JP6339680B2 - エンシファー属菌株およびこれを用いたプシコース生産方法 - Google Patents

エンシファー属菌株およびこれを用いたプシコース生産方法 Download PDF

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Description

土壌から新規に分離された菌株エンシファーアドヘレンス(Ensifer adhaerens)およびこれを用いたプシコース製造方法が提供される。
プシコース(psicose)は、果糖の3番炭素のエピマーであって、果糖の70%に該当する甘味度を有しており、血糖調節、虫歯予防および肝で脂肪合成を阻害する機能性糖である。
砂糖代替甘味料として多く使用されている糖アルコール類は、一定量以上摂取時、下痢を誘発するなどの副作用があるが、プシコースは知られた副作用がない。したがってプシコースの甘味料としての関心が高まっており、効率的なプシコース生産方法に対する開発必要性が高まっている。
従来のプシコース生産は、モリブデン酸イオンの触媒作用を用いて果糖からプシコースを生産する化学的方法による生産と、アグロバクテリウムツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)由来のプシコースエピメラーゼによって果糖からプシコースを生産するような生物学的方法による生産とに分けられる。化学的方法によるプシコース生産は効率が低く副産物が発生することが問題となっており、生物学的方法も収率が低く生産費用が高いという問題点がある。
したがって、副産物を生成しないながら、産業化に適した温度およびpH条件下で高い収率でプシコースを生産できる方法が要求されている。
本発明の一例は、果糖をプシコースに転換する酵素を生産する菌株を根圏土壌から分離する方法を提供する。
他の例は、プシコースに転換する新規なエンシファー(Ensifer)属菌株を提供する。
他の例は、前記エンシファー(Ensifer)属菌株、前記菌株の培養物、および/または前記菌株の破砕物を含むプシコース生産用組成物を提供する。
他の例は、前記菌株を用いて果糖からプシコースを生産する方法を提供する。
果糖をプシコースに転換する活性に優れた新規エンシファー(Ensifer)属菌株(例えば、エンシファーアドヘレンス(Ensifer adhaerens))を土壌から分離および同定し、前記菌株の菌体を用いて果糖からプシコースへの転換能を確認し、高いプシコース転換能を得るための菌体反応の最適温度、最適pHおよび金属イオン要求性有無を確認しプシコースを効率的に大量生産するための条件を確立して本発明を完成した。
本発明の一例は、果糖をプシコースに転換する新規エンシファー(Ensifer)属菌株を提供する。前記エンシファー(Ensifer)属菌株は、例えば、エンシファーアドヘレンス(Ensifer adhaerens)であり得る。
他の例は、前記菌株を用いて果糖からプシコースを生産する方法を提供する。前記製造方法において、高いプシコース転換能を得るための菌体の最適反応条件およびプシコースの大量生産のための条件を提案する。
以下、本発明をより詳しく説明する。
まず、新規なエンシファー(Ensifer)属菌株が提供される。前記エンシファー(Ensifer)属菌株は果糖をプシコースに転換する活性に優れた菌株であって、エンシファーアドヘレンス(Ensifer adhaerens)、エンシファーグラマティクス(Ensifer garamanticus)、エンシファーソヤー(Ensifer sojae)、エンシファーメキシカヌス(Ensifer mexicanus)、エンシファーヌミディクス(Ensifer numidicus)などからなる群より選択された1種以上であり、例えば、エンシファーアドヘレンス(Ensifer adhaerens)菌株であり得る。
