JP6343548B2 - 耐熱オーステナイト系ステンレス鋼板 - Google Patents

耐熱オーステナイト系ステンレス鋼板 Download PDF

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Description

本発明は、最高温度1100℃に達する高温環境で使用される耐熱オーステナイト系ステンレス鋼板に関するものである。
近年の自動車の排ガス規制強化に伴い、エンジン高効率化を追求する傾向となり、燃焼効率を向上させようとすると、排ガス温度が上昇する傾向にある。また、ターボチャージャーに代表される過給機の使用も大きく増加する傾向にある。そのため、エキゾーストマニホールドやターボチャージャーのハウジング等の部材には、より優れた耐熱性が要求されている。
今後の動向として、排ガス温度は1100℃に達すると想定されている。従来、この温度域になると、ステンレス鋼板を使用せず、鋳鋼が使用される場合が多いが、この場合、重量が重くなること、熱容量が大きいため熱効率が低下すること、下流の排ガス浄化触媒コンバータでの温度低下が大きく触媒効率が低下すること、などの問題がある。したがって、最高温度1100℃で使用可能なステンレス鋼板が望まれていた。
耐熱オーステナイト系ステンレス鋼には、代表的な鋼として、SUS310S(25Cr−20Ni)やSUSXM15J1(19Cr−13Ni−3Si)等が知られている。また、SUS310SやSUSXM15J1を超える耐熱性を持つオーステナイト系ステンレス鋼として、特許文献1や特許文献2に開示がある。しかしながら、これらは1100℃までの使用が想定されていない。したがって、これまで、最高温度1100℃で使用可能なステンレス鋼板は存在しなかった。
特公昭56−24028号公報 特開2010−202936号公報
従来のオーステナイト系ステンレス鋼板では、1100℃での高温強度または耐酸化性が十分でなく、最高温度が1100℃に達する環境で使用することは困難であった。
本発明の目的は、最高温度1100℃に達する高温環境で使用可能な耐熱オーステナイト系ステンレス鋼板を提供することにある。
本発明者らは、1100℃に達する環境で使用可能な耐熱オーステナイト系ステンレス鋼板を開発するために、まず、1100℃で必要な特性を調査した。その結果、高温強度に関しては、変形を防止する必要があることから、0.2%耐力を指標として評価した。また、耐酸化性に関しては、オーステナイト系ステンレス鋼板は、フェライト系ステンレス鋼板と比較して、熱膨張係数が大きいことから、自動車排気系等の温度変化が激しい部位で使用する場合、最高温度で保持する連続酸化試験より、最高温度、室温を繰り返す断続酸化試験で評価することが適切と考えた。このため、耐酸化性に関しては、1100℃と室温での繰り返しの断続酸化試験で評価した。その結果、1000℃で使用されているようなステンレス鋼板では、1100℃で使用した際の効果が不十分であることが判明した。
発明者らはさらに検討を進め、1100℃に達する環境で使用可能なオーステナイト系ステンレス鋼の高温強度に関しては、CとNおよびMoの添加が有効であることが分かった。C、Nは単独添加でも高温強度を向上させるが、Moとの複合添加により、特に1000℃以上での高温強度を向上させる。これは、C、NとMoとの相互作用、例えば、クラスター形成による効果ではないかと推定している。さらには、それらに加えて、Nb、V、W、Coの添加も有効であることが判明した。これらの元素は、Moと同様に作用をしていると推定される。しかし、これらの元素を過剰に添加すると、炭窒化物が形成され、粗大化することにより高温強度向上効果が減少することも確認した。
また、耐酸化性に関しては、CrとSi、Mnに加えてMoの適正量の添加、およびTi添加量の抑制が必要であることが判明した。特に、Si、Moの添加は重要であり、スケールの成長および剥離を抑制し、1100℃での断続酸化試験での酸化減量(減肉量)を著しく減少させることが分かった。また、Tiの添加は、スケール成長および剥離を促進するため、できるだけ抑制した方が良いことも分かった。
さらには、オーステナイト系ステンレス鋼板は、パイプ成形やプレス成型等の加工が可能である必要がある。通常、耐熱性を向上させる場合、合金添加量が増え、加工性が低下する。そのため、発明者らは、エキゾーストマニホールドやターボチャージャーのハウジング等の部材の加工に必要な加工性を考慮し、合金添加量の相互調整により、常温の加工性を確保した。
さらに、発明者らは各元素の効果について検討を進め、新たな知見を得た。
