JP6337733B2 - 超硬工具 - Google Patents

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Description

本発明は、超硬工具に関し、さらに詳しくは、高強度材加工用の超硬工具に関する。
多量にNiを含有するオーステナイト系ステンレス鋼やNi基合金等の高強度材を加工するために、超硬工具が利用される。超硬工具はたとえば、ねじ切削工具、冷間引抜プラグ及びビレット穿孔工具等である。高強度材を加工する際、超硬工具と被加工高強度材との摩擦により、超硬工具に機械的摩耗が生じる。特に、高強度材を切削加工する際は、超硬工具の機械的摩耗が早く、刃先欠損が著しい。そのため工具寿命が短くなる傾向がある。
さらに、高強度材の加工時には、超硬工具と被加工高強度材との摩擦により、高い摩擦熱が生じる。高い摩擦熱が生じると、被加工高強度材の一部が超硬工具に凝着する。超硬工具に凝着した被加工高強度材は、加工の最中に超硬工具表面から離脱する。離脱する際、超硬工具の刃先の一部が同時に欠落して微小な欠損が生じる。刃先に生じた微小な欠損が起点となり、超硬工具全体の破壊が加速度的に進行する。そのため、さらに工具寿命が短くなる傾向がある。
工具表面の潤滑性を改善することで、上述の機械的摩耗及び刃先の欠損が抑制されて、超硬工具全体の破壊が抑制される。その結果、工具寿命が向上する。そのため、工具表面の潤滑性向上を目的として、加工時に水溶性潤滑液又は有機系潤滑液が利用される。特に、多量にNiを含有するオーステナイト系ステンレス鋼やNi基合金等の難加工性の高強度材は、潤滑剤無しでは加工が困難である場合が多い。しかしながら、これらの潤滑剤は、作業環境への影響が懸念されている。そのため、最近では、ドライ加工(ドライ切削等)に利用可能な超硬工具、つまり、潤滑剤を用いなくても、工具寿命を向上可能な超硬工具が求められている。
超硬工具の工具寿命を向上する技術が、たとえば、特開2005−42146号公報(特許文献1)、特開2004−74319号公報(特許文献2)に提案されている。これらの文献では、物理蒸着法により、硬質の保護膜を超硬工具等の表面に形成する。
特許文献1では、物理蒸着法を用いて、工具等の基材上に高硬度被膜を形成する。高硬度被膜は、Al、Cr及びSiを主成分とする金属窒化物からなり、1000℃以上での耐摩耗性に優れる、と特許文献1には記載されている。特許文献2では、物理蒸着法を用いて、酸硫化鉄層を含む硬質皮膜を工具表面に被覆する。酸硫化鉄層が耐摩耗性に効果的に作用する、と特許文献2には記載されている。
上述の高硬度被膜及び硬質皮膜等を物理蒸着することにより、超硬工具の耐摩耗性を改善する技術は数多く提案されている。一方、特開2010−99916号公報(特許文献3)は、上述の技術とは異なる技術を提案する。特許文献3は、切削工具に応用可能な複合材料を提案する。特許文献3に記載の複合材料は、基体表面上に形成された周期律表の第4金属、第5金属、第4金属及び第5金属の窒化物又はホウ化物或いはホウ窒化物内から選ばれるいずれか1種以上の成分よりなる中間層と、中間層表面に被膜した立方晶窒化ホウ素を主成分とする表面膜とから形成される。これにより、耐摩耗性、低摩擦性、耐熱性、熱伝導性に優れた複合材料を得ることができる、と特許文献3には記載されている。
特開2005−42146号公報 特開2004−74319号公報 特開2010−99916号公報
しかしながら、上述の特許文献1〜3に開示された技術であっても、十分な潤滑性及び耐摩耗性が得られない場合がある。この場合、工具寿命を向上しにくい。
本発明の目的は、工具寿命を向上可能な超硬工具を提供することである。
