以下、本発明を具体化した一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、本発明の空調機械室の室内構造を、鉄骨ラーメン構造を有する二階建てユニット式建物であって、陸屋根よりなる屋根部を有する建物において具体化している。なお、ユニット式建物とは、梁及び柱を有する複数の建物ユニットを備え、それら各建物ユニットが互いに組み合わされることにより構成された建物である。
はじめに、空調機械室の概要について、図1及び図2を参照して説明する。図1は、建物における二階部分の空調機械室を示す縦断面図であり、図2は、空調機械室を廊下側から見た場合の正面図である。
図1に示すように、建物10の二階部分には、屋内空間として、廊下11と空調機械室12とが設けられている。この図1には図示されていないが、建物10の二階部分における屋内空間としては、廊下11及び空調機械室12のほか、複数の居室空間が廊下11に隣接して設けられている。このため、非居室空間である廊下11は、各居室空間を繋ぐ空間としての役割を有している。
また、建物10は、各階部分を個別に空調する空調システムを有しており、空調機械室12は、そのうちの二階部分に設けられた空調システム40の一部である空調機器類を設置する空間である。この空調機械室12は、廊下11に隣接して設けられるとともに、室外であるその廊下11に向けて、そのほぼ全域が開放された開口部としての開放口13を有する空間となっている。
図1のほか、図2にも示すように、空調機械室12の開放口13は、左右の側面壁14側に設けられた一対の縦枠15a,15bと、天井側に設けられた横枠16と、床面によって形成されている。そして、空調機械室12の開放口13は常時開放された状態にあるのではなく、その開放口13には扉体17が設けられている。この扉体17によって、空調機械室12の開放口13が開閉されるようになっている。
なおここで、本実施形態における空調機械室12につき、その前後左右について説明する。左右とは図2の正面図を前提とし、前とは空調機械室12の開放口13側、つまり廊下11側をいい、その反対側の背面壁18側を奥というものとする。
次に、建物10の二階部分に設けられた上記廊下11及び空調機械室12の天井及び床の概略構成について、上記図1を参照して説明する。
図1に示すように、二階部分の屋内空間において、その天井側には二階天井21が設けられ、二階天井21の上方は天井裏空間22となっている。天井裏空間22は二階天井21と建物10の屋根部(図示略)との間に設けられているため、天井裏空間22を屋根裏空間ということもできる。
二階天井21のうち、廊下11の天井部分23は、第1天井面材24と第2天井面材25とを備えて構成されている。これら各天井面材24,25はいずれも、石膏ボードである。第1天井面材24は、建物ユニットの天井梁(図示略)によって上方から支持されている。第2天井面材25は第1天井面材24よりも低い位置に設けられ、この第2天井面材25によって廊下11の天井面が形成されている。このように、廊下11では、第2天井面材25が設けられることにより、その天井部分23はいわゆる下がり天井となっている。その結果、廊下11は、他の屋内空間(空調機械室12や居室空間(図示略))よりも天井高さが低い低天井空間となっている。なお、第2天井面材25は、廊下11を囲う壁等に固定される等、適宜の固定方法により支持されている。
前述したように、二階天井21の上方は天井裏空間22となっているが、廊下11では、天井部分23が2つの天井面材24,25とで構成されているため、両天井面材24,25の間には下部空間26が形成されている。すなわち、廊下11の天井裏は、下部空間26と天井裏空間22との二層の空間が形成されている。
一方、空調機械室12の天井部分27についてみると、廊下11の天井部分23に設けられた前記第1天井面材24がこの空調機械室12にも設けられている。このため、空調機械室12は第1天井面材24によって天井面が形成されている。
また、床側に関しては、廊下11の床部分31にはフローリング等の床仕上げ材32が設けられ、この床仕上げ材32によって廊下11の床面が形成されている。一方、空調機械室12では、床仕上げ材32は、廊下11から空調機械室12の開放口13より若干中に入った位置まで設けられている。それより奥側では、ACL床等の床下地材33が現れている状態となっている。
