JP2004136430A - 被覆工具 - Google Patents

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Kazuyuki Kubota
久保田 和幸
Nobuhiko Shima
島 順彦
Takashi Ishikawa
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Abstract

【目的】(TiAl)N皮膜等の耐酸化性に優れた皮膜の耐摩耗性及び密着性を犠牲にすること無く、高温での耐溶着性を改善するとともに被加工物の元素の皮膜への拡散を抑制し、高速及び高送りの乾式切削加工に好適な被覆工具を提供する。
【構成】基体表面に金属元素としてTiとBを含有する窒化物、炭窒化物、酸窒化物、酸炭窒化物のいずれかからなる皮膜を被覆した工具において、前記皮膜はBの窒化物相を含有し、ESCA分析によりBとNの結合エネルギーが確認され、ラマン分光分析によりc−BN及び/又はh−BNの存在が確認されることを特徴とする被覆工具で構成する。
【選択図】図3

Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本願発明は、金属材料等の切削加工に使用される皮膜被覆工具に関し、特に高速切削及び乾式切削に使用される耐クレータ摩耗性に優れた被覆工具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来はTiN、Ti(CN)、(TiAl)N等を被覆した切削工具が広く使用されている。しかし、TiN、Ti(CN)からなる皮膜では、高速切削時に十分な耐酸化性及び耐摩耗性を示さない。(TiAl)N皮膜は、TiN、Ti(CN)に比べて優れた耐酸化性を有するため、刃先が高温に達する切削条件で使用されているが、高温での切削では工具刃先の溶着が発生し、十分な工具寿命が得られない。下記の特許文献1は、TiNからなる耐摩耗性皮膜中に、BN、TiB、TiB等の超微粒化合物を含む皮膜を開示している。
【特許文献1】特開2001−293601号(第6頁、表1、表2)
特許文献1において、皮膜内のBN、TiB、TiB等の超微粒化合物は非晶質であり、皮膜の硬度を向上させる働きがあると記載されている。これにより耐摩耗性、滑り性、耐焼き付き性、被削材の加工精度が向上するが、超微粒化合物の特性や形態についての詳細な記述はない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、(TiAl)N皮膜等の耐酸化性に優れた皮膜の耐摩耗性及び密着性を犠牲にすること無く、高温での耐溶着性を改善するとともに被加工物の元素の皮膜への拡散を抑制し、高速及び高送りの乾式切削加工に好適な被覆工具を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、基体表面に金属元素としてTiとBを含有する窒化物、炭窒化物、酸窒化物、酸炭窒化物のいずれかからなる皮膜を被覆した工具において、前記皮膜はBの窒化物相を含有し、ESCA分析によりBとNの結合エネルギーが確認され、ラマン分光分析によりc−BN及び/又はh−BNの存在が確認されることを特徴とする被覆工具で形成すると、BN相が有する潤滑性によりTi系皮膜の潤滑性が改善され、もって耐クレータ摩耗性が著しく改善される。更に、切削加工を乾式で高速及び高送りで行う場合、被加工物に含まれる元素が皮膜に拡散する現象を抑制でき、被加工物の工具への溶着がなく、工具の耐クレータ摩耗性が著しく改善され、工具寿命が極めて長くする事ができた。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明皮膜はBの存在形態に特徴がある。TiとAlの窒化物等からなる従来皮膜は一般にTiNと同様にNaCl型結晶格子構造を有し、TiN格子中のTiがAlに置き換わり、いわばAlが固溶した状態にある。しかしTiとBを含有する本発明皮膜は、Bの含有量に応じて異なる組織を有する。即ち、Bの含有量が0.1原子%未満では、BはTiN結晶格子の中に完全に取り込まれ固溶体の形態となるが、Bの含有量が0.1原子%以上になると、BはTiN格子中のTiに置き換わる他に、固溶体中に分散したBの化合物が生成する。従って、TiとBの窒化物からなる皮膜の場合、Bの含有量が0.1原子%以上になると、皮膜中にTiN相とBN相が混在する。皮膜の組織の変化は、被覆工具の切削性能に多大な影響を及ぼす。TiN相の他に、潤滑性に優れ、Feとの濡れ性が低いBN相を有する本発明皮膜は、BN相の存在により化学反応が原因のクレータ摩耗を著しく抑制することができる。また、BN相は優れた耐酸化性を有するため、BN相を含有する皮膜は高温で劣化しない。しかし、Bの含有量が40原子%を超えると、内部応力が非常に大きくなるために工具基体に対する良好な密着性を維持することが困難となる。つまり、切削加工の硬質皮膜に衝撃を与えると、皮膜が自身の内部応力に耐えられず、工具基体から容易に剥離してしまう。従って、目標とする特性を有する切削工具を得るためには、硬質皮膜中のBの含有量は40原子%を超えないのが好ましい。