本実施形態による超硬工具は、焼結体を備える。焼結体は、超硬合金成分と窒化物生成成分とを含有する。超硬合金成分はWC、Co、TiC及びTaCからなる群から選択される2種以上からなり、少なくともWC及びCoを含有する。窒化物生成成分はAl、Cr及びSiからなる群から選択される1種以上の特定元素と、Bとを含有する。超硬合金成分を100質量%とした場合に、特定元素の総含有量は0.03〜0.30質量%であり、Bの含有量は0.10〜1.00質量%である。焼結体は、下窒化層と上窒化層とを備える。下窒化層は、焼結体表面に形成され、六方晶窒化ホウ素と特定元素の窒化物とを含有する。上窒化層は、下窒化層上に形成され、立方晶窒化ホウ素と、六方晶窒化ホウ素と、特定元素の窒化物とを含有する。上窒化層における、立方晶窒化ホウ素及び六方晶窒化ホウ素の合計含有量は70〜90質量%であり、特定元素の窒化物の含有量は10〜30質量%である。
本実施形態による超硬工具は、潤滑性及び耐摩耗性に優れる。そのため、優れた工具寿命を有する。
図1は、本実施形態による超硬工具の断面図である。 図2は、図1とは異なる、他の実施形態による超硬工具の断面図である。
以下、図面を参照して、本実施形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
[超硬工具]
図1は本実施形態による超硬工具の断面図である。図1を参照して、超硬工具1は焼結体2からなる。焼結体2は、下窒化層3と上窒化層4とを備える。下窒化層3は焼結体2表面に形成されている。上窒化層4は下窒化層3上に形成されている。
[焼結体]
焼結体2は、超硬合金成分と、窒化物生成成分とを含有する。
[超硬合金成分]
超硬合金成分は、WC、Co、TiC及びTaCからなる群から選択される2種以上からなり、少なくともWC及びCoを含有する。
炭化タングステン(WC)は、高硬度及び高融点の炭化物であり、靱性及び抗折強度に優れる。そのため、WCは、主に重切削の環境下で耐摩耗性を向上する。さらに、WCの熱伝導率が高いため、切削時に、超硬工具1に発生する摩擦熱を外部へ逃がすことができる。コバルト(Co)はWCの結晶粒の粒界に介在する。CoはWC結晶粒のバインダ(結合材)として機能し、WC結晶粒の粒界すべり強度を高める。
超硬合金成分はさらに、任意の成分として、炭化チタン(TiC)又は炭化タンタル(TaC)を含有してもよい。TiCはWCと比較して硬度が高い。そのため、TiCを含有した場合、超硬工具の強度が向上する。タンタル(Ta)はW及びTiと比較して、炭化物を生成し易い。Cが、WC及びTiCの生成に必要な量よりも多く含有された場合、Taは過剰分の炭素(C)と結合して化学的に安定なTaCを形成する。過剰分のCが遊離した状態で残存すると、WCの結晶粒界に存在して脆弱層となり、超硬工具の強度を低下させる可能性がある。Taは、過剰分のCと結合して遊離状態のCを低減するため、超硬工具の強度の低下を抑制できる。したがって、超硬合金成分はWC及びCoとともに、TiC及びTaCのいずれか1種以上を含有するのが好ましい。
[窒化物生成成分]
窒化物生成成分は、Al、Cr及びSiからなる群から選択される1種以上の特定元素と、Bとを含有する。
[特定元素]
アルミニウム(Al)、クロム(Cr)及びシリコン(Si)からなる特定元素は、Nとの親和力が大きい。そのため、焼結体2を窒化処理した場合に、特定元素は安定な窒化物を形成する。以下、特定元素の窒化物を「特定窒化物」という。特定窒化物は優れた硬さを有するため、焼結体2を窒化処理すれば、表層に形成される下窒化層3の硬さが高まる。さらに、上窒化層4にも、特定窒化物が含まれるため、上窒化層4の硬さが高まる。
[ボロン(B)]
ボロン(B)はNとの親和力が大きい。そのため、焼結体2を窒化処理した場合に、安定な窒化物である窒化ホウ素を形成する。窒化ホウ素には、六方晶窒化ホウ素(h−BN)及び立方晶窒化ホウ素(c−BN)を含むいくつかの結晶形が存在する。Bを含む焼結体2を周知の方法で窒化処理すると、六方晶窒化ホウ素を含む下窒化層3が焼結体2の表層に生成する。六方晶窒化ホウ素の硬度は比較的低い。下窒化層3を備える焼結体2を真空熱処理すると、下窒化層3表層に含まれる六方晶窒化ホウ素の一部が立方晶窒化ホウ素に転移する。したがって、下窒化層3上に立方晶窒化ホウ素を含む上窒化層4が形成される。立方晶窒化ホウ素は硬度が非常に高く、さらに、熱伝導率も高い。そのため、下窒化層3を備える焼結体2を真空熱処理することにより、下窒化層3よりも硬い上窒化層4が形成される。