一具体例で、前記エンシファー(Ensifer)属菌株は、寄託番号KCCM11405Pのエンシファーアドヘレンス(Ensifer adhaerens)菌株であり得る。前記エンシファーアドヘレンス(Ensifer adhaerens)菌株は16SリボソームRNA配列が配列番号1の通りであり、硝酸塩還元能、ウレアーゼ(Urease)活性、ベータ−グルコシダーゼ活性、およびベータ−ガラクトシダーゼ活性を有し、代謝基質としてD−グルコース、L−アラビノース、D−マンノース、D−マンニトール、N−アセチルグルコサミン、D−マルトース、およびリンゴ酸(Malicacid)を用いることができる。また、前記エンシファーアドヘレンス(Ensifer adhaerens)菌株は、L−トリプトファン分解能、D−グルコース発酵能、アルギニンジヒドロラーゼ(Arginine dihydrolase)活性、ゼラチン加水分解能、グルコン酸カリウム(Potassium gluconate)利用能、カプリン酸(Capric acid)利用能、アジピン酸(Adipic acid)利用能、クエン酸三ナトリウム(Trisodium citrate)利用能、およびフェニル酢酸(Phenylacetic acid)利用能は有しない。
前記エンシファー(Ensifer)属菌株は、果糖をプシコースに転換させるプシコース転換能に優れることを特徴とする。前記プシコース転換能は、前記エンシファー(Ensifer)属菌株が果糖をプシコースに転換させる酵素を生産することによって得られるものであって、前記エンシファー(Ensifer)属菌株はプシコース転換能の高い酵素を生産するかプシコース転換酵素を大量で生産して優れたプシコース転換能を示すことができる。したがって、前記エンシファー(Ensifer)属菌株はプシコース製造に有用に適用され、プシコース生産収率をより増進させることができる。
したがって、前記エンシファー(Ensifer)属菌株の菌体、前記菌株の培養物、および前記菌株の破砕物からなる群より選択された1種以上を含むプシコース生産用組成物が提供される。前記培養物は前記エンシファー(Ensifer)属菌株から生産された酵素を含むものであって、前記菌株の前記菌株を含むか、菌株を含まない無細胞(cell−free)形態であり得る。前記破砕物は、前記エンシファー(Ensifer)属菌株を破砕した破砕物または前記破砕物を遠心分離して得られた上澄み液を意味するものであって、前記エンシファー(Ensifer)属菌株から生産された酵素を含むものである。本明細書において、別途の言及がない限り、プシコースの製造に使用されるエンシファー(Ensifer)属菌株は、前記菌株の菌体、前記菌株の培養物および前記菌株の破砕物からなる群より選択された1種以上を意味するものとして使用される。
また、前記エンシファー(Ensifer)属菌株を使用するプシコース生産方法が提供される。前記プシコース生産方法は、前記エンシファー(Ensifer)属菌株を果糖と反応させる段階を含む。一具体例で、前記エンシファー(Ensifer)属菌株を果糖と反応させる段階は、前記エンシファー(Ensifer)属菌株の菌体を果糖が含まれている培養培地で培養する段階によって遂行できる。他の具体例で、前記エンシファー(Ensifer)属菌株を果糖と反応させる段階は、前記菌株(菌体、菌株の培養物、および/または菌株の破砕物)を果糖と接触させる段階、例えば、前記菌株を果糖と混合する段階または前記菌株が固定化された担体に果糖を接触させる段階によって遂行できる。
このようにエンシファー(Ensifer)属菌株を果糖と反応させることによって果糖をプシコースに転換して果糖からプシコースを生産することができる。
前記プシコース生産方法において、効率的なプシコース生産のために、基質として使用される果糖の濃度は、全体反応物基準に40〜75%(w/v)、例えば、50〜75%(w/v)であり得る。果糖の濃度が前記範囲より低ければ経済性が低くなり、前記範囲より高ければ果糖がよく溶解されないので、果糖の濃度は前記範囲にすることがよい。前記果糖は緩衝溶液または水(例えば、蒸留水)に溶解された溶液状態で使用することができる。
前記プシコース生産方法において、前記反応は、pH6〜9.5、例えば、pH7〜9、pH7〜8またはpH8〜9の条件下で遂行できる。また、前記反応は、30℃以上、例えば、40℃以上の温度条件下で遂行できる。温度が80℃以上になれば、基質である果糖の褐変現象が起こることがあるので、前記反応は、40〜80℃、例えば、50〜75℃、60〜75℃、または68〜75℃の条件下で遂行できる。また、前記反応時間が長いほど、プシコース転換率が高まる。
