JP2016111095A - 薄膜トランジスタにおける閾値電圧の推定方法及び薄膜トランジスタ基板の製造方法 - Google Patents

薄膜トランジスタにおける閾値電圧の推定方法及び薄膜トランジスタ基板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】薄膜トランジスタ基板(TFT基板)の製造工程において、工程を増加させることなく、TFT基板が備える薄膜トランジスタの閾値電圧を推定する方法を提供する。【解決手段】TFT基板が備える薄膜トランジスタにおける閾値電圧の推定方法であって、TFT基板は、基板と、基板上に配置された薄膜トランジスタと、基板上に配置された複数の配線(データ線)とを備える。複数の配線は、薄膜トランジスタのソース−ドレイン間を介して互いに電気的に接続されている。推定方法は、複数の配線の各々の一端に電圧を印加しながら、複数の配線の各々の他端において、受電センサによって受電し、受電センサに流れる電流を測定するステップS12と、当該電流と閾値電圧との予め定められた関係に基づいて閾値電圧を推定するステップS13とを含む。【選択図】図12

Description

本開示は、薄膜トランジスタにおける閾値電圧の推定方法、及び、それを用いた薄膜トランジスタ基板の製造方法に関する。
液晶表示装置又は有機EL(Electro−Luminescence)表示装置などのアクティブマトリクス方式の表示装置には、スイッチング素子又は駆動素子として薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)が広く用いられている。
表示装置の特性は、TFTのチャネル層の特性に依存する。そのため、TFTのチャネル層の特性を評価する技術が検討されている(例えば、特許文献1)。特許文献1には、チャネル層のキャリアライフタイムを測定するために、μPCD(Microwave Photo−Conductive Decay)法を用いる技術が開示されている。
特開2008−53258号公報
近年、TFTのチャネル層に酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウムガリウム(InGaO)、又は、酸化インジウムガリウム亜鉛(InGaZnO)などの酸化物半導体を用いた構成について、研究開発が積極的に進められている。酸化物半導体をチャネル層に用いたTFTは、アモルファス状態でも高いキャリア移動度を持ち、低温プロセスで形成可能であるという特徴を持つ。このような酸化物半導体をチャネル層に用いたTFTでは、製造工程において閾値電圧がシフトすることがあるため、製造工程における閾値電圧の評価が必要とされる。
本開示は、TFT基板の製造工程において、工程を増加させることなく、TFT基板が備える薄膜トランジスタの閾値電圧を推定する方法、及び、それを用いたTFT基板の製造方法を提供する。
上記課題を解決するため、本開示に係る薄膜トランジスタにおける閾値電圧の推定方法の一態様は、薄膜トランジスタ基板が備える薄膜トランジスタにおける閾値電圧の推定方法であって、薄膜トランジスタ基板は、基板と、基板上に配置された薄膜トランジスタと、基板上に配置された複数の配線とを備え、複数の配線は、薄膜トランジスタのソース−ドレイン間を介して互いに電気的に接続されており、推定方法は、複数の配線の各々の一端に電圧を印加しながら、複数の配線の各々の他端において、受電センサによって受電し、受電センサに流れる電流を測定するステップと、電流と閾値電圧との予め定められた関係に基づいて閾値電圧を推定するステップとを含む。
本開示によれば、TFT基板の製造工程において、工程を増加させることなく、TFT基板が備える薄膜トランジスタの閾値電圧を推定する方法、及び、それを用いたTFT基板の製造方法を提供することができる。
図1は、実施の形態に係る有機EL表示装置の一部切り欠き斜視図である。 図2は、実施の形態に係る有機EL表示装置のピクセルバンクの一例を示す斜視図である。 図3は、実施の形態に係る有機EL表示装置における画素回路の構成を示す電気回路図である。 図4は、実施の形態に係る薄膜トランジスタ基板の一例を示す概略断面図である。 図5Aは、実施の形態に係る薄膜トランジスタ基板の製造工程を示す概略断面図である。 図5Bは、実施の形態に係る薄膜トランジスタ基板の製造工程を示す概略断面図である。 図6は、実施の形態に係るTFT基板に形成される配線と、オープンショート(OS)検査で用いられる給電ヘッド及び受電センサとの位置関係の概要を示す斜視図である。 図7Aは、実施の形態に係るTFT基板の基板及びデータ線と、OS検査で用いられる給電ヘッド及び受電センサとの位置関係の概要を示す側面図である。 図7Bは、実施の形態に係るOS検査時の給電ヘッド、配線パターン及び受電センサの等価回路の概要を示す回路図である。 図8は、実施の形態に係るOS検査によって得られる受電電圧波形の一例を示すグラフである。 図9は、実施の形態に係るTFT基板の隣接する二本のデータ線の間における低抵抗となり得る経路を示す回路図である。 図10は、実施の形態に係るOS検査によって、TFT基板の各配線について測定された受電電圧を示すグラフである。 図11は、実施の形態に係るTFT基板の各配線について測定された受電電圧の最低値と、TFT基板が備える薄膜トランジスタの閾値電圧Vthの平均値との関係を示すグラフである。 図12は、実施の形態に係る閾値電圧Vthの推定手順を示すフローチャートである。 図13は、実施の形態に係るTFT基板の製造手順を示すフローチャートである。 図14は、酸化物半導体層のキャリアライフタイムを測定するために照射したマイクロ波の反射強度を示す図である。 図15は、二つのサンプル及びそれらを用いたTFTの特性の測定結果を示す表である。
(本開示の基礎となった知見)
酸化物半導体をチャネル層に用いたTFTにおいては、例えば、酸化物半導体層上にチャネル保護層を形成するプロセスによって、閾値電圧Vthが敏感に影響を受ける。そこで、酸化物半導体層上にチャネル保護層を形成した後、μPCD法を用いて閾値電圧Vthを測定することを試みた。ここでは、μPCD法を用いてマイクロ波の反射強度のピークレベルと酸化物半導体層のキャリアライフタイムとを測定した。これらの測定値と閾値電圧Vthとの相関を求めることにより、閾値電圧Vthを測定することを検討した。
まず、二枚のG8.5ガラス基板上にサンプルを作製した。当該サンプルは、ゲート電極及びゲート絶縁層の上に、酸化物半導体層として、膜厚90nmのInGaZnO(IGZO)膜を有し、当該酸化物半導体層上にチャネル保護層として膜厚200nmのシリコン酸化膜を有する。また、当該シリコン酸化膜は成膜後にアニール処理される。なお、これらの各層の形成方法は、後述の実施の形態と同様である。
ここで、一方のサンプルには、シリコン酸化膜を成膜した後、IGZO膜の酸素欠損をパッシベートするために、NOプラズマ処理を施し、他方のサンプルには、当該処理を施さなかった。NOプラズマを発生させる時間、すなわち、プラズマ処理時間は、15秒とした。具体的なプラズマ処理条件は、パワー密度が0.12W/cm、プロセス距離(電極間距離)が650mil(0.65インチ)、プロセス圧力が93.32Pa、NOガス流量が15000sccmである。
次に、当該二つのサンプルの酸化物半導体層について、μPCD法を用いて、マイクロ波の反射強度のピークレベルと酸化物半導体層のキャリアライフタイムとを測定した。μPCD法では、まず、サンプルにマイクロ波(26GHz)を照射し、サンプルによって反射したマイクロ波の反射強度A(ベース強度)を測定した。なお、測定点は、G8.5ガラス基板のエッジから200mmを除く領域の、長辺方向6点及び短辺方向6点の合計36点とした。
次に、サンプルにマイクロ波(26GHz)を照射すると同時に、紫外パルスレーザを照射した。具体的には、紫外パルスレーザの照射には、YLF−3GHレーザ(λ=349nm、パルス時間幅15nsec)を利用した。このときのサンプルによって反射したマイクロ波の反射強度Bを測定した。
反射強度Bから反射強度Aを減算したものが、図14に示す時間変化カーブである。ここで、図14は、酸化物半導体層のキャリアライフタイムを測定するために照射したマイクロ波の反射強度を示す図である。
図14に示すように、反射強度は、増加した後、減少する。そして、図14に示す時間変化カーブの減衰定数(ピークから1/eになる時間)をキャリアライフタイムτと定義した。
キャリアライフタイムτが長いということは、酸化物半導体のバルク内における、及び、酸化物半導体と絶縁膜との界面におけるトラップ準位及び再結合中心が少ないことを示している。すなわち、キャリアライフタイムτが長い程、バルク内欠陥及び界面欠陥が少なく、酸化物半導体層の低抵抗化が抑制されている。
