JP6357665B2 - 薄膜トランジスタ基板及びその製造方法 - Google Patents

薄膜トランジスタ基板及びその製造方法 Download PDF

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本開示は、酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタ基板及びその製造方法に関する。
液晶表示装置又は有機EL(Electro−Luminescence)表示装置などのアクティブマトリクス方式の表示装置には、スイッチング素子又は駆動素子として薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)が広く用いられている。また、表示装置の大画面化に伴い、TFTが積層されるガラス基板の大型化が進んでいる。ここで、大型化されたガラス基板上にTFTを設ける場合に、異層配線間のショートによって歩留りが悪化するという問題がある。この問題を解決するために、アモルファスシリコンをチャネル層に用いたTFTにおいて、ゲート絶縁層を、異なる種類の複数のシリコン窒化膜で構成する技術が知られている(非特許文献1)。
Yue Kuo,「Thin Film Transistors with Graded SiNx Gate Dielectrics」,J.Electrochem. Soc.,141(4),1061(1994)
近年、TFTのチャネル層に酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウムガリウム(InGaO)、又は、酸化インジウムガリウム亜鉛(InGaZnO)などの酸化物半導体を用いた構成について、研究開発が積極的に進められている。酸化物半導体をチャネル層に用いたTFTは、アモルファス状態でも高いキャリア移動度を持ち、低温プロセスで形成可能であるという特徴を持つ。このような酸化物半導体をチャネル層に用いたTFTにおいても、アモルファスシリコンを用いた場合と同様に、異層配線間のショートによって歩留りが悪化するという問題がある。
本開示は、酸化物半導体をチャネル層に用いた薄膜トランジスタが基板上に形成された薄膜トランジスタ基板であって、ゲート絶縁層の耐電圧特性を改善できる薄膜トランジスタ基板及びその製造方法を提供する。
上記課題を解決するため、本開示に係る薄膜トランジスタ基板の一態様は、基板と、基板の上方に配置されたゲート電極と、ゲート電極の上方であって、ゲート電極に対向する位置に配置され、チャネル層として用いられる酸化物半導体層と、ゲート電極と酸化物半導体層との間に配置されたゲート絶縁層とを備え、ゲート絶縁層は、ゲート電極側から順に配置された第1絶縁層、第2絶縁層及び第3絶縁層を備え、第1絶縁層、第2絶縁層及び第3絶縁層はシリコン窒化膜から構成され、第1絶縁層、第2絶縁層及び第3絶縁層における窒素原子及び珪素原子に結合される水素原子量が、それぞれ、3.3×1022cm−3以下、及び、2.3×1021cm−3以下であり、第2絶縁層の膜厚から第3絶縁層の膜厚を引いた差は50nm以下であり、第2絶縁層の膜密度は、第1絶縁層及び第3絶縁層の膜密度より小さい。
また、本開示に係る薄膜トランジスタ基板の製造方法の一態様は、薄膜トランジスタ基板の製造方法であって、基板の上方にゲート電極を形成する工程と、ゲート電極の上方であって、ゲート電極と対向する位置に、チャネル層として用いられる酸化物半導体層を形成する工程と、ゲート電極と酸化物半導体層との間にゲート絶縁層を形成する工程とを含み、ゲート絶縁層を形成する工程は、ゲート電極側から順に配置される第1絶縁層、第2絶縁層及び第3絶縁層をそれぞれ形成する工程を含み、第1絶縁層、第2絶縁層及び第3絶縁層はシリコン窒化膜から構成され、第1絶縁層、第2絶縁層及び第3絶縁層における窒素原子及び珪素原子に結合される水素原子量が、それぞれ、3.3×1022cm−3以下、及び、2.3×1021cm−3以下であり、第2絶縁層の膜厚から第3絶縁層の膜厚を引いた差は50nm以下であり、第2絶縁層の膜密度は、第1絶縁層及び第3絶縁層の膜密度より小さい。
本開示によれば、酸化物半導体をチャネル層に用いた薄膜トランジスタが基板上に形成された薄膜トランジスタ基板であって、ゲート絶縁層の耐電圧特性を改善できる薄膜トランジスタ基板及びその製造方法を提供することができる。
図1は、実施の形態に係る有機EL表示装置の一部切り欠き斜視図である。 図2は、実施の形態に係る有機EL表示装置のピクセルバンクの一例を示す斜視図である。 図3は、実施の形態に係る有機EL表示装置における画素回路の構成を示す電気回路図である。 図4は、実施の形態に係る薄膜トランジスタ基板の一例を示す概略断面図である。 図5Aは、実施の形態に係る薄膜トランジスタ基板の製造工程を示す概略断面図である。 図5Bは、実施の形態に係る薄膜トランジスタ基板の製造工程を示す概略断面図である。 図5Cは、実施の形態に係る薄膜トランジスタ基板の製造工程を示す概略断面図である。 図5Dは、実施の形態に係る薄膜トランジスタ基板の製造工程を示す概略断面図である。 図6は、シリコン窒化膜が形成されるシリコン基板の成膜時における配置を示す上面図である。 図7は、シリコン窒化膜の成膜パラメータと成膜されたシリコン窒化膜の物性値とを示す表である。 図8は、シリコン酸化膜の成膜パラメータと成膜されたシリコン酸化膜の物性値とを示す表である。 図9Aは、条件Aを用いて成膜されたシリコン窒化膜とシリコン酸化膜とをゲート絶縁層に用いた薄膜トランジスタの電気特性の測定結果を示すグラフである。 図9Bは、条件Bを用いて成膜されたシリコン窒化膜とシリコン酸化膜とをゲート絶縁層に用いた薄膜トランジスタの電気特性の測定結果を示すグラフである。 図9Cは、条件Cを用いて成膜されたシリコン窒化膜とシリコン酸化膜とをゲート絶縁層に用いた薄膜トランジスタの電気特性の測定結果を示すグラフである。 図10は、シリコン窒化膜の成膜パラメータと成膜されたシリコン窒化膜の物性値とを示す表である。 図11は、成膜における圧力と各物性値との関係を示すグラフである。 図12は、シランガス流量と各物性値との関係を示すグラフである。 図13Aは、条件Aを用いて成膜されたシリコン窒化膜とシリコン酸化膜とをゲート絶縁層に用いた薄膜トランジスタの電気特性の測定結果を示すグラフである。 図13Bは、条件A4を用いて成膜されたシリコン窒化膜をゲート絶縁層の応力緩和層として用いた薄膜トランジスタの電気特性の測定結果を示すグラフである。 図14は、成膜条件をパラメータして基板温度に対するH脱離プロファイルを示すグラフである。 図15は、基板温度350℃の場合における各成膜条件に対するH脱離量を示すグラフである。 図16は、測定対象の薄膜トランジスタにおける各絶縁層の膜厚の条件と、当該条件で作製した薄膜トランジスタの電気特性及びTFT基板の反り量を示した表である。 図17Aは、図16に示す条件(a)で作製された薄膜トランジスタの電気特性の測定結果を示すグラフである。 図17Bは、図16に示す条件(b)で作製された薄膜トランジスタの電気特性の測定結果を示すグラフである。 図17Cは、図16に示す条件(c)で作製された薄膜トランジスタの電気特性の測定結果を示すグラフである。 図17Dは、図16に示す条件(d)で作製された薄膜トランジスタの電気特性の測定結果を示すグラフである。 図17Eは、図16に示す条件(e)で作製された薄膜トランジスタの電気特性の測定結果を示すグラフである。 図17Fは、図16に示す条件(f)で作製された薄膜トランジスタの電気特性の測定結果を示すグラフである。 図18は、第2絶縁層の膜厚のゲート絶縁層の合計膜厚に対する割合と、TFT基板の反り量及び閾値Vthのばらつきとの関係を示すグラフである。
(本開示の基礎となった知見)
アモルファスシリコンをチャネル層に用いたTFTにおける異層配線間のショートを抑制するための構成として、ゲート絶縁層を構成するシリコン窒化膜のバルク層として、成膜レートが大きいシリコン窒化膜を厚く堆積させ、アモルファスシリコン層との界面の層として、成膜レートが小さく緻密なシリコン窒化膜を堆積させる構成が考えられる。
当該構成により、生産性を悪化させることなく、ゲート絶縁層を厚くすることによって異層配線間のショートを抑制し、かつ、ゲート絶縁層とアモルファスシリコン層との界面特性を良好にすることができる。
上記構成は、酸化物半導体をチャネル層に用いたTFTにおいても、異層配線間ショートの低減に効果的であると予想される。しかしながら、本発明者は、上記構成を、酸化物半導体をチャネル層に用いたTFTに適用する場合に、以下の問題が生じることを見出した。
上記構成を適用したTFTにおいて、ゲート絶縁層中のシリコン窒化膜の膜厚増加は、シリコン窒化膜から脱離してチャネル層に注入される水素原子量を増加させる。ここで、アモルファスシリコンをチャネル層に用いるTFTにおいては、シリコン窒化膜から脱離する水素原子によって、アモルファスシリコン層とシリコン窒化膜(ゲート絶縁層)との界面に多数存在する活性な未結合手(ダングリングボンド)が終端される。これにより、界面準位及び固定電荷を低減することができるため、TFTの電気特性を向上することができる。
一方、酸化物半導体をチャネル層に用いたTFTにおいても、ゲート絶縁層中のシリコン窒化膜の膜厚増加は、シリコン窒化膜から脱離して酸化物半導体層に注入される水素原子量を増加させる。そして、当該水素原子により酸化物半導体層の電気特性が不安定化される。具体的には、酸化物半導体層中に、水素原子が注入されると、水素原子(H)によって、酸化物半導体層中の金属原子(例えば、インジウム原子In)と酸素原子(O)との結合が切断され、O−H結合(例えば、In−O−H結合)又は酸素欠陥が発生する。これにより、当該欠陥などの発生によりキャリアが増加するため、薄膜トランジスタの閾値(閾値電圧Vth)はマイナス方向にシフトし易くなり、薄膜トランジスタの電気特性が不安定になる。
そこで、本開示は、酸化物半導体をチャネル層に用いた薄膜トランジスタが基板上に形成された薄膜トランジスタ基板であって、薄膜トランジスタの電気特性を不安定化させることなく、ゲート絶縁層の耐電圧特性を改善できる薄膜トランジスタ基板及びその製造方法を提供する。
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、すでによく知られた事項の詳細説明、及び、実質的に同一の構成に対する重複説明などを省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