例えば、前記反応時間は、1時間以上、例えば2時間以上、3時間以上、4時間以上、5時間以上または6時間以上にすることがよい。反応時間が48時間を超過すればプシコース転換率の増加率が微小であるか、むしろ減少するので、反応時間は48時間を超過しないことがよい。したがって、前記反応時間は1〜48時間、2〜48時間、3〜48時間、4〜48時間、5〜48時間、または6〜48時間にすることができ、産業的および経済的側面を考慮して、1〜48時間、2〜36時間、3〜24時間、3〜12時間、または3〜6時間程度にすることができるが、これに制限されるのではない。前記条件は、果糖からプシコースへの転換効率が最大化される条件として選定されたものである。
また、前記プシコース生産方法において、使用される菌株の菌体濃度は、全体反応物基準に、5mg(dcw:乾燥細胞重量)/ml以上、例えば、5〜100mg(dcw)/ml、10〜90mg(dcw)/ml、20〜80mg(dcw)/ml、30〜70mg(dcw)/ml、40〜60mg(dcw)/ml、または45〜55mg(dcw)/mlであり得る。菌体濃度が前記範囲未満である場合にはプシコース転換活性が低いか殆どなく、前記範囲を超過すれば菌体が過度に多くなってプシコース転換反応の全体的な効率が低くなるので、菌体濃度は前記範囲にすることがよい。
前記エンシファー(Ensifer)属菌株が生産する果糖をプシコースに転換させる酵素(例えば、エピメラーゼ)は金属イオンによって活性化が調節されるので、前記エンシファー(Ensifer)属菌株を用いたプシコース生産において、金属イオンを添加すると、果糖からプシコースへの転換効率、即ち、プシコース生産率が増加できる。
したがって、前記エンシファー(Ensifer)属菌株を含むプシコース生産用組成物は、金属イオンを追加的に含むものであり得る。また、前記エンシファー(Ensifer)属菌株を用いたプシコース生産方法は、金属イオンを添加する段階を追加的に含むことができる。一実施形態で、前記金属イオンは前記培養段階の培養培地に添加されるか、前記培養段階が前記金属イオンが添加された培養培地で行われるのであり得る。他の実施形態で、前記金属イオンは果糖に添加されるか、前記エンシファー(Ensifer)属菌株と果糖との混合物に添加することができる。また他の実施形態で、前記エンシファー(Ensifer)属菌株が固定化された担体に添加されるか(果糖添加前)、前記エンシファー(Ensifer)属菌株が固定化された担体と果糖との混合物に添加されるか(果糖添加後)、または果糖添加時に果糖と混合物の形態にまたはそれぞれ添加することができる。
前記金属イオンは、銅イオン、マンガンイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオン、ニッケルイオン、コバルトイオン、鉄イオン、アルミニウムイオンなどからなる群より選択された1種以上であり得る。例えば、前記金属イオンは、マンガンイオン、マグネシウムイオン、ニッケルイオン、コバルトイオンなどからなる群より選択された1種以上であり、一例で、前記金属イオンは、マンガンイオン、コバルトイオン、またはこれらの混合物であり得る。前記金属イオンの添加量が0.5mM未満である場合にはプシコース生産収率増進効果が微小であるので、前記金属イオンの添加量は0.5mM以上にすることができる。一方、前記金属イオンの添加量が5mMを超過すればその超過量に比べて効果が微小であるため、前記金属イオンの添加量は5mM以下にすることができる。例えば、前記金属イオンの添加量は0.5mM〜5mM、例えば、0.5〜2mM範囲にすることができる。
