JP2014089848A - 正極活物質およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】Liリッチ系複合酸化物からなる正極活物質の場合でも遊離アルカリ量が少なく、簡便かつ安価に製造できる正極活物質を得る。
【解決手段】Niの硫酸塩、Coの硫酸塩およびMnの硫酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む硫酸塩(A)と、炭酸カリウムとを、水溶液の状態で混合して、Ni、CoおよびMnからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む遷移金属元素(X)とを含む炭酸塩からなる共沈化合物を得る工程と、前記共沈化合物と炭酸リチウムとを混合し、500〜1000℃で焼成する工程と、を有する正極活物質の製造方法。Liと、Ni、CoおよびMnからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む遷移金属元素(X)と、を含み、比表面積が2〜15m/gであり、遊離アルカリ量が正極活物質に含まれるリチウム1molに対して、2mol%以下である、正極活物質。
【選択図】なし

Description

本発明は、正極活物質およびその製造方法、リチウムイオン二次電池用正極、ならびにリチウムイオン二次電池に関する。
携帯電話、ノート型パソコン等の携帯型電子機器等には、リチウムイオン二次電池が広く使用されている。リチウムイオン二次電池の正極活物質としては、Liと遷移金属元素を含む複合酸化物からなる正極活物質(LiCoO、LiNiO、LiNi0.8Co0.2、LiMn等。)が知られている。例えば、正極活物質としてLiCoOを用い、負極としてリチウム合金、グラファイト、カーボンファイバー等を用いたリチウムイオン二次電池は、約4Vの高い電圧が得られるため、高エネルギー密度を有する電池として広く使用されている。
携帯型電子機器用、車載用等のリチウムイオン二次電池には、小型化、軽量化が求められている。そのため、リチウムイオン二次電池は、単位質量あたりの放電容量(以下、単に「放電容量」という。)、および、充放電サイクルを繰り返した後に放電容量および平均放電電圧を低下させ難い特性(以下、「サイクル特性」ともいう。)のさらなる向上が求められている。
放電容量の高い正極活物質としては、下記の正極活物質(i)のような遷移金属元素に対するLi比が高い複合酸化物(以下、「Liリッチ系正極活物質」ともいう。)からなる正極活物質が注目されている。
(i)α−NaFeO型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物の固溶体を含み、前記固溶体が含有するLiおよび遷移金属元素の組成比が、組成式Li1+1/3xCo1−x−yNiy/2Mn2x/3+y/2(x+y≦1、0≦y、かつ、1/3<x≦2/3)を満たす正極活物質(特許文献1)。
しかし、正極活物質(i)のようなLiリッチ系正極活物質は、水酸化リチウム、炭酸リチウム等の遊離アルカリの量が多い問題がある。正極活物質の遊離アルカリ量が多いと、正極活物質層に正極活物質とともに含まれるバインダが遊離アルカリによって劣化し、サイクル特性が低下する。そこで、正極活物質の遊離アルカリ量を低減する方法として、以下の方法(ii)および(iii)が提案されている。
(ii)酸素濃度50%以下の酸素欠乏雰囲気下で、リチウム混合遷移金属酸化物を調製し、焼成して正極活物質を得る方法(特許文献2)。
(iii)焼成原料混合物を焼成してリチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物を得た後、得られた複合酸化物を、硫酸塩の水溶液で洗浄するか、または水洗後に硫酸塩の水溶液と接触させ、次いで焼成することにより、正極活物質の表層に硫酸根を存在させる方法(特許文献3)。
特開2009−152114号公報 国際公開第2007/129860号 国際公開第2011/071068号
しかし、方法(ii)は、コストが高騰する。また、方法(iii)は、正極活物質の製造工程が増えるため、製造が煩雑になる。
本発明は、遊離アルカリ量の少ない正極活物質、および該正極活物質を簡便かつ安価に製造できる正極活物質の製造方法を提供する。また、本発明は、遊離アルカリ量が少ない正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池用正極およびリチウムイオン二次電池を提供する。
本発明の製造方法は、下記の工程(I)および工程(II)を有することを特徴とする正極活物質の製造方法である。
(I)Niの硫酸塩、Coの硫酸塩およびMnの硫酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む硫酸塩(A)と、
炭酸カリウムとを、
水溶液の状態で混合して、Ni、CoおよびMnからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む遷移金属元素(X)を含む共沈化合物を得る工程。
(II)前記共沈化合物と炭酸リチウムとを混合し、500〜1000℃で焼成する工程。
