以下に本発明の移動補助具について図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するために移動補助具の一例を示すものであって、本発明の移動補助具を以下の移動補助具に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態の移動補助具にも等しく適応し得るものである。
<第1実施形態>
図1〜図6は夫々本実施形態の移動補助具の外観を示す斜視図、正面図、背面図、右側面図、平面図、底面図である。なお、以降、図1〜図6の説明においては、図3の紙面に対向する観察者の上側を「上」、下側を「下」、左手側を「左」、右手側を「右」とし、また、図5の紙面に対向する観察者の上側を「後」、下側を「前」として説明する。
本実施形態において移動補助具100はベースフレーム2、ベースフレーム2上に設けられるフットプレート3、ベースフレーム2の後部に設けられる2個の車輪部4、ベースフレーム2の前部に設けられてロック機構5を有する車輪部6、ベースフレーム2に立設される2本の支柱7、支柱7の中央部付近に設けられて要介助者の膝を支持する膝固定具8、支柱7の上部に設けられて要介助者の胴を固定する胴部固定具9(本明細書及び特許請求の範囲において膝固定具8と胴部固定具9を合わせて身体固定具とも称する)及び支柱7の上端に設けられる天板10を備える。なお、図1〜図6において図の簡略化のため符号2(ベースフレーム)、8(膝固定具)、9(胴部固定具)は図示せず、各部を構成する構成(例えば膝固定具8については符号81(膝受け部)及び82(サイドパネル))について符号を付して図示している。
ベースフレーム2は所定の間隔を隔てて略平行に配される2本のサイドフレーム21、2本のサイドフレーム21をその前部で接続する略く字状のフロントフレーム22、及び、左右のサイドフレーム21を夫々左右の支柱7と連結して支柱7に掛かる力を分散する2本の連結フレーム23を有する。
サイドフレーム21は後端部から中央部にかけて移動補助具100が載置される床面に略平行(側面視で車輪部4の下端部と車輪部6の下端部を結ぶ直線に略平行)に伸びる。また、サイドフレーム21は中央部から前端部にかけてその後部に対して上方に折れ曲がる形状に形成される。当該構成により複数台の移動補助具100を収納する際に、連続する一方の移動補助具100のサイドフレーム21の後部を他方の移動補助具100のサイドフレーム21の前部の下に潜り込ませるようにして重ねることができるため、収納スペースを有効に利用することができる。
サイドフレーム21の後端部には平面視で外方に向かって広がるように折れ曲がる折曲部21aが形成され、折曲部21aには滑り止めのキャップが取り付けられる。これにより移動補助具100が後方に傾いた際に折曲部21aが床面に接触して移動補助具100の後方への転倒を防止することができる。従って折曲部21aは転倒防止フレーム21aと言い換えることができる。なお、本実施形態において折曲部21aは移動補助具100が後方に約4度傾いた際に床面に接触するように構成される。身体固定具により要介助者の体が固定されていない場合には、移動補助具が5度を超えて後方に傾くと要介助者が後方に転倒してしまう危険性が高くなるためである。
また、折曲部21aが平面視でハ字状(2本のサイドフレーム21の後端の離間距離が広い状態)に構成されることによりフットプレート3を大便器に近づけた際に大便器の下部が折曲部21aに接触して移動補助具100を大便器の正面にガイドする。これにより移動補助具100の位置を大便器と移動補助具100との間における要介助者の移乗を安全且つスムーズに行うことができる位置にガイドすることができる。
なお、折曲部21aは180度回動可能に設けることしてもよい。すなわち、本実施形態で2本のサイドフレーム21の折曲部21aは平面視でハ字状に構成されているが、逆ハ字状(2本のサイドフレーム21の後端の離間距離が狭い状態)に変形可能であることとしてもよい。当該構成により、車椅子を移動補助具100に近づけた際に車椅子の車輪部の間のスペースにサイドフレーム21を差し込んで、車椅子とフットプレート3との距離を近づけることができる。よって、車椅子と移動補助具100との間における要介助者の移乗を安全且つスムーズに行うことができる。
フロントフレーム22は平面視で前方に向かって広がる略く字状に形成される。当該構成により、フロントフレーム22が直線状であるときに比べて移動補助具100を男性用小便器により近づけることができ、要介助者は移動補助具100に載った状態で用をたすことができる。なお、フロントフレーム22の形状は略く字状に限定されるものではなく、要介助者と小便器との距離が用をたすには遠い状態においてフロントフレーム22が小便器の本体正面に衝突することを避ける形状(例えば略U字状)であればよい。
フットプレート3は要介助者が立位で載る踏み台である。フットプレート3は2本のサイドフレーム21に亘って着脱可能に設けられる。フットプレート3の前端は後述する支柱7よりも前方に位置し、要介助者の一方の脚をフットプレート3に載せて身体固定具により固定した際に固定した脚のつま先を支柱7よりも前方のフットプレート3に置くことができる。