本測定においては、上記36点の測定点において、ピークレベルと、キャリアライフタイムτとを測定し、それらの平均値(Ave)とばらつき(3σ)とをそれぞれ算出した。
また、上記二つのサンプルを用いてTFTを作製し、当該TFTの電気特性を別途測定した。具体的には、上記二つのサンプルに、さらに、ソース電極、ドレイン電極及び層間絶縁層を形成し、当該層間絶縁層にアニール処理を施した後、上部電極を設けてTFTを完成させた。ここでは、上記μPCDの測定点と同じ36点において、当該TFTの電気特性を求めて、Ids(ドレイン−ソース間に流れる電流)−Vgs(ゲート−ソース間電圧)曲線を描いた。そして、当該曲線から、Idsが、W/L×10−9(W:チャネル幅、L:チャネル長)となるときのVdsを閾値電圧Vthとして、各曲線に対する閾値電圧Vthを求め、それらの平均値(Ave)とばらつき(3σ)を算出した。なお、TFTのチャネル幅W及びチャネル長Lはそれぞれ12μm及び13μmである。
以上のように二つのサンプル及びそれらを用いたTFTの特性を測定した結果について、図15を用いて説明する。図15は、二つのサンプル及びそれらを用いたTFTの特性の測定結果を示す表である。
図15に示すように、NOプラズマ処理を施さなかったサンプルと施したサンプルとで、μPCD法による測定結果からは、有意な差を認められない。一方、それらのサンプルを用いたTFTの電気特性の測定結果から、NOプラズマ処理を施さなかったTFTより、施したTFTの方が、閾値電圧Vthがプラス方向にシフトし、閾値電圧Vthのばらつきが減少したことが分かる。
以上より、μPCD法を用いた閾値電圧の評価方法には、完成後のTFTの閾値電圧を評価できるほどの精度はないことが分かる。
そこで、本開示は、TFT基板の製造工程において、工程を増加させることなく、TFT基板が備える薄膜トランジスタの閾値電圧を精度よく推定する方法を提供する。また、当該方法を用いて薄膜トランジスタの閾値電圧を推定し、当該推定された閾値電圧に基づいて、閾値電圧を調整することができるTFT基板の製造方法を提供する。
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、すでによく知られた事項の詳細説明、及び、実質的に同一の構成に対する重複説明などを省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
なお、発明者らは、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面及び以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、同じ構成部材については同じ符号を付している。
また、本明細書において、「上方」及び「下方」という用語は、絶対的な空間認識における上方向(鉛直上方)及び下方向(鉛直下方)を指すものではなく、積層構成における積層順を基に相対的な位置関係により規定される用語として用いる。また、「上方」及び「下方」という用語は、2つの構成要素が互いに間隔をあけて配置されて2つの構成要素の間に別の構成要素が存在する場合のみならず、2つの構成要素が互いに密着して配置されて2つの構成要素が接する場合にも適用される。
(実施の形態)
[1.有機EL表示装置]
まず、本実施の形態に係る有機EL表示装置10の構成について、図1及び図2を用いて説明する。図1は、本実施の形態に係る有機EL表示装置10の一部切り欠き斜視図である。図2は、本実施の形態に係る有機EL表示装置10のピクセルバンクの一例を示す斜視図である。
[1−1.構成]
図1に示すように、有機EL表示装置10は、複数個の薄膜トランジスタが配置されたTFT基板(TFTアレイ基板)20と、下部電極である陽極41、有機材料からなる発光層であるEL層42及び透明な上部電極である陰極43からなる有機EL素子(発光部)40との積層構造により構成される。
TFT基板20には複数の画素30がマトリクス状に配置されており、各画素30には画素回路31が設けられている。
有機EL素子40は、複数の画素30のそれぞれに対応して形成されており、各画素30に設けられた画素回路31によって各有機EL素子40の発光の制御が行われる。有機EL素子40は、複数の薄膜トランジスタを覆うように形成された層間絶縁層(平坦化層)の上方に形成される。
また、有機EL素子40は、陽極41と陰極43との間にEL層42が配置された構成となっている。陽極41とEL層42との間にはさらに正孔輸送層が積層形成され、EL層42と陰極43との間にはさらに電子輸送層が積層形成されている。なお、陽極41と陰極43との間には、その他の有機機能層が設けられていてもよい。
各画素30は、それぞれの画素回路31によって駆動制御される。また、TFT基板20には、画素30の行方向に沿って配置される複数の走査線50と、走査線50と交差するように画素30の列方向に沿って配置される複数のデータ線60と、走査線50と平行に配置される複数の制御線(図1では省略)と、データ線60と平行に配置される複数の電源配線(図1では省略)とが形成されている。各画素30は、例えば、直交する走査線50とデータ線60とによって区画されている。
走査線50及び制御線は、各画素回路31に含まれるスイッチング素子として動作する薄膜トランジスタのゲート電極と行毎に接続される配線である。データ線60は、各画素回路31に含まれるスイッチング素子として動作する薄膜トランジスタのソース電極と列毎に接続される配線である。電源配線は、各画素回路31に含まれる薄膜トランジスタと列毎に接続される配線である。
図2に示すように、有機EL表示装置10の各画素30は、3色(赤色、緑色、青色)のサブ画素30R、30G、30Bによって構成されており、これらのサブ画素30R、30G、30Bは、表示面上に複数個マトリクス状に配列されるように形成されている。各サブ画素30R、30G、30Bは、バンク21によって互いに分離されている。
バンク21は、走査線50に平行に延びる突条と、データ線60に平行に延びる突条とが互いに交差するように、格子状に形成されている。そして、この突条で囲まれる部分(すなわち、バンク21の開口部)の各々とサブ画素30R、30G、30Bの各々とが一対一で対応している。なお、本実施の形態において、バンク21はピクセルバンクとしたが、ラインバンクとしても構わない。
陽極41は、TFT基板20上の層間絶縁層(平坦化層)上でかつバンク21の開口部内に、サブ画素30R、30G、30B毎に形成されている。同様に、EL層42は、陽極41上でかつバンク21の開口部内に、サブ画素30R、30G、30B毎に形成されている。透明な陰極43は、複数のバンク21上で、かつ、全てのEL層42(全てのサブ画素30R、30G、30B)を覆うように、連続的に形成されている。
さらに、画素回路31は、各サブ画素30R、30G、30B毎に設けられており、各サブ画素30R、30G、30Bと、対応する画素回路31とは、コンタクトホール及び中継電極によって電気的に接続されている。なお、サブ画素30R、30G、30Bは、EL層42の発光色が異なることを除いて同一の構成である。
[1−2.画素回路]
ここで、画素30における画素回路31の回路構成について、図3を用いて説明する。図3は、本実施の形態に係る有機EL表示装置10における画素回路31の構成を示す電気回路図である。
図3に示すように、画素回路31は、有機EL素子40と、駆動素子として動作する薄膜トランジスタ32と、スイッチング素子として動作する薄膜トランジスタ33〜36と、対応する画素30に表示するためのデータを記憶するキャパシタ37とで構成される。
薄膜トランジスタ32は、有機EL素子40を駆動するための駆動トランジスタである。薄膜トランジスタ32は、薄膜トランジスタ33のドレイン電極及びキャパシタ37の一端に接続されるゲート電極と、薄膜トランジスタ36のソース電極に接続されるドレイン電極と、キャパシタ37の他端と有機EL素子40の陽極41とに接続されるソース電極と、半導体膜(図示せず)とを備える。この薄膜トランジスタ32は、キャパシタ37が保持しているデータ電圧に対応する電流を有機EL素子40の陽極41に供給する。これにより、有機EL素子40では、陽極41から陰極43へと駆動電流が流れてEL層42が発光する。