前記担体は、固定された菌株、または前記菌株から生産される酵素の活性が長期間維持される環境を造成することができるものであって、酵素固定化用途として使用できる公知された全ての担体であり得る。例えば、前記担体としてアルギン酸ナトリウム(soduim alginate)を使用することができる。アルギン酸ナトリウムは海藻類の細胞壁に豊富に存在する天然コロイド性多糖類であって、マンヌロン酸(β−D−mannuronic acid)とグルロン酸(α−L−gluronic acid)が造成されており、含量面では無作為にベータ−1,4結合をなして形成され、菌株または酵素が安定的に固定されて優れたプシコース収率を示すのに有利であり得る。一具体例で、プシコースの収率をより増進させるために、1.5〜4.0%(w/v)濃度のアルギン酸ナトリウム溶液(例えば、アルギン酸ナトリウム水溶液)、例えば、約2.5%の(w/v)濃度のアルギン酸ナトリウム溶液を菌株の固定化に使用することができる。例えば、菌株の菌体、前記菌株が生産した酵素を含む培養液、または前記菌株の破砕物の1〜2体積倍のアルギン酸ナトリウム水溶液に前記菌株の菌体、前記菌株が生産した酵素を含む培養物、または前記菌株の破砕物を添加して混合した後、前記得られた混合液を注射器ポンプと真空ポンプを用いて約0.2Mカルシウムイオン溶液に落としてビーズが生成されるようにすることによって、アルギン酸ナトリウム担体に菌株の菌体、前記菌株が生産した酵素を含む培養物、または前記菌株の破砕物が固定化させることができる。前記酵素は、前記菌株、菌株培養物または前記菌株の破砕物から通常の方法、例えば透析、沈殿、吸着、電気泳動、親和クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなどの方法によって精製されたものであり得る。
前記プシコース生産において、非イオン性界面活性剤を追加的に使用することによってプシコース生産効率をより増進させることができる。前記非イオン性界面活性剤は細胞膜の透過性を高めて、細胞膜内部にある酵素が遊離されるようにし、これによってプシコース生産効率を増進させることができる。前記非イオン性界面活性剤は、例えば、オクチルフェノールエトキシレート(トリトン(Triton)X−100;C1422O(CO);n=9または10)であり得る(図8参照)。
したがって、前記エンシファー(Ensifer)属菌株を含むプシコース生産用組成物は、非イオン性界面活性剤、例えば、オクチルフェノールエトキシレートを追加的に含むものであり得る。また、前記エンシファー(Ensifer)属菌株を用いたプシコース生産方法は、非イオン性界面活性剤を添加する段階を追加的に含むことができる。一実施形態で、前記非イオン性界面活性剤は、前記培養段階の培養培地に添加されるか、前記培養段階が前記非イオン性界面活性剤が添加された培養培地で行われるのであり得る。他の実施形態で、前記非イオン性界面活性剤は、果糖を含む基質反応物に添加されるか、前記エンシファー(Ensifer)属菌株と基質反応物の混合物に添加することができる。また、他の実施形態で、前記非イオン性界面活性剤は前記エンシファー(Ensifer)属菌株が固定化された担体に添加されるか、前記エンシファー(Ensifer)属菌株が固定化された担体と果糖の混合物に添加されるか、果糖添加時に共に添加することができる。
プシコース生産収率を考慮する時、前記非イオン性界面活性剤の添加量は、全体培養物または反応物体積を基準に、0.01〜0.5%(v/v)、例えば、0.05〜0.45%(v/v)、0.2乃至0.45%(v/v)、または0.3〜0.42%(v/v)であり得る。
本発明で提案されるプシコース製造方法は、緩衝溶液を使用せず、菌体を用いて果糖をプシコースに転換することが可能であるので、より簡便な方法でプシコースを高い収率で生産することができるという長所がある。図11で示されるように、緩衝溶液を使用せず、初期pHを前述の範囲(例えば、pH7〜9、pH7〜8またはpH8〜9)にして反応を実施する場合、前記範囲を離脱する場合と比較してプシコース転換率が高く維持され得る。
[発明の効果]
本発明は、土壌分離菌株エンシファーアドヘレンス(Ensifer adhaerens)菌株は産業的に有用な範囲のpH、温度で安定性を有し、果糖から高い収率でプシコースを生産する活性を有するので、機能性糖関連健康食品および医薬産業で幅広く使用されることが期待される。