次に、空調機械室12について、その室内構造を、上記図1及び図2に加えて、図3及び図4もさらに参照しつつより詳しく説明する。その説明に際しては、空調システム40についても必要な範囲で適宜説明を加える。
前述したとおり、空調機械室12には、二階部分の空調システム40を構成する一部が設置されている。図1に示すように、その空調システム40は、空調空気(暖気及び冷気)を生成する室内機としての機能を有する空調装置41と、空調装置41に接続された通気部材42と、通気部材42に接続されて各居室空間に設けられる吹出部(図示略)とを備えている。
空調装置41は、廊下11から空調機械室12に流れ込む空気を還気として取り込み、その還気をもとに空調空気を生成し、通気部材42内へ吹き出す。その吹き出された空調空気は、吹出部(図示略)に至るまで通気部材42を流通した後、吹出部(図示略)から空調対象となる各居室空間に空調空気が供給されるようになっている。この空調装置41は、床下地材33の上にベースパン43を介して設置され、空調機械室12に収容されている。
空調装置41の前方、つまり空調機械室12の開放口13側には、床仕上げ材32の上に消音パネル44が設置されている。消音パネル44は、空調装置41から発せられる音を低減させる機能を有している。消音パネル44は、廊下11側から見て、空調装置41を構成する下部装置41aの前方を覆うように、空調機械室12の側面壁14同士の間全域にわたって床から立設され、空調装置41の点検が必要な時には着脱が可能となるように構成されている。
通気部材42は、上流側通気部51と、下流側通気部52と、中間通気部としての接続チャンバ53とを有している。上流側通気部51及び下流側通気部52はいずれも空調ダクトにより構成されている。
上流側通気部51は、消音機能が付与されたフレキシブルダクトである。上流側通気部51の一端(上流側端部54)は、空調装置41の上端に設けられたダクト接続部41bに接続されている。空調機械室12内において、上流側通気部51は空調装置41から上方に向かって延びるように設けられており、他端(下流側端部55)が接続チャンバ53に接続されている。
一方、下流側通気部52は水平方向に延びるように形成された成形ダクトであり、廊下11の二階天井21に設けられた下部空間26に設置されている。下流側通気部52は、廊下11と空調機械室12との境界部分上方に設けられたダクト支持部材45により、上流側端部56が支持されている。下流側通気部52の上流側端部56は、空調機械室12内へ突出した状態で接続チャンバ53に接続されている。
接続チャンバ53は、空調装置41から上方に向かって延びる上流側通気部51と、廊下11の天井側で水平方向に延びる下流側通気部52とをつなぐチャンバである。この接続チャンバ53は、空調機械室12の天井面に近い天井寄りに設けられ、空調機械室12の奥側から手前側(前側)に向かって略直角に折れ曲がるように形成されている。
以上のように、空調機械室12には、空調システム40のうち、空調装置41と、通気部材42の一部よりなる空調機器類が設置されている。通気部材42の一部とは、上流側通気部51、接続チャンバ53及び下流側通気部52の上流側端部56である。
ところで、空調機械室12に設置された空調装置41は室内の奥側に配置されており、その結果、空調装置41から上方に延びる上流側通気部51も同じく奥側に配置されている。そして、空調機械室12の天井側には、奥側から手前側に折り曲がる接続チャンバ53が設けられている。空調機械室12において、空調装置41と通気部材42の一部よりなる空調機器類がこのように配置された構成となっているため、空調装置41及び上流側通気部51の手前側にはスペースが設けられている。
図3は、図1と同じ、建物10における二階部分の空調機械室12を示す縦断面図であり、空調機器類のみを図示して他を省略することにより、スペースの存在を示した図である。この図3に示すように、空調機械室12では、空調装置41及び上流側通気部51の手前側に前方スペース60が設けられている。前方スペース60は、空調装置41の手前側に存在する第1スペース61と、上流側通気部51の手前側に存在する第2スペース62とを有している。