前記工程(I)においては、硫酸塩(A)と、炭酸カリウムとを混合する際の混合液のpHが7〜12であることが好ましい。
前記工程(I)においては、前記工程(I)で得られた共沈化合物を洗浄する工程を有することが好ましい。
前記工程(II)においては、前記炭酸リチウムに含まれるLiのモル比(Li/X)が、前記共沈化合物に含まれる遷移金属元素(X)の合計量に対して、1.1倍mol以上であることが好ましい。
本発明の正極活物質は、Liと、Ni、CoおよびMnからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む遷移金属元素(X)と、を含み、比表面積が2〜15m/gであり、遊離アルカリ量が正極活物質に含まれるリチウム1molに対して、2mol%以下である。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極は、正極集電体と、該正極集電体上に設けられた正極活物質層と、を有し、前記正極活物質層が、本発明の正極活物質と、導電材と、バインダと、を含有する。
本発明のリチウムイオン二次電池は、本発明のリチウムイオン二次電池用正極と、負極と、非水電解質と、を有する。
本発明の製造方法によれば、遊離アルカリ量の少ない正極活物質が簡便かつ安価に得られる。
本発明の正極活物質は、遊離アルカリ量が少なく、簡便かつ安価に製造できる。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極およびリチウムイオン二次電池は、正極活物質からの遊離アルカリ量が少ない。
本明細書において、Liはリチウム元素を示す。また、Ni、Co、Mn、Al等も同様に各元素を示す。
<正極活物質>
本発明の正極活物質は、Liと、Ni、CoおよびMnからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む遷移金属元素(X)と、を含む複合酸化物からなる正極活物質である。
遷移金属元素(X)は、Ni、CoおよびMnに加えて、さらに、Ni、Co、Mn以外の他の元素(M’)を含んでいてもよい。他の元素(M’)としては、Mg、Ca、Sr、BaおよびAlからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
本発明における正極活物質は粒子状である。正極活物質の粒子形状は、特に限定されず、例えば、球状、針状、板状等が挙げられる。なかでも、正極の製造時に正極活物質の充填性が高くなることから、正極活物質の粒子形状は球状がより好ましい。
本発明の正極活物質の比表面積は、2〜15m/gである。比表面積が下限値以上であれば、高い放電容量が得られる。前記比表面積が上限値以下であれば、優れたサイクル特性が得られる。
本発明の正極活物質の比表面積は、2〜15m/gが好ましく、3〜8m/gが特に好ましい。
前記比表面積は、実施例に記載の方法で測定される。
本発明の正極活物質の遊離アルカリ量は、正極活物質に含まれるリチウム1molに対して、2mol%以下である。これにより、正極活物質、バインダ、導電材等を含む正極スラリを作製する際に、遊離アルカリによってバインダが劣化し難く、優れたサイクル特性を示すリチウムイオン二次電池が得られる。本発明の正極活物質の遊離アルカリ量は、1.5mol%以下が好ましく、1.2mol%以下が特に好ましい。遊離アルカリ量が前記範囲内であれば、正極スラリを作製する際に、バインダがゲル化することがなく、塗工性の良い正極スラリを得ることができる。
なお、本発明における遊離アルカリ量は、正極活物質を水中に分散させた際に、正極活物質に含まれるリチウム1molあたりから、水中に溶出するアルカリ量を百分率で表した値(mol%)である。遊離アルカリ量は、実施例に示す方法で測定される。
遊離アルカリとしては、具体的には、正極活物質に残存する、水酸化リチウム、炭酸リチウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等の化合物を含む。
本発明の正極活物質の粒子径(D50)は、4〜20μmが好ましく、5〜18μmがより好ましく、6〜15μmが特に好ましい。前記粒子径(D50)が前記範囲内であれば、高い放電容量が得られる。
なお、粒子径(D50)は、体積基準で求めた粒度分布の、全体積を100%とした累積体積分布曲線において50%となる点の粒子径、すなわち体積基準累積50%径を意味する。粒子径(D50)は、実施例に記載の方法で測定される。
本発明の正極活物質は、粒子径(D50)10〜500nmの一次粒子が凝集した二次粒子であることが好ましい。これにより、リチウムイオン二次電池を製造したときに、電解液が正極における正極活物質間に充分に行き渡りやすくなる。
本発明の正極活物質における遷移金属元素(X)の合計量に対するLiのモル比(Li/X)は、1.1mol倍以上が好ましく、1.1mol倍以上1.6mol倍以下がより好ましく、1.1mol倍以上1.4mol倍以下が特に好ましい。前記モル比(Li/X)が1.1mol倍以上であれば、高い放電容量が得られる。前記モル比(Li/X)が上限値以下であれば、高い放電容量が得られる。
本発明の正極活物質としては、具体的に下記式(1)で表される化合物(1)が好ましい。
Li1+aNiCoMnM’2+f ・・・(1)