【0006】
TiN系皮膜を例に、種々の添加成分の効果を研究した結果、Bの添加と被覆条件の最適化により、皮膜の高硬度化と潤滑性を著しく改善できる知見を得るに至った。更に、TiN系皮膜の硬度及び潤滑性を著しく改善するため、Bの添加のみならず、被覆条件の最適化が必要であり、本発明はかかる成果に基づく。本発明皮膜の作製には、真空成膜装置にTiBターゲットを用い、基体バイアス電圧−300V、反応ガスとして窒素ガス流量を500sccmとし、反応ガス圧力を0.5Paの条件で(TiB)N皮膜をアークイオンプレーティング法により被覆した。得られた皮膜のESCA(Electoron Spectroscopy for Chemical Analysisの略)分析結果を図1、図2に示す。図1にTiとNとの結合エネルギーの回折ピークが確認され、図2にBとNとの結合エネルギーの回折ピークが確認される。更に、基体バイアス電圧、−300V/+20Vのパルスバイアス印加した以外、上記と同じ条件で(TiB)N皮膜を形成した。得られた本発明皮膜のラマン分光分析結果を図3示す。図3はc−BN相とh−BN相の存在が確認された。各相の存在比率はバイアス電圧値により調整することができる。被覆条件において、イオンエネルギーが大きいと、c−BNの比率が高く、高硬度の皮膜が得られた。イオンエネルギーが小さいと、BN相の出現は認められなかった。またパルスバイアスを使用しない場合でも、基体に印加するバイアス電圧自体が高い時、c−BN相及びh−BN相の存在が確認された。これらの相は微結晶として皮膜内に分散しているものである。従って、皮膜内に微結晶を分散させて高硬度化を達成するためには、被覆条件の最適化が重要である。
【0007】
本発明のBN相を有する皮膜は、ラマン分光分析によりc−BN及びh−BNのピークを検出することができ、c−BNのピーク強度Q1とh−BNのピーク強度Q2との比Q1/Q2は1.0以上である。本発明皮膜の潤滑性を維持したまま硬度を向上させるためである。図3に示すように、BN相を有する本発明皮膜にはc−BN及びh−BNのピークが検出される。c−BNとh−BNの硬度を比較すると、c−BNの方が高い。従って、皮膜中にc−BNが多く含まれるように被覆条件を制御することにより硬度及び耐摩耗性が向上した皮膜が得られる。
【0008】
本発明皮膜の潤滑性を評価するため、鋼に対する摩擦係数の測定を行った。測定装置には、ボールオンディスク型の摩耗試験器を用いた。主要なパラメータには垂直荷重、接触面積、摺動速度、試験時間がある。摩擦係数に対する試験温度の影響は非常に大きい。皮膜の温度上昇は摩擦による発熱であるが、熱的に化学反応が活性化されることがある。本発明皮膜を切削工具に形成した時の切刃近傍の温度領域として、室温から700℃での摩擦係数を測定した。JIS、SKD61材をボール材の静止相手材とし、超硬合金からなるディスクに本発明皮膜(Ti99)(N9010)を被覆した。摩擦係数の測定条件は、接触面圧:2N、速度:100mm/sec、温度:室温(25℃)、400℃、700℃、摩擦係数と試験時間との関係を図4に示す。比較のため、超硬合金製ディスクに皮膜として(TiAl)N皮膜を被覆した従来例についても、摩擦係数を測定した。結果を併せて図4に示す。
【0009】
図4より、本発明皮膜の摩擦係数は、室温においては、(TiAl)N膜と大差無く、0.85〜0.95の範囲で推移している。試験温度が400℃に上昇すると、本発明皮膜の摩擦係数は0.55〜0.6まで低下し、更に、700℃に上昇すると0.43〜0.47と低下した。それに対して、従来の(TiAl)N皮膜の摩擦係数は、700℃で0.75〜0.85であった。これから、切削時の切れ刃付近の温度に相当する700℃では、本発明皮膜の摩擦係数は、従来例皮膜より著しく低下し、それに伴って切屑の擦り摩耗も低減するために、切屑をスムーズに排出することができることが分かる。次に、本発明皮膜の表面には酸化によりBO相が形成され、更に潤滑性を高めることも分かった。本発明皮膜中のBN相の潤滑性の他にBO相の潤滑性があるので、切削抵抗は著しく低減できる。これらの現象は上述のTiNに限定されるものではなく、(TiAl)Nなどの皮膜においても同様に確認した。
【0010】