第1スペース61は、空調装置41とその上端のダクト接続部41bを含む高さが確保されたスペースであり、空調装置41を点検する場合に人が中に入り込むための点検用スペースとして利用される。なお、点検時には消音パネル44(図1を参照)は外される。このような点検用の第1スペース61が確保されることにより、空調装置41が点検しやすいようになっている。
これに対し、第2スペース62は、第1スペース61の直上に存在し、開放口13の上端までの領域が確保されたスペースである。この第2スペース62は、そのままではデッドスペースと化してしまうため、物品の収納スペースとして利用される。具体的には次のとおりである。
図1に戻り、図3の第2スペース62に相当する部分には、物品収納棚70が設けられている。物品収納棚70は、底棚部71と、天板72と、背面部73とを有している。空調機械室12を形成する左右の側面壁14間に底棚部71及び天板72が水平に架け渡されるとともに、背面部73が底棚部71と天板72の奥側を塞ぐようにして、それぞれが設けられている。これにより、物品収納棚70に箱型の収納空間74が形成され、収納空間74は、その奥の空調装置41や上流側通気部51が設置された設置空間と区画されている。なお、前記背面部73が本実施形態における仕切り部である。収納空間74を形成する天板72、背面部73及び左右の側面壁14の内側面にはクロス等の仕上げ材が貼り付けられ、化粧仕上げが施されている。
図4は、物品収納棚70を構成する底棚部71の前部周辺を示す縦断面図である。この図4に示すように、底棚部71は、棚板桟81、棚仕上げ材82及び前框83を有して構成されている。棚板桟81は木質系の角材により枠状に形成された構造材であり、空調機械室12の左右の側面壁14間及び縦枠15a,15b間に架け渡されるようにして設けられ、左右両端部が側面壁14及び縦枠15a,15bに固定されている。かかる構成により、棚板桟81は、そこに成人が載った場合でも、人から受ける荷重に耐え得る構造を備えている。
棚仕上げ材82は棚板桟81の上全域にわたって設けられ、その上面によって物品収納棚70の底面が形成されている。そして、前框83は、棚板桟81及び棚仕上げ材82の前端部に取り付けられている。前框83は空調機械室12の左右の縦枠15a,15b間に架け渡されるようにして設けられ、固定金具(図示略)を用いて左右の縦枠15a,15bに固定されている。
再び図1に戻り、物品収納棚70の天板72は石膏ボードにより構成され、廊下11の天井部分23に設けられた第2天井面材25と同じ高さ位置に設けられている。そのため、廊下11の下がり天井と同じ天井高さとなっている。
背面部73は、木質系の角材により形成された枠体(図示略)や石膏ボード(図示略)を組み合わせて構成され、その左右両端が側面壁14に、下端部が底棚部71に、上端部が天板72にそれぞれ固定されている。背面部73の内側面には、上下方向に延びるハンギングレール75が左右両端側に設けられている(後述の図5(a)を参照)。ハンギングレール75には、一枚又は複数枚(図示では2枚)の可動棚板76が着脱自在に設けられている。可動棚板76は、その支持金具76aをハンギングレール75に引っ掛けることによって、所望の高さ位置に取り付けられる構成を有している。
ここで、背面部73は、前述したように、収納空間74の奥側を塞ぐように設けられている。これにより、背面部73の奥に配置されている上流側通気部51は、背面部73によって隠れた状態となり、収納空間74からその上流側通気部51を目視することができない。この場合、上流側通気部51の点検が必要な場合に支障をきたすことになる。そこで、背面部73には点検口77が設けられている。
点検口77は、収納空間74とその背後の上流側通気部51が配置された空間とを連通する矩形状の孔であり、縦横が人の肩幅よりも若干大きめの寸法(一例として、縦横それぞれ620mm程度)を有している。背面部73における点検口77の位置は、左右方向では中央部であり、上下方向では中央部よりも下寄りにずらした位置となっている(後述の図5(a)を参照)。前記ハンギングレール75は、この点検口77の左右両側方に設けられている。