ただし、前記式(1)中、M’は、Mg、Ca、Sr、BaおよびAlからなる群から選ばれる少なくとも1種である。a〜eは、それぞれ0.1≦a≦0.6、0.01≦b≦0.5、0≦c≦0.3、0.2≦d≦0.9、0.9≦b+c+d≦1.05、0≦e≦0.05であり、fはLi、Ni、Co、MnおよびM’の価数によって決定される数値である。
化合物(1)のaは、初期放電容量および初期放電電圧が高い正極活物質となることから、0.1≦a≦0.4がより好ましい。
化合物(1)のbは、aと同様の理由で、0.15≦b≦0.45がより好ましく、0.2≦b≦0.45が特に好ましい。
化合物(1)のcは、aと同様の理由で、0≦c≦0.2がより好ましく、0≦c≦0.15が特に好ましい。
化合物(1)のdは、aと同様の理由で、0.35≦d≦0.85がより好ましく、0.4≦d≦0.8が特に好ましい。
化合物(1)のeは、初期放電容量とサイクル特性に優れるから、0.001≦e≦0.05がより好ましく、0.001≦e≦0.02が特に好ましい。
<正極活物質の製造方法>
本発明の製造方法は、下記の工程(I)および工程(II)を有する正極活物質の製造方法である。
[工程(I)]
工程(I)では、硫酸塩(A)と、炭酸カリウムとを、水溶液の状態で混合する。必要に応じてさらに添加剤を用いてもよい。これにより、Ni、CoおよびMnからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む遷移金属元素(X)を含む共沈化合物が析出する。
本発明者等が正極活物質の遊離アルカリ量を低減することについて検討したところ、正極活物質の遊離アルカリ量には、工程(I)において使用する炭酸塩の種類が大きく影響していることが判明した。具体的には、遷移金属元素(X)を共沈させる際に炭酸カリウムを使用すれば、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を使用した場合に比べて、得られた正極活物質の遊離アルカリ量が低減される。
硫酸塩(A)と炭酸カリウムとを、水溶液の状態で混合する態様は、硫酸塩(A)と炭酸カリウムとの混合の際にそれらが水溶液の状態であれば特に限定されない。
具体的には、共沈化合物が析出しやすく、かつ粒子径を制御しやすいことから、反応槽に硫酸塩(A)の水溶液と、炭酸カリウムの水溶液とを連続的に添加することが好ましい。反応槽には、予めイオン交換水、純水、蒸留水等を入れておくことが好ましく、さらに炭酸カリウムや後述する添加剤等を用いてpHを制御しておくことがより好ましい。
硫酸塩(A)を2種以上使用する場合、硫酸塩(A)の水溶液としては、2種以上の硫酸塩(A)のそれぞれを別々に含む2種以上の水溶液としてもよく、2種以上の硫酸塩(A)を含む1種の水溶液としてもよい。また、1種の硫酸塩(A)を含む水溶液と、2種以上の硫酸塩(A)を含む1種の水溶液とを併用してもよい。
硫酸塩(A)と炭酸カリウムとを混合する際の混合液のpHは、7〜12が好ましく、7.5〜10がより好ましい。前記pHが前記範囲内であれば、共沈化合物が析出しやすく、水酸化物等の副生成物が析出しにくい。
硫酸塩(A)は、Niの硫酸塩、Coの硫酸塩およびMnの硫酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の硫酸塩である。
Niの硫酸塩としては、硫酸ニッケル(II)六水和物、硫酸ニッケル(II)・七水和物、硫酸ニッケル(II)アンモニウム・六水和物等が挙げられる。
Coの硫酸塩としては、硫酸コバルト(II)七水和物、硫酸コバルト(II)アンモニウム・六水和物等が挙げられる。
Mnの硫酸塩としては、硫酸マンガン(II)五水和物、硫酸マンガン(II)アンモニウム・六水和物等が挙げられる。
硫酸塩(A)は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
硫酸塩(A)としては、放電容量が高いリチウムイオン二次電池が得られやすい点から、Niの硫酸塩およびMnの硫酸塩を併用することが好ましく、Niの硫酸塩、Coの硫酸塩およびMnの硫酸塩の全てを併用することがより好ましい。すなわち、遷移金属元素(X)としてNiおよびMnを含む共沈化合物を析出させることが好ましく、遷移金属元素(X)としてNi、CoおよびMnの全てを含む共沈化合物を析出させることがより好ましい。
硫酸塩(A)は、Niの硫酸塩、Coの硫酸塩およびMnの硫酸塩に加えて、さらにNi、CoおよびMn以外の他の元素(M’)の硫酸塩を含んでいてもよい。他の元素(M’)の硫酸塩としては、Mgの硫酸塩、Caの硫酸塩、Srの硫酸塩、Baの硫酸塩およびAlの硫酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
Niの硫酸塩に含まれるNiの量は、硫酸塩(A)に含まれる遷移金属元素(X)の合計量(100mol%)に対して、10〜50mol%が好ましく、15〜45mol%がより好ましく、20〜45mol%が特に好ましい。前記Niの量の割合が下限値以上であれば、高い放電電圧を示す正極活物質が得られる。前記Niの量の割合が上限値以下であれば、高い放電容量を示す正極活物質が得られる。
