JP6345118B2 - 正極活物質およびその製造方法 - Google Patents
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Description
(i)α−NaFeO2型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物の固溶体を含み、前記固溶体が含有するLiおよび遷移金属元素の組成比が、組成式Li1+1/3xCo1−x−yNiy/2Mn2x/3+y/2(x+y≦1、0≦y、かつ、1/3<x≦2/3)を満たす正極活物質(特許文献1)。
(ii)正極活物質に、リン酸二水素リチウム溶液またはリン酸水素二アンモニウム溶液を接触させ、該正極活物質の表層にPを含む層を形成させた正極活物質(特許文献2)。
(iii)遷移金属元素を含む酸化物または水酸化物と、リチウム塩と、PO3およびPO4の少なくとも一方を含むリン化合物と、を混合焼成し、リチウム複合酸化物の表面近傍にリン化合物を含有させた正極活物質(特許文献3)。
しかし、正極活物質(ii)および(iii)は、Liリッチ系正極活物質とする場合に、充分なサイクル特性を得ることが難しい。
(1)下記の工程(I)〜(IV)を有することを特徴とする正極活物質の製造方法。
(I)Niの硫酸塩、Coの硫酸塩およびMnの硫酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の硫酸塩(A)と、
炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の炭酸塩(B)とを、
水溶液の状態で混合して、
Ni、CoおよびMnからなる群から選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素(X)を含む共沈化合物を得る工程。
(II)前記共沈化合物とリン酸塩水溶液とを混合せしめる工程。
(III)前記共沈化合物とリン酸塩水溶液との混合物から水分を揮発させ前駆体化合物を得る工程。
(IV)前記前駆体化合物と炭酸リチウムとを混合し、500〜1000℃で焼成する工程。
(2)前記工程(I)において、硫酸塩(A)の水溶液中における遷移金属元素(X)の濃度が、0.1〜3mol/kgであり、かつ、炭酸塩(B)の水溶液中における炭酸塩(B)の濃度は、0.1〜2mol/kgである、上記(1)に記載の正極活物質の製造方法。
(4)前記工程(I)における共沈化合物が、NiおよびMnを含む炭酸塩であるか、又はNi、CoおよびMnを含む炭酸塩である、上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の正極活物質の製造方法。
(6)前記工程(II)および工程(III)におけるリン酸塩水溶液が、リン酸、リン酸二水素アンモニウムおよびリン酸水素二アンモニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の水溶液である、上記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の正極活物質の製造方法。
(8)前記工程(IV)において、前駆体化合物に含まれる前記遷移金属元素(X)の合計モル数に対して炭酸リチウムに含まれるLiの合計モル数の比(Li/X)が、1.1倍以上である、上記(1)〜(7)のいずれか一項に記載の正極活物質の製造方法。
下記変動係数測定方法で求められるPと前記遷移金属元素(X)の換算ピーク強度比(Ip/Ix)の変動係数(CV値)の平均値が0〜20%であることを特徴とする正極活物質。
(変動係数測定方法)
3個の正極活物質について、電子線マイクロアナライザにより、各正極活物質の断面を直径方向に2μm間隔、スポット径2μmで走査して、Pの換算ピーク強度(Ip)と前記遷移金属元素(X)の換算ピーク強度(Ix)とを測定する。次いで、各測定スポットのPと前記遷移金属元素(X)の換算ピーク強度比(Ip/Ix)を求め、各正極活物質の前記換算ピーク強度比(Ip/Ix)の変動係数(CV値)を算出し、平均値を求める。
(10)前記変動係数測定方法で求められる各正極活物質の換算ピーク強度比(Ip/Ix)の平均値が0.001〜0.1である、上記(9)に記載の正極活物質。
(11)遷移金属元素(X)のモル数に対するLiのモル数の比(Li/X)は、1.1倍以上であり、遷移金属元素(X)のモル数に対するPのモル数の比(P/X)は、0.01〜10mol%である、上記(9)または(10)に記載の正極活物質。
Li1+aPbNicCodMneO2+f ・・・(1)
(ただし、0.1≦a≦0.6、0.001≦b≦0.1、0.1≦c≦0.5、0≦d≦0.3、0.2≦e≦0.9、0.9≦c+d+e≦1.05、fはLi、P、Ni、CoおよびMnの価数によって決定される数値。)
(13)正極集電体と、該正極集電体上に設けられた正極活物質層と、を有し、