点検口77には、その点検口77を塞ぐ点検口蓋部材78が設けられている。点検口蓋部材78は点検口77の形状と同じ矩形状をなし、点検口77に対して着脱自在に嵌め込まれている。その嵌め込みの具体的構成に関する図示は省略する。一例として、点検口77の開口周縁部に設けられた当接部に点検口蓋部材78の背面側周縁部を当接させ、その状態で、点検口蓋部材78の表側周縁に形成された目地に着脱式の枠状保持部材を取り付ける、といった構成を採用できる。この場合、前記枠状保持部材を取り外せば、点検口蓋部材78を点検口77から取り外すことが可能となる。取り外した点検口蓋部材78を点検口77に再度嵌め込む場合は、背面側周縁部を前記当接部に当接させるようにして点検口蓋部材78を点検口77に嵌め込む。その後、表側周縁の目地に前記枠状保持部材を取り付けることで、その嵌め込み状態が保持される。
また、点検口蓋部材78には、点検口77に嵌め込まれた状態で収納空間74側となる面(表面)にクロス等の仕上げ材が貼り付けられ、化粧仕上げが施されている。
続いて、空調機械室12の扉体17に関する構成を、図1、図2及び図4に加えて、図5及び図6もさらに参照しつつ説明する。
図1及び図2に示すように、空調機械室12の開放口13には扉体17が設けられている。扉体17は、第1開閉戸91と第2開閉戸92とを有して構成されている。第1開閉戸91は空調装置41の前方に設けられ、収納開閉戸としての第2開閉戸92は物品収納棚70の前方に設けられている。換言すれば、空調機器類の前方に設けられた前方スペース60のうち(図3を参照)、第1開閉戸91は第1スペース61の前方に、第2開閉戸92は第2スペース62の前方に設けられているともいえる。これにより、第1開閉戸91が下側に、第2開閉戸92が上側にそれぞれ配置された状態となっている。
いずれの開閉戸91,92も右扉板部材91a,92aと左扉板部材91b,92bとで構成され、右扉板部材91a,92aは右側の縦枠15aに、左扉板部材91b、92bは左側に縦枠15bに、複数(この実施形態では3個)の丁番Tを介して開閉可能に支持されている。そのため、第1開閉戸91及び第2開閉戸92は観音開き式に開閉される。また、各開閉戸91,92が閉じられた状態において、左右中央で互いに突き合わされる右扉板部材91a,92aの左端部と左扉板部材91b,92bの右端部には、それぞれ上下方向にわたって溝状部91c,92cが形成されている(後述の図5を参照)。この溝状部91c,92cを指で引っ掛けることで、右扉板部材91a,92a及び左扉板部材91b,92bを開け易くなっている。
第1開閉戸91は、その上端が物品収納棚70の底棚部71を構成する前框83の下端部前方に位置し、下端はアンダーカットとされている。このアンダーカットを通じて、廊下11の空気が還気として空調機械室12内に取り込まれ、消音パネル44を乗り越えるように流通して空調装置41に取り込まれる。
一方、第2開閉戸92は、その上端が横枠16に至り、下端は前框83の前方であって、第1開閉戸91の上端に至るまでの寸法を有している。このため、空調機械室12の開放口13は、第1開閉戸91のアンダーカット部分を除き、ほぼ全面が両開閉戸91、92で閉じられた状態となっている。
このように、空調機械室12は、空調システム40の一部を収容するだけでなく、空調システム40を構成する上流側通気部51の前方に物品収納棚70が設けられ、空調装置41の収容部分と物品収納棚70とのそれぞれに対応する開閉戸91,92が設けられている。そのため、空調装置41に対して点検や操作が必要な場合に限り第1開閉戸91を開閉し、物品収納棚70を日常的に利用する場合は、第2開閉戸92のみを開閉すれば足りる。
図5は、第2開閉戸92を開いた状態の空調機械室12を示す概略正面図であり、(a)は物品収納棚70を日常利用する状態を示し、(b)は点検時の状態を示している。この図5(a)に示すように、物品収納棚70を日常利用する場合は、点検口77が点検口蓋部材78によって塞がれ、建物10の利用者は、底棚部71や可動棚板76を利用して、所望の物品を収納することができる。