薄膜トランジスタ33は、画素30を選択するためのスイッチングトランジスタである。薄膜トランジスタ33は、走査線50に接続されるゲート電極と、データ線60に接続されるソース電極と、キャパシタ37の一端及び薄膜トランジスタ32のゲート電極に接続されるドレイン電極と、半導体膜(図示せず)とを備える。この薄膜トランジスタ33は、接続された走査線50及びデータ線60に所定の電圧が印加されると、当該データ線60に印加された電圧がデータ電圧としてキャパシタ37に保存される。
薄膜トランジスタ34は、キャパシタ37の電荷を放電するためのスイッチングトランジスタである。薄膜トランジスタ34は、制御線53に接続されるゲート電極と、電源配線72に接続されるソース電極及びドレイン電極の一方と、キャパシタ37の他端及び薄膜トランジスタ32のソース電極に接続されるソース電極及びドレイン電極の他方と、半導体膜(図示せず)とを備える。薄膜トランジスタ34は、制御線53の電圧に応じてキャパシタ37の電荷を放電する。
薄膜トランジスタ35は、薄膜トランジスタ32のゲート電極などへの電圧の供給をオンオフするためのスイッチングトランジスタである。薄膜トランジスタ35は、制御線51に接続されるゲート電極と、電源配線71に接続されるソース電極及びドレイン電極の一方と、薄膜トランジスタ33のドレイン電極及び薄膜トランジスタ32のゲート電極に接続されるソース電極及びドレイン電極の他方と、半導体膜(図示せず)とを備える。薄膜トランジスタ35は、制御線51の電圧に応じて電源配線71から電圧を供給する。
薄膜トランジスタ36は、薄膜トランジスタ32のドレイン電極への電圧の供給をオンオフするためのスイッチングトランジスタである。薄膜トランジスタ36は、制御線52に接続されるゲート電極と、電源配線70に接続されるソース電極及びドレイン電極の一方と、薄膜トランジスタ32のドレイン電極に接続されるソース電極及びドレイン電極の他方と、半導体膜(図示せず)とを備える。薄膜トランジスタ36は、制御線52の電圧に応じて電源配線70から電圧を供給する。
なお、上記構成の有機EL表示装置10では、走査線50とデータ線60との交点に位置する画素30毎に表示制御を行うアクティブマトリクス方式が採用されている。これにより、各画素30(各サブ画素30R、30G、30B)の薄膜トランジスタ32及び33によって、対応する有機EL素子40が選択的に発光し、所望の画像が表示される。
[2.TFT基板]
以下では、本実施の形態に係るTFT基板20について、図4を用いて説明する。なお、本実施の形態に係るTFT基板20に形成される薄膜トランジスタは、ボトムゲート型、かつ、チャネル保護型の薄膜トランジスタである。
図4は、本実施の形態に係るTFT基板20の概略断面図である。TFT基板20には、例えば、複数の薄膜トランジスタ100が形成されている。
図4に示すように、本実施の形態に係るTFT基板20は、基板110と、ゲート電極120と、ゲート絶縁層130と、酸化物半導体層140と、チャネル保護層150と、ドレイン電極160dと、ソース電極160sと、層間絶縁層170と、上部電極180とを備える。なお、TFT基板20において、薄膜トランジスタ100は、ゲート電極120と、ゲート絶縁層130と、酸化物半導体層140と、チャネル保護層150と、ドレイン電極160dと、ソース電極160sとから構成される。
薄膜トランジスタ100は、例えば、図3に示す薄膜トランジスタ32〜36である。すなわち、薄膜トランジスタ100は、駆動トランジスタ及びスイッチングトランジスタとして利用できる。
[2−1.基板]
基板110は、電気絶縁性を有する材料から構成される基板である。例えば、基板110は、無アルカリガラス、石英ガラス、高耐熱性ガラスなどのガラス材料、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミドなどの樹脂材料、シリコン、ガリウムヒ素などの半導体材料、又は、絶縁層をコーティングしたステンレスなどの金属材料からなる基板である。
なお、基板110は、樹脂基板などのフレキシブル基板でもよい。この場合、薄膜トランジスタ100をフレキシブルディスプレイなどに利用することができる。
[2−2.ゲート電極]
ゲート電極120は、基板110の上方に配置される電極である。本実施の形態では、ゲート電極120は、基板110上に所定形状で形成される。ゲート電極120の膜厚は、例えば、30nm〜400nmである。なお、ゲート電極120は、基板110の上方に、例えば、バッファ層などを介して形成されてもよい。
ゲート電極120は、導電性を有する材料からなる電極である。例えば、ゲート電極120の材料として、モリブデン、アルミニウム、銅、タングステン、チタン、マンガン、クロム、タンタル、ニオブ、銀、金、プラチナ、パラジウム、インジウム、ニッケル、ネオジムなどの金属、金属の合金、酸化インジウムスズ(ITO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)などの導電性金属酸化物、ポリチオフェン、ポリアセチレンなどの導電性高分子などを用いることができる。また、ゲート電極120は、これらの材料を積層した多層構造であってもよい。
[2−3.ゲート絶縁層]
ゲート絶縁層130は、ゲート電極120と酸化物半導体層140との間に形成される。具体的には、ゲート絶縁層130は、ゲート電極120を覆うようにゲート電極120上及び基板110上に形成される。ゲート絶縁層130の膜厚は、例えば、210nm〜500nmである。
ゲート絶縁層130は、電気絶縁性を有する材料から構成される。例えば、ゲート絶縁層130は、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜、酸化アルミニウム膜、酸化タンタル膜、酸化ハフニウム膜などの単層膜、又は、これらの積層膜である。
本実施の形態では、ゲート絶縁層130は、複数の層を含んでいる。具体的には、図4に示すように、ゲート絶縁層130は、2層構造であり、順に積層された第1絶縁膜131及び第2絶縁膜132を含んでいる。
[2−3−1.第1絶縁膜]
第1絶縁膜131は、ゲート電極120上に設けられた絶縁膜である。第1絶縁膜131は、ゲート電極120との密着層である。第1絶縁膜131は、ゲート電極120と密着させるために、膜応力として圧縮応力が必要とされる。当該圧縮応力は、−400MPa以上、−200MPa以下が好ましい。例えば、第1絶縁膜131は、シリコン窒化膜から構成される。第1絶縁膜131の膜厚は、例えば、200nm〜400nmである。
[2−3−2.第2絶縁膜]
第2絶縁膜132は、第1絶縁膜131上に設けられた絶縁膜である。第2絶縁膜132は、酸化物半導体層140と接する層である。第2絶縁膜132は、シリコン酸化膜から構成されることが好ましい。第2絶縁膜132の膜厚は、例えば、10nm〜100nmであり、より好ましくは、30nm〜50nmである。
第2絶縁膜132がシリコン酸化膜から構成されることにより、シリコン窒化膜などから構成される場合より、膜内の水素量(すなわち、水素含有量)を低減することができる。これにより、第2絶縁膜132と接する酸化物半導体層140が取り込む水素量を低減することができるため、酸化物半導体層140の低抵抗化を抑制することができる。なお、ゲート絶縁層130全体をシリコン酸化物で形成することは以下の理由から好ましくない。すなわち、シリコン酸化膜の応力を成膜条件によって制御することは困難であるため、薄膜トランジスタ100に適用できる程度に緻密なシリコン酸化膜を形成する場合には、シリコン酸化膜の圧縮応力が大きくことを避けられない。このため、シリコン酸化膜だけでゲート絶縁層130全体を形成すると、圧縮応力が大きく、かつ、膜厚も大きいゲート絶縁層130が形成されることにより、基板110が反ってしまう。
[2−4.酸化物半導体層]
酸化物半導体層140は、薄膜トランジスタ100のチャネル層として用いられる層であり、ゲート電極120に対向するように基板110の上方に配置される。具体的には、酸化物半導体層140は、ゲート絶縁層130上であって、ゲート電極120に対向する位置に配置される。例えば、酸化物半導体層140は、ゲート電極120の上方において、ゲート絶縁層130上に島状に形成される。酸化物半導体層140の膜厚は、例えば、30nm〜150nmである。
酸化物半導体層140の材料としては、インジウム(In)、ガリウム(Ga)及び亜鉛(Zn)のうち、少なくとも1種を含む酸化物半導体材料を用いる。例えば、酸化物半導体層140は、アモルファス酸化インジウムガリウム亜鉛(InGaZnO:IGZO)などの透明アモルファス酸化物半導体(TAOS:Transparent Amorphous Oxide Semiconductor)から構成される。
In:Ga:Znの比率は、例えば、約1:1:1である。また、In:Ga:Znの比率は、0.8〜1.2:0.8〜1.2:0.8〜1.2の範囲でもよいが、この範囲には限られない。