[窒化物生成成分の含有量]
超硬合金成分を100質量%とした場合に、特定元素の総含有量は0.03〜0.30質量%であり、Bの含有量は0.10〜1.00質量%である。特定元素の総含有量及びBの含有量のいずれかが低すぎれば、窒化処理により下窒化層3に生成される窒化物が少なすぎる。この場合、下窒化層3の硬度が低い。さらに、下窒化層3上に形成される上窒化層4の硬度も低い。硬度が低いと、耐摩耗性が低下する。一方、特定元素の総含有量及びBの含有量のいずれかが高すぎれば、下窒化層3に過剰の窒化物が生成される。この場合、下窒化層3の表面粗さが粗くなる。下窒化層3の影響を受け、上窒化層4の表面粗さが粗くなる。表面粗さが粗ければ、潤滑性が低下する。したがって、特定元素の総含有量が0.03〜0.30質量%であり、Bの含有量が0.10〜1.00質量%である。
[下窒化層]
上述のとおり、焼結体2は、下窒化層3を含む。下窒化層3は焼結体2を窒化処理することにより、焼結体2表面に形成される。下窒化層3は、六方晶窒化ホウ素と、特定窒化物とを含有する。下窒化層3は、特定窒化物を含むため硬度が高い。下窒化層3の厚さはたとえば、50μm以下である。下窒化層3の厚さの好ましい下限は30μmである。
[上窒化層]
焼結体2はさらに、上窒化層4を含む。上窒化層4は、下窒化層3を備える焼結体2を真空熱処理することにより、下窒化層3上に形成される。上窒化層4は、立方晶窒化ホウ素と、六方晶窒化ホウ素と、特定窒化物とを含有する。上窒化層4は、立方晶窒化ホウ素を含むため、下窒化層3よりもさらに硬度が高い。上窒化層4の厚さはたとえば、5μm以下である。上窒化層4の厚さの好ましい下限は3μmである。
下窒化層3及び上窒化層4は高い硬度を有する。そのため、加工時の摩擦に対して超硬工具1の摩耗が少ない。したがって、超硬工具1の耐摩耗性が高まる。
真空熱処理により形成される上窒化層4は、下窒化層3よりも緻密でかつ均質である。そのため、上窒化層4は、下窒化層3よりも表面粗さが小さい。さらに、立方晶窒化ホウ素の潤滑性は高いため、上窒化層4の潤滑性は下窒化層3よりも高い。上窒化層4はさらに、熱伝導率が高い。そのため、加工時に生じる摩擦熱を外部に逃がすことができ、被加工高強度材の超硬工具1への凝着が抑制される。
上述のとおり、上窒化層4は下窒化層3を備える焼結体2を真空熱処理することにより形成される。この場合、上窒化層4における、立方晶窒化ホウ素及び六方晶窒化ホウ素の合計含有量は70〜90質量%であり、特定窒化物の含有量は10〜30質量%である。焼結体2に物理蒸着等の方法で付加されたその他の窒化層と異なり、上窒化層4は焼結体2に含まれる窒化物生成成分が徐々に濃化することによって形成される。そのため、上窒化層4の下窒化層3に対しての密着性は非常に高い。
[硬質保護層]
図2は、図1とは異なる他の超硬工具10の断面図である。図2の超硬工具10は、図1の超硬工具1と比較して、硬質保護層5を上窒化層4上に備える。超硬工具10のその他の構成は、超硬工具1と同じである。
硬質保護層5は、任意に形成される。硬質保護層5は、金属窒化物、金属炭化物、金属炭窒化物及び金属酸化物からなる群から選択される1種以上を含有する。硬質保護層5はたとえば、TiやAlを含む金属窒化物、金属炭化物、金属炭窒化物及び金属酸化物又はこれらの複合化合物である。硬質保護層5は、焼結体2と同等又はそれ以上の硬さを有する。硬質保護層5はさらに、切削等の加工環境下において十分な化学的安定性を有する。そのため、加工対象材、たとえば、高硬度材との凝着が抑制される。
[製造方法]
本実施形態の超硬工具の製造方法の一例を説明する。本実施形態の超硬工具の製造方法は、焼結体を製造する工程と、窒化処理工程と、真空熱処理工程とを備える。超硬工具が硬質保護層5を備える場合はさらに、成膜工程を備える。以下、各工程を詳述する。
[焼結体の製造工程]
初めに、焼結体2を製造する。焼結体2の製造方法は特に限定されない。たとえば、上述の超硬合金成分及び窒化物生成成分を含有した原料の炭化物及び金属粉末を、整粒及び混合して混合原料を製造する。混合原料を所定形状の金型で加圧成形して打ち抜きする。得られた成形体を真空中で焼成して、焼結体2を製造する。