本発明皮膜中に含有させるBについて、切削工具に適用した際に生じる現象を詳細に調査した結果、Bの有効性は、皮膜の高硬度化、潤滑性の改善、耐酸化性向上だけではなく、Bは被削材に含有されるFeとの親和性が低く、被加工物の膜中への拡散現象がほとんど発生しないことでもあることも分かった。金属元素としてTiとBで構成される窒化物、炭窒化物、酸窒化物、酸炭窒化物からなる本発明皮膜は、耐酸化性に関しては、従来のTiとAlの窒化物と同程度であるが、被加工物である鋼の1部が工具刃先部分に高温で溶着するのを防止することに関しては、TiとAlの窒化物などよりも優れている。この理由は、鋼材に含まれるFeとの濡れ性が低いBを含有する本発明皮膜は、高温での被加工物の溶着を効果的に防ぐことができるためである。被削材である鋼の1部が工具刃先部分に高温で溶着する現象の原因となるAlを含んでいないためである。また、本発明皮膜に溶着の原因となるAlが含まれていない場合、本発明皮膜は高い耐溶着性を示す。各種元素の溶着発生現象への抵抗性、つまり鋼に含まれる元素と、皮膜中に含まれる元素との濡れ性という観点から、本発明皮膜は高温下における被加工物の溶着を防ぐのに効果があることを確認した。
【0011】
図5は、BN相を有する本発明皮膜を形成した工具を切削加工に用いた後で、その切刃近傍の元素分析を基体方向に行った結果を示す。また、図6はに従来の(TiAl)Nを同様に分析した結果を示す。図5、6の比較により、図5には皮膜内部に被加工物であるFe元素は見られないが、図6では(TiAl)N皮膜の最表層にAlの酸化物が形成されており、被加工物中のFeが皮膜中に拡散していた。図6に示す傾向は従来の(TiAlSi)(CN)皮膜や(TiAlZrB)N皮膜、(TiAlB)N皮膜等にも見られる。これから、BN相を有する本発明皮膜では、被加工物との高温下における化学反応が発生しにくい特性を持っていることがわかる。耐酸化性についても従来のTiとAlの窒化物皮膜とほぼ同程度であることが分かった。
【0012】
(TiAl)NにBを添加してなる従来皮膜の耐溶着性を評価した結果、AlがTi及びBよりも高温下でのFeとの親和性が高いためAlを含有する皮膜の最表層に酸素の内部拡散を防ぐAl層が形成される前に、被削材中のFeとの化学反応が発生していることが分かった。切削工具にAlを含有する皮膜を形成した場合、Alによる溶着現象により、工具のすくい面に異常なクレータ摩耗が起こり、更に、境界部には溶着物が多量に貯め込まれ、切削工具のチッピングを起こす。従って、工具と被削材との溶着を防ぐため、工具表面に潤滑性を有する皮膜が必要である。つまり、本発明皮膜を切削工具最表層に被覆させることで、被削材との溶着を防ぎ、その結果、異常摩耗を防ぐことができる。そのため本発明皮膜を最表面に形成した工具の寿命は、従来使用してきたTiとAlの窒化物などを被覆した工具の寿命よりも著しく伸びる。
【0013】
本発明皮膜の被覆条件として、酸素を添加することにより、結晶粒界が緻密になり、結晶粒界の欠陥が減少するため、皮膜の耐酸化性が改善される。これは、皮膜の酸化は主に結晶粒界を酸素が拡散することにより進行するため、結晶粒界の緻密化により酸素の拡散が抑制され、その結果、耐酸化性が向上するものと考える。本発明皮膜は、TiとBとが化合物を形成し、非金属のN、Oとも化合物を形成し、TiB相、TiN相、BN相、BO相も形成し、硬さと潤滑性が高い。少なくともTiN、TiB相及びBN相とBO相とが存在し、皮膜自体の硬さが高く、特にTiB相を分散させることにより高硬度となり、TiNの硬度であるHV22(GPa)に比べて高い。本発明皮膜の被覆条件として、Bを含有するTiN皮膜に炭素を添加することにより、炭素の有する潤滑性が付与され硬度及び潤滑性が向上する。
【0014】
本発明皮膜、BN相を有する皮膜のX線回折における(200)面の半価幅をZ度としたときに、0.3≦Z≦0.6の範囲にあり、皮膜のラマン分光分析によりc−BN及びh−BNのピークが検出され、c−BNのピーク強度をQ1、h−BNのピーク強度をQ2とした時、ピーク強度比Q1/Q2≧1.0であり、切削工具のすくい面の膜厚をK、逃げ面の膜厚をLとした時、膜厚比K/L≧1.0となるように工具基体表面に皮膜を形成することにより、乾式の高速切削加工、高送り加工に用いた時に、極めて良好な切削性能を発揮することができ、クレータ摩耗を著しく抑制することができることが分かった。本発明皮膜のX線回折パターンにおける半価幅は重要である。皮膜と基体との高い密着性を得るためには、物理蒸着(以下、PVDと称する。)法に特有な残留圧縮応力を低減させなければならない。X線回折パターンにおける半価幅は皮膜の結晶化度を示し、半価幅が大きいと皮膜の結晶組織は微細であり、内部応力は増大する傾向にある。従って、残留内部応力を制御するために、皮膜のX線回折パターンにおける半価幅を最適値に設定する必要がある。半価幅が0.6度を超えると、皮膜の結晶組織は微細化し、基体との密着性を阻害する残留応力が増大する。そのため切削時に大きな衝撃を受けると、皮膜は容易に剥離してしまう。微細結晶組織は粒界が多いので、外部からの酸素の拡散や、切削時における被加工物元素の皮膜内への拡散が促進される。そのため、皮膜のX線回折パターンにおける半価幅は0.6度以下に限定する。なお、皮膜のX線回折パターンにおける半価幅の下限を0.3度としたのは、0.3度未満の半価幅の測定が非常に困難であるためである。