高温強度に関しては、Nの効果をより有効的に発現させるためには、Nと化合物を形成しやすい元素であるTi、Alを制限する必要があることが判明した。これはTi、Alが過剰に添加されると高温で安定なTiN、AlNを形成するため、固溶Nが減少するためであると考えられる。また、Nbについても同様にNbNを形成するため、添加量の制限が必要になる懸念があったが、NbNは高温での安定度がTiN、AlNほど大きくなく、また、1000℃を超える高温の鋼中ではNbNではなく、Nb−Nクラスターを形成している確率が高いと考えられ、ある程度の添加は高温強度向上に有効であることが分かった。
耐酸化性に関しては、まず、REMを微量添加することにより、1000℃以上の高温環境でのスケール剥離をより抑制できることも分かった。REMはスケール/母材界面および粒界に偏析し、スケール剥離を抑制すると推定している。
さらに、Moもスケールの剥離を抑制する効果を持つが、Mo添加が多いと、昇華性のMoOが生成しやすくなり耐酸化性が低下する傾向にあった。耐酸化性の低下を抑制する手段として適量のMn添加が有効であることも分かった。Mnを適量添加すると、Mn酸化物が酸化スケール最表層に形成され、MoOの生成および昇華を抑制するものと推定している。適量のMn添加により高温強度向上にも効果のあるMoを、耐酸化性を低下させることなく、多めに添加できることが可能となった。
本発明は、これまでの知見に加えて、新たに見出した知見に基づいて発明するに到ったものであり、本発明の課題を解決する手段、すなわち、本発明のオーステナイト系ステンレス鋼板は以下の通りである。
(1)質量%で、C: 0.05〜0.15%、Si:1.0〜3.5%、Mn:0.5〜4.0%、P:0.04%以下、S:0.01%以下、Cr:23.0〜26.0%、Ni:10.0〜15.0%、Mo:0.50〜2.0%、N:0.10〜0.30%、C+N:0.25〜0.35%、Ti:0.1%以下、Al:0.005〜0.10%、REM:0.01〜0.20%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、下記式(1)を満たすことを特徴とすることを特徴とする耐熱オーステナイト系ステンレス鋼板。
Mo≦Mn≦2×Mo・・・(1) ただし、式(1)における元素記号は、当該元素の質量%を表す。
(2)さらに、質量%で、Nb:0.01〜0.2%、V:0.01〜0.5%、W:0.01〜0.5%、Co:0.01〜0.5%のいずれか1種以上を含有し、さらに、Mo、Nb、V、WおよびCoの合計質量が2.0%以下であることを特徴とする(1)に記載の耐熱オーステナイト系ステンレス鋼板。
(3)さらに、質量%で、Cu:0.1〜2.0%、Sn:0.005〜0.1%、B:0.0001〜0.01%のいずれか1種以上を含有することを特徴とする(1)または(2)に記載の耐熱オーステナイト系ステンレス鋼板。
(4)1100℃高温強度が、0.2%耐力で20MPa以上あり、さらに、1100℃断続酸化試験における質量減が1mg/cm以下であることを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載の耐熱オーステナイト系ステンレス鋼板。
(5)自動車排気系部材に用いられることを特徴とする(1)から(4)のいずれかに記載の耐熱オーステナイト系ステンレス鋼板。
本発明によれば、高温強度、耐酸化性に優れる耐熱オーステナイト系ステンレス鋼板を提供できる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。まず、本実施形態のステンレス鋼板の鋼組成を限定した理由について説明する。なお、組成についての%の表記は、特に断りのない場合は、質量%を意味する。
<C:0.05〜0.15%>
Cは、オーステナイト系ステンレス鋼の高温強度向上に有効である。特に、600℃を超える領域でもその向上効果は存在する。これは、C単体の効果ではなく、Nと他合金元素(Mo,Nb,V等)との相互作用によるものと考えている。しかし、過剰のCはCr炭化物を形成しやすくなり、成形性と耐食性、熱延板靭性を劣化させる。そのため、適正な添加量を0.05〜0.15%とする。
<N:0.10〜0.30%>
Nは、Cと同様にオーステナイト系ステンレス鋼の高温強度向上に有効である。特に、600℃を超える領域でもその向上効果は存在する。これは、N単体の効果ではなく、Nと他合金元素(Mo,Nb,V等)との相互作用によるものと考えている。しかし、過剰のNはCr窒化物を形成しやすくなり、成形性と耐食性、熱延板靭性を劣化させる。そのため、適正な添加量を0.10〜0.30%とする。
<C+N(CおよびNの合計質量):0.25〜0.35%>
CおよびNはともに高温強度向上に効果はあるが、十分な効果を得るためには、C+Nを0.25%以上添加する必要がある。しかし、過剰な添加は、粗大な炭窒化物を招き、高温強度の向上効果を減少させるだけでなく、加工性を低下させるので、0.35%を上限とする。