前記正極活物質層が、上記(9)〜(12)のいずれか一項に記載の正極活物質と、導電材と、バインダーと、を含有する、リチウムイオン二次電池用正極。
(14)上記(13)に記載のリチウムイオン二次電池用正極と、負極と、非水電解質と、を有するリチウムイオン二次電池。
本発明の正極活物質の製造方法によれば、優れたサイクル特性を有し、放電電圧の低下が小さい正極活物質が得られる。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極を用いれば、優れたサイクル特性を有し、放電電圧の低下が小さいリチウムイオン二次電池が得られる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、優れたサイクル特性を有し、放電電圧の低下が小さい。
本発明の正極活物質は、Liと、Ni、CoおよびMnからなる群から選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素(X)と、Pとを含む複合酸化物からなる正極活物質である。
本発明における正極活物質は粒子状である。正極活物質の粒子形状は、特に限定されず、例えば、球状、針状、板状等が挙げられる。なかでも、正極の製造時に正極活物質の充填性が高くなることから、正極活物質の粒子形状は球状がより好ましい。
なお、粒子径(D50)は、体積基準で求めた粒度分布の、全体積を100%とした累積体積分布曲線において50%となる点の粒子径、すなわち体積基準累積50%径を意味する。粒子径(D50)は、実施例に記載の方法で測定される。
前記比表面積は、実施例に記載の方法で測定される。
(変動係数測定方法)
3個の正極活物質について、電子線マイクロアナライザ(以下、「EPMA」という。)により、各正極活物質の断面を直径方向に2μm間隔、スポット径2μmで走査して、Pの換算ピーク強度(Ip)と遷移金属元素(X)の換算ピーク強度(Ix)とを測定する。次いで、各測定スポットのPと前記遷移金属元素(X)の換算ピーク強度比(Ip/Ix)を求め、各正極活物質の前記換算ピーク強度比(Ip/Ix)の変動係数(CV値)を算出し、平均値を求める。
EPMAは、加速された電子線を、対象とする物質に照射することによって得られる特性X線を観測することにより、電子線を当てた微小領域(スポット)の組成分析を行う装置である。EPMAによって、正極活物質の断面について、その直径方向に沿って線分析を行うことで、正極活物質の断面の直径方向に沿った各スポットにおいて、特定の元素の濃度分布を測定できる。
EPMAによる測定における換算ピーク強度とは、ピーク強度からバックグランド強度を差し引き、電流値で除した値を示し、単位はcps/μAである。また、1個の正極活物質についての換算ピーク強度比(Ip/Ix)の変動係数(%)は、当該1個の正極活物質における各測定スポットの換算ピーク強度比(Ip/Ix)の平均値の標準偏差を、該換算ピーク強度比(Ip/Ix)の平均値で除して100倍することで算出される。
Li1+aPbNicCodMneO2+f ・・・(1)
ただし、前記式(1)中、a〜eはそれぞれ0.1≦a≦0.6、0.001≦b≦0.1、0.1≦c≦0.5、0≦d≦0.3、0.2≦e≦0.9、0.9≦c+d+e≦1.05であり、fはLi、P、Ni、CoおよびMnの価数によって決定される数値である。
化合物(1)は、0.001≦b≦0.1であることで、サイクルによる放電電圧の低下が抑制される効果が高い。該効果が得られる要因は明確ではないが、Pが正極活物質の結晶界面に析出することで、サイクルによる結晶構造変化が抑制されているためと推察される。
化合物(1)のbは、初期放電容量とサイクル特性を両立できることから、0.005≦b≦0.03であることがより好ましい。
化合物(1)のcは、aと同様の理由で、0.15≦c≦0.45であることがより好ましく、0.2≦c≦0.4であることが特に好ましい。
化合物(1)のdは、aと同様の理由で、0≦d≦0.2であることがより好ましく、0≦d≦0.15であることが特に好ましい。
化合物(1)のeは、aと同様の理由で、0.35≦e≦0.85であることがより好ましく、0.4≦e≦0.8であることが特に好ましい。
本発明の正極活物質の放電電圧維持率は、94%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、96%以上であることが特に好ましい。放電電圧維持率は、実施例に記載の条件で測定される。
本発明の正極活物質の製造方法は、下記の工程(I)〜(IV)を有する。
工程(I)では、硫酸塩(A)と炭酸塩(B)とを、水溶液の状態で混合する。必要に応じてさらに添加剤を用いてもよい。これにより、遷移金属元素(X)を含む共沈化合物が析出する。
硫酸塩(A)と炭酸塩(B)とを、水溶液の状態で混合する態様は、硫酸塩(A)と炭酸塩(B)とが混合の際に水溶液の状態であれば特に限定されない。