また、フットプレート3の後端はサイドフレーム21の後端と支柱7が立設されるサイドフレーム21の略中央部との中間付近に位置し(つまりフットプレート3の後端部が2本のサイドフレーム21の後端部よりも前方に位置し)、サイドフレーム21の後部においてはその間にフットプレート3が配されないスペースS1が設けられる。つまり、スペースS1はフットプレート3の後方であって、要介助者の一方の脚をフットプレート3に載せて身体固定具により固定し、体を天板10に預けた状態で、固定されていない他方の脚が床面に届く範囲に形成される。
フットプレート3の後方は片脚が固定された状態で上半身を天板に乗り上げるように凭れさせた際に、他方の脚が自然に移動する位置であり、スペースS1がフットプレート3の後方に形成されることで要介助者が床面を蹴りやすくなる。
本実施形態でフットプレート3はサイドフレーム21の形状に沿って着脱可能に設けられるが、サイドフレーム21に対して傾斜角度を調整可能且つ着脱可能に設けることとしてもよい。傾斜角度を調整する方法は特に限られるものではないが、例えばフットプレート3の前端の上下方向の位置を調整可能な機構を有することとすればよい。フットプレート3の前端を上昇させることで移動補助具100を足関節訓練起立板(長期にわたる病臥中の足の重み等による尖足を矯正するための器具)として使用することができる。また、フットプレート3の前端を下降させることでフットプレート3に載った要介助者の重心が自然と前方に移動して天板10に体重を預けやすくなり、後方への転倒をより確実に防止することができる。
車輪部4は車輪部6に比べて小さな車輪である。車輪部4が小さな車輪であることにより、移動補助具100を低床ベッドに近づける際にベッドと床面の隙間にサイドフレーム21の後部を差し込むことができ、ベッドとの間における要介助者の移乗をスムーズに行うことができる。車輪部4は移動補助具100の後方への転倒に対する安全性の観点からは側面視で支柱7から離れていることが望ましく、移動補助具100の方向転換の容易性の観点からは側面視で要介助者の重心位置(要介助者が天板10に凭れた場合はサイドフレーム21における支柱7又は膝受け部81の位置)に近いことが望ましい。従って、サイドフレーム21における車輪部4の位置は両者を考慮して定められる。
具体的には、車輪部4の位置をフットプレート3上に載せられる要介助者の足よりも前方とすると、移動補助具100が後方に転倒しやすくなる。移動補助具100が後方に傾いても転倒防止フレーム21aが床面に接触することにより移動補助具100自体の転倒は防がれるが、移動補助具100が要介助者を中心に上下に揺れると走行性が悪化し、また、安全性も損なわれる。上述したように本実施形態の移動補助具100は要介助者のつま先が支柱7よりも前方のフットプレート3上に置かれる。従って車輪部4の位置は足の指を除く足の指の付け根から踵までの足底の長さに基づいて定められる。
成人の足のつま先から踵までの足底の長さは22cm〜30cm程度であり、成人を対象として移動補助具100を製造する場合には安全性の観点から最も足の大きな成人を基準に車輪部4の位置を定めることが望ましい。足の大きさが30cmの者の足の指の付け根から踵までの足底の平均的な長さは約23cmである。従って車輪部4の位置をサイドフレーム21において支柱7又は膝受け部81から後方に約23cm離間した位置とすることにより、安全性に考慮しつつ、方向転換の容易性を実現することができる。
また、本実施形態に示すように車輪部4の位置をフットプレート3の後端よりも後方とすることで要介助者がフットプレート3の後端部で起立した際に移動補助具100が後方に傾き不安定な状態になることを防ぐことができる。
車輪部6は移動補助具100の安定性及び走行性を向上するため、及び、サイドフレーム21の前部が上方に折れ曲がる形状であることから、車輪部4よりも大きな車輪が取り付けられる。車輪部4又は車輪部6の少なくとも一方を自在キャスター(旋回するキャスター)とすることで移動補助具100の進行方向を容易に調整することができる。望ましくは本実施形態にて示すように車輪部6を自在キャスターとし、車輪部4を固定キャスター(旋回しないキャスター)とするとよい。
その際、車輪部4はサイドフレーム21の内部に取り付けることとしてもよいが、各図で示すようにサイドフレーム21から左右方向に伸びる横軸に対して旋回不能に取り付けられることが望ましい。当該構成により、2個の車輪部4の離間距離を広くし、且つ、車輪部4の径を低床ベッドと床面との間に差し込むことが可能な最大の径を有する車輪とすることができる。2個の車輪部4の離間距離を広くし、車輪部4の径を可能な限り最大とすることで移動補助具100の安定性及び走行性が向上する。
車輪部4が自在キャスターである場合は車輪部4を低床ベッドと床面との隙間に差し込んだ後に車輪部4の回転をロックしなければ要介助者の移乗時に移動補助具100が横滑りする危険性があるが、車輪部4を差し込んだ後に車輪部4にロックを施すのは困難である。一方、本実施形態のように車輪部4を固定キャスターとすることで車輪部4を低床ベッドと床面との隙間に差し込んだ後にロックをしなくても横滑りしにくいので要介助者の移乗時における安全性を確保することができる。
車輪部6はフロントフレーム22から上下方向に伸びる縦軸に対して旋回可能に取り付けられる。車輪部6も車輪部4と同様に移動補助具100の前方への転倒に対する安全性の観点からは側面視で支柱7から離れていることが望ましく、移動補助具100の方向転換の容易性の観点からは側面視で要介助者の重心位置(支柱7或いは膝受け部81)に近いことが望ましい。特に要介助者が天板10に体重を預けると移動補助具100が前方に転倒する方向に力が加わること、及び、前方方向への移動は後方方向への移動よりも移動速度が速くなる可能性が高く床面の段差等に衝突した際には車輪部6を中心に移動補助具100が前方に回転する方向に強い力が加わることから、サイドフレーム21における車輪部6の位置は車輪部4に比べて前者をより重要視して考慮する必要がある。