酸化物半導体層140は、薄膜トランジスタ100のチャネル層である。チャネル層が透明アモルファス酸化物半導体で構成される薄膜トランジスタは、キャリア移動度が高く、大画面及び高精細の表示装置に適している。また、透明アモルファス酸化物半導体は、低温成膜が可能であるため、プラスチック又はフィルムなどのフレキシブル基板上に容易に形成することができる。
[2−5.チャネル保護層]
チャネル保護層150は、酸化物半導体層140上に配置される。例えば、チャネル保護層150は、酸化物半導体層140を覆うように、酸化物半導体層140上及びゲート絶縁層130上に配置される。チャネル保護層150は、酸化物半導体層140を保護するために設けられた絶縁層である。チャネル保護層150の膜厚は、例えば、40nm〜300nmである。
チャネル保護層150は、電気絶縁性を有する材料から構成される。チャネル保護層150は、シリコン酸化膜から構成される。あるいは、チャネル保護層150は、酸化アルミニウム膜から構成されてもよい。チャネル保護層150は、単層膜であっても、積層膜であってもよい。
また、チャネル保護層150には、ドレイン電極160d及びソース電極160sのそれぞれを酸化物半導体層140に接続するためのコンタクトホールが設けられている。ドレイン電極160d及びソース電極160sを構成する材料が、それぞれ、コンタクトホールの壁面に沿って酸化物半導体層140まで達している。あるいは、コンタクトホールには、ドレイン電極160d及びソース電極160sを構成する材料がそれぞれ充填されていてもよい。
[2−6.ドレイン電極及びソース電極]
ドレイン電極160d及びソース電極160sは、チャネル保護層150上に所定形状で形成される。例えば、ドレイン電極160d及びソース電極160sは、チャネル保護層150上に、基板水平方向に離間して対向配置されている。具体的には、ドレイン電極160d及びソース電極160sはそれぞれ、コンタクトホールを介して酸化物半導体層140に接続されるように、チャネル保護層150上に配置される。ドレイン電極160d及びソース電極160sの膜厚は、例えば、30nm〜300nmである。
ドレイン電極160d及びソース電極160sは、導電性を有する材料からなる電極である。ドレイン電極160d及びソース電極160sは、例えば、銅の単層膜(Cu膜)、銅膜及びタングステン膜の積層構造(Cu/W)、銅膜及び窒化チタン膜の積層構造(Cu/TiN)、又は、銅及びマンガンの合金膜、銅膜並びにモリブデン膜の積層構造(CuMn/Cu/Mo)などで構成される。あるいは、ドレイン電極160d及びソース電極160sの材料としては、例えば、ゲート電極120の材料と同一の材料を用いることができる。
[2−7.層間絶縁層]
層間絶縁層170は、チャネル保護層150の上方に配置される。層間絶縁層170は、チャネル保護層150、ドレイン電極160d及びソース電極160s上に配置される。例えば、層間絶縁層170は、ドレイン電極160d及びソース電極160sを覆うように、チャネル保護層150上、ドレイン電極160d及びソース電極160s上に配置される。
層間絶縁層170は、薄膜トランジスタ100のパッシベーション膜である。層間絶縁層170の膜厚は、例えば、200nm〜500nmである。
また、層間絶縁層170の一部は、貫通するように開口されている。つまり、層間絶縁層170には、ソース電極160sの一部を露出させるためのコンタクトホールが形成されている。
コンタクトホールは、上部電極180とソース電極160sとを電気的に接続するために形成されたコンタクトホールである。上部電極180を構成する材料が、例えば、コンタクトホールの壁面に沿って、ソース電極160sまで達している。あるいは、コンタクトホールには、上部電極180を構成する材料が充填されていてもよい。
層間絶縁層170は、複数の層を含んでいる。具体的には、図4に示すように、層間絶縁層170は、3層構造であり、順に積層された、下部層間絶縁層171と、バリア層172と、上部層間絶縁層173とを含んでいる。
[2−7−1.下部層間絶縁層]
下部層間絶縁層171は、ドレイン電極160d及びソース電極160s上に設けられた絶縁層である。下部層間絶縁層171の膜厚は、層間絶縁層170としての膜厚が500nm以下となるような膜厚である。
下部層間絶縁層171は、電気絶縁性を有する材料から構成される。例えば、下部層間絶縁層171は、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜、酸化アルミニウム膜などの無機材料から構成される膜、又は、シリコン、酸素及びカーボンを含む無機材料から構成される膜などの単層膜、又は、これらの積層膜である。
[2−7−2.バリア層]
バリア層172は、下部層間絶縁層171上に設けられた絶縁層である。バリア層172は、空気中の水分などが外部から酸化物半導体層140に浸入するのを抑制するための層である。
バリア層172は、例えば、酸化アルミニウム膜である。バリア層172の膜厚は、例えば、30nm〜100nmである。
[2−7−3.上部層間絶縁層]
上部層間絶縁層173は、バリア層172上に設けられた絶縁層である。上部層間絶縁層173の膜厚は、層間絶縁層170としての膜厚が500nm以下となるような膜厚である。
上部層間絶縁層173は、電気絶縁性を有する材料から構成される。例えば、上部層間絶縁層173は、下部層間絶縁層171と同じ材料から構成される。
[2−8.上部電極]
上部電極180は、ドレイン電極160d及びソース電極160sの上方に所定形状で形成される。具体的には、上部電極180は、層間絶縁層170上に形成される。上部電極180の膜厚は、例えば、200nm〜500nmである。
上部電極180は、ドレイン電極160d及びソース電極160sの一方に接続される。具体的には、上部電極180は、コンタクトホールを介してソース電極160sに電気的に接続されている。
上部電極180は、例えば、ドレイン電極160d及びソース電極160sと同じ材料から構成される。なお、層間の密着性を向上させるために、ITO膜と金属膜とをこの順で積層してもよい。
[3.TFT基板の製造方法]
続いて、本実施の形態に係るTFT基板20の製造方法について図5A及び5Bを用いて説明する。図5A及び図5Bは、本実施の形態に係るTFT基板20の製造工程を示す概略断面図である。
[3−1.ゲート電極の形成]
まず、図5Aの(a)に示すように、基板110を準備し、基板110の上方に所定形状のゲート電極120を形成する。例えば、基板110上に金属膜をスパッタリングによって成膜し、フォトリソグラフィ及びエッチングによって金属膜を加工することにより、所定形状のゲート電極120を形成する。
具体的には、まず、基板110としてガラス基板を準備し、基板110上に、20nmのMo膜と200nmのCu膜とをスパッタリングによって順に成膜する。そして、フォトリソグラフィでレジストパターンを形成した後、ウェットエッチングによってMo膜及びCu膜を加工することにより、ゲート電極120を形成する。
なお、Mo膜及びCu膜のウェットエッチングは、PAN(Phosphoric−Acetic−Nitric−acid)液を用いて、室温で行うことができる。また、レジストの剥離には、アルカリ添加物を含む剥離液を用いてよい。また、基板110は、例えば、G8.5ガラス基板(厚さ:0.5mm、X:2500mm×Y:2200mm)である。
また、ゲート電極120を形成する工程において、図1〜3に示す走査線50が同時に形成される。走査線50が形成された後、走査線50の断線(オープン)、及び、走査線50と他の配線(隣接する走査線50を含む)との短絡(ショート)の有無を検査するために、オープンショート検査(OS検査)を行ってもよい。OS検査については後で詳述する。
[3−2.ゲート絶縁層の形成]
次に、図5Aの(b)に示すように、基板110の上方にゲート絶縁層130を形成する。例えば、ゲート電極120を覆うようにゲート絶縁層130をプラズマCVD又はスパッタリングによって成膜する。ゲート絶縁層130は、第1絶縁膜131及び第2絶縁膜132から構成される。
具体的には、ゲート電極120を覆うように基板110上に、350nmのシリコン窒化膜から構成される第1絶縁膜131と50nmのシリコン酸化膜から構成される第2絶縁膜132とをプラズマCVDによって順に成膜することで、ゲート絶縁層130を形成する。このときの成膜温度は、例えば、350℃〜400℃である。成膜温度が350℃より低い場合には、シリコン窒化膜中の水素含有量が増加するため好ましくない。シリコン窒化膜中の水素の結合量は、N−H結合が3.3×1022cm−3以下、Si−H結合が、2.3×1021cm−3であることが好ましい。