【0015】
従来の皮膜被覆工具、特にインサートでは、損傷は主として逃げ面摩耗により起こる。従って、従来は逃げ面摩耗を防ぐためインサート逃げ面側がすくい面側より厚膜となるように皮膜を被覆していた。しかし最近の高送り加工では、被覆インサートの損傷は、逃げ面摩耗よりクレータ摩耗により起こる。従って、高送り加工に対応するために、損傷が大きいすくい面側が厚膜となるように皮膜を被覆することにより、被覆インサートを長寿命化することができる。そのため、工具のすくい面の膜厚Kと逃げ面の膜厚Lとの比K/Lが1.0以上となるように被覆する。
【0016】
本発明皮膜は、TiとBの合金ターゲットを用いて形成する。本発明皮膜中のBの含有量Mを金属成分のみの原子%で示すと、0.1≦M≦40であることが好ましい。Bの含有量が0.1原子%未満の場合、溶着や元素拡散を十分に防ぐことができない。従って、Bの含有量を顕著な効果が出始める0.1原子%以上とした。またTiとBを含有する本発明皮膜は、TiN等に良く見られる柱状晶を有するが、Bの含有量が40原子%を超えると柱状晶は微細粒状結晶に変化し、内部欠陥が増大するとともに密度が低下する。また皮膜密着性を阻害する内部応力が非常に大きくなり、皮膜は工具基体から容易に剥離する。更に皮膜の結晶が微細であると、切削加工中に粒界破壊が起こり易くなり、その結果異常摩耗が起こる。本発明皮膜を作製するにはPVD法が好ましい。そのターゲット材としてそれぞれTiとBからなる2種類のターゲット材を用いても良いが、硬質皮膜組成の均一性や放電の安定性を得るために、TiとBの合金からなるターゲットを用いるのが好ましい。
【0017】
BN相を有する本発明皮膜の他に、Ti、Al、Crからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属元素と、C、O、Nからなる群から選ばれた少なくとも1種の非金属元素とからなる第2の硬質皮膜を有するのが好ましい。理由は、皮膜の基体への密着性を向上させるためである。BN相を有する皮膜は静的及び動的条件下で優れた耐溶着性を有するが、残留圧縮応力が大きい。従って、基体との密着性の低下を補うために、基体との密着性を向上させる皮膜を設けるのが好ましい。基体表面に本発明皮膜を形成する前に、第2の皮膜を形成し、基体との密着性、耐摩耗性、耐酸化性等をバランス良く付与する。次に、第2の皮膜の耐酸化性の改善である。高速切削及び乾式切削では、第2皮膜にはクレータ摩耗だけではなく、酸化摩滅も起こる。TiNは450℃を超えると酸化し、粉状のTiOに変態する。Bを添加してなる(TiB)Nでは約550℃で酸化が開始する。酸素を添加した(TiB)(ON)では、酸化開始温度は約700℃に向上する。従って、Bと酸素を添加した(TiB)(ON)層は約700℃まで十分その効果を発揮するが、更に切削温度が上がると酸化摩滅を伴う工具境界摩耗が発生することがある。この現象を抑制するため、本発明皮膜に耐酸化性に優れた(TiAl)N系硬質皮膜や(CrAl)N系硬質皮膜を積層して、多層構造とするのが好ましい。(TiAl)N系硬質皮膜により850℃まで酸化が抑制され、(CrAl)N系硬質皮膜により1000℃まで酸化が起こらない。そのため、切削温度が著しく上昇する場合、これらの皮膜との複層化により長寿命化を達成できる。(TiAl)N系皮膜におけるAlの役割は、皮膜の耐摩耗性及び耐酸化性を向上させることである。そのため、密着性、耐摩耗性、耐酸化性をバランス良く得るためには、(TiAl)N系硬質皮膜中のAl含有量F原子%を、金属元素全体を100原子%として、30≦F≦75とすることが好ましい。(TiAl)N系硬質皮膜中のAlの含有量Fが30原子%以上あると、耐酸化性が著しく向上する。また、Alの含有量Fが75原子%以下になると、皮膜硬度が著しく低下し、耐摩耗性が劣化する。
【0018】
(TiAl)N系皮膜のAlの一部を4a、5a、6a族金属及びSiの1種以上の第3成分で置換するのが好ましい。第3成分は(TiAl)N皮膜を固溶強化すると共に、耐酸化性が向上させ、工具性能を向上させる。