具体的には、共沈化合物が析出しやすく、かつ粒子径を制御しやすいことから、反応槽に硫酸塩(A)の水溶液と、炭酸塩(B)の水溶液とを連続的に添加することが好ましい。反応槽には、予めイオン交換水、純水、蒸留水等を入れておくことが好ましく、さらに炭酸塩(B)や後述する添加剤等を用いてpHを制御しておくことがより好ましい。
硫酸塩(A)を2種以上使用する場合、硫酸塩(A)の水溶液としては、それら2種以上の硫酸塩(A)のそれぞれを別々に含む2種以上の水溶液としてもよく、2種以上の硫酸塩(A)を含む1種の水溶液としてもよい。また、1種の硫酸塩(A)を含む水溶液と、2種以上の硫酸塩(A)を含む水溶液とを併用してもよい。2種の炭酸塩(B)を使用する場合も同様である。
Niの硫酸塩としては、例えば、硫酸ニッケル(II)・六水和物、硫酸ニッケル(II)・七水和物、硫酸ニッケル(II)アンモニウム・六水和物等が挙げられる。
Coの硫酸塩としては、例えば、硫酸コバルト(II)・七水和物、硫酸コバルト(II)アンモニウム・六水和物等が挙げられる。
Mnの硫酸塩としては、例えば、硫酸マンガン(II)・五水和物、硫酸マンガン(II)アンモニウム・六水和物等が挙げられる。
硫酸塩(A)としては、放電容量が高いリチウムイオン二次電池が得られやすい点から、Niの硫酸塩およびMnの硫酸塩を含むことが好ましく、Niの硫酸塩、Coの硫酸塩およびMnの硫酸塩を併用することがより好ましい。すなわち、共沈化合物は、遷移金属元素(X)としてNiおよびMnを含む炭酸塩であることが好ましく、遷移金属元素(X)としてNi、CoおよびMnを含む炭酸塩であることがより好ましい。
炭酸塩(B)は、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムの一方を単独で使用してもよく、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムを併用してもよい。
硫酸塩(A)を含む水溶液を2種以上使用する場合は、それぞれの水溶液について遷移金属元素(X)の濃度を前記範囲内とすることが好ましい。
硫酸塩(B)を含む水溶液を2種以上使用する場合は、それぞれの水溶液について硫酸塩(B)の濃度を前記範囲内とすることが好ましい。
前記水以外の成分としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ポリオール等が挙げられる。ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ブタンジオール、グリセリン等が挙げられる。
水性媒体中の水以外の成分の割合は、0〜20質量%が好ましく、0〜10質量%がより好ましく、0〜1質量%が特に好ましく、含まないことが最も好ましい。前記水以外の成分の割合が上限値以下であれば、環境面、取扱い性、コストの点で優れている。
撹拌装置としては、例えば、スリーワンモーター等が挙げられる。撹拌翼としては、例えば、アンカー型、プロペラ型、パドル型等の撹拌翼が挙げられる。
また、硫酸塩(A)の水溶液と炭酸塩(B)の水溶液との混合は、析出した共沈化合物の酸化を抑制する点から、窒素雰囲気下またはアルゴン雰囲気下で行うことが好ましく、コストの面から、窒素雰囲気下で行うことが特に好ましい。
上記の混合液には、例えば、pHや遷移金属元素(X)の溶解度を調整するために、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム等を添加してもよい。
共沈化合物の粒子径(D50)は、正極活物質の粒子径(D50)と同様に実施例に記載の方法で測定される。
共沈化合物の比表面積は、正極活物質の比表面積と同様にして測定される。
得られた共沈化合物は、不純物イオンを取り除くために、洗浄することが好ましい。共沈化合物の洗浄方法としては、例えば、加圧ろ過と蒸留水への分散を繰り返す方法等が挙げられる。
共沈化合物は、洗浄後に、必要に応じて乾燥してもよい。
共沈化合物の乾燥温度は、60〜200℃が好ましく、80℃〜130℃がより好ましい。前記乾燥温度が下限値以上であれば、共沈化合物を短時間で乾燥できる。前記乾燥温度が上限値以下であれば、共沈化合物の酸化を抑制できる。
共沈化合物の乾燥時間は、1〜300時間が好ましく、5〜120時間がより好ましい。
工程(II)では、工程(I)で得られた共沈化合物と、リン酸塩水溶液とを混合する。
共沈化合物にリン酸塩水溶液をスプレーコートする場合、撹拌しながら共沈化合物にリン酸塩水溶液をスプレーコートする、または、共沈化合物にリン酸塩水溶液をスプレーコートした後にそれらを撹拌することがより好ましい。
共沈化合物とリン酸塩水溶液との撹拌には、レーディゲミキサ、ロッキングミキサ、ナウタミキサ、スパイラルミキサ、スプレードライ、Vミキサ等が使用できる。
なお、共沈化合物を薄く広げた状態にして、リン酸塩水溶液をスプレーコートしてもよい。