なお、発明者らは、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面及び以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、同じ構成部材については同じ符号を付している。
また、本明細書において、「上方」及び「下方」という用語は、絶対的な空間認識における上方向(鉛直上方)及び下方向(鉛直下方)を指すものではなく、積層構成における積層順を基に相対的な位置関係により規定される用語として用いる。また、「上方」及び「下方」という用語は、2つの構成要素が互いに間隔をあけて配置されて2つの構成要素の間に別の構成要素が存在する場合のみならず、2つの構成要素が互いに密着して配置されて2つの構成要素が接する場合にも適用される。
(実施の形態)
[1.有機EL表示装置]
まず、本実施の形態に係る有機EL表示装置10の構成について、図1及び図2を用いて説明する。図1は、本実施の形態に係る有機EL表示装置10の一部切り欠き斜視図である。図2は、本実施の形態に係る有機EL表示装置10のピクセルバンクの一例を示す斜視図である。
[1−1.構成]
図1に示すように、有機EL表示装置10は、複数個の薄膜トランジスタが配置されたTFT基板(TFTアレイ基板)20と、下部電極である陽極41、有機材料からなる発光層であるEL層42及び透明な上部電極である陰極43からなる有機EL素子(発光部)40との積層構造により構成される。
TFT基板20には複数の画素30がマトリクス状に配置されており、各画素30には画素回路31が設けられている。
有機EL素子40は、複数の画素30のそれぞれに対応して形成されており、各画素30に設けられた画素回路31によって各有機EL素子40の発光の制御が行われる。有機EL素子40は、複数の薄膜トランジスタを覆うように形成された層間絶縁層(平坦化層)の上方に形成される。
また、有機EL素子40は、陽極41と陰極43との間にEL層42が配置された構成となっている。陽極41とEL層42との間にはさらに正孔輸送層が積層形成され、EL層42と陰極43との間にはさらに電子輸送層が積層形成されている。なお、陽極41と陰極43との間には、その他の有機機能層が設けられていてもよい。
各画素30は、それぞれの画素回路31によって駆動制御される。また、TFT基板20には、画素30の行方向に沿って配置される複数のゲート配線(走査線)50と、ゲート配線50と交差するように画素30の列方向に沿って配置される複数のソース配線(信号配線)60と、ソース配線60と平行に配置される複数の電源配線(図1では省略)とが形成されている。各画素30は、例えば、直交するゲート配線50とソース配線60とによって区画されている。
ゲート配線50は、各画素回路31に含まれるスイッチング素子として動作する薄膜トランジスタのゲート電極と行毎に接続されている。ソース配線60は、各画素回路31に含まれるスイッチング素子として動作する薄膜トランジスタのソース電極と列毎に接続されている。電源配線は、各画素回路31に含まれる駆動素子として動作する薄膜トランジスタのドレイン電極と列毎に接続されている。
図2に示すように、有機EL表示装置10の各画素30は、3色(赤色、緑色、青色)のサブ画素30R、30G、30Bによって構成されており、これらのサブ画素30R、30G、30Bは、表示面上に複数個マトリクス状に配列されるように形成されている。各サブ画素30R、30G、30Bは、バンク21によって互いに分離されている。
バンク21は、ゲート配線50に平行に延びる突条と、ソース配線60に平行に延びる突条とが互いに交差するように、格子状に形成されている。そして、この突条で囲まれる部分(すなわち、バンク21の開口部)の各々とサブ画素30R、30G、30Bの各々とが一対一で対応している。なお、本実施の形態において、バンク21はピクセルバンクとしたが、ラインバンクとしても構わない。
陽極41は、TFT基板20上の層間絶縁層(平坦化層)上でかつバンク21の開口部内に、サブ画素30R、30G、30B毎に形成されている。同様に、EL層42は、陽極41上でかつバンク21の開口部内に、サブ画素30R、30G、30B毎に形成されている。透明な陰極43は、複数のバンク21上で、かつ、全てのEL層42(全てのサブ画素30R、30G、30B)を覆うように、連続的に形成されている。
さらに、画素回路31は、各サブ画素30R、30G、30B毎に設けられており、各サブ画素30R、30G、30Bと、対応する画素回路31とは、コンタクトホール及び中継電極によって電気的に接続されている。なお、サブ画素30R、30G、30Bは、EL層42の発光色が異なることを除いて同一の構成である。
[1−2.画素回路]
ここで、画素30における画素回路31の回路構成について、図3を用いて説明する。図3は、本実施の形態に係る有機EL表示装置10における画素回路31の構成を示す電気回路図である。
図3に示すように、画素回路31は、駆動素子として動作する薄膜トランジスタ32と、スイッチング素子として動作する薄膜トランジスタ33と、対応する画素30に表示するためのデータを記憶するキャパシタ34とで構成される。本実施の形態において、薄膜トランジスタ32は、有機EL素子40を駆動するための駆動トランジスタであり、薄膜トランジスタ33は、画素30を選択するためのスイッチングトランジスタである。
薄膜トランジスタ32は、薄膜トランジスタ33のドレイン電極33d及びキャパシタ34の一端に接続されるゲート電極32gと、電源配線70に接続されるドレイン電極32dと、キャパシタ34の他端と有機EL素子40の陽極41とに接続されるソース電極32sと、半導体膜(図示せず)とを備える。この薄膜トランジスタ32は、キャパシタ34が保持しているデータ電圧に対応する電流を電源配線70からソース電極32sを通じて有機EL素子40の陽極41に供給する。これにより、有機EL素子40では、陽極41から陰極43へと駆動電流が流れてEL層42が発光する。
薄膜トランジスタ33は、ゲート配線50に接続されるゲート電極33gと、ソース配線60に接続されるソース電極33sと、キャパシタ34の一端及び薄膜トランジスタ32のゲート電極32gに接続されるドレイン電極33dと、半導体膜(図示せず)とを備える。この薄膜トランジスタ33は、接続されたゲート配線50及びソース配線60に所定の電圧が印加されると、当該ソース配線60に印加された電圧がデータ電圧としてキャパシタ34に保存される。
なお、上記構成の有機EL表示装置10では、ゲート配線50とソース配線60との交点に位置する画素30毎に表示制御を行うアクティブマトリクス方式が採用されている。これにより、各画素30(各サブ画素30R、30G、30B)の薄膜トランジスタ32及び33によって、対応する有機EL素子40が選択的に発光し、所望の画像が表示される。
[2.TFT基板]
以下では、本実施の形態に係るTFT基板20について、図4を用いて説明する。なお、本実施の形態に係るTFT基板20に形成される薄膜トランジスタは、ボトムゲート型、かつ、チャネル保護型の薄膜トランジスタである。
図4は、本実施の形態に係るTFT基板20の概略断面図である。TFT基板20には、例えば、複数の薄膜トランジスタ100が形成されている。
図4に示すように、本実施の形態に係るTFT基板20は、基板110と、ゲート電極120と、ゲート絶縁層130と、酸化物半導体層140と、チャネル保護層150と、ドレイン電極160dと、ソース電極160sと、層間絶縁層170と、上部電極180と、上部絶縁層190とを備える。なお、TFT基板20において、薄膜トランジスタ100は、ゲート電極120と、ゲート絶縁層130と、酸化物半導体層140と、チャネル保護層150と、ドレイン電極160dと、ソース電極160sとから構成される。
薄膜トランジスタ100は、例えば、図3に示す薄膜トランジスタ32である。すなわち、薄膜トランジスタ100は、駆動トランジスタとして利用できる。具体的には、薄膜トランジスタ100が薄膜トランジスタ32(駆動トランジスタ)である場合、ゲート電極120がゲート電極32gに、ソース電極160sがソース電極32sに、ドレイン電極160dがドレイン電極32dに、それぞれ相当する。
なお、薄膜トランジスタ100は、例えば、図3に示す薄膜トランジスタ33でもよい。すなわち、薄膜トランジスタ100は、スイッチングトランジスタとして利用してもよい。
[2−1.基板]
基板110は、電気絶縁性を有する材料から構成される基板である。例えば、基板110は、無アルカリガラス、石英ガラス、高耐熱性ガラスなどのガラス材料、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミドなどの樹脂材料、シリコン、ガリウムヒ素などの半導体材料、又は、絶縁層をコーティングしたステンレスなどの金属材料からなる基板である。
なお、基板110は、樹脂基板などのフレキシブル基板でもよい。この場合、薄膜トランジスタ100をフレキシブルディスプレイなどに利用することができる。
[2−2.ゲート電極]
ゲート電極120は、基板110の上方に配置される電極である。本実施の形態では、ゲート電極120は、基板110上に所定形状で形成される。ゲート電極120の膜厚は、例えば、30nm〜400nmである。なお、ゲート電極120は、基板110の上方に、例えば、バッファ層などを介して形成されてもよい。
ゲート電極120は、導電性を有する材料からなる電極である。例えば、ゲート電極120の材料として、モリブデン、アルミニウム、銅、タングステン、チタン、マンガン、クロム、タンタル、ニオブ、銀、金、プラチナ、パラジウム、インジウム、ニッケル、ネオジムなどの金属、金属の合金、酸化インジウムスズ(ITO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)などの導電性金属酸化物、ポリチオフェン、ポリアセチレンなどの導電性高分子などを用いることができる。また、ゲート電極120は、これらの材料を積層した多層構造であってもよい。
[2−3.ゲート絶縁層]
ゲート絶縁層130は、ゲート電極120と酸化物半導体層140との間に配置される絶縁層である。本実施の形態では、ゲート絶縁層130は、ゲート電極120を覆うようにゲート電極120上及び基板110上に配置される。ゲート絶縁層130の膜厚は、例えば、310nm〜760nmである。
ゲート絶縁層130は、電気絶縁性を有する材料から構成される。本実施の形態では、ゲート絶縁層130は、ゲート電極120側から順に配置された第1絶縁層131、第2絶縁層132及び第3絶縁層133を備える。また、ゲート絶縁層130は、第3絶縁層133と酸化物半導体層140との間に配置される第4絶縁層134を備えてもよい。また、ゲート絶縁層130は、第1絶縁層131と第4絶縁層134との間にさらに他の絶縁層が配置されてもよい。