シリコン窒化膜から構成される第1絶縁膜131は、例えば、窒素ガス(N)、アンモニアガス(NH)及びシランガス(SiH)を導入ガスに用いることで成膜することができる。具体的な成膜条件は、例えば、成膜温度が380℃、パワー密度が0.16W/cm、プロセス距離(電極間距離)が650mil(0.65インチ)、プロセス圧力が133.32Pa、Nガス流量が63000sccm、NHガス流量が25000sccm、SiHガス流量が2200sccmである。
シリコン酸化膜から構成される第2絶縁膜132は、例えば、亜酸化窒素ガス(NO)、アルゴンガス(Ar)及びシランガス(SiH)を導入ガスに用いることで成膜することができる。なお、Arガスは、NOガスの希釈ガスとして用いられる。これにより、効率的にガスが分解され、良質な酸化膜が形成され、かつ、NOの使用量を抑制することができる。具体的な成膜条件は、例えば、成膜温度が380℃、パワー密度が0.145W/cm、プロセス距離(電極間距離)が650mil(0.65インチ)、プロセス圧力が126.65Pa、NOガス流量が83000sccm、Arガス流量が47000sccm、SiHガス流量が1100sccmである。なお、第2絶縁膜132の成膜は、第1絶縁膜131の成膜に連続して行われる。つまり、プラズマCVD装置を用いて第1絶縁膜131を成膜した後、プラズマCVD装置のチャンバー内の真空を破ることなく、第2絶縁膜132の成膜を行う。これにより、不純物が混入する可能性を低減することができる。
[3−3.プラズマ処理]
次に、図5Aの(c)に示すように、ゲート絶縁層130の第2絶縁膜132に対する窒化処理の一例であるプラズマ処理を行う。つまり、第2絶縁膜132を形成した後、酸化物半導体層140を形成する前に、プラズマ処理を行う。
具体的には、第2絶縁膜132の成膜に用いたチャンバー内に、アンモニアガス(NH)、窒素ガス(N)などを用いてプラズマ190を発生させる。プラズマ処理に用いるガスには、水素原子が含まれてもよい。水素原子がプラズマ処理に用いるガス中に含まれることにより、シリコン層の表面のダングリングボンドを終端でき、酸化物半導体層140との界面の欠陥準位を低減できる。なお、第2絶縁膜132に結合される水素原子は、酸化物半導体層140との界面の欠陥準位を低減するためにのみ利用されるため、当該水素原子の量は第1絶縁膜131から離脱する水素原子の量に比べて圧倒的に少ない。したがって、第2絶縁膜132に結合される水素原子による酸化物半導体層140の低抵抗化への影響は無視できる。
プラズマ190を発生させる時間、すなわち、プラズマ処理時間は、例えば、30秒〜60秒である。また、プラズマ処理温度、すなわち、基板温度は、350℃〜400℃である。例えば、基板温度は、第1絶縁膜131の成膜時の成膜温度と同一の温度である。具体的なプラズマ処理条件は、例えば、パワー密度が0.1W/cm、プロセス距離(電極間距離)が600mil(0.6インチ)、プロセス圧力が160Pa、NHガス流量が15000sccmである。なお、プラズマ処理は、第2絶縁膜132の成膜に連続して行われる。つまり、プラズマCVD装置を用いて第2絶縁膜132を成膜した後、プラズマCVD装置のチャンバー内の真空を破ることなく、プラズマ処理を行う。これにより、不純物が混入する可能性を低減することができる。
[3−4.酸化物半導体層の形成]
次に、図5Aの(d)に示すように、基板110の上方に、かつ、ゲート電極120に対向する位置に所定形状の酸化物半導体層140を形成する。例えば、ゲート絶縁層130上に酸化物半導体膜をスパッタリングによって成膜する。そして、フォトリソグラフィ及びエッチングによって酸化物半導体膜を加工することにより、所定形状の酸化物半導体層140を形成する。
具体的には、組成比In:Ga:Zn=1:1:1のターゲット材を用いた、酸素(O)とアルゴン(Ar)との混合ガス雰囲気でのスパッタリングによって、ゲート絶縁層130上に90nmのアモルファスInGaZnO膜を成膜する。より具体的な成膜条件は、例えば、DCマグネトロンスパッタ法において、パワーが12kW、成膜ガスの酸素分圧が4.5%、成膜レートが100nm/minである。
そして、ゲート絶縁層130上に成膜されたアモルファスInGaZnOをウェットエッチングすることで、酸化物半導体層140を形成する。InGaZnOのウェットエッチングは、例えば、リン酸(HPO)、硝酸(HNO)及び界面活性剤を混合した薬液を用いて行うことができる。また、レジストの剥離には、アルカリ添加物を含む剥離液を用いてよい。
[3−5.チャネル保護層の形成]
次に、図5Aの(e)に示すように、酸化物半導体層140上にチャネル保護層150を形成する。例えば、酸化物半導体層140を覆うようにチャネル保護層150をプラズマCVDによって成膜する。
具体的には、酸化物半導体層140を覆うようにゲート絶縁層130上に、200nmのシリコン酸化膜を成膜することで、チャネル保護層150を形成する。この時の成膜温度は、例えば、250℃である。シリコン酸化膜は、例えば、シランガス(SiH)と亜酸化窒素ガス(NO)とを導入ガスに用いることで成膜することができる。具体的な成膜条件は、例えば、パワー密度が0.238W/cm、プロセス距離(電極間距離)が600mil(0.6インチ)、プロセス圧力が133.32Pa、NOガス流量が88500sccm、SiHガス流量が980sccmである。
なお、チャネル保護層150を形成した後、所定の温度の加熱処理(アニール処理)を行ってもよい。例えば、ドライエア、又は、酸素雰囲気中において、成膜温度以上の温度でアニール処理してもよい。例えば、アニール温度は350℃としてよい。また、アニール時間は、7分程度の基板温度安定時間が経過した後、1時間としてもよい。これにより、酸化物半導体層140中の酸素欠陥が修復され、半導体性を維持することができる。また、上記ドライエアは、大気圧下露点が−70℃以下としてよい。
[3−6.ドレイン電極及びソース電極の形成]
次に、図5Bの(a)に示すように、チャネル保護層150上にドレイン電極160d及びソース電極160sを形成する。具体的には、まず、チャネル保護層150の一部をフォトリソグラフィ及びドライエッチングによって除去することで、コンタクトホールを形成する。つまり、酸化物半導体層140の一部を露出させるためのコンタクトホールをチャネル保護層150に形成する。
例えば、チャネル保護層150がシリコン酸化膜である場合、ドライエッチングとして反応性イオンエッチング(RIE)を用いることができる。このとき、エッチングガスとしては、例えば、四フッ化炭素(CF)、酸素ガス(O)及びヘリウムガス(He)を用いることができる。ガス流量、圧力、印加電力及び周波数などのパラメータは、基板サイズ、エッチングの膜厚などによって適宜設定される。例えば、パワー密度を0.255W/cm、プロセス圧力を50Pa、Oガス流量を1300sccm、CFガス流量を3800sccm、Heガス流量を5000sccmとしてよい。また、レジストの剥離には、アルカリ添加物を含む剥離液を用いてよい。
そして、形成したコンタクトホールを埋めるようにして、チャネル保護層150上に金属膜をスパッタリングによって成膜する。例えば、20nmのMo膜、300nmのCu膜、及び、50nmの銅及びマンガンの合金膜(CuMn膜)を順にチャネル保護層150上に積層する。その後、フォトリソグラフィ及びエッチングによって、積層した金属膜を加工することで、所定形状のドレイン電極160d及びソース電極160sを形成する。Mo膜、Cu膜、及び、CuMn膜のウェットエッチングは、例えば、PAN液を用いて、室温にて行うことができる。また、レジストの剥離には、アルカリ添加物を含む剥離液を用いてよい。
また、ドレイン電極160d及びソース電極160sを形成する工程において、図1〜3に示すデータ線60が同時に形成される。データ線60が形成された後、データ線60のOS検査を行う。これにより、データ線60のオープン及びショートを検査すると同時に、薄膜トランジスタ100の閾値電圧を推定する。OS検査については後で詳述する。
[3−7.層間絶縁層の形成]
次に、図5Bの(b)に示すように、層間絶縁層170を形成する。具体的には、まず、ドレイン電極160d及びソース電極160sを覆うように、下部層間絶縁層171をプラズマCVD又はスパッタリングによって形成する。例えば、ドレイン電極160d及びソース電極160sを覆うようにチャネル保護層150上に、200nmのシリコン酸化膜をプラズマCVDによって成膜する。具体的な成膜条件は、例えば、成膜温度が230℃、パワー密度が0.238W/cm、プロセス距離(電極間距離)が600mil(0.6インチ)、プロセス圧力が133.32Pa、NOガス流量が88500sccm、SiHガス流量が980sccmである。