リン酸塩水溶液中のリン酸塩の濃度は、0.1〜50質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましく、1〜20質量%が特に好ましい。前記リン酸塩の濃度が下限値以上であれば、共沈化合物にリン酸塩を均一に付与しやすい。前記リン酸塩の濃度が上限値以下であれば、水溶液にリン酸塩を充分に溶解させやすい。
工程(III)では、工程(II)で得られる、共沈化合物とリン酸塩水溶液との混合物から水分を揮発させて前駆体化合物を得る。
工程(III)は、前述の工程(II)と同時に実施してもよく、工程(II)の後に工程(III)を実施してもよい。工程(III)を実施しない場合、前駆体化合物には水分が多く残存してしまう。前駆体化合物に水分が多く残存してしまうと、後述する工程(IV)において炭酸リチウムは水分に溶解しやすく、工程(IV)における焼成によって炭酸リチウムの凝集が生じやすくなる。炭酸リチウムの凝集が生じると、正極活物質中のLiおよびPの分布が不均一になり、充分なサイクル特性を有する正極活物質が得られなくなる。
なお、前記した悪影響が小さいことから、工程(III)で得られた前駆体化合物の残存する水分量は、前駆体化合物の全質量に対して30質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。
残存する水分量は、カールフィッシャー法によって測定することができる。
工程(III)における加熱温度は、60〜200℃が好ましく、80〜130℃がより好ましい。加熱温度が下限値以上であれば、得られた前駆体化合物中の水分量が少なくなり、優れたサイクル特性を示す正極活物質が得られやすい。加熱温度が上限値以下であれば、前駆体化合物が熱劣化し難い。
加熱時間は、加熱温度によっても異なるが、1〜300時間が好ましく、1〜120時間がより好ましい。
工程(IV)では、工程(III)で得られた前駆体化合物と、炭酸リチウムとを混合し、500〜1000℃で焼成する。
前駆体化合物と炭酸リチウムとを混合する方法は、例えば、ロッキングミキサ、ナウタミキサ、スパイラルミキサ、カッターミル、Vミキサ等を使用する方法等が挙げられる。
炭酸リチウムに含まれるLiの合計モル数の比(Li/X)は、1.1倍以上1.6倍以下がより好ましく、1.1倍以上1.4倍以下が特に好ましい。前記Li/Xが上限値以下であれば、高い放電容量が得られる。
空気の供給速度は、炉の内容積に1Lあたり対して10〜200mL/分が好ましく、40〜150mL/分がより好ましい。
焼成時に空気を供給することで、前駆体化合物中の遷移金属元素(X)が充分に酸化され、結晶性が高く、かつ目的とする結晶相を有する正極活物質が得られる。
焼成時間は、4〜40時間が好ましく、4〜20時間がより好ましい。
2段焼成の場合の仮焼成の温度は、400〜700℃が好ましく、500〜650℃がより好ましい。また、2段焼成の場合の本焼成の温度は、700〜1000℃が好ましく、800〜950℃がより好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極は、正極集電体と、該正極集電体上に設けられた正極活物質層と、を有する。本発明のリチウムイオン二次電池用正極は、本発明の正極活物質を用いる以外は、公知の態様を採用できる。
正極集電体としては、例えば、アルミニウム箔、ステンレス鋼箔等が挙げられる。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極における正極活物質層は、前記した本発明の正極活物質と、導電材と、バインダーと、を含む層である。正極活物質層には、必要に応じて増粘剤等の他の成分が含まれていてもよい。
導電材としては、例えば、アセチレンブラック、黒鉛、ケッチェンブラック等のカーボンブラック等が挙げられる。導電材は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
バインダーとしては、例えば、フッ素系樹脂(ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等。)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等。)、不飽和結合を有する重合体および共重合体(スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム等。)、アクリル酸系重合体および共重合体(アクリル酸共重合体、メタクリル酸共重合体等。)等が挙げられる。バインダーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の正極活物質は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極の製造方法は、本発明の正極活物質を用いる以外は、公知の製造方法を採用できる。例えば、本発明のリチウムイオン二次電池用正極の製造方法としては、以下の方法が挙げられる。