Coの硫酸塩に含まれるCoの量は、硫酸塩(A)に含まれる遷移金属元素(X)の合計量(100mol%)に対して、0〜30mol%が好ましく、0〜20mol%がより好ましく、0〜15mol%が特に好ましい。前記Coの量の割合が上限値以下であれば、優れたサイクル特性を示す正極活物質が得られる。
Mnの硫酸塩に含まれるMnの量は、硫酸塩(A)に含まれる遷移金属元素(X)の合計量(100mol%)に対して、20〜90mol%が好ましく、35〜85mol%がより好ましく、40〜80mol%が特に好ましい。前記Mnの量の割合が下限値以上であれば、高い放電容量を示す正極活物質が得られる。前記Mnの量の割合が上限値以下であれば、高い放電電圧を示す正極活物質が得られる。
他の元素(M’)の硫酸塩に含まれる他の元素(M’)の量は、硫酸塩(A)に含まれる遷移金属元素(X)の合計量(100mol%)に対して、0〜5mol%が好ましく、0.1〜5mol%がより好ましく、0.1〜2mol%が特に好ましい。前記他の元素(M’)の割合が前記範囲内であれば、初期放電容量とサイクル特性に優れる正極活物質が得られる。
硫酸塩(A)の水溶液中における遷移金属元素(X)の濃度は、0.1〜3mol/kgが好ましく、0.5〜2.5mol/kgがより好ましい。前記濃度が下限値以上であれば、生産性が高い。前記濃度が上限値以下であれば、硫酸塩(A)を充分に溶解させられる。
硫酸塩(A)を含む水溶液を2種以上使用する場合は、それぞれの水溶液について遷移金属元素(X)の濃度を前記範囲内とすることが好ましい。
炭酸カリウムは、Ni、Co、Mnを共沈させるためのpH調整剤としての役割も果たす。
炭酸カリウムの水溶液中における炭酸カリウムの濃度は、0.1〜2mol/kgが好ましく、0.5〜2mol/kgがより好ましい。前記炭酸カリウムの濃度が前記範囲内であれば、共沈化合物が析出しやすい。
硫酸塩(A)および炭酸カリウムの水溶液に使用する溶媒としては、硫酸塩(A)および炭酸カリウムが溶解する範囲であれば、水のみであってもよく、水に加えて水以外の成分を含む水性媒体であってもよい。
前記水以外の成分としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ポリオール等が挙げられる。ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ブタンジオール、グリセリン等が挙げられる。
水性媒体中の水以外の成分の割合は、0〜20質量%が好ましく、0〜10質量%がより好ましく、0〜1質量%が特に好ましく、含まないことが最も好ましい。前記水以外の成分の割合が上限値以下であれば、環境面、取扱い性、コストの点で優れている。
硫酸塩(A)と炭酸カリウムとを、水溶液の状態で混合する際は、反応槽中で撹拌しながら混合することが好ましい。
撹拌装置としては、例えば、スリーワンモータ等が挙げられる。撹拌翼としては、例えば、アンカー型、プロペラ型、パドル型等の撹拌翼が挙げられる。
硫酸塩(A)と炭酸カリウムとを、水溶液の状態で混合する際の混合液の温度は、共沈化合物が析出しやすいことから、20〜80℃が好ましく、25〜60℃がより好ましい。
また、硫酸塩(A)と炭酸カリウムとを、水溶液の状態で混合する際は、析出した共沈化合物の酸化を抑制する点から、窒素雰囲気下またはアルゴン雰囲気下で混合を行うことが好ましく、コストの面から、窒素雰囲気下で混合を行うことが特に好ましい。
添加剤としては、例えば、pHや遷移金属元素(X)の溶解度を調整するために、アンモニア、またはアンモニウム塩を用いてもよい。アンモニウム塩としては、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム等が挙げられる。
アンモニアまたはアンモニウム塩は、硫酸塩(A)の供給と同時に混合液に供給することが好ましい。
得られた共沈化合物中のNi、Co、Mnおよび他の元素(M’)のそれぞれの割合の好ましい範囲は、前述の使用する全ての硫酸塩(A)中のNi、Co、Mnおよび他の元素(M’)のそれぞれの割合の好ましい範囲と同じである。これにより、適度な粒子径および球形の共沈化合物が得られやすい。
共沈化合物の粒子径(D50)は、4〜20μmが好ましく、5〜18μmがより好ましく、6〜15μmが特に好ましい。共沈化合物の粒子径が前記範囲内であれば、充分な電池特性を示す正極活物質が得られやすい。
共沈化合物の粒子径(D50)は、後述する正極活物質の粒子径(D50)と同様にして測定される。
共沈化合物の比表面積は、50〜300m/gが好ましく、100〜250m/gがより好ましい。共沈化合物の比表面積が前記範囲内であれば、後述する正極活物質の比表面積を好ましい範囲に制御しやすく、高い放電容量を示す正極活物質が得られやすい。
共沈化合物の比表面積は、正極活物質の比表面積と同様にして測定される。
工程(I)では、共沈化合物が析出した後に、濾過、または遠心分離によって水溶液を取り除く工程を有することが好ましい。濾過または遠心分離としては、加圧濾過機、減圧濾過機、遠心分級機、フィルタープレス、スクリュープレス、回転型脱水機等を用いることができる。
工程(I)では、得られた共沈化合物は、遊離アルカリ等の不純物イオンを取り除くために、洗浄する工程を有することが好ましい。共沈化合物の洗浄方法としては、例えば、加圧濾過と蒸留水への分散を繰り返す方法等が挙げられる。洗浄を行う場合、共沈化合物を蒸留水へ分散させたときの上澄み液の電気伝導度が50mS/m以下になるまで繰り返すことが好ましく、20mS/m以下になるまで繰り返すことがより好ましい。