車輪部6の位置は支柱7の高さに応じて定められ、支柱7の高さを高くすれば車輪部6と支柱7との離間距離が遠くなる。本実施形態において支柱7の高さは支柱7の上端に設けられる天板10に要介助者が無理なく凭れられる高さに設定され、例えば約110cmに設定される。当該構成において支柱7と車輪部6との離間距離は20cm以上であることが望ましく、30cm以上であることがより望ましい。本実施形態では支柱7と車輪部6との離間距離を支柱7と車輪部4との離間距離よりも遠くして移動補助具100の前方への転倒を防止し、より安定性の高い移動補助具100としている。
ロック機構5は要介助者が移動補助具100から移乗し、或いは、移動補助具100に移乗する際に車輪部6が旋回或いは回転することを防止し、移動補助具100が移動しないようにするものであり、移乗時における要介助者の安全を確保するものである。また、上述したように要介助者が小便器を使用している場合等に、ロック機構5により移動補助具100を不動状態で維持することができる。ロック機構は少なくとも自在キャスターが備え、本実施形態では自在キャスターである車輪部6がロック機構5を備えているが車輪部4を自在キャスターとする場合には車輪部4にロック機構が備えられる。なお、固定キャスターであってもロック機構を備えることとしてもよい。
支柱7はサイドフレーム21の略中央部から上方に向かって立設される。支柱7の上下方向略中央部には膝固定具8が設けられる。膝固定具8は要介助者の膝頭を受ける膝受け部81及び要介助者の膝が左右方向にずれるのを防ぐ2枚のサイドパネル82を有する。後述する胴部固定具9により要介助者の胴部が固定されることで、要介助者の膝頭が膝受け部81に押し当てられる。
支柱7の上部には胴部固定具9が設けられる。胴部固定具9は要介助者の腹部を受ける腹部受け部91を有する。要介助者の腹部を腹部受け部91に押し当てた状態で図示しないベルトで腰部側から腹部を腹部受け部91に向かって押し付けることで要介助者の胴部が腹部受け部91に対して固定される。
自力で立位状態を維持するのが困難な要介助者の立位状態を維持するためには、足裏、膝、胴部の3点を支持すればよい。本実施形態において足裏は要介助者がフットプレート3に載ることで要介助者の自重により足裏がフットプレート3に押し付けられる。胴部は上述したように図示しないベルトで腹部を腹部受け部91に向かって押し当てることで要介助者の胴部が腹部受け部91に対して固定される。膝は上述したように要介助者の胴部が腹部受け部91に対して固定されることで膝受け部81に押し当てられる。このような3点支持により自力で立位状態を維持するのが困難な要介助者の立位状態を維持可能である。
支柱7の上端には天板10が設けられる。天板10は平板であり、側壁のうち要介助者が接触する側壁は前方に向かって窪んだ形状に形成される。当該構成により、上述したように要介助者が移動補助具100に載ったまま小便器を使用する際に要介助者の体をより小便器に近づけることができる。天板10はフットプレート3の後部に対して後方に向かって(要介助者に向かって)約5度傾斜した状態で支柱7に設けらえる。当該構成により、要介助者が天板10に凭れた際の要介助者の起立姿勢を正しい起立姿勢とし、姿勢矯正を図ることができる。
天板10は高さ及び傾斜角度が調整可能に設けられることとしてもよい。天板10のフットプレート3に対する高さを調整可能な構造は特に限られるものではないが、例えば天板10の底面が支柱7内部に差し込み可能な高さ調整軸を備え任意の高さでロックし或いは段階的に設けられた複数の高さのうちいずれかの高さでロックすることで天板10の高さを調整可能とすればよい。天板10の傾斜角度をフットプレート3に対して調整可能な構造は特に限られるものではないが、例えば支柱7がその上端に固定板を備え、天板10が固定板に支持アームを介して固定板に取り付けられ、支持アームによる天板10の支持位置を変更可能とすることで天板10の傾斜角度を調整可能とすればよい。
天板10の高さを調整可能とすることにより要介助者の身長、体格に応じて天板10の高さを適切な位置とすることができる。また、天板10の角度を調整可能とすることにより、天板の角度を用途に応じて適切な傾斜角度とすることができる。
<使用方法>
以下、本実施形態の移動補助具100の使用方法について説明する。なお、本実施形態及び以降の実施形態において、一方の脚(本例では左脚)が不自由で自力での立位は困難であるが他方の脚(本来では右脚)は比較的動く要介助者を要介助者A、両脚が不自由で自力での立位が困難な要介助者を要介助者B、自力歩行は困難であるが両脚が比較的動く要介助者を要介助者Cとして説明する。