本発明の正極活物質、導電材およびバインダーを、媒体に溶解もしくは分散させてスラリーを得る、または本発明の正極活物質、導電材およびバインダーを、媒体と混錬して混錬物を得る。次いで、得られたスラリーまたは混錬物を正極集電体上に塗工等によって正極活物質層を形成させる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、前記した本発明のリチウムイオン二次電池用正極と、負極と、非水電解質とを有する。
負極は、負極集電体上に、負極活物質を含む負極活物質層が形成されてなる。
負極集電体としては、例えばニッケル箔、銅箔等の金属箔が挙げられる。
負極活物質としては、比較的低い電位でリチウムイオンを吸蔵、放出可能な材料であればよく、例えば、リチウム金属、リチウム合金、炭素材料、周期表14、15族の金属を主体とする酸化物、炭化ケイ素化合物、酸化ケイ素化合物、硫化チタン、炭化ホウ素化合物等が挙げられる。また、負極活物質としては、酸化鉄、酸化ルテニウム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化チタン、酸化スズ等の酸化物およびその他の窒化物等を使用してもよい。
周期表14族の金属としては、例えば、Si、Sn等が挙げられる。なかでも、周期表14族の金属としては、Siが好ましい。
無機固体電解質としては、例えば、窒化リチウム、ヨウ化リチウム等が挙げられる。
高分子固体電解質としては、電解質塩と該電解質塩を溶解する高分子化合物を含む電解質が挙げられる。電解質塩を溶解する高分子化合物としては、エーテル系高分子化合物(ポリ(エチレンオキサイド)、ポリ(エチレンオキサイド)の架橋体等。)、エステル系高分子化合物(ポリ(メタクリレート)、ポリ(アクリレート等。))等が挙げられる。
ゲル状電解質のマトリックスとしては、酸化還元反応に対する安定性の点から、前記高分子化合物のうち、特にフッ素系高分子化合物が好ましい。
[粒子径(D10、50、90)]
正極活物質を水中に超音波処理によって充分に分散させ、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(日機装社製;MT−3300EX)により測定を行い、頻度分布および累積体積分布曲線を得ることで体積基準の粒度分布を得た。得られた累積体積分布曲線における50%となる点の粒子径を粒子径(D50)とした。また、得られた累積体積分布曲線において、10%となる点の粒子径である粒子径(D10)と、90%となる点の粒子径である粒子径(D90)も算出した。
共沈化合物および正極活物質の比表面積は、BET(Brunauer,Emmett,Teller)法を用いて、比表面積測定装置(マウンテック社製;HM model−1208)により測定した。
正極活物質の組成分析は、プラズマ発光分析装置(SIIナノテクノロジー社製、型式名:SPS3100H)により行った。
正極活物質をエポキシ樹脂に包埋させ、機械研磨によって正極活物質において平滑な断面を露出させ、露出した断面に厚さ30nmのカーボンコートを行い、正極活物質の断面を形成した。JEOL社製のFE−EPMA(JXA−8500F)を使用し、加速電圧15kV、照射電流30nA、スポット径2μmの条件で、正極活物質断面を直径方向に2μm間隔で走査し、各測定スポットにおける、遷移金属元素(X)の換算ピーク強度(Ix)とPの換算ピーク強度(Ip)とを測定した。NiのKα1特性X線およびMnのKα1特性X線の分光には、分光結晶としてJEOL社製LIFHを使用した。CoのKα1特性X線の分光には、JEOL社製LIFを使用した。また、PのKα1特性X線の分光には、JEOL社製TAPを使用した。結果を図1に下記例12を用いて測定した場合の一例を示す。
図1より、NiのKα1特性X線を115.600mm、CoのKα1特性X線を124.300mm、MnのKα1特性X線を146.450mm、PのKα1特性X線を66.650mmのカウント値をピーク強度として使用した。
1個の正極活物質における各測定スポットのPと遷移金属元素(X)の換算ピーク強度比(Ip/Ix)を求め、それらの平均値と標準偏差を求めた。その後、換算ピーク強度比(Ip/Ix)の平均値の標準偏差を、換算ピーク強度比(Ip/Ix)の平均値で除して100倍することで、換算ピーク強度比(Ip/Ix)の変動係数(CV値)(%)を算出した。
同様にして合計3個の正極活物質について換算ピーク強度比(Ip/Ix)の変動係数(CV値)を算出し、その平均値を求めた。
また、各正極活物質において求めた換算ピーク強度比(Ip/Ix)の平均値を求めた。
工程(I):
硫酸ニッケル(II)・六水和物、硫酸コバルト(II)・七水和物、および硫酸マンガン(II)・五水和物を、Ni、CoおよびMnのモル比が表1に示すとおりになるように、かつ硫酸塩の合計量が1.5mol/kgとなるように蒸留水に溶解させて、硫酸塩水溶液を2kg調製した。また、硫酸アンモニウム99.1gを蒸留水900.9gに溶解させ、0.75mol/kgのアンモニア水溶液を調製した。また、炭酸ナトリウム381.2gを蒸留水2018.8gに溶解させ、炭酸塩水溶液(pH調整液)を調製した。