得られた共沈化合物は乾燥する。洗浄を行う場合は、洗浄を行った後に共沈化合物を乾燥する。
共沈化合物の乾燥温度は、60〜200℃が好ましく、80〜130℃がより好ましい。前記乾燥温度が下限値以上であれば、共沈化合物を短時間で乾燥できる。前記乾燥温度が上限値以下であれば、共沈化合物が酸化することを抑制できる。
共沈化合物の乾燥時間は、1〜300時間が好ましく、5〜120時間がより好ましい。
[工程(II)]
工程(I)で得られた共沈化合物と、炭酸リチウムとを混合し、500〜1000℃で焼成する。
共沈化合物と炭酸リチウムとを混合する方法は、例えば、ロッキングミキサ、ナウタミキサ、スパイラルミキサ、カッターミル、Vミキサ等を使用する方法等が挙げられる。
工程(II)においては、共沈化合物に含まれる遷移金属元素(X)の合計量に対して炭酸リチウムに含まれるLiのモル比(Li/X)は、1.1倍mol以上であることが好ましい。前記モル比(Li/X)が下限値以上であれば、高い放電容量が得られる。
共沈化合物に含まれる遷移金属元素(X)の合計量に対する、炭酸リチウムに含まれるLiのモル比(Li/X)は、1.1倍mol以上1.6倍mol以下がより好ましく、1.1倍mol以上1.4倍mol以下が特に好ましい。前記モル比(Li/X)が上限値以下であれば、高い放電容量が得られる。
焼成装置には、電気炉、連続焼成炉、ロータリーキルン等を使用できる。焼成時に共沈化合物は酸化されることから、焼成は大気下で行うことが好ましく、空気を供給しながら行うことが特に好ましい。
空気の供給速度は、炉の内容積1Lあたり10〜200mL/分が好ましく、40〜150mL/分がより好ましい。
焼成時に空気を供給することで、共沈化合物中の遷移金属元素(X)が充分に酸化され、結晶性が高く、かつ目的とする結晶相を有する正極活物質が得られる。
焼成温度は、500〜1000℃であり、600〜1000℃が好ましく、800〜950℃が特に好ましい。焼成温度が、前記範囲内であれば、結晶性の高い正極活物質が得られる。
焼成時間は、4〜40時間が好ましく、4〜20時間がより好ましい。
焼成は、500〜1000℃での1段焼成でもよく、400〜700℃の仮焼成を行った後に、700〜1000℃で本焼成を行う2段焼成でもよい。なかでも、Liが正極活物質中に均一に拡散しやすいことから2段焼成が好ましい。
2段焼成の場合の仮焼成の温度は、400〜700℃が好ましく、500〜650℃がより好ましい。また、2段焼成の場合の本焼成の温度は、700〜1000℃が好ましく、800〜950℃がより好ましい。
本発明の製造方法によれば、工程(I)で炭酸カリウムを使用して共沈化合物を得ることで、遊離アルカリ量の少ない正極活物質を製造できる。また、本発明の製造方法によれば、得られた正極活物質に残存する不純物量も少なくなる。
本発明の製造方法によって、正極活物質の遊離アルカリ量が低減できる要因は明らかではないが、工程(1)において、炭酸カリウムを用いることで、カリウムイオンのイオン半径が特許文献1で用いられている水酸化ナトリウムなどのナトリウムイオンよりも大きいことから、共沈化合物中に取り込まれにくく、正極活物質に残存しにくいことが考えられる。
<リチウムイオン二次電池用正極>
本発明のリチウムイオン二次電池用正極は、正極集電体と、該正極集電体上に設けられた正極活物質層と、を有する。本発明のリチウムイオン二次電池用正極は、本発明の正極活物質を用いる以外は、公知の態様を採用できる。
[正極集電体]
正極集電体としては、例えば、アルミニウム箔、ステンレス鋼箔等が挙げられる。
[正極活物質層]
本発明のリチウムイオン二次電池用正極における正極活物質層は、前記した本発明の正極活物質と、導電材と、バインダと、を含む層である。
導電材としては、例えば、アセチレンブラック、黒鉛、ケッチェンブラック等のカーボンブラック等が挙げられる。導電材は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
バインダとしては、例えば、フッ素系樹脂(ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等。)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等。)、不飽和結合を有する重合体および共重合体(スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム等。)、アクリル酸系重合体および共重合体(アクリル酸共重合体、メタクリル酸共重合体等。)等が挙げられる。バインダは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の正極活物質は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
正極活物質層には、本発明の正極活物質、導電材およびバインダに加えて、必要に応じて増粘剤等の他の成分が含まれていてもよい。