[窒化処理工程]
焼結体2に対して窒化処理を実施する。窒化処理は周知の方法を採用できる。たとえば、電気炉内に焼結体2、NH3ガス、N2ガス及び必要に応じてCO2ガスを導入する。電気炉内を500〜550℃に加熱して窒化処理を実施する。加熱時間は特に限定されないが、2時間程度が好ましい。加熱により、NH3ガスからN原子が乖離する。乖離したN原子が焼結体2の表面から内部に侵入し、拡散する。さらに、焼結体2内部に存在する窒化物生成成分がN原子と結合して、窒化物が形成され、焼結体2の表層に、窒化物を含有する下窒化層3が形成される。CO2ガスを炉内へ導入した場合は、C原子が乖離する。乖離したC原子は、窒化物の生成領域を拡げ、窒化層3の安定的な形成を促進させる。
[真空熱処理工程]
下窒化層3を備えた焼結体2に対して真空熱処理を実施する。真空熱処理はたとえば、真空炉に下窒化層3を備えた焼結体2を入れ、炉内を排気ポンプにより1Pa以下に減圧する。減圧することによって、炉内の酸素分圧が下がる。そのため、酸化層の形成が抑制される。減圧に加えて、真空炉内を1000〜1200℃に加熱することで真空熱処理を実施する。加熱時間は特に限定されないが、2時間程度が好ましい。真空熱処理により、下窒化層3表層に含有される六方晶窒化ホウ素の一部が立方晶窒化ホウ素に転位する。そして、立方晶窒化ホウ素を含む上窒化層4が下窒化層3上に形成される。以上の工程により、本実施形態の超硬工具1を製造できる。
[成膜工程]
さらに、上窒化層4の上に硬質保護層5を形成する場合、成膜工程を実施する。具体的には、上窒化層4を備えた焼結体2に対して、周知の成膜工程を実施する。たとえば、物理蒸着法、化学蒸着法及び溶融塩浴処理法のいずれかを実施する。物理蒸着は、たとえば以下の方法で行うことができる。硬質保護層5を構成する金属元素を用いた混合粉末を、円板形状に加圧成形して成形体を製造する。成形体を真空焼結後、スパッタ法又はアークイオンプレーテイング法を用いて、金属成分から金属イオンを電磁気的に励起させる。その後、装置気相中に窒素ガス等を充填させる。充填された窒素ガスは、分解して窒素イオンとなる。励起した金属イオンは、直流バイアス電源制御により負に帯電した焼結体2の表面に引き付けられる。上述の窒素イオンと金属イオンとが焼結体2の表面で化学結合することにより、上窒化層4の表面に硬質保護層5が形成される。
[焼結体作製]
超硬合金成分として、WC:85質量%、Co:10質量%、TiC:3質量%、TaC:2質量%の比率で混合した原料を準備した。表1に示す窒化物生成成分を原料に添加し、各試験番号の混合原料を製造した。
Figure 0006337733
混合原料を整粒及び混合し、200MPaで加圧成形した。得られた成形体に対して、大気中にて、1000℃で仮焼結を実施した。加熱時間は2時間であった。仮焼結後の成形体に対して、真空中にて、1500〜1700℃で本焼結を実施して焼結体を製造した。加熱時間は2時間であった。
[窒化処理]
得られた焼結体をNH3ガス、N2ガスとCO2ガスを導入した電気炉で500〜550℃に加熱して窒化処理を実施し、下窒化層を形成した。窒化処理における均熱時間は2時間であった。
[真空熱処理]
下窒化層を形成した各焼結体を真空炉に入れ、炉内を排気ポンプにより1Pa以下に減圧した。減圧に加えて、真空炉内を1000〜1200℃に加熱することで真空熱処理を実施し、上窒化層を形成した。真空熱処理における均熱時間は2時間であった。試験番号14においては、真空熱処理を実施しなかった。
[成膜工程]
試験番号13の超硬工具に、成膜工程を実施した。成膜工程として物理蒸着法(PVD)を用いた。Ti及びAlを用いた混合粉末を、円板形状に加圧成形して成形体を製造した。成形体を真空焼結後、スパッタ法を用いて、金属成分を電気的に励起させた。その後、装置気相中に窒素ガスを充填させた。励起させた金属成分と焼結体の成分とを、窒化層の表面上にて化学結合させて、TiAl−Nからなる硬質保護層を3.0μm厚で成膜した。