次いで、2Lのバッフル付きガラス製反応槽に蒸留水を入れ、マントルヒータで50℃に加熱し、パドル型の撹拌翼で撹拌しながら、前記硫酸塩水溶液を5.0g/分、前記アンモニア水溶液を0.5g/分の速度でそれぞれ6時間添加し、Ni、Co、およびMnを含む共沈化合物を析出させた。なお、前記硫酸塩水溶液の添加中は、反応槽内のpHを8.0に保つように炭酸塩水溶液(pH調整液)を添加した。また、析出反応中は、反応槽内の液量が2Lを超えないように、ろ布を用いて連続的に液の抜き出しを行った。
得られた共沈化合物から不純物イオンを取り除くために、加圧ろ過と蒸留水への分散を繰り返し、共沈化合物の洗浄を行った。ろ液の電気伝導度が20mS/mとなった時点で洗浄を終了し、120℃で15時間乾燥させて共沈化合物を得た。得られた共沈化合物の比表面積と、Ni、CoおよびMnの組成分析結果を表1に示す。
得られた共沈化合物18gに、該共沈化合物に含まれる遷移金属元素(X)の合計量(100mol%)に対する、リン酸塩に含まれるPの合計量の割合が1mol%になるように、リン酸二水素アンモニウム0.17gを3.6gの蒸留水に溶解させた水溶液をスプレーコートした。その後、90℃で3時間乾燥して前駆体化合物を得た。
前記前駆体化合物に含まれる遷移金属元素(X)の合計量に対する、炭酸リチウムに含まれるLiの合計量のモル比(Li/X)が1.275になるように、前記前駆体化合物と炭酸リチウム7.15gとを混合した。さらに、電気炉(FO510、ヤマト科学社製)を用いて、大気を内容積1Lあたり133mL/分でフローしながら、600℃で5時間仮焼成し、ついで850℃で16時間本焼成して正極活物質を得た。
得られた正極活物質の粒子径(D50)と比表面積を表1に示す。
工程(I)において硫酸ニッケル(II)・六水和物、硫酸コバルト(II)・七水和物、および硫酸マンガン(II)・五水和物の仕込み量を、Ni、CoおよびMnのモル比が表1に示すとおりとなるように変更した以外は、例1と同様にして共沈化合物を得た。また、共沈化合物に含まれる遷移金属元素(X)の合計量(100mol%)に対する、リン酸塩に含まれるPの合計量の割合を表1に示すとおりに変更した以外は、例1と同様にして前駆体化合物を得た。また、前駆体化合物に含まれる遷移金属元素(X)の合計量に対する、炭酸リチウムに含まれるLiの合計量のモル比を表1に示すとおりに変更した以外は、例1と同様にして正極活物質を得た。
得られた正極活物質の粒子径(D50)と比表面積を表1に示す。また、例2、3、5における、換算ピーク強度比(Ip/Ix)の平均値と、換算ピーク強度比(Ip/Ix)の変動係数(CV値)の平均値を表1に示す。
工程(I)において硫酸ニッケル(II)・六水和物、硫酸コバルト(II)・七水和物、および硫酸マンガン(II)・五水和物の仕込み量を、Ni、CoおよびMnのモル比が表1に示すとおりとなるように変更した以外は、例1と同様にして共沈化合物を得た。また、共沈化合物に含まれる遷移金属元素(X)の合計量(100mol%)に対する、リン酸塩に含まれるPの合計量の割合を表1に示すとおりに変更し、工程(III)の乾燥を行わなかった以外は、例1と同様にして前駆体化合物を得た。また、前駆体化合物に含まれる遷移金属元素(X)の合計量に対する、炭酸リチウムに含まれるLiの合計量のモル比を表1に示すとおりに変更した以外は、例1と同様にして正極活物質を得た。
得られた正極活物質の粒子径(D50)と比表面積を表1に示す。
工程(I)において硫酸ニッケル(II)・六水和物、硫酸コバルト(II)・七水和物、および硫酸マンガン(II)・五水和物の仕込み量を、Ni、CoおよびMnのモル比が表1に示すとおりとなるように変更した以外は、例1と同様にして共沈化合物を得た。次いで、工程(II)および工程(III)を実施せず、共沈化合物に含まれる遷移金属元素(X)の合計量に対する、炭酸リチウムに含まれるLiの合計量のモル比を表1に示すとおりにした以外は、例1と同様に炭酸リチウムの混合および焼成を行って正極活物質を得た。
得られた正極活物質の粒子径(D50)と比表面積を表1に示す。また、例15の換算ピーク強度比(Ip/Ix)の平均値を表1に示す。
工程(I)において硫酸ニッケル(II)・六水和物、硫酸コバルト(II)・七水和物、および硫酸マンガン(II)・五水和物の仕込み量を、Ni、CoおよびMnのモル比が表1に示すとおりとなるように変更した以外は、例1と同様にして共沈化合物を得た。次いで、工程(II)および工程(III)を実施せず、共沈化合物に含まれる遷移金属元素(X)の合計量に対する、炭酸リチウムに含まれるLiの合計量のモル比を表1に示すとおりにした以外は、例1と同様に炭酸リチウムの混合および焼成を行って正極活物質を得た。