次に、プラズマCVD、ALD(Atomic Layer Deposition)又はスパッタリングなどによって、下部層間絶縁層171上にバリア層172を形成する。例えば、スパッタリングによって30nmの酸化アルミニウム膜を下部層間絶縁層171上に成膜することで、バリア層172を形成する。具体的には、アルミニウムをターゲットに用い、酸素(O)とアルゴン(Ar)との混合ガス雰囲気でのRFマグネトロンスパッタ法によって酸化アルミニウム膜を成膜する。成膜条件は、例えば、パワーが30kW、アルミニウムターゲットの純度が99.99%、成膜ガスであるArとOとの流量比が1対1、成膜レートが6.0nm/minである。
次に、プラズマCVD又はスパッタリングによって、バリア層172上に上部層間絶縁層173を形成する。具体的には、プラズマCVDによって、400nmのシリコン窒化膜をバリア層172上に成膜することで、上部層間絶縁層173を形成する。具体的な成膜条件は、例えば、成膜温度が290℃、パワー密度が0.238W/cm、プロセス距離(電極間距離)が600mil(0.6インチ)、プロセス圧力が133.32Pa、NOガス流量が88500sccm、SiHガス流量が980sccmである。
なお、層間絶縁層170の成膜中に基板は真空下に置かれるので、酸化物半導体層140の酸素が欠損し、低抵抗化する。このため、成膜後にドライエア、又は、酸素雰囲気中でのアニール処理を行うことで、酸素欠陥の修復を行う。これにより、薄膜トランジスタ100の閾値電圧Vthをプラス方向にシフトすることができる。したがって、当該アニール処理の時間を調節することにより、薄膜トランジスタ100の閾値電圧Vthを調整することができる。また、アニール温度は、例えば300℃としてよい。また、アニール時間は、7分程度の基板温度安定時間が経過した後、1時間程度としてもよい。また、上記ドライエアは、大気圧下露点が−70℃以下としてよい。
[3−8.上部電極の形成]
次に、図5Bの(c)に示すように、層間絶縁層170(上部層間絶縁層173)上に上部電極180を形成する。具体的には、まず、層間絶縁層170の一部をフォトリソグラフィ及びドライエッチングによって除去することで、コンタクトホールを形成する。つまり、ドレイン電極160d又はソース電極160sの一部を露出させるためのコンタクトホールを層間絶縁層170に形成する。
例えば、RIEなどのドライエッチングによって、層間絶縁層170の一部を除去する。エッチングガスとしては、例えば、四フッ化炭素(CF)及び酸素ガス(O)を用いることができる。パワー密度、圧力、ガス流量などのパラメータは、基板サイズ、エッチングの膜厚などによって適宜設定される。例えば、パワー密度を0.255W/cm、プロセス圧力を50Pa、Oガス流量を1300sccm、CFガス流量を3800sccmとしてよい。また、レジストの剥離には、アルカリ添加物を含む剥離液を用いてよい。
続いて、形成したコンタクトホールを埋めるようにして、層間絶縁層170上に導電膜をスパッタリングによって成膜する。例えば、20nmのMo膜、300nmのCu膜、50nmのCuMn膜を順に層間絶縁層170上に積層する。その後、フォトリソグラフィ及びエッチングによって、積層した導電膜を加工することで、所定形状の上部電極180を形成する。Mo膜、Cu膜、及び、CuMn膜のウェットエッチングは、例えば、PAN液を用いて、室温にて行うことができる。また、レジストの剥離には、アルカリ添加物を含む剥離液を用いてよい。
また、上部電極180が形成された後、上部電極180のOS検査を行ってもよい。OS検査については後で詳述する。
[4.閾値電圧の推定方法]
続いて、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ100における閾値電圧Vthの推定方法について説明する。本実施の形態においては、TFT基板20に形成された配線のOS検査で測定される電流を用いて閾値電圧Vthを推定する。以下、OS検査の概要と、それを用いた閾値電圧Vthの推定方法とについて説明する。
[4−1.OS検査の概要]
まず、OS検査の概要について、図面を用いて説明する。
図6は、本実施の形態に係るTFT基板20に形成される配線と、OS検査で用いられる給電ヘッド410及び受電センサ420との位置関係の概要を示す斜視図である。なお、図6においては、データ線60のOS検査を行う場合の位置関係を示している。
図7Aは、本実施の形態に係るTFT基板20の基板110及びデータ線60と、OS検査で用いられる給電ヘッド410及び受電センサ420との位置関係の概要を示す側面図である。なお、図7Aにおいては、データ線60以外の配線などを省略して示している。
図7Bは、本実施の形態に係るOS検査時の給電ヘッド410、配線パターン430及び受電センサ420の等価回路の概要を示す回路図である。
図6に示すように、TFT基板20に形成される配線の例として、走査線50、データ線60及びコモン線75がある。また、図6に示すように、OS検査を行う場合には、給電ヘッド410と受電センサ420とを用いる。
給電ヘッド410は、配線の一端に電圧を印加するための端子である。本実施の形態では、給電ヘッド410は、交流成分を含む電圧を配線に印加する。
受電センサ420は、配線の他端から受電するためのセンサである。本実施の形態では、図7Aに示すように、基板110上に形成されたデータ線60の他端から微小な距離gだけ離間した位置に受電センサ420を配置することによって、受電センサ420とデータ線60の他端とを容量結合させる。つまり、図7Bに示すように、配線パターン430と受電センサ420とは、容量結合部における容量を有するキャパシタ440を介して、結合されているとみなすことができる。また、本実施の形態では、受電センサ420は、配線(ここではデータ線60)から流れる電流に対応する電圧信号を増幅する増幅器を備えている。これにより、受電センサ420に流れる電流に対応する電圧(以下、「受電電圧」という。)を測定する。
なお、本実施の形態では、受電センサ420に流れる電流を測定することによって、上述のように電圧信号が得られる。そのため、本開示では、電流との記載によって、電流の測定により得られる電圧信号(受電電圧)を意味する場合がある。
以上に述べた構成において、TFT基板20における基板110の長辺方向(図6の矢印の向き)に、給電ヘッド410及び受電センサ420を同期させながら走査させる。これにより、図8に示すような受電電圧波形が得られる。
図8は、本実施の形態に係るOS検査によって得られる受電電圧波形の一例を示すグラフである。図8には、基板110の長辺方向の位置に対する受電センサ420の受電電圧の実効値が示されている。
図8に示すように、複数のデータ線60が存在する基板長辺方向位置において、受電電圧のピークが見られる。ここで、例えば、データ線60にオープン又はショートが存在する場合の受電電圧は、正常なデータ線の受電電圧と大きく異なるため、図8に示す受電電圧波形から、オープン又はショートが存在するデータ線60を発見することができる。
[4−2.閾値電圧の推定方法の概要]
次に、上述のOS検査によって測定される受電電圧を用いて、TFT基板20が備える薄膜トランジスタ100の閾値電圧Vthの推定方法について図面を用いて説明する。
上述のとおり、OS検査によって、受電センサ420に流れる電流に対応する受電電圧が測定される。当該受電電圧が、TFT基板20が備える薄膜トランジスタ100の閾値電圧Vthと相関を有することを発明者は見出した。以下、当該相関を有する理由について図9を用いて説明する。
図9は、本実施の形態に係るTFT基板20の隣接する二本のデータ線60a及び60bの間における低抵抗となり得る経路を示す回路図である。図9には、二本の隣接するデータ線60a及び60bと、二つの隣接する画素回路31a及び31bが示される。なお、画素回路31a及び31bは、上記画素回路31と同様の構成を有する。また、図9に示す薄膜トランジスタ33a及び33bは、上記薄膜トランジスタ33と同様の構成を有し、薄膜トランジスタ35a及び35bは、上記薄膜トランジスタ35と同様の構成を有する。