基体は、超硬合金又はサーメット合金からなるインサートの場合、本発明皮膜の総膜厚は、すくい面で3μmから15μmであることが好ましい。本発明被覆工具は、高速、高送りミリング切削加工に好適であるのみならず、耐クレータ摩耗性が大幅に改善されたために旋盤加工にも使用可能である。旋盤加工用工具には、従来から約10μmの膜厚の表面に酸化アルミニウム層を有する皮膜が化学蒸着(以下、CVDと称する。)法により形成されていた。旋削加工は比較的連続切削であるため、工具寿命がクレータ摩耗に支配される事が多い。皮膜の膜厚を3μm以上にすることにより、クレータ摩耗が発生するすくい面に、CVD皮膜に匹敵する耐クレータ摩耗性を持たせることが可能であった。更に、本発明皮膜を有する工具の耐欠損性については、皮膜はPVD法により形成したので、圧縮応力が残留し、クラックの発生が少ない。そのため、皮膜に引張残留応力が存在するCVD被覆工具の10倍以上と優れた耐欠損性を有する。皮膜の膜厚が15μmを越えると、皮膜の工具基体からの剥離が起こることがある。従って、本発明皮膜の厚さは3μmから15μmであることが好ましい。高送り加工は、1刃当たりの送り量が0.3mm/刃を超える切削と定義する。
【0019】
本発明被覆工具の被覆方法は特に限定されないが、基体への熱影響、工具の疲労強度、基体への密着性等を考慮して、比較的低温で残留圧縮応力を有する皮膜を形成し得るアーク放電方式イオンプレーティング法又はスパッタリング法の様な、被覆基体側にバイアス電圧を印加するPVD法が好ましい。本発明皮膜に第2の硬質皮膜を積層する場合、表面側に潤滑性に優れた本発明皮膜を形成し、基体側に耐酸化性に優れた第2皮膜を形成するのが好ましい。本発明皮膜と第2皮膜を多層に積層する場合、本発明皮膜が最表面にくることを条件にして交互に積層するのが好ましい。なお、多層構造の場合、層数は限定的ではない。本発明を以下の実施例を参照して更に詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0020】
【実施例】
(実施例1)
アークイオンプレーティング装置を用い、表1、表2に示す目的とする硬質皮膜の組成に応じて金属成分の蒸発源である各種の合金製ターゲット、反応ガスである窒素ガス、メタンガス、アルゴンガスと酸素ガスの混合ガスから選択し、超硬合金製スローアウェイインサート、インサート形状はSDE53TN特殊形に、表3に示す本発明例1〜20及び比較例21〜27、従来例28〜34を形成した。成膜条件は表1に示すCであった。反応ガス圧力は、表2に示す。
【0021】
【表1】
Figure 2004136430
【0022】
【表2】
Figure 2004136430
【0023】
【表3】
Figure 2004136430
【0024】
上記インサートを正面フライスに装着し、巾100mm、長さ250mmの被削材S50C(HRC30)に対して、切削油なしのセンターカット方式、切り込み2.0mm、切削速度150m/min、1刃当りの送り量1.80mm/刃、の高能率乾式切削条件で加工を行った。インサートの刃先の欠け又は摩耗等により工具が切削不能となるまで加工を行い、切削不能となるまでの切削長を工具寿命とした。表3に工具寿命を併記する。
【0025】
表3より、X線回折における半価幅、膜厚比K/L、ラマン分光分析におけるh−BNとc−BNのピーク強度比が切削性能に大きな影響を及ぼすことが分かる。これらの条件を満たす本発明例1〜20では、工具寿命は大幅に向上していた。特に、本発明例2のように、膜厚比K/Lが5.0と最も大きく、皮膜の他の条件も本発明の範囲内である場合、従来例より工具寿命が著しく延びている。例えば、比較例21、22、25は、皮膜のX線回折における半価幅Zが0.3≦Z≦0.6度の範囲内であっても、ラマン分光分析でc−BNのピーク強度が弱いため、ピーク強度比が本発明の要件を満たさない。そのため、比較例21、22、25は、従来例28〜34と比較しても工具寿命を延長する効果が認められなかった。特に、比較例21、22は、インサートのすくい面と逃げ面の膜厚比K/Lはそれぞれ1.5、1.3と、1.0以上であったが、硬質皮膜のラマンピーク強度比の条件を満たしていないので、十分な切削性能が得られなかった。比較例22、24、26は、皮膜のX線回折における半価幅Zが0.3≦Z≦0.6度の範囲を満たさない。しかも比較例23、26では、ラマン分光分析におけるc−BNのピーク強度が増大し、皮膜の結晶が微細化して内部応力が著しく増大した結果、初期剥離が発生した。これは、皮膜が本発明の上記条件を満足しない上に、最適な膜厚比の設計がなされていないので、すくい面摩耗が著しく進行したためである。比較例26は半価幅が最も大きく、結晶組織が著しく微細化していた。そのため、比較例26では切削初期に皮膜剥離が起こるだけでなく、クレータ摩耗が大きく、早期に寿命に達した。比較例27は、皮膜の特性に関する本発明の条件を満たしているが、皮膜が逃げ面に厚く形成されているため、硬質皮膜の特性を十分に発揮できなかった。そのため、比較例27は従来例より工具寿命が2倍程度長いが、本発明例品ほど顕著な工具寿命の向上が得られた訳ではなかった。