第1絶縁層131、第2絶縁層132及び第3絶縁層133は、シリコン窒化膜から構成され、各層に含まれる窒素原子及び珪素原子に結合される水素原子量が、それぞれ、3.3×1022cm−3以下、及び、2.3×1021cm−3以下である。
なお、ゲート絶縁層130及びゲート絶縁層130を構成する各層のパラメータの数値範囲の根拠などについては、後で詳述する。
[2−3−1.第1絶縁層]
第1絶縁層131は、ゲート電極120との密着層である。第1絶縁層131の膜厚は、例えば、10nm〜60nmである。第1絶縁層131において、ゲート電極120と密着するために、基板110に対する圧縮応力が必要とされる。そこで、本実施の形態に係る第1絶縁層131のシリコン基板に対する応力は、−400MPa以上、−200MPa以下であることが好ましい。また、第1絶縁層131の応力は、膜密度に対応する。本実施の形態では、第1絶縁層131の膜密度は、2.57g/cm以上、2.59g/cm以下であることが好ましい。
[2−3−2.第2絶縁層]
第2絶縁層132は、ゲート絶縁層130の応力を緩和するための応力緩和層である。第2絶縁層132による応力を抑制するために、第2絶縁層132の膜密度は、第1絶縁層131及び第3絶縁層133の膜密度より小さい。また、第2絶縁層132のシリコン基板に対する応力は、−100MPa以上、100MPa以下であることが好ましい。また、第2絶縁層132の膜密度は、2.53g/cm以上、2.55g/cm以下であることが好ましい。
また、第2絶縁層132の膜厚と、後述する第3絶縁層133の膜厚との合計膜厚は、例えば、300nm〜600nmである。これにより、ゲート電極120と酸化物半導体層140との間の十分な耐電圧特性を確保できる。なお、耐電圧特性の観点からは、上記合計膜厚は、大きい方が好ましいが、プロセス(成膜)時間が長くなり過ぎることを抑制するために、上記合計膜厚は600nm以下であることが好ましい。また、ゲート絶縁層130の膜厚増加に伴って、ゲート絶縁層130による基板110に対する応力が増大する場合には、基板110の反り量が増加する。そこで、基板110の反り量を低減するために、応力緩和層である第2絶縁層132の膜厚のゲート絶縁層130の合計膜厚に対する割合は、35%以上であることが好ましい。なお、当該割合は、TFT基板20の製造装置における基板110の反り量に対する許容範囲などに応じて適宜調整されてもよい。
[2−3−3.第3絶縁層]
第3絶縁層133は、水素原子が透過することを抑制するための水素原子ブロック層である。第3絶縁層133の下方の第2絶縁層132には、珪素原子と結合していない水素原子、又は、珪素原子との結合が非常に弱いサイトに位置する水素原子が存在し、当該水素原子が第2絶縁層132から脱離する。第3絶縁層133は、当該水素原子が酸化物半導体層140側に透過することを抑制するための層である。第3絶縁層133は、水素原子の透過を抑制するために、緻密な(すなわち、密度が大きい)膜から構成される。ここで、膜の緻密さ(すなわち、膜密度)と膜の応力とは相関を有することから、第3絶縁層が水素原子の透過を十分に抑制するために必要な、第3絶縁層133の応力を定めることができる。本実施の形態においては、第3絶縁層133のシリコン基板に対する応力は、−400MPa以上、−200MPa以下であることが好ましい。また、第3絶縁層133の膜密度は、2.57g/cm以上、2.59g/cm以下であることが好ましい。
また、第2絶縁層132の膜厚を大きくする場合、第2絶縁層132から脱離する水素原子量が増加するため、第3絶縁層133の膜厚を大きくして水素原子ブロック効果を向上させる必要がある。そこで、本実施の形態では、第2絶縁層132の膜厚から第3絶縁層133の膜厚を引いた差が50nm以下となるように各層の膜厚が定められる。
[2−3−4.第4絶縁層]
第4絶縁層134は、第3絶縁層133と酸化物半導体層140との間に配置される絶縁層である。本実施の形態では、第4絶縁層134は、酸化物半導体層140と接する層である。第4絶縁層134は、シリコン酸化膜から構成されることが好ましい。第4絶縁層134の膜厚は、例えば、10nm〜100nmであり、より好ましくは、30nm〜50nmである。
第4絶縁層134がシリコン酸化膜から構成されることにより、シリコン窒化膜などから構成される場合より、膜内の水素原子量(すなわち、水素原子含有量)を低減することができる。これにより、第4絶縁層134と接する酸化物半導体層140が取り込む水素原子量を低減することができるため、酸化物半導体層140の低抵抗化を抑制することができる。なお、ゲート絶縁層130全体をシリコン酸化膜だけで形成することは以下の理由から好ましくない。すなわち、シリコン酸化膜の応力を成膜条件によって制御することは困難であるため、薄膜トランジスタ100に適用できる程度に緻密なシリコン酸化膜を形成する場合には、シリコン酸化膜の圧縮応力が大きくことを避けられない。このため、シリコン酸化膜だけでゲート絶縁層130全体を形成すると、圧縮応力が大きく、かつ、膜厚も大きいゲート絶縁層130が形成されることにより、基板110が反ってしまう。
[2−4.酸化物半導体層]
酸化物半導体層140は、薄膜トランジスタ100のチャネル層として用いられる層であり、ゲート電極120に対向するように基板110の上方に配置される。具体的には、酸化物半導体層140は、ゲート絶縁層130上であって、ゲート電極120に対向する位置に配置される。例えば、酸化物半導体層140は、ゲート電極120の上方において、ゲート絶縁層130上に島状に形成される。酸化物半導体層140の膜厚は、例えば、30nm〜150nmである。
酸化物半導体層140の材料としては、インジウム(In)、ガリウム(Ga)及び亜鉛(Zn)のうち、少なくとも1種を含む酸化物半導体材料を用いる。例えば、酸化物半導体層140は、アモルファス酸化インジウムガリウム亜鉛(InGaZnO:IGZO)などの透明アモルファス酸化物半導体(TAOS:Transparent Amorphous Oxide Semiconductor)から構成される。
In:Ga:Znの比率は、例えば、約1:1:1である。また、In:Ga:Znの比率は、0.8〜1.2:0.8〜1.2:0.8〜1.2の範囲でもよいが、この範囲には限られない。
酸化物半導体層140は、薄膜トランジスタ100のチャネル層である。チャネル層が透明アモルファス酸化物半導体で構成される薄膜トランジスタは、キャリア移動度が高く、大画面及び高精細の表示装置に適している。また、透明アモルファス酸化物半導体は、低温成膜が可能であるため、プラスチック又はフィルムなどのフレキシブル基板上に容易に形成することができる。
[2−5.チャネル保護層]
チャネル保護層150は、酸化物半導体層140上に配置される。例えば、チャネル保護層150は、酸化物半導体層140を覆うように、酸化物半導体層140上及びゲート絶縁層130上に配置される。チャネル保護層150は、酸化物半導体層140を保護するために設けられた絶縁層である。チャネル保護層150の膜厚は、例えば、100nm〜400nmである。
チャネル保護層150は、電気絶縁性を有する材料から構成される。チャネル保護層150は、シリコン酸化膜から構成される。あるいは、チャネル保護層150は、酸化アルミニウム膜から構成されてもよい。チャネル保護層150は、単層膜であっても、積層膜であってもよい。
また、チャネル保護層150には、ドレイン電極160d及びソース電極160sのそれぞれを酸化物半導体層140に接続するためのコンタクトホールが設けられている。ドレイン電極160d及びソース電極160sを構成する材料が、それぞれ、コンタクトホールの壁面に沿って酸化物半導体層140まで達している。あるいは、コンタクトホールには、ドレイン電極160d及びソース電極160sを構成する材料がそれぞれ充填されていてもよい。
[2−6.ドレイン電極及びソース電極]
ドレイン電極160d及びソース電極160sは、チャネル保護層150上に所定形状で形成される。例えば、ドレイン電極160d及びソース電極160sは、チャネル保護層150上に、基板水平方向に離間して対向配置されている。具体的には、ドレイン電極160d及びソース電極160sはそれぞれ、コンタクトホールを介して酸化物半導体層140に接続されるように、チャネル保護層150上に配置される。ドレイン電極160d及びソース電極160sの膜厚は、例えば、30nm〜300nmである。
ドレイン電極160d及びソース電極160sは、導電性を有する材料からなる電極である。ドレイン電極160d及びソース電極160sは、例えば、銅の単層膜(Cu膜)、銅膜及びタングステン膜の積層構造(Cu/W)、銅膜及び窒化チタン膜の積層構造(Cu/TiN)、又は、銅及びマンガンの合金膜、銅膜並びにモリブデン膜の積層構造(CuMn/Cu/Mo)などで構成される。あるいは、ドレイン電極160d及びソース電極160sの材料としては、例えば、ゲート電極120の材料と同一の材料を用いることができる。
[2−7.層間絶縁層]
層間絶縁層170は、チャネル保護層150の上方に配置される。層間絶縁層170は、チャネル保護層150、ドレイン電極160d及びソース電極160s上に配置される。例えば、層間絶縁層170は、ドレイン電極160d及びソース電極160sを覆うように、チャネル保護層150上、ドレイン電極160d及びソース電極160s上に配置される。
層間絶縁層170は、薄膜トランジスタ100のパッシベーション膜である。層間絶縁層170の膜厚は、例えば、200nm〜500nmである。
また、層間絶縁層170の一部は、貫通するように開口されている。つまり、層間絶縁層170には、ソース電極160sの一部を露出させるためのコンタクトホールが形成されている。
コンタクトホールは、上部電極180とソース電極160sとを電気的に接続するために形成されたコンタクトホールである。上部電極180を構成する材料が、例えば、コンタクトホールの壁面に沿って、ソース電極160sまで達している。あるいは、コンタクトホールには、上部電極180を構成する材料が充填されていてもよい。
層間絶縁層170は、複数の層を含んでいる。具体的には、図4に示すように、層間絶縁層170は、3層構造であり、順に積層された、下部層間絶縁層171と、バリア層172と、上部層間絶縁層173とを含んでいる。
[2−7−1.下部層間絶縁層]
下部層間絶縁層171は、ドレイン電極160d及びソース電極160s上に設けられた絶縁層である。下部層間絶縁層171の膜厚は、層間絶縁層170としての膜厚が500nm以下となるような膜厚である。