TFT基板20が備える各薄膜トランジスタにおいて、特に、チャネル層に酸化物半導体を用いる場合には、チャネル層が低抵抗化して、閾値電圧Vthがマイナス方向にシフトすることがある。ここで、各薄膜トランジスタの閾値電圧Vthがゼロ以下となると、各薄膜トランジスタのゲート電極に電圧を印加しない場合(ゲート電極の電位がゼロである場合)におけるソース−ドレイン間の抵抗が低下する。例えば、図9に示す薄膜トランジスタ33a及び35aのソース−ドレイン間の抵抗が低下すると、データ線60aと電源配線71との間の抵抗が低下する。ここで、電源配線71は、例えば、隣接する画素回路31bの薄膜トランジスタ35bとも電気的に接続されている。さらに、画素回路31bの薄膜トランジスタ33b及び35bのソース−ドレイン間の抵抗も低下すると、結局、図9に示す破線の矢印に沿って低抵抗の経路が形成される。したがって、データ線60aとデータ線60bとの間の抵抗が低下する。さらに、電源配線71は、全ての画素回路31に接続されているため、TFT基板20の全ての薄膜トランジスタのソース−ドレイン間の抵抗が低下している場合には、全てのデータ線60が互いに低い抵抗で接続された状態となる。
この状態でOS検査を行う場合には、検査対象のデータ線60から他の配線などに漏れる電流の割合が増加する。例えば、他の配線と接地部(TFT基板20を載せるステージ表面など)との間の容量結合を介して漏れる電流が増加する。ここで、給電ヘッド410から供給される電流を一定とすると、TFT基板20が備える各薄膜トランジスタにおける閾値電圧Vthが低下するほど、受電センサ420に流れる電流は低下し、受電電圧も低下する。したがって、受電センサ420に流れる電流に対応する受電電圧が低いほど、各薄膜トランジスタにおける閾値電圧Vthが低いと言える。
以上のことから、OS検査において受電センサ420に流れる電流と各薄膜トランジスタの閾値電圧Vthとの関係が定まり、当該関係と、受電センサ420に流れる電流の測定値(例えば、受電電圧)とに基づいて閾値電圧Vthを推定することができる。以下で、閾値電圧Vthを推定する具体的な方法の一例について図面を用いて説明する。
図10は、本実施の形態に係るOS検査によって、TFT基板20の各配線について測定された受電電圧を示すグラフである。
図10に示すように、TFT基板20の各配線(ここでは、データ線60)について、受電センサ420に流れる電流に対応する受電電圧を測定し、測定された受電電圧の最低電圧値を求める。また、TFT基板20が備える複数の薄膜トランジスタ100の電気特性をそれぞれ測定することによって、閾値電圧Vthを求め、その平均値を算出する。さらに、異なるプロセス条件で作製したTFT基板20を準備して、同様にOS検査を行うことにより受電電圧の最低値を求め、かつ、複数の薄膜トランジスタ100の閾値電圧Vthの平均値を求める。
以上のように、受電電圧の最低電圧値と、閾値電圧Vthとの関係を求めると、図11に示すようなグラフを得られる。
図11は、本実施の形態に係るTFT基板20の各配線について測定された受電電圧の最低値と、TFT基板20が備える薄膜トランジスタ100の閾値電圧Vthの平均値との関係を示すグラフである。
図11に示すように、本実施の形態では、受電電圧の最低値と、閾値電圧Vthとは、線形な関係を有する。図11に示すような関係を予め取得しておけば、受電電圧の最低値を測定することにより、閾値電圧Vthを推定することができる。
なお、上記方法では受電電圧の最低値を用いたが、受電電圧の平均値などを用いてもよい。
また、OS検査対象の配線にオープン又はショートが存在する場合には、図10に示すグラフにおいて、当該配線における受電電圧を除外して最低値(又は平均値など)を求めてもよい。
[4−3.閾値電圧の推定手順]
続いて、TFT基板20が備える薄膜トランジスタ100における閾値電圧Vthの推定手順について、図面を用いて説明する。
図12は、本実施の形態に係る閾値電圧Vthの推定手順を示すフローチャートである。
まず、TFT基板20の基板110上に配置された複数の配線において、OS検査を行った場合における受電センサ420に流れる電流と、閾値電圧Vthとの関係を取得する(S11)。ここで、上記複数の配線は、薄膜トランジスタ100のソース−ドレイン間を介して互いに電気的に接続されていればよい。本実施の形態では、複数の配線としてデータ線60を用いる。なお、受電センサ420に流れる電流に対応する値として、上記受電電圧などを用いてもよい。
次に、TFT基板20の基板110上に配置された複数の配線であって、薄膜トランジスタ100のソース−ドレイン間を介して互いに電気的に接続された複数の配線に対してOS検査を行う(S12)。すなわち、複数の配線の各々の一端に、給電ヘッド410によって電圧を印加しながら、当該複数の配線の各々の他端において、受電センサ420によって受電し、受電センサ420に流れる電流を測定する。
次に、ステップS12において測定された電流と、ステップS11において求められた上記関係に基づいて閾値電圧Vthを推定する(S13)。
以上のような手順で閾値電圧Vthを推定することができる。
[4−4.TFT基板の製造方法]
続いて、上記閾値電圧Vthの推定方法を用いて、所望の閾値電圧Vthを有する薄膜トランジスタ100を備えるTFT基板20を製造する方法について、図面を用いて説明する。
図13は、本実施の形態に係るTFT基板20の製造手順を示すフローチャートである。
まず、基板110上に、ゲート電極120、ゲート絶縁層130、酸化物半導体層140及びチャネル保護層150を順に形成する(S21〜S24)。なお、ゲート電極120を形成する際(S21)に、走査線50を形成し、走査線50を形成した後に、走査線50のOS検査を行ってもよい。
次に、各層が形成された基板110に対してアニール処理を行う(S25)。
次に、チャネル保護層150にコンタクトホールを形成して、ソース電極160s及びドレイン電極160dを形成する(S26)。これにより薄膜トランジスタ100が完成する。なお、本実施の形態では、ここで、データ線60が形成される。
次に、上記閾値電圧Vthの推定方法のステップS12と同様にデータ線60を対象としてOS検査を行う(S27)。
次に、ソース電極160s及びドレイン電極160dの上に層間絶縁層170を形成する(S28)。ここで、層間絶縁層170の形成と平行して、閾値電圧Vthを推定し(S29)、推定された閾値電圧Vthと、閾値電圧Vthの目標値との差をゼロに近づけるように、次に行うアニール処理の時間を決定する(S30)。
次に、工程S30で決定されたアニール処理時間に亘って薄膜トランジスタ100をアニール処理する(S31)。これにより、閾値電圧Vthが調整されて、目標値に近づけられる。
次に、層間絶縁層170にコンタクトホールを形成して、上部電極180を形成する(S32)。なお、上部電極180を形成した後に、上部電極のOS検査を行ってもよい。
次に、薄膜トランジスタ100の電気特性を検査する(S33)。これにより、閾値電圧Vthが実際に目標値に近い値となっているかを確認する。
以上のような手順により、TFT基板20を製造することができる。なお、以上で述べた薄膜トランジスタ100の各層の形成方法については、図5A及び図5Bを用いて上述したとおりであるため説明を省略する。
[5.まとめ]
以上のように、本実施の形態に係るTFT基板20が備える薄膜トランジスタ100における閾値電圧Vthの推定方法は、複数のデータ線60の各々の一端に電圧を印加しながら、複数のデータ線60の各々の他端において、受電センサ420によって受電し、受電センサ420に流れる電流を測定するステップと、当該電流と閾値電圧Vthとの予め定められた関係に基づいて閾値電圧Vthを推定するステップとを含む。ここで、複数のデータ線60は、薄膜トランジスタ100のソース−ドレイン間を介して互いに電気的に接続されている。
このように、受電センサ420に流れる電流と、閾値電圧Vthとの関係を用いることにより、測定された当該電流から閾値電圧Vthを推定することができる。また、上記推定方法は、完成した薄膜トランジスタ100に適用できるため、完成後の薄膜トランジスタ100の閾値電圧Vthを精度よく推定することができる。また、上記推定方法で測定される電流は、TFT基板20の製造工程において一般的に行われているOS検査によって測定される電流である。したがって、上記方法をTFT基板20の製造工程に適用すれば、工程を増加させることなく、精度よく閾値電圧Vthを推定することができる。また、さらに、閾値電圧Vthの推定値に基づいて、薄膜トランジスタ100に対して閾値電圧Vthを調整する後処理を行うことにより、所望の閾値電圧Vthを有する薄膜トランジスタ100を備えるTFT基板20を製造することができる。
また、例えば、推定方法は、電流と閾値電圧Vthとの関係を予め求めるステップをさらに含んでもよい。