さらに、得られた正極活物質18gに、該正極活物質に含まれる遷移金属元素(X)の合計量(100mol%)に対する、リン酸塩に含まれるPの合計量の割合が1.15mol%になるように、リン酸二水素アンモニウムを3.6gの蒸留水に溶解させた水溶液をスプレーコートした。その後、90℃で2時間乾燥してから電気炉(FO510、ヤマト科学社製)を用いて、大気を1.5L/分でフローしながら、450℃で8時間焼成することでPが粒子表面にコートされた正極活物質を得た。
得られたPが粒子表面にコートされた正極活物質の粒子径(D50)と比表面積を表1に示す。また、換算ピーク強度比(Ip/Ix)の平均値と、換算ピーク強度比(Ip/Ix)の変動係数(CV値)の平均値を表1に示す。
(正極体シートの製造)
各例で得られた正極活物質と、導電材であるアセチレンブラックと、ポリフッ化ビニリデン(バインダー)とを、それぞれ、質量比で80:10:10でN−メチルピロリドンに加え、スラリーを調製した。
次いで、該スラリーを、厚さ20μmのアルミニウム箔(正極集電体)の片面上にドクターブレードにより塗工し、120℃で乾燥した後、ロールプレス圧延を2回行い、正極体シートを作製した。
得られた正極体シートを直径18mmの円形に打ち抜いたものを正極とし、ステンレス鋼製簡易密閉セル型のリチウムイオン二次電池をアルゴン下のグローブボックス内で組み立てた。なお、負極集電体として厚さ1mmのステンレス鋼板を使用し、該負極集電体上に厚さ500μmの金属リチウム箔を形成して負極とした。セパレータには厚さ25μmの多孔質ポリプロピレンを用いた。また、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の質量比1:1の混合溶媒に、濃度が1mol/dm3となるようにLiPF6を溶解させた液を電解液として使用した。
得られたリチウムイオン二次電池を、充放電評価装置(東洋システム社製、装置名:TOSCAT−3000)に接続し、正極活物質1gにつき20mAの負荷電流で充放電を行い、活性化処理をした。その後、正極活物質1gにつき200mAの負荷電流で4.5Vまで充電し、正極活物質1gにつき200mAの負荷電流にて2Vまで放電する充放電サイクルを100回繰り返した。
各例における初期放電容量および放電電圧、サイクル後放電容量および放電電圧、ならびに放電容量維持率および放電電圧維持率の測定結果を表2に示す。
なお、2012年10月29日に出願された日本特許出願2012−238274号の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
Claims (14)
- 下記の工程(I)〜(IV)を有することを特徴とする正極活物質の製造方法。
(I)Niの硫酸塩、Coの硫酸塩およびMnの硫酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の硫酸塩(A)と、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の炭酸塩(B)とを、水溶液の状態で混合して、Ni、CoおよびMnからなる群から選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素(X)を含む共沈化合物を得る工程。
(II)前記共沈化合物とリン酸塩水溶液とを混合せしめる工程。
(III)前記共沈化合物とリン酸塩水溶液との混合物から水分を揮発させ前駆体化合物を得る工程。
(IV)前記前駆体化合物と炭酸リチウムとを混合し、500〜1000℃で焼成する工程。 - 前記工程(I)において、硫酸塩(A)の水溶液中における遷移金属元素(X)の濃度が、0.1〜3mol/kgであり、かつ、炭酸塩(B)の水溶液中における炭酸塩(B)の濃度は、0.1〜2mol/kgである、請求項1に記載の正極活物質の製造方法。
- 前記工程(I)において、硫酸塩(A)の水溶液と炭酸塩(B)の水溶液とを混合する際の混合液のpHが7〜12である、請求項1または2に記載の正極活物質の製造方法。
- 前記工程(I)における共沈化合物が、NiおよびMnを含む炭酸塩であるか、又はNi、CoおよびMnを含む炭酸塩である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の正極活物質の製造方法。
- 前記工程(II)において、共沈化合物とリン酸塩水溶液との混合をスプレーコート法で行う、請求項1〜4のいずれか一項に記載の正極活物質の製造方法。
- 前記工程(II)および工程(III)におけるリン酸塩水溶液が、リン酸、リン酸二水素アンモニウムおよびリン酸水素二アンモニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の水溶液である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の正極活物質の製造方法。
- 前記工程(II)において、共沈化合物に含まれる前記遷移金属元素(X)の合計モル数に対してリン酸塩に含まれるPの合計モル数の割合(P/X)が、0.01〜10%である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の正極活物質の製造方法。