[上窒化層中の窒化物測定試験]
各試験番号の超硬工具の上窒化層中の窒化ホウ素含有量及び他の窒化物の含有量を測定した。測定はエネルギー分散形X線分析装置付き走査型電子顕微鏡(日本電子製、JSM−7100型FESEM)を用いて行った。上窒化層の任意の5箇所を走査型電子顕微鏡にて観察し、組成を分析した。5箇所の平均組成を上窒化層の組成とした。測定倍率5000倍で、加速電圧;20kV、照射電流;最大100nAの電子ビームを照射し、B−kα線、Al−kα線、Cr−kα線及びSi−kα線の各X線強度を測定した。各元素のX線強度をもとに、それぞれの窒化物量(質量%)を算出し、測定値とした。結果を表1に示す。
[窒化層中の立方晶窒化ホウ素の有無の確認試験]
各試験番号の超硬工具の窒化層中の窒化ホウ素の結晶構造解析を行った。測定は、X線回折装置(リガク製、AutoMATEII型X線測定装置)を用いて行った。X線源はCr−kα線、直径0.5mmの入射コリメータを用い、管電圧は40kV、管電流は40mAでX線を発生させた。走査範囲(2θ)は最大150°として測定を実施し、X線回折チャートを得た。得られたX線回折チャートのピーク形状から、窒化層における立方晶窒化ホウ素(c−BN)の有無を確認した。試験番号1〜13及び試験番号15〜23においては、上窒化層中の立方晶窒化ホウ素の有無を確認した。試験番号14においては、下窒化層中の立方晶窒化ホウ素の有無を確認した。結果を表1に示す。表1中、立方晶窒化ホウ素が確認されたものは「D」と表示し、確認されなかったものは「ND」と表示した。
以下に述べる方法を用いて、得られた超硬工具の性能評価試験を実施した。試験番号1〜12及び15〜23の超硬工具は、上窒化層に対して試験した。試験番号13の超硬工具は、硬質保護層に対して試験した。試験番号14の超硬工具は下窒化層に対して試験した。
[ビッカース硬さ試験]
各試験番号の超硬工具のビッカース硬さを測定した。ビッカース硬さはJIS規格Z2244(2009)に基づいて実施し、試験荷重は9.80N(1kgf)とした。測定結果を表1に示す。
[表面粗さ測定試験]
各試験番号の超硬工具の表面粗さを測定した。具体的には、表面粗さを触針(ダイアモンド製;外径25μm)を用い、室温、荷重;0.1N、測定速度;0.5mm/秒として、超硬工具の任意表面を試験片の長手方向及び長手方向と直交する方向の双方10mm長で計測し、双方向の平均値を以て表面粗さとした。表面粗さは、JIS B0601(1994)に定める「算術平均粗さ;Ra」を採用した。測定結果を表1に示す。
[切削試験後の凝着量測定試験]
各試験番号の超硬工具を用いて切削試験を実施し、切削後における被削材の超硬工具刃先への凝着量を測定した。切削は以下の条件で行った。直径30mm、長さ300mmの円柱形合金材を準備した。円柱形合金材の材質はインコネル−625(Ni含有量が58質量%以上、Fe含有量が5質量%以下のNi基高合金)であった。超硬工具の形状は、12.7mm×12.7mm×厚さ4.8mmであった。この超硬工具を用いて、円柱形合金材の長手方向に外削加工を実施した。切削時の切込量は0.5mm以下、周速は100m/分以下、送り速度は0.1mm/回転、切削長は200mmであり、潤滑剤は使用しなかった。
切削後、超硬工具表面に付着した円柱形鋼材の凝着量を測定した。凝着量の測定はエネルギー分散形X線分析装置付き走査型電子顕微鏡(日本電子製、JSM−7100型FESEM)を用いて行った。超硬工具表面の任意の5箇所を走査型電子顕微鏡にて観察し、組成分析した。5箇所の平均値を採用した。測定倍率5000倍で、加速電圧;20kV、照射電流;最大100nAの電子ビームを照射し、Ni−kα線及びW−Lα線の各強度を測定し、各元素の濃度(質量%)を算出した。Ni及びWの質量%比を測定結果とした。結果を表1に示す。
[評価結果]