下部層間絶縁層171は、電気絶縁性を有する材料から構成される。例えば、下部層間絶縁層171は、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜、酸化アルミニウム膜などの無機材料から構成される膜、又は、シリコン、酸素及びカーボンを含む無機材料から構成される膜などの単層膜、又は、これらの積層膜である。
[2−7−2.バリア層]
バリア層172は、下部層間絶縁層171上に設けられた絶縁層である。バリア層172は、空気中の水分などが外部から酸化物半導体層140に浸入するのを抑制するための層である。
バリア層172は、例えば、酸化アルミニウム膜である。バリア層172の膜厚は、例えば、30nm〜100nmである。
[2−7−3.上部層間絶縁層]
上部層間絶縁層173は、バリア層172上に設けられた絶縁層である。上部層間絶縁層173の膜厚は、層間絶縁層170としての膜厚が500nm以下となるような膜厚である。
上部層間絶縁層173は、電気絶縁性を有する材料から構成される。例えば、上部層間絶縁層173は、下部層間絶縁層171と同じ材料から構成される。
[2−8.上部電極]
上部電極180は、ドレイン電極160d及びソース電極160sの上方に所定形状で形成される。具体的には、上部電極180は、層間絶縁層170上に形成される。上部電極180の膜厚は、例えば、200nm〜500nmである。
上部電極180は、ドレイン電極160d及びソース電極160sの一方に接続される。具体的には、上部電極180は、コンタクトホールを介してソース電極160sに電気的に接続されている。
上部電極180は、例えば、ドレイン電極160d及びソース電極160sと同じ材料から構成される。なお、層間の密着性を向上させるために、ITO膜と金属膜とをこの順で積層してもよい。
[2−9.上部絶縁層]
上部絶縁層190は、上部電極180に設けられた絶縁層である。本実施の形態では、上部絶縁層190は、上部電極180を覆うように、上部電極180上及び層間絶縁層170上に配置される。上部絶縁層190の膜厚は、例えば、100nm〜200nmである。
上部絶縁層190は、水、水素などに対するバリア性が高いシリコン窒化膜から構成されることが好ましい。
上部絶縁層190の一部は、貫通するように開口されている。つまり、上部絶縁層190には、上部電極180の一部を露出させるためのコンタクトホール191が形成されている。コンタクトホール191には、例えば、端子電極などが形成される。
[3.TFT基板の製造方法]
続いて、本実施の形態に係るTFT基板20の製造方法について図5A〜5Dを用いて説明する。図5A〜5Dは、本実施の形態に係るTFT基板20の製造工程を示す概略断面図である。
[3−1.ゲート電極の形成]
まず、図5Aの(a)に示すように、基板110を準備し、基板110の上方に所定形状のゲート電極120を形成する。例えば、基板110上に金属膜をスパッタリングによって成膜し、フォトリソグラフィ及びエッチングによって金属膜を加工することにより、所定形状のゲート電極120を形成する。
具体的には、まず、基板110としてガラス基板を準備し、基板110上に、20nmのMo膜と200nmのCu膜とをスパッタリングによって順に成膜する。そして、フォトリソグラフィでレジストパターンを形成した後、ウェットエッチングによってMo膜及びCu膜を加工することにより、ゲート電極120を形成する。
なお、Mo膜及びCu膜のウェットエッチングは、PAN(Phosphoric−Acetic−Nitric−acid)液を用いて、室温で行うことができる。また、レジストの剥離には、アルカリ添加物を含む剥離液を用いてよい。また、基板110は、例えば、G8.5のガラス基板(厚さ:0.5mm、X:2500mm×Y:2200mm)である。
[3−2.ゲート絶縁層の形成]
次に、図5Aの(b)〜(e)に示すように、基板110の上方にゲート絶縁層130を形成する。例えば、ゲート電極120を覆うようにゲート絶縁層130をプラズマCVD又はスパッタリングによって成膜する。ゲート絶縁層130は、第1絶縁層131、第2絶縁層132、第3絶縁層133及び第4絶縁層134から構成される。
具体的には、まず、図5Aの(b)に示すように、ゲート電極120を覆うように基板110上に、50nmのシリコン窒化膜から構成される第1絶縁層131を成膜する。
次に、図5Aの(c)に示すように、第1絶縁層131上に175nmのシリコン窒化膜から構成される第2絶縁層132を成膜する。
次に、図5Aの(d)に示すように、第2絶縁層132上に125nmのシリコン窒化膜から構成される第3絶縁層133を成膜する。
次に、図5Aの(e)に示すように、第3絶縁層133上に50nmのシリコン酸化膜から構成される第4絶縁層134を成膜する。
第1絶縁層131、第2絶縁層132、第3絶縁層133及び第4絶縁層134は、プラズマCVDによって順に成膜される。このときの成膜温度は、例えば、350℃〜400℃である。成膜温度が350℃より低い場合には、シリコン窒化膜中の水素含有量が増加するため好ましくない。
シリコン窒化膜から構成される第1絶縁層131、第2絶縁層132及び第3絶縁層133は、例えば、窒素ガス(N)、アンモニアガス(NH)及びシランガス(SiH)を導入ガスに用いることで成膜することができる。具体的な成膜条件は、パワー密度が0.12W/cm〜0.22W/cm、プロセス距離(電極間距離)が550mil(0.55インチ)〜750mil(0.75インチ)、規格化されたNガス流量が0.8sccm/cm〜1.5sccm/cm、規格化されたNHガス流量が5sccm/cm〜10sccm/cmである。なお、上記各ガスの規格化された流量は、ガス流量をプラズマCVD装置の電極面積で除した値である。以下に示すガスの規格化された流量についても同様である。
また、成膜時のプロセス圧力は、第1絶縁層131及び第3絶縁層133の成膜においては70Pa〜250Paであり、第2絶縁層132の成膜においては、第1絶縁層131及び第3絶縁層133の成膜における圧力より高い。このように、第2絶縁層132において高いプロセス圧力を用いることにより、第2絶縁層132の圧縮応力を低減することができる。ただし、高いプロセス圧力を用いると、膜中の水素原子量が増加する。そこで、本実施の形態では、第2絶縁層132の成膜におけるSiHガス流量を、第1絶縁層131及び第3絶縁層133の成膜における流量(0.33sccm/cm〜0.46sccm/cm)より小さくする。このように、第2絶縁層132の成膜において、小さいSiHガス流量を用いることにより、第2絶縁層132中の水素原子量を低減することができる。
シリコン酸化膜から構成される第4絶縁層134は、例えば、亜酸化窒素ガス(NO)、アルゴンガス(Ar)及びシランガス(SiH)を導入ガスに用いることで成膜することができる。なお、Arガスは、NOガスの希釈ガスとして用いられる。これにより、効率的にガスが分解され、良質な酸化膜が形成され、かつ、NOガスの使用量を抑制することができる。具体的な成膜条件は、例えば、成膜温度が350℃〜400℃、パワー密度が0.1W/cm〜0.3W/cm、プロセス距離(電極間距離)が550mil(0.55インチ)〜750mil(0.75インチ)、プロセス圧力が70Pa〜250Pa、NOガス流量が0〜0.55sccm/cm、Arガス流量が1.2sccm/cm〜1.8sccm/cm、SiHガス流量が0.015sccm/cm〜0.025sccm/cmである。
なお、第1絶縁層131、第2絶縁層132、第3絶縁層133及び第4絶縁層134の成膜は、連続して行われる。つまり、プラズマCVD装置を用いて第1絶縁層131を成膜した後、プラズマCVD装置のチャンバー内の真空を破ることなく、第2絶縁層132、第3絶縁層133及び第4絶縁層134の成膜を行う。これにより、不純物が混入する可能性を低減することができる。
[3−3.プラズマ処理]
次に、図5Bの(a)に示すように、ゲート絶縁層130の第4絶縁層134に対する窒化処理の一例であるプラズマ処理を行う。つまり、第4絶縁層134を形成した後、酸化物半導体層140を形成する前に、プラズマ処理を行う。
具体的には、第4絶縁層134の成膜に用いたチャンバー内に、アンモニアガス(NH)、窒素ガス(N)などを用いてプラズマ201を発生させる。プラズマ処理に用いるガスには、水素原子が含まれてもよい。水素原子がプラズマ処理に用いるガス中に含まれることにより、シリコン層の表面の未結合手を終端でき、酸化物半導体層140との界面の欠陥準位を低減できる。なお、第4絶縁層134に結合される水素原子は、酸化物半導体層140との界面の欠陥準位を低減するためにのみ利用されるため、当該水素原子の量は第1絶縁層131、第2絶縁層132及び第3絶縁層133から脱離する水素原子の量に比べて圧倒的に少ない。したがって、第4絶縁層134に結合される水素原子による酸化物半導体層140の低抵抗化への影響は無視できる。なお、当該処理によって、第4絶縁層134は、酸化物半導体層140側の表面において、第4絶縁層134の膜厚方向の中央部より窒素原子濃度が高くなる。
プラズマ201を発生させる時間、すなわち、プラズマ処理時間は、例えば、5秒〜120秒であり、好ましくは30秒〜60秒である。また、プラズマ処理温度、すなわち、基板温度は、350℃〜400℃である。例えば、基板温度は、ゲート絶縁層130の成膜時の温度と同一である。具体的なプラズマ処理条件は、例えば、パワー密度が0.1W/cm〜0.3W/cm、プロセス距離(電極間距離)が550mil(0.55インチ)〜750mil(0.75インチ)、プロセス圧力が70Pa〜250Pa、NHガス流量が0.09sccm/cm〜0.55sccm/cmである。また、プラズマ処理に用いるガスとして、窒素(N)及び水素(H)を用いてもよい。この場合、Nガス流量が0.09sccm/cm〜0.55sccm/cmであり、Hガス流量が0.18sccm/cm〜1.82sccm/cmである。
なお、プラズマ処理は、第4絶縁層134の成膜に連続して行われる。つまり、プラズマCVD装置を用いて第4絶縁層134を成膜した後、プラズマCVD装置のチャンバー内の真空を破ることなく、プラズマ処理を行う。これにより、不純物が混入する可能性を低減することができる。
[3−4.酸化物半導体層の形成]
次に、図5Bの(b)に示すように、基板110の上方に、かつ、ゲート電極120に対向する位置に所定形状の酸化物半導体層140を形成する。例えば、ゲート絶縁層130上に酸化物半導体膜をスパッタリングによって成膜する。そして、フォトリソグラフィ及びエッチングによって酸化物半導体膜を加工することにより、所定形状の酸化物半導体層140を形成する。