一方、定期点検等により空調システム40の点検が必要な場合は、図5(b)に示すように、収納された物品が取り出されるとともに、可動棚板76をハンギングレール75から取り外した状態とする。その上で、点検口蓋部材78を取り外すことで点検口77が開放され、その奥に存在する上流側通気部51を目視することができる。そして、底棚部71の棚板桟81が耐荷重構造とされているため、底棚部71に点検者が載り、点検口77からその奥を覗き込み、上流側通気部51を点検することができる。また、点検口77は、前述したとおり比較的大きな開口で、背面部73において下寄りに配置されているため、点検者は点検口77に頭部を入れて奥を覗き込むことが可能となる。それにより、ダクト接続部41bと上流側通気部51の上流側端部54との接続部分を見下ろしながら点検し、上流側通気部51の下流側端部55と接続チャンバ53との接続部分を見上げながら点検することができる。
ところで、第1開閉戸91及び第2開閉戸92のうち、第2開閉戸92は自由な開閉が可能とされ、物品収納棚70へのアクセスに関して制限は設けられていない。これに対して、第1開閉戸91は下側に設けられているため、幼児等の子供であっても開閉することが可能となる。この場合、第1開閉戸91を開けると空調装置41へのアクセスが可能となるため、子供による空調装置41の誤操作のおそれがある。そこで、第1開閉戸91の開きを規制する開放規制手段が設けられている。
図4に示すように、第1開閉戸91の裏面、つまり閉状態において空調機械室12内側となる面には、ストッパ部材93が取り付けられている。ストッパ部材93は、左右の扉板部材91a,91bにそれぞれ1つずつ設けられている。図2を参照すれば、ストッパ部材93は、第1開閉戸91の閉状態において、左右中央寄りの上端部であって、前框83の下方に取り付けられている。
ストッパ部材93は、金属製の板材が折り曲げ形成されてなり、扉板部材91a,91bへの取付部94、水平部95、被係止部96及び先端部97を有している。水平部95は前框83の下方で取付部94から奥に向かって水平に延び、前框83よりも長い寸法を有している。被係止部96は、水平部95の先が直角に立ち上がって形成されている。その被係止部96の先が斜め下向きに延びる先端部97となっている。
一方、前框83の下面前側には、ストッパピン98が設けられている。ストッパピン98は、前框83の下面から、ストッパ部材93の水平部95とは干渉しない程度に突起して設けられている。第1開閉戸91を開く場合に、このストッパピン98にストッパ部材93の被係止部96が当たることで、第1開閉戸91の開きが規制されるようになっている。
その開放規制の仕組みについて、図6を参照しつつさらに説明する。図6は、第1開閉戸91の開放規制とその解除の様子を概略的に示す説明図であり、(a)は両開閉戸91,92を閉じた状態、(b)は第1開閉戸91の開放が規制された状態、(c)は第1開閉戸91の開放規制を解除する様子を示している。なお、この図6では、各開閉戸91、92を構成する左右の扉板部材91a,91b,92a,92bのうち、左扉板部材91b,92bを示しているが、右扉板部材91a,92aもこれと同様の仕組みで開放規制がなされる。
図6(a)に示すように、両開閉戸91,92を閉じた状態では、ストッパ部材93の被係止部96はストッパピン98よりも奥側に位置している。この状態から、第1開閉戸91のみを観音開き式で開けようとすると、第1開閉戸91の左扉板部材91bは前方へ移動する。
すると、図6(b)に示すように、ストッパ部材93の被係止部96がストッパピン98に当たり、それ以上に左扉板部材91bが開くことが規制される。このとき、閉じた状態にある第2開閉戸92(左扉板部材92b)がストッパ部材93の水平部95の上方に存在するため、被係止部96とストッパピン98との係止を解除することできなくなっている。つまり、第1開閉戸91の左扉板部材91bが移動したことにより生じる空間が、第2開閉戸92の左扉板部材92bによって塞がれた状態となり、ストッパ部材93を操作することができなくなっている。したがって、第2開閉戸92が閉じた状態にある限り、第1開閉戸91を開けることはできない。
ちなみに、上記のような構成とするため、ストッパ部材93の水平部95は、取付部94から被係止部96までの長さLが、第2開閉戸92の左扉板部材92bの厚さと、前框83の前面からストッパピン98の被係止部96との当接面までの長さとを合わせた寸法と、ほぼ同じとなるように設定されている。