また、例えば、推定するステップにおいて、複数のデータ線60の各々について測定された電流の最小値に基づいて閾値電圧Vthを推定してもよい。
また、例えば、推定するステップにおいて、複数のデータ線60の各々について測定された電流の平均値に基づいて閾値電圧Vthを推定してもよい。
また、例えば、複数のデータ線60の各々の一端に印加される電圧は、交流成分を含んでもよい。
これにより、例えば、受電センサ420を、データ線60に接触させることなく、容量結合によって受電することができる。受電センサ420を、データ線60に接触させないことで、データ線60及び受電センサ420の損傷を抑制することができる。
また、例えば、薄膜トランジスタ100のチャネル層は酸化物半導体から構成されてもよい。
また、本実施の形態に係るTFT基板20の製造方法は、上記の推定方法のいずれかによって閾値電圧Vthを推定する工程と、推定された閾値電圧Vthに基づいて閾値電圧Vthを調整する工程とを含む。
これにより、所望の閾値電圧Vthを有する薄膜トランジスタ100を備えるTFT基板20を製造することができる。
また、例えば、上記測定するステップにおいて、複数のデータ線60のオープンショート検査を行ってもよい。
これにより、TFT基板20の製造工程において一般的に行われているOS検査を行うと同時に、閾値電圧Vthの推定に必要な電流を測定することができる。したがって、TFT基板20の製造工程を追加することなく、閾値電圧Vthを推定することができる。
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。
そこで、以下では、他の実施の形態を例示する。
例えば、上記実施の形態に係る閾値電圧Vthの推定方法では、全ての配線に対してOS検査を行い、全受電電圧の最低値などを用いて閾値電圧Vthを推定したが、一部の配線に対してOS検査を行って、閾値電圧Vthを推定してもよい。
また、例えば、上記実施の形態では、受電センサ420に流れる電流と閾値電圧Vthとの関係として、受電電圧の最低値と閾値電圧Vthとの関係を用いたが、他の関係を用いてもよい。例えば、受電電圧の平均値と閾値電圧Vthとの関係を用いてもよい。また、当該関係は、電気特性などの実測に基づいて定められなくてもよい。例えば、当該関係は、解析的に求められてもよい。
また、例えば、上記実施の形態では、複数の配線としてデータ線60を用いたが、薄膜トランジスタ100のソース−ドレイン間を介して互いに電気的に接続されている複数の配線であれば、他の複数の配線を用いてもよい。
また、例えば、上記実施の形態に係るTFT基板20の製造方法では、閾値電圧Vthを調整するために、アニール処理の時間を調整したが、他の手段によって閾値電圧Vthを調整してもよい。例えば、アニール処理時間以外の処理条件によって調整してもよい。あるいは、薄膜トランジスタ100のゲート電圧にストレス電圧を印加することによって調整してもよい。
また、例えば、上記実施の形態では、薄膜トランジスタ100のチャネル層に酸化物半導体を用いたが、他の半導体材料を用いてもよい。
また、例えば、上記実施の形態では、TFT基板20を用いた表示装置として有機EL表示装置10について説明したが、上記実施の形態におけるTFT基板20は、液晶表示装置など、アクティブマトリクス基板が用いられる他の表示装置にも適用することができる。
また、例えば、上記実施の形態において、薄膜トランジスタ100は、ボトムゲート型でチャネル保護型の構成であったが、これに限られない。例えば、薄膜トランジスタ100は、トップゲート型であってもよいし、チャネルエッチ型であってもよい。
また、上述した有機EL表示装置10などの表示装置については、フラットパネルディスプレイとして利用することができ、テレビジョンセット、パーソナルコンピュータ、携帯電話など、表示装置を有するあらゆる電子機器に適用することができる。特に、大画面及び高精細の表示装置に適している。
以上のように、本開示における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面及び詳細な説明を提供した。
したがって、添付図面及び詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲又はその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
本開示に係る薄膜トランジスタにおける閾値電圧の推定方法及びそれを用いた薄膜トランジスタ基板の製造方法は、例えば、有機EL表示装置などにおける薄膜トランジスタ基板の製造方法などに利用することができる。
10 有機EL表示装置
20 TFT基板
21 バンク
30 画素
30B、30G、30R サブ画素
31、31a、31b 画素回路
32、33、33a、33b、34、35、35a、35b、36、100 薄膜トランジスタ
37、440 キャパシタ
40 有機EL素子
41 陽極
42 EL層
43 陰極
50 走査線
51、52、53 制御線
60、60a、60b データ線
70、71、72 電源配線
75 コモン線
110 基板
120 ゲート電極
130 ゲート絶縁層
131 第1絶縁膜
132 第2絶縁膜
140 酸化物半導体層
150 チャネル保護層
160d ドレイン電極
160s ソース電極
170 層間絶縁層
171 下部層間絶縁層
172 バリア層
173 上部層間絶縁層
180 上部電極
190 プラズマ
410 給電ヘッド
420 受電センサ
430 配線パターン

Claims (10)

  1. 薄膜トランジスタ基板が備える薄膜トランジスタにおける閾値電圧の推定方法であって、
    前記薄膜トランジスタ基板は、
    基板と、
    前記基板上に配置された前記薄膜トランジスタと、
    前記基板上に配置された複数の配線とを備え、
    前記複数の配線は、前記薄膜トランジスタのソース−ドレイン間を介して互いに電気的に接続されており、
    前記推定方法は、
    前記複数の配線の各々の一端に電圧を印加しながら、前記複数の配線の各々の他端において、受電センサによって受電し、前記受電センサに流れる電流を測定するステップと、
    前記電流と前記閾値電圧との予め定められた関係に基づいて前記閾値電圧を推定するステップとを含む
    薄膜トランジスタにおける閾値電圧の推定方法。
  2. 前記推定方法は、前記電流と前記閾値電圧との関係を予め求めるステップをさらに含む
    請求項1に記載の薄膜トランジスタにおける閾値電圧の推定方法。
  3. 前記複数の配線は前記薄膜トランジスタ基板のデータ線である
    請求項1又は2に記載の薄膜トランジスタにおける閾値電圧の推定方法。
  4. 前記推定するステップにおいて、
    前記複数の配線の各々について測定された前記電流の最小値に基づいて前記閾値電圧を推定する
    請求項1〜3のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタにおける閾値電圧の推定方法。
  5. 前記推定するステップにおいて、
    前記複数の配線の各々について測定された前記電流の平均値に基づいて前記閾値電圧を推定する
    請求項1〜3のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタにおける閾値電圧の推定方法。
  6. 前記電圧は、交流成分を含む
    請求項1〜5のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタにおける閾値電圧の推定方法。
  7. 前記受電センサは、前記複数の配線の各々と容量結合によって受電する
    請求項6に記載の薄膜トランジスタにおける閾値電圧の推定方法。
  8. 前記薄膜トランジスタのチャネル層は酸化物半導体から構成される
    請求項1〜7のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタにおける閾値電圧の推定方法。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタにおける閾値電圧の推定方法によって、前記閾値電圧を推定する工程と、
    推定された前記閾値電圧に基づいて前記閾値電圧を調整する工程とを含む
    薄膜トランジスタ基板の製造方法。
  10. 前記測定するステップにおいて、前記複数の配線のオープンショート検査を行う
    請求項9に記載の薄膜トランジスタ基板の製造方法。
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