<Si:1.0%〜3.5%>
Siは、脱酸剤としても有用な元素であるとともに、耐酸化性を向上させる元素であり、本発明では重要な元素である。耐酸化性に対しては、Si量の増加とともに向上する。その効果は1.0%以上で発現するため、下限を1.0%とする。しかし、Siは靭性を大きく低下させる元素であり、過度の添加は靭性ならびに常温延性を低下させる。そのため、上限を3.5%とする。好ましくは、1.6%〜2.0%である。
<Mn:0.5〜4.0%>
Mnは、オーステナイト安定化元素であり、脱酸剤として添加される元素である。また、中温域での高温強度上昇に寄与する元素である。さらには、Moとともに添加される場合、スケール最表層の形成されるMn酸化物、MoOの生成および昇華を抑制し、耐酸化性の向上に寄与する。Mn添加量としては、高価なNiを節約するため、0.5%以上添加する。一方、過度な添加は、MnSを形成して耐食性を低下させるため、上限を4.0%とする。
ただし、Mnは、Moとの関係から、Moと同量未満では耐酸化性向上効果がないため、Mo以上の添加が必要である。さらには、Moの2倍超添加すると、Mn酸化物の形成量が多くなりすぎ、異常酸化が起きやすくなるため、Moの2倍を上限とする。したがって、下記式(1)を満たす。
Mo≦Mn≦2×Mo・・・(1) ただし、式(1)における元素記号は、当該元素の質量%を表す。
<P:0.04%以下>
Pは、製造上不可避に混入する元素であるが、溶接性に悪影響を与えるため、その含有量は、できるだけ低減する必要がある。そのため、0.04%以下とする。なお、好ましくは0.03%以下である。
<S:0.01%以下>
Sは、製造上不可避に混入する元素であるが、溶接性に悪影響を与える。また、MnSを形成し、耐食性、耐酸化性を劣化させる。そのため、その含有量は、できるだけ低減する必要があり、0.01%以下とする。なお、好ましくは0.002%以下である。
<Cr:23.0〜26.0%>
Crは、耐酸化性、耐食性確保のために必須な元素である。しかしながら、過剰に添加させるとσ脆性が起こりやすくなる元素でもある。そのため、適正範囲を23.0〜26.0%とする。好ましくは、23.5〜25.0%である。
<Ni:10.0〜15.0%>
Niは、オーステナイト安定化元素であり、耐食性を向上させる元素である。少ないとオーステナイト相が安定に形成されないため、10.0%以上添加する。しかし、Niは高価な元素であるため、過剰に添加すると高コストとなる。したがって、その上限を15.0%とする。好ましくは、10.5〜13.0%である。
<Mo:0.50〜2.0%>
Moは、本発明で重要な元素である。高温強度を向上させる元素である。この作用は固溶強化と考えられているが、本発明において、C、Nと共存する場合、単なる固溶強化以上の強化能を発現している。その機構は明確でないが、Moと、CまたはNとの相互作用、特に、クラスターの形成により強化されている可能性があると考えている。一方、過度の添加は、σ相を形成しやすくなるとともに耐酸化性を低下させる。したがって、添加の適正範囲は、0.50〜2.0%とする。好ましくは、1.1〜1.6%である。
<Ti:0.1%以下>
Tiは、Nと結合して粗大な窒化物(TiN)を形成しやすい元素である。本発明では、Nを高温強化に用いているため、粗大なTiNの形成は高温特性の低下を招く。また、耐酸化性にも悪影響を与える元素でもある。したがって、本発明では、できるだけ低減する必要があり、その上限を0.1%とする。好ましくは、0.03%以下である。さらに好ましくは、0.01%以下である。
<Al:0.005〜0.10%>
Alは脱酸元素として有用であり、その効果は、0.005%以上で発現する。しかし、過度の添加は、常温延性の低下、靭性の低下を招くほか、AlNの生成による固溶窒素の減少による高温強度の低下を招く。したがって、その上限を0.10%とする。高温特性を重視する場合は、0.07%以下、さらには、0.05%未満が好ましい。
<REM:0.01〜0.20%>
Y、La、Ce等の希土類元素(REM)は、スケール剥離性を改善する。Si、およびMo、Mnと同時に添加されている場合、特にその効果が大きく、1100℃での断続酸化試験のような過酷な環境においても非常に有効であることが分かった。この要因は、Si、Mo、Mn添加により安定的なCr皮膜が形成され、その剥離をスケール/母材界面で剥離を抑制してすること、および、粒界にREMが偏析することによりFeの酸化が抑制され、異常酸化を抑制していることによると考えている。このREMの効果は、0.01%以上の添加で発現する。しかし、過度の添加は溶接性等を阻害するため、その上限を0.20%とする。1100℃程度の高温環境で安定的に優れたスケール密着性を実現するには、0.03%以上の添加が好ましい。更に好ましくは、0.05〜0.13%である。なお、REM(希土類元素)は、一般的な定義に従い、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)の2元素と、ランタン(La)からルテチウム(Lu)までの15元素(ランタノイド)の総称を指す。