具体的には、組成比In:Ga:Zn=1:1:1のターゲット材を用いた、酸素(O)とアルゴン(Ar)との混合ガス雰囲気でのスパッタリングによって、ゲート絶縁層130上に90nmのアモルファスInGaZnO膜を成膜する。より具体的な成膜条件は、例えば、DCマグネトロンスパッタ法において、パワーが12kW、成膜ガスの酸素分圧が4.5%、成膜レートが100nm/minである。
そして、ゲート絶縁層130上に成膜されたアモルファスInGaZnOをウェットエッチングすることで、酸化物半導体層140を形成する。InGaZnOのウェットエッチングは、例えば、リン酸(HPO)、硝酸(HNO)及び界面活性剤を混合した薬液を用いて行うことができる。また、レジストの剥離には、アルカリ添加物を含む剥離液を用いてよい。
[3−5.チャネル保護層の形成]
次に、図5Bの(c)に示すように、酸化物半導体層140上にチャネル保護層150を形成する。例えば、酸化物半導体層140を覆うようにチャネル保護層150をプラズマCVDによって成膜する。
具体的には、酸化物半導体層140を覆うようにゲート絶縁層130上に、200nmのシリコン酸化膜を成膜することで、チャネル保護層150を形成する。この時の成膜温度は、例えば、230℃である。シリコン酸化膜は、例えば、シランガス(SiH)と亜酸化窒素ガス(NO)とを導入ガスに用いることで成膜することができる。具体的な成膜条件は、例えば、パワー密度が0.238W/cm、プロセス距離(電極間距離)が600mil(0.6インチ)、プロセス圧力が133.32Pa、NOガス流量が88500sccm、SiHガス流量が980sccmである。
なお、チャネル保護層150を形成した後、所定の温度の加熱処理(アニール処理)を行ってもよい。例えば、ドライエア、又は、酸素雰囲気中において、成膜温度以上の温度でアニール処理してもよい。例えば、アニール温度は350℃としてよい。また、アニール時間は、7分程度の基板温度安定時間が経過した後、1時間としてもよい。これにより、酸化物半導体層140中の酸素欠陥が修復され、半導体性を維持することができる。また、上記ドライエアは、大気圧下露点が−70℃以下としてよい。
[3−6.ドレイン電極及びソース電極の形成]
次に、図5Bの(d)に示すように、チャネル保護層150上にドレイン電極160d及びソース電極160sを形成する。具体的には、まず、チャネル保護層150の一部をフォトリソグラフィ及びドライエッチングによって除去することで、コンタクトホールを形成する。つまり、酸化物半導体層140の一部を露出させるためのコンタクトホールをチャネル保護層150に形成する。
例えば、チャネル保護層150がシリコン酸化膜である場合、ドライエッチングとして反応性イオンエッチング(RIE)を用いることができる。このとき、エッチングガスとしては、例えば、四フッ化炭素(CF)、酸素ガス(O)及びヘリウムガス(He)を用いることができる。ガス流量、圧力、印加電力及び周波数などのパラメータは、基板サイズ、エッチングの膜厚などによって適宜設定される。例えば、パワー密度を0.255W/cm、プロセス圧力を50Pa、Oガス流量を1300sccm、CFガス流量を3800sccm、Heガス流量を5000sccmとしてよい。また、レジストの剥離には、アルカリ添加物を含む剥離液を用いてよい。
そして、形成したコンタクトホールを埋めるようにして、チャネル保護層150上に金属膜をスパッタリングによって成膜する。例えば、20nmのMo膜、300nmのCu膜、及び、50nmの銅及びマンガンの合金膜(CuMn膜)を順にチャネル保護層150上に積層する。その後、フォトリソグラフィ及びエッチングによって、積層した金属膜を加工することで、所定形状のドレイン電極160d及びソース電極160sを形成する。Mo膜、Cu膜、及び、CuMn膜のウェットエッチングは、例えば、PAN液を用いて、室温にて行うことができる。また、レジストの剥離には、アルカリ添加物を含む剥離液を用いてよい。
[3−7.層間絶縁層の形成]
次に、図5Cの(a)に示すように、層間絶縁層170を形成する。具体的には、まず、ドレイン電極160d及びソース電極160sを覆うように、下部層間絶縁層171をプラズマCVD又はスパッタリングによって形成する。例えば、ドレイン電極160d及びソース電極160sを覆うようにチャネル保護層150上に、200nmのシリコン酸化膜をプラズマCVDによって成膜する。具体的な成膜条件は、例えば、成膜温度が230℃、パワー密度が0.238W/cm、プロセス距離(電極間距離)が600mil(0.6インチ)、プロセス圧力が133.32Pa、NOガス流量が88500sccm、SiHガス流量が980sccmである。
次に、プラズマCVD、ALD(Atomic Layer Deposition)又はスパッタリングなどによって、下部層間絶縁層171上にバリア層172を形成する。例えば、スパッタリングによって30nmの酸化アルミニウム膜を下部層間絶縁層171上に成膜することで、バリア層172を形成する。具体的には、アルミニウムをターゲットに用い、酸素(O)とアルゴン(Ar)との混合ガス雰囲気でのRFマグネトロンスパッタ法によって酸化アルミニウム膜を成膜する。成膜条件は、例えば、パワーが30kW、アルミニウムターゲットの純度が99.99%、成膜ガスであるArとOとの流量比が1対1、成膜レートが6.0nm/minである。
次に、プラズマCVD又はスパッタリングによって、バリア層172上に上部層間絶縁層173を形成する。具体的には、プラズマCVDによって、400nmのシリコン窒化膜をバリア層172上に成膜することで、上部層間絶縁層173を形成する。具体的な成膜条件は、例えば、成膜温度が290℃、パワー密度が0.238W/cm、プロセス距離(電極間距離)が600mil(0.6インチ)、プロセス圧力が133.32Pa、NOガス流量が88500sccm、SiHガス流量が980sccmである。
なお、層間絶縁層170の成膜中に基板は真空下に置かれるので、酸化物半導体層140の酸素が欠損し、低抵抗化する。このため、成膜後にドライエア、又は、酸素雰囲気中でのアニール処理を行うことで、酸素欠陥の修復を行う。例えば、アニール温度は300℃としてよい。また、アニール時間は、7分程度の基板温度安定時間が経過した後、1時間としてもよい。また、上記ドライエアは、大気圧下露点が−70℃以下としてよい。
[3−8.上部電極の形成]
次に、図5Cの(b)に示すように、層間絶縁層170(上部層間絶縁層173)上に上部電極180を形成する。具体的には、まず、層間絶縁層170の一部をフォトリソグラフィ及びドライエッチングによって除去することで、コンタクトホールを形成する。つまり、ソース電極160s又はドレイン電極16dの一部を露出させるためのコンタクトホールを層間絶縁層170に形成する。
例えば、RIEなどのドライエッチングによって、層間絶縁層170の一部を除去する。エッチングガスとしては、例えば、四フッ化炭素(CF)及び酸素ガス(O)を用いることができる。パワー密度、圧力、ガス流量などのパラメータは、基板サイズ、エッチングの膜厚などによって適宜設定される。例えば、パワー密度を0.255W/cm、プロセス圧力を50Pa、Oガス流量を1300sccm、CFガス流量を3800sccm、Heガス流量を5000sccmとしてよい。また、レジストの剥離には、アルカリ添加物を含む剥離液を用いてよい。
続いて、形成したコンタクトホールを埋めるようにして、層間絶縁層170上に導電膜をスパッタリングによって成膜する。例えば、20nmのMo膜、300nmのCu膜、50nmのCuMn膜を順に層間絶縁層170上に積層する。その後、フォトリソグラフィ及びエッチングによって、積層した導電膜を加工することで、所定形状の上部電極180を形成する。Mo膜、Cu膜、及び、CuMn膜のウェットエッチングは、例えば、PAN液を用いて、室温にて行うことができる。また、レジストの剥離には、アルカリ添加物を含む剥離液を用いてよい。
[3−9.上部絶縁層の形成]
次に、図5Dの(a)に示すように、上部絶縁層190を形成する。具体的には、まず、上部電極180を覆うように、上部絶縁層190をプラズマCVD又はスパッタリングによって形成する。例えば、上部電極180を覆うように層間絶縁層170(上部層間絶縁層173)上に、100nmのシリコン窒化膜をプラズマCVDによって成膜する。具体的な成膜条件は、例えば、成膜温度が350℃、パワー密度が0.2W/cm、プロセス距離(電極間距離)が700mil(0.7インチ)、プロセス圧力が160Pa、Nガス流量が65000sccm、NHガス流量が25000sccm、SiHガス流量が2000sccmである。なお、上部絶縁層190の成膜後においても、層間絶縁層170の成膜後と同様のアニール処理を行ってもよい。
上部絶縁層190を成膜した後、図5Dの(b)に示すように、上部絶縁層190の一部をフォトリソグラフィ及びドライエッチングによって除去することで、コンタクトホール191を形成する。つまり、上部電極180の一部を露出させるためのコンタクトホール191を上部絶縁層190に形成する。コンタクトホール191の形成方法は、上記層間絶縁層170にコンタクトホールを形成する方法と同様である。
以上の工程を経て、図4に示すTFT基板20が製造される。なお、以降の工程において、有機EL素子40などがさらに積層される。
[4.ゲート絶縁層の構成及び形成条件]
続いて、本実施の形態に係るTFT基板20において、薄膜トランジスタ100の電気特性を不安定化させることなく、ゲート絶縁層130の耐電圧特性を改善するための構成及び形成条件について詳細に説明する。
[4−1.シリコン窒化膜の水素原子量]
まず、ゲート絶縁層130を構成するシリコン窒化膜の形成条件と水素原子量との関係について検討するための実験及びその結果について、図面を用いて説明する。
本実験においては、直径6インチサイズのシリコン基板にシリコン窒化膜を様々な条件で形成し、各シリコン窒化膜の特性を調べた。用いたシリコン基板の厚さは0.625μm、直径は150mm、面方位は(100)である。
図6は、シリコン窒化膜が形成されるシリコン基板の成膜時における配置を示す上面図である。
図6に示すように、シリコン基板115を、G8.5ガラス基板111の中央部に貼り付け、シリコン基板116を、G8.5ガラス基板111の端部(オリエンテイションフラット112付近)に貼り付けた。これにより、G8.5ガラス基板111のような大型の基板に成膜する場合における基板上の位置と膜質との関係を調べることができる。
本実験において、上述のシリコン基板115及び116上に、図7に示す条件A、条件B及び条件Cでシリコン窒化膜を成膜した場合のシリコン窒化膜の特性を調べた。
図7は、シリコン窒化膜(SiN膜)の成膜パラメータと成膜されたシリコン窒化膜の物性値とを示す表である。図7において、G8.5ガラス基板111の中央部に配置されたシリコン基板115、及び、端部に配置されたシリコン基板116のそれぞれに成膜されたシリコン窒化膜の物性値が示されている。