要介助者Aは自力での立位状態の維持が困難であるが、右脚は比較的動くため、不自由な脚である左脚の足裏をフットプレート3に載せた状態で左脚の膝を膝受け部81に対して押し当て、また、胴部を腹部受け部91に固定する。これにより要介助者Aの立位状態が維持される。この状態で右脚は自由に動かすことができるため、フットプレート8の後方に設けられたスペースS1を介して右脚の足裏を床面に接触させることができる。そして右脚を使って床面を蹴ることで車輪部4及び車輪部6が回転し、要介助者Aの意思で移動補助具100を所望の方向に移動させることができる。要介助者Aは両手や上半身で天板に凭れかかることで上半身の体重を天板に預けることが可能であり、凭れかかる位置を変えて体の重心の位置を変えることで自在キャスターである車輪部6が旋回して移動補助具100が進む方向を所望の方向とすることができる。
要介助者Bは両脚が不自由であるので、自ら移動補助具100を駆動することができない。従って、両脚の足裏をフットプレート3に載せた状態で膝受け部81で両脚の膝を支持し、また、腹部受け部91により胴部を固定する。これにより要介助者Bの立位状態が維持される。介助者は要介助者Bの立位状態が維持されたことを確認した上で、移動補助具100を押したり引いたりして水平方向への力を加えて車輪部6を旋回させ、また、車輪部4及び車輪部6を回転させることで要介助者Bを移動させることができる。
要介助者Cは両脚を比較的動かすことができ、自力立位が可能である。従って、ベースフレーム2からフットプレート3を取り外すことで移動補助具100を歩行器のように使用可能である。要介助者Cは歩行しながら車輪部6を旋回させ、また、車輪部4及び車輪部6を回転させることで移動することができる。
本実施形態によれば、ベースフレームの前後に設けられる車輪部のうち、一方の車輪部が固定キャスターであり、他方が自在キャスターである。よって、要介助者が移動補助具によって立位補助を受けた状態で移動補助具を移動させる際に、要介助者が移動補助具に凭れかかる方向と直進方向とが異なっていても固定キャスターは旋回せずに直進する。また、要介助者が移動補助具の進行方向を異なる方向に変更する際には自在キャスターを旋回させることで容易に進行方向を変更することができる。当該構成により移動補助具の直進性、旋回性を両立させることができる。
また、前部に設けられる車輪部が自在キャスターであり、後部に設けられる車輪部が固定キャスターである。当該構成により後部に設けられる車輪部を低床ベッドと床面との隙間に差し込んだ後にロックをしなくても横滑りしにくいので要介助者の移乗時における安全性を確保することができる。
また、ベースフレームにおける第2の車輪部の位置はベースフレームにおける支柱又は身体固定具の位置と足の指の付け根から踵までの足底の長さとに基づいて定められる。当該構成により、安全性及び方向転換の容易性を両立させた移動補助具とすることができる。
また、ベースフレームにおける第2の車輪部の位置はフットプレートの後端よりも後方に位置する。当該構成により、要介助者がフットプレートの後端部で起立した際に移動補助具100が後方に傾き不安定な状態になることを防ぐことができる。
また、ベースフレームには第2の車輪部(車輪部4)が取り付けられた位置から後方に伸びる転倒防止フレームを備えている。従って、要介助者がバランスを崩すなどしてフットプレート上における要介助者の重心位置が後方に移動して移動補助具が後方に傾いても、転倒防止フレームが床面に接触してそれ以上の転倒を防ぐことができる。
また、支柱の上端に天板が設けられ、当該天板はフットプレートに対して傾斜して設けられる。天板を後方(要介助者)に向かって傾斜させることでフットプレート上で立位状態を維持する要介助者が天板に凭れかかった際に、天板が平坦(フットプレートに平行)である場合に比べて腕や肘の位置が高くなり上体が起きるので背筋が伸び、要介助者の起立姿勢を正しい起立姿勢とすることができる。
また、天板は支柱によってフットプレートに対する傾斜角度を調整可能に支持される。従って要介助者の起立姿勢を正しい起立姿勢にする際には上述したように後方に向かって傾斜させ、天板上で作業を行う場合には天板を平坦とするなど用途に応じて適切な傾斜角度とすることができる。
また、天板は支柱によってフットプレートに対する高さを調整可能に支持される。従って、要介助者の身長、体格に応じて適切な高さとすることができる。
また、フットプレートはサイドフレームに対する傾斜角度を調整可能にサイドフレームに設けられる。従って移動補助具の使用用途(移動用途、足関節訓練用途など)に応じてフットプレートの角度を適切な角度とすることができる。
また、ベースフレームは所定の間隔を隔てて配される2本のサイドフレームと、2本のサイドフレームをその前部において接続するフロントフレームとを備える。そしてフロントフレームは男性用小便器の正面壁形状に対応して前方に向かって広がる形状に形成されており、移動補助具を男性用小便器により近づけることができる。
また、サイドフレームはその前部が後部に対して上方に折れ曲がる形状に形成されることにより、複数台の移動補助具100を収納する際に、連続する一方の移動補助具100のサイドフレーム21の後部を他方の移動補助具100のサイドフレームの前部の下に潜り込ませるようにして重ねることができるため、収納スペースを有効に利用することができる。
<第2実施形態>
図7〜図12は夫々本実施形態の移動補助具の外観を示す斜視図、正面図、背面図、右側面図、平面図、底面図である。なお、以降、図7〜図12の説明においては、図9の紙面に対向する観察者の上側を「上」、下側を「下」、左手側を「左」、右手側を「右」とし、また、図11の紙面に対向する観察者の上側を「後」、下側を「前」として説明する。