REMはLa等の単独元素の添加でも良いし、ミッシュメタルのような混合物の添加でも良い。
<Nb、V、W、Co>
さらに、高温特性を向上させるために、以下の元素を添加しても良い。
Nb:0.01〜0.2%
V:0.01〜0.5%
W:0.01〜0.5%
Co:0.01〜0.5%
これらの元素は高温強度を向上させる。この効果もMoと同じく、固溶強化と考えられているが、それのみでなく、CまたはNとの相互作用も存在すると推定される。これらの効果は0.01%以上の添加で発現する。しかし、過剰の添加、特にNbの過剰の添加は大きな炭窒化物が形成されるため、好ましくない。Nbの上限は0.2%、その他の元素の上限は、0.5%とする。さらに、複合効果も推定されるため、Mo+Nb+V+W+Co(Mo、Nb、V、WおよびCoの合計質量)の含有量は2.0%以下とする。
また、中温域(600〜800℃)の高温強度を向上させるため、以下の元素を添加しても良い。
<Cu:0.1〜2.0%>
Cuはオーステナイト安定化元素であるとともに中温域の高温強度を向上させる効果を持つ。その効果は、0.1%以上で発現する。しかし、過度に添加すると熱延加熱時に異常酸化を生じ表面疵の原因ともなるため、その添加量は、2.0%を上限とする。好ましくは、0.1〜1.0%である。
<Sn:0.005〜0.1%>
Snは、耐食性や中温域の高温強度の向上に有効な元素である。また、常温の機械的特性を大きく劣化させない効果もある。耐食性への効果は0.005%以上で発現するため、下限は0.005%とする。好ましくは、下限が0.01%である。一方、過度に添加すると製造性や溶接性が著しく劣化するため、上限を0.1%とする。
<B:0.0001〜0.01%>
Bはオーステナイト系ステンレス鋼の中温域の高温強度を向上させる効果を持つ元素である。その効果は、オーステナイト系ステンレス鋼における添加量が0.0001%で発現する。しかし、過度に添加すると熱間加工性を劣化させるため、その添加量は、0.01%を上限とする。Bの添加量はより好ましくは0.0003%〜0.0050%である。
以上説明した各元素の他にも、本発明の効果を損なわない範囲で含有させることが出来る。一般的な不純物元素である前述のP、Sを始め、Zn、Bi、Pb、Se、Sb、H、Ga、Ta、Ca、Mg、Zr等は可能な限り低減することが好ましい。一方、これらの元素は、本発明の課題を解決する限度において、その含有割合が制御され、必要に応じて、Zn≦100ppm、Bi≦100ppm、Pb≦100ppm、Se≦100ppm、Sb≦500ppm、H≦100ppm、Ga≦500ppm、Ta≦500ppm、Ca≦120ppm、Mg≦120ppm、Zr≦120ppmの1種以上を含有する。なお、「ppm」は質量基準である。
これらの成分の規定による本発明鋼は、非常に優れた耐熱性を持つ。本発明鋼は1100℃における使用を想定しており、1100℃における評価を指標とした。まず、1100℃高温強度が、0.2%耐力で20MPa以上あり、さらに、1100℃断続酸化試験(加熱・保持30分、冷却15分を300回繰り返し)における質量減が1mg/cm以下という優れた耐熱性を示す。
本発明鋼は、溶解、鋳造、熱延、焼鈍、冷延、焼鈍、酸洗の工程を経て製品となる。設備に特段の制限はなく、常法の製造設備を使用できる。
以下、実施例により本発明の効果を説明するが、本発明は、以下の実施例で用いた条件に限定されるものではない。
本実施例では、まず、表1A及び表1Bに示す成分組成の鋼を溶製してスラブに鋳造した。このスラブを1150〜1250℃に加熱後、仕上げ温度を850〜950℃の範囲内として、板厚3〜5mmまで熱間圧延した。その後、1000〜1200℃で焼鈍し、酸洗した後、冷間圧延で、1.5mmまで圧延し、その後、1000℃〜1200℃で焼鈍・酸洗し、供試鋼とした。表1A及び表1Bにおいて、本発明範囲から外れる数値にはアンダーラインを付している。また、表1A及び表1B中の「式(1)」の欄に、「Mo≦Mn≦2×Mo」の式(1)の要件を満たすものを「○」、満たさないものを「×」で示した。