【0026】
表3に示すように、本発明皮膜はBN結晶相を含有するとともに、その化学構造を制御しているために、耐溶着性及び耐熱性に優れており、工具性能の著しい向上をもたらしている。しかし、例えば比較例21、24では、硬質皮膜中のBは微量のため、TiN結晶格子中に取り込まれて固溶体の形態をとる。その結果、TiとBを含有する皮膜であるが、工具性能の改善は不十分である。比較例22、23及び25〜27では、TiとBを含有する皮膜中にBN結晶相が存在するが、Bの添加量が50原子%を超えている。このため、切削加工中に皮膜は自身の内部応力により容易に剥離する。特に、比較例26は皮膜の内部応力が最も高く、約−6GPaになることが認められた。比較例26の切削試験結果は、切削初期に工具の逃げ面及びすくい面に硬質皮膜の大きな剥離が起こり、切削が続行不能となった。これから、硬質皮膜にBN結晶相を含有させるだけでなく、Bの添加量も含めて被覆工具の設計を最適化しない限り、著しく優れた工具性能が得られないことが分かる。従来例28〜34に対して、本発明のいずれのサンプルも工具寿命で優っていることが認められた。本発明皮膜を形成する工具として、インサートについて実施例により詳細に説明したが、本発明はこれに限定されることなく、旋削工具等、他の高能率切削工具にも適用可能である。
【0027】
(実施例2)
アークイオンプレーティング装置を用い、目的とする硬質皮膜の組成に応じて金属成分の蒸発源である各種の合金製ターゲット、反応ガスである窒素ガス、酸素ガス、メタンガスから選択し、JIS−P40グレードの超硬合金からなるミーリング用インサート、工具形状はRDMW1604MOTNに、表4に示す本発明例35〜48の組成の第1層及び第2層の硬質皮膜を形成した。第1層に使用したTiBターゲットの組成は、Tiが75原子%、Bが25原子%であった。3層以上の多層構造の場合、第1層と第2層とを交互に積層した。本発明例35〜48の第1層の被覆条件は、BN相を形成するため、表1、(D)の条件である基体温度400℃、バイアス電位−300V、反応ガス圧力0.5Paで行った。第2層の(TiAl)N系皮膜の形成条件は、表1、(A)の条件、すなわち、基体温度400℃、反応ガス圧力1.0Pa、バイアス電圧−150Vであった。尚、第1層におけるTiとBの組成はターゲット組成により定まり、(TiB)に対するNの比は反応ガス圧力により定まる。またTiとNのピークは重なり、分離が困難である。そのため、表4には第1層中のTi及びBの原子%及び金属元素/非金属元素の比を省略した。また、膜厚は工具のすくい面の膜厚である。比較例49〜53は、(TiAl)N系皮膜以外の皮膜も(TiAl)N系皮膜と同一条件で被覆した。反応ガスは窒素ガス、酸素ガス、メタンガスから目的の皮膜が得られるものを選択した。
【0028】
【表4】
Figure 2004136430
【0029】
上記被覆インサートを用い、被加工材のSKD61(HRC45)、切り込み1.0mm、切削速度200m/min、1刃当りの送り1.5mm/刃、乾式切削により、巾100mm×長さ250mmのフライス加工を行った。1刃当りの送りが1mmを越えるようなフライス加工では切削温度が局部的に上昇し、クレータ摩耗が起こる傾向がある。本切削諸元は、工具寿命はクレータ摩耗に支配されるため、クレータ摩耗により工具が切削不能となるまでの時間を欠損までの切削時間とした。欠損までの切削時間を表4に併記する。表1より、本発明例35〜48は、工具寿命は著しく増大しているが、比較例49〜53はクレータ摩耗により短寿命であった。これから、本発明皮膜により、工具の耐クレータ摩耗性が著しく改善されたことが分かる。
【0030】
(実施例3)
実施例2と同じターゲット材及び同じ条件を使用し、表5に示す本発明例54〜67の皮膜を旋削用サーメットインサート(インサート形状:TNGG110302R)に被覆した。本発明例54〜67を用いて、被削材S53C、切削速度220m/分、切り込み1mm、送り0.15mm/rev、水溶性切削油使用して旋削加工を実施した。サーメット合金の組成は重量%でTi(CN):60%、WC:10%、TaC:10%、MoC:5%、Ni:5%、Co:10%であった。上記切削諸元では、クレータ摩耗による発熱により逃げ面摩耗が増大する傾向にあり、逃げ面摩耗量が0.1mmに達した時点で寿命と判定した。寿命までの切削時間を表5に併記する。