- 前記工程(IV)において、前駆体化合物に含まれる前記遷移金属元素(X)の合計モル数に対して炭酸リチウムに含まれるLiの合計モル数の比(Li/X)が、1.1倍以上である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の正極活物質の製造方法。
- Liと、Ni、CoおよびMnからなる群から選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素(X)と、Pと、を含む正極活物質であって、
下記変動係数測定方法で求められるPと前記遷移金属元素(X)の換算ピーク強度比(Ip/Ix)の変動係数(CV値)の平均値が0〜20%であることを特徴とし、遷移金属元素(X)のモル数に対するLiのモル数の比(Li/X)は、1.1倍以上であり、遷移金属元素(X)のモル数に対するPのモル数の比(P/X)は、0.01〜10%である正極活物質。
(変動係数測定方法)
3個の正極活物質について、電子線マイクロアナライザにより、各正極活物質の断面を直径方向に2μm間隔、スポット径2μmで走査して、Pの換算ピーク強度(Ip)と前記遷移金属元素(X)の換算ピーク強度(Ix)とを測定する。次いで、各測定スポットのPと前記遷移金属元素(X)の換算ピーク強度比(Ip/Ix)を求め、各正極活物質の前記換算ピーク強度比(Ip/Ix)の変動係数(CV値)を算出し、平均値を求める。 - Liと、Ni、CoおよびMnからなる群から選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素(X)と、Pと、を含む正極活物質であって、
下記変動係数測定方法で求められるPと前記遷移金属元素(X)の換算ピーク強度比(Ip/Ix)の変動係数(CV値)の平均値が0〜20%であることを特徴とし、下式(1)で表される化合物(1)である、正極活物質。
Li1+aPbNicCodMneO2+f ・・・(1)
(ただし、0.1≦a≦0.6、0.001≦b≦0.1、0.1≦c≦0.5、0≦d≦0.3、0.2≦e≦0.9、0.9≦c+d+e≦1.05、fはLi、P、Ni、CoおよびMnの価数によって決定される数値。)
(変動係数測定方法)
3個の正極活物質について、電子線マイクロアナライザにより、各正極活物質の断面を直径方向に2μm間隔、スポット径2μmで走査して、Pの換算ピーク強度(Ip)と前記遷移金属元素(X)の換算ピーク強度(Ix)とを測定する。次いで、各測定スポットのPと前記遷移金属元素(X)の換算ピーク強度比(Ip/Ix)を求め、各正極活物質の前記換算ピーク強度比(Ip/Ix)の変動係数(CV値)を算出し、平均値を求める。 - Liと、Ni、CoおよびMnからなる群から選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素(X)と、Pと、を含む正極活物質であって、
下記変動係数測定方法で求められるPと前記遷移金属元素(X)の換算ピーク強度比(Ip/Ix)の変動係数(CV値)の平均値が0〜20%であることを特徴とし、遷移金属元素(X)のモル数に対するLiのモル数の比(Li/X)は、1.1倍以上であり、遷移金属元素(X)のモル数に対するPのモル数の比(P/X)は、0.01〜10mol%であり、下式(1)で表される化合物(1)である、正極活物質。
Li1+aPbNicCodMneO2+f ・・・(1)
(ただし、0.1≦a≦0.6、0.001≦b≦0.1、0.1≦c≦0.5、0≦d≦0.3、0.2≦e≦0.9、0.9≦c+d+e≦1.05、fはLi、P、Ni、CoおよびMnの価数によって決定される数値。)
(変動係数測定方法)
3個の正極活物質について、電子線マイクロアナライザにより、各正極活物質の断面を直径方向に2μm間隔、スポット径2μmで走査して、Pの換算ピーク強度(Ip)と前記遷移金属元素(X)の換算ピーク強度(Ix)とを測定する。次いで、各測定スポットのPと前記遷移金属元素(X)の換算ピーク強度比(Ip/Ix)を求め、各正極活物質の前記換算ピーク強度比(Ip/Ix)の変動係数(CV値)を算出し、平均値を求める。 - 前記変動係数測定方法で求められる各正極活物質の換算ピーク強度比(Ip/Ix)の平均値が0.001〜0.1である、請求項9〜11のいずれか1項に記載の正極活物質。
- 正極集電体と、該正極集電体上に設けられた正極活物質層と、を有し、前記正極活物質層が、請求項9〜12のいずれか一項に記載の正極活物質と、導電材と、バインダーと、を含有する、リチウムイオン二次電池用正極。
- 請求項13に記載のリチウムイオン二次電池用正極と、負極と、非水電解質と、を有するリチウムイオン二次電池。
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