本実施形態において移動補助具200はベースフレーム2、ベースフレーム2上に設けられるフットプレート3、ベースフレーム2の後部に設けられる2個の車輪部4、ベースフレーム2の前部に設けられてロック機構5を有する車輪部6、ベースフレーム2に立設される2本の支柱7、支柱7の中央部付近に設けられて要介助者の膝を支持する膝固定具8、支柱7の上部に設けられて要介助者の胴を固定する胴部固定具9(本明細書及び特許請求の範囲において膝固定具8と胴部固定具9を合わせて身体固定具とも称する)及び支柱7の上端に設けられる天板10を備える。なお、図7〜図12において図の簡略化のため符号2(ベースフレーム)、3(フットプレート)、8(膝固定具)、9(胴部固定具)は図示せず、各部を構成する構成(例えば膝固定具8については符号81(膝受け部)及び82(サイドパネル))について符号を付して図示している。
ベースフレーム2は所定の間隔を隔てて略平行に配される2本のサイドフレーム21、2本のサイドフレーム21をその前部で接続する略く字状のフロントフレーム22、左右のサイドフレーム21を夫々左右の支柱7と連結して支柱7に掛かる力を分散する2本の連結フレーム23、2本のサイドフレーム21の略中間に2本のサイドフレーム21と略平行に配されると共に2本のサイドフレーム21よりも短いサブフレーム24、及び、サブフレーム24の上端及び下端を夫々2本のガイドフレーム21に接続する2本の接続フレーム25を有する。
サイドフレーム21は後端部から中央部にかけて移動補助具200が載置される床面に略平行(側面視で車輪部4の下端部と車輪部6の下端部を結ぶ直線に略平行)に伸びる。また、サイドフレーム21は中央部から前端部にかけてその後部に対して上方に折れ曲がる形状に形成される。サイドフレーム21より短いサブフレーム24は後端位置がガイドフレーム21の後端部に合わせられており、後端部から前部にかけて移動補助具200が載置される床面に略平行(側面視で車輪部4の下端部と車輪部6の下端部を結ぶ直線に略平行)に伸び、前部から前端部にかけてその後部に対して上方に折れ曲がる形状に形成されることでサイドフレーム21と平行に配される。当該構成により複数台の移動補助具200を収納する際に、連続する一方の移動補助具200のサイドフレーム21の後部を他方の移動補助具200のサイドフレーム21及びサブフレーム24の前部の下に潜り込ませるようにして重ねることができるため、収納スペースを有効に利用することができる。
本実施形態においてサイドフレーム21の後端部は直線状であるが、第1実施形態と同様に折曲部21aを有する構成としてもよい。なお、本実施形態においてもサイドフレーム21において車輪部4より後方のフレーム(サイドフレーム21の後端部)は転倒防止フレームを構成する。
フロントフレーム22は平面視で前方に向かって広がる略く字状に形成される。当該構成により、フロントフレーム22が直線状であるときに比べて移動補助具200を男性用小便器により近づけることができ、要介助者は移動補助具200に載った状態で用をたすことができる。なお、フロントフレーム22の形状は略く字状に限定されるものではなく、要介助者と小便器との距離が用をたすには遠い状態においてフロントフレーム22が小便器の本体正面に衝突することを避ける形状(例えば略U字状)であればよい。
フットプレート3は要介助者が立位で載る踏み台である。フットプレート3は左側に位置する第1プレート31と右側に位置する第2プレート32からなり、第1プレート31と第2プレート32は前後に配されたヒンジHによって回動可能に連結される。ヒンジを閉じた状態(図7に示すように第1プレート31と第2プレート32を重ねるように折り畳んだ状態)でフットプレート3は一方のサイドフレーム21とサブフレーム24に亘って着脱可能に設けられる。フットプレート3の前端は後述する支柱7よりも前方に位置し、要介助者の一方の脚をフットプレート3に載せて身体固定具により固定した際に固定した脚のつま先を支柱7よりも前方のフットプレート3に置くことができる。
なお、本実施形態ではフットプレート3を折り畳み式とし、着脱する際には第1プレート31及び第2プレート32を共に着脱する構成となっているがこれに限られるものではなく、第1プレート31及び第2プレート32を個別に着脱可能な構成としてもよい。
第1プレート31及び第2プレート32の一方を他方のプレートに重ね、或いは、取外すことによりベースフレーム2の右側又は左側(一方のサイドフレーム21とフットプレート3との間)にスペースS2が設けられる。つまり、スペースS2はフットプレート3の側方であって、要介助者の一方の脚をフットプレート3に載せて身体固定具により固定し、体を天板10に預けた状態で、固定されていない他方の脚が床面に届く範囲に形成される。
歩行を行う際両脚は横に並んで前後に動かすものである。一方の脚で床面を蹴って移動補助具を移動させる際であっても、床面を蹴るためのスペースが他方の脚の側方に設けられることで、無理のない姿勢で(歩行するように)自然に床面を蹴ることができる。また、フットプレート3の後方で床面を蹴るのに比べて側方で床面を蹴ることでストロークが長くなり、床面を蹴ることによる一回あたりの移動補助具200の移動距離を長い距離とすることができる。
一方、図13に示すようにヒンジを開いた状態でフットプレート3は2本のサイドフレーム21に亘って着脱可能に設けられる。