シリコン窒化膜は、各条件において、膜厚が400nmとなるように成膜された。なお、膜厚は、分光エリプソメーターで測定された。
図7に示すように、シリコン窒化膜の物性値として、シリコン基板115に対する応力と、シリコン原子と結合している水素原子の結合量(Si−H結合量)と、窒素原子と結合している水素原子の結合量(N−H結合量)とが測定された。シリコン窒化膜のシリコン基板115に対する応力は、薄膜応力測定装置によって、シリコン窒化膜が成膜されたシリコン基板の反り(曲率半径)の変化量と膜厚とから評価された。また、Si−H結合量及びN−H結合量は、FT−IR(Fourier Transform Infrared Spectroscopy)分光法によって評価された。
図7に示されるように、条件Aと条件Bとでは、各ガス流量が異なる。また、条件Aと条件Cとでは、主に、パワーが異なる。上記いずれの条件においてもシリコン窒化膜において、圧縮応力が生じるが、応力の絶対値は、条件C、条件A、条件Bの順に増加する。また、Si―H結合量は、条件A、条件B、条件Cの順に増加し、N―H結合量は、条件A、条件B、条件Cの順に減少している。
ここで、上記各条件によって成膜されたシリコン窒化膜を薄膜トランジスタに用いた場合における薄膜トランジスタの特性について調査した結果について説明する。本実験において用いた薄膜トランジスタにおいては、ゲート絶縁層が、シリコン窒化膜と、その上に成膜されたシリコン酸化膜とから構成される。そして、シリコン窒化膜が、それぞれ、上記条件A、条件B及び条件Cを用いて成膜された三通りの薄膜トランジスタを作製した。また、実験用の各薄膜トランジスタにおけるシリコン窒化膜は、いずれも膜厚350nmとなるように成膜された。また、シリコン酸化膜は、図8に示す成膜条件で膜厚50nmとなるように成膜された。
図8は、シリコン酸化膜(SiO膜)の成膜パラメータと成膜されたシリコン酸化膜の物性値とを示す表である。なお、図8には、上記シリコン窒化膜と同様に測定されたシリコン酸化膜の物性値についても示している。シリコン窒化膜上に成膜されるシリコン酸化膜として緻密な膜が求められるため、図8に示すようにシリコン酸化膜のシリコン基板に対する応力は圧縮応力となり、その応力の絶対値は大きくなる。したがって、シリコン酸化膜の膜厚を必要以上に増加させると、基板の反り量増加につながるため好ましくない。
なお、本実験用の薄膜トランジスタのゲート絶縁層以外の構成は、上記薄膜トランジスタ100と同様である。
上述の成膜条件を用いて作製された実験用の薄膜トランジスタの電気特性を図9A、図9B及び図9Cを用いて説明する。
図9A、図9B及び図9Cは、それぞれ条件A、条件B及び条件Cを用いて成膜されたシリコン窒化膜とシリコン酸化膜とをゲート絶縁層に用いた薄膜トランジスタの電気特性の測定結果を示すグラフである。ここでは、電気特性として、薄膜トランジスタに印加されるゲート−ソース間電圧Vgsと、ドレイン−ソース間に流れる電流Idsとの関係が測定された。測定対象の薄膜トランジスタは、G8.5ガラス基板にマトリクス状に形成される。ここで、薄膜トランジスタ100のチャネル幅W及びチャネル長Lはそれぞれ10μm及び11μmである。なお、図9A、図9B及び図9Cにおいて、TFT基板のエッジから200mmを除く領域の、長辺方向8点及び短辺方向7点の合計56点において電気特性を求めて、Ids−Vgs曲線を描いた。そして、当該曲線から、Idsが、W/L×10−9(W:チャネル幅、L:チャネル長)となるときのVdsを閾値Vthとして、各曲線に対する閾値Vthを求め、それらの平均値(Ave)とばらつき(3σ)を算出した。
図9Aに示すように、条件Aを用いる場合には、閾値Vthが0.73V、ばらつきが0.50Vとなり、ばらつきの小さい電気特性が得られた。一方、図9B及び図9Cに示すように、条件B及び条件Cを用いる場合には、閾値Vthが大きくマイナス方向にシフトした特性が多く見られた。また、図9Cに示すように、条件Cを用いる場合には、薄膜トランジスタ100のソース−ドレイン間がほぼ導通する現象(グラフの曲線がほぼ横一直線となる現象)も見られた。条件B及び条件Cを用いる場合には、シリコン窒化膜に含まれるSi−H結合量が多いため、上記のような閾値Vthのマイナスシフトが発生すると推測される。
当該推測の根拠について以下に述べる。シリコン窒化膜中に含まれる水素原子Hの結合エネルギーは、Si−H結合では3.3eV、N−H結合では4.0eVであり、結合エネルギーの小さいSi−H結合から水素原子Hが脱離し易い。ここで、脱離した水素原子の少なくとも一部は、酸化物半導体層140にドープされる。これにより酸化物半導体層140中の酸素欠損が増加し、酸化物半導体層140中のキャリア密度が増加するため、薄膜トランジスタ100の閾値Vthは、マイナスシフトすると推測される。
以上より、薄膜トランジスタ100のゲート絶縁層130に用いるシリコン窒化膜において、特に、Si−H結合量を低減する必要があると言える。シリコン窒化膜中のSi−H結合量としては、上記の実験結果から、2.3×1021cm−3以下であることが望ましい。また、シリコン窒化膜中のN−H結合量についても、同様に少ない方が好ましいが、条件Aと同程度に存在しても薄膜トランジスタ100の閾値Vthをマイナスシフトさせることはないと考えられる。したがって、シリコン窒化膜中のN−H結合量は、3.3×1022cm−3以下であればよい。
[4−2.シリコン窒化膜の応力]
次に、シリコン窒化膜の形成条件と応力と関係について検討するための実験及びその結果について、図面を用いて説明する。
上記条件Aを用いて形成されるシリコン窒化膜をゲート絶縁層において用いる場合、得られる薄膜トランジスタの電気特性は、上述のとおり良好である。しかしながら、上述のとおり、上記条件Aを用いて形成されるシリコン窒化膜の圧縮応力が大きいため、基板の反り量(基板垂れ量)が大きくなる。基板垂れ量が大きくなると、大型のガラス基板を用いる製造ラインでは、製造装置内での基板の搬送に問題が生じる。例えば、ローラーでガラス基板を搬送するような設備(リソグラフィー、ウェットエッチング、剥離洗浄装置など)でガラス基板の端が引っ掛かるなどの搬送トラブルが生じ易くなり、それが原因でガラス基板が割れるなどの事故の発生確率が増大する。
そこで、薄膜トランジスタのゲート絶縁層に用いるシリコン窒化膜を積層化し、応力緩和層を設けることにより上記問題を解決することを試みた。以下、当該応力緩和層の成膜条件について検討するための実験及びその結果について説明する。
本実験においても、図6に示すように直径6インチのシリコン基板115及び116をG8.5ガラス基板111上に貼り付けて、図10に示す条件を用いて、膜厚400nmとなるようにシリコン窒化膜を成膜した。
図10は、シリコン窒化膜(SiN膜)の成膜パラメータと成膜されたシリコン窒化膜の物性値とを示す表である。なお、図10において、成膜パラメータのうち、各条件において、他の条件と異なる値を斜体の太字で示している。また、図10においては、成膜されたシリコン窒化膜の物性値も示されている。膜厚及び他の物性値の測定方法は上述した測定方法と同様である。
図10に示す実験結果を図11及び図12を用いて検討する。
図11は、成膜における圧力と各物性値との関係を示すグラフである。図11においては、図10に示す条件A、条件A1及び条件A2のデータを示している。また、図11の(A)、(B)及び(C)は、圧力と、シリコン基板に対する応力、Si−H結合量及びN−H結合量との関係をそれぞれ示す。
図12は、シランガス(SiH)流量と各物性値との関係を示すグラフである。図12においては、図10に示す条件A1、条件A3及び条件A4のデータを示している。また、図12の(A)、(B)及び(C)は、シランガス流量と、シリコン基板に対する応力、Si−H結合量及びN−H結合量との関係をそれぞれ示す。
図10及び図11に示すように、条件Aより成膜における圧力を増加させた場合(条件A1及び条件A2)、シリコン窒化膜の応力が圧縮応力から引っ張り応力に変化する。例えば、条件A1では、G8.5ガラス基板111の中央部及び端部の両方において、シリコン基板に対する応力が−100MPa以上、100MPa以下となる。一方、シリコン窒化膜中の水素原子量のうちSi−H結合量は、圧力の増加に伴って増加し、条件A1及び条件A2では2.3×1021cm−3を超える。そこで、シリコン窒化膜中の水素原子量を低減するために、条件A3及び条件A4においては、条件A1よりシランガス流量を低減した。これにより、図10及び図12に示すように、条件A3及び条件A4においては、応力は条件A1の場合と同等でありながら、Si−H結合量は、条件A1の場合より低下し、2.3×1021cm−3以下を維持することができた。
なお、上記各条件によって測定されたシリコン窒化膜のシリコン基板に対する応力は、膜密度に対応する物性値である。すなわち、シリコン窒化膜の圧縮応力が大きいほど、膜密度が大きくなる。例えば、条件A及び条件A4を用いてG8.5ガラス基板111の中央部において成膜されたシリコン窒化膜の膜密度は、それぞれ、2.58g/cm、及び、2.54g/cmである。
以上より、本実施の形態では、応力緩和層として、条件A4を用いて成膜したシリコン窒化膜を用いて、ゲート絶縁層の応力緩和を試みることとした。そこで、条件A4を用いて成膜したシリコン窒化膜を応力緩和層として用いる薄膜トランジスタを作製した。当該薄膜トランジスタにおいて、ゲート絶縁層として、条件Aを用いて、圧縮応力の比較的大きいシリコン窒化膜を膜厚50nmとなるように成膜し、その上に、条件A4を用いてシリコン窒化膜を膜厚300nmとなるように成膜した。さらに、当該シリコン窒化膜上に図8に示す条件で膜厚50nmとなるようにシリコン酸化膜を成膜した。なお、ここで、条件Aを用いて成膜された膜厚50nmのシリコン窒化膜は、ゲート電極との密着性を高めるための密着層として用いた。そこで、当該薄膜トランジスタを作製して、その電気特性を測定し、条件Aを用いて成膜されたシリコン窒化膜とシリコン酸化膜とをゲート絶縁層に用いた薄膜トランジスタの電気特性と比較した。なお、本実験で用いられる薄膜トランジスタのゲート絶縁層以外の構成は、上記実験において用いられた薄膜トランジスタと同様である。
図13Aは、条件Aを用いて成膜されたシリコン窒化膜とシリコン酸化膜とをゲート絶縁層に用いた薄膜トランジスタの電気特性の測定結果を示すグラフである。
図13Bは、条件A4を用いて成膜されたシリコン窒化膜をゲート絶縁層の応力緩和層として用いた薄膜トランジスタの電気特性の測定結果を示すグラフである。