図1は、一実施形態で分離されたエンシファーアドヘレンス(Ensifer adhaerens)菌株がプシコースから果糖を生産したことを薄層クロマトグラフィーで分析した結果示したものである(1;果糖とプシコーススタンダード、2−3;エンシファーアドヘレンス(Ensifer adhaerens)培養菌体を破砕して上澄み液をプシコースと反応して果糖に転換されたことを確認した結果)。 図2は、高濃度果糖からプシコースが生産されたことをHPLC分析で確認したクロマトグラムを示したものである。 図3は、一実施形態で分離されたエンシファーアドヘレンス(Ensifer adhaerens)菌株の系統樹(phylogenetic tree)分析結果を示したものである。 図4は、菌体濃度によるプシコース生産量を示したものである。 図5は、温度によるプシコース生産量を示したものである。 図6は、pHによるプシコース生産量を示したものである。 図7は、金属イオン種類によるプシコース生産相対活性を示したものである。 図8は、トリトン(Triton)X−100濃度によるプシコース生産量を示したものである。 図9は、一実施形態で分離されたエンシファーアドヘレンス(Ensifer adhaerens)菌株の温度による安定性を示したものである。 図10は、反応6時間の間の温度別プシコース生産性を示したものである。 図11は、緩衝溶液を使用せずHCLおよびNaOHを用いて調節した基質の初期pHによってプシコース生産性を示したものである。
以下、本発明を具体的な実施例によってより詳しく説明する。しかし、本発明は下記の実施例に限定されたものでなく、本発明の思想と範囲内で様々な変形または修正が可能であるのは、この分野で当業者に明白なのである。したがって、添付された請求項は広く本発明の思想と範囲に符合するように解釈されなければならない。
実施例1.果糖をプシコースに転換する土壌由来微生物の分離
果糖をプシコースに転換する菌株を分離するために1%(w/v)プシコースが添加された最小培地(KHPO2.4g/L、KHPO5.6g/L、(NH・SO2.6g/L、MgSO・7HO0.1g/L、酵母エキス(yeast extract)1g/L)を使用した。
根圏土壌1gを0.85%(w/v)NaCl10mLに懸濁し、100μl(microliter)を取って寒天培地に塗抹した後、30℃で培養した。前記寒天培地で形成されたコロニーのうちの形状と大きさが異なるコロニーを選別した後、前記最小培地に接種して30℃で24時間振盪培養し、遠心分離した後、菌体のみ回収した。回収した菌体は50mMのPIPES(piperazine−N,N’−bis(2−ethanesulfonic acid))緩衝溶液(pH8.0)100μlに入れて浮遊させ、音波振動機(Ultrasonic processor.ColepParmer)を用いて破砕した。前記破砕液を12,000rpmで4℃で10分間遠心分離し、上澄み液を回収して酵素液(crude enzyme)として使用し、前記酵素液を10mMプシコースを基質にして30℃で8時間反応させた。
薄層クロマトグラフィー(TLC)および高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)分析を通じて前記反応液でプシコースが果糖への転換が行われたのか確認した。前記薄層クロマトグラフィー分析は、横20cm、縦5cmのシリカゲル(Silica gel60 F254(Merck、Germany))固定相とアセトニトリル(acetonitrile)と水を85:15条件で混合した移動相展開溶媒を用いて3分30秒間2回ずつ展開して行った。前記液体クロマトグラフィー分析は、Aminex HPX−87Cカラム(BIO−RAD)が装着されたHPLC(Agilent、USA)のRefractive Index Detectorを用いて(Agilent 1260 RID)行った。移動相溶媒は水を使用し、温度は80℃、流速は0.6ml/minにした。
前記TLC分析結果を図1に示した。