増粘剤としては、例えば、カルボキシルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、ガゼイン、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。増粘剤は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
[リチウムイオン二次電池用正極の製造方法]
本発明のリチウムイオン二次電池用正極の製造方法は、本発明の正極活物質を用いる以外は、公知の製造方法を採用できる。例えば、本発明のリチウムイオン二次電池用正極の製造方法としては、以下の方法が挙げられる。
本発明の正極活物質、導電材およびバインダを、媒体に溶解もしくは分散させてスラリを得るか、または本発明の正極活物質、導電材およびバインダを、媒体と混練して混錬物を得る。次いで、得られたスラリまたは混錬物を正極集電体上に塗工すること等によって正極活物質層を形成させる。
<リチウムイオン二次電池>
本発明のリチウムイオン二次電池は、前記した本発明のリチウムイオン二次電池用正極と、負極と、非水電解質とを有する。
[負極]
負極は、負極集電体上に、負極活物質を含む負極活物質層が形成されてなる。
負極集電体としては、例えばニッケル箔、銅箔等の金属箔が挙げられる。
負極活物質としては、比較的低い電位でリチウムイオンを吸蔵、放出可能な材料であればよく、例えば、リチウム金属、リチウム合金、リチウム化合物、炭素材料、周期表14、15族の金属を主体とする酸化物、炭素化合物、炭化ケイ素化合物、酸化ケイ素化合物、硫化チタン、炭化ホウ素化合物等が挙げられる。また、負極活物質としては、酸化鉄、酸化ルテニウム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化チタン、酸化スズ等の酸化物およびその他の窒化物等を使用してもよい。
負極活物質の炭素材料としては、例えば、難黒鉛化性炭素、人造黒鉛、天然黒鉛、熱分解炭素類、コークス類(ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークス等。)、グラファイト類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物(フェノール樹脂、フラン樹脂等。)を適当な温度で焼成して炭素化した有機高分子化合物焼成体、炭素繊維、活性炭、カーボンブラック類等が挙げられる。
周期表14族の金属としては、例えば、Si、Sn等が挙げられる。なかでも、周期表14族の金属としては、Siが好ましい。
負極は、例えば、負極活物質を有機溶媒と混合することによってスラリを調製し、調製したスラリを負極集電体に塗布、乾燥、プレスすることによって得られる。
非水電解質としては、例えば、有機溶媒に電解質塩を溶解させた非水電解液、電解質塩を含有させた固体電解質、高分子電解質、高分子化合物等に電解質塩を混合または溶解させた固体状もしくはゲル状電解質等が挙げられる。
有機溶媒としては、非水電解液用の有機溶媒として公知のものを採用でき、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、酢酸エステル、酪酸エステル、プロピオン酸エステル等が挙げられる。なかでも、電圧安定性の点からは、有機溶媒としては、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の鎖状カーボネート類が好ましい。有機溶媒は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
固体電解質としては、リチウムイオン伝導性を有する材料であればよく、無機固体電解質および高分子固体電解質のいずれを使用してもよい。
無機固体電解質としては、例えば、窒化リチウム、ヨウ化リチウム等が挙げられる。
高分子固体電解質としては、電解質塩と該電解質塩を溶解する高分子化合物を含む電解質が挙げられる。電解質塩を溶解する高分子化合物としては、エーテル系高分子化合物(ポリ(エチレンオキサイド)、ポリ(エチレンオキサイド)の架橋体等。)、ポリ(メタクリレート)エステル系高分子化合物、アクリレート系高分子化合物等が挙げられる。
ゲル状電解質のマトリックスとしては、前記非水電解液を吸収してゲル化するものであればよく、種々の高分子化合物を使用できる。前記高分子化合物としては、例えば、フッ素系高分子化合物(ポリ(ビニリデンフルオロライド)、ポリ(ビニリデンフルオロライド−co−ヘキサフルオロプロピレン)等。)、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリルの共重合体、エーテル系高分子化合物(ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイドの共重合体、ならびに該共重合体の架橋体等。)等が挙げられる。前記共重合体としてポリエチレンオキサイドに共重合させるモノマーとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル等が挙げられる。
ゲル状電解質のマトリックスとしては、酸化還元反応に対する安定性の点から、前記高分子化合物のうち、特にフッ素系高分子化合物が好ましい。
電解質塩は、リチウムイオン二次電池に使用されている公知のものが使用でき、例えば、LiClO、LiPF、LiBF、CFSOLi等が挙げられる。