図13Bに示す例では、閾値Vthの平均値が0.59V、ばらつきが1.82となる。このように、図13Bに示す例では、図13Aに示す例より、閾値Vthがマイナスシフトし、かつ、閾値のばらつきも増大している。図13A及び図13Bに示すように、条件Aを用いて成膜したシリコン窒化膜と、条件A4を用いて成膜したシリコン窒化膜とでは、膜中のSi−H結合量は同等であるのに、電気特性に差が生じている。この原因を調査する目的で、条件A及び条件A4を用いてそれぞれ成膜されたシリコン窒化膜の昇温脱離ガス分析法(TDS:Thermal Dsorption Spectroscopy)による水素脱離量を比較する実験を行った。当該実験においては、シリコン基板上に、条件A及び条件A4を用いて、それぞれ400nmの膜厚で成膜したシリコン窒化膜を10mm角にカットし、TDSによりH(M/z=2)の脱離量を測定した。
図14は、成膜条件をパラメータして基板温度に対するH脱離プロファイルを示すグラフである。
図15は、基板温度350℃の場合における各成膜条件に対するH脱離量を示すグラフである。
なお、図14及び図15に示す脱離量を示す強度は、測定サンプル重量(シリコン窒化膜重量)により規格化されている。
図14及び図15に示すように、基板温度350℃以上において、条件A4で成膜されたシリコン窒化膜の方が、条件Aで成膜されたシリコン窒化膜より脱離量が多くなる。本実験結果から、上記図13A及び図13Bに示す例では、条件A4を用いて成膜されたシリコン窒化膜の方が、条件Aを用いて成膜されたシリコン窒化膜より、水素原子が多く脱離したと推測される。そのため、条件A4を用いて成膜されたシリコン窒化膜をゲート絶縁層に用いた薄膜トランジスタにおいては、水素原子が酸化物半導体層に多くドープされ、当該水素原子によって、酸化物半導体層中のキャリア密度が増加したため、閾値Vthがマイナス方向にシフトしたと推測される。
また、条件A4を用いて成膜されたシリコン窒化膜におけるH脱離量と、条件Aを用いて成膜されたシリコン窒化膜におけるH脱離量との差分は、珪素原子(Si)や窒素原子(N)との結合していない未結合水素原子によって発生すると推測される。そのため、当該未結合水素原子は、FT−IR分光法では、評価できない。また、当該未結合水素原子が、条件A4を用いて成膜されたシリコン窒化膜の応力緩和に寄与していると推測される。
以上のことから、低応力のシリコン窒化膜をゲート絶縁層として用いる場合には、薄膜トランジスタの閾値Vthのマイナスシフトを抑制するための手段が必要と言える。
[4−3.ゲート絶縁層の積層構造]
上述のとおり、低応力のシリコン窒化膜をゲート絶縁層として用いる場合には、薄膜トランジスタの閾値Vthのマイナスシフトを抑制する手段が必要である。そこで、ゲート絶縁層の積層構造を検討した結果について説明する。
ここででは、上記条件A4を用いて成膜したシリコン窒化膜を応力緩和層としてゲート絶縁層に用い、かつ、当該応力緩和層上に上記条件Aを用いて成膜したシリコン窒化膜を積層して薄膜トランジスタを作製した。この積層構造の目的は、応力緩和層上に、圧縮応力が大きい(すなわち、膜密度が大きい)シリコン窒化膜を配置することにより、応力緩和層から脱離する水素原子の酸化物半導体層への移動を抑制することである。
上記ゲート絶縁層の積層構造として、図4などに示した第1〜4絶縁層から構成される積層構造を採用し、第1〜4絶縁層の膜厚を図16に示すように変化させた場合の薄膜トランジスタ100の電気特性及び基板の反り量を測定した。なお、本実験で用いられる薄膜トランジスタ100のゲート絶縁層130以外の構成は、上記実験において用いられた薄膜トランジスタと同様である。
図16は、測定対象の薄膜トランジスタ100における各絶縁層の膜厚の条件と、当該条件で作製した薄膜トランジスタ100の電気特性及びTFT基板20の反り量を示した表である。
図17A〜17Fは、それぞれ、図16に示す条件(a)〜条件(f)で作製された薄膜トランジスタ100の電気特性の測定結果を示すグラフである。
図16の条件(b)、条件(c)及び条件(d)、並びに、図17B、図17C及び図17Dより、応力緩和層である第2絶縁層132の膜厚に対する、水素原子ブロック層である第3絶縁層133の膜厚の割合が増加すると、閾値Vthのばらつきが減少することが分かる。これは、第3絶縁層133によって、第2絶縁層132から脱離する水素原子の酸化物半導体層140への移動を抑制しているためであると推測される。
また、図16の条件(c)及び条件(e)、並びに、図17C及び図17Eより、第3絶縁層133の膜厚を変えずに、第2絶縁層132の膜厚を増加させると、閾値のばらつきが増大する。また、図16の条件(e)及び条件(f)、並びに、図17E及び図17Fより、第2絶縁層132及び第3絶縁層133の膜厚の和を一定として、第3絶縁層133の割合を増加させると、閾値Vthのばらつきが低下する。
以上より、薄膜トランジスタ100の閾値Vthのばらつきを抑制するために、第2絶縁層132上に水素原子ブロック層である第3絶縁層133を所定の膜厚で設ける必要があると言える。ここで、例えば閾値Vthのばらつきを0.55以下とするためには、当該所定の膜厚は、第2絶縁層132の膜厚からから第3絶縁層133の膜厚を引いた差が50nm以下となるように定めればよい。
次に、上記各積層構造の条件とTFT基板20の反り量との関係について図面を用いて説明する。
図16に示すように、積層構造の条件(a)〜(f)に対して、TFT基板20の反り量が変化する。なお、TFT基板20の反り量(基板垂れ量)は、TFT基板20(G8.5ガラス基板)の周囲から200mm内側にステージの縁が配置されるように、TFT基板20をステージ上に配置した場合のTFT基板20の端の垂れ下がり量によって測定した。ここで応力緩和層である第2絶縁層132の膜厚のゲート絶縁層130の合計膜厚に対する割合と、反り量との関係について図18を用いて説明する。
図18は、第2絶縁層132の膜厚のゲート絶縁層130の合計膜厚に対する割合と、TFT基板の反り量及び閾値Vthのばらつきとの関係を示すグラフである。
図16及び図18に示すように、応力緩和層である第2絶縁層132がない場合(条件(a))に比べて、第2絶縁層132の割合が約35%以上の場合には、反り量が約1mm低減され、反り量低減効果があることが分かる。
また、図16及び図18に示すように、第2絶縁層132の割合が多過ぎる場合(約45%以上の場合)には、第3絶縁層133によって水素原子を十分にブロックできないため、閾値Vthのばらつきが増大する。
以上のことから、本実施の形態に係る積層構造のゲート絶縁層130において、各層の膜厚及び応力を所定の範囲に定め、各層の水素原子量が所定量以下となるように形成することにより、ゲート絶縁層130の膜厚を増大させた場合でも、TFT基板20の反り量を低減でき、かつ、薄膜トランジスタ100の電気特性のばらつきを抑制することができることが判明した。
[5.まとめ]
以上のように、本実施の形態に係るTFT基板20は、基板110と、基板110の上方に配置されたゲート電極120と、基板110の上方であって、ゲート電極120に対向する位置に配置され、チャネル層として用いられる酸化物半導体層140と、ゲート電極120と酸化物半導体層140との間に配置されたゲート絶縁層130とを備え、ゲート絶縁層130は、ゲート電極120側から順に配置された第1絶縁層131、第2絶縁層132及び第3絶縁層133を備え、第1絶縁層131、第2絶縁層132及び第3絶縁層133はシリコン窒化膜から構成され、第1絶縁層131、第2絶縁層132及び第3絶縁層133における窒素原子及び珪素原子に結合される水素原子量が、それぞれ、3.3×1022cm−3以下、及び、2.3×1021cm−3以下であり、第2絶縁層132の膜厚から第3絶縁層133の膜厚を引いた差は50nm以下であり、第2絶縁層132の膜密度は、第1絶縁層131及び第3絶縁層133の膜密度より小さい。
このように、ゲート絶縁層130が、膜密度の小さい、すなわち、圧縮応力の小さい第2絶縁層132を備えるため、ゲート絶縁層130の膜厚を大きくしても、ゲート絶縁層130の基板110に対する圧縮応力を抑制することができる。そのため、基板110の反り量を抑制しながら、ゲート絶縁層130の膜厚を大きくしてゲート絶縁層130の耐電圧特性を改善することができる。また、ゲート絶縁層130を構成する第1〜3絶縁層の窒素原子及び珪素原子に結合される水素原子量が抑制され、かつ、第3絶縁層133として、所定の膜厚を有し、かつ、膜密度の大きい(緻密な)シリコン窒化膜を用いることにより、酸化物半導体層140への水素原子ドープ量を抑制することができる。したがって、酸化物半導体層140の水素原子ドープによる低抵抗化が抑制されるため、薄膜トランジスタ100の電気特性を安定化することができる。また、ゲート電極120上に、膜密度の大きい、すなわち、圧縮応力の大きい第1絶縁層131を備えることにより、ゲート電極120と第1絶縁層131との密着性を確保することができる。
また、例えば、第2絶縁層132のシリコン基板に対する応力は、−100MPa以上、100MPa以下であり、第1絶縁層131及び第3絶縁層133のシリコン基板に対する応力は、−400MPa以上、−200MPa以下であってもよい。
これにより、ゲート絶縁層130の基板110に対する圧縮応力をより確実に抑制することができる。また、酸化物半導体層140への水素原子ドープ量をより確実に抑制することができる。また、ゲート電極120と第1絶縁層131との密着性をより高めることができる。
また、例えば、第2絶縁層132の膜厚の、ゲート絶縁層130全体の膜厚に対する割合は、35%以上であってもよい。
このように、ゲート絶縁層130に占める低応力の第2絶縁層132の割合が大きいことにより、ゲート絶縁層130による応力をより確実に抑制することができる。したがって、基板110の反り量をより確実に低減することができる。
また、例えば、第2絶縁層132及び第3絶縁層133の合計膜厚は、300nm以上、600nm以下であってもよい。
これにより、ゲート絶縁層130が十分な耐電圧特性を有することができる。また、上記合計膜厚が600nm以下に制限されることにより、プロセス(成膜)時間が長くなり過ぎることを抑制することができるため、TFT基板20の生産性の低下を抑制することができる。
また、例えば、第1絶縁層131の膜厚は、10nm以上、60nm以下であってもよい。
これにより、圧縮応力の大きい第1絶縁層131とゲート電極120との密着性を確保することができる。
また、例えば、第2絶縁層132は、複数の絶縁層から構成されてもよい。また、当該複数の絶縁層の間に他の層が挿入されてもよい。
また、例えば、ゲート絶縁層130は、第3絶縁層133と酸化物半導体層140との間に配置される第4絶縁層134を、さらに備え、第4絶縁層134は、シリコン酸化膜から構成されてもよい。