本実施形態でフットプレート3はサイドフレーム21の形状に沿って着脱可能に設けられるが、サイドフレーム21に対して傾斜角度を調整可能且つ着脱可能に設けることとしてもよい。傾斜角度を調整する方法は特に限られるものではないが、例えばフットプレート3の前端の上下方向の位置を調整可能な機構を有することとすればよい。フットプレート3の前端を上昇させることで移動補助具200を足関節訓練起立板(長期にわたる病臥中の足の重み等による尖足を矯正するための器具)として使用することができる。また、フットプレート3の前端を下降させることでフットプレート3に載った要介助者の重心が自然と前方に移動して天板10に体重を預けやすくなり、後方への転倒をより確実に防止することができる。
車輪部4は車輪部6に比べて小さな車輪である。車輪部4が小さな車輪であることにより、移動補助具200を低床ベッドに近づける際にベッドと床面の隙間にサイドフレーム21の後部を差し込むことができ、ベッドとの間における要介助者の移乗をスムーズに行うことができる。車輪部4は移動補助具200の後方への転倒に対する安全性の観点からは側面視で支柱7から離れていることが望ましく、移動補助具200の方向転換の容易性の観点からは側面視で要介助者の重心位置(要介助者が天板10に凭れた場合はサイドフレーム21における支柱7又は膝受け部81の位置)に近いことが望ましい。従って、サイドフレーム21における車輪部4の位置は両者を考慮して定められる。
具体的には、車輪部4の位置をフットプレート3上に載せられる要介助者の足よりも前方とすると、移動補助具200が後方に転倒しやすくなる。移動補助具200が後方に傾いても転倒防止フレーム21aが床面に接触することにより移動補助具200自体の転倒は防がれるが、移動補助具200が要介助者を中心に上下に揺れると走行性が悪化し、また、安全性も損なわれる。上述したように本実施形態の移動補助具200は要介助者のつま先が支柱7よりも前方のフットプレート3上に置かれる。従って車輪部4の位置は足の指を除く足の指の付け根から踵までの足底の長さに基づいて定められる。
成人の足のつま先から踵までの足底の長さは22cm〜30cm程度であり、成人を対象として移動補助具200を製造する場合には安全性の観点から最も足の大きな成人を基準に車輪部4の位置を定めることが望ましい。足の大きさが30cmの者の足の指の付け根から踵までの足底の平均的な長さは約23cmである。従って車輪部4の位置をサイドフレーム21において支柱7又は膝受け部81から後方に約23cm離間した位置とすることにより、安全性に考慮しつつ、方向転換の容易性を実現することができる。
車輪部6は移動補助具200の安定性及び走行性を向上するため、及び、サイドフレーム21の前部が上方に折れ曲がる形状であることから車輪部4よりも大きな車輪が取り付けられる。車輪部4又は車輪部6の少なくとも一方を自在キャスター(旋回するキャスター)とすることで移動補助具200の進行方向を容易に調整することができる。望ましくは本実施形態にて示すように車輪部6を自在キャスターとし、車輪部4を固定キャスター(旋回しないキャスター)とするとよい。
その際、車輪部4はサイドフレーム21の内部に取り付けることとしてもよいが、各図で示すようにサイドフレーム21から左右方向に伸びる横軸に対して旋回不能に取り付けられることが望ましい。当該構成により、2個の車輪部4の離間距離を広くし、且つ、車輪部4の径を低床ベッドと床面との間に差し込むことが可能な最大の径を有する車輪とすることができる。2個の車輪部4の離間距離を広くし、車輪部4の径を可能な限り最大とすることで移動補助具200の安定性及び走行性が向上する。
車輪部4が自在キャスターである場合は車輪部4を低床ベッドと床面との隙間に差し込んだ後に車輪部4の回転をロックしなければ要介助者の移乗時に移動補助具200が横滑りする危険性があるが、車輪部4を差し込んだ後に車輪部4にロックを施すのは困難である。一方、本実施形態のように車輪部4を固定キャスターとすることで車輪部4を低床ベッドと床面との隙間に差し込んだ後にロックをしなくても横滑りしにくいので要介助者の移乗時における安全性を確保することができる。
車輪部6はフロントフレーム22から上下方向に伸びる縦軸に対して旋回可能に取り付けられる。車輪部6も車輪部4と同様に移動補助具200の前方への転倒に対する安全性の観点からは側面視で支柱7から離れていることが望ましく、移動補助具200の方向転換の容易性の観点からは側面視で要介助者の重心位置(支柱7或いは膝受け部81)に近いことが望ましい。特に要介助者が天板10に体重を預けると移動補助具200が前方に転倒する方向に力が加わること、及び、前方方向への移動は後方方向への移動よりも移動速度が速くなる可能性が高く床面の段差等に衝突した際には車輪部6を中心に移動補助具200が前方に回転する方向に強い力が加わることから、サイドフレーム21における車輪部6の位置は車輪部4に比べて前者をより重要視して考慮する必要がある。
車輪部6の位置は支柱7の高さに応じて定められ、支柱7の高さを高くすれば車輪部6と支柱7との離間距離が遠くなる。本実施形態において支柱7の高さは支柱7の上端に設けられる天板10に要介助者が無理なく凭れられる高さに設定され、例えば約110cmに設定される。当該構成において支柱7と車輪部6との離間距離は20cm以上であることが望ましく、30cm以上であることがより望ましい。本実施形態では支柱7と車輪部6との離間距離を支柱7と車輪部4との離間距離よりも遠くして移動補助具200の前方への転倒を防止し、より安定性の高い移動補助具100としている。