評価結果を表1に示す。表1を参照して、試験番号1〜12の超硬工具の特定元素の総含有量及びBの含有量は適切であり、さらに、上窒化層が形成されていた。そのため、試験番号1〜13のビッカース硬さは2000以上であり、優れた耐摩耗性を示した。さらに、試験番号1〜13の超硬工具の表面粗さRaは0.10μm以下であり、優れた潤滑性を示した。さらに、試験番号1〜13の超硬工具と被削材との凝着量比は2.0以下であり、凝着の抑制に優れていた。
一方、試験番号14の超硬工具のビッカース硬さは低く、2000未満であった。さらに、表面粗さRaは0.24μmであり、潤滑性が低かった。真空熱処理を実施せず、高緻密かつ潤滑性の高い上窒化層4が形成されなかったためと考えられる。
試験番号15及び16の超硬工具は、Bの含有量が下限値未満であった。そのため、ビッカース硬さは低く、2000未満であった。上窒化層の硬度が低いためと考えられる。
試験番号17〜19の超硬工具は、特定元素の総含有量が下限値未満であった。そのため、上窒化層中の特定元素の窒化物の含有量が10〜30質量%の範囲外であった。そのため、ビッカース硬さは低く、2000未満であった。下窒化層の硬度が低いためと考えられる。
試験番号14〜19の超硬工具は、切削試験後の凝着量比が2.0超となった。いずれの超硬工具も硬度が十分ではなかったためと考えられる。試験番号14では、硬度が低いことに加え潤滑性が低かったため、凝着量比が大きくなったと考えられる。
試験番号20〜23の超硬工具は、特定元素の総含有量及びBの含有量のいずれかが過剰であった。そのため、ビッカース硬さが2000以上であった。しかし、表面粗さRaが0.10μm超であった。窒化物が過剰に生成して下窒化層の表面粗さが粗くなり、その影響を受けて上窒化層の表面粗さが粗くなったためと考えられる。試験番号20〜23の超硬工具と被削材との凝着量比は2.0超となった。表面粗さが粗いため、潤滑性が低下し、凝着量比が大きくなったと考えられる。
試験番号13の超硬工具では、硬質保護層が形成された。そのため、ビッカース硬さが2540となり、試験番号1〜12の超硬工具に比べてさらに高い耐摩耗性を示した。
以上、本実施形態を説明した。しかしながら、上述した実施形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。したがって、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施形態を適宜変更して実施することができる。
1、10 超硬工具
2 焼結体
3 下窒化層
4 上窒化層
5 硬質保護層

Claims (3)

  1. WC、Co、TiC及びTaCからなる群から選択される2種以上からなり、少なくともWC及びCoを含有する超硬合金成分と、Al、Cr及びSiからなる群から選択される1種以上の特定元素と、Bとを含有し、前記超硬合金成分を100質量%とした場合に、前記特定元素の総含有量は0.03〜0.30質量%であり、前記Bの含有量は0.10〜1.00質量%である、窒化物生成成分とを含有する焼結体と、
    前記焼結体表面に形成され、六方晶窒化ホウ素と、前記特定元素の窒化物とを含有する下窒化層と、
    前記下窒化層上に形成され、立方晶窒化ホウ素と、六方晶窒化ホウ素と、前記特定元素の窒化物とを含有し、前記立方晶窒化ホウ素及び前記六方晶窒化ホウ素の合計含有量が70〜90質量%であり、前記特定元素の窒化物の含有量が10〜30質量%である、上窒化層とを備える、超硬工具。
  2. 請求項1に記載の超硬工具であって、
    前記上窒化層は、前記下窒化層を備える前記焼結体を真空熱処理することにより形成される、超硬工具。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の超硬工具であってさらに、
    金属窒化物、金属炭化物、金属炭窒化物及び金属酸化物からなる群から選択される1種以上を含有する硬質保護層を前記上窒化層上に備える、超硬工具。
JP2014209449A 2014-10-10 2014-10-10 超硬工具 Active JP6337733B2 (ja)

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