これにより、水素原子量の少ない第4絶縁層134がゲート絶縁層130の酸化物半導体層140側に配置されるため、酸化物半導体層140への水素原子ドープ量が抑制される。したがって、薄膜トランジスタ100の電気特性を安定化できる。
また、例えば、第4絶縁層134の膜厚は、10nm以上、100nm以下であってもよい。
また、例えば、第4絶縁層134は、酸化物半導体層140側の表面において、第4絶縁層134の膜厚方向の中央部より窒素原子濃度が高くてもよい。
また、例えば、酸化物半導体層140は、透明アモルファス酸化物半導体から構成されてもよい。
また、例えば、酸化物半導体層140は、InGaZnOから構成されてもよい。
また、本実施の形態に係るTFT基板20の製造方法は、基板110の上方にゲート電極120を形成する工程と、基板110の上方であって、ゲート電極120と対向する位置に、チャネル層として用いられる酸化物半導体層140を形成する工程と、ゲート電極120と酸化物半導体層140との間にゲート絶縁層130を形成する工程とを含み、ゲート絶縁層130を形成する工程は、ゲート電極120側から順に配置される第1絶縁層131、第2絶縁層132及び第3絶縁層133をそれぞれ形成する工程を含み、第1絶縁層131、第2絶縁層132及び第3絶縁層133はシリコン窒化膜から構成され、第1絶縁層131、第2絶縁層132及び第3絶縁層133における窒素原子及び珪素原子に結合される水素原子量が、それぞれ、3.3×1022cm−3以下、及び、2.3×1021cm−3以下であり、第2絶縁層132の膜厚から第3絶縁層133の膜厚を引いた差は50nm以下であり、第2絶縁層132の膜密度は、第1絶縁層131及び第3絶縁層133の膜密度より小さい。
このように、ゲート絶縁層130として、膜密度の小さい、すなわち、圧縮応力の小さい第2絶縁層132が形成されるため、ゲート絶縁層130の膜厚を大きくしても、ゲート絶縁層130の基板110に対する圧縮応力を抑制することができる。そのため、基板110の反り量を抑制しながら、ゲート絶縁層130の膜厚を大きくしてゲート絶縁層130の耐電圧特性を改善することができる。また、ゲート絶縁層130を構成する第1〜3絶縁層の窒素原子及び珪素原子に結合される水素原子量が抑制され、かつ、第3絶縁層133として、所定の膜厚を有し膜密度の大きい(緻密な)シリコン窒化膜を用いることにより、酸化物半導体層140への水素原子ドープ量を抑制することができる。したがって、酸化物半導体層140の水素原子ドープによる低抵抗化が抑制されるため、薄膜トランジスタ100の電気特性を安定化することができる。また、ゲート電極120上に、膜密度の大きい、すなわち、圧縮応力の大きい第1絶縁層131を備えることにより、ゲート電極120と第1絶縁層131との密着性を確保することができる。
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。
そこで、以下では、他の実施の形態を例示する。
例えば、上記実施の形態に係るTFT基板20は、第4絶縁層134を備えなくてもよい。
また、例えば、上記実施の形態において、チャネル保護層150の成膜前に、適切な条件で酸化性処理を行ってもよい。具体的には、酸化物半導体層140を成膜した後、チャネル保護層150を成膜する前に、熱処理、プラズマ処理又はこれらの組み合わせを行ってもよい。
例えば、上記熱処理は、温度が300℃〜350℃で、約1時間以内のドライエアによるアニール処理である。
これにより、酸化物半導体層140内の酸素欠陥を低減し、かつ、酸化物半導体層140の表面の不純物を除去することができる。
また、例えば、上記実施の形態において、薄膜トランジスタ100は、ボトムゲート型でチャネル保護型の構成であったが、これに限られない。例えば、薄膜トランジスタ100は、トップゲート型であってもよいし、チャネルエッチ型であってもよい。
また、例えば、上記の実施の形態では、薄膜トランジスタ100を用いた表示装置として有機EL表示装置10について説明したが、上記実施の形態における薄膜トランジスタ100は、液晶表示装置など、アクティブマトリクス基板が用いられる他の表示装置にも適用することができる。
また、上述した有機EL表示装置10などの表示装置(表示パネル)については、フラットパネルディスプレイとして利用することができ、テレビジョンセット、パーソナルコンピュータ、携帯電話など、表示パネルを有するあらゆる電子機器に適用することができる。特に、大画面及び高精細の表示装置に適している。
以上のように、本開示における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面及び詳細な説明を提供した。
したがって、添付図面及び詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲又はその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
本開示に係る薄膜トランジスタ基板及びその製造方法は、例えば、有機EL表示装置などの表示装置及びその製造方法などに利用することができる。
10 有機EL表示装置
20 TFT基板
21 バンク
30 画素
30B、30G、30R サブ画素
31 画素回路
32、33、100 薄膜トランジスタ
32d、33d、160d ドレイン電極
32g、33g、120 ゲート電極
32s、33s、160s ソース電極
34 キャパシタ
40 有機EL素子
41 陽極
42 EL層
43 陰極
50 ゲート配線
60 ソース配線
70 電源配線
110 基板
111 G8.5ガラス基板
112 オリエンテイションフラット
115、116 シリコン基板
130 ゲート絶縁層
131 第1絶縁層
132 第2絶縁層
133 第3絶縁層
134 第4絶縁層
140 酸化物半導体層
150 チャネル保護層
170 層間絶縁層
171 下部層間絶縁層
172 バリア層
173 上部層間絶縁層
180 上部電極
190 上部絶縁層
191 コンタクトホール
201 プラズマ

Claims (12)

  1. 基板と、
    前記基板の上方に配置されたゲート電極と、
    前記ゲート電極の上方であって、前記ゲート電極に対向する位置に配置され、チャネル層として用いられる酸化物半導体層と、
    前記ゲート電極と前記酸化物半導体層との間に配置されたゲート絶縁層とを備え、
    前記ゲート絶縁層は、前記ゲート電極側から順に配置された第1絶縁層、第2絶縁層及び第3絶縁層を備え、
    前記第1絶縁層、前記第2絶縁層及び前記第3絶縁層はシリコン窒化膜から構成され、
    前記第1絶縁層、前記第2絶縁層及び前記第3絶縁層における窒素原子及び珪素原子に結合される水素原子量が、それぞれ、3.3×1022cm−3以下、及び、2.3×1021cm−3以下であり、
    前記第2絶縁層の膜厚から前記第3絶縁層の膜厚を引いた差は50nm以下であり、
    前記第2絶縁層の膜密度は、前記第1絶縁層及び前記第3絶縁層の膜密度より小さい
    薄膜トランジスタ基板。
  2. 前記第2絶縁層のシリコン基板に対する応力は、−100MPa以上、100MPa以下であり、
    前記第1絶縁層及び前記第3絶縁層のシリコン基板に対する応力は、−400MPa以上、−200MPa以下である
    請求項1に記載の薄膜トランジスタ基板。
  3. 前記第2絶縁層の膜厚の、前記ゲート絶縁層全体の膜厚に対する割合は、35%以上である
    請求項1又は2に記載の薄膜トランジスタ基板。
  4. 前記第2絶縁層及び前記第3絶縁層の合計膜厚は、300nm以上、600nm以下である
    請求項1〜3のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ基板。
  5. 前記第1絶縁層の膜厚は、10nm以上、60nm以下である
    請求項1〜4のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ基板。
  6. 前記第2絶縁層は、複数の絶縁層から構成される
    請求項1〜5のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ基板。
  7. 前記ゲート絶縁層は、前記第3絶縁層と前記酸化物半導体層との間に配置される第4絶縁層を、さらに備え、
    前記第4絶縁層は、シリコン酸化膜から構成される
    請求項1〜6のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ基板。
  8. 前記第4絶縁層の膜厚は、10nm以上、100nm以下である
    請求項7に記載の薄膜トランジスタ基板。
  9. 前記第4絶縁層は、前記酸化物半導体層側の表面において、前記第4絶縁層の膜厚方向の中央部より窒素原子濃度が高い
    請求項7又は8に記載の薄膜トランジスタ基板。
  10. 前記酸化物半導体層は、透明アモルファス酸化物半導体から構成される
    請求項1〜9のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ基板。
  11. 前記酸化物半導体層は、InGaZnOから構成される
    請求項1〜10のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ基板。
  12. 薄膜トランジスタ基板の製造方法であって、
    基板の上方にゲート電極を形成する工程と、
    前記ゲート電極の上方であって、前記ゲート電極と対向する位置に、チャネル層として用いられる酸化物半導体層を形成する工程と、
    前記ゲート電極と前記酸化物半導体層との間にゲート絶縁層を形成する工程とを含み、
    前記ゲート絶縁層を形成する工程は、前記ゲート電極側から順に配置される第1絶縁層、第2絶縁層及び第3絶縁層をそれぞれ形成する工程を含み、
    前記第1絶縁層、前記第2絶縁層及び前記第3絶縁層はシリコン窒化膜から構成され、
    前記第1絶縁層、前記第2絶縁層及び前記第3絶縁層における窒素原子及び珪素原子に結合される水素原子量が、それぞれ、3.3×1022cm−3以下、及び、2.3×1021cm−3以下であり、
    前記第2絶縁層の膜厚から前記第3絶縁層の膜厚を引いた差は50nm以下であり、
    前記第2絶縁層の膜密度は、前記第1絶縁層及び前記第3絶縁層の膜密度より小さい
    薄膜トランジスタ基板の製造方法。
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