【0031】
【表5】
Figure 2004136430
【0032】
表5より、本発明例35〜58では工具寿命は著しく増大しているが、比較例59〜63では逃げ面摩耗が増大により短寿命であった。これから、本発明皮膜により、工具の寿命が著しく改善されたことが分かる。
【0033】
(実施例4)
第2層用のTiAl合金ターゲットのAlの1部を表6に示す他の元素で置換した以外、実施例2と同じ条件で、本発明例73〜86、比較例87〜91を作製し、切削評価を行った。結果を表6に併記する。
【0034】
【表6】
Figure 2004136430
【0035】
表6より、第2層のTiAl系皮膜に第3成分を添加することにより、工具寿命が一層向上した。これは第3成分の添加により(TiAl)N系皮膜が更に固溶強化され、耐酸化性が向上したためである。
【0036】
(実施例5)
アークイオンプレーティング装置を用い、目的とする硬質皮膜の組成に応じて金属成分の蒸発源である各種の合金製ターゲット、反応ガスである窒素ガス、酸素ガス、メタンガスから所望のものを選択し、切削工具用超硬合金からなるミリング用インサート、インサート形状はRDMW1604MOTNに、表1に示す条件で表7に示す本発明例92〜111、従来例112〜117の皮膜を形成した。表1に示す条件以外は実施例2と同じである。表7に示す膜厚はすくい面の膜厚であり、また3層以上の多層構造の場合、第1層と第2層とを交互に積層した。上記以外の被覆条件は実施例2と同じである。
【0037】
【表7】
Figure 2004136430
【0038】
上記本発明例、従来例を、被削材SKD61(HRC45)、切り込み1.0mm、切削速度250m/min、1刃当りの送り1.5mm/刃、の乾式切削条件により、巾100mm、長さ250mmのフライス加工を行った。1刃当たりの送りが1mmを超えるフライス加工では、切削温度が局部的に上昇し、クレータ摩耗が起こる傾向がある。従って、実施例2と同様に欠損までの切削時間を測定した。表7に本発明例及び従来例の欠損までの切削時間を示す。
表7より、本発明例92〜111は、寿命の著しい改善が認められた。従来例112〜117は、全てクレータ摩耗により短寿命であったので、本発明例の寿命の著しい改善は耐クレータ摩耗性の改善によるところが大きい。本発明例92〜94は、第1層として種々の被覆条件で(TiB)N皮膜を形成したものである。いずれのサンプルも長寿命であるが、なかでもイオンエネルギーが高くパルスバイアス条件のものが極めて長寿命であることが確認された。本発明例95〜97は(TiB)N皮膜と(TiAl)N皮膜との積層例である。本発明例98は、本発明例95の(TiB)N皮膜に酸素を添加した例である。本発明例99は、本発明例95の(TiB)N皮膜に炭素を添加した例である。本発明例98、99のいずれも本発明例95と比べ、欠損までの切削時間に改善が認められた。本発明例100、101は、第2層の(TiAl)N皮膜に酸素又は炭素を添加した例である。本発明例104は(TiB)N皮膜と(TiAl)N皮膜とを多層化した例であり、多層化の効果が認められた。本発明例105は(TiAl)NにBを添加した例であり、TiN皮膜にBを添加したのと同様の切削時間の改善が確認された。本発明例107〜111は、他の組成系へBを添加した例である。従来例115はパルスバイアス条件で(TiAl)Nを被覆した例であるが、Bがないために切削時間の顕著な改善効果は得られなかった。従来例116はTiN皮膜にBを添加した例であるが、イオンエネルギーが小さい被覆条件であるため、切削時間の顕著な改善が認められなかった。
【0039】
(実施例6)
実施例5と同様の方法により、表8に示す本発明例118〜137、従来例138〜143の旋削用サーメットインサート(インサート形状:TNGG110302R)に被覆した。インサートのサーメット合金の組成は、重量%でTi(CN):60%、WC:10%、TaC:10%、MoC:5%、Ni:5%、Co:10%であった。本発明例及び従来例を用いて、S53Cの被削材、切削速度は220m/min、切り込み1mm、送り0.15mm/回転、湿式切削で、旋削加工を行った。切削諸元は、クレータ摩耗により発熱が大きくなり、逃げ面摩耗が増大する傾向がある。逃げ面摩耗量が0.1mmに達した時点を工具寿命と判定した。工具寿命までの切削時間を表8に示す。
【0040】
【表8】
Figure 2004136430
【0041】