このような開放規制を解除する場合、図6(c)に示すように、まず第2開閉戸92を開いた状態とする。そして、ストッパ部材93の水平部95を下へ押し込むことにより、被係止部96とストッパピン98との係止状態が解除される。これにより、開放規制が解除されるため、第1開閉戸91の左扉板部材91bを開けることができる。
なお、ストッパ部材93の水平部95の押し込みを止めると、水平部95は復元力によってもとの水平状態に復帰する。このため、第1開閉戸91の左扉板部材91bを開いた状態から閉じる場合には、水平部95を再度下へ押し込んで、被係止部96とストッパピン98とが当たることを避けながら閉じることになる。
このように第2開閉戸92を開けない限り、下側にある第1開閉戸91を開くことができない。そして、第2開閉戸92は上側にあるため、幼児等の子供が開閉することが困難である。このため、空調装置41へのアクセスを可能とする第1開閉戸91が子供によって開かれることを抑制し、子供が空調装置41に対して誤操作するおそれを低減させることができる。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
空調機械室12に物品収納棚70が設けられ、その物品収納棚70は底棚部71、天板72及び背面部73により収納空間74が形成されている。このように収納空間74は上下左右と奥側が仕切られているため、物品収納棚70に収納した物品を空調装置41等が収容された空間に落としてしまうおそれがない。このため、使い勝手のよい収納空間74が確保され、空調機械室12内の有効利用を図ることができる。
そして、このように収納空間74はその周囲が仕切られた状態で設けられると、その奥に設置された空調機器類が隠れてしまう。しかしながら、物品収納棚70の背面部73には点検口77と、その点検口77を着脱自在に塞ぐ点検口蓋部材78とが設けられている。物品収納棚70を利用する場合は点検口77に点検口蓋部材78を設け、空調機器類の点検が必要な場合は点検口蓋部材78を取り外すことで、空調機器類の点検が可能となる。したがって、点検への支障を抑制しつつ、空調機械室12内に使い勝手のよい収納空間74を確保することができる。
点検口77は、通気部材42における接続部分を視認することが可能である。つまり、点検口77は、比較的大きな開口で、背面部73において下寄りに配置されている。そのため、点検者は点検口77に頭部を入れて奥を覗き込み、接続部分を見下ろしたり、見上げたりしながら点検できる。通気部材42における接続部分は、空調空気の漏れがないか等、空調システム40を点検する上で目視確認が必要な部分であり、その点検に支障が生じることを抑制できる。
物品収納棚70には着脱自在な可動棚板76が設けられている。そのため、収納空間74を可動棚板76で区画することによって、その収納空間74を有効利用することができる。そして、可動棚板76は取り外し可能となっているため、空調機器類の点検時に取り外せば、点検口77を利用した点検に支障が生じることを避けられる。
物品収納棚70が通気部材42の上流側通気部51の前方に設けられ、その物品収納棚70の下方であって床置きされた空調装置41の前方に、点検用スペースとしての第1スペース61を確保しつつ、物品収納棚70が設けられる。この第1スペース61を利用して空調装置41に対する点検や操作を行うことが可能となり、空調装置41へのアクセスを阻害することなく、スペースの有効利用を図ることができる。
物品収納棚70が第1スペース61の上方に設けられるため、点検口77はその分高い位置に配置される。その上、背面部73に設けられた点検口77は奥まった位置に存在している。このため、点検者は点検口77に近づいて空調機器類を点検することが困難となる。
その点、物品収納棚70の底棚部71は人の体重に対する耐荷重性を有している。このため、その底棚部71の上に点検者が載った状態で、点検口77から空調機器類を点検することが可能となり、点検作業を容易に行うことができる。
物品収納棚70は、その天井側が廊下11の下がり天井と同じ天井高さとされている。このため、物品収納棚70の天井側を最大限高く設定されており、より広い収納空間74を確保することができる。