前記分析を通じてプシコースから果糖への転換が確認された菌株を選別して1%(w/v)果糖と0.05%(w/v)プシコースが添加された最小培地に接種して30℃で24時間振盪培養し、遠心分離した後、菌体のみ回収した。回収した菌体は0.85%(w/v)NaClで洗浄した後、菌体濃度40mg−dcw/ml条件で400g/L果糖と1mMマンガンイオンを添加した50mM PIPES buffer(pH8.0)を入れて浮遊させ、70℃で6時間菌体と果糖との反応を実施した。前記反応結果物を100℃で5分間加熱して反応を停止させ、HPLCを通じてプシコース生産を確認した。前記HPLC分析は、Aminex HPX−87Cカラム(BIO−RAD)が装着されたHPLC(Agilent、USA)のRefractive Index Detectorを用いて(Agilent 1260 RID)前述の条件(溶媒は:水、温度:80℃、流速:0.6ml/min)で行った。前記得られた結果を図2に示した。図2のように、HPLC分析を通じて果糖からプシコースを最も多く生産した菌株1種を最終選定した。
実施例2.プシコース転換菌株の同定
前記実施例1で分離された菌株を同情するために16SリボソームRNAの塩基配列および生化学的特性を確認した。分離菌株の16SリボソームRNAの塩基配列(5’→3’)は配列番号1および下記配列の通りである。
<分離菌株の16SリボソームRNAの塩基配列>
図3に示されているように、分離菌株は塩基配列分析(phylogenetic tree)を通じてエンシファーアドヘレンス(Ensifer adhaerens)と100%同一性を示すことを確認して、エンシファーアドヘレンス(Ensifer adhaerens)SYG29と命名した。前記菌株は、2013年3月29日付で韓国微生物保存センターに寄託して受託番号KCCM11405Pを付与された。
前記菌株の生化学的特性を下記の表1に示した。
実施例3.前記菌株の菌体反応を用いたプシコース生産最適条件確立
前記で分離された菌株のpHおよび温度変化によるプシコース転換率を調査するために、多様なpHおよび温度条件下で前記分離された菌株の菌体と基質を反応させてプシコース転換活性を比較した。
3−1.菌体濃度による活性分析
プシコース生産最小菌体濃度を確認するために、500g/L果糖と1mMマンガン(Mn)金属イオンを添加した50mM PIPES buffer(pH7.0)溶液に、実施例1で分離された菌株の菌体濃度を5−50g(dcw)/L範囲に変化させながら、60℃下で2時間反応させ、基質反応停止のために13,000rpmで遠心分離後、上澄み液を5分間加熱して反応を終了(停止)させた後に、HPLC分析を通じてプシコース生産量を測定した。前記HPLC分析は、Aminex HPX−87Cカラム(BIO−RAD)が装着されたHPLC(Agilent、USA)のRefractive Index Detectorを用いて(Agilent1260RID)前述の条件(溶媒は:水、温度:80℃、流速:0.6ml/min)で行った。
前記得られた結果を図4に示した。図4に示されているように、菌体濃度が増加するほどプシコース生産量も増加することを確認した。前記菌体反応結果、菌体濃度が50g(dcw)/Lである場合に78.2g/Lのプシコースを生産して試験濃度の中で最大活性を示すことが確認され、最小5g/L菌体濃度でもプシコース転換活性があることを確認した。
3−2.温度による活性分析
プシコース生産最適温度を確認するために、前記実施例1で分離された菌株の菌体濃度が20mg(dcw)/mlであることを除いて、実施例3−1と同様な反応および分析条件で、40〜70℃範囲で温度を変化させながら、2時間反応させ、反応終了後、HPLC分析を通じてプシコース生産量を測定した。
前記得られた結果を図5に示した。図5に示されているように、反応温度が高まるほど活性が増加した。70℃で51.5g/Lプシコースが生産され、前記温度で最大活性を示すことが確認された。
3−3.pHによる活性分析
また、転換反応でpH効果を調査するために、前記実施例1で分離された菌株の菌体濃度25mg(dcw)/mlおよび果糖濃度500g/Lの1mMマンガンイオンを添加した緩衝溶液McIlvaine(0.1Mクエン酸(citric acid)と0.2Mリン酸水素二ナトリウム(disodium hydrogen phosphate)溶液をpH別に量を異にして添加して製造する緩衝溶液)pH6.0−8.0および100mMグリシン(Glycine)pH8.5−9.5をそれぞれ用いて、各pH条件で70℃で反応させ、反応終了後、前記実施例3−1と同様な方法でHPLC分析を通じてプシコース生産量を測定した。