表8より、旋削加工でも、イオンエネルギーが高く、パルスバイアス条件で形成した本発明例が最も長寿命であった。この結果は、実施例5で得られた結果と一致する。本発明例118〜137は、寿命までの切削時間に著しい改善が認められた。これに対して、従来例138〜143は、クレータ摩耗により逃げ面摩耗量が早く増大し短寿命であった。本発明例118〜137の長寿命化は耐クレータ摩耗性の改善によるところが大きい。本発明例118〜120は第1層として(TiB)N皮膜を有する例であり、第1層の被覆条件が異なる。いずれも長寿命であるが、なかでもイオンエネルギーが高くパルスバイアス条件下で形成された(TiB)N皮膜を有するものが最も長寿命であった。本発明例121〜123は(TiB)N皮膜と(TiAl)N皮膜とが積層された例である。本発明例124は本発明例121の(TiB)N皮膜に酸素を添加した例であり、本発明例125は本発明例121の(TiB)N皮膜に炭素を添加した例であり、いずれも寿命までの切削時間は本発明例121と同等以上であった。本発明例126、127は第2層の(TiAl)N皮膜に酸素又は炭素を添加した例である。本発明例130は(TiB)N皮膜と(TiAl)N皮膜とを多層に積層した例であり、多層化の効果が認められた。本発明例131は(TiAl)N皮膜にBを添加した例であり、TiNにBを添加したと同様の改善が認められた。本発明例133〜137は、上記以外の組成の第1層にBを添加した例である。従来例141は(TiAl)N皮膜をパルスバイアス条件で形成した例であるが、Bが存在しないために切削時間の顕著な改善は認められなかった。また従来例142はTiNにBを添加した例であるが、イオンエネルギーが小さい被覆条件のため、切削時間の顕著な改善は認められなかった。
【0042】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明を適用することにより、耐クレータ摩耗性に優れ、乾式高速切削加工において格段に長い工具寿命が得られる。このような特徴を有する本発明の硬質皮膜被覆工具は、切削加工における生産性の向上、コスト低減、作業環境改善等に極めて有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明例の(TiB)N皮膜のESCAによるTiとNとの結合エネルギー回折ピークを示す。
【図2】図2は、本発明例の硬質皮膜のESCAによるBとNとの結合エネルギー回折ピークを示す。
【図3】図3は、本発明例の硬質皮膜のラマン分光分析によるc−BN及びh−BNの回折ピークを示す。
【図4】図4は、ボールオンディスク型の摩耗試験機を用いた摩耗試験により求めた滑り距離と摩擦係数との関係を示す。
【図5】図5は、本発明例の切削後の刃先近傍の元素分析結果を示す。
【図6】図6は、従来例の切削後の刃先近傍の元素分析結果を示す。

Claims (6)

  1. 基体表面に金属元素としてTiとBを含有する窒化物、炭窒化物、酸窒化物、酸炭窒化物のいずれかからなる皮膜を被覆した工具において、前記皮膜はBの窒化物相を含有し、ESCA分析によりBとNの結合エネルギーが確認され、ラマン分光分析によりc−BN及び/又はh−BNの存在が確認されることを特徴とする被覆工具。
  2. 請求項1記載の被覆工具において、前記皮膜のX線回折における(200)面の半価幅Zは、0.3≦Z≦0.6度の範囲、前記ラマン分光分析によるc−BN及びh−BNのピーク強度をQ1、Q2としたとき、比Q1/Q2は、Q1/Q2≧1.0の範囲、前記工具のすくい面の膜厚Kと逃げ面の膜厚Lとの比K/Lは、K/L≧1.0の範囲としたことを特徴とする被覆工具。
  3. 請求項1又は2記載の被覆工具において、前記皮膜はTiとBの合金ターゲットを用いて被覆され、皮膜の組成が、前記皮膜に含まれるBの含有量Mを金属元素全体を100原子%とした時、0.1≦M≦40原子%、の範囲としたことを特徴とする被覆工具。
  4. 請求項1乃至3いずれかに記載の被覆工具において、前記皮膜以外に、Ti、Al、Crからなる群から選ばれた少なくとも1種以上の金属元素と、C、O、Nからなる群から選ばれた少なくとも1種以上の非金属元素とからなる皮膜を設けたことを特徴とする被覆工具。
  5. 請求項4記載の被覆工具において、前記Ti、Alを含有する皮膜は、前記Alの一部を4a、5a、6a族の金属及びSiからなる群から選ばれた少なくとも1種で置換されたことを特徴とする被覆工具。
  6. 請求項1乃至5いずれかに記載の被覆工具において、前記基体は超硬合金製又はサーメット合金製のインサートからなり、前記皮膜の総厚さが工具すくい面において3μから15μmであることを特徴とする被覆工具。
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