。したがって、第3実施形態の変更例として、オイルジャケット50bが、シリンダ軸線を中心とした周方向において排気通路63の周方向範囲と重ならない周方向範囲に設けられた場合、フィン部354によって効率的にシリンダ孔50aの内壁面の温度を低下させることができる。
また、オイルジャケット(50b)とヘッドオイルジャケット(566a)の周方向範囲が同じであるため、オイルジャケット(50b)に潤滑オイルを供給する構成が、ヘッドオイルジャケット(566a)に潤滑オイルを供給する構成を兼ねることができるため、エンジンをより小型化できる。
吸気通路62の凹部61に形成される開口端の位置が上記第1〜第3実施形態とほぼ同じであって、且つ、吸気通路62の反対側の開口がシリンダボディの下面または前面に形成されていれば、吸気通路62は、シリンダ軸線方向から見て湾曲していてもよく、シリンダ軸線方向から見て上下方向に対して傾斜するように直線状に延びていてもよい。
同様に、排気通路63の凹部61に形成される開口端の位置が上記第1〜第3実施形態とほぼ同じであって、且つ、排気通路63の反対側の開口がシリンダボディの上面または後面に形成されていれば、排気通路63は、シリンダ軸線方向から見て湾曲していてもよく、シリンダ軸線方向から見て上下方向に対して傾斜するように直線状に延びていてもよい。
この変更例の場合、オイルジャケット50bは、シリンダ軸線を中心とした周方向において、少なくとも、排気通路63のうちシリンダ孔50aと重なる部分の周方向範囲の全域に形成されていることが好ましい。
また、上記第3実施形態では、シリンダ軸線方向は、上下方向に延びているが、前後方向に延びていてもよい。
4、204、304 車体フレーム
10、210、310 車体カバー
11 エンジンユニット
12、 エンジン(空冷式単気筒エンジン)
21、221、321、421 シリンダボディ
22、222、322、522 シリンダヘッド
24 シュラウド
24a 空気流入口
26 燃焼室
31 ファン
33 ピストン
50、421a シリンダ部
50a シリンダ孔
61 凹部
62 吸気通路
63 排気通路
54、254、354 フィン部(オイル蒸発抑制部)
50b、421c オイルジャケット(オイル蒸発抑制部)
55 チェーン室(中空室)
65、365 ヘッドフィン部(オイル蒸発抑制部)
211、311 エンジンユニット(空冷式単気筒エンジン)
270 フロントカバー
270b レッグシールド部(レッグシールド)
271 ボディカバー
271a レッグシールド部(レッグシールド)
566a ヘッドオイルジャケット(オイル蒸発抑制部)
Claims (7)
- ピストンが収容されるシリンダ孔を形成するシリンダ部を備えたシリンダボディと、
前記シリンダ孔と共に燃焼室を区画し、前記燃焼室に連通する吸気通路及び排気通路が形成されたシリンダヘッドと、を備える空冷式単気筒エンジンであって、
前記シリンダボディの外表面に設けられた複数のフィンを有するフィン部、及び、前記シリンダボディにおける前記フィン部のシリンダ軸線を中心とした周方向範囲よりも小さい周方向範囲に形成され、且つ、前記シリンダ孔の外側に設けられ、内部を、SAE粘度分類による低温粘度グレードが20Wよりも低い潤滑オイルが充満状態で流れるオイルジャケットを含み、前記シリンダ孔の内壁面におけるSAE粘度分類による低温粘度グレードが20Wよりも低い潤滑オイルの蒸発を抑制するオイル蒸発抑制部を備えることを特徴とする空冷式単気筒エンジン。 - 前記オイル蒸発抑制部は、前記ピストンの上死点と下死点の中間位置よりも前記シリンダヘッド側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の空冷式単気筒エンジン。
- 前記オイル蒸発抑制部は、
前記シリンダヘッドの外表面に設けられた複数のフィンを有するヘッドフィン部、及び、前記シリンダヘッドにおける前記燃焼室の外側に設けられ、内部を潤滑オイルが充満状態で流れるヘッドオイルジャケットを含むことを特徴とする請求項2に記載の空冷式単気筒エンジン。 - 前記オイルジャケットと前記ヘッドオイルジャケットは、周方向範囲が同じであって、シリンダ軸方向に連通していることを特徴とする請求項3に記載の空冷式単気筒エンジン。
- 前記シリンダヘッドの少なくとも一部を覆い、空気流入口を有するシュラウドと、
前記シュラウド内に前記空気流入口から空気を導入させるファンと、を備え、
前記オイルジャケットが、シリンダ軸線に対して前記空気流入口と反対側に設けられていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の空冷式単気筒エンジン。 - 車体フレームと、
前記車体フレームに搭載されるエンジンと、
前記車体フレームの車両幅方向両側に配置される一対のレッグシールドと、を備える鞍乗型車両であって、
前記エンジンが、請求項1〜5の何れかに記載の空冷式単気筒エンジンであって、
前記フィン部と前記オイルジャケットが、シリンダ軸線の車両幅方向両側で且つ前記一対のレッグシールドの間に配置されることを特徴とする鞍乗型車両。 - 車体フレームと、
前記車体フレームに搭載されるエンジンと、を備える鞍乗型車両であって、
前記エンジンが、請求項1〜6の何れかに記載の空冷式単気筒エンジンであって、
前記シリンダ軸線が車両上下方向に延びていることを特徴とする鞍乗型車両。
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