前記得られた結果を図6に示した。図6に示されているようにpH7.0−9.0範囲で高い活性を示し、特に、pH7.0−8.0の中性pH範囲でもプシコースの効率的な生産が可能であった。
3−4.金属イオンによる活性分析
金属イオン要求性を確認するために、400g/L果糖を基質として使用し、前記実施例1で分離された菌株の菌体濃度20mg(dcw)/ml、70℃、およびpH7.0で、50mM PIPES緩衝溶液に溶かした1mM金属イオン(CuCl、MnCl、CaCl、ZnSO、MgSO、NiSO、CoCl、またはFeSO)溶液をそれぞれ用いて2時間反応させ、反応終了後、前記実施例3−1と同様な方法でHPLC分析を通じてプシコース生産量を測定した。
前記得られた結果を図7に示した。図7で確認されるように、金属イオンを添加しない場合と比較した時、マンガンイオンとコバルトイオンを添加した場合で比較的に高いプシコース転換活性を示した。
実施例4.プシコース大量生産のための条件
4−1.トリトン(Triton)X−100濃度による生産性
細胞膜の透過性を高めるトリトンX−100を添加すると、細胞膜内部にある酵素が遊離されるようにして、これによってプシコース生産時間を短縮することができる。
菌体反応を通じたプシコースの効果的な生産のために、トリトン(Triton)X−100の添加濃度によるプシコース生産能力を確認した。前記実施例1で分離された菌株の菌体濃度が20mg(dcw)/mlであることを除いて、実施例3−1と同様な反応(果糖500g/L、1mMマンガンイオン添加)および分析条件(HPLC)で、0〜0.5%(v/v)濃度のトリトンX−100を添加し、60℃で2時間反応させ、反応終了後、HPLC分析を通じて生産されるプシコースの量を確認した。
前記得られた結果を図8に示した。図8に示されているように、トリトン添加によってトリトンを添加しない場合(トリトン濃度:0%(v/v))と比較してプシコース生産量が増加したことを確認でき、特にトリトン濃度が0.4%(v/v)である場合にプシコース生産量が48.9g/Lであって最も高いことが確認された。
4−2.菌体の温度安定性分析
前記分離された菌株の温度安定性を確認するために、前記実施例1で分離された菌株の菌体を1mMマンガンイオンを添加した50mM PIPES緩衝溶液で浮遊させ、温度を55℃または60℃で22時間熱衝撃を加えた。実施例3−1と同様な方法で最終果糖濃度400g/L、菌体濃度20mg(dcw)/mlにして、55℃で1時間さらに反応させた後、熱衝撃が加えられた時間別プシコース生産量をHPLC分析を通じて測定してプシコース転換活性を得た。
前記得られた結果を図9に示した。図9に示されているように、55℃で熱衝撃を加えた場合、熱衝撃を加えない場合のプシコース転換活性を比較した時、22時間以後に相対活性が約52%維持されることを確認した。60℃では熱衝撃を加えた場合、22時間以後に相対活性が10%まで減少し、これによって活性の半減期は456分(7.6時間)に確認された。
4−3.プシコース生産性
前記で確立されたプシコース大量生産条件下で反応時間による最大生産性を確認した。前記実施例1で分離された菌株の菌体濃度40mg−dcw/ml、500g/L果糖濃度およびpH7.0条件下で、温度条件を40、50、または70℃にして前記実施例3−1の方法を参照して反応を実施した。前記反応は6時間進行し、1時間間隔でプシコース生産性をHPLC分析を通じて確認した。反応液は100℃で5分間加熱して反応を停止させた。
前記得られた結果を図10に示した。図10に示されているように、反応温度が増加し時間が経過するほどプシコース生産性が増加し、特に70℃、6時間後、プシコース最大生産性を示した(プシコース生産量:130.3g/L;約26%の転換率)。
4−4.初期pHによるプシコース生産性