本発明のリチウムイオン二次電池の形状は、特に限定されず、コイン型、シート状(フィルム状)、折り畳み状、巻回型有底円筒型、ボタン型等の形状を、用途に応じて適宜選択できる。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極、および該リチウムイオン二次電池用正極を用いたリチウムイオン二次電池にあっては、正極活物質からの遊離アルカリ量が少なく、リチウムイオン二次電池用正極の正極活物質層に含まれるバインダが劣化し難いため、優れたサイクル特性が得られる。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。例1〜3が実施例、例4、5が比較例である。
[粒子径]
正極活物質を水中に超音波処理によって充分に分散させ、日機装社製レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(装置名;MT−3300EX)により測定を行い、頻度分布および累積体積分布曲線を得ることで体積基準の粒度分布を得た。得られた累積体積分布曲線における50%となる点の粒子径を粒子径(D50)とした。また、得られた累積体積分布曲線において、10%となる点の粒子径(D10)と、90%となる点の粒子径(D90)も算出した。
[比表面積]
正極活物質の比表面積は、マウンテック社製比表面積測定装置(装置名;HM model−1208)によりBET(Brunauer,Emmett,Teller)法を用いて測定した。
[組成分析(Ni、Co、Mn)]
共沈化合物の組成分析は、プラズマ発光分析装置(SIIナノテクノロジー社製、型式名:SPS3100H)により行った。
[遊離アルカリ量の測定]
30mLのスクリュー管瓶に正極活物質1gを秤量し、蒸留水を10g投入した。さらにスターラにて30分間撹拌した後、濾紙を用いて20mLの蒸留水で洗浄し、濾過した。得られた濾液を70gになるまで希釈し、平沼自動適定装置(日立ハイテク社製、形式名:COM−1750)を用いて、0.02mol/Lの塩酸で終点pH4まで中和適定を行った。その後、滴定量から、正極活物質に含まれるLiの1molあたりの水中への遊離アルカリ量(mol%)を計算した。
[充填容量、放電容量、効率、平均放電電圧の測定]
(正極体シートの製造)
各例で得られた正極活物質と、導電材であるアセチレンブラックと、ポリフッ化ビニリデン(バインダ)とを、質量比で80:10:10でN−メチルピロリドンに加え、スラリを調製した。
次いで、該スラリを、厚さ20μmのアルミニウム箔(正極集電体)の片面上にドクターブレードにより塗工し、120℃で乾燥した後、ロールプレス圧延を2回行い、正極体シートを作製した。
(リチウムイオン二次電池の製造)
得られた正極体シートを直径18mmの円形に打ち抜いたものを正極とし、ステンレス鋼製簡易密閉セル型のリチウムイオン二次電池をアルゴングローブボックス内で組み立てた。なお、負極集電体として厚さ1mmのステンレス鋼板を使用し、該負極集電体上に厚さ500μmの金属リチウム箔を形成して負極とした。セパレータには厚さ25μmの多孔質ポリプロピレンを用いた。また、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の質量比1:1の混合溶媒に、濃度が1mol/dmとなるようにLiPFを溶解させた液を電解液として使用した。
(充放電試験)
得られたリチウムイオン二次電池を、充放電評価装置(東洋システム社製、装置名:TOSCAT−3000)に接続し、正極活物質1gあたり0.1Cの負荷電流で4.6Vまで充電し、正極活物質1gあたり0.1Cの負荷電流にて2Vまで放電した。
その時の充電容量、放電容量および平均放電電圧を、それぞれ初期の充電容量、放電容量および平均放電電圧とした。また、初期の充電容量に対する放電容量の割合を充放電効率とした。
なお、1Cは、正極の理論容量を1時間で放電できる電流量を意味する。
[例1]
工程(I):
硫酸ニッケル(II)・六水和物、硫酸コバルト(II)・七水和物および硫酸マンガン(II)・五水和物を、Ni、CoおよびMnのモル比が表1に示すとおりになるように、かつ硫酸塩の合計量が1.5mol/kgとなるように蒸留水に溶解させて、硫酸塩水溶液を2kg調製した。また、炭酸カリウムを蒸留水に溶解させ、炭酸カリウムの濃度が1.5mol%の炭酸塩水溶液(pH調整液)を調製した。
次いで、2Lのバッフル付きガラス製反応槽に蒸留水を入れ、マントルヒータで50℃に加熱し、パドル型の撹拌翼で撹拌しながら、前記硫酸塩水溶液を5.0g/分の速度で6時間添加し、Ni、CoおよびMnを含む共沈化合物を析出させた。なお、前記硫酸塩水溶液の添加中は、反応槽内のpHを8.0に保つように炭酸塩水溶液(pH調整液)を添加して混合した。また、析出反応中は、反応槽内の液量が2Lを超えないように、ろ布を用いて連続的に液の抜き出しを行った。
得られた共沈化合物から遊離アルカリ等の不純物イオンを取り除くために、遠心分離と蒸留水への分散を繰り返し、共沈化合物の洗浄を行った。上澄液の電気伝導度が20mS/mとなった時点で洗浄を終了し、120℃で15時間乾燥させて共沈化合物を得た。得られた共沈化合物におけるNi、CoおよびMnの組成分析結果を表1に示す。