物品収納棚70には、観音開き式の両開き戸である第2開閉戸92が設けられている。このため、左右の扉板部材92a,92bを個別に開閉することが可能となり、片開き戸によって第2開閉戸92を構成するよりも、物品収納棚70の使い勝手を向上させることができる。
[他の実施形態]
(1)上記実施の形態では、前方スペース60のうち、図3に示す第1スペース61は、少なくとも空調装置41全体の前方領域をすべて含んだ領域とされているが、第1スペース61の領域をより小さくし、その分だけ第2スペース62の領域を拡大してもよい。例えば、図7に示すように、物品収納棚70の底棚部71をより低い高さ位置に設けて、収納空間74をより縦長として収納容量を増加させてもよい。この場合、空調装置41の前方に物品収納棚70の背面部73が存在することになるが、図示のように点検口77を背面部73の拡大に合わせてより大きく形成し、空調装置41の前面を点検口77から目視可能な構成とすればよい。
(2)上記実施の形態では、図3に示す第2スペース62を利用して物品収納棚70が設けられているが、下側の第1スペース61を利用して物品収納棚70を設けてもよい。この構成でも、当該物品収納棚70の上面を棚として利用することにより、第2スペース62を収納用のスペースとして利用することができる。
(3)上記実施の形態では、空調機械室12の扉体17が第1開閉戸91と第2開閉戸92とで構成され、点検用の第1開閉戸91と、物品収納棚70用の第2開閉戸92とに分けられている。これに代えて、例えば、上記図7に示すように、これを一つの開閉戸100とした構成を採用してもよい。
また、扉体17の開閉方式としては、片開き式や引き戸であってもよい。なお、引き戸とされた場合は、空調装置41の点検時に引き戸である第1開閉戸91や第2開閉戸92が取り外されることになる。
(4)上記実施の形態では、物品収納棚70は可動棚板76が設けられているが、これを省略してもよい。また、可動棚板76は水平方向にのみ設けられた構成となっているが、可動棚板76が垂直方向に設置された構成を採用してもよく、さらには、引き出しを収納空間74に設けたり、可動棚板76と併設したりしてもよい。
(5)上記実施の形態では、物品収納棚70の底棚部71に耐荷重性能を付与した構成とされているが、その耐荷重性能は必須のものではなく、人が載ることを想定しない構成としてもよい。もっとも、その構成では、点検者は点検口77を廊下11側から視認するだけで背面部73の奥にある空調機器類を点検しなければならず、点検が容易ではなくなる。その点では、この実施形態のように、底棚部71に点検者が載って点検することを可能とする構成を採用することが好ましい。
(6)上記実施の形態では、物品収納棚70の天井側が廊下11の下がり天井と同じ天井高さに設定されているが、物品収納棚70の天井側が下がり天井よりも低い位置に設けられた構成を採用してもよい。この場合は、収納空間74の収納容量が少なくなるため、本実施形態と同様、下がり天井と同じ高さ位置に設定することが好ましい。
(7)上記実施の形態では、通気部材42が上流側通気部51、下流側通気部52及び接続チャンバ53によって構成されているが、これらを一つの空調ダクト(フレキシブルダクト又は成形ダクト)によって構成してもよい。また、上流側通気部51を成形ダクトとしてもよいし、下流側通気部52や接続チャンバ53をフレキシブルダクトに変更してもよい。
(8)上記実施の形態では、空調機械室12は廊下11に隣接して設けられているが、玄関、階段が設置された空間等のその他非居室空間に隣接して設けられた構成としてもよい。
(9)上記実施の形態では、建物10の二階部分に設けられる空調システム40を収容するための空調機械室12として説明したが、一階部分に設けられる空調システムを収容する一階部分の空調機械室に適用してもよい。
(10)上記実施の形態では、建物10として、鉄骨ラーメン構造を有する二階建てユニット式建物であって、陸屋根を有するものを想定したが、鉄骨軸組工法により構築される建物や、在来木造工法により構築される建物に適用してもよい。また、陸屋根ではなく傾斜屋根部を有する建物であってもよく、特に傾斜屋根部であっても屋根裏空間が狭く、そこに空調システム40を設置するだけのスペースを確保することが困難な場合に好適となる。