前記分離された菌株の初期pHによるプシコース大量生産の可能性を確認するために緩衝溶液の代わりに蒸留水に基質を溶かし、HClおよびNaOHを用いて初期pHを調整した。前記実施例3−1の方法を参照して、初期pHを6.0、6.5、または7.0にして、1mMマンガンイオン、果糖400g/L、前記実施例1で分離された菌株の菌体濃度40mg−dcw/ml、および70℃条件で0.4%(v/v)トリトンX−100を添加して6時間反応を実施し、反応終了後、HPLC分析を通じてプシコース生産量を測定した。
前記得られた結果を図11に示した。図11に示したように、初期pH7.0である場合、緩衝溶液を使用しなくても反応6時間以後に97.3g/Lプシコースが生産されて24.3%の転換率を示すことを確認した。
寄託機関名:韓国微生物保存センター
受託番号:KCCM11405P
受託日付:20130329

Claims (15)

  1. エンシファー(Ensifer)属菌株を用いて、果糖からプシコースを生産する方法であって、
    前記エンシファー属菌株は、寄託番号KCCM11405Pを有するエンシファーアドヘレンス(Ensifer adhaerens)SYG29である、プシコースを生産する方法。
  2. 前記方法が、非イオン性界面活性剤で処理する段階を追加的に含む、請求項1に記載のプシコースを生産する方法。
  3. 前記エンシファー(Ensifer)属菌株は、前記菌株の菌体、前記菌株の培養物および前記菌株の破砕物からなる群より選択された1種以上である、請求項1に記載のプシコースを生産する方法。
  4. 前記エンシファー(Ensifer)属菌株を、果糖と反応させる段階を含む、請求項1に記載のプシコースを生産する方法。
  5. 前記エンシファー(Ensifer)属菌株を、果糖と反応させる段階が、エンシファー(Ensifer)属菌株を、果糖が含まれている培地で培養する段階である、請求項4に記載のプシコースを生産する方法。
  6. 前記エンシファー(Ensifer)属菌株を、果糖と反応させる段階が、前記エンシファー(Ensifer)属菌株の菌体、前記菌株の培養物および前記菌株の破砕物からなる群より選択された1種以上を果糖と混合する段階である、請求項4に記載のプシコースを生産する方法。
  7. 前記エンシファー(Ensifer)属菌株を果糖と反応させる段階が、60〜75℃の温度条件で果糖と反応させる段階である、請求項4に記載のプシコースを生産する方法。
  8. マンガン、マグネシウム、ニッケル、コバルト、鉄およびアルミニウムからなる群より選択された1種以上の金属イオンを添加する段階を追加的に含む、請求項1に記載のプシコースを生産する方法。
  9. 緩衝溶液を使用しないことを特徴とする、請求項1〜8のうちのいずれか一項に記載のプシコースを生産する方法。
  10. 前記果糖が、40〜75%(w/w)の濃度で使用される、請求項1〜8のうちのいずれか一項に記載のプシコースを生産する方法。
  11. pH6〜9および40〜80℃の条件下で行われる、請求項1〜6および8のうちのいずれか一項に記載のプシコースを生産する方法。
  12. 果糖をプシコースに転換する活性を有する、エンシファー(Ensifer)属菌株を含む、果糖からプシコースを生産するプシコース生産用組成物であって、エンシファー(Ensifer)属菌株が、寄託番号KCCM11405Pを有するエンシファーアドヘレンス(Ensifer adhaerens)SYG29である、プシコース生産用組成物
  13. 前記エンシファー(Ensifer)属菌株、60〜75℃の温度条件で、果糖をプシコースに転換する活性を有する、エンシファーアドヘレンス(Ensifer adhaerens)SYG29である、請求項12に記載のプシコース生産用組成物。
  14. 前記エンシファー(Ensifer)属菌株が、前記菌株の菌体、前記菌株の培養物および前記菌株の破砕物からなる群より選択された1種以上である、請求項12または13に記載のプシコース生産用組成物。
  15. 果糖をプシコースに転換する活性を有し、エンシファーアドヘレンス(Ensifer adhaerens)SYG29(寄託番号:KCCM11405P)である、エンシファーアドヘレンス(Ensifer adhaerens)菌株。
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