ロック機構5は要介助者が移動補助具200から移乗し、或いは、移動補助具200に移乗する際に車輪部6が旋回或いは回転することを防止し、移動補助具200が移動しないようにするものであり、移乗時における要介助者の安全を確保するものである。また、上述したように要介助者が小便器を使用している場合等に、ロック機構5により移動補助具200を不動状態で維持することができる。ロック機構は少なくとも自在キャスターが備え、本実施形態では自在キャスターである車輪部6がロック機構5を備えているが車輪部4を自在キャスターとする場合には車輪部4にロック機構が備えられる。なお、固定キャスターであってもロック機構を備えることとしてもよい。
支柱7はサイドフレーム21の略中央部から上方に向かって立設される。支柱7の上下方向略中央部には膝固定具8が設けられる。膝固定具8は要介助者の膝頭を受ける膝受け部81及び要介助者の膝が左右方向にずれるのを防ぐ2枚のサイドパネル82を有する。後述する胴部固定具9により要介助者の胴部が固定されることで、要介助者の膝頭が膝受け部81に押し当てられる。
支柱7の上部には胴部固定具9が設けられる。胴部固定具9は要介助者の腹部を受ける腹部受け部91を有する。要介助者の腹部を腹部受け部91に押し当てた状態で図示しないベルトで腰部側から腹部を腹部受け部91に向かって押し付けることで要介助者の胴部が腹部受け部91に対して固定される。
自力で立位状態を維持するのが困難な要介助者の立位状態を維持するためには、足裏、膝、胴部の3点を支持すればよい。本実施形態において足裏は要介助者がフットプレート3に載ることで要介助者の自重により足裏がフットプレート3に押し付けられる。胴部は上述したように図示しないベルトで腹部を腹部受け部91に向かって押し当てることで要介助者の胴部が腹部受け部91に対して固定される。膝は上述したように要介助者の胴部が腹部受け部91に対して固定されることで膝受け部81に押し当てられる。このような3点支持により自力で立位状態を維持するのが困難な要介助者の立位状態を維持可能である。
支柱7の上端には天板10が設けられる。天板10は平板であり、側壁のうち要介助者が接触する側壁は前方に向かって窪んだ形状に形成される。当該構成により、上述したように要介助者が移動補助具200に載ったまま小便器を使用する際に要介助者の体をより小便器に近づけることができる。天板10はフットプレート3の後部に対して後方に向かって(要介助者に向かって)約5度傾斜した状態で支柱7に設けらえる。当該構成により、要介助者が天板10に凭れた際の要介助者の起立姿勢を正しい起立姿勢とし、姿勢矯正を図ることができる。
天板10は高さ及び傾斜角度が調整可能に設けられることとしてもよい。天板10のフットプレート3に対する高さを調整可能な構造は特に限られるものではないが、例えば天板10の底面が支柱7内部に差し込み可能な高さ調整軸を備え任意の高さでロックし或いは段階的に設けられた複数の高さのうちいずれかの高さでロックすることで天板10の高さを調整可能とすればよい。天板10の傾斜角度をフットプレート3に対して調整可能な構造は特に限られるものではないが、例えば支柱7がその上端に固定板を備え、天板10が固定板に支持アームを介して固定板に取り付けられ、支持アームによる天板10の支持位置を変更可能とすることで天板10の傾斜角度を調整可能とすればよい。
天板10の高さを調整可能とすることにより要介助者の身長、体格に応じて天板10の高さを適切な位置とすることができる。また、天板10の角度を調整可能とすることにより、天板の角度を用途に応じて適切な傾斜角度とすることができる。
<使用方法>
以下、本実施形態の移動補助具200の使用方法について説明する。
要介助者Aは自力での立位状態の維持が困難であるが、右脚は比較的動くため、第2ププレート32を第1プレート31の上に重ねるようにフットプレート3のヒンジHを閉じた状態で(折り畳んだ状態で)フットプレート3をベースフレーム2上に取り付け、不自由な脚である左脚の足裏をフットプレート3(第2プレート32)に載せた状態で左脚の膝を膝受け部81に対して押し当て、また、胴部を腹部受け部91に固定する。
これにより要介助者Aの立位状態が維持される。この状態で右脚は自由に動かすことができるため、フットプレート8の側方に設けられたスペースS2を介して右脚の足裏を床面に接触させることができる。そして右脚を使って床面を蹴ることで車輪部4及び車輪部6が回転し、要介助者Aの意思で移動補助具200を所望の方向に移動させることができる。通常の歩行と同じように左脚の横で右脚を動かして無理のない姿勢で移動補助具200を移動させることができる。また、右脚を体の前方に出し、床面を蹴って右脚が体の後方に位置するまで床面を蹴り続けることが可能であり、床面を蹴ることによる一回あたりの移動補助具200の移動距離を長い距離とすることができる。
また、要介助者Aは両手や上半身で天板に凭れかかることで上半身の体重を天板に預けることが可能であり、凭れかかる位置を変えて体の重心の位置を変えることで自在キャスターである車輪部6が旋回して移動補助具200が進む方向を所望の方向とすることができる。