工程(II):
前記共沈化合物に含まれる遷移金属元素(X)の合計量に対する、炭酸リチウムに含まれるLiのモル比(Li/X)が表1に示すようになるように、前記共沈化合物と炭酸リチウムとを混合した。さらに、電気炉(FO510、ヤマト科学社製)を用いて、炉の内容積1Lあたり大気を133mL/分でフローしながら、600℃で5時間仮焼成し、次いで850℃で16時間本焼成して正極活物質を得た。
得られた正極活物質の粒子径(D10、D50、D90)と比表面積を表1に示す。
[例2、3]
工程(II)において、共沈化合物に含まれる遷移金属元素(X)の合計量に対する、炭酸リチウムに含まれるLiのモル比(Li/X)を表1に示すように変更した以外は、例1と同様にして正極活物質を得た。
得られた正極活物質の粒子径(D10、D50、D90)と比表面積を表1に示す。
[例4]
工程(I)において、炭酸カリウムの代わりに炭酸ナトリウムを使用した以外は、例1と同様にして共沈化合物を得た。また、工程(II)において、共沈化合物に含まれる遷移金属元素(X)の合計量に対する、炭酸リチウムに含まれるLiのモル比(Li/X)を表1に示すように変更した以外は、例1と同様にして正極活物質を得た。
得られた正極活物質の粒子径(D10、D50、D90)と比表面積を表1に示す。
[例5]
工程(I)において、硫酸ニッケル(II)・六水和物、硫酸コバルト(II)・七水和物および硫酸マンガン(II)・五水和物の仕込み量を、Ni、CoよびMnの比率が表1に示すようになるように変更し、さらに炭酸カリウムの代わりに水酸化ナトリウムを使用し、pHを11に制御した以外は、例1と同様にして共沈化合物を得た。また、工程(II)において、共沈化合物に含まれる遷移金属元素(X)の合計量に対する、炭酸リチウムに含まれるLiのモル比(Li/X)を表1に示すように変更し、本焼成を870℃、8時間に変更した以外は、例1と同様にして正極活物質を得た。
得られた正極活物質の粒子径(D10、D50、D90)と比表面積を表1に示す。
表1における「Li/X」は、工程(II)における、共沈化合物に含まれる遷移金属元素(X)の合計量に対する、炭酸リチウムに含まれるLiのモル比(Li/X)(mol倍)を意味する。
例1〜5における遊離アルカリ量の測定結果、および例1〜4のリチウムイオン二次電池の初期特性の測定結果を表1に示す。
Figure 2014089848
表1に示すように、工程(I)の共沈に炭酸カリウムを使用した例1〜3の正極活物質は、工程(I)の共沈に炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムを使用した例4、5の正極活物質と比較して、遊離アルカリ量が少なかった。また、例1〜3のリチウムイオン二次電池の初期特性は、例4のリチウムイオン二次電池の初期特性と同等であった。
本発明によれば、簡便な方法で遊離アルカリ量が少ないリチウムイオン二次電池用の正極活物質が得られる。該正極活物質は、携帯電話等の電子機器、車載用の小型・軽量なリチウムイオン二次電池に用いるリチウムイオン二次電池用正極の形成に好適に利用できる。

Claims (7)

  1. 下記の工程(I)および工程(II)を有することを特徴とする正極活物質の製造方法。
    (I)Niの硫酸塩、Coの硫酸塩およびMnの硫酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む硫酸塩(A)と、
    炭酸カリウムとを、
    水溶液の状態で混合して、Ni、CoおよびMnからなる群から選ばれる少なくとも1種を有する遷移金属元素(X)を含む共沈化合物を得る工程。
    (II)前記共沈化合物と炭酸リチウムとを混合し、500〜1000℃で焼成する工程。
  2. 前記工程(I)において、硫酸塩(A)と、炭酸カリウムとを混合する際の混合液のpHが7〜12である、請求項1に記載の正極活物質の製造方法。
  3. 前記工程(I)で得られた共沈化合物を洗浄する工程を有する、請求項1または2に記載の正極活物質の製造方法。
  4. 前記工程(II)において、前記共沈化合物に含まれる遷移金属元素(X)の合計量に対して前記炭酸リチウムに含まれるLiのモル比(Li/X)が、1.1倍mol以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の正極活物質の製造方法。
  5. Liと、Ni、CoおよびMnからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む遷移金属元素(X)と、を含み、
    比表面積が2〜15m/gであり、
    遊離アルカリ量が正極活物質に含まれるリチウム1molに対して2mol%以下である、正極活物質。
  6. 正極集電体と、該正極集電体上に設けられた正極活物質層と、を有し、
    前記正極活物質層が、請求項5に記載の正極活物質と、導電材と、バインダと、を含有する、リチウムイオン二次電池用正極。
  7. 請求項6に記載のリチウムイオン二次電池用正極と、負極と、非水電解質と、を有するリチウムイオン二次電池。
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