このようにして得られた冷延焼鈍板に対して、常温および高温の引張試験、断続酸化試験を実施した。常温の引張試験は、加工性を評価するものであり、JIS Z 2201に準拠して圧延方向と平行方向を長手方向とするJIS13B号試験片を用いて、JIS Z 2241に準拠して引張試験を行った。全伸びを加工性指標とし、40%以上を合格とした。評価結果を表2A及び表2Bに示す。表2A及び表2B中、前記全伸びが40%以上を「○」、40%未満を「×」で示した。
また、高温の引張試験は、つば付き試験片を用いて、JIS G 0567に準拠し、評価した。1100℃の0.2%耐力を高温強度の指標とし、20MPa以上を合格とした。評価結果を表2A及び表2Bに示す。表2A及び表2B中、前記1100℃の0.2%耐力が20MPa以上を「○」、20MPa未満を「×」で示した。
耐酸化性は、断続酸化試験を用いて評価した。各鋼板から、20mm×20mmのサンプルを採取し、端面を#600研磨して、酸化試験片とした。この酸化試験片を、1100℃に保持した炉の中に入れて30分間保持し、その後、室温まで15分間で冷却するサイクルを1サイクルとし、このサイクルを300回繰り返した。その後、酸化試験片の酸化減量(スケールの生成・脱落による減肉量)を測定し、この酸化減量が、1mg/cm以下である場合を合格とした。評価結果を表2A及び表2Bに示す。表2A及び表2B中、前記酸化減量が1mg/cm以下を「○」、1mg/cmを超えるものを「×」で示した。
Figure 0006343548
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Figure 0006343548
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表1A〜表2Bより明らかなように、本発明を適用した成分組成の鋼板は、加工性、高温強度、耐酸化性、いずれも優れた特性を示した。
一方、本発明から外れる比較例では、加工性、高温強度、耐酸化性、の何れかが、1つ以上不合格であった。
これにより、本発明鋼が比較例のオーステナイト系ステンレス鋼に対して優れている事が分かる。
以上の説明から明らかなように、本発明の耐熱オーステナイト系ステンレス鋼によれば、高温強度、耐酸化性に優れる上に、加工性に優れるため、耐熱性に優れたステンレス鋼板が製造可能になる。つまり、本発明を適用した材料を、特に自動車の排気系部材に適用する事により、エンジン効率化を達成できる排気管が製造可能となる。
つまり、本発明は産業上、非常に有益である。

Claims (5)

  1. 質量%で、
    C: 0.05〜0.15%、
    Si:1.0〜3.5%、
    Mn:0.5〜4.0%、
    P:0.04%以下、
    S:0.01%以下、
    Cr:23.0〜26.0%、
    Ni:10.0〜15.0%、
    Mo:0.50〜2.0%、
    N:0.10〜0.30%、
    C+N:0.25〜0.35%、
    Ti:0.1%以下、
    Al:0.005〜0.10%、
    REM:0.01〜0.20%
    を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、下記式(1)を満たすことを特徴とする耐熱オーステナイト系ステンレス鋼板。
    Mo≦Mn≦2×Mo・・・(1)
    ただし、式(1)における元素記号は、当該元素の質量%を表す。
  2. さらに、質量%で、
    Nb:0.01〜0.2%、
    V:0.01〜0.5%、
    W:0.01〜0.5%、
    Co:0.01〜0.5%、
    のいずれか1種以上を含有し、さらに、
    Mo、Nb、V、WおよびCoの合計質量が2.0%以下
    であることを特徴とする請求項1に記載の耐熱オーステナイト系ステンレス鋼板。
  3. さらに、質量%で、
    Cu:0.1〜2.0%、
    Sn:0.005〜0.1%、
    B:0.0001〜0.01%、
    のいずれか1種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の耐熱オーステナイト系ステンレス鋼板。
  4. 1100℃高温強度が、0.2%耐力で20MPa以上あり、さらに、1100℃断続酸化試験における質量減が1mg/cm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の耐熱オーステナイト系ステンレス鋼板。
  5. 自動車排気系部材に用いられることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の耐熱オーステナイト系ステンレス鋼板。
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