要介助者Bは両脚が不自由であるので、自ら移動補助具200を駆動することができない。従って、フットプレート3のヒンジHを開いた状態で(折り畳んだ状態で)フットプレート3をベースフレーム2上に取り付け、両脚の足裏をフットプレート3に載せた状態で膝受け部81で両足の膝を支持し、また、腹部受け部91により胴部を固定する。これにより要介助者Bの立位状態が維持される。介助者は要介助者Bの立位状態が維持されたことを確認した上で、移動補助具200を押したり引いたりして水平方向への力を加えて車輪部6を旋回させ、また、車輪部4及び車輪部6を回転させることで要介助者Bを移動させることができる。
要介助者Cは両脚を比較的動かすことができ、自力立位が可能である。従って、ベースフレーム2からフットプレート3を取り外すことで移動補助具200を歩行器のように使用可能である。要介助者Cは歩行しながら車輪部6を旋回させ、また、車輪部4及び車輪部6を回転させることで移動することができる。
本実施形態によれば第1実施形態と同様の効果を奏する。
また、フットプレートは第1プレートと第2プレートとを連結部を介して回動可能に連結してなり、一方のプレートを他方のプレートに対して回動して折り畳み可能に構成される。或いは、第1プレート及び第2プレートは個別にベースフレーム2に対して着脱可能に設けられる。従って要介助者が両脚をフットプレート上に載せる場合には両プレートを並べ、要介助者が片脚をフットプレート上に載せる場合には両プレートを折り畳み或いは一方のプレートを取り外すことで容易にフットプレートの形態を切り替えることができる。
<補足>
第1実施形態においてフットプレート3をベースフレーム2に対して着脱可能としたが、ベースフレーム2に固定的に取り付けることとしてもよい。また第2実施形態においてフットプレート3は折り畳み式であってベースフレーム2に対して着脱可能としたが、横幅方向の長さが2本のサイドフレーム21の間隔の略半分の長さのフットプレート3をベースフレーム2に固定的に取り付けることしてもよい。当該構成であっても、一方の脚は不自由であるものの他方の脚を比較的動かすことができる要介助者が立位補助を受けながら自力で移動補助具を駆動することが可能である。
第1実施形態及び第2実施形態において支柱7の本数、車輪部4及び車輪部6の数、身体固定具の固定構造、ベースフレーム2のフレーム構造等は要介助者の安全を確保できる範囲で適宜変更してもよい。
第2実施形態においてフットプレート3を折り畳むことで形成されるスペースS2は一方のサイドフレーム21とサブフレーム24と2本の接続フレーム25の左部又は右部との4辺に囲まれて形成されるが、後方側を開放して形成することとしてもよい。具体的な構成としては、例えばサブフレーム24の後部に車輪部4を取り付けることで、折り畳まれたフットプレート3を安定的に支持可能としてベースフレーム2が後方側の接続フレーム25を備えない構成としてもよい。当該構成により、スペースS2内で脚を床面に接触させて移動補助具200を移動させた場合に脚に接続フレーム25が当たることを防ぐことができる。
また、フットプレート3の形状及びベースフレーム2に対する取付け構造は、一方の脚が固定された状態で他方の脚が届く範囲で容易に床面を蹴ることができるスペースが形成される限りにおいて適宜変更可能である。例えば、図14に示すように平面視でフットプレート3の後部の一部が窪んだ形状としてもよいし、フットプレート3の横幅方向の長さを2本のサイドフレーム21の間隔の略半分の長さとして左右にスライド可能に配することとしてもよい。
また、第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせて、フットプレート3の後方及び側方にスペースを形成することとしてもよい。フットプレート3を構成する2枚のプレート(第1プレート31及び第2プレート32)が折り畳み可能或いは個別に着脱可能な構成においては2枚のプレートが開かれた状態或いは両プレートが取り付けられた状態でフットプレート3の後方にスペースが形成される。また、2枚のプレートが折り畳まれた状態或いは一方のプレートが取り外された状態でフットプレート3の後方及び側方にスペースが形成される。
具体的には第2実施形態の変形例の移動補助具200として図15〜図20に例示されるように2枚のプレートから構成され折り畳み可能であり、且つ、後端がサイドフレーム21の後端と支柱7が立設されるサイドフレーム21の略中央部との中間付近に位置する(つまり後端部が2本のサイドフレーム21の後端部よりも前方に位置する)フットプレート3を備えることとすればよい。また、図15〜図20に示す構成においてサイドフレーム21の後端側に設けられる接続フレーム25を備えない構成とすることとしてもよい。
また、各実施形態において車輪部4同士の離間距離よりも車輪部6同士の離間距離のほうが広い構成となっている。これは要介助者が天板10に体重を預けた状態で移動補助具を駆動することからバランスを崩した際に移動補助具に対して前方及び側方に転倒する力が加わることを考慮したものである。両離間距離が略同一の場合は側方への転倒に弱く、車輪部6同士の離間距離が車輪部4同士の離間距離よりも狭い場合には前方への転倒に弱い。従って車輪部6同士の離間距離を車輪部4同士の離間距離よりも広くすることで前方及び側方への転倒に対して強い移動補助具となる。
なお、両離間距離を十分に確保すれば両離間距離を略同一としても側方に転倒しにくくなるが、上述したように大便器に対する接近性及びフットプレート3の車椅子に対する接近性を確保するため、車輪部4同士の離間距離は比較的狭い距離に設定されている。そこで車輪部6同士の離間距離を車輪部4同士の離間距離よりも広くすることで前方及び側方への転倒に対して強